説明

有機発光素子および無機光検出器を備える集積光結合器

【課題】モノリシックに集積された光結合器を提供する。
【解決手段】光結合器は、有機発光素子100と検出器領域を備える無機光検出器104とを有し、この検出器領域は有機発光素子に光学的に結合される。有機発光素子は、電気入力信号を光信号に変換し、かつ無機光検出器は、光信号を電気出力信号に変換し、有機発光素子および無機光検出器は、CMOS構造のILD層150、IMD層160によって集積され、かつガルバニック分離がなされている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機発光素子および無機光検出器を備える集積光結合器に関し、特に、OLED光源を備えるモノリシックに集積されたCMOS光結合器に関する。
【背景技術】
【0002】
光結合器は、ガルバニック分離および/または電位分離の技術的手段として、広く普及している。これには、自動車産業、民用電子機器、医療および測量技術、データ通信等の分野の応用を含む。光結合器は、対応の出力信号から、入力信号を電気的に分離するために使用され、かつ継電器およびリード継電器(保護ガラス継電器)の代替物として使用することができる。これらは、そのスイッチング速度の速さ、信頼性の高さ、より優れた電気的分離の面で有利であり、かつ従来技術の継電器に比べ、機械的結合および/またはスイッチングによる欠点(所謂バウンス効果)が避けられる。
【0003】
光結合器は、発光素子および受光素子を有し、これらの素子は、結合媒体および/または光ガイドを介して光学的に結合される。たとえば赤外線や赤色光を発する発光ダイオード(LED)を、発光素子として使用することが多い。フォトダイオード、フォトトランジスタ、フォトサイリスタ、フォトトライアック、フォトシュミットトリガまたはフォトダーリントントランジスタ等が、受光素子として使用される。発光素子および受光素子は、電気的に非導電性の絶縁体を介して相互に結合される。
【0004】
回路部品の電気的分離は、電位分離のため必要であり、また寄生反応を避けるためにも必要である。電位分離は、医療機器におけるハザード防止にとりわけ効果的であるが、データ通信(ネットワーク/インタフェースカード)または過電圧保護にも効果的ある。光結合器で、抑制したい寄生反応は、たとえば小さい信号における雑音やエンジン制御における過渡である。二値またはアナログ信号が光結合器では伝送される。
【0005】
光結合器を図10に模式的に示す。発光素子20は、入力10にある電気信号を光信号40に変換する。光信号40は、光ガイド30により光出口領域25から受光素子50の光入口領域55へ送信される。受光素子50は、光信号40を電気出力信号に再変換し、この光出力信号が出力60に存在する。電位分離については、光ガイド30が発光素子20を受光素子50から電気的に分離すること、すなわち光ガイド30が透明の誘電物質を有していることが重要である。
【0006】
光結合器の市場は、主に2つの異なる分野に分かれる。すなわち、一方が伝統的なフォトダイオードおよび/またはフォト(ダーリントン)トランジスタに基づく単純な光結合器であり、他方が、より高度な機能向けにCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor:相補型金属酸化膜半導体)読出し回路を備えた完全な集積光結合器である。
【0007】
受光素子として考えられるフォトダイオードおよび/または光検出器50は、標準的なCMOSプロセスの際に様々なp‐n界面で再生することができ、図9は、前提技術によるnウェルCMOSプロセスにおける例を示す図である。p型ドープの基板(p型基板)910には、n型ドープのウェル(nウェル)920が形成され、このウェルが、p型基板910に対向する側にp+ドープ層930を有する。光検出器50の最終の層として、p型基板910は、酸化物層940を有し、その後にILD(Inter Layer Dielectric:層間誘電体)層950とIMD(Inter Metal Dielectric:金属間誘電体)層960等の通常のCMOS層が続く。酸化物層940、ILD層950およびIMD層960は、誘電体材料を有し、かつ半透明であることが好ましい。図9に、ダイオード925、935および975によりいくつかのpn接合を示す。
【0008】
入射光ビーム990は、対向する負荷極性の負荷キャリア対985をnウェル920内に発生し、これが、極性に従い分離されて、電気信号が発生する。光検出器50は、p型基板910、nウェル920、およびp+ドープ層930から構成される。図9は、p型基板910とn+ドープ表面層970とからなるpn接合から構成されるフォトダイオード975をさらに示す。光信号980は、たとえば、表面層970で反射された光を表す。
【0009】
