説明

未固化試料の採取装置

【課題】未固化試料層における深度方向の複数の採取位置から同時に未固化試料を採取できる未固化試料の採取装置を提供する。
【解決手段】平行な第1の円柱1と第2の円柱2の間に、第1の連結棒3と第2の連結棒4、5、6が第1,2の円柱に対して直交して配設され、第1の連結棒の両端側は、それぞれ固定解除部材7によって第1,2の円柱に固定可能と解除可能に取り付けら、第2の連結棒の一端側は第1の円柱に固定され、第2の連結棒の他端側はスリーブ8を介して第2の円柱に相対的にスライド可能に取り付けられ、第1の円柱に底付き筒10が固定され、第2の円柱に底付き筒の上部を被覆する上蓋12が固定される、未固化試料の採取装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流動化処理土等の未固化試料を採取する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の未固化試料の採取手段について図3を参照して説明する。
【0003】
図3は、改良土層21にサンプラー22をハンマー等によって打ち込む前の状態(左側)と、サンプラー22を引き上げる前の状態(右側)を示す断面図である。改良土層21の深度は、改良天端(表面)21aから改良底面21bまでの範囲である。
【0004】
サンプラー22は、底を有しない円筒又は角筒等の金属製の筒から構成される。サンプラー22の下端は、テーパ状に内側に先鋭化するように加工されている。
【0005】
サンプラー22を左側の位置からハンマー等によって矢印方向に右側の所要の深度位置まで打ち込む。
【0006】
すると、サンプラー22の内部に、改良土がその粘性、粗さ及び硬さ等の因子に応じて押し込まれる。
【0007】
続いて、サンプラー22を矢印方向に改良天端21aまで引き上げると、改良土の粘性、粗さ、硬さ及び比重等の因子に応じて、サンプラー22の内部に押し込まれている改良土の一部が残留し、残部がサンプラー22から落下する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
前記従来の未固化試料の採取手段では、改良土の諸因子に応じて、サンプラーの内部に改良土の一部しか残留しないので、採取が不十分である。
【0009】
また、改良土層の深度方向の複数の採取位置から同時に改良土を採取することができないので、採取が不便である。
【0010】
そこで、本発明は、前記従来の未固化試料の採取手段の欠点を改善し、収容容器の内部に未固化試料が一杯に残留し、しかも、未固化試料層における深度方向の複数の採取位置から同時に未固化試料を採取することができる未固化試料の採取装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、前記課題を解決するため、次の手段を採用する。
【0012】
1.平行な第1の柱1と第2の柱2の間に、第1の連結棒3と第2の連結棒4,5,6が前記第1の柱と前記第2の柱に対して直交して配設され、前記第1の連結棒の両端側は、それぞれ固定解除部材7によって前記第1の柱と前記第2の柱に固定可能と解除可能に取り付けられ、前記第2の連結棒の一端側は前記第1の柱に固定され、前記第2の連結棒の他端側はスリーブ8を介して前記第2の柱に相対的にスライド可能に取り付けられ、前記第1の柱に底付き筒10が固定され、前記第2の柱に前記底付き筒の上部を被覆する上蓋12が固定される未固化試料の採取装置。
【0013】
2.複数の前記底付き筒が前記第1の柱に所望の間隔で固定され、複数の前記上蓋が前記第2の柱に所望の間隔で固定される前記1記載の未固化試料の採取装置。
【発明の効果】
【0014】
明細書の説明から明らかなように、本発明は、次の効果を奏する。
【0015】
1.未固化試料が底付き筒の内部に一杯に収容されるので、採取を十分に行うことができる。
【0016】
2.未固化試料層における深度方向の複数の採取位置から未固化試料を同時に採取することができるので、採取が便利で迅速である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明の一実施例の未固化試料の採取装置について説明する。
【実施例1】
【0018】
本発明の実施例1について図1と図2を参照して説明する。
【0019】
平行な第1の円柱1と第2の円柱2の間に、4本の連結棒3〜6が直交して配設される。各連結棒3〜6の左右両端側は、それぞれ固定解除部材7と一体化される。各固定解除部材7は、第1の円柱1及び第2の円柱2に対して、ねじ又はクランプ等の手段により固定可能であり、また、解除も可能であるように取り付けられている。
【0020】
ただし、連結棒4〜6の右側の各固定解除部材7の内側には、スリーブ8が固定され、各スリーブ8は第2の円柱2にはまり、第2の円柱2と各スリーブ8は相対的にスライドすることができる。
【0021】
第1の円柱1における所望の上部・中部・下部の3つの採取位置に、それぞれ固定解除部材9が取り付けられる。各固定解除部材9には、未固化試料を収容するための容器として底付き筒10が固定される。採取位置は、改良深度に応じて任意に設定される。
【0022】
第1の円柱1に取り付けられる各固定解除部材9に対応して、第2の円柱2に3つの固定解除部材11が取り付けられる。各固定解除部材11には、上蓋12が固定される。各上蓋12は、各底付き筒10の上部を被覆することができる。
