説明

木造建物の断熱構造

【課題】1階の土間コンクリートとその周囲とを確実に断熱できる木造建物の断熱構造を提供する。
【解決手段】1階の土間床30を構成する土間コンクリート31の側部に断熱層33,34が設けられ、この断熱層33,34が前記土間コンクリート31より下方に延出している。土間コンクリート31に隣接して当該土間コンクリート31より高い基礎立上り部2,2が設けられ、この基礎立上り部2,2に前記断熱層33,34が設けられている。したがって、1階の土間コンクリート31とその周囲とを確実に断熱できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、木造建物の断熱構造に関する。
【背景技術】
【0002】
木造建物の断熱構造の一例として特許文献1に記載のものが知られている。この木造建物の断熱構造では、基礎の外側を、板状の断熱材からなる基礎用断熱材で覆うとともに、この基礎用断熱材の下側の一部を、地盤面より下に埋設するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実用新案登録第3100563号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、前記従来の木造建物の断熱構造では、基礎の外側を、板状の断熱材からなる基礎用断熱材で覆うようにしているが、建物の1階に土間床を構成する土間コンクリートを設けた場合に、この土間コンクリートとその周囲との断熱をどのようにして行うかについては何ら開示されていない。
【0005】
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、1階の土間コンクリートとその周囲とを確実に断熱できる木造建物の断熱構造を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、例えば図1および図6に示すように、木造建物の断熱構造であって、
1階の土間床30を構成する土間コンクリート31の側部に断熱層33,34が設けられており、
この断熱層33,34が前記土間コンクリート31より下方に延出していることを特徴とする。
【0007】
請求項1に記載の発明によれば、1階の土間コンクリート31の側部に設けられた断熱層33,34が土間コンクリート31より下方に延出しているので、1階の土間コンクリート31とその周囲とを確実に断熱できる。
【0008】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の木造建物の断熱構造において、
前記土間コンクリート31に隣接して当該土間コンクリート31より高い基礎立上り部2,2が設けられており、
この基礎立上り部2,2に前記断熱層33,34が設けられていることを特徴とする。
【0009】
請求項2に記載の発明によれば、基礎立上り部2,2に断熱層33,34が設けられているので、断熱層33,34を土間コンクリート31の側部に容易に設けることができ、さらに、基礎立上り部2,2の断熱を容易に行える。
【0010】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の木造建物の断熱構造において、
前記基礎立上り部2に1階の床4が設置され、この床4の床下空間4aに面する前記基礎立上り部2の外面に前記断熱層33が設けられ、前記床4の下面に床断熱層7が設けられていることを特徴とする。
【0011】
請求項3に記載の発明によれば、基礎立上り部2の外面に設けられた断熱層33と、床の下面に設けられた床断熱層7とによって、床下空間4aと、土間を含む1階との断熱を確実に行うことができる。
【0012】
請求項4に記載の発明は、請求項2または3に記載の木造建物の断熱構造において、
前記基礎立上り部2に1階の外壁40が設けられ、この外壁40が設けられた基礎立上り部2の内面に前記断熱層34が設けられ、前記外壁40に壁断熱層13が設けられていることを特徴とする。
【0013】
請求項4に記載の発明によれば、基礎立上り部2の内面に設けられた断熱層34と1階の外壁40に設けられた壁断熱層13とによって、外部と土間との断熱を確実に行うことができる。
【0014】
請求項5に記載の発明は、請求項4に記載の木造建物の断熱構造において、
前記1階の外壁40の上端部から2階の床16が突出しており、
この突出している2階の床16aの下面に床断熱層41が設けられていることを特徴とする。
【0015】
請求項5に記載の発明によれば、突出している2階の床16aの下面に設けられた床断熱層41によって、この床上の2階の部屋と外部との断熱を確実に行うことができる。
【0016】
請求項6に記載の発明は、請求項1〜5のいずれか一項に記載の木造建物の断熱構造において、
