説明

有機EL装置およびその製造方法

【課題】一表面上に複数の発光画素領域と格子状隔壁が形成された基板と封止基材との接着部に大気中の水分や空気等が入り込むことを抑制することのできる有機EL装置及びその製造方法を提供する。
【解決手段】有機EL素子基板10と封止基板21とを接着剤により貼り合わせて有機EL装置を製造するに際して、有機EL素子基板10の第一電極13を区画する格子状隔壁14の交差部上に複数の突起物15を配設し、これら突起物15の先端を封止基板21に当接させた状態で有機EL素子基板10と封止基板21とを貼り合わせる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機エレクトロルミネッセンス(以下「有機EL」という。)現象を利用した有機EL装置とその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
基板上に薄膜トランジスタ(TFT)を備えると共に、該TFTと接続するように電極(陽極、陰極)を設け、これらの陽極と陰極との間に、少なくともEL発光現象を呈する有機発光層を積層させた複数の有機EL素子を備える有機EL装置においては、これら有機EL素子の発光画素領域を囲うために、絶縁性を有する隔壁が前記基板の一表面上に格子状に形成されている。さらに、発光効率を高めることを目的として、陽極と有機発光層との間に正孔輸送層、正孔注入層、および有機発光層と陰極との間に電子輸送層、電子注入層が配置される場合もある。これらの積層構造を有機発光媒体層と呼ぶ。
【0003】
しかし、このような陰極や電子注入層は高活性であるため、大気中の水分と反応しやすく変質しやすい。かかる変質により、電子注入効果が損なわれ、ダークスポットと呼ばれる非発光部分が画素内に発生する。そこで、従来は有機EL素子が形成された基板(以下「有機EL素子基板」という。)とガラスなどからなる封止基材とを、有機EL素子を覆うように樹脂等により貼り合わせた構造が知られている。
【0004】
このように樹脂等を塗布させた状態で封止を行う場合、有機EL素子基板と封止基材とのギャップ(間隔)を精密に制御し、基板全体の高さを一定にする必要がある。この高さが不均一の場合、大気中の水分が有機EL素子基板と封止基材との接着部に混入することによる変質が発生する。この変質が有機EL装置の劣化へとつながる。よって、基板間のギャップを管理することにより変質を防ぐ必要がある。このようなギャップを管理する簡便な方法として、貼りあわせを実施する基板の少なくとも一つの基板上にスペーサ(ギャップ材)を形成させる方法が知られている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−294057号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1に開示された技術のように、カラーフィルタ層を有する基板(以下「カラーフィルタ基板」という。)上にスペーサを形成して封止基材としてのカラーフィルタ基板と有機EL素子基板とを貼り合わせると、カラーフィルタ層がブラックマトリクス層に乗り上げることによるオーバーラップ現象やツノ段差などが発生し、有機EL素子基板とカラーフィルタ基板とのギャップを精密に調整することが困難になるという課題があった。ゆえに、カラーフィルタ上にスペーサを設けた基板では、これらの影響により基板内高さを均一にすることが出来ず、対向基板とのセルギャップにバラつきが生じるという課題があった。
【0007】
このような現象は有機EL装置の場合でも見られる。カラーフィルタ上にスペーサが形成された基板と、有機EL素子が形成された基板とを樹脂等を用いて貼り合わせた場合、カラーフィルタ上にスペーサが形成された基板のツノ段差により、該基板と有機EL素子基板とを均一に貼り合わせることが出来ないという課題があった。かかる現象により、有機EL装置内に大気中の水分や酸素が混入する。有機EL素子基板上の陰極や電子注入層は高活性材料にて構成されているため、該水分や酸素による変質が生じる。ゆえに、有機EL素子基板上にスペーサを形成し、カラーフィルタとの均一な貼り合わせを可能とする有機EL装置が必要となる。
また、有機EL素子基板上に突起物を形成した場合、凸版印刷法を用いて有機発光媒体層を印刷すると、突起物が凸版印刷法の印刷版と接触し、印刷不良が生じるという問題があった。その為、突起物を印刷版と接触しない位置に配置させる必要がある。
【0008】
凸版印刷法とは印刷法における手法の一つである。ここで、凸版印刷法により用いられる印刷版は、ストライプ状の凸部を複数有しており、該凸部に有機発光材料インキを塗布し、該インキを基板上に塗布させる。この方法を用いて有機発光媒体層を形成した場合、真空蒸着法などの他の手法を用いた場合より精細なパターン形成を可能とし、かつ均一な薄膜となる有機発光媒体層の形成を可能とする。
本発明は上述した課題に鑑みてなされたもので、一表面上に複数の発光画素領域と格子状隔壁が形成された基板と封止基材との接着部に大気中の水分や空気等が入り込むことを抑制することのできる有機EL装置及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明の請求項1に係る発明は、第一電極、有機発光媒体層及び第二電極を積層して形成される複数の発光画素領域と該発光画素領域を囲う格子状隔壁とを一表面上に有する基板と、該基板と前記発光画素領域及び前記格子状隔壁を介して貼り合わされた封止基材とを備え、前記格子状隔壁が互いに平行な複数の第一隔壁ラインと、該第一隔壁ラインと直交する複数の第二隔壁ラインとで形成される有機EL装置の製造方法であって、前記第一隔壁ライン上のみに複数の突起物を配設した後、前記有機発光媒体層を形成する複数の層のうち少なくとも1つの層を凸版印刷法により前記第一隔壁ラインに沿ってパターン形成し、次いで前記有機発光媒体層上に前記第二電極を形成した後、前記突起物の先端を前記封止基材に当接させた状態で前記基板と前記封止基材とを貼り合わせることを特徴とする。