既知の完全に集積化された光結合器は、CMOS系受信および評価チップならびに従来技術の(無機)発光ダイオード(従来技術のLED)からなるエミッタ(発光素子)20に基づく。これらは、一般に、フォトダイオードおよび/または光検出器50と光学的に密接な関係を有する。これら2つの技術は、相互に異なる材料およびプロセスを使用する。標準的CMOSプロセスは、概ね単結晶シリコン材料に基づき、一方、従来技術の発光ダイオードは、多くが単結晶III−V族半導体を使用する。従って、光検出器50および発光素子20としての発光ダイオードといった素子は、モノリシックに製作することができず、相互にハイブリッドな態様でのみ集積できる。
【0010】
GaAsおよび関連のIII−V族半導体等の無機半導体からなる従来技術の発光ダイオードが、何十年にも渡って知られている。そのような、発光ダイオードの基本的原則は、電圧を印加することによって、電子および正孔が、半導体に注入されかつ発光の際に再結合ゾーンで照射を介して結合するというものである。
【0011】
無機発光ダイオードの代わりとして、有機物半導体に基づく発光ダイオードが近年目覚しい進歩を遂げている。たとえば、有機エレクトロルミネセンスは、現在、表示装置に適した媒体として、大きな注目を集めている。有機発光ダイオードは、陽極と陰極との間に挿入された典型的には厚さが100nmの範囲にある一連の有機物層を有する。ガラスを基板として使用することが多く、その上にインジウム−錫−酸化物(ITO:Indium Tin Oxide)等の透明の導電性酸化物を付与する。そして、正孔輸送材料、発光材料および電子輸送材料を有する、上記一連の有機物層が続く。通常その後に、金属性陰極が続く。
【0012】
図8は、前提技術による有機発光ダイオード(OLED)を示す図であり、その左側に所謂ボトムエミッタ810を示し、その右側に所謂トップエミッタ820を示す。
【0013】
ボトムエミッタ810の場合、透明電極814、一連の有機物層816および第2の電極818が基板812の上に積層される。透明電極814は、第1の接点815を介して、かつ第2の電極818は、第2の接点819を介してそれぞれ電気的に接続される。一連の有機物層816では、第1の接点815および第2の接点819の電気信号が、光信号40に変換され、ここに示す例では、主に下向きに放射される。
【0014】
上に述べたとおり、以下の材料を使用することができる。透明電極814には、たとえばITOを使用することができ、第2の電極818には、金属を使用することが多く、かつ一連の有機物層816は、たとえば正孔輸送材料、発光材料および電子輸送材料を有する。第2の電極818が、不透明の材料を有するボトムエミッタに810の場合、上向きの放射が防止される。基板812が光の伝播を妨げないようにするために、透明材料として一般にガラスを使用する。
【0015】
図8の右側に示すトップエミッタ820は、応じて反転した一連の層を有する。不透明の材料を有する第2の電極818が基板822の上に積層される。そして、その後に一連の有機物層816、透明材料(例:ITO)を有する透明電極814が続く。次に透明電極814は、第1の接点815を介して、かつ第2の電極818は、第2の接点819を介して、それぞれ電気的に接続される。この場合も、第1の接点815および第2の接点819の電気信号は、一連の有機物層816において、光信号40に変換されるが、この光は、第2の電極818が不透明性なため、図面では主に上向きに放射される。
【0016】
選択された図面に関わらず、ボトムエミッタ810は、主に基板812を介して光信号40を照射し、一方、トップエミッタ820は、基板822から離れる方向に放射する。図8の光信号40は、主たる放射方向を示す。しかしながら、一連の有機物層816で生成された光は、一連の有機物層816に沿って、または透明電極814に沿って伝播し、横方向に保護が存在しなければ、横方向にも一部放射される。
【0017】
通常、III−V族半導体系の無機エミッタ(発光素子20)およびCMOSフォトダイオード等の無機検出器(光検出器50)の両方が集積された光結合器が知られている。有機発光素子および有機検出器の両方を集積した光結合器も知られており、たとえば、DE 10061298 A1 または DE10103022 A1に記載されている。さらに、画像レコーダのための光検出器が知られており、これは、SOI(シリコン・オン・インシュレータ)基板からなるシリコンハンドルウェハにおいて実現される(特に特許文献1を参照)。
【0018】
上記のとおり、従来技術のLEDは主にIII−V族半導体を使用し、かつ検出器回路(光検出器50および活性化回路)は、多くがシリコン系のものであるため、同じ基板の上に両方の素子を作成することはできず、集積が困難であることがわかる。考えられる光結合器におけるハイブリッド集積は、前提技術から知られるように、原則としてより高い製造コストを必要とし、実のところ、多くのユニットを有するため、一般に価格を低減することはできない。さらに、ハイブリッド構造のために、自動車の応用に必要な信頼性は、きわめて高いコストを払って初めて達成することができる。
【特許文献1】米国特許第6,838, 301号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
