説明

木造建物における基礎直結金物を用いた柱と土台の取付け構造

【課題】柱の引抜き耐力をより高いものにすることができ、それでいて、土台の取付けも容易にすることができる、木造建物における基礎直結金物を用いた柱と土台の取付け構造を提供する。
【解決手段】基礎直結金物2が、柱下に備えられて柱下で基礎側アンカー8に連結されると共に柱3を連結した直結金物本体部5と、柱3から側方に離れて備えられ、該側方に離れた位置で基礎側アンカー15に連結された補助プレート部6と、直結金物本体部5と補助プレート部6とを一体化するように連結する垂直な脚プレート部7とを備え、柱3に作用する引抜き力が、柱下の基礎アンカー8と、補助プレート部6を連結している基礎アンカー15とに伝えられるようになされており、かつ、脚プレート部に土台が取り付けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、木造建物における基礎直結金物を用いた柱と土台の取付け構造に関する。
【背景技術】
【0002】
木造建物における柱の取付け構造として、柱の、引抜き力に対する耐力を大きなものにするため、図8及び図9に示すように、基礎直結金物51を用い、該基礎直結金物51を柱52とコンクリート基礎53との間に介設し、該基礎直結金物51を柱下で基礎アンカー54に連結すると共に、該基礎直結金物51に柱52をドリフトピン55で連結した構造がある。
【特許文献1】特開2000−160682号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記のような構造では、図8(ハ)に示すように、土台56の取付けのために、基礎直結金物51とは別の独立部品からなるL字プレートなどの土台取付け部材57を用いて土台56を柱52に取り付けなければならず、施工が厄介である。
【0004】
また、柱の引抜き耐力を高めるために、柱下のアンカー54を、図示するように複数本にすると、基礎コンクリート中でのアンカー54,54のかぶり厚さの確保が難しくなることがあり、柱の引抜き耐力を高めるのに限界がある。
【0005】
本発明は、上記のような問題点に鑑み、柱の引抜き耐力をより高いものにすることができ、それでいて、土台の取付けも容易にすることができる、木造建物における基礎直結金物を用いた柱と土台の取付け構造を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題は、柱が基礎直結金物で基礎に直結された木造建物における基礎直結金物を用いた柱の取付け構造において、
前記基礎直結金物が、
柱下に備えられて柱下で基礎側アンカーに連結されると共に、柱を連結した直結金物本体部と、
柱から側方に離れて備えられ、該側方に離れた位置で基礎側アンカーに連結された補助プレート部と、
直結金物本体部と補助プレート部とを一体化するように連結する垂直な脚プレート部と
を備え、柱に作用する引抜き力が、柱下の基礎アンカーと、直結金物本体部、脚プレート部、補助プレート部を通じて、補助プレート部を連結している基礎アンカーとに伝えられるようになされており、かつ、
該脚プレート部に土台が取り付けられていることを特徴とする、木造建物における基礎直結金物を用いた柱と土台の取付け構造によって解決される。
【0007】
この構造では、基礎直結金物の直結金物本体部によって柱が柱下の基礎アンカーに直結されているのに加えて、柱から側方に離れた位置で基礎側アンカーに連結されている補助プレート部が垂直な脚プレート部を介して直結金物本体部に連結され、柱に作用する引抜き力が、柱下の基礎アンカーと、直結金物本体部、脚プレート部、補助プレート部を通じて、補助プレート部を連結している基礎アンカーとに伝えられるようになされているので、各基礎アンカーのかぶり厚さを充分に確保しつつ、柱の引抜き耐力を高いものにすることができる。
【0008】
特に、脚プレート部が垂直方向に向けられていることにより、柱に作用する引抜き力が、直結金物本体部から脚プレート部を介して補助プレート部に効率良く伝えられ、柱の引抜き耐力を非常に高いものにすることができる。
【0009】
しかも、引抜き耐力向上に寄与する垂直な脚プレート部を利用して土台を取り付ける構造としているので、他の土台取付け用金物を用いる場合に比べて、土台の取付けを容易にすることができる。
【0010】
上記の構造において、前記土台の端部に垂直なスリットが入れられ、該スリット内に基礎直結金物の垂直な脚プレート部が差し込まれ、側方よりドリフトピンが打ち込まれることで、土台が脚プレート部に取り付けられている場合は、垂直な脚プレート部への土台の取付けを簡素な構造で施工容易に行うことができると共に、土台の取付け状態も浮き上がりなどのないしっかりとしたものにすることができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明は、以上のとおりのものであるから、柱の引抜き耐力をより高いものにすることができ、それでいて、土台の取付けも容易にすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
