末梢オピオイド受容体アンタゴニストおよびその使用
本発明は、式I:
[式中、X−、R1、およびR2は、明細書の記載と同意義である]
で示される化合物およびその組成物を提供する。
[式中、X−、R1、およびR2は、明細書の記載と同意義である]
で示される化合物およびその組成物を提供する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2008年9月30日に出願された米国仮特許出願番号第61/101,201号および2009年7月17日に出願された第61/226,581号(その全体として出典明示により、本明細書の一部とされる)に対する優先権を主張する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
オピオイドは、苦痛を軽減するために、進行性の癌および他の末期疾患の患者に幅広く使用される。オピオイドは、中枢神経系に位置するオピオイド受容体を活性化して疼痛を緩和する麻酔性医薬である。しかしながら、オピオイドは、中枢神経系の外にある受容体とも反応して、便秘、悪心、嘔吐、尿閉、および重篤な掻痒を包含する副作用をもたらす。最も顕著なものは、胃腸管(GI)における影響であり、ここに、オピオイドは、胃内容排出および腸の推進性の運動活性を阻害し、それにより、腸管輸送速度を減少させ、便秘をもたらす。疼痛に対するオピオイドの有効性は、しばしば、結果として生じる副作用のために制限され、該副作用は患者を衰弱させることがあり、しばしば、患者にオピオイド麻酔薬の使用を止めさせることとなる。
【0003】
麻酔性オピオイドにより誘発される副作用の他に、内在性オピオイド化合物および受容体もまた、胃腸(GI)管の活性に影響を及ぼすことがあり、動物および人間の両方における、腸運動および流体の粘膜輸送の正常な調節に関与しうることが研究により示唆されている(Koch,T.Rら、Digestive Diseases and Sciences 1991,36,712−728;Schuller,A.G.P.ら、Society of Neuroscience Abstracts 1998,24,524,Reisine,T.,およびPasternak,G.,Goodman & Gilman’s The Pharmacological Basis of Therapeutics Ninth Edition 1996,521−555およびBagnol,D.ら、Regul.Pept.1993,47,259−273)。かくして、内在性化合物および/または受容体活性の異常な生理学的レベルは、腸機能不全をもたらす。
【0004】
例えば、外科手術、特に、腹部の外科手術を受けた患者は、しばしば、天然オピオイドレベルの変動によって引き起こされうる術後(外科手術後)イレウスと呼ばれる特定の腸機能不全に罹患する。同様に、最近出産した女性は、一般に、出産ストレスの結果として生じる同様な天然オピオイドレベルの変動によって引き起こされると考えられる産後イレウスに罹患する。術後または産後イレウスに関連する胃腸管機能不全は、典型的に、3〜5日間続き、いくつかの重篤なケースでは、1週間以上続くこともある。術後の患者へのオピオイド麻酔薬の投与は、現在、最もよく行われている慣行であるが、腸機能不全を悪化させることがあり、それにより、正常な腸機能の回復を遅らせ、入院を長引かせ、医療費を増加させる。
【0005】
メチルナルトレキソン(「MNTX」)は、オピオイドアンタゴニスト、ナルトレキソンの誘導体であり、それゆえに、該アミンは四級化されている。MNTXは、通常、塩、例えば臭化水素酸塩として提供される。MNTXの臭化水素酸塩はまた、文献において:メチルナルトレキソンブロマイド;N−メチルナルトレキソンブロマイド;ナルトレキソンメトブロマイド;ナルトレキソンメチルブロマイド;およびMRZ2663BRとして公知である。MNTXは、最初に、Goldbergらにより、米国特許第4,176,186号に記載のように報告された。メチル基のナルトレキソンの環窒素への付加は、ナルトレキソンよりも、大きな極性を有し、脂溶性が低い荷電した化合物が形成され、MNTXがヒトの血液能関門の通過を通過することを防止すると考えられる。結果として、MNTXは、中枢神経系よりもむしろ末梢系においてその効果を発揮し、中枢神経系でのオピオイドの鎮痛効果を妨げないという利点を有する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
