説明

有機電荷輸送性重合体及びその製造方法、並びに有機デバイス材料

【課題】湿式成膜法により安定性の高い膜を成膜可能で、良好な電荷輸送性を有する有機電荷輸送性重合体及びその製造方法、及び当該重合体を用いた有機デバイス材料を提供する。
【解決手段】有機電荷輸送性重合体は、特定のN−(置換)フェニカルバゾールのジハロゲン化物をアルキルリチウムでリチオ化したものと、三ハロゲン化ホウ素を反応させることで得られ、特定の繰り返し単位を2以上含むもので構成され、クロロホルム等の有機溶剤に可溶であり、湿式成膜法による成膜が可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、湿式成膜法に適した有機電荷輸送性重合体、及び当該重合体を用いた有機エレクトロルミネッセンス素子(以下、「エレクトロルミネッセンス」を「EL」と略すことがある)のような有機発光デバイス、有機トランジスタ等の有機デバイス用材料に関するものである。
【背景技術】
【0002】
有機デバイスは、有機EL素子のような有機発光デバイス、有機トランジスタ、太陽電池等、広範な基本素子及び用途への展開が期待されている。
【0003】
有機化合物材料の電界発光を利用した有機EL素子は、蛍光有機化合物に電場を与えることにより発光する自発光型の素子であり、視野角が広いこと、低電圧で駆動できること、高輝度であること、構成層が液晶素子と比べて少なく製造が容易であること、薄形化できること等の多くの長所を有しており、次世代の表示素子として注目されている。
【0004】
有機EL素子は、素子内に注入された電子と正孔の再結合により生じた励起状態のエネルギーを発光として取り出すものであり、生じた励起状態は、一重項状態が25%、三重項状態が75%になると考えられている。蛍光を利用した有機EL素子では一重項状態のエネルギーのみを利用しているため、内部量子収率が原理的に25%に留まるのが難点である。
【0005】
現在注目されているのが燐光を利用した有機EL素子である。燐光を利用した有機EL素子(燐光有機EL素子ともいう。)では、一重項状態のエネルギーのみならず三重項状態のエネルギーも利用することが可能であり、内部量子収率を原理的には100%まで上げることが可能となる。
【0006】
燐光有機EL素子は、燐光を発するドーパントとして白金やイリジウムなどの重金属を含む金属錯体系発光性材料をホスト材料にドーピングすることにより燐光発光を取り出している(例えば、非特許文献1を参照)。
【0007】
燐光ドーパントの発光はホスト材料に依存するが、そのホスト材料に必要とされる基本性能としては、正孔輸送性および電子輸送性を有すること、ホスト材料の還元電位が燐光ドーパントの還元電位よりも高いこと、ホスト材料の三重項状態のエネルギーレベルがドーパントの還元電位よりも低いことなどが挙げられ、一般には低分子材料であるCBP(4,4’−bis(carbazol−9‐yl)−biphenyl)が好適に用いられている(例えば、特許文献1を参照)。
【0008】
CBPをホスト材料に用いた燐光素子は、高効率化や長寿命化が期待されるが、一方で経時的にCBPの結晶化や凝集が起こり、素子が劣化して、素子寿命に多大な影響を与えるといった問題がある。また、発光効率についても未だ実用化に耐えうるものではなく、更なる改良が必要である。さらに、CBPは蒸着プロセスにより成膜しなければならず、大掛かりな蒸着装置が必要でコストが高いという問題があり、さらに、基材の大面積化が困難という問題がある。真空蒸着法に比べてコストが安価で、大面積ディスプレイの製造が可能な方法としては、溶媒を用いて基材に塗布するなどの湿式成膜法がある。しかしながら、従来のCBPのような低分子材料を溶剤に溶解又は分散させて塗工液を調製しようとしても溶解性、分散性が悪いため、均一で安定な塗工液が得られず、成膜できても経時的に有機層の結晶化や凝集が起こるなど、膜安定性が悪いため、従来の低分子材料を湿式成膜法により利用することは困難であった。
【0009】
一方、特許文献2には、分子内に少なくとも1つの芳香族基で置換されたホウ素原子と少なくとも1つの芳香族基で置換された窒素原子とを併せ持つ化合物を含有することを特徴とする有機EL素子が、開示されている。しかしながら、特許文献2においては真空蒸着法による成膜が好ましいとされており、湿式成膜法による成膜や、有機層の結晶化や凝集などが起こらないような膜安定性に対する検討はなされていない。
【0010】
【非特許文献1】M.A.Baldo et.al., Nature, vol.403, p.750-753(2000)
【特許文献1】特開平10−168443号公報
【特許文献2】特開2001−93670号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、上記問題を解決するためのなされたものであり、本発明の第一の目的は、湿式成膜法により安定性の高い膜を成膜可能で、良好な電荷輸送性を有する有機電荷輸送性重合体及びその製造方法を提供することにある。
【0012】
また、本発明の第二の目的は、膜安定性の高い電荷輸送性を有する層を湿式成膜法により形成可能な有機デバイス材料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明に係る有機電荷輸送性重合体は、下記一般式(1)で表されるものである。
【0014】
【化1】

