説明

有機酸生成方法、有機酸生成装置、及び排水処理設備

【課題】有機酸の生成量の向上を図ることができる有機酸生成方法、有機酸生成装置、及び排水処理設備を提供する。
【解決手段】有機酸生成装置1は、汚泥を嫌気的に発酵させ有機酸を含んだ発酵汚泥を得る酸発酵槽27と、発酵汚泥を固液分離し、有機酸を含む液体成分を固体成分から分離して得る固液分離槽43と、固液分離槽43で分離された固体成分を可溶化処理して可溶化汚泥を得る可溶化槽51と、可溶化汚泥を発酵させるために、可溶化汚泥を酸発酵槽27に返送するラインL18及びポンプP2を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、汚泥を嫌気的に発酵させて有機酸を生成させる有機酸生成方法、有機酸生成装置、及びそれらを利用する排水処理設備に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、河川や海、湖沼などの富栄養化による藻類やアオコの異常発生を防止すべく、生物処理法による下水の脱窒あるいは脱リン処理が行われている。そして、このような下水処理方法として、下記特許文献1に記載の技術が知られている。この特許文献1に記載の方法では、脱窒あるいは脱リン処理に必要な有機源を供給するために、有機酸生成装置によって下水汚泥を嫌気的に発酵させて有機酸を含む発酵汚泥を得ている。この発酵汚泥には発酵処理によって溶出したリン成分が含まれるので、このリン成分を除去した後、発酵汚泥が有機源として生物処理槽に供給される。
【0003】
ところで、このような有機酸生成装置においては、有機源を効率よく供給しながら、生物処理法における被処理水の脱リン処理、脱窒処理を効率よく行わせるために、有機酸の生成量が多いことが望まれる。
【特許文献1】特開2003−117584号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の方法では、有機酸からのリン成分除去により生物処理槽における処理水のリン成分を低減させることは考慮されているが、有機酸の生成量向上については十分に考慮されているとは言えない。従って、この種の有機酸生成方法及び装置においては、有機酸の生成量の更なる向上が求められている。
【0005】
本発明は、有機酸の生成量の向上を図ることができる有機酸生成方法、有機酸生成装置、及び排水処理設備を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の有機酸生成方法は、汚泥を嫌気的に発酵させて有機酸を生成させる有機酸生成方法において、汚泥を嫌気的に発酵させ有機酸を含んだ発酵汚泥を得る発酵工程と、発酵汚泥を固液分離し、有機酸を含む液体成分を固体成分から分離して得る固液分離工程と、固液分離工程で分離された固体成分を可溶化処理して可溶化汚泥を得る可溶化工程と、可溶化汚泥を発酵させるために、可溶化汚泥を発酵工程に返送する返送工程と、を備えたことを特徴とする。
【0007】
この有機酸生成方法では、発酵工程で得られた発酵汚泥中の固体成分が固液分離工程で分離され、可溶化工程で可溶化される。そして、可溶化によって得られた可溶化汚泥は返送工程によって上記の発酵工程に戻され、汚泥と一緒に再び発酵される。この場合、発酵工程においては、汚泥よりも発酵されやすい可溶化汚泥が、有機酸の原料の一部として加わることになるので、発酵工程における発酵反応が効果的に進行する。従って、発酵工程における汚泥及び可溶化汚泥の滞留時間を短くすることができる。
【0008】