次に、本発明の実施最良形態を図面に基づいて説明する。
【0013】
図1〜図4に示す第1実施形態の構造において、1はコンクリート基礎、2は基礎直結金物、3は木製の柱、4は同じく木製の土台である。
【0014】
基礎直結金物2は、基礎1の平面視L字部分に用いられるもので、1つの直結金物本体部5と、2つの補助プレート部6,6と、2つの脚プレート部7,7とを備えている。なお、基礎1には、柱下部分と、柱から側方に離れた位置に、アンカー8,15,15が、基礎コンクリートのかぶり厚さを充分に確保することのできる基礎1の幅方向中心側に位置して備えられている。
【0015】
直結金物本体部5は、柱3の下に備えられて、柱下で基礎1のアンカー8に連結されると共に、柱3を連結するもので、ベースプレート部9と、該ベースプレート部9上に立設された平面視十字状の差込み部10とを一体的に備えたものからなっている。
【0016】
ベースプレート部9には、その中央部一カ所に、アンカー8を通す通孔11が設けられると共に、十字状の差込み部10の芯部側の下端側には切欠き部12が設けられ、通孔11に通したアンカー8に対してナット13を切欠き部12を通じて装着することができるようになされている。
【0017】
十字状差込み部10は、柱3の下端部に設けられた十字状スリット3aに差し込まれて柱3を連結するもので、十字状差込み部10の各板部には、ドリフトピンを打ち込む孔14…が設けられている。
【0018】
各補助プレート部6は、柱3から側方に離れて備えられ、該側方に離れた位置で基礎側アンカー15に連結されるもので、中央部一カ所に、アンカー15を通す通孔16が設けられている。
【0019】
脚プレート部7は、直結金物本体部5と補助プレート部6とを一体化するように連結するもので、三角状をしていて、垂直に向けられ、直結金物本体部5の中央部と補助プレート部6の中央部とをつないでおり、面内にはドリフトピンを打ち込む孔17が明けられている。
【0020】
施工は、まず、基礎1に対して基礎直結金物2の取付けを行う。即ち、基礎直結金物2の直結金物本体部5のベースプレート部9の通孔11に柱下のアンカー8を通すと共に、補助プレート部6,6の通孔16,16に、柱から側方に離れた位置に設けられたアンカー15,15を通し、各アンカー8,15,15にナット13…を装着して緊結する。
【0021】
しかる後、柱3と土台4,4の取付けを行う。柱3は、その下端部に設けられた十字状スリット3aに直結金物本体部5の十字状差込み部10を差し込むようにしてセットし、側方からドリフトピン18…を打ち込めば、直結金物本体部5に連結される。
【0022】
また、各土台4は、その端部に設けられた垂直なスリット4a内に、基礎直結金物2の垂直な脚プレート部7を差し込むようにセットし、側方よりドリフトピン18を打ち込めば、脚プレート部7に連結される。
【0023】
このように、上記の構造によれば、基礎直結金物2の直結金物本体部5によって柱3が柱下の基礎アンカー8に直結されているのに加えて、柱3から側方に離れた位置で基礎側アンカー15,15に連結されている補助プレート部6,6が垂直な脚プレート部7,7を介して直結金物本体部5に連結され、柱3に作用する引抜き力が、柱下の基礎アンカー8と、直結金物本体部5、脚プレート部7,7、補助プレート部6,6を通じて、補助プレート部6を連結している基礎アンカー15,15とに伝えられるようになされているので、各基礎アンカー8,15,15のかぶり厚さを充分に確保しつつ、柱3の引抜き耐力を高いものにすることができる。
【0024】
特に、脚プレート部7,7は垂直方向を向けられていることにより、柱3に作用する引抜き力は、直結金物本体部5から脚プレート部7を介して補助プレート部6に効率良く伝えられ、引抜き耐力を非常に高いものにすることができる。
【0025】
しかも、このように引抜き耐力向上に寄与する垂直な脚プレート部7,7を利用して土台4,4を取り付ける構造としているので、他の土台取付け用金物が不要で、土台4の取付けを容易にすることができる。特に、脚プレート部7は、土台4の端部に設けられた垂直なスリット4aに差し込まれ、側方より打ち込んだドリフトピン18で土台4を連結させる構造となっているので、垂直な脚プレート部7への土台4の取付けを簡素な構造で施工容易に行うことができると共に、土台4の取付け状態も浮き上がりなどのないしっかりとしたものにすることができる。
【0026】
図5〜図7に示す第2実施形態の構造は、脚プレート部7が帯板状のものからなっていると共に、基礎直結金物2の直結金物本体部5が、上下の板9,21の両サイドを側板22で連結した側方開放のボックス形のものの上板部21の上に十字状の差込み部10を設けたものからなっており、柱下のアンカー8に対してナット13をボックス形直結金物本体部5の側方開口部を通じて装着することができるようになされている。その他は、第1実施形態の構造と同様であり、同様の作用効果が奏される。
