説明

有機系反射防止層を有する物品の製造方法

【課題】常に安定した耐久品質と優れた外観を備えた有機系反射防止層を有する物品の製造方法を提供すること。
【解決手段】有機系反射防止層のコーティング液は、有機珪素化合物を有機溶剤で希釈して、必要に応じて水、塩酸等を添加し、加水分解を行う。その後、この加水分解物に、内部空洞を有するシリカ系粒子が分散したゾルを添加する。また、必要に応じて、硬化触媒、界面活性剤、帯電防止剤等を添加してもよい。
その後、このコーティング液を前記ハードコート層上に塗布する。塗布方法は、ディッピング法、スピンコート法、スプレーコート法、ロールコート法、フローコート法等が挙げられる。これらの方法のうち、スピンコート法が、膜厚を均一にする上で好ましい。このとき、温度は10〜40℃、相対湿度は10〜60%RHの範囲であることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機系反射防止層を有する物品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、眼鏡用などのプラスチックレンズでは、レンズ基板の表面にハードコート層単独又はプライマー層を介したハードコート層が形成され、このハードコート層の表面に、ゴースト及びちらつきを防止するための反射防止層が形成され、反射防止層の表面には、必要に応じて一定の機能を備えたコーティング層が形成されている。
反射防止層は、従来、主に真空蒸着法による多層膜として形成されていたが、最近では、反射防止機能を有する硬化性液体からなる反射防止層形成用組成物が考案されている。反射防止層形成用組成物の塗膜方法としては、ハードコート層単独又はプライマー層を介してハードコート層が形成されたレンズ基板に対し、反射防止層形成用組成物を塗布し、その後硬化させるのが一般的である。
反射防止層形成用組成物の塗布方式としては、主に浸漬方式やスピンコーティング方式が用いられる。例えば、特許文献1では、浸漬方式により反射防止層形成時に発生する膜厚ムラをなくし、反射防止機能と外観に優れた光学部品が提供されている。
【0003】
【特許文献1】特開2005−43572号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1では、反射防止層の形成工程において、季節変動により塗布環境が変化しており、耐久品質や外観にばらつきがある。例えば、ある時には、ムラが発生して有機系反射防止層形成用組成物を均一に塗布することができず、外観がよくないといった問題があり、またある時には、拭き耐久性が低下して傷がつきやすいなど、耐久性に問題がある。
【0005】
したがって、本発明の目的は、常に安定した耐久品質と優れた外観とを備えた有機系反射防止層を有する物品の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、耐久品質や外観のばらつきを解消するために鋭意検討を重ねた結果、以下の発明により、問題を解決できることを見出した。
本発明の有機系反射防止層を有する物品の製造方法は、プラスチック基板上にプライマー層及び/又はハードコート層を介して設けられてなる基材上に、単一の低屈折率層からなる有機系反射防止層を有する物品の製造方法であって、前記有機系反射防止層を形成する有機系反射防止層形成用組成物を前記基材上へ塗布する際、温度10〜40℃、相対湿度10〜60%RHの雰囲気下で行うことを特徴とする。
基材上への有機系反射防止層形成用組成物を塗布するにあたり、10℃未満もしくは40℃超の温度下で行うと、物品を製造する装置を低温下あるいは高温下で運転しなければならないので、装置自体に負荷がかかることになり、良くない。
また、湿度が10%未満であると、反射防止層の膜が硬く緻密化し、膜応力が増加して、下地層、または有機系反射防止層の表面に形成されるコーティング層との密着力が低下する。その結果、有機系反射防止層またはコーティング層が剥がれやすくなり、傷がつきやすいといった拭き耐久性の問題が生じる。
また、湿度が60%RHを超えると、塗布ムラが発生するなど、外観上の問題が起こる。さらには、水が有機系反射防止層の中へ過剰に入り、硬化反応が進みにくくなるといった問題も発生する。
【0007】
したがって、この発明によれば、温度10〜40℃、相対湿度10〜60%RHの範囲の雰囲気下で有機系反射防止層を形成するので、季節変動に関係なく、一定の塗布環境を維持することができる。したがって、季節変動によってばらつきのあった外観や耐久性を一定に保つことができ、不良品等を低減することができる。
【0008】
本発明では、前記有機系反射防止層形成用組成物は、内部空洞を有するシリカ系粒子と、RSiX3−n(式中、Rは、重合可能な反応基を有する有機基であり、Rは炭素数1〜6の炭化水素基であり、Xは加水分解基であり、nは0又は1である)で示される有機珪素化合物とを含有する構成が好ましい。
本発明によれば、シリカ系粒子は、内部空洞を有するので、シリカよりも屈折率の低い気体、溶媒を包含することができる。これにより、内部空洞を有するシリカ系粒子は、内部空洞を有しないシリカ系粒子よりも屈折率が低くなり、有機系反射防止層の屈折率が低くなる。有機系反射防止層の屈折率を低くすることで、それより下層との屈折率の差が大きくなり、反射防止機能を向上させることができる。
【0009】
本発明では、前記基材上に形成された前記有機系反射防止層の表面に、更にコーティング層を形成する構成が好ましい。
コーティング層とは、ある一定の機能を付加するために形成される層であり、例えば、撥水層や防曇層などが挙げられる。この発明では、有機系反射防止層の上に撥水層や防曇層のような一定の機能を備えたコーティング層が形成されるので、さらなる機能を付加することができ、高性能な物品を製造することができる。
【0010】
例えば、前記コーティング層として、下記式(1)、(2)及び(3)の少なくともいずれかで示されるフッ素含有有機珪素化合物から形成された撥水層が挙げられる。
【化1】

【0011】
(式中、R1はパーフルオロアルキル基を示す。Xは臭素、ヨウ素または水素を示す。Yは水素または低級アルキル基を示し、Zはフッ素またはトリフルオロメチル基を示す。R1は加水分解可能な基を示し、R2は水素または不活性な1価の炭化水素基を示す。a、b、c、dは0または1以上の整数で、且つa+b+c+d+eは少なくとも1以上であり、a、b、c、d、eで括られた各繰り返し単位の存在順序は、式中において限定されない。fは0、1または2である。gは1、2または3である。hは1以上の整数である。)
【化2】

【0012】
(式中、R2は式:「−(Ck2k)O−」で示される単位を含み、分岐を有しない直鎖状のパーフルオロポリアルキレンエーテル構造を有する2価の基を示す。なお、式:「−(Ck2k)O−」におけるkは1〜6の整数である。R3は炭素原子数1〜8の1価炭化水素基であり、Wは加水分解性基またはハロゲン原子を示す。pは0、1または2であり、nは1〜5の整数である。m及びrは、2または3である。)
【化3】

【0013】
前記した式(1)、(2)及び(3)の少なくともいずれかで示されるフッ素含有有機珪素化合物を、前記した有機系反射防止層の上にコーティングすることで、優れた撥水効果を有する物品を製造することができる。これらのフッ素含有有機珪素化合物は、単独で用いてもよいが混合して用いてもよい。