【0023】
未固化試料の採取装置の使用方法について説明する。
【0024】
未固化試料は、改良土層21における改良土である。改良天端(表面)21aから改良底面21bまでに至る改良深度L1は、2000mmである。底付き筒10のサイズは、幅100×奥行き100×高さ150mmである。第1,2の円柱1,2の長さL2は、3000mmである。
【0025】
図1(A)は、採取装置が改良土層21内に圧入されて、第1,2の円柱1,2の下端が改良底面21bに到達した状態を示す。最上の連結棒3の中央には、ワイヤ13の下端がかかり、更に、ワイヤ13の上端はフック14に吊り下げられている。フック14は、作業者の手指又はウインチ等によって上昇することができる。
【0026】
図1(A)の状態においては、各底付き筒10の上部は、各上蓋12によって被覆されている。したがって、改良土は、各底付き筒10内に進入することができない。
【0027】
まず、図1(A)の状態において、最上の連結棒3の左側の固定解除部材7を緩めて第1の円柱1から解除する。
【0028】
次に、図1(B)に示されるように、ワイヤ13とフック14を連結棒3の中央から若干右側に移動させた後に矢印上方に約150mm引き上げる。すると、第2の円柱2は矢印上方にスライドするから、各上蓋12は上方に移動する。したがって、各上蓋12が各底付き筒10の上部から離間するので、改良土が破曲線の矢印方向に各底付き筒10内に進入する。なお、この際、第2の円柱2は、各スリーブ8に対してスライドする。
【0029】
続いて、図1(B)の状態において、最上の連結棒3の左側の固定解除部材7を締めて第1の円柱1に固定し、最上の連結棒3の右側の固定解除部材7を緩めて第2の円柱2から解除する。
【0030】
更に、図1(C)に示されるように、ワイヤ13とフック14を連結棒3の右側から左側に移動させた後に、第1の円柱1の上端が第2の円柱2の上端と同じ高さの位置に来るまで矢印上方に引き上げる。すると、第1の円柱1は矢印上方にスライドし、このとき、各スリーブ8は第2の円柱2に対してスライドする。
【0031】
最後に、最上の連結棒3の右側の固定解除部材7を締めて第2の円柱2に固定した後に、採取装置を改良土層21から引き上げる。
【0032】
各底付き筒10内に収容されている改良土を検査すると、改良土層21内の各深度における改良土の混合撹拌の程度が判明する。
【0033】
実施例1を下記のように改造することができる。
【0034】
連結棒4〜6の左右両側の各固定解除部材7を固定専用部材に替えることができる。また、連結棒4〜6の右側の各固定解除部材7を除去して、連結棒4〜6の右端部を直接各スリーブ8に固定するように設計変更することができる。更に、各スリーブ8を第2の円柱2に固定し、連結棒4〜6の右端部が各スリーブ8にはまるように設計変更することができる。
【0035】
各固定解除部材9,11を固定専用部材に替えることができる。
【0036】
第1,2の円柱1,2を角柱に替えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明の実施例1の未固化試料の採取装置の諸正面図であり、(A)は同採取装置が改良土層に圧入された状態、(B)は同採取装置における第2の円柱が上方にスライドされた状態、(C)は同採取装置における第1の円柱が第2の円柱と同じ高さの位置までスライドされた状態を、それぞれ示す。
【図2】同採取装置におけるスライド部を中心とする正面図であり、円内は第2の円柱と固定解除部材とスリーブの拡大斜視図である。
【図3】従来の未固化試料の採取手段の断面図である。
【符号の説明】
【0038】
1 第1の円柱
2 第2の円柱
3〜6 連結棒
7 固定解除部材
8 スリーブ
9 固定解除部材
10 底付き筒
11 固定解除部材
12 上蓋
13 ワイヤ
14 フック
21 改良土層
21a 改良天端(表面)
21b 改良底面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
平行な第1の柱と第2の柱の間に、第1の連結棒と第2の連結棒が前記第1の柱と前記第2の柱に対して直交して配設され、
前記第1の連結棒の両端側は、それぞれ固定解除部材によって前記第1の柱と前記第2の柱に固定可能と解除可能に取り付けられ、
前記第2の連結棒の一端側は前記第1の柱に固定され、前記第2の連結棒の他端側はスリーブを介して前記第2の柱に相対的にスライド可能に取り付けられ、
前記第1の柱に底付き筒が固定され、前記第2の柱に前記底付き筒の上部を被覆する上蓋が固定されることを特徴とする未固化試料の採取装置。
【請求項2】
複数の前記底付き筒が前記第1の柱に所望の間隔で固定され、複数の前記上蓋が前記第2の柱に所望の間隔で固定されることを特徴とする請求項1記載の未固化試料の採取装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−101415(P2008−101415A)
【公開日】平成20年5月1日(2008.5.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−285773(P2006−285773)
【出願日】平成18年10月20日(2006.10.20)
【出願人】(506354010)株式会社ELF (5)
【Fターム(参考)】