説明

有機EL素子とその製造方法及び有機EL素子のリペア方法

【課題】トップエミッション方式とボトムエミッション方式のいずれの有機EL素子においても実施可能で、かつ、封止後、大気中にてリペアを実施することができる有機EL素子とその製造方法及び有機EL素子のリペア方法を提供すること。
【解決手段】少なくとも、基材と、前記基材上に形成された第一電極層と、前記第一電極層上に形成された有機発光媒体層と、前記有機発光媒体層上に形成された第二電極層と、前記基材を封止する封止基材と、からなる有機EL素子であって、前記第二電極層は非晶質透明導電性酸化物層を含み、前記第二電極層上に光熱変換層が形成され、前記封止基材は前記光熱変換層が吸収する所定の波長について透過性をもつことを特徴とする有機EL素子としたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、テレビ、パソコンモニタ、携帯電話等の携帯端末などに使用されるフラットパネルディスプレイや、面発光光源、照明、発光型広告体などとして、幅広い用途が期待される有機EL素子及びそのリペア方法に関する。
【背景技術】
【0002】
有機EL素子は、広視野角、応答速度の速さ、低消費電力などの利点から、ブラウン管や液晶ディスプレイに替わるフラットパネルディスプレイとして期待されている。
【0003】
有機EL素子は、少なくともどちらか一方が透光性を有する二枚の電極層の間に、有機発光媒体層を挟持した構造であり、両電極間に電圧を印可し電流を流すことにより有機発光媒体層で発光が生じる自発光型の表示素子である。しかし、有機EL素子は電流注入型の発光素子であるために、例えば、厚みが0.1μm程度の有機発光層の中に、1μmの金属異物が存在すると、両電極で短絡してしまい、画素が光らなくなる滅点と呼ばれるパネル表示不良が発生する。
【0004】
このような問題を解決するために、異物などの欠陥部にレーザーを照射し、有機層や電極層、欠陥部分を除去する技術が報告されている(特許文献1、2、3)。しかし、これらの文献では、有機EL素子を作製した後に、有機層や電極層を除去するため、レーザーの照射により異物と共に除去された有機物や電極材料が周囲に飛散するといった問題や、電極層に穴が開いた状態となるため水分の浸入経路となり、ダークスポットと呼ばれる新たな表示欠陥を生み出すといった問題があった。
【0005】
また、近年では、上部電極を透明にしたトップエミッション型の有機EL素子が開発されており、その特徴としては、上部電極がITOなどの透明電極であったり、封止構造がパッシベーション膜/接着材/ガラスを、べたで積層した構造が用いられているのが一般的である(特許文献4)。このような構造を有するトップエミッション素子をレーザー照射によりリペアすると、接着材がべた形成されているために、レーザーで除去された材料の逃げ道がないだけでなく、レーザー照射時の熱により、接着剤の剥離が生じ、封止性能が大幅に低下するといった問題があった。
【0006】
上述した滅点と呼ばれる欠陥は素子を点灯することでしか発見できないため、滅点検査には点灯用治具が必要となる。大気中の水蒸気による有機EL素子劣化を回避するために真空中や、窒素パージされた空間内に検査及びリペア工程を組み込むという手段が考えられるが、この場合非常に複雑な装置が必要となり大幅なコスト増につながるため、有機EL素子を封止し、大気中にて実施できる簡便なリペア工程・リペア装置であることが望ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平10−137953号公報
【特許文献2】特開2000−16195号公報
【特許文献3】特開2003−217849号公報
【特許文献4】特開2002−231443号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、トップエミッション方式とボトムエミッション方式のいずれの有機EL素子においても実施可能で、かつ、封止後、大気中にてリペアを実施することができる有機EL素子とその製造方法及び有機EL素子のリペア方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の請求項1に係る発明は、少なくとも、基材と、前記基材上に形成された第一電極層と、前記第一電極層上に形成された有機発光媒体層と、前記有機発光媒体層上に形成された第二電極層と、前記基材を封止する封止基材と、からなる有機EL素子であって、前記第一電極層は非晶質透明導電性酸化物層を含み、前記基材と前記第一電極層の間に光熱変換層が形成され、前記基板は前記光熱変換層が吸収する所定の波長について透過性をもつことを特徴とする有機EL素子である。
【0010】
本発明の請求項2に係る発明は、少なくとも、基材と、前記基材上に形成された第一電極層と、前記第一電極層上に形成された有機発光媒体層と、前記有機発光媒体層上に形成された第二電極層と、前記基材を封止する封止基材と、からなる有機EL素子であって、前記第二電極層は非晶質透明導電性酸化物層を含み、前記第二電極層上に光熱変換層が形成され、前記封止基材は前記光熱変換層が吸収する所定の波長について透過性をもつことを特徴とする有機EL素子である。
【0011】
本発明の請求項3に係る発明は、前記基材又は前記封止基材にはカラーフィルター層又は色変換層が形成されていることを特徴とする請求項1又は2のいずれかに記載の有機EL素子である。
【0012】
本発明の請求項4に係る発明は、前記光熱変換層の光透過率が50%以上であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の有機EL素子である。
【0013】
