有用物質を合成するための方法及び装置
本発明は低反応性で、無極性の化合物を活性化する方法及び装置に関する。一つの具体的な実施例として、本方法は低反応性化合物を触媒に導入することを含む。(a)酸化剤または還元剤と(b)極性化合物のうち少なくとも一つが、触媒と化合物に付与される。化合物に活性化反応を起こすために、触媒に交流電流が印加される。この活性化反応が有用物質を作り出す。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、2007年9月20日出願の米国仮特許出願第60/994,854号に基づくもので、これはここに参考文献として組み込まれる。
【0002】
本発明は低反応性で、無極性の化合物を活性化する方法及び装置に関する。特に、本発明は二酸化炭素やそのような無極性化合物から有用物質を合成するプロセスに関する。
【0003】
水素分子を用いて二酸化炭素を化学的に還元することは、熱力学的には、実行することができない。しかし、二酸化炭素から有用物質を生成するために、活性水素含有化合物を用いる可能性に、関心が集まっている。
【背景技術】
【0004】
触媒、例えば遷移金属錯体が、二酸化炭素の還元に、ヒドリド錯体を介して触媒作用を及ぼすように示されてきており、そこでは活性水素源は水である。そのような反応は、通常、二酸化炭素から一酸化炭素への部分的還元という結果をもたらす。しかし、ホルムアルデヒド、メタノール及び/またはメタンへのさらなる還元の可能性は、非常に意味のある可能性を秘めている。そのような還元生成物は、化学薬品製造(ホルムアルデヒド及びメタノール)において有用であり、燃料(メタノール及びメタン)においても特に有用である。[例えば次を参照。”Thermodynamic,Kinetic and Product Considerations in Carbon Dioxide Reactivity”,F.R.Keene(非特許文献1), Chapter 1 in monograph ”Electrochemical and Electrocatalytic Reactions of Carbon Dioxide” (B.P.Sullivan,K.Krist,and H.E.Guard,eds.);Elsevier(Amsterdam),1993(非特許文献2)]
【0005】
特に、ホルムアルデヒドとその誘導体は、プラスチックやコーティングに用いられるような幅広いさまざまな最終用途に役立つ。ホルムアルデヒドが世界で最も重要な工業用、研究用化学薬品の一つと考えられているのは、それが膨大な数の化学反応に関わることによる。
【0006】
ホルムアルデヒドは微量の不純物があればすぐに重合するので、通常提供できる販売形態は、
熱反応または酸性反応によってモノマーと可逆的に変換されうるポリマー形態、
H-(OCH2-) -n-OH
トリオキサンと呼ばれる環式の斜方晶系形態、及び
水溶液であって、分子量99を超えるホルムアルデヒドが水化物またはオキシメトロン グリコール オリゴマーの混合物として存在するもの、
を含む。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許第7,325,392号明細書
【0008】
【特許文献2】米国特許出願第11/588,113号明細書 (公開番号第2007/0095673号)
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】”Thermodynamic,Kinetic and Product Considerations in Carbon Dioxide Reactivity”,F.R.Keene
【0010】
【非特許文献2】Chapter 1 in monograph ”Electrochemical and Electrocatalytic Reactions of Carbon Dioxide” (B.P.Sullivan,K.Krist,and H.E.Guard,eds.);Elsevier(Amsterdam),1993
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
低反応性で、無極性の化合物を活性化する方法及び装置を与えることは有用であろう。特に、水素分子を用いることなしに、二酸化炭素を還元するための方法または装置を与えることは有用であろう。水素の原料として水や水蒸気を用いて、二酸化炭素の還元を可能にすることはさらに有用であろう。ベンゼンをアセトフェノン、フェノール、シクロヘキサン、あるいは他のベンゼン誘導体のような誘導体化合物への酸化または還元を可能にすることもまた有用であろう。他の有用な可能性は、生成されたホルムアルデヒドポリマーを、より高い分子量のアルコールやオレフィンにさらに還元することを実施可能にすることである。
【0012】
本発明の方法及び装置は、前述の利点及び他の利点を与える。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は低反応性で、無極性の化合物を活性化するための方法及び装置に関する。一つの具体的な実施例において、本方法は低反応性化合物を触媒に導入することを含む。(a)酸化剤または還元剤と(b)極性化合物のうち少なくとも一つが触媒と化合物に付与される。化合物に活性化反応を起こすために、触媒に交流電流が印加される。この活性化反応により有用物質が作り出される。
【0014】
活性化反応は還元反応か酸化反応のうちの一つを含んで良い。極性化合物は水か水蒸気のうちの一つを含んで良い。アンモニア、一酸化窒素、一酸化炭素、メタン等のうちの一つが水または水蒸気に加えられて良い。
【0015】
他の具体的な実施例においては、極性化合物は、水、アンモニア、一酸化窒素、及び一酸化炭素のうちの一つを含んで良い。当業者であれば、本発明に他の極性化合物が用いられ得ることも分かるだろう。
【0016】
さらに具体的な実施例において、化合物と、酸化剤か還元剤と極性化合物とのうち少なくとも一つが、触媒をいれたチャンバに加えられて良い。
【0017】
一つの具体的な実施例において、低反応性化合物はCO2を含んで良い。そのような実施例においては、有用物質はモノマーの形態、ポリマーの形態のうち少なくとも一つの形態のホルムアルデヒドを含んで良い。他の具体的な実施例においては、有用物質はアルデヒド、トリオキサン、エタン、エチレン、ホルムアルデヒド、及びパラホルムアルデヒドのうち少なくとも一つを含んで良い。有用物質は炭素、水素、酸素のうち少なくとも一つを含んでよい。さらに、有用物質はアルコール化合物とオレフィンのうちの少なくとも一つを含んで良い。
【0018】
さらなる具体的な実施例として、化合物は芳香族化合物を含んで良い。芳香族化合物は、ベンゼンまたはベンゼン誘導体を含んで良い。そのような実施例においては、水素のような還元剤が触媒と芳香族化合物に加えられて良く、そして有用物質はシクロヘキサンかベンゼン誘導体を含んで良い。あるいは、酸素のような酸化剤が触媒と芳香族化合物に加えられてもよく、有用物質は少なくともアセトフェノン、フェノール、またはベンゼン誘導体のうちの一つを含んで良い。
【0019】
触媒は、貴金属、半導体酸化物、半導体サーメット、そしてバリスタのうちの一つを含んで良い。本発明に用いることができる触媒の例は、以下の触媒を含むが以下の触媒に限定されない。その触媒は、プラチナ、白金黒、ロジウム、ロジウム黒、パラジウム、パラジウム黒、銀、酸化マンガン、酸化マンガン誘導体、酸化モリブデン、酸化モリブデン誘導体、酸化鉄、酸化鉄誘導体、酸化セリウム、酸化セリウム誘導体、酸化チタニウム、ドープされた酸化チタニウム、そして関連化合物である酸化コバルト、酸化ロジウム、酸化亜鉛等を含む。
【0020】
一つの具体的な実施例においては、触媒は、多孔質セラミック基質に付けられた触媒層を含んで良い。その触媒層は、固体電解質層に担持されて良い。固体電解質層は、連続層、不連続層の一つであっても良い。固体電解質は、安定化ジルコニア(例として、酸化ガドリニウム、酸化サマリウム、酸化ランタン、酸化イッテルビウム、酸化イッテリウム、または当業者に知られている他の適当な物質によって安定化している)、ナフィオン、他の水素イオン導電性材料、ベータアルミナあるいはそのようなものを含んで良い。
【0021】
交流電流が、触媒層と固体電解質層の間のインターフェイスで、三相界面を横切って印加されて良い。触媒層に交流電流を印加するために、三つの電極が与えられる。例えば、基準電極が固体電解質層に付けられ、対極が触媒層と電解質層の間に付けられ、作用電極が触媒層に付けられて良い。
【0022】
さらなる具体的な実施例において、担持触媒層の分極インピーダンスがモニターされても良い。分極インピーダンスは交流電流を変化させることによって制御され、活性化反応の最適化を可能にするだろう。
【0023】
加えて、酸素分圧が制御される環境が担持触媒層のレベルで与えられて良い。触媒層のレベルにおける酸素分圧はモニターされて良い。酸素分圧のモニターは、担持触媒層の界面インピーダンスをモニターすることを含んで良い。触媒層のレベルの酸素分圧は、界面インピーダンスの関数として決定されて良い。あるいは、担持触媒層の分極インピーダンスがモニターされ、そして触媒層のレベルでの酸素分圧は、モニターされた分極インピーダンスの関数として決定されても良い。
【0024】
加えて、交流電流の瞬間値がモニターされた分極インピーダンスの関数として決定されても良い。
【0025】
付与される酸化剤、還元剤、極性化合物のうちの少なくとも一つの量が、活性化反応を最適化するために制御されて良い。さらに、付与される酸化剤、還元剤、極性化合物のうち少なくとも一つの量に対する化合物の量の比率が、活性化反応を最適化するために制御されて良い。
【0026】
さらなる具体的な実施例においては、活性化反応を最適化するために、熱が触媒に加えられて良い。
【0027】
本発明はまた、一般的に化合物を活性化する方法を含むものである。化合物は触媒に導入される。酸化剤または還元剤が触媒と化合物に付与される。化合物に活性化反応を起こすため、交流電流が触媒に印加される。この活性化反応が有用物質を作り出す。例えば、化合物は極性化合物を含んでよく、酸化または還元剤は極性反応物質または無極性反応物質を含んで良い。さらに、化合物は無極性化合物を含んで良く、酸化または還元剤は極性反応物質または無極性反応物質を含んで良い。
【0028】
本発明は低反応性で、無極性の化合物を活性化するための装置を含むものであり、本装置は上述した方法の様々な具体的な実施例を実施するために用いられ得る。本装置は、触媒、低反応性化合物を触媒に導入する手段、(a)酸化剤または還元剤と(b)極性化合物のうち少なくとも一つを触媒及び化合物に付与する手段、及び化合物に活性化反応を起こすために交流電流を触媒に印加する手段を含んで良く、その活性化反応が有用物質を生成する。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】図1は、本発明に従った装置の具体的な実施例を示す。
【図2】図2は、本発明に従った装置のさらなる具体的な実施例を示す。
【図3】図3は、本発明に従った電極の配置の具体的な実施例を示す。
【図4】図4は、本発明の一つの具体的な実施例によって得られた出力に対するNMRの結果を示す。
【図5】図5は、本発明のさらなる具体的な実施例によって得られた出力に対するNMRの結果を示す。
【図6】図6は、発明の具体的な実施例に従った触媒アセンブリの図7と異なる解像度における走査型電子顕微鏡の画像を示す。
【図7】図7は、発明の具体例に従った触媒アセンブリの図6と異なる解像度における走査型電子顕微鏡の画像を示す。
【図8】図8は本発明のさらなる具体的な実施例によって得られた出力に対するNMRスペクトルを示す。
【図9】図9は本発明の一つの具体的な実施例から分極ボード(Bode)スペクトルを示す。
【図10】図10は本発明の一つの具体的な実施例からの単一周波数のEIS(電気化学インピーダンススペクトロスコピー)スペクトルを示す。
【発明を実施するための形態】
【0030】
本発明は以下に添付の図面として説明され、図中の同じ符号は同じエレメントを示している。
【0031】