【0014】
また、前記コーティング層として、非カップリング部位に少なくとも1個以上の硫黄を含む有機珪素化合物から形成された防曇層を挙げることができる。例えば、有機珪素化合物及び/又はその加水分解物の単体及び2量体以上の縮合物により形成された防曇層が好適である。
コーティング層としてこのような防曇層を設けると、充分な防曇性能および膜自体の耐久性を持つ防曇性物品を提供することができる。具体的には、単体で存在する非カップリング部位に少なくとも1個以上の硫黄を含む有機珪素化合物及び/又はその加水分解物は、基材と膜の固定化に加え、2量体以上の縮合物間、2量体以上の縮合物と単体分子間及び、単体分子間で反応し、隙間を埋める糊の役目を果たす。これにより、物品表面に親水成分を固定化するための部位、及び、膜内で架橋する部位が存在し、充分な防曇性能、さらには、防曇層自体の耐久性にも優れた防曇性物品が得られる。
【0015】
本発明では、前記物品はレンズであることが好ましい。
この発明では、前述の製造方法により、レンズ表面に有機系反射防止層が形成されるので、外観や耐久性に優れたレンズを製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態を説明するが、本実施形態に限定されることなく、有機系反射防止層を形成する工程のある物品の製造方法であれば、本発明を適用することができる。
本実施形態の物品は、例えば眼鏡用のプラスチックレンズであり、図1(A)には、本実施形態のプラスチックレンズの断面図が示されている。
プラスチックレンズ10は、透明なレンズ基板100と、レンズ基板100の両面に形成されたプライマー層101と、プライマー層101上に形成されたハードコート層102と、ハードコート層102上に形成された有機系反射防止層103、そして有機系反射防止層103上に形成されたコーティング層104とを備えている。
【0017】
[レンズ基板100の材質]
レンズ基板100の材質としては、プラスチック製であればよく、特に限定されないが、屈折率が1.6以上の透明な素材を使用することが好ましい。例えば、イソシアネート基またはイソチオシアネート基を持つ化合物と、メルカプト基を持つ化合物を反応させることによって製造されるポリチオウレタン系プラスチックや、エピスルフィド基を持つ化合物を含む原料モノマーを重合硬化して製造されるエピスルフィド系プラスチックを基材の素材として使用することができる。
【0018】
ポリチオウレタン系プラスチックの主成分となるイソシアネート基またはイソチオシアネート基を持つ化合物としては、公知の化合物が何ら制限なく使用できる。
イソシアネート基を持つ化合物の具体例としては、エチレンジイソシアナート、トリメチレンジイソシアナート、2,4,4−トリメチルヘキサンジイソシアナート、ヘキサメチレンジイソシアナート、m−キシリレンジイソシアナート等が挙げられる。
【0019】
また、メルカプト基を持つ化合物としても、公知の物を用いることができる。例えば、1,2−エタンジチオール、1,6−ヘキサンジチオール、1,1−シクロヘキサンジチオール等の脂肪族ポリチオール、1,2−ジメルカプトベンゼン、1,2,3−トリス(メルカプトメチル)ベンゼン等の芳香族ポリチオールが挙げられる。また、プラスチックレンズの高屈折率化のためには、メルカプト基以外にも、硫黄原子を含むポリチオールがより好ましく用いられ、その具体例としては、1,2−ビス(メルカプトメチルチオ)ベンゼン、1,2,3−トリス(メルカプトエチルチオ)ベンゼン、1,2−ビス((2−メルカプトエチル)チオ)−3−メルカプトプロパン等が挙げられる。
【0020】
また、エピスルフィド系プラスチックの原料モノマーとして用いられる、エピスルフィド基を持つ化合物の具体例としては、公知のエピスルフィド基を持つ化合物が何ら制限なく使用できる。既存のエポキシ化合物のエポキシ基の一部あるいは全部の酸素を硫黄で置き換えることによって得られるエピスルフィド化合物が挙げられる。また、プラスチックレンズの高屈折率化のためには、エピスルフィド基以外にも硫黄原子を含有する化合物がより好ましい。具体例としては、1,2−ビス(β−エピチオプロピルチオ)エタン、ビス−(β−エピチオプロピル)スルフィド、1,4−ビス(β−エピチオプロピルチオメチル)ベンゼン、2,5−ビス(β−エピチオプロピルチオメチル)−1,4−ジチアン、ビス−(β−エピチオプロピル)ジスルフィド等が挙げられる。
【0021】
[プライマー層用組成物]
プライマー層101は必須ではないが、一般にレンズ基板100とハードコート層102との密着性の向上、耐衝撃性の向上、染色性の改善等の目的で設けられる。
このようなプライマー層101は、例えば、極性基を有する有機樹脂ポリマーや酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化スズ、酸化珪素等の金属酸化物微粒子を含んでいてもよい。
極性基を有する有機樹脂ポリマーとしては、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、ポリオレフィン樹脂、ウレタンアクリレート樹脂、エポキシアクリレート樹脂等の各種樹脂を使用することが可能である。この内、硫黄原子を含むレンズ基板に対する密着性とフィラーとなる金属酸化物微粒子の分散性の点から、ポリエステル樹脂を好ましく用いることができる。
【0022】
ポリエステル樹脂では、樹脂中のエステル結合および側鎖に付いたヒドロキシル基やエポキシ基が基材(プラスチック眼鏡レンズの表面分子)と相互作用を生じ易く、高い密着性を発現する。一方、ポリエステル樹脂のpHは弱酸性を示す場合が多く、フィラーとなる金属酸化物微粒子が安定に存在できるpHと合致する場合が多い。よってプライマー樹脂中に金属酸化物微粒子が局在化せずに均質に分散した状態となり、プライマー層101の架橋密度を安定化もしくは向上させ、耐水性および耐光性が向上する。
【0023】
[ハードコート層用組成物]
ハードコート層102に用いられる組成物は特に限定されず、公知のものを用いることができる。例えば、RSiXで示される有機珪素化合物(式中、Rは重合可能な反応基を有する有機基であり、Xは、加水分解性基を示す)をバインダー剤として、ルチル型の結晶構造を有する酸化チタンを含有する無機酸化物粒子を含有しているものを使用することができる。
有機珪素化合物の化学式中、Rは、重合可能な反応基を有する有機基であり、炭素数は1〜6である。Rはビニル基、アリル基、アクリル基、メタクリル基、1−メチルビニル基、エポキシ基、メルカプト基、シアノ基、イソシアノ基、アミノ基等の重合可能な反応基を有する。また、Xは、加水分解可能な官能基であり、例えば、メトキシ基、エトキシ基、メトキシエトキシ基等のアルコキシ基、クロロ基、ブロモ基等のハロゲン基、アシルオキシ基等があげられる。
【0024】
有機珪素化合物としては、例えば、ビニルトリアルコキシシラン、ビニルトリクロロシラン、ビニルトリ(β−メトキシ−エトキシ)シラン、アリルトリアルコキシシラン、アクリルオキシプロピルトリアルコキシシラン、メタクリルオキシプロピルトリアルコキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリアルコキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)−エチルトリアルコキシシラン、メルカプトプロピルトリアルコキシシラン、γ−アミノプロピルトリアルコキシシラン等があげられる。
