説明

木材チップを乾燥させるための木材チップ乾燥プラントおよび木材チップを乾燥させるための対応の方法

木材チップ(18)を乾燥するための木材チップ乾燥プラントであって、炉(12)と、木材チップ(18)用の乾燥機(16)と、蒸気(34)を乾燥機(16)に循環させるための再循環装置(56)と、を具備し、この再循環装置(56)は、蒸気加熱機(42)を有し、木材チップ乾燥プラント(10)は、蒸気を乾燥機(16)に循環させる前に蒸気(34)中の有機化合物を減少させるために、設計されている。蒸気加熱機(42)は、再生式のおよび/または触媒式の熱交換器を有し、この熱交換器は、乾燥機(16)の流出側後方に設けられており、かつ、蒸気(34)を、該蒸気(34)中の粒子が少なくとも大部分酸化されるほどに高い温度に加熱するために、設計されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、木材チップを乾燥するための木材チップ乾燥プラントに関する。木材チップ乾燥プラントは、炉と、木材チップ用の乾燥機と、蒸気を乾燥機に再循環させるための再循環装置とを具備する。この再循環装置は、蒸気加熱機を有し、木材チップ乾燥プラントは、蒸気を乾燥機に再循環させる前に蒸気中の有機化合物を減少させるために、設計されている。
【0002】
第2の態様によれば、本発明は、以下の工程、すなわち、(a)煙道ガスを炉から乾燥機へ導くこと、(b)蒸気が生じるように、木材チップを乾燥機の中で乾燥させること、および(c)少なくとも一部分の蒸気を乾燥機に再循環させること、を有する、木材チップを乾燥させる方法に関する。
【背景技術】
【0003】
知られた木材チップ乾燥プラントでは、炉の中で、通常は、木材粉塵が燃焼される。発生する高温の煙道ガスは、混合室へ導かれ、そこで、戻り蒸気とも言う蒸気と混合される。混合の故に、発生する乾燥機用ガスの温度が、約380℃ないし420℃に低下する。その後、乾燥機用ガスは、乾燥機に供給され、そこで、木材チップが乾燥される。
【0004】
発生する蒸気は、サイクロンに供給され、次に、部分的に、混合室に再循環される。乾燥された木材チップは、次に、接着剤と混合され、圧縮されて木材ボードに形成される。このような木材チップ乾燥プラントの欠点は、木材チップから製造される木材ボードが、揮発性有機物質を放出することがあることである。
【0005】
更に知られた高温ガス発生および木材チップの乾燥は、まず木材粉塵を独自の燃焼空気供給と共に燃焼室で燃焼する、という方式でなされる。この燃焼の際に生じる約900°の煙道ガスは、混合室に達する。混合室では、いわゆる戻り蒸気、冷却のための二次空気(Falschluft)および必要な場合には外部の高温ガスが導入される。混合室で、乾燥高温ガスは、必要な要件(約350−480℃の温度、全容積流および湿気)に基づくチップ用乾燥機への導入のために、調整される。かくして準備された高温ガス容積流または乾燥空気容積流は、誘引通風機によって、乾燥機用ドラムを介して吸引される。乾燥機用ドラムにおいて、木材チップが、高温ガスに直に接触して乾燥される。誘引通風機は、乾燥工程に関与している全高温ガス容積流を、濾過ユニットへ運ぶ。濾過ユニットは、主として、サイクロンセパレータとして、しかしまた電気湿式フィルタとしても設計されている。濾過ユニットは、まず、固体粒子のみを、限られた範囲で分離する。この濾過ユニットの前後では、戻り蒸気容積流とも言われる部分流は、前記混合室に再度供給される。
【0006】
木材チップの乾燥は、製品(チップの大きさ、処理量、湿度、乾燥機の種類)に応じて調整されねばならない、釣り合いのとれた温度バランス、エネルギバランスおよび容積流バランスを必要とする。
【0007】
乾燥された木材チップは、乾燥機用ドラムの後に分離され、接着剤と混合され、かつ、圧縮されて、木材ボードに形成される。このような木材チップ乾燥プラントの欠点は、木材チップから製造された木材ボードが、樹脂およびテルペンから生じる揮発性有機物質を放出することがあることである。
【0008】
