説明

木質セメント板の製造方法

【課題】生産効率良く凹凸意匠面を有する木質セメント板を製造する方法を提供する。
【解決手段】凹凸意匠面を有する木質セメント板の製造方法において、該木質セメント板の凸部形成部に対応する凹部を形成した型板を搬送させながら、該型板の上に原料を散布してマットを形成する工程と、該マットの原料で、該型板の凹部に積層した部分の原料のみに上側から加圧する工程と、一部加圧された該マットの表面を均しくする工程と、得られたマットと該型板とをプレスし、硬化養生する工程と、からなることを特徴とする木質セメント板の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、凹凸意匠面を有する木質セメント板の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
木質セメント板は、水硬化性材料と、ケイ酸含有物質と、木質補強材と、所望によってその他の材料を配合した原料混合物を用いてマットを形成し、該マットをプレスして、硬化養生することにより製造されている。そして、該木質セメント板は、外壁材やタイルの下地材等の住宅用部材として広く使用されており、外壁材用の木質セメント板の表面には、外観性を向上させるため、レンガ柄、目地溝など凹凸による様々な意匠が施されている。
近年では、更なる表面意匠性の向上のため、鋭角で深い凹凸が求められている。
また、タイルの下地材として使用する木質セメント板では、タイルを留め付けるために、表面に鋭角で深い凹凸固定部を設ける必要がある。
【0003】
木質セメント板は、水硬化性材料と、ケイ酸含有物質と、木質補強材と、所望によってその他の材料を配合した原料混合物を用いてマットを形成し、該マットをプレスして、硬化養生することにより製造されている。
水硬化性材料としては、ポルトランドセメント、高炉セメント、シリカセメント、フライアッシュセメント、アルミナセメント等のセメント類があり、ケイ酸含有物質としては、ケイ砂、ケイ石の粉末、シリカヒューム、高炉スラグ、フライアッシュ、シラスバルーン、パーライト等があり、上記セメント類と水存在下において水和反応によって硬化する。
木質補強材としては、木粉、木質繊維、パルプ、木質繊維束、木毛、木片、竹繊維、麻繊維等がある。木質補強材として望ましいものは木質繊維及び木質繊維束であり、特に望ましいものは分枝及び/又は湾曲及び/又は折曲させることによって嵩高くされた木質繊維束である。
上記原料以外にも、二水石膏、半水石膏、無水石膏、消石灰、生石灰等の活性石灰含有物質や、塩化マグネシウム、蟻酸カルシウム、硫酸マグネシウム、塩化カルシウム、硫酸カルシウム、アルミン酸ナトリウム、アルミン酸カリウム、硫酸アルミニウム、水ガラス等の硬化促進剤、バーミキュライト、ベントナイト、ワラストナイト、アタパルジャイト等の鉱物粉末、ワックス、パラフィン、シリコン等の撥水剤、合成樹脂エマルジョン等の補強材、発泡性熱可塑性プラスチックビーズ、プラスチック発泡体等を原料として使用してもよい。
【0004】
木質セメント板の表面に凹凸を形成する方法としては、プレス前の半硬化状態のマットの表面に、凹凸パターンを刻設させたエンボスロールを加圧しながら回転させて所望の凹凸パターンを表面にエンボス形成する方法や、硬化養生後の木質セメント板の表面を切削加工して凹凸パターンを形成させる方法や、凹凸パターンを有する型板をプレス前のマットの表面に載置し、該マットと型板を共にプレスする方法がある。
【0005】
しかし、エンボスロールを用いる方法では、鋭角で深い凹凸形状を形成しにくい。
木質セメント板の表面を切削加工する方法では、切削工程が必要となり、設備費用や時間がかかり、生産効率は悪い。また、切削工程において、切削不良による不良品が発生しやすい。
型板を用いる方法では、鋭角で深い凹凸形状を形成できるものの、型板を載置するマットは厚みが略均一で、表面が略平面であるので、凹部は密度が高くなり、凸部は密度が低くなる。この凹部と凸部の密度差により、硬化養生工程、乾燥工程や運搬工程において、木質セメント板にクラックが発生しやすくなり、塗装工程において、木質セメント板の基材内に塗料が吸い込まれる。その結果、木質セメント板の強度、耐水性、耐凍性、耐候性などが大幅に低下し、多くの塗料が必要となるし、塗装状態が不均一になるという問題がある。
【0006】
この改善策として、所定個所に複数枚の仕切板を配置して原料混合物を撒布することによりマット層を形成した後、該仕切板に存在する原料混合物を除去することにより所定箇所に凹部を有するマットを形成し、このようにして形成したマット上から凹部形成部に対応する凸部を形成した上側型板をプレスし硬化養生する方法がある(特許文献1)。
