説明

有機EL装置、有機EL装置の製造方法及び電子機器

【課題】高い色再現性を実現することが可能な有機EL装置を提供する。
【解決手段】基板11と、基板11上に形成されたカラーフィルター層20と、基板11とカラーフィルター層20の間に形成された第1電極13と、第1電極13と対向して形成された第2電極14と、第1電極13と第2電極14の間に形成された有機発光層15と、を有し、カラーフィルター層20は、基板11に垂直な方向から見たときに第1電極13と重なる領域に形成された、第1の色を透過する第1のサブフィルター層21と第2のサブフィルター層22とを有し、第1のサブフィルター層21と第2のサブフィルター層22とは同じ材料からなり、第1のサブフィルター層21と第2のサブフィルター層22とは積層されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機EL装置、有機EL装置の製造方法及び電子機器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、情報機器の多様化等に伴い、消費電力が少なく軽量化された平面表示装置のニーズが高まっている。このような平面表示装置の一つとして、有機エレクトロルミネッセンス素子(有機EL素子)を備えた有機エレクトロルミネッセンス装置(有機EL装置)が知られている。有機EL装置は、画素電極と対向電極の間に有機発光層を備えた構成となっている。
【0003】
一方、有機EL装置の薄型化を図るために、有機EL素子が形成された素子基板の上にカラーフィルター層を形成する技術がある。例えば、特許文献1の有機EL装置の製造方法においては、素子基板の有機EL素子が形成された側に透明保護層を形成し、当該透明保護層上にフォトリソグラフィー法を用いてカラーフィルター層を形成している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−126864号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、フォトリソグラフィーを用いてカラーフィルター層を形成する場合、カラーフィルター層の端部ではカラーフィルター層の形成材料がテーパー形状(順テーパー形状)になる現象が生じる。テーパー形状になる領域は、カラーフィルター層の膜厚が厚くなるに従って大きくなる。
カラーフィルター層は、有機EL素子から発せられる光を着色するために所定の厚みが必要とされるところ、有機EL装置の高精細化が進み、画素ピッチとカラーフィルター層の膜厚とが近い値となった場合、テーパー形状になる領域の単位画素当たりの比率が大きくなる。そのため、カラーフィルター層のうち所定の厚みが実現できている領域は非常に小さくなる。その結果、高い色再現性を実現することが困難となる。
【0006】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであって、高い色再現性を実現することが可能な有機EL装置、有機EL装置の製造方法を提供することを目的とする。また、表示品質に優れた電子機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するため、本発明の有機EL装置は、基板と、前記基板上に形成されたカラーフィルター層と、前記基板と前記カラーフィルター層の間に形成された第1電極と、前記第1電極と対向して形成された第2電極と、前記第1電極と前記第2電極の間に形成された有機発光層と、を有し、前記カラーフィルター層は、前記基板に垂直な方向から見たときに前記第1電極と重なる領域に形成された、第1の色を透過する第1のサブフィルター層と第2のサブフィルター層とを有し、前記第1のサブフィルター層と前記第2のサブフィルター層とは同じ材料からなり、前記第1のサブフィルター層と前記第2のサブフィルター層とは積層されていることを特徴とする。
【0008】
この構成によれば、第1のサブフィルター層と第2のサブフィルター層とが積層されることでカラーフィルター層が形成されている。そのため、カラーフィルター層に所定の厚みが必要な場合であっても、第1のサブフィルター層と第2のサブフィルター層とを積層して所定の厚みのカラーフィルター層を形成することができる。これにより、当該各々のサブフィルター層の端部がテーパー形状になる領域の幅を、単層のカラーフィルター層の端部がテーパー形状になる領域の幅よりも小さくすることができる。そのため、カラーフィルター層のうち所定の厚みが実現できている領域を大きくすることができる。よって、高い色再現性を実現することが可能な有機EL装置が得られる。なお、以降の段落においてはサブフィルター層の端部、即ちテーパー形状になっている領域をテーパー部とする。
【0009】
また、前記有機EL装置において、前記第1電極と同層に、前記第2電極と対向して形成された第3電極をさらに有し、前記カラーフィルター層は、前記基板に垂直な方向から見たときに前記第3電極と重なる領域に形成された、第2の色を透過する第3のサブフィルター層と第4のサブフィルター層とをさらに有し、前記第3のサブフィルター層と前記第4のサブフィルター層とは同じ材料からなり、前記第3のサブフィルター層と前記第4のサブフィルター層とは積層されており、前記第1のサブフィルター層の端部と前記第3のサブフィルター層の端部とは、前記基板に垂直な方向から見たときに重なっており、 前記第2のサブフィルター層の端部と前記第4のサブフィルター層の端部とは、前記基板に垂直な方向から見たときに重なっていてもよい。
【0010】
この構成によれば、第1のサブフィルター層のテーパー部と第3のサブフィルター層のテーパー部とが平面視において重なるように配置される。また、第2のサブフィルター層のテーパー部と第4のサブフィルター層のテーパー部とが平面視において重なるように配置される。そのため、カラーフィルター層のうち所定の厚みが実現できている領域を広い範囲で得ることができる。
【0011】
また、前記有機EL装置において、前記第1のサブフィルター層と、前記第2のサブフィルター層との間に形成された平坦化層を有していてもよい。
【0012】
この構成によれば、基板上に形成された第1のサブフィルター層の上面が凹凸形状であっても、第2のサブフィルター層が形成される領域が平坦化層により平坦化されている。よって、第2のサブフィルター層を形成しやすくなる。
【0013】
また、前記有機EL装置において、前記第1のサブフィルター層と、前記第2のサブフィルター層との間に形成された平坦化層を有し、前記平坦化層の、前記基板に垂直な方向から見たときに前記第1のサブフィルター層と前記第3のサブフィルター層とが重なる領域に、遮光層が形成されていてもよい。
【0014】
この構成によれば、有機発光層で発光した光が遮光層で遮光されるので、有機発光層で発光した光は当該有機発光層に対応するパターンを透過するようになり、隣のパターンを通過することが回避される。よって、発光色の混色を抑制することができる。
【0015】
また、前記有機EL装置において、前記第2電極と、前記カラーフィルター層との間に設けられた封止層を有し、前記カラーフィルター層は前記封止層に接していてもよい。
【0016】
この構成によれば、封止層の上にカラーフィルター層が形成された、いわゆるトップエミッション方式のOCCF(On-chip Collor Filter)構造において、高い色再現性を実現することが可能な有機EL装置を実現することができる。
【0017】
本発明の有機EL装置の製造方法は、基板上に第1電極を形成する工程と、前記第1電極上に有機発光層を形成する工程と、前記有機発光層上に第2電極を形成する工程と、前記第2電極上に、前記基板に垂直な方向から見たときに前記第1電極と重なる領域にカラーフィルター層を形成する工程と、を含み、前記カラーフィルター層を形成する工程は、第1のサブフィルター層をフォトリソグラフィー法によって形成する工程と、前記第1のサブフィルター層上に、第1のサブフィルター層と同じ材料で第2のサブフィルター層をフォトリソグラフィー法で形成する工程と、を含むことを特徴とする。
【0018】
この製造方法によれば、フォトリソグラフィー法を用いて第1のサブフィルター層と第2のサブフィルター層とを積層することでカラーフィルター層を形成している。そのため、カラーフィルター層に所定の厚みが必要な場合であっても、第1のサブフィルター層と第2のサブフィルター層とを積層して所定の厚みのカラーフィルター層を形成することができる。これにより、当該各々のサブフィルター層のテーパー部の幅を、単層のカラーフィルター層のテーパー部の幅よりも小さくすることができる。そのため、カラーフィルター層のうち所定の厚みが実現できている領域を大きくすることができる。よって、高い色再現性を実現することが可能な有機EL装置を製造することができる。
【0019】
本発明の電子機器は、前記有機EL装置を備えたことを特徴とする。
【0020】
本発明の電子機器によれば、本発明の有機EL装置を備えているので、表示品質に優れた電子機器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の第1実施形態に係る有機EL装置を示す断面図である。
【図2】同、有機EL装置の要部断面図である。
【図3】同、有機EL装置の製造工程についての説明図である。
【図4】図3に続く説明図である。