一般的に、医薬組成物は、薬剤の品質および純度の承認基準を満たすために、高レベルの純度が要求される。例えば、MNTXの合成および/または貯蔵の間、MNTXの治療効果を妨害する、および/または十分高い量で存在した場合毒性である不純物が形成し得る。かくして、MNTXの純度を測定することができる能力を有することが望まれている。これを受けて、MNTXの純度を確認する基準として、クロマトグラフィー法を用いることができる不純物および分解物を、同定、単離および化学的特徴付けることが重要である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
ある具体例において、本発明は、MNTXの不純物の同定、精製および合成に関する。この化合物は、MNTXの製造における不純物として、またはMNTXのある種の溶液がある条件下で貯蔵された場合の分解物として生じることが見出されている。したがって、ある具体例において、本発明は、式I:
【化1】
[式中、X−、R1、およびR2は、本明細書の記載と同意義である]
で示される化合物を提供する。いくつかの具体例において、末梢μオピオイド受容体アンタゴニストである化合物を提供する。所定の化合物の他の使用は、以下に記載する。
【0008】
本発明はまた、メチルナルトレキソンを含むプレフィルドシリンジ含有液体組成物を提供する。いくつかの具体例において、プレフィルドシリンジは、実質的にタングステンまたはその誘導体を含まない。かかるプレフィルドシリンジおよびその使用は、本明細書に詳細に記載される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】図1は、40℃および75%相対湿度で、6ヶ月後のメチルナルトレキソンプレフィルドシリンジの安定性試験のLC/MS結果を示す。
【図2】図2は、トータルイオンクロマトグラム(TIC)、UVクロマトグラム(λ=280nm)、RRT0.60ピークで得られたマスおよびUVスペクトルを示す。
【図3】図3は、化合物II−1を形成する化合物III−1とH2O2の反応に対するpHの影響を示す。
【図4】図4は、安定性試料のUVクロマトグラムおよび実施例2に従って調製された化合物II−1を混ぜた安定性試料のクロマトグラムを示す。
【図5】図5は、NMRデータに基づく化学構造を有する化合物II−1のフラグメントアサインメントを示す。
【図6】図6は、化合物II−1のCOSYスペクトルを示す。
【図7】図7は、化合物II−1のHSQCスペクトルを示す。
【図8】図8は、化合物II−1の1HNMRスペクトルを示す。
【図9】図9は、化合物II−1のHMBCスペクトルを示す。
【図10】図10は、化合物II−1のROESYスペクトルを示す。
【図11】図11は、化合物II−1の13CNMRスペクトルを示す。
【図12】図12は、結晶性化合物II−1のX線回折パターンを示す。
【図13】図13は、化合物II−1結晶のM+Hイオンの質量スペクトグラムおよび質量測定を示す。
【図14】図14は、化合物II−1の1HNMRスペクトルを示す。
【図15】図15は、結晶性化合物II−1のX線回折パターンを示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
1. 化合物および定義:
ある具体例において、本発明は、式I:
【化2】
[式中:
R1およびR2は、各々独立して、C1−6脂肪族であり;
X−は適当なアニオンである]
で示される化合物を提供する。
【0011】
「脂肪族」または「脂肪族基」なる語は、本明細書中で使用される場合、完全に飽和しているか、または1以上の不飽和単位を含有する直鎖(すなわち、分枝していない)または分枝炭化水素鎖、あるいは完全に飽和しているか、または1以上の不飽和単位を含有するが、芳香族ではない単環式炭化水素(本明細書中、「炭素環」、「環状脂肪族」または「シクロアルキル」ともいう)であって、分子の残部に対する単一の結合点を有するものを意味する。ある特定の具体例において、脂肪族基は、1−4個の脂肪族炭素原子を含有し、また他の具体例において、脂肪族基は、1−3個の脂肪族炭素原子を含有する。いくつかの具体例において、「環状脂肪族」(または「炭素環」)は、完全に飽和しているか、または1以上の不飽和単位を含有するが、芳香族ではない単環式C3−C6炭化水素であって、分子の残部に対する単一の結合点を有するものをいう。かかる環状脂肪族基は、シクロアルキル、シクロアルケニル、およびシクロアルキニル基を包含する。適当な脂肪族基は、限定するものではないが、直鎖状または分枝鎖アルキル、アルケニル、アルキニル基およびそのハイブリッド、例えば、(シクロアルキル)アルキル、(シクロアルケニル)アルキルまたは(シクロアルキル)アルケニルを包含する。例示的な脂肪族基は、アリル、ビニル、シクロプロピルメチル、メチル、エチル、イソプロピルなどを包含する。