【0010】
本発明の請求項2に係る発明は、請求項1記載の有機EL装置の製造方法において、前記複数の突起物を前記第一隔壁ラインと前記第二隔壁ラインとの交差部上に配設した後、前記有機発光媒体層を形成する複数の層のうち少なくとも1つの層を凸版印刷法により前記第一隔壁ラインまたは前記第二隔壁ラインに沿ってパターン形成し、次いで前記有機発光媒体層上に前記第二電極を形成した後、前記突起物の先端を前記封止基材に当接させた状態で前記基板と前記封止基材とを貼り合わせることを特徴とする。
【0011】
本発明の請求項3に係る発明は、請求項1又は2記載の有機EL装置の製造方法において、前記有機発光媒体層を形成する複数の層のうち少なくとも1つの層を前記凸版印刷法によりパターン形成するに際して、表面に複数の凸部がストライプ状に形成された凸版印刷版を用いて前記有機発光媒体層を形成する複数の層のうち少なくとも1つの層をパターン形成することを特徴とする。
【0012】
本発明の請求項4に係る発明は、請求項3記載の有機EL装置の製造方法において、前記凸部の短辺方向の幅が前記有機発光媒体層の一辺の長さより小さい凸版印刷版を用いて前記有機発光媒体層を形成する複数の層のうち少なくとも1つの層をパターン形成することを特徴とする。
本発明の請求項5に係る発明は、請求項3又は4記載の有機EL装置の製造方法において、前記凸部の短辺方向の幅が前記複数の突起物のうち隣り合う二つの突起物の間隔より小さい凸版印刷版を用いて前記有機発光媒体層を形成する複数の層のうち少なくとも1つの層をパターン形成することを特徴とする。
【0013】
本発明の請求項6に係る発明は、請求項3〜5のいずれか一項記載の有機EL装置の製造方法において、前記凸部の高さが前記突起物の高さより低い凸版印刷版を用いて前記有機発光媒体層を形成する複数の層のうち少なくとも1つの層をパターン形成することを特徴とする。
本発明の請求項7に係る発明は、第一電極、有機発光媒体層及び第二電極を積層して形成される複数の発光画素領域と該発光画素領域を囲う格子状隔壁とを一表面上に有する基板と、該基板と前記発光画素領域及び前記格子状隔壁を介して貼り合わされた封止基材とを備え、前記格子状隔壁が互いに平行な複数の第一隔壁ラインと、該第一隔壁ラインと直交する複数の第二隔壁ラインとで形成される有機EL装置であって、前記基板と前記封止基材との間隔を規定する複数の突起物が前記格子状隔壁の第一隔壁ライン上に配設されていることを特徴とする。
【0014】
本発明の請求項8に係る発明は、請求項7記載の有機EL装置において、前記複数の突起物が前記格子状隔壁の第一隔壁ラインと第二隔壁ラインとの交差部上に配設されていることを特徴とする。
本発明の請求項9に係る発明は、請求項7又は8記載の有機EL装置において、前記封止基材が前記発光画素領域からの光をカラー化するカラーフィルタ層と、該カラーフィルタ層を格子状に区画するブラックマトリクス層とを有することを特徴とする。
本発明の請求項10に係る発明は、請求項9記載の有機EL装置において、前記突起物が前記ブラックマトリクス層と対向する位置に形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明の請求項1に係る発明によれば、基板と封止基材との間隔(ギャップ)を格子状隔壁の第一隔壁ライン上に配設された複数の突起物により基板の全面にわたって一定に保つことが可能となるので、基板と封止基材との接着部に大気中の水分や空気等が入り込むことを抑制することができる。したがって、基板と封止基材との接着部に入り込んだ水分によって発光画素領域が変質したり、あるいは基板と封止基材との接着部に入り込んだ空気によって発光画素領域に気泡が発生したりすることを抑制することができる。また、例えば有機発光層を凸版印刷法によりパターン形成するに際して、有機発光層を第一隔壁ラインに沿ってパターン形成することで、凸版印刷版の凸部が突起物と干渉することを防止することができる。
【0016】
本発明の請求項2に係る発明によれば、凸版印刷による印刷方向を格子状隔壁の横方向または縦方向のどちらに選択しても凸版印刷版の凸部が突起物と干渉し合うことがないので、格子状隔壁の横方向と縦方向のいずれの方向からでも有機発光媒体層を形成することができる。
本発明の請求項3に係る発明によれば、凸版印刷版の凸部を格子状隔壁で囲まれた領域に合せるだけで有機発光媒体層を第一電極上に形成することが可能となるので、第一電極上に有機発光媒体層を精密に形成することができる。
【0017】
本発明の請求項4に係る発明によれば、凸版印刷版の凸部が格子状隔壁の側面と干渉することを防止することが可能となり、これにより、第一電極上に有機発光媒体層を精密に形成することができる。
本発明の請求項5に係る発明によれば、凸版印刷版の凸部が突起物と干渉することを防止することが可能となり、これにより、第一電極上に有機発光媒体層を精密に形成することができる。
【0018】
本発明の請求項6に係る発明によれば、凸版印刷版の凸部が突起物と干渉することを防止することが可能となり、これにより、第一電極上に有機発光媒体層を精密に形成することができる。
本発明の請求項7に係る発明によれば、基板と封止基材との間隔(ギャップ)を格子状隔壁の第一隔壁ライン上に配設された複数の突起物により基板の全面にわたって一定に保つことが可能となるので、基板と封止基材との接着部に大気中の水分や空気等が入り込むことを抑制することができる。したがって、基板と封止基材との接着部に入り込んだ水分によって発光画素領域が変質したり、あるいは基板と封止基材との接着部に入り込んだ空気によって発光画素領域に気泡が発生したりすることを抑制することができる。
【0019】
本発明の請求項8及び9に係る発明によれば、凸版印刷による印刷方向を格子状隔壁の横方向または縦方向のどちらに選択しても凸版印刷版の凸部が突起物と干渉し合うことがないので、格子状隔壁の横方向と縦方向のいずれの方向からでも有機発光媒体層を形成することができる。