【図5】図4に続く説明図である。
【図6】図5に続く説明図である。
【図7】本発明の第2実施形態に係る有機EL装置を示す断面図である。
【図8】同、有機EL装置の製造工程についての説明図である。
【図9】本発明の第3実施形態に係る有機EL装置を示す断面図である。
【図10】同、有機EL装置の製造工程についての説明図である。
【図11】本発明の第4実施形態に係る有機EL装置を示す断面図である。
【図12】同、有機EL装置の製造工程についての説明図である。
【図13】電子機器の一例を示す図である。
【図14】従来の有機EL装置を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態について説明する。かかる実施の形態は、本発明の一態様を示すものであり、この発明を限定するものではなく、本発明の技術的思想の範囲内で任意に変更可能である。また、以下の図面においては、各構成をわかりやすくするために、実際の構造における縮尺や数等が異なっている。
【0023】
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態に係る有機EL装置1を示す断面図である。
図1に示すように、有機EL装置1は、基板本体上に形成された図示しない各種配線、スイッチング素子としての薄膜トランジスタ(Thin Film Transistor、以下TFTと称する。)、及び各種回路によって発光層(有機発光層)を発光させる、TFTアレイ基板11を備えている。なお、本実施形態の有機EL装置1は、スイッチング素子としてTFTを用いたアクティブマトリクス方式のものであるが、これに限らず、単純マトリクス方式を採用した構成においても本発明を適用させることができる。
【0024】
本実施形態における有機EL装置1は、いわゆる「トップエミッション構造」の有機EL装置である。トップエミッション構造では、光を素子基板10側ではなく対向電極14側から取り出すため、素子基板10に配置された各種回路の大きさに影響されず、発光面積を広く確保できる効果がある。そのため、電圧及び電流を抑えつつ輝度を確保することが可能であり、発光素子(有機EL素子)12の寿命を長く維持することができる。
【0025】
有機EL装置1は、素子基板10と、素子基板10上の発光素子12の露出する部位全体を覆って形成された電極保護層(第1無機封止層)17と、電極保護層17上に形成された有機緩衝層18と、電極保護層17上に有機緩衝層18の露出する部位全体を覆って形成されたガスバリア層(第2無機封止層)19と、ガスバリア層19上に形成されたカラーフィルター層20と、素子基板10の外周部に沿って配置された周辺シール層23と、周辺シール層23の内部に形成された充填層24と、周辺シール層23を介して素子基板10と貼り合わされた保護基板25と、を備えている。
【0026】
なお、上記の電極保護層17、有機緩衝層18及びガスバリア層19に換えて、ポリシロキサン、ポリシラザンといった無機材料を塗布して形成した無機膜によって封止層を形成してもよい。また、有機EL装置1において、周辺シール層23、充填層24及び保護基板25は必須の構成要素ではなく、周辺シール層23、充填層24及び保護基板25が設けられていなくてもよい。
【0027】
素子基板10は、TFTアレイ基板11と、画素電極13と対向電極14との間に有機発光層15を挟持した複数の発光素子12と、発光素子12(画素電極13)を区切る画素隔壁16と、を有している。
【0028】
本実施形態において、画素電極13は、仕事関数が5eV以上の正孔注入効果が高い材料によって形成されたものである。このような材料としては、例えばITO(Indium Tin Oxide:インジウム錫酸化物)等の金属酸化物が用いられる。なお、本実施形態ではトップエミッション方式が採用されているため、画素電極13は透光性を備える必要がない。したがって、本実施形態では、前記ITOからなる透明導電層の下側に、Al等の光反射性金属層が形成されて積層構造とされ、この積層構造によって画素電極13が形成されている。
【0029】
有機機能層15は、本実施形態では低分子系の有機EL材料からなる有機発光層を含んで形成されたものである。このような有機機能層15としては、例えば画素電極側から正孔注入層、正孔輸送層、有機発光層、電子輸送層、電子注入層が順次積層された構造が知られており、さらに正孔輸送層や電子輸送層を省略した構造や、正孔注入層と正孔輸送層との両方の機能を備えた正孔注入・輸送層を用いたり、電子注入層と電子輸送層との両方の機能を備えた電子注入・輸送層を用いた構造などが知られている。本発明では、このような構造のうち適宜な構造が選択され、形成されている。
【0030】
また、有機機能層15の材料としては、それぞれ公知のものを用いることができる。
例えば、有機発光層の材料としては、本実施形態では白色発光する有機発光材料として、スチリルアミン系発光材料などが用いられる。
さらに、正孔注入層の材料としては、トリアリールアミン(ATP)多量体などが用いられ、正孔輸送層の材料としては、TDP(トリフェニルジアミン)系のものなどが用いられ、電子注入・輸送層の材料としては、アルミニウムキノリノール(Alq3)などが用いられる。
【0031】
有機機能層15上には、該有機機能層15を覆って、対向電極14が形成されている。対向電極14を形成するための材料としては、本実施形態はトップエミッション構造であることから光透過性を有する材料である必要がある。対向電極14の形成材料としては、透明導電材料が用いられる。透明導電材料としては、ITOが好適とされるが、これ以外にも、例えば酸化インジウム・酸化亜鉛系アモルファス透明導電膜(Indium Zinc Oxide:IZO/アイ・ゼット・オー(登録商標))等を用いることができる。なお、本実施形態では、対向電極14の形成材料として、ITOを用いる。
【0032】
また、対向電極14は、電子注入効果の大きい(仕事関数が4eV以下)材料が好適に用いられる。例えば、カルシウムやマグネシウム、ナトリウム、リチウム金属、又はこれらの金属化合物である。金属化合物としては、フッ化カルシウム等の金属フッ化物や酸化リチウム等の金属酸化物、アセチルアセトナトカルシウム等の有機金属錯体が該当する。また、透明なITO、酸化錫などの金属酸化物導電層を積層することで電気抵抗の低減を行うことが好ましい。なお、本実施形態では、フッ化リチウムとマグネシウム−銀合金、ITOの積層体を、透明性が得られる膜厚に調整して用いるものとする。
【0033】
本実施形態の有機EL装置1では、前記の画素電極13と有機機能層15と対向電極14とにより、有機EL素子が形成されている。すなわち、画素電極13と対向電極14との間に電圧が印加されると、画素電極13から正孔注入層に正孔が注入され、正孔輸送層を介して有機発光層に輸送される。また、対向電極14から電子注入層に電子が注入され、電子輸送層を介して有機発光層に輸送される。すると、有機発光層に輸送された正孔と電子とが再結合することにより、有機発光層が発光するようになっている。
【0034】
有機発光層から画素電極側に出射した光は、前記した透明導電層を透過して光反射性金属層に反射され、再度有機発光層側に入射するようになっている。なお、対向電極14は半透過反射膜として機能するので、所定範囲の波長以外の光は光反射性金属層側に反射され対向電極14と光反射性金属層との間で往復する。このようにして、対向電極14と光反射性金属層との間の光学的距離に対応した共振波長の光だけが増幅されて取り出される。すなわち、対向電極14と光反射性金属層とを含んだこれらの間が共振器として機能するようになっており、発光輝度が高くしかもスペクトルがシャープな光を射出させることが可能になっている。ここで、前記光学的距離は、対向電極14と光反射性金属層との間に含まれる層の光学的距離の和によって求められ、各層の光学的距離は、その膜厚と屈折率との積によって求められる。
【0035】
TFTアレイ基板11上には、発光素子12を保護する電極保護層17が形成されている。
【0036】
電極保護層17は、透明性や密着性、耐水性、ガスバリア性を考慮して珪素酸窒化物などの珪素化合物で構成することが望ましい。
【0037】
なお、本実施形態においては、電極保護層17を単層で形成しているが、複数層で積層してもよい。例えば、低弾性率の下層と高耐水性の上層とで電極保護層17を構成してもよい。
【0038】
電極保護層17上には、発光素子12の形成領域を覆って有機緩衝層18が形成されている。
【0039】
有機緩衝層18は、画素隔壁16の形状の影響により、凹凸状に形成された電極保
護層17の凹凸部分を埋めるように配置されている。有機緩衝層18の上面は略平坦に形成されている。有機緩衝層18は、TFTアレイ基板11の反りや体積膨張により発生する応力を緩和する機能を有する。また、有機緩衝層18の上面が略平坦化されるので、有機緩衝層18上に形成される硬い被膜からなる後述するガスバリア層19も平坦化される。したがって、応力が集中する部位がなくなり、これにより、ガスバリア層19でのクラックの発生が抑制される。さらに、画素隔壁16を被覆して凹凸が埋められることで、ガスバリア層19上に形成されるカラーフィルター層20の膜厚均一性を向上させることにも有効である。
【0040】
