説明

有機ELパネル及びその製造方法

【課題】クロスオーバー部の導電層の剥離を抑制する有機ELパネルを提供する。
【解決手段】本発明に係る有機ELパネル100は、複数の有機EL素子109が形成された素子基板101と、前記有機EL素子を囲むように設けられたシール材112と、シール材112により素子基板101に接着され、有機EL素子109を封止する封止基板110とを備える有機ELパネル100であって、素子基板101、封止基板110及びシール材112とで形成される空間内に配置されるクロスオーバー部115を備え、クロスオーバー部115は、外部からエージング電圧を供給するためのエージング接続配線116を有し、エージング接続配線116は、絶縁層117に設けられたコンタクトホール118を介してコモン引き回し配線105に接続されているものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機EL(Electro Luminescence)パネル及びその製造方法に関し、特に、エージング処理を含む有機ELパネル及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
有機EL表示装置に用いられる有機ELパネルは、ガラス基板上に複数の陽極電極が平行して配置され、陽極電極と直交する方向に複数の陰極電極が平行して配置され、両電極間に有機EL層が挟持された構造を有する。陽極電極と陰極電極との交点が1つの画素となる。このように画素がマトリクス状に配置された有機ELパネルを単純マトリクス駆動する場合、例えば、陽極電極をセグメント電極とし陰極電極をコモン電極とする。
【0003】
有機EL素子の発光輝度は、初期に大きく低下し、その後は緩やかに低下するという特性を有する。したがって、初期の発光時における発光特性の変化を取り除き、発光特性を安定化させるために、有機ELパネルの段階で陽極電極及び陰極電極に電圧パルスを印加する寿命エージング処理を行う。輝度低下した有機ELパネルを安定化した新たな初期状態とし、その後の輝度の経時変化を抑制している。
【0004】
また、有機EL表示装置の製造時に、陽極電極と陰極電極との間に配置されている有機EL層に異物が混入したり、陽極電極に突起が生じて突起が有機EL層に侵入したりすることにより、欠陥部が生じることがある。この欠陥部に電荷が集中すると、陽極電極と陰極電極との短絡が生じ、素子特性の劣化や非発光にいたるという問題がある。このような問題を解決するために、あらかじめ、異物が混入している欠陥部にパルス状の逆バイアス電圧を印加し、欠陥部を不動態化する短絡エージング処理を行っている。
【0005】
一般的に、このような有機ELパネルを製造する場合、1枚のマザー基板上に複数の有機ELパネルを形成する。短絡エージング処理及び寿命エージング処理を効率的に実行するために、マザー基板を切断しそれぞれの有機ELパネルごとに分離する前に、複数の有機ELパネルに一括してエージング処理が実施されることが好ましい。このため、通常、複数の有機ELパネルが形成されるマザー基板上に、複数の有機ELパネルのそれぞれにエージング電圧を印加するためのエージング配線を形成している。
【0006】
近年、電子機器の小型化に伴い、有機ELパネルの小型化が望まれている。このため、COG(Chip On Glass)実装技術を用いて、有機ELパネルを構成する基板上に駆動回路を実装する場合がある。図16は、従来のCOG型の有機ELパネル10の構成を模式的に示す図である。図16に示すように、従来の有機ELパネル10では、基板11上にドライバIC12が実装されている。また、基板11上には、垂直方向にセグメント電極13が、水平方向にコモン電極14が形成されている。
【0007】
基板11上において、ドライバIC12の上辺の近傍には、セグメント電極13に表示信号を供給するための接続端子(不図示)が設けられている。セグメント電極13は、セグメント引き回し配線15を介して、この接続端子と接続されている。また、ドライバIC12の裏面側の左右両辺の近傍には、コモン電極14に走査信号を供給するための接続端子(不図示)が設けられている。コモン電極14は、コモン引き回し配線16を介してこの接続端子と接続されている。また、ドライバIC12の下辺の近傍には、表示に必要な各種の制御信号を供給するためのフレキシブル基板を接続するための接続端子17が設けられている。このような場合、上述したマザー基板上の複数の有機ELパネルのセグメント電極13に一度にエージング処理を行うためのエージング配線を形成することが難しい。
【0008】
この問題を解決するために、図17〜図19に示すように、基板11上の有機EL素子が配置される表示領域外の周辺領域にクロスオーバー部18を設け、コモン引き回し配線16とコモンエージング配線19とを接続するためのエージング接続配線20を、他のコモン引き回し配線16に接触させないように乗り越えさせて、マザー基板の状態で、複数の有機ELパネルに対して一括してエージング処理を行う技術が提案されている(特許文献1参照)。図18及び図19に示すように、エージング接続配線20とセグメントエージング配線21とは、絶縁層23を介して交差する。コモン引き回し配線16とエージング接続配線20とは、絶縁層23に設けられたコンタクトホール22を介して接続されている。
【特許文献1】特開2005−164679号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、エージング処理では、エージング配線に電圧を印加し、セグメント電極13とコモン電極14との間に電流を流す。このとき、有機EL層中の異物などの欠陥部に電流が集中し、ジュール熱が発生する。上述のように、コモン引き回し配線16とエージング接続配線20とが、絶縁層23に設けられたコンタクトホール22を介して接続されている場合、コンタクトホール22中のコモン引き回し配線16とエージング接続配線20との界面においても、ジュール熱が発生し、エージング接続配線20が変形したり、その膜質が劣化したりしてしまうという問題がある。
【0010】
また、有機ELパネル10の製造工程においては、エージング処理を行った後に、マザー基板を切断してそれぞれの有機ELパネルごとに分離し、駆動回路などを実装するために接続端子17が形成されている周辺領域の超音波洗浄を行う。超音波洗浄では、洗浄液中に極めて小さな気泡や空洞が急速に形成されたり、激しく崩壊するキャビテーションにより、洗浄液中の有機ELパネルの洗浄が行われる。
【0011】
このため、上記のようにエージング接続配線20が劣化している場合、エージング接続配線材料が剥がれ落ちてしまうという問題があった。特に、クロスオーバー部18が設けられた周辺領域は、封止基板により覆われておらず露出している。このため、洗浄液が直接エージング接続配線20に接触する。したがって、クロスオーバー部18において、エージング接続配線20とコモン引き回し配線16とが接触するコンタクトホール22部分では特にこのような問題が顕著であった。この剥離した導電材料が、洗浄装置内に浮遊し、その後流れてくる他の有機ELパネルの配線上に付着すると、隣り合う配線が短絡するというリーク不良が発生してしまう可能性がある。
【0012】
本発明は、このような事情を背景としてなされたものであり、本発明の目的は、クロスオーバー部の導電層の剥離を抑制する有機ELパネル及びその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の第1の態様に係る有機ELパネルは、第1の電極と、前記第1の電極に対向する第2の電極と、前記第1の電極と前記第2の電極との間に配置された発光層とを有する有機EL素子が形成された素子基板と、前記有機EL素子を囲むように設けられたシール材と、前記シール材により前記素子基板に接着され、前記有機EL素子を封止する封止基板とを備える有機ELパネルであって、前記素子基板、前記封止基板及びシール材とで形成される封止領域内に配置されるクロスオーバー部を備え、前記クロスオーバー部は、前記第1の電極と接続された第1の引き回し配線と、前記第1の引き回し配線の側方に配置され、前記第2の電極に有機ELパネルの外部からエージング電圧を供給するエージング配線と、前記第1の引き回し配線及び前記エージング配線の上に設けられた絶縁層と、前記封止領域内に配置され、前記絶縁層に設けられたコンタクトホールと、前記絶縁層上に設けられ、前記コンタクトホールを介して前記第1の引き回し配線と接続された導電層とを有するものである。これにより、クロスオーバー部の劣化部分であるコンタクトホール上の導電層が剥離してしまうのを抑制することができる。
【0014】
本発明の第2の態様に係る有機ELパネルは、上記の有機ELパネルにおいて、前記エージング配線と前記第1の電極とは、前記絶縁層により分離されているものである。本発明は、このような場合に特に有効である。
【0015】
本発明の第3の態様に係る有機ELパネルは、上記の有機ELパネルにおいて、前記導電層は、複数の第1の引き回し配線のそれぞれに対応して分離形成されているものである。本発明は、このような場合に特に有効である。
【0016】
本発明の第4の態様に係る有機ELパネルは、上記の有機ELパネルにおいて、前記導電層は、前記第2の電極と同一材料で形成されているものである。これにより、製造工程の増加を抑制することができる。
【0017】
本発明の第5の態様に係る有機ELパネルは、上記の有機ELパネルにおいて、前記素子基板の一辺側に実装された駆動回路をさらに備え、前記第1の電極は、前記第1の引き回し配線を介して前記駆動回路に接続され、前記第2の電極は、第2の引き回し配線を介して前記駆動回路に接続されているものである。本発明は、このような場合に特に有効である。
【0018】