続く詳細な説明は、例として具体的実施例を与えるだけであって、本発明の有効範囲、適用範囲、構成を限定することを意図していない。より正確に言えば、続く詳細な説明で例示する具体的実施例は、当業者に本発明の実施例を実施できる説明を示すものとなっている。添付の特許請求の範囲に記載された技術的思想、発明の範囲を逸脱することなく、エレメントの作用や構成をさまざまに変更し得ることは理解されよう。
【0032】
本発明はカテレクトリック社とザ・ユニバーシティ・オブ・コネチカット間の共同研究契約の所産であって、有用物質を生成するために、低反応性で、無極性の化合物を活性化する方法、及び装置に関するものである。特に本発明は、例えばパラホルムアルデヒドのような有用物質を生成するために、水を水素と酸素の原料に用い、二酸化炭素を活性化(例えば還元、酸化)する方法と装置に関する。しかしながら、以下に詳細な説明がなされるように、本発明はそのような反応物や生成物に限定されるものではない。反応は、カテレクトリック社によって開発されたDECAN(商標)プロセスによって活性化される。DECAN(商標)プロセスは、特許文献1”Control System for Catalytic Processes”と題する2008年2月5日に発行されたカテレクトリック社の米国特許第7,325,392号、及び特許文献2”Method and Apparatus for Controlling Catalytic Processes”と題する2006年10月25日に出願され、現在係属中のカテレクトリック社の米国特許出願第11/588,113号、(公開番号第2007/0095673号)の中で説明されており、これらはいずれもここに参考文献として組み込まれている。
【0033】
本発明は、低反応性で、無極性の化合物を活性化するための方法及び装置に関する。図1は低反応性で、無極性の化合物を活性化するための装置10の具体的な実施例を示す。低反応性化合物12が触媒(例えば触媒層14)に導入される。触媒層14は担体16によって担持されて良いものである。(a)酸化剤または還元剤19、及び(b)極性化合物18のうちの少なくとも一つが触媒層14と化合物12に与えられる。交流電流(例えば電流/電圧源20から)が、化合物12に活性化反応を起こすため触媒層14に印加される。この活性化反応が有用物質を生成する。
【0034】
ここでいう“無極性化合物”という用語が、総じて、ゼロパーマネントの双極子モーメントを有する化合物を示すことが理解されなければならない。例えばこの定義によれば、個々の分子間で極性結合を有しているにも関わらず、CO2は無極性であると考えられる。したがって、ここで用いる“極性化合物”は総じてゼロでない双極子モーメントを有する化合物を示す。
【0035】
活性化反応は、還元反応か酸化反応のうちの一つを含んで良い。極性化合物18は、水か水蒸気のうちの一つを含んで良い。アンモニア、一酸化窒素、一酸化炭素、メタン、またはそのようなもののうちの一つが水または水蒸気に加えられても良い。
【0036】
他の具体的な実施例においては、極性化合物18は、水、アンモニア、一酸化窒素、及び一酸化炭素のうちの一つを含んでよい。当業者は他の極性化合物が本発明に用いられ得ることを理解するだろう。さらに当業者は水(または水蒸気)を使用することが、酸化反応と還元反応の両方を促進することを理解するだろう。
【0037】
図2に示されているさらなる具体的な実施例においては、化合物12と酸化剤か還元剤19と極性化合物18とのうち少なくとも一つが、触媒層14が入っているチャンバ(リアクタ)22に導入されて良い。チャンバ(リアクタ)22は、管状リアクタから成っても良い。交流電流は電子制御装置24によって制御されて良い。化合物12(例えばCO2)はガスタンク11からチャンバ(リアクタ)22に導入されて良い。極性化合物18(例えば水)は蠕動ポンプ17からチャンバ(リアクタ)22に導入されて良い。酸化剤(例えば酸素)または還元剤(例えば水素)19はタンク21から導入されて良い。化合物12と、酸化剤または還元剤19と極性化合物18のうち少なくとも一つが触媒層14の入ったチャンバ(リアクタ)22を通過し、そこへ交流電流が印加されたあと、反応の結果生成された物質が、アイスウォータートラップ26及び/またはドライアイス/液体窒素トラップ28を通って良く、その後分子シーブ30の中で分離され、その後にアナライザー32において、コンピューター解析(ガスクロマトグラフィー質量分析(GC−MS)や高速液体クロマトグラフィー質量分析(HPLC−MS)や核磁気共鳴分析(NMR)またはその他の解析技術のような解析)がなされる。
【0038】
具体的な一実施例において、低反応性化合物はCO2を含んで良い。そのような実施例においては、有用物質はモノマー形態またはポリマー形態のうちの少なくとも一つの形態にあるホルムアルデヒドから成って良い。他の具体的な実施例においては、有用物質はアルデヒド、トリオキサン、エタン、エチレン、ホルムアルデヒド及びパラホルムアルデヒドのうちの少なくとも一つを含んで良い。有用物質は、炭素、水素、及び酸素のうちの少なくとも一つを含んで良い。またさらに、有用物質はアルコール化合物とオレフィンのうちの少なくとも一つを含んで良い。また反応の結果として、酸素(O2)も生成されるだろう。
【0039】
さらなる具体的な実施例において、化合物12は芳香族化合物から成って良い。芳香族化合物はベンゼンまたはベンゼン誘導体を含んで良い。そのような実施例においては、還元剤19(水素のようなもの)が触媒と芳香族化合物に付与されてよく、有用物質はシクロヘキサンまたはベンゼン誘導体を含んで良い。あるいは、酸化剤19(酸素のようなもの)が触媒と芳香族化合物に付与されて良く、有用物質はアセトフェノン、フェノール、またはベンゼン誘導体のうちの少なくとも一つを含んで良い。
【0040】
触媒層14は貴金属、半導体酸化物、半導体サーメット、及びバリスタのうちの一つを含んで良い。本発明に用いられうる触媒の例は、以下の触媒を含むが以下の触媒に限定されない。触媒の例としては、プラチナ、白金黒、ロジウム、ロジウム黒、パラジウム、パラジウム黒、銀、酸化マンガン、酸化マンガン誘導体、酸化モリブデン、酸化モリブデン誘導体、酸化鉄、酸化鉄誘導体、酸化セリウム、酸化セリウム誘導体、酸化チタニウム、ドープされた酸化チタニウム、そして関連化合物である酸化コバルト、酸化ロジウム、酸化亜鉛等が含まれる。触媒物質の他の例として、アルカリ金属酸化物、アルカリ土類、ランタニド、アクチニド、遷移金属、そして非金属が広く含まれてよい。
【0041】
図3に示されているような具体的な一実施例において、触媒層14は、多孔質セラミック基質のような担体16に付けられた触媒層を含んで良い。例えば、触媒層14は、固体電解質層(担体)16によって担持されて良い。ある実施例においては、触媒層14は固体電解質層16に付けられてよく、同様に別の担体(図示せず)に付けられてもよい。固体電解質層16は、連続層、不連続層の一つであっても良い。固体電解質層16は、安定化ジルコニア(例えば、酸化ガドリニウムや酸化サマリウムや酸化ランタン、酸化イッテルビウム、酸化イッテリウム、または他の当業者に知られている適当な物質によって安定化されている)、ナフィオン、他の水素イオン導電性材料、ベータアルミナ等のうちの一つを含んで良い。リアクタの温度範囲は、当業者に知られているように、これらの物質の特性によって決定されるだろう。
【0042】
交流電流が、電子制御装置24により、触媒層14と固体電解質層16の間のインターフェイスでの三相界面を横切って印加されて良い。触媒層14に交流電流を印加するために、三つの電極が与えられて良い。例えば、基準電極40が固体電解質層16に付けられ、対極42が固体電解質層16に付けられ、作用電極44が触媒層14に付けられて良い。
【0043】
さらなる具体的な実施例においては、担持触媒層14の分極インピーダンスがモニターされてよい。分極インピーダンスをモニターするために、電子制御装置24は、印加される電流と電圧を決定する手段を含んで良い。検知された電流から分極インピーダンスを決定することについては、カテレクトリック社の米国特許第7,325,392号に詳しく説明されている。分極インピーダンスは、電子制御装置24からの交流電流を変化させることによって制御されて良く、活性化反応を最適化することができるようにする。
【0044】
加えて、酸素分圧が制御される環境が担持触媒層のレベルにおいて与えられて良い。酸素は、作用電極44と基準電極40との間に電圧を印加することにより、固体電解質層16から生成されても良く、それはDECAN(商標)プロセスの関数である。あるいは、酸素はタンク21から与えられて良い(図2)。触媒層14のレベルにおける酸素分圧はモニターされてよい。酸素分圧の決定はまた、電圧測定の関数としての電子制御装置24によってなされてもよい。例えば、酸素分圧のモニターは、担持触媒層14の界面インピーダンスをモニターすることを含んで良い。触媒層14のレベルにおける酸素分圧は、界面インピーダンスの関数として決定されても良い。あるいは、担持触媒層14の分極インピーダンスが上で述べたようにモニターされて良く、そして触媒層14のレベルにおける酸素分圧が、モニターされた分極インピーダンスの関数として決定されて良い(例えば、電子制御装置24によって実施される)。
【0045】
加えて、交流電流の瞬間値は、モニターされた分極インピーダンスの関数として、電子制御装置24によって決定されて良い。
【0046】
与えられる酸化剤または還元剤19及び/または極性物質18の量は、活性化反応の最適化のために制御されて良い。さらに、与えられる化合物12の量に対する酸化剤または還元剤及び/または極性化合物18の量の比率は、活性化反応を最適化するために制御されて良い。
【0047】
さらなる具体的な実施例においては、活性化反応を最適化するために熱が触媒に加えられて良い。熱は加熱エレメント34によって加えられて良く、温度制御ユニット36によって制御される(図2)。酸素19は酸素源(例えばタンク21)から加えられても、あるいは上述したように、固体電解質層に印加される電圧を制御することによって生成されてもよい。
【0048】
本発明はまた一般的に化合物の活性化のための方法を含む。化合物12は触媒層14に導入される。酸化剤または還元剤19が触媒層14と化合物12に与えられる。化合物12に活性化反応を起こすために交流電流が触媒層14に印加される。この活性化反応が有用物質を生成する。例えば、化合物は極性化合物12を含んで良く、そして酸化剤または還元剤19は極性反応物質(例えば水または水蒸気)または無極性反応物質(酸素または水素)を含んでよい。加えて、化合物は無極性化合物12(上述したように)を含んでよく、そして酸化剤または還元剤19は極性反応物質(例えば水または水蒸気)または無極性反応物質(酸素または水素)を含んでよい。例えば、価値ある生成物を生じさせるために、メタノールのような一つの極性化合物がエタノールのような他の極性化合物と反応しうるし、あるいは価値ある生成物を生じさせるために、ベンゼンのような一つの無極性化合物がメタンのような他の極性化合物と反応しうる。
【0049】
以下の例は本発明に従って、水素の原料として水を用い二酸化炭素を還元するプロセスの具体的な実施例を説明するものである。以下の例は、図2に関連して上述した装置を用いることによって実施された。しかしながら、発明のプロセスは以下の例によって限定されず、及び他の分子、例えばより高い分子量のアルコールを、オレフィン及び他の化合物に還元するために実施されてもよいことは、当業者であれば理解されるべきことである。
【0050】
例1
a. 基質:Vesuvius Hi-Tech Ceramicsから入手した市販のカルシア安定化ジルコニア(FSZ)多孔質セラミックが固体電解質層16として用いられた。
b. 触媒の堆積:液相化学蒸着(LP-CVD)が触媒層14(プラチナ)のコーティングのために用いられた。Pt(acac)2(Strem Chemicals Inc.)がプラチナ反応前駆体として用いられた。反応前駆体の温度は120―150度にセットされ、一方でFSZ(カルシア)の温度は400―500度にセットされた。アルゴンが搬送ガスとして用いられた。反応前駆体の搬送ガスの流量比率は500−1000sccm/minにセットされ、搬送ガスは100―150度に熱せられ、その後CVD合成管に導入された。酸素が酸化剤として用いられた。酸素の流量比率は、80―200sccm/minにセットされた。CDVリアクタの総圧は5−20kPaに制御された。プラチナの堆積時間は1−4時間であった。