木材チップを乾燥するための高温ガスは、木材から出てかつ木材チップに含まれる樹脂およびテルペンを、部分的に吸収する。このことのための最善の効果は、乾燥機用高温ガスが、乾燥機の入口で、同じ種類の繊維質を有しないことによって、得られる。しかし、乾燥機の入口における高温ガスは、知られた方法では、既に乾燥工程に関与した戻り蒸気と混合される。かくして、混合容積流による樹脂およびテルペンの吸収が低下する。
【0009】
蒸気を完全に循環させること、すなわち、乾燥機に導かれた乾燥機用高温ガスを、一次燃料の燃焼から生じる排ガスと混合された蒸気から発生させることも知られている。方法をエネルギ的に改善するために、蒸気は、部分的に、混合室に導かれ、ここで、約850℃で熱処理される。他の蒸気割合は、チューブバンドル熱交換器を介して導かれ、ここで、約380ないし450℃に加熱され、同時に、燃焼室から来る高温ガスが50度に冷却される。熱交換器によって加熱された蒸気は、温度レベルの故に、熱処理されない。チューブバンドル熱交換器システムを用いた高温ガス発生のこの種の重大な欠点は、熱交換器の表面の汚染による使用可能性の減少である。蒸気のほんの一部が熱処理を実行する。一次燃料を燃やすための燃焼用空気は、外部から、吸引される。方法の熱効率は、知られた方法に対し不利である。
【0010】
従って、蒸気を完全に循環させること、すなわち、乾燥機に導かれた乾燥機用高温ガスを、揮発性化合物が熱酸化されてなる蒸気から完全に発生させたことも知られている。このことにおける欠点は、このような木材チップ乾燥プラントが低い利用可能性を有することである。
【0011】
特許文献1からは、戻り蒸気が燃焼室に完全に再循環されてなる木材乾燥プラントが公知である。省エネのために、戻り蒸気は、炉からの高温ガスが送られる相手である復熱装置を通って導かれる。かようにして、すべての戻り蒸気が燃焼室内で熱処理される。この装置の欠点は、すべての戻り蒸気が完全に炉の中を導かれねばならないので、炉の効率が低下することである。
【0012】
特許文献2からは、ゴミ乾燥プラントが公知である。木材乾燥プラントとは異なり、ゴミ乾燥プラントでは、湿度ならびにテルペン含有量および微細粉塵含有量は、大して重要でない。それ故に、そこに記載された装置は、木材チップを乾燥させるためには適切でない。特許文献3からは、多段式に設計されている、ばら積貨物を乾燥させるための方法が公知である。この公報は、再生式のまたは触媒で作動する熱交換器を記載していない。
【0013】
特許文献4からは、水の凝結および共に運ばれるテルペンを得るために蒸気を冷却する方法が公知である。この方法の欠点は、蒸気の冷却の際の高いコストである。
【0014】
特許文献5からは、一部の蒸気が燃焼室へ再循環されてなる木材チップ乾燥プラントが公知である。ここでは、欠点は、戻り蒸気に含まれる一部のテルペンが、乾燥されるべき貨物に結合して、その結果、木材チップが、乾燥機から出た後、揮発性有機成分の高い含有量を有することである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】US 5,983,521
【特許文献2】DE 197 28 545 A1
【特許文献3】CH 133 536
【特許文献4】DE 29 26 663
【特許文献5】WO 01/59381
【発明の概要】
【0016】
炉を特に高い効率で操作することができ、かつ、木材チップが揮発性有機成分の特に低い含有量を有してなる木材チップ乾燥プラントを提供するという課題が、本発明の基礎になっている。
【0017】
本発明は、蒸気加熱機が、再生式のおよび/または再生・触媒式の熱交換器を有し、この熱交換器が、乾燥機の流出側後方に設けられており、かつ、蒸気を、該蒸気中の粒子が少なくとも大部分酸化されるほどに高い温度に加熱するために、設計されていてなる、前提部分に記載の木材チップ乾燥プラントによって、問題を解決する。
【0018】