【0012】
「不飽和」なる語は、本明細書中で使用される場合、ある基が1以上の不飽和単位を有することを意味する。
【0013】
「低級アルキル」なる語は、本明細書中で使用される場合、4個までの炭素原子、好ましくは、1〜3個の炭素原子、より好ましくは1〜2個の炭素原子を有する炭化水素鎖をいう。「アルキル」なる語は、限定するものではないが、直鎖および分子鎖、例えば、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチルまたはt−ブチルを包含する。
【0014】
本明細書中で使用される場合、化合物または医薬上許容される組成物の「有効量」は、所望の治療および/または予防効果を達成することができる。いくつかの具体例において、「有効量」は、末梢性μオピオイド受容体の変調に関連する障害または病態の1以上の症状、例えば、オピオイド鎮痛療法に関連する副作用(例えば、胃腸機能不全(例えば、運動不全便秘など)、悪心、嘔吐(例えば、吐き気)など)を治療するのに十分な化合物または化合物を含有する組成物の少なくとも最少量である。ある特定の具体例において、化合物、または化合物を含有する組成物の「有効量」は、異常内在性末梢オピオイドまたはμオピオイド受容体活性に関連する1以上の症状、疾患(例えば、特発性便秘、イレウスなど)を治療するのに十分である。
【0015】
「プレフィルドシリンジ」なる語は、薬剤生成物、例えばメチルナルトレキソンの溶液を含有するシリンジを意味し、対象による使用、例えば自己投与用に、または他人、例えば医療専門家による投与用にプレパックされている。ある具体例において、プレフィルドシリンジは、滅菌パッケージで提供される。いくつかの具体例において、かかるパッケージは、複数のプレフィルドシリンジを含有する。
【0016】
「対象」なる語は、本明細書中で使用される場合、哺乳動物を意味し、ヒトおよび動物対象、例えば、家畜(例えば、ウマ、イヌ、ネコなど)を包含する。
【0017】
「罹患」なる語は、本明細書中で使用される場合、患者が診断されている、または疑いのある1以上の病態をいう。
【0018】
「治療」なる語は、本明細書中で使用される場合、障害または病態、あるいは障害または病態の1以上の症状の部分的または完全な緩和、阻害、発症の遅延、予防、改善および/または軽減をいう。
【0019】
「治療上活性剤」または「活性剤」なる語は、予防および治療を包含する療法(例えば、ヒト療法、獣医学的療法)に有用な物質をいい、生物学的活性物質を包含する。治療上活性剤は、薬物化合物、ペプチド、タンパク質、炭水化物、単糖類、オリゴ糖、多糖類、核タンパク質、ムコタンパク質、リポタンパク質、合成ポリペプチドまたはタンパク質、タンパク質に結合した小型分子、糖タンパク質、ステロイド、核酸、DNA、RNA、ヌクレオチド、ヌクレオシド、オリゴヌクレオチド、アンチセンスオリゴヌクレオチド、脂質、ホルモン、およびビタミンである有機分子を包含する。治療上活性剤は、疾患、病態、または障害の治療、予防、遅延、軽減または改善のための医薬として使用されるいずれの物質をも包含する。なかでも、本発明の処方において有用な治療上活性剤は、オピオイド受容体アンタゴニスト化合物、オピオイド鎮痛性化合物などである。治療上活性剤として有用な化合物のさらに詳細な記載は下記する。治療上活性剤は、例えば、第2の化合物の効力を増幅または負の影響を減少することによって、第2の化合物の影響または有効性を増加させる化合物を包含する。
【0020】
「タングステンまたはその誘導体」なる用語は、タングステン、その塩、その酸化形態またはタングステン−含有合金を意味する。「タングステン」なる語は、「タングステン、またはその誘導体」なるフレーズと同じ意味で用いられる。
【0021】
「単位投与形態」なる表現は、本明細書中で使用される場合、治療すべき対象への投与に適当な本発明の処方の物理的に別個の単位をいう。しかしながら、本発明の組成物の全一日量が、健全な医学的判断の範囲内で担当の医師によって決定されることは、理解されるであろう。いずれかの特定の対象または生物に対する特定の有効投与レベルは、治療されている障害および障害の重篤度、使用される特定の活性剤の活性、使用される特定の組成物、対象の年齢、体重、総体的な健康状態、性別および食事、使用される特定の活性剤の投与時期および排出速度、治療期間、使用される特定の化合物と組み合わせて、または同時に使用される薬物および/または付加的な治療剤、および医学分野でよく知られた同様の因子を包含する種々の因子に依存するであろう。