(式(1)において、Rは、それぞれ独立に、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換の芳香族基、ハロゲン原子、又は水素原子である。繰り返し単位中の3つのRは、それぞれ同一であっても互いに異なっていても良い。また、繰り返し単位間で各Rは、全て同一であっても互いに異なっていても良い。nは、2以上の整数である。)
【0015】
また、本発明は、下記式(2)で表されるハロゲン化物を、アルキルリチウムでリチオ化したものと、三ハロゲン化ホウ素とを反応させる工程を有する、下記式(1)で表される繰り返し単位から構成される有機電荷輸送性重合体の製造方法も提供する。
【0016】
【化2】

(式(2)において、Xは、ハロゲン原子を表す。Rは、それぞれ独立に、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換の芳香族基、ハロゲン原子、又は水素原子である。)
【0017】
【化3】

(式(1)において、Rは、それぞれ独立に、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換の芳香族基、ハロゲン原子、又は水素原子である。繰り返し単位中の3つのRは、それぞれ同一であっても互いに異なっていても良い。また、繰り返し単位間で各Rは、全て同一であっても互いに異なっていても良い。nは、2以上の整数である。)
【0018】
更に、本発明は、上記有機電荷輸送性重合体を用いた、有機デバイス材料も提供する。
【発明の効果】
【0019】
本発明に係る有機電荷輸送性重合体は、湿式成膜法により安定性の高い膜を成膜可能で、良好な電荷輸送性を有している。本発明に係る製造方法によれば、当該重合体を容易に得ることができる。また本発明に係る有機電荷輸送性重合体は、膜安定性の高い電荷輸送性を有する層を湿式成膜法により形成可能な有機デバイス材料として極めて有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下において、本発明の有機電化輸送性重合体、その製造方法、および有機デバイス材料について順に詳細に説明する。
本発明に係る有機電荷輸送性重合体は、下記一般式(1)で表されることを特徴とする。
【0021】
【化4】