第2の態様では、本発明は、上記問題を、乾燥機へ再循環させる前に戻り蒸気を再生式のおよび/または触媒式の熱交換器の中で蒸気の中の固体を熱的に減少させる工程を有する、前提部分に記載の方法によって解決する。
【0019】
更に、本発明に係わる方法によって製造されている木材ボードは、本発明に係わる。
【0020】
本発明の利点は、蒸気の中の固体を再生式の熱交換器によって酸化することによって、該固体が、乾燥機用ガス中に蓄積されないことである。つまり、かような固体、例えば小さな木材チップが、導管または伝熱式の熱交換器に容易に沈殿され、かつ、機器故障をもたらすことが明らかになった。
【0021】
他の利点があって、この利点を、現存の木材チップ乾燥プラントの比較的僅かな変化で達成することができる。経済的な作動方法および最小の一次燃料使用という態様は、共に、本発明の基礎である。本発明は、チップの乾燥の際にまたは続いてのパーティクルボードおよび/またはOSBボードの製造の際に付着しまたは含んでいる汚染物質を著しく減じる。実際また、大気に排出される排気ガス中の残留汚染物質によって形成される放出物が、大幅に減じられる。
【0022】
本発明の利点は、蒸気中の炭化水素および可燃性の固体を熱式の、再生式の熱交換器システムによって酸化することによって、乾燥機に導入される高温ガスの、発生する樹脂およびテルペンに対する吸収力が、増大し、従って、乾燥された木材チップの残りの負荷が大幅に減じられる。凝集装置の、および、熱式の、再生式のプラントと乾燥機の入口との間の、高温ガスを運ぶ導管の汚染傾向が、同様に、大幅に減じられる。従って、プラントの使用可能性が著しく増大される。
【0023】
記載された発明は、現存の高温ガス発生プラントを、現存のプラント構成要素の維持の際に、低いコストで増備することができるという利点、特にこの利点も有する。
【0024】
本明細書の枠内で、炉は、特に、木材チップ(バイオマス)または木材粉塵を燃焼する木材製品用炉を意味する。このような炉は、支持制御手段、例えば、ガス支援制御手段および/または油支援制御手段を有することができる。
【0025】
乾燥機は、木材チップを乾燥するために設けられかつ設計されているあらゆる装置を意味する。特に、乾燥機は、乾燥機の出口における木材チップ中の技術的に必要な残留湿度を得るために、乾燥機の入口において高温ガス乾燥温度および高温ガス容積流を制御する、関連の制御手段を備える。
【0026】
再循環装置は、特に、木材チップ乾燥プラントの任意の箇所に設けられる乾燥機から出ていくガス(蒸気)を、これらのガス(蒸気)が新たに乾燥機を通って流れるように、再循環させるあらゆる装置を意味する。
【0027】
蒸気は、乾燥機から出るガスを意味する。戻り蒸気中の有機化合物が酸化されおよび/または可燃性の個体粒子が燃焼されるように、蒸気の一部(戻り蒸気ともいう)のみが、処理されることは可能である。この場合、一部の蒸気は、再循環されず、蒸気洗浄ユニットを介して、大気に供給される。しかし、全蒸気が、乾燥機後に、完全に、蒸気中の有機化合物を酸化させるためのおよび可燃性の固体粒子を燃焼させるための装置に供給され、それ故に、大気へのまだ残っている排出物が、著しく減少することも可能である。
【0028】
木材チップ乾燥プラントが、乾燥機への再循環の前に、蒸気中の固体を除去するために設計されているという特徴は、固体の濃度が著しく低下するように、少なくとも一部分の蒸気が処理されること、特にこのことを意味する。特には、木材チップ乾燥プラントは、固体の濃度が少なくとも75%ないし90%分低下されるべく、新たに乾燥機に達する少なくとも一部の蒸気が、処理されるように、設計されている。粒子は、特に木材粒子を意味する。
【0029】
例えば、木材チップ乾燥プラントは、少なくとも一部分の蒸気を少なくとも720℃の温度に加熱するために、設計されている。通常は、高々900℃の温度を選択することで十分である。温度は、固体の大部分が酸化されるように、選択されている。自らの複数の手段を有する高温ガス発生ユニットは、実質的にすべての有機物質(CnHm化合物)および可燃性の固体粒子も、乾燥機への導入の前に、熱処理によって、乾燥高温ガスから除去されるように、設計されている。
