説明

有機発光装置の製造方法、有機発光装置および電子機器

【課題】発光素子の特性の経時的な低減を抑制または防止することができる有機発光装置を、低コストで、生産性よく製造することができる有機発光装置の製造方法、かかる製造方法によって製造された有機発光装置、および、かかる有機発光装置を備え信頼性の高い電子機器を提供すること。
【解決手段】有機発光装置の製造方法は、例えば、有機EL素子3が形成された基板(一方の基板)21と、乾燥剤膜4が形成された上基板(他方の基板)22と、封止部23とをする有機EL装置を製造する方法であり、上基板22の閉空間24側の面の乾燥剤膜4を形成しない撥液膜形成領域221に、撥液性を付与する第1の工程と、上基板22の乾燥剤膜形成領域223に乾燥剤を含有する液状材料を供給して乾燥することにより乾燥剤膜4を形成する第2の工程と、基板21と上基板22とを封止部23を形成することにより貼り合わせる第3の工程とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機発光装置の製造方法、有機発光装置および電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
有機半導体材料を使用したエレクトロルミネッセンス素子(有機EL素子)は、固体発光型の安価な大面積フルカラー表示装置が備える有機発光素子としての用途が有望視され、多くの開発が行われている(例えば、特許文献1参照)。
一般に、有機EL素子は、陰極と陽極との間に有機半導体材料(有機発光材料)で構成される有機半導体層(有機発光層)を有する構成であり、陰極と陽極との間に電界を印加すると、有機発光層に陰極側から電子が注入され、陽極側から正孔が注入される。
【0003】
そして、注入された電子と正孔とが有機発光層において再結合し、エネルギー準位が伝導帯から価電子帯に戻る際の失活エネルギーの少なくとも一部を光エネルギーとして放出することにより、有機発光層が発光する。
このような有機EL素子における発光効率等の特性を向上させることを目的に、用いる有機発光材料の種類や、デバイス構造等について活発な研究が行われている。
【0004】
ところで、有機発光材料は、一般的に、水に対する反応性が高いため、水分と接触すると経時的に変質・劣化することとなる。すなわち、有機発光層が経時的に変質・劣化することとなる。そのため、有機発光層の特性が低下したり、有機発光層が接触する層との間に剥離が生じてしまうこと等に起因して、有機EL素子の発光効率等の特性が低下するという問題がある。
【0005】
かかる問題を解決すること、すなわち、有機発光材料の変質・劣化を防止することを目的に、水蒸気バリア性を有する封止材を用いて有機EL素子を封止するとともに、この封止材の内側に乾燥剤を配置して、有機EL素子の外部から内部への水分の移動(浸入)を抑制または防止し、さらに、仮に水分が侵入したとしても、この水分を乾燥剤に吸着させるようにしたデバイス構造が開発されている。
【0006】
例えば、特許文献1には、中央部に凹部を備え、この凹部内に乾燥剤を収納し得るガラス板を封止材として用いた有機EL素子が提案されている。
すなわち、特許文献1では、有機EL素子は、凹部内に乾燥剤が収納されたガラス板の縁部に、このガラス基板と有機EL素子が形成された基板とを接着する樹脂材料を塗布し、前記ガラス板と前記基板とを、それぞれ、乾燥剤側と有機EL素子側とを対向させて接合し、前記樹脂材料を硬化させることによって封止されている。
【0007】
ここで、ガラス基板に凹(ザグリ)部を形成する方法としては、ブラスト法やウェットエッチング法等が用いられる。
しかしながら、これらの方法を用いて凹部を形成するには、長時間を要し、さらに例えばウェットエッチング法を用いた場合、エッチング液の処理等を行う必要があるため、かかる構成のガラス基板を封止材として用いると、有機EL装置の生産性が低くなり、製造コストが増大するという問題がある。
また、凹部内に収納された乾燥剤は、ガラス基板の中央部に局在していることから、有機EL装置全体を乾燥するのが困難であり、有機EL装置内に侵入した水分が十分に乾燥剤により吸着されないという問題も生じている。
【0008】
【特許文献1】特開2000−195660号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、発光素子が水分と接触することによる特性の経時的な低減を抑制または防止することができる有機発光装置を、低コストで、生産性よく製造することができる有機発光装置の製造方法、かかる製造方法によって製造された有機発光装置、および、かかる有機発光装置を備え信頼性の高い電子機器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
このような目的は、下記の本発明により達成される。
本発明の有機発光装置の製造方法は、互いに対向する一対の基板と、該一対の基板同士の間に閉空間が形成されるように、前記一対の基板同士を封止する封止部とを備えるケーシングと、
前記一対の基板のうち、一方の基板の前記閉空間側に設けられ、主として有機発光材料で構成される有機発光層を備える有機発光素子と、
前記一対の基板のうち、他方の基板の前記閉空間側に設けられ、主として乾燥剤で構成される乾燥剤膜とを有する有機発光装置の製造方法であって、
前記閉空間内における前記他方の基板の前記閉空間側の面の前記乾燥剤膜を形成しない第1の領域に、撥液性を付与し、撥液膜を形成する第1の工程と、
前記他方の基板の前記閉空間側の面の前記乾燥剤膜を形成する第2の領域に、前記乾燥剤を含有する液状材料を供給して、該液状材料を、前記撥液膜により前記第2の領域に保持した状態で乾燥することにより、前記乾燥剤膜を形成する第2の工程と、
前記有機発光素子が形成された前記一方の基板と、前記乾燥剤膜が形成された前記他方の基板とを、前記有機発光素子と前記乾燥剤膜とが対向するようにして前記封止部を形成することにより貼り合せる第3の工程とを有することを特徴とする。
これにより、乾燥剤膜を、所定のパターンおよび厚さで、容易かつ確実に形成することができ、発光素子の特性の経時的な低減を抑制または防止することができる有機発光装置を、低コストで、生産性よく製造することができる。
【0011】
本発明の有機発光装置の製造方法では、前記第1の領域は、前記第2の領域の外周部分であることが好ましい。
これにより、乾燥剤膜を、第1の領域の内側に、所定の厚さで容易かつ確実に形成することができる。
本発明の有機発光装置の製造方法では、前記第1の工程において、前記他方の基板の前記閉空間側の面の前記第1の領域に、撥液性を有する化合物を主材料とする撥液膜を、プラズマ重合法を用いて形成することにより撥液性を付与することが好ましい。
これにより、他方の基板の閉空間側の面の前記第1の領域に、緻密な撥液膜を形成することができ、優れた撥液性を付与することができる。
【0012】
本発明の有機発光装置の製造方法では、前記第3の工程において、前記封止部は、前記一方の基板と前記他方の基板との間に供給された樹脂材料を固化させることにより形成されることが好ましい。
これにより、封止部を比較的簡単な工程で形成することができる。
本発明の有機発光装置の製造方法では、前記第3の工程に先立って、前記他方の基板の前記封止部を形成する領域に、前記樹脂材料に対して親和性を有する化合物を主材料とする樹脂親和膜を形成することにより前記樹脂材料に対する親和性を付与することが好ましい。
これにより、他方の基板が樹脂材料との密着性が低い材料で構成されている場合でも、この他方の基板と封止部とを密着性よく固定することができ、他方の基板と封止部との間の密閉性を向上させることができる。
【0013】
本発明の有機発光装置の製造方法では、前記樹脂材料は、ギャップ材を含み、該ギャップ材により前記封止部の厚さが規定されることが好ましい。
これにより、所定の大きさの閉空間をこれらの一方の基板と他方の基板との間に設けることができる。
本発明の有機発光装置の製造方法では、前記ギャップ材は、粒子で構成されることが好ましい。
これにより、一方の基板と他方の基板との離間距離を一定の大きさに維持することができる。その結果、均一な厚さの封止部を形成することができ、有機発光素子と乾燥剤膜との離間距離を均一な大きさに保つことができる。
【0014】
本発明の有機発光装置の製造方法では、前記ギャップ材は、主として乾燥剤で構成されることが好ましい。
これにより、封止部内で水分を吸着することができることから、封止部を介した有機発光装置から閉空間内への水分の侵入をより確実に防止することができる。
本発明の有機発光装置の製造方法では、前記第3の工程において、前記封止部は、前記一方の基板と前記他方の基板との間に供給された前記ギャップ材を含む第1の樹脂材料を固化させた後、固化した前記第1の樹脂材料の前記有機発光素子と反対側に、前記ギャップ材を含まない第2の樹脂材料を供給して固化させることにより形成されることが好ましい。
封止部をかかる構成とすることは、ギャップ材が主として乾燥剤により構成されている場合に適用するのが特に効果的である。すなわち、第1の封止部の外側を第2の封止部で封止する構成とすることにより、第2の封止部を介して有機発光装置の外側から閉空間内に水分が浸入するのが好適に防止または抑制し得るとともに、仮に水分が第2の封止部を透過(通過)したとしても、第1の封止部内に含まれる乾燥剤により水分を確実に捕捉することができる。
【0015】
本発明の有機発光装置の製造方法では、前記第3の工程において、前記封止部は、前記他方の基板の前記閉空間側の面の前記第1の領域に前記撥液膜が形成されていることにより、前記乾燥剤膜と離間して形成されることが好ましい。
かかる構成とすることにより、封止部と乾燥剤膜とが接触することによる乾燥剤膜の変質・劣化を確実に防止することができる。
【0016】
本発明の有機発光装置の製造方法では、前記第3の工程において、前記乾燥剤膜と前記発光素子とを接触させることが好ましい。
かかる構成とすることにより、有機発光装置の厚さが薄くなるとともに、有機発光素子の駆動時において、この素子で生じた熱を、乾燥剤膜および他方の基板を伝導させて、有機発光装置の外部に効率よく放熱させることができるという利点も得られる。
【0017】
本発明の有機発光装置の製造方法では、前記封止部は、雰囲気の温度を40℃とした時の水蒸気透過度(JIS K 7129に規定)が、10[g/m・day・90%RH]以下であることが好ましい。
これにより、封止部に、有機発光装置の外側から閉空間への水分の浸入を抑制するバリア層としての機能を好適に発揮させることができる。
【0018】
本発明の有機発光装置では、本発明の有機発光装置の製造方法で製造されたことを特徴とする。
これにより、信頼性の高い有機発光装置を得ることができる。
本発明の電子機器では、本発明の有機発光装置を備えることを特徴とする。
