説明

有機質製品製造方法

【課題】使用済培地を再利用した有機質製品の製造コストの低減と製造効率の向上とを共に実現し得る有機質製品製造方法を提供する。
【解決手段】茸栽培に使用した使用済培地を再利用して有機質製品を製造する際に、混合後の含水率が5%以上40%以下の範囲内となるように使用済培地よりも低含水率の植物性有機質原料を使用済培地に混合して混合原料を生成し、混合原料を用いて有機質製品を製造する。これにより、比較的短時間で有機質製品を製造することが可能となるため、製造コストの低減と製造効率の向上とを共に実現することが可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、茸栽培に使用した使用済培地を再利用して有機質製品を製造する有機質製品製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
エノキ茸やシメジなどの茸の栽培法として、ビン栽培法が従来から知られている。このビン栽培法では、おが屑や米糠等を主原料とする培地を栽培ビンに充填し、殺菌(滅菌)を行った後に種菌を植え付けて菌床とする。一方、このビン栽培法では、通常、茸を1回収穫する度に培地を新しいものと入れ替える必要があるため、大量の使用済培地(廃培地)が発生する。この場合、使用済培地は、農作物に有用な成分を含んでいるため、土壌改良材や肥料(堆肥)として従来から再利用されている。しかしながら、使用済培地は、栽培ビンから回収した時点では、60%以上の水分を含んでいるため、そのままの状態では圃場に散布するのが困難である。このため、大量に発生する使用済培地の多くが再利用されないまま圃場や茸栽培施設の周囲に野積みされて、この野積の使用済培地から発生する悪臭が問題となっている。この問題を解決可能な技術として、特開平10−17390号公報に開示されたきのこ廃培地の処理方法(以下、単に「処理方法」ともいう)が知られている。この処理方法では、廃培地に添加物を添加した後に、酸素の供給を少なくした状態で加熱してきのこ廃培地中の木質細片を炭化させることにより、農作物に有用な肥料や土壌改良材などの製品が製造される。このため、この処理方法によれば、大量に発生する廃培地を有効利用することが可能となる。
【0003】
【特許文献1】特開平10−17390号公報(第5頁)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、従来の処理方法には、以下の問題点がある。すなわち、この処理方法では、肥料や土壌改良材などの製品を製造する際に廃培地を炭化させる必要がある。この場合、廃培地を炭化させるためには、炭化装置に廃培地を投入して、長時間に亘って廃培地を加熱する必要がある。したがって、この処理方法には、炭化のために大量の燃料と長い時間とを必要とする結果、製造コストが高騰すると共に製造効率が低いという問題点がある。
【0005】
本発明は、かかる問題点に鑑みてなされたものであり、使用済培地を再利用した有機質製品の製造コストの低減と製造効率の向上とを共に実現し得る有機質製品製造方法を提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成すべく請求項1記載の有機質製品製造方法は、茸栽培に使用した使用済培地を再利用して有機質製品を製造する際に、混合後の含水率が5%以上40%以下の範囲内となるように前記使用済培地よりも低含水率の植物性有機質原料を当該使用済培地に混合して混合原料を生成し、当該混合原料を用いて前記有機質製品を製造する。
【0007】
また、請求項2記載の有機質製品製造方法は、請求項1記載の有機質製品製造方法において、前記植物性有機質原料としてのコーンコブ、ふすま、豆皮、米糠およびビートを前記使用済培地に混合して前記混合原料を生成し、当該混合原料を用いて前記有機質製品としての茸栽培用の再生培地を製造する。
【0008】
また、請求項3記載の有機質製品製造方法は、請求項1記載の有機質製品製造方法において、前記植物性有機質原料としての菜種粕、大豆粕および米糠を前記使用済培地に混合して前記混合原料を生成し、当該混合原料を用いて前記有機質製品としての有機肥料を製造する。
