説明

有機発光素子及びその製造方法

【課題】有機発光素子及びその製造方法を提供する。
【解決手段】基板、基板上に形成された第1電極、基板上に形成され、Agを含む第2電極、第1電極と第2電極との間に形成された発光層、発光層と第2電極との間に形成され、アルカリ金属含有化合物と第1金属との混合物を含む電子注入層、及び第2電極上に形成されたキャッピング層を備える有機発光素子である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機発光素子及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
アノード、カソード及びアノードとカソードとの間に介在された有機層を備える有機発光素子において、Mg−Agの混合物で構成されたカソードは、現在広く使われており、特に前面発光有機発光装置で最も多く使われている。
【0003】
Mgは、低い仕事関数特性と、電子注入層(electron injection layer:EIL)物質上に形成される薄膜特性とに有利であって、電子の注入及び素子の安定性に有利であり、Agの場合には、反射特性に優れて、反射型アノード膜と共にマイクロキャビティーを形成して、素子の効率向上に寄与する。
【0004】
しかし、Mg−Agで構成されたカソードの場合、抵抗が非常に高い特徴があるので、パネル全面で均一な画質を具現するためには、補償回路をさらに入れなければならない。また、屈折率の高い有機物あるいは酸化物で構成された膜(capping layer:CPL)をMg−Agで構成されたカソード上に蒸着しても、有機発光素子の内部で発光された光の透過率はあまり良くない。さらに、Mg−Ag薄膜カソードは、単一の金属薄膜カソードに比べて光の吸収量が大きいので、有機発光素子の効率低下の原因となる。
【0005】
これを解決するために、これまで色々な組成比のMg−Ag薄膜カソードが提案された。しかし、Agの比率が高くなるほど、薄膜カソードで光の吸収が減り、反射に有利であり、抵抗特性が改善されるが、電子の注入には不利な構造となって、駆動電圧が上昇し、有機発光素子の効率が低下する。逆にMgの構成が高くなれば、Mgによる光の吸収量が多くなって、有機発光素子の効率低下が発生し、抵抗が増加する。
【0006】
従来、Mg−Ag薄膜カソードの抵抗特性と透過度特性とを改善するために、Agでのみ構成された薄膜カソードを有する前面有機発光素子が提案されたが、外部発光効率を向上させるために存在するキャッピング領域は、酸化物に限定され、電子注入層物質は、LIF/Al,Mg,Ag,Yb,Rb,Cs,Ba,Ca−Al,Mg−Al,Li/Al,LiO/Alなどの物質及びその混合物であった。かかる有機発光素子は、酸化物の特性上、高い温度で蒸着あるいはスパッタリング工程が必要であって、Ag薄膜カソードの損傷が発生し、電子注入層として使用可能な物質に限界があった。
【0007】
したがって、適切な抵抗レベルにおいて光学的特性が良好であり、かつ電子の注入を容易にするような有機発光素子の構造が求められている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、抵抗特性及び光学的特性を改善して、効率が向上した有機発光素子を提供するところにある。
【0009】
本発明の他の目的は、前記有機発光素子の製造方法を提供するところにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
実施形態の一側面によって、基板、前記基板上に形成された第1電極、前記基板上に形成され、Agを含む第2電極、前記第1電極と前記第2電極との間に形成された発光層、前記発光層と前記第2電極との間に形成され、アルカリ金属含有化合物と第1金属との混合物を含む電子注入層、及び前記第2電極上に形成されたキャッピング層を備える有機発光素子が提供される。
【0011】
前記アルカリ金属含有化合物は、LiF,LiQ,CsF,NaF,NaQ及びLiOからなる群から選択される一つ以上を含む。
【0012】
前記第1金属は、Yb,Tb,Ho,Sm,Eu,Pr,Ce,Al及びMgからなる群から選択される一つ以上を含む。
【0013】
前記アルカリ金属含有化合物と前記第1金属との重量比は、10:90ないし90:10でありうる。
【0014】
前記アルカリ金属含有化合物はLiQであり、前記第1金属はYbであり、前記LiQとYbとの重量比は1:1でありうる。
【0015】
前記電子注入層の厚さは、0.1ないし30nmでありうる。
【0016】
前記第2電極は、Al,Pt,Yb,Nd及びMgからなる群から選択される一つ以上の第2金属をさらに含み、前記第2金属の含量は、前記Ag 100重量部を基準として0.01ないし20重量部でありうる。
【0017】
前記第2電極の厚さは、1ないし30nmでありうる。
【0018】
前記キャッピング層は、有機物、無機物またはそれらの混合物を含む。
【0019】
前記キャッピング層の屈折率は、1.2ないし5.0でありうる。
【0020】
前記キャッピング層が無機物であり、前記無機物は、ITO,IZO,SiO,SiNx,Y,WO,MoO及びAlからなる群から選択される一つ以上を含む。
【0021】
前記キャッピング層が有機物であり、前記有機物は、トリアミン誘導体、アリーレンジアミン誘導体、Alq3及びCBPからなる群から選択される一つ以上を含む。
【0022】
前記キャッピング層の厚さは、1ないし200nmでありうる。
【0023】
前記有機発光素子は、前記第1電極と前記発光層との間に、正孔注入層、正孔輸送層または正孔注入輸送層をさらに備える。
【0024】
実施形態の他の側面によって、基板、前記基板上に形成された第1電極、前記基板上に形成され、Agを含む第2電極、前記第1電極と前記第2電極との間に形成された発光層、前記発光層と前記第2電極との間に形成され、アルカリ金属含有化合物と第1金属との混合物を含む電子注入層、及び前記第2電極の前記発光層に向かう面の反対面上に形成されたキャッピング層を備える背面発光型の有機発光素子が提供される。
【0025】
