説明

有機発光装置およびこれを用いた光源装置

【課題】有機発光素子およびこれを用いた光源装置の外部量子効率を向上させる。
【解決手段】第二の基板の第二の電極が存在する側の表面に第一の光取出し層が形成され、第二の基板の第二の電極が存在しない側の表面に第二の光取出し層が形成され、第一の光取出し層には微粒子およびバインダが含まれ、第二の光取出し層には微粒子およびバインダが含まれ、第一の光取出し層に含まれる微粒子の平均粒子径は0.05μm以上2μm以下であり、第二の光取出し層に含まれる微粒子の平均粒子径は1μm以上10μm以下であり、発光層の発光点と第一の電極との間の光学長L1が(式1)を満たす有機発光装置。(式1)(2m−155/180)λ0/4/cos35°≦L1≦(2m−155/180)λ0/4/cos50°(λ0は発光層の発光中心波長、mは1以上の整数)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機発光装置およびこれを用いた光源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来例として、特許文献1には次のような技術が開示されている。作製プロセスが簡便であり、高い外部量子効率となる有機エレクトロルミネッセンス素子(有機EL素子)を提供することを目的とし、基板/透明電極/有機EL層/反射電極の構成において、該基板は、透明電極側に表面凹凸を有する高屈折率層を設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−66027号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
光取出し層を有する有機発光素子において、従来技術の光取出し層では外部量子効率の向上が難しい。本発明は、有機発光素子を用いた有機発光装置およびこれを用いた光源装置において、外部量子効率を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するための本発明の特徴は、以下の通りである。
(1)有機発光素子基板および光取出し基板を有する有機発光装置であって、有機発光素子基板は、第一の基板,第一の電極,有機層および第二の電極を有し、第一の基板上に第一の電極が形成され、第一の電極上に有機層が形成され、有機層上に第二の電極が形成され、第二の電極上に光取出し基板が形成され、有機層には発光層が含まれ、光取出し基板は、第一の光取出し層,第二の基板および第二の光取出し層を有し、第二の基板の第二の電極が存在する側の表面に第一の光取出し層が形成され、第二の基板の第二の電極が存在しない側の表面に第二の光取出し層が形成され、第一の光取出し層には微粒子およびバインダが含まれ、第二の光取出し層には微粒子およびバインダが含まれ、第一の光取出し層に含まれる微粒子の平均粒子径は0.05μm以上2μm以下であり、第二の光取出し層に含まれる微粒子の平均粒子径は1μm以上10μm以下であり、発光層の発光点と第一の電極との間の光学長L1が(式1)を満たす有機発光装置。
【0006】
(式1)
(2m−155/180)λ0/4/cos35°≦L1≦(2m−155/180)λ0 /4/cos50°
(λ0は発光層の発光中心波長、mは1以上の整数)
(2)上記(1)において、第一の光取出し層に含まれる微粒子の平均粒子径は0.1μm以上1μm以下であり、第二の光取出し層に含まれる微粒子の平均粒子径は1μm以上5μm以下である有機発光装置。
(3)上記(1)において、有機発光素子基板および光取出し基板は高屈折率樹脂層で密着され、高屈折率樹脂層の屈折率は1.6以上であり、高屈折率樹脂層の膜厚は5μm以上200μm以下である有機発光装置。
(4)上記(1)において、発光層は青色発光層であり、有機層および第二の電極の間に発光ユニットが形成され、発光ユニットは赤色発光層および緑色発光層を含み、発光ユニットおよび有機層の間に電荷発生層が形成され、赤色発光層の発光点と第一の電極との間の光学長L2、緑色発光層の発光点と第一の電極との間の光学長L3が(式2)および(式3)を満たす有機発光装置。
【0007】
(式2)
(2m−155/180)λ1/4/cos35°≦L2≦(2m−155/180)λ1 /4/cos50°
(λ1は赤色発光層の発光中心波長、mは1以上の整数)
【0008】
(式3)
(2m−155/180)λ2/4/cos35°≦L3≦(2m−155/180)λ2 /4/cos50°
(λ2は緑色発光層の発光中心波長、mは1以上の整数)
(5)上記(1)において、発光層は赤色発光層であり、有機層上に第一の電荷発生層が形成され、第一の電荷発生層上に緑色発光層が形成され、緑色発光層上に第二の電荷発生層が形成され、第二の電荷発生層上に青色発光層が形成され、青色発光層上に第二の電極が形成され、緑色発光層の発光点と第一の電極との間の光学長L2、青色発光層の発光点と第一の電極との間の光学長L3が(式4)および(式5)を満たす有機発光装置。
【0009】
(式4)
(2m−155/180)λ1/4/cos35°≦L2≦(2m−155/180)λ1 /4/cos50°
(λ1は緑色発光層の発光中心波長、mは1以上の整数)
【0010】
(式5)
(2m−155/180)λ2/4/cos35°≦L3≦(2m−155/180)λ2 /4/cos50°
(λ2は青色発光層の発光中心波長、mは1以上の整数)
(6)上記(1)において、第一の光取出し層に含まれる微粒子は、酸化チタン,酸化ジルコニウムまたはチタン酸バリウムのいずれか一つ以上である有機発光装置。
(7)上記(1)において、第二の光取出し層に含まれる微粒子は、酸化チタン,酸化ジルコニウム,チタン酸バリウムのいずれか一つ以上である有機発光装置。
【発明の効果】
【0011】
本発明により、有機発光素子およびこれを用いた光源装置の外部量子効率を向上できる。上記した以外の課題,構成及び効果は以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の一実施例に係る有機発光装置の断面図。
【図2】本発明の一実施例に係る光取出し基板の作製図。
【図3】本発明の一実施例に係る光取出し層の作製図。
【図4】本発明の一実施例に係る有機発光装置の断面図。
【図5】本発明の一実施例に係る有機発光装置の断面図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面等を用いて、本発明の実施形態について説明する。以下の説明は本発明の内容の具体例を示すものであり、本発明がこれらの説明に限定されるものではなく、本明細書に開示される技術的思想の範囲内において当業者による様々な変更および修正が可能である。また、本発明を説明するための全図において、同一の機能を有するものは、同一の符号を付け、その繰り返しの説明は省略する場合がある。
【0014】
図1は、本発明の一実施例に係る有機発光装置の断面図である。有機発光装置は、有機発光素子基板13および光取出し基板18を有する。有機発光素子基板13は、第一の基板1,下部電極2,有機層100,上部電極12を有する。有機層100には、正孔輸送層4,電子阻止層5,発光層(青色発光層6,緑色発光層7,赤色発光層8),正孔阻止層9,電子輸送層10およびバッファ層11などが含まれる。有機層100を構成する各層は接していてもよく、別の層を介在させてもよい。光取出し基板18は、第一の光取出し層15,第二の基板16および第二の光取出し層17を有する。有機発光素子基板13と光取出し基板18は高屈折率樹脂層14で密着されている。図1における有機発光装置に駆動装置等が備えられることで光源装置となる。下部電極2または上部電極12のどちらか一方の電極は反射機能を有する。ここでは、上部電極12を発光光が透過する透明電極とし、下部電極2を反射電極とする。
【0015】
有機発光装置は、例えば薄型照明装置,液晶表示装置の照明装置として期待されている。下部電極2と上部電極12との間に電圧を印加することにより、下部電極2及び上部電極12から注入された正孔と電子とが発光層で再結合して発光する。
【0016】
<反射電極>
反射電極として、Al膜,インジウム,モリブデン,ニッケル等の金属、これらの合金,ポリシリコン,アモルファスシリコンの無機材料が挙げられる。また、上記の金属または合金の上に、錫酸化物,酸化インジウム,インジウム・錫酸化物(ITO),インジウム・亜鉛酸化物(IZO)等の透明導電膜を形成した積層膜が挙げられる。
【0017】
<正孔輸送層>