【特許文献1】特開2001−150421号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、特許文献1の方法では、仕切板を配置する作業と、更に該仕切板を撤去する作業とが必要であり、生産効率が悪い。また、凹部の深さ、幅、長さにより様々な仕切板を用意する必要があるので初期費用がかかり、凹部を多数有する意匠や様々な形状の凹部を有する意匠の場合は作業が複雑になり、更に生産効率が悪くなる。
更に、凹部が木質セメント板の表面を縦断するような長い形状、もしくは幅が広い形状の場合にも、作業性が悪くなり、生産効率が悪い。
【0008】
本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであり、生産効率良く凹凸意匠面を有する木質セメント板を製造する方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本請求項1に記載の発明は、凹凸意匠面を有する木質セメント板の製造方法において、該木質セメント板の凸部形成部に対応する凹部を形成した型板を搬送させながら、該型板の上に原料混合物を散布してマットを形成する工程と、該マットの原料混合物で、該型板の凹部に積層した部分の原料混合物のみに上側から加圧する工程と、一部加圧された該マットの表面を均しくする工程と、得られた該マットと該型板とをプレスし、硬化養生する工程と、からなることを特徴とする木質セメント板の製造方法である。
本発明において、原料混合物を加圧するマットの上側とは、プレス、硬化養生、乾燥後に製品の裏面となる側を指し、原料混合物の加圧方法としては、幅が型板の凹部の幅と略同じであるロール状の部材を原料混合物に押しつけて、マットを搬送させながら原料混合物を加圧する方法がある。
【0010】
上記原料混合物の混合比率は、水硬化性材料が35〜70質量%、ケイ酸含有物質が0〜60質量%、木質補強材が5〜30質量%である。
本発明では、原料混合物の配合は1種類以上であり、型板の凹部に積層した部分の原料混合物のみに上側から加圧する工程がマットを搬送させながら行うので、生産効率が良い。
また、加圧後にマットの表面を均しくするので、型板の凹部に積層された原料混合物の質量は、該型板の凸部に積層された原料混合物の質量よりも多くなる。すなわち、木質セメント板の凸部形成部分の原料混合物の質量は、凹部形成部分の質量よりも多くなる。それにより、マットを均一にプレスできるので、プレス後のマットの凸部と凹部の密度は高くなると共に、該凸部と該凹部の密度差が小さくなり、硬化養生工程、乾燥工程や運搬工程において、木質セメント板へのクラックの発生が防ぐことができ、かつ、塗装工程において、基材への塗料の吸い込みが改善される。その結果、木質セメント板製品の強度、耐水性、耐凍性、耐候性が低下する、多くの塗料が必要になる、塗装が不均一になるという問題を防ぐことができる。加えて、仮にプレス能力がそれ程大きくなくても生産が可能となるという副次的効果も奏する。
【0011】
本請求項2に記載の発明は、凹凸意匠面を有する木質セメント板の製造方法において、該木質セメント板の凸部形成部に対応する凹部を形成した型板を搬送させながら、該型板の上に表層用原料混合物を散布して表層マットを形成する工程と、該表層マットの上に芯層用原料混合物を散布して芯層マットを形成する工程と、該芯層マットと表層マットの原料混合物で、該型板の凹部に積層した部分の原料混合物のみに上側から加圧する工程と、一部加圧された該芯層マットの表面を均しくする工程と、表面が均しくされた該芯層マットの上に更に該表層用原料混合物を散布して表層マットを形成する工程と、得られた三層構造のマットと該型板とをプレスし、硬化養生する工程と、からなることを特徴とする木質セメント板の製造方法である。
本発明において、原料混合物を加圧するマットの上側とは、プレス、硬化養生、乾燥後に製品の裏面となる側を指し、原料混合物の加圧方法としては、幅が型板の凹部と略同じであるロール状の部材を原料混合物に押しつけて、マットを搬送させながら原料混合物を加圧する方法がある。
【0012】
本発明では、表層と芯層とはどちらも水硬化性材料と、ケイ酸含有物質と、木質補強材とからなるが、原料混合物の組成は異なる。表層は、微細原料を含有する緻密な構造であり、水硬化性材料が35〜70質量%、ケイ酸含有物質が0〜50質量%、木質補強材が5〜25質量%であり、木質セメント板の強度や耐水性を向上させる。一方、芯層は、粗原料による組成であり、水硬化性材料が30〜60質量%、ケイ酸含有物質が0〜60質量%、木質補強材が10〜30質量%であり、木質セメント板を軽量とする。表層:芯層の配合比率は質量比で1:1〜1:6、望ましくは1:1〜1:4であり、芯層は表層よりも層を厚くすることが好ましい。