本発明の請求項5に係る発明は、前記光熱変換層の厚さが0.1μm以上10μm以下であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の有機EL素子である。
【0014】
本発明の請求項6に係る発明は、請求項1乃至5に記載の有機EL素子のリペア方法であって、前記光熱変換層が形成された側から前記第一電極層と前記第二電極層との間に含まれる異物に向かってレーザーを照射して前記光熱変換層に熱を生じさせ、前記光熱変換層の熱により前記第一電極層又は前記第二電極層に含まれる非晶質透明導電性酸化物層を結晶化させることを特徴とする有機EL素子のリペア方法である。
【0015】
本発明の請求項7に係る発明は、前記レーザーは、赤外領域又は近赤外領域の波長を有することを特徴とする請求項7に記載の有機EL素子のリペア方法である。
【0016】
本発明の請求項8に係る発明は、基材を準備する工程と、前記基材上に第一電極層を形成する工程と、前記第一電極層上に有機発光媒体層を形成する工程と、前記有機発光媒体層上に第二電極層を形成する工程と、前記基材を封止基材で封止する工程と、前記第一電極層と前記第二電極層との間に含まれる異物を検査する工程と、前記異物に対してレーザーを照射してリペアする工程と、により製造される有機EL素子の製造方法であって、前記基材を準備する工程は、前記基材上に光熱変換層を形成する工程、を含み、前記基材上に第一電極層を形成する工程は、前記光熱変換層上に非晶質透明導電性酸化物層を形成する工程、であることを特徴とする有機EL素子の製造方法である。
【0017】
本発明の請求項9に係る発明は、基材を準備する工程と、前記基材上に第一電極層を形成する工程と、前記第一電極層上に有機発光媒体層を形成する工程と、前記有機発光媒体層上に第二電極層を形成する工程と、前記基材を封止基材で封止する工程と、前記第一電極層と前記第二電極層との間に含まれる異物を検査する工程と、前記異物に対してレーザーを照射してリペアする工程と、により製造される有機EL素子の製造方法であって、前記有機発光媒体層上に第二電極層を形成する工程は、前記有機発光媒体層上に陰極層と、安定層と、非晶質透明導電性酸化物層をこの順に形成する工程と、前記非晶質透明導電性酸化物層上に光熱変換層を形成する工程と、からなることを特徴とする有機EL素子の製造方法である。
【発明の効果】
【0018】
以上より、本発明によれば、非晶質の透明導電性酸化物層を含む第一電極層と基材との間又は非晶質の透明導電性酸化物層を含む第二電極層上に光熱変換層が形成されているため、封止後であっても、異物に向かってレーザーを照射して異物上の光熱変換層を加熱することにより有機EL素子をリペアすることができる。
【0019】
また、光熱変換層は第一電極層側若しくは第二電極層側のいずれの側にも形成することができるため、トップエミッション型若しくはボトムエミッション型のいずれの有機EL素子でも封止後にリペアすることができる。
【0020】
さらに、光取り出し側でない基材及び封止基材の両方を透明とし、光取り出し側でない第一電極層と基材との間又は第二電極層上に光熱変換層を形成することで、光熱変換層による光取り出し効率の低下が無く、光取り出し側の基材及び封止基材にカラーフィルター層や色変換層を形成しても封止後にリペアすることができる。
【0021】
また、本発明によれば、封止後の有機EL素子中の異物に向かってレーザーを照射して光熱変換層に熱を生じさせ、その熱により第一電極層又は第二電極層に含まれる非晶質透明導電性酸化物層を結晶化させ、結晶化した透明導電性酸化物層の体積が収縮することにより周囲の非晶質透明導電性酸化物層と隔絶されリペアすることができるため、リペアによって有機EL素子を構成する材料がリペア部の周囲に飛散することがない。
【0022】
また、本発明によれば、封止後にリペアをするため、リペア工程を大気下で行なうことができ、有機EL素子の製造のリペア工程、リペア装置に由来するコストの増大を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の有機EL素子及びリペア方法の一例を示す概略断面図。
【図2】トップエミッション方式の場合における本発明の有機EL素子及びリペア方法を示す概略断面図。
【図3】ボトムエミッション方式の場合における本発明の有機EL素子及びリペア方法を示す概略断面図。
【図4】本発明の有機EL素子のリペア工程を説明する概略断面図。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の有機EL素子(以下有機EL素子)の一例を、図1〜図4を参照しながら、説明する。なお、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではない。
【0025】
本発明により製造される有機EL素子は、電極基材10を用いる。電極基材10としては、ガラスや石英、ポリエーテルサルフォン、ポリカーボネート等のプラスチックフィルムに、後述する第一電極層11が少なくとも形成され、透明でも不透明でも良いが、本発明では封止した後にレーザーリペアを行なうため、光熱変換層が吸収する波長のレーザー21を透過する様な材料であることが好ましい。
なお、ここでいう透明とは可視光である波長領域400nm以上700nm以下において透過率が70%以上であることをいう。
【0026】
以下、薄膜トランジスタ(TFT)が形成された駆動用基板を用いた場合を説明する。
【0027】
薄膜トランジスタとしては、公知の薄膜トランジスタを用いることができる。具体的には、主として、ソース/ドレイン領域及びチャネル領域が形成される活性層、ゲート絶縁膜及びゲート電極から構成される薄膜トランジスタが挙げられる。薄膜トランジスタの構造としては、特に限定されるものではなく、例えば、スタガ型、逆スタガ型、トップゲート型、ボトムゲート型、コプレーナ型等が挙げられる。