正孔輸送層4は、正孔を輸送し、発光層へ注入するものである。そのため、正孔輸送層4は正孔移動度が高い正孔輸送性材料からなることが望ましい。また、正孔輸送層4として、化学的に安定で、イオン化ポテンシャルが小さく、電子親和力が小さく、ガラス転移温度が高いことが望ましい。正孔輸送層としては、例えば、N,N′−ビス(3−メチルフェニル)−N,N′−ジフェニル−[1,1′−ビフェニル]−4,4′ジアミン(TPD)、4,4′−ビス[N−(1−ナフチル)−N−フェニルアミノ]ビフェニル(α−NPD)、4,4′,4″−トリ(N−カルバゾリル)トリフェニルアミン(TCTA)、1,3,5−トリス[N−(4−ジフェニルアミノフェニル)フェニルアミノ]ベンゼン(p−DPA−TDAB)、4,4′,4″−トリス(N−カルバゾール)トリフェニルアミン(TCTA)、1,3,5−トリス[N,N−ビス(2−メチルフェニル)−アミノ]−ベンゼン(o−MTDAB)、1,3,5−トリス[N,N−ビス(3−メチルフェニル)−アミノ]−ベンゼン(m−MTDAB)、1,3,5−トリス[N,N−ビス(4−メチルフェニル)−アミノ]−ベンゼン(p−MTDAB)、4,4′,4″−トリス[1−ナフチル(フェニル)アミノ]トリフェニルアミン(1−TNATA)、4,4′,4″−トリス[2−ナフチル(フェニル)アミノ]トリフェニルアミン(2−TNATA)、4,4′,4″−トリス[ビフェニル−4−イル−(3−メチルフェニル)アミノ]トリフェニルアミン(p−PMTDATA)、4,4′,4″−トリス[9,9−ジメチルフルオレン−2−イル(フェニル)アミノ]トリフェニルアミン(TFATA)、4,4′,4″−トリス(N−カルバゾイル)トリフェニルアミン(TCTA)、1,3,5−トリス−[N−(4−ジフェニルアミノフェニル)フェニルアミノ]ベンゼン(p−DPA−TDAB)、1,3,5−トリス{4−[メチルフェニル(フェニル)アミノ]フェニル}ベンゼン(MTDAPB)、N,N′−ジ(ビフェニル−4−イル)−N,N′−ジフェニル[1,1′−ビフェニル]−4,4′−ジアミン(p−BPD)、N,N′−ビス(9,9−ジメチルフルオレン−2−イル)−N,N′−ジフェニルフルオレン−2,7−ジアミン(PFFA)、N,N,N′,N′−テトラキス(9,9−ジメチルフルオレン−2−イル)−[1,1−ビフェニル]−4,4′−ジアミン(FFD)、(NDA)PP、4−4′−ビス[N,N′−(3−トリル)アミノ]−3−3′−ジメチルビフェニル(HMTPD)等が望ましく、これらを1種単独、または、2種以上を併用してもよい。
【0018】
必要に応じて、下部電極2と正孔輸送層4との間には正孔注入層を配置してもよい。下部電極2と正孔輸送層4との注入障壁を下げるため、正孔注入層は適当なイオン化ポテンシャルを有する材料により形成されることが望ましい。また、正孔注入層は下地層の表面の凹凸を埋める役割を果たすことが望ましい。正孔注入層としては、例えば、銅フタロシアニン,スターバーストアミン化合物,ポリアニリン,ポリチオフェン,酸化バナジウム,酸化モリブテン,酸化ルテニウム,酸化アルミニウム等が挙げられる。
【0019】
また、正孔輸送性材料に酸化剤を含有してもよい。これにより、下部電極2と正孔輸送層4との障壁を低下させる、または、電気伝導度を向上させることができる。酸化剤としては、例えば、塩化第II鉄,塩化アンモニウム,塩化ガリウム,塩化インジウム,五塩化アンチモン等のルイス酸化合物,トリニトロフルオレン等の電子受容性化合物、正孔注入材料として挙げられる酸化バナジウム,酸化モリブテン,酸化ルテニウム,酸化アルミニウム,酸化タングステンなどを用いることができ、これらを1種単独、または、2種以上を併用してもよい。
【0020】
<電子阻止層>
電子阻止層5は、発光層を伝搬した電子を発光層内に閉じ込める役割を有する。そのため、発光層を構成する有機材料に比べて、電子親和力が小さい事が望ましい。また、正孔輸送層4から注入された正孔を輸送し、発光層へ注入する役割を有する。以上より、電子阻止層5は正孔移動度が高く、電子親和力が小さい正孔輸送性材料からなることが望ましい。例えば、ジ−[4−(N,N−ジオチル−アミノ)−フェニル]シクロヘキサン(TAPC)、2,2′,7,7′−テトラキス(N,N−ジフェニルアミノ)−9,9−スピロビフルオレン(sp−TAD)、トリス(フェニルピラゾール)イリジウム(Ir(ppz)3)等が挙げられ、これらを1種単独、または、2種以上を併用してもよい。
【0021】
<発光層>
青色発光層6,緑色発光層7,赤色発光層8は、発光層を形成するホスト材料自体が発光する場合と、ホストに微量添加したドーパント材料が発光する場合がある。発光スペクトルの中心波長が430〜490nmの範囲にあるものを青色発光、500〜550nmの範囲にあるものを緑色発光、580〜650nmの範囲にあるものを赤色発光と定義する。
【0022】
ホスト材料としては、例えば、ジスチリルアリーレン誘導体(DPVBi),骨格にベンゼン環を有するシロール誘導体(2PSP),トリフェニルアミン構造を両端に有するオキソジアゾール誘導体(EM2),フェナンスレン基を有するペリノン誘導体(P1),トリフェニルアミン構造を両端に有するオリゴチオフェン誘導体(BMA−3T),ペリレン誘導体(tBu−PTC),トリス(8−キノリノール)アルミニウム,ポリパラフェニレンビニレン誘導体,ポリチオフェン誘導体,ポリパラフェニレン誘導体,ポリシラン誘導体,ポリアセチレン誘導体,カルバゾール誘導体,フルオレン誘導体またはアリールシラン誘導体等が挙げられ、これらを1種単独、または、2種以上を併用してもよい。
【0023】
発光層に含まれるドーパント材料としては、例えば、キナクリドン,クマリン6,ナイルレッド,ルブレン,4−(ジシアノメチレン)−2−メチル−6−(パラ−ジメチルアミノスチリル)−4H−ピラン(DCM),ジカルバゾール誘導体,ポルフィリン白金錯体(PtOEP),イリジウム錯体(Ir(ppy)3)等が挙げられ、これらを1種単独、または、2種以上を併用してもよい。
【0024】
<正孔阻止層>
正孔阻止層9は、発光層を伝搬した正孔を発光層内に閉じ込める役割を有する。そのため、発光層を構成する有機材料に比べて、イオン化ポテンシャルが大きい事が望ましい。
また、後述する電子輸送層10から注入された電子を輸送し、発光層へ注入する役割を有する。以上より、正孔阻止層9は電子移動度が高く、イオン化ポテンシャルが大きい電子輸送性材料からなることが望ましい。例えば、バソキュプロイン(BCP),ビス(2−メチル−8−キノリネート)−4−(フェニルフェノレート)アルミニウム(BAlq),トリス(2,4,6−トリメチル−3−(ピリジン−3−イル)フェニル)ボラン(3TPYMB)等が挙げられ、これらを1種単独、または、2種以上を併用してもよい。
【0025】
<電子輸送層>
電子輸送層10は、電子を輸送し、発光層へ注入する。そのため、電子輸送層10は電子移動度が高い電子輸送性材料からなることが望ましい。電子輸送層10としては、例えば、トリス(8−キノリノール)アルミニウム,オキサジアゾール誘導体,シロール誘導体,亜鉛ベンゾチアゾール錯体等或いは上記正孔阻止層に用いた有機材料が望ましく、1種単独、または、2種以上を併用することもできる。
【0026】
電子輸送層10は、上記の電子輸送性材料に還元剤を含有して、バッファ層11と電子輸送層10との障壁を低くすること、または、電子輸送層10の電気伝導度を向上させることが望ましい。還元剤としては、例えば、アルカリ金属,アルカリ土類金属,アルカリ金属酸化物,アルカリ土類酸化物,希土類酸化物,アルカリ金属ハロゲン化物,アルカリ土類ハロゲン化物,希土類ハロゲン化物,アルカリ金属,芳香族化合物等で形成される錯体が挙げられる。特に、好ましいアルカリ金属はCs,Li,Na,Kである。これらの材料に限られず、これらの材料を1種単独、または、2種以上併用してもよい。
【0027】
また、電子注入層を、上部電極12またはバッファ層11と電子輸送層10との間に挿入して、電子注入効率を向上させてもよい。電子注入層としては、例えば、弗化リチウム,弗化マグネシウム,弗化カルシウム,弗化ストロンチウム,弗化バリウム,酸化マグネシウム,酸化アルミニウム等が望ましい。これらの材料に限られず、これらの材料を1種単独、または、2種以上併用してもよい。
【0028】
<バッファ層>
バッファ層11は、透明電極を形成する際、下地層となる有機膜にダメージが入らないよう、下地層となる有機膜と透明電極との間に形成される層である。バッファ層11は、無機系の材料で形成される。図1に示されたトップカソード構造のバッファ層11の材料としては、マグネシウム,銀、等の金属材料が望ましい。また、これらの材料を1種単独、または、2種以上併用した合金状態にしてもよい。また、上部電極12を陽極として用いるトップアノード構造のバッファ層11の材料としては、酸化バナジウム,酸化モリブデン,酸化タングステン等が挙げられる。
【0029】
<透明電極>