本発明の第6の態様に係る有機ELパネルの製造方法は、素子基板上に、第1の電極と第2の電極との間に配置された発光層を有する有機EL素子と、前記第1の電極に接続された第1の引き回し配線と、前記第2の電極に接続された第2の引き回し配線と、前記第1の引き回し配線にエージング接続配線を介して接続された第1のエージング配線と、前記第2の引き回し配線に接続された第2のエージング配線と、前記エージング接続配線と前記第2のエージング配線が絶縁層を介して交差し、前記第1の引き回し配線と前記エージング接続配線とが前記絶縁層に設けられたコンタクトホールを介して接続されるクロスオーバー部とを形成し、封止基板を前記素子基板の前記有機EL素子形成面側に対向配置し、前記有機EL素子、前記クロスオーバー部及び前記コンタクトホールが前記素子基板と前記封止基板とで形成される封止領域内に配置されるよう封止し、前記第1のエージング配線及び前記第2のエージング配線にエージング電圧を印加してエージング処理を行い、前記素子基板及び前記封止基板を切断して、前記第1のエージング配線と第1の電極及び前記第2のエージング配線と第2の電極との接続を分断し、エージング処理後、洗浄処理を行う。これにより、エージング処理に伴うクロスオーバー部の劣化部分が洗浄によって剥離してしまうのを抑制することができる。
【0019】
本発明の第7の態様に係る有機ELパネルは、第1の電極と、前記第1の電極に対向する第2の電極と、前記第1の電極と前記第2の電極との間に配置された発光層とを有する有機EL素子が形成された素子基板と、前記有機EL素子を囲むように設けられたシール材と、前記シール材により前記素子基板に接着され、前記有機EL素子を封止する封止基板とを備える有機ELパネルであって、前記素子基板、前記封止基板及びシール材とで形成される封止領域内に配置されるクロスオーバー部を備え、前記クロスオーバー部は、前記第1の電極と接続された第1の引き回し配線と、前記第1の引き回し配線の側方に配置され、前記第2の電極に有機ELパネルの外部からエージング電圧を供給するエージング配線と、前記第1の引き回し配線及び前記エージング配線の下に設けられた絶縁層と、前記封止領域内に配置され、前記絶縁層に設けられたコンタクトホールと、前記絶縁層の下に設けられ、前記コンタクトホールを介して前記第1の引き回し配線と接続された導電層とを有するものである。これにより、クロスオーバー部の劣化部分であるコンタクトホール上の導電層が剥離してしまうのを抑制することができる。さらに、コンタクトホールの数を減らすことができるため、コンタクトホールでの不良発生を低減させることができる。
【0020】
本発明の第8の態様に係る有機ELパネルは、上記の有機ELパネルにおいて、前記エージング配線の周囲には、リブが設けられ、前記エージング配線と前記第1の電極とは、前記リブにより分離形成されているものである。本発明は、このような場合に特に有効である。
【0021】
本発明の第9の態様に係る有機ELパネルは、上記の有機ELパネルにおいて、前記導電層は、複数の第1の引き回し配線のそれぞれに対応して形成されているものである。本発明はこのような場合に特に有効である。
【0022】
本発明の第10の態様に係る有機ELパネルは、上記の有機ELパネルにおいて、前記エージング配線は、前記第1の電極と同一材料で形成されているものである。これにより、製造工程の増加を抑制することができる。
【0023】
本発明の第11の態様に係る有機ELパネルは、第1の電極と、前記第1の電極に対向する第2の電極と、前記第1の電極と前記第2の電極との間に配置された発光層とを有する有機EL素子が形成された素子基板と、前記有機EL素子を囲むように設けられたシール材と、前記シール材により前記素子基板に接着され、前記有機EL素子を封止する封止基板とを備える有機ELパネルであって、前記素子基板、前記封止基板及びシール材とで形成される封止領域内に配置されるクロスオーバー部を備え、前記クロスオーバー部は、前記第1の電極と接続された第1の引き回し配線と、前記第1の引き回し配線の側方に配置され、前記第2の電極に有機ELパネルの外部からエージング電圧を供給するエージング配線と、前記第1の引き回し配線の下に設けられた絶縁層と、前記封止領域内に配置され、前記絶縁層に設けられたコンタクトホールと、前記絶縁層上に設けられ、前記コンタクトホールを介して前記第1の引き回し配線と接続された導電層とを有するものである。これにより、クロスオーバー部の劣化部分であるコンタクトホール上の導電層が剥離してしまうのを抑制することができる。また、コンタクトホールの数を減らすことができるため、コンタクトホールでの不良の発生率を抑えることができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、クロスオーバー部の導電層の剥離を抑制する有機ELパネル及びその製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
実施の形態1.
本発明の実施の形態1に係る有機ELパネルについて、図1及び図2を参照して説明する。図1は、本実施の形態に係る有機ELパネルの構成の一例を示す図である。また、図2は、図1のA−A断面図である。ここでは、有機ELパネルの一例として、有機EL表示パネルについて説明するが、本発明は、例示する構成の有機EL表示パネルに限定するものではない。なお、図1においては、説明のため、封止基板110の図示を省略している。また、本実施の形態においては、陽極電極をセグメント電極、陰極電極をコモン電極として説明するが、逆であっても良い。
【0026】
図1及び図2に示すように、本実施の形態に係る有機ELパネル100は、素子基板101、セグメント電極102、セグメント引き回し配線103、コモン電極104、コモン引き回し配線105、絶縁層106、開口部107、有機EL層108、有機EL素子109、封止基板110、捕水材111、シール材112、ドライバIC113、入力信号線114、クロスオーバー部115、エージング接続配線116を備えている。
【0027】
セグメント電極102は、ITO(Indium Tin Oxide)などの透明性導電材料からなり、素子基板101上に形成されている。図1に示すように、複数のセグメント電極102は、一定間隔を隔ててそれぞれ平行に形成されている。また、素子基板101上には、それぞれのセグメント電極102に延設されたセグメント引き回し配線103が設けられる。また、素子基板101上には、後述するそれぞれのコモン電極104に接続されたコモン引き回し配線105が設けられる。コモン引き回し配線105はコモン電極104に対応して形成され、セグメント電極102に対し垂直方向に形成される。セグメント引き回し配線103、コモン引き回し配線105などは、低抵抗化のために下層にITO、接続部となる上層に金属材料の積層膜から形成される。
【0028】
セグメント電極102、セグメント引き回し配線103、コモン引き回し配線105が形成された素子基板101上には、画素を区画するための絶縁層106が形成される。絶縁層106は、セグメント電極102と後述するコモン電極104との絶縁性を確保するために設けられる。また、絶縁層106は、後述するクロスオーバー部115の絶縁層117と同時に形成される。絶縁層106は、ポリイミドなどの絶縁材料からなる。絶縁層106には、セグメント電極102と後述するコモン電極104との交差位置、すなわち画素となる位置に対応して開口部107が設けられている。つまり、絶縁層106は、有機EL層108とセグメント電極102とが接触する開口部107を画定する役割を果たしている。
【0029】
なお、図1及び図2においては図示していないが、図4に示すように絶縁層106上には、隔壁120が形成される。図4は、クロスオーバー部115を説明するための図であり、後に詳述する。隔壁120は、コモン電極104を分離形成するため、コモン電極104を蒸着などにより形成する前に所望のパターンに形成される。隔壁120は、セグメント電極102に対し垂直に、コモン電極104に対して平行に設けられる。コモン電極104の分離をより確実なものとするため、隔壁120は逆テーパ構造を有している。すなわち、素子基板101から離れるにつれて、断面が広がるように形成される。なお、表示領域内の隔壁120は、クロスオーバー部115の壁構造体119と同時に形成される。
【0030】
有機EL層108は、前述したセグメント電極102、絶縁層106、隔壁120の上に、所定の大きさで配置される。有機EL層108は、例えば、正孔注入層、正孔輸送層、有機発光層、電子輸送層、電子注入層を順次積層した構成を有している。
【0031】
コモン電極104は、光反射性を有するアルミニウムなどの導電材料からなり、有機EL層108上に設けられる。コモン電極104は、隔壁120によって分離されるため、隔壁120の間に配設される。したがって、コモン電極104はセグメント電極102に対して垂直に設けられる。セグメント電極102とコモン電極104とが交差する位置が画素となる。有機EL素子109は、素子基板101上に順次積層されたセグメント電極102、有機EL層108、コモン電極104を備える。複数の画素から構成される領域が、表示領域となる。また、コモン電極104は、後述するクロスオーバー部115の導電層であるエージング接続配線116と同時に形成される。これにより、製造工程の増加を抑制することできる。
【0032】
封止基板110は、パネル中に水分や酸素が入らないように設けられる。封止基板110としては、ステンレス、アルミニウム又はその合金などの金属類のほか、ガラス、アクリル系樹脂などの1種類又は、2種類以上からなるものを使用することができる。封止基板110の画素に対向する面上には、捕水材111を配置するための凹部が形成されている。
【0033】
封止基板110と素子基板101とは、光硬化型のシール材112を介して固着されている。シール材112としては、水分などの透過性の低い紫外線硬化型のエポキシ系シール材などを用いることができる。シール材112は、表示領域を囲むように形成されている。シール材112は、封止基板110と素子基板101とを固着し、表示領域を含む空間を封止する。従って、有機EL素子109は、素子基板101、封止基板110、シール材112で形成される気密空間(以下、封止領域とする。)に配置されている。