前提技術から初めて、本発明の目的は、構成要素において、モノリシックに集積された光結合器を製造することである。
【課題を解決するための手段】
【0020】
この目的は請求項1に記載の光結合器により達成される。
【0021】
本発明は、有機発光素子および無機光検出器を使用することにより基板上で集積光結合器を作成できるという知見に基づく。有機発光素子および無機光検出器は、従来技術の構造を有しかつ構成要素において集積することができる。たとえば、光源および/または発光素子および光検出器をチップ上にモノリシックに集積することは、高度な構成のCMOS基板に対する後処理としてOLEDエミッタを集積することにより可能となる。CMOS構成の構造は、同時に電気的絶縁体および光ガイドとして作用することが可能である。pnストップ層で形成され、CMOSや類似の素子に固有のフォトダイオードを光検出器として使用することができる。
【0022】
OLEDが特に好ましいのは、これらが光結合器を製造する際に高度な集積を可能にし、さらにほどんどどのような基板上にも配設することができ、したがって、特にシリコン基板上に直接的に集積できるからである。さらに、配設は、比較的低温(たとえば、100℃を下回る温度等)で行うことができる。したがって、損傷の危険性もなく、OLEDは、通常のCMOS/BiCMOS(Bipolar Complementary Metal Oxide Semiconductor)回路上に配設することができる。集積回路(CMOS構造)の上に存在する分離酸化物または分離層が同時に光接続を作り出す(すなわち光ガイドとして働く)ことができ、それにより所望の電気分離値を分離層の層の厚さによって調節することができる。こうして、この技術は非常に単純になる。
【0023】
CMOS構造におけるOLEDの集積は、以下のように行うことができる。トップエミッタとしてのOLEDは、たとえば通常のCMOS金属層を電極とし、その上に一連の有機物層が配設され、かつ透明電極が付与される。具体的な実施例について、以下に、より詳細に説明する。
【0024】
ボトムエミッタとしてのOLEDは、たとえば通常のCMOS酸化物層(IMD層等)上に付与することができ、この場合、透明電極は基板として作用する通常のCMOS酸化物層上に配置される。通常のCMOS金属層は、ここでも第2の電極として作用することができ、一連の有機物層が中間層として配設される。ボトムエミッタとしてのOLEDは、その下にある光検出器上に直接照射するが、この検出器は、例えばCMOSに固有のpnストップ層の形で作ることができる。透明電極のための典型的な透明導電性材料は、インジウム−錫−酸化物(ITO)、酸化亜鉛(ZnO)または他の導電性酸化物である。具体的な実施例について、以下に、より詳細に述べる。
【0025】
本発明によれば、発光素子と受光素子は、「光学的に近接」するので、必要なOLED領域が低減され、かつ電流消費を低く保つことができる。したがって、生産は経済的である。生成する光信号に使われる波長の適切な選択(実質的に使用する材料で決まる)は、光ガイドの吸収をできる限り低くして行うことができ、それにより最適化された光学信号伝送が行われる。必要とするOLED電圧をできる限り低く維持するために、一連の有機物層は、ドープされた輸送層を有し、それにより低減された入力電圧閾値を設けることができる。
【0026】
OLEDの配設は、こうしてCMOS/BiCMOSおよびバイポーラ技術と完全に技術的に両立でき、かつ集積OLED光結合器を製造することが可能となる。製造は、大型の基板(200×200mmまで等)で問題なく低コストで行うことができる。
【0027】
OLED技術により、すなわちOLEDを発光素子として使用することにより、初めて、光結合器について、モノリシックに集積された解決法、すなわち光の発生と検出をひとつの基板(シリコン基板上等)で行う可能性がもたらされる。これらにより、構成要素の大きさおよび新たな機能の集積の可能性、すなわち、これらが簡単かつ高度に集積され得る可能性について、効果が得られる。また、これらは、様々な絶縁抵抗で高い効率を示し、電力消費は低い。
【0028】
有機エレクトロルミネッセンスの他の効果は、化学的な変動性のために、OLEDは、ほとんどすべての色で製作でき、かつ低温での配設のため、OLEDをもっとも多様な基板に適用できる点である。したがって、たとえば異なる色または波長の光を発するOLEDを使用することで、マルチチャネルソリューションをチップ上に集積することができる。
【0029】
周知のハイブリッドソリューションと比較した場合の集積OLEDを有する光結合器の利点を以下のように要約できる。集積のための構成と接続技術(CCT)の複雑さが低減され、コストも低減される。また、光源、電気的絶縁体、光ガイドおよび光検出器をチップ上にモノリシックに集積することが簡単に実現できる。さらに、標準的なCMOS層/構造を電気絶縁体および光ガイドとして使用することができる。これによりSOI−CMOS基板を用いたときの分離の強度が改善され、かつチップ領域が減少する。最後に、本発明の実施例は、発光素子の活性回路および光検出器用電子読出しユニットを複雑に集積できる可能性を提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