【0028】
活性層は、特に限定されるものではなく、例えば、非晶質シリコン、多結晶シリコン、微結晶シリコン、セレン化カドミウム等の無機半導体材料又はチオフエンオリゴマー、ポリ(p−フェリレンビニレン)等の有機半導体材料により形成することができる。これらの活性層は、例えば、アモルファスシリコンをプラズマCVD法により積層し、イオンドーピングする方法、SiHガスを用いてLPCVD法によりアモルファスシリコンを形成し、固相成長法によりアモルファスシリコンを結晶化してポリシリコンを得た後、イオン打ち込み法によりイオンドーピングする方法、Siガスを用いてLPCVD法により、また、SiHガスを用いてPECVD法によりアモルファスシリコンを形成し、エキシマレーザー等のレーザーによりアニールし、アモルファスシリコンを結晶化してポリシリコンを得た後、イオンドーピング法によりイオンドーピングする方法(低温プロセス)、減圧CVD法又はLPCVD法によりポリシリコンを積層し、1000℃以上で熱酸化してゲート絶縁膜を形成し、その上にnポリシリコンのゲート電極を形成し、その後、イオン打ち込み法によりイオンドーピングする方法(高温プロセス)等が挙げられる。
【0029】
ゲート絶縁膜としては、通常、ゲート絶縁膜として使用されているものを用いることができ、例えば、PECVD法、LPCVD法等により形成されたSiO;ポリシリコン膜を熱酸化して得られるSiO等を用いることができる。
【0030】
ゲート電極としては、通常、ゲート電極として使用されているものを用いることができ、例えば、アルミ、銅等の金属、チタン、タンタル、タングステン等の高融点金属、ポリシリコン、高融点金属のシリサイド、ポリサイド等が挙げられる。また、薄膜トランジスタは、シングルゲート構造、ダブルゲート構造、ゲート電極が3つ以上のマルチゲート構造であってもよい。また、LDD構造、オフセット構造を有していてもよい。さらに、1つの画素中に2つ以上の薄膜トランジスタが配置されていてもよい。
【0031】
有機ELディスプレイは、薄膜トランジスタが有機ELディスプレイのスイッチング素子として機能するように接続し、トランジスタのドレイン電極と有機ELディスプレイの第一電極11が電気的に接続されている。薄膜トランジスタとドレイン電極と有機ELディスプレイの第一電極層11との接続は、平坦化膜を貫通するコンタクトホール内に形成された接続配線を介して行われる。
【0032】
また、第一電極層11は隔壁によって区画され、各画素に対応した画素電極となる。第一電極層11の材料としては、ITOなどの仕事関数の高い材料を選択することが好ましく、本発明において、ボトムエミッション方式の場合には透明であることが必要となり、ITO(インジウムスズ複合酸化物)やインジウム亜鉛複合酸化物、亜鉛アルミニウム複合酸化物などの金属複合酸化物等の透明な導電性酸化物を非晶質層として形成することが好ましい。また、トップエミッション方式の場合は、上述の透明導電性酸化物や、金、白金などの金属材料や、これら金属酸化物や金属材料の微粒子をエポキシ樹脂やアクリル樹脂などに分散した微粒子分散膜を、単層もしくは積層したものをいずれも使用することができる。また反射性が必要な場合には、AgやAlのような金属材料の上にITO膜等の反射層を積層すればよいが、有機EL素子を透明にする場合には反射層は無くても良い。第一電極層11の膜厚は、有機EL素子構成により最適値が異なるが、単層、積層にかかわらず、100Å以上10000Å以下であり、より好ましくは、3000Å以下である。
【0033】
第一電極層11の形成方法としては、抵抗加熱蒸着法、電子ビーム蒸着法、反応性蒸着法、イオンプレーティング法、スパッタリング法などの乾式成膜法や、グラビア印刷法、スクリーン印刷法などの湿式成膜法などを用いることができ、用いる透明導電性酸化物に応じて第一電極層11を非晶質で形成できる方法であれば好適に用いることができる。
【0034】
隔壁は画素に対応した発光領域を区画するように形成する。一般的にアクティブマトリクス駆動型の表示装置は各画素に対して第一電極層11が形成され、それぞれの画素ができるだけ広い面積を占有しようとするため、第一電極層11の端部を覆うように形成される隔壁の最も好ましい形状は第一電極層11を最短距離で区切る格子状を基本とする。
【0035】
隔壁の形成方法としては、従来と同様、基体上に無機膜を一様に形成し、レジストでマスキングした後、ドライエッチングを行う方法や、基体上に感光性樹脂を積層し、フォトリソグラフィ法により所定のパターンとする方法が挙げられる。必要に応じて撥水剤を添加したり、プラズマやUVを照射して形成後にインクに対する撥液性を付与したりすることもできる。
【0036】
隔壁の好ましい高さは0.1μm以上10μm以下であり、より好ましくは0.5μm以上2μm以下である。隔壁12の高さが10μmを超えると対向電極の形成及び封止を妨げてしまい、0.1μm未満だと第一電極層11の端部を覆い切れない、あるいは発光媒体層の形成時に隣接する画素とショートしたり混色したりしてしまうからである。
【0037】
図1は、本発明の基本構造であり、電極基材10上に、第一電極層11、有機発光媒体層12と、第二電極層13及び光熱変換層15を設けた概略断面図である。
【0038】
本発明における有機発光媒体層12としては、発光物質を含む単層膜、あるいは多層膜で形成することができる。多層膜で形成する場合の構成例としては、正孔輸送層、電子輸送性発光層または正孔輸送性発光層、電子輸送層からなる2層構成や正孔輸送層、発光層、電子輸送層からなる3層構成、さらには、必要に応じて正孔/電子注入機能と正孔/電子輸送機能を分離したり、正孔や電子の輸送をプロックする層などを挿入することにより、さらに多層形成することがより好ましい。