【0034】
また、封止領域内において、表示領域の外側にクロスオーバー部115が設けられている。すなわち、クロスオーバー部115が素子基板101、封止基板110、シール材112で形成される気密空間内に配置されるように、シール材112は配置される。クロスオーバー部115は、有機ELパネル100の製造工程においてエージング処理を行う際に、各エージング引き回し配線116が隣接するコモン引き回し配線105及びセグメントエージング配線201と接触しないように、コモンエージング配線202とコモン引き回し配線105とを接続するために設けられている。クロスオーバー部115の構成については後に詳述する。
【0035】
また、セグメント引き回し配線103やコモン引き回し配線105の一部、後述するドライバIC113などは、素子基板101、封止基板110、シール材112で形成される気密空間外に配置される。この素子基板101、封止基板110、シール材112で形成される気密空間外を周辺領域とする。
【0036】
気密空間内には、画素などへの水分や酸素の影響を抑制し、安定した発光特性を維持するための捕水材111が設けられている。捕水材111は、封止基板110上の、有機EL素子109と対向する面に形成された凹部に設けられている。捕水材111としては、無機系の乾燥剤や、水分と反応性の高い有機金属化合物を膜状にしたもの、フッ素系オイルからなる不活性液体中に固体の吸湿剤を混合したものなどを用いることができる。
【0037】
また、素子基板101の周辺領域の一辺側には、ドライバIC113が実装されている。ドライバIC113には、コモン電極104にコモン電圧を供給するコモン電極駆動回路と、セグメント電極102に表示電圧を供給するセグメント電極駆動回路とが内蔵されている。
【0038】
ドライバIC113の表示電圧出力端子と各セグメント電極102とは、セグメント引き回し配線103を介して接続されている。また、コモン電圧出力端子と各コモン電極104とは、コモン引き回し配線105を介して接続されている。また、ドライバIC113には、有機ELパネル100の外部から、図1中下側の辺近傍に設けられた入力信号線114を介して、表示に必要な各種の制御信号、電源などが供給される。
【0039】
ここで、有機ELパネル100を製造する際に用いる有機ELパネル用基板200について図3を参照して説明する。図3は、実施の形態1に係る有機ELパネル用基板200の構成を示す図である。なお、ドライバIC113は、有機ELパネル用基板200をそれぞれの有機ELパネル100ごとに切断した後に実装されるため、図3に示す状態においてはまだ実装されていない。したがって、図3においてはドライバIC113を点線で図示している。
【0040】
図3に示すように、有機ELパネル用基板200には、1枚のマザー基板上に複数の有機ELパネル100が形成される。また、マザー基板上には、セグメントエージング配線201、コモンエージング配線202が形成される。セグメントエージング配線201及びコモンエージング配線202は、セグメント引き回し配線103及びコモン引き回し配線105と同時に形成される。
【0041】
また、各有機ELパネル100におけるセグメント電極102は、ドライバIC113とは逆側に形成されたセグメント引き回し配線103を介して、セグメントエージング配線201に接続される。従って、すべての有機ELパネル100における各セグメント電極102に、セグメントエージング配線201から同じエージング電圧を供給することができる。
【0042】
また、各有機ELパネル100における各コモン電極104は、コモン引き回し配線105及びクロスオーバー部115に設けられたエージング接続配線116を介してコモンエージング配線202に接続される。それぞれのエージング接続配線116は、コモン電極104に直接接続されるのではなく、コモン引き回し配線105を介してコモン電極104に電気的に接続される。従って、すべての有機ELパネル100における各コモン電極104に、コモンエージング配線202からエージング電圧を供給することができる。これにより、マザー基板上に設けられた複数の有機ELパネル100に対して一括してエージング処理を行うことができる。
【0043】
ここで、図4及び図5を参照して、クロスオーバー部115の構成について説明する。図4は、クロスオーバー部115の構成を示す図である。また、図5は、図4のB−B断面図である。クロスオーバー部115においては、絶縁層117がセグメントエージング配線201を覆うように形成されている。エージング接続配線116は、絶縁層117を介してセグメントエージング配線201と交差する。このため、エージング接続配線116とセグメントエージング配線201とは接触しない。また、コモンエージング配線202には、エージング接続端子203が形成されている。エージング接続配線116は、対応するエージング接続端子203と接続されている。従って、エージング接続配線116は、クロスオーバー部115において、セグメントエージング配線201及び他のコモン引き回し配線105を乗り越えて、コモン引き回し配線105と対応するエージング接続端子203とを電気的に接続する。
【0044】
なお、セグメントエージング配線201とセグメント電極102間、及び、コモンエージング配線202及びコモン電極104間の接続は、マザー基板を個々の有機ELパネル100に切断する工程において、分断される。すなわち、マザー基板上における切断工程後に廃棄される部分で、エージング接続配線116を介して全てのコモン引き回し配線105をコモンエージング配線202に電気的に接続する。つまり、最終的に得られる有機ELパネル100の外部で、全てのコモン引き回し配線105とコモンエージング配線202とが導通される。この切断工程後、ドライバIC113が素子基板101上に実装される。
【0045】
図5に示すように、クロスオーバー部115においては、素子基板101上にコモン引き回し配線105、コモンエージング配線202、セグメントエージング配線201が形成されている。コモンエージング配線202は、封止領域の外側から封止領域内まで延設されている。すなわち、コモンエージング配線202は、シール材112と交差するように設けられている。セグメントエージング配線201及びコモンエージング配線202はITOからなる。また、コモンエージング配線の一部にはエージング接続端子203が設けられている。エージング接続端子203は、ITO及び金属膜の積層膜からなる。また、コモン引き回し配線105は、上述したように低抵抗化のためITOと金属膜の積層膜からなる。
【0046】
クロスオーバー部115のコモン引き回し配線105、セグメントエージング配線201及びエージング接続端子203上には、絶縁層117が設けられている。絶縁層117のコモン引き回し配線105に対応する位置には、第1のコンタクトホール118aが形成されている。また、エージング接続端子203に対応する位置には、第2のコンタクトホール118bが形成されている。
【0047】
図4に示すように、エージング接続配線116間には、表示領域内にコモン電極104を分離形成するために形成された隔壁120と同一の工程で形成された壁構造体119が設けられている。壁構造体119は、エージング接続配線116の分離をより確実なものとするため、上述した隔壁と同様に逆テーパ構造を有している。また、絶縁層117及び壁構造体119の上には、絶縁層117を覆うようにエージング接続配線116となるAlなどの導電材料が設けられている。この壁構造体119より、隣接するエージング接続配線116同士が接触しないように、分離形成される。
【0048】
コモンエージング配線202は、封止領域内のエージング接続配線116と第2のコンタクトホール118aを介して接続されている。そして、コモン引き回し配線105は、封止領域内のエージング接続配線116と第1のコンタクトホール118aを介して接続されている。従って、コモン引き回し配線105とコモンエージング配線202とは、第1のコンタクトホール118a及び第2のコンタクトホール118bを介して、エージング接続配線116により電気的に接続されている。すなわち、エージング接続配線116は、側方に配置されたセグメントエージング配線201及び隣接する他のコモン引き回し配線105を乗り越えて、対応するコモン引き回し配線105とコモンエージング配線202とを電気的に接続する。
【0049】
また、クロスオーバー部115の反表示領域側にはシール材112が配置される。したがって、有機EL素子109のみならず、クロスオーバー部115も、素子基板101、封止基板110、シール材112により形成される封止領域内に配置される。このため、エージング接続配線116の第1のコンタクトホール118a及び第2のコンタクトホール118bも封止領域内に配置される。また、エージング接続配線116も封止領域内に形成される。
【0050】
エージング接続配線116の第1のコンタクトホール118a及び第2のコンタクトホール118bの部分、すなわち、コモン引き回し配線105とエージング接続配線116との界面及びエージング接続端子203とエージング接続配線116との界面では特に、エージング処理を行うことにより発生するジュール熱によりエージング接続配線116が変形したり、その膜質が劣化してしまう。
【0051】
その後、マザー基板を切断し、それぞれの有機ELパネル100ごとに分離した後、ドライバIC113などを実装するために接続端子部分の超音波洗浄を行う。超音波洗浄では、洗浄液中に極めて小さな気泡や空洞が急速に形成されたり、激しく崩壊するキャビテーションにより、溶液中の有機ELパネルの洗浄が行われる。
【0052】
従来は、クロスオーバー部115は周辺領域に形成され、露出していた。このため、洗浄液が直接エージング接続配線116に接触し、クロスオーバー部115において、エージング接続配線116とコモン引き回し配線105とが接触するコンタクトホール118aでは特にエージング接続配線116の材料が剥がれ落ちやすかった。この剥離した導電材料が、洗浄装置内に付着し、その後流れてくる他の有機ELパネルの配線上に付着すると、リーク不良が発生してしまう可能性がある。
