説明

木口材

【課題】机の天板、扉などの板材への貼り付け後も優れた美感を発揮する木口材を提供する。
【解決手段】互いに合わせられた透明層および着色層を備え、厚さ方向の断面がほぼ一様な形状をなし、前記着色層を板材に向けて板材の側面を覆い、前記透明層における外側の稜線が滑らかな曲面となるようにトリミングされている木口材において、前記着色層が、平坦な裏面とエンボス加工された表面を有し、幅方向の一端部または両端部で薄肉に形成され、薄肉部分の始点が平面視で前記曲面の範囲にあることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、テーブルや机の天板、棚板、扉などに用いられる各種板材の側面を覆うことにより、これを保護し又は装飾する木口材に関する。
【背景技術】
【0002】
天板、棚板、扉などの製品は、図2に斜視図として示すごとく、板材1の側面の保護および装飾のために、木口材12が貼り付けられている。木口材12のうちで、図3(a)に厚さ方向の断面図で示すように、透明層13および着色層14を含む複数の層からなり、着色層14によって着色し、透明層13によって平滑性及び光沢をもたせたものがある。着色層14は、図3(b)に図3(a)のB部拡大図として示すように、その表面がエンボス加工により模様が形成され、透明層13の存在により奥行き感がもたせられることがある。
そして、木口材12は、通常、板材への面合わせおよび使用時の安全を期すために、図3(c1)に示すごとく透明層13における外側(着色層から遠い側)の稜線が滑らかな曲面となるようにトリミングされている。
【特許文献1】特開2003−291202
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、木口材12が板材1に貼り付けられた状態では、板材1の主面と木口材12の幅方向端面とが同一面に現れることから、図3(c2)に右側面図で示すように着色層14の端面が厚さDに相当する分露出してしまう。従って、せっかく透明層13および着色層14の二層構造として木口材12単体で優れた装飾を施しても、完成品全体としての美感を損なってしまう。特に、着色層14がエンボス加工されている場合は、エンボス深さを確保する必要上、着色層14の厚さをあまり薄くすることはできない。また、トリミング後は、幅方向の端面が斜面となることから、露出面積が一層目立つ。
それ故、この発明の課題は、透明層および着色層を含む複数の層からなり、板材への貼り付け後も優れた美感を発揮する木口材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
その課題を解決するために、この発明の木口材は、
互いに合わせられた透明層および着色層を備え、厚さ方向の断面がほぼ一様な形状をなし、前記着色層を板材に向けて板材の側面を覆う木口材において、
前記着色層が、幅方向の一端部または両端部で薄肉に形成されていることを特徴とする。
ここで、「厚さ方向の断面がほぼ一様な」とは、巨視的には厚さ方向の断面が一様であるが、着色層の表面がエンボス加工されている場合、その表面については微視的には一様でないことを意味する。
【0005】
着色層は、幅方向の一端部のみで薄肉に形成されていてもよいし、両端部で薄肉に形成されていてもよい。前者の場合は、薄肉に形成された側の端面が板材の主面と一致するように木口材が板材に貼り付けられる。後者の場合はいずれの端面を板材の主面と一致させてもよい。この発明の木口材によれば、着色層が幅方向の一端部または両端部で薄肉にされているので、その端部が板材の主面と一致するように木口材を貼り付けることで、着色層の露出面積を小さくすることができる。
前記着色層は、平坦な裏面とエンボス加工された表面を有するのが好ましい。裏面を平坦にすることで板材の側面に密着させることができるし、表面をエンボス加工することで奥行き感のある種々の模様を形成することができるからである。また、エンボス深さを確保する必要上、着色層全体を薄くすることができない木口材にこの発明を適用することで、この発明の作用効果が顕著になるからである。
【0006】
前記薄肉部分は、0.3mm以下の厚さを有するのが好ましい。0.3mm以下にすることで着色層の露出部分を視認することが困難となり、完成品の外観に不利な影響をもたらさなくなるからである。
この発明の更に好ましい構成は、前記透明層における外側の稜線が滑らかな曲面となるようにトリミングされており、前記薄肉部分の始点が平面視でその曲面の範囲にあるものである。曲面上では光が位置によって異なる方向に屈折し、薄肉部分とそうでない部分との境界線が不明瞭となる。そのため、平面視においても薄肉部分の存在が完成品の外観に不利な影響をもたらすことがなくなるからである。
【発明の効果】
【0007】
この発明の木口材は、以上のように着色層の露出面積が小さいので、板材への貼り付け後も優れた美感を発揮する。その結果、完成品の意匠的価値を高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