【0039】
正孔輸送材料の例としては、銅フタロシアニン、テトラ(t−ブチル)銅フタロシアニン等の金属フタロシアニン類及び無金属フタロシアニン類、キナクリドン化合物、1,1−ビス(4−ジ−p−トリルアミノフェニル)シクロヘキサン、N,N’−ジフェニル−N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−1,1’−ビフェニル−4,4’−ジアミン、N,N’−ジ(1−ナフチル)−N,N’−ジフェニル−1,1’−ビフェニル−4,4’−ジアミン等の芳香族アミン系低分子正孔注入輸送材料や、ポリアニリン、ポリチオフェン、ポリビニルカルバゾール、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)とポリスチレンスルホン酸との混合物などの高分子正孔輸送材料、ポリチオフェンオリゴマー材料、CuO,Cr,Mn,FeOx(x〜0.1),NiO,CoO,Pr,AgO,MoO,Bi,ZnO,TiO,SnO,ThO,V,Nb,Ta,MoO,WO,MnOなどの無機材料、その他既存の正孔輸送材料の中から選ぶことができる。
【0040】
高分子ELディスプレイの場合には、正孔輸送材料に、インターレイヤ層を形成することが好ましい。インターレイヤ層に用いる材料として、ポリビニルカルバゾール若しくはその誘導体、側鎖若しくは主鎖に芳香族アミンを有するポリアリーレン誘導体、アリールアミン誘導体、トリフェニルジアミン誘導体などの、芳香族アミンを含むポリマーなどが挙げられる。これらの材料は溶媒に溶解または分散させ、スピンコート法等を用いた各種塗布方法や凸版印刷方法を用いて形成することができる。
【0041】
発光材料としては、9,10−ジアリールアントラセン誘導体、ピレン、コロネン、ペリレン、ルブレン、1,1,4,4−テトラフェニルブタジエン、トリス(8−キノリノラート)アルミニウム錯体、トリス(4−メチル−8−キノリノラート)アルミニウム錯体、ビス(8−キノリノラート)亜鉛錯体、トリス(4−メチル−5−トリフルオロメチル−8−キノリノラート)アルミニウム錯体、トリス(4−メチル−5−シアノ−8−キノリノラート)アルミニウム錯体、ビス(2−メチル−5−トリフルオロメチル−8−キノリノラート)[4−(4−シアノフェニル)フェノラート]アルミニウム錯体、ビス(2−メチル−5−シアノ−8−キノリノラート)[4−(4−シアノフェニル)フェノラート]アルミニウム錯体、トリス(8−キノリノラート)スカンジウム錯体、ビス〔8−(パラ−トシル)アミノキノリン〕亜鉛錯体及びカドミウム錯体、1,2,3,4−テトラフェニルシクロペンタジエン、ペンタフェニルシクロペンタジエン、ポリ−2,5−ジヘプチルオキシ−パラ−フェニレンビニレン、クマリン系蛍光体、ペリレン系蛍光体、ピラン系蛍光体、アンスロン系蛍光体、ポルフィリン系蛍光体、キナクリドン系蛍光体、N,N’−ジアルキル置換キナクリドン系蛍光体、ナフタルイミド系蛍光体、N,N’−ジアリール置換ピロロピロール系蛍光体等、Ir錯体等の燐光性発光体などの低分子系発光材料や、ポリフルオレン、ポリパラフェニレンビニレン、ポリチオフェン、ポリスピロなどの高分子材料や、これら高分子材料に前記低分子材料の分散または共重合した材料や、その他既存の蛍光発光材料や燐光発光材料を用いることができる。
【0042】
電子輸送材料の例としては、2−(4−ビフェニルイル)−5−(4−t−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール、2,5−ビス(1−ナフチル)−1,3,4−オキサジアゾール、オキサジアゾール誘導体やビス(10−ヒドロキシベンゾ[h]キノリノラート)ベリリウム錯体、トリアゾール化合物等を用いることができる。また、これらの電子輸送材料に、ナトリウムやバリウム、リチウムといった仕事関数が低いアルカリ金属、アルカリ土類金属を少量ドープすることにより、電子注入層としてもよい。
【0043】
有機発光媒体層12の膜厚は、単層または積層により形成する場合においても、1000nm以下であり、好ましくは50〜200nm程度である。
有機発光媒体層12の形成方法としては、材料に応じて、真空蒸着法や、スリットコート、スピンコート、スプレーコート、ノズルコート、フレキソ、グラビア、マイクログラビア、凹版オフセットなどのコーティング法や印刷法、インクジェット法などを用いることができる。
【0044】
第二電極層13は、ボトムエミッション方式とトップエミッション方式のいずれの発光方式でも、電子注入性の陰極層と、安定性に優れた安定層と、非晶質透明導電性酸化物層との積層されたものを用いることができる。
電子注入性の陰極層としては、まず仕事関数が低いLiやBa、Mg、Caといったアルカリ金属やアルカリ土類金属や、これら金属の酸化物、フッ化物などの化合物を有機発光媒体層13上に形成する。これらのアルカリ金属・アルカリ土類金属は電子注入性に優れるものの、安定性に乏しいため、安定層としてAlやAgなどの安定性に優れた金属との合金膜又は積層膜を用いる。次に、非晶質の透明導電性酸化物層を、第一電極層11で用いられた透明導電性酸化物材料を用いて形成する。また、ボトムエミッション方式で特に反射性が必要な場合にはAgやAlなどの金属材料を反射層として積層するこができるが、有機EL素子を透明にする場合には反射層は無くても良い。
なお、第一電極層11側からレーザーリペアする場合には、第二電極層13は少なくとも電子注入性の陰極としての役割があれば良いため、非晶質の透明導電性酸化物層は無くても良く、LiやBa、Caなどのアルカリ金属やアルカリ土類金属と、AlやAgといった安定性のある金属膜の積層膜が用いられる。