本発明の請求項10に係る発明によれば、格子状隔壁上に配設された複数の突起物をブラックマトリクス層の交点に当接させた状態で基板と封止基材とを貼り合わせることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の一実施形態に係るトップエミッション型有機EL装置の構造を模式的に示す断面図である。
【図2】本発明の一実施形態に係るトップエミッション型有機EL装置の格子状隔壁上に配設された突起物を模式的に示す図である。
【図3】有機EL装置の有機発光媒体層を形成するときに用いられる凸版印刷版の凸部と発光画素領域を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。なお、以下の説明で参照する図面は本発明の構成を説明するためのものであり、図示される各部の大きさや厚さ、寸法等は実際のものとは異なる。また、本発明はこれらに限定されるものではない。
図1〜図3は本発明の一実施形態を説明するための図で、図1(a)は本発明の一実施形態に係るトップエミッション型有機EL装置の有機EL素子基板の構造を模式的に示す断面図、図1(b)は本発明の一実施形態に係るトップエミッション型有機EL装置のカラーフィルタ基板の構造を模式的に示す断面図である。また、図1(c)は本発明の一実施形態に係るトップエミッション型有機EL装置の構造を模式的に示す断面図で、本発明の一実施形態に係るトップエミッション型有機EL装置は、図1(a)に示す構造の有機EL素子基板10と図1(b)に示す構造のカラーフィルタ基板20とを接着層30により貼り合わせて形成されている。
【0022】
ここで、有機EL素子基板10は基板11、平坦化膜12、第一電極13、格子状隔壁14、突起物15、有機発光媒体層16、第二電極17、保護膜18及び薄膜トランジスタ層(図示せず)を含んで構成され、カラーフィルタ基板20は封止基板21、カラーフィルタ層22及びブラックマトリクス層23を含んで構成されている。
以下、有機EL素子基板10を構成する各部について説明する。
基板11の素材としては、絶縁性を有する材料または表面に絶縁性を有する薄膜を形成した基板であればよく、基板の色も特に限定されるものではない。この基板11の表面には、後述する第一電極13への電力供給を制御する目的で薄膜トランジスタ(TFT)が形成される。この薄膜トランジスタは、公知の技術により作成することが可能である。たとえば、ソース領域、ドレイン領域およびチャネル領域をそれぞれ有し、多結晶シリコンやアモルファスシリコン等からなる半導体膜を基板11上に形成し、半導体膜を覆う透明なゲート絶縁膜上にゲート電極を形成することでTFTを基板11上に形成することができる。この場合、ゲート電極はAl、Mo、Ti、Ta等から形成され、かつ半導体膜のチャネル領域に対応する位置に形成されることが好ましい。
【0023】
平坦化膜12は、基板11上にTFTを形成することにより生じた基板表面の凹凸を吸収し、基板表面を平坦化させる目的で基板11上のTFTと第一電極13との間に形成されるものである。従って、平坦化膜12の素材としては、絶縁性を有すると共に平坦性に優れた材料を用いる必要があり、例えばポリイミド系やアクリル系などの樹脂材料を挙げることができる。
【0024】
第一電極13は平坦化膜12の表面に形成されるものであり、TFTを機能させるために、平坦化膜12に形成されたスルーホール内の金属配線を介してTFTのゲート電極と電気的に接続される。なお、TFTのソース電極と接続される場合は陽極として機能し、TFTのドレイン電極と接続される場合は陰極として機能する。
第一電極13の素材としては、導電性を有する材料であれば特に制約を受けないが、仕事関数の大きい材料(例えば、スズドープ酸化インジウム(ITO)、亜鉛ドープ酸化インジウム(IZO)等の導電性金属酸化物)を用いることが好ましい。また、第一電極13の厚さも特に制約はないが、例えば0.02μm以上0.5μm以下の厚さで平坦化膜12上に形成することで格子状隔壁14の厚みより薄くなるので好ましい。
【0025】
第一電極13をITO、IZO等の導電性金属酸化物で形成する場合は、効率のよい発光を得るために、反射率の高いメタル電極を第一電極13と平坦化膜12との間に形成してもよい。このようなメタル電極は導電性金属酸化物より抵抗率が低いため、メタル電極が補助電極として機能すると同時に、光を対向基板側へ反射させることによる光の有効利用を図ることが可能である。メタル電極としては反射率の高い金属であればよく、例えばAg、Al、Mo、Taなどの高反射率金属が挙げられる。
【0026】
格子状隔壁14は第一電極13、有機発光媒体層16及び第二電極17からなる発光画素領域を格子状に区画するためのもので、第一電極13の端部を覆いながら平坦化膜12上に格子状に形成される。格子状隔壁14の素材としては絶縁性を有するものであれば特に制約はないが、具体的にはポリイミド系、アクリル樹脂系、ノボラック樹脂系などの材料が挙げられる。
【0027】
また、格子状隔壁14は互いに平行な複数の第一隔壁ライン141(図2参照)と、これらの第一隔壁ライン141と直交する複数の第二隔壁ライン142(図2参照)とで形成されている。
平坦化膜12の表面に格子状隔壁14を形成するときには格子状隔壁14の高さを有機EL素子全体の厚みに応じて設定すればよいが、格子状隔壁14の高さが0.1μm未満の場合は有機発光媒体層16の形成時における各発光色の塗り分けが不十分となったり、格子状隔壁14が第一電極13の端部を覆いきることが出来ずにショートしたりするなどの現象が生じ、10μmを超える場合は有機発光媒体層16の形成に支障が生じるという理由から、格子状隔壁14の高さを0.1μm以上10μm以下、望ましくは0.5μm以上2μm以下とすることが好ましい。
【0028】
突起物15は有機EL素子が形成された基板11とカラーフィルタ層22等が形成された封止基板21とのギャップ(間隔)を一定に保持して有機EL装置全体の高さを一定にするためのもので、保護膜18の表面から先端を突出させて格子状隔壁14上に設けられている。