透明電極材料としては、透明性と高い仕事関数を有する材料であれば用いることができる。具体的には、ITO,IZOなどの導電性酸化物が挙げられる。電極のパターン形成は、一般的にはガラス等の基板上にホトリソグラフィーなどを用いて行うことができる。
【0030】
<高屈折率樹脂層>
高屈折率樹脂層14は、上述の下部電極2から上部電極12まで形成された有機発光素子基板13と後述する光取出し基板18とを密着させて貼り付ける機能を有する。青色発光層6,緑色発光層7,赤色発光層8で発光した光は、高屈折率樹脂層14を経て光取出し基板18に入射される。青色発光層6,緑色発光層7,赤色発光層8の屈折率は1.8前後である。そのため、高屈折率樹脂層14の屈折率を高くして、上部電極12と高屈折率樹脂層14との界面での全反射光を低減し、光取出し基板18への入射光量を増大させることが望ましい。
【0031】
高屈折率樹脂層14の屈折率は、1.6以上である事が望ましい。また、高屈折率樹脂層14は透明性を有するため、高屈折率樹脂層14の膜厚は5μm以上200μm以下が望ましい。高屈折率樹脂層14の膜厚が5μmより小さいと、有機発光素子の光干渉設計に影響を与えてしまうためである。また、高屈折率樹脂層14の膜厚が200μmより大きいと、引っ張ったときに破断しやすいためである。
【0032】
高屈折率樹脂層14は、バインダに無機樹脂が分散された構成となっている。以下、構成材料について説明する。
【0033】
[バインダ]
高屈折率樹脂層14の構成要素であるバインダには、アクリル系,シリコーン系などの粘着性、タックを有する樹脂が利用できる。具体的には、2−エチルヘキシルアクリレート,ブチルアクリレート,2−メトキシエチルアクリレート,酢酸ビニル,アクリロニトリル,スチレン,メチルメタクリレート,エチルアクリレート,メチルアクリレート等のモノマーを単独で重合あるいは数種を共重合させた樹脂,付加反応型シリコーン,過酸化物シリコーンやエポキシ等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を混合あるいは共重合して用いてもよい。また、バインダに粘着性がある方が望ましい。
【0034】
また、無機粒子のバインダ中への含有量が多い場合、すなわち、無機粒子の体積率が30vol%以上である場合、表面に露出した無機粒子が高屈折率樹脂層の粘着力に寄与する割合が高い。そのため、無機粒子の体積含有率が高い場合には、バインダに非粘着性のゴム系や炭化水素系,シリコーン系などの各種樹脂を利用することもできる。具体的には、イソプレン,スチレンブタジエン,ポリイソブチレン,スチレンブタジエンスチレン,スチレンイソプレンスチレン,スチレンエチレンブチレンスチレン,スチレンエチレンプロピレンスチレン,ポリブタジエンや付加反応型シリコーン,過酸化物シリコーン,ポリプロピレン,ポリエチレン等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を混合あるいは共重合して用いてもよい。無機粒子の体積率は5vol%以上50vol%以下が望ましい。無機粒子の体積率とは、無機粒子およびバインダの合計量に対する無機粒子の体積率を言う。
【0035】
[無機粒子]
高屈折率樹脂層14の構成要素である無機粒子は使用する光の波長に対して吸収が少なく、バインダよりも屈折率が高いものであればよい。特に、使用する光の波長が可視光(380nm以上780nm以下)の場合、無機粒子として酸化チタン,酸化ジリコニウム,酸化スズ,チタン酸バリウムなどの高屈折率(屈折率1.6以上2.6以下)で、可視光域で透明性の高い金属酸化物が好ましい。また、無機粒子のサイズを光の波長よりも小さくすることで高屈折率樹脂層14中の散乱を抑えられる。可視光の利用を想定した場合、100nm以下、より好ましくは50nm以下の平均粒子径を有する無機粒子を利用することで、無機粒子とバインダとの屈折率差による散乱を低減できる。一方、粒径が微細になりすぎると、金属酸化物の結晶構造が非晶質になるため、金属酸化物の屈折率がバルクの屈折率よりも低くなり、屈折率上昇の効果が落ちる。そのため、無機粒子の平均粒子径は5nm以上であることが好ましい。ここでいう平均粒子径とは、動的散乱法により求められたものである。高屈折率樹脂層14およびバインダの屈折率はプリズムカプラ法によって計測される。「粘着性」は、2枚のガラス基板を、粘着性を計測する対象物を介して張り合わせ、ガラス基板を接着面に対して垂直に引っ張り、ガラスが離れた際の力の単位面積当たりの力によって求められる。
【0036】
高屈折率樹脂層14への無機粒混入量を増やすと、バインダの割合が減るため、粘着性が低下する。そのため、無機粒子の全体或いは一部を覆う高分子を有する事が望ましい。
【0037】
[高分子]
無機粒子の全体或いは一部を覆う高分子は結合部位Xと置換基Yとを持ち、高分子の側鎖である結合部位Xを介して無機粒子と化学結合している。例えば、次のようにして作製する。
【0038】
まず、結合部位Xの一部である置換基X′を持つシランカップリング剤と無機粒子とを結合させ、無機粒子表面にシランカップリング剤を付着させる。このとき、置換基X′が無機粒子とは直接反応せず、無機粒子を覆ったシランカップリング剤の最表面側(無機粒子と接しない側)に来るようにシランカップリング剤を無機粒子の表面に付着させる。次に、置換基Yを持つ高分子と置換基X′が化学結合し、結合部位Xを構成する。ここで、置換基Yの数が置換基X′の数より多い場合、結合部位Xを形成後も置換基Yが残る。無機粒子をエチレングリコールなどの分散溶媒に分散させて、シランカップリング剤と無機粒子とを結合させてもよい。分散溶媒として、グリセリンや水などが挙げられる。分散溶媒がシランカップリング剤を溶解し、無機粒子の表面にシランカップリング剤がなじみやすくなる。無機粒子をエチレングリコールなどの分散溶媒に分散させた場合、微小量の分散溶媒が残る場合がある。
【0039】
シランカップリング剤としてはN−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−イソシアネートプロピルトリエトキシシランなどが考えられる。
【0040】
例えば、置換基X′がアミノ基,イソシアネート基,ヒドロキシル基,カルボキシル基のいずれかであり、置換基Yがヒドロキシル基、またはカルボキシル基であった場合、結合部位Xはアミド結合(NHCO),エステル結合(OCO),エーテル結合(O),ウレタン結合(NHCOO)のいずれかとなる。なお、上記の結合部位Xを1種または2種以上を高分子に用いてもよい。
【0041】
置換基Yは置換基X′と結合して結合部位Xを形成でき、かつ粘着性を発現するものが好ましく、親水性のヒドロキシル基やカルボキシル基,アミノ基,スルホ基が好適である。ここでいう「粘着性を発現する」とは、2枚のガラス基板を、高分子を介して張り合わせ、ガラス基板を接着面に対して垂直に引っ張り、ガラスが離れた際の力の単位面積当たりの力が0.005g重N/mm2以上の物をいう。なお、上記の置換基Yを1種または2種以上を高分子に用いてもよい。
【0042】
高分子の数平均分子量は200以上50000以下が好ましく、2000以上30000以下にすることが好ましい。高分子の数平均分子量が小さすぎると、無機粒子の表面を高分子で十分に被覆できないため、バインダ中への分散性が低下する。一方、高分子の数平均分子量が大きすぎると、無機粒子に比べて高分子の体積が増大するため、無機粒子および高分子の結合物(粘着粒子)としての屈折率が低下する。数平均分子量はゲル浸透クロマトグラフにより測定する。高分子としては、ポリアクリル酸,ポリビニルアルコール,ポリアスパラギン酸,ポリグルタミン酸,アルギン酸,ポリビニルスルホン酸,ポリスチレンスルホン酸,アミロースなどが挙げられる。上記の高分子を1種または2種以上を高分子に用いてもよい。
【0043】
さらに、前述したように、高分子を無機粒子と結合させることから、重合反応によりモノマーをポリマーに変えるプロセスと比較して、決まった分子量の高分子を無機粒子につけることができ、作製プロセスが安定する。
【0044】
<光取出し基板>
図2は、本発明の一実施例に係る光取出し基板の作製図である。第一の光取出し層15及び第二の光取出し層17を有する光取出し基板18を、高屈折率樹脂層14を用いて、有機発光素子基板13の上部電極12と密着させる。第二の基板16の上部電極12が存在する側の表面に第一の光取出し層15が形成され、第二の基板16の上部電極12が存在しない側の表面に第二の光取出し層17が形成される。
【0045】