【0045】
第二電極層13は有機発光媒体層12上に陰極層、安定層、非晶質透明導電性酸化物層をこの順に積層して形成され、その形成方法としては、材料に応じて、抵抗加熱蒸着法、電子ビーム蒸着法、反応性蒸着法、イオンプレーティング法、スパッタリング法を選択すればよい。また、第二電極層13の厚さに特に制限はないが、10nm以上1000nm以下程度で用いることができる。トップエミッション方式の場合は、透明である必要があるため、陰極層と安定層は第二電極層の透光性が損なわれない程度の膜厚であることが望ましい。
【0046】
次に、本発明のレーザーリペア方法について説明する。
【0047】
低分子型の有機発光媒体層13を形成する場合には、主に蒸着法などが用いられるため、たとえば、チャンバ構成材であるSUS材の削りカスや、蒸着時に内壁やマスクに付着した蒸着材料などが、成膜時に有機発光媒体層の中に異物として取り込まれることがある。また、塗布型の低分子材料や高分子材料を、IJ法やフレキソ法などの印刷法などを用いて形成する場合には、大気中での膜形成となるため、環境異物や印刷機からの発塵物を、有機発光媒体層12の中に異物20として取り込むことがある。
【0048】
有機発光媒体層12は、100nm程度の薄膜で形成されているため、例えばSUSなど金属異物が混入すると、両電極が短絡してしまい、1画素が光らない滅点と呼ばれる表示欠陥となる。SiOやAlといった絶縁物であっても、有機発光媒体層12形成時に混入すると、異物周辺部の有機発光媒体層が薄くなり、両電極が短絡することがある。
【0049】
封止前に異物の検出工程を設け、検出された異物へレーザーを照射し、異物やその周囲の有機発光媒体12層、第二電極層13を除去して短絡を防ぐこともできるが、第二電極層13に穴生じるため水分や酸素が浸入してダークスポットが発生する問題や、除去した有機材料や電極材料が周辺部に飛散して、周囲の発光の妨げになるといった有機EL素子への影響や、さらに封止前は酸素や水分の浸入を防ぐために真空中や窒素パージ下でリペアを施す必要があり、封止前ではリペア工程自体が困難である。
【0050】
一方、有機EL素子を封止した後であれば、両電極間に電圧電流を印加し、有機発光媒体層12で発光させて表示欠陥部を観察することで上記のような異物による短絡部位の場所を特定することができ、この場合は検査からリペアまで大気中で行なうことができる。
しかし、封止後に欠陥部を除去するためにレーザー照射によるリペアを施した場合、トップエミッション方式でパッシベーション膜/接着材/ガラスをべたで積層した構造では、レーザー照射により除去された欠陥部が飛散する場所がないといった問題があった。
【0051】
そこで、本発明においてはレーザー照射により欠陥部を除去するのではなく、作成した光熱変換層へレーザーを照射し、そこで変換された熱により透明電極層を結晶化させることにより欠陥をリペアする。
【0052】
本発明における光熱変換層15としては、光を吸収して発熱するものであれば良く、特に後述するように赤外、近赤外の波長のレーザーをリペアに用いるため、この領域に吸収帯を有する光熱変換材料が好ましい。この様な材料の例としては、カーボンブラックやシアニン系、ポリメチン系、アズレニウム系、スクワリウム系、チオピリリウム系、ナフトキノン系、アントラキノン系色素等の有機化合物、フタロシアニン系、アゾ系、チオアミド系の有機金属錯体などの色素を用いることができ、これらを後述のバインダーとなる樹脂に分散して用いることができる。
【0053】
また、光熱変換層としては、この他にも蒸着膜を使用することも可能であり、カーボンブラックや、金、銀、アルミニウム、クロム、ニッケル、アンチモン、テルル、ビスマス、セレン等の金属や、アルミナ等の金属酸化物を蒸着層として用いることができる。なお、これらを後述の樹脂に分散させて用いることもできる。
【0054】
上記光熱変換材料を分散させる樹脂としてはガラス転移点が高く熱伝導率の高い樹脂が好ましい。この様な材料の例えとしては、ポリメタクリル酸メチル、ポリカーボネート、ポリスチレン、エチルセルロース、ニトロセルロース、ポリビニルアルコール、ポリ塩化ビニル、ポリアミド、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、アラミド等の一般的な耐熱性樹脂を使用することができる。
【0055】
上記樹脂に上記の光熱変換物質を分散させ、後述のレーザーリペア工程において用いるレーザーの波長を吸収し、150℃〜250℃の熱を発するように調整される。さらに光熱変換層側が光取り出し面の場合、光線透過率が50%以上になるような材料、組成とすることが望ましいが、光取り出し面では無い場合には不透明でもよい。
【0056】
光熱変換層の形成方法としては、用いる材料に適した方法を選択することができ、金属や金属酸化物等を用いる場合には、抵抗加熱蒸着法、電子ビーム蒸着法、反応性蒸着法、イオンプレーティング法、スパッタリング法、CVD法を用いることができ、また、色素などを分散させた樹脂を用いる場合には、スピンコート、スプレーコート、フレキソ、グラビア、マイクログラビア、凹版オフセットなどのコーティング法、印刷法や、インクジェット法、ディスペンサ塗布、ノズル吐出、転写法、ラミネート法などを用いることができ、これらの方法を用いて電極基材10の形成面などの全面に形成、または画素ごとにパターニングして形成される。
形成する光熱変換層はレーザー光を吸収して発熱できる厚さであれば良く、そのような厚さとしては0.1μm以上10μm以下であることが好ましい。なお、電極基材10と第一電極層11との間に光熱変換層を形成する場合には、電極基材10上の半導体素子と第一電極層11とが導通できるように光熱変換層中に導通部を形成したり、光熱変換層を導電性のものにしても良い。