ここで、有機酸を生成する発酵工程においては、通常、汚泥及び可溶化汚泥から有機酸が生成する有機酸発酵反応と、生成した有機酸がメタン生成菌によってメタンに変化するメタン発酵反応とが並行して進行する。ところが、上記有機酸生成方法において、発酵工程における汚泥及び可溶化汚泥の滞留時間を短くすると、メタン生成菌の増殖が抑えられ、上記メタン発酵反応が抑制される。従って、メタンに変化してしまう有機酸が少なく抑えられ、その結果として、この有機酸生成方法では、有機酸の生成量を向上させることができる。
【0009】
また、本発明の有機酸生成方法は、固液分離工程の前に、発酵汚泥に凝集剤を添加し発酵汚泥中のリン成分を不溶化させる凝集工程と、返送工程の前に、可溶化汚泥から不溶成分を除去する不溶成分除去工程と、を更に備えることが好ましい。
【0010】
この場合、凝集工程で発酵汚泥に凝集剤が添加されて発酵汚泥中のリン成分が不溶化し、不溶化したリン成分は、固液分離工程により固体成分として液体成分から分離されるので、液体成分中のリン成分が低減される。一方、分離された固体成分は可溶化工程で可溶化され、この可溶化汚泥からは、不溶成分除去工程により不溶化したリン成分が不溶成分として除去される。従って、返送工程においてリン成分が少ない可溶化汚泥が発酵工程に返送されることになり、発酵工程で得られる発酵汚泥中のリン成分も少なくなる。以上の結果として、この有機酸生成方法では、リン成分が少ない液体成分を、有機源として得ることができる。
【0011】
また、本発明の有機酸生成装置は、汚泥を嫌気的に発酵させて有機酸を生成させる有機酸生成装置において、汚泥を嫌気的に発酵させ有機酸を含んだ発酵汚泥を得る発酵槽と、発酵汚泥を固液分離し、有機酸を含む液体成分を固体成分から分離して得る固液分離装置と、固液分離装置で分離された固体成分を可溶化処理して可溶化汚泥を得る可溶化槽と、可溶化汚泥を発酵させるために、可溶化汚泥を発酵槽に返送する返送手段と、を備えたことを特徴とする。
【0012】
この有機酸生成装置では、発酵槽で得られた発酵汚泥中の固体成分が固液分離装置で分離され、可溶化槽で可溶化される。そして、可溶化によって得られた可溶化汚泥は返送手段によって上記の発酵槽に戻され、汚泥と一緒に再び発酵される。この場合、発酵槽には、汚泥よりも発酵されやすい可溶化汚泥が、有機酸の原料の一部として導入されることになるので、発酵槽における発酵反応が効果的に進行する。従って、発酵槽における汚泥及び可溶化汚泥の滞留時間を短くすることができる。
【0013】
ここで、有機酸を生成する発酵槽内においては、通常、汚泥及び可溶化汚泥から有機酸が生成する有機酸発酵反応と、生成した有機酸がメタン生成菌によってメタンに変化するメタン発酵反応とが並行して進行する。ところが、上記有機酸生成方法において、発酵工程における汚泥及び可溶化汚泥の滞留時間を短くすると、メタン生成菌の増殖が抑えられ、上記メタン発酵反応が抑制される。従って、メタンに変化してしまう有機酸が少なく抑えられ、その結果として、この有機酸生成装置では、有機酸の生成量を向上させることができる。
【0014】
また、本発明の有機酸生成装置は、固液分離装置の前段に設けられ、発酵槽で得られた発酵汚泥に凝集剤を添加し発酵汚泥中のリン成分を不溶化させる凝集槽と、返送手段の前段に設けられ、可溶化汚泥から不溶成分を除去する不溶成分除去槽と、を更に備えることが好ましい。
【0015】
この場合、凝集槽で発酵汚泥に凝集剤が添加されて発酵汚泥中のリン成分が不溶化し、不溶化したリン成分は、固液分離装置により固体成分として液体成分から分離されるので、液体成分中のリン成分が低減される。一方、分離された固体成分は可溶化槽で可溶化され、この可溶化汚泥からは、不溶成分除去槽で不溶化したリン成分が不溶成分として除去される。従って、リン成分が少ない可溶化汚泥が返送手段によって発酵槽に返送されることになり、発酵槽で得られる発酵汚泥中のリン成分も少なくなる。以上の結果として、この有機酸生成装置では、リン成分が少ない液体成分を、有機源として得ることができる。
【0016】