これにより、信頼性の高い電子機器を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の有機発光装置の製造方法、有機発光装置および電子機器を添付図面に示す好適実施形態に基づいて詳細に説明する。
まず、本発明の有機発光装置の製造方法を有機エレクトロルミネッセンス装置の製造方法に適用した場合について説明する。
<有機EL装置>
<<第1の構成>>
まず、有機エレクトロルミネッセンス装置の製造方法を説明するのに先立って、かかる製造方法を適用することにより得られた有機エレクトロルミネッセンス装置の第1の構成について説明する。
【0020】
図1は、本発明の有機発光装置の製造方法を適用して得られた有機エレクトロルミネッセンス装置の第1の構成を示した模式図(縦断面図)である。なお、以下の説明では、図1中の上側を「上」、下側を「下」と言う。
図1に示す有機エレクトロルミネッセンス装置(以下、「有機EL装置」という。)1aは、ケーシング2と、ケーシング2内に設けられた有機EL素子(発光素子)3および乾燥剤膜4とを有している。
【0021】
ケーシング2は、基板(一方の基板)21と、基板21に対向するように配置された上基板(他方の基板)22と、これらの基板21、上基板22同士の間に閉空間24が画成されるように、その縁部でこれらの基板21、22同士を封止する封止部23と、封止部23と乾燥剤膜4とを離間する撥液膜5とで構成されている。
そして、この閉空間24内の基板21の上面および上基板22の下面に、それぞれ有機EL素子3および乾燥剤膜4が設けられている。
【0022】
基板21は、有機EL素子3を支持する支持体となるものであるとともに、有機EL素子3の下側で、有機EL素子3および乾燥剤膜4を気密的に封止する封止材として機能するものである。
また、本実施形態の有機EL装置1aは、基板21(後述する陽極31)側から光を取り出す構成(ボトムエミッション型)であるため、基板21は、実質的に透明(無色透明、着色透明、半透明)とされる。
【0023】
このような基板21には、透光性を有する各種ガラス材料基板および各種樹脂基板が好適に用いられる。
具体的には、例えば、石英ガラス、ソーダガラスのようなガラス材料や、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリプロピレン、シクロオレフィンポリマー、ポリアミド、ポリエーテルサルフォン、ポリメチルメタクリレート、ポリカーボネート、ポリアリレートのような樹脂材料等を主材料として構成される基板を用いることができる。
【0024】
上基板22は、乾燥剤膜4を支持する支持体となるものであるとともに、有機EL素子3の上側で、有機EL素子3および乾燥剤膜4を気密的に封止する封止材として機能するものである。
本実施形態の有機EL装置1aは、ボトムエミッション型であるため、上基板22には、透光性は特に必要とされず、前述した透光性を有する材料を主材料として構成される基板を用いることができるとともに、透光性を有さない材料を主材料として構成される基板を用いることができる。
【0025】
具体的には、透光性を有さない材料を主材料として構成される基板としては、金属基板、樹脂基板およびアルミナ等のセラミック基板の他、これらの基板の表面に水蒸気透過度の小さい薄膜を被膜した多層基板等が挙げられる。また、水蒸気透過度の小さい薄膜としては、SiOx膜、SiNx膜、SiON膜、金属膜等が挙げられる。
これらのうち、金属基板や水蒸気透過度の小さい薄膜を被膜した多層基板は、水蒸気透過度が小さく、特に優れた水蒸気バリア性を発揮することから、上基板22として好適に用いられる。
【0026】
封止部23は、基板21と上基板22との間で形成された空間を、これらの縁部(封止部形成領域222)において封止することにより閉空間24を画成し、この閉空間24内で有機EL素子3および乾燥剤膜4を気密的に封止する封止材として機能するものである。
本実施形態では、封止部23は、封止材231とギャップ材232とで構成されている。
【0027】
封止材231は、基板21と上基板22とを連結する機能を有するものである。
封止材231の構成材料としては、例えば、Al、Au、Cr、Nb、Ta、Tiのような金属材料またはこれら金属材料を含む合金、酸化シリコンのような無機酸化物、エポキシ系樹脂、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂のような樹脂材料等が挙げられるが、これらの中でも、樹脂材料を用いるのが好ましい。樹脂材料を用いることにより、後述する封止部形成工程において、ギャップ材232を含有する樹脂材料を基板21と上基板22との間に供給して固化させる(乾燥する)という比較的簡単な工程で封止部23を形成することができる。
【0028】
ギャップ材232は、封止部23の厚さ、すなわち基板21と上基板22との厚さを規定する機能を有するものである。そのため、基板21と上基板22との間に、このギャップ材232を含む樹脂材料を供給して、封止部23を得る構成とすることにより、所定の大きさの閉空間(スペース)24をこれらの基板21、22同士の間に設けることができる。
【0029】
このようなギャップ材232の形状は、粒子状のものであればよく、特に限定されるものではないが、例えば、球状、楕円球状または多角形状であるのが好ましく、球状であるのがより好ましい。ギャップ材232として、粒子状のものを用いることにより、後述する封止部形成工程において、基板21と上基板22との離間距離を一定の大きさに維持することができる。その結果、均一な厚さの封止部23を形成することができ、有機EL素子3と乾燥剤膜4との離間距離を均一な大きさに保つことができる。
【0030】
ギャップ材232の構成材料としては、例えば、Al、Au、Cr、Nb、Ta、Tiのような金属材料またはこれら金属材料を含む合金、酸化シリコンのような無機酸化物等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
また、ギャップ材232は、上述したような構成材料を主材料として構成されるものの他、その一部またはほぼ全てが乾燥剤により構成されるものであってもよい。ギャップ材232を、乾燥剤を含む構成とすることにより、仮に有機EL装置1a(閉空間24)内に水分が残存したとしても、この水分を、後述する乾燥剤膜4に含まれる乾燥剤とともに、この封止部23に含まれる乾燥剤にも吸着させることができる。さらに、封止部23内で水分を吸着(捕捉)することができることから、封止部23を介した有機EL装置1aから閉空間24内への水分の侵入をより確実に防止することができる。
【0031】
なお、乾燥剤としては、後述する乾燥剤膜4で用いる乾燥剤と同様のものを用いることができる。
かかる構成の封止部23は、雰囲気の温度を40℃とした時の水蒸気透過度(JIS K 7129に規定)[g/m・day・90%RH]が、10以下であるのが好ましく、1〜5程度であるのがより好ましい。これにより、封止部23は、有機EL装置1aの外側から閉空間24への水分の浸入を抑制するバリア層としての機能を好適に発揮する。
【0032】
なお、この水分透過度は、JIS K 7129の規定に従って、試験(雰囲気)温度(40±0.5℃)、相対湿度差(90±2%RH)の条件下で、感湿センサー法を用いて算出できる。
なお、感湿センサー法とは、上基板22(試験片)の片側を水蒸気飽和状態とし、その反対(低湿度)側の湿度を10%RHに設定する。次に、この試験片を透過した水蒸気量による湿度変化を低湿度側に設置した感湿センサーで検出し、電気信号に変換する。そして、一定の相対湿度幅(90%RH)の水蒸気透過時間を測定し、その水蒸気透過速度の定常状態を確認後、その数値から水蒸気透過度を算出する方法である。
【0033】
なお、基板21または上基板22のうち少なくとも一方が可撓性を有する場合、封止部23の形成を省略して、この可撓性を有する基板を撓ませた後、これらの基板同士が接合する周辺部において封止することにより、基板21および/または上基板22に封止部23としての機能を発揮させることができる。
また、有機EL装置1aを可撓性を有するフレキシブルディスプレイとする場合には、ケーシング2、すなわち、上述した基板21、上基板22および封止部23の全てを、樹脂材料を主材料として構成すればよい。
【0034】
なお、フレキシブルディスプレイとすること、すなわち、基板21、上基板22および封止部23の全てを樹脂材料で構成することにより、これらの一部を例えばガラス材料で構成する場合と比較して、ケーシング2の水蒸気バリア性が低下する傾向を示す。そのため、フレキシブルディスプレイの製造方法に、後述するように、乾燥剤膜を所定のパターンおよび厚さで形成し得る本発明の製造方法を適用することは特に有効である。
【0035】
乾燥剤膜4は、閉空間24内における上基板22の下面の外周部分を除いた乾燥剤膜形成領域(第2の領域)223、すなわち後述する撥液膜形成領域(第1の領域)221に取り囲まれる領域に設けられている。
乾燥剤膜4は主として乾燥剤で構成され、閉空間24内に残存または浸入した水分を吸湿(吸着)する機能を有するものである。このような乾燥剤膜4を設ける構成とすることにより、たとえ有機EL装置1a(閉空間24)内に水分が残存または浸入したとしても、この水分を乾燥剤膜4に含まれる乾燥剤に確実に吸着させることができる。その結果、有機EL素子3内に水分が浸入するのを経時的に防止し得ることから、有機EL素子3の特性の低下を確実に防止することができる。
【0036】
また、本実施形態では、図1に示すように、後述する有機EL素子3の形状に対応するように乾燥剤膜4が形成されている。かかる構成とすることにより、有機EL素子3全体を乾燥することができ、有機EL素子3の一部に対して水分が局所的に浸入してしまうのを確実に防止することができる。
この乾燥剤膜4は、乾燥剤を含有する液状材料を、乾燥剤膜形成領域223に供給した後、乾燥することによって形成されるものである。
【0037】
なお、乾燥剤を含有する液状材料の具体例および乾燥剤膜4の形成方法については後述する乾燥剤膜形成工程において詳述する。
また、閉空間24内における上基板22の下面の乾燥剤膜形成領域(第2の領域)223を除いた撥液膜形成領域(第1の領域)221には、乾燥剤膜形成領域223を取り囲むように撥液膜5が形成されている。
【0038】
この撥液膜5は、後述する乾燥剤膜形成工程および封止部形成工程において、それぞれ、乾燥剤を含有する液状材料、および、封止部23を形成するための樹脂材料を供給する際に、前記液状材料および前記樹脂材料が所定領域223、222からはみ出るのを防止する機能を有する。すなわち、撥液膜5は、前記液状材料および前記樹脂材料を、それぞれ、所定領域223、222内に保持する機能を有する。このような撥液膜5を備える構成とすることにより、所望のパターン(形状)および厚さで形成された、乾燥剤膜4および封止部23を確実に得ることができる。