【0057】
本発明は封止後にレーザーを照射してリペアを行うため、光熱変換層はレーザー照射が可能な透明な基材側の第一電極層11と透明な基材との間、又は第二電極層13上に形成される。
トップエミッション方式の場合には光取り出し側である封止基材14が透明であるため、第二電極層13上に光熱変換層を形成することで封止基材14側からレーザーリペアされる(図2(a))。また、上記のトップエミッション方式の場合と同様に、ボトムエミッション方式では光取り出し側である電極基材10が透明であるため、電極基材10上に光熱変換層を形成され、電極基10側からレーザーリペアされる(図3(a))。
【0058】
上記の光取り出し側に光熱変換層15を設ける場合は、光熱変換層15による光取り出し効率が低下するため、トップエミッション方式において光取り出し側でない電極基材10も透明にし、第一電極層11の下に形成されているAgやAlからなる反射層と電極基材10との間に形成することで電極基材10側からレーザーリペアすることができるため好ましい(図2(b))。この場合には光熱変換層に光透過性は必要無く、不透明であってもよい。また、上記のトップエミッション方式の場合と同様に、ボトムエミッション方式において光取り出し側でない封止基材14を透明とし、第二電極層上に形成されている反射層上に光熱変換層を形成することができ(図3(b))、この場合にも光熱変換層に光透過性は必要無く、不透明であっても良い。
【0059】
上記の様に、本発明の有機EL素子では、ボトムエミッション方式、トップエミッション方式に関わらずレーザーリペアすることができる。さらに、光取り出し側の基板上にカラーフィルター層や色変換層が形成されているような有機EL素子の場合でも、光取り出し側でない基材を透明にすることにより、封止後に光取り出し側でない基材面からレーザーリペアすることができる。
【0060】
本発明では、有機EL素子の封止を行った後に、作製した有機ELディスプレイを点灯させて発光状態を確認する。そして、1画素全体が発光しなくなる表示欠陥である滅点が確認された場合、その滅点画素に異物があるかどうか検査を行う。その後、その滅点画素内に検出した異物14のレーザーリペア工程を行なう。最終的に検出した滅点画素内の異物の位置情報を検出することで、形成するマイクロレンズ15と異物14との正確な位置あわせができる。
【0061】
異物20の検出に用いる検査機の光源としては、有機発光媒体層12を光劣化させないように赤外光を用いることが好ましい。赤外光であれば透過、反射光源のいずれでも用いることが可能であるが、形成された有機発光層は膜厚が非常にうすく、光学的な吸収が小さいため、膜を光線が1回通過する透過光源よりも基板表面で反射する光が2回通過する反射光源のほうがよりコントラストを得やすいため好ましい。また、用いる赤外光はイメージセンサに感度を有する波長領域であれば特に制限はないが、波長が長すぎると画像の解像度が悪くなるため検査光の波長は700〜1500nmが好適である。また、イメージセンサはエリアセンサ、ラインセンサのいずれでも用いることが可能である。イメージセンサは、検査時間短縮のため、複数台を並置して処理してもよい。また、検査装置全体を遮光することで有機発光層の劣化を防ぐことがより好ましい。
【0062】
また、上記の様に本発明の光熱変換層に赤外・近赤外光を吸収する材料が用いられている場合、上記検査工程で用いる赤外光を光熱変換層が吸収して第一電極層と第二電極層との間に含まれる異物を検査することができないため、上記検査工程は光熱変換層が形成されていない側から行なうことが好ましい。
【0063】
本発明のリペア方法は、透明な電極基材10、又は透明な封止基材14の光熱変換層15が形成された側から有機EL素子中の異物に向かってレーザーを照射し、光熱変換層15によってレーザー光が吸収されレーザーのスポット径に相当する微小部分が光熱変換し発熱する(図4(a))。この熱により直上の第一、又は第二電極の非晶質透明導電性酸化物層の微小部分が150℃〜250℃に加熱され、結晶化してリペア部16となる(図4(b))。結晶化する際、体積密度の変化により結晶化した部分の体積が変化するため、図4に示すように周りの結晶部分から切り離され、リペア部16は電極周囲との導通がなくなる。これにより異物を介した第一電極層と第二電極層の短絡部分への電流が遮断され、画素全体が光らなくなる滅点と呼ばれる表示不良を発生させることがなく、また、従来のようにリペア部の周囲に有機EL素子の材料を飛散させることもなく、リペア部16の大きさの非発光領域にとどめることが可能となる。
【0064】
ここで用いるレーザー21としては、形成した光熱変換層15を加熱することができる波長を有するものであれば、いかなるレーザーを用いてもよく、形成する光熱変換層に合わせて以下に示すレーザーから適宜選択することが望ましい。また、レーザーのスポット径としては、異物周辺の第一及び第二電極層の通電をなくすために、第一または第二電極層から見た異物の長尺の長さの1.1〜1.5倍のスポット径があれば良い。
【0065】
例えば、紫外光であればFレーザーなどのエキシマレーザーや、固体レーザーであるYAGレーザー、YLFレーザー、YAlOレーザー、GdVOレーザー、Yレーザー、PbWOレーザー、YVOレーザー等高調波等が挙げられ、可視光であれば、ArレーザーやKrレーザー、上記固体レーザーの高調波等が挙げられ、赤外光であれば、上記固体レーザーの基本波やCOレーザー、ガラスレーザー、Tiサファイアレーザー、色素レーザー、アレキサンドライトレーザー等が挙げられるが、赤外光または近赤外光に波長を持つものが光熱変換層を効率的に発熱でき、また有機EL素子が劣化しにくいため特に好ましい。
【0066】