有機緩衝層18は、硬化前の原料主成分としては、減圧真空下でスクリーン印刷法により形成するために、流動性に優れ、かつ溶媒や揮発成分の無い、全てが高分子骨格の原料となる有機化合物材料である必要があり、好ましくはエポキシ基を有する分子量3000以下のエポキシモノマー/オリゴマーが用いられる(モノマーの定義:分子量1000以下、オリゴマーの定義:分子量1000〜3000)。例えば、ビスフェノールA型エポキシオリゴマーやビスフェノールF型エポキシオリゴマー、フェノールノボラック型エポキシオリゴマー、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、アルキルグリシジルエーテル、3,4-エポキシシクロヘキセニルメチル-3',4'-エポキシシクロヘキセンカルボキシレート、ε-カプロラクトン変性3,4-エポキシシクロヘキシルメチル3',4'-エポキシシクロヘキサンカルボキレートなどがあり、これらが単独もしくは複数組み合わされて用いられる。
【0041】
また、エポキシモノマー/オリゴマーと反応する硬化剤としては、電気絶縁性や接着性に優れ、かつ硬度が高く強靭で耐熱性に優れる硬化被膜を形成するものが良く、透明性に優れ、かつ硬化のばらつきの少ない付加重合型がよい。例えば、3−メチル−1,2,3,6−テトラヒドロ無水フタル酸、メチル−3,6−エンドメチレン−1,2,3,6−テトラヒドロ無水フタル酸、1,2,4,5−ベンゼンテトラカルボン酸二無水物、3,3',4,4'-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物などの酸無水物系硬化剤が好ましい。さらに、酸無水物の反応(開環)を促進する反応促進剤として1,6−ヘキサンジオールなど分子量が大きく揮発しにくいアルコール類を添加することで低温硬化しやすくなる。これらの硬化は60〜100℃の範囲の加熱で行われ、その硬化被膜はエステル結合を持つ高分子となる。さらに、酸無水の開環を促進する硬化促進剤として、芳香続アミンやアルコール類やアミノフェノールなどのアミン化合物を微量添加することで、低温硬化しやすくなる。
【0042】
有機緩衝層18上には、有機緩衝層18を被覆し、かつ電極保護層17の終端部まで覆うような広い範囲で、ガスバリア層19が形成されている。
【0043】
ガスバリア層19は、酸素や水分が浸入するのを抑制するためのもので、これにより酸素や水分による発光素子12の劣化等を抑えることができる。ガスバリア層19は、透明性、ガスバリア性、耐水性を考慮して、好ましくは窒素を含む珪素化合物、すなわち珪素窒化物や珪素酸窒化物などによって形成される。
【0044】
また、本実施形態では、有機EL装置1をトップエミッション構造としていることから、ガスバリア層19は光透過性を有する必要がある。したがってガスバリア層19の材質や膜厚を適宜に調整することにより、本実施形態では可視光領域における光線透過率を例えば80%以上にしている。
【0045】
ガスバリア層19の表面にはカラーフィルター層20が形成されている。
カラーフィルター層20は、着色層として、赤色着色層20R、緑色着色層20G、青色着色層20Bがこの順に配列形成されている。
【0046】
各着色層20R,20G,20Bは、透明バインダー層に顔料または染料が混合された材料で構成されている。各着色層20R,20G,20Bの幅は10μm程度であり、発光素子12の画素電極13と略同じ幅に各層調整されている。各着色層20R,20G,20Bの膜厚は、発光素子12から発せられる光を着色するために所定の厚みが必要とされ、例えば1μm程度である。各着色層20R,20G,20Bの膜厚は、ホワイトバランスを考慮して各色毎に調整されている。各着色層20R,20G,20Bにより、発光層15の発光光が、着色層20R,20G,20Bの各々を透過し、赤色光、緑色光、青色光の各色光として観察者側に出射するようになっている。このように、有機EL装置1においては、発光層15の発光光を利用し、かつ、複数色の着色層20R,20G,20Bによってカラー表示を行うようになっている。
【0047】
カラーフィルター層20は、第1のサブフィルター層21と第2のサブフィルター層22とが積層されて形成されている。
【0048】
第1のサブフィルター層21は、赤色パターン21Rと緑色パターン21Gと青色パターン21Bとが隣り合うように配列されている。
第2のサブフィルター層22は、赤色パターン22Rと緑色パターン22Gと青色パターン22Bとが隣り合うように配列されている。
【0049】
なお、本実施形態においては、カラーフィルター層20が2つのサブフィルター層からなっているが、これに限らず、3つ以上のサブフィルター層からなっていてもよい。
【0050】
図2は、本実施形態に係る有機EL装置1の要部断面図である。図2においては、便宜上、周辺シール層23、充填層24及び保護基板25の図示を省略している。
なお、図2において、符号D1は第1のサブフィルター層21の厚みであり、符号D2は第2のサブフィルター層22の厚みであり、符号W1は第1のサブフィルター層21のテーパー部の幅であり、符号W2は第2のサブフィルター層22のテーパー部の幅である。
ここで、「サブフィルター層の厚み」とは、素子基板10の上面に対して直交する方向におけるサブフィルター層の長さ(サブフィルター層の下面と上面との間の距離)である。
「テーパー部の幅」とは、各色のパターンの配列方向におけるテーパー部の長さ(テーパー部において本体部の側端に隣接する面と、テーパー部において本体部の側端から最も離れた部分との間の距離)である。
また、図2においては、第1のサブフィルター層21のテーパー部の幅W1は、各パターン21R,21G,21Bのうち、一例として赤色パターン21Rのテーパー部21Rbの幅を示すものとする。第2のサブフィルター層22のテーパー部の幅W1は、各パターン22R,22G,22Bのうち、一例として赤色パターン22Rのテーパー部22Rbの幅を示すものとする。
【0051】
図2に示すように、第1のサブフィルター層21において、赤色パターン21Rは、厚みが概ね均一な赤色本体部21Raと、当該赤色本体部21Raの側端に隣接する赤色テーパー部21Rbと、を有している。
緑色パターン21Gは、厚みが概ね均一な緑色本体部21Gaと、当該緑色本体部21Gaの側端に隣接する緑色テーパー部21Gbと、を有している。
青色パターン21Bは、厚みが概ね均一な青色本体部21Baと、当該青色本体部21Baの側端に隣接する青色テーパー部21Bbと、を有している。
【0052】
本実施形態において、赤色テーパー部21Rbは、平面視において緑色テーパー部21Gbと重なる部分及び青色テーパー部21Bbと重なる部分のいずれも順テーパー形状である。緑色テーパー部21Gbの赤色テーパー部21Rbと平面視において重なる部分は逆テーパー形状であり、青色テーパー部21Bbと平面視において重なる部分は順テーパー形状である。青色テーパー部21Bbは、平面視において緑色テーパー部21Gbと重なる部分及び赤色テーパー部21Rbと重なる部分のいずれも逆テーパー形状である。
【0053】
第2のサブフィルター層22において、赤色パターン22Rは、厚みが概ね均一な赤色本体部22Raと、当該赤色本体部22Raの側端に隣接する赤色テーパー部22Rbと、を有している。
緑色パターン22Gは、厚みが概ね均一な緑色本体部22Gaと、当該緑色本体部22Gaの側端に隣接する緑色テーパー部22Gbと、を有している。
青色パターン22Bは、厚みが概ね均一な青色本体部22Baと、当該青色本体部22Baの側端に隣接する青色テーパー部22Bbと、を有している。
【0054】
本実施形態において、赤色テーパー部22Rbは、平面視において緑色テーパー部22Gbと重なる部分及び青色テーパー部22Bbと重なる部分のいずれも順テーパー形状である。緑色テーパー部22Gbの赤色テーパー部22Rbと平面視において重なる部分は逆テーパー形状であり、青色テーパー部22Bbと平面視において重なる部分は順テーパー形状である。青色テーパー部22Bbは、平面視において緑色テーパー部22Gbと重なる部分及び赤色テーパー部22Rbと重なる部分のいずれも逆テーパー形状である。
【0055】
本実施形態において、発光素子12は、平面視において各本体部21Ra,21Ga,21Baと重なるように配置されている。発光素子12は、平面視において各テーパー部21Rb,21Gb,21Bbとは重ならないように配置されている。
【0056】
素子基板上には、第1のサブフィルター層21のテーパー部21Rb,21Gb,21Bbと、第2のサブフィルター層22のテーパー部22Rb,22Gb,22Bbとは、平面視においてそれぞれ重なるように配置されている。
【0057】
本実施形態においては、第1のサブフィルター層21の厚みD1と、第2のサブフィルター層22の厚みD2とが、互いに概ね等しくなっている。さらに、第1のサブフィルター層21のテーパー部の幅W1と、第2のサブフィルター層22のテーパー部の幅W2とが、互いに概ね等しくなっている。
【0058】
図1に戻り、カラーフィルター層20の下層には、発光層15がTFTアレイ基板11の全面に形成され、また、発光層15が絶縁性を有する画素隔壁16に区分され、複数の発光素子12として構成している。そのため、画素電極13と対向位置にある発光層15は発光領域となり、画素隔壁16と対向位置にある発光層15は、非発光領域となる。したがって、ガスバリア層19の表面に形成されたカラーフィルター層20においては、発光素子12と対向位置にある着色層20R,20G,20Bのみから発光光を取り出せるようになっている。