この撥液膜5の材料の具体例およびその形成方法については、後述する撥液膜形成工程において詳述する。
【0039】
有機EL素子3は、基板21上の閉空間24に対応する領域に設けられている。
有機EL素子(発光素子)3は、図1に示すように、陽極31と、陰極33と、陽極31と陰極33との間に設けられた有機半導体層32とを有している。
この有機半導体層32は、I:陽極31側から正孔輸送層と有機発光層と電子輸送層とがこの順で積層された積層体、II:Iの構成から正孔輸送層または電子輸送層のいずれかを省略した積層体、III:Iの構成から正孔輸送層および電子輸送層を省略した単層体等の有機発光層を備えるものであればいかなる構成であってもよいが、以下ではIの場合を代表に説明する。
【0040】
陽極31は、有機半導体層32(本実施形態では、正孔輸送層)に正孔を注入する電極である。
この陽極31の構成材料(陽極材料)としては、有機EL装置1aが陽極31側から光を取り出すボトムエミッション構造であるため透光性を有する導電材料が選択され、特に、仕事関数が大きく、優れた導電性を有するものが好適に用いられる。
【0041】
このような陽極31の構成材料としては、インジウムティンオキサイド(ITO)、フッ素含有インジウムティンオキサイド(FITO)、アンチモンティンオキサイド(ATO)、インジウムジンクオキサイド(IZO)、アルミニウムジンクオキサイド(AZO)、酸化スズ(SnO)、酸化亜鉛(ZnO)、フッ素含有酸化スズ(FTO)、フッ素含有インジウムオキサイド(FIO)、インジウムオキサイド(IO)、等の透明導電性材料が挙げられ、これらのうちの少なくとも1種を用いることができる。
このような陽極31は、その光(可視光領域)の透過率が好ましくは60%以上、より好ましくは80%以上となっている。これにより、光を効率よく陽極31側から取り出すことができる。
【0042】
一方、陰極33は、有機半導体層32(本実施形態では、電子輸送層)に電子を注入する電極である。
この陰極33の構成材料(陽極材料)としては、電子輸送層への電子の注入効率を向上させることを目的に、優れた導電性を発揮するもののうち、特に、仕事関数が小さいものが好適に用いられる。
【0043】
このような陰極33の構成材料としては、例えば、Li、Na、K、Rb、CsおよびFrからなるアルカリ金属、および、Be、Mg、Ca、Sr、BaおよびRaからなるアルカリ土類金属等が挙げられ、これらのうち1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
また、陰極33の構成材料として、上述したような金属を含む合金を用いる場合には、Ag、Al、Cu等の安定な金属を含む合金、具体的には、MgAg、AlLi、CuLi等の合金を用いるようにすればよい。かかる合金を陰極33の構成材料として用いることにより、電子の電子輸送層への注入効率および陰極33の安定性の向上を図ることができる。
【0044】
陽極31と陰極33との間には、前述したように、正孔輸送層と有機発光層と電子輸送層とが陽極31側からこの順で積層された有機半導体層32が設けられている。
正孔輸送層は、陽極31から注入された正孔を有機発光層まで輸送する機能を有するものである。
この正孔輸送層の構成材料(正孔輸送材料)としては、例えば、ポリエチレンジオキシチオフェン:ポリスチレンスルホネート、ポリアニリン:ポリスチレンスルホネート、ポリアリールアミン、フルオレン−アリールアミン共重合体、フルオレン−ビチオフェン共重合体、ポリ(N−ビニルカルバゾール)、ポリビニルピレン、ポリビニルアントラセン、ポリチオフェン、ポリアルキルチオフェン、ポリヘキシルチオフェン、ポリ(p−フェニレンビニレン)、ポリチニレンビニレン、ピレンホルムアルデヒド樹脂、エチルカルバゾールホルムアルデヒド樹脂またはその誘導体等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0045】
なお、陽極31と正孔輸送層との間には、例えば、陽極31からの正孔注入効率を向上させる正孔注入層を設けるようにしてもよい。
この正孔注入層の構成材料(正孔注入材料)としては、例えば、銅フタロシアニンや、4,4’,4’’−トリス(N,N−フェニル−3−メチルフェニルアミノ)トリフェニルアミン(m−MTDATA)等が挙げられる。
【0046】
また、電子輸送層は、陰極33から注入された電子を有機発光層まで輸送する機能を有するものである。
電子輸送層の構成材料(電子輸送材料)としては、例えば、1,3,5−トリス[(3−フェニル−6−トリ−フルオロメチル)キノキサリン−2−イル]ベンゼン(TPQ1)のようなベンゼン系化合物、ナフタレン系化合物、フェナントレン系化合物、クリセン系化合物、ペリレン系化合物、アントラセン系化合物、ピレン系化合物、アクリジン系化合物、スチルベン系化合物、BBOTのようなチオフェン系化合物、ブタジエン系化合物、クマリン系化合物、キノリン系化合物、ビスチリル系化合物、ジスチリルピラジンのようなピラジン系化合物、キノキサリン系化合物、2,5−ジフェニル−パラ−ベンゾキノンのようなベンゾキノン系化合物、ナフトキノン系化合物、アントラキノン系化合物、2−(4−ビフェニリル)−5−(4−t−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール(PBD)のようなオキサジアゾール系化合物、3,4,5−トリフェニル−1,2,4−トリアゾールのようなトリアゾール系化合物、オキサゾール系化合物、アントロン系化合物、1,3,8−トリニトロ−フルオレノン(TNF)のようなフルオレノン系化合物、MBDQのようなジフェノキノン系化合物、MBSQのようなスチルベンキノン系化合物、アントラキノジメタン系化合物、チオピランジオキシド系化合物、フルオレニリデンメタン系化合物、ジフェニルジシアノエチレン系化合物、フローレン系化合物、ピロール系化合物、フォスフィンオキサイド系化合物、8−ヒドロキシキノリン アルミニウム(Alq)、ベンゾオキサゾールやベンゾチアゾールを配位子とする錯体のような各種金属錯体等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0047】
なお、陰極33と電子輸送層との間には、例えば、陰極33から電子輸送層への電子の注入効率を向上させる電子注入層を設けるようにしてもよい。
この電子注入層の構成材料(電子注入材料)としては、例えば、8−ヒドロキシキノリン、オキサジアゾール、または、これらの誘導体(例えば、8−ヒドロキシキノリンを含む金属キレートオキシノイド化合物)等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上組み合わせて用いることができる。
【0048】
ここで、陽極31と陰極33との間に通電(電圧を印加)すると、正孔輸送層中を移動した正孔が有機発光層に注入され、また、電子輸送層中を移動した電子が有機発光層に注入され、この有機発光層において正孔と電子とが再結合する。そして、有機発光層ではエキシトン(励起子)が生成し、このエキシトンが基底状態に戻る際にエネルギー(蛍光やりん光)を放出(発光)する。
【0049】
有機発光層の構成材料(有機発光材料)としては、例えば、1,3,5−トリス[(3−フェニル−6−トリ−フルオロメチル)キノキサリン−2−イル]ベンゼン(TPQ1)、1,3,5−トリス[{3−(4−t−ブチルフェニル)−6−トリスフルオロメチル}キノキサリン−2−イル]ベンゼン(TPQ2)のようなベンゼン系化合物、フタロシアニン、銅フタロシアニン(CuPc)、鉄フタロシアニンのような金属または無金属のフタロシアニン系化合物、トリス(8−ヒドロキシキノリノレート)アルミニウム(Alq)、ファクトリス(2−フェニルピリジン)イリジウム(Ir(ppy))のような低分子系のものや、オキサジアゾール系高分子、トリアゾール系高分子、カルバゾール系高分子、フルオレン系高分子のような高分子系のものが挙げられ、これらの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。各種の高分子材料や、各種の低分子材料を単独または組み合わせて用いることができる。
【0050】
以上のような有機EL装置1aは、上基板22の下面に、乾燥剤膜4が形成されている。そのため、たとえ有機EL装置1a(閉空間24)内に水分が残存または浸入したとしても、この水分を乾燥剤に吸着させて、有機EL素子3内に浸入するのを経時的に防止できることから、有機EL素子3の特性の低下を好適に抑制または防止することができる。
また、上基板22の下面の撥液膜形成領域221に撥液膜5を形成することにより、後述する乾燥剤膜形成工程および封止部形成工程において、この撥液膜5により、乾燥剤を含有する液状材料、および、封止部23を形成するための樹脂材料を供給した際に、これらのものが所定の領域からはみ出るのを確実に防止し得る。その結果、乾燥剤膜4および封止部23が所定のパターンおよび厚さで形成されることとなる。したがって、乾燥剤膜4に、乾燥剤としての機能を確実に発揮させることができるとともに、封止部23により、有機EL装置1a(閉空間24)内への水分の浸入を確実に防止することができる。
【0051】
さらに、上基板22の下面の撥液膜形成領域221に撥液膜5を形成する構成とすることにより、上基板22に凹部を設けることなく乾燥剤膜4を形成することができる。その結果、上基板22の厚さを薄くすること、ひいては、有機EL素子3全体としての厚さを薄く設定することができる。また、上基板22に凹部を設ける場合と比較して、乾燥剤膜4を形成する領域を大きく設定し得る、すなわち有機EL素子3を包含する領域に乾燥剤膜4を形成し得ることから、閉空間24内全体を確実に乾燥することができる。
【0052】
なお、図1では、基板21上に有機EL素子3が1つ設けられている場合を示したが、これは模式的に示したものであり、このような場合に限定されず、複数の有機EL素子3が基板上に設けられ、これらの素子により複数の画素が形成されるものであってもよい。また、この場合、乾燥剤膜4は、上基板22の下面に、各有機EL素子3に対応するように個別に設けられるものであってもよいし、各有機EL素子3を包含するように一体的に設けられるものであってもよい。
【0053】
以上、説明した有機EL装置1aは、例えばディスプレイ用として用いることができるが、その他にも光源等としても使用可能であり、種々の光学的用途等に用いることが可能である。
また、有機EL装置1aをディスプレイに適用する場合、その駆動方式としては、特に限定されず、アクティブマトリックス方式、パッシブマトリックス方式のいずれであってもよい。
【0054】
次に、本発明の有機発光装置の製造方法について、有機EL装置の第1の構成すなわち図1に示す有機EL装置1aを製造する場合を一例に説明する。