c. 三つの電極の取り付け:図3との関連において上述したように、三つの電極はFSZ(カルシア)セラミック触媒に被着した。三つの電極はそれぞれ0.25mmプラチナワイヤー(Alfa Aesar)より成る。三つのプラチナワイヤーはプラチナペースト(Engelhard/BASEより)を用いてFSZ(カルシア)に取り付けられ、900℃の空気中で処理された。基準電極40はプラチナの(触媒)層14に接触することなく、担体16に直結された。対極42はプラチナのLP-CVD触媒層14の堆積の前に取り付けられ、FSZの担体16に接触している。作用電極44はプラチナLP-CVD触媒層14に被着した。三つの電極を取り付けた後、三つの電極を備えた触媒アセンブリが石英管に収められ、600−800℃で4−6時間、8%の水素/ヘリウム混合ガス下で還元された。
d. 触媒反応―リアクタと反応パラメーター:三つの電極を備え、Pt-FSZ担持触媒アセンブリが石英管リアクタ(例えば図2における管状リアクタ22)に収められた。リアクタは空気を取り除かれ、そしてそのあと約5−14psigのやや正圧で稼働された。管状リアクタの温度は600から950℃にセットされた。
【0051】
本発明は、上述の説明に限定されないことに注意すべきである。例えば、温度は室温程度に低くても良く、950℃より高くても良く、固体電解質はナフィオンでも良く、触媒は白金黒でも良い。固体電解質または触媒として使用される他の物質は当業者には明らかであろう。
【0052】
さらに、固体電解質層16は、当業者に知られているなんらかの適当な方法によって、不活性のセラミック基質(例えば、Corning Inc.またはSt Gobain Coから与えられるコージライト担体)から成る担体に被着しうる。同様に、触媒層14は、当業者に知られているなんらかの適当な方法によって、固体電解質層16に被着しうる。
【0053】
加えて、プロセスの実施は、固体電解質層16と触媒層14が連なることを必要としない。必要なことは、触媒層14が固体電解質16と接する結晶粒界が優勢であること、及び反応相が触媒活性インターフェイスを横切ること許容するに足る十分な多孔性をもつことである。
【0054】
使用された二酸化炭素(CO2)はAirgas社からのゼログレードガスだった。使用された水は脱イオン水であった。水は蠕動ポンプ17によって注入され、熱せられたセラミック管によって蒸発させられた。CO2はタンク11から与えられる搬送ガスとして使用された。CO2対水のモル比は10対1または5対1にセットされた。CO2の流量は流量計によってモニターされ、200scc/minuteから1600scc/minuteの間で変化させられた。水/CO2比は1/1000から1000/1の間のどの値をとっても良いし、この範囲外であっても良い。
【0055】
システムは分極化されていて(電子制御装置24と三つの電極40、42、及び44によって)、平均電圧0.03から0.1Vrmsの範囲内で約1kHzのパルス電流だった。電流は平均で0.03から0.13mAの間である。このプロセスは、上記の米国特許出願第11/588,113号の中に詳述されている。
【0056】
8回の分極化が行われ、それぞれが約15分間続けられた。
【0057】
このプロセスの思いがけない結果は、大量の白い粉末が生成されたことであり、それらは、リアクタ22の低温領域に集められ、同様にウォータートラップ26や液体窒素トラップ28の中に集められた。気相は、熱及びフレームイオン化検出器とともにガスクロマトグラフィ(例えば、アナライザー32)によって解析された。
【0058】
粉末はトラップによって集められた試水の中に分散され、そして核磁気共鳴分析(NMR)や高速液体クロマトグラフィー(HPLC)によって解析された。リアクタの温度を900℃にセットした場合、それらのサンプルの中にパラホルムアルデヒドや小量のトリオキサンが存在するという一貫したデータが収集された。NMRの解析結果が図4に示されている。
【0059】
例2
この例で使用された触媒層14は、例1で使用されたものと同じである。石英管リアクタの温度は600℃にセットされた。図5に示されているように、NMRによって特定された主な生成物はパラホルムアルデヒドであった。
【0060】
例3
a. 基質:Vesuvius Hi-Tech Ceramicsから入手した市販のカルシア安定化ジルコニア(FSZ)多孔質セラミックが固体電解質層16として用いられた。
b. 触媒の堆積:八面体型酸化マンガンOMS-2が触媒層14として以下のように用意された。
5.6gのK2SO4、8.81gのK2S2O8、及び3.77gのMnSO4並びに70mlの脱イオン水が125mlの加圧滅菌器に加えられ、4748パール社製高温加圧酸分解容器に96時間置かれて、温度は250℃に保たれた。固形物は脱イオン水によって繰り返し洗浄された。懸濁液は濾過され、300mlの脱イオン水を入れたビーカーにおいて85℃で一晩中攪拌された。懸濁液はVesuvius社の多孔質セラミック体にコートされ、120℃で12時間乾燥された。
c.電極の取り付け:三つのプラチナ電極が例1で説明したように配された。プラチナペースト(Engelhard BASF)が電極の取り付けに利用された。そして、触媒アセンブリが150―300℃で2時間、6%の水素/ヘリウム混合ガス下で還元された。
【0061】
このように用意された触媒アセンブリは、石英管リアクタ(管状リアクタ22)に収められ、そして電子制御装置24と接続された。石英管リアクタ22は、密閉され、大気環境から隔離された。CO2(Air gas社のゼログレード)がタンク11から導入され、流量計によって制御された。水はあらかじめ較正された蠕動ポンプ17によって注入された。水はセラミック管によって、130℃以上に熱せられた。そしてリアクタ22は、CO2が取り除かれた
【0062】
システムは、やや高い大気圧にセットされた(例えば5kPa)。電子制御装置24が電極40、42、44によって、触媒アセンブリに分極電流または電圧を与えた。管状リアクタは250―450℃にセットされた。
【0063】
生成物はNMRとGC技術によって解析された。
【0064】
Pt-OMS-2触媒層14が、CO2- H2Oシステム内で、250℃から始めて450℃まで試験された。250℃で反応が始まったときは、反応は遅かった。4時間後、第一のアイスウォータートラップ26でNMRによりサンプルが解析された。結果として得られたNMRパターンはなんの生成物も示さなかった。生成物の濃度が限界を超えたか、生成が非常に遅かったのかもしれない。二度目の試験は300度で行われた。結果として得られたNMRの水素イオンパターンは、低い濃度のパラホルムアルデヒドを示した(モル濃度で約0.5―1.0%)。特に、この温度でNMRの結果は、パラホルムアルデヒドの弱いピークを示し
ていた。三度目の試験は400℃で行われた。アイスウォータートラップ26とドライアイストラップ28で結果として得られたNMRパターンは、この温度では、より強いパラホルムアルデヒドのピークを示した。パラホルムアルデヒドの濃度は、モル濃度で約1.0―1.5%だった。四度目の試験は450℃で行われた。この温度で結果として得られたNMR水素イオンパターンは、より高いパラホルムアルデヒドの濃度を示した。パラホルムアルデヒドの濃度は、モル濃度で約3.0―5.0%だった。
【0065】
上記の4つの試験のため使用されたCO2流量比は200sccmで、水の注入比は9.16ml/minだった。CO2/ H2O流量比は2.37だった。
【0066】
上記の結果に基づいて、異なる温度におけるCO2の交換比率が以下の表1に示されている。
【0067】
【表1】
【0068】
例4
ZnO触媒の合成:低圧化学蒸着(LPCVD)技術が、カルシウム安定化ジルコニア(FSZ)の担体に、ZnOの触媒層14を堆積するために用いられた。Zn反応前駆体はZn(CHCOO)2(98+%,Aldrich)であった。FSZのテンプレートの温度は300℃にセットされた。反応前駆体の温度は160℃にセットされた。堆積圧力は3kPaに制御された。サンプルは二回コートされた。二回目に、より均一にコーティングするために、サンプルの配置は反対にされた(前を後ろに、上を底に)。それぞれのコーティングの時間は4時間だった。トータルのCVDコーティングの時間は8時間だった。LPCVDのあと、サンプルは上昇率5℃/minで熱せられ、空気中において600℃で12時間、か焼された。
リアクタと電極:図3との関連で上述したように、三つの電極がZnOでコートされたFSZ担体の上に取り付けられた。ZnOでコートされたFSZ触媒アセンブリがか焼された後、端の25mm2の範囲がZnOを取り除くため5M HCLによって前もって処理された。プラチナの基準電極40がこの範囲に取り付けられた。シリンダーサンプルのもう一方の端においては、上述したのと同じ方法がZnO層を取り除くために用いられ、そしてプラチナワイヤーが対極42として、FSZの担体16に直結された。作用電極44は、ZnO触媒層14に付けられた。プラチナペースト(BASFより6082)が、プラチナ電極の触媒アセンブリとの接触を良くするために利用された。
【0069】
電極が取り付けられた後、電極間の抵抗がデジタルマルチメータ(HDM350)によって計測された。結果は以下の表2に示されている。
【0070】
【表2】
【0071】
タンク11からのCO2流量は流量計(OMEGA FL-3504G)によって計測された。水の注入は、較正された蠕動ポンプ17(Watson Marlow Sci400)によって計測された。水は熱せられたセラミックフリット(>130℃)のうえにたらされ、T管の中で蒸発させられた。そして、CO2搬送ガスによって、水がリアクタの中に導入された。ZnO-FSZ触媒アセンブリが2インチ石英管リアクタ(例えば、管状リアクタ22)の中に収められた。リアクタ22は、環状炉(Thermolyne 21100)または加熱エレメント34によって600―700℃に熱せられた。ZnO-FSZ触媒アセンブリは三つの電極によって電子制御装置24に接
続され、電子制御装置24で制御される電圧または電流により分極化された。流出した生成物はアイスウォータートラップ26とドライアイストラップ28によって冷やされた。リアクタからのガスは分子シーブ30によって乾燥され、気体の組成はアナライザー32(例えば、ガスクロマトグラフ(SRI 8610C))によって解析された。
【0072】
分極化試験のために、-2.5Vから2.5Vの電圧が、定電圧電解モードまたは単一周波数モードにより印加された。CO2とH2Oの温度は600℃と700℃にセットされた。CO2の流量比は、200―500sccmの間であった。CO2/ H2O比は1:1と1:3にそれぞれセットされた。異なる分極化で、それぞれのEISスペクトルがGarmy Reference 600により取得された。
【0073】
ZnOでコートされたFSZアセンブリは走査型電子顕微鏡(SEM)によって調査された。ZnO触媒層14の形態は図6(x50000)と図7(x100000)に示されている。SEM画像に基づく形態は、ZnO触媒層14が連続層であること、及びZnOの粒子サイズが約20−50nmであることを示唆している。
【0074】
CO2とH2Oの活性化による生成物は、二の相、すなわち液体と気体に分けられた。液体の生成物はNMRによって特性を明らかにされ、気体はSRI 8610Cガスクロマトグラフによって解析された。HPLC-MSやGC-MSのような他の技術もまた利用することができる。図8は合成された生成物の水素イオンNMRスペクトルである。CO2の流量比は320−450sccmにセットされた。水が流量比10mL/hour(または207sccm/min)で注入された。CO2/ H2Oモル比は1.6−2.2であった。図8に示された結果によると、一つの主な生成物が合成された。NMRの化学シフトは4.75から5.20ppmの間であった。化学シフト8.25ppmにおいて、小量のホルムアルデヒドが存在した。
【0075】
分極電圧は-1.2Vから-1.5Vにセットされた。典型的な分極ボード(Bode)スペクトルが図9に示されている。“A”線が分極なしで、“B”線が-1.2Vの分極化による。分極化された状態で、Zmodが減少した。例えば、Zmodは500kHzの周波数で3.825kΩから3.573kΩまで減少した。これらのデータは、触媒セルが分極化されているとき、反応が早いことを示唆している。