また、本発明の排水処理設備は、上記何れかの有機酸生成装置と、排水を導入し、有機酸生成装置で得られる有機酸を用いて排水を生物処理する生物処理槽と、を備えたことを特徴とする。この排水処理設備によれば、有機酸生成装置における有機酸の生成量が向上されるので、この有機酸を用いた排水の生物処理が効率よく行われる。
【発明の効果】
【0017】
本発明の有機酸生成方法、有機酸生成装置、及び排水処理設備によれば、有機酸の生成量の向上を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、図面を参照しつつ本発明に係る有機酸生成方法、有機酸生成装置、及び排水処理設備の好適な実施形態について詳細に説明する。
【0019】
(第1実施形態)
図1に示す排水処理設備100は、下水処理場に採用されているもので、下水に対して、生物的窒素除去及び生物的リン除去を含む高度処理を行う設備である。図に示すように、排水処理設備100は、最初沈殿池3、生物処理槽5、最終沈殿池7と共に有機酸生成装置1を備えている。
【0020】
排水処理設備100には、下水処理場の図示しない沈砂池で比較的粒径が大きい固形物が沈降分離され、布、空き缶、ビニール類等の篩渣がスクリーンにて除去され、ポンプ井よりポンプアップされた流入下水が、ラインL1を通じて導入される。ラインL1からの流入下水は、最初沈殿池3に導入され、重力沈降により最初沈殿池3の底部に沈降する生汚泥とそれ以外の上澄み液とに分離される。ここで分離された生汚泥は図示しない汚泥掻寄機で汚泥溜まり部3aに掻き寄せられて、一部はラインL11を通じて有機酸生成装置1に送られ、残りは、余剰汚泥とともに図示しない汚泥処理槽に送られて処理される。上澄み液は被処理水としてラインL2を通じて生物処理槽5に送られる。詳細は後述するが、有機酸生成装置1は、この生汚泥を発酵処理し、例えば、酢酸、プロピオン酸、酪酸といった有機酸を含んだ発酵液をラインL20から排出する。
【0021】
生物処理槽5は、嫌気―無酸素―好気法による生物処理を行う処理槽であり、嫌気槽5a、無酸素槽5b、好気槽5cをこの順に備えている。ラインL2から嫌気槽5aに導入された上澄み液である被処理水は、嫌気槽5a、無酸素槽5b、好気槽5cの順に送られながら、それぞれの槽で嫌気性処理、無酸素処理、好気性処理が行われた後、ラインL3を通じて最終沈殿池7に送られる。このとき、ラインL20を通じて、有機酸生成装置1から有機酸を含む発酵液が嫌気槽5aに供給されることで、生物処理槽5における被処理水の脱窒反応あるいは脱リン反応が促進されることになる。また、好気槽5cには、散気装置5dが設けられており、送風機5eから送り込まれた空気により好気槽5c内の被処理水を曝気する。また、好気槽5cの滞留液は、循環ポンプ5fによりラインL4を通じて無酸素槽5bに送られ、循環導入されている。ここで、ラインL20から発酵液が無酸素槽5bに供給されてもよい。
【0022】
最終沈殿池7に送られた生物処理水は、浮遊する活性汚泥を沈降分離させた後、ラインL5を通じて排出される。排出されたこの処理水は、図示しない設備において三次処理や滅菌処理が行われた後、河川等に放流される。最終沈殿池7で沈降した活性汚泥は、活性汚泥溜まり部7aからラインL6を通じて排出される。排出された活性汚泥の一部は、ラインL7を通じて生物処理槽5の嫌気槽5aに返送され、残りは、図示しない設備における汚泥処理工程を経て処理される。
【0023】