図2は、図1に示す有機EL装置の製造方法を説明するための図(斜視図および縦断面図)、図3は、撥液膜を成膜するためのプラズマ重合装置を示す模式図、図4は、プラズマ重合に際して用いるマスクを示す斜視図である。なお、以下の説明では、図2〜図4中の上側を「上」、下側を「下」という。
有機EL装置の第1の構成の製造方法は、[1A]有機EL素子形成工程と、[2A]撥液膜形成工程と、[3A]乾燥剤膜形成工程と、[4A]封止部形成工程とを有している。以下、これらの各工程について、順次説明する。
【0055】
[1A]有機EL素子形成工程
基板21上に、有機EL素子3を形成する。
(1A−1) まず、基板21を用意し、この基板21上に陽極31を形成する。
陽極31は、例えば、プラズマCVD、熱CVD、レーザーCVDのような化学蒸着法(CVD)、真空蒸着、スパッタリング、イオンプレーティング等の乾式メッキ法、電解メッキ、浸漬メッキ、無電解メッキ等の湿式メッキ法、溶射法、ゾル・ゲル法、MOD法、金属箔の接合等を用いて形成することができる。
【0056】
(1A−2) 次に、陽極31上に正孔輸送層を形成する。
正孔輸送層は、例えば、前述した正孔輸送材料を溶媒に溶解または分散媒に分散してなる正孔輸送層形成用材料を、陽極31上に供給した後、乾燥(脱溶媒または脱分散媒)することにより形成することができる。
正孔輸送層形成用材料の供給方法としては、例えば、スピンコート法、キャスティング法、マイクログラビアコート法、グラビアコート法、バーコート法、ロールコート法、ワイヤーバーコート法、ディップコート法、スプレーコート法、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法、オフセット印刷法、インクジェット印刷法等の各種塗布法を用いることができる。かかる塗布法を用いることにより、正孔輸送層を比較的容易に形成することができる。
【0057】
正孔輸送層形成用材料の調製に用いる溶媒または分散媒としては、例えば、アンモニア、過酸化水素、水等の無機溶媒や、メチルエチルケトン(MEK)、アセトン等のケトン系溶媒、メタノール、エタノール、イソプロパノール等のアルコール系溶媒、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル等のエーテル系溶媒、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ等のセロソルブ系溶媒、ヘキサン、ペンタン等の脂肪族炭化水素系溶媒、トルエン、キシレン、ベンゼン等の芳香族炭化水素系溶媒、ピリジン、ピラジン等の芳香族複素環化合物系溶媒のような各種有機溶媒、または、これらを含む混合溶媒等が挙げられる。
なお、乾燥は、例えば、大気圧または減圧雰囲気中での放置、加熱処理、不活性ガスの吹付け等により行うことができる。
【0058】
(1A−3) 次に、正孔輸送層上(陽極31と反対側)に、有機発光層を形成する。
有機発光層は、例えば、前述した有機発光材料を溶媒に溶解または分散媒に分散してなる有機発光層形成用材料を、正孔輸送層上に供給した後、乾燥(脱溶媒または脱分散媒)することにより形成することができる。
有機発光層形成用材料の供給方法および乾燥の方法は、前記正孔輸送層の形成で説明したのと同様である。
【0059】
なお、前述したような有機発光材料を用いる場合、有機発光層形成用材料の調製に用いる溶媒または分散媒としては、非極性溶媒が好適であり、例えば、キシレン、トルエン、シクロヘキシルベンゼン、ジハイドロベンゾフラン、トリメチルベンゼン、テトラメチルベンゼン等の芳香族炭化水素系溶媒、ピリジン、ピラジン、フラン、ピロール、チオフェン、メチルピロリドン等の芳香族複素環化合物系溶媒、ヘキサン、ペンタン、ヘプタン、シクロヘキサン等の脂肪族炭化水素系溶媒等が挙げられ、これらを単独またはこれらを含む混合溶媒として用いることができる。
【0060】
(1A−4) 次に、有機発光層上(正孔輸送層と反対側)に、電子輸送層を形成する。
電子輸送層は、例えば、前述した電子輸送材料を溶媒に溶解または分散媒に分散してなる電子輸送層形成用材料を、有機発光層上に供給した後、乾燥(脱溶媒または脱分散媒)することにより形成することができる。
電子輸送層形成用材料の調製に用いる溶媒または分散媒、電子輸送層形成用材料の供給方法および乾燥の方法は、前記正孔輸送層の形成で説明したのと同様である。
(1A−5) 次に、電子輸送層上(有機発光層と反対側)に、陰極33を形成する。
陰極33は、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法、金属箔の接合、金属微粒子インクの塗布および焼成等を用いて形成することができる。
以上のような工程を経て、基板21上に有機EL素子3が形成される。
【0061】
[2A]撥液膜形成工程(第1の工程)
次に、上基板22を用意し、図2(a)に示すように、上基板22上の封止部形成領域222および乾燥剤膜形成領域(第2の領域)223を除く撥液膜形成領域221、すなわち閉空間24内における上基板22上の乾燥剤膜4を形成しない撥液膜形成領域(第1の領域)221に撥液膜5を形成する。
【0062】
換言すれば、本実施形態では、乾燥剤膜形成領域(第2の領域)223の外周部分が撥液膜形成領域(第1の領域)221を構成し、上基板22上のこの領域に撥液膜5を形成する。
ここで、上基板22の撥液膜形成領域221は、撥液膜5を形成することにより、乾燥材料を含有する液状材料に対する濡れ性が低くなる。さらに、一般的に樹脂材料は親液性が高い材料であるため、上基板22の撥液膜形成領域221に撥液膜5を形成することにより、上基板22の撥液膜形成領域221は、他の領域よりも樹脂材料に対する濡れ性が低くなり、樹脂材料が実質的に付着しない領域となる。
【0063】
そのため、上基板22上の撥液膜形成領域221に撥液膜5を形成する構成とすることにより、後に説明する乾燥剤膜形成工程[3A]および封止部形成工程[4A]において、それぞれ用いられる液状材料および樹脂材料がこの領域221に付着するのを好適に防止または抑制することができる。
この撥液膜形成領域221に撥液膜5を形成(成膜)する方法としては、特に限定されないが、例えば、I:プラズマ重合により撥液性を有する化合物を成膜することにより撥液膜5を得る方法、II:撥液性を有するカップリング剤を基板上に化学的に結合させることにより撥液膜5を得る方法等により形成することができる。Iの方法によれば、緻密な撥液膜5を基板上に形成することができ、その厚さを比較的薄く設定した場合においても、撥液膜5に優れた撥液性を付与することができる。また、IIの方法によれば、真空チャンバのような大掛かりな装置を用いることなく、基板上に撥液性を有するカップリング剤を供給して乾燥するという比較的簡単な工程で撥液膜5を形成することができる。
【0064】
以下、IおよびIIの方法を用いて撥液膜5を形成する場合についてそれぞれ説明する。
I:プラズマ重合により撥液性を有する化合物を成膜することにより撥液膜5を得る方法
図3は、撥液膜5を成膜するためのプラズマ重合装置の一例である。
図3に示すプラズマ重合装置100は、真空ポンプ101およびガス供給管102が接続された真空チャンバ103を備え、この真空チャンバ103内に、試料台を兼ねる電極104と、ガス供給管102から供給されたガスを噴射するヘッド105とが設けられている。
【0065】
電極104は、真空チャンバ103の下方に設けられ、真空チャンバ103の外部に配設された高周波電源106に接続されている。また、このプラズマ重合装置100では、真空チャンバ103の上壁107が接地されており、電極104に対する対向電極として機能するようになっている。
プラズマ重合により撥液膜5を形成する際には、高周波電源106を作動することにより、電極104と上壁107との間に電圧を印加する。このとき、真空チャンバ103内には、電界が発生し、後述するガス供給管102よりキャリアガスともに原料ガスが供給されると、放電が生じて原料ガスのプラズマが発生する。
【0066】
ヘッド105は、真空チャンバ103の上方に設けられ、ガス供給管102と接続されている。
ガス供給管102には、キャリアガスを充填し供給する図示しないガスボンベが流量制御弁を介して接続されるとともに、プラズマ重合膜の原料を収納する図示しない原料容器が流量制御弁を介して接続されている。
【0067】
気化した原料ガスおよびキャリアガスは、真空チャンバ103の負圧により吸引され、ガス供給管102を通ってヘッド105に供給され、ヘッド105から真空チャンバ103内に霧状に放出される。
なお、真空チャンバ103へ供給される原料ガスおよびキャリアガスの流量は、流量制御弁の開閉操作によって制御される。
上述したような撥液膜5の成膜は、プラズマ重合装置100により、次のようにして行われる。
【0068】
(2AI−1) まず、上基板22を、真空チャンバ100内の電極104上に配置し、この上基板22の上に、マスク108を載置する。
マスク108としては、例えば、図4に示すように、乾燥剤膜形成領域223と当接する第1の部分109と、封止部形成領域222と当接する第2の部分110と、これら第1の部分109と第2の部分110の間に、上基板22と接触しないように架設された複数の梁部111を有するものが用いられる。
【0069】
このようなマスク108を使用すると、フォトリソグラフィ等のような煩雑な工程でレジストマスクを形成することなく所望の形状の撥液膜5を形成することができるので、工程の簡易化を図ることができる。
また、梁部111を上基板22と接触しないように架設すること、すなわち、マスク108の厚さ方向において上基板22と反対側に架設することにより、撥液膜5の原料を、梁部111を回り込むようにして上基板22上に到達させることができる。その結果、梁部111が設けられた位置で撥液膜5を切断させることなく、封止部形成領域222の形状に対応した撥液膜5を形成することができる。
さらに、このマスク108は、繰り返して使用することができるため、マスクにかかるコストを削減することができる。
【0070】
(2AI−2) 次に、撥液膜5の原料となる撥液性を有する化合物を原料容器内に収納する。
原料としては、撥液性を有し、プラズマ重合によって成膜可能な化合物が用いられ、例えば、トリフルオロメタン、オクタフルオロシクロブタンのようなフッ化炭化水素の他、6弗化イオウ等が用いられる。
【0071】
(2AI−3) 次に、真空ポンプ101を作動させることにより、真空チャンバ103内を減圧した後、キャリアガスと原料ガスを、供給管102およびヘッド105を介して真空チャンバ104内に供給するとともに、高周波電源106を作動させることによって電極104と上壁107間に電圧を印加する。
これにより、真空チャンバ107内に放電が生じ、その結果、原料ガスがプラズマ化する。そして、プラズマ化した原料ガスの分子同士が衝突することにより、これら同士の間で重合反応が生じて、上基板22上の撥液膜形成領域221に、重合反応により生じた生成物で構成される撥液膜5が形成される。