さらに実施形態の他の側面によって、基板を提供するステップ、前記基板上に第1電極を形成するステップ、前記第1電極上に正孔注入輸送層を形成するステップ、前記正孔注入輸送層上に発光層を形成するステップ、前記発光層上にアルカリ金属含有化合物と第1金属との混合物を含む電子注入層を形成するステップ、前記電子注入層上にAgを含む第2電極を形成するステップ、及び前記第2電極上にキャッピング層を形成するステップを含む有機発光素子の製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、有機発光素子の第2電極が安定しており、電子注入特性が改善されて光透過度が上昇する。したがって、有機発光素子の駆動電圧及び効率が改善される効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】一実施形態による有機発光素子の構造を示す断面図である。
【図2】一実施形態による有機発光素子の構造の一部分として、電子注入層、第2電極及びキャッピング層を示す断面図である。
【図3】一実施形態による有機発光素子の構造を示す断面図である。
【図4】実施例1及び比較例1によって製造された有機発光素子の青色波長帯の電圧対電流密度のグラフである。
【図5】実施例1及び比較例1によって製造された有機発光素子の青色波長帯の輝度変化による発光効率のグラフである。
【図6】実施例1及び比較例1によって製造された有機発光素子の緑色波長帯の電圧対電流密度のグラフである。
【図7】実施例1及び比較例1によって製造された有機発光素子の緑色波長帯の輝度変化による発光効率のグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、添付された図面を参照して、本発明の構成及び作用について当業者が容易に実施できるように詳細に説明する。しかし、本発明は、色々な相異なる形態で具現され、ここで説明する実施形態に限定されない。
【0029】
図面において、複数の層及び領域を明確に表現するために、厚さを拡大して表した。明細書の全体を通じて類似した部分に対しては、同じ図面符号を付与した。層、膜、領域、板などの部分が他の部分“上に”あるとする時、これは、他の部分の真上にある場合だけでなく、その中間にさらに他の部分がある場合も含む。
【0030】
一実施形態による有機発光素子は、基板、前記基板上に形成された第1電極、前記基板上に形成され、Agを含む第2電極、前記第1電極と前記第2電極との間に形成された発光層、前記発光層と前記第2電極との間に形成され、アルカリ金属含有化合物と第1金属との混合物を含む電子注入層、及び前記第2電極上に形成されたキャッピング層を備える。
【0031】
図1は、一実施形態による有機発光素子100を示す断面図である。
【0032】
図1を参照すれば、有機発光素子100は、基板10及び前記基板10上に形成された第1電極20を備える。
【0033】
前記基板10は、通常的な有機発光素子で使われる基板でありうる。前記基板10は、機械的強度、熱的安定性、透明性、表面平滑性、取扱容易性及び防水性に優れた物質で形成され、例えば、ガラス基板、金属薄膜またはプラスチック基板からなる。図1には示していないが、必要に応じて、前記基板10と前記第1電極20との間には、平坦化膜または絶縁膜などが形成される。
【0034】
前記第1電極20は、アノードまたはカソードでありうる。前記第1電極は、赤色(R)、緑色(G)、青色(B)の副画素別にパターニングされた形態でありうる。前記第1電極は、伝導性に優れた物質で形成され、公知の第1電極用物質を含む。第1電極用物質は、例えば、Li,Mg,Al,Ag,Al−Li,Ca,Mg−In,Mg−Ag,Ca−Al,酸化インジウムスズ(ITO),酸化インジウム亜鉛(IZO),酸化亜鉛(ZnO)またはAl−ITOなどであるが、これらに限定されるものではない。前記第1電極は、透明電極、半透明電極または反射電極であり、相異なる二つ以上の物質を利用して2層以上の構造を有するなど多様な変形が可能である。
【0035】
有機発光素子100は、前記基板10上に形成された第2電極60を備える。
【0036】
前記第2電極60は、導電性に優れたAgを含む。Agは、低い仕事関数を有し、反射度の高い特徴を有する。前記第2電極60は、Agを含む透明電極または反射電極など多様な変形例が可能である。
【0037】
前記第2電極60は、Ag 100重量部に対してAl,Pt,Yb,Nd及びMgからなる群から選択される一つ以上の第2金属を20重量部の範囲内でさらに含む。Ag及び前記第2金属を含む混合物で形成されることで、第2電極60の透明度などの薄膜特性が向上する。前記第2金属の含量が前記範囲を満足する場合に、光吸収及び抵抗が適切で駆動電圧が上昇しない。
【0038】
前記第2電極の厚さは、1ないし30nmでありうる。第2電極の厚さが前記範囲を満足する場合に、光学的性質が良好であって、透過及び反射度の調節が容易であり、光吸収が少なく、電気伝導性に優れる。
【0039】
前記第1電極20及び第2電極60は、それぞれアノード及びカソードとしての役割を行え、その逆の場合も可能である。
【0040】
有機発光素子100は、第1電極20と第2電極60との間に形成された有機層を備え、前記有機層は、発光層30及び電子注入層50を備える。例えば、前記有機層は、正孔注入層、正孔輸送層、電子抑制層、発光層30、正孔抑制層、電子輸送層及び電子注入層50などを備える。正孔注入層及び正孔輸送層の代わりに、両層の機能を同時に有する正孔注入輸送層25が使われ、電子抑制層、正孔抑制層及び電子輸送層のうちいずれか一つ以上は省略しうる。
【0041】
有機発光素子100は、第1電極20と第2電極60との間に形成された発光層30を備える。
【0042】
前記発光層30は、公知の多様な発光物質を含み、前記発光物質は、例えば、オキサジアゾールダイマー染料(Bis−DAPOXP)、スピロ化合物(Spiro−DPVBi,Spiro−6P)、トリアリールアミン化合物、ビス(スチリル)アミン(DPVBi,DSA)、4,4′−ビス(9−エチル−3−カルバゾビニレン)−1,1′−ビフェニル(BCzVBi)、ぺリレン、2,5,8,11−テトラ−tert−ブチルぺリレン(TPBe)、9H−カルバゾール−3,3′−(1,4−フェニレン−ジ−2,1−エテン−ジイル)ビス[9−エチル−(9C)](BCzVB)、4,4−ビス[4−(ジ−p−トリルアミノ)スチリル]ビフェニル(DPAVBi)、4−(ジ−p−トリルアミノ)−4′−[(ジ−p−トリルアミノ)スチリル]スチルベン(DPAVB)、4,4′−ビス[4−(ジフェニルアミノ)スチリル]ビフェニル(BDAVBi)、ビス(3,5−ジフルオロ−2−(2−ピリジル)フェニル−(2−カルボキシピリジル)イリジウムIII)(FIrPic)など(以上、青色);3−(2−ベンチアゾリル)−7−(ジエチルアミノ)クマリン(Coumarin 