【0053】
しかしながら、本発明によれば、クロスオーバー部115は封止領域内に配置されている。このため、クロスオーバー部115には直接洗浄液が接触することはない。従って、クロスオーバー部115には、洗浄液の泡がはじける時の衝撃波(キャビテーション)を伝播する媒体(洗浄液)が存在しないこととなる。これにより、当該劣化部分のエージング接続配線116材料が外れてしまうのを防止することができる。また、これに起因する不良パネルの発生を抑制することができる。
【0054】
ここで、上記の有機ELパネル100の製造方法について、図6を参照して説明する。図6は、本実施の形態に係る有機ELパネル100の製造方法を示すフロー図である。図6に示すように、有機ELパネル100は、1枚のマザー基板上に配線群および複数の有機EL層を形成する有機EL素子形成工程(ステップS1)、有機EL層を水分などから守るためにガラスなどの封止基板110基板で有機ELパネルごとに外気から隔離する封止工程(ステップS2)、マザー基板上の複数の有機ELパネル100に一括してエージング処理を施すエージング工程(ステップS3)、マザー基板を切断して複数の有機ELパネル100ごとに分離する切断工程(ステップS4)、ドライバIC113の実装部の洗浄を行う洗浄工程(ステップS5)、ドライバIC113を実装する実装工程(ステップS6)を経て作製される。
【0055】
第1に、素子基板101上に有機EL素子109を形成する(ステップS1)。具体的には、まずマザー基板上にITOを成膜し、感光性樹脂をITO上に塗布し、露光、現像、エッチングをして、複数のセグメント電極102、複数のセグメント引き回し配線103、セグメントエージング配線201、複数のコモン引き回し配線105及びコモンエージング配線202を同一平面上に形成する。また、接続部の低抵抗化ため、セグメント引き回し配線103、コモン引き回し配線105上に金属材料を積層する。また、エージング接続端子203上の第2のコンタクトホール118bが形成される位置には、モリブデンを含む合金により、第2のコンタクトホール118bよりも大きい金属電極を形成する。
【0056】
次に、この層の上に、絶縁層106材料を塗布し露光、現像を行って開口部107を形成する。また、この絶縁層106の形成と同時に、クロスオーバー部115に絶縁層117を形成する。クロスオーバー部115において、各エージング接続端子203及びコモン引き回し配線105に対応する位置にコンタクトホール118を形成する。コモン引き回し配線105に対応して設けられる第1のコンタクトホール118aは、コモン引き回し配線105屈曲部の近傍であることが好ましい。
【0057】
さらに、ネガ型の感光性樹脂を塗布した後、露光現像を行う表示領域中の隔壁120を形成する。また、表示領域内の隔壁120の形成と同時に、壁構造体119を形成する。これにより、それぞれのエージング接続配線116も分離形成される。そして、隔壁120を形成した後、有機EL層108を形成する各層を順次積層する。例えば、有機EL層108として、順に、正孔注入層、正孔輸送層、発光層、電子輸送層、電子注入層を形成する。
【0058】
最後に、蒸着により、コモン電極104をアルミニウム等の金属で形成し、コモン電極104をコモン引き回し配線105に接続する。このとき、隔壁120が有機EL層108やコモン電極104を分離することにより、隔壁120間に有機EL層108が形成され、ストライプ状にパターニングされたコモン電極104が形成される。
【0059】
また、コモン電極104を形成する際に、コモン電極104の材料と同じ材料で、エージング接続配線116が同時に形成される。すなわち、コモン電極104とエージング接続配線116とは同一材料で形成される。このとき、壁構造体119がエージング接続配線116を分離することにより、壁構造体119間にストライプ状にパターニングされたエージング接続配線116が形成される。これにより、前の工程で形成したコンタクトホール118により、エージング接続配線116とコモン引き回し配線105、及びエージング接続配線116とコモンエージング配線202とがそれぞれ電気的に接続される。したがって、クロスオーバー部115を別に形成する工程を追加することなく、有機EL素子109と同時に形成できる。
【0060】
以上のようにして、クロスオーバー部115において、コモン引き回し配線105に接続されるエージング接続配線116が、他のコモン引き回し配線105及びセグメントエージング配線201を乗り越えて、コモンエージング配線202に電気的に接続される。なお、ここでは、それぞれのコモン電極104及びエージング接続配線116を分離形成するために隔壁120及び壁構造体119を用いたが、ストライプ状にマスク蒸着することによって形成することも可能である。
【0061】
そして、有機EL素子形成工程(ステップS1)が終了すると、素子基板101上に形成された複数の単純マトリクス型の有機EL素子109における各セグメント電極102がセグメント引き回し配線103を介してセグメントエージング配線201に接続され、複数の有機EL素子109における各コモン電極104がコモン引き回し配線105を介してコモンエージング配線202に接続される。
【0062】
その後、有機EL素子形成工程(ステップS1)で素子基板101上に形成された有機EL素子109を水分から守るために、封止する(ステップS2)。シール材112を有機EL素子109及びクロスオーバー部115を囲むように配置する。そして、素子基板101とは異なる他の封止基板を、素子基板101に対して対向配置する。そして、双方の基板を接着し、2枚の基板とシール材112により形成された気密空間内に乾燥窒素ガスと微量の酸素ガスを封入する。これにより、素子基板101、封止基板110、シール材112により形成され空間内に有機EL素子109とクロスオーバー部115とが配置された複数の有機ELパネル100が形成される。
【0063】
次に、素子基板101上に形成された複数の有機ELパネル100に寿命エージング処理と短絡エージング処理とを行う(ステップS3)。具体的には、まず、上述の複数の有機ELパネル100が形成された素子基板101を複数まとめてカセットに入れ、セグメントエージング配線201及びコモンエージング配線202にエージング処理用の電圧印加装置を接続する。
【0064】
その後、素子基板101をカセットに入れた状態で、素子基板101の周囲温度を室温以上、好ましくは80℃以上の高温に設定したオーブンに投入する。高温でエージング処理を行うことによって、短い時間で所望の輝度低下をさせることができる。エージング処理を行う際の温度は、有機EL素子が変質しない範囲で、できるだけ高い温度にすることが好ましい。
【0065】
短絡エージング処理では、実際の駆動電圧よりも大きい逆バイアス電圧を印加する。すなわち、セグメント電極102が−、コモン電極104が+となる電圧を印加する。このとき、セグメント電極102とコモン電極104との電圧が、通常の駆動時の電圧よりも大きくなるように設定する。逆バイアス電圧は、パルス波形として印加される。短絡エージング処理により、セグメント電極102とコモン電極104とが短絡した欠陥部を、破壊し除去する。
【0066】
寿命エージング処理では、より短い時間で所望の輝度低下をさせるために、エージング処理での各画素の輝度が、有機EL表示装置として定格の表示動作をしているときの輝度よりも高くなるように条件を設定する。例えば、有機EL表示装置としての輝度仕様が200cd/mであれば、400cd/mで発光するようにエージング電圧を印加する。有機EL表示装置としての輝度仕様に対して2倍の高輝度で発光させることによって、有機EL表示装置としての輝度仕様でエージング処理を行う場合に比べて、約半分の時間で寿命エージング処理工程が完了する。
【0067】
その後、マザー基板を有機ELパネル100ごとに切断する(ステップS4)。有機ELパネル100を囲むように、例えば、セグメントエージング配線201と接続されているセグメント引き回し配線103上及びコモン引き回し配線105とセグメントエージング配線201との間に切断線を設定し、切断線に沿ってマザー基板を切断して複数の有機ELパネル100に分離する。これにより、セグメント電極102とセグメントエージング配線201及びコモン電極104とコモンエージング配線202の接続が分断される。また、切断工程(ステップS4)において、従って、複数の有機ELパネル100の外側に形成されるセグメントエージング配線201及びコモンエージング配線202の部分は、切り落とされ廃棄される。
【0068】
その後、ドライバIC113の実装部を含む周辺領域を洗浄する(ステップS5)。洗浄工程では、超音波洗浄装置を用い、洗浄液中に浸漬させた有機ELパネル100をキャビテーションにより洗浄を行う。上記のように、封止領域は、洗浄液が直接接触することはない。このため、封止領域内に配置されているクロスオーバー部115にはキャビテーションの媒体となる洗浄液は接触しない。したがって、エージング処理に伴って発生したエージング接続配線116の劣化部分が、超音波洗浄を行うことにより剥離してしまうのを防止することができる。
【0069】
その後、実装工程(ステップS6)で、ドライバIC113を素子基板101上に実装し、入力信号線114に外部周辺回路を接続するフレキシブル基板を実装して有機EL表示装置を得る。
【0070】
なお、実装工程(ステップS6)の後に、ドライバIC113及びセグメント引き回し配線103、コモン引き回し配線105などを保護するために、有機ELパネル100における周辺領域に紫外線硬化型の樹脂を塗布することが好ましい。その際に、エージング接続配線116上にも紫外線硬化型の樹脂が塗布され、表面が保護される。
【0071】
実施の形態2.