このようなプラズマ重合により成膜される撥液膜5は、例えば、原料としてトリフルオロメタンを用いた場合、一般式−(CF−[式中、nは、1以上の整数を表す。]で表される化学構造を有するものとなり、特に、緻密性が高く、優れた撥液性を発揮する。
【0072】
このプラズマ重合において、高周波電源の出力は、100〜600W程度であるのが好ましく、200〜400W程度であるのがより好ましい。
キャリアガスおよび原料ガスの流量は、10〜80sccm程度であるのが好ましく、30〜50sccm程度であるのがより好ましい。
真空チャンバ内の圧力は、1〜70Pa程度であるのが好ましく、20〜50Pa程度であるのがより好ましい。
成膜時間は、10〜120秒程度であるのが好ましく、30〜60秒程度であるのがより好ましい。
このような条件で成膜を行うことにより、撥液性に優れた撥液膜5を形成することができる。
【0073】
II:撥液性を有するカップリング剤を基板上に化学的に結合させることにより撥液膜5を得る方法
かかる方法において、撥液性を有するカップリング剤としては、撥液性を有する官能基と、上基板22と結合する反応性基とを有するものが好適に用いられる。このようなカップリング剤を用いることにより、上基板22とカップリング剤との結合力が強固となり、撥液膜5を上基板22に密着性よく形成することができる。
【0074】
なお、ここでは、撥液性を有するカップリング剤を「第1のカップリング剤」、この化合物が有する撥液性を有する官能基および上基板22と結合する反応性基を、それぞれ、「第1の官能基」および「第1の反応性基」と言う場合がある。
第1の反応性基は、第1のカップリング剤に少なくとも1つ含まれていればよいが、複数含まれているのが好ましい。これにより、第1のカップリング剤と上基板22とを複数の第1の反応性基で結合することができ、第1のカップリング剤の上基板22に対する密着性を向上させることができる。
【0075】
この第1の反応性基は、上基板22と結合し得るものであればよく、特に限定されないが、例えば、上基板22の表面に水酸基を露出する構成である場合、例えば、アルコキシ基やハロゲン基のような加水分解基、アミノ基等を含むものが挙げられる。これらの中でも、第1の反応性基を複数備える場合、加水分解基を含むものであるのが好ましい。これにより、上基板22の他に、第1の反応性基同士間で結合を行うことができるため、第1のカップリング剤によるネットワーク(網目状構造)を上基板22上に形成することができ、形成される撥液膜5が緻密なものとなる。その結果、特に高い撥液性が得られるとともに、撥液膜5の上基板22への密着性の向上を図ることができる。
【0076】
第1の官能基としては、例えば、フルオロアルキル基、アルキル基、ビニル基等を含むものが挙げられ、中でも、特に、フルオロアルキル基を含むものが好ましい。フルオロアルキル基を含む官能基は、特に優れた撥液性を有するものである。
また、撥液性を有する官能基の重量平均分子量は、200〜4000程度であるのが好ましく、1000〜2000程度であるのがより好ましい。
【0077】
以上のことを考慮すると、第1の性化合物としては、上基板22の表面に水酸基が露出している構成である場合、例えば、フルオロアルキル基を含む官能基を備え、Si、Ti、Al、Zr等を有するカップリング剤を好適に用いることができるが、中でも、特に、フルオロアルキル基を含む官能基を備えるシラン系カップリング剤を用いるのが好ましい。このようなシラン系カップリング剤は、安価であり入手が容易である。
【0078】
ここで、フルオロアルキル基を含む官能基を備えるシラン系カップリング剤は、一般式RSiX(4−n)(但し、Xは、加水分解によりシラノール基を生成する加水分解基、Rはフルオロアルキル基を含む官能基である。また、nは1〜3の整数であり、1または2の整数であるのが好ましい。)で表される。
この一般式において、Xとしては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、ハロゲン基等が挙げられる。
【0079】
なお、複数個のR同士またはX同士は、互いに同じものであっても、異なるものであってもよい。
このようなフルオロアルキル基を含む官能基を備えるシラン系カップリング剤の具体例としては、トリデカフルオロ−1,1,2,2テトラヒドロオクチルトリエトキシシラン、トリデカフルオロ−1,1,2,2テトラヒドロオクチルトリメトキシシラン、トリデカフルオロ−1,1,2,2テトラヒドロオクチルトリクロロシラン、トリフルオロプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。
【0080】
また、上基板22の表面の撥液膜形成領域221への第1のカップリング剤の供給は、液相プロセスや気相プロセスのような各種プロセスにより行うことができるが、中でも、液相プロセスにより行うのが好ましい。液相プロセスによれば、第1のカップリング剤を含有する液状材料を調製し、この液状材料を撥液膜形成領域221に供給するという比較的簡単な工程により、第1のカップリング剤を上基板22上の撥液膜形成領域221に確実に供給することができる。
【0081】
液相プロセスとしては、例えば、インクジェット法等の液滴吐出法、スピンコート法、キャスティング法、マイクログラビアコート法のような各種塗布法が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの中でも、液滴吐出法を用いるのが好ましい。かかる方法によれば、比較的容易に、かつ優れた精度で、撥液膜形成領域221に液状材料を選択的に供給することができる。
以下では、フルオロアルキル基を含む官能基を備えるシラン系カップリング剤(以下、単に「シラン系カップリング剤」という。)を含有する液状材料を、インクジェット法により撥液膜形成領域221に供給して撥液膜5を形成する場合を一例に説明する。
【0082】
(2AII−1) まず、シラン系カップリング剤を含有する液状材料を調整する。
シラン系カップリング剤を溶解する溶媒としては、各種のものが用いられるが、例えば、トルエン、キシレン、トリメチルベンゼン、テトラメチルベンゼン、シクロヘキシルベンゼンのような芳香族炭化水素系溶媒を用いることができる。
(2AII−2) 次に、インクジェット法により、液状材料を上基板22の表面の撥液膜形成領域221に供給する。
【0083】
(2AII−3) 次に、上基板22を、例えば、加熱することにより、シラン系カップリング剤の加水分解基を加水分解させ、生成したシラノール基と、上基板22の表面で露出する水酸基とを反応させて、シロキサン結合を形成させる。これにより、図2(a)に示すように、撥液膜形成領域221の形状に対応した撥液膜5が上基板22の表面に形成される。
そして、撥液膜5の表面には、撥液性を有する第1の官能基が露出することとなり、これにより撥液性を発揮する。
【0084】
また、このとき、隣接するシラン系カップリング剤が有するシラノール基同士の間でもシロキサン結合が形成される。これにより、撥液膜5の密着性が向上する。
加熱の際の加熱温度は、50〜200℃程度であるのが好ましく、80〜150℃程度であるのがより好ましい。
加熱時間は、1〜50分程度であるのが好ましく、5〜20分程度であるのがより好ましい。
【0085】
[3A]乾燥剤膜形成工程(第2の工程)
次に、上基板22上の乾燥剤膜形成領域223に、図2(b)に示すように、乾燥剤膜4を形成する。
本発明の有機発光装置の製造方法では、乾燥剤膜4は、上基板22上の撥液膜形成領域221で取り囲まれる乾燥剤膜形成領域223に、乾燥剤を含有する液状材料を供給して、この液状材料を乾燥(脱溶媒または脱分散媒)することにより形成される。
【0086】
ここで、乾燥剤が主として粘着性または接着性を有する化合物で構成される場合、かかる乾燥剤を含有する液状材料を乾燥剤膜形成領域223に供給して乾燥することにより、この領域223に乾燥剤が付着して乾燥剤膜4が形成されることとなる。
また、乾燥剤が主として粘着性および接着性を有さない化合物で構成される場合、かかる乾燥剤および樹脂材料を含有する液状材料を乾燥剤膜形成領域223に供給して乾燥することにより、この領域223に樹脂材料により乾燥剤が担持された乾燥剤膜4が形成されることとなる。なお、液状材料中に含まれる樹脂材料としては、次工程[4A]で説明する樹脂材料と同様のものを用いることができる。
【0087】
そのため、乾燥剤が主として粘着性または接着性を有する化合物で構成される場合、または、粘着性および接着性を有さない化合物で構成される場合のいずれであっても、上基板22上の乾燥剤膜形成領域223に乾燥剤膜4を形成することができるが、乾燥剤膜は、主として前者で構成されているのが好ましい。これにより、乾燥剤以外の材料を乾燥剤膜4中に含有させる必要がないことから、乾燥剤膜4に優れた吸湿性を付与することができるとともに、乾燥剤自体が粘着性または接着性を有していることから、乾燥剤が上基板22上から剥がれ落ちることなく乾燥剤膜4を形成することができる。
【0088】
このような乾燥剤膜4に用いられる乾燥剤としては、特に限定されないが、例えば、閉空間24内(雰囲気中)に含まれる水を、化学的に吸着(化学吸着)する乾燥剤や、物理的に吸着(物理吸着)する乾燥剤等が挙げられる。これらの中でも、化学吸着する乾燥剤であるのが好ましい。このような乾燥剤を用いることにより、たとえ閉空間24内の温度等の条件が変化したとしても、乾燥剤に吸着した水を脱離させることなく確実に担持することができる。
以上のことを考慮すると、乾燥剤としては、粘着性または接着性を有し、かつ、水を化学的に吸着する化合物が好適に用いられ、具体的には、下記化1の一般式で表される化合物等が好適に用いられる。
【0089】
【化1】

[式中、Rは、炭素数1以上のアルキル基、アルケニル基、アリール基、複素環基、アシル基を表し、Mは、3価の金属元素を表し、nは、1以上の整数を表す。]
【0090】
この化合物は、水分子と反応することにより化合物中のM−O結合が切断(加水分解)されて、2つの水酸基すなわち−OH結合が生成されることにより水を化学的に吸着する。
ここで、上記化1の一般式で表される化合物において、Rは、上述したように、炭素数1以上のアルキル基、アルケニル基、アリール基、複素環基、アシル基を示す。
【0091】
アルキル基としては、直鎖状のものであっても環状のものであってもよく、具体的には、直鎖アルキル基として、例えば、メチル基、エチル基およびプロピル基等が挙げられ、シクロアルキル基として、例えば、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、ノルボナン基およびアダマンタン基等が挙げられる。
アルケニル基としては、例えば、ビニル基、アリル基およびブテニル基等が挙げられる。
【0092】
アリール基としては、例えば、フェニル基、トリル基、ビフェニル基およびナフチル基等が挙げられる。
