説明

有軌道台車システム

【課題】有軌道台車の走行位置決め用被検出体が、メンテナンス時等に人の足で踏まれて破損することを防止する。同時に、非検出体の設置が容易に行えるようにする。
【解決手段】有軌道台車の走行車輪を走行レールの走行面で支持し、左右にガイドローラを設けるとともに、走行レール2の走行面4の左右のガイド面5,6の下側のくぼみ10内に、位置決めドグ22を設置する。位置決めドグ22は平面視で走行面4で覆われ、L字状で、鉛直部を取付溝12にボルト26で取り付け、水平部を櫛歯28とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は有軌道台車システムに関し、特に位置決め用の被検出体の配置に関する。
【背景技術】
【0002】
スタッカークレーンその他の有軌道台車では、走行レールと平行に位置決め用のドグレールを設け、ドグレール内に位置決め用の被検出体として、ドグを配置することが知られている(特許文献1)。このようなドグレールを図5に示すと、60は走行レール、62はドグレールで、例えばラックに沿って走行レール60に平行に配置されている。63は櫛歯などのマークを用いたドグ、65は給電板で、非接触給電やブラシによる給電などで、有軌道台車に電力を供給する。
【0003】
図5のドグ配置では、メンテナンス時などに有軌道台車の走行経路を人が通行すると、ドグ63がむき出しのため、人の足で踏まれて損傷することがある。即ち走行レール60の両側にラックがあり、その間のスペースは広くはない。また走行レール60は歩行の障害となるので、これを避けるように歩くと、ドグ63を足で踏みやすい。ドグ63が損傷すると、スタッカークレーンなどの有軌道台車は停止位置の位置決めができず、走行不能になる。ここでドグ63を肉厚にして強度を増すと損傷を避けることはできるが、ドグ63の加工が難しくなり、櫛歯のピッチを小さくし難くなる。
【特許文献1】特開平7−242139号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この発明の課題は、有軌道台車の位置決め用の被検出体が、人の足で踏まれて損傷することを防止することにある。
請求項2の発明での追加の課題は、被検出体の設置を容易にすることにある。
請求項3の発明での追加の課題は、被検出体の設置に伴う、レール幅の増加を最小限にすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この発明は、有軌道台車の走行車輪を走行レールの走行面で支持するようにした有軌道台車システムであって、
前記走行レールは、走行面の下部の左右にくぼみを備え、
前記くぼみ内で走行レールに被検出体を取り付けて、該被検出体が平面視で前記走行面により覆われ、走行面の外側に露出しないようにすると共に、
前記有軌道台車に前記被検出体を検出するためのセンサを設けた、ことを特徴とする。
【0006】
好ましくは、前記くぼみ内で、走行レールにその長尺方向に平行な溝を設けて、該溝を利用して前記被検出体を走行レールに固定する。
【0007】
また好ましくは、前記有軌道台車の走行車輪の左右にガイドローラを設けると共に、走行レールの走行面の左右に鉛直なガイド面を設けて、該左右のガイド面で前記左右のガイドローラをガイドする。
【発明の効果】
【0008】
この発明では、被検出体を走行面の下部のくぼみ内に配置して、平面視で走行面により被検出体が覆われるようにするので、メンテナンス時などに走行レールに沿って人が歩行しても、踏みつけられて損傷することがない。また被検出体は走行レールの走行面により隠されるので、丈夫な部材にする必要がない。
【0009】
走行レールの長尺方向に平行な溝を設けて、この溝を利用して被検出体を走行レールに固定すると、被検出体の取付が容易になる。さらに溝は走行レールの製造時に容易に形成することができる。
【0010】
有軌道台車の走行車輪の左右にガイドローラを設けると共に、走行レールの走行面の左右にガイド面を設けてガイドすると、ガイドローラ間に間隔が必要なため、走行面も幅広になり、これに伴って被検出体を配置するだけのスペースを容易に得ることができる。従って、走行レールのくぼみ内に被検出体を設けることに伴う、走行レール幅の増加を最小限にできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下に本発明を実施するための最適実施例を示す。