【0009】
さらに、請求項4記載の有機質製品製造方法は、請求項1記載の有機質製品製造方法において、前記植物性有機質原料としての大麦外皮、そば殻および籾殻を前記使用済培地に混合して前記混合原料を生成し、当該混合原料を用いて前記有機質製品としての土壌改良材および畜舎用敷き材料を製造する。
【0010】
また、請求項5記載の有機質製品製造方法は、請求項1記載の有機質製品製造方法において、前記植物性有機質原料としてのトウモロコシ、豆皮およびビートを前記使用済培地に混合して前記混合原料を生成し、当該混合原料を用いて前記有機質製品としての飼料を製造する。
【0011】
また、請求項6記載の有機質製品製造方法は、請求項1から5のいずれかに記載の有機質製品製造方法において、高温蒸気を前記混合原料に噴霧して、当該噴霧後の混合原料を用いて前記有機質製品を製造する。
【0012】
また、請求項7記載の有機質製品製造方法は、請求項1から6のいずれかに記載の有機質製品製造方法において、前記混合原料をペレット状、粒状、タブレット状およびフレーク状のいずれかの形状に成形して前記有機質製品を製造する。
【発明の効果】
【0013】
請求項1記載の有機質製品製造方法によれば、混合後の含水率が5%以上40%以下の範囲内となるように使用済培地よりも低含水率の植物性有機質原料を使用済培地に混合して混合原料を生成し、その混合原料を用いて有機質製品を製造することにより、使用済培地を炭化させて肥料や土壌改良材などの製品を製造する方法とは異なり、炭化のための長時間に亘る加熱を行うことなく、比較的短時間で有機質製品を製造することができる。したがって、製造コストの低減と製造効率の向上とを共に実現することができるため、再利用の困難な大量の使用済培地を効率的に利用して有機質製品を安価に製造することができる。
【0014】
また、請求項2記載の有機質製品製造方法によれば、植物性有機質原料としてのコーンコブ、ふすま、豆皮、米糠およびビートを使用済培地に混合して混合原料を生成し、その混合原料を用いて有機質製品としての茸栽培用の再生培地を製造することにより、比較的短時間で再生培地を製造することができるため、製造コストの低減と製造効率の向上とを共に実現することができる結果、再利用の困難な大量の使用済培地を効率的に利用して再生培地を安価に製造することができる。また、植物性有機質原料としてのコーンコブ、ふすま、豆皮、米糠およびビートを用いることで、茸の生育に必要な成分を再生培地に十分に含ませることができる。したがって、他の添加物を添加することなく再生培地をそのまま茸栽培用の培地として用いることができる。
【0015】
また、請求項3記載の有機質製品製造方法によれば、植物性有機質原料としての菜種粕、大豆粕および米糠を使用済培地に混合して混合原料を生成し、その混合原料を用いて有機質製品としての有機肥料を製造することにより、比較的短時間で有機肥料を製造することができるため、製造コストの低減と製造効率の向上とを共に実現することができる結果、再利用の困難な大量の使用済培地を効率的に利用して有機肥料を安価に製造することができると共に、農作物に有用な成分を有機肥料に十分に含ませることができる。
【0016】
さらに、請求項4記載の有機質製品製造方法によれば、植物性有機質原料としての大麦外皮、そば殻および籾殻を使用済培地に混合して混合原料を生成し、その混合原料を用いて有機質製品としての土壌改良材および畜舎用敷き材料を製造することにより、比較的短時間で土壌改良材および畜舎用敷き材料を製造することができるため、製造コストの低減と製造効率の向上とを共に実現することができる結果、再利用の困難な大量の使用済培地を効率的に利用して土壌改良材および畜舎用敷き材料を安価に製造することができる。また、大麦外皮、そば殻および籾殻を用いることで、使用済培地と同様に大量に発生して再利用の困難なこれらの植物性有機質原料を効率的に有効利用することができる。
【0017】
また、請求項5記載の有機質製品製造方法によれば、植物性有機質原料としてのトウモロコシ、豆皮およびビートを使用済培地に混合して混合原料を生成し、その混合原料を用いて有機質製品としての飼料を製造することにより、比較的短時間で飼料を製造することができるため、製造コストの低減と製造効率の向上とを共に実現することができる結果、再利用の困難な大量の使用済培地を効率的に利用して飼料を安価に製造することができる。