【0059】
なお、各着色層20R,20G,20Bの配列は任意でよく、例えば各着色層20R,20G,20Bをストライプ状に形成してカラーフィルター層20を構成してもよいし、各着色層20R,20G,20Bをモザイク状に形成してカラーフィルター層20を形成してもよい。さらに、着色層20R,20G,20BのR,G,Bの基本色の他に、目的に応じてライトブルーやライトシアン等を加えても良い。
【0060】
素子基板10と後述する保護基板25との間の周辺部には、周辺シール層23が設けられている。
【0061】
周辺シール層23は、素子基板10と保護基板25の貼り合わせの位置精度の向上と後述する充填層24のはみ出しを防止する土手の機能を有する。周辺シール層23は、例えば、紫外線によって硬化して粘度が向上するエポキシ材料等で構成されている。好ましくは、エポキシ基を有する分子量3000以下のエポキシモノマー/オリゴマーが用いられる(モノマーの定義:分子量1000以下、オリゴマーの定義:分子量1000〜3000)。例えば、ビスフェノールA型エポキシオリゴマーやビスフェノールF型エポキシオリゴマー、フェノールノボラック型エポキシオリゴマー、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、アルキルグリシジルエーテル、3,4-エポキシシクロヘキセニルメチル-3',4'-エポキシシクロヘキセンカルボキシレート、ε-カプロラクトン変性3,4-エポキシシクロヘキシルメチル3',4'-エポキシシクロヘキサンカルボキレートなどがあり、これらが単独もしくは複数組み合わされて用いられる。
【0062】
また、エポキシモノマー/オリゴマーと反応する硬化剤としては、ジアゾニウム塩、ジフェニルヨウドニウム塩、トリフェルスルフォニウム塩、スルホン酸エステル、鉄アレーン錯体、シラノール/アルミニウム錯体などのカチオン重合反応を起こす光反応型開始剤が好ましい。
【0063】
また、素子基板10と保護基板25の間における周辺シール層23に囲まれた内部に、熱硬化性樹脂からなる充填層24が形成されている。
【0064】
この充填層24は、前述した周辺シール層23で囲まれた有機EL装置1の内部に隙間なく充填されており、素子基板10に対向配置された保護基板25を固定させ、かつ外部からの機械的衝撃に対して緩衝機能を有し、発光層15やガスバリア層19の保護をするものである。
【0065】
充填層24は、硬化前の原料主成分としては、流動性に優れ、かつ溶媒のような揮発成分を持たない有機化合物材料である必要があり、好ましくはエポキシ基を有する分子量3000以下のエポキシモノマー/オリゴマーが用いられる(モノマーの定義:分子量1000以下、オリゴマーの定義:分子量1000〜3000)。例えば、ビスフェノールA型エポキシオリゴマーやビスフェノールF型エポキシオリゴマー、フェノールノボラック型エポキシオリゴマー、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、アルキルグリシジルエーテル、3,4-エポキシシクロヘキセニルメチル-3',4'-エポキシシクロヘキセンカルボキシレート、ε-カプロラクトン変性3,4-エポキシシクロヘキシルメチル3',4'-エポキシシクロヘキサンカルボキレートなどがあり、これらが単独もしくは複数組み合わされて用いられる。
【0066】
また、エポキシモノマー/オリゴマーと反応する硬化剤としては、電気絶縁性に優れ、かつ強靭で耐熱性に優れる硬化皮膜を形成するものが良く、透明性に優れ、かつ硬化のばらつきの少ない付加重合型が良い。例えば、3−メチル−1,2,3,6−テトラヒドロ無水フタル酸、メチル−3,6−エンドメチレン−1,2,3,6−テトラヒドロ無水フタル酸、1,2,4,5−ベンゼンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、またはそれらの重合物などの酸無水物系硬化剤が好ましい。これらの硬化は、60〜100℃の範囲で行われ、その硬化皮膜は珪素酸窒化物との密着性に優れるエステル結合を持つ高分子となる。さらに、酸無水の開環を促進する硬化促進剤として芳香族アミンやアルコール類、アミノフェノール等の比較的分子量の高いものを添加することで低温かつ短時間での硬化が可能となる。
【0067】
素子基板10と対向配置された保護基板25は、光学特性及びガスバリア層19の保護を目的に設けられる。この保護基板25の材質は、ガラス又は透明プラスチック(ポリエチレンテレフタレート、アクリル樹脂、ポリカーボネート、ポリオレフィン等)が好ましい。また、この保護基板25には、紫外線遮断/吸収層や光反射防止層、放熱層等の機能層が設けられていてもよい。
【0068】
(有機EL装置の製造方法)
次に、図3〜図6を参照して本実施形態における有機EL装置1の製造方法を説明する。図3〜図6は、有機EL装置1の製造工程についての説明図である。
【0069】
まず、図3(a)に示すように、素子基板10上に電極保護層17、有機緩衝層18及びガスバリア層19が形成された、カラーフィルター層20が形成される土台を用意する。
【0070】
当該土台の形成方法とは、まず、電極保護層17を素子基板10上の発光素子12の露出する部位全体を覆って形成する。
具体的には、電極保護層17については、窒素を含む珪素化合物、すなわち珪素窒化物や珪素酸窒化物などを、ECRスパッタ法やイオンプレーティング法等の高密度プラズマ成膜法により成膜する。なお、透明無機材料としてのSiO などの無機酸化物やLiFやMgF等のアルカリハライドを、真空蒸着法や高密度プラズマ成膜法により積層してもよい。なお、透明無機材料としてのSiO などの無機酸化物やLiFやMgF等のアルカリハライドを、真空蒸着法や高密度プラズマ成膜法により積層してもよい。
【0071】
次に、有機緩衝層18を電極保護層17上に形成する。
具体的には、減圧雰囲気下でスクリーン印刷を行った有機緩衝層18を、60〜100℃の範囲で加熱して硬化させる。
【0072】
次に、ガスバリア層19を有機緩衝層18上に形成する。
具体的には、ECRスパッタ法やイオンプレーティング法などの高密度プラズマ成膜法で形成する。また、形成前には、酸素プラズマ処理によって密着性を向上させると信頼性が向上する。
【0073】
次に、カラーフィルター層20をガスバリア層19上に形成する。
具体的には、ガスバリア層19の上面に、フォトリソグラフィー法を用いて、カラーフィルター層20を形成する。
【0074】
ところで、フォトリソグラフィーを用いてカラーフィルター層を形成する場合、カラーフィルター層の端部ではカラーフィルター層の形成材料がテーパー形状(順テーパー形状)に拡がる現象が生じる。そのため、カラーフィルター層の端部にはテーパー部が形成される。
【0075】
図14は、従来の有機EL装置100を示す断面図である。図14において、符号110は素子基板、符号112は発光素子、符号117は電極保護層、符号118は有機緩衝層、符号119はガスバリア層、符号120はカラーフィルター層、符号120Rは赤色着色層、符号120Gは緑色着色層、符号120Bは青色着色層、符号120Raは赤色本体部,符号120Gaは緑色本体部,符号120Baは青色本体部、符号120Rbは赤色テーパー部、符号120Gbは緑色テーパー部、符号120Bbは青色テーパー部、符号123は周辺シール層、符号124は充填層、符号125は封止基板である。
【0076】
図14に示すように、従来の有機EL装置100においては、ガスバリア層119の上面に、単層のカラーフィルター層120が形成されている。フォトリソグラフィーを用いて、カラーフィルター層120を形成する場合、テーパー部120Rb,120Gb,120Bbが形成される領域は、カラーフィルター層120の膜厚が厚くなるに従って大きくなる。
【0077】
カラーフィルター層120は、発光素子から発せられる光を着色するために所定の厚みが必要とされるところ、有機EL装置100の高精細化が進み、画素ピッチとカラーフィルター層120の膜厚が近い値となった場合、テーパー部120Rb,120Gb,120Bbが形成される領域の単位画素当たりの比率が大きくなる。そのため、カラーフィルター層120のうち所定の厚みが実現できている領域(本体部120Ra,120Ga,120Baが形成される領域)は非常に小さくなる。その結果、高い色再現性を実現することが困難となる。
【0078】
さらに、所定の厚みが厚いカラーフィルター層120を形成する場合、カラーフィルター層120の形成材料(カラーレジスト)を焼成するために必要な温度が大きくなる。そのため、焼成時において発光層に与える熱の影響が大きくなることとなる。一方、発光層に与える焼成時の熱の影響を小さくする方法(例えば80℃程度で焼成)も考えられるが、カラーフィルター層120の脱ガスを十分に行うことができないおそれがある。
【0079】
そこで、本発明においては、フォトリソグラフィー法を用いて第1のサブフィルター層21と第2のサブフィルター層22とを積層することでカラーフィルター層20を形成している。
【0080】
具体的には、図3(b)に示すように、ガスバリア層19の上面に、赤色パターン用のカラーレジスト21REを塗布する。