【実施例】
【0012】
図1〜図4に、スタッカークレーンを例に実施例を示す。なおスタッカークレーンの走行レール2の両側に図示しないラックがあり、ラック間のスペースをスタッカークレーンの走行スペースとするものとする。各図において、2は走行レールで、鉛直方向断面形状はI字状もしくはT字状であり、走行レール2の上面は水平な走行面4で、その左右両側に鉛直なガイド面5,6がある。走行レール2の下部には、水平な取付部8があり、ガイド面5,6と取付部8の間は左右のくぼみ10,10となっている。くぼみ10内で走行レール2に左右の取付溝12,13を設け、取付部8の上部で走行レール2に左右一対の取付溝14,15を設ける。走行レール2は鋼材の押し出しや引き抜きにより形成され、その形状は走行レール2の長尺方向位置が変化しても一定で、くぼみ10や取付溝12〜15の形状も長尺方向位置が変化しても一定である。
【0013】
16は取付プレートで、ボルト18等により床面20に走行レール2を取り付ける。位置決めドグ22は長尺状で、走行レール2の長尺方向(走行方向)のほぼ全長に渡って取り付け、減速ドグ24はスタッカークレーンを減速させてオーバーランさせたないためのドグで、例えば走行レール2の走行方向の両端付近に設ける。位置決めドグ22や減速ドグ24は断面L字状の形状の部材で、L字の1辺をボルト26とナット27で取付溝12,13に取り付ける。なおナット27は取付溝12,13内に収容したインサートナットである。ドグ22,24のL字の他辺を所定のピッチで切り欠いて、櫛歯28,29とする。
【0014】
30は原点ドグ、32はオーバーランドグで、断面形状はL字状で、原点ドグ30は走行レール2の原点付近に設けて原点位置を示し、オーバーランドグ32は走行レール2の走行方向両端に設けて、スタッカークレーンのオーバーランを防止する。原点ドグ30は取付溝14に、オーバーランドグ32は取付溝15に、それぞれボルト34とインサートナットなどのナット35で固定する。
【0015】
図2に、走行レール2に対するドグ22,24,30,32の配置を模式的に示す。実際には走行方向の同じ位置に4種類のドグ22,24,30,32が並べて配置されることはないが、図2ではこれらの左右方向位置(平面視で走行方向に直角な方向での位置)を示すため並べて配置する。ドグ22,24は平面視で走行面4により覆われ、図4に示すようにくぼみ10内に配置されて、人が足を踏み下ろしても走行面4やガイド面5,6などのために、足が接触しない位置にある。位置決めドグ22は走行レール2の長尺方向のほぼ全長に渡って設けられ、1箇所でも損傷するとスタッカークレーンの走行が不能になるため、くぼみ10内に配置して踏まれないようにする。減速ドグ24は走行レール2の走行方向両端にしかない部材なので、保護の必要性は位置決めドグ22よりも低いが、走行面4の下側に左右一対のくぼみ10,10が存在するので、その一方を利用して配置する。これらのため、位置決めドグ22や減速ドグ24を肉薄にし、櫛歯28,29を切り欠くピッチを小さくできるため、高精度な位置決めができる。原点ドグ30やオーバーランドグ32は走行レール2の端部にのみ存在する部材で、例えば肉厚の丈夫な部材としてくぼみ10の外側に配置する。
【0016】
図3に、走行レール2とスタッカークレーン38の走行車輪40等の関係を示す。42,43は左右のガイドローラで、ガイド面5,6によりガイドされ、ガイドローラ42,43間にある程度の間隔が必要なため、走行面4は必然的に幅が広くなり、この結果大きなくぼみ10を得ることができる。45は走行モータ、46はブレーキで、その配置は任意である。
【0017】
48はスタッカークレーン38側に設けたブラケットで、ガイドローラ42,43の走行方向前後の位置でスタッカークレーン本体に取り付けられている。50は位置決めセンサで、51は減速センサ、52は原点センサ、53はオーバーランセンサで、ここではセンサ50〜53はいずれも光電センサとし、櫛歯の櫛による透過光のオン/オフを利用して、櫛歯をカウントする。なおセンサの種類は任意で、ドグ22,24,30,32には櫛歯以外に、所定のピッチで色彩が変化するカラーテープや磁気マークなどを用い、センサ50〜53には光電センサの他に他の光学センサや磁気センサなどを用いてもよい。
【0018】