本発明の実施の形態2に係る有機ELパネル100について図7〜図9を参照して説明する。図7は、本実施の形態に係る有機ELパネルのクロスオーバー部115の構成を示す図である。また、図8は図7のD−D断面図、図9は図7のE−E断面図である。本実施の形態において、実施の形態1と異なる点は、セグメントエージング配線201が、コモン電極104と同一の材料により形成されている点である。また、エージング接続配線116は、コモンエージング配線202と同一の材料により形成されている。なお、有機ELパネル100の基本的構成については、実施の形態1と同様であるため説明を省略する。
【0072】
図7に示すように、本実施の形態においては、コモン引き回し配線105の一部が、コモン電極104から延設されている。従って、コモン引き回し配線105の一部は、コモン電極104と同一の材料により形成されている。隔壁120は、コモン電極104の間に形成されるとともに、コモン引き回し配線105の間にも形成される。これにより、コモン電極104は分離形成される。また、図9に示すように、コモン電極104の材料と同時に形成されるコモン引き回し配線105もまた、隔壁120により分離形成される。コモン電極104及び引き回し配線105の分離をより確実なものとするため、隔壁120は逆テーパ構造を有している。すなわち、素子基板101から離れるにつれて、断面が広がるように形成される。
【0073】
また、コモン引き回し配線105のドライバIC113に接続される側は、ITOと金属膜の積層膜からなる。従って、コモン引き回し配線105は、コモン電極104と同一の材料からなる部分と、ITOと金属膜の積層膜からなる部分とからなる。コモン引き回し配線105のコモン電極104側とドライバIC側とは、絶縁層117に設けられた第4のコンタクトホール118dを介して接続されている。このコモン引き回し配線105のコモン電極104側とドライバIC側とが接続されている部分を接続部122とする。
【0074】
また、セグメントエージング配線201の一部は、コモン電極104と同一の材料により形成されている。図7に示すように、コモン電極104と同一の材料により形成されるセグメントエージング配線201の周囲には、リブ121が形成されている。リブ121は、隔壁120と同時に同一の材料により形成される。また、リブ121は、セグメントエージング配線201の分離を確実なものとするため逆テーパ構造を有している。図7において一点破線で示すように、実際には、コモン電極104の材料は、素子基板101の封止領域内の略全面に形成される。従って、隔壁120及びリブ121により導電材料が分離されて、コモン電極104、コモン引き回し配線105及びセグメントエージング配線201がそれぞれ形成される。
【0075】
また、図7及び図8に示すように、セグメントエージング配線201の一部は、シール材112の外側から封止領域まで、ITOと金属膜の積層膜により形成されている。そして、クロスオーバー部115においては、セグメントエージング配線201は、コモン電極104と同一の材料により形成される。従って、セグメントエージング配線201は、コモン電極104と同一の材料からなる部分と、ITOと金属膜の積層膜からなる部分とからなる。セグメントエージング配線201の異なる材料により形成される部分同士が接続される部分を接続部123とする。有機ELパネル100において、ドライバIC113が実装される辺に対向する辺側の接続部123においては、ITO等からなるセグメントエージング配線201は、封止領域の外側からシール材112の内側まで延設されている。そして、当該接続部123では、ITO等からなるセグメントエージング配線201は、その上に設けられた絶縁層117の第5のコンタクトホール118eを介して、コモン電極104材料からなるセグメントエージング配線201と接続される。
【0076】
一方、有機ELパネル100において、ドライバIC113が実装される辺側の接続部123においては、ドライバIC113から図7中下端のエージング接続配線116近傍まで、ITO等からなるセグメントエージング配線201が形成されている。そして、当該接続部123では、ITO等からなるセグメントエージング配線201は、その上に設けられた絶縁層117の第5のコンタクトホール118eを介して、コモン電極104材料からなるセグメントエージング配線201と接続される。
【0077】
図8及び図9に示すように、クロスオーバー部115においては、セグメントエージング配線201及びコモン引き回し配線105の下には、絶縁層117が設けられている。絶縁層117の下側には、エージング接続配線116が形成されている。本実施の形態においては、エージング接続配線116は、コモンエージング配線202から延設されている。エージング接続配線116は、絶縁層117を介してセグメントエージング配線201と交差する。このため、エージング接続配線116とセグメントエージング配線201とは接触しない。すなわち、セグメントエージング配線201は、複数のエージング接続配線116を乗り越えて形成されている。
【0078】
また、エージング接続配線116は、絶縁層117に設けられた第3のコンタクトホール118cを介して対応するコモン引き回し配線105と接続される。すなわち、エージング接続配線116は、クロスオーバー部115において、他のコモン引き回し配線105の下側をくぐって、対応するコモン引き回し配線105と電気的に接続される。例えば、図7において、一番上のエージング接続配線116は、左側のコモン引き回し配線105と第3のコンタクトホール118cを介して接続されている。また、上から2番目のエージング接続配線116は、左側のコモン引き回し配線105の下側をくぐって、真ん中のコモン引き回し配線105と第3のコンタクトホール118cを介して接続されている。
【0079】
なお、セグメントエージング配線201とセグメント電極102間、及び、コモンエージング配線202及びコモン電極104間の接続は、マザー基板を個々の有機ELパネル100に切断する工程において、分断される。すなわち、マザー基板上における切断工程後に廃棄される部分で、エージング接続配線116を介して全てのコモン引き回し配線105をコモンエージング配線202に電気的に接続する。つまり、最終的に得られる有機ELパネル100の外部で、全てのコモン引き回し配線105とコモンエージング配線202とが導通される。この切断工程後、ドライバIC113が素子基板101上に実装される。
【0080】
図9に示すように、クロスオーバー部115においては、素子基板101上にエージング接続配線116が形成されている。エージング接続配線116は、コモンエージング配線202から延設されており、封止領域の外側から封止領域まで形成されている。すなわち、本実施の形態においては、エージング接続配線116は、シール材112と交差するように設けられている。コモンエージング配線202及びエージング接続配線116は、ITO及び金属膜の積層膜からなる。また、上述したように、セグメントエージング配線201及びコモン引き回し配線105は、コモン電極104と同一のAlなどの導電材料からなる。
【0081】
クロスオーバー部115のエージング接続配線116上には、絶縁層117が設けられている。絶縁層117のエージング接続配線116に対応する位置には、第3のコンタクトホール118cが設けられている。なお、絶縁層117には、コモン引き回し配線105の接続部122に対応する第4のコンタクトホール118dが形成されている。また、絶縁層117には、セグメントエージング配線201の接続部123に対応する第5のコンタクトホール118eが形成されている。
【0082】
図7に示すように、絶縁層117の上において、コモン引き回し配線105間には、隔壁120が形成されている。また、セグメントエージング配線201の両側には、隔壁120と同一工程にて形成されたリブ121が設けられている。そして、絶縁層117、隔壁120及びリブ121の上には、Alなどの導電材料が設けられている。この隔壁120により、コモン引き回し配線105同士が接触しないように分離形成される。また、リブ121により、セグメントエージング配線201がコモン引き回し配線105と接触しないように分離形成される。
【0083】
上述したように、封止領域内のエージング接続配線116は、コモンエージング配線202から延設されている。また、エージング接続配線116は、第3のコンタクトホール118cを介して、コモン引き回し配線105と接続されている。従って、コモン引き回し配線105とコモンエージング配線202とは、第3のコンタクトホール118cを介して、エージング接続配線116により電気的に接続されている。すなわち、エージング接続配線116は、隣接する他のコモン引き回し配線105の下側をくぐって、コモン引き回し配線105とコモンエージング配線202とを電気的に接続する。また、コモン引き回し配線105の側方に配置されたセグメントエージング配線201は、エージング接続配線116を乗り越えるよう形成されている。
【0084】
また、クロスオーバー部115の反表示領域側にはシール材112が配置される。したがって、有機EL素子109のみならず、クロスオーバー部115も、素子基板101、封止基板110、シール材112により形成される封止領域内に配置される。このため、エージング接続配線116の第3のコンタクトホール118c、コモン引き回し配線105の第4のコンタクトホール118d及びセグメントエージング配線201の第5のコンタクトホール118eもまた封止領域内に配置される。また、エージング接続配線116も、封止領域内に形成される。
【0085】
エージング接続配線116に対応する第3のコンタクトホール118c、すなわち、コモン引き回し配線105とエージング接続配線116との界面では特に、エージング処理を行うことにより発生するジュール熱によりエージング接続配線116が変形したり、その膜質が劣化してしまう。このため、従来は、マザー基板を切断した後に行う周辺領域の超音波洗浄により、コモン電極104の材料からなるコモン引き出し配線105が剥がれ落ちやすかった。
【0086】
しかしながら、本発明によれば、クロスオーバー部115は封止領域内に配置されている。このため、クロスオーバー部115には直接洗浄液が接触することはない。従って、クロスオーバー部115には、洗浄液の泡がはじける時の衝撃波(キャビテーション)を伝播する媒体(洗浄液)が存在しないこととなる。これにより、当該劣化部分のコモン電極104材料が外れてしまうのを防止することができる。また、これに起因する不良パネルの発生を抑制することができる。
【0087】
また、実施の形態1においては、コモン電極104の本数をNとすると、コモン電極104とコモン引き回し配線105とのコンタクトホールがN個、エージング接続配線116とコモンエージング端子203とのコンタクトホールがN個、エージング接続配線116とコモン引き回し配線105とのコンタクトホールがN個、合計3N個のコンタクトホールが封止領域内に形成される。しかしながら、実施の形態2によれば、エージング接続配線116とコモンエージング配線202とのコンタクトホールを省略でき、代わりにセグメントエージング配線201の接続部123に第5のコンタクトホール118eを2個設ければよい。このため、実施の形態1においては3N個必要だったコンタクトホールを2N+2個に減少させることができる。これにより、コンタクトホールに置ける不具合の発生を低減させることができる。
【0088】
実施の形態3.