本発明においても、型板の凹部に積層した部分の原料混合物のみに上側から加圧する工程がマットを搬送させながら行うので、生産効率が良い。また、加圧後に芯層マットの表面を均しくするので、木質セメント板の凸部形成部分の原料混合物の質量は、凹部形成部分の質量よりも多くなり、マットを均一にプレスできるので、プレス後のマットの凸部と凹部の密度は高くなると共に、該凸部と該凹部の密度差が小さくなり、硬化養生工程、乾燥工程や運搬工程において、木質セメント板へのクラックの発生が防ぐことができ、かつ、塗装工程において、基材への塗料の吸い込みが改善される。更に、表層の厚みは変わらないので、強度、耐水性、耐凍性、耐候性を維持するとともに、多くの塗料が必要になる、塗装が不均一になるという問題を防ぐことができる。加えて、仮にプレス能力がそれ程大きくなくても生産が可能となるという副次的効果も奏する。
【0013】
本請求項3に記載の発明は、凹凸意匠面を有する木質セメント板の製造方法において、表面が平滑なプレス板を搬送させながら、該プレス板の上に原料混合物を散布してマットを形成する工程と、該マットの原料混合物で、凸部形成部分に対応する原料混合物のみに上側から加圧する工程と、一部加圧された該マットの表面を均しくする工程と、得られたマットの上に凸部形成部に対応する凹部を形成した型板を載置する工程と、該マットと該型板とをプレスし、硬化養生する工程と、からなることを特徴とする木質セメント板の製造方法である。
本発明において、原料混合物を加圧するマットの上側とは、プレス、硬化養生、乾燥後に製品の表面となる側を指し、原料混合物の加圧方法としては、幅が型板の凹部と略同じである部材を原料混合物に押しつけて、マットを搬送させながら原料混合物を加圧する方法がある。
【0014】
上記原料混合物の混合比率は、水硬化性材料が35〜70質量%、ケイ酸含有物質が0〜60質量%、木質補強材が5〜30質量%である。
本発明では、原料混合物の配合は1種類以上であり、凸部形成部分に対応する原料混合物のみに上側から加圧する工程がマットを搬送させながら行うので、生産効率が良い。
本発明においても、加圧後にマットの表面を均しくするので、木質セメント板の凸部形成部分の原料混合物の質量は、凹部形成部分の質量よりも多くなり、マットを均一にプレスできるので、プレス後のマットの凸部と凹部の密度は高くなると共に、該凸部と該凹部の密度差が小さくなり、硬化養生工程、乾燥工程や運搬工程において、木質セメント板へのクラックの発生が防ぐことができ、かつ、塗装工程において、基材への塗料の吸い込みが改善される。その結果、木質セメント板製品の強度、耐水性、耐凍性、耐候性が低下する、多くの塗料が必要になる、塗装が不均一になるという問題を防ぐことができる。加えて、仮にプレス能力がそれ程大きくなくても生産が可能となるという副次的効果も奏する。
【0015】
本請求項4に記載の発明は、凹凸意匠面を有する木質セメント板の製造方法において、表面が平滑なプレス板を搬送させながら、該プレス板の上に表層用原料混合物を散布して表層マットを形成する工程と、該表層マットの上に芯層用原料混合物を散布して芯層マットを形成する工程と、該芯層マットと表層マットの原料混合物で、凸部形成部分に対応する原料混合物のみに上側から加圧する工程と、一部加圧された上記芯層マットの表面を均しくする工程と、表面が均しくされた該芯層マットの上に更に該表層用原料混合物を散布して表層マットを形成する工程と、得られた三層構造のマットの上に凸部形成部に対応する凹部を形成した型板を載置する工程と、該三層構造のマットと該型板とをプレスし、硬化養生する工程と、からなることを特徴とする木質セメント板の製造方法である。
本発明において、原料混合物を加圧するマットの上側とは、プレス、硬化養生、乾燥後に製品の表面となる側を指し、原料混合物の加圧方法としては、幅が型板の凹部と略同じである部材を原料混合物に押しつけて、マットを搬送させながら原料混合物を加圧する方法がある。
【0016】
本発明では、表層と芯層とはどちらも水硬化性材料と、ケイ酸含有物質と、木質補強材とからなるが、原料混合物の組成は異なる。表層は、微細原料を含有する緻密な構造であり、水硬化性材料が35〜70質量%、ケイ酸含有物質が0〜50質量%、木質補強材が5〜25質量%であり、木質セメント板の強度や耐水性を向上させる。一方、芯層は、粗原料による組成であり、水硬化性材料が30〜60質量%、ケイ酸含有物質が0〜60質量%、木質補強材が10〜30質量%であり、木質セメント板を軽量とする。表層:芯層の配合比率は質量比で1:1〜1:6、望ましくは1:1〜1:4であり、芯層は表層よりも層を厚くすることが好ましい。
