説明

木材乾燥室内の湿球温度の調整方法および調整装置

【課題】 高温蒸気を用いて、木材乾燥室内の湿球温度の制御が容易に行え、かつ従来の制御方法に比べてエネルギーロスを大幅に改善できる木材乾燥室の湿球温度の調整方法および調整装置の提供。
【解決手段】 木材乾燥室1に設けた水槽2内に配置させた管体5に、高温蒸気を送り込み、管体5に設けた高温蒸気噴出孔6より噴出させた前記高温蒸気によって、水槽2内の水を気化させて木材乾燥室1内に噴出させ、木材乾燥室1内の湿球温度を調整する木材乾燥室の湿球温度の調整方法および装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、柱、土台、ハリ、ケタ等の建築構造材および内装用の板材、並びに家具材の乾燥に使用される木材乾燥室内の湿球温度の調整方法および調整装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、建築構造材として用いられる木材は、伐採後、十分乾燥したものを用いる必要があるが、乾燥期間を短縮するため、通常、乾燥装置を用いて強制乾燥させている。
この強制乾燥は、一般に木材乾燥室に木材を搬入して行われているが、強制乾燥により短期間で、木材の内部に亀裂なく芯部まで乾燥させた木材を得るのは難しく、木材乾燥業者は、木材乾燥室内雰囲気の温度・湿度・時間等、処理工程に工夫を凝らして、木材の内部に亀裂なく芯部まで乾燥させた商品価値の高い乾燥木材の製造を探求している。
通常、前記木材乾燥室内では、乾球温度の調整は、木材乾燥室内に取り付けられたヒータによって行なわれ、湿球温度の調整は、外部の高温蒸気発生機から送出された高温蒸気を木材乾燥室内に噴射して行なっている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特許第3485447号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、高温蒸気の木材乾燥室への噴射(以下、蒸射という)は、木材乾燥室内を短時間に所望の湿球温度にできる利点はあるが、乾燥室内を所定時間一定の湿球温度に保持する場合には不向きである。
すなわち、前記従来の湿球温度の調整によると、木材乾燥室への高温蒸気の噴射は、木材乾燥室の湿度を高めると同時に、木材乾燥室内の温度を急上昇させる。
高品質の乾燥木材を得るためには、木材乾燥室内雰囲気の温度・湿度を所定時間一定に保持することは極めて重要であり、所望の湿度を得るために、木材乾燥室内への蒸射により乾燥室内の温度が急上昇するのは好ましくない。
【0004】
蒸射による木材乾燥室内の急激な温度上昇を押さえるため、従来は、木材乾燥室から外部へ強制排気して、木材乾燥室内の温度を下げているが、この方法によると、折角蒸射により乾燥室内に充満させた蒸気(湿気)も一緒に外部へ排出されてしまう。
このように従来法では、木材乾燥室内雰囲気を所望の湿球温度に保持するために、木材乾燥室内への蒸射と乾燥室からの排気を繰り返すという、いわば相反する操作を併用するためエネルギーロスが大きく、また、このような操作による木材乾燥室内雰囲気の湿球温度そのものの制御も難しかった。
【0005】
したがって、本発明の課題は、高温蒸気を使用して、木材乾燥室内の温度の急激な上昇を伴うことなく、簡易な装置で木材乾燥室内の湿球温度の調整・制御を容易に行え、かつエネルギーロスのない調整方法および調整装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る木材乾燥室内の湿球温度の調整方法は、木材乾燥室内に設けた水槽内に配置した管体に、高温蒸気を送り込み、前記管体に設けた高温蒸気噴出孔より噴出させた前記高温蒸気によって、前記水槽内の水を気化させて前記木材乾燥室内に噴出させ、前記木材乾燥室内の湿球温度を調整することを特徴としている。