本発明の好ましい実施例について、添付の図面を参照してより詳細に説明する。
【0031】
発明について、図面を参照して以下に詳しく述べる前に、図面において、同じ素子は、同じかまたは類似の参照番号で示し、その説明は繰り返さない点に留意されたい。
【0032】
図1は、発光面102を有し、下に位置するたとえばCMOS構造の一部を構成する光検出器104を直接照らすボトムエミッタとしてのOLED100を示す。光検出器104は、基板110に埋設され、接点120を介して接続されかつCMOS構造のILD層150により遮蔽される。CMOS構造のIMD層160が、OLED100のベースまたは基板の役割をし、すなわちIMD層160の上に透明電極170、一連の有機物層180および第2の電極190が配設される。パッシベーションまたは保護層195が、最後の層の役割を果たし、側面パッシベーション197が透明電極170を第2の電極190から分離する。
【0033】
ボトムエミッタ100としてのOLEDは、電気信号を光信号108に変換し、これがIMD層160を通り、次にILD層150を通って、光検出器104へ到達し、かつそこで電気出力信号へ再変換される。光検出器104は、CMOS構造に存在するたとえばフォトダイオード(図9参照)やフォトトランジスタ等の任意の感光素子として設計することができる。光検出器104のために必要な他の接点については、明瞭化のために図1には示していない。
【0034】
図2は、もう1つの側面シールディング210を有する本発明の他の実施例を示す。シールディングは、CMOS構造の金属ガイド面により形成することができ、また透明電極170の電気接続の役割もする。
【0035】
図1の実施例と同様、光検出器104は、基板110に埋め込まれ、電極120により電気的に接続される。発光素子は、ここでも透明電極170、一連の有機物層180およびパッシベーション層195に埋め込まれた第2の電極190を備えるボトムエミッタとしてのOLED100である。側面パッシベーション層197は、透明電極170と第2の電極190との間を分離する。発光素子100と光検出器104との間でも、IMD層が光検出器104の側に、そしてILD層が発光素子100の側にそれぞれ配設される。
【0036】
横方向に透明電極170を囲む遮蔽層210は、透明電極170における光ガイド効果による寄生効果を低減する上で効果的である。たとえば上記の側部照射を抑制する。遮蔽層210は、たとえば金属材料を有し、ILD層150とIMD層160も、CMOS構造の可能な固有の部分とすることができる。
【0037】
図3は、図2の構造を構成する層に加えて、他の遮蔽面310a、310b、310c、310dおよび310eが光検出器104とOLED100との間に組み込まれる実施例を示す。遮蔽面310aおよび310dは、IMD層150に埋め込まれ、遮蔽面310bおよび310eは、ILD層160に埋め込まれる。最後に、遮蔽面310cが、IMD層150とp型基板110との間の界面に配設される。素子については、すでに図2で説明しているので、ここでは新たな説明は行わない。この実施例の遮蔽面310a、310b、310c、310dおよび310eは、たとえばCMOS構造の追加の金属ガイド面とすることができ、追加の遮光および光信号108の合焦のために役立ち、従って、光信号108の光検出器104による検出を助ける。遮蔽層としての機能以外に、金属ガイド面のいくつかはさらに本発明の光結合器の構成要素の電機接続のための役割をすることも可能である。
【0038】
図4は、実施例を示し、同実施例では、光検出器がフォトダイオード400を有し、これは、たとえば基板405またはp+ドープ表面層に対するnウェルのpn接合(または他の既存のpn接合も使用)により形成することができる。フォトダイオード400は、接点120を介して接続され、p型基板405に埋め込まれる。光検出器の他の必要な接点については、簡略化のため図示していない。この実施例において、光検出器400とOLED100との間には、ILD層150があり、その次にIMD1層160aおよびIMD2層160bがある。IMD1層160aは、遮蔽面310aを有し、IMD2層160bが遮蔽面310bを有する。OLED100は、ここでもIMD2層160b上に配設される透明電極170、一連の有機物層180および第2の電極190を有し、パッシベーション層195により保護される。側面パッシベーション197は、ここでも透明電極170と第2の電極190との間を分離する。
【0039】