【0081】
次に、図3(c)に示すように、赤色パターン用のフォトマスク30Rを介して、カラーレジスト21REを露光してUV硬化させ、不溶化させる。
【0082】
次に、図3(d)に示すように、現像液によりカラーレジスト21REの不要な部分を除去した後、残ったカラーレジスト21REをベークにて硬化させる。これにより、ガスバリア層19の上面に、赤色パターン21Rが形成される。
【0083】
次に、ガスバリア層19の上面に、赤色パターン21Rの端部に形成された赤色テーパー部21Rbと、平面視において緑色パターン21Gの端部に形成される緑色テーパー部21Gbとが重なるように緑色パターン21Gを形成する。
【0084】
具体的には、赤色パターン21Rを隔壁として、緑色パターン用のカラーレジスト21GEを塗布する。
【0085】
次に、図4(a)に示すように、緑色パターン用のフォトマスク30Gを介して、カラーレジスト21GEを露光してUV硬化させ、不溶化させる。
【0086】
次に、図4(b)に示すように、現像液によりカラーレジスト21GEの不要な部分を除去した後、残ったカラーレジスト21GEをベークにて硬化させる。これにより、ガスバリア層19の上面に、緑色パターン21Gが形成される。ガスバリア層19上には、赤色テーパー部21Rbと緑色テーパー部21Gbとが平面視において重なるように配置される。
【0087】
なお、本実施形態においては、ガスバリア層19の上面に、赤色パターン21Rの端部に形成された赤色テーパー部21Rbと、平面視において緑色パターン21Gの端部に形成される緑色テーパー部21Gbとが重なるように緑色パターン21Gを形成しているが、これに限らない。例えば、赤色テーパー部21Rbの一部と、平面視において緑色テーパー部21Gbとが重なるように緑色パターン21Gを形成してもよい。すなわち、赤色テーパー部21Rbの少なくとも一部と、平面視において緑色テーパー部21Gbとが重なるように緑色パターン21Gを形成すればよい。
【0088】
次に、図4(c)に示すように、赤色パターン21R及び緑色パターン21Gの双方のパターンを隔壁として、青色パターン用のカラーレジスト21BEを塗布する。
【0089】
次に、カラーレジスト21BEをベークにて硬化させる。これにより、図4(d)に示すように、ガスバリア層19の上面に、青色パターン21Bが形成される。ガスバリア層19上には、緑色テーパー部21Gbと青色テーパー部21Bbとが平面視において重なるように配置されるとともに、青色テーパー部21Bbと赤色テーパー部21Rbとが平面視において重なるように配置される。
【0090】
なお、本実施形態においては、ガスバリア層19の上面に、赤色テーパー部21Rb及び緑色テーパー部21Gbの双方テーパー部と、平面視において青色テーパー部21Bbとが重なるように緑色パターン21Gを形成しているが、これに限らない。例えば、赤色テーパー部21Rbの一部及び緑色テーパー部21Gbと、平面視において青色テーパー部21Bbとが重なるように青色パターン21Bを形成してもよい。すなわち、赤色テーパー部21Rbの少なくとも一部及び緑色テーパー部21Gbの少なくとも一部と、平面視において青色テーパー部21Bbとが重なるように青色パターン21Bを形成すればよい。
【0091】
以上の工程により、ガスバリア層19の上面に、第1のサブフィルター層21が形成される。
【0092】
ここで、第1のサブフィルター層21における着色パターンは、赤色パターン21R、緑色パターン21G及び青色パターン21Bの3色のパターンにより構成されるところ、赤色パターン21Rを隔壁として用いた場合、ガスバリア層19の最外周部に形成される赤色パターン21Rが余ることなる。この場合、当該赤色パターン21Rを表示に寄与しないダミーパターンとすることが好ましい。
【0093】
なお、本実施形態においては、赤色パターン21Rを隔壁として緑色パターン21Gを形成し、赤色パターン21R及び緑色パターン21Gの双方のパターンを隔壁として、青色パターン21Bを形成しているが、これに限らない。例えば、フォトリソグラフィー法を用いて各パターン21R,21G,21Bを所定の間隔を空けて形成してもよい。これにより、各パターン21R,21G,21Bのすべてを表示に寄与させるパターンとすることができる。
【0094】
図4(d)に戻り、第1のサブフィルター層21の上面に、赤色パターン用のカラーレジスト22REを塗布する。カラーレジスト22REを塗布する際には、当該カラーレジスト22REの厚みが上述したカラーレジスト21REの厚みと概ね等しくなるように塗布する。
【0095】
次に、図4(e)に示すように、赤色パターン用のフォトマスク30Rを介して、カラーレジスト22REを露光してUV硬化させ、不溶化させる。
【0096】
次に、図5(a)に示すように、現像液によりカラーレジスト22REの不要な部分を除去した後、残ったカラーレジスト22REをベークにて硬化させる。これにより、第1のサブフィルター層21の上面に、赤色パターン22Rが形成される。
【0097】
次に、第1のサブフィルター層21の上面に、赤色パターン22Rの端部に形成された赤色テーパー部22Rbと、平面視において緑色パターン22Gの端部に形成される緑色テーパー部22Gbとが重なるように緑色パターン22Gを形成する。
【0098】
具体的には、赤色パターン22Rを隔壁として、緑色パターン用のカラーレジスト22GEを塗布する。カラーレジスト22GEを塗布する際には、当該カラーレジスト22REの厚みが上述したカラーレジスト21GEの厚みと概ね等しくなるように塗布する。
【0099】
次に、図5(c)に示すように、緑色パターン用のフォトマスク30Gを介して、カラーレジスト22GEを露光してUV硬化させ、不溶化させる。
【0100】
次に、図5(d)に示すように、現像液によりカラーレジスト22GEの不要な部分を除去した後、残ったカラーレジスト22GEをベークにて硬化させる。これにより、第1のサブフィルター層21の上面に、緑色パターン22Gが形成される。第1のサブフィルター層21上には、赤色テーパー部22Rbと緑色テーパー部22Gbとが平面視において重なるように配置される。
【0101】
次に、図5(e)に示すように、赤色パターン22R及び緑色パターン22Gの双方のパターンを隔壁として、青色パターン用のカラーレジスト22BEを塗布する。カラーレジスト22BEを塗布する際には、当該カラーレジスト22BEの厚みが上述したカラーレジスト21BEの厚みと概ね等しくなるように塗布する。
【0102】
次に、カラーレジスト22BEをベークにて硬化させる。これにより、図2に示すように、第1のサブフィルター層21の上面に、青色パターン22Bが形成される。第1のサブフィルター層21上には、緑色テーパー部22Gbと青色テーパー部22Bbとが平面視において重なるように配置されるとともに、青色テーパー部22Bbと赤色テーパー部22Rbとが平面視において重なるように配置される。
以上の工程により、第1のサブフィルター層21の上面に、第2のサブフィルター層22が形成される。これにより、ガスバリア層19の上面に、カラーフィルター層20が形成される。
【0103】
ここで、第2のサブフィルター層22における着色パターンは、赤色パターン22R、緑色パターン22G及び青色パターン22Bの3色のパターンにより構成されるところ、赤色パターン22Rを隔壁として用いた場合、第1のサブフィルター層21の最外周部に形成される赤色パターン22Rが余ることなる。この場合、当該赤色パターン22Rを表示に寄与しないダミーパターンとすることが好ましい。
【0104】
なお、本実施形態においては、赤色パターン22Rを隔壁として緑色パターン22Gを形成し、赤色パターン22R及び緑色パターン22Gの双方のパターンを隔壁として、青色パターン22Bを形成しているが、これに限らない。例えば、ガスバリア層19の上面に予め隔壁層を形成した後に、上述した各パターン21R,21G,21Bを形成し、その後、フォトリソグラフィー法を用いて、各パターン21R,21G,21Bの上面に、各パターン22R,22G,22Bをそれぞれ形成してもよい。これにより、各パターン22R,22G,22Bのすべてを表示に寄与させるパターンとすることができる。
【0105】
次に、図6(a)に示すように、保護基板25の周辺部に周辺シール層23を形成する。
具体的には、ニードルディスペンス法により前述した紫外線硬化性樹脂材料を保護基板25の周囲に塗布していく。なお、この塗布方法は、スクリーン印刷法を用いてもよい。
【0106】
次に、図6(b)に示すように、保護基板25の周辺シール層23に囲まれた内部に充填層24を形成する。
具体的には、ジェットディスペンス法により前述した熱硬化性樹脂材料を塗布していく。なお、この熱硬化性樹脂材料は、必ずしも保護基板25の全面に塗布する必要はなく、保護基板25上の複数箇所に塗布すればよい。
【0107】
次に、図6(c)に示すように、周辺シール層23及び充填層24の材料液が塗布された保護基板25に紫外線照射を行う。
具体的には、周辺シール層23を仮硬化させる目的で、例えば、照度30mW/cm2、光量2000mJ/cm2 の紫外線を保護基板25上に照射する。この時、紫外線硬化性樹脂である周辺シール層23の材料液のみが硬化され粘度が向上する。