本発明は、封止構造によらず、有機発光媒体層13の欠陥をリペアすることが可能なため、例えば、ガラスキャップからなる封止基材を用いたキャップ封止や、パッシベーション膜17と接着剤18、ガラス基材からなる封止基材を用いたべた封止などの一般的な方法により封止することができる。
【0067】
パッシベーション層17としては、酸化珪素、酸化アルミニウム等の金属酸化物、弗化アルミニウム、弗化マグネシウム等の金属弗化物、窒化珪素、窒化アルミニウム、窒化炭素などの金属窒化物、酸窒化珪素などの金属酸窒化物、炭化ケイ素などの金属炭化物、必要に応じて、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、ポリエステル樹脂などの高分子樹脂膜との積層膜を用いてもよい。特に、バリア性と透明性の面から、酸化ケイ素、窒化ケイ素、酸窒化ケイ素を用いることが好ましく、さらには、成膜条件により、膜密度を可変した積層膜や勾配膜を使用してもよい。
【0068】
パッシベーション層17の形成方法としては、材料に応じて、抵抗加熱蒸着法、電子ビーム蒸着法、反応性蒸着法、イオンプレーティング法、スパッタリング法、CVD法を用いることができるが、特に、バリア性や透光性の面でCVD法を用いることが好ましい。CVD法としては、熱CVD法、プラズマCVD法、触媒CVD法、VUV−CVD法などを用いることができる。また、CVD法における反応ガスとしては、モノシランや、ヘキサメチルジシラザン(HMDS)やテトラエトキシシランなどの有機シリコン化合物に、N、O、NH、H、NOなどのガスを必要に応じて添加してもよく、例えば、シランの流量を変えることにより膜の密度を変化させてもよく、使用する反応性ガスにより膜中に水素や炭素が含有させることもできる。封止基材の膜厚としては、有機EL素子の電極段差や基材の隔壁高さ、要求されるバリア特性などにより異なるが、10nm以上10000nm以下程度が一般的に用いられている。
【0069】
接着剤19の材料としては、公知の接着性樹脂シートを使用することができるが、例えば、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、シリコーン樹脂などの光硬化型接着性樹脂、熱硬化型接着性樹脂ポリエチレン、ポリプロピレンなどの酸変性物からなる熱可塑性接着性樹脂などを使用することができる。接着層には、必要に応じて、ギャップ制御のためにガラスや樹脂からなる球状、棒状などのスペーサーを混入しても良く、乾燥剤や酸素吸収剤などを混入してもよい。
【0070】
接着材19の形成方法としては、材料やパターンに応じて、スピンコート、スプレーコート、フレキソ、グラビア、マイクログラビア、凹版オフセットなどのコーティング法、印刷法や、インクジェット法、ディスペンサ塗布、ノズル吐出、転写法、ラミネート法などを用いることができる。
【0071】
封止基材14としては、キャップ封止の場合には掘りこみガラスやステンレス成型品、べた封止の場合には、ガラス板や、ポリエチレンテレフタレートやポリカーボネートなどのプラスチックフィルムやこれらに窒化ケイ素や酸化ケイ素などのバリア膜を形成したバリアフィルム、アルミ箔などの金属箔を用いることができるが、本発明では封止した後にレーザーリペアを行なうため、光熱変換層が吸収する波長のレーザー光を透過する様な材料であることが好ましい。
さらにこれらには、必要に応じて、色変換層やカラーフィルター層、光取出し層などを設けても良い。
【0072】
接着層19を介して電極基材10と封止基材14とを貼り合わせる工程は、真空中又は不活性ガス雰囲気下で行われるため、接着層中に有機EL素子の劣化の原因となる酸素や水分が含まれることがない。不活性ガスを用いる場合は、アルゴンなどの希ガスを用いることもできるが、経済性などから窒素ガスを用いることが好ましい。
【0073】
以下、本発明を実施例1及び比較例により具体例を説明するが、特に制限されるものではない。
【実施例】
【0074】
<実施例1>
ガラス基材からなる電極基材10上に、光熱変換層15として熱硬化性エポキシ樹脂(ストラクトボンドE−413:三井化学株式会社製)と単層のCNT(HiPco:Carbon Nanotechnologies社製)を混合したものを500nm塗布した。
次に第一電極層11としてITO膜(150nm)をスパッタリング法およびフォトリソ、エッチング法を用いてパターン形成した。
【0075】
続いて有機発光媒体層12として、正孔輸送層にポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)とポリスチレンスルホン酸との混合物(20nm)、発光層にポリ[2−メトキシ−5−(2’−エチル−ヘキシロキシ)−1,4−フェニレンビニレン](MEHPPV)(100nm)をそれぞれ、凸版印刷法を用いてパターン形成した。
【0076】
次に、陰極層13として、Ba膜(5nm)とAl膜(200nm)を蒸着法を用いて積層した。次に、封止として、パッシベーション層18(SiNx膜300nm)、接着剤18(光硬化型のエポキシ接着剤)、封止基材14(ガラス基材)を順に積層した。
作製した有機素子を点灯させ、イメージセンサにて滅点画素および滅点画素中の異物を特定した。特定された箇所に基材面からレーザー光(Nd:YAGレーザー(波長1064nm、動作モード:TEM00)、出力6W)を照射したところ滅点画素が発光しリペアが完了した。
【0077】
<実施例2>
ガラス基材からなる電極基材10上に、第一電極層11としてITO膜(150nm)をスパッタリング法およびフォトリソ、エッチング法を用いてパターン形成した。