外気に面する前記木造建物の部分に、それぞれ断熱層が設けられており、これら断熱層による前記木造建物の断熱性を示す熱損失係数(Q値)が2.7W/m2K以下に設定されていることを特徴とする。
ここで、前記断熱層としては、例えば、床断熱層7、壁断熱層13,44、天井断熱層20、勾配天井断熱層24、床断熱層41、基礎断熱層33,34が挙げられる。
【0017】
請求項6に記載の発明によれば、断熱層による木造建物の断熱性を示す熱損失係数(Q値)が2.7W/m2Kに設定されているので、高断熱の木造建物を提供できる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、1階の土間コンクリートの側部に断熱層が設けられており、この断熱層が前記土間コンクリートより下方に延出しているので、1階の土間コンクリートとその周囲とを確実に断熱できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明に係る断熱構造を備えた木造建物の概略を示すもので、その側断面図である。
【図2】同、図1におけるA円部の拡大図である。
【図3】同、図1におけるB円部の拡大図である。
【図4】同、図1におけるC円部の拡大図である。
【図5】同、図1におけるD円部の拡大図である。
【図6】同、図1における土間部分の拡大図である。
【図7】同、図1におけるE円部の拡大図である。
【図8】同、1階内部柱脚部分を示すもので、(a)は斜視図、(b)は正断面図、(c)は平断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照して本発明に係る木造建物の断熱構造の一例について説明する。
図1は、本発明に係る断熱構造を備えた木造建物の概略を示す側断面図である。この木造建物は、在来の軸組工法によって構築されたものである。そして、柱、梁、土台、大引等を構成する軸組部材は、それぞれ集成材によって形成されている。集成材とは、木材又は異種材からなる単材を複数集成してなるものである。
【0021】
図1および図2に示すように、基礎1の基礎立上り部2の上端面には、換気台輪3が設置されており、この換気台輪3に1階の床4の端部が設置されている。1階の床4は、前記換気台輪3に設置された土台5と、この土台5に固定された図示しない大引や根太と、これらの上面に敷設された合板等からなる床板材6とによって構成されている。床4の床板材6の下面には、床断熱層7が設けられている。この床断熱層7は、ポリスチレンフォームで形成された断熱材7によって構成されている。
【0022】
前記土台5上には1階の外壁10が立設されている。この外壁10は、図3に示すように、外壁本体11と、この外壁本体11の表面に取り付けられた外装材12とから構成されている。
外壁本体11には壁断熱層13が設けられている。すなわち、外壁本体11は、土台5に立設された複数の柱および間柱と、これら柱および間柱の外側を向く面に取り付けられた合板11aと、柱および間柱の内側を向く面に取り付けられた石膏ボード11bとを備えており、合板11aと石膏ボード11bとの間に、グラスファイバーで形成された断熱材13が設けられ、この断熱材13が壁断熱層13を構成している。
なお、外壁本体11には継目受材14が設けられており、この継目受材14に上下に隣接する石膏ボード11b,11bの下端部と上端部とが突き合わせられた状態で固定されている。
外装材12は胴縁12aを介して前記合板11aに取り付けられおり、合板11aと外装材12との間には胴縁12aの厚さ分に相当する隙間が設けられている。
【0023】
1階の外壁10の外壁本体11の上端部には胴差15が設置されている。この胴差15は集成材によって形成されたものである。胴差15には図示しない床梁が固定され、さらに、これらの上面に床板材6が敷設されることによって、2階の床16が構成されている。2階の床16の下方には、1階の天井17が設けられており、この天井17の裏面(上面)に、グラスウール等で形成された遮音材17aが設けられている。
【0024】
前記胴差15上には2階の外壁10が立設されている。この外壁10は、図4に示すように、外壁本体11と、この外壁本体11の表面に取り付けられた外装材12とから構成され、1階の外壁10と同様の構成となっている。
2階の外壁10の上端部には2階の天井18が設けられており、この天井の裏面(上面)には、天井断熱層20が設けられている。この天井断熱層20は、グラスウール等で形成された断熱材20によって構成されている。天井18は天井野縁18aとこの天井野縁18aの下面に取り付けられた天井材18bとを備え、天井材18bと天井野縁18aとの間に気密シート18cが設けられている。
なお、外壁本体11には継目受材14が設けられており、この継目受材14に上下に隣接する石膏ボード11b,11bの下端部と上端部とが突き合わせられた状態で固定されている。
【0025】