有機層100の屈折率は1.5以上1.9以下程度の範囲にあり、上部電極12に用いる透明電極の屈折率は2.0程度、第二の基板16の代表例であるガラス基板の屈折率が1.5程度である。第一の光取出し層15及び第二の光取出し層17がない構成では、発光層で等方的に発光した光は、空気層へ出射されるまで、高屈折率樹脂層14と第二の基板16との界面、及び、第二の基板16と空気層の界面において、広角側で全反射が起こる。
そのため、有機層100内に閉じ込められる光と第二の基板16の中に閉じ込められる光が存在し、空気層に取出される光の光取出し効率は20%程度である。光取出し効率は、外部量子効率を内部量子効率で除した値として定義される。外部量子効率とは、有機層100に注入された電子或いは正孔数に対する、空気層に取出された光子数で定義される。
また、内部量子効率は、有機層100内部での発光効率として定義される。
【0046】
第一の光取出し層15に含まれるバインダの屈折率は、第二の基板16の屈折率以上であることが望ましい。具体的には、第一の光取出し層15に含まれるバインダの屈折率を1.5以上1.8以下とすることが望ましい。第一の光取出し層15に入射する光量を増やすために、第一の光取出し層15に含まれるバインダの屈折率を1.7以上1.8以下とすることが望ましい。第二の光取出し層17に含まれるバインダの屈折率は、第二の基板16の屈折率以上であることが望ましい。具体的には、第二の光取出し層17に含まれるバインダの屈折率を1.5以上1.8以下とすることが望ましい。本発明における屈折率は、エリプソメトリ法,分光反射率・透過率測定法を用いて求められる。光取出し層に含まれる微粒子の屈折率が十分に高ければ、光取出し層に含まれるバインダの屈折率を1.5以下としてもよい。
【0047】
図3は、本発明の一実施例に係る光取出し層の作製図である。始めに、粒子の溶剤への分散性を高め、塗布後の粒子同士の凝集を抑制するため、粒子表面をシランカップリング剤で化学修飾する、または、粒子に分散剤を添加する。この粒子をバインダ材料とともに有機溶剤に分散する。こうして第一の光取出し層15または第二の光取出し層17の形成塗料を調製する。図3のように、この塗料を第二の基板16に塗布し、バインダ材料を硬化させ、光取出し層を形成する。この方法で用いる材料について下記する。
【0048】
(A)粒子の種類
光取出し層を形成する粒子の屈折率はバインダ材料より高い必要がある。具体的には、屈折率が2.0以上のものを選択する。また照明の場合は、発せられる光が着色しないよう可視領域で白又は淡色のものが望ましい。具体的には酸化チタン(屈折率:2.5〜2.7),酸化ジルコニウム(屈折率:2.4),チタン酸バリウム(屈折率:2.4),チタン酸ストロンチウム(屈折率:2.37),酸化ビスマス(屈折率:2.45)等が挙げられる。これらの材料を1種単独、または、2種以上併用してもよい。また、信号機(緑色,黄色,赤色)や警告灯(赤色)のように所望の発光色が有色の場合は、その色と類似の色の粒子を使用できる。青色を発光させる場合は酸化銅(屈折率:2.71)等の青色粒子を、赤色を発光させる場合は酸化第二鉄(屈折率:3.01)等の赤色粒子を、黄色を発光させる場合は酸化カドミウム(屈折率:2.49)等の黄色粒子を使用できる。
【0049】
また、粒子は変性しにくい無機物の酸化物が好適である。更に、バインダ材料がシリカゾルの場合は酸化物と結合性が高いので好適である。
【0050】
(B)粒子のサイズ
高屈折率樹脂層14と第一の光取出し層15との界面で全反射角より広角に入射した光は、同界面上にエバネセント波として局在する。第一の光取出し層15の粒子は、臨界角より広角側のエバネセント波を散乱させる粒径が望ましい。具体的には、粒子の平均粒子径は、0.05μm以上2μm以下が好適である。更に、波長と同サイズの0.1μm以上1μm以下が好適である。
【0051】
一方、第二の基板16から第二の光取出し層17に入射された光は第二の光取出し層17の微粒子によって散乱され、空気層に取り出させる。同粒子の平均粒子径は、1μm以上10μm以下が好適である。更に、同粒径は1μm以上5μm以下が更に好適である。
ここでいう平均粒子径とは、動的散乱法により求められたものである。
【0052】
(C)粒子の比重
これら屈折率の大きな粒子は一般に比重も大きい。例えば、酸化ジルコニウムの比重は6.1、酸化チタンの比重は4.1以上4.2以下、チタン酸バリウムの比重は6.1もある。そのため、粒子の表面をシランカップリング剤で化学修飾することにより溶剤中での分散性を高める。但し、粒径が1μm程度以上の粒子では、体積に対する表面積が大きくなるので、表面に化学修飾をしなくてもよい場合がある。
【0053】
(D)粒子表面の化学修飾
まず、有機溶剤にシランカップリング剤を添加し、これに粒子を加え、数時間攪拌する。溶剤をエバポレータで揮発させた後、粒子を120℃で30分間加熱する。これにより、シランカップリング剤がケイ素−酸素結合を介して粒子表面に結合する。
【0054】
なお、用いるシランカップリング剤の添加量が多すぎると、基板に塗布後、粒子が凝集しやすくなる。そこで、粒子の表面積をあらかじめBET法等で測定しておき、この面積を被覆するのに必要最小限のシランカップリング剤の量を用いることで、粒子の凝集を抑制できる。
【0055】
シランカップリング剤として、ケイ素原子にアルコキシシラン基が2,3個結合しているもの、クロル基が2,3個結合しているなどが挙げられる。アルコキシシラン基,クロル基以外のケイ素の置換基としては以下の構造のものが粒子の分散に好適である。
【0056】
〔化合物群A〕
−(CH2)3NHCOCH3,−(CH2)3NHCOCH2CH3,−(CH2)3NHCOC37,−(CH2)3NHCOC49,−(CH2)3NHCOC511,−(CH2)3NHCOC613,−(CH2)3NHCOC715,−(CH2)3NHCOC815
これらは、予め粒子表面に−(CH2)3NH2基を有するシランカップリング剤を結合させておいて、その後、対応するカルボン酸をアミノ基と反応させることにより作製する。
【0057】
〔化合物群B〕
−(CH2)3NHCO2CH3,−(CH2)3NHCO2CH2CH3,−(CH2)3NHCO237,−(CH2)3NHCO249,−(CH2)3NHCO2511,−(CH2)3NHCO2613,−(CH2)3NHCO2715,−(CH2)3NHCO2815
これらは、予め粒子表面に−(CH2)3NCO基を有するシランカップリング剤を結合させておいて、その後、対応するアルコールをイソシアネート基と反応させることにより作製する。
【0058】
そのほか、イソシアネート基,ビニル基,3−グリシドキシプロピル基,3−クロルプロピル基などを有するシランカップリング剤が粒子の分散に好適である。
【0059】
炭化水素系の置換基、例えば−C613,−C815,−C1021、または芳香環の置換基、例えば−C65,−C107等は、溶剤に対する分散性を改善できる。しかし、上記した置換基は膜にした場合の分散性が芳しくなく、粒子の凝集を作りやすい。置換基内にアミド結合等、ヘテロ原子を有する結合部位を有するシランカップリング剤を用いることで、膜にした場合の分散が良好になる傾向がある。
【0060】
(E)バインダ材料
粒子が無機物であるため、バインダ材料として無機物との密着性が高いエポキシ樹脂が好適である。これ以外の有機物ではアクリル樹脂,ポリカーボネート樹脂,シクロオレフィン系樹脂等の透明性が高く、好適である。
【0061】
発光層で発光した光は、以下の複数の光路により光学干渉が起こる。有機発光素子から空気層へ出射される。一つ目の光路は、発光層→上部電極12→第一の光取出し層15→第二の基板16→第二の光取出し層17→空気層、二つ目の光路は、発光層→下部電極2での反射→上部電極12→空気層、である。これらの光路を経た光及び上記光路で更に多重反射された光により、光学干渉が起こる。そのため、有機発光素子を構成する層は、最適な光干渉条件を満たす必要がある。
【0062】
従来の技術では、有機発光素子を構成する有機層および透明電極からなる全光学長が発光中心波長の半分の整数倍、または全光学長に発光中心波長の四分の一を足した値が発光中心波長の半分の整数倍であることを規定している。ここで、光学長は、有機層または透明電極を構成する材料の屈折率と膜厚とを乗じた値で定義される。
【0063】
始めに、発光層の発光点を定義する。発光点とは、発光層断面方向における、正孔と電子の再結合が一番多くなる位置である。発光層の正孔移動度と電子移動度の比が、0.2から5の値では発光点は発光層の中心となる。また、同移動度の比が0.2未満の場合は、発光点は発光層と陰極側に位置する隣接有機層の界面となる。また、同移動度の比が5より大きい場合は、発光点は発光層と陽極側に位置する隣接有機層の界面となる。同発光点と下部電極2の間の光学長をd1とする。
【0064】