(式(1)において、Rは、それぞれ独立に、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換の芳香族基、ハロゲン原子、又は水素原子である。繰り返し単位中の3つのRは、それぞれ同一であっても互いに異なっていても良い。また、繰り返し単位間で各Rは、全て同一であっても互いに異なっていても良い。nは、2以上の整数である。)
【0022】
上記本発明に係る有機電荷輸送性化合物は、芳香族基で全置換されたホウ素原子からなる部分構造の存在により電子輸送性を有し、カルバゾール基を含む部分構造の存在により正孔輸送性を有するため、電子輸送性及び正孔輸送性を有するバイポーラー型分子である。更に、上記本発明に係る有機電荷輸送性化合物は、ハイパーブランチ構造を有し、且つ置換基Rを適宜調節することにより、溶媒溶解性が高くて湿式成膜法により成膜が可能である上、成膜した場合に結晶化や凝集などが起こりにくく膜安定性が高い。その結果、本発明の有機電荷輸送性化合物は、湿式成膜法により安定性の高い膜を成膜可能な、正孔輸送性および電子輸送性に優れた電荷輸送性材料として用いることが可能である。
【0023】
式(1)において、Rは、それぞれ独立に、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換の芳香族基、ハロゲン原子、又は水素原子である。ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。無置換のアルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、n−ノニル基、n−デシル基、n−ウンデシル基、n−ドデシル基、n−トリデシル基、n−テトラデシル基、n−ペンタデシル基、n−ヘキサデシル基などの直鎖アルキル基が挙げられる。また、これらの直鎖アルキル基の末端以外の1以上の水素原子がメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基などのアルキル基で置換された、i−プロピル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基等の分枝状アルキル基を例示することができる。Rのアルキル基の炭素数は特に制限されない。
【0024】
置換アルキル基としては、上で例示したアルキル基の1以上の水素原子が、本発明の効果を過度に阻害しない置換基で置換されたものを挙げることができる。例えば、アルキル基の1以上の水素原子がハロゲン原子や置換又は無置換の芳香族基、トリフルオロメチル基、シアノ基、ニトロ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、ジアルキルアミノ基等で置換されたものを例示することができる。
【0025】
無置換の芳香族基としては、芳香族炭化水素基であっても、複素環基であっても良い。中でも芳香族炭化水素基であることが好ましい。無置換の芳香族基としては、例えばフェニル基、ナフチル基、ジフェニル基、アントリル基、ピリジル基、ジピリジル基、フェナントロリル基等を例示することができる。
【0026】
置換芳香族基としては、上で例示した芳香族基の1以上の水素原子が、本発明の所期の効果を過度に阻害しない置換基で置換されたものを挙げることができる。例えば、芳香族基の1以上の水素原子がハロゲン原子や置換又は無置換のアルキル基、トリフルオロメチル基、シアノ基、ニトロ基、アルコキシ基等で置換されたものを例示することができる。
【0027】
また、本発明に係る有機電荷輸送性重合体分子に存在する複数のRは、すべて同一であっても互いに異なっていてもよい。すなわち、繰り返し単位中に存在する3つのRは、すべて同一であっても互いに異なっていてもよい。更に、繰り返し単位間で各Rは、全て同一であっても互いに異なっていても良い。合成的な観点から好ましいのは、複数のRがすべて同一である重合体である。
【0028】
Rを適宜選択することによって、本発明に係る有機電荷輸送性重合体の溶媒に対する溶解度を調節することができる。このため、本発明の重合体を溶解する溶媒が特定されている場合は、その溶媒に所望の濃度で溶解するようにRを適宜選択することができる。なお、本発明の重合体はいずれも、クロロホルム等の湿式成膜法に使用する溶媒に対する溶解性が高い。したがって、本発明の重合体は、スピンコート法のような溶媒を使用した湿式成膜法によって容易かつ迅速に薄膜形成することができ、時間とコストがかかる真空蒸着法などを用いる必要がないという利点を有する。
【0029】
本発明に係る有機電荷輸送性重合体のGPC(ポリスチレン換算)測定による重量平均分子量は数千以上であることが好ましい。本発明によれば、所望の電荷輸送性になるように重合体を分子設計することが比較的容易であり、使用目的に応じた有機デバイス材料の提供が可能である。例えば、有機EL素子においては、燐光発光用ホスト材料や、蛍光発光用材料としても用いることが可能である。
【0030】
また、本発明に係る有機電荷輸送性重合体は、ガラス転移温度が比較的高くて熱的安定性が高い。ガラス転移温度は、式(1)のRと平均分子量の組み合わせにより変動する。ガラス転移温度が高いため、本発明の有機電荷輸送性重合体を例えばEL素子等の有機デバイスに適用した場合、駆動電圧をかけた際に発生する熱量を抑えることができる。
【0031】
本発明に係る下記一般式(1)で表される有機電荷輸送性重合体の製造方法は、下記式(2)で表されるハロゲン化物を、アルキルリチウムでリチオ化したものと、三ハロゲン化ホウ素とを反応させる工程を有する。
【0032】
【化5】

(式(1)において、Rは、それぞれ独立に、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換の芳香族基、ハロゲン原子、又は水素原子である。繰り返し単位中の3つのRは、それぞれ同一であっても互いに異なっていても良い。また、繰り返し単位間で各Rは、全て同一であっても互いに異なっていても良い。nは、2以上の整数である。)
【0033】
【化6】