屋根21は切妻屋根となっており、棟部から一方の軒先部までの長さが、棟部から他方の軒先部までの長さが短くなっている。
図4に示すように、屋根21の一方の軒先部には、軒天井22が設けられており、この軒天井22に設けられた換気孔22aによって小屋裏の換気を行えるようになっている。
図5に示すように、屋根21の他方の軒先部にも、軒天井22が設けられており、この軒天井22に設けられた換気孔22aによって小屋裏の換気を行えるようになっている。
屋根21の他方の軒先部に隣接する屋根21の一部の裏側には、小屋裏がなく、勾配天井23が設けられている。この勾配天井23の裏面には、勾配天井断熱層24が設けられている。この勾配天井断熱層24は、グラスウール等で形成された断熱材24によって構成されている。そして、勾配天井断熱層24は2階の天井18の裏面に設けられた天井断熱層20と連続している。
【0026】
図1および図6に示すように、1階には土間床30を構成する土間コンクリート31が設けられている。この土間コンクリート31は、1階の床4より一段低い位置に設けられており、土間コンクリート31の下方には割栗石32が敷き詰められている。
土間コンクリート31の側方には、基礎1の基礎立上り部2,2が設けられており、基礎立上り部2,2は土間コンクリート31より高くなっている。基礎1は布基礎であり、平面視において建物の外周に沿って延在して形成されている。基礎1の下には割栗石32が敷き詰められており、基礎1の内側の土間コンクリート31を形成すべき部分には、割栗石32が高く敷き詰められ、この割栗石32の上面に前記土間コンクリート31が施工されている。
【0027】
前記土間コンクリート31の側部には、基礎断熱層(断熱層)33,34が土間コンクリート31より下方に延出して設けられている。
すなわち、図6に示す左側の基礎立上り部2に、1階の床4の端部が気密台輪35を介して設置され、この床4の床下空間4aに面する基礎立上り部2の外面に基礎断熱層33が設けられている。この基礎断熱層33はポリスチレンフォームで形成された断熱材33によって構成され、基礎立上り部2の下端から上端までの高さを有している。
また、前記基礎立上り部2に設置された1階の床4の床板材6の下面には、床断熱層7が設けられている。
したがって、床下空間4aに面して、基礎断熱層33、気密台輪35、床断熱層7が連続しており、これによって、建物内と床下空間4aとの断熱が行われている。
【0028】
また、図6に示す右側の基礎立上り部2の内面に前記基礎断熱層34が設けられている。この基礎断熱層34はポリスチレンフォームで形成された断熱材34によって構成され、基礎立上り部2の下端から上端までの高さを有している。また、基礎断熱層34は基礎断熱層33より厚くなっている。
また、右側の基礎立上り部2には、1階の外壁40が立設されている。この外壁40は、外壁本体11と、この外壁本体11の表面に取り付けられた外装材12とから構成され、1階の外壁10と同様の構成となっている。
また、外壁40には壁断熱層13が設けられている。すなわち、外壁本体11を構成する合板11aと石膏ボード11bとの間にはグラスファイバーで形成された断熱材13が設けられ、この断熱材13が壁断熱層13を構成している。
【0029】
図1および図7に示すように、前記1階の外壁40の上端部から前記2階の床16が突出している。この突出している床16aの下面には床断熱層41が設けられている。この床断熱層41はグラスウール等で形成された断熱材41によって構成されている。床16aの下方には外部天井42が2階の天井18と等しい高さに設けられており、この外部天井42に設けられた換気孔42aによって外部天裏の換気を行えるようになっている。
外部天井42の下方は駐車場となっており、前記外壁40に面している。
【0030】
また、突出している床16aの端部には、外壁43が立設されている。この外壁43は、外壁本体11と、この外壁本体11の表面に取り付けられた外装材12とから構成され、1階の外壁40と同様の構成となっている。
また、外壁43には壁断熱層44が設けられている。すなわち、外壁本体11を構成する合板11aと石膏ボード11bとの間にはグラスファイバーで形成された断熱材44が設けられ、この断熱材44が壁断熱層44を構成している。
外壁43の上端部には、図1および図5に示すように、前記屋根21の他方の軒先部が設定されている。
【0031】
また、図8に示すように、1階の内部柱45と1階の床4の合板等で形成された床板材6との接する部分は、土台5と大引46との交点部分に隙間が生じるため、この隙間に発泡ウレタン等からなる気密材47を充填することによって、気密性を確保する。
【0032】