【0030】
本発明は、また、戻り蒸気が、完全に720ないし900℃の温度に加熱され、従って、すべての有機的な、可燃性の物質が、ほぼ残りなしに燃焼されまたは酸化されるという態様に基づいている。このことは、特に、すべての炭化水素化合物(CnHm化合物)に、しかしまた、戻り蒸気によって導入される、可燃性の、木材状の固体粒子にも当てはまる。更に、熱処理された戻り蒸気は、再生式の処理後に、燃焼空気として、適切な温度による木材燃焼のための、および/または天然ガスの、軽油の、または重油の燃焼のための燃焼室に供給される。このことによって、燃料の節約が生じる。
【0031】
特に、再循環装置は、熱処理、再生処理された戻り蒸気の少なくとも一部分を炉に再循環するために、設計されている。換言すれば、すべての戻り蒸気、従って、新たに乾燥機に達する蒸気が、炉に導き戻されるように設計されている、前提部分に記載の木材チップ乾燥プラントが、本発明に係わる。そこでは、蒸気は、燃焼空気として、火炎、例えば木材チップの火炎に、天然ガスの火炎に、軽油の火炎におよび/または重油の火炎に供給され、それ故に、燃料の節約が引き起こされる。しかしまた、その代わりに、熱処理されていない蒸気を、燃焼手段に供給することができる。これと共に、火炎の中ではじめて、炭化水素および可燃性の固体粒子の熱処理がなされる。しかし、この変形例では、バーナーおよび該バーナーの付属部品における汚染による機器故障および使用可能度の低下が、前もって定められている。
【0032】
例えば、再循環装置は、蒸気を少なくとも750℃の温度に加熱するために、設計されている。一般的には、7200℃ないし900℃の温度窓が適切である。蒸気加熱機が、更に、有機物質が触媒で酸化されてなる触媒式の排気処理ユニットを有する。この場合、380ないし480℃の温度のみが必要である。しかし、可燃性の固体粒子は、触媒方式では、燃焼されない。
【0033】
有機化合物および必要な場合には残りの固体粒子を含む蒸気が、完全に燃焼に関与するように、蒸気加熱機が設計されていることは好ましい。熱式の、再生式の洗浄ユニットは、処理された蒸気が、20℃と80℃の間の温度だけ高い温度を伴って、排気処理ユニットを離れるように、設計されていてもよい。
【0034】
熱式の、再生式の排気処理ユニットが、特に適切であるのは、処理された蒸気が、約40℃だけ高い温度を伴って、排気処理ユニットを離れるときである。
【0035】
再循環装置が、蒸気を木材粉塵用炉の煙道ガスによって加熱するために設計されていることは好ましい。その代わりにまたは追加的に、洗浄ユニットは、蒸気、および一次燃料、例えば天然ガス、軽油および/または重油を再加熱するために使用することができるように、設計されている。
【0036】
炉の流出側後方におよび/または熱式の排気処理ユニットの後方には、混合室が設けられていてもよい。この混合室には、炉からの煙道ガスが、排気処理ユニットからの処理された蒸気および必要な場合には二次空気および二次高温ガスと混合され、それ故に、発生する乾燥機用高温ガスは、所定の温度および所定の湿度を有する。次に、乾燥機用高温ガスは乾燥機に供給される。
【0037】
好ましい実施の形態では、木材チップ乾燥プラントは、炉の流出側後方に設けられている脱窒化ユニットを有する。この脱窒化ユニットは、800ないし950℃の温度窓で、特に効果的に作動する。脱窒化ユニットでは、尿素を、煙道ガス流に噴射することができる。それ故に、煙道ガスに含まれる酸化窒素が減じられる。
【0038】
脱窒化ユニットが、尿素が注入されてなる注入点が、炉と混合室との間の接続部に設けられているように、設けられていることは好ましい。脱窒化ユニットは、酸化窒素の排出を、30%より多く減じることができ、50%が達成可能である。
【0039】
好ましい実施の形態では、木材チップ乾燥プラントは、乾燥機に流れる乾燥機用ガスの湿気を高めるための乾燥機用ガス湿潤装置を有する。絶対空気湿度が1立方メートル当たり少なくとも600グラムを含むように、乾燥機用ガス湿潤装置が作動されることは好ましい。絶対空気湿度が1立方メートル当たり1200グラム未満であることが、有益であることが示された。