また、本発明に係る木材乾燥室内の湿球温度の調整装置は、木材乾燥室内に水槽を設け、該水槽内に高温蒸気噴出孔を有する管体を配置することを特徴としている。前記高温蒸気噴出孔は、管体の下側面に設けるとよく、また、前記水槽内の水位は、一定幅の範囲に保持する水位調整手段を有するようにするとよく、さらにこの水位調整手段は、浮体とバルブを有する水位調整槽からなるのが好ましい。
【発明の効果】
【0007】
本発明に係る木材乾燥室内の湿球温度の調整方法および調整装置によれば、高温蒸気を用いて、木材乾燥室内の急激な温度上昇を伴わずに、木材乾燥室内雰囲気の湿球温度の制御が容易に行え、かつ従来の制御方法にくらべてエネルギーロスを大幅に改善できる。さらに、本発明に係る調整装置は、構造が簡易なため既存の乾燥室に容易に、かつ低コストで設置できるという利点を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明の一実施の形態を添付図面に基づき説明する。
図1は、本発明の湿球温度の調整装置が組み込まれた木材乾燥室の一例を示す概略縦断面図である。図2は、図1に示す湿球温度の調整装置を構成する水槽の模式的な部分拡大断面図であり、図3は、図2に示す水槽に連結した水位調整槽の模式的な断面図である。
【0009】
本発明の木材乾燥室内の湿球温度の調整装置は、図1に示すように、基本的には、木材乾燥室1内に水槽2を設け、この水槽2内に配置した管体5に高温蒸気を送入させる構成である。水槽2は、木材乾燥室1の好ましくは左右側壁に沿って設けられ、この左右の水槽2、2間に木材3を積載した台車4が位置するように収容され、木材乾燥室1内の温度と湿度を調整しながら数工程を経て木材3の乾燥を促進する。
木材乾燥室1内の水槽2は、図2に示すように、木材乾燥室1内の下方側壁に沿って設けられた長尺箱体からなり、この水槽2の内部には、水槽2に張った水の中に位置し、水槽2の長手方向に延びる管体5が配置されている。
【0010】
管体5は、木材乾燥室1の外部に設けられた高温蒸気発生機(図示せず)から延びるパイプに連結されており、高温蒸気発生機から送出された高温蒸気が、水槽2内の管体5内を通過して、水槽2内の水中に一部を噴出し、余剰分は再び高温蒸気発生機に戻るように構成されている。あるいは、高温蒸気発生機から送出される高温蒸気の送出量を調整し、全量を水槽2内に噴出するようにすることもできる。
【0011】
管体5は、その下側面に、高温蒸気噴出孔6が長手方向に、間隔をあけて設けられており、高温蒸気発生機から送出された高温蒸気は、管体5の高温蒸気噴出孔6から水中に噴出し、水槽2内の水を気化させて水槽2の天板に設けられた小孔7から湯気となって乾燥室1内に噴出させる。
管体5の下側面に高温蒸気噴出孔6を設けることにより、高温蒸気噴出孔6から噴出した高温蒸気は、水槽2内の水の循環、対流を速めて気化の促進を効率化させる。なお、高温蒸気噴出孔6は、管体5の下側面に限らず、側面、上側面に設けても差し支えない。
【0012】
水槽2から木材乾燥室1内に噴出された湯気は、高温蒸気発生機から管体5に送出される高温蒸気と比べて、該高温蒸気の熱によって気化された水槽2の水によるものであるため、高温蒸気の有する熱量が水の蒸発潜熱として消費されているため低温であり、これにより木材乾燥室1内の温度を急上昇させることがない。
そのため、従来法で行われていた高温蒸気の蒸射に伴う室内温度の上昇を調節するための木材乾燥室外への強制排気も不要となり、エネルギーロスも大幅に改善される。つまり、本発明によれば、木材乾燥室内の温度と湿度(湿球温度)とをそれぞれ独立して制御・調整することができる。
【0013】
水槽2内の水位は、管体5の高温蒸気噴出孔6から噴出される高温蒸気が、途切れなく水槽の水中に噴出できるように、常時一定幅の範囲にあるようにするのが望ましい。