この有機珪素化合物は、2種類以上を混合して用いてもよい。
【0025】
無機酸化物粒子は、酸化チタンのみを含有するものであってもよく、酸化チタンと他の無機酸化物とを含有するものであってもよい。例えば、酸化チタンと、Si、Al、Sn、Sb、Ta、Ce、La、Fe、Zn、W、Zr、In等金属の酸化物を混合して使用してもよい。さらに、無機酸化物粒子は、酸化チタンと他の無機酸化物との複合粒子であってもよい。複合粒子を使用する場合には、例えば、Si、Al、Sn、Sb、Ta、Ce、La、Fe、Zn、W、Zr、In等の金属の酸化物と、酸化チタンとが複合したものを使用すればよい。
【0026】
さらに、ハードコート層102は、多官能性エポキシ化合物を含有してもよい。多官能性エポキシ化合物は、レンズ基板100に対するハードコート層102の密着性を向上させるとともに、ハードコート層102の耐水性を向上させることができる。
さらに、ハードコート層102には必要に応じて、過塩素酸マグネシウムなどの硬化触媒を添加することもできる。
【0027】
[有機系反射防止層形成用組成物]
有機系反射防止層103に用いられる組成物は、特に限定されず、公知のものを使用することができるが、本実施形態では、以下の(A)成分、(B)成分を含有する組成物について説明する。
(A)一般式:R12SiX13−n(式中、R1は、重合可能な反応基を有する有機基であり、R2は炭素数1〜6の炭化水素基であり、X1は加水分解基であり、nは0又は1である)で示される有機珪素化合物
(B)内部空洞を有するシリカ系粒子
【0028】
(A)成分のR1の重合可能な反応基を有する有機基は、例えば、ビニル基、アリル基、アクリル基、メタクリル基、エポキシ基、メルカプト基、シアノ基、イソシアノ基、アミノ基等の重合可能な反応基を有する。
(A)成分のR2の炭素数1〜6の炭化水素基としては、メチル基、エチル基、ブチル
基、ビニル基、フェニル基等が例示できる。
さらに(A)成分のX1としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、メトキシエトキ
シ基等のアルコキシ基、クロロ基、ブロモ基等のハロゲン基、アシルオキシ基等があげられる。
【0029】
(A)成分の有機珪素化合物としては、例えば、ビニルトリアルコキシシラン、ビニルトリクロロシラン、ビニルトリ(β−メトキシ−エトキシ)シラン、アリルトリアルコキシシラン、アクリルオキシプロピルトリアルコキシシラン、メタクリルオキシプロピルトリアルコキシシラン、メタクリルオキシプロピルジアルコキシメチルシラン、γ−グリシドオキシプロピルトリアルコキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)−エチルトリアルコキシシラン、メルカプトプロピルトリアルコキシシラン、γ−アミノプロピルトリアルコキシシラン、N−β(アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルジアルコキシシラン等があげられる。これら2種類以上を混合して用いてもよい。
【0030】
(B)成分の内部空洞を有するシリカ系粒子の平均粒径は、以下のようであることが好ましい。
(平均粒径)=(設計波長(nm)/反射防止層屈折率)×1/4
【0031】
有機系反射防止層103には、上記(A)成分、(B)成分の他に、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、ポリオレフィン樹脂、ウレタンアクリレート樹脂、エポキシアクリレート樹脂等の樹脂や、これらの樹脂の原料となるメタアクリレート類、アクリレート類、エポキシ類、ビニル類等の各種モノマーを添加することが可能である。
さらに、これらの成分以外に、必要に応じて、硬化触媒、界面活性剤、帯電防止剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、ヒンダートアミン、ヒンダートフェノール等の光安定剤、分散染料、油溶染料、蛍光染料、顔料等を添加し、耐光性、塗布性の向上を図ってもよい。
また、有機系反射防止層103は、ハードコート層102、レンズ基板100よりも低屈折率の層として形成される。
【0032】
[コーティング層用組成物]
コーティング層104は、ある一定の機能を付加するために形成される層である。コーティング層104としては、例えば、レンズ10の表面で水滴をはじくための撥水層や、レンズ10の表面が曇ることを防ぐための防曇層などが挙げられる。このような撥水層や防曇層をレンズ10の最表面層として形成するためには、撥水剤や防曇剤を用いることが好ましい。以下、撥水層や防曇層を形成するための撥水剤及び防曇剤について説明する。
【0033】
(撥水剤)
撥水剤としては、フッ素系撥水剤が好適であるが、下記式(1)、(2)及び(3)の少なくともいずれかで示されるフッ素含有有機珪素化合物が特に好ましい。
【化1】

【0034】
(式中、R1はパーフルオロアルキル基を示す。Xは臭素、ヨウ素または水素を示す。Yは水素または低級アルキル基を示し、Zはフッ素またはトリフルオロメチル基を示す。R1は加水分解可能な基を示し、R2は水素または不活性な1価の炭化水素基を示す。a、b、c、dは0または1以上の整数で、且つa+b+c+d+eは少なくとも1以上であり、a、b、c、d、eで括られた各繰り返し単位の存在順序は、式中において限定されない。fは0、1または2である。gは1、2または3である。hは1以上の整数である。)
【化2】

【0035】
(式中、R2は式:「−(Ck2k)O−」で示される単位を含み、分岐を有しない直鎖状のパーフルオロポリアルキレンエーテル構造を有する2価の基を示す。なお、式:「−(Ck2k)O−」におけるkは1〜6の整数である。R3は炭素原子数1〜8の1価炭化水素基であり、Wは加水分解性基またはハロゲン原子を示す。pは0、1または2であり、nは1〜5の整数である。m及びrは、2または3である。)
【化3】

【0036】
前記した式(1)、(2)及び(3)の少なくともいずれかで示されるフッ素含有有機珪素化合物を、前記した有機系反射防止層103の上にコーティングすることで、優れた撥水効果を有する物品を製造することができる。これらのフッ素含有有機珪素化合物は、単独で用いてもよいが混合して用いてもよい。特に式(2)と式(3)の化合物を混合して用いると撥水層の耐久性が向上するので好ましい。
前記した撥水剤の具体例としては、GE東芝シリコーン株式会社製TSL8233、TSL8257、ダイキン工業株式会社製オプツールDSX、信越化学工業株式会社製、KY−130、KP−801」などが挙げられる。
【0037】
(防曇剤)
防曇剤としては、非カップリング部位に少なくとも1個以上の硫黄を含む有機珪素化合物を挙げることができる。例えば、有機珪素化合物及び/又はその加水分解物の単体及び2量体以上の縮合物により形成された防曇層が好適である。