【0040】
乾燥機用ガスの湿気が或る目標値に調整されるように、乾燥機用ガス湿潤装置が、蒸気と炉からの煙道ガスとを混合するために設けられていることは、有利である。
【0041】
このことの利点は、増加された湿気が、木材チップから水溶性物質を引き出すことである。従って、乾燥機は、同時に、水溶性物質が木材チップから引き出されてなる高温抽出装置として設計されている。かようにして木材チップから引き出された物質の濃縮は、再循環される蒸気のための再循環装置内での上記の内部の再燃焼によって、阻止される。
【0042】
木材チップ乾燥プラントが、木材チップ中のテルペンの少なくとも70%が、乾燥の際に引き出されるように、設計されていることは好ましい。チップ中のテルペンこのような減少は、チップから製造される木材ボード中のテルペンの排出の大幅な減少を引き起こす。
【0043】
その代わりに、木材チップ乾燥プラントは、燃焼室と混合室の間に設けられている再生式の熱交換器システムをも有することができる。予め加熱された蒸気は、次に、燃焼室に供給され、かつ、そこで、熱によって、含有された炭化水素および可燃性の固体粒子が実質的に取り除かれる。再生式の熱交換器システムは、ここでは95%までの熱効率が達成されるように、設計されていることができる。同様に、再生式の熱交換器システムは、洗浄プロセス(燃焼除去)を有する。このことは、連続操作の最中に洗浄を可能にし、かつ、非常に高い使用可能度を保証する。
【0044】
本発明に係わる方法は、少なくとも一部分の蒸気を炉に再循環させることを特徴とする。その代わりにまたは追加的に、有機化合物の濃度が所定のしきい値を下回るように、再循環される蒸気の一部分、特に大部分が熱再処理されることが提案されている。
【0045】
主に松のチップを含む木材チップを用いることは特に好ましい。松のチップは、テルペンの高い含有量を有する。それ故に、このようなチップを乾燥するための従来の乾燥法では、チップ中にテルペンの高い割合が残っている。このことは、このような木材チップから製造される木材ボードの品質を低下させる。ここでは、本発明は、木材ボードの品質の特に著しい向上を可能にする。
【0046】
混合室に入る前に、再循環容積流が、熱式の、再生式の熱交換器システムの中を通過してなる方法は、好ましい。熱交換器システムでは、80ないし130℃の入口温度を有する戻り蒸気が、720℃ないし900℃の温度に加熱され、入口温度と比較して約20ないし80℃だけ高い出口温度で、通風機によって、混合室へ導かれる。加熱は、再生式の熱交換器によって、88から97%までの実施の形態に応じて、熱効率をもって、なされる。720ないし900℃への戻り蒸気の最終的な加熱のための一次加熱が、木材粉塵用炉からの高温ガスの導入によって、またはその代わりに、天然ガス、軽油または重油によってなされる。
【0047】
更に、以下の工程、すなわち、(a)木材チップにおける所定の残留水分を調整しつつ、本発明に係わる方法によって木材チップを製造すること、(b)木材チップを接着剤と混合すること、および(c)接着剤を含む木材チップを圧縮して、木材ボードに形成すること、を有する、木材ボード、特にOSBボードを製造する方法が、本発明に係わる。
【0048】
本発明に係わる方法が、再生式の熱交換器による燃焼除去工程を有することは好ましい。熱交換器の中に固体が付着することがあることが明らかになった。固体は、燃焼除去(バーンアウト)によって除去される。燃焼除去が連続的な稼動中になされるように、蒸気加熱機が少なくとも2つの再生式の熱交換器を有することは有利である。
【0049】
更に、本発明に係わる方法で製造された木材ボードは、本発明に係わる。特に、松のチップを含む木材ボードが、本発明に係わる。松のチップにおけるテルペンの重量%の含有量は、自然の、未処理の松のチップに含まれる濃度の50%よりも少ない。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明に係わる木材チップ乾燥プラントの回路図を示す。