6)、2,3,6,7−テトラヒドロ−1,1,7,7,−テトラメチル−1H,5H,11H−10−(2−ベンゾチアゾリル)キノリジノ−[9,9a,1gh]クマリン(C545T)、N,N′−ジメチル−キナクリドン(DMQA)、トリス(2−フェニルピリジン)イリジウム(III)(Ir(ppy))など(以上、緑色);テトラフェニルナフタセン(Rubrene)、トリス(1−フェニルイソキノリン)イリジウム(III)(Ir(piq))、ビス(2−ベンゾ[b]チオフェン−2−イル−ピリジン)(アセチルアセトネート)イリジウム(III)(Ir(btp)(acac))、トリス(ジベンゾイルメタン)フェナントロリンユーロピウム(III)(Eu(dbm)(phen))、トリス[4,4´−ジ−tert−ブチル−(2,2´)−ビピリジン]ルテニウム(III)錯体(Ru(dtb−bpy)*2(PF))、DCM1、DCM2、ユーロピウム(テノイルトリフルオロアセトン)3(Eu(TTA)3)、ブチル−6−(1,1,7,7−テトラメチルジュロリジル−9−エニル)−4H−ピラン(CJTB)など(以上
、赤色)であるが、これらに限定されるものではない。また、前記発光物質は、高分子発光物質であり、例えば、フェニレン系、フェニレンビニレン系、チオフェン系、フルオレン系またはスピロフルオレン系高分子のような高分子と窒素とを含む芳香族化合物などであるが、これらに限定されるものではない。
【0043】
場合によって、前記発光層30は、発光ホスト及び発光ドーパントを含む。発光ドーパントは、前述した発光物質で形成され、発光ホストは、蛍光発光ホスト物質または燐光発光ホスト物質で形成される。蛍光発光ホスト物質は、トリス(8−ヒドロキシ−キノリナト)アルミニウム(Alq3)、9,10−ジ(ナフト−2−イル)アントラセン(AND)、3−tert−ブチル−9,10−ジ(ナフト−2−イル)アントラセン(TBADN)、4,4´−ビス(2,2−ジフェニル−エテン−1−イル)−4,4´−ジメチルフェニル(DPVBi)、4,4´−ビス(2,2−ジフェニル−エテン−1−イル)−4,4´−ジメチルフェニル(p−DMDPVBi)、tert(9,9−ジアリールフルオレン)s(TDAF)、2−(9,9´−スピロビフルオレン−2−イル)−9,9´−スピロビフルオレン(BSDF)、2,7−ビス(9,9´−スピロビフルオレン−2−イル)−9,9´−スピロビフルオレン(TSDF)、ビス(9,9−ジアリールフルオレン)s(BDAF)、4,4´−ビス(2,2−ジフェニル−エテン−1−イル)−4,4´−ジ−(tert−ブチル)フェニル(p−TDPVBi)などであり、燐光発光ホスト物質は、1,3−ビス(カルバゾール−9−イル)ベンゼン(mCP)、1,3,5−トリス(カルバゾール−9−イル)ベンゼン(tCP)、4,4´,4"−トリス(カルバゾール−9−イル)トリフェニルアミン(TcTa)、4,4´−ビス(カルバゾール−9−イル)ビフェニル(CBP)、4,4´−ビス(9−カルバゾリル)−2,2´−ジメチル−ビフェニル(CBDP)、4,4´−ビス(カルバゾール−9−イル)−9,9−ジメチル−フルオレン(DMFL−CBP)、4,4´−ビス(カルバゾール−9−イル)−9,9−ビス(9−フェニル−9H−カルバゾール)フルオレン(FL−4CBP)、4,4´−ビス(カルバゾール−9−イル)−9,9−ジ−トリル−フルオレン(DPFL−CBP)、9,9−ビス(9−フェニル−9H−カルバゾール)フルオレン(FL−2CBP)などである。
【0044】
有機発光素子100は、発光層30と第2電極60との間に電子注入層50を備える。
【0045】
前記電子注入層50は、アルカリ金属含有化合物と第1金属との混合物を含む。前記アルカリ金属含有化合物は、LiF,LiQ,CsF,NaF,NaQ及びLiOからなる群から選択される一つ以上を含み、前記第1金属は、Yb,Tb,Ho,Sm,Eu,Pr,Ce,Al及びMgからなる群から選択される一つ以上を含む。かかるアルカリ金属含有化合物と第1金属との混合物は、アルカリ金属含有化合物の重量比をxとし、第1金属の重量比をyとする場合、10≦x≦90、10≦y≦90及びx+y=100の関係が成立する。アルカリ金属含有化合物と第1金属との重量比が前記範囲を満足する場合、電子の注入が円滑になり、Agを含む第2電極の薄膜特性に優れて、Ag薄膜に光吸収が少なくなるという利益がある。
【0046】
例えば、前記電子注入層50は、LiQ及びYbの混合物を含み、LiQとYbとの重量比は1:1でありうる。
【0047】
電子注入層50の厚さは、0.1ないし30nmでありうる。電子注入層50の厚さが前記範囲を満足する場合、実質的な駆動電圧の上昇なしに良好な電子注入特性が得られる。
【0048】
図示していないが、有機発光素子100は、前記発光層30と前記電子注入層50との間に電子輸送層をさらに備える。
【0049】
電子輸送層は、注入された電子の輸送能力が良好な物質で形成され、公知の電子輸送物質を含む。電子輸送物質は、例えば、トリス−(8−ヒドロキシキノリン)アルミニウム(Alq3)、ビス(8−ヒドロキシ−2−メチルキノリン)−(4−フェニルフェノキシ)アルミニウム(Balq)、3−(4−ビフェニル)−4−フェニル−5−(4−tert−ブチルフェニル)−1,2,4−トリアゾール(TAZ)、ビス(10−ヒドロキシベンゾ[h]キノリナト)ベリリウム(Bebq2)またはその誘導体などを使用できる。また、前記電子輸送物質に金属酸化物を共に含み、前記金属酸化物は、アルカリ金属、アルカリ土金属、遷移金属などの酸化物でありうる。
【0050】
有機発光素子100は、発光層30と第1電極20との間に、正孔注入層及び正孔輸送層のうちいずれか一つ以上を備えるか、または前記正孔注入層及び前記正孔輸送層の機能を同時に有する正孔注入輸送層25をさらに備える。
【0051】
この場合、前記第1電極20と接触して界面を形成する有機層は、正孔注入層であるか、または正孔注入層が省略された構成では、正孔輸送層であり、場合によって、正孔注入層と正孔輸送層との機能を同時に有する正孔注入輸送層25でありうる。
【0052】