2量体以上の縮合物を用いると、防曇層内の親水性基の密度を向上させる効果がある。また、単体で存在する有機珪素化合物は、基材と防曇層との固定化に加え、2量体以上の縮合物間、2量体以上の縮合物と単体分子間及び、単体分子間で反応し、隙間を埋める糊の役目を果たす。これにより、防曇層強度及び、物品表面との高い密着性を発現する作用がある。さらに、糊として働く単体には親水性基が含有されるため、防曇層における親水性基の密度を低下させず、優れた防曇特性を発揮することが可能となる。
【0038】
また、非カップリング部位に少なくとも1個以上の硫黄を含む有機珪素化合物の2量体以上の縮合物は、2量体以上であれば充分な親水性基の密度が得られる。より高い親水性基の密度を得るため、2量体以上の様々な縮合度の縮合物を含むことが望ましく、さらに好ましくは、様々な2量体以上の縮合物のうち、縮合度の小さいものを大きいものよりも多く含み、防曇層内の充填率を低下させないことが好ましい。
【0039】
非カップリング部位に少なくとも1個以上の硫黄を含む有機珪素化合物及び/又はその加水分解物の例として、3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3−メルカプトプロピルジメチルメトキシシラン、2−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、2−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、2−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、2−メルカプトプロピルジメチルメトキシシラン、2−メルカプトエチルトリエトキシシラン、2−メルカプトエチルトリメトキシシラン、2−メルカプトエチルメチルジメトキシシラン、2−メルカプトエチルジメチルメトキシシラン、2−(2−クロロエチルチオエチル)トリエトキシシラン、メルカプトメチルトリメトキシシラン、ジメトキシ−3−メルカプトプロピルメチルシラン、2−(2−アミノエチルチオエチル)ジエトキシメチルシラン、ジメトキシメチル−3−(3−フェノキシプロピルチオプロピル)シラン、3−(2−アセトキシエチルチオプロピル)ジメトキシメチルシラン、2−(2−アミノエチルチオエチル)トリエトキシシラン、3−トリメトキシシリルプロパンスルホン酸イソプロピルエステル、ビス[3−(トリエトキシシリル)プロピル]テトラスルフィド、ビス[3−(トリエトキシシリル)プロピル]ジスルフィド、ビス[3−(トリエトキシシリル)プロピル]スルフィド、3−トリメトキシシリルプロピルスルホン酸などが挙げられる。
【0040】
以上のようなプラスチックレンズは以下のようにして製造される。
[プライマー層101の形成工程]
プライマー層用組成物の塗布方法は、スプレー法、スピンコート法、ディッピング法等の公知の方法が用いられる。また、必要に応じて、プラスチックレンズの基材をアルカリ処理、プラズマ処理、紫外線処理、無機微粒子による表面研磨処理等によって前処理してもよい。
プライマー層101は、プライマー層用組成物を前記した方法で基材に塗布した後、硬化することによって得られる。これらの硬化には、硬化触媒を使用しても良い。硬化触媒としては、第三級アミン化合物、有機錫化合物、有機亜鉛化合物、過塩素酸アンモニウム、カチオン光重合開始剤、ラジカル光重合開始剤が用いられる。
プライマー層101を形成するには、プライマー層用組成物を基材に塗布した後、70℃〜140℃、好ましくは80〜130℃で加熱する。70℃より低い温度では、硬化反応が進行しにくい。また、140℃より高い温度では、基材が変形する。硬化に必要な時間は、加熱する温度によって異なるが、15〜90分間である。
【0041】
[ハードコート層102の形成工程]
まず、ハードコート層102を形成するためのハードコート液を製造する。有機珪素化合物を有機溶剤に溶かし、水や塩酸等を添加して加水分解させて、加水分解物を生成する。この加水分解物に無機酸化物粒子が分散したゾルを添加する。さらに、必要に応じて、硬化触媒、多官能性エポキシ化合物等を添加する。硬化触媒としては、Fe(III)を中心金属原子とするアセチルアセトネートがハードコート液のポットライフを長くすることができる点で好適である。
次に、ハードコート液を基材上に塗布する。任意の方法で塗布可能であるが、例えば、ディッピング法、スピンコート法、スプレーコート法、ロールコート法、フローコート法等があげられる。基材とハードコート層との密着性を高めるために、ハードコート液を塗布するまえに、基材にアルカリ処理、酸処理、界面活性剤処理、プラズマ処理等を行っても良い。
塗布後、ハードコート液の予備硬化および温水浸漬法や加湿法により水分の添加処理を行い、水分含有予備硬化ハードコート層を得る。
そして、最後に100〜140℃で60〜180分加熱して、レンズ基板100を硬化させる。温度が100℃未満であると硬化が不十分で耐擦傷性及び密着性が得られず、140℃を超えるとレンズ基板が黄変し透明性が低下する。
【0042】
[有機系反射防止層103の形成工程]
(A)成分の有機珪素化合物を有機溶剤で希釈して、必要に応じて水、塩酸等を添加し、加水分解を行う。その後、この加水分解物に(B)成分である内部空洞を有するシリカ系粒子が分散したゾルを添加する。また、必要に応じて、硬化触媒、界面活性剤、帯電防止剤等を添加してもよい。これにより、有機系反射防止層103のコーティング液が完成する。
その後、このコーティング液を前記ハードコート層102上に塗布する。塗布する方法は、任意であるが、例えば、ディッピング法、スピンコート法、スプレーコート法、ロールコート法、フローコート法等があげられる。これらの方法のうち、スピンコート法が、層厚を均一にする上で好ましい。
これらのどの方法においても、エアコン等により、温度を10〜40℃、好ましくは15〜35℃、相対湿度10〜60%RH、好ましくは20〜40%RHの範囲に設定して塗布を行う。
そして、有機系反射防止層103のコーティング液を熱、紫外線等により硬化させることで有機系反射防止層103が完成する。加熱により有機系反射防止層103のコーティング液を硬化させる場合には、50〜200℃で加熱する。
【0043】
[コーティング層形成工程]
前述の有機系反射防止層103を形成したプラスチックレンズを洗浄し、コーティング加工を行う。コーティング層104としては、例えば、撥水層や防曇層が挙げられる。以下に、コーティング層104として撥水層を形成した場合と防曇層を形成した場合について、各々説明する。
【0044】
(撥水層の形成工程)
撥水層をレンズ基板100(有機系反射防止層103)の上に形成するには、前記した式(1)〜(3)に示すいずれかのフッ素含有有機珪素化合物を有機溶剤に溶解させ、所定の濃度となるように調整し、レンズ基板100表面に塗布する方法を採用することができる。有機溶剤としては、フッ素含有有機シラン化合物の溶解性に優れるパーフルオロ基を有し、炭素数が4以上の有機化合物が好ましく、例えば、パーフルオロヘキサン、パーフルオロシクロブタン、パーフルオロオクタン、パーフルオロデカン、パーフルオロメチルシクロヘキサン、パーフルオロ−1,3−ジメチルシクロヘキサン、パーフルオロ−4−メトキシブタン、パーフルオロ−4−エトキシブタン、メタキシレンヘキサフロライドを挙げることができる。また、パーフルオロエーテル油、クロロトリフルオロエチレンオリゴマー油を使用することができる。その他に、フロン225(CF3CF2CHCl2とCClF2CF2CHClFの混合物)を例示することができる。これらの有機溶剤の1種を単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