【0018】
また、請求項6記載の有機質製品製造方法によれば、高温蒸気を混合原料に噴霧することにより、混合原料を滅菌することができるため、例えば、この有機質製品製造方法に従って製造した再生培地を用いて茸をビン栽培する際に、栽培ビンへの充填後の滅菌時間を十分に短縮することができる。
【0019】
また、請求項7記載の有機質製品製造方法によれば、混合原料をペレット状、粒状、タブレット状およびフレーク状のいずれかの形状に成形して有機質製品を製造することにより、この有機質製品製造方法に従って製造した有機質製品の運送や使用の際に、有機質製品を容易に取り扱うことができる。また、粉状の製品とは異なり、運送や使用の際の飛散を確実に防止することができる。また、上記のいずれかの形状に成形したことで、例えば、この有機質製品製造方法に従って製造した有機肥料を散布機等を用いて圃場に均一に散布することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明に係る有機質製品製造方法の最良の形態について、添付図面を参照して説明する。
【0021】
最初に、図1に示す製造装置1の構成について説明する。製造装置1は、本発明に係る有機質製品製造方法に従って図3,4に示す茸栽培用の再生培地31を製造する装置であって、原料タンク11、脱水・精選装置12、計量・投入装置13a〜13f、混合装置14、サービスタンク15、滅菌装置16、ペレット成形装置17、乾燥装置18、製品タンク19および計量・充填装置20を備えて構成されている。この場合、製造装置1を構成する各装置およびタンクの間には、原料や中間製品を搬送するためのベルトコンベヤやスクリューコンベヤ(いずれも図示せず)が設置されている。
【0022】
原料タンク11は、図1に示すように、再生培地31を製造するための複数種類(例えば6種類)の原料を種類別に貯留する貯留槽11a〜11fを備えている。この場合、貯留槽11a〜11fには、例えば、主原料としての使用済培地(廃培地)41、並びに副原料(本発明における植物性有機質原料に相当する)としてのコーンコブ42、ふすま43、豆皮44、米糠45およびビート46がそれぞれ貯留される。また、各貯留槽11a〜11fは、例えば、原料から発生する悪臭の周囲への拡散を防止するために密閉構造となっている。脱水・精選装置12は、例えば、プレス式の脱水機、およびふるいを備えて構成されて、原料タンク11の貯留槽11aから供給される使用済培地41を脱水すると共にゴミ等の異物を選別する。計量・投入装置13a〜13f(以下、区別しないときには「計量・投入装置13」ともいう)は、原料タンク11の各貯留槽11a〜11fから供給される原料(主原料および副原料)を所定重量分だけそれぞれ計量して混合装置14に投入する。混合装置14は、例えばミキサーで構成されて、投入された各原料を混合する(以下、各原料の混合物を「混合原料」ともいう)。サービスタンク15は、混合装置14によって混合された混合原料を貯留する。滅菌装置16は、高温蒸気発生装置、蒸気吹付機および撹拌機を備えて構成され、混合原料に高温蒸気を吹付けつつ撹拌することによって原料を滅菌処理する。ペレット成形装置(ペレットマシン)17は、滅菌処理された混合原料をペレット状に成形する。なお、ペレット成形装置17に代えて、エクストルーダーを用いることもできる。乾燥装置18は、ペレット状に成形した混合原料を乾燥させる。製品タンク19は、乾燥させた混合原料(つまり再生培地31)を貯留する。計量・充填装置20は、所定重量分の再生培地31を計量して包装用袋101(図3参照)またはフレキシブルコンテナ102(図4参照)に充填する。
【0023】
一方、再生培地31は、本発明における有機質製品の一例であって、上記した複数種類の原料を用いて、上記の製造装置1によって製造される。また、再生培地31は、直径が4mm程度でかつ長さが10〜15mm程度のペレット状(円柱状)に成形されている。このため、例えば、粉状の再生培地と比較して、運送や使用の際の取り扱いが容易となっている。また、ペレット状に成形したことで、粉状の再生培地とは異なり、運送や使用の際の飛散を確実に防止することが可能となっている。