続いて有機発光媒体層12として、正孔輸送層にポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)とポリスチレンスルホン酸との混合物(20nm)、発光層にポリ[2−メトキシ−5−(2’−エチル−ヘキシロキシ)−1,4−フェニレンビニレン](MEHPPV)(100nm)をそれぞれ、凸版印刷法を用いてパターン形成した。
【0078】
次に、第二電極層13として、Ba膜(5nm)とAg膜(5nm)を蒸着法を用いて積層した。続いて、ITO膜(100nm)をスパッタリング法にて形成した。次に光熱変換層15として酸化アルミニウム層(500nm)を真空蒸着法で形成し、続いて封止として、パッシベーション層18(SiNx膜300nm)、接着剤18(光硬化型のエポキシ接着剤)、封止基材14(ガラス基材)を順に積層した。
作製した有機EL素子を点灯させ、イメージセンサにて滅点画素および滅点画素中の異物を特定した。特定された箇所に封止基材側からレーザー光(Nd:YAGレーザー(波長1064nm、動作モード:TEM00)、出力6W)を照射したところ滅点画素が発光しリペアが完了した。
【0079】
<比較例1>
光熱変換層を作成しなかったこと以外は、実施例1と全く同様に有機EL素子を作成した。また、同様に滅点中の異物に向けてレーザーを照射したところ、ITOは結晶化せず、ただ単に有機発光層が熱によりダメージを受け、滅点画素が発光することはなかった。
【符号の説明】
【0080】
10 電極基材
11 第一電極層
12 有機発光媒体層
13 第二電極層
14 封止基材
15 光熱変換層
16 リペア部
20 異物
21 レーザー
22 光取り出し方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも、基材と、
前記基材上に形成された第一電極層と、
前記第一電極層上に形成された有機発光媒体層と、
前記有機発光媒体層上に形成された第二電極層と、
前記基材を封止する封止基材と、
からなる有機EL素子であって、
前記第一電極層は非晶質透明導電性酸化物層を含み、前記基材と前記第一電極層の間に光熱変換層が形成され、前記基板は前記光熱変換層が吸収する所定の波長について透過性をもつことを特徴とする有機EL素子。
【請求項2】
少なくとも、基材と、
前記基材上に形成された第一電極層と、
前記第一電極層上に形成された有機発光媒体層と、
前記有機発光媒体層上に形成された第二電極層と、
前記基材を封止する封止基材と、
からなる有機EL素子であって、
前記第二電極層は非晶質透明導電性酸化物層を含み、前記第二電極層上に光熱変換層が形成され、前記封止基材は前記光熱変換層が吸収する所定の波長について透過性をもつことを特徴とする有機EL素子。
【請求項3】
前記基材又は前記封止基材にはカラーフィルター層又は色変換層が形成されていることを特徴とする請求項1又は2のいずれかに記載の有機EL素子。
【請求項4】
前記光熱変換層の光透過率が50%以上であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の有機EL素子。
【請求項5】
前記光熱変換層の厚さが0.1μm以上10μm以下であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の有機EL素子。
【請求項6】
請求項1乃至5に記載の有機EL素子のリペア方法であって、
前記光熱変換層が形成された側から前記第一電極層と前記第二電極層との間に含まれる異物に向かってレーザーを照射して前記光熱変換層に熱を生じさせ、
前記光熱変換層の熱により前記第一電極層又は前記第二電極層に含まれる非晶質透明導電性酸化物層を結晶化させることを特徴とする有機EL素子のリペア方法。
【請求項7】
前記レーザーは、赤外領域又は近赤外領域の波長を有することを特徴とする請求項6に記載の有機EL素子のリペア方法。
【請求項8】
基材を準備する工程と、
前記基材上に第一電極層を形成する工程と、
前記第一電極層上に有機発光媒体層を形成する工程と、
前記有機発光媒体層上に第二電極層を形成する工程と、
前記基材を封止基材で封止する工程と、
前記第一電極層と前記第二電極層との間に含まれる異物を検査する工程と、
前記異物に対してレーザーを照射してリペアする工程と、
により製造される有機EL素子の製造方法であって、
前記基材を準備する工程は、
前記基材上に光熱変換層を形成する工程、を含み、
前記基材上に第一電極層を形成する工程は、
前記光熱変換層上に非晶質透明導電性酸化物層を形成する工程、
であることを特徴とする有機EL素子の製造方法。
【請求項9】
基材を準備する工程と、
前記基材上に第一電極層を形成する工程と、
前記第一電極層上に有機発光媒体層を形成する工程と、
前記有機発光媒体層上に第二電極層を形成する工程と、
前記基材を封止基材で封止する工程と、
前記第一電極層と前記第二電極層との間に含まれる異物を検査する工程と、
前記異物に対してレーザーを照射してリペアする工程と、
により製造される有機EL素子の製造方法であって、
前記有機発光媒体層上に第二電極層を形成する工程は、
前記有機発光媒体層上に陰極層と、安定層と、非晶質透明導電性酸化物層をこの順に形成する工程と、
前記非晶質透明導電性酸化物層上に光熱変換層を形成する工程と、
からなることを特徴とする有機EL素子の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−77124(P2011−77124A)
【公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−224530(P2009−224530)
【出願日】平成21年9月29日(2009.9.29)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】