図2は格子状隔壁上に配設された突起物を模式的に示す図で、図2に示すように、突起物15は格子状隔壁14の第一隔壁ライン141上に、好ましくは第一隔壁ライン141と第二隔壁ライン142との交差部143上に配設されている。
【0029】
突起物15の形成方法としては公知の技術を用いることが可能であり、例えばフォトリソグラフィー法、印刷法などが挙げられる。また、パターン形成法としてロールコート法やスピンコート法などを用い、フォトリソグラフィー法と組み合わせることにより形成される方法もある。
突起物15の素材としては、突起物15が封止基板21からの応力に対して変形や変質が生じない材料であることが望ましく、この条件を満たす材料であればよい。例えば、エポキシモノマー、エポキシオリゴマーといった熱硬化性エポキシ樹脂などの熱硬化性樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂などの熱可塑性樹脂、光硬化性エポキシ樹脂などの光硬化性樹脂などが挙げられ、これらの材料を単独もしくは複数組み合わせてもよい。
【0030】
ただし、突起物15が有機EL素子基板10の高さを一定にさせ、突起物15の先端が封止基板21および接着層30と接することにより均一な貼り合わせを実現する。そのため、突起物15は加工が容易な材質であることが好ましい。このような条件を満たす材料として、硬化後の加工が容易であるアクリル樹脂が突起物15の材料として好ましい。
上述した突起物15を格子状隔壁14の第一隔壁ライン141上に、好ましくは第一隔壁ライン141と第二隔壁ライン142との交差部143上に配設する場合は、突起物15の高さを0.5μm以上、望ましくは格子状隔壁14の高さと合計した高さが10μm以下となる高さとすることが好ましい。これは、突起物15の高さが0.5μm未満の場合、貼り合わせ後の封止基板21から発生する応力に突起物15が耐えることができずに損傷してしまい、有機EL装置内のセルギャップを均一に出来ず、大気中の水分や酸素の混入による劣化につながるという理由からである。
【0031】
有機発光媒体層16は、第一電極13と第二電極17との間に形成され、少なくとも有機発光層を含み、かつ低電圧で高効率の発光を目的として正孔注入層と、正孔輸送層と、電子輸送層と、電子注入層とを適宜選択し、各層を積層させた構造体である。なお、有機発光媒体層16の各層は単層構造または積層構造のどちらでもよい。また、有機発光層の発光色も問わないが、望ましくは赤色、緑色、青色の三色であることが好ましい。
【0032】
有機発光媒体層16の正孔輸送層に用いられる正孔輸送材料としては、銅フタロシアニンやその誘導体、1,1−ビス(4−ジーp−トリアミノフェニル)シクロヘキサン、N,N´−ジフェニルーN,N‘−ビス(3−メチルフェニル)−1,1´−ビフェニルー4,4’−ジアミンなどの芳香族アミンなどの低分子材料、ポリアニリン誘導体、ポリチオフェン誘導体、ポリビニルカルバゾール誘導体、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)(以下、PEDOT)や、PEDOTとポリスチレンスルホン酸(以下、PSS)との混合物(PEDOT/PSS)などの高分子材料、ポリチオフェンオリゴマー材料、CUO、Mn、NiO、AgO、MoO、ZnO、TiO、Ta.MoO、WO、MoOどの無機材料化合物などが挙げられる。これらの材料から正孔輸送層を形成する手法としては公知の技術を用いることができ、例えば真空蒸着法、スパッタリング法、あるいは正孔輸送材料を溶媒に溶解および分散させることによりインキ化させた正孔輸送材料インキを塗布する方法などが挙げられる。また、正孔輸送材料インキを塗布する方法も公知の技術を用いることができ、例えばスピンコート法、フォトリソグラフィー法、インクジェット法、印刷法などが挙げられる。
【0033】
また、正孔輸送材料が高分子材料の場合、正孔の輸送性を高める目的で、有機発光媒体層16内にインターレイヤ層を形成してもよい。このインターレイヤ層は正孔輸送層と有機発光層との間に形成されることが好ましい。このようなインターレイヤ層の材料としては、ポリアリーレン系、ポリアリーレンビニレン系、ポリフルオレン系等の高分子材料や、芳香族アミンなどの低分子を混合させたものが挙げられる。
【0034】
有機発光媒体層16の有機発光層に用いられる有機発光材料としては、クマリン系、ペリレン系、ピラン系、アンスロン系、ポルフィレン系、キナクドリン系、N,N´−ジアルキル置換キナクドリン系、ナフタルイミド系、イリジウム錯体系、白金錯体系などの低分子発光性色素を、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、ポリビニルカルバゾールなどの高分子材料中に溶解、もしくは重合させたものや、ポリアリーレン系、ポリアリーレンビニレン系、ポリフルオレン系などの高分子材料が挙げられる。
【0035】
これらの有機発光材料を用いて有機発光層を形成する場合は、有機発光材料を溶媒に溶解および分散させることによりインキ化させた有機発光インキを塗布する方法を用いることができ、この場合に用いられる溶媒としては、トルエン、キシレン、アニソール、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンなどの単独、またはこれらの混合溶媒が挙げられる。特に、トルエン、キシレン、アニソールといった芳香族有機溶媒が好ましい。
【0036】
また、有機発光材料をインキ化して塗布する方法も公知の技術を用いることができ、例えばスピンコート法、フォトリソグラフィー法、インクジェット法、印刷法などが挙げられる。
有機発光媒体層16の電子輸送層に用いられる電子輸送材料としては、2−(4−ビフェニルイル)−5−(4−t−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール、2,5−ビス(1−ナフチル)−1,3,4−オキサジアゾールなどが挙げられる。また、これらの電子輸送材料にナトリウム、バリウム、リチウムといった仕事関数が低いアルカリ金属を少量ドープさせてもよい。