【図2】本発明に係わる木材チップ乾燥プラントの第2の実施の形態の回路図を示す。
【図3】本発明に係わる木材チップ乾燥プラントの第3実施の形態の回路図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0051】
以下、典型的な実施の形態に基づいて本発明を詳述する。図1は、略示した木材粉塵14が供給される相手である炉12を有する木材チップ乾燥プラント10を示す。木材チップ乾燥プラント10は、更に、乾燥機16を有する。この乾燥機には、木材チップ供給装置の中で、木材チップ18が供給される。出口54を通って、乾燥した木材チップが乾燥機18から出て行く。
【0052】
木材チップ乾燥プラントは、混合室20を有する。混合室へは、炉12から来る煙道ガス22が作用する。混合室20へは、更に、第1の蒸気管24と、冷却空気管26と、高温ガス管28とが通じている。混合室20は、乾燥機用ガス管32の中で乾燥機用ガス30を放出するために、設計されている。乾燥機用ガス30は、事前に調整された温度および事前に調整された絶対湿度を有する。
【0053】
蒸気34が、蒸気排出管36を通って、乾燥機16から出ていく。蒸気排出管は、第1のサイクロン38および続いて第2のサイクロン40に通じている。蒸気の一部分は、蒸気排出管36から分離され、かつ、排出処理ユニットに導かれる。
【0054】
蒸気排出管36を通って、(サイクロン40の手前の蒸気より)固体の少ない蒸気34が、蒸気加熱機42に達する。蒸気加熱機は、煙道ガス管44を介して、炉12から来る煙道ガスで作動される。蒸気加熱機42は、蒸気34が温度T=900℃に加熱されるように、設計されている。しかし、420℃と850℃の間の他の温度も可能である。この過程で、蒸気中の有機化合物の大部分が酸化し、洗浄された蒸気が生じる。洗浄された蒸気は、第1の蒸気管24を通って、混合室20に供給される。
【0055】
蒸気加熱機42は、複数の向流式冷却器46を有する。向流式冷却器は、蒸気排出管36からの、流入する蒸気34を加熱し、かつ、第1の蒸気管24へ流出する蒸気を冷却する。流入する蒸気は、TEinstroem=80℃の流入温度を有し、これに対し、流出温度は、ほぼTausstroem=130℃である。
【0056】
蒸気加熱機42から流出する蒸気は、分岐点48で、混合室20への流れと、炉12への戻り蒸気からなる流れとに分けられる。乾燥機に戻された蒸気34は、揮発性化合物および固体の酸化温度より高い温度に、完全に加熱されたので、炉12の流出側直ぐ後方には、尿素注入手段52を有する脱窒化ユニット50が設けられている。この尿素注入手段52は、煙道ガス管44の、流れ方向手前におよび混合室20の手前に設けられており、かつ、酸化窒素を窒素に選択的に還元する。
【0057】
蒸気流に関して乾燥機16の下流後方に設けられている構成要素は、再循環装置56の部分である。従って、再循環装置56は、特に、酸化反応器とも言われるだろう蒸気加熱機42と、導管36,44および24とを有する。排気管60を介して、蒸気の一部分が大気に導かれる。
【0058】
木材チップが、脂肪を含んだ木材の、例えば針葉材のチップ、および特に、松のチップであることは好ましい。これらのチップは、出口54を通って、乾燥機16から出て、その後、接着剤と混合され、圧縮されて、木材ボードが形成される。この木材ボードが、OSBボードであることは好ましい。木材ボードは、大幅に減じられたテルペン発散を示す。本発明に係わる木材チップ乾燥プラントは、97%までの熱的効果を得る。
【0059】
図2は、炉12と、木材チップ18用の乾燥機16と、蒸気34を乾燥機16に再循環させるための再循環装置56とを有する、本発明に係わる木材チップ乾燥プラント10の、第2の実施の形態を示す。再循環装置56は、蒸気加熱機42を具備する。蒸気加熱機は、再生式の、伝熱式のおよび/または触媒式の熱交換器58を有する。この熱交換器は、乾燥機16の流出側後方に設けられており、かつ、蒸気34を、蒸気34中の粒子が少なくとも大部分酸化されるほどに高い温度に加熱するために、設計されている。