本発明の実施の形態3に係る有機ELパネル100について図10〜図12を参照して説明する。図10は、本実施の形態に係る有機ELパネルのクロスオーバー部115の構成を示す図である。また、図11は図10のF−F断面図、図12は図10のG−G断面図である。本実施の形態において、実施の形態1と異なる点は、エージング接続配線116とコモン電極104とを直結している点である。なお、有機ELパネル100の基本的構成については、実施の形態1と同様であるため説明を省略する。
【0089】
図10に示すように、本実施の形態においては、実施の形態1と同様にエージング接続配線116は、コモン電極104と同一の材料により形成されている。また、隔壁120は、コモン電極104の間に形成されるとともに、エージング接続配線116の間にも形成される。すなわち、隔壁120は、表示領域からクロスオーバー部115まで延在している。
【0090】
また、図11に示すように、クロスオーバー部115においては、絶縁層117がセグメントエージング配線201を覆うように形成されている。図12に示すように、エージング接続配線116は、絶縁層117を介してセグメントエージング配線201と交差する。このため、エージング接続配線116とセグメントエージング配線201とは接触しない。また、コモンエージング配線202には、エージング接続端子203が形成されている。エージング接続配線116は、対応するエージング接続端子203と接続されている。従って、エージング接続配線116は、クロスオーバー部115において、セグメントエージング配線201及び他のコモン引き回し配線105を乗り越えて、コモン引き回し配線105と対応するエージング接続端子203とを電気的に接続する。例えば、図10において、上から2番目のエージング接続配線116は、左端のコモン引き回し配線105とセグメントエージング配線201を乗り越えて、左から2番目のコモン引き回し配線105と上から2番目のエージング接続端子203とを接続する。
【0091】
なお、上述した実施の形態と同様に、セグメントエージング配線201とセグメント電極102間、及び、コモンエージング配線202及びコモン電極104間の接続は、マザー基板を個々の有機ELパネル100に切断する工程において、分断される。すなわち、マザー基板上における切断工程後に廃棄される部分で、エージング接続配線116を介して全てのコモン引き回し配線105をコモンエージング配線202に電気的に接続する。つまり、最終的に得られる有機ELパネル100の外部で、全てのコモン引き回し配線105とコモンエージング配線202とが導通される。この切断工程後、ドライバIC113が素子基板101上に実装される。
【0092】
図12に示すように、素子基板101上にコモン引き回し配線105、コモンエージング配線202、エージング接続端子203、セグメントエージング配線201が形成されている。コモンエージング配線202は、封止領域の外側から封止領域内まで延設されている。すなわち、コモンエージング配線202は、シール材112と交差するように設けられている。また、コモンエージング配線の一部にはエージング接続端子203が設けられている。セグメントエージング配線201、コモンエージング配線202、コモン引き回し配線105及びエージング接続端子203は、低抵抗化のためITO及び金属膜の積層膜からなる。
【0093】
クロスオーバー部115のコモン引き回し配線105、セグメントエージング配線201及びエージング接続端子203上には、絶縁層117が設けられている。絶縁層117のコモン引き回し配線105の端部に対応する位置には、コモン電極104とコモン引き回し配線105とを接続するための第6のコンタクトホール118fが形成されている。第6のコンタクトホール118fにより、外部から入力信号線114を介して入力される表示信号が、コモン引き回し配線105を介してコモン電極104に供給される。第6のコンタクトホール118fは、有機ELパネル100の信頼性を向上させるため、複数のコンタクトホールからなる場合もある。例えば、第6のコンタクトホール118fとして、4つのコンタクトホールがマトリクス状に設けられていてもよい。
【0094】
また、第6のコンタクトホール118fにおいて、エージング接続配線116とコモン引き回し配線105とが接続されている。すなわち、エージング接続配線116とコモン引き回し配線105とを接続するためのコンタクトホールと、コモン電極104とコモン引き回し配線105と接続するためのコンタクトホールとが兼用されている。つまり、第6のコンタクトホール118fが形成されている部分において、エージング接続配線116とコモン電極104とが接続されている。これにより、各コモン電極104にコモンエージング配線202からエージング電圧を供給することができる。また、絶縁層117には、エージング接続端子203に対応する位置に、第2のコンタクトホール118bが形成されている。第2のコンタクトホール118bにおいて、エージング接続配線116とエージング接続端子203とが接続される。
【0095】
上述したように、エージング接続配線116間には、表示領域内にコモン電極104を分離形成するために形成された隔壁120が延設されている。隔壁120は、コモン電極104及びエージング接続配線116の分離をより確実なものとするため、逆テーパ構造を有している。また、絶縁層117及び隔壁120の上には、絶縁層117を覆うようにコモン電極104及びエージング接続配線116となるAlなどの導電材料が設けられている。この隔壁120より、隣接するエージング接続配線116同士、隣接するコモン電極104同士が接触しないように、分離形成される。
【0096】
コモンエージング配線202は、封止領域内のエージング接続配線116と第2のコンタクトホール118bを介して接続されている。そして、コモン引き回し配線105は、封止領域内のエージング接続配線116と第6のコンタクトホール118fを介して接続されている。従って、コモン引き回し配線105とコモンエージング配線202とは、第2のコンタクトホール118b及び第6のコンタクトホール118fを介して、エージング接続配線116により電気的に接続されている。すなわち、エージング接続配線116は、側方に配置されたセグメントエージング配線201及び隣接する他のコモン引き回し配線105を乗り越えて、コモン引き回し配線105とコモンエージング配線202とを電気的に接続する。
【0097】
また、クロスオーバー部115の反表示領域側にはシール材112が配置される。したがって、有機EL素子109のみならず、クロスオーバー部115も、素子基板101、封止基板110、シール材112により形成される封止領域内に配置される。このため、第6のコンタクトホール118f、第2のコンタクトホール118bも封止領域内に配置される。また、エージング接続配線116も、封止領域内に形成される。
【0098】
第6のコンタクトホール118f部分、すなわち、コモン引き回し配線105とエージング接続配線116との界面では特に、エージング処理を行うことにより発生するジュール熱によりエージング接続配線116が変形したり、その膜質が劣化してしまう。このため、従来は、マザー基板を切断した後に行う接続端子部の超音波洗浄により、コモン電極104の材料からなるコモン引き出し配線105が剥がれ落ちやすかった。
【0099】
しかしながら、本発明によれば、クロスオーバー部115は封止領域内に配置されている。このため、クロスオーバー部115には直接洗浄液が接触することはない。これにより、当該劣化部分のコモン電極104材料が外れてしまうのを防止することができる。また、これに起因する不良パネルの発生を抑制することができる。
【0100】
また、実施の形態3によれば、エージング接続配線116とコモン電極104とを直結している。よって、エージング接続配線116とコモン引き回し配線105のコンタクトホールをなくすことができる。このため、実施の形態1においては3N個必要だったコンタクトホールを2N個に減少させることができる。これにより、コンタクトホールに置ける不具合の発生を低減させることができる。また、実施の形態1と異なり、図10に示すように、有機ELパネル100の左右方向において、コモン引き回し配線105間にコンタクトホールを形成する必要がない。このため、封止領域内の表示領域以外の額縁領域の幅を狭くすることができる。
【0101】
実施の形態4.