本発明においても、凸部形成部分に対応する原料混合物のみに上側から加圧する工程がマットを搬送させながら行うので、生産効率が良い。また加圧後に芯層マットの表面を均しくするので、木質セメント板の凸部形成部分の原料混合物の質量は、凹部形成部分の質量よりも多くなり、マットを均一にプレスできるので、プレス後のマットの凸部と凹部の密度は高くなると共に、該凸部と該凹部の密度差が小さくなり、硬化養生工程、乾燥工程や運搬工程において、木質セメント板へのクラックの発生が防ぐことができ、かつ、塗装工程において、基材への塗料の吸い込みが改善される。更に、表層の厚みは変わらないので、強度、耐水性、耐凍性、耐候性を維持するとともに、多くの塗料が必要になる、塗装が不均一になるという問題を防ぐことができる。加えて、仮にプレス能力がそれ程大きくなくても生産が可能となるという副次的効果も奏する。
【発明の効果】
【0017】
本発明の木質セメント板の製造方法によれば、凹凸意匠面を有する木質セメント板の凹部と凸部の密度の差を小さくすることができるので、硬化養生工程、乾燥工程や運搬工程において発生する恐れのある、木質セメント板へのクラックの発生を防ぐことができ、かつ、塗装工程において、基材への塗料の吸い込みが改善される。その結果、木質セメント板製品の強度、耐水性、耐凍性、耐候性が低下したり、多くの塗料が必要になったり、塗装が不均一になるという問題を防ぐことができる。
また、本発明の製造方法によれば、マット成形作業は簡単であり、かつ、型板又はプレス板を搬送させながら行われるので、生産効率を低下させない。更に、凹凸意匠面を有する木質セメント板を均一にプレスできるので、プレス能力がそれ程大きくなくても生産できるという副次的効果も奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明を実施するための最良の形態について、図1〜図6に従って具体的に説明する。
【実施例1】
【0019】
図1は、表面に凸部A1を有する木質セメント板Aの一例を示した図である。凸部A1は、ここでは木質セメント板Aの表面を長手方向に一直線状に5本形成されている。
【0020】
図2は、図1に示す木質セメント板Aを製造するために使用される装置であって、木質セメント板Aを成形するためのマット原料の一部を回転加圧する装置Bの一例を示した図である。装置Bは、回転軸B1と、その周囲に形成された複数のロール部B2とを備えており、マットを搬送するコンベアの上方で、かつ、該マットの進行方向に対して直交する方向に配置される。回転軸B1が回転することにより、ロール部B2が上記マットの原料の必要箇所に加圧接触し、該マットを加圧することができる。なお、ロール部B2は、動作位置、及び高さが調整可能である。また、本装置Bはラインから脱着することが可能であり、製造する木質セメント板の凹部のパターンに対応するよう配置、調整したロール部B2を備えた装置Bを用意しておき、製造する木質セメント板の凹部のパターンにあわせて取り替えられるようにしておけば、作業性良く、木質セメント板の生産効率を低下させない。
【0021】
図3は、図1に示す木質セメント板Aを製造するための製造工程の流れの一例を、各工程において製造されるマットの状態によって示した模式図である。
図3に示す製造工程では、配合を異にする、表層用原料混合物Eと芯層用原料混合物Fとが用いられる。
最初に凸部形成部に対応する凹部C1を形成した型板Cを、図3(A)に示すように、型板Cの凹部C1が上を向くようにしてコンベア(図示せず)の上に載置する。コンベア上に置いた型板Cを搬送させながら、該型板Cの表面全体に表層用原料混合物Eを散布して、図3(B)に示すように表層マットを形成する。なお、表層用原料混合物Eには芯層よりも粒径の細かい原料を配合し、得られる木質セメント板の表面が緻密となるようにする。
次に、表層用原料混合物Eを積載した型板Cを引き続き搬送させながら、表層用原料混合物Eの表面全体に芯層用原料混合物Fを散布する。芯層用原料混合物Fは表層用原料混合物Eよりも多く散布し、芯層マットの厚みを表層マットよりも大きくし、図3(C)に示すように芯層マットを形成する。なお、搬送方向の上方には、芯層用原料混合物Fの表面に軽く接触するようにブラシ(図示せず)を設け、芯層用原料混合物Fの表面を均しくする。エアーを吹き付けて表面を均しくしても良い。そして、原料混合物E、Fを積載した型板Cを更にコンベアで搬送させ、図3(D)に示すように、コンベアの上方に設けた図2に示す装置Bのロール部B2により、原料混合物E、Fのうち、型板Cの凹部C1の上に積層している原料混合物のみを、上側から加圧し、図3(E)に示すように、型板Cの凹部C1の上に積層している原料混合物のみが加圧された部分E1、F1を有するマットを得る。その後、加圧された部分E1、F1を有するマットは、搬送方向の上方に設けられたブラシ(図示せず)に表面を軽く接触させる、又はエアーを吹き付けることにより、搬送させながら図3(F)に示すような表面が均しくされたマットを得る。なお、表面を均しくするために、E1、F1以外の部分において、E1、F1よりも高い部分をブラシ又はエアー(図示せず)により掻き取り、マットの表面を均しくしても良い。