【0076】
図10は単一周波数EISスペクトルである。周波数を500kHzに固定して、Zmodは時間と共に変化することが示された。この変化は、触媒アセンブリの界面におけるダイナミックな反応を反映していた。比較試験においては、もし正と負が交互する分極が使用されるならば、Zmodは負の分極(反応比率を増加する)のあと減少する。
【0077】
反応による生成物をガスクロマトグラフィー(GC)オンライン解析したところ、14.5―20.5minで新たな幅の広いピークが見つかった。これらのピークは、エチレンとエタンであった。
【0078】
前述の例は本発明の範囲を限定することなく、本発明の作用と適用について例示する意である。当業者であれば、本発明には多くの用途があること、そして上記の例で言及されたパラメーター、物質、化合物、生成物、その他のさまざまなものが、用途や望ましい効果に依拠して修正され、変更されうることを理解するであろう。
【0079】
上述の例によって、当業者であれば、本発明が、低反応性で、無極性の分子(CO2のような)と極性分子/種(水や水蒸気のような)の間で反応を活性化させるための方法、プロセス、及び装置を含むこと、ポリマーの生成や有機的合成反応で有用な物質をもたらすことを理解するだろう。例えば、本発明に従って、異質な触媒反応の中で、二酸化炭素(その他の同じような低反応性で、無極性の分子)と極性化合物(水や水蒸気やその他のような)の反応の活性化のプロセスが実施される。例えば、本発明は(特に)以下の反応の活性化に用いられてよい。
【0080】
CO2+ H2O
CO2+ H2O +CH4
CO2+NO
CO2+NO+ CH4
CO2+NH3
C6H6+ H2O
C6H6+ C6H6+ CH4
C6H6+ H2O + CH4
C6H6+ CH3OH 及び他の同じような化合物
C6H6+NO
C6H6+NH3
【0081】
当業者であれば、上記の反応リストは限定を意図するものではなく、本発明が、上述したように、他の反応を促進することに用いられ得ることも理解するだろう。
【0082】
本発明が、二酸化炭素及び他の低反応性分子の活性化のための画期的な方法及び装置を与えることが、今まさに理解されるべきである。
【0083】
本発明は、さまざまな例示との関連で説明されてきたが、特許請求の範囲に記載の本発明の技術的思想及び発明の範囲を逸脱することなく、そこにおいて数々の修正や適応がなされるものである。
【技術分野】
【0001】
本願は、2007年9月20日出願の米国仮特許出願第60/994,854号に基づくもので、これはここに参考文献として組み込まれる。
【0002】
本発明は低反応性で、無極性の化合物を活性化する方法及び装置に関する。特に、本発明は二酸化炭素やそのような無極性化合物から有用物質を合成するプロセスに関する。
【0003】
水素分子を用いて二酸化炭素を化学的に還元することは、熱力学的には、実行することができない。しかし、二酸化炭素から有用物質を生成するために、活性水素含有化合物を用いる可能性に、関心が集まっている。
【背景技術】
【0004】
触媒、例えば遷移金属錯体が、二酸化炭素の還元に、ヒドリド錯体を介して触媒作用を及ぼすように示されてきており、そこでは活性水素源は水である。そのような反応は、通常、二酸化炭素から一酸化炭素への部分的還元という結果をもたらす。しかし、ホルムアルデヒド、メタノール及び/またはメタンへのさらなる還元の可能性は、非常に意味のある可能性を秘めている。そのような還元生成物は、化学薬品製造(ホルムアルデヒド及びメタノール)において有用であり、燃料(メタノール及びメタン)においても特に有用である。[例えば次を参照。”Thermodynamic,Kinetic and Product Considerations in Carbon Dioxide Reactivity”,F.R.Keene(非特許文献1), Chapter 1 in monograph ”Electrochemical and Electrocatalytic Reactions of Carbon Dioxide” (B.P.Sullivan,K.Krist,and H.E.Guard,eds.);Elsevier(Amsterdam),1993(非特許文献2)]
【0005】
特に、ホルムアルデヒドとその誘導体は、プラスチックやコーティングに用いられるような幅広いさまざまな最終用途に役立つ。ホルムアルデヒドが世界で最も重要な工業用、研究用化学薬品の一つと考えられているのは、それが膨大な数の化学反応に関わることによる。
【0006】
ホルムアルデヒドは微量の不純物があればすぐに重合するので、通常提供できる販売形態は、
熱反応または酸性反応によってモノマーと可逆的に変換されうるポリマー形態、
H-(OCH2-) -n-OH
トリオキサンと呼ばれる環式の斜方晶系形態、及び
水溶液であって、分子量99を超えるホルムアルデヒドが水化物またはオキシメトロン グリコール オリゴマーの混合物として存在するもの、
を含む。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許第7,325,392号明細書
【0008】
【特許文献2】米国特許出願第11/588,113号明細書 (公開番号第2007/0095673号)
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】”Thermodynamic,Kinetic and Product Considerations in Carbon Dioxide Reactivity”,F.R.Keene
【0010】
【非特許文献2】Chapter 1 in monograph ”Electrochemical and Electrocatalytic Reactions of Carbon Dioxide” (B.P.Sullivan,K.Krist,and H.E.Guard,eds.);Elsevier(Amsterdam),1993
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
低反応性で、無極性の化合物を活性化する方法及び装置を与えることは有用であろう。特に、水素分子を用いることなしに、二酸化炭素を還元するための方法または装置を与えることは有用であろう。水素の原料として水や水蒸気を用いて、二酸化炭素の還元を可能にすることはさらに有用であろう。ベンゼンをアセトフェノン、フェノール、シクロヘキサン、あるいは他のベンゼン誘導体のような誘導体化合物への酸化または還元を可能にすることもまた有用であろう。他の有用な可能性は、生成されたホルムアルデヒドポリマーを、より高い分子量のアルコールやオレフィンにさらに還元することを実施可能にすることである。
【0012】
本発明の方法及び装置は、前述の利点及び他の利点を与える。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は低反応性で、無極性の化合物を活性化するための方法及び装置に関する。一つの具体的な実施例において、本方法は低反応性化合物を触媒に導入することを含む。(a)酸化剤または還元剤と(b)極性化合物のうち少なくとも一つが触媒と化合物に付与される。化合物に活性化反応を起こすために、触媒に交流電流が印加される。この活性化反応により有用物質が作り出される。
【0014】
活性化反応は還元反応か酸化反応のうちの一つを含んで良い。極性化合物は水か水蒸気のうちの一つを含んで良い。アンモニア、一酸化窒素、一酸化炭素、メタン等のうちの一つが水または水蒸気に加えられて良い。
【0015】
他の具体的な実施例においては、極性化合物は、水、アンモニア、一酸化窒素、及び一酸化炭素のうちの一つを含んで良い。当業者であれば、本発明に他の極性化合物が用いられ得ることも分かるだろう。
【0016】
さらに具体的な実施例において、化合物と、酸化剤か還元剤と極性化合物とのうち少なくとも一つが、触媒をいれたチャンバに加えられて良い。
【0017】
一つの具体的な実施例において、低反応性化合物はCO2を含んで良い。そのような実施例においては、有用物質はモノマーの形態、ポリマーの形態のうち少なくとも一つの形態のホルムアルデヒドを含んで良い。他の具体的な実施例においては、有用物質はアルデヒド、トリオキサン、エタン、エチレン、ホルムアルデヒド、及びパラホルムアルデヒドのうち少なくとも一つを含んで良い。有用物質は炭素、水素、酸素のうち少なくとも一つを含んでよい。さらに、有用物質はアルコール化合物とオレフィンのうちの少なくとも一つを含んで良い。
【0018】
さらなる具体的な実施例として、化合物は芳香族化合物を含んで良い。芳香族化合物は、ベンゼンまたはベンゼン誘導体を含んで良い。そのような実施例においては、水素のような還元剤が触媒と芳香族化合物に加えられて良く、そして有用物質はシクロヘキサンかベンゼン誘導体を含んで良い。あるいは、酸素のような酸化剤が触媒と芳香族化合物に加えられてもよく、有用物質は少なくともアセトフェノン、フェノール、またはベンゼン誘導体のうちの一つを含んで良い。
【0019】
触媒は、貴金属、半導体酸化物、半導体サーメット、そしてバリスタのうちの一つを含んで良い。本発明に用いることができる触媒の例は、以下の触媒を含むが以下の触媒に限定されない。その触媒は、プラチナ、白金黒、ロジウム、ロジウム黒、パラジウム、パラジウム黒、銀、酸化マンガン、酸化マンガン誘導体、酸化モリブデン、酸化モリブデン誘導体、酸化鉄、酸化鉄誘導体、酸化セリウム、酸化セリウム誘導体、酸化チタニウム、ドープされた酸化チタニウム、そして関連化合物である酸化コバルト、酸化ロジウム、酸化亜鉛等を含む。
【0020】
一つの具体的な実施例においては、触媒は、多孔質セラミック基質に付けられた触媒層を含んで良い。その触媒層は、固体電解質層に担持されて良い。固体電解質層は、連続層、不連続層の一つであっても良い。固体電解質は、安定化ジルコニア(例として、酸化ガドリニウム、酸化サマリウム、酸化ランタン、酸化イッテルビウム、酸化イッテリウム、または当業者に知られている他の適当な物質によって安定化している)、ナフィオン、他の水素イオン導電性材料、ベータアルミナあるいはそのようなものを含んで良い。
【0021】
交流電流が、触媒層と固体電解質層の間のインターフェイスで、三相界面を横切って印加されて良い。触媒層に交流電流を印加するために、三つの電極が与えられる。例えば、基準電極が固体電解質層に付けられ、対極が触媒層と電解質層の間に付けられ、作用電極が触媒層に付けられて良い。
【0022】
さらなる具体的な実施例において、担持触媒層の分極インピーダンスがモニターされても良い。分極インピーダンスは交流電流を変化させることによって制御され、活性化反応の最適化を可能にするだろう。
【0023】
加えて、酸素分圧が制御される環境が担持触媒層のレベルで与えられて良い。触媒層のレベルにおける酸素分圧はモニターされて良い。酸素分圧のモニターは、担持触媒層の界面インピーダンスをモニターすることを含んで良い。触媒層のレベルの酸素分圧は、界面インピーダンスの関数として決定されて良い。あるいは、担持触媒層の分極インピーダンスがモニターされ、そして触媒層のレベルでの酸素分圧は、モニターされた分極インピーダンスの関数として決定されても良い。
【0024】
加えて、交流電流の瞬間値がモニターされた分極インピーダンスの関数として決定されても良い。
【0025】
付与される酸化剤、還元剤、極性化合物のうちの少なくとも一つの量が、活性化反応を最適化するために制御されて良い。さらに、付与される酸化剤、還元剤、極性化合物のうち少なくとも一つの量に対する化合物の量の比率が、活性化反応を最適化するために制御されて良い。
【0026】
さらなる具体的な実施例においては、活性化反応を最適化するために、熱が触媒に加えられて良い。
【0027】
本発明はまた、一般的に化合物を活性化する方法を含むものである。化合物は触媒に導入される。酸化剤または還元剤が触媒と化合物に付与される。化合物に活性化反応を起こすため、交流電流が触媒に印加される。この活性化反応が有用物質を作り出す。例えば、化合物は極性化合物を含んでよく、酸化または還元剤は極性反応物質または無極性反応物質を含んで良い。さらに、化合物は無極性化合物を含んで良く、酸化または還元剤は極性反応物質または無極性反応物質を含んで良い。