【0060】
蒸気34が、熱交換器58から炉12に流れ、そこで、木材粉塵14、天然ガスおよび/または軽油と混合され、かつ、混合物が燃焼される。発生する煙道ガスは、新たに熱交換器58を通って運ばれ、次に、混合室20に達する。そこで、煙道ガスは、必要な場合には、高温ガスまたは冷却空気と混合される。それ故に、乾燥ガスが生じる。乾燥ガスは、乾燥機16に供給される。
【0061】
蒸気は、誘引通風機62によって、サイクロン40に導かれる。サイクロンは、電気湿式フィルタ(Elektronassfilter)と組み合わされていて、蒸気洗浄ユニットを形成する。他の誘引通風機によって、戻り蒸気は、再生式の熱交換器システム58に供給される。熱交換器システムは、天然ガス、軽油または重油のための炉64によって、バーンアウト(燃焼除去)を実行するために加熱されることができる。蒸気は、再生式の熱交換器システム58から出て、蒸気注入手段66に達する。
【0062】
燃焼用空気ファン68によって、蒸気の一部が燃焼室すなわち炉12へ導かれる。
【0063】
図2に示す実施の形態では、熱交換器システム58は、戻り蒸気が、実質的に変化なしに熱交換器システムを通過するように、設計されている。熱交換器システム58は、省エネおよび効率向上に役立つ。炉64によって、熱交換交換機システムを、必要な場合に、燃焼除去のために加熱することができる。再生式の熱交換器システム58は、熱効率および有効性に関して、チューブバンドル熱交換器よりも優れている。戻り蒸気の熱処理は、炉12すなわち燃焼室でなされる。
【0064】
図3は、本発明に係わる木材チップ乾燥プラントの回路図を示す。木材チップ乾燥プラントでは、蒸気34は、熱式の、再生式の全蒸気洗浄ユニット70に導かれる。全蒸気洗浄ユニット70を、煙道ガス22で作動し、炉64を介して、代替燃料、例えば、天然ガス、軽油または重油で加熱することができる。
【符号の説明】
【0065】
10 木材チップ乾燥プラント
12 炉
16 乾燥機
18 木材チップ
34 蒸気
42 蒸気加熱機
56 再循環装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
木材チップ(18)を乾燥するための木材チップ乾燥プラントであって、
(a)炉(12)と、
(b)前記木材チップ(18)用の乾燥機(16)と、
(c)前記乾燥機(16)に蒸気(32)を再循環させるための再循環装置(56)と、を具備し、
(d)この再循環装置(56)は、蒸気加熱機(42)を有し、
(e)前記木材チップ乾燥プラント(10)は、蒸気を前記乾燥機(16)に再循環させる前に前記蒸気(34)中の有機化合物を減少させるために、設計されていてなる木材チップ乾燥プラントにおいて、
(f)前記蒸気加熱機(42)は、再生式のおよび/または触媒式の熱交換器を有し、この熱交換器は、
(i)乾燥機16の流出側後方に設けられており、かつ、
(ii)前記蒸気(34)を、該蒸気(34)中の粒子が少なくとも大部分酸化されるほどに高い温度に加熱するために、設計されていることを特徴とする木材チップ乾燥プラント。
【請求項2】
前記再循環装置(56)は、少なくとも一部の蒸気(34)、特にすべての蒸気を前記炉(12)に再循環させるために、設計されていることを特徴とする請求項1に記載の木材チップ乾燥プラント。
【請求項3】
前記再循環装置(56)は、前記蒸気(34)を前記炉(12)からの煙道ガス(22)によって加熱するために設計されていることを特徴とする請求項1または2に記載の木材チップ乾燥プラント。
【請求項4】
前記蒸気加熱機(42)は、前記蒸気(34)を内燃機関によって700℃より高い温度に加熱するために、設計されていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の木材チップ乾燥プラント。