複素環基としては、例えば、ピロール基、ピロリン基、ピラゾール基およびピラゾリン基等が挙げられる。
アシル基としては、例えば、ホルミル基、アセチル基、プロピオニル基およびブチリル基等が挙げられる。
【0093】
また、上述したような置換基Rは、置換基内に含まれる水素原子の少なくとも一部が、他の元素によって置換されたものであってもよい。
Mは、3価の金属元素を表し、具体的には、Al、La、Y、Ga等が挙げられる。
したがって、具体例には、上記化1の一般式で表される化合物として、例えば、下記化2および下記化3で表される化合物等が挙げられる。
【0094】
【化2】

[式中、nは、1以上の整数を表す。]
【0095】
【化3】

【0096】
なお、粘着性または接着性を有さず、水を物理吸着する乾燥剤としては、例えば、シリカゲルA型、シリカゲルB型、天然ゼオライト、合成ゼオライト、アロフェンおよびセピオナイト等が挙げられる。
また、粘着性または接着性を有さず、水を化学吸着する乾燥剤としては、例えば、酸化ナトリウム(NaO)、酸化カリウム(KO)、酸化カルシウム(CaO)のような金属酸化物、硫酸リチウム(LiSO)、硫酸ナトリウム(NaSO)、硫酸カルシウム(CaSO)のような硫酸塩、塩化カルシウム(CaCl)、塩化マグネシウム(MgCl)、塩化ストロンチウム(SrCl)のような金属ハロゲン化物、過塩素酸バリウム(Ba(ClO)、過塩素酸マグネシウム(Mg(ClO)のような過塩素酸塩等が挙げられる。
以上のような乾燥剤は、1種類を単独で使用してもよく、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。また、粘着性または接着性を有するものと有さないものとを併用しても構わない。
【0097】
液状材料中における乾燥剤の含有量は、100〜10000mg/L程度であるのが好ましく、300〜5000mg/L程度であるのがより好ましい。乾燥剤の含有量が前記範囲より少ない場合には、乾燥剤膜4を十分な厚さで形成するのが困難になり、得られる乾燥剤膜4における乾燥剤としての効果が不足するおそれがある。また、乾燥剤の含有量が前記範囲より多い場合には、液状材料の塗布性が不良となり、乾燥剤膜を均一な厚さで形成するのが困難となるおそれがある。
【0098】
これら乾燥剤を含有する液状材料を調製するための溶媒または分散媒としては、例えば、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶媒、ヘキサン、ペンタン、ヘプタン、シクロヘキサン等の脂肪族炭化水素系溶媒等が挙げられる。
この液状材料の上基板22上の乾燥剤膜形成領域223への供給方法および乾燥の方法は、前記工程[1A]における正孔輸送層形成工程で説明したのと同様である。
【0099】
液状材料の塗布量は、1.0〜10.0μL/cm程度であるのが好ましく、2.0〜4.0μL/cm程度であるのがより好ましい。これにより、乾燥効果に優れた乾燥剤膜4を、上基板22上に形成することができる。
乾燥温度は100〜250℃程度であるのが好ましく、150〜200℃程度であるのがより好ましい。
【0100】
乾燥時間は、5〜120分程度であるのが好ましく、10〜40分程度であるのがより好ましい。
本実施形態では、乾燥剤膜4は、図1に示すように、乾燥剤膜4の下面が有機EL素子3の上面(陰極の有機半導体層側とは反対側の面)と接しないように、その厚さが設定される場合について説明したが、有機EL素子3の上面と接するように、その厚さが設定されていてもよい。かかる構成とすることにより、有機EL装置1aの厚さが薄くなるとともに、有機EL素子3の駆動時において、この素子で生じた熱を、乾燥剤膜4および上基板22を伝導させて、有機EL装置1aの外部に効率よく放熱させることができるという利点も得られる。
【0101】
なお、乾燥剤膜4の下面が有機EL素子3の上面と接する構成とする場合、撥液膜5は、その厚さが乾燥剤膜4の厚さよりも薄く設定される。これにより、乾燥剤膜4の下面を有機EL素子3の上面に確実に接触させることができる。
具体的には、乾燥剤膜4の厚さは1.0〜6.0μm程度であるのが好ましく、2.0〜4.0μm程度であるのがより好ましい。
【0102】
上述したような形成工程で乾燥剤膜4を形成することにより、上基板22にザグリ加工のような特別な加工を施して、凹部を形成することなく、上基板22の表面に乾燥剤膜4を形成し得る。そのため、前記撥液膜形成工程[2A]で示したように、上基板22の表面に施す工程を簡易なものとすることができ、製造コストの低減を図ることができる。
また、本発明の有機発光素子の製造方法によれば、撥液膜形成領域221に撥液膜5を形成することにより、この撥液膜5によって、乾燥剤を含有する液状材料が乾燥剤膜形成領域223からはみ出てしまうのを防止し得ることから、乾燥剤膜4を、撥液膜形成領域221の内側に、所定の厚さで、確実に形成することができる。したがって、有機EL装置1a(閉空間24)内に残存または浸入した水分を、効率よく除去し得る乾燥剤膜4を形成することができる。さらに、たとえ封止部23が乾燥剤膜4により変質・劣化し易い材料で構成されていたとしても、乾燥剤膜4と封止部23とを、互いに接触することなく形成することができることから、これら同士が接触することによる乾燥剤膜4の変質・劣化を確実に防止することができる。
【0103】
[4A]封止部形成工程(第3の工程)
次に、図2(d)に示すように、基板21、上基板22同士をこれらの縁部で封止する封止部23を形成することにより、基板21と上基板22とを貼り合せる。
本実施形態では、封止部23は、前述したような封止材231とギャップ材232とで構成されるが、以下では、封止材231を樹脂材料で構成する場合を一例に、封止部23を形成する工程について説明する。
【0104】
(4A−1) まず、図2(c)に示すように、上基板22の封止部形成領域222に、ギャップ材232を含有する樹脂材料(封止材231)を供給する。
この製造方法では、前記工程[2A]において、撥液膜形成領域221に撥液膜5が形成されている。そのため、この撥液膜5により、封止部形成領域222に供給された樹脂材料がこの領域222からはみ出てしまうのを好適に防止し得ることから、次工程(4A−2)において、封止部23を、所定のパターンおよび厚さで確実に形成することができる。
【0105】
(4A−2) 次に、図2(d)に示すように、基板21と上基板22とを、それぞれ、乾燥剤膜4を形成した側と、有機EL素子3を形成した側とを対向させて、樹脂材料(封止材231)を介在させた状態で貼り合わせ、この樹脂材料を固化させる(乾燥する)ことにより貼り合わせる。ここで、樹脂材料にはギャップ材232が含まれている。そのため、このギャップ材232により基板21と上基板22との離間距離を規定し得ることから、ギャップ材232の大きさを設定することにより、所望の厚さの封止部23を形成することができる。
なお、この封止部形成工程[4A]は、水分を極力除いた不活性ガス(例えばドライ窒素)やドライエアによるドライ雰囲気で行うのが好ましい。これにより、この封止工程に、有機EL装置1a(閉空間24)への水分の侵入を確実に防止することができる。
【0106】
以上のような工程を経て、有機EL装置1aが形成される。
このような製造方法では、上基板22に凹(ザグリ)部を形成するザグリ加工のような特別な加工を施すことなく、上基板22の表面(平坦な面)に乾燥剤膜4を形成し得るすなわち乾燥剤を担持し得るので、上基板22に施す加工が簡易なものとなる。したがって、有機EL装置の生産性の向上および製造コストの低減を図ることができる。
【0107】
なお、本実施形態では、乾燥剤膜4を有機EL素子3の形状に対応するように形成する場合について説明したが、このような場合に限定されず、本実施形態で説明した乾燥剤膜4を分割した形態のものであってもよい。このような形態の乾燥剤膜は、分割された乾燥剤膜を形成する領域の外側を取り囲むように上基板22上に撥液性を付与することにより形成される。
【0108】
<<第2の構成>>
次に、有機EL装置の第2の構成について説明する。
以下、有機EL装置の第2の構成について、前記第1の構成との相違点を中心に説明し、同様の事項については、その説明を省略する。
図5は、本発明の有機発光装置の製造方法を適用して得られた有機EL装置の第2の構成を示した模式図(縦断面図)である。なお、以下の説明では、図5中の上側を「上」、下側を「下」と言う。
【0109】
図5に示す有機EL装置1bは、封止部23の構成が異なる以外は、前記第1実施形態の有機EL装置1aと同様である。
すなわち、封止材231およびギャップ材232で構成される第1の封止部23aと、ギャップ材232を含まず封止材231で構成され、第1の封止部23aの有機EL素子3と反対側に接触して設けられた第2の封止部23bを備える以外は、前記第1実施形態の有機EL装置1aと同様である。
【0110】
ここで、第1の封止部23aは、前記第1の構成で説明した封止部23と同様の構成となっており、第2の封止部23bは、封止部23からギャップ材232を省略した構成となっている。換言すれば、前記第1の構成で説明した封止部23の外周部を封止材231で取り囲んだ構成となっている。
この有機EL装置1bでは、前記第1実施形態の有機EL装置1aで説明したのと同様の作用・効果が得られる。
【0111】
なお、封止部23をかかる構成とすることは、ギャップ材232が主として乾燥剤により構成されている場合に適用するのが特に効果的である。すなわち、第1の封止部23aの外側を第2の封止部23bで封止する構成とすることにより、第2の封止部23bを介して有機EL装置1bの外側から閉空間24内に水分が浸入するのが好適に防止または抑制し得るとともに、仮に水分が第2の封止部23bを透過(通過)したとしても、第1の封止部23内に含まれる乾燥剤(ギャップ材232)により水分を確実に捕捉する(吸着させる)ことができる。
【0112】
次に、図5に示す有機EL装置の第2の構成の製造方法、すなわち本発明の有機発光装置の製造方法について説明する。
以下、第2の構成の製造方法について、前記第1の構成の製造方法との相違点を中心に説明し、同様の事項については、その説明を省略する。
図6は、図5に示す有機EL装置の第2の構成を製造する方法を説明するための図(斜視図)である。なお、以下の説明では、図6中の上側を「上」、下側を「下」と言う。
【0113】
有機EL装置の第2の構成の製造方法は、前記第1の構成の製造方法と同様に、[1B]有機EL素子形成工程と、[2B]撥液膜形成工程と、[3B]乾燥剤膜形成工程と、[4B]封止部形成工程とを有しており、封止部形成工程[4B]において、基板21と上基板22との間に第1の封止部23aを形成した後、この第1の封止部23bの有機EL素子3と反対側に、第2の封止部23bを形成する以外は、前記第1の構成の製造方法で説明したのと同様である。
【0114】
以下、この封止部形成工程[4B]について説明する。