上記の有機酸生成装置1について、更に詳細に説明する。有機酸生成装置1は、上述の通り、流入下水から分離された生汚泥を原料とし、生汚泥中の有機物を酸生成菌によって嫌気的に発酵させて、有機酸を得る装置である。図1に示すように、有機酸生成装置1は、汚泥貯留槽23、酸発酵槽27、濃縮槽(固液分離装置)43、発酵液貯留槽49、及び可溶化槽51を備えている。原料となる生汚泥は、ラインL11を通じて装置1に導入され、まず汚泥貯留槽23に一旦貯留され、汚泥貯留槽23に設けられた汚泥撹拌機25によって撹拌される。撹拌されて均一な汚泥濃度となった生汚泥は、ラインL12を通じて酸発酵槽27に導入される。なお、この汚泥貯留槽23は無くてもよく、ラインL11からの生汚泥が直接酸発酵槽27に導入されてもよい。また、汚泥貯留槽23に導入される生汚泥の汚泥濃度が低すぎる場合には、別途汚泥濃縮槽で前濃縮した後に汚泥貯留槽23又は酸発酵槽27に導入することが好ましい。
【0024】
酸発酵槽27は、導入された生汚泥を発酵処理し有機酸を生成させる槽である。この酸発酵槽27は、槽内に滞留する発酵汚泥Sを撹拌する酸発酵攪拌機29、発酵汚泥SのpHを測定するpHセンサ31、発酵汚泥Sの酸化還元電位を測定するORPセンサ33、及び槽内に酸性剤(例えば、塩酸)又はアルカリ剤(例えば、水酸化ナトリウム)を投入して発酵汚泥SのpHを調整するpH調整装置35を備えている。また、図示しないが、酸発酵槽27は、発酵汚泥Sの酸化還元電位を調整するための空気供給装置を備えてもよい。酸発酵槽27では、これらのpHセンサ31及びORPセンサ35から得られた情報に基づいて、槽内のpH等の発酵条件が適切に制御され、酸生成菌が発酵汚泥S中の有機物を分解して有機酸を生成する有機酸発酵反応が進行する。そして、有機酸を含んだ発酵汚泥は、ラインL14を通じて濃縮槽43に送られる(発酵工程)。なお、酸発酵槽27の適切な発酵条件とは、例えば、ORP約−300〜−200mV、pH約4〜6.5である。
【0025】
濃縮槽43は円形断面をなしており、槽の下部で回転する掻き寄せブレード47aを有する掻寄機47を備えている。ラインL14を通じて濃縮槽43に導入された発酵汚泥は重力沈降によって固液分離される(固液分離工程)。この固液分離によって重力沈降した固体成分の一部は、濃縮汚泥としてラインL16を通じ可溶化槽51に導入され、固体成分の残りは、余剰汚泥としてラインL17を通じて設備100外に排出され、酸発酵槽27で発生する発酵残渣等と一緒に、図示しない設備によって焼却処理あるいは消化処理される。なお、ここでは、重力沈降による固液分離を行う濃縮槽43に代えて、例えば浸漬膜分離装置といった膜分離装置を採用してもよい。
【0026】
可溶化槽51に導入された濃縮汚泥は、可溶化(液化)処理されて液化する(可溶化工程)。液化された汚泥(以下「可溶化汚泥」という)は、ライン(返送手段)L18を通じ、ポンプ(返送手段)P2によって酸発酵槽27に返送され再び発酵処理される(返送工程)。この可溶化槽51における可溶化処理としては、例えば、オゾン処理、アルカリ処理、酸処理、超音波処理、加熱処理、ミル等を用いた機械的な細胞破壊処理といった方法を用いることができる。また、これらの処理方法を複数組み合わせて行ってもよい。ここで、酸処理又はアルカリ処理を行った場合には、酸発酵槽27の急激なpH変化を抑えるため、可溶化汚泥を中和処理した後に酸発酵槽27に供給することが好ましい。
【0027】
一方、濃縮槽43で上澄みとして分離された発酵液は、ラインL15を通じて発酵液貯留槽49へ送られ、この発酵液貯留槽49内で一旦貯留された後、ラインL20を通じて、有機酸を含む発酵液として排出される。そして、前述のとおり、ラインL20を通じて排出されたこの発酵液は、嫌気−無酸素−好気法の有機源として生物処理槽5に供給される。なお、この発酵液貯留槽49を省略して、濃縮槽43からの発酵液を生物処理槽5に直接供給してもよい。
【0028】
