説明

木質床材の製造方法

【課題】毛羽立ちやささくれを完全に解消することができる木質床材の製造方法を提供することである。
【解決手段】切削により木質床材1の表面1aに断面V字状の溝部3を形成する工程と、前記溝部3に水性塗料6を塗布する工程と、前記水性塗料6が完全に乾燥する前に前記溝部3を押圧して木繊維の毛羽立ち4を抑制する工程と、前記水性塗料6を完全に乾燥させる工程とを有することにより、木質床材1の毛羽立ち4やささくれを完全にを解消する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面に複数の平行な溝を形成した木質床材の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、建築物の床面を木質床材によって構成し、あたかも複数枚の板が並列に配置されているように見せかける工法が採用され、実用されている。例えば、本件出願人の出願である特許文献1では、建築板表面加工法として、建築板の表面を切削加工して溝部を刻設し、その後、溝部の開口縁を押圧することによって溝部を面取り加工する技術を開示している。
【0003】
また、特許文献2は、建築用化粧床材の発明であって、特許文献1と同様に溝加工とプレス加工の後に塗装する、又は、溝加工後に塗装し、塗装が乾燥してからプレス加工することで、溝部の毛羽立ちやささくれを抑制している。
【特許文献1】特開2001−062808号公報
【特許文献2】実用新案登録第3083740号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1及び2に開示されているような加工方法で形成された溝には、依然として毛羽立ちやささくれが存在しているため、この毛羽立ちやささくれのために、引っ掛かりを完全に解消するには、尚、工夫が必要である。
【0005】
そこで本発明は、毛羽立ちやささくれを完全に解消することができる木質床材の製造方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、請求項1の発明では、木質床材の表面を切削して断面V字状の溝部を形成した後、前記溝部に水性塗料を塗布し、前記水性塗料が完全に乾燥する前に前記溝部を押圧して木繊維の毛羽立ちを抑制し且つ前記毛羽立ちが復元する前に前記水性塗料を完全に乾燥させるようにした。
【0007】
請求項2の発明では、切削により木質床材の表面に断面V字状の溝部を形成する工程と、前記溝部に水性塗料を塗布する工程と、前記水性塗料が完全に乾燥する前に前記溝部を押圧して木繊維の毛羽立ちを抑制する工程と、前記水性塗料を完全に乾燥させる工程とを有するようにした。
【発明の効果】
【0008】
請求項1の発明では、木質床材の表面を切削して断面V字状の溝部を形成し、この溝部に塗布した水性塗料が、完全に乾燥する前に溝部を押圧して木繊維の毛羽立ちを抑制し、水性塗料を完全に乾燥させるようにしたので、水性塗料が完全に乾燥して固化し、木繊維の毛羽立ちを阻止することができる。
【0009】
請求項2の発明では、水性塗料が完全に乾燥する前に溝部を押圧して木繊維の毛羽立ちを抑制する工程と、水性塗料を完全に乾燥させる工程とを備えたので、押圧によって抑制された毛羽立ちが、復元する前に水性塗料が乾燥し、毛羽立ちを阻止することができる。
【0010】
請求項1及び2の発明を実施すると、完全に乾燥した塗料の中で木繊維が動くことを防止することができ、塗料内に泡が生じないので、品質の高い一様な木質床材を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
図1(a)〜(f)は、本発明を実施中の床材1の断面図である。床材1は、木製(木質)であり、床材1の上面1a側が、本発明を実施した後は床面となる。この床材1の加工工程を、図1と図2を参照しながら説明する。図2は、本発明の実施手順を示す流れ図である。
【0012】
図1(a)に示すように、床材1の上面1aの加工位置に切削刃2を配置する。
【0013】
第1工程において、床材1は、図1(b)に示す切削刃2によって切削され、予め設定された所定(深さ及び幅)の溝3が形成される。図1(c)に示すように、この溝3の表面には、毛羽立ち4(又はささくれ)が生じている。
【0014】
第2工程において、溝3を含む床材1全体に、下塗りとして既知の水性ステインを塗布する。
【0015】
そして、第3工程では、図1(d)、(e)に示すロール5によって、溝3を押圧(圧締)する。図1(f)に示すように、ロール5による押圧直後は、毛羽立ち4はほとんど目立たないが、時間が経過するにつれて毛羽立ち4は徐々に自然回復(起立)してしまう。
【0016】
そこで、第4工程で、例えばドライヤ等の温風(又は熱風)供給手段により、温風を供給し、速やかに水性ステインの乾燥を完了させる。水性ステインが乾燥することにより、毛羽立ち4の自然回復は阻止される。
【0017】
さらに、第5工程で、図1(e)に示すロール5で、再度溝3を押圧(圧締)する。水性ステインの乾燥前と乾燥後に溝3を押圧すると、極めて良好に毛羽立ち4を解消することができる。
【0018】
そして、第6工程で、塗装の中塗り、又は、仕上げの上塗りを行う。
【0019】
以上のように、第1工程から第6工程を経て製造された床材1は、図3に示すように仕上げられる。図3は、本発明を実施して製造された床材1の斜視図である。図3に示すように、床材1には複数の平行な溝3が、上述した手順を経て形成されている。
【0020】
この溝3の構造を、図4を参照しながら説明する。図4は、本発明を実施して形成された床材1の溝3部分の断面図である。図4に示すように、床材1の表面には、水性ステイン被膜6と塗装膜7とが層状に形成されている。そして、溝3の表面には、若干の毛羽立ち4が残っているが、毛羽立ち4は水性ステイン被膜6の層に埋没しており、床材1(塗装膜7)の表面には露出していない。そのため、この毛羽立ち4によって、引っ掛かりが生じることはなく、床材1の表面は非常に滑らかな状態を呈し、毛羽立ち4による引っ掛かりは、完全に解消される。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】(a)〜(f)は、各々、本発明を実施中の床材の断面図である。
【図2】本発明の実施手順を示す流れ図である。
【図3】本発明を実施して製造された床材の斜視図である。
【図4】本発明を実施して形成された床材の溝部分の断面図である。
【符号の説明】
【0022】
1 床材
2 切削刃
3 溝
4 毛羽立ち
5 ロール
6 水性ステイン被膜
7 塗装膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
木質床材の表面を切削して断面V字状の溝部を形成した後、前記溝部に水性塗料を塗布し、前記水性塗料が完全に乾燥する前に前記溝部を押圧して木繊維の毛羽立ちを抑制し且つ前記毛羽立ちが復元する前に前記水性塗料を完全に乾燥させることを特徴とする木質床材の製造方法。
【請求項2】
切削により木質床材の表面に断面V字状の溝部を形成する工程と、前記溝部に水性塗料を塗布する工程と、前記水性塗料が完全に乾燥する前に前記溝部を押圧して木繊維の毛羽立ちを抑制する工程と、前記毛羽立ちが復元する前に前記水性塗料を完全に乾燥させる工程とを有することを特徴とする木質床材の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−136882(P2007−136882A)
【公開日】平成19年6月7日(2007.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−334453(P2005−334453)
【出願日】平成17年11月18日(2005.11.18)
【出願人】(000005832)松下電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】