(式(2)において、Xは、ハロゲン原子を表す。Rは、それぞれ独立に、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換の芳香族基、ハロゲン原子、又は水素原子である。)
【0034】
本発明によれば、上記工程を有することにより、合成に必要な工程数を少なくすることができるため、より短時間で合成可能な上、コスト上も有利である。本発明に係る製造方法によれば、容易に上記式(1)で表される重合体を得ることができる。
【0035】
上記一般式(2)で表されるXは、ハロゲン原子であり、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子から選択される1種以上である。中でも、Xは、反応性の点から、臭素原子又はヨウ素原子であることが好ましい。また、Rについては、有機電荷輸送性重合体において述べたのと同様のものを用いることができる。上記一般式(2)で表されるRは、合成しようとしている一般式(1)で表される重合体のRに対応させる。上記式(2)で表されるハロゲン化物として、Rが異なる2種以上を用いる場合には、一般式(1)で表される重合体の繰り返し単位内の3つのRや、繰り返し単位間での各Rは、互いに同一の場合と異なる場合が存在するようになる。
【0036】
本発明に係る製造方法は、例えば次のように実施することができる。まず、上記一般式(2)で表されるハロゲン化物を、不活性溶媒中、窒素下室温にて溶解させる。この溶液に1.6〜
2.7M濃度のアルキルリチウム(例えば、ヘキサン溶液)を添加し、室温にてリチオ化する。得られた溶液を2〜10時間室温にて撹拌した後、三ハロゲン化ホウ素を滴下する。得られた溶液に4−アルキルフェニルリチウムのジエチルエーテル溶液(式(2)で表されるハロゲン化物に対して1等量)を滴下し、3時間撹拌する。続いて4−アルキルハロゲン化ベンゼンのジエチルエーテル溶液(式(2)で表されるハロゲン化物に対して2等量)を滴下して3時間時間撹拌した後、蒸留水を加え一晩加水分解する。上記反応時間については適宜調節すれば良く、特に制限されない。
ここで、上記アルキルリチウムは、上記一般式(2)で表されるハロゲン化物1.0モルに対して、2.0モル以上、更に2.05〜2.2モルであることが好ましい。また、三ハロゲン化ホウ素は、上記一般式(2)で表されるハロゲン化物1.0モルに対して、0.3〜0.34モル、更に0.31〜0.33モルであることが好ましい。
また、反応に使用するアルキルリチウムとしては、n−ブチルリチウム、sec−ブチルリチウム、tert−ブチルリチウムなどが挙げられる。反応に使用する三ハロゲン化ホウ素としては、三フッ化ホウ素・ジエチルエーテル錯体、三フッ化ホウ素・酢酸錯体、三フッ化ホウ素・ジメタノール錯体、三フッ化ホウ素・メタノール錯体、三臭化ホウ素などが挙げられる。反応に使用する不活性溶媒としては、脱水ジエチルエーテルなどが挙げられる。
【0037】
上記加水分解反応終了後、クロロホルム及び水などの溶媒で有機層を抽出する。その後、有機層を更に水により洗浄することが好ましい。得られた有機層を、無水硫酸マグネシウム等で乾燥し、ろ過して得られた溶液をエバポレーター等を用いて濃縮し、残渣を得る。得られた残渣を少量のクロロホルムに溶解させ、メタノールにより再沈殿させ精製する。例えばこの操作を三度繰り返すことにより、目的物が得られる。
【0038】
本発明に係る有機電荷輸送性重合体は、良好な電荷輸送性を有することから、有機デバイス材料として広く応用可能である。例えば、有機EL素子のような有機発光デバイスの有機層や、有機トランジスタにおける有機半導体層を形成する材料として好適に用いられる。
また、設計により、分子内に電子輸送性と正孔輸送性の両方や、発光性を有し、化合物を膜中に均一に分散することができるので、発光層や電荷輸送層を形成する有機EL素子用材料として好適に用いられる。
【0039】
(実施例1:本発明に係る有機電荷輸送性重合体の製造)
下記スキームに従って、構造式の本発明に係る有機電荷輸送性重合体[1a](式中R’はtert−ブチル基)を製造した。
【0040】
【化7】