【0045】
有機溶剤で希釈するときの濃度は、0.03〜1質量%の範囲が好ましい。0.03質量%より低すぎると十分な厚さを有する撥水層の形成が困難であり、十分な撥水効果が得られない場合がある。一方、1質量%より濃すぎると撥水層が厚くなり過ぎるおそれがあり、塗布後に塗りむらをなくすためのリンス作業の負担が増すおそれがある。
【0046】
塗布方法としては、ディッピング法、スピンコート法、スプレー法、フロー法、ドクターブレード法、ロールコート塗装、グラビアコート塗装、カーテンフロー塗装、刷毛塗り等が用いられる。撥水層の膜厚は、特に限定されないが、0.001〜0.5μmが好ましい。なお、より好ましくは0.001〜0.03μmである。撥水層の膜厚が薄すぎると撥水効果が乏しくなり、厚すぎると表面がべたつくので好ましくない。また撥水層の厚さが0.03μmより厚くなると有機系反射防止層103の反射防止効果が低下するため好ましくない。
【0047】
ディッピング法の場合、上記した有機溶剤を用いて所定濃度に調整した撥水処理液中にレンズ基板100を浸漬し、一定時間経過後、一定速度でレンズ基板100を引き上げる。この際、浸漬時間としては0.5分から3分程度が望ましい。0.5分以下であると、レンズ基板100表面への撥水剤の吸着が充分でないため、所定の撥水性能を得ることができない。3分以上の場合は、サイクルタイムの増加を招き好ましくない。引き上げ速度は、100mm/分〜300mm/分が望ましい。これは、撥水処理液濃度との兼ね合いで決められるものであるが、100mm/分以下では、撥水層が薄くなりすぎて所定の撥水性能が得られず、300mm/分以上では、撥水層が厚くなりすぎ、塗布後塗りむらをなくすためのリンス作業の負担が増すおそれがある。
なお、乾式プロセスとして、前記フッ素含有有機珪素化合物を真空槽内で蒸発させてレンズ基板100(有機系反射防止層103)の表面に付着させる真空蒸着法を採用することもできる。真空蒸着法では、フッ素含有有機珪素化合物は高濃度、または希釈溶剤なしに使用することができる。
【0048】
(防曇層の形成工程)
防曇層は、例えば、以下のような方法でレンズ基板100(有機系反射防止層103)の上に好適に形成することができる。
非カップリング部位に少なくとも1個以上の硫黄を含む有機珪素化合物及び/又はその加水分解物の単体及び2量体以上の縮合物を適当な親水性有機溶剤に希釈した処理液を基材表面に塗布する工程と、前記処理液を塗布した基材を加熱処理して乾燥硬化する工程により、防曇層をレンズ基板100(有機系反射防止層103)の上に形成することができる。
ここで、前記した適当な親水性有機溶剤とは、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等のアルコール類、エチレングリコール、プロピレングリコール等のグリコール類、グリセリン、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のグリコールエーテル類、アセトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類、水などである。親水性有機溶剤は、1種のみでも、2種以上を混合溶媒でも良い。
【0049】
非カップリング部位に少なくとも1個以上の硫黄を含む有機珪素化合物の含有量は0.1質量%以上25質量%以下とすることが好ましい。0.1質量%以下では、防曇層が薄くなり、耐久性に問題がある。25質量%以上の濃度で用いても、防曇層の膜厚、性能に変化が見られず、製造コスト的にも問題がある。また、表面に形成される防曇層の膜厚によっては表面の反射特性が変化して、光線反射率及び透過率が変化してしまい、光学特性が変化してしまうおそれもある。それ故、含有量は0.1質量%以上2質量%以下とすることが好ましい。
【0050】
さらに、前記した処理液は、防曇層の均一性、外観向上のため、界面活性剤を混合することが好ましい。例えば、アニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両面界面活性剤などの界面活性剤類、およびその反応性誘導体などが挙げられるが、有機珪素化合物側の硫黄を含む基との相互作用から、好ましくはアニオン性のものが良く、更に好ましくはアニオン性基が硫酸または硫酸塩またはスルホン酸またはスルホン酸塩であるアニオン性界面活性剤が好ましい。用いられる界面活性剤は特定の一種または二種類以上を混合して使用しても良い。界面活性剤は、防曇層の膜強度を阻害しない範囲で混合可能である。よって、非カップリング部位に少なくとも1個以上の硫黄を含む有機珪素化合物及び/又はその加水分解物に対して、1質量%以上50質量%以下の範囲で混合することが好ましい。
【0051】
また、塗布方法はディップコーティング法、スピンコーティング法、バーコードコーティング法、スプレーコーティング法等があげられるが、生産性、塗布後の均一性を重視した場合、ディップコーティング法、スピンコーティング法が好ましい。
非カップリング部位に少なくとも1個以上の硫黄を含むオルガノシラン及び/又はその加水分解物の単体及び2量体以上の縮合物を親水性有機溶剤に希釈した処理液をレンズ基板100(有機系反射防止層103)表面に塗布する前に、処理液に含まれる有機珪素化合物とレンズ基板100(有機系反射防止層103)表面の反応性を高める工程を設けても良い。例えば、プラズマ処理、アルカリ処理等で、レンズ基板100(有機系反射防止層103)の表面を活性化するとよい。
【0052】
処理液を塗布したレンズ基板100を加熱処理して乾燥硬化する工程は、非カップリング部位に少なくとも1個以上の硫黄を含む有機珪素化合物及び/又はその加水分解物を親水性有機溶剤に希釈した処理液内の溶媒を除去し、有機珪素化合物の反応を完結させるために行うものである。加熱処理の条件については、溶媒が蒸散し、有機珪素化合物の反応が好適に起こる条件で、かつ、レンズ基板100自体に影響がない範囲であれば、特に限定しない。好ましくは、50℃以上300℃以下の温度範囲で1分以上24時間以下の加熱処理を行う。反応速度が温度に依存することから、加熱温度が低いほど長時間の処理が好ましい。加熱温度が300℃を越える場合、非カップリング部位に少なくとも1個以上の硫黄を含む有機珪素化合物及び/又はその加水分解物が分解するなどの影響があるため、避けた方が良い。50℃以上150℃以下で1分以上12時間以下の加熱処理であれば、工程を設計する上でなお好ましい。
【0053】
防曇性層を設けた後に、さらに防曇特性を向上する目的で、界面活性剤を塗布しても良い。塗布する界面活性剤としては、アニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両面界面活性剤などがあげられる。具体的には、前記した界面活性剤を用いることが可能である。界面活性剤は特定の一種または二種類以上を混合して使用しても良い。界面活性剤は、防曇層の上面に付与される方法で有ればいかなる塗布方法を用いても良い。
【0054】