そのため、図3に示すように、水槽2に連通した水位調整槽8には、水位の変動によって上下する浮体9が水面に置かれ、浮体9の上下動に応じて水道管のバルブ10が開閉されるようになっており、水槽2内の水位が下がればバルブ10が開けられて水道管から水位調整槽8に水が供給され、水槽2内の水位が常時一定幅の範囲に保持できるようになっている。
【0014】
本発明に係る木材乾燥室には、収容した台車4に積載された木材を乾燥させるために、木材乾燥室1の上部のダクト内に循環送風ファン11と加熱ヒーター12が設けられるとともに、乾燥室1の給排気手段として給気路13と給気ファン14、および排気路15と排気ファン(図示せず)が配設されている。
さらに、乾燥室1の上部には、蒸射手段として高温蒸気発生機(図示を省略)から高圧蒸気を乾燥室1内に供給するスチームパイプ16が配置されている。
【0015】
木材乾燥室1内雰囲気の湿球温度を一気に上げる場合には、このスチームパイプ16の開口から高圧蒸気を乾燥室1内に噴射させて行い、木材乾燥室内雰囲気の湿度を所定時間一定に保持させたい場合には、本発明の調整装置を使用するが、両者を併用してもよい。
これら木材乾燥室1内雰囲気における温度と湿度および処理時間の調整は、各工程での処理時間、温度、湿度等を設定プログラムに基づいて制御するのが好ましい。
【産業上の利用可能性】
【0016】
本発明の木材乾燥室内の湿球温度の調整方法および調整装置は、木材乾燥のみならず、高温蒸気を使用した湿球温度の安定した確実な制御を必要とするあらゆる分野の調整装置として使用できるので、その産業上の利用価値は大きい。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の木材乾燥室内の湿球温度の調整装置が組み込まれた木材乾燥室の一例を示す概略縦断面図である。
【図2】図1に示す湿球温度の調整装置を構成する水槽の模式的な部分拡大断面図である。
【図3】図2に示す水槽に連結された水位調整槽の模式的な断面図である。
【符号の説明】
【0018】
1 木材乾燥室
2 水槽
3 木材
4 台車
5 管体
6 高温蒸気噴出孔
7 (水槽の)小孔
8 水位調整槽
9 浮体
10 バルブ
11 循環送風ファン
12 加熱ヒーター
13 給気路
14 給気ファン
15 排気路
16 スチームパイプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
木材乾燥室内に設けた水槽内に配置した管体に、高温蒸気を送り込み、前記管体に設けた高温蒸気噴出孔より噴出させた前記高温蒸気によって、前記水槽内の水を気化させて前記木材乾燥室内に噴出させ、前記木材乾燥室内の湿球温度を調整することを特徴とする木材乾燥室内の湿球温度の調整方法。
【請求項2】
木材乾燥室内に水槽を配置し、該水槽内に高温蒸気噴出孔を有する管体を配置してなることを特徴とする木材乾燥室内の湿球温度の調整装置。
【請求項3】
前記高温蒸気噴出孔が、管体の下側面に設けられてなる請求項2に記載の木材乾燥室内の湿球温度の調整装置。
【請求項4】
前記水槽内の水位を、一定幅の範囲に保持する水位調整手段を有する請求項2又は請求項3に記載の木材乾燥室内の湿球温度の調整装置。
【請求項5】
前記水位調整手段が、浮体とバルブを有する水位調整槽からなる請求項4に記載の木材乾燥室内の湿球温度の調整装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2006−349272(P2006−349272A)
【公開日】平成18年12月28日(2006.12.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−176754(P2005−176754)
【出願日】平成17年6月16日(2005.6.16)
【出願人】(597093698)株式会社新柴設備 (6)
【Fターム(参考)】