前記正孔注入層は、公知の正孔注入物質を含み、正孔注入物質は、例えば、銅フタロシアニン(CuPc)などのフタロシアニン化合物;スターバスト型アミン誘導体類である4,4′,4″−トリス(N−カルバゾリル)トリフェニルアミン(TCTA)、4,4′,4″−トリス(3−メチルフェニルフェニルアミノ)トリフェニルアミン(m−MTDATA);溶解性のある高分子であるポリアニリン/ドデシルベンゼンスルホン酸(Pani/DBSA)、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)/ポリ(4−スチレンスルホネート(PEDOT/PSS)、ポリアニリン/カンファースルホン酸(Pani/CSA)、ポリアニリン/ポリ(4−スチレンスルホネート(PANI/PSS)などであるが、これらに限定されるものではない。
【化1】

【0053】
前記正孔輸送層は、公知の正孔輸送物質を含み、代表的な正孔輸送物質は、カルバゾール誘導体や、芳香族縮合環を有するアミン誘導体などがある。前記正孔輸送物質は、例えば、N−フェニルカルバゾール、ポリビニルカルバゾール、1,3,5−トリカルバゾリルベンゼン、4,4´−ビスカルバゾリルビフェニル、m−ビスカルバゾリルフェニル、4,4´−ビスカルバゾリル−2,2´−ジメチルビフェニル、4,4´,4"−トリ(N−カルバゾリル)トリフェニルアミン、1,3,5−トリ(2−カルバゾリルフェニル)ベンゼン、1,3,5−トリス(2−カルバゾリル−5−メトキシフェニル)ベンゼン、ビス(4−カルバゾリルフェニル)シラン、N,N′−ジフェニル−N,N′−ビス(1−ナフチル)−(1,1′−ビフェニル)−4,4′−ジアミン(NPB)、N,N′−ビス(3−メチルフェニル)−N,N′−ジフェニル−[1,1−ビフェニル]−4,4′−ジアミン(TPD)、ポリ(9,9−ジオクチルフルオレン−co−N−(4−ブチルフェニル)ジフェニルアミン(TFB)、またはポリ(9,9−ジオクチルフルオレン−co−ビス−(4−ブチルフェニル−ビス−N,N−フェニル−1,4−フェニレンジアミン(PFB)などであるが、これらに限定されるものではない。
【化2】

【0054】
前記正孔注入輸送層25は、前述した正孔注入用材料と正孔輸送用材料との混合物を含むものであるが、これに限定されるものではない。
【0055】
有機発光素子100は、第2電極60上に形成されたキャッピング層70を備える。
【0056】
前記キャッピング層70は、有機物、無機物またはそれらの混合物を含み、通常的に第2電極60の上部に形成されて視野角特性を改善し、外部発光効率の向上をもたらす。また、キャッピング層70は、外部の水分や酸素から下部の電極及び有機層の劣化を防止する役割を行える。
【0057】
前記有機物の例としては、トリアミン誘導体、アリーレンジアミン誘導体、Alq3及びCBPからなる群から選択される一つ以上が挙げられる。
【0058】
前記無機物の例としては、ITO,IZO,SiO,SiNx,Y,WO,MoO及びAlからなる群から選択される一つ以上が挙げられる。
【0059】
前記キャッピング層70は、有機物、無機物及びそれらの混合物のうちから選択された一つの物質からなる単層構造、または屈折率が異なる物質の多層構造でありうる。
【0060】
前記キャッピング層70の屈折率は、空気とは異なる高い値を有し、1.2ないし5.0でありうる。屈折率が前記範囲を満足する場合、第2電極から発生する全反射を効率的に減少させて、外部の光効率が高くなるという利益がある。また、観察者の視野角による色座標変化及び発光光の変化程度を減らすことができる。キャッピング層70の屈折率は、例えば、1.2ないし3.0でありうる。
【0061】
前記キャッピング層70を通過する光は、キャッピング層70と外部空気との境界面で反射されて、再び第2電極60の表面に向かって再反射されて、再びキャッピング層70を経て外部に出つつ経路の差による干渉現象を起こす。これによって、全反射されて消失される光の量が減少し、透過される光の量は増加して、発光効率が向上する。赤色、緑色及び青色の画素別にそれぞれ発光する光の波長領域帯が異なるので、これに対応するキャッピング層70の領域は、多様な厚さを有し、その範囲は、1ないし200nmでありうる。キャッピング層70の厚さが1nm以上である場合に、外部に光を発し、その厚さが200nm以下である場合には、キャッピング層自体の吸収が過度に大きくなく、光効率が良好である。
【0062】
図2は、一実施形態による有機発光素子の構造の一部分として、電子注入層150、第2電極160及びキャッピング層170を拡大して示す断面図である。
【0063】
図2を参照すれば、最上部には、視野角特性及び外部発光効率の向上のための有機物、無機物またはそれらの混合物を含むキャッピング層170が形成されている。この時、キャッピング層170は、有機発光素子の内部の光を外部に発するために、光学屈折率が空気と異なる物質で形成される。また、透過特性及び視野角特性を最大化するために、その厚さは、1ないし200nmでありうる。図2では、同一物質の一層と表示されたが、屈折率が異なる複数の層を積層したものであってもよい。前記キャッピング層170は、熱蒸着またはコーティングなどの方式で形成が可能である。
【0064】
前記キャッピング層170の下部には、Agを含む第2電極160が形成されている。第2電極160は、光の透過を可能にしつつ、一部の光は反射させる。前記第2電極160は、Mg−Agのような通常的な電極に比べて光の吸収度が低く、透過度及び反射度は高い特徴を有する。
【0065】
第2電極160は、その透過度及び反射度を考慮して、1ないし30nmの厚さを有する。第2電極160は、優れた薄膜特性を得るために、Ag 100重量部に対してAl,Pt,Yb,Nd及びMgからなる群から選択される一つ以上の第2金属を20重量部の範囲内で含む。第2電極160は、熱蒸着、スパッタリングなど色々な方法で形成できる。
【0066】
第2電極160の下部に、電子の注入を円滑にする電子注入層150が形成されている。前記電子注入層150は、LiF,LiQ,CsF,NaF,NaQ及びLiOからなる群から選択される一つ以上を含むアルカリ金属含有化合物と、Yb,Tb,Ho,Sm,Eu,Pr,Ce,Al及びMgからなる群から選択される一つ以上を含む第1金属との混合物で形成される。前記アルカリ金属含有化合物と前記第1金属との重量比は、10:90ないし90:10でありうる。電子注入層150の厚さは、0.1ないし30nmであり、前記アルカリ金属含有化合物と前記第1金属とを共蒸着するか、または前記アルカリ金属含有化合物と前記第1金属との混合物を熱蒸着、真空蒸着、化学気相蒸着(CVD)、スパッタリング、スピンコーティングまたはスピンキャスティングするなど色々な方法で形成できる。