【0022】
2. 例示的化合物の記載:
一般的に上記したように、本発明は、式I:
【化3】
[式中:
R1およびR2は、各々独立して、C1−6脂肪族であり;
X−は適当なアニオンである]
で示される化合物を提供する。
【0023】
当業者は、式Iに描かれた窒素原子がキラル中心であり、したがって、(R)または(S)配置のいずれかで存在できることを理解するであろう。一の態様によれば、本発明は、化合物が窒素に関して(R)配置である式Iの化合物を提供する。本発明のある特定の具体例において、式Iの化合物の少なくとも約99.6%、99.7%、99.8%、99.85%、99.9%、または99.95%が窒素に関して(R)配置である。
【0024】
一般的に上記で定義したように、式IのX−基は、適当なアニオンである。ある特定の具体例において、X−は適当なブレンステッド酸のアニオンである。例示的なブレンステッド酸は、ハロゲン化水素、カルボン酸、スルホン酸、硫酸、およびリン酸を包含する。ある特定の具体例において、X−は、塩化物、臭化物、ヨウ化物、フッ化物、硫酸塩、重硫酸塩、酒石酸塩、硝酸塩、クエン酸塩、重酒石酸塩、炭酸塩、リン酸塩、リンゴ酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、スルホン酸塩、メチルスルホン酸塩、ギ酸塩、カルボン酸塩、硫酸塩、メチル硫酸塩またはクエン酸塩である。ある具体例において、X−はトリフルオロアセテートである。一の態様によれば、X−は臭化物である。
【0025】
式Iの化合物が四級化窒素基およびフェノール性ヒドロキシル基の両方を含有することは、容易に理解される。当業者は、式Iの化合物のフェノール性ヒドロキシル基が式Iの化合物の四級化窒素と塩を形成できることを理解するであろう。かかる塩は、分子間相互作用を介して式Iの化合物の2つの分子間に形成することができ、または分子内相互作用を介して同じ化合物の基間に形成することができる。本発明は、かかる塩形態の両方を意図する。かくして、ある具体例において、本発明は、式I−a:
【化4】
[式中、R1およびR2は、各々独立して、C1−6脂肪族である]
で示される化合物を提供する。
【0026】
いくつかの具体例において、本発明は、式I−b:
【化5】
[式中、R1およびR2は、各々独立して、C1−6脂肪族であり;
X−は適当なアニオンである]
で示される化合物を提供する。
【0027】
ある具体例において、本発明は、R1がC1−4脂肪族であり、R2が低級アルキルである式Iで示される化合物を提供する。別の具体例において、R1基は、(シクロアルキル)アルキル基またはアルケニル基である。ある具体例によれば、R1はシクロプロピルメチルまたはアリルである。別の具体例において、R1はシクロプロピルメチルまたはアリルであり、R2はメチルである。いくつかの具体例において、R1はメチルであり、R2はシクロプロピルメチルまたはアリルである。
【0028】
一の具体例によれば、本発明は、式IIまたはII’:
【化6】
[式中、X−は、上記と同意義の適当なアニオンである]
で示される化合物を提供する。
【0029】
ある具体例において、本発明は、化合物II−a:
【化7】
で示される化合物を提供する。
【0030】
式IIの例示的化合物は、化合物II−1、II−2、およびII−3:
【化8】
を含む。
【0031】
他の態様によれば、本発明は:
(a)式IIIまたはIII’:
【化9】
[式中、A−は適当なアニオンである]
で示される化合物;
(b)式I:
【化10】
[式中:
R1およびR2は、各々独立して、C1−6脂肪族であり;
X−は適当なアニオンである]
で示される少なくとも一の化合物;および
(c)任意に、式IV:
【化11】
[式中:
R1およびR2は、各々独立して、C1−6脂肪族であり;
X−は適当なアニオンである]
で示される化合物を含む組成物を提供する。
【0032】
いくつかの具体例において、組成物は、経口投与用に処方される。ある具体例において、式IIIで示される化合物式Iで示される化合物、および、任意に式IVで示される化合物を含む組成物は、固体組成物であり:
(a)少なくとも約99.6%、99.7%、99.8%、99.85%、99.9%、または99.95%の式IIIで示される化合物は、窒素に関して(R)配置であり;
(b)式Iで示される化合物は、60、10、5、3.3、2.5、1ppm未満の量で存在する。
【0033】
別の具体例において、本発明は、式IIIで示される化合物、式Iで示される化合物、および式IVで示される化合物を含む組成物を提供し、ここに、式IおよびIVで示される化合物は、合計約60、約10、約5、約3.3、約2.5、または約1ppm未満の量で存在する。いくつかの具体例において、提供される固体処方は、固体処方の総重量に基づいて、約7%〜約75%または約25%〜約65%または約25%〜約55%または約40%〜約50%または約20%〜約40%の式IIIで示される化合物を含む。ある具体例において、提供される固体処方は、固体処方の総重量に基づいて、約7%、約8%、約10%、約20%、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%、または約75%の式IIIで示される化合物を含む。
【0034】
いくつかの具体例において、経口固体処方は、50mg、75mg、100mg、125mg、150mg、175mg、200mg、225mg、250mg、275mg、300mg、325mg、350mg、375mg、400mg、425mg、450mg、475mg、または500mg、525mg、550mg、575mg、600mg、625mg、650mg、675mg、700mg、725mg、750mg、775mg、800mg、825mg、850mg、875mg、900mg、925mg、950mg、975mg、1000mg、1025mg、1050mg、1075mg、1100mg、1125mg、1150mg、1175mg、1200mg、1225mg、1250mg、1275mg、1300mg、1325mg、1350mg、1375mg、1400mg、1425mg、1450mg、1475mg、1500mgの式IIIで示される化合物を含む。いくつかの具体例において、経口固体処方は、50mg〜900mg、または特に150mg〜450mgの式IIIで示される化合物を含む。いくつかの具体例において、経口固体処方は、75mg、150mg、225mg、300mg、450mg、600mg、または900mgの式IIIで示される化合物を含有する。ある具体例において、いずれの経口固体処方において、式IおよびIVで示される化合物は、合計約60、約10、約5、約3.3、約2.5、または約1ppm未満の量である。
【0035】
いくつかの具体例において、本発明は式IIIで示される化合物、式IIで示される化合物、および任意に式IVで示される化合物を含み、投与あたり1.5マイクログラム以下の式IIで示される化合物を与える、経口投与用固体処方を提供する。ある具体例において、本発明は、式IIIで示される化合物、式IIで示される化合物、および式IVで示される化合物を含み、投与あたり1.5マイクログラム以下の式IIで示される化合物および式IVで示される化合物を与える、経口投与固体処方を提供する。
【0036】
ある具体例において、かかる組成物は、液体処方に処方される。かかる液体処方は、2008年2月14日に公開されたWO2008/019115(出典明示により本明細書に組み入れる)に詳細に記載されている。いくつかの具体例において、本発明は、式IIIで示される化合物および式Iで示される化合物を含む組成物であって、組成物中の式Iで示される化合物の量が、約25、約100、約125、約150、約185、約187、または約190ppm未満である組成物を提供する。いくつかの具体例において、本発明は、式IIIで示される化合物、式Iで示される化合物、および式IVで示される化合物を含む組成物であって、式IおよびIVで示される化合物が、合計約25、約100、約125、約150、約185、約187、または約190ppm未満の量で存在する、組成物を提供する。
【0037】
一般的に上記で定義したように、式IのX−基は、適当なアニオンである。ある特定の具体例において、X−は適当なブレンステッド酸のアニオンである。例示的なブレンステッド酸は、ハロゲン化水素、カルボン酸、スルホン酸、硫酸、およびリン酸を包含する。ある特定の具体例において、X−は、塩化物、臭化物、ヨウ化物、フッ化物、硫酸塩、重硫酸塩、酒石酸塩、硝酸塩、クエン酸塩、重酒石酸塩、炭酸塩、リン酸塩、リンゴ酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、スルホン酸塩、メチルスルホン酸塩、ギ酸塩、カルボン酸塩、硫酸塩、メチル硫酸塩またはクエン酸塩である。ある具体例において、X−はトリフルオロアセテートである。一の態様によれば、X−は臭化物である。