本発明の実施の形態4に係る有機ELパネル100について図13〜図15を参照して説明する。図13は、本実施の形態に係る有機ELパネルのクロスオーバー部115の構成を示す図である。また、図14は図13のH−H断面図、図15は図13のI−I断面図である。本実施の形態において、実施の形態1と異なる点は、エージング接続配線116とコモン電極104とを直結させた点である。また、さらにセグメントエージング配線201はコモン電極104と同一の材料により形成されており、エージング接続端子103はコモンエージング配線202と同一の材料により形成されている。なお、有機ELパネル100の基本的構成については、実施の形態1と同様であるため説明を省略する。
【0102】
図13に示すように、本実施の形態においては、実施の形態1と同様にエージング接続配線116は、コモン電極104と同一の材料により形成されている。また、隔壁120は、コモン電極104の間に形成されるとともに、エージング接続配線116の間にも形成される。すなわち、隔壁120は、表示領域からクロスオーバー部115まで延在している。コモン電極104及びエージング接続配線116の分離をより確実なものとするため、隔壁120は逆テーパ構造を有している。すなわち、素子基板101から離れるにつれて、断面が広がるように形成される。
【0103】
また、セグメントエージング配線201の一部は、コモン電極104と同一の材料により形成されている。コモン電極104と同一の材料により形成されるセグメントエージング配線201の周囲には、リブ121が形成されている。リブ121は、隔壁120と同時に形成される。また、リブ121は、セグメントエージング配線201の分離を確実なものとするため、逆テーパ構造を有している。図13において一点破線で示すように、実際には、コモン電極104の材料は、素子基板101の封止領域内の略全面に形成される。従って、隔壁120及びリブ121により導電材料が分離されて、コモン電極104、エージング接続配線116及びセグメントエージング配線201がそれぞれ形成される。
【0104】
また、図13及び図14に示すように、セグメントエージング配線201は、シール材112の外側から封止領域まで、ITOと金属膜からなる積層膜により形成されている。そして、クロスオーバー部115においては、セグメントエージング配線201は、コモン電極104と同一の材料により形成される。従って、セグメントエージング配線201は、コモン電極104と同一の材料からなる部分と、ITOと金属膜の積層膜からなる部分とからなる。セグメントエージング配線201の異なる材料により形成される部分が接続される部分を接続部123とする。有機ELパネル100において、ドライバIC113が実装される辺に対向する辺側の接続部123においては、ITO等からなるセグメントエージング配線201は、封止領域の外側からシール材112の内側まで延設されている。そして、当該接続部123では、ITO等からなるセグメントエージング配線201は、その上に設けられた絶縁層117の第5のコンタクトホール118eを介して、コモン電極104材料からなるセグメントエージング配線201と接続される。
【0105】
一方、有機ELパネル100において、ドライバIC113が実装させる辺に側の接続部123においては、ドライバIC113から図7中下端のエージング接続配線116近傍まで、ITO等からなるセグメントエージング配線201が形成されている。そして、当該接続部123では、ITO等からなるセグメントエージング配線201は、その上に設けられた絶縁層117の第5のコンタクトホール118eを介して、コモン電極104材料からなるセグメントエージング配線201と接続される。
【0106】
図13及び図14に示すように、クロスオーバー部115においては、セグメントエージング配線201の下には、絶縁層117が設けられている。絶縁層117の下には、エージング接続端子203が形成されている。エージング接続端子203は、エージング接続配線116に対応して、コモンエージング配線202から延設されている。エージング接続端子203は、絶縁層117を介してセグメントエージング配線201と交差する。このため、エージング接続端子203とセグメントエージング配線201とは接触しない。すなわち、セグメントエージング配線201は、複数のエージング接続端子203を乗り越えて形成されている。
【0107】
また、図13及び図15に示すように、絶縁層117には、エージング接続端子203に対応して第2のコンタクトホール118bが形成されている。エージング接続配線116は、対応するエージング接続端子203と第2のコンタクトホール118bを介しそれぞれ接続されている。エージング接続配線116は、絶縁層117を介してコモン引き回し配線105と交差する。このため、エージング接続配線116とコモン引き回し配線105と接触しない。すなわち、エージング接続配線116は、他のコモン引き回し配線105を乗り越えて形成されている。
【0108】
なお、上述したようにセグメントエージング配線201とセグメント電極102間、及び、コモンエージング配線202及びコモン電極104間の接続は、マザー基板を個々の有機ELパネル100に切断する工程において、分断される。すなわち、マザー基板上における切断工程後に廃棄される部分で、エージング接続配線116を介して全てのコモン引き回し配線105をコモンエージング配線202に電気的に接続する。つまり、最終的に得られる有機ELパネル100の外部で、全てのコモン引き回し配線105とコモンエージング配線202とが導通される。この切断工程後、ドライバIC113が素子基板101上に実装される。
【0109】
図15に示すように、素子基板101上には、コモンエージング配線202、エージング接続端子203及びコモン引き回し配線105が形成されている。エージング接続端子203は、コモンエージング配線202から延設されており、封止領域の外側から封止領域まで形成されている。すなわち、本実施の形態においては、エージング接続端子203は、シール材112と交差するように設けられている。コモンエージング配線202、エージング接続端子203及びコモン引き回し配線105は、ITO及び金属膜の積層膜からなる。なお、上述したように、セグメントエージング配線201及びエージング接続配線116は、コモン電極104と同一のAlなどの導電材料からなる。
【0110】
クロスオーバー部115において、エージング接続端子203、コモン引き回し配線105の上には、絶縁層117が設けられている。絶縁層117のエージング接続端子203に対応する位置には、第2のコンタクトホール118bが形成されている。絶縁層117の上において、エージング接続配線116の間には、隔壁120が形成されている。また、隔壁120は、表示領域内のコモン電極104の間にも形成される。すなわち、隔壁120は、表示領域からクロスオーバー部115まで延設されている。セグメントエージング配線201の周囲には、隔壁120と同一の工程にて形成されたリブ121が設けられている。
【0111】
また、絶縁層117、隔壁120及びリブ121の上には、Alなどの導電材料が設けられている。図10において一点破線で示すように、実際には、コモン電極104の材料は、素子基板101の封止領域内の略全面に形成される。従って、隔壁120及びリブ121により導電材料が分離されて、コモン電極104、エージング接続配線116及びセグメントエージング配線201がそれぞれ形成される。
【0112】
また、絶縁層117のコモン引き回し配線105の端部に対応する位置には、コモン電極104とコモン引き回し配線105とを接続するための第6のコンタクトホール118fが形成されている。第6のコンタクトホール118fにより、外部から入力信号線114入力される表示信号が、コモン引き回し配線105を介してコモン電極104に供給される。第6のコンタクトホール118fは、有機ELパネル100の信頼性を向上させるため、複数のコンタクトホールからなる場合もある。例えば、第6のコンタクトホール118fとして、4つのコンタクトホールがマトリクス状に設けられていてもよい。
【0113】
第6のコンタクトホール118fにおいて、エージング接続配線116とコモン引き回し配線105とが接続されている。すなわち、エージング接続配線116とコモン引き回し配線105とを接続するためのコンタクトホールと、コモン電極104とコモン引き回し配線105と接続するためのコンタクトホールとが兼用されている。つまり、第6のコンタクトホール118fが形成されている部分において、エージング接続配線116とコモン電極104とが接続されている。これにより、各コモン電極104にコモンエージング配線202からエージング電圧を供給することができる。また、封止領域内のエージング接続端子203は、セグメントエージング配線201の下側をくぐって、エージング接続配線116に接続される。また、エージング接続配線116は、他のコモン引き回し配線105を乗り越えて、対応するコモン引き回し配線105に接続される。
【0114】
また、クロスオーバー部115の反表示領域側にはシール材112が配置される。したがって、有機EL素子109のみならず、クロスオーバー部115も、素子基板101、封止基板110、シール材112により形成される封止領域内に配置される。このため、エージング接続配線116の第2のコンタクトホール118b及び第6のコンタクトホール118fもまた封止領域内に配置される。また、エージング接続配線116も、封止領域内に形成される。
【0115】
エージング接続配線116に対応する第6のコンタクトホール118f、すなわち、コモン引き回し配線105とエージング接続配線116との界面では特に、エージング処理を行うことにより発生するジュール熱によりエージング接続配線116が変形したり、その膜質が劣化してしまう。このため、従来は、マザー基板を切断した後に行う接続端子部の超音波洗浄により、コモン電極104の材料からなるコモン引き出し配線105が剥がれ落ちやすかった。
【0116】