【0067】
図3は、一実施形態による有機発光素子の構造を示す断面図である。
【0068】
図3を参照すれば、有機発光素子300は、基板210、前記基板210上に形成された第1電極220、前記基板210上に形成され、Agを含む第2電極260、前記第1電極220と前記第2電極260との間に形成され、R、G及びBの画素230a,230b,230cを含む発光層230、前記発光層230と前記第2電極260との間に形成され、アルカリ金属含有化合物と第1金属との混合物を含む電子注入層250、前記電子注入層250と前記発光層230との間に形成される電子輸送層240、前記発光層230と前記第1電極220との間に形成される正孔注入輸送層225、及び前記第2電極260上に形成されるキャッピング層270を備える。
【0069】
基板210は、有機発光素子300の駆動のための薄膜トランジスタ、電気回路及びラインから構成されている。外部から入る信号は、基板210を通じて特定の電流値に変換されて、第1電極220に伝達される。
【0070】
第1電極220は、前面発光型の有機発光素子の場合に金属反射膜材料で構成され、第2電極260と共に有機発光素子に電界を加える役割を行う。ここで、第1電極220は、アノードの役割を行う。第1電極220は、反射特性に優れて、発光層230から第1電極220に来る光を反射させて前面に送り、反射率の高い第2電極260と共にマイクロキャビティー効果を提供する。
【0071】
前記第1電極220の上部には、正孔注入輸送層225が備えられている。正孔注入輸送層225は、電荷の注入及び輸送の役割を行う。
【0072】
前記正孔注入輸送層225の上部には、発光層230が位置している。前記発光層230は、それぞれのサブピクセルごとにR、G及びBから構成されている。
【0073】
前記発光層230の上部には、電子輸送層240が位置する。電子輸送層240は、電子輸送の役割を行う。
【0074】
前記電子輸送層240の上部には、電子注入層250が位置する。電子注入層250は、前述したように、アルカリ金属含有化合物と第1金属との混合物を含む。
【0075】
前記電子注入層250の上部には、第2電極260が位置する。第2電極260は、Agを含む。ここで、第2電極260は、カソードの役割を行う。
【0076】
前記第2電極260の上部には、キャッピング層270が位置する。キャッピング層270は、有機物、無機物またはそれらの混合物を含む。
【0077】
ここで、有機発光素子が前面発光型の有機発光素子である場合を中心に説明したが、本発明は、これに限定されず、基板、前記基板上に形成された第1電極、前記基板上に形成され、Agを含む第2電極、前記第1電極と前記第2電極との間に形成された発光層、前記発光層と前記第2電極との間に形成され、アルカリ金属含有化合物と第1金属との混合物を含む電子注入層、及びキャッピング層を備えるあらゆる構造の有機発光素子に対して適用可能である。例えば、背面発光型の有機発光素子である場合には、アルカリ金属含有化合物と第1金属との混合物を含む電子注入層と、Agを含む第2電極とをより厚く形成し、キャッピング層を第1電極の下部に配置して適用可能である。
【0078】
前記有機発光素子は、キャッピング層が透明な材質で形成され、発光層の出力光がキャッピング層側に出光される前面発光型の有機発光素子でありうる。例えば、基板、前記基板上に形成され、Ag,Mg,Al,Pt,Pd,Au,Ni,Nd,Ir,Cr,Li及びCaからなる群から選択される一つ以上の金属、及びITO,IZO,ZnO,SnO及びInからなる群から選択される一つ以上の導電物質を含む反射型の第1電極;前記基板上に形成され、Agを含む透明型の第2電極;前記第1電極と前記第2電極との間に形成された発光層;前記発光層と前記第2電極との間に形成され、アルカリ金属含有化合物と第1金属との混合物を含む電子注入層;前記発光層と前記第1電極との間に形成された正孔注入輸送層;前記第2電極上に形成されたキャッピング層;を備える構造でありうる。前面発光型の有機発光素子の場合に、前記第1電極の厚さは、10ないし300nmであり、前記第2電極の厚さは、1ないし30nmであり、前記発光層の出力光が前記キャッピング層側に出光される構造でありうる。
【0079】
例えば、有機発光素子は、基板、第1電極、正孔注入輸送層(省略可能)、発光層、LiQとYbとの重量比が1:1である混合物を含む電子注入層、Agを含む第2電極及びトリアミン誘導体を含むキャッピング層からなる構造でありうる。または、有機発光素子は、基板、第1電極、正孔注入輸送層(省略可能)、発光層、LiQとYbとの重量比が1:1である混合物を含む電子注入層、AgとYbとの重量比が85:15である混合物を含む第2電極及びトリアミン誘導体を含むキャッピング層からなる構造でありうる。または、有機発光素子は、基板、第1電極、正孔注入輸送層(省略可能)、発光層、LiFとYbとの重量比が1:1である混合物を含む電子注入層、Agを含む第2電極及びトリアミン誘導体を含むキャッピング層からなる構造でありうる。または、有機発光素子は、基板、第1電極、正孔注入輸送層(省略可能)、発光層、LiFとYbとの重量比が1:1である混合物を含む電子注入層、AgとYbとの重量比が85:15である混合物を含む第2電極及びトリアミン誘導体を含むキャッピング層からなる構造でありうる。
【0080】
また、有機発光素子は、基板が透明な材質で形成され、発光層の出力光が基板側に出光される背面発光型の有機発光素子でありうる。例えば、透明基板、前記透明基板上に形成され、ITO,IZO,ZnO,SnO及びInからなる群から選択される一つ以上の導電物質を含む透明型の第1電極;前記基板上に形成され、Agを含む反射型の第2電極;前記第1電極と前記第2電極との間に形成された発光層;前記発光層と前記第2電極との間に形成され、アルカリ金属含有化合物と第1金属との混合物を含む電子注入層;前記発光層と前記第1電極との間に形成された正孔注入輸送層;前記第2電極の前記発光層に向かう面の反対面上に形成されたキャッピング層;を備える構造でありうる。背面発光型の有機発光素子の場合に、前記第2電極の厚さは、1ないし200nmでありうる。
【0081】