原料混合物E、Fを積載した型板Cは更にコンベア上で搬送され、原料混合物Fの表面全体に再度、表層用原料混合物Eを散布して、図3(G)に示すように芯層マットの上に表層マットを形成する。そして、そのようにして得られたマット表面に、図3(H)に示すように平滑なプレス板Dを載置し、型板Cと共にプレスし、硬化養生する。
上記製造工程によれば、原料混合物の散布と、原料混合物の一部加圧と、原料混合物の表面の均しとが型板Cを搬送させながら行われるので、生産効率が良い。また、原料混合物E、Fのうち型板Cの凹部C1に対応した部分のみが加圧され、加圧後に芯層マットの表面を均しくするので、プレスの際にマットには均一に荷重がかかり、プレス能力がそれ程大きくなくても生産が可能となり、かつ、木質セメント板Aの表面凹部と凸部の比重の差を小さくすることができ、木質セメント板Aへのクラックの発生と基材への塗料の吸い込みが改善される。更に、表層の原料混合物Eの量は変わらないので、木質セメント板Aの強度、耐水性、耐凍性、耐候性を維持するとともに、多くの塗料が必要になる、塗装が不均一になるという問題を防ぐことができる。
【0022】
図4は、図1に示す木質セメント板Aを製造するための製造工程の流れの他の実施例を、各工程において製造されるマットの状態によって示した模式図である。
図4に示す製造工程も、表層と芯層とで用いる原料混合物の配合や厚さが異なり、表層用原料混合物Eと芯層用原料混合物Fとが用いられる、表層用原料混合物Eの上に芯層用原料混合物Fを散布する、芯層マットは表層マットよりも厚みが大きい、コンベアの上方に設けた図2に示す装置Bにより、原料混合物E、Fのうち型板Cの凹部C1に対応した部分のみを加圧し、加圧された部分E1、F1を有するマットを製造する、加圧された部分E1、F1を有するマットの表面を均しくしてから、原料混合物Fの表面全体に表層用原料混合物Eを散布し、プレス、硬化養生を行うという点では図3に示す製造工程と同じだが、図4(A)に示すように最初に平滑なプレス板Dをコンベア上に載置すること、図4(B)〜(G)に示すように、原料混合物の散布と、原料混合物の一部加圧と、原料混合物の表面の均しとが平滑なプレス板Dを搬送させながら行なうことと、図4(H)に示すように、三層構造のマットの上に凸部形成部に対応する凹部C1を形成した型板Cを載置する点が図3に記載の製造工程とは異なる。なお、型板Cは、凹部C1を下向きにしてマットの上に載置するので、加圧された位置と凸部C1の位置は同じになる。
上記製造工程においても、原料混合物の散布と、原料混合物の一部加圧と、原料混合物の表面の均しとがプレス板Dを搬送させながら行うので、図3に示す製造方法と同じく、生産効率が良い。また、原料混合物E、Fのうち型板Cの凹部C1に対応した部分のみが加圧され、加圧後に芯層マットの表面を均しくするので、プレスの際にマットには均一に荷重がかかり、プレス能力がそれ程大きくなくても生産が可能となり、かつ、木質セメント板Aの表面凹部と凸部の比重の差を小さくすることができ、木質セメント板Aへのクラックの発生と基材への塗料の吸い込みが改善される。更に、表層の原料混合物Eの量は変わらないので、木質セメント板Aの強度、耐水性、耐凍性、耐候性を維持するとともに、多くの塗料が必要になる、塗装が不均一になるという問題を防ぐことができる。
【0023】
図5は、図1に示す木質セメント板Aを製造するための製造工程の流れの更に他の実施例を、各工程において製造されるマットの状態によって示した模式図である。
図5に示す製造方法は、原料混合物の配合が1種類であり、原料混合物Gのみが用いられる。