接点120は、ブリッジおよび/またはILD層150をブリッジする貫通接続410を介して遮蔽面310aに接続される。遮蔽面310bを提供する金属ガイド面がこうしてさらに接点120を電気的に接続するための役割をする。ILD層150は、ここでもフォトダイオード400とp型基板910の保護層として作用する。上記と同様、ILD層150、IMD1層160aおよびIMD2層160bも、CMOS構造の一部とすることができ、かつ遮蔽面310aおよび310bは、CMOS構造の金属ガイド面により実現することができる。
【0040】
ボトムエミッタ100としてのOLEDは、電気入力信号から光信号108を生成し、この光信号108が、IMD2層160bを通り、IMD1層160aを通って、最後にILD層150を通った後に、フォトダイオード400へ入り、そこで電気出力信号を生成する。
【0041】
図5は実施例を図示し、同実施例では、OLED100が、光ガイドとして作用する埋設誘電体透明層510を使ってフォトダイオード515へ間接的に照射する。誘電体透明層510(埋設層と呼ぶこともできる)は、基板500上に配設され、光検出器515およびOLEDドライバトランジスタ540のベースとなる。光検出器515およびOLEDドライバトランジスタ540は、ILD層150内に埋設され、かつILD層150は、IMD1層160aおよびIMD2層160bの上に配設される。IMD2層は、さらにパッシベーション層195に埋設される透明電極170、一連の有機物層180および第2の電極190を備える以下のOLED100の基板として作用し、かつ側面パッシベーション197が、透明電極170と第2の電極190との間を分離する。
【0042】
光検出器515は、接点120および接点520を介して電気的に接続される。接点120は、第1のブリッジ410を介して遮蔽面310aの第1の部分310aに接続される。接点520は、第2のブリッジ410を介して遮蔽面310aの第2の部分310aに接続され、第2の部分310aは、次に第3のブリッジ530を介して遮蔽面310bに接続される。OLEDドライバトランジスタ540の電気的接続は、遮蔽面310cの第1および第2の部分310cおよび310cを介して行われる。第1の部分310cは、第5のブリッジ5601を介して遮蔽面310dの第1の部分310d1に接続される。第2の部分310c2は、第6のブリッジ560を介して遮蔽面310dの第2の部分310dに接続される。第2の部分310dは、次に第7のブリッジ570を介して遮蔽面310eに接続され、これが次に第8のブリッジ580を介してOLED100の第2の電極190に電気的に接続される。
【0043】
上記の通り、遮蔽面310bおよび310eは、IMD2層160bに埋設され、かつ遮蔽面310aおよび310dは、IMD1層160aに埋設される。一方、ILD層150は、遮蔽面310cの部分310c1および310cならびに接点120および520を有する。遮蔽面として示される構造は、各々CMOS構造の金属ガイド面の部分からなり、かつそれぞれのブリッジまたは貫通接続部を介して、少なくとも部分的に接続構造としてさらに作用する。
【0044】
この実施例においては、ボトムエミッタとしてのOLED100が発する光信号108は、光検出器515に直接到達せず、光ガイドとして働く、組み込まれた誘電体透明層510に到達する。光信号108は、誘電体透明層510において、光検出器515へ向って伝播する光信号590および接点120および520を介して出力される電気信号を発生する。上記の通り、接点120は、遮蔽面310aの第1の部分310aに接続され、かつ接点520は遮蔽面310bに接続され、そこで、電気信号が出力信号として存在する。
【0045】
図3に模式的に示す遮蔽面310a、310a、310b、310c、310c、310d、310dおよび310eの部分に、CMOS構造の金属ガイド面を使用することは、有利である。したがって、図5の実施例は、誘電体透明層510に対応し、かつ同時に電気絶縁体および光ガイドとして使用される埋設酸化物層を備えるSOI-CMOS技術に基づく。こうして、電子エミッタ活性化および光検出器読み出し装置の最終的に複雑な集積にもかかわらず、高い絶縁電圧が得られる。双方の回路部は、チップ上で完全に相互から分離されている。光検出器515によりできる限りの高い吸収を達成するためには、対応する大きさの光検出器515を選択する必要がある。たとえばシリコンを有し、誘電体透明層510上に設けられる活性層は、蓋然性の高い光子の吸収を達成するために十分な厚さを実現する必要がある。たとえば、約200nmから3mmの範囲等の層厚を選択することが可能である。
【0046】
図5において参照番号310d、310d、310aおよび310aで示す構造は、各々CMOS構造の第1の金属ガイド面(MET1)の一部を構成することが可能で、構造310bおよび310eは、第2の金属ガイド面(MET2)の一部を構成することが可能であり、構造190は、第3の金属ガイド面(MET3)の一部を構成することが可能である。
【0047】