【0037】
次に、有機発光媒体層16の形成方法について説明する。なお、以下の説明では本発明を有機発光層の形成に適用した場合を例として説明するが、正孔輸送層、電子輸送層などについても適用可能である。
有機発光媒体層16の有機発光層を形成する場合、本実施形態では、凸版印刷法を用いて有機発光層を形成する。凸版印刷法とは、印刷版の基材表面に複数の凸部が合成樹脂材料等により形成された印刷版(以下「凸版」という。)を用いた印刷法のことであり、このような印刷法を用いることで基板上に精細なパターンを形成することが可能となる。特に、凸版印刷法による方法は、精細なパターン形成、および膜厚均一性などに優れた層形成を可能とするとともに、有機発光材料として高分子材料を用いることを可能とする。したがって、格子状隔壁14に囲まれた発光画素領域に高精細で平坦性の高い有機発光層を形成することが可能となる。特に、有機発光層を複数の発光色に塗り分ける場合に好適である。
【0038】
凸版印刷法を用いて有機発光層等をパターン形成する場合、凸版基材表面の凸部がストライプ状に形成された凸版を用いることで、一方向のみの位置合わせを厳密に行うだけで良いという利点がある。すなわち、凸版の凸部を格子状隔壁14で囲まれた発光画素領域に合わせるだけで有機発光層を凸版印刷法によりパターン形成することが可能となるので、印刷ずれのない有機発光層を第一電極13上にパターン形成することが可能となる。
【0039】
凸版の基材としては、印刷に対する機械的強度を有し且つ有機発光材料に添加される有機溶剤に対する耐性が高い材料であればよく、例えば鉄、銅、アルミニウムなどの金属材料、鉄とニッケルなどの合金材料などが挙げられる。凸版基材表面の凸部は、公知の技術により形成することができ、材料は問わない。好ましくは、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリブタジエン、ポリ塩化ビニル、ポリアミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリビリニアルコールなどの合成樹脂、鉄、銅、アルミニウムなどの金属材料、およびそれらの単層体や積層体などを凸部の材料として使用できる。
【0040】
基材表面に複数の凸部がストライプ状に形成された凸版を用いて有機発光層を形成する場合、突起物15が例えば図2(b)に示すような配置で格子状隔壁14上に配設される場合には、突起物15との干渉を避けるために、図2(b)に矢印X1で示す方向(第一隔壁ライン141と平行な方向)に沿って有機発光層を凸版印刷法により形成する必要がある。
【0041】
これに対し、図2(a)に示すように、突起物15が格子状隔壁14の第一隔壁ライン141と第二隔壁ライン142との交差部143上に配設されている場合には、凸版による印刷方向を格子状隔壁14の横方向(図2(a)に矢印X1で示す方向)または縦方向(図2(a)に矢印Y1で示す方向)のどちらに選択しても凸版の凸部と突起物15とが干渉し合うことがないので、格子状隔壁14の横方向と縦方向のいずれの方向からでも有機発光層を形成することができる。
【0042】
したがって、突起物15が図2(a)に示す配置で格子状隔壁14上に配設されている場合は、有機発光層を図2(a)に矢印X1で示す方向に沿って凸版印刷法により形成した後、有機発光層上に形成される次の層(例えば第一電極13が陽極の場合は電子輸送層、第一電極13が陰極の場合は正孔輸送層)を有機発光層の印刷方向と直角に交差する方向(図2(a)に矢印Y1で示す方向)に沿って凸版印刷法により形成することが可能となる。
【0043】
図3は、有機発光媒体層を形成するときに用いられる印刷版の凸部と発光画素領域を模式的に示す断面図である。なお、図3では3箇所の格子状隔壁14と発光画素領域を示しているが、実際の有機EL装置では、図3に示すような格子状隔壁14と発光画素領域が有機EL素子基板10上に複数形成されている。
図3に示すように、発光画素領域の一画素の長さをa、前記した凸版のストライプ状凸部31の短辺方向の長さをb、格子状隔壁14上に設けられた複数の突起物15のうち隣り合う二つの突起物15の間隔をxとした場合、本実施形態では、印刷版の凸部31と突起物15とが干渉し合うのを防止するために、a<b<xの関係を満たしている。
【0044】
このようにして形成される有機発光媒体層16の厚さは、基板11と封止基板21との貼り合わせ時における不具合を解消するために、有機発光媒体層16の構造を単層構造または複数の層からなる積層構造とする場合でも、格子状隔壁14との高さの差が1μm以下、望ましくは0.05〜0.2μmであることが好ましい。
第二電極17は、第一電極13が陽極の場合は陰極として機能し、第一電極13が陰極の場合は陽極として機能するように、有機発光媒体層16上に形成される。第二電極17を陰極として用いる場合、電子注入効果を高める目的で仕事関数の小さい材料を用いることが好ましく、例えばLi、Na等のアルカリ金属、Mg、Al、Ba、Ca、Sr等のアルカリ土類金属、LiF等のフッ化アルカリ金属などが仕事関数の小さい材料として挙げられる。また、第二電極17の構造として、これら金属の単層構造でもよく、積層構造でもよいものとし、複数の金属を組み合わせた構造でもよい。
【0045】
第二電極17の素材としては、有機発光媒体層16からの発光を通過させるために、透光性を有する材料を用いる必要がある。しかし、このような仕事関数の小さい材料は透光性が低いため、金属同士や金属と化合物の積層構造、および合金系を用いることにより低透光性を補う構造が用いられることもある。また、仕事関数の小さい金属単体を極薄膜化とすることにより、透光性の低下を最小限とする手法が取られる。このような構造体の場合、効率を高める目的で、ITO等の透明導電性材料との積層構造にすることが好ましい。
【0046】