【請求項5】
前記炉(12)の流出側後方に設けられている脱窒化ユニット(50)を有することを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載の木材チップ乾燥プラント。
【請求項6】
前記乾燥機(16)に流れる乾燥機用ガス(30)の湿気を所定の目標値に調整するための乾燥機用ガス湿潤装置を有することを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1項に記載の木材チップ乾燥プラント。
【請求項7】
前記炉(12)からの煙道ガス(22)と、蒸気加熱機(42)からの蒸気(34)とを混合するために設けられている混合室(20)を有することを特徴とする請求項4ないし6のいずれか1項に記載の木材チップ乾燥プラント。
【請求項8】
以下の工程、すなわち、
(a)煙道ガス(22)を炉(12)から乾燥機(16)へ導くこと、
(b)蒸気(34)が生じるように、木材チップ(18)を前記乾燥機(16)の中で乾燥させること、
(c)少なくとも一部分の蒸気(34)を前記乾燥機(16)に再循環させること、
を有する、木材チップ(18)を乾燥させる方法において、
(d)前記戻り蒸気を記乾燥機(16)へ再循環させる前に、再生式のおよび/または触媒式の熱交換器の中で、特に酸化によって、前記蒸気(34)の中の固体を熱的に減少させることを特徴とする方法。
【請求項9】
前記蒸気(34)中の有機化合物および固体を熱酸化するために、少なくとも一部分の蒸気(34)を前記炉(12)に再循環することを特徴とする請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記蒸気(34)中の固体を再生式の熱交換器によって熱的に減少させることを特徴とする請求項8または9に記載の方法。
【請求項11】
前記再生式の熱交換器に付着している固体を燃焼除去する工程を有することを特徴とする請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記乾燥機に流れ込む乾燥機用ガスに対する、前記炉(12)からの煙道ガスの割合が、煙道ガス割合の所定のしきい値よりも大きいことを特徴とする請求項8または9に記載の方法。
【請求項13】
前記戻り蒸気の容積流を、前記混合室に入る前に、熱式の、再生式の熱交換器に導き、80ないし130℃の入口温度を有する前記戻り蒸気を、720℃ないし900℃の温度に加熱し、前記入口温度と比較して約20ないし80℃高い出口温度で、前記混合室へ導くことを特徴とする請求項10ないし12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
以下の工程、
-木材チップ(18)における所定の残留水分を調整しつつ、請求項8ないし13のいずれか1項に記載の方法によって木材チップ(13)を製造すること、
-前記木材チップ(18)を接着剤と混合すること、および
-前記接着剤を含む前記木材チップ(18)を圧縮して、木材ボードを形成すること、を有する、木材ボード、特にOSBボードを製造する方法。
【請求項15】
請求項8ないし14のいずれか1項に記載の方法により製造された木材ボード。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2012−519828(P2012−519828A)
【公表日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−553322(P2011−553322)
【出願日】平成22年3月1日(2010.3.1)
【国際出願番号】PCT/EP2010/001245
【国際公開番号】WO2010/102736
【国際公開日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【出願人】(501206633)クロノテック・アーゲー (6)
【氏名又は名称原語表記】Kronotec AG
【Fターム(参考)】