上記のような木造建物は、外気に面する部分に、それぞれ上記のような断熱層(床断熱層7、壁断熱層13,44、天井断熱層20、勾配天井断熱層24、床断熱層41、基礎断熱層33,34)が設けられ、これら断熱層によって囲まれており、木造建物の断熱性を示す熱損失係数(Q値=建物から逃げる熱量(W/K)/建物の延べ床面積(m2))が2.7W/m2K以下に設定されている。したがって、外部(外気)と建物内とを確実に断熱することができ、高断熱の建物となる。
【0033】
熱損失係数(Q値)は、住まいの断熱性能を示す値で、取り込んだエネルギーをいかに失わないかを表した数値であり、具体的には室内外の温度差が1℃のとき、家(木造建物)全体から1時間に床面積1m2あたりに逃げ出す熱量のことを示し、Q値が小さければ小さいほど、住宅の断熱性が高くなる。なお、図1において、ハッチングで示す部分が各断熱層を模式的に示している。
また、屋根21に断熱層を設けずに、2階の天井18に天井断熱層20を設けたので、小屋裏を外気によって容易に換気できるとともに、屋根21に断熱層を設ける場合に比べて、断熱層の長さを短くでき、コスト低減を図ることができる。
【0034】
また、1階の土間コンクリート31の側部に設けられた基礎断熱層33,34が土間コンクリート31より下方に延出しているので、1階の土間コンクリート31とその周囲とを確実に断熱できる。
さらに、土間コンクリートに隣接している基礎立上り部2に基礎断熱層33,34が設けられているので、基礎断熱層33,34を土間コンクリート31の側部に容易に設けることができ、さらに、基礎立上り部2の断熱を容易に行える。
【0035】
加えて、基礎立上り部2に1階の床4が設置され、この床4の床下空間4aに面する基礎立上り部2の外面に基礎断熱層33が設けられ、床4の下面に床断熱層7が設けられているので、これら基礎断熱層33と床断熱層7とによって、床下空間4aと、土間を含む1階との断熱を確実に行うことができる。
また、基礎立上り部2に1階の外壁40が設けられ、この外壁40が設けられた基礎立上り部2の内面に基礎断熱層34が設けられ、外壁40に壁断熱層13が設けられているので、これら基礎断熱層34と壁断熱層13とによって、外部と土間との断熱を確実に行うことができる。
また、1階の外壁40の上端部から2階の床16が突出しており、この突出している2階の床16aの下面に床断熱層41が設けられているので、床断熱層41によって、床16a上の2階の部屋と外部との断熱を確実に行うことができる。
【符号の説明】
【0036】
2 基礎立上り部
4 1階の床
4a 床下空間
7 床断熱層
13 壁断熱層
16 2階の床
30 土間床
31 土間コンクリート
33,34 基礎断熱層(断熱層)
40 1階の外壁
41 床断熱層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
木造建物の断熱構造であって、
1階の土間床を構成する土間コンクリートの側部に断熱層が設けられており、
この断熱層が前記土間コンクリートより下方に延出していることを特徴とする木造建物の断熱構造。
【請求項2】
請求項1に記載の木造建物の断熱構造において、
前記土間コンクリートに隣接して当該土間コンクリートより高い基礎立上り部が設けられており、
この基礎立上り部に前記断熱層が設けられていることを特徴とする木造建物の断熱構造。
【請求項3】
請求項2に記載の木造建物の断熱構造において、
前記基礎立上り部に1階の床が設置され、この床の床下空間に面する前記基礎立上り部の外面に前記断熱層が設けられ、前記床の下面に床断熱層が設けられていることを特徴とする木造建物の断熱構造。
【請求項4】
請求項2または3に記載の木造建物の断熱構造において、
前記基礎立上り部に1階の外壁が設けられ、この外壁が設けられた基礎立上り部の内面に前記断熱層が設けられ、前記外壁に壁断熱層が設けられていることを特徴とする木造建物の断熱構造。
【請求項5】
請求項4に記載の木造建物の断熱構造において、
前記1階の外壁の上端部から2階の床が突出しており、
この突出している2階の床の下面に床断熱層が設けられていることを特徴とする木造建物の断熱構造。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一項に記載の木造建物の断熱構造において、
外気に面する前記木造建物の部分に、それぞれ断熱層が設けられており、これら断熱層による前記木造建物の断熱性を示す熱損失係数(Q値)が2.7W/m2K以下に設定されていることを特徴とする木造建物の断熱構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−246720(P2012−246720A)
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−121411(P2011−121411)
【出願日】平成23年5月31日(2011.5.31)
【出願人】(307042385)ミサワホーム株式会社 (569)
【Fターム(参考)】