本発明に用いた第一の光取出し層15と第二の光取出し層17を用いた光取出し層では、上記光学長L1を(式1)の条件にする事が望ましい。これは、後述するが、第一の光取出し層がない場合の厚膜モードの光量を最大にする光学条件である。下記の(式1′)は従来の干渉条件である。
【0065】
(式1)
(2m−155/180)λ0/4/cos35°≦L1≦(2m−155/180)λ0 /4/cos50°
(λ0は発光層の発光中心波長、mは1以上の整数)
ここで、λ0は発光スペクトルが最大となる中心波長である。
【0066】
(式1′)
1=(2m−155/180)λ0/4
(λ0は発光層の発光中心波長、mは1以上の整数)
以下に具体的な実施例を示して、本発明の内容をさらに詳細に説明する。
【実施例1】
【0067】
実施例1に係る有機発光装置を説明する。図1は、実施例1に係る有機発光装置である。
【0068】
第一の基板1上に、厚さ150nmのAl膜からなる下部電極2と厚さ30nmのITO膜からなるITO電極を形成した。
【0069】
次に、ITO電極上に、真空蒸着法により膜厚59nmの4,4−ビス〔N−(1−ナフチル)−N−フェニルアミノ〕ビフェニル(以下、α−NPDとする。)の蒸着膜を形成した。この蒸着膜は正孔輸送層4として機能する。
【0070】
次に、正孔輸送層4上に、真空蒸着法により膜厚30nmのTAPC膜を形成した。このTAPC膜は電子阻止層5として機能する。
【0071】
次に、電子阻止層5上に、膜厚40nmのN,N′−ジカルバゾリル−3,5−ベンゼン(mCP)及びビス−[2−(4′,6′−ジフルオロフェニル)ピリジネイト−N,C2′]イリジウム(III)ピコリネイト(FIrpic)の共蒸着膜を形成した。このCBP,FIrpicの蒸着速度は、それぞれ、0.2nm/sec,0.014nm/secとした。この共蒸着膜は青色発光層6として機能する。青色発光層6からの発光光の発光スペクトルは中心波長が450nmであった。
【0072】
次に、青色発光層6の上に、真空蒸着法により膜厚30nmのCBP及びイリジム錯体(以下、Ir(ppy)3とする。)を共蒸着した膜を形成した。このCBP及びIr(ppy)3の蒸着速度は、それぞれ0.20nm/sec及び0.02nm/secとした。Ir(ppy)3が発光色を決定するドーパントとして機能する。CBPおよびIr(ppy)3との共蒸着膜は、中心波長520nmの緑色の光を発する緑色発光層7として機能する。
【0073】
次に、緑色発光層7の上に、真空蒸着法により、膜厚20nmのCBP及びビス(2−(2′−ベンゾ[4,5−α]チエニル)ピリジネイト−N,C3′)イリジウム(アセチル−アセトネイト)(btp2Ir(acac))を共蒸着した膜を形成した。CBP,btp2Ir(acac)の蒸着速度は、それぞれ、0.2nm/sec,0.014nm/secとした。
この共蒸着膜は赤色発光層8として機能する。赤色発光層8の発光スペクトルの中心波長は610nmであった。
【0074】
次に、赤色発光層8の上に、真空蒸着法により膜厚10nmのBphenを蒸着した膜を形成した。この蒸着膜は正孔阻止層9として機能する。
【0075】
次に、正孔阻止層9上に、真空蒸着法により膜厚10nmのトリス(8−キノリノール)アルミニウム(以下、Alq3とする。)を蒸着した膜を形成した。この蒸着膜は電子輸送層10として機能する。
【0076】
次に、電子輸送層10の上に、バッファ層11としてMgとAgとの混合膜を形成した。この場合、2元同時真空蒸着法を用いてMg及びAgの蒸着速度をそれぞれ0.14nm/s及び0.01nm/sに設定し、膜厚10nmの膜を蒸着した。
【0077】
次に、バッファ層11上に、スパッタリング法により膜厚50nmのIZO膜を形成した。このIZO膜は上部電極12として機能する。IZO膜は非晶酸化物膜である。このときのターゲットには、In/(In+Zn)=0.83を満たすものを用いる。成膜条件は、Ar:O2混合ガスを雰囲気として、真空度0.2Pa、スパッタリング出力を2W/cm2とした。Mg:Ag/In−Zn−O積層膜の透過率は65%であった。これにより、有機発光素子基板13が形成される。
【0078】
次に、第二の基板16であるガラス基板の上に第一の光取出し層15を形成した。バインダはエポキシ樹脂である。バインダに分散する粒子は平均粒径0.2μmの酸化チタンであった。第一の光取出し層15の膜厚は5μmであった。次に、第一の光取出し層15を形成した反対の面の上に第二の光取出し層17を形成した。バインダはエポキシ樹脂、バインダに分散する粒子は、2μmのチタン酸バリウムであった。第二の光取出し層17の膜厚は10μmであった。これにより、光取出し基板18が形成される。
【0079】
次に、有機発光素子基板13と光取出し基板18を、高露点を保った封止室で密着させた。光取出し基板18のエッジ部分に、周知のシールディスペンサ装置を用いて光硬化樹脂を描画した(図示省略)。封止室内で、光取出し基板18と有機発光素子基板13とを貼り合せて圧着させた。2つの基板の間に空気の隙間ができないよう、屈折率1.8の高屈折率樹脂層14を充填した。次に、光取り出し基板18の外側に、有機発光素子全体にUV光が当たらないよう周知の遮光板を置き、光取出し基板18側からUV光を照射させて光硬化樹脂を硬化させた。このようにして本実施例の有機発光装置が得られた。
【0080】
青色発光層6で発光する青色発光の発光点は青色発光層6と緑色発光層7の界面である。そのため、光学長L1=(20nm×2.0+50nm×1.8+10nm×1.8+20nm×1.8)=183nmとなる。λ0=450nmである事から、(式1)の左辺は163nm、右辺は208nmであり、L1は(式1)を満たしている。
【0081】
次に、緑色発光層7で発光する緑色発光の発光点は緑色発光層7の中間に位置する。そのため、光学長L1=(20nm×2.0+50nm×1.8+10nm×1.8+20nm×1.8+10nm×1.8)=201nmとなる。λ0=520nmである事から、(式1)の左辺は181nm、右辺は230nmであり、L1は(式1)を満たしている。
【0082】
最後に、赤色発光層8で発光した赤色光の発光点は緑色発光層7と赤色発光層8の界面である、そのため、光学長L1=(20nm×2.0+50nm×1.8+10nm×1.8+20nm×1.8+20nm×1.8)=219nmとなる。λ0=610nmである事から、(式1)の左辺は212nm、右辺は270nmであり、L1は(式1)を満たしている。よって、青,緑,赤発光とも、(式1)の光学干渉条件を満足した。それにより、高屈折率樹脂層14内に入射される光は92%となった。
【0083】
第二の基板16と高屈折率樹脂層14の屈折率差により、第一の光取出し層15がない場合、第二の基板16内に入射される光は70%程度であった。しかし、第一の光取出し層15を設けた構成では、全反射されるエバネセント光を第一の光取出し層15内に分散された微粒子により散乱され、80%の光が第二の基板16内に入射された。第二の基板16内に入射された光は、第二の光取出し層17内に分散された微粒子により散乱され、56%の光が空気層に取り出された。これにより光取出し効率が、従来技術の干渉条件((式1′))の層構成に光取出し層を設けた有機発光素子に比べて、2.4倍向上した。また、空気層に出射された光は光取出し層で散乱されて出射されることにより、各出射方向での発光スペクトルがほぼ等しくなり、発光スペクトルの視野角依存性が抑制された。
【実施例2】
【0084】
次に、実施例2に係る有機発光装置を説明する。図1は、実施例2に係る有機発光装置である。有機発光素子の層構成、及び作製条件は、実施例1と同様である。一方、光取出し基板18では、第一の光取出し層15に分散する散乱微粒子の粒径と第二の光取出し層17に分散する散乱微粒子の粒径が異なることを除いては、実施例1の光取出し基板18と等しい構成である。第一の光取出し層15に分散される酸化チタンの粒径は50nmであった。また、第二の光取出し層17に分散されるチタン酸バリウムの粒径は1μmであった。また、有機発光素子基板13と光取出し基板18を密着させる条件、プロセスも実施例1と同様である。このようにして本実施例の有機発光装置が得られた。
【0085】
青色発光層6,緑色発光層7、及び赤色発光層8で発光する青,緑,赤発光とも、実施例1同様、(式1)の光学干渉条件を満足した。それにより、高屈折率樹脂層14内に入射される光は92%となった。第一の光取出し層15を設けた構成では、全反射されるエバネセント光が第一の光取出し層15内に分散された微粒子により散乱され、75%の光が第二の基板16内に入射された。エバネセント光の第二の基板16内への染み出し長は50nm程度である。第一の光取出し層15に分散された微粒子の平均粒径が50nmであるため、取出し効率が実施例1に比べて低下したと考えられる。第二の基板16内に入射された光は、第二の光取出し層17内に分散された微粒子により散乱され、53%の光が空気層に取り出された。これにより光取出し効率が、従来技術の干渉条件の層構成に光取出し層を設けた有機発光素子に比べて、2.7倍向上した。また、実施例1同様、各出射方向での発光スペクトルがほぼ等しくなり、発光スペクトルの視野角依存性が抑制された。