【0024】
次に、本発明に係る有機質製品製造方法に従って製造装置1を用いて再生培地31を製造する製造工程60について、図2を参照して説明する。まず、主原料としての使用済培地41、並びに副原料としてのコーンコブ42、ふすま43、豆皮44、米糠45およびビート46を原料タンク11の各貯留槽11a〜11fにそれぞれ貯留する(原料貯留工程61)。この場合、使用済培地41は、茸生産施設から回収したものをそのまま投入するため、投入時点において60%〜70%の水分を含んでいる。また、各副原料としては、使用済培地41よりも低含水率である3%以上20%以下(一例として12%)の含水率に調整されているものを用いる。ここで、使用済培地41は、60%〜70%の水分を含んでいるため、貯留槽11a内に長期間貯留したときには、発酵することがある。一方、この製造工程60では、後述するように、使用済培地41が短期間のうちに(新鮮なうちに)処理(使用)される。このため、長期間の貯留による発酵が防止されている。また、上記したように各貯留槽11a〜11fが密閉構造となっているため、たとえ使用済培地41が貯留槽11a内で発酵したとしても、外部への悪臭の拡散が確実に防止される。
【0025】
次いで、脱水・精選装置12および計量・投入装置13a〜13fをそれぞれ作動させる。この際に、脱水・精選装置12が、原料タンク11の貯留槽11aから供給される使用済培地41を脱水すると共にゴミ等の異物を選別する(脱水・精選工程62)。この場合、使用済培地41は、脱水によってその含水率が50%程度に減少する。続いて、計量・投入装置13aが、脱水および精選の終了した使用済培地41を所定重量分だけ計量して混合装置14に投入し、計量・投入装置13b〜13fが、原料タンク11の貯留槽11b〜11fから供給される各副原料をそれぞれ所定重量分だけ計量して混合装置14に投入する(原料投入工程63)。この場合、計量・投入装置13b〜13fによって計量される各副原料の重量は、使用済培地41の含水率や重量、および各副原料の各含水率(この場合、12%)等に基づき、これらを混合した混合原料の含水率が30%(本発明における5%以上40%以下の範囲内の一例)となるように予め規定されている。具体的には、この製造工程60では、一例として、混合原料中における使用済培地41、コーンコブ42、ふすま43、豆皮44、米糠45およびビート46の組成比がそれぞれ30重量%、10重量%、10重量%、20重量%、10重量%および20重量%となるように、計量・投入装置13によって計量される上記の重量が規定されている。
【0026】
次に、混合装置14を作動させて各原料を例えば15分間に亘って混合する(混合工程64)。これにより、混合後における含水率が30%の混合原料が生成される。次いで、生成した混合原料をサービスタンク15に投入する。続いて、サービスタンク15から滅菌装置16に混合原料を移動して滅菌装置16を作動させる。この場合、滅菌装置16の蒸気吹付機が高温蒸気発生装置からの高温蒸気を混合原料に吹き付け、撹拌機が混合原料を例えば1分間攪拌する。これにより、混合原料が滅菌処理される(滅菌工程65)。次に、滅菌処理の終了した混合原料をペレット成形装置17に投入してペレット成形装置17を作動させる。この際に、ペレット成形装置17が、混合原料を例えば直径が4mm程度で長さが10〜15mm程度のペレット状に成形する(ペレット成形工程66)。
【0027】
次いで、このペレット状の混合原料を乾燥装置18に移動して乾燥装置18を作動させる。この際に、乾燥装置18は、混合原料を蒸気によって加熱した後にエアーの吸引によって冷却する。この場合、混合原料に対する加熱およびエアーの吸引によって水分が除去されて、含水率が12%となるまで混合原料が乾燥される(乾燥工程67)。この場合、乾燥工程67を複数回繰り返して実行して混合原料の含水率を減少させることもできる。これにより、ペレット状の再生培地31が完成する。続いて、乾燥を終了した再生培地31を製品タンク19に貯留する。この場合、再生培地31の含水率が12%のため、製品タンク19内に再生培地31を比較的長期間貯留(保存)したとしても、再生培地31が発酵して悪臭を発生させる事態が確実に防止される。また、混合工程や滅菌工程を行うことで、長時間に亘る加熱等を行うことなく比較的短時間で再生培地31の含水率が長期保存の可能な12%に減少される。