この発明の実施形態を図面とともに説明する。図1(a)は実施形態にかかる木口材のトリミング前の状態を示す厚さ方向断面図、(c1)は同じくトリミング後の状態を示す厚さ方向断面図、(c2)はトリミング後の右側面図である。
木口材2は、透明層3および着色層4の二層からなり、二層の合計厚さが2〜4mm程度で、図2に示したものと同様に板材1の側面の保護および装飾のために、着色層4を板材1の側面に向けて貼り付けられるものである。透明層3は、アクリル樹脂、オレフィン系樹脂、ABS樹脂、ASA樹脂などの熱可塑性樹脂からなり、着色層4はこれらの樹脂と着色剤との混合物からなる。
【0009】
着色層4は、幅方向の端部4a、4aがの薄肉に形成されている。各端部4aの厚さdはたとえば0.3mm程度で、幅方向の長さは後述のトリミングの範囲内に収まる程度に設定されている。そして、着色層4のうち、これら端部4a、4aに挟まれる残部4bは、厚さD(≒1mm)の厚肉に形成され、表面にエンボス加工による凹凸を有する。エンボス深さは、一様で、0.1〜0.4mmである。それ未満であれば、奥行き感が得られ難く、それより深いと裏面にエンボス模様が写りやすいからである。
一方、着色層4の裏面は全体に平坦である。
【0010】
木口材2は、次のような手順で製造される。
まず、樹脂および着色剤の混合物を溶融し、押し出し機で押し出し、樹脂が硬化しないうちに表面をエンボス加工することにより、着色層4を成形する。次に、透明層3となる樹脂を溶融し、押し出し機で着色層4の表面上に押し出すことにより、透明層3を成形するとともに着色層4と一体化することにより、木口材2が得られる。
そして、着色層4を板材1の側面に向けて木口材2を貼り付けた後、透明層3の外側の稜線3aが滑らかな曲面となるようにトリミングする。トリミングは、稜線3aより始めて前記端部4aの始点すなわち端部4aと残部4bとの境界線4cが平面視で曲面の範囲T内に収まるところまで行われる。
【0011】
木口材2は、着色層4の裏面が平坦であるので、ホットメルト接着剤などの接着剤を介して板材1の側面に密着して貼り付けられる。貼り付けられた状態で幅方向の端面において着色層4が露出することとなるが、その露出幅は、わずかdであり、着色層4の大部分をなす残部4bの厚さDに比べて著しく小さい。従って、接近しない限り、その存在に気がつきにくい。また、境界線4cが曲面の範囲T内に収まっているので、透明層3を透過する光が曲面上の位置に応じて異なる方向に屈折する。従って、境界線4cの存在が不明瞭となり、表面の美感が保たれる。
【0012】
この実施形態では着色層4の幅方向両方の端部4a、4aを薄肉としたが、たとえば板材1がテーブルの天板であって、下面が装飾の必要のないものである場合は、着色層4の幅方向の一方の端部4aのみを薄肉としてもよい。その端部4aが天板の上面と一致するように木口材を貼り付けることで、天板の美感が保たれるからである。また、エンボス加工されていなくても、この発明の作用効果を生じる。着色層4の露出幅dがDに比べて小さいことに変わりはないからである。更にまた、着色層4の表面に模様が印刷されていてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】実施形態にかかる木口材を示し、(a)はトリミング前の状態を示す厚さ方向断面図、(c1)は同じくトリミング後の状態を示す厚さ方向断面図、(c2)はトリミング後の右側面図である。
【図2】木口材を板材に貼り付けているところを示す斜視図である。
【図3】従来の木口材を示し、(a)はトリミング前の状態を示す厚さ方向断面図、(b)は(a)のB部拡大図、(c1)は同じくトリミング後の状態を示す厚さ方向断面図、(c2)はトリミング後の右側面図である。
【符号の説明】
【0014】
1 板材
2、12 木口材
3、13 透明層
4、14 着色層
4a 端部(薄肉部分)
4c 境界線(薄肉部分の始点)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに合わせられた透明層および着色層を備え、厚さ方向の断面がほぼ一様な形状をなし、前記着色層を板材に向けて板材の側面を覆う木口材において、
前記着色層が、幅方向の一端部または両端部で薄肉に形成されていることを特徴とする木口材。
【請求項2】
前記着色層が、平坦な裏面とエンボス加工された表面を有する請求項1に記載の木口材。
【請求項3】
前記薄肉部分が、0.3mm以下の厚さを有する請求項1に記載の木口材。
【請求項4】
前記透明層における外側の稜線が滑らかな曲面となるようにトリミングされており、前記薄肉部分の始点が平面視でその曲面の範囲にある請求項1に記載の木口材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−279601(P2008−279601A)
【公開日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−123002(P2007−123002)
【出願日】平成19年5月8日(2007.5.8)
【出願人】(591100448)パネフリ工業株式会社 (31)
【Fターム(参考)】