【0041】
(1)式[2a](式中R’はtert−ブチル基)の合成
式[4a](式中R’はtert−ブチル基)は、文献(K.-T. Wong et al., Org. Lett. 2005, 7, 5361-5364)に従い、58.0%にて得た。
式[4a](6.007g; 20.062mmol)、並びにN−ヨードスクシンイミド (9.246g;41.096mmol)をクロロホルム(75ml)−酢酸(50ml)中、窒素雰囲気下、室温にて一晩撹拌した後、クロロホルムを留去した後、300mlの水に注ぎ込んだ。得られた沈殿を濾過、大量の水で洗浄した。沈殿をクロロホルムに溶解させ、無水硫酸マグネシウムで乾燥後、不要物を濾別した。得られた濾液を濃縮後、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:クロロホルム)で精製、続いてジクロロメタン-メタノールから再結晶する事により、目的物(式[2a](式中R’はtert−ブチル基))を得た(10.408g; 94.1%)。
【0042】
得られた化合物のHNMR、13CNMRを測定したところ、下記データが得られた。
H NMR (400MHz,CDCl,TMS):δ(ppm)1.42(s,9H,CH),7.17(d,J=8.8Hz,2H,arom.H),7.39 (d,J=8.4Hz,2H,arom.H),7.60(d,J=8.8Hz,2H,arom.H),7.65(dd,J=8.6 and 1.4Hz,2H,arom.H),8.38(d,J=2.0Hz,2H,arom.H).
13C NMR(100.4MHz,CDCl):δ(ppm)31.36,34.84,82.67,112.09,124.28,126.37,126.955,129.23,133.84,134.74,140.18,151.18.
【0043】
(2)式[1a](式中R’はtert−ブチル基)の合成
式[2a](5.000g;9.102mmol)を窒素雰囲気下、ジエチルエーテル15 ml中にて撹拌した(懸濁溶液)溶液に、2.71 Mブチルリチウム/ヘキサン溶液(6.8ml)を添加してリチオ化する。2時間撹拌した後、溶液を氷冷し、三フッ化ホウ素・ジエチルエーテル錯体(0.76ml)を添加して2時間撹拌した。三フッ化ホウ素・ジエチルエーテル錯体(0.76ml)を2時間置きに2回更に添加する。この溶液に4−アルキルフェニルリチウム(式[2a]に対して1等量)/ジエチルエーテル(15ml)を滴下し、3時間撹拌する。続いて4−アルキルハロゲン化ベンゼン(式[2a]に対して2等量)/ジエチルエーテル(15ml)を滴下して3時間撹拌した後、水(50ml)を加え一晩加水分解する。クロロホルム(100ml)と水(150ml)を加え有機層を抽出する。有機層を更に二回200mlの水により洗浄する。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥、不要物を濾過した後、有機溶媒を濃縮する。得られた残差を少量のクロロホルムに溶解させ、メタノールにより再沈殿させ精製する。この操作を三度繰り返し、目的の重合体(式[1a](式中R’はtert−ブチル基))を得た。
【0044】
得られた重合体のHNMR、及びGPC測定をしたところ、下記データが得られた。
H NMR (400MHz,CDCl,TMS):δ(ppm)1.36−1.46(m,CH),7.22−8.19(m,arom.H),8.45−8.73(m, arom.H).
Mw=7,388;Mn=7,017;Mw/Mn=1.053(polystyrene standard in THF)
【0045】
(実施例2:本発明に係る有機電荷輸送性重合体の製造)
上記スキームに従って、実施例1と同様に構造式の本発明に係る有機電荷輸送性重合体[1b](式中R’はn−ブチル基)を製造した。
【0046】
(1)式[4b](式中R’はn−ブチル基)の合成
カルバゾール[3](10.012g;59.877mmol)と4−ブチルヨードベンゼン(15.606g;59.996mmol)、銅粉末(1.947g;30.636mmol)、炭酸カリウム(8.272g;59.853mmol)をDMSO中、窒素雰囲気下、140℃で一晩加熱撹拌し、冷却後に300mlの水に注ぎ込んで得られた沈殿を濾過、大量の水で洗浄した。これらをクロロホルムに溶解させ、無水硫酸マグネシウムにより乾燥し、不要物を濾過により除去した。濾液を濃縮して得られた残差をメタノールにより再沈殿させる事により、目的物[4b]を得た(14.786g;82.5%)。
H NMR (400MHz,CDCl,TMS):δ(ppm)0.99(t,J=7.4Hz,3H,CH),1.395−1.49(m,2H,CH),1.66−1.74(m,2H,CH),2.73(t,J=8.0Hz,2H,ArCH),7.25−7.30(m,2H,arom.H),7.38−7.40(m,6H,arom.H),7.45(d,J=8.4Hz,2H,arom.H),8.14(d,J=8.4Hz,2H,arom.H).
13C NMR(100.4MHz,CDCl):δ(ppm)13.99,22.42,33.60,33.56,109.80,119.67,120.21,123.18,125.79,126.90,129.74,135.08,141.01,142.30.
(2)式[2b](式中R’はn−ブチル基)の合成
実施例1における式[4a]の代わりに式[4b]を用いて、実施例1と同様に、式[2b](式中R’はn−ブチル基)の合成を行った。目的物(式[2b](式中R’はn−ブチル基))を得た(収率88.5%)。
【0047】
得られた化合物のHNMR、13CNMRを測定したところ、下記データが得られた。
H NMR (400MHz,CDCl,TMS):δ(ppm)0.99(t,J=7.4Hz,3H,CH),1.39−1.48(m,2H,CH),1.66−1.73(m,2H,CH),2.73(t,J=8.0Hz,2H,ArCH),7.14(d,J=8.8Hz,2H,arom.H),7.355(d,J=8.8Hz,2H,arom.H), 7.40(d,J=8.4Hz,2H,arom.H),7.65(dd,J=8.6 and 1.4Hz,2H,arom.H),8.38(d, J=1.6Hz,2H,arom.H).
13C NMR(100.4MHz,CDCl):δ(ppm)13.98,22.41,33.55,35.36,82.66,112.03,124.265,126.69, 129.23,129.97,134.04,134.75,140.20,143.10.
【0048】
(2)式[1b](式中R’はn−ブチル基)の合成
実施例1における式[2a]の代わりに上記で得られた式[2b]を用いて、実施例1と同様に、式[1b]の(式中R’はn−ブチル基)の合成を行った。目的物の重合体(式[1b](式中R’はn−ブチル基))を得た。
【0049】
得られた重合体のHNMR、及びGPC測定をしたところ、下記データが得られた。
H NMR (400MHz,CDCl,TMS):δ(ppm)0.94−1.02(m,CH),1.45(m,CH),1.70−1.72(m,CH),2.74−2.77(m,CH),7.18−7.965(m,arom.H),8.48−8.72(m,arom.H).
Mw=7,478;Mn=7,020;Mw/Mn=1.065(polystyrene standard in THF)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)で表される繰り返し単位から構成される有機電荷輸送性重合体。
【化1】