【実施例3】
【0086】
次に、実施例3に係る有機発光装置を説明する。図1は、実施例3に係る有機発光装置である。第一の光取出し層15には粒径50nmの酸化チタン、第二の光取出し層17には粒径10μmのチタン酸バリウムを分散させた以外の層構成及びプロセスは、実施例1と同様である。このようにして本実施例の有機発光装置が得られた。
【0087】
青色発光層6,緑色発光層7、及び赤色発光層8で発光する青,緑,赤発光とも、実施例1同様、(式1)の光学干渉条件を満足した。それにより、高屈折率樹脂層14内に入射される光は92%となった。第一の光取出し層15を設けた構成では、全反射されるエバネセント光を第一の光取出し層15内に分散された微粒子により散乱され、75%の光が第二の基板16内に入射された。第二の基板16内に入射された光は、第二の光取出し層17内に分散された微粒子により散乱され、56%の光が空気層に取り出された。第二の光取出し層17に分散された微粒子の平均粒径が10μmと大きくなったため、後方散乱が増加し、第二の基板16から空気層への取出し光の割合が実施例1に比べて低下したと考えられる。これにより光取出し効率が、従来技術の干渉条件の層構成に光取出し層を設けた有機発光素子に比べて、2.8倍向上した。また、各出射方向での発光スペクトルがほぼ等しくなり、発光スペクトルの視野角依存性が抑制された。
【実施例4】
【0088】
次に、実施例4に係る有機発光装置を説明する。図1は、実施例4に係る有機発光装置である。第一の光取出し層15には粒径1μmの酸化チタン、第二の光取出し層17には粒径1μmのチタン酸バリウムを分散させた以外の層構成及びプロセスは、実施例1と同様である。このようにして本実施例の有機発光装置が得られた。
【0089】
青色発光層6,緑色発光層7、及び赤色発光層8で発光する青,緑,赤発光とも、実施例1同様、(式1)の光学干渉条件を満足した。それにより、高屈折率樹脂層14内に入射される光は92%となった。第一の光取出し層15を設けた構成では、全反射されるエバネセント光を第一の光取出し層15内に分散された微粒子により散乱され、85%の光が第二の基板16内に入射された。第二の基板16内に入射された光は、第二の光取出し層17内に分散された微粒子により散乱され、60%の光が空気層に取り出された。これにより光取出し効率が、従来技術の干渉条件の層構成に光取出し層を設けた有機発光素子に比べて、3.0倍向上した。各出射方向での発光スペクトルがほぼ等しくなり、発光スペクトルの視野角依存性が抑制された。
【実施例5】
【0090】
次に、実施例5に係る有機発光装置を説明する。図1は、実施例5に係る有機発光装置である。第一の光取出し層15には粒径50nmの酸化チタン、第二の光取出し層17には粒径10μmのチタン酸バリウムを分散させた以外の層構成及びプロセスは、実施例1と同様である。このようにして本実施例の有機発光装置が得られた。
【0091】
青色発光層6,緑色発光層7、及び赤色発光層8で発光する青,緑,赤発光とも、実施例1同様、(式1)の光学干渉条件を満足した。それにより、高屈折率樹脂層14内に入射される光は92%となった。第一の光取出し層15を設けた構成では、全反射されるエバネセント光を第一の光取出し層15内に分散された微粒子により散乱され、85%の光が第二の基板16内に入射された。第二の基板16内に入射された光は、第二の光取出し層17内に分散された微粒子により散乱され、56%の光が空気層に取り出された。これにより光取出し効率が、従来技術の干渉条件の層構成に光取出し層を設けた有機発光素子に比べて、2.8倍向上した。また、各出射方向での発光スペクトルがほぼ等しくなり、発光スペクトルの視野角依存性が抑制された。
【0092】
〔比較例1〕
次に、比較例1として作製した有機発光装置を説明する。図1は、比較例1に係る有機発光装置である。有機発光素子の層構成、及び作製条件は、一部の有機層の膜厚を除いて、実施例1と同様である。具体的には、正孔輸送層4に用いたα−NPD膜の膜厚を16nm、電子阻止層5に用いたTAPC膜の膜厚を10nm、青色発光層6に用いたCBPとFIrpic共蒸着膜の膜厚を9nm、緑色発光層7に用いたCBPとIr(ppy)3共蒸着膜の膜厚を12nmである。一方、光取出し基板18の作製は以下の通りである。第二の基板16であるガラス基板の上に第一の光取出し層15を形成した。バインダはエポキシ樹脂である。バインダに分散する粒子は平均粒径1.2μmの酸化アルミニウムであった。第一の光取出し層15の膜厚は5μmであった。次に、第一の光取出し層15を形成した反対の面の上に第二の光取出し層17を形成した。バインダはエポキシ樹脂、バインダに分散する粒子は、12μmの酸化アルミニウムであった。これにより、光取出し基板18が形成される。有機発光素子基板13と光取出し基板18を密着させる条件、プロセスも実施例1と同様である。
【0093】
青色発光層6,緑色発光層7、及び赤色発光層8で発光する青,緑,赤発光の発光点は実施例1と同様である。そのため、青,緑,赤発光のL1は、それぞれ、107nm,123nm,145nmとなった。そのため、全ての発光色のL1は、(式1′)の光学干渉条件を満足した。第一の光取出し層15の平均屈折率が1.6であるため、第一の光取出し層15と高屈折率樹脂層14の屈折率差により、第一の光取出し層15及び第二の基板16内に入射される光は45%であった。第一の光取出し層15に分散された微粒子の平均粒径が1.2μmであるため、エバネセント波となる臨界角より狭角側の光を散乱し、第二の基板16への取出し効率が低下したと考えられる。また、第一の光取出し層15の平均屈折率が低下したため、微粒子における散乱効果が低下し、取出し効率が低下したと考えられる。第二の基板16内に入射された光は、第二の光取出し層17内に伝搬し、第二の光取出し層17内に分散された微粒子により散乱され、23%の光が空気層に取り出された。第二の光取出し層17に分散された微粒子の平均粒径が12μmと大きくなったため、後方散乱が増加し、第二の基板16から空気層への取出し光の割合が実施例1に比べて低下したと考えられる。
【0094】
〔比較例2〕
次に、比較例2として作製した有機発光装置を説明する。図1は、比較例2に係る有機発光装置である。有機発光素子の層構成、及び作製条件は、実施例1と同様である。一方、光取出し基板の作製は以下の通りである。第二の基板16であるガラス基板の上に第一の光取出し層15を形成した。バインダはエポキシ樹脂である。バインダに分散する粒子は平均粒径0.2μmの酸化チタンであった。光取出し層の膜厚は5μmであった。次に、第一の光取出し層15を形成した反対の面の上に第二の光取出し層17を形成した。作製条件は比較例1と同様である。これにより、光取出し基板18が形成される。有機発光素子基板13と光取出し基板18を密着させる条件,プロセスも実施例1と同様である。
【0095】
青色発光層6,緑色発光層7、及び赤色発光層8で発光する青,緑,赤発光とも、実施例1同様、(式1)の光学干渉条件を満足した。それにより、高屈折率樹脂層14内に入射される光は92%となった。第一の光取出し層15の平均屈折率が1.8であり、散乱粒子の粒径が200nmであるため、第一の光取出し層15により、反射されるエバネセント光が微粒子により散乱され、80%の光が第二の基板16内に入射された。第二の基板内16に入射された光は、第二の光取出し層17内に伝搬し、第二の光取出し層17内に分散された微粒子により散乱され、40%の光が空気層に取り出された。これにより光取出し効率が、従来技術の干渉条件の層構成に光取出し層を設けた有機発光素子に比べて、2.0倍程度向上した。
【0096】
〔比較例3〕
次に、比較例3として作製した有機発光装置を説明する。図1は、比較例3に係る有機発光装置である。有機発光素子の層構成、及び作製条件は、実施例1と同様である。一方、光取出し基板18の作製は以下の通りである。第二の基板16であるガラス基板の上に第一の光取出し層15を形成した。バインダはエポキシ樹脂である。バインダに分散する粒子は平均粒径1.2μmの酸化チタンであった。光取出し層の膜厚は5μmであった。
次に、第一の光取出し層15を形成した反対の面の上に第二の光取出し層17を形成した。酸化アルミニウムの粒径2μmをした以外は比較例1と同様である。これにより、光取出し基板18が形成される。有機発光素子基板と光取出し基板を密着させる条件,プロセスも実施例1と同様である。