このような排水処理設備100においては、生物処理槽5での被処理水の脱リン処理及び脱窒処理を効率よく行わせるために、有機酸生成装置1における有機酸の生成量を向上することが必要である。この装置1において、発酵汚泥Sには、酸生成菌ばかりでなくメタン生成菌も含まれているので、酸発酵槽27の発酵汚泥S中では、酸生成菌が汚泥を有機酸に変化させる有機酸発酵反応と、生成した有機酸をメタン生成菌がメタンガスに変化させてしまうメタン発酵反応とが同時に進行する。従って、最終的な有機酸の生成量向上のためには、有機酸発酵反応の進行だけでなく、メタン発酵反応の抑制についても考慮する必要がある。
【0029】
ここで、この種の有機酸生成装置で生汚泥を有機酸発酵させる場合、酸発酵槽における滞留時間は、2〜7日程度に設定されるのが通常である。ところが、有機酸生成装置1においては、有機酸の原料として、ラインL12からの生汚泥ばかりでなく、ラインL18からの可溶化汚泥も酸発酵槽27に導入される。そして、可溶化汚泥は生汚泥よりも発酵されやすいので、生汚泥のみが酸発酵槽27に導入される場合に比較して、酸発酵槽27内の有機酸発酵反応が効果的に進行することになる。従って、この有機酸生成装置1においては、酸発酵槽27における滞留時間を、例えば1〜5日といったように短く設定しても有機酸発酵反応が十分に進行する。一方、滞留時間が短くなることで、酸発酵槽27内のメタン生成菌の増殖が抑えられ、メタン発酵反応が抑制される。従って、酸発酵槽27においてメタンに変化してしまう有機酸が少なく抑えられ、その結果として、この有機酸生成装置1では、有機酸の生成量を向上させることができる。そして、このように、有機酸生成装置1における有機酸の生成量が向上され、有機酸が生物処理槽5に効率よく供給されるので、排水処理設備100では、排水の脱窒及び脱リン処理が効率よく行われる。
【0030】
また、この有機酸生成装置1では、発酵汚泥中の固体成分が、可溶化槽51と、酸発酵槽27との間で繰り返し処理されるので、最終的に余剰汚泥として排出される固形物の減容化を図ることができる。
【0031】
(第2実施形態)
図2に示すように、排水処理設備101は、有機酸生成装置2を備えている。この有機酸生成装置2は、濃縮槽43の前段に設けられた凝集槽61と、酸発酵槽27への返送ラインL18の前段に設けられた不溶成分除去槽63と備えている。凝集槽61では、酸発酵槽27からラインL14aを通じて導入された発酵汚泥に、リン酸イオン(リン成分)と反応する凝集剤が添加され、発酵汚泥に含まれるリン酸イオンは凝集剤と反応して不溶性のリン酸塩に変化する(凝集工程)。なお、ここでは、凝集剤として、鉄、アルミニウム、カルシウム等の化合物を用いることができる。また、一般的に用いられる代表的な凝集剤としては、ポリ塩化アルミニウムが挙げられる。
【0032】
その後、発酵汚泥は、ラインL14bを通じて濃縮槽43に導入され固液分離される。この時、発酵汚泥中のリン酸塩は重力沈降し、濃縮汚泥に含まれラインL16,L17から排出されることになる。すなわち、濃縮槽43では、発酵汚泥からリン成分が除去されることになるので、ラインL15に排出される発酵液に含まれるリン成分が少なくなる。
【0033】
一方、濃縮槽43からL16を通じて排出される濃縮汚泥は、可溶化槽51に導入され可溶化処理される。そして、可溶化された可溶化汚泥は、不溶成分除去槽63に導入される。不溶成分除去槽63では、可溶化汚泥中に含まれる不溶成分が、重力沈降によって除去される(不溶成分除去工程)。上記のリン酸塩は不溶のまま固体として可溶化汚泥に含まれているので、未溶解の汚泥と一緒に不溶成分として、ラインL20から設備101外に排出される。このように、不溶成分除去槽63において、酸発酵槽27に返送される前の可溶化汚泥からリン成分が除去されるので、酸発酵槽27に返送されるリン成分が低減されることになり、酸発酵槽27で得られる発酵汚泥中のリン成分も少なくなる。以上の結果として、この有機酸生成装置では、リン成分が少ない発酵液を有機源として生物処理槽5に供給することができる。従って、この排水処理設備101によれば、生物処理槽5からのリン成分が少ない処理水が得られる。