(式(1)において、Rは、それぞれ独立に、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換の芳香族基、ハロゲン原子、又は水素原子である。繰り返し単位中の3つのRは、それぞれ同一であっても互いに異なっていても良い。また、繰り返し単位間で各Rは、全て同一であっても互いに異なっていても良い。nは、2以上の整数である。)
【請求項2】
下記式(2)で表されるハロゲン化物を、アルキルリチウムでリチオ化したものと、三ハロゲン化ホウ素とを反応させる工程を有する、下記式(1)で表される繰り返し単位から構成される有機電荷輸送性重合体の製造方法。
【化2】

(式(2)において、Xは、ハロゲン原子を表す。Rは、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換の芳香族基、ハロゲン原子、又は水素原子である。)
【化3】

(式(1)において、Rは、それぞれ独立に、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換の芳香族基、ハロゲン原子、又は水素原子である。繰り返し単位中の3つのRは、それぞれ同一であっても互いに異なっていても良い。また、繰り返し単位間で各Rは、全て同一であっても互いに異なっていても良い。nは、2以上の整数である。)
【請求項3】
請求項1に記載の有機電荷輸送性重合体を用いた、有機デバイス材料。

【公開番号】特開2007−262151(P2007−262151A)
【公開日】平成19年10月11日(2007.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−86176(P2006−86176)
【出願日】平成18年3月27日(2006.3.27)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】