保護膜18は、第二電極17をはじめとして有機EL素子基板上の格子状隔壁14などを覆うように形成され、電気的絶縁性を有する薄膜である。また、保護膜18は酸素や水分の透過を防止し、有機EL素子基板上に形成された積層各部の劣化を防ぐ目的で形成される。保護膜18の形成方法には特に制約はなく、保護膜は単層構造または複数の層からなる積層構造のどちらでもよい。
【0047】
保護膜18の膜厚としては、封止基材としての封止基板21からの応力に耐えられる膜厚であれば特に制約はないが、有機発光媒体層16からの発光が保護膜18を通過するため、例えば0.5μm以上10μm以下、望ましくは0.5μm以上10μm以下であることが好ましい。
保護膜18の素材としては、封止基材としての封止基板21からの応力に耐えられる材料であれば特に制約はないが、有機発光媒体層16からの発光が通過するため、例えばAl、TiO、ZnO等の無機酸化物、Si等の無機窒化物を用いることが好ましい。
【0048】
次に有機EL装置の封止基板21について説明する。
封止基板21は、有機発光媒体層16からの発光が通過するため、透光性を有する必要がある。このような封止基材として、カラーフィルタ基板を用いる場合もある。カラーフィルタ基板とは特定の波長を選択するもの、および発光波長を変換させ透過させるものなどを可能とする基板を指しており、有機EL装置においては有機発光媒体層16からの発光に対して機能する。また、このようなカラーフィルタ基板とは、少なくとも透光性のある基板上の一面に、カラーフィルタ層22およびブラックマトリクス層23が形成された基板を指す。
【0049】
封止基材としては、該封止基材を有機EL素子基板10と貼り合わせた後に、基板の変形や応力により有機EL素子基板10に対して損傷を与えない材料が用いられる。また、有機発光媒体層16からの発光波長およびカラーフィルタ層22によって変換された光の波長に対して透光性を有する材料で封止基材が形成されており、このような封止基材の材質としては、カラーフィルタ層22やブラックマトリクス層23の形成条件(温度、溶媒、応力など)に耐えられる材質、例えばガラス、ポリエチレンテレフタレート、ポリメチルメタクリレート等の樹脂を含んだ材質、特に無アルカリガラスが好ましい。
【0050】
カラーフィルタ層22は、封止基板21上に形成され、ブラックマトリクス層23により区画された画素領域内に、少なくとも2色以上の薄膜が形成された構造を指しており、その画素領域の配置形状、配列、単位画素領域面積、薄膜の大きさは問わない。また、2色以上の薄膜は単層構造または複積構造のどちらでもよく、有機EL素子基板10の有機発光媒体層16と同構成である赤色、緑色、青色の薄膜が形成されたものが好ましい。このようなカラーフィルタ層22は公知の技術により形成することができ、材質や形成方法は特に限られるものではない。
【0051】
ブラックマトリクス層23は、カラーフィルタ層22が形成される領域の周囲に形成される。このため、ブラックマトリクス層23により区画された領域がカラーフィルタ基板における画素領域となる。このようなブラックマトリクス層23は、カラーフィルタ層22を形成するときの混色や層間の光漏れを防止したり、あるいはフロントパネル側から見た際に有機EL素子基板10上のTFT配線や端子部を覆うことによる写りこみを防止する目的で封止基板21の表面に形成される。このような条件を満たすブラックマトリクス層であれば、その形状や配列、面積、大きさは特に制約されるものでない。また、ブラックマトリクス層23の構造は単層構造または複数の層からなる積層構造のどちらでもよい。
【0052】
ただし、カラーフィルタ層22及びブラックマトリクス層23が形成された封止基板21と有機EL素子基板10とを接着剤により貼り合わせる場合、有機発光媒体層16からの発光が遮蔽されないように封止基板21を配置して貼り合わせを行う必要があり、そのためにはブラックマトリクス層23を有機EL素子基板10上の格子状隔壁14と配置させた状態で貼り合わせることが好ましい。よって、本発明では、ブラックマトリクス層23は格子状隔壁14と同形状である格子形状を有している。
【0053】
次に、有機EL装置の封止構造について説明する。
接着層30は、外部環境の酸素や水分の透過による有機EL装置の劣化を防ぐために、有機EL素子基板10とカラーフィルタ基板20との間に形成される。そのため、接着層30は低透湿性を有する材質であることが好ましく、周囲の環境により変質しない材質であること、経時的に変形、収縮、膨張などの現象がほぼ発生しない材質であることなどが望まれる。
【0054】
このような接着層30は公知の技術により形成することが可能であり、例えばスピンコート法、ディスペンス法、フォトリソグラフィー法、印刷法、ラミネート法などの方法により接着層30を形成することができる。また、接着層30の材質も公知のものを使用でき、好ましくは液状接着剤を用いることができる。この場合、接着層30は有機発光媒体層16からの発光波長に対して透光性を有する必要がある。また、有機発光媒体層16からの発光を効率よく透過させるために、接着層30の屈折率が保護膜18の屈折率より低い材料を接着層30の素材として用いることが好ましい。
【0055】
接着層30の屈折率が保護膜18の屈折率より低い材料としては、例えば熱硬化型エポキシ樹脂などの熱硬化型接着性樹脂、ポリエチレン樹脂やアクリル樹脂などの熱可塑型接着性樹脂、光硬化型エポキシ樹脂などの光硬化型接着性樹脂などが挙げられる。
接着層30の形成方法としては、一例として、一方の基板上の画素領域に沿って周辺シール剤を塗布した後、接着剤を塗布した基板と他方の基板と貼り合わせを実施する手法が挙げられる。この場合、接着剤や周辺シール剤の塗布方法は特に限られるものではなく、公知の方法を用いることができる。また、接着剤や周辺シール剤が塗布される基板は有機EL素子基板10またはカラーフィルタ基板20のどちらでもよいが、接着剤や周辺シール剤を塗布した後は、カラーフィルタ層22と有機発光媒体層16とを対向させると共にブラックマトリクス層23と格子状隔壁14とを対向させて両基板の貼り合わせを行う。
【0056】