【0028】
次いで、計量・充填装置20を用いて、製品タンク19に貯留されている再生培地31を例えば15kgずつ計量し、計量した再生培地31を図3に示す包装用袋101に充填する(計量・充填工程68)。この場合、包装用袋101に代えて、例えば図4に示す大形のフレキシブルコンテナ102を用いて、再生培地31を例えば500kgずつ充填してもよい。なお、再生培地31への雑菌の付着を防止するために、気密性を有する材料で包装用袋101およびフレキシブルコンテナ102を形成したり、包装用袋101およびフレキシブルコンテナ102内に気密性を有する内袋を配設したりするのが好ましい。
【0029】
一方、再生培地31を用いて茸をビン栽培する際には、再生培地31を例えばミキサーに投入して水分を添加して十分攪拌した後に栽培ビンに充填し、滅菌を行った後に種菌を植え付けて菌床とする。この場合、副原料としてのコーンコブ42、ふすま43、豆皮44、米糠45およびビート46を使用済培地41に混合したため、再生培地31には、茸の生育に必要な成分が十分に含まれている。したがって、他の添加物を添加することなくそのまま培地として用いることができる。また、再生培地31を製造する際に混合原料を滅菌しているため、栽培ビンに再生培地31を充填した後の滅菌時間を十分に短縮することができる。また、再生培地31がペレット状に成形されているため、例えば、粉状の再生培地と比較して、運送や使用の際に、再生培地31を容易に取り扱うことができる。さらに、ペレット状に成形したことで、粉状の再生培地とは異なり、運送や使用の際の飛散を確実に防止することができる。
【0030】
このように、この再生培地31の製造方法によれば、混合後の含水率が30%となるように使用済培地41よりも低含水率のコーンコブ42、ふすま43、豆皮44、米糠45およびビート46を使用済培地41に混合して混合原料を生成し、その混合原料を用いて再生培地31を製造することにより、使用済培地を炭化させて肥料や土壌改良材などの製品を製造する方法とは異なり、炭化のための長時間に亘る加熱を行うことなく、比較的短時間で再生培地31を製造することができる。したがって、製造コストの低減と製造効率の向上とを共に実現することができるため、再利用の困難な大量の使用済培地41を効率的に利用して再生培地31を安価に製造することができる。
【0031】
また、この再生培地31の製造方法によれば、副原料(植物性有機質原料)としてのコーンコブ42、ふすま43、豆皮44、米糠45およびビート46を使用済培地41に混合して混合原料を生成することにより、茸の生育に必要な成分を再生培地31に十分に含ませることができる。したがって、他の添加物を添加することなく再生培地31をそのまま茸栽培用の培地として用いることができる。
【0032】
また、この再生培地31の製造方法によれば、高温蒸気を噴霧して混合原料を滅菌することにより、再生培地31を用いて茸をビン栽培する際に、栽培ビンへの充填後の滅菌時間を十分に短縮することができる。
【0033】
また、この再生培地31の製造方法によれば、混合原料をペレット状に成形して再生培地31を製造することにより、例えば、粉状の再生培地と比較して、運送や使用の際に、再生培地31を容易に取り扱うことができる。また、ペレット状に成形したことで、粉状の再生培地とは異なり、運送や使用の際の飛散を確実に防止することができる。
【0034】
次に、有機肥料32(本発明における有機質製品の他の一例。図3,4参照)の製造方法について説明する。この有機肥料32は、上記の製造装置1を用いて本発明に係る有機質製品製造方法に従って製造される。また、有機肥料32は、再生培地31と同様にしてペレット状に成形されている。また、有機肥料32用の原料としては、主原料としての上記の使用済培地41、並びに副原料としての菜種粕47、大豆粕48および米糠45が用いられる。この場合、各副原料は、使用済培地41よりも低含水率(例えば、12%の含水率)に調整されている。