【0034】
なお、排水処理設備101において、排水処理設備100と同一又は同等な構成については、図面に同一符号を付し、その説明は省略する。
【0035】
本発明は、前述した実施形態に限定されるものではない。例えば、有機酸生成装置1,2に導入される有機酸の原料としての汚泥は、最初沈殿池3で発生する汚泥に限られず、最終沈殿池7で発生する汚泥であってもよいし、最初沈殿池3の汚泥と最終沈殿池7の汚泥とを併用してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明に係る排水処理設備の第1実施形態を示す図である。
【図2】本発明に係る排水処理設備の第2実施形態を示す図である。
【符号の説明】
【0037】
1,2…有機酸生成装置、5…生物処理槽、27…酸発酵槽、43…固液分離槽(固液分離装置)、51…可溶化槽、61…凝集槽、41…不溶成分除去槽、100,101…排水処理設備、L18…ライン(返送手段)、P2…ポンプ(返送手段)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
汚泥を嫌気的に発酵させて有機酸を生成させる有機酸生成方法において、
前記汚泥を嫌気的に発酵させ前記有機酸を含んだ発酵汚泥を得る発酵工程と、
前記発酵汚泥を固液分離し、前記有機酸を含む液体成分を固体成分から分離して得る固液分離工程と、
前記固液分離工程で分離された前記固体成分を可溶化処理して可溶化汚泥を得る可溶化工程と、
前記可溶化汚泥を発酵させるために、前記可溶化汚泥を前記発酵工程に返送する返送工程と、を備えたことを特徴とする有機酸生成方法。
【請求項2】
前記固液分離工程の前に、前記発酵汚泥に凝集剤を添加し前記発酵汚泥中のリン成分を不溶化させる凝集工程と、
前記返送工程の前に、前記可溶化汚泥から不溶成分を除去する不溶成分除去工程と、を更に備えたことを特徴とする請求項1に記載の有機酸生成方法。
【請求項3】
汚泥を嫌気的に発酵させて有機酸を生成させる有機酸生成装置において、
前記汚泥を嫌気的に発酵させ前記有機酸を含んだ発酵汚泥を得る発酵槽と、
前記発酵汚泥を固液分離し、前記有機酸を含む液体成分を固体成分から分離して得る固液分離装置と、
前記固液分離装置で分離された前記固体成分を可溶化処理して可溶化汚泥を得る可溶化槽と、
前記可溶化汚泥を発酵させるために、前記可溶化汚泥を前記発酵槽に返送する返送手段と、を備えたことを特徴とする有機酸生成装置。
【請求項4】
前記固液分離装置の前段に設けられ、前記発酵槽で得られた前記発酵汚泥に凝集剤を添加し前記発酵汚泥中のリン成分を不溶化させる凝集槽と、
前記返送手段の前段に設けられ、前記可溶化汚泥から不溶成分を除去する不溶成分除去槽と、を更に備えたことを特徴とする請求項3に記載の有機酸生成装置。
【請求項5】
請求項3又は4に記載の有機酸生成装置と、
排水を導入し、前記有機酸生成装置で得られる有機酸を用いて前記排水を生物処理する生物処理槽と、を備えたことを特徴とする排水処理設備。


【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−260601(P2007−260601A)
【公開日】平成19年10月11日(2007.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−91092(P2006−91092)
【出願日】平成18年3月29日(2006.3.29)
【出願人】(507036050)住友重機械エンバイロメント株式会社 (88)
【出願人】(591043581)東京都 (107)
【Fターム(参考)】