しかしながら、本発明によれば、クロスオーバー部115は封止領域内に配置されている。このため、クロスオーバー部115には直接洗浄液が接触することはない。従って、クロスオーバー部115には、洗浄液の泡がはじける時の衝撃波(キャビテーション)を伝播する媒体(洗浄液)が存在しないこととなる。これにより、当該劣化部分のコモン電極104材料が外れてしまうのを防止することができる。また、これに起因する不良パネルの発生を抑制することができる。
【0117】
また、実施の形態4によれば、エージング接続配線116とコモン電極104とを直結させたので、コンタクトホールの数を2N個とすることができる。そして、セグメントエージング配線201の接続部123に第5のコンタクトホール118eを2個設ける。よって、実施の形態1においては3N個必要だったコンタクトホールを2N+2個に減少させることができる。これにより、コンタクトホールに置ける不具合の発生を低減させることができる。また、実施の形態1と異なり、図10に示すように、有機ELパネル100の左右方向において、コモン引き回し配線105間にコンタクトホールを形成する必要がない。このため、封止領域内の表示領域以外の額縁領域の幅を狭くすることができる。
【0118】
以上説明したように、本実施の形態に係る有機ELパネル100では、エージング工程において発生したエージング接続配線116の劣化部の剥離を抑制することができる。
【0119】
なお、本実施の形態では、コモン電極としての陰極配線についてクロスオーバー部115を設けた場合について説明したが、セグメント電極を個別に有機ELパネル100の外に引き出すための配線を形成することが難しい場合には、セグメント電極についてクロスオーバー部を設けることができる。すなわち、セグメント電極について本発明を適用することもできる。また、本発明は、基板上にドライバICがCOG実装される場合に限らず、TCPなど他の実装技術により駆動回路が実装される場合にも適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0120】
【図1】実施の形態1に係る有機ELパネルの構成を示す平面図である。
【図2】実施の形態1に係る有機ELパネルの構成を示す断面図である。
【図3】実施の形態1に係る有機ELパネル用基板の構成を示す平面図である。
【図4】実施の形態1に係る有機ELパネル用基板に設けられたクロスオーバー部の構成を示す平面図である。
【図5】図4のC−C断面図である。
【図6】実施の形態1に係る有機ELパネルの製造方法を説明するためのフロー図である。
【図7】実施の形態2に係る有機ELパネル用基板に設けられたクロスオーバー部の構成を示す平面図である。
【図8】図7のA−A断面図である。
【図9】図7のB−B断面図である。
【図10】実施の形態3に係る有機ELパネル用基板に設けられたクロスオーバー部の構成を示す平面図である。
【図11】図10のA−A断面図である。
【図12】図10のB−B断面図である。
【図13】実施の形態4に係る有機ELパネル用基板に設けられたクロスオーバー部の構成を示す平面図である。
【図14】図13のA−A断面図である。
【図15】図13のB−B断面図である。
【図16】従来の有機ELパネルの構成を示す平面図である。
【図17】従来の有機ELパネル用基板の構成を示す平面図である。
【図18】従来の有機ELパネル用基板に設けられたクロスオーバー部の構成を示す平面図である。
【図19】従来の有機ELパネル用基板に設けられたクロスオーバー部の構成を示す断面図である。
【符号の説明】
【0121】
100 有機ELパネル
101 素子基板
102 セグメント電極
103 セグメント引き回し配線
104 コモン電極
105 コモン引き回し配線
106 絶縁層
107 開口部
108 有機EL層
109 有機EL素子
110 封止基板
111 捕水材
112 シール材
113 ドライバIC
114 入力信号線
115 クロスオーバー部
116 エージング接続配線
117 絶縁層
118a、118b、118c、118d、118e、118f コンタクトホール
119 壁構造体
120 隔壁
121 リブ
122、123 接続部
200 有機ELパネル用基板
201 セグメントエージング配線
202 コモンエージング配線
203 エージング接続端子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の電極と、前記第1の電極に対向する第2の電極と、前記第1の電極と前記第2の電極との間に配置された発光層とを有する有機EL素子が形成された素子基板と、
前記有機EL素子を囲むように設けられたシール材と、
前記シール材により前記素子基板に接着され、前記有機EL素子を封止する封止基板と、
を備える有機ELパネルであって、
前記素子基板、前記封止基板及びシール材とで形成される封止領域内に配置されるクロスオーバー部を備え、
前記クロスオーバー部は、
前記第1の電極と接続された第1の引き回し配線と、
前記第1の引き回し配線の側方に配置され、前記第2の電極に有機ELパネルの外部からエージング電圧を供給するエージング配線と、
前記第1の引き回し配線及び前記エージング配線の上に設けられた絶縁層と、
前記封止領域内に配置され、前記絶縁層に設けられたコンタクトホールと、
前記絶縁層上に設けられ、前記コンタクトホールを介して前記第1の引き回し配線と接続された導電層と、
を有する有機ELパネル。
【請求項2】
前記エージング配線と前記第1の電極とは、前記絶縁層により分離されている請求項1に記載の有機ELパネル。
【請求項3】
前記導電層は、複数の第1の引き回し配線のそれぞれに対応して分離形成されている請求項1又は2に記載の有機ELパネル。
【請求項4】
前記導電層は、前記第2の電極と同一材料で形成されている請求項1〜3のいずれか1項に記載の有機ELパネル。
【請求項5】
前記素子基板の一辺側に実装された駆動回路をさらに備え、
前記第1の電極は、前記第1の引き回し配線を介して前記駆動回路に接続され、
前記第2の電極は、第2の引き回し配線を介して前記駆動回路に接続されている請求項1〜4のいずれか1項に記載の有機ELパネル。
【請求項6】
素子基板上に、
第1の電極と第2の電極との間に配置された発光層を有する有機EL素子と、
前記第1の電極に接続された第1の引き回し配線と、
前記第2の電極に接続された第2の引き回し配線と、
前記第1の引き回し配線にエージング接続配線を介して接続された第1のエージング配線と、
前記第2の引き回し配線に接続された第2のエージング配線と、
前記エージング接続配線と前記第2のエージング配線が絶縁層を介して交差し、前記第1の引き回し配線と前記エージング接続配線とが前記絶縁層に設けられたコンタクトホールを介して接続されるクロスオーバー部とを形成し、
封止基板を前記素子基板の前記有機EL素子形成面側に対向配置し、前記有機EL素子、前記クロスオーバー部及び前記コンタクトホールが前記素子基板と前記封止基板とで形成される封止領域内に配置されるよう封止し、
前記第1のエージング配線及び前記第2のエージング配線にエージング電圧を印加してエージング処理を行い、
前記素子基板及び前記封止基板を切断して、前記第1のエージング配線と第1の電極及び前記第2のエージング配線と第2の電極との接続を分断し、
エージング処理後、洗浄処理を行う有機ELパネルの製造方法。
【請求項7】
第1の電極と、前記第1の電極に対向する第2の電極と、前記第1の電極と前記第2の電極との間に配置された発光層とを有する有機EL素子が形成された素子基板と、
前記有機EL素子を囲むように設けられたシール材と、
前記シール材により前記素子基板に接着され、前記有機EL素子を封止する封止基板と、
を備える有機ELパネルであって、
前記素子基板、前記封止基板及びシール材とで形成される封止領域内に配置されるクロスオーバー部を備え、
前記クロスオーバー部は、
前記第1の電極と接続された第1の引き回し配線と、
前記第1の引き回し配線の側方に配置され、前記第2の電極に有機ELパネルの外部からエージング電圧を供給するエージング配線と、
前記第1の引き回し配線及び前記エージング配線の下に設けられた絶縁層と、
前記封止領域内に配置され、前記絶縁層に設けられたコンタクトホールと、
前記絶縁層の下に設けられ、前記コンタクトホールを介して前記第1の引き回し配線と接続された導電層と、
を有する有機ELパネル。
【請求項8】
前記エージング配線の周囲には、リブが設けられ、
前記エージング配線と前記第1の電極とは、前記リブにより分離形成されている請求項7に記載の有機ELパネル。
【請求項9】
前記導電層は、複数の第1の引き回し配線のそれぞれに対応して形成されている請求項7又は8に記載の有機ELパネル。
【請求項10】
前記エージング配線は、前記第1の電極と同一材料で形成されている請求項7、8又は9に記載に記載の有機ELパネル。
【請求項11】
第1の電極と、前記第1の電極に対向する第2の電極と、前記第1の電極と前記第2の電極との間に配置された発光層とを有する有機EL素子が形成された素子基板と、
前記有機EL素子を囲むように設けられたシール材と、
前記シール材により前記素子基板に接着され、前記有機EL素子を封止する封止基板と、
を備える有機ELパネルであって、
前記素子基板、前記封止基板及びシール材とで形成される封止領域内に配置されるクロスオーバー部を備え、
前記クロスオーバー部は、
前記第1の電極と接続された第1の引き回し配線と、
前記第1の引き回し配線の側方に配置され、前記第2の電極に有機ELパネルの外部からエージング電圧を供給するエージング配線と、
前記第1の引き回し配線の下に設けられた絶縁層と、
前記封止領域内に配置され、前記絶縁層に設けられたコンタクトホールと、
前記絶縁層上に設けられ、前記コンタクトホールを介して前記第1の引き回し配線と接続された導電層と、
を有する有機ELパネル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2007−264583(P2007−264583A)
【公開日】平成19年10月11日(2007.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−152826(P2006−152826)
【出願日】平成18年5月31日(2006.5.31)
【出願人】(000103747)オプトレックス株式会社 (843)
【Fターム(参考)】