以上説明した本実施形態によれば、次のような作用効果を得ることができる。
(1)有機系反射防止層103を形成する工程において、装置内の環境を、温度10〜40℃、相対湿度10〜60%RHの範囲内とした。そのため、ムラが発生せず、有機系反射防止層103を均一に塗布することができるので、外観が美しい。
また、有機系反射防止層103の膜応力が発生しないので、有機系反射防止層103とハードコート層102、および有機系反射防止層103とコーティング層104との密着力も向上し、有機系反射防止層103およびコーティング層104が剥がれにくくなる。
特に、コーティング層が撥水層である場合に、撥水層と有機系反射防止層の結合力が湿度変化の影響を受け易く、撥水層の拭き耐久性が安定しなかったが、本発明で湿度を一定に保つことで、一定の品質を保つことができる。したがって、傷が付きにくく、拭き耐久性に優れた製品を安定して提供することができる。
【0055】
(2)有機系反射防止層103を構成するシリカ系粒子は内部空洞を有するので、シリカよりも屈折率の低い気体、溶媒を包含することができる。これにより、内部空洞を有するシリカ系粒子は、内部空洞を有しないシリカ系粒子よりも屈折率が低くなり、有機系反射防止層103を構成する有機薄膜の屈折率が低くなる。有機薄膜の屈折率を低くすることで、ハードコート層102との屈折率の差が大きくなり、反射防止機能を向上させることができる。
【0056】
(3)コーティング層104として、前記した式(1)〜(3)のような特定の化合物により撥水層を形成すると、非常に優れた撥水効果をプラスチックレンズ10に付与することができる。特に、式(2)の化合物と式(3)の化合物を併用すると、初期撥水効果に優れるだけでなく、その効果を長期間維持することが可能となる。
【0057】
(4)コーティング層104として防曇層を設けると、充分な防曇性能および層自体の耐久性を持つプラスチックレンズ10を提供することができる。特に、防曇剤として、非カップリング部位に少なくとも1個以上の硫黄を含む有機珪素化合物及び/又はその加水分解物を用いると、レンズ基板100(有機系反射防止層103)とコーティング層(防曇層)104との固定化に加え、2量体以上の縮合物間、2量体以上の縮合物と単体分子間及び、単体分子間で反応し、隙間を埋める糊の役目を果たす。これにより、プラスチックレンズ10の表面に親水成分を固定化するための部位、及び、層内で架橋する部位が存在することになり、充分な防曇性能、さらには、防曇層自体の耐久性にも優れたプラスチックレンズ10が得られる。
【0058】
なお、本発明は前述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
例えば、本実施形態では、レンズ基板100の上にプライマー層101が形成され、プライマー層101の上にハードコート層102が形成されたが、図1(B)に示すように、プライマー層101を省略して、レンズ基板100の上に直接ハードコート層102が形成された構成でもよい。
また、本実施形態では、有機系反射防止層103上のコーティング層104として撥水層や防曇層が形成されたが、撥水層や防曇層に代えて、帯電防止層や導電層など他の機能を備えたコーティング層104が形成されてもよい。
【実施例】
【0059】
以下、実施例および比較例を挙げて、本発明をより具体的に説明するが、本発明は実施例等の内容に何ら限定されるものではない。
使用したプラスチックレンズは、レンズ基板と、プライマー層と、ハードコート層と、有機系反射防止層、さらには撥水層もしくは防曇層とが順番に形成されたものであった。各層の形成は以下のように行った。
レンズ基板としては、屈折率1.67のプラスチックレンズ基板(セイコーエプソン(株)製、商品名「セイコースーパーソブリン(SSV)」)を使用した。
【0060】
プライマー層は、塗布液をレンズ基板に塗布して形成した。
まず、市販の水性ポリエステル「A−160P」(高松油脂(株)製、固形分濃度25%)77g、メタノール220g、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)31.5g、水91.8g、メタノール分散二酸化チタン−二酸化ジルコニウム−二酸化珪素複合微粒子ゾル(触媒化成工業(株)製、固形分濃度20重量%)78.8g、シリコーン系界面活性剤(日本ユニカー(株)製、商品名「L−7604」)0.1gを加え2時間攪拌した。塗布には、浸漬法(引き上げ速度20cm/分)を用い、塗布した基材レンズは、80℃で20分間加熱硬化処理した。このようにして形成されたプライマー層は、膜厚0.5μm、屈折率1.67である。
【0061】
ハードコート層は、以下の塗布液をプライマー層の上に塗布して形成した。
まず、ブチルセロソルブ62.5g、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン67.1gを混合した。この混合液に0.1規定塩酸水溶液30.7gを撹拌しながら滴下し、さらに4時間撹拌後一昼夜熟成させた。この液にメタノール分散二酸化チタン−二酸化ジルコニウム−二酸化珪素複合微粒子ゾル(触媒化成工業(株)製、固形分濃度20重量%)325g、グリセロールジグリシジルエーテル(ナガセケムテックス(株)製、商品名「デナコールEX−313」)12.5g添加した後、鉄(III)アセチルアセトネ
ート1.36g、シリコーン系界面活性剤(日本ユニカー(株)製、商品名「L−7001」)0.15g、フェノール系酸化防止剤(川口化学工業(株)製、商品名「アンテージクリスタル」)0.63gを添加し、4時間撹拌後一昼夜熟成させた。塗布は、浸漬法(引き上げ速度35cm/分)を用い、その後、80℃で30分間加熱硬化処理後、さらに125℃で180分間の加熱硬化処理を行った。このようにして形成されたハードコート層は、膜厚2.0μm、屈折率1.67である。
【0062】
有機系反射防止層は、以下の塗布液をハードコート層に塗布して形成した。
まず、プロピレングリコールモノメチルエーテル(以下PGME)48.6g、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン14.1gを混合した後、0.1規定塩酸水溶液4.0gを撹拌しながら滴下し、5時間撹拌した。この液にイソプロパノール分散中空シリカゾル(平均粒径91nm、固形分濃度30wt%)33.3gを加えて十分に混合した後、硬化触媒としてAl(Cを0.06g、シリコーン系界面活性剤(日本ユニカー(株)製、L7604)を0.03g添加して撹拌、溶解することにより、固形分濃度が20%のコーティング原液を得た。このコーティング液を希釈するために、300ppm濃度のシリコーン系界面活性剤(日本ユニカー(株)製、L7604)入りPGME溶液を準備し、コーティング原液を35.3g、希釈用界面活性剤入りPGME溶液114.7gを混合して十分に撹拌し、固形分濃度が約4.7%の塗布液を作製した。塗布は、浸漬法にて行い、引き上げ速度は10cm/分とし、液温は25℃とした。塗布後、125℃で90分間アニールを行った。このようにして形成された有機系反射防止層の膜厚は、約91nm、屈折率は、約1.42であった。
【0063】
コーティング層を撥水層とした場合、以下のようにして撥水層を形成した。