図6は、実施例を示し、同実施例では、OLED600が、トップエミッタとして使用され、これが光検出器400に対し間接的に照射する。図4に関連してすでに説明した実施例と同様、光検出器400はフォトダイオード(既存のpn接合により形成される)を有し、これは、接点120を介して接続されかつp型基板405に埋設されている。接点120は、ブリッジ410を介してCMOS構造の金属ガイド面612と接続される。金属ガイド面612は、IMD1層160aに位置し、その前にILD層150が設けられる。
【0048】
OLED600は、IMD1層160a上に付与され、IMD1層160a上に形成された金属ガイド面(MET2)は、下部電極614として作用し、その上に一連の有機物層180と透明電極170とが付与される。最後に、トップエミッタ600としてのOLEDの保護層として、透明材料を有するパッシベーション層195が続く。側面パッシベーション197は、ここでも、透明電極170と第2の電極190との間を分離する。接続のために作用する構造612および614は、ここでもCMOS構造のさらなる固有の部分を構成し、金属ガイド面として形成されることが可能で、かつまた遮蔽面としても作用することができる。
【0049】
さらに、この実施例は、ケーシング620の内壁に反射器610を有する。反射器610は、トップエミッタとして作用するOLED600からの光信号108が、光検出器400上に反射されるように、すなわち光信号108が反射器601に向けて照射され、後者により反射されて、p型基板405に埋設される光検出器400に到着するように構成される。この反射構成では、OLED600は、上向き、すなわちパッシベーション層195に向かって照射する。図6からわかるように、実施例においては、光検出器400が遮蔽面310eにより覆われないようにし、反射された光信号108のできるだけ多くの部分が確実に光検出器400に届くようにする必要がある。
【0050】
図7は、別の実施例を示し、同実施例は、2つの不透明電極190および192を有するOLEDを有する。一連の有機物層180が、両方の不透明電極190および192の間に配列されて、所謂マイクロキャビティOLED720を構成する。不透明電極190および192は、たとえば、下に位置するCMOS構造上に配設される2つの金属層により形成することができる。光検出器は、図6の実施例を参照して説明した光検出器に相当する。
【0051】
マイクロキャビティOLED720は、光学窓750を有し、ここで、2つの不透明電極190および192の間の一連の有機物層180が突き出し、かつ同窓は、光信号108の出口領域750となり、かつ光検出器400と光学的に接触するように構成される。また、マイクロキャビティOLED720は、ここでも光学窓750と対向する側のパッシベーション層195により保護され、かつ外部ケーシング620が、照射するマイクロキャビティOLED720を良好に遮蔽するという利点がある。
【0052】
この実施例においては、電極190および192、双方ともが不透明であるため、光の伝播は、一連の有機物層180で光信号108が生成された後に、一連の有機物層180に沿ってのみ発生可能である。こうして、光信号108は光学窓750を通ってマイクロキャビティOLED720を出て、IMD層160およびILD層150を通って進み、その後光検出器400において電気出力信号に変換される。
【0053】
図面を参照して説明した本発明の実施例を、組み合わせたり拡張することが可能である点は明白である。たとえば、図6を参照しながら説明した実施例は、光結合器にさらにまたは他の反射器を設けたり、光信号108の合焦を光学装置を介して行うなど変更が可能である。こうして、ケーシングの内側の反射器610の代わりに、パッシベーション層195上に反射器を置くか、追加の反射器として加えてもよい。反射器610を反射面として設計したり、反射器610が光信号108を光検出器400上に合焦させるように設計することもできる。合焦は、たとえば、反射器610が適切な曲率を有するかまたは光結合器がレンズを有することで達成することができる。合焦反射器610またはレンズは、光検出器400の入り口領域55をより小さく選択できるにも関わらず十分な量の光を受光する点が有利であると考えられる。
【0054】
最も高い絶縁電圧は、図5の実施例で達成される。というのも、電子活性化ユニットを備える有機発光素子100を、光検出器400から完全に電気的に分離しかつ分離電圧を、応じてかつ側部の距離により選択が可能な透明層510(埋設層)の層厚を介して調節することができるからである。他の図面の実施例では、有機発光素子100、600または720および光検出器400の電子活性化ユニットを、異なる基板領域に設け、これらの領域がさらにトレンチ等により相互に分離されているという点で、分離電圧を増大できる。電子活性化ユニットは、たとえば下部基板領域に配設することもできる。
【0055】
光結合器は、動作において、アナログとデジタル両方の信号を発信することができる。効果的に外部の寄生効果または外来光の影響を抑制できるようにするためには、固定タイミングまたは変調を使用することが効果的である。OLEDは、複数の周波数で利用可能なので、様々なOLED(例えば数個のOLEDをCMOS構造の上に配置するなどして)を組み合わせて、マルチチャネルソリューションを行うことができる。光源すなわちOLEDを変調するための適切な活性化回路を設けることができる。