本実施形態において、接着層30の形成方法は、接着性樹脂からなる周辺シール剤を基板上に塗布した後、周辺シール剤よりも粘度が低い樹脂材料からなる接着剤を周辺シール剤の内部全体に塗布する。この手法により、硬化した周辺シール剤により接着剤の流出を防ぐことが可能となる。
周辺シール剤や接着剤の材料としては公知の材料を選択することが可能であるが、熱硬化型エポキシ樹脂などの熱硬化型接着性樹脂、ポリエチレン樹脂やアクリル樹脂などの熱可塑型接着性樹脂、光硬化型エポキシ樹脂などの光硬化型接着性樹脂を用いることが好ましい。なお、周辺シール剤はカラーフィルタの画素領域外となる位置に塗布され、画素領域上には接着剤のみが塗布される。
【0057】
有機EL素子基板10とカラーフィルタ基板20とを接着層30により貼り合わせる際には、接着層30が低透湿性材料であり、内部残留の水分や酸素により有機EL素子が変質するなどの理由から、外部環境のみならず、有機EL装置内に酸素や水分がほぼ存在しない状況にする必要がある。そこで、有機EL素子基板10とカラーフィルタ基板20とを貼り合わせを真空中、窒素雰囲気下、不活性ガス雰囲気下などの大気中の水分や酸素がほぼ存在しない環境下にて行う。ただし、上記の条件を満たす場合は公知の技術を用いることが可能である。
【0058】
本実施形態では、ブラックマトリクス層23がカラーフィルタ層22を区画するように格子状に形成されているとともに、突起物15が格子状隔壁14の交差部143上に配設されているため、格子状隔壁14とブラックマトリクス層23とを対向させた状態で有機EL素子基板10とカラーフィルタ基板20とを貼り合わせると、図1(c)に示すように、突起物15の先端をブラックマトリクス層23の交点に当接させた状態で基板11と封止基板21とを貼り合わせることができる。これにより、有機EL素子が形成された基板11とカラーフィルタ層22及びブラックマトリクス層23が形成された封止基板21との間隔(ギャップ)を基板の全面にわたって一定に保つことが可能となり、有機EL素子基板10とカラーフィルタ基板20との接着部に大気中の水分や空気が入り込みにくくなるので、有機EL素子の変質等が生じにくい有機EL装置を製造することができる。
なお、上述した本実施形態では、トップエミッション構造の有機EL装置について記述したが、ボトムエミッション構造の有機EL装置についても同様の手法を用いることが可能である。
【0059】
[実施例1]
有機EL素子基板10の基板11として、基板の一面にTFTが形成された厚さ0.7mmの無アルカリガラスを用い、基板11上に平坦化膜12として厚さ0.1μmのポリイミド膜をフォトリソグラフィー法により形成した後、第一電極13として厚さ0.15μmのITO膜を平坦化膜12の上にスパッタリング法にて形成した。なお、平坦化膜12にはスルーホールが形成されており、TFTと第一電極13は電気的に接続されている。
【0060】
次に、第一電極13上に、ポリイミド樹脂からなる格子状隔壁14を2μmの厚さでフォトグラフィー法により形成し、この格子状隔壁14の交差部143上に、アクリル樹脂からなる突起物15を5μmの高さでフォトグラフィー法により形成した。このとき、格子状隔壁14に囲われた発光画素領域の数は960×540であった。また、突起物15は柱状体となるように形成し、その先端部は正方形となるように形成した。さらに、突起物15を格子状隔壁14の全ての交差部143上に設け、2つの突起物の間隔が76μmとなるように突起物15を形成した。
【0061】
次に、有機発光媒体層16として、正孔輸送層にPEDOT(0.02μm)、有機発光材料にポリ[2−メトキシー5−(2´エチルーヘキシロキシ)−1,4−フェニレンビニレン]をアニソールにて溶解させた溶液(0.1μm)を、それぞれ凸版印刷法より形成した。その後、有機発光媒体層16上に第二電極17として、ITO膜(0.1μm)を形成し、ITO膜の上に保護膜18として、SiNx膜(1μm)を形成した。これにより、図1(a)に示すような有機EL素子基板10を得た。
【0062】
次に、封止基板21として無アルカリガラスを用い、基板21上にブラックマトリクス層23として、フォトグラフィー工程にてカラーモザイクCK−7800(フジフイルムエレクトロニクスマテリアルズ(株)製)を用いた格子状の黒色薄膜(厚さ:1.5μm)と、画素領域の周囲に同黒色薄膜(厚さ:1.5μm)を形成した。その後、カラーフィルタ層22として、フォトグラフィー工程にてカラーモザイクCR−7001を用いた赤色薄膜、カラーモザイクCG−7001を用いた緑色薄膜、カラーモザイクCB−7001を用いた青色の薄膜(それぞれフジフイルムエレクトロニクスマテリアルズ(株)製、厚み1.5μm)を形成して、図1(b)に示すようなカラーフィルタ基板20を得た。
【0063】
次に、窒素雰囲気下装置内に有機EL素子基板10を置き、周辺シール剤として光硬化型接着性エポキシ樹脂を、接着剤として熱硬化型接着性エポキシ樹脂をそれぞれ用いて、周辺シール剤と接着剤をそれぞれディスペンス法にて有機EL素子基板10上に塗布した。このとき、接着剤は有機発光媒体層16からの発光に対して透光性を有する材質を用いた。その後、真空下装置内にカラーフィルタ基板20と有機EL素子基板10を置き、接着剤塗布後、カラーフィルタ基板20と有機EL素子基板10とを対向させて配置した。このとき、カラーフィルタ基板20のカラーフィルタ層22と有機EL素子基板10の有機発光媒体層16とがそれぞれ対向すると共にブラックマトリクス層23と格子状隔壁14とがそれぞれ対向する位置になるようにカラーフィルタ基板20と有機EL素子基板10とを配置した。その後、突起物15の先端が接着層30を介してブラックマトリクス層23の交点と接するように基板同士を加圧した後、常圧下にて80℃のオーブンにて接着剤を硬化させることにより、図1(c)に示すような有機EL装置を得た。
この有機EL装置を60℃90%RHの条件に保たれた恒温恒湿槽内に1500時間放置したが、有機EL装置内に気泡や画素欠陥の発生は見られなかった。
【0064】
[比較例1]