【0028】
本発明は低反応性で、無極性の化合物を活性化するための装置を含むものであり、本装置は上述した方法の様々な具体的な実施例を実施するために用いられ得る。本装置は、触媒、低反応性化合物を触媒に導入する手段、(a)酸化剤または還元剤と(b)極性化合物のうち少なくとも一つを触媒及び化合物に付与する手段、及び化合物に活性化反応を起こすために交流電流を触媒に印加する手段を含んで良く、その活性化反応が有用物質を生成する。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】図1は、本発明に従った装置の具体的な実施例を示す。
【図2】図2は、本発明に従った装置のさらなる具体的な実施例を示す。
【図3】図3は、本発明に従った電極の配置の具体的な実施例を示す。
【図4】図4は、本発明の一つの具体的な実施例によって得られた出力に対するNMRの結果を示す。
【図5】図5は、本発明のさらなる具体的な実施例によって得られた出力に対するNMRの結果を示す。
【図6】図6は、発明の具体的な実施例に従った触媒アセンブリの図7と異なる解像度における走査型電子顕微鏡の画像を示す。
【図7】図7は、発明の具体例に従った触媒アセンブリの図6と異なる解像度における走査型電子顕微鏡の画像を示す。
【図8】図8は本発明のさらなる具体的な実施例によって得られた出力に対するNMRスペクトルを示す。
【図9】図9は本発明の一つの具体的な実施例から分極ボード(Bode)スペクトルを示す。
【図10】図10は本発明の一つの具体的な実施例からの単一周波数のEIS(電気化学インピーダンススペクトロスコピー)スペクトルを示す。
【発明を実施するための形態】
【0030】
本発明は以下に添付の図面として説明され、図中の同じ符号は同じエレメントを示している。
【0031】
続く詳細な説明は、例として具体的実施例を与えるだけであって、本発明の有効範囲、適用範囲、構成を限定することを意図していない。より正確に言えば、続く詳細な説明で例示する具体的実施例は、当業者に本発明の実施例を実施できる説明を示すものとなっている。添付の特許請求の範囲に記載された技術的思想、発明の範囲を逸脱することなく、エレメントの作用や構成をさまざまに変更し得ることは理解されよう。
【0032】
本発明はカテレクトリック社とザ・ユニバーシティ・オブ・コネチカット間の共同研究契約の所産であって、有用物質を生成するために、低反応性で、無極性の化合物を活性化する方法、及び装置に関するものである。特に本発明は、例えばパラホルムアルデヒドのような有用物質を生成するために、水を水素と酸素の原料に用い、二酸化炭素を活性化(例えば還元、酸化)する方法と装置に関する。しかしながら、以下に詳細な説明がなされるように、本発明はそのような反応物や生成物に限定されるものではない。反応は、カテレクトリック社によって開発されたDECAN(商標)プロセスによって活性化される。DECAN(商標)プロセスは、特許文献1”Control System for Catalytic Processes”と題する2008年2月5日に発行されたカテレクトリック社の米国特許第7,325,392号、及び特許文献2”Method and Apparatus for Controlling Catalytic Processes”と題する2006年10月25日に出願され、現在係属中のカテレクトリック社の米国特許出願第11/588,113号、(公開番号第2007/0095673号)の中で説明されており、これらはいずれもここに参考文献として組み込まれている。
【0033】
本発明は、低反応性で、無極性の化合物を活性化するための方法及び装置に関する。図1は低反応性で、無極性の化合物を活性化するための装置10の具体的な実施例を示す。低反応性化合物12が触媒(例えば触媒層14)に導入される。触媒層14は担体16によって担持されて良いものである。(a)酸化剤または還元剤19、及び(b)極性化合物18のうちの少なくとも一つが触媒層14と化合物12に与えられる。交流電流(例えば電流/電圧源20から)が、化合物12に活性化反応を起こすため触媒層14に印加される。この活性化反応が有用物質を生成する。
【0034】
ここでいう“無極性化合物”という用語が、総じて、ゼロパーマネントの双極子モーメントを有する化合物を示すことが理解されなければならない。例えばこの定義によれば、個々の分子間で極性結合を有しているにも関わらず、CO2は無極性であると考えられる。したがって、ここで用いる“極性化合物”は総じてゼロでない双極子モーメントを有する化合物を示す。
【0035】
活性化反応は、還元反応か酸化反応のうちの一つを含んで良い。極性化合物18は、水か水蒸気のうちの一つを含んで良い。アンモニア、一酸化窒素、一酸化炭素、メタン、またはそのようなもののうちの一つが水または水蒸気に加えられても良い。
【0036】
他の具体的な実施例においては、極性化合物18は、水、アンモニア、一酸化窒素、及び一酸化炭素のうちの一つを含んでよい。当業者は他の極性化合物が本発明に用いられ得ることを理解するだろう。さらに当業者は水(または水蒸気)を使用することが、酸化反応と還元反応の両方を促進することを理解するだろう。
【0037】
図2に示されているさらなる具体的な実施例においては、化合物12と酸化剤か還元剤19と極性化合物18とのうち少なくとも一つが、触媒層14が入っているチャンバ(リアクタ)22に導入されて良い。チャンバ(リアクタ)22は、管状リアクタから成っても良い。交流電流は電子制御装置24によって制御されて良い。化合物12(例えばCO2)はガスタンク11からチャンバ(リアクタ)22に導入されて良い。極性化合物18(例えば水)は蠕動ポンプ17からチャンバ(リアクタ)22に導入されて良い。酸化剤(例えば酸素)または還元剤(例えば水素)19はタンク21から導入されて良い。化合物12と、酸化剤または還元剤19と極性化合物18のうち少なくとも一つが触媒層14の入ったチャンバ(リアクタ)22を通過し、そこへ交流電流が印加されたあと、反応の結果生成された物質が、アイスウォータートラップ26及び/またはドライアイス/液体窒素トラップ28を通って良く、その後分子シーブ30の中で分離され、その後にアナライザー32において、コンピューター解析(ガスクロマトグラフィー質量分析(GC−MS)や高速液体クロマトグラフィー質量分析(HPLC−MS)や核磁気共鳴分析(NMR)またはその他の解析技術のような解析)がなされる。
【0038】
具体的な一実施例において、低反応性化合物はCO2を含んで良い。そのような実施例においては、有用物質はモノマー形態またはポリマー形態のうちの少なくとも一つの形態にあるホルムアルデヒドから成って良い。他の具体的な実施例においては、有用物質はアルデヒド、トリオキサン、エタン、エチレン、ホルムアルデヒド及びパラホルムアルデヒドのうちの少なくとも一つを含んで良い。有用物質は、炭素、水素、及び酸素のうちの少なくとも一つを含んで良い。またさらに、有用物質はアルコール化合物とオレフィンのうちの少なくとも一つを含んで良い。また反応の結果として、酸素(O2)も生成されるだろう。
【0039】
さらなる具体的な実施例において、化合物12は芳香族化合物から成って良い。芳香族化合物はベンゼンまたはベンゼン誘導体を含んで良い。そのような実施例においては、還元剤19(水素のようなもの)が触媒と芳香族化合物に付与されてよく、有用物質はシクロヘキサンまたはベンゼン誘導体を含んで良い。あるいは、酸化剤19(酸素のようなもの)が触媒と芳香族化合物に付与されて良く、有用物質はアセトフェノン、フェノール、またはベンゼン誘導体のうちの少なくとも一つを含んで良い。
【0040】
触媒層14は貴金属、半導体酸化物、半導体サーメット、及びバリスタのうちの一つを含んで良い。本発明に用いられうる触媒の例は、以下の触媒を含むが以下の触媒に限定されない。触媒の例としては、プラチナ、白金黒、ロジウム、ロジウム黒、パラジウム、パラジウム黒、銀、酸化マンガン、酸化マンガン誘導体、酸化モリブデン、酸化モリブデン誘導体、酸化鉄、酸化鉄誘導体、酸化セリウム、酸化セリウム誘導体、酸化チタニウム、ドープされた酸化チタニウム、そして関連化合物である酸化コバルト、酸化ロジウム、酸化亜鉛等が含まれる。触媒物質の他の例として、アルカリ金属酸化物、アルカリ土類、ランタニド、アクチニド、遷移金属、そして非金属が広く含まれてよい。
【0041】
図3に示されているような具体的な一実施例において、触媒層14は、多孔質セラミック基質のような担体16に付けられた触媒層を含んで良い。例えば、触媒層14は、固体電解質層(担体)16によって担持されて良い。ある実施例においては、触媒層14は固体電解質層16に付けられてよく、同様に別の担体(図示せず)に付けられてもよい。固体電解質層16は、連続層、不連続層の一つであっても良い。固体電解質層16は、安定化ジルコニア(例えば、酸化ガドリニウムや酸化サマリウムや酸化ランタン、酸化イッテルビウム、酸化イッテリウム、または他の当業者に知られている適当な物質によって安定化されている)、ナフィオン、他の水素イオン導電性材料、ベータアルミナ等のうちの一つを含んで良い。リアクタの温度範囲は、当業者に知られているように、これらの物質の特性によって決定されるだろう。
【0042】
交流電流が、電子制御装置24により、触媒層14と固体電解質層16の間のインターフェイスでの三相界面を横切って印加されて良い。触媒層14に交流電流を印加するために、三つの電極が与えられて良い。例えば、基準電極40が固体電解質層16に付けられ、対極42が固体電解質層16に付けられ、作用電極44が触媒層14に付けられて良い。
【0043】
さらなる具体的な実施例においては、担持触媒層14の分極インピーダンスがモニターされてよい。分極インピーダンスをモニターするために、電子制御装置24は、印加される電流と電圧を決定する手段を含んで良い。検知された電流から分極インピーダンスを決定することについては、カテレクトリック社の米国特許第7,325,392号に詳しく説明されている。分極インピーダンスは、電子制御装置24からの交流電流を変化させることによって制御されて良く、活性化反応を最適化することができるようにする。
【0044】
加えて、酸素分圧が制御される環境が担持触媒層のレベルにおいて与えられて良い。酸素は、作用電極44と基準電極40との間に電圧を印加することにより、固体電解質層16から生成されても良く、それはDECAN(商標)プロセスの関数である。あるいは、酸素はタンク21から与えられて良い(図2)。触媒層14のレベルにおける酸素分圧はモニターされてよい。酸素分圧の決定はまた、電圧測定の関数としての電子制御装置24によってなされてもよい。例えば、酸素分圧のモニターは、担持触媒層14の界面インピーダンスをモニターすることを含んで良い。触媒層14のレベルにおける酸素分圧は、界面インピーダンスの関数として決定されても良い。あるいは、担持触媒層14の分極インピーダンスが上で述べたようにモニターされて良く、そして触媒層14のレベルにおける酸素分圧が、モニターされた分極インピーダンスの関数として決定されて良い(例えば、電子制御装置24によって実施される)。
【0045】
加えて、交流電流の瞬間値は、モニターされた分極インピーダンスの関数として、電子制御装置24によって決定されて良い。
【0046】
与えられる酸化剤または還元剤19及び/または極性物質18の量は、活性化反応の最適化のために制御されて良い。さらに、与えられる化合物12の量に対する酸化剤または還元剤及び/または極性化合物18の量の比率は、活性化反応を最適化するために制御されて良い。
【0047】
さらなる具体的な実施例においては、活性化反応を最適化するために熱が触媒に加えられて良い。熱は加熱エレメント34によって加えられて良く、温度制御ユニット36によって制御される(図2)。酸素19は酸素源(例えばタンク21)から加えられても、あるいは上述したように、固体電解質層に印加される電圧を制御することによって生成されてもよい。
【0048】