【0035】
この有機肥料32を製造する際には、上記の製造工程60の原料貯留工程61において、使用済培地41、菜種粕47、大豆粕48および米糠45を原料タンク11の各貯留槽11a〜11dにそれぞれ貯留する。次に、脱水・精選工程62を実行した後に、計量・投入装置13aが使用済培地41を所定重量分だけ計量して混合装置14に投入すると共に、計量・投入装置13b〜13dが、各副原料をそれぞれ所定重量分だけ計量して混合装置14に投入する(原料投入工程63)。この場合、計量・投入装置13b〜13dによって計量される各副原料の重量は、使用済培地41の含水率や重量、および各副原料の各含水率(この場合、12%)等に基づき、これらを混合した混合原料の含水率が30%(本発明における5%以上40%以下の範囲内の一例)となるように予め規定されている。具体的には、この製造工程60では、一例として、混合原料中における使用済培地41、菜種粕47、大豆粕48および米糠45の組成比がそれぞれ10重量%、30重量%、30重量%および30重量%となるように、計量・投入装置13によって計量される上記の重量が規定されている。次いで、再生培地31の製造と同様にして、混合工程64、滅菌工程65、ペレット成形工程66および乾燥工程67を実行して有機肥料32完成させた後に、計量・充填工程68を実行する。これにより、含水率が13%で長期保存が可能なペレット状の有機肥料32が完成する。
【0036】
この有機肥料32の製造方法によれば、混合後の含水率が30%となるように使用済培地41よりも低含水率の菜種粕47、大豆粕48および米糠45を使用済培地41に混合して混合原料を生成し、その混合原料を用いて有機肥料32を製造することにより、上記の再生培地31の製造方法と同様にして、比較的短時間で有機肥料32を製造することができるため、製造コストの低減と製造効率の向上とを共に実現することができる結果、再利用の困難な大量の使用済培地41を効率的に利用して有機肥料32を安価に製造することができる。また、副原料としての菜種粕47、大豆粕48および米糠45を使用済培地41に混合して混合原料を生成することにより、農作物に有用な成分を有機肥料32に十分に含ませることができる。さらに、混合原料をペレット状に成形して有機肥料32を製造することにより、散布機等を用いて圃場に均一に散布可能な有機肥料32を製造することができる。
【0037】
次に、土壌改良材33および畜舎用敷き材料(畜舎の床に敷く家畜用の敷き材料)34(本発明における有機質製品の他の一例。図3,4参照)の製造方法について説明する。なお、土壌改良材33および畜舎用敷き材料34は、同じ原料を用いて、同じ製造方法で製造される。したがって、以下の説明では、両者を代表して土壌改良材33を例に挙げて説明する。この土壌改良材33は、本発明に係る有機質製品製造方法に従って上記の製造装置1を用いて製造される。また、土壌改良材33は、再生培地31および有機肥料32と同様にしてペレット状に成形されている。また、土壌改良材33用の原料としては、主原料としての上記の使用済培地41、並びに副原料としての大麦外皮49、そば殻50および籾殻51が用いられる。この場合、各副原料は、使用済培地41よりも低含水率(例えば、10%の含水率)に調整されている。
【0038】
この土壌改良材33を製造する際には、上記の製造工程60の原料貯留工程61において、使用済培地41、大麦外皮49、そば殻50および籾殻51を原料タンク11の各貯留槽11a〜11dにそれぞれ貯留する。次に、脱水・精選工程62を実行した後に、計量・投入装置13aが使用済培地41を所定重量分だけ計量して混合装置14に投入すると共に、計量・投入装置13b〜13dが、各副原料をそれぞれ所定重量分だけ計量して混合装置14に投入する(原料投入工程63)。この場合、計量・投入装置13b〜13dによって計量される各副原料の重量は、使用済培地41の含水率や重量、および各副原料の各含水率(この場合、10%)等に基づき、これらを混合した混合原料の含水率が例えば15.5%(本発明における5%以上40%以下の範囲内の一例)となるように予め規定されている。