【0097】
青色発光層6,緑色発光層7、及び赤色発光層8で発光する青,緑,赤発光とも、実施例1同様、(式1)の光学干渉条件を満足した。それにより、高屈折率樹脂層14内に入射される光は92%となった。第一の光取出し層15の平均屈折率が1.8であり、散乱粒子の粒径が200nmであるため、第一の光取出し層15により、反射されるエバネセント光が微粒子により散乱され、60%の光が第二の基板16内に入射された。第二の基板16内に入射された光は、第二の光取出し層17内に伝搬し、第二の光取出し層17内に分散された微粒子により散乱され、43%の光が空気層に取り出された。これにより光取出し効率が、従来技術の干渉条件の層構成に光取出し層を設けた有機発光素子に比べて、2.2倍程度向上した。
【実施例6】
【0098】
次に、実施例6に係る有機発光装置を説明する。図4は、実施例6に係る有機発光装置の断面図である。有機発光装置は、第一の基板である基板1及び基板1上に有機発光素子が配置された有機発光素子基板13を有する。有機発光素子は、陽極となる下部電極2及びITO電極の上に、正孔輸送層4,電子阻止層5,青色発光層6,正孔阻止層9,電子輸送層10からなる第一の発光ユニット22,正孔輸送層4′,電子阻止層5′,緑色発光層7,赤色発光層8,正孔阻止層9′,電子輸送層10′からなる第二の発光ユニット23,正孔輸送層4″,電子阻止層5″,緑色発光層7′,赤色発光層8′,正孔阻止層9″,電子輸送層10″からなる第三の発光ユニット24,バッファ層11、及び陰極となる上部電極12を有する。第一の発光ユニット22および第二の発光ユニット23の間に電荷発生層21が形成される。第二の発光ユニット23および第三の発光ユニット24の間に電荷発生層21′が形成される。第二の基板16であるガラス基板の両側に第一の光取出し層15及び第二の光取出し層17が形成されることで光取出し基板18となる。
有機発光素子基板13と光取出し基板18は高屈折率樹脂14で密着されている。基板1上に、実施例1と同様の条件で、下部電極2とITO電極を形成した。
【0099】
次に、ITO電極上に、膜厚60nmのα−NPD蒸着膜からなる正孔輸送層4、膜厚10nmのTAPC膜からなる電子阻止層5、膜厚40nmのmCPとFIrpicの共蒸着膜からなる青色発光層6、膜厚10nmのBphen蒸着膜からなる正孔阻止層9、膜厚10nmのAlq3蒸着膜からなる電子輸送層10を形成した。各蒸着膜の作製条件は実施例1と同様である。これにより、第一の発光ユニット22が形成される。
【0100】
次に、電子輸送層10の上に、蒸着法にて膜厚5nmの酸化モリブデン(MoO3)蒸着膜を電荷発生層21として形成した。その上に、膜厚100nmのα−NPD蒸着膜からなる正孔輸送層4′、膜厚20nmのTAPC膜からなる電子阻止層5′、膜厚20nmのCBP,Ir(ppy)3共蒸着膜からなる緑色発光層7、膜厚20nmのCBP、btp2Ir(acac)共蒸着膜からなる赤色発光層8、膜厚10nmのBphen蒸着膜からなる正孔阻止層9′、膜厚10nmのAlq3蒸着膜からなる電子輸送層10′を形成した。各蒸着膜の作製条件は実施例1と同様である。これにより、第二の発光ユニット層23が形成される。
【0101】
次に、電子輸送層10′の上に、蒸着法にて膜厚5nmの酸化モリブデン(MoO3)蒸着膜を電荷発生層21′として形成した。その上に、膜厚120nmのα−NPD蒸着膜からなる正孔輸送層4″、膜厚40nmのTAPC膜からなる電子阻止層5″、膜厚20nmのCBP,Ir(ppy)3共蒸着膜からなる緑色発光層7′、膜厚20nmのCBP,btp2Ir(acac)共蒸着膜からなる赤色発光層8′、膜厚10nmのBphen蒸着膜からなる正孔阻止層9″、膜厚10nmのAlq3蒸着膜からなる電子輸送層10″を形成した。各蒸着膜の作製条件は実施例1と同様である。これにより、第三の発光ユニット層24が形成される。
【0102】
次に、電子輸送層10″の上に、MgとAgの混合膜からなるバッファ層11、膜厚50nmのIZO膜からなる上部電極12を形成した。各層の作製条件は実施例1と同様である。これにより、有機発光素子基板13が形成される。
【0103】
次に、第二の基板16,第一の光取出し層15,第二の光取出し層17を形成した。各層の作製条件は実施例1と同様である。これにより、光取出し基板18が形成される。
【0104】
次に、有機発光素子基板13と光取出し基板18を、実施例1と同様の作製条件で密着させた。このようにして本実施例の有機発光装置が得られた。
【0105】
青色発光層6で発光する青色発光の発光点は青色発光層6の中間に位置する。そのため、光学長L1=186nmとなる。λ0=450nmである事から、(式1)の左辺は、m=1において、163nm、右辺は208nmであり、L1は(式1)を満たしている。
次に、第二の発光ユニット23で発光する緑色発光と赤色発光の発光点は緑色発光層7と赤色発光層8の界面に位置する。そのため、緑色発光及び赤色発光の光学長L1=592nmとなる。λ0=520nmである事から、緑色発光に対する(式1)の左辺は、m=2において、498nm、右辺は635nmであり、L1は(式1)を満たしている。また、赤色発光に対する(式1)の左辺は、m=2において、531nm、右辺は677nmであり、L1は(式1)を満たしている。
【0106】
最後に、第三の発光ユニット24で発光する緑色発光と赤色発光の発光点は緑色発光層7′と赤色発光層8′の界面に位置する。そのため、緑色発光及び赤色発光の光学長L1=998nmとなる。λ0=520nmである事から、緑色発光に対する(式1)の左辺は、m=3において、831nm、右辺は1059nmであり、L1は(式1)を満たしている。また、赤色発光に対する(式1)の左辺は、m=3において、957nm、右辺は1219nmであり、L1は(式1)を満たしている。よって、青,緑,赤色発光とも、(式1)の光学干渉条件を満足した。それにより、高屈折率樹脂層14内に入射される光は92%となった。第二の基板16と高屈折率樹脂層14の屈折率差により、第一の光取出し層16がない場合、第二の基板16内に入射される光は50%程度であった。しかし、第一の光取出し層15を設けた構成では、全反射されるエバネセント光を第一の光取出し層15内に分散された微粒子により散乱され、80%の光が第二の基板16内に入射された。第二の基板16内に入射された光は、第二の光取出し層17内に分散された微粒子により散乱され、56%の光が空気層に取り出された。これにより光取出し効率が、従来技術の干渉条件の層構成に光取出し層を設けた有機発光素子に比べて、2.8倍向上した。また、空気層に出射された光は光取出し層で散乱されて出射されることにより、各出射方向での発光スペクトルがほぼ等しくなり、発光スペクトルの視野角依存性が抑制された。本実施例により、一定輝度を得るために必要な電流を低減できた。
【実施例7】
【0107】
次に、実施例7に係る有機発光装置を説明する。図5は、実施例7に係る有機発光装置の断面図である。有機発光装置は、第一の基板である基板1及び基板1上に有機発光素子が配置された有機発光素子基板13を有する。有機発光素子は、陽極となる下部電極2及びITO電極の上に、正孔輸送層4,電子阻止層5,赤色発光層8,正孔阻止層9,電子輸送層10からなる第一の発光ユニット22,正孔輸送層4′,電子阻止層5′,緑色発光層7,正孔阻止層9′,電子輸送層10′からなる第二の発光ユニット23,正孔輸送層4″,電子阻止層5″,青色発光層6,正孔阻止層9″,電子輸送層10″からなる第三の発光ユニット24,バッファ層11、及び陰極となる上部電極12を有する。第一の発光ユニット22および第二の発光ユニット23の間に電荷発生層21が形成される。第二の発光ユニット23および第三の発光ユニット24の間に電荷発生層21′が形成される。第二の基板16であるガラス基板の両側に第一の光取出し層15及び第二の光取出し層17が形成されることにより光取出し基板18となる。有機発光素子基板13と光取出し基板18は高屈折率樹脂14で密着されている。
【0108】
基板1上に、実施例1と同様の条件で、下部電極2とITO電極を形成した。
【0109】
次に、ITO電極上に、膜厚80nmのα−NPD蒸着膜からなる正孔輸送層4、膜厚10nmのTAPC膜からなる電子阻止層5、膜厚40nmのCBP,btp2Ir(acac)共蒸着膜からなる赤色発光層8、膜厚10nmのBphen蒸着膜からなる正孔阻止層9、膜厚10nmのAlq3蒸着膜からなる電子輸送層10を形成した。各蒸着膜の作製条件は実施例1と同様である。これにより、第一の発光ユニット22が形成される。
【0110】