【0027】
なお、上下の板9,21の間隔寸法が小さい場合は、図示しないが、上板21の中央部に孔を設けると共に、十字状差込み部10の芯部側の下端側に切欠きを設け、アンカー8へのナット13の装着を上板21の中央部の孔を通じて行うことができるようになされていてもよい。
【0028】
以上に、本発明の実施形態を示したが、本発明はこれに限られるものではなく、発明思想を逸脱しない範囲で各種の変更が可能である。例えば、上記の実施形態では、特定構造をした2種類を示したが、基礎直結金物2の具体的形態に制限はなく、また、直結金物本体部5をはじめ、補助プレート部6や脚プレート部7についても種々の形態が採用されてよいし、また、直結金物本体部5と脚プレート部7との連結部分の構造や、脚プレート部7と補助プレート部6との連結部分の構造についても種々の形態が採用されてよい。更に、直結金物本体部5と柱3の連結構造や、脚プレート部7と土台4の連結構造についても種々の構造が採用されてよい。
【0029】
また、上記の実施形態では、平面視L状の基礎部分に用いた場合を示したが、平面視直線状、平面視十字状、平面視T字状の基礎部分に用いることも可能である。また、補助プレート部6は、平面視直線状や平面視L状の基礎部分においては、1つ又は2つ備えられていればよく、平面視T字状の基礎部分では1つないし3つ備えられていればよく、平面視十字状の基礎部分では1つないし4つ備えられていればよい。
【0030】
更に、上記の実施形態では、直結金物本体部5に対するアンカー8が1本で、各補助プレート部6に対するアンカー15がそれぞれ1本である場合を示したが、各部のアンカーの本数は基礎コンクリートのかぶり厚さとの関係で決められればよく、複数本であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】第1実施形態の構造を示す分解斜視図である。
【図2】図(イ)は基礎直結金物の斜視図、図(ロ)は同金物を基礎に取り付けた状態の平面図である。
【図3】同取付け構造の分解正面図である。
【図4】図(イ)は基礎の平面図、図(ロ)は柱、土台の取付け状態を示す正面図である。
【図5】第2実施形態の構造を示すもので、図(イ)は基礎直結金物を斜視図、図(ロ)は同金物を基礎に取り付けた状態の平面図である。
【図6】同取付け構造の分解正面図である。
【図7】図(イ)は基礎の平面図、図(ロ)は柱、土台の取付け状態を示す正面図である。
【図8】従来構造を示すもので、図(イ)は基礎直結金物の斜視図、図(ロ)は基礎の平面図、図(ロ)は柱、土台の取付け状態を示す正面図である。
【図9】図(イ)は基礎直結金物を基礎に取り付けた状態の平面図、図(ハ)は同正面面図である。
【符号の説明】
【0032】
1…基礎
2…基礎直結金物
3…柱
4…土台
5…直結金物本体部
6…補助プレート部
7…脚プレート部
8…アンカー
15…アンカー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
柱が基礎直結金物で基礎に直結された木造建物における基礎直結金物を用いた柱の取付け構造において、
前記基礎直結金物が、
柱下に備えられて柱下で基礎側アンカーに連結されると共に、柱を連結した直結金物本体部と、
柱から側方に離れて備えられ、該側方に離れた位置で基礎側アンカーに連結された補助プレート部と、
直結金物本体部と補助プレート部とを一体化するように連結する垂直な脚プレート部と
を備え、柱に作用する引抜き力が、柱下の基礎アンカーと、直結金物本体部、脚プレート部、補助プレート部を通じて、補助プレート部を連結している基礎アンカーとに伝えられるようになされており、かつ、
該脚プレート部に土台が取り付けられていることを特徴とする、木造建物における基礎直結金物を用いた柱と土台の取付け構造。
【請求項2】
前記土台の端部に垂直なスリットが入れられ、該スリット内に基礎直結金物の垂直な脚プレート部が差し込まれ、側方よりドリフトピンが打ち込まれることで、土台が脚プレート部に取り付けられている請求項1に記載の、木造建物における基礎直結金物を用いた柱と土台の取付け構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−14009(P2008−14009A)
【公開日】平成20年1月24日(2008.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−185947(P2006−185947)
【出願日】平成18年7月5日(2006.7.5)
【出願人】(390037154)大和ハウス工業株式会社 (946)
【Fターム(参考)】