具体的には、この製造工程60では、一例として、混合原料中における使用済培地41、大麦外皮49、そば殻50および籾殻51の組成比がそれぞれ10重量%、30重量%、30重量%および30重量%となるように、計量・投入装置13によって計量される上記の重量が規定されている。次いで、再生培地31の製造と同様にして、混合工程64、滅菌工程65、ペレット成形工程66および乾燥工程67を実行して土壌改良材33を完成させた後に、計量・充填工程68を実行する。これにより、含水率が13%で長期保存が可能なペレット状の土壌改良材33(または畜舎用敷き材料34)が完成する。
【0039】
この土壌改良材33(または畜舎用敷き材料34)の製造方法によれば、混合後の含水率が15.5%となるように使用済培地41よりも低含水率の大麦外皮49、そば殻50および籾殻51を使用済培地41に混合して混合原料を生成し、その混合原料を用いて土壌改良材33(または畜舎用敷き材料34)を製造することにより、上記の再生培地31および有機肥料32の製造方法と同様にして、比較的短時間で土壌改良材33(または畜舎用敷き材料34)を製造することができるため、製造コストの低減と製造効率の向上とを共に実現することができる結果、再利用の困難な大量の使用済培地41を効率的に利用して土壌改良材33(または畜舎用敷き材料34)を安価に製造することができる。また、副原料としての大麦外皮49、そば殻50および籾殻51を使用済培地41に混合して混合原料を生成することにより、使用済培地41と同様に大量に発生して再利用の困難な植物性有機質原料を効率的に有効利用することができる。
【0040】
次に、飼料35(本発明における有機質製品の他の一例。図3,4参照)の製造方法について説明する。この飼料35は、本発明に係る有機質製品製造方法に従って上記の製造装置1を用いて製造される。また、飼料35は、再生培地31、有機肥料32および土壌改良材33(または畜舎用敷き材料34)と同様にしてペレット状に成形されている。また、飼料35用の原料としては、主原料としての上記の使用済培地41、並びに副原料としてのトウモロコシ52、豆皮44およびビート46が用いられる。この場合、各副原料は、使用済培地41よりも低含水率(例えば、12%の含水率)に調整されている。
【0041】
この飼料35を製造する際には、上記の製造工程60の原料貯留工程61において、使用済培地41、トウモロコシ52、豆皮44およびビート46を原料タンク11の各貯留槽11a〜11dにそれぞれ貯留する。次に、脱水・精選工程62を実行した後に、計量・投入装置13aが使用済培地41を所定重量分だけ計量して混合装置14に投入すると共に、計量・投入装置13b〜13dが、各副原料をそれぞれ所定重量分だけ計量して混合装置14に投入する(原料投入工程63)。この場合、計量・投入装置13b〜13dによって計量される各副原料の重量は、使用済培地41の含水率や重量、および各副原料の各含水率(この場合、12%)等に基づき、これらを混合した混合原料の含水率が20.6%(本発明における5%以上40%以下の範囲内の一例)となるように予め規定されている。具体的には、この製造工程60では、一例として、混合原料中における使用済培地41、トウモロコシ52、豆皮44およびビート46の組成比がそれぞれ15重量%、40重量%、25重量%および20重量%となるように、計量・投入装置13によって計量される上記の重量が規定されている。次いで、再生培地31の製造と同様にして、混合工程64、滅菌工程65、ペレット成形工程66および乾燥工程67を実行して飼料35を完成させた後に、計量・充填工程68を実行する。これにより、含水率が14%で長期保存が可能なペレット状の飼料35が完成する。
【0042】
この飼料35の製造方法によれば、混合後の含水率が20.6%となるように使用済培地41よりも低含水率のトウモロコシ52、豆皮44およびビート46を使用済培地41に混合して混合原料を生成し、その混合原料を用いて飼料35を製造することにより、上記の再生培地31、有機肥料32および土壌改良材33(または畜舎用敷き材料34)の製造方法と同様にして、比較的短時間で飼料35を製造することができるため、製造コストの低減と製造効率の向上とを共に実現することができる結果、再利用の困難な大量の使用済培地41を効率的に利用して飼料35を安価に製造することができる。