以下、有機発光素子の一実施形態の製造方法を説明する。有機発光素子は、基板、第1電極、正孔注入層、正孔輸送層、発光層、電子輸送層、電子注入層、第2電極及びキャッピング層を順次に備える。ここで、正孔注入層及び正孔輸送層の代わりに正孔注入輸送層を形成でき、電子輸送層は省略してもよい。
【0082】
まず、基板の上部に第1電極を形成する。基板としては、通常的な有機発光素子で使われる基板を使用するが、透明性、表面平滑性、取扱容易性及び防水性などを考慮して、ガラス基板またはプラスチック基板などを多様に使用できる。前記第1電極は、透明電極または反射電極で備えられるなど多様な変形が可能である。
【0083】
次いで、前記第1電極の上部に、熱蒸着、真空蒸着、化学気相蒸着(CVD)、スパッタリング、スピンコーティングまたはスピンキャスティングのような公知の多様な方法を利用して、正孔注入層を形成できる。
【0084】
真空蒸着法により正孔注入層を形成する場合、その蒸着条件は、正孔注入層の材料として使用する化合物、目的とする正孔注入層の構造及び熱的特性によって異なるが、一般的に、蒸着温度100ないし500℃、真空度10−8ないし10−3torr、蒸着速度0.01ないし100Å/sec範囲で適切に選択できる。
【0085】
スピンコーティング法により正孔注入層を形成する場合、そのコーティング条件は、正孔注入層の材料として使用する化合物、目的とする正孔注入層の構造及び熱的特性によって異なるが、約2000ないし5000rpmのコーティング速度、コーティング後に溶媒除去のための熱処理温度は、約80ないし200℃の温度範囲で適切に選択できる。
【0086】
前記正孔注入層をなす物質は、公知の正孔注入物質のうちから選択され、特に制限されない。前記正孔注入層の厚さは、20ないし200nmでありうる。前記正孔注入層の厚さが20nm以上である場合、正孔注入特性が良好であり、前記正孔注入層の厚さが200nm以下である場合、駆動電圧が適切である。
【0087】
次いで、前記正孔注入層の上部に、熱蒸着、真空蒸着、化学気相蒸着(CVD)、スパッタリング、スピンコーティングまたはスピンキャスティングのような多様な方法を利用して、正孔輸送層を形成できる。真空蒸着法及びスピンコーティング法により正孔輸送層を形成する場合、その蒸着条件及びコーティング条件は、使用する化合物によって異なるが、一般的に正孔注入層の形成とほぼ同じ条件範囲のうちから選択される。
【0088】
前記正孔輸送層をなす物質は、公知の正孔輸送物質のうちから選択され、特に制限されない。前記正孔輸送層の厚さは、10ないし100nmでありうる。前記正孔輸送層の厚さが10nm以上である場合、正孔輸送特性が良好であり、前記正孔輸送層の厚さが100nm以下である場合、駆動電圧が適切である。
【0089】
前記正孔注入層及び正孔輸送層の代わりに、正孔注入物質及び正孔輸送物質を混合して正孔注入輸送層を形成できる。正孔注入輸送層の形成方法及び厚さは、使用する化合物によって異なるが、一般的に正孔注入層の形成とほぼ同じ条件範囲のうちから選択される。
【0090】
前記正孔輸送層の上部に、熱蒸着、真空蒸着、化学気相蒸着(CVD)、スパッタリング、スピンコーティングまたはスピンキャスティングのような多様な方法を利用して、発光層を形成できる。真空蒸着法及びスピンコーティング法により発光層を形成する場合、その蒸着条件及びコーティング条件は、使用する化合物によって異なるが、一般的に正孔注入層の形成とほぼ同じ条件範囲のうちから選択される。
【0091】
前記発光層は、公知の多様な発光物質を利用して形成できるが、公知のホスト及びドーパントを利用して形成してもよい。前記ドーパントの場合、公知の蛍光ドーパント及び公知の燐光ドーパントをいずれも使用できる。
【0092】
前記ドーパントの含量は、発光層形成材料100重量部(すなわち、ホストとドーパントとの総重量を100重量部とする)に対して、0.1ないし20重量部でありうる。ドーパントの含量が0.1重量部以上である場合、ドーパントの付加による効果が表れ、その含量が20重量部以下である場合、燐光や蛍光いずれも濃度クエンチングのような濃度消光が発生しなくなる。前記発光層の厚さは、約10ないし100nmでありうる。前記発光層の厚さが10nm以上である場合、発光特性が発現され、その厚さが100nm以下である場合、駆動電圧が上昇しなくなる。
【0093】
発光層が燐光ドーパントを含む場合、三重項励起子または正孔が電子輸送層に拡散する現象を防止するために、正孔阻止層を発光層の上部に形成できる。この時、使用可能な正孔阻止層物質は、特に制限されず、公知の正孔阻止層物質のうち任意に選択して利用できる。例えば、オキサジアゾール誘導体やトリアゾール誘導体、フェナントロリン誘導体、BalqまたはBCPなどの公知の材料を利用できる。
【0094】
前記発光層の上部に、熱蒸着、真空蒸着、化学気相蒸着(CVD)、スパッタリング、スピンコーティングまたはスピンキャスティングのような多様な方法を利用して、電子輸送層を形成できる。真空蒸着法及びスピンコーティング法により電子輸送層を形成する場合、その蒸着条件及びコーティング条件は、使用する化合物によって異なるが、一般的に正孔注入層の形成とほぼ同じ条件範囲のうちから選択される。
【0095】
前記電子輸送層の厚さは、10ないし40nmでありうる。前記電子輸送層の厚さが10nm以上である場合には、電子輸送速度が適切であって電荷の均衡がなされ、40nm以下である場合には、駆動電圧が上昇しなくなる。
【0096】
前記電子輸送層の上部に、熱蒸着、真空蒸着、化学気相蒸着(CVD)、スパッタリング、スピンコーティングまたはスピンキャスティングのような多様な方法を利用して、電子注入層を形成できる。真空蒸着法及びスピンコーティング法により電子注入層を形成する場合、その蒸着条件及びコーティング条件は、使用する化合物によって異なるが、一般的に正孔注入層の形成とほぼ同じ条件範囲のうちから選択される。
【0097】
前記電子注入層の形成材料としては、前述したアルカリ金属含有化合物と第1金属との混合物を使用できる。前記アルカリ金属含有化合物は、LiF,LiQ,CsF,NaF,NaQ及びLiOからなる群から選択される一つ以上であり、前記金属は、Yb,Tb,Ho,Sm,Eu,Pr,Ce,Al及びMgからなる群から選択される一つ以上である。電子注入層の形成材料は、例えば、LiQとYbとの重量比が1:1である混合物でありうる。
【0098】
前記電子注入層の厚さは、0.1ないし30nmでありうる。前記電子注入層の厚さが0.1nm以上である場合には、電子の注入が効果的に行われ、その厚さが30nm以下である場合には、駆動電圧が上昇しなくなる。