次に、電子輸送層10の上に、蒸着法にて膜厚5nmの酸化モリブデン(MoO3)蒸着膜を電荷発生層21として形成した。その上に、膜厚85nmのα−NPD蒸着膜からなる正孔輸送層4′、膜厚40nmのTAPC膜からなる電子阻止層5′、膜厚40nmのCBP,Ir(ppy)3共蒸着膜からなる緑色発光層7、膜厚10nmのBphen蒸着膜からなる正孔阻止層9′、膜厚10nmのAlq3蒸着膜からなる電子輸送層10′を形成した。各蒸着膜の作製条件は実施例1と同様である。これにより、第二の発光ユニット23が形成される。
【0111】
次に、電子輸送層10′の上に、蒸着法にて膜厚5nmの酸化モリブデン(MoO3)蒸着膜を電荷発生層21′として形成した。その上に、膜厚75nmのα−NPD蒸着膜からなる正孔輸送層4″、膜厚40nmのTAPC膜からなる電子阻止層5″、膜厚40nmのmCPとFIrpicの共蒸着膜からなる青色発光層6、膜厚10nmのBphen蒸着膜からなる正孔阻止層9″、膜厚10nmのAlq3蒸着膜からなる電子輸送層10″を形成した。各蒸着膜の作製条件は実施例1と同様である。これにより、第三の発光ユニット24が形成される。
【0112】
次に、電子輸送層10″の上に、MgとAgの混合膜からなるバッファ層11、膜厚50nmのIZO膜からなる上部電極12を形成した。各層の作製条件は実施例1と同様である。これにより、有機発光素子基板13が形成される。
【0113】
次に、第二の基板16,第一の光取出し層15,第二の光取出し層17を形成した。各層の作製条件は実施例1と同様である。これにより、光取出し基板18が形成される。
【0114】
次に、有機発光素子基板13と光取出し基板18を、実施例1と同様の作製条件で密着させた。このようにして本実施例の有機発光装置が得られた。
【0115】
第一の発光ユニット22の赤色発光層8で発光する赤色発光の発光点は赤色発光層8と電子阻止層5の界面に位置する。そのため、光学長L1=220nmとなる。λ0=610nmである事から、(式1)の左辺は、m=1において、212nm、右辺は270nmであり、L1は(式1)を満たしている。次に、第二の発光ユニット23の緑色発光層7で発光する緑色発光の発光点は緑色発光層7と電子阻止層5′の界面に位置する。そのため、緑発光の光学長L1=565nmとなる。λ0=520nmである事から、緑発光に対する(式1)の左辺は、m=2において、498nm、右辺は635nmであり、L1は(式1)を満たしている。最後に、第三の発光ユニット24の青色発光層6で発光する青色発光の発光点は青色発光層6と電子阻止層5″の界面に位置する。そのため、青発光の光学長L1=836nmとなる。λ0=450nmである事から、青発光に対する(式1)の左辺は、m=3において、706nm、右辺は899nmであり、L1は(式1)を満たしている。
【0116】
よって、青,緑,赤発光とも、(式1)の光学干渉条件を満足した。それにより、高屈折率樹脂層14内に入射される光は92%となった。第二の基板16と高屈折率樹脂層14の屈折率差により、第一の光取出し層15がない場合、第二の基板16内に入射される光は50%程度であった。しかし、第一の光取出し層15を設けた構成では、全反射されるエバネセント光を第一の光取出し層15内に分散された微粒子により散乱され、80%の光が第二の基板16内に入射された。第二の基板16内に入射された光は、第二の光取出し層17内に分散された微粒子により散乱され、56%の光が空気層に取り出された。
これにより光取出し効率が、従来技術の干渉条件の層構成に光取出し層を設けた有機発光素子に比べて、2.8倍向上した。また、空気層に出射された光は光取出し層で散乱されて出射されることにより、各出射方向での発光スペクトルがほぼ等しくなり、発光スペクトルの視野角依存性が抑制された。本実施例では有機層の積層数が少ないため、製造プロセスを簡素化できる。
【符号の説明】
【0117】
1 基板
2 下部電極
3 透明電極
4 正孔輸送層
5 電子阻止層
6 青色発光層
7 緑色発光層
8 赤色発光層
9 正孔阻止層
10 電子輸送層
11 バッファ層
12 上部電極
13 有機発光素子基板
14 高屈折率樹脂層
15 第一の光取出し層
16 第二の基板
17 第二の光取出し層
18 光取出し基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機発光素子基板および光取出し基板を有する有機発光装置であって、
前記有機発光素子基板は、第一の基板,第一の電極,有機層および第二の電極を有し、 前記第一の基板上に前記第一の電極が形成され、
前記第一の電極上に前記有機層が形成され、
前記有機層上に前記第二の電極が形成され、
前記第二の電極上に前記光取出し基板が形成され、
前記有機層には発光層が含まれ、
前記光取出し基板は、第一の光取出し層,第二の基板および第二の光取出し層を有し、 前記第二の基板の前記第二の電極が存在する側の表面に第一の光取出し層が形成され、 前記第二の基板の前記第二の電極が存在しない側の表面に第二の光取出し層が形成され、
第一の光取出し層には微粒子およびバインダが含まれ、
第二の光取出し層には微粒子およびバインダが含まれ、
前記第一の光取出し層に含まれる微粒子の平均粒子径は0.05μm以上2μm以下であり、
前記第二の光取出し層に含まれる微粒子の平均粒子径は1μm以上10μm以下であり、
前記発光層の発光点と前記第一の電極との間の光学長L1が(式1)を満たす有機発光装置。
(式1)
(2m−155/180)λ0/4/cos35°≦L1≦(2m−155/180)λ0 /4/cos50°
(λ0は前記発光層の発光中心波長、mは1以上の整数)
【請求項2】
請求項1において、
前記第一の光取出し層に含まれる微粒子の平均粒子径は0.1μm以上1μm以下であり、
前記第二の光取出し層に含まれる微粒子の平均粒子径は1μm以上5μm以下である有機発光装置。
【請求項3】
請求項1において、
前記有機発光素子基板および前記光取出し基板は高屈折率樹脂層で密着され、
前記高屈折率樹脂層の屈折率は1.6以上であり、
前記高屈折率樹脂層の膜厚は5μm以上200μm以下である有機発光装置。
【請求項4】
請求項1において、
前記発光層は青色発光層であり、
前記有機層および前記第二の電極の間に発光ユニットが形成され、
前記発光ユニットは赤色発光層および緑色発光層を含み、
前記発光ユニットおよび前記有機層の間に電荷発生層が形成され、
前記赤色発光層の発光点と前記第一の電極との間の光学長L2、前記緑色発光層の発光点と前記第一の電極との間の光学長L3が(式2)および(式3)を満たす有機発光装置。
(式2)
(2m−155/180)λ1/4/cos35°≦L2≦(2m−155/180)λ1 /4/cos50°
(λ1は前記赤色発光層の発光中心波長、mは1以上の整数)
(式3)
(2m−155/180)λ2/4/cos35°≦L3≦(2m−155/180)λ2 /4/cos50°
(λ2は前記緑色発光層の発光中心波長、mは1以上の整数)
【請求項5】
請求項1において、
前記発光層は赤色発光層であり、
前記有機層上に第一の電荷発生層が形成され、
前記第一の電荷発生層上に緑色発光層が形成され、
前記緑色発光層上に第二の電荷発生層が形成され、
前記第二の電荷発生層上に青色発光層が形成され、
前記青色発光層上に前記第二の電極が形成され、
前記緑色発光層の発光点と前記第一の電極との間の光学長L2、前記青色発光層の発光点と前記第一の電極との間の光学長L3が(式4)および(式5)を満たす有機発光装置。
(式4)
(2m−155/180)λ1/4/cos35°≦L2≦(2m−155/180)λ1 /4/cos50°
(λ1は前記緑色発光層の発光中心波長、mは1以上の整数)
(式5)
(2m−155/180)λ2/4/cos35°≦L3≦(2m−155/180)λ2 /4/cos50°
(λ2は前記青色発光層の発光中心波長、mは1以上の整数)
【請求項6】
請求項1において、
前記第一の光取出し層に含まれる微粒子は、酸化チタン,酸化ジルコニウムまたはチタン酸バリウムのいずれか一つ以上である有機発光装置。
【請求項7】
請求項1において、
前記第二の光取出し層に含まれる微粒子は、酸化チタン,酸化ジルコニウム,チタン酸バリウムのいずれか一つ以上である有機発光装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−155868(P2012−155868A)
【公開日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−11502(P2011−11502)
【出願日】平成23年1月24日(2011.1.24)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】