【0108】
次に、ガスバリア層19の表面にカラーフィルター層20が形成された素子基板10側と、周辺シール層23が仮硬化された保護基板25とを貼り合わせる。この時、周辺シール層23が素子基板10上に形成された有機緩衝層18の周辺端部の立ち上がり部分を完全に被覆するように配置する。
【0109】
具体的には、この貼り合わせ工程は、真空度が例えば1Paの真空雰囲気下で行い、加圧600N(ニュートン)で200秒間保持して圧着させる。
【0110】
次に、圧着して貼り合わせた有機EL装置1を大気中で加熱する。
具体的には、素子基板10と保護基板25とを貼り合わせた状態で大気中において加熱することで、前述した仮硬化した周辺シール層23と、充填層24を熱硬化させる。
【0111】
以上の工程を経ることより、前述した本実施形態における有機EL装置1(図1参照)を得ることができる。
【0112】
本実施形態の有機EL装置及び有機EL装置1の製造方法によれば、フォトリソグラフィー法を用いて複数のサブフィルター層21,22を積層することでカラーフィルター層20を形成している。そのため、カラーフィルター層20に所定の厚みが必要な場合であっても、各々のサブフィルター層21,22の厚みD1,D2を薄くすることにより、当該各々のサブフィルター層21,22の端部に生じるカラーフィルター層20の形成材料がテーパー形状になる現象を抑制することができる。これにより、当該各々のサブフィルター層21,22のテーパー部21Rb,21Gb,21Bbの幅W1,W2を、フォトリソグラフィー法を用いて単層のカラーフィルター層を形成した場合の当該カラーフィルター層のテーパー部の幅よりも小さくすることができる。そのため、カラーフィルター層20のうち所定の厚みが実現できている領域を大きくすることができる。したがって、高い色再現性を実現することが可能な有機EL装置1を製造することができる。
【0113】
各々のサブフィルター層の厚みを互いに大きく異ならせると、相対的に厚みの厚いサブフィルター層ではテーパー部の幅が大きくなり、相対的に厚みの薄いサブフィルター層ではテーパー部の幅が小さくなる。そのため、カラーフィルター層のうち所定の厚みが実現できている領域を十分に得ることは困難である。
これに対し、本実施形態によれば、各々のサブフィルター層21,22の厚みD1,D2を互いに概ね等しくすることにより、当該各々のサブフィルター層21,22のテーパー部21Rb,21Gb,21Bbの幅W1,W2を互いに概ね等しい大きさとすることができる。よって、カラーフィルター層20のうち所定の厚みが実現できている領域を最大限得ることができる。
【0114】
また、赤色テーパー部21Rbと緑色テーパー部21Gb、緑色テーパー部21Gbと青色テーパー部21Bb、青色テーパー部21Bbと赤色テーパー部21Rb、とがそれぞれ平面視において重なるように形成される。よって、カラーフィルター層20のうち所定の厚みが実現できている領域を広い範囲で得ることができる。
【0115】
また、素子基板10の発光素子12が封止層により封止され、当該封止層の上面にカラーフィルター層20が形成された、いわゆるトップエミッション方式のOCCF(On-chip Collor Filter)構造において、高い色再現性を実現することが可能な有機EL装置1の製造方法を実現することができる。
【0116】
また、発光素子12が電極保護層17及びガスバリア層19の双方の封止層により封止されるので、外部から発光素子12に水分や酸素等が浸入して発光素子12が劣化することを抑制することができる。また、発光素子12上に形成された電極保護層17の上面が凹凸形状であっても、カラーフィルター層20が形成される領域(ガスバリア層19の上面)が有機緩衝層18により平坦化される。よって、カラーフィルター層20を形成しやすくなる。
【0117】
また、カラーフィルター層20が2つのサブフィルター層21,22からなるので簡単な構成で、表示品質の向上を図ることが可能な有機EL装置1を実現することができる。
【0118】
なお、本実施形態においては、トップエミッション構造の有機EL装置1を例に挙げて説明したが、これに限らず、ボトムエミッション構造の有機EL装置においても本発明を適用可能である。例えば、ボトムエミッション構造の有機EL装置は、素子基板の有機EL素子が形成された側とは反対側に、カラーフィルター層が形成される。
【0119】
また、本実施形態においては、有機EL装置1が、周辺シール層23、充填層24及び保護基板25を備えた構成を例に挙げて説明したが、これに限らず、周辺シール層23、充填層24及び保護基板25を備えていない構成であってもよい。この場合、ガスバリア層19上に形成されたカラーフィルター層20の露出する部位全体を覆う保護膜を形成することが好ましい。
【0120】
(第2実施形態)
図7は、図1に対応した、本発明の第2実施形態に係る有機EL装置2を示す断面図である。
図7に示すように、本実施形態に係る有機EL装置2は、第1のサブフィルター層21と第2のサブフィルター層22との間に平坦化層26が形成されている点で上述の第1実施形態に係る有機EL装置1と異なっている。その他の点は上述の構成と同様であるので、図1と同様の要素には同一の符号を付し、詳細な説明は省略する。
【0121】
図7に示すように、有機EL装置2は、素子基板10と、素子基板10上の発光素子12の露出する部位全体を覆って形成された電極保護層17と、電極保護層17上に形成された有機緩衝層18と、電極保護層17上に有機緩衝層18の露出する部位全体を覆って形成されたガスバリア層19と、ガスバリア層19上に形成された第1のサブフィルター層21と、ガスバリア層19上の第1のサブフィルター層21の露出する部位全体を覆って形成された平坦化層26と、平坦化層26上の第1のサブフィルター層21と平面視において重なる位置に形成された第2のサブフィルター層22と、素子基板10の外周部に沿って配置された周辺シール層23と、周辺シール層23の内部に形成された充填層24と、周辺シール層23を介して素子基板10と貼り合わされた保護基板25と、を備えている。本実施形態においては、平坦化層26を挟んで配置された第1のサブフィルター層21と第2のサブフィルター層22とによりカラーフィルター層20が構成されている。
【0122】
平坦化層26は、第1のサブフィルター層21を構成する各パターン21R,21G,21Bの形状の影響により、凹凸状に形成された第1のサブフィルター層21の凹凸部分を埋めるように配置されている。平坦化層26の上面は略平坦に形成されている。
【0123】
平坦化層26の形成材料としては、例えば、上述した有機緩衝層18の形成材料と同様のものが用いられる。例えば、ビスフェノールA型エポキシオリゴマーやビスフェノールF型エポキシオリゴマー等のエポキシ基を有する分子量3000以下のエポキシモノマー/オリゴマーが用いられる。
【0124】
次に、図8を参照して本実施形態における有機EL装置2の製造方法を説明する。
図8は、有機EL装置2の製造工程についての説明図である。なお、ガスバリア層19の上面に、第1のサブフィルター層21を形成するまでの工程については、上述した第1実施形態における有機EL装置1の製造方法(図3(a)〜図4(c))と同様であるため、詳細な説明は省略する。
【0125】
まず、図8(a)に示すように、素子基板10上のガスバリア層19及び第1のサブフィルター層21の露出する部位全体を覆って平坦化層26を形成する。
具体的には、減圧雰囲気下でスクリーン印刷を行った平坦化層26を、60〜100℃の範囲で加熱して硬化させる。例えば、ある程度硬化が進むまでは低温で放置し、ある程度高粘度化したところで温度を上げて完全硬化させることが好ましい。
【0126】
次に、図8(b)に示すように、平坦化層26の上面に第2のサブフィルター層22を形成する。第2のサブフィルター層22を形成する際には、各パターン22R,22G,22Bが平面視において第1のサブフィルター層21の各パターン21R,21G,21Bとそれぞれ重なるようにする。なお、第2のサブフィルター層22の形成工程については、上述した第1実施形態における有機EL装置1の製造方法(図4(d)〜図5(e))と同様であるため、詳細な説明は省略する。
以上の工程により、第1のサブフィルター層21の上に、平坦化層26を介して第2のサブフィルター層22が形成される。これにより、ガスバリア層19の上に、カラーフィルター層20が形成される。
【0127】
以下、保護基板25の周辺部に周辺シール層23を形成する工程、保護基板25の周辺シール層23に囲まれた内部に充填層24を形成する工程、周辺シール層23及び充填層24の材料液が塗布された保護基板25に紫外線照射を行う工程、ガスバリア層19の上にカラーフィルター層20が形成された素子基板10と、周辺シール層23が仮硬化された保護基板25とを貼り合わせる工程、圧着して貼り合わせた有機EL装置2を大気中で加熱する工程、を経ることより、前述した本実施形態における有機EL装置2(図7参照)を得ることができる。
【0128】
本実施形態の有機EL装置2及び有機EL装置2の製造方法によれば、素子基板10上に形成された第1のサブフィルター21の上面が凹凸形状であっても、第2のサブフィルター層22が形成される領域が平坦化層26により平坦化される。よって、第2のサブフィルター層22を形成しやすくなる。