最初に凸部形成部に対応する凹部C1を形成した型板Cをコンベアの上に載置し、図5(A)に示すように、型板Cの凹部C1が上を向くようにする。次に、コンベア上に置いた型板Cを搬送させながら、該型板Cの表面全体に原料混合物Gを散布して、図5(B)に示すようなマットを形成する。なお、搬送方向の上方には、原料混合物Gの表面に軽く接触するようにブラシ(図示せず)を設け、原料混合物Gの表面を均しくする。エアーを吹き付けて表面を均しくしても良い。その後、原料混合物Gを積層した型板Cを更にコンベア上を搬送させ、コンベアの上方に設けた図2に示す装置Bのロール部B2により、マットの原料混合物Gのうち型板Cの凹部C1の上に積層している原料混合物のみを、上側から加圧し、図5(D)に示すように、型板Cの凹部C1の上に積層している原料混合物のみが加圧された部分G1を有するマットを得る。その後、加圧された部分G1を有するマットは、搬送方向の上方に設けられたブラシ(図示せず)に表面を軽く接触させる、又はエアーを吹き付けることにより、搬送させながら図5(E)に示すように表面を均しくさせた後に、図5(F)に示すように、表面が平滑なプレス板Dを載置し、型板Cと共にプレス、硬化養生が行なわれる。なお、表面を均しくするために、G1以外の部分において、G1よりも高い部分をブラシ又はエアー(図示せず)により掻き取り、マットの表面を均しくしても良い。
上記製造工程によれば、原料混合物の散布と、原料混合物の一部加圧と、原料混合物の表面の均しとが型板Cを搬送させながら行い、原料混合物の配合は1種類だけなので、図3,4に示す製造工程よりも生産効率が良い。なお、原料混合物Gは、型板Cの凹部C1に対応した部分のみが加圧され、加圧後にマットの表面を均しくするので、プレスの際にマットには均一に荷重がかかり、プレス能力がそれ程大きくなくても生産が可能となり、かつ、木質セメント板Aの表面凹部と凸部の比重の差を小さくすることができ、木質セメント板Aへのクラックの発生と基材への塗料の吸い込みが改善されることは、図3,4に示す製造工程と同じである。また、木質セメント板Aの強度、耐水性、耐凍性、耐候性を維持するとともに、多くの塗料が必要になる、塗装が不均一になるという問題を防ぐことができるという効果も図3,4に示す製造方法と同じである。
【0024】
図6は、図1に示す木質セメント板Aを製造するための製造工程の流れの更に他の実施例を、各工程において製造されるマットの状態によって示した模式図である。
図6に示す製造工程も、原料混合物の配合が1種類であり、原料混合物Gのみが用いられる、コンベア上を搬送させながら原料混合物Gを散布してマットを形成する、コンベアの上方に設けた図2に示す装置Bのロール部B2により、マットの原料混合物Gのうち型板Cの凹部C1に対応した部分のみを上側から加圧し、加圧された部分G1を有するマットを製造する、加圧された部分G1を有するマットの表面を均しくしてから、プレス、硬化養生するという点では図5に記載の製造方法と同じだが、図6(A)に示すように、最初にプレス板Dの上に原料混合物Gを散布することと、図6(B)〜(E)に示すように、原料混合物の散布と、原料混合物の一部加圧と、原料混合物の表面の均しとが平滑なプレス板Dを搬送させながら行なうことと、図6(F)に示すように、マットの上に凸部形成部に対応する凹部C1を形成した型板Cを載置する点が図5に記載の製造方法とは異なる。なお、型板Cは、凹部C1を下向きにしてマットの上に載置するので、加圧された位置と凸部C1の位置は同じになる。
上記製造工程によれば、原料混合物の散布と、原料混合物の一部加圧と、原料混合物の表面の均しとがプレス板Dを搬送させながら行い、原料混合物の配合は1種類だけなので、図5に示す製造工程と同じく、生産効率が良い。また、原料混合物Gは、型板Cの凹部C1に対応した部分のみが加圧され、加圧後にマットの表面を均しくするので、プレスの際にマットには均一に荷重がかかり、プレス能力がそれ程大きくなくても生産が可能となり、かつ、木質セメント板Aの表面凹部と凸部の比重の差を小さくすることができ、木質セメント板Aへのクラックの発生と基材への塗料の吸い込みが改善されることは、図3,4,5に示す製造工程と同じである。更に、木質セメント板Aの強度、耐水性、耐凍性、耐候性を維持するとともに、多くの塗料が必要になる、塗装が不均一になるという問題を防ぐことができるという効果も図3,4,5に示す製造工程と同じである。
【0025】
なお、本発明は上記実施例に限定されるものではない。
図3,4に示す製造工程において、表側に設ける表層用原料混合物Eと、裏面側に設ける表層用原料混合物Eの配合を異ならしても良し、裏面側に表層用原料混合物Eを設けなくすることもできる。
また、図7に示すように、凹部を直交する2方向に形成する場合には、長手方向と短手方向に搬送させる2つのコンベアを用意し、それぞれのコンベアの上方に図2に示す装置Bを設置することにより、2方向に凹部を有するマットを形成することができる。
【0026】