本発明はまた一般的に化合物の活性化のための方法を含む。化合物12は触媒層14に導入される。酸化剤または還元剤19が触媒層14と化合物12に与えられる。化合物12に活性化反応を起こすために交流電流が触媒層14に印加される。この活性化反応が有用物質を生成する。例えば、化合物は極性化合物12を含んで良く、そして酸化剤または還元剤19は極性反応物質(例えば水または水蒸気)または無極性反応物質(酸素または水素)を含んでよい。加えて、化合物は無極性化合物12(上述したように)を含んでよく、そして酸化剤または還元剤19は極性反応物質(例えば水または水蒸気)または無極性反応物質(酸素または水素)を含んでよい。例えば、価値ある生成物を生じさせるために、メタノールのような一つの極性化合物がエタノールのような他の極性化合物と反応しうるし、あるいは価値ある生成物を生じさせるために、ベンゼンのような一つの無極性化合物がメタンのような他の極性化合物と反応しうる。
【0049】
以下の例は本発明に従って、水素の原料として水を用い二酸化炭素を還元するプロセスの具体的な実施例を説明するものである。以下の例は、図2に関連して上述した装置を用いることによって実施された。しかしながら、発明のプロセスは以下の例によって限定されず、及び他の分子、例えばより高い分子量のアルコールを、オレフィン及び他の化合物に還元するために実施されてもよいことは、当業者であれば理解されるべきことである。
【0050】
例1
a. 基質:Vesuvius Hi-Tech Ceramicsから入手した市販のカルシア安定化ジルコニア(FSZ)多孔質セラミックが固体電解質層16として用いられた。
b. 触媒の堆積:液相化学蒸着(LP-CVD)が触媒層14(プラチナ)のコーティングのために用いられた。Pt(acac)2(Strem Chemicals Inc.)がプラチナ反応前駆体として用いられた。反応前駆体の温度は120―150度にセットされ、一方でFSZ(カルシア)の温度は400―500度にセットされた。アルゴンが搬送ガスとして用いられた。反応前駆体の搬送ガスの流量比率は500−1000sccm/minにセットされ、搬送ガスは100―150度に熱せられ、その後CVD合成管に導入された。酸素が酸化剤として用いられた。酸素の流量比率は、80―200sccm/minにセットされた。CDVリアクタの総圧は5−20kPaに制御された。プラチナの堆積時間は1−4時間であった。
c. 三つの電極の取り付け:図3との関連において上述したように、三つの電極はFSZ(カルシア)セラミック触媒に被着した。三つの電極はそれぞれ0.25mmプラチナワイヤー(Alfa Aesar)より成る。三つのプラチナワイヤーはプラチナペースト(Engelhard/BASEより)を用いてFSZ(カルシア)に取り付けられ、900℃の空気中で処理された。基準電極40はプラチナの(触媒)層14に接触することなく、担体16に直結された。対極42はプラチナのLP-CVD触媒層14の堆積の前に取り付けられ、FSZの担体16に接触している。作用電極44はプラチナLP-CVD触媒層14に被着した。三つの電極を取り付けた後、三つの電極を備えた触媒アセンブリが石英管に収められ、600−800℃で4−6時間、8%の水素/ヘリウム混合ガス下で還元された。
d. 触媒反応―リアクタと反応パラメーター:三つの電極を備え、Pt-FSZ担持触媒アセンブリが石英管リアクタ(例えば図2における管状リアクタ22)に収められた。リアクタは空気を取り除かれ、そしてそのあと約5−14psigのやや正圧で稼働された。管状リアクタの温度は600から950℃にセットされた。
【0051】
本発明は、上述の説明に限定されないことに注意すべきである。例えば、温度は室温程度に低くても良く、950℃より高くても良く、固体電解質はナフィオンでも良く、触媒は白金黒でも良い。固体電解質または触媒として使用される他の物質は当業者には明らかであろう。
【0052】
さらに、固体電解質層16は、当業者に知られているなんらかの適当な方法によって、不活性のセラミック基質(例えば、Corning Inc.またはSt Gobain Coから与えられるコージライト担体)から成る担体に被着しうる。同様に、触媒層14は、当業者に知られているなんらかの適当な方法によって、固体電解質層16に被着しうる。
【0053】
加えて、プロセスの実施は、固体電解質層16と触媒層14が連なることを必要としない。必要なことは、触媒層14が固体電解質16と接する結晶粒界が優勢であること、及び反応相が触媒活性インターフェイスを横切ること許容するに足る十分な多孔性をもつことである。
【0054】
使用された二酸化炭素(CO2)はAirgas社からのゼログレードガスだった。使用された水は脱イオン水であった。水は蠕動ポンプ17によって注入され、熱せられたセラミック管によって蒸発させられた。CO2はタンク11から与えられる搬送ガスとして使用された。CO2対水のモル比は10対1または5対1にセットされた。CO2の流量は流量計によってモニターされ、200scc/minuteから1600scc/minuteの間で変化させられた。水/CO2比は1/1000から1000/1の間のどの値をとっても良いし、この範囲外であっても良い。
【0055】
システムは分極化されていて(電子制御装置24と三つの電極40、42、及び44によって)、平均電圧0.03から0.1Vrmsの範囲内で約1kHzのパルス電流だった。電流は平均で0.03から0.13mAの間である。このプロセスは、上記の米国特許出願第11/588,113号の中に詳述されている。
【0056】
8回の分極化が行われ、それぞれが約15分間続けられた。
【0057】
このプロセスの思いがけない結果は、大量の白い粉末が生成されたことであり、それらは、リアクタ22の低温領域に集められ、同様にウォータートラップ26や液体窒素トラップ28の中に集められた。気相は、熱及びフレームイオン化検出器とともにガスクロマトグラフィ(例えば、アナライザー32)によって解析された。
【0058】
粉末はトラップによって集められた試水の中に分散され、そして核磁気共鳴分析(NMR)や高速液体クロマトグラフィー(HPLC)によって解析された。リアクタの温度を900℃にセットした場合、それらのサンプルの中にパラホルムアルデヒドや小量のトリオキサンが存在するという一貫したデータが収集された。NMRの解析結果が図4に示されている。
【0059】
例2
この例で使用された触媒層14は、例1で使用されたものと同じである。石英管リアクタの温度は600℃にセットされた。図5に示されているように、NMRによって特定された主な生成物はパラホルムアルデヒドであった。
【0060】
例3
a. 基質:Vesuvius Hi-Tech Ceramicsから入手した市販のカルシア安定化ジルコニア(FSZ)多孔質セラミックが固体電解質層16として用いられた。
b. 触媒の堆積:八面体型酸化マンガンOMS-2が触媒層14として以下のように用意された。
5.6gのK2SO4、8.81gのK2S2O8、及び3.77gのMnSO4並びに70mlの脱イオン水が125mlの加圧滅菌器に加えられ、4748パール社製高温加圧酸分解容器に96時間置かれて、温度は250℃に保たれた。固形物は脱イオン水によって繰り返し洗浄された。懸濁液は濾過され、300mlの脱イオン水を入れたビーカーにおいて85℃で一晩中攪拌された。懸濁液はVesuvius社の多孔質セラミック体にコートされ、120℃で12時間乾燥された。
c.電極の取り付け:三つのプラチナ電極が例1で説明したように配された。プラチナペースト(Engelhard BASF)が電極の取り付けに利用された。そして、触媒アセンブリが150―300℃で2時間、6%の水素/ヘリウム混合ガス下で還元された。
【0061】
このように用意された触媒アセンブリは、石英管リアクタ(管状リアクタ22)に収められ、そして電子制御装置24と接続された。石英管リアクタ22は、密閉され、大気環境から隔離された。CO2(Air gas社のゼログレード)がタンク11から導入され、流量計によって制御された。水はあらかじめ較正された蠕動ポンプ17によって注入された。水はセラミック管によって、130℃以上に熱せられた。そしてリアクタ22は、CO2が取り除かれた
【0062】
システムは、やや高い大気圧にセットされた(例えば5kPa)。電子制御装置24が電極40、42、44によって、触媒アセンブリに分極電流または電圧を与えた。管状リアクタは250―450℃にセットされた。
【0063】
生成物はNMRとGC技術によって解析された。
【0064】
Pt-OMS-2触媒層14が、CO2- H2Oシステム内で、250℃から始めて450℃まで試験された。250℃で反応が始まったときは、反応は遅かった。4時間後、第一のアイスウォータートラップ26でNMRによりサンプルが解析された。結果として得られたNMRパターンはなんの生成物も示さなかった。生成物の濃度が限界を超えたか、生成が非常に遅かったのかもしれない。二度目の試験は300度で行われた。結果として得られたNMRの水素イオンパターンは、低い濃度のパラホルムアルデヒドを示した(モル濃度で約0.5―1.0%)。特に、この温度でNMRの結果は、パラホルムアルデヒドの弱いピークを示し
ていた。三度目の試験は400℃で行われた。アイスウォータートラップ26とドライアイストラップ28で結果として得られたNMRパターンは、この温度では、より強いパラホルムアルデヒドのピークを示した。パラホルムアルデヒドの濃度は、モル濃度で約1.0―1.5%だった。四度目の試験は450℃で行われた。この温度で結果として得られたNMR水素イオンパターンは、より高いパラホルムアルデヒドの濃度を示した。パラホルムアルデヒドの濃度は、モル濃度で約3.0―5.0%だった。
【0065】
上記の4つの試験のため使用されたCO2流量比は200sccmで、水の注入比は9.16ml/minだった。CO2/ H2O流量比は2.37だった。
【0066】
上記の結果に基づいて、異なる温度におけるCO2の交換比率が以下の表1に示されている。
【0067】
【表1】
【0068】
例4
ZnO触媒の合成:低圧化学蒸着(LPCVD)技術が、カルシウム安定化ジルコニア(FSZ)の担体に、ZnOの触媒層14を堆積するために用いられた。Zn反応前駆体はZn(CHCOO)2(98+%,Aldrich)であった。FSZのテンプレートの温度は300℃にセットされた。反応前駆体の温度は160℃にセットされた。堆積圧力は3kPaに制御された。サンプルは二回コートされた。二回目に、より均一にコーティングするために、サンプルの配置は反対にされた(前を後ろに、上を底に)。それぞれのコーティングの時間は4時間だった。トータルのCVDコーティングの時間は8時間だった。LPCVDのあと、サンプルは上昇率5℃/minで熱せられ、空気中において600℃で12時間、か焼された。
リアクタと電極:図3との関連で上述したように、三つの電極がZnOでコートされたFSZ担体の上に取り付けられた。ZnOでコートされたFSZ触媒アセンブリがか焼された後、端の25mm2の範囲がZnOを取り除くため5M HCLによって前もって処理された。プラチナの基準電極40がこの範囲に取り付けられた。シリンダーサンプルのもう一方の端においては、上述したのと同じ方法がZnO層を取り除くために用いられ、そしてプラチナワイヤーが対極42として、FSZの担体16に直結された。作用電極44は、ZnO触媒層14に付けられた。プラチナペースト(BASFより6082)が、プラチナ電極の触媒アセンブリとの接触を良くするために利用された。
【0069】
電極が取り付けられた後、電極間の抵抗がデジタルマルチメータ(HDM350)によって計測された。結果は以下の表2に示されている。
【0070】
【表2】
【0071】
タンク11からのCO2流量は流量計(OMEGA FL-3504G)によって計測された。水の注入は、較正された蠕動ポンプ17(Watson Marlow Sci400)によって計測された。水は熱せられたセラミックフリット(>130℃)のうえにたらされ、T管の中で蒸発させられた。そして、CO2搬送ガスによって、水がリアクタの中に導入された。ZnO-FSZ触媒アセンブリが2インチ石英管リアクタ(例えば、管状リアクタ22)の中に収められた。リアクタ22は、環状炉(Thermolyne 21100)または加熱エレメント34によって600―700℃に熱せられた。ZnO-FSZ触媒アセンブリは三つの電極によって電子制御装置24に接