【0056】
集積OLEDを備える上記の光結合器の実施例は、上記に述べたような効果をもたらす。これらの効果には、特に、集積のための構成および接続技術(CCT)の複雑化を低減するという効果ならびにコストの低減が含まれる。さらに、1つのチップ上に、光源、電気的分離器、光ガイドおよび光検出器のモノリシックな集積を簡単に行える。さらに、標準的なCMOS層/構造を電気的分離器および光ガイドとして使用することができる。それにより、SOI−CMOS基板を使用する際の分離強度の向上およびチップ面積の減少がもたらされる。最後に、本発明の実施例は、発光素子のための活性回路および光検出器のための電子読出ユニットを複雑に集積させる可能性を提供する。したがって、最終的に、電子エミッタ活性および光検出器読出ユニットが複雑に集積されても、高い分離電圧が得られる。1チップ上で両方の回路部分を相互から完全に分離し、到達する分離電圧を、層の厚さや層の材料を適切に選択することにより柔軟に調節することができる。
【0057】
結論として、本発明の様々な局面を以下のように提示することができる。
【0058】
有機発光素子とCMOS光検出器とをCMOSシリコンチップ上に、光結合器としての構成において、空間的に集積すること。
【0059】
CMOSのpn接合(たとえばウェル基板、ウェル接点等)を光検出器として使用すること。
【0060】
光検出器へ直接的に照射するボトムエミッタとしてのOLEDエミッタの構成。
【0061】
光検出器へ間接的に照射するボトムエミッタとしてのOLEDエミッタの構成。
【0062】
反射器を使用して、間接的に光検出器へ照射するトップエミッタとしてのOLEDエミッタの構成。
【0063】
反射がパッシベーション面で起こる、間接的に光検出器へ照射するトップエミッタとしてのOLEDエミッタの構成。
【0064】
追加の反射器をケーシングの内側に配置する、間接的に光検出器へ照射するトップエミッタとしてのOLEDエミッタの構成。
【0065】
光検出器に間接的に照射する2つの不透明電極を備えるOLEDとしてのOLEDエミッタの構成。
【0066】
活性化および読出回路の電気的分離の向上のためにSOI−CMOS基板を使用しかつSOI層を光ガイドとして使用すること。
【0067】
検出器へ光が導かれることを保証するために、CMOS構造の金属化面を使用すること。
【0068】
ガルバニック分離信号伝送のため、光源を変調すること。
【0069】
最終的なマルチチャネルの、スィッチングブロックのガルバニック分離、例えば、寄生分離や雑音低減のため、複雑な集積回路においてモノリシックな実施を行うこと。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】光検出器に直接照射するボトムエミッタとしてのOLEDの図である。
【図2】側面遮蔽を有する光検出器に直接照射するボトムエミッタとしてのOLEDの図である。
【図3】側面遮蔽および追加の光ガイドを有する、光検出器に直接照射するボトムエミッタとしてのOLEDの図である。
【図4】光検出器としてのフォトダイオードを有する、光検出器に直接照射するボトムエミッタとしてのOLEDの図である。
【図5】光検出器に間接的に照射するボトムエミッタとしてのOLEDの図である。
【図6】光検出器に間接的に照射するトップエミッタとしてのOLEDの図である。
【図7】光検出器に間接的に照射するマイクロキャビティOLEDとしてのOLEDを示す図である。
【図8】ボトムエミッタとしてのOLEDとトップエミッタとしてのOLEDを示す図である。
【図9】標準的nウェルCMOSプロセスにおけるフォトダイオードを示す図である。
【図10】光結合器の模式的構造を示す図である。
【符号の説明】
【0071】
100,600,720 有機発光素子、104,400,515 無機光検出器、106 検出器領域、108 光信号、150,160 分離層、180 有機中間層、190,192 電極、195 パッシベーション層、310a,310b,310c,310d,310e 遮蔽面、510 偏光層、610 反射器、750 光学出力、920 ケーシング。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光結合器であって、
有機発光素子(100、600、720)と、
検出器領域(106)を有する無機光検出器(104、400、515)とを含み、検出器領域(106)が有機発光素子(100、600、720)と光学的に結合され、
有機発光素子(100、600、720)が、電気入力信号を光信号(108)に変換し、無機光検出器(104、400、515)が光信号(108)を電気出力信号に変換し、かつ有機発光素子(100、600、720)および無機光検出器(104、400、720)が構成要素において集積される、光結合器。