【0099】
次いで、前記電子注入層の上部に、Agを含む第2電極用物質を蒸着して第2電極を形成することで、有機発光素子が完成する。
【0100】
前記第2電極用物質は、導電性に優れた第2金属をさらに含み、Ag 100重量部に対して、Al,Pt,Yb,Nd及びMgからなる群から選択される一つ以上の第2金属を20重量部まで含む。前面発光型の有機発光素子である場合に、前記第2電極の厚さは、1ないし30nmでありうる。
【0101】
前記第1電極及び第2電極は、それぞれアノード及びカソードとしての役割を行え、その逆も可能である。
【0102】
以上、有機発光素子の一実施形態及びその製造方法を説明したが、前記有機発光素子の構造が図1ないし図3に示したような構造に限定されるものではないことはいうまでもない。
【0103】
本発明による有機発光素子は、多様な形態の平板表示装置、例えば、受動マトリックス有機発光表示装置及び能動マトリックス有機発光表示装置に備えられる。特に、能動マトリックス有機発光表示装置に備えられる場合、前記第1電極は、有機発光表示装置に備えられた薄膜トランジスタのソース電極またはドレイン電極と電気的に接続される。
【0104】
以下、本発明を下記実施例を挙げて説明するが、本発明が下記の実施例にのみ限定されるものではない。
【0105】
実施例1
基板上にAgを使用して2mm×2mmの面積を有する第1電極を形成し、その上にITO層を70Åの厚さに蒸着した。それを超音波洗浄及び前処理(UV−O3処理、熱処理)した。
【0106】
前記前処理された第1電極上に、IDE406(出光興産社製)を650Åの厚さに真空蒸着して、正孔注入層を形成した。前記正孔注入層の上部に、それぞれ赤色、緑色及び青色の発光層領域を形成するために、緑色発光層の下部には、HTM021(メルク社製)を600Åの厚さに、赤色発光層の下部には、HTM021(メルク社製)を700Åの厚さに真空蒸着して、補助層を形成した。前記正孔注入層及び補助層の上部に、IDE320(出光興産社製)を650Åの厚さに共通に真空蒸着して、赤色、緑色及び青色の発光層の下部に正孔輸送層を形成した。
【0107】
前記正孔輸送層の上部の青色発光層領域に、BH215(出光興産社製)にBD052(出光興産社製)を5重量%でドーピングした物質を200Åの厚さに真空蒸着して、青色発光層を形成し、前記正孔輸送層の上部の緑色発光層領域に、TMM004(メルク社製)にIr(PPy)3を7重量%でドーピングした物質を200Åの厚さに真空蒸着して、緑色発光層を形成し、前記正孔輸送層の上部の赤色発光層領域に、TMM004(メルク社製)にTER021(メルク社製)を15重量%でドーピングした物質を400Åの厚さに真空蒸着して、赤色発光層を形成した。前記発光層の上部にAlq3を300Åの厚さに真空蒸着して、電子輸送層を形成した。
【0108】
前記電子輸送層の上部に、イッテルビウム(Yb)とフッ素化リチウム(LiF)とを1:1の重量比で20Åの厚さに蒸着して、電子注入層を形成し、その上部にAgを200Åの厚さに真空蒸着して、第2電極を形成した。
【0109】
前記第2電極上にIDE406(屈折率n=1.8)を600Åの厚さに蒸着して、キャッピング層を形成した。
【0110】
実施例2
電子輸送層の上部に、Ybとリチウムキノレート(LiQ)とを1:1の重量比で20Åの厚さに蒸着して、電子注入層を形成し、その上部にAgとYbとを85:15の重量比で混合した金属を200Åの厚さに真空蒸着して、第2電極を形成した。他の条件は、前記実施例1と同一である。
【0111】
実施例3
電子注入層の上部に、AgとYbとを85:15の重量比で混合した金属を200Åの厚さに真空蒸着して、第2電極を形成し、その上部にIDE406(屈折率n=1.8)を600Åの厚さに蒸着して、キャッピング層を形成した。他の条件は、前記実施例1と同一である。
【0112】
比較例1
電子輸送層の上部に、LiQを10Åの厚さに蒸着して、電子注入層を形成し、その上部に、MgとAgとを10:1の重量比で混合した金属を120Åの厚さに真空蒸着して、第2電極を形成した。他の条件は、前記実施例1と同一である。
【0113】
比較例2
電子輸送層の上部に、LiQを10Åの厚さに蒸着して、電子注入層を形成した。他の条件は、前記実施例1と同一である。
【0114】
比較例3
電子注入層の上部に、MgとAgとを10:1の重量比で混合した金属を120Åの厚さに真空蒸着して、第2電極を形成した。他の条件は、前記実施例1と同一である。
【0115】
前記実施例1ないし3及び比較例1ないし3によって製造された有機発光素子に対して、電流密度50mA/cmで駆動電圧、輝度、発光効率及び色座標を測定して、下記表1に示した。
【表1】

【0116】
図4及び図5は、実施例1及び比較例1によって製造された有機発光素子(青色波長帯420〜480nm)の電気的光学的特性を表す。図4を見れば、実施例1の有機発光素子と比較例1の有機発光素子とは、電子の注入及び電圧による駆動特性が同等であるということが分かる。図5は、実施例1及び比較例1の有機発光素子の発光効率グラフであって、実施例1の有機発光素子が、比較例1の有機発光素子に比べて、発光効率が20%以上向上したということが分かる。また、前記表1を参照すれば、実施例1ないし3の場合は、比較例1ないし3の場合と比較して、駆動電圧は同一であり、かつ発光効率が向上したということが分かる。
【0117】
図6及び図7は、実施例1及び比較例1によって製造された有機発光素子(緑色波長帯500〜560nm)の電気的光学的特性を表す。図6は、実施例1及び比較例1によって製造された有機発光素子(緑色波長帯)の電圧による電流グラフである。実施例1の有機発光素子が、比較例1の有機発光素子に比べて、同じ電圧でさらに多い電流が流れるということが分かる。図7を参照すれば、比較例1の有機発光素子は、発光効率が30cd/Aのレベルであるが、実施例1の有機発光素子は、発光効率が50cd/A以上の高い値を表すということが分かる。すなわち、実施例1の発光素子は、比較例1の発光素子に比べて青色及び緑色波長帯でいずれも発光効率及び駆動電圧が改善されるということが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0118】
本発明は、有機発光素子関連の技術分野に適用可能である。
【符号の説明】
【0119】
10,210 基板