【0043】
なお、本発明は上記の構成に限定されない。例えば、再生培地31、有機肥料32、土壌改良材33、畜舎用敷き材料34および飼料35をペレット状に成形した例について上記したが、これらの形状については、ペレット状に限定されず、粒状、タブレット状およびフレーク状等の形状に成形してもよい。また、製造工程60において滅菌工程65を行う例について上記したが、例えば、圃場に散布する有機肥料や土壌改良材については、製品中に茸の種菌等が多少含まれていたとしても支障がないため、有機肥料32や土壌改良材33を製造する製造工程においては、滅菌工程65を省略することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】製造装置1の構成を示す構成図である。
【図2】製造工程60のフローチャートである。
【図3】再生培地31(または有機肥料32、土壌改良材33、畜舎用敷き材料34、飼料35)を充填した包装用袋101の一部を切り欠いた状態の斜視図である。
【図4】再生培地31(または有機肥料32、土壌改良材33、畜舎用敷き材料34、飼料35)を充填したフレキシブルコンテナ102の一部を切り欠いた状態の斜視図である。
【符号の説明】
【0045】
31 再生培地
32 有機肥料
33 土壌改良材
34 畜舎用敷き材料
35 飼料
41 使用済培地
42 コーンコブ
43 ふすま
44 豆皮
45 米糠
46 ビート
47 菜種粕
48 大豆粕
49 大麦外皮
50 そば殻
51 籾殻
52 トウモロコシ
64 混合工程
65 滅菌工程
66 ペレット成形工程

【特許請求の範囲】
【請求項1】
茸栽培に使用した使用済培地を再利用して有機質製品を製造する際に、
混合後の含水率が5%以上40%以下の範囲内となるように前記使用済培地よりも低含水率の植物性有機質原料を当該使用済培地に混合して混合原料を生成し、当該混合原料を用いて前記有機質製品を製造する有機質製品製造方法。
【請求項2】
前記植物性有機質原料としてのコーンコブ、ふすま、豆皮、米糠およびビートを前記使用済培地に混合して前記混合原料を生成し、当該混合原料を用いて前記有機質製品としての茸栽培用の再生培地を製造する請求項1記載の有機質製品製造方法。
【請求項3】
前記植物性有機質原料としての菜種粕、大豆粕および米糠を前記使用済培地に混合して前記混合原料を生成し、当該混合原料を用いて前記有機質製品としての有機肥料を製造する請求項1記載の有機質製品製造方法。
【請求項4】
前記植物性有機質原料としての大麦外皮、そば殻および籾殻を前記使用済培地に混合して前記混合原料を生成し、当該混合原料を用いて前記有機質製品としての土壌改良材および畜舎用敷き材料を製造する請求項1記載の有機質製品製造方法。
【請求項5】
前記植物性有機質原料としてのトウモロコシ、豆皮およびビートを前記使用済培地に混合して前記混合原料を生成し、当該混合原料を用いて前記有機質製品としての飼料を製造する請求項1記載の有機質製品製造方法。
【請求項6】
高温蒸気を前記混合原料に噴霧して、当該噴霧後の混合原料を用いて前記有機質製品を製造する請求項1から5のいずれかに記載の有機質製品製造方法。
【請求項7】
前記混合原料をペレット状、粒状、タブレット状およびフレーク状のいずれかの形状に成形して前記有機質製品を製造する請求項1から6のいずれかに記載の有機質製品製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−141218(P2006−141218A)
【公開日】平成18年6月8日(2006.6.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−332023(P2004−332023)
【出願日】平成16年11月16日(2004.11.16)
【出願人】(593096387)株式会社イトウ精麥 (9)
【Fターム(参考)】