【0129】
(第3実施形態)
図9は、図7に対応した、本発明の第3実施形態に係る有機EL装置3を示す断面図である。
図9に示すように、本実施形態に係る有機EL装置3は、隣り合う位置に配置された各パターンのテーパー部が互いに重なる部分上に遮光層27が形成されている点で上述の第2実施形態に係る有機EL装置2と異なっている。その他の点は上述の構成と同様であるので、図7と同様の要素には同一の符号を付し、詳細な説明は省略する。
【0130】
図9に示すように、有機EL装置3は、素子基板10と、素子基板10上の発光素子12の露出する部位全体を覆って形成された電極保護層17と、電極保護層17上に形成された有機緩衝層18と、電極保護層17上に有機緩衝層18の露出する部位全体を覆って形成されたガスバリア層19と、ガスバリア層19上に形成された第1のサブフィルター層21と、第1のサブフィルター層21上の各パターン21R,21G,21Bのテーパー部21Rb,21Gb,21Bbが互いに重なる部分上に形成された遮光層27と、ガスバリア層19上の第1のサブフィルター層21及び遮光層27の露出する部位全体を覆って形成された平坦化層26と、平坦化層26上の第1のサブフィルター層21と平面視において重なる位置に形成された第2のサブフィルター層22と、素子基板10の外周部に沿って配置された周辺シール層23と、周辺シール層23の内部に形成された充填層24と、周辺シール層23を介して素子基板10と貼り合わされた保護基板25と、を備えている。本実施形態においては、平坦化層26及び遮光層27を挟んで配置された第1のサブフィルター層21と第2のサブフィルター層22とによりカラーフィルター層20が構成されている。
【0131】
遮光層27は、カーボンブラック等の顔料が混入された樹脂からなる遮光層であり、適切な色変換を行うため、各パターン21R,21G,21Bの隣接する画素領域間の光漏れを防止するものである。遮光層27は、撥液性を有するフッ素原子を含んでいる樹脂からなっており、層全体がフッ素樹脂で形成されていても、表面のみがフッ素原子が多く存在するように何らかの表面処理が施された樹脂層でもよい。遮光層27の幅は、テーパー部21Rb,21Gb,21Bbの幅と略同じ幅になっている。遮光層27の膜厚は、遮光性を考慮して0.5〜2μm程度の比較的厚い膜厚で形成される。
【0132】
平坦化層26は、第1のサブフィルター層21上に形成された遮光層27の凹凸部分(遮光層27の光透過部分及び遮光部分)を埋めるように配置されている。平坦化層26の上面は略平坦に形成されている。
【0133】
次に、図10を参照して本実施形態における有機EL装置3の製造方法を説明する。
図10は、有機EL装置3の製造工程についての説明図である。なお、ガスバリア層19の上面に、第1のサブフィルター層21を形成するまでの工程については、上述した第1実施形態における有機EL装置1の製造方法(図3(a)〜図4(c))と同様であるため、詳細な説明は省略する。
【0134】
まず、図10(a)に示すように、第1のサブフィルター層21の上面に遮光層27を形成する。遮光層27を形成する際には、遮光部分が平面視において第1のサブフィルター層21の各パターン21R,21G,21bのテーパー部21Rb,21Gb,21Bbが互いに重なる部分と重なるようにする。
【0135】
具体的には、大気雰囲気下で遮光層27の材料液をインクジェット法により第1のサブフィルター層21の上面に塗布していく。この時、素子基板10上の画素隔壁16の形成領域と平面視において重なる領域に塗布していく。また、必要に応じて、遮光層27の形成領域以外の領域に、予めレジスト等で隔壁をパターン形成しておいてもよい。次に、素子基板10を遮光層27の材料液のみが塗布された状態で乾燥硬化させる。
【0136】
なお、遮光層27の材料液の塗布方法は、インクジェット法以外にも、ジェットディスペンス法、ニードルディスペンス法等の非接触塗布法を用いてもよい。
【0137】
次に、図10(b)に示すように、素子基板10上のガスバリア層19、第1のサブフィルター層21及び遮光層27の露出する部位全体を覆って平坦化層26を形成する。
具体的には、減圧雰囲気下でスクリーン印刷を行った平坦化層26を、60〜100℃の範囲で加熱して硬化させる。例えば、ある程度硬化が進むまでは低温で放置し、ある程度高粘度化したところで温度を上げて完全硬化させることが好ましい。
【0138】
次に、図10(b)に示すように、平坦化層26の上面に第2のサブフィルター層22を形成する。第2のサブフィルター層22を形成する際には、各パターン22R,22G,22Bが平面視において第1のサブフィルター層21の各パターン21R,21G,21Bとそれぞれ重なるようにする。
以上の工程により、第1のサブフィルター層21の上に、平坦化層26及び遮光層27を介して第2のサブフィルター層22が形成される。これにより、ガスバリア層19の上に、カラーフィルター層20が形成される。
【0139】
以下、保護基板25の周辺部に周辺シール層23を形成する工程、保護基板25の周辺シール層23に囲まれた内部に充填層24を形成する工程、周辺シール層23及び充填層24の材料液が塗布された保護基板25に紫外線照射を行う工程、ガスバリア層19の上にカラーフィルター層20が形成された素子基板10と、周辺シール層23が仮硬化された保護基板25とを貼り合わせる工程、圧着して貼り合わせた有機EL装置2を大気中で加熱する工程、を経ることより、前述した本実施形態における有機EL装置3(図9参照)を得ることができる。
【0140】
本実施形態の有機EL装置3によれば、発光素子12で発光した光が遮光層27で遮光されるので、発光素子12で発光した光は当該発光素子12に対応するパターンを透過するようになり、隣のパターンを通過することが回避される。よって、発光色の混色を抑制することができる。
【0141】
(第4実施形態)
図11は、図1に対応した、本発明の第4実施形態に係る有機EL装置4を示す断面図である。
図11に示すように、本実施形態に係る有機EL装置4は、カラーフィルター層20に替えてカラーフィルター層40を備える点で上述の第1実施形態に係る有機EL装置1と異なっている。その他の点は上述の構成と同様であるので、図1と同様の要素には同一の符号を付し、詳細な説明は省略する。
【0142】
図11に示すように、有機EL装置4は、素子基板10と、素子基板10上の発光素子12の露出する部位全体を覆って形成された電極保護層17と、電極保護層17上に形成された有機緩衝層18と、電極保護層17上に有機緩衝層18の露出する部位全体を覆って形成されたガスバリア層19と、ガスバリア層19上に形成されたカラーフィルター層40と、素子基板10の外周部に沿って配置された周辺シール層23と、周辺シール層23の内部に形成された充填層24と、周辺シール層23を介して素子基板10と貼り合わされた保護基板25と、を備えている。
【0143】
本実施形態のカラーフィルター層40は、第1のサブフィルター層41と、各パターンの厚みが調整された第2のサブフィルター層42と、が積層されて形成されている。
【0144】
第1のサブフィルター層41は、赤色パターン41Rと緑色パターン41Gと青色パターン41Bとが隣り合うように配列されている。
第2のサブフィルター層42は、赤色パターン42Rと緑色パターン42Gと青色パターン42Bとが隣り合うように配列されている。
【0145】
本実施形態においては、第1のサブフィルター層41は、赤色パターン41Rの厚みと緑色パターン41Gの厚みと青色パターン41Bの厚みとが概ね等しくなるように形成されている。一方、第2のサブフィルター層42は、赤色パターン42Rの厚みよりも緑色パターン42Gの厚みのほうが厚く、緑色パターン42Gの厚みよりも青色パターン42Bの厚みのほうが厚くなるように形成されている。
第1のサブフィルター層41の厚みを全体的に均一にし、かつ、第2のサブフィルター層42の各パターン42R,42G,42Bの厚みをそれぞれ調整することによってカラーフィルター層40の所望の色変換特性を得ている。
【0146】
なお、本実施形態においては、第1のサブフィルター層41が、赤色パターン41Rの厚みと緑色パターン41Gの厚みと青色パターン41Bの厚みとが概ね等しくなるように形成されているが、これに限らない。例えば、第1のサブフィルター層41の各パターン41R,41G,41Bの厚みをそれぞれ調整してもよい。
【0147】
また、本実施形態においては、第2のサブフィルター層42が、赤色パターン42Rの厚みよりも緑色パターン42Gの厚みのほうが厚く、緑色パターン42Gの厚みよりも青色パターン42Bの厚みのほうが厚くなるように形成されているが、これに限らない。例えば、青色パターン42Bの厚みよりも緑色パターン42Gの厚みのほうが厚く、緑色パターン42Gの厚みよりも赤色パターン42Rの厚みのほうが厚くなるように形成されていてもよい。各パターン42R,42G,42Bの厚みは必要に応じて適宜調整することができる。
【0148】
次に、図12を参照して本実施形態における有機EL装置4の製造方法を説明する。
図12は、有機EL装置4の製造工程についての説明図である。なお、第1のサブフィルター層41の上面に第2のサブフィルター層42の赤色パターン42Rを形成するまでの工程については、上述した第1実施形態における有機EL装置1の製造方法(図3(a)〜図5(a))と同様であるため、詳細な説明は省略する。