分子量2500のフッ素シラン化合物A(信越化学工業(株)製、商品名「KY−130」)(以降では化合物A1)と、分子量497.5のフッ素シラン化合物B(信越化学工業(株)製、商品名「KP−801」)(以降では化合物B1)を含み、フッ素系溶剤(住友スリーエム(株)製、商品名「ノベックHFE−7200」)に希釈して固形分濃度3%溶液とを調製した。多孔質セラミックス製のペレットに1g含浸させ乾燥させたものを蒸着源としてチェンバーにセットした。このペレットを乾燥後、真空蒸着機内にセットし到達圧力が1.0〜4.0×10-2Paの範囲になるまで排気を行い、真空蒸着機内に、上述したプラスチックレンズを導入し、ペレットを400℃から500℃に加熱することによってシラン化合物を蒸発させ、反射防止層の表面に撥水層を成膜した。蒸着終了後、蒸着機内を徐々に大気圧に戻してプラスチックレンズを取り出した。この後、90℃、90%RHに設定した恒温恒湿槽に2時間保持した。
また、撥水層の形成は上記乾式だけでなく、ディッピングによる湿式でも良い。湿式の場合、固形分濃度0.3%溶液にレンズを浸漬して1分保持した後15cm/分にて引き上げ、その後、90℃、90%RHに設定した恒温恒湿槽に投入し、1.5時間保持した。
【0064】
コーティング層を防曇層とした場合、以下のようにして防曇層を形成した。
基材を3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン溶液(0.5wt%、n−ヘキサン溶媒)中に室温にて3分間浸漬し、80℃で120分間処理した(シランカップリング処理)。その後、アセトンにより洗浄した。洗浄前にはレンズに白化現象が見られたが、アセトン洗浄により透明に戻り、レンズの外観・反射防止の特性に大きな変化は見られなかった。次に水220gに硫酸水素ナトリウム100g、亜硝酸ナトリウム10g、硝酸ナトリウム10gを溶解したものを用意した。ここにシランカップリング処理したレンズを浸漬し、3日間室温で反応させた。処理後のレンズは純水にて洗浄した。洗浄後のレンズの外観、反射防止の特性に大きな変化は見られなかった。
【0065】
<試験1>
上記方法を用いて、レンズ基板にプライマー層およびハードコート層を形成し、以下の実施例および比較例に示す塗布環境にて、有機系反射防止層を形成した。そして、外観、密着性および耐熱性の評価を行った。
【0066】
[実施例1] 温度10℃、相対湿度60%RH
[実施例2] 温度10℃、相対湿度50%RH
[実施例3] 温度10℃、相対湿度10%RH
[実施例4] 温度40℃、相対湿度60%RH
[実施例5] 温度40℃、相対湿度50%RH
[実施例6] 温度40℃、相対湿度10%RH
[比較例1] 温度5℃、相対湿度5%RH
[比較例2] 温度50℃、相対湿度70%RH
【0067】
<評価方法>
・ 外観
暗箱中で黒色の背景と蛍光灯を用い、反射光で観察した
「○」:均一に塗布されている。
「△」:一部塗りムラが発生している。
「×」:無数の塗りムラが発生している。
・ 密着性
キセノンランプによるサンシャインウェザーメーター(スガ試験株式会社製;WEL−SUN−HC)に80時間暴露した後に、「JIS D−0202」に準じてクロスカットテープ試験によって行った。即ち、ナイフを用い基材表面に1mm間隔に切れ目を入れ、一平方mmのマス目を100個形成させる。次に、その上へセロファン粘着テープ(ニチバン株式会社製:商品名「セロテープ(登録商標)」)を強く押し付けた後、表面から90度方向へ急に引っ張り剥離した後、コート皮膜の残っているマス目を密着性指標として目視で観察した。
「○」:100〜96個のマス目が残っている。
「△」:95〜90個のマス目が残っている。
「×」:90個未満のマス目が残っている。
・ 耐熱性
サンプルレンズを40℃のオーブン(恒温槽)の中に入れて30分間加熱した。次に、オーブンからサンプルレンズを取り出した後、室温で30分放置した。その後、サンプルレンズの外観を暗箱内で目視検査し、クラックの発生の有無を確認した。クラックが発生していない場合は、オーブンの設定温度を10℃ずつ上げてサンプルレンズを再度、30分間加熱し、同様の評価を行う、100℃まで試験を行った。濃いクラックの発生を確認したときの温度をクラックの発生温度とした。そして、以下の段階に分けて評価した。
「○」:耐熱性が非常に高く、100℃でもクラックが発生しない。
「△」:耐熱性が高く、クラック発生温度が90℃〜100℃である。
「×」:耐熱性が低く、クラック発生温度が80℃以下である。
【0068】
【表1】

【0069】
表1より、外観および耐熱性に関しては、実施例2、実施例3、実施例5および実施例6では問題なかった。相対湿度60%である実施例1および実施例4では△であったが、実用上問題とならない程度であった。
一方、比較例2においては、外観および耐熱性ともに×で、その性能が低下している。したがって、高温・高湿度の場合に外観および耐熱性の性能が低下することがわかる。
密着性に関しては、実施例1から実施例6では全て良好であった。
一方、比較例1においては△で、その性能が低下している。したがって、低温・低湿度では密着性が十分でないことがわかる。
表1をグラフ化したものを図2に示す。実施例1から実施例6の温度と相対湿度との値をそれぞれP1からP6として表示した。図2からもわかるように、最適温度は10〜40℃、最適湿度は10〜60%であり、より好ましくは湿度10〜50%である。
したがって、図2のグラフでは、P1、P3、P4、P6で囲まれた範囲が最適範囲となるが、より好ましい最適範囲は、P2、P3、P5、P6で囲まれた範囲である。
【0070】
<試験2>
試験1と同様の方法を用いて、レンズ基板にプライマー層およびハードコート層を形成し、以下の実施例および比較例に示す塗布環境にて、有機系反射防止層を形成し、その上にコーティング層として撥水層を積層させた。そして、耐擦傷性、拭き耐久性および耐アルカリ性の評価を行った。
【0071】
[実施例7] 温度15℃、相対湿度40%RH
[実施例8] 温度15℃、相対湿度20%RH
[実施例9] 温度35℃、相対湿度40%RH
[実施例10] 温度35℃、相対湿度20%RH
[実施例11] 温度10℃、相対湿度50%RH
[実施例12] 温度10℃、相対湿度10%RH
[実施例13] 温度40℃、相対湿度50%RH
[実施例14] 温度40℃、相対湿度10%RH
[比較例3] 温度5℃、相対湿度5%RH
[比較例4] 温度50℃、相対湿度70%RH
【0072】
<評価方法>
・ 耐擦傷性
ボンスター#0000スチールウール(日本スチールウール株式会社製)で1kgの荷重をかけ、表面を10往復して摩擦をかけ、傷の付いた程度を目視により次の段階に分けて評価した。
A:摩擦した範囲に、ほとんど傷が認められない。
B:上記範囲内に、1〜5本傷が付いた。
C:上記範囲内に、6〜10本傷が付いた。
【0073】
・ 拭き耐久性
レンズ表面を、木綿布を用い、200gの荷重をかけながら5000回往復し、その後、目視により検査し、その結果を以下の評価レベルで評価した。
「○」:0〜5本傷が付いた。
「△」:6〜10本傷が付いた。
「×」:無数の傷が付いた。
・ 耐アルカリ性
0.1Nに調整した水酸化ナトリウム水溶液中に試験片を3時間浸漬し、浸漬後の試験片を水でよく洗い、水を拭き取った後の外観評価を行った。