実施例の動作を示す。スタッカークレーン38はその原点位置を認識するため、原点ドグ30を用い、オーバーランを防止するためオーバーランドグ32と減速ドグ24とを用いる。そして各ステーションやラックの棚との間での物品の移載のため、位置決めドグ22の櫛歯をカウントして現在位置を認識し、走行制御を行う。
【0019】
ここで走行レール2とラックの間にはスタッカークレーンの車体幅分の隙間があり、スタッカークレーンやラックのメンテナンスが必要な場合、人が走行レール2に沿って歩行する。狭いスペースを歩行するので、図5の従来例の場合、ドグ63を踏みつけて破損することがある。これに対して実施例では、位置決めドグ22と減速ドグ24が走行面4の下部に隠され、踏み下ろした足と接触して損傷することがない。このためメンテナンス時の位置決めドグ22の損傷を防止できる。またドグ22,24を肉薄にして、精細な櫛歯を設けることができる。ドグ22,24,30,32の取付は、取付溝12〜15とボルト26,34、ナット27,35で簡単に行うことができる。例えば図4の上部の円内に拡大して示すように、溝12等の入口幅をw1、奧側の幅をw2とする。次にナット27等として平面形状が長方形ないしは楕円形のものを用い、ナット27等の長辺が入口幅w1超で奧側の幅w2未満、短辺が入口幅w1未満としておく。するとナット27等の長辺を溝12等の長手方向に平行にすると、走行レール2の中間位置でもナット27等を溝12等の内部に挿入でき、次いでナット27等を例えば90°回動させてドグ22等を固定すると良い。なおこの点は溝13〜15やナット35についても同様である。そして取付溝12〜15は走行レール2の押し出し時や引き抜き時に簡単に形成できる。さらに図5のドグ63のようなむき出しのドグがないので、メンテナンス時の歩行が容易になる。
【0020】
実施例ではスタッカークレーンを用いたシステムを説明したが、地上走行の他の有軌道台車の場合も全く同様に実施できる。

【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】実施例の有軌道台車システムでの、レールの平面図
【図2】実施例での走行レールの平面図で、位置決めドグ、減速ドグ、原点ドグ、オーバーランドグの配置を模式的に示す。
【図3】実施例での、走行レールへの位置決めドグ、減速ドグ、原点ドグ、オーバーランドグの配置と、有軌道台車側のセンサ配置とを模式的に示す、要部鉛直方向断面図
【図4】実施例の走行レールを有軌道台車無しで示す鉛直方向断面図
【図5】従来例での走行レールとドグレールとの配置を示す図
【符号の説明】
【0022】
2 走行レール
4 走行面
5,6 ガイド面
8 取付部
10 くぼみ
12〜15 取付溝
16 取付プレート
18 ボルト
20 床面
22 位置決めドグ
24 減速ドグ
26,34 ボルト
27,35 ナット
28,29 櫛歯
30 原点ドグ
32 オーバーランドグ
38 スタッカークレーン
40 走行車輪
42,43 ガイドローラ
45 走行モータ
46 ブレーキ
48 ブラケット
50 位置決めセンサ
51 減速センサ
52 原点センサ
53 オーバーランセンサ
60 走行レール
62 ドグレール
63 ドグ
65 給電板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有軌道台車の走行車輪を走行レールの走行面で支持するようにした有軌道台車システムであって、
前記走行レールは、走行面の下部の左右にくぼみを備え、
前記くぼみ内で走行レールに被検出体を取り付けて、該被検出体が平面視で前記走行面により覆われ、走行面の外側に露出しないようにすると共に、
前記有軌道台車に前記被検出体を検出するためのセンサを設けた、ことを特徴とする、有軌道台車システム。
【請求項2】
前記くぼみ内で、走行レールにその長尺方向に平行な溝を設けて、該溝を利用して前記被検出体を走行レールに固定したことを特徴とする、請求項1の有軌道台車システム。
【請求項3】
前記有軌道台車の走行車輪の左右にガイドローラを設けると共に、走行レールの走行面の左右に鉛直なガイド面を設けて、該左右のガイド面で前記左右のガイドローラをガイドするようにしたことを特徴とする、請求項1または2の有軌道台車システム。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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