突起物15を有機EL素子基板上に形成せず、カラーフィルタ基板20上のブラックマトリクス層23上に突起物が形成された基板を用いて、実施例1に記載した接着方法と同様の方法で有機EL素子基板とカラーフィルタ基板とを貼り合わせて有機EL装置を得た。そして、貼り合わせ後の状態を確認したところ、接着層内に複数の気泡が見られた。さらに、比較例1で得られた有機EL装置を60℃90%RHの条件に保たれた恒温恒湿内に1500時間放置したところ、不均一な貼り合わせによる外部環境(水分や酸素)のガス混入により、全発光画素領域の約20%程度において非発光となっていた。
【0065】
[比較例2]
突起物15を格子状隔壁14の交差部143上以外の箇所に設けた有機EL素子基板を用いて、実施例1に記載した接着方法と同様の手段で有機EL素子基板とカラーフィルタ基板とを貼り合わせて有機EL装置を得た。
この有機EL装置において、正孔輸送層印刷時に、凸版のストライプ状凸部31と突起物15が接触した。この有機EL装置において貼り合わせ後の状態を確認したところ、印刷に起因した発光表示ムラが見られた。
【符号の説明】
【0066】
10…有機EL素子基板
11…基板
12…平坦化膜
13…第一電極
14…格子状隔壁
141…第一隔壁ライン
142…第二隔壁ライン
143…交差部
15…突起物
16…有機発光媒体層
17…第二電極
18…保護膜
20…カラーフィルタ基板
21…封止基板
22…カラーフィルタ層
23…ブラックマトリクス層
30…接着層
31…凸版印刷版の凸部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一電極、有機発光媒体層及び第二電極を積層して形成される複数の発光画素領域と該発光画素領域を囲う格子状隔壁とを一表面上に有する基板と、該基板と前記発光画素領域及び前記格子状隔壁を介して貼り合わされた封止基材とを備え、前記格子状隔壁が互いに平行な複数の第一隔壁ラインと、該第一隔壁ラインと直交する複数の第二隔壁ラインとで形成される有機EL装置の製造方法であって、
前記第一隔壁ライン上のみに複数の突起物を配設した後、前記有機発光媒体層を形成する複数の層のうち少なくとも1つの層を凸版印刷法により前記第一隔壁ラインに沿ってパターン形成し、次いで前記有機発光媒体層上に前記第二電極を形成した後、前記突起物の先端を前記封止基材に当接させた状態で前記基板と前記封止基材とを貼り合わせることを特徴とする有機EL装置の製造方法。
【請求項2】
請求項1記載の有機EL装置の製造方法において、前記複数の突起物を前記第一隔壁ラインと前記第二隔壁ラインとの交差部上に配設した後、前記有機発光媒体層を形成する複数の層のうち少なくとも1つの層を凸版印刷法により前記第一隔壁ラインまたは前記第二隔壁ラインに沿ってパターン形成し、次いで前記有機発光媒体層上に前記第二電極を形成した後、前記突起物の先端を前記封止基材に当接させた状態で前記基板と前記封止基材とを貼り合わせることを特徴とする有機EL装置の製造方法。
【請求項3】
請求項1又は2記載の有機EL装置の製造方法において、前記有機発光媒体層を形成する複数の層のうち少なくとも1つの層を前記凸版印刷法によりパターン形成するに際して、表面に複数の凸部がストライプ状に形成された凸版印刷版を用いて前記有機発光媒体層を形成する複数の層のうち少なくとも1つの層をパターン形成することを特徴とする有機EL装置の製造方法。
【請求項4】
請求項3記載の有機EL装置の製造方法において、前記凸部の短辺方向の幅が前記有機発光媒体層の一辺の長さより小さい凸版印刷版を用いて前記有機発光媒体層を形成する複数の層のうち少なくとも1つの層をパターン形成することを特徴とする有機EL装置の製造方法。
【請求項5】
請求項3又は4記載の有機EL装置の製造方法において、前記凸部の短辺方向の幅が前記複数の突起物のうち隣り合う二つの突起物の間隔より小さい凸版印刷版を用いて前記有機発光媒体層を形成する複数の層のうち少なくとも1つの層をパターン形成することを特徴とする有機EL装置の製造方法。
【請求項6】
請求項3〜5のいずれか一項記載の有機EL装置の製造方法において、前記凸部の高さが前記突起物の高さより低い凸版印刷版を用いて前記有機発光媒体層を形成する複数の層のうち少なくとも1つの層をパターン形成することを特徴とする有機EL装置の製造方法。
【請求項7】
第一電極、有機発光媒体層及び第二電極を積層して形成される複数の発光画素領域と該発光画素領域を囲う格子状隔壁とを一表面上に有する基板と、該基板と前記発光画素領域及び前記格子状隔壁を介して貼り合わされた封止基材とを備え、前記格子状隔壁が互いに平行な複数の第一隔壁ラインと、該第一隔壁ラインと直交する複数の第二隔壁ラインとで形成される有機EL装置であって、
前記基板と前記封止基材との間隔を規定する複数の突起物が前記格子状隔壁の第一隔壁ライン上に配設されていることを特徴とする有機EL装置。
【請求項8】
請求項7記載の有機EL装置において、前記複数の突起物が前記格子状隔壁の第一隔壁ラインと第二隔壁ラインとの交差部上に配設されていることを特徴とする有機EL装置。
【請求項9】
請求項7又は8記載の有機EL装置において、前記封止基材が前記発光画素領域からの光をカラー化するカラーフィルタ層と、該カラーフィルタ層を格子状に区画するブラックマトリクス層とを有することを特徴とする有機EL装置。
【請求項10】
請求項9記載の有機EL装置において、前記突起物が前記ブラックマトリクス層と対向する位置に形成されていることを特徴とする有機EL装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−76760(P2011−76760A)
【公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−224586(P2009−224586)
【出願日】平成21年9月29日(2009.9.29)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】