20,220 第1電極
25,225 正孔注入輸送層
30,230 発光層
240 電子輸送層
50,150,250 電子注入層
60,160,260 第2電極
70,170,270 キャッピング層
100,300 有機発光素子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
前記基板上に形成された第1電極と、
前記基板上に形成され、Agを含む第2電極と、
前記第1電極と前記第2電極との間に形成された発光層と、
前記発光層と前記第2電極との間に形成され、アルカリ金属含有化合物と第1金属との混合物を含む電子注入層と、
前記第2電極上に形成されたキャッピング層と、を備える有機発光素子。
【請求項2】
前記アルカリ金属含有化合物は、LiF,LiQ,CsF,NaF,NaQ及びLiOからなる群から選択される一つ以上を含むことを特徴とする請求項1に記載の有機発光素子。
【請求項3】
前記第1金属は、Yb,Tb,Ho,Sm,Eu,Pr,Ce,Al及びMgからなる群から選択される一つ以上を含むことを特徴とする請求項1に記載の有機発光素子。
【請求項4】
前記アルカリ金属含有化合物と前記第1金属との重量比は、10:90ないし90:10であることを特徴とする請求項1に記載の有機発光素子。
【請求項5】
前記アルカリ金属含有化合物がLiQであり、前記第1金属がYbであり、前記LiQとYbとの重量比は1:1であることを特徴とする請求項1に記載の有機発光素子。
【請求項6】
前記電子注入層の厚さは、0.1ないし30nmであることを特徴とする請求項1に記載の有機発光素子。
【請求項7】
前記第2電極は、Al,Pt,Yb,Nd及びMgからなる群から選択される一つ以上の第2金属をさらに含み、前記第2金属の含量は、前記Ag 100重量部を基準として0.01ないし20重量部であることを特徴とする請求項1に記載の有機発光素子。
【請求項8】
前記第2電極の厚さは、1ないし30nmであることを特徴とする請求項1に記載の有機発光素子。
【請求項9】
前記キャッピング層は、有機物、無機物またはそれらの混合物を含むことを特徴とする請求項1に記載の有機発光素子。
【請求項10】
前記キャッピング層の屈折率は、1.2ないし5.0であることを特徴とする請求項1に記載の有機発光素子。
【請求項11】
前記キャッピング層が無機物であり、前記無機物は、ITO,IZO,SiO,SiNx,Y,WO,MoO及びAlからなる群から選択される一つ以上を含むことを特徴とする請求項1に記載の有機発光素子。
【請求項12】
前記キャッピング層が有機物であり、前記有機物は、トリアミン誘導体、アリーレンジアミン誘導体、Alq3及びCBPからなる群から選択される一つ以上を含むことを特徴とする請求項1に記載の有機発光素子。
【請求項13】
前記キャッピング層の厚さは、1ないし200nmであることを特徴とする請求項1に記載の有機発光素子。
【請求項14】
前記第1電極と前記発光層との間に、正孔注入層、正孔輸送層または正孔注入輸送層をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載の有機発光素子。
【請求項15】
前記電子注入層は、LiQとYbとの重量比が1:1である混合物を含み、前記第2電極は、Agを含み、前記キャッピング層は、トリアミン誘導体を含むことを特徴とする請求項1に記載の有機発光素子。
【請求項16】
前記電子注入層は、LiQとYbとの重量比が1:1である混合物を含み、前記第2電極は、AgとYbとの重量比が85:15である混合物を含み、前記キャッピング層は、トリアミン誘導体を含むことを特徴とする請求項1に記載の有機発光素子。
【請求項17】
前記電子注入層は、LiFとYbとの重量比が1:1である混合物を含み、前記第2電極は、Agを含み、前記キャッピング層は、トリアミン誘導体を含むことを特徴とする請求項1に記載の有機発光素子。
【請求項18】
前記電子注入層は、LiFとYbとの重量比が1:1である混合物を含み、前記第2電極は、AgとYbとの重量比が85:15である混合物を含み、前記キャッピング層は、トリアミン誘導体を含むことを特徴とする請求項1に記載の有機発光素子。
【請求項19】
基板と、
前記基板上に形成された第1電極と、
前記基板上に形成され、Agを含む第2電極と、
前記第1電極と前記第2電極との間に形成された発光層と、
前記発光層と前記第2電極との間に形成され、アルカリ金属含有化合物と第1金属との混合物を含む電子注入層と、
前記第2電極の前記発光層に向かう面の反対面上に形成されたキャッピング層と、を備える背面発光型の有機発光素子。
【請求項20】
前記第2電極の厚さは、1ないし200nmであることを特徴とする請求項19に記載の背面発光型の有機発光素子。
【請求項21】
基板を提供するステップと、
前記基板上に第1電極を形成するステップと、
前記第1電極上に正孔注入輸送層を形成するステップと、
前記正孔注入輸送層上に発光層を形成するステップと、
前記発光層上にアルカリ金属含有化合物と第1金属との混合物を含む電子注入層を形成するステップと、
前記電子注入層上にAgを含む第2電極を形成するステップと、
前記第2電極上にキャッピング層を形成するステップと、を含む有機発光素子の製造方法。
【請求項22】
前記電子注入層は、前記アルカリ金属含有化合物と前記第1金属とを共蒸着するか、または前記アルカリ金属含有化合物と前記第1金属との混合物を熱蒸着、真空蒸着、化学気相蒸着(CVD)、スパッタリング、スピンコーティングまたはスピンキャスティングして形成することを特徴とする請求項21に記載の有機発光素子の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−4116(P2012−4116A)
【公開日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−131460(P2011−131460)
【出願日】平成23年6月13日(2011.6.13)
【出願人】(308040351)三星モバイルディスプレイ株式會社 (764)
【氏名又は名称原語表記】Samsung Mobile Display Co., Ltd.
【住所又は居所原語表記】San #24 Nongseo−Dong,Giheung−Gu,Yongin−City,Gyeonggi−Do 446−711 Republic of KOREA
【Fターム(参考)】