次に、水硬性材料としてポルトランドセメントを40質量%、ケイ酸含有物質として珪砂を38質量%、木質補強材として木片を11質量%とパルプを11質量%含有する原料混合物に、硬化促進剤として硫酸アルミニウムを5質量%外添し、図5に示す木質セメント板の製造工程により、図1に示す木質セメント板を製造し、165℃、6kgf/cmで6時間オートクレーブ養生し、単層からなる、全体の厚みが16mmの木質セメント板である実施例1を得た。なお、該木質セメント板において、凹凸形状を鋭角で深く形成するため、凸部の頂点から凹部の底点までの長さは4mmとした。該木質セメント板の全体の厚みを16mmにするためのマットと型板のプレス圧は45kgf/cmであった。
また、別の実施例として、水硬性材料としてポルトランドセメントを38質量%、ケイ酸含有物質として珪砂を38質量%、木質補強材としてパルプを24質量含有する原料混合物に、硬化促進剤として硫酸アルミニウムを5質量%外添して表層の原料混合物とし、水硬性材料としてポルトランドセメントを40質量%、ケイ酸含有物質として珪砂を40質量%、木質補強材として木片を20質量%含有する原料混合物に、硬化促進剤として硫酸アルミニウムを3質量%外添して芯層の原料混合物として、図3に示す木質セメント板の製造工程により図1に示す木質セメント板を製造し、165℃、6kgf/cmで6時間オートクレーブ養生し、三層からなる、厚みが16mmの実施例2を得た。なお、表層と芯層の配合比率は質量比で1:4であり、該木質セメント板においても、凸部の頂点から凹部の底点までの長さは4mmとした。実施例2において、木質セメント板の全体の厚みを、実施例1と同様に16mmにするためのマットと型板のプレス圧は45kgf/cmであった。
更に、実施例1の比較として、実施例1の製造方法において、型板の凹部に積層した部分の原料混合物のみに上側から加圧することと、一部加圧されたマットの表面を均しくすること以外を実施し、単層からなる比較例1を得た。なお、比較例1では、木質セメント板の全体の厚みを、実施例1と同様に16mmにするためのマットと型板のプレス圧力は、50kgf/cmであった。
更に、実施例2の比較として、実施例2の製造方法において、型板の凹部に積層した部分の原料混合物のみに上側から加圧することと、一部加圧されたマットの表面を均しくすること以外を実施し、三層からなる比較例2を得た。なお、比較例2では、木質セメント板の全体の厚みを、実施例2と同様に16mmにするためのマットと型板のプレス圧力は、50kgf/cmであった。
上記実施例1,2及び比較例1,2について、各木質セメント板の全体の平均比重、及び、凸部、凹部の比重を測定すると共に、該木質セメント板表面の表面吸水量、及び曲げ強度を測定し、表1に示した。なお、曲げ強度はJIS A 1408に準じ試験体500×400mmで測定し、表面吸水量は、枠置き法による測定であり、塗装板の表面に0.2×0.2mの枠を設け、該枠内に水を一定量入れた状態で24時間放置し、測定前後の塗装板の質量変化を数1により算出した値である。
【0027】
【数1】

【0028】
【表1】

【0029】
表1に示すとおり、実施例1,2は、木質セメント板の全体の平均比重、及び、凸部、凹部の比重が1.1以上であり、該凸部の比重と該凹部の比重の差が0.1より小さく、表面吸水量、及び曲げ強度に優れる。しかし、比較例1,2は、木質セメント板の全体の平均比重、及び、凸部の比重が1.1よりも小さく、かつ、該凸部の比重と該凹部の比重の差が0.1よりも大きいので、表面吸水量、及び曲げ強度は実施例1,2に比べ劣る。
【0030】
また、実施例1、2と同じ製造方法で、凸部の頂点から凹部の底点までの長さが4mmである、全体の厚みが8mmの木質セメント板を製造したところ、搬送時に破損し、強度が弱かった。
更に、実施例1、2と同じ製造方法で、凸部の頂点から凹部の底点までの長さが1mmである木質セメント板を製造したところ、物性面では実施例1、2と同程度であったが、凹凸が鋭角に見えず、意匠性に劣った。
【産業上の利用可能性】
【0031】
以上説明したように、本発明の製造方法によれば、凹凸意匠面を有する木質セメント板の凹部と凸部の密度の差を小さくすることができるので、硬化養生工程、乾燥工程や運搬工程において発生する恐れのある、木質セメント板へのクラックの発生を防ぐことができ、かつ、塗装工程において、基材への塗料の吸い込みが改善される。その結果、木質セメント板製品の強度、耐水性、耐凍性、耐候性が低下する、多くの塗料が必要になる、塗装が不均一になるという問題を防ぐことができる。
また、マット成形作業は簡単であり、かつ、型板又はプレス板を搬送させながら行われるので、生産効率を低下させない。更に、凹凸意匠面を有する木質セメント板を均一にプレスできるので、仮にプレス能力がそれ程大きくなくても生産が可能となるという副次的効果も奏する。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】表面に凸部を有する木質セメント板を示した図である。