[4B]封止部形成工程
(4B−1) まず、図6(a)に示すように、上基板22の封止部形成領域222に、その縁部で上基板22の表面が露出するようにギャップ材232を含有する樹脂材料(封止材231)を供給する。
【0115】
(4B−2) 次に、図6(b)に示すように、基板21と上基板22とを、それぞれ、乾燥剤膜4を形成した側、有機EL素子3を形成した側を対向させて、前記樹脂材料を介在させた状態で貼り合わせた後、この樹脂材料を固化して(乾燥させて)、第1の封止部23aを形成することにより接合する。
(4B−3) 次に、図6(c)に示すように、基板21と上基板22との縁部に形成された第1の封止部23aの有機EL素子3と反対側を、すなわち第1の封止部23aを取り囲むようにして、ギャップ材232を含有しない樹脂材料(封止材231)を供給した後、この樹脂材料を固化して(乾燥させて)、第2の封止部23bを形成する。
【0116】
以上のような工程を経ることにより、第1の封止部23aと第2の封止部23bとで構成される封止部23が形成される。
封止部23をかかる構成とすることにより、第2の封止部23bにより有機EL装置1bの外側から閉空間24内に水分が浸入するのを好適に防止または抑制することができる。さらに、たとえ第2の封止部23bを水分が通過(透過)したとしても、第1の封止部23内に含まれる乾燥剤に水分を確実に吸着(捕捉)させることができる。
【0117】
<<第3の構成>>
次に、有機EL装置の第3の構成について説明する。
以下、有機EL装置の第3の構成について、前記第1の構成との相違点を中心に説明し、同様の事項については、その説明を省略する。
図7は、本発明の有機発光装置の製造方法を適用して得られた有機EL装置の第3の構成を示した模式図(縦断面図)である。なお、以下の説明では、図7中の上側を「上」、下側を「下」と言う。
【0118】
図7に示す有機EL装置1cは、封止材231が樹脂材料で構成され、上基板22の封止部形成領域222に、樹脂材料(封止材231)に対して親和性を有する樹脂親和膜6が形成されている以外は、前記第1実施形態の有機EL装置1aと同様である。
この有機EL装置1cでは、前記第1実施形態の有機EL装置と同様の作用・効果が得られる。
【0119】
また、この有機EL装置1cでは、上基板22上の封止部形成領域222に、樹脂親和膜6が形成されていることから、上基板22と封止部23(樹脂材料)との密着性が向上することとなる。そのため、上基板22が、封止材231との密着性が低い材料(例えば、金属材料)で構成される場合であっても、樹脂親和膜6を介して封止部23を上基板22に密着性よく固定(固着)することができる。これにより、上基板22と封止部23との界面における密閉性が向上して、有機EL装置1c(閉空間24)内への水分の浸入をより好適に防止または抑制することができる。
【0120】
次に、図7に示す有機EL装置の第3の構成の製造方法、すなわち本発明の有機発光装置の製造方法について説明する。
以下、第3の構成の製造方法について、第1の構成の製造方法との相違点を中心に説明し、同様の事項については、その説明を省略する。
有機EL装置の第3の構成を製造する方法は、[1C]有機EL素子形成工程と、[2C]撥液膜形成工程と、[3C]樹脂親和膜形成工程と、[4C]乾燥剤膜形成工程と、[5C]封止部形成工程とを有しており、樹脂親和膜形成工程[3C]において、上基板22上の封止部形成領域222に、樹脂親和膜6を形成して、樹脂材料に対する親和性を付与する以外は、前記第1の構成の製造方法で説明したのと同様である。すなわち、封止部形成工程[5C](第3の工程)に先立って、樹脂親和膜形成工程[3C]を有する以外は、前記第1の構成の製造方法で説明したのと同様である。
【0121】
以下、樹脂親和膜形成工程[3C]について説明する。
[3C]樹脂親和膜形成工程
上基板22の封止部材形成領域222に、樹脂親和膜6を形成して樹脂材料に対する親和性を付与する。
なお、本明細書において、「樹脂材料との親和性を有する」とは、樹脂材料との反応性または相互作用が高いことを言う。
【0122】
この封止部形成領域222への樹脂材料に対する親和性の付与は、上基板22上の封止部形成領域222に、樹脂材料に対して親和性を有する樹脂親和膜6を形成することにより行うことができる。
このような樹脂親和膜6は、例えば、上基板22上の封止部形成領域222に、樹脂材料に対して親和性を有するカップリング剤を化学的に結合させることにより形成することができる。
【0123】
以下、樹脂材料に対して親液性を有するカップリング剤を用いて樹脂親和膜6を形成する方法について説明する。
この方法では、撥液性を有するカップリング剤に代えて、樹脂材料に対して親和性を有するカップリング剤を用い、この親和性を有するカップリング剤を封止部形成領域222に供給して、上基板22上のこの領域222に樹脂親和膜6を形成する以外は、前記工程[2A]で説明したIIの方法と同様である。
【0124】
かかる方法において、樹脂材料に対して親和性を有するカップリング剤としては、樹脂材料に対して親和性を有する官能基と、上基板22と結合する反応性基とを有するものが好適に用いられる。
このような化合物を上基板22の表面の封止部形成領域222に供給すると、化合物の反応性基が上基板22に結合する。これにより、樹脂親和膜6を封止部形成領域222に密着性よく形成することができる。
【0125】
なお、ここでは、樹脂材料に対して親和性を有するカップリング剤を「第2のカップリング剤」、この化合物が有する樹脂材料に対して親和性を有する官能基および上基板と結合する反応性基を、それぞれ、「第2の官能基」および「第2の反応性基」と言う場合がある。
第2の反応性基は、前述した第1の反応性基と同一のものが挙げられ、この第2の反応性基も、第2のカップリング剤に複数含まれるのが好ましく、上基板22がその表面に水酸基を露出する構成である場合、加水分解基を含むものであるのが好ましい。
【0126】
第2の官能基としては、特に限定されないが、例えば、樹脂材料(封止材231)が主としてエポキシ系樹脂で構成される場合、例えば、イミダゾール基やトリアゾール基のようなアゾール基、アミノ基、エポキシ基およびビニル基等を含むものが挙げられ、これらの中でも、特に、アミノ基またはアゾール基を含むものであるのが好ましい。これらの基を含む官能基は、エポキシ系樹脂に対して特に優れた親和性(反応性、相互作用)を有するものであることから、第2のカップリング剤は、封止部23に対して優れた密着性を示すものとなる。
【0127】
また、樹脂材料(封止材231)が主としてアクリル系樹脂で構成される場合、第2の官能基としては、特に、リン酸基を含むものを選択するのが好ましい。この基を含む官能基は、アクリル系樹脂に対して特に優れた親和性を有するものであることから、第2のカップリング剤は、封止部23に対して優れた密着性を示すものとなる。
また、第2の官能基の重量平均分子量は、200〜4000程度であるのが好ましく、1000〜2000程度であるのがより好ましい。
【0128】
以上のことを考慮すると、前記封止材231がエポキシ系樹脂で構成される場合、第2のカップリング剤としては、アミノ基またはアゾール基を含む官能基を備えるシラン系カップリング剤を用いるのが好ましい。
このようなアミノ基またはアゾール基を含む官能基を備えるシラン系カップリング剤の具体例は、アミノ基を含むものとして、例えば、N−2(アミノエチル)3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−2(アミノエチル)3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン等が挙げられ、アゾール基を含むものとして、例えば、PA−2(日鉱マテリアル社製)、IS−1000(日鉱マテリアル社製)、IM−1000(日鉱マテリアル社製)等に含まれるものが挙げられる。
【0129】
また、樹脂材料(封止材231)が主としてアクリル系樹脂で構成される場合、第2のカップリング剤としては、リン酸基を含む官能基を備えるシラン系カップリング剤を用いるのが好ましい。
このようなリン酸基を含む官能基を備えるシラン系カップリング剤の具体例は、例えば、F−100(電気化学工業社製)等に含まれるものが挙げられる。
【0130】
また、第2のカップリング剤を封止部形成領域222に供給する方法としては、第1のカップリング剤を撥液膜形成領域221に供給する方法で説明したのと同様のものを用いることができる。
以上のようにして、上基板(基材)22上にレジスト層のようなバンクを設けることなく、上基板22の表面の2つの領域である撥液膜形成領域221および封止部形成領域222に、それぞれ、撥液膜5および樹脂親和膜6を形成することができ、膜形成に要する時間および製造コストの削減を図ることができる。
【0131】
なお、前記撥液膜形成工程[2C]と、前記親液性膜形成工程[3C]との順序は、前述した場合に限定されず、前記工程[2C]と前記工程[3C]とをほぼ同時に行うようにしてもよいし、前記工程[2C]に先立って、前記工程[3C]を行うようにしてもよい。
かかる構成とすることにより、後工程である封止部形成工程[5C]において、上基板22の封止部形成領域222に樹脂親和膜6が形成されているので、この領域222に、樹脂材料を主材料とする封止部23を密着性よく形成することができる。
【0132】
この第3の構成の製造方法では、第1の構成の製造方法と同様の作用・効果が得られる。
また、この第3の構成の製造方法では、上基板22上の封止部形成領域222に樹脂親和膜6が形成されていることにより、たとえ、上基板22が、封止材231との密着性が低い材料(例えば、金属材料)で構成されている場合であっても、上基板22に封止部23を密着性よく固定することができる。その結果、上基板22と封止部23との界面の密閉性が高くなり、有機EL装置1c(閉空間24)内への水分の浸入が好適に防止または抑制された有機EL装置を得ることができる。
【0133】
<電子機器>
このような有機EL装置(本発明の有機発光装置)1a、1bは、各種の電子機器に組み込むことができる。
図8は、本発明の電子機器を適用したモバイル型(またはノート型)のパーソナルコンピュータの構成を示す斜視図である。
【0134】
この図において、パーソナルコンピュータ1100は、キーボード1102を備えた本体部1104と、表示部を備える表示ユニット1106とにより構成され、表示ユニット1106は、本体部1104に対しヒンジ構造部を介して回動可能に支持されている。
このパーソナルコンピュータ1100において、表示ユニット1106が前述の有機EL装置1a〜1eを備えている。
【0135】
図9は、本発明の電子機器を適用した携帯電話機(PHSも含む)の構成を示す斜視図である。
この図において、携帯電話機1200は、複数の操作ボタン1202、受話口1204および送話口1206とともに、表示部を備えている。