【0149】
まず、図12(a)に示すように、第1のサブフィルター層41の上面に、赤色パターン42Rを形成する。
【0150】
次に、図12(b)に示すように、第1のサブフィルター層41上の赤色パターン42Rの露出する部位全体を覆って緑色パターン用のカラーレジスト42GEを塗布する。ここで、カラーレジスト42GEは、赤色パターン42Rの間の領域に配置される部分の厚みが赤色パターン42Rの厚みよりも厚くなるように形成する。
【0151】
次に、図12(c)に示すように、緑色パターン用のフォトマスク40Gを介して、カラーレジスト42GEを露光してUV硬化させ、不溶化させる。
【0152】
次に、図12(d)に示すように、現像液によりカラーレジスト42GEの不要な部分を除去した後、残ったカラーレジスト42GEをベークにて硬化させる。これにより、第1のサブフィルター層41の上面に、緑色パターン42Gが形成される。第1のサブフィルター層41上には、赤色テーパー部42Rbと緑色テーパー部42Gbとが平面視において重なるように配置される。
【0153】
次に、図12(e)に示すように、赤色パターン42R及び緑色パターン42Gの双方のパターンを隔壁として、青色パターン用のカラーレジスト42BEを塗布する。ここで、カラーレジスト42GEは、赤色パターン42Rと緑色パターン42Gの間の領域に配置される部分の厚みが緑色パターン42Gの厚みよりも厚くなるように形成する。
【0154】
次に、カラーレジスト42BEをベークにて硬化させる。これにより、図11に示すように、第1のサブフィルター層41の上面に、青色パターン42Bが形成される。第1のサブフィルター層41上には、緑色テーパー部42Gbと青色テーパー部42Bbとが平面視において重なるように配置されるとともに、青色テーパー部42Bbと赤色テーパー部42Rbとが平面視において重なるように配置される。
以上の工程により、第1のサブフィルター層41の上面に、各パターンの厚みが調整された第2のサブフィルター層42が形成される。これにより、ガスバリア層19の上面に、カラーフィルター層40が形成される。
【0155】
以下、保護基板25の周辺部に周辺シール層23を形成する工程、保護基板25の周辺シール層23に囲まれた内部に充填層24を形成する工程、周辺シール層23及び充填層24の材料液が塗布された保護基板25に紫外線照射を行う工程、ガスバリア層19の上にカラーフィルター層40が形成された素子基板10と、周辺シール層23が仮硬化された保護基板25とを貼り合わせる工程、圧着して貼り合わせた有機EL装置2を大気中で加熱する工程、を経ることより、前述した本実施形態における有機EL装置4(図11参照)を得ることができる。
【0156】
本実施形態の有機EL装置4の製造方法によれば、各パターンの厚みが調整されたカラーフィルター層40を有する構成において、高い色再現性を実現することが可能な有機EL装置4を製造することができる。
【0157】
(電子機器)
次に、前記実施形態の有機EL装置を備えた電子機器の例について説明する。
【0158】
図13(a)は、携帯電話の一例を示した斜視図である。図13(a)において、符号1000は携帯電話本体を示し、符号1001は有機EL装置を備えた表示部を示している。
【0159】
図13(b)は、腕時計型電子機器の一例を示した斜視図である。図13(b)において、符号1100は時計本体を示し、符号1101は有機EL装置を備えた表示部を示している。
【0160】
図13(c)は、ワープロ、パソコンなどの携帯型情報処理装置の一例を示した斜視図である。図13(c)において、符号1200は情報処理装置、符号1202はキーボードなどの入力部、符号1204は情報処理本体、符号1206は有機EL装置を備えた表示部を示している。
【0161】
図13(a)〜(c)に示す電子機器は、先の実施形態に示した有機EL装置が備えられたものであるので、表示特性が良好な電子機器となる。
【0162】
なお、電子機器としては、上記以外にも、エンジニアリング・ワークステーション(EWS)、ページャ、テレビ、ビューファインダー型またはモニター直視型のビデオテープレコーダー、電子手帳、電子卓上計算機、カーナビゲーション装置、POS端末、タッチパネル、ヘッドマウントディスプレイ(HMD)などを挙げることができる。
【符号の説明】
【0163】
1,2,3,4…有機EL装置、10…素子基板、12…発光素子(有機EL素子)、15…発光層(有機発光層)、17…電極保護層(第1無機封止層)、18…有機緩衝層、19…ガスバリア層(第2無機封止層)、20,40…カラーフィルター層、21,41…第1のサブフィルター層、21R,22R,41R,42R…赤色パターン、21Ra,22Ra,41Ra,42Ra…赤色本体部、21Rb,22Rb,41Rb,42Rb…赤色テーパー部、21G,22G,41G,42G…緑色パターン、21Ga,22Ga,41Ga,42Ga…緑色本体部、21Gb,22Gb,41Gb,42Gb…緑色テーパー部、21B,22B,41B,42B…青色パターン、21Ba,22Ba,41Ba,42Ba…青色本体部、21Bb,22Bb,41Bb,42Bb…青色テーパー部、22,42…第2のサブフィルター層、26…平坦化層、27…遮光層、1000…携帯電話(電子機器)、1100…腕時計型電子機器(電子機器)、1200…携帯型情報処理装置(電子機器)、D1…第1のサブフィルター層の厚み、D2…第2のサブフィルター層の厚み、W1…第1のサブフィルター層のテーパー部の幅、W2…第2のサブフィルター層のテーパー部の幅

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
前記基板上に形成されたカラーフィルター層と、
前記基板と前記カラーフィルター層の間に形成された第1電極と、
前記第1電極と対向して形成された第2電極と、
前記第1電極と前記第2電極の間に形成された有機発光層と、を有し、
前記カラーフィルター層は、前記基板に垂直な方向から見たときに前記第1電極と重なる領域に形成された、第1の色を透過する第1のサブフィルター層と第2のサブフィルター層とを有し、
前記第1のサブフィルター層と前記第2のサブフィルター層とは同じ材料からなり、
前記第1のサブフィルター層と前記第2のサブフィルター層とは積層されていることを特徴とする、有機EL装置。
【請求項2】
前記第1電極と同層に、前記第2電極と対向して形成された第3電極をさらに有し、
前記カラーフィルター層は、前記基板に垂直な方向から見たときに前記第3電極と重なる領域に形成された、第2の色を透過する第3のサブフィルター層と第4のサブフィルター層とをさらに有し、
前記第3のサブフィルター層と前記第4のサブフィルター層とは同じ材料からなり、
前記第3のサブフィルター層と前記第4のサブフィルター層とは積層されており、
前記第1のサブフィルター層の端部と前記第3のサブフィルター層の端部とは、前記基板に垂直な方向から見たときに重なっており、
前記第2のサブフィルター層の端部と前記第4のサブフィルター層の端部とは、前記基板に垂直な方向から見たときに重なっていることを特徴とする、請求項1に記載の有機EL装置。
【請求項3】
前記第1のサブフィルター層と、前記第2のサブフィルター層との間に形成された平坦化層を有することを特徴とする、請求項1または2に記載の有機EL装置。
【請求項4】
前記第1のサブフィルター層と、前記第2のサブフィルター層との間に形成された平坦化層を有し、
前記平坦化層の、前記基板に垂直な方向から見たときに前記第1のサブフィルター層と前記第3のサブフィルター層とが重なる領域に、遮光層が形成されていることを特徴とする、請求項2に記載の有機EL装置。
【請求項5】
前記第2電極と、前記カラーフィルター層との間に設けられた封止層を有し、前記カラーフィルター層は前記封止層に接していることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項に記載の有機EL装置。
【請求項6】
基板上に第1電極を形成する工程と、
前記第1電極上に有機発光層を形成する工程と、
前記有機発光層上に第2電極を形成する工程と、
前記第2電極上に、前記基板に垂直な方向から見たときに前記第1電極と重なる領域にカラーフィルター層を形成する工程と、を含み、
前記カラーフィルター層を形成する工程は、
第1のサブフィルター層をフォトリソグラフィー法によって形成する工程と、
前記第1のサブフィルター層上に、第1のサブフィルター層と同じ材料で第2のサブフィルター層をフォトリソグラフィー法で形成する工程と、を含むことを特徴とする、有機EL装置の製造方法。
【請求項7】
請求項1〜5のいずれか一項に記載の有機EL装置を備えたことを特徴とする、電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2013−26064(P2013−26064A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−160714(P2011−160714)
【出願日】平成23年7月22日(2011.7.22)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】