【図2】図1に示す木質セメント板を製造するために使用される、マット原料の一部を加圧する装置の一実施例を示した図である。
【図3】図1に示す木質セメント板を製造するための製造工程の流れを、各工程において製造されるマットの状態によって示した模式図である。
【図4】図1に示す木質セメント板を製造するための製造工程の流れの他の例を、各工程において製造されるマットの状態によって示した模式図である。
【図5】図1に示す木質セメント板を製造するための製造工程の流れの更に他の例を、各工程において製造されるマットの状態によって示した模式図である。
【図6】図1に示す木質セメント板を製造するための製造工程の流れの更に他の例を、各工程において製造されるマットの状態によって示した模式図である。
【図7】表面に凹部を2方向に有する木質セメント板を示した図である。
【符号の説明】
【0033】
A 木質セメント板
A1 凸部
B マット原料混合物の一部を加圧する装置
B1 回転軸
B2 ロール部
C 型板
C1 型板の凹部
D プレス板
E 表層用原料混合物
E1 表層用原料混合物が加圧された部分
F 芯層用原料混合物
F1 芯層用原料混合物が加圧された部分
G 原料混合物
G1 原料混合物が加圧された部分

【特許請求の範囲】
【請求項1】
凹凸意匠面を有する木質セメント板の製造方法において、
上記木質セメント板の凸部形成部に対応する凹部を形成した型板を搬送させながら、該型板の上に原料混合物を散布してマットを形成する工程と、
上記マットの原料混合物で、上記型板の凹部に積層した部分の原料混合物のみに上側から加圧する工程と、
一部加圧された上記マットの表面を均しくする工程と、
得られた上記マットと上記型板とをプレスし、硬化養生する工程と、
からなることを特徴とする木質セメント板の製造方法。
【請求項2】
凹凸意匠面を有する木質セメント板の製造方法において、
上記木質セメント板の凸部形成部に対応する凹部を形成した型板を搬送させながら、該型板の上に表層用原料混合物を散布して表層マットを形成する工程と、
上記表層マットの上に芯層用原料混合物を散布して芯層マットを形成する工程と、
上記芯層マットと表層マットの原料混合物で、上記型板の凹部に積層した部分の原料混合物のみに上側から加圧する工程と、
一部加圧された上記芯層マットの表面を均しくする工程と、
表面が均しくされた上記芯層マットの上に更に上記表層用原料混合物を散布して表層マットを形成する工程と、
得られた三層構造のマットと上記型板とをプレスし、硬化養生する工程と、
からなることを特徴とする木質セメント板の製造方法。
【請求項3】
凹凸意匠面を有する木質セメント板の製造方法において、
表面が平滑なプレス板を搬送させながら、該プレス板の上に原料混合物を散布してマットを形成する工程と、
上記マットの原料混合物で、凸部形成部分に対応する原料混合物のみに上側から加圧する工程と、
一部加圧された上記マットの表面を均しくする工程と、
得られたマットの上に凸部形成部に対応する凹部を形成した型板を載置する工程と、
上記マットと上記型板とをプレスし、硬化養生する工程と、
からなることを特徴とする木質セメント板の製造方法。
【請求項4】
凹凸意匠面を有する木質セメント板の製造方法において、
表面が平滑なプレス板を搬送させながら、該プレス板の上に表層用原料混合物を散布して表層マットを形成する工程と、
上記表層マットの上に芯層用原料混合物を散布して芯層マットを形成する工程と、
上記芯層マットと表層マットの原料混合物で、凸部形成部分に対応する原料混合物のみに上側から加圧する工程と、
一部加圧された上記芯層マットの表面を均しくする工程と、
表面が均しくされた上記芯層マットの上に更に上記表層用原料混合物を散布して表層マットを形成する工程と、
得られた三層構造のマットの上に凸部形成部に対応する凹部を形成した型板を載置する工程と、
上記三層構造のマットと上記型板とをプレスし、硬化養生する工程と、
からなることを特徴とする木質セメント板の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−241479(P2009−241479A)
【公開日】平成21年10月22日(2009.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−92316(P2008−92316)
【出願日】平成20年3月31日(2008.3.31)
【出願人】(000110860)ニチハ株式会社 (182)
【Fターム(参考)】