携帯電話機1200において、この表示部が前述の有機EL装置1a〜1eを備えている。
【0136】
図10は、本発明の電子機器を適用したディジタルスチルカメラの構成を示す斜視図である。なお、この図には、外部機器との接続についても簡易的に示されている。
ここで、通常のカメラは、被写体の光像により銀塩写真フィルムを感光するのに対し、ディジタルスチルカメラ1300は、被写体の光像をCCD(Charge Coupled Device)などの撮像素子により光電変換して撮像信号(画像信号)を生成する。
【0137】
ディジタルスチルカメラ1300におけるケース(ボディー)1302の背面には、表示部が設けられ、CCDによる撮像信号に基づいて表示を行う構成になっており、被写体を電子画像として表示するファインダとして機能する。
ディジタルスチルカメラ1300において、この表示部が前述の有機EL装置1a〜1eを備えている。
【0138】
ケースの内部には、回路基板1308が設置されている。この回路基板1308は、撮像信号を格納(記憶)し得るメモリが設置されている。
また、ケース1302の正面側(図示の構成では裏面側)には、光学レンズ(撮像光学系)やCCDなどを含む受光ユニット1304が設けられている。
撮影者が表示部に表示された被写体像を確認し、シャッタボタン1306を押下すると、その時点におけるCCDの撮像信号が、回路基板1308のメモリに転送・格納される。
【0139】
また、このディジタルスチルカメラ1300においては、ケース1302の側面に、ビデオ信号出力端子1312と、データ通信用の入出力端子1314とが設けられている。そして、図示のように、ビデオ信号出力端子1312にはテレビモニタ1430が、デ−タ通信用の入出力端子1314にはパーソナルコンピュータ1440が、それぞれ必要に応じて接続される。さらに、所定の操作により、回路基板1308のメモリに格納された撮像信号が、テレビモニタ1430や、パーソナルコンピュータ1440に出力される構成になっている。
【0140】
なお、本発明の電子機器は、図10のパーソナルコンピュータ(モバイル型パーソナルコンピュータ)、図9の携帯電話機、図8のディジタルスチルカメラの他にも、例えば、テレビや、ビデオカメラ、ビューファインダ型、モニタ直視型のビデオテープレコーダ、ラップトップ型パーソナルコンピュータ、カーナビゲーション装置、ページャ、電子手帳(通信機能付も含む)、電子辞書、電卓、電子ゲーム機器、ワードプロセッサ、ワークステーション、テレビ電話、防犯用テレビモニタ、電子双眼鏡、POS端末、タッチパネルを備えた機器(例えば金融機関のキャッシュディスペンサー、自動券売機)、医療機器(例えば電子体温計、血圧計、血糖計、心電表示装置、超音波診断装置、内視鏡用表示装置)、魚群探知機、各種測定機器、計器類(例えば、車両、航空機、船舶の計器類)、フライトシュミレータ、その他各種モニタ類、プロジェクター等の投射型表示装置等に適用することができる。また、本発明の電子機器は、表示機能を有しない発光機能のみを有するものであってもよい。
【0141】
以上、本発明の有機発光装置の製造方法、有機発光装置および電子機器を図示の実施形態に基づいて説明したが、本発明はこれらに限定されるものではない。
例えば、本発明の有機発光装置の製造方法では、必要に応じて、1以上の任意の目的の工程を追加してもよい。
また、本発明の有機発光装置は、各前記実施形態のうち任意の2以上の構成(特徴)を組み合わせたものであってもよい。
【0142】
また、本発明の有機発光装置は、上基板側から光を取り出す構成(トップエミッション型)であってもよい。この場合には、上基板の材料として、透光性を有する材料が用いられる。
さらに、本発明の有機発光装置の各部の構成は、同様の機能を発揮し得る任意のものと置換することができ、あるいは、任意の構成のものを付加することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0143】
【図1】本発明の有機発光装置の製造方法を適用して得られた有機エレクトロルミネッセンス装置の第1の構成を示した模式図である。
【図2】本発明の有機発光装置の製造方法により有機EL装置の第1の構成を製造する方法を説明するための図である。
【図3】本発明の有機発光装置の製造方法で用いられるプラズマ重合装置を示す模式図である。
【図4】プラズマ重合によって撥液膜を成膜する際に用いられるマスクを示す斜視図である。
【図5】本発明の有機発光装置の製造方法を適用して得られた有機エレクトロルミネッセンス装置の第2の構成を示した模式図である。
【図6】本発明の有機発光装置の製造方法により有機EL装置の第2の構成を製造する方法を説明するための図である。
【図7】本発明の有機発光装置の製造方法を適用して得られた有機エレクトロルミネッセンス装置の第3の構成を示した模式図である。
【図8】本発明の電子機器を適用したモバイル型(またはノート型)のパーソナルコンピュータの構成を示す斜視図である。
【図9】本発明の電子機器を適用した携帯電話機(PHSも含む)の構成を示す斜視図である。
【図10】本発明の電子機器を適用したディジタルスチルカメラの構成を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0144】
1a、1b、1c……有機EL装置 2……ケーシング 21……基板 22……上基板 221……撥液膜形成領域 222……封止部形成領域 223……乾燥剤膜形成領域 23……封止部 23a……第1の封止部 23b……第2の封止部 231……封止材 232……ギャップ材 24……閉空間 3……有機EL素子 31……陽極 32……有機半導体層 33……陰極 4……乾燥剤膜 5……撥液膜 6……樹脂親和膜 100……プラズマ重合装置 101……真空ポンプ 102……ガス供給管 103……真空チャンバ 104……電極 105……ヘッド 106……高周波電源 107……上壁 108……マスク 109……第1の部分 110……第2の部分 111……梁部 1100……パーソナルコンピュータ 1102……キーボード 1104……本体部 1106……表示ユニット 1200……携帯電話機 1202……操作ボタン 1204……受話口 1206……送話口 1300……ディジタルスチルカメラ 1302……ケース(ボディー) 1304……受光ユニット 1306……シャッタボタン 1308……回路基板 1312……ビデオ信号出力端子 1314……データ通信用の入出力端子 1430……テレビモニタ 1440……パーソナルコンピュータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに対向する一対の基板と、該一対の基板同士の間に閉空間が形成されるように、前記一対の基板同士を封止する封止部とを備えるケーシングと、
前記一対の基板のうち、一方の基板の前記閉空間側に設けられ、主として有機発光材料で構成される有機発光層を備える有機発光素子と、
前記一対の基板のうち、他方の基板の前記閉空間側に設けられ、主として乾燥剤で構成される乾燥剤膜とを有する有機発光装置の製造方法であって、
前記閉空間内における前記他方の基板の前記閉空間側の面の前記乾燥剤膜を形成しない第1の領域に、撥液性を付与し、撥液膜を形成する第1の工程と、
前記他方の基板の前記閉空間側の面の前記乾燥剤膜を形成する第2の領域に、前記乾燥剤を含有する液状材料を供給して、該液状材料を、前記撥液膜により前記第2の領域に保持した状態で乾燥することにより、前記乾燥剤膜を形成する第2の工程と、
前記有機発光素子が形成された前記一方の基板と、前記乾燥剤膜が形成された前記他方の基板とを、前記有機発光素子と前記乾燥剤膜とが対向するようにして前記封止部を形成することにより貼り合せる第3の工程とを有することを特徴とする有機発光装置の製造方法。
【請求項2】
前記第1の領域は、前記第2の領域の外周部分である請求項1に記載の有機発光装置の製造方法。
【請求項3】
前記第1の工程において、前記他方の基板の前記閉空間側の面の前記第1の領域に、撥液性を有する化合物を主材料とする撥液膜を、プラズマ重合法を用いて形成することにより撥液性を付与する請求項1または2に記載の有機発光装置の製造方法。
【請求項4】
前記第3の工程において、前記封止部は、前記一方の基板と前記他方の基板との間に供給された樹脂材料を固化させることにより形成される請求項1ないし3のいずれかに記載の有機発光装置の製造方法。
【請求項5】
前記第3の工程に先立って、前記他方の基板の前記封止部を形成する領域に、前記樹脂材料に対して親和性を有する化合物を主材料とする樹脂親和膜を形成することにより前記樹脂材料に対する親和性を付与する請求項4に記載の有機発光装置の製造方法。
【請求項6】
前記樹脂材料は、ギャップ材を含み、該ギャップ材により前記封止部の厚さが規定される請求項4または5に記載の有機発光装置の製造方法。
【請求項7】
前記ギャップ材は、粒子で構成される請求項6に記載の有機発光装置の製造方法。
【請求項8】
前記ギャップ材は、主として乾燥剤で構成される請求項6または7に記載の有機発光装置の製造方法。
【請求項9】
前記第3の工程において、前記封止部は、前記一方の基板と前記他方の基板との間に供給された前記ギャップ材を含む第1の樹脂材料を固化させた後、固化した前記第1の樹脂材料の前記有機発光素子と反対側に、前記ギャップ材を含まない第2の樹脂材料を供給して固化させることにより形成される請求項8に記載の有機発光装置の製造方法。
【請求項10】
前記第3の工程において、前記封止部は、前記他方の基板の前記閉空間側の面の前記第1の領域に前記撥液膜が形成されていることにより、前記乾燥剤膜と離間して形成される請求項1ないし9のいずれかに記載の有機発光装置の製造方法。
【請求項11】
前記第3の工程において、前記乾燥剤膜と前記発光素子とを接触させる請求項1ないし10のいずれかに記載の有機発光装置の製造方法。
【請求項12】
前記封止部は、雰囲気の温度を40℃とした時の水蒸気透過度(JIS K 7129に規定)が、10[g/m・day・90%RH]以下である請求項1ないし11のいずれかに記載の有機発光装置の製造方法。
【請求項13】
請求項1ないし12のいずれかに記載の有機発光装置の製造方法で製造されたことを特徴とする有機発光装置。
【請求項14】
請求項13に記載の有機発光装置を備えることを特徴とする電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2008−16300(P2008−16300A)
【公開日】平成20年1月24日(2008.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−186031(P2006−186031)
【出願日】平成18年7月5日(2006.7.5)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】