「○」:剥がれが発生しない。
「△」:0〜5mmの剥がれが発生している。
「×」:5mmを超える面積の剥がれが発生している。
【0074】
【表2】

【0075】
表2より、実施例7から実施例10では、耐擦傷性および拭き耐久性が特に優れており、実施例11から実施例14では、ややその性能が劣ってはいたが、実用上問題のない程度であった。また、耐アルカリ性は、塗布環境の影響を受けていない。
一方、比較例3および比較例4では、耐擦傷性評価では傷が多く付き、また、拭き耐久性評価でもレンズ表面に無数の傷が付き、実用的でなかった。
表2をグラフ化したものを図3に示す。実施例7から実施例14の温度と相対湿度の値をそれぞれP7からP14として表示した。図3からもわかるように、耐アルカリ性のみを考慮するのであれば、温度10〜40℃、かつ、湿度10〜50%でもよいが、耐アルカリ性とともに、耐擦傷性および拭き耐久性も考慮して耐久品質をみるのであれば、温度15〜35℃、かつ、湿度20〜40%であることがより好ましい。
したがって、図3のグラフでは、P11、P12、P13、P14で囲まれた範囲が最適範囲となるが、より好ましい最適範囲は、P7、P8、P9、P10で囲まれた範囲である。
【0076】
<試験3>
上記方法を用いて、レンズ基板にプライマー層およびハードコート層を形成し、以下の実施例および比較例に示す塗布環境にて、有機系反射防止層を形成し、コーティング層として防曇層を積層させた。そして、防曇性の評価を行った。
【0077】
[実施例15] 温度10℃、相対湿度50%RH
[実施例16] 温度10℃、相対湿度10%RH
[実施例17] 温度40℃、相対湿度50%RH
[実施例18] 温度40℃、相対湿度10%RH
[比較例5] 温度5℃、相対湿度5%RH
[比較例6] 温度50℃、相対湿度70%RH
【0078】
<評価方法>
防曇性能は、水に対する静的接触角、「JIS−S4030 眼鏡用くもり止め剤試験方法」の低温部くもり止め性に従って1〜4級で評価した(1級が一番防曇性能が良く、4級が一番悪い)。
【0079】
【表3】

【0080】
表3より、実施例15から実施例18に関し、温度10〜40℃、かつ、相対湿度10〜50%の範囲では、防曇性能は全て1級を示し、優れていることがわかる。
一方、比較例5および比較例6では、防曇性能が劣っている。
表3をグラフ化したものを図4に示す。実施例15から実施例18の温度と相対湿度の値をそれぞれP15からP18として表示した。図4のグラフでは、P15、P16、P17、P18で囲まれた範囲が最適範囲となる。
【産業上の利用可能性】
【0081】
本発明は、反射防止機能を有する光学レンズ、眼鏡レンズおよび記録媒体などの製造方法に利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0082】
【図1】(A)は本発明の実施形態におけるプラスチックレンズの断面図、(B)は(A)の変形例にかかるプラスチックレンズの断面図。
【図2】本発明の実施例の試験1にかかる各評価項目の最適範囲を示すグラフ。
【図3】本発明の実施例の試験2にかかる各評価項目の最適範囲を示すグラフ。
【図4】本発明の実施例の試験3にかかる各評価項目の最適範囲を示すグラフ。
【符号の説明】
【0083】
10…プラスチックレンズ
100…レンズ基板
101…プライマー層
102…ハードコート層
103…有機系反射防止層
104…コーティング層(撥水層、防曇層)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラスチック基板上にプライマー層及び/又はハードコート層を介して設けられてなる基材上に、単一の低屈折率層からなる有機系反射防止層を有する物品の製造方法であって、
前記有機系反射防止層を形成する有機系反射防止層形成用組成物を前記基材上へ塗布する際、温度10〜40℃、相対湿度10〜60%RHの雰囲気下で行うことを特徴とする有機系反射防止層を有する物品の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の有機系反射防止層を有する物品の製造方法において、
前記有機系反射防止層形成用組成物は、内部空洞を有するシリカ系粒子と、
下記式で示される有機珪素化合物とを含有することを特徴とする有機系反射防止層を有する物品の製造方法。
SiX3−n
(式中、Rは、重合可能な反応基を有する有機基であり、Rは炭素数1〜6の炭化水素基であり、Xは加水分解基であり、nは0又は1である)
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の有機系反射防止層を有する物品の製造方法において、
前記基材上に形成された前記有機系反射防止層の表面に、更にコーティング層を形成することを特徴とする有機系反射防止層を有する物品の製造方法。
【請求項4】
請求項3に記載の有機系反射防止層を有する物品の製造方法において、
前記コーティング層は、下記式(1)、(2)及び(3)の少なくともいずれかで示されるフッ素含有有機珪素化合物から形成された撥水層であることを特徴とする有機系反射防止層を有する物品の製造方法。
【化1】

(式中、R1はパーフルオロアルキル基を示す。Xは臭素、ヨウ素または水素を示す。Yは水素または低級アルキル基を示し、Zはフッ素またはトリフルオロメチル基を示す。R1は加水分解可能な基を示し、R2は水素または不活性な1価の炭化水素基を示す。a、b、c、dは0または1以上の整数で、且つa+b+c+d+eは少なくとも1以上であり、a、b、c、d、eで括られた各繰り返し単位の存在順序は、式中において限定されない。fは0、1または2である。gは1、2または3である。hは1以上の整数である。)
【化2】

(式中、R2は式:「−(Ck2k)O−」で示される単位を含み、分岐を有しない直鎖状のパーフルオロポリアルキレンエーテル構造を有する2価の基を示す。なお、式:「−(Ck2k)O−」におけるkは1〜6の整数である。R3は炭素原子数1〜8の1価炭化水素基であり、Wは加水分解性基またはハロゲン原子を示す。pは0、1または2であり、nは1〜5の整数である。m及びrは、2または3である。)
【化3】

【請求項5】
請求項3に記載の有機系反射防止層を有する物品の製造方法において、
前記コーティング層は、非カップリング部位に少なくとも1個以上の硫黄を含む有機珪素化合物から形成された防曇層であることを特徴とする有機系反射防止層を有する物品の製造方法。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれかに記載の有機系反射防止層を有する物品の製造方法において、
前記物品はレンズであることを特徴とする有機系反射防止層を有する物品の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−40474(P2008−40474A)
【公開日】平成20年2月21日(2008.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−153955(P2007−153955)
【出願日】平成19年6月11日(2007.6.11)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】