【請求項2】
無機光検出器(104、400、515)が、1以上のpn接合を有するドープされた半導体材料を有する、請求項1に記載の光結合器。
【請求項3】
有機発光素子(100、600、720)が、有機発光ダイオードを有する、請求項1または2に記載の光結合器。
【請求項4】
有機発光素子(100、600、720)および無機光検出器(104、400、515)が、1つまたはいくつかの分離層(150、160)の2つの対向する側に配列される、請求項1から3のいずれかに記載の光結合器。
【請求項5】
光信号(108)の伝播方向が、偏光層(510)を用いて有機発光素子(100)により変更されるよう、形成された偏光層(510)をさらに含む、請求項1から4のいずれかに記載の光結合器。
【請求項6】
上下に積層され、有機発光素子(100、600、720)の発光面(102)に対して実質的に平行に配置された分離層により分離された1つまたはいくつかの遮蔽面(310a、310b、310c、310d、310e)をさらに含み、遮蔽面(310a、310b、310c、310d、310e)が、遮光および光信号(108)の合焦を生じさせかつ発光表面(102)から電気的に分離される、請求項1から5のいずれかに記載の光結合器。
【請求項7】
反射器(610)をさらに含み、有機発光素子(600)が、光信号(108)を反射器(610)に向けて発するよう配列され、かつ無機光検出器(400)が、反射器(610)からの光信号(108)を受けるよう配列される、請求項1から6のいずれかに記載の光結合器。
【請求項8】
有機発光素子(600)が、無機光検出器(104、400、515)に対向する側に表面を有するパッシベーション層(195)をさらに含み、かつ反射器(610)がこの表面上に配設される、請求項7に記載の光結合器。
【請求項9】
ケーシング(920)をさらに含み、反射器(610)が、ケーシングの内側に付与される、請求項7に記載の光結合器。
【請求項10】
有機発光素子(720)が、2つの不透明の電極(190、192)および有機中間層(180)を有し、不透明電極(190、192)が、有機中間層(180)により分離され、かつ有機中間層(180)が、光学出力(750)を形成し、それにより有機中間層(180)で生成される光信号(108)が、有機中間層(180)を光学出力(750)で出て、かつ光学出力(750)が、無機光検出器(400)の検出器領域(106)と光学的に結合される、請求項1から9のいずれかに記載の光結合器。
【請求項11】
有機発光素子(100、600、720)と検出器領域(106)との間に配列される1以上の層(150)および/または(160)を備える一連の誘電体透明層をさらに含み、1以上の層(150)および/または(160)において、有機発光素子(100、600、720)および/または無機光検出器(104、400、515)のための電子活性化ユニットおよび/または読出し回路の少なくとも一部が配置される、請求項1から10のいずれかに記載の光結合器。
【請求項12】
請求項5において、偏光層(510)が、埋設酸化物層を有しかつ偏光層(510)が、光信号(108)のための光ガイドとして設計され、それにより光信号(108)が、一連の誘電体透明層(150、160)を通過した後、偏光層(510)を通って無機光検出器(515)の検出器領域(106)へ伝送される、請求項11に記載の光結合器。
【請求項13】
可能な外来光の影響を抑制するために、光信号(108)が変調を有するよう、有機発光素子(100、600、720)を制御する電子活性化ユニットをさらに含む請求項1から12のいずれかに記載の光結合器。
【請求項14】
無機光検出器の構成要素および/または有機発光素子を動作させるための構成要素が、CMOS、BiCMOSまたはバイポーラ技術において実現される、請求項1から13のいずれかに記載の光結合器。
【請求項15】
有機発光素子(100、600、720)のための電子活性化ユニットおよび無機光検出器(104、400、515)が、異なる基板領域に配設される、請求項1から14のいずれかに記載の光結合器。
【請求項16】
異なる基板領域がトレンチによって相互に分離される、請求項15に記載の光結合器。
【請求項17】
異なる基板領域が、SOI基板の相互に分離された領域である、請求項15に記載の光結合器。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公開番号】特開2008−91889(P2008−91889A)
【公開日】平成20年4月17日(2008.4.17)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2007−223397(P2007−223397)
【出願日】平成19年8月30日(2007.8.30)
【出願人】(597159765)フラウンホーファーゲゼルシャフト ツール フォルデルング デル アンゲヴァンテン フォルシユング エー.フアー. (68)
【Fターム(参考)】