続され、電子制御装置24で制御される電圧または電流により分極化された。流出した生成物はアイスウォータートラップ26とドライアイストラップ28によって冷やされた。リアクタからのガスは分子シーブ30によって乾燥され、気体の組成はアナライザー32(例えば、ガスクロマトグラフ(SRI 8610C))によって解析された。
【0072】
分極化試験のために、-2.5Vから2.5Vの電圧が、定電圧電解モードまたは単一周波数モードにより印加された。CO2とH2Oの温度は600℃と700℃にセットされた。CO2の流量比は、200―500sccmの間であった。CO2/ H2O比は1:1と1:3にそれぞれセットされた。異なる分極化で、それぞれのEISスペクトルがGarmy Reference 600により取得された。
【0073】
ZnOでコートされたFSZアセンブリは走査型電子顕微鏡(SEM)によって調査された。ZnO触媒層14の形態は図6(x50000)と図7(x100000)に示されている。SEM画像に基づく形態は、ZnO触媒層14が連続層であること、及びZnOの粒子サイズが約20−50nmであることを示唆している。
【0074】
CO2とH2Oの活性化による生成物は、二の相、すなわち液体と気体に分けられた。液体の生成物はNMRによって特性を明らかにされ、気体はSRI 8610Cガスクロマトグラフによって解析された。HPLC-MSやGC-MSのような他の技術もまた利用することができる。図8は合成された生成物の水素イオンNMRスペクトルである。CO2の流量比は320−450sccmにセットされた。水が流量比10mL/hour(または207sccm/min)で注入された。CO2/ H2Oモル比は1.6−2.2であった。図8に示された結果によると、一つの主な生成物が合成された。NMRの化学シフトは4.75から5.20ppmの間であった。化学シフト8.25ppmにおいて、小量のホルムアルデヒドが存在した。
【0075】
分極電圧は-1.2Vから-1.5Vにセットされた。典型的な分極ボード(Bode)スペクトルが図9に示されている。“A”線が分極なしで、“B”線が-1.2Vの分極化による。分極化された状態で、Zmodが減少した。例えば、Zmodは500kHzの周波数で3.825kΩから3.573kΩまで減少した。これらのデータは、触媒セルが分極化されているとき、反応が早いことを示唆している。
【0076】
図10は単一周波数EISスペクトルである。周波数を500kHzに固定して、Zmodは時間と共に変化することが示された。この変化は、触媒アセンブリの界面におけるダイナミックな反応を反映していた。比較試験においては、もし正と負が交互する分極が使用されるならば、Zmodは負の分極(反応比率を増加する)のあと減少する。
【0077】
反応による生成物をガスクロマトグラフィー(GC)オンライン解析したところ、14.5―20.5minで新たな幅の広いピークが見つかった。これらのピークは、エチレンとエタンであった。
【0078】
前述の例は本発明の範囲を限定することなく、本発明の作用と適用について例示する意である。当業者であれば、本発明には多くの用途があること、そして上記の例で言及されたパラメーター、物質、化合物、生成物、その他のさまざまなものが、用途や望ましい効果に依拠して修正され、変更されうることを理解するであろう。
【0079】
上述の例によって、当業者であれば、本発明が、低反応性で、無極性の分子(CO2のような)と極性分子/種(水や水蒸気のような)の間で反応を活性化させるための方法、プロセス、及び装置を含むこと、ポリマーの生成や有機的合成反応で有用な物質をもたらすことを理解するだろう。例えば、本発明に従って、異質な触媒反応の中で、二酸化炭素(その他の同じような低反応性で、無極性の分子)と極性化合物(水や水蒸気やその他のような)の反応の活性化のプロセスが実施される。例えば、本発明は(特に)以下の反応の活性化に用いられてよい。
【0080】
CO2+ H2O
CO2+ H2O +CH4
CO2+NO
CO2+NO+ CH4
CO2+NH3
C6H6+ H2O
C6H6+ C6H6+ CH4
C6H6+ H2O + CH4
C6H6+ CH3OH 及び他の同じような化合物
C6H6+NO
C6H6+NH3
【0081】
当業者であれば、上記の反応リストは限定を意図するものではなく、本発明が、上述したように、他の反応を促進することに用いられ得ることも理解するだろう。
【0082】
本発明が、二酸化炭素及び他の低反応性分子の活性化のための画期的な方法及び装置を与えることが、今まさに理解されるべきである。
【0083】
本発明は、さまざまな例示との関連で説明されてきたが、特許請求の範囲に記載の本発明の技術的思想及び発明の範囲を逸脱することなく、そこにおいて数々の修正や適応がなされるものである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
低反応性で、無極性の化合物を活性化する方法であって、
低反応性化合物を触媒に導入する工程と、
(a)酸化剤または還元剤と(b)極性化合物のうちの少なくとも一つを、前記触媒と前記化合物に付与する工程と、
前記化合物に活性化反応を起こすために、前記触媒に交流電流を印加する工程と、
を含み、
前記活性化反応により有用物質が生成される、
ことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記活性化反応が、還元反応または酸化反応のうちの一つを含む、
ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記極性化合物が水または水蒸気のうちの一つを含む、
ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項4】
アンモニア、一酸化窒素、一酸化炭素、及びメタンのうちの一つが、前記水または水蒸気に加えられる、
ことを特徴とする請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記極性化合物が、水、アンモニア、一酸化窒素、及び一酸化炭素のうちの一つを含む、
ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記化合物が前記触媒を入れたチャンバに導入され、
(a)酸化剤または還元剤と(b)極性化合物のうちの少なくとも一つが前記チャンバに導入される、
ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記低反応性化合物がCO2を含み、
前記有用物質が、モノマーまたはポリマーのうち少なくとも一の形態のホルムアルデヒドを含む、
ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記低反応性化合物がCO2を含み、
前記有用物質が、アルデヒド、トリオキサン、エタン、エチレン、ホルムアルデヒド、及びパラホルムアルデヒドのうちの少なくとも一つを含む、
ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記有用物質が、炭素、水素及び酸素のうちの少なくとも一つを含む、
ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記有用物質が、アルコール化合物とオレフィンのうちの少なくとも一つを含む、
ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記化合物が芳香族化合物を含み、
(a)酸化剤または還元剤と(b)極性化合物のうちの少なくとも一つを付与する前記工程が、前記還元剤を前記触媒と前記芳香族化合物に付与する工程を含む、
ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記還元剤が水素を含み、
前記芳香族化合物が、ベンゼンまたはベンゼン誘導体を含み、
前記有用物質が、シクロヘキサンまたはベンゼン誘導体を含む、
ことを特徴とする請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記化合物が前記芳香族化合物を含み、
(a)酸化剤または還元剤と(b)極性化合物のうちの少なくとも一つを付与する前記工程が、前記酸化剤を前記触媒と前記芳香族化合物に付与する工程を含む、
ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記酸化剤が酸素を含み、
前記芳香族化合物がベンゼンまたはベンゼン誘導体を含む、
ことを特徴とする請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記有用物質が、アセトフェノン、フェノール、ベンゼン誘導体のうち少なくとも一つを含む、
ことを特徴とする請求項13に記載の方法。
【請求項16】
前記触媒が、貴金属、半導体酸化物、半導体サーメット及びバリスタのうちの一つを含む、
ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項17】
前記触媒が、プラチナ、白金黒、ロジウム、ロジウム黒、パラジウム、パラジウム黒、銀、酸化マンガン、酸化マンガン誘導体、酸化モリブデン、酸化モリブデン誘導体、酸化鉄、酸化鉄誘導体、酸化セリウム、酸化セリウム誘導体、酸化チタニウム、ドープされた酸化チタニウム、酸化コバルト、酸化ロジウム、酸化亜鉛のうちの一つを含む、
ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項18】
前記触媒が、多孔質セラミック基質に付けられた触媒層を含む、
ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項19】
前記触媒層が、固体電解質層に担持される、
ことを特徴とする請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記固体電解質層が、連続層、または不連続層の一つである、
ことを特徴とする請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記固体電解質が安定化ジルコニア、ナフィオン、水素イオン導電性材料及びベータアルミナのうちの一つを含む、
ことを特徴とする請求項19に記載の方法。
【請求項22】
前記交流電流が、前記触媒層と前記固体電解質層の間のインターフェイスにおいて、三相界面を横切って印加される、
ことを特徴とする請求項19に記載の方法。
【請求項23】
前記触媒層に前記交流電流を印加するために、
基準電極が前記固体電解質層に付けられ、
対極が触媒層と電解質層の間に付けられ、
作用電極が触媒層に付けられる、
ことを特徴とする請求項22に記載の方法。
【請求項24】
さらに、
担持触媒層の分極インピーダンスをモニターする工程と、
交流電流を変化させることによって、分極インピーダンスを制御する工程と、
を含むことを特徴とする請求項19に記載の方法。
【請求項25】
さらに、
前記担持触媒層のレベルで、酸素分圧が制御される環境を与える工程、
を含むことを特徴とする請求項19に記載の方法。
【請求項26】
さらに、
触媒層のレベルで、酸素分圧をモニターする工程、
を含むことを特徴とする請求項25に記載の方法。
【請求項27】
酸素分圧をモニターする前記工程が、前記担持触媒層の界面インピーダンスをモニターする工程、及び
前記触媒層のレベルで酸素分圧を、前記界面インピーダンスの関数として決定する工程と、
を含むことを特徴とする請求項26に記載の方法。
【請求項28】
さらに、
前記担持触媒層の分極インピーダンスをモニターする工程を含み、
前記触媒層のレベルで酸素分圧はモニターされた分極インピーダンスの関数として決定される、
ことを特徴とする請求項26に記載の方法。
【請求項29】
さらに、
前記担持触媒層の分極インピーダンスをモニターする工程を含み、
交流電流の瞬間値は、モニターされた分極インピーダンスの関数として決定されうる、
ことを特徴とする請求項19に記載の方法。
【請求項30】
さらに、
活性化反応を最適化するために、付与される(a)酸化剤または還元剤と(b)極性化合物のうちの少なくとも一つの量を制御する工程を含む、
ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項31】
活性化反応を最適化するために、付与される(a)酸化剤または還元剤と(b)極性化合物のうちの少なくとも一つの量に対する前記化合物の量の比率を制御する工程を含む、
ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項32】
さらに、触媒に熱を加える工程、
を含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項33】
化合物を活性化する方法であって、
化合物を触媒に導入する工程と、
酸化剤または還元剤を触媒と化合物に付与する工程と、
化合物に活性化反応を起こすために、前記触媒に前記交流電流を印加する工程、
を含み、
前記活性化反応が有用物質を生成することを特徴とする方法。
【請求項34】
低反応性で、無極性の化合物を活性化させるための装置であって、
触媒と、
低反応性化合物を触媒に導入する手段と、
(a)酸化剤または還元剤と(b)極性化合物のうちの少なくとも一つを前記触媒と前記化合物に付与する手段と、
前記化合物に活性化反応を起こすために、触媒に交流電流を印加するための電極と、
を備え、
前記活性化反応が有用物質を生成することを特徴とする装置。
【請求項1】
低反応性で、無極性の化合物を活性化する方法であって、
低反応性化合物を触媒に導入する工程と、
(a)酸化剤または還元剤と(b)極性化合物のうちの少なくとも一つを、前記触媒と前記化合物に付与する工程と、
前記化合物に活性化反応を起こすために、前記触媒に交流電流を印加する工程と、
を含み、
前記活性化反応により有用物質が生成される、
ことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記活性化反応が、還元反応または酸化反応のうちの一つを含む、
ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記極性化合物が水または水蒸気のうちの一つを含む、
ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項4】
アンモニア、一酸化窒素、一酸化炭素、及びメタンのうちの一つが、前記水または水蒸気に加えられる、
ことを特徴とする請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記極性化合物が、水、アンモニア、一酸化窒素、及び一酸化炭素のうちの一つを含む、
ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記化合物が前記触媒を入れたチャンバに導入され、
(a)酸化剤または還元剤と(b)極性化合物のうちの少なくとも一つが前記チャンバに導入される、
ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記低反応性化合物がCO2を含み、
前記有用物質が、モノマーまたはポリマーのうち少なくとも一の形態のホルムアルデヒドを含む、
ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記低反応性化合物がCO2を含み、
前記有用物質が、アルデヒド、トリオキサン、エタン、エチレン、ホルムアルデヒド、及びパラホルムアルデヒドのうちの少なくとも一つを含む、
ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記有用物質が、炭素、水素及び酸素のうちの少なくとも一つを含む、
ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記有用物質が、アルコール化合物とオレフィンのうちの少なくとも一つを含む、
ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記化合物が芳香族化合物を含み、
(a)酸化剤または還元剤と(b)極性化合物のうちの少なくとも一つを付与する前記工程が、前記還元剤を前記触媒と前記芳香族化合物に付与する工程を含む、
ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記還元剤が水素を含み、
前記芳香族化合物が、ベンゼンまたはベンゼン誘導体を含み、
前記有用物質が、シクロヘキサンまたはベンゼン誘導体を含む、
ことを特徴とする請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記化合物が前記芳香族化合物を含み、
(a)酸化剤または還元剤と(b)極性化合物のうちの少なくとも一つを付与する前記工程が、前記酸化剤を前記触媒と前記芳香族化合物に付与する工程を含む、
ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記酸化剤が酸素を含み、
前記芳香族化合物がベンゼンまたはベンゼン誘導体を含む、
ことを特徴とする請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記有用物質が、アセトフェノン、フェノール、ベンゼン誘導体のうち少なくとも一つを含む、
ことを特徴とする請求項13に記載の方法。
【請求項16】
前記触媒が、貴金属、半導体酸化物、半導体サーメット及びバリスタのうちの一つを含む、
ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項17】
前記触媒が、プラチナ、白金黒、ロジウム、ロジウム黒、パラジウム、パラジウム黒、銀、酸化マンガン、酸化マンガン誘導体、酸化モリブデン、酸化モリブデン誘導体、酸化鉄、酸化鉄誘導体、酸化セリウム、酸化セリウム誘導体、酸化チタニウム、ドープされた酸化チタニウム、酸化コバルト、酸化ロジウム、酸化亜鉛のうちの一つを含む、
ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項18】
前記触媒が、多孔質セラミック基質に付けられた触媒層を含む、
ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項19】
前記触媒層が、固体電解質層に担持される、
ことを特徴とする請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記固体電解質層が、連続層、または不連続層の一つである、
ことを特徴とする請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記固体電解質が安定化ジルコニア、ナフィオン、水素イオン導電性材料及びベータアルミナのうちの一つを含む、
ことを特徴とする請求項19に記載の方法。
【請求項22】
前記交流電流が、前記触媒層と前記固体電解質層の間のインターフェイスにおいて、三相界面を横切って印加される、
ことを特徴とする請求項19に記載の方法。
【請求項23】
前記触媒層に前記交流電流を印加するために、
基準電極が前記固体電解質層に付けられ、
対極が触媒層と電解質層の間に付けられ、
作用電極が触媒層に付けられる、
ことを特徴とする請求項22に記載の方法。
【請求項24】
さらに、
担持触媒層の分極インピーダンスをモニターする工程と、
交流電流を変化させることによって、分極インピーダンスを制御する工程と、
を含むことを特徴とする請求項19に記載の方法。
【請求項25】
さらに、
前記担持触媒層のレベルで、酸素分圧が制御される環境を与える工程、
を含むことを特徴とする請求項19に記載の方法。
【請求項26】
さらに、
触媒層のレベルで、酸素分圧をモニターする工程、
を含むことを特徴とする請求項25に記載の方法。
【請求項27】
酸素分圧をモニターする前記工程が、前記担持触媒層の界面インピーダンスをモニターする工程、及び
前記触媒層のレベルで酸素分圧を、前記界面インピーダンスの関数として決定する工程と、
を含むことを特徴とする請求項26に記載の方法。
【請求項28】
さらに、
前記担持触媒層の分極インピーダンスをモニターする工程を含み、
前記触媒層のレベルで酸素分圧はモニターされた分極インピーダンスの関数として決定される、
ことを特徴とする請求項26に記載の方法。
【請求項29】
さらに、
前記担持触媒層の分極インピーダンスをモニターする工程を含み、
交流電流の瞬間値は、モニターされた分極インピーダンスの関数として決定されうる、
ことを特徴とする請求項19に記載の方法。
【請求項30】
さらに、
活性化反応を最適化するために、付与される(a)酸化剤または還元剤と(b)極性化合物のうちの少なくとも一つの量を制御する工程を含む、
ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項31】
活性化反応を最適化するために、付与される(a)酸化剤または還元剤と(b)極性化合物のうちの少なくとも一つの量に対する前記化合物の量の比率を制御する工程を含む、
ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項32】
さらに、触媒に熱を加える工程、
を含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項33】
化合物を活性化する方法であって、
化合物を触媒に導入する工程と、
酸化剤または還元剤を触媒と化合物に付与する工程と、
化合物に活性化反応を起こすために、前記触媒に前記交流電流を印加する工程、
を含み、
前記活性化反応が有用物質を生成することを特徴とする方法。
【請求項34】
低反応性で、無極性の化合物を活性化させるための装置であって、
触媒と、
低反応性化合物を触媒に導入する手段と、
(a)酸化剤または還元剤と(b)極性化合物のうちの少なくとも一つを前記触媒と前記化合物に付与する手段と、
前記化合物に活性化反応を起こすために、触媒に交流電流を印加するための電極と、
を備え、
前記活性化反応が有用物質を生成することを特徴とする装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図8】
【図9】
【図10】
【図6】
【図7】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図8】
【図9】
【図10】
【図6】
【図7】
【公表番号】特表2010−540437(P2010−540437A)
【公表日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−525830(P2010−525830)
【出願日】平成20年9月19日(2008.9.19)
【国際出願番号】PCT/US2008/010880
【国際公開番号】WO2009/038753
【国際公開日】平成21年3月26日(2009.3.26)
【出願人】(505397955)カテレクトリック・コーポレイション (3)
【氏名又は名称原語表記】CATELECTRIC CORPORATION
【出願人】(510050100)ザ・ユニバーシティ・オブ・コネチカット (1)
【氏名又は名称原語表記】The University of Connecticut
【住所又は居所原語表記】263 Farmington Avenue, Mc−6207, Farmington, Connecticut 06030−6207, the United States of America
【Fターム(参考)】
【公表日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年9月19日(2008.9.19)
【国際出願番号】PCT/US2008/010880
【国際公開番号】WO2009/038753
【国際公開日】平成21年3月26日(2009.3.26)
【出願人】(505397955)カテレクトリック・コーポレイション (3)
【氏名又は名称原語表記】CATELECTRIC CORPORATION
【出願人】(510050100)ザ・ユニバーシティ・オブ・コネチカット (1)
【氏名又は名称原語表記】The University of Connecticut
【住所又は居所原語表記】263 Farmington Avenue, Mc−6207, Farmington, Connecticut 06030−6207, the United States of America
【Fターム(参考)】
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