【0038】
式Iの化合物が四級化窒素基およびフェノール性ヒドロキシル基の両方を含有することは、容易に理解される。当業者は、式Iの化合物のフェノール性ヒドロキシル基が式Iの化合物の四級化窒素と塩を形成できることを理解するであろう。かかる塩は、分子間相互作用を介して式Iの化合物の2つの分子間に形成することができ、または分子内相互作用を介して同じ化合物の基間に形成することができる。本発明は、かかる塩形態の両方を意図する。
【0039】
国際特許出願公開第WO2006/127899号は、化合物III−1、(R)−N−メチルナルトレキソン臭化物を記載し、下記の構造式:
【化12】
を有する。ここに、該化合物は、窒素に関して(R)配置にある。本発明のある特定の具体例において、化合物III−1の少なくとも約99.6%、99.7%、99.8%、99.85%、99.9%、または99.95%が窒素に関して(R)配置である。試料中に存在する(S)−N−メチルナルトレキソン臭化物の量と比較した場合の同試料中に存在する(R)−N−メチルナルトレキソン臭化物の量を決定する方法は、WO2006/127899(出典明示により、全体として本明細書の一部とされる)に記載されている。他の具体例において、化合物III−1は、0.15%以下の(S)−N−メチルナルトレキソン臭化物を含有する。
【0040】
ある特定の具体例において、本発明は、単離形態の本発明の化合物を提供する。本明細書中で使用される場合、「単離」なる語は、化合物の通常の環境(例えば、反応混合物、クロマトグラフィー溶出、医薬組成物等)において存在しうる他の成分から分離した形態で化合物が提供されることを意味する。ある特定の具体例において、単離化合物は固体形態である。いくつかの具体例において、単離化合物は、適当なHPLC法によって決定された場合、少なくとも約50%純粋である。ある特定の具体例において、単離化合物は、適当なHPLC法によって決定された場合、少なくとも約60%、70%、80%、90%、95%、98%または99%純粋である。
【0041】
ある具体例において、本発明は:
(a)式IIIおよび/またはIII’:
【化13】
[式中、A−は適当なアニオンである]
で示される化合物;
(b)少なくとも1つの式IIおよび/またはII’:
【化14】
[式中、X−は、本明細書に記載されるような適当なアニオンである]
で示される化合物;および
(c)任意に、式IV−aおよび/またはIV−a’:
【化15】
[式中、X−は、本明細書に記載されるような適当なアニオンである]
で示される化合物を含む組成物を提供する。
【0042】
ある具体例において、本発明は、式IIIで示される化合物、式IIで示される化合物、および、任意に、式IV−aで示される化合物を含む固形組成物を提供する:ここに
(a)少なくとも約99.6%、99.7%、99.8%、99.85%、99.9%、または99.95%の式IIIで示される化合物は、窒素に関して(R)配置であり;
(b)式IIで示される化合物は、60、10、5、3.3、2.5、1ppm未満の量で存在する。
【0043】
別の具体例において、本発明は、式IIIで示される化合物、式IIで示される化合物、および、任意に、式IV−aで示される化合物を含む組成物を提供する:ここに、式IIおよびIV−aで示される化合物は、合計で、約60、約10、約5、約3.3、約2.5、または約1ppm未満の量で存在する。
【0044】
ある具体例において、かかる組成物は、液体処方に処方される。いくつかの具体例において、本発明は、式IIIで示される化合物および式IIで示される化合物を含む液体組成物を提供し、ここに、組成物中の式IIで示される化合物の量は、約25、約100、約125、約150、約185、約187、または約190ppm未満である。いくつかの具体例において、本発明は、式IIIで示される化合物、式IIで示される化合物、および、所望により、式IV−aで示される化合物を含む組成物を提供し、ここに、式IIおよびIV−aで示される化合物は、存在する場合、合計で約25、約100、約125、約150、約185、約187、または約190ppm未満の量で存在する。
【0045】
別の具体例において、本発明は:
(a)化合物III−1:
【化16】
(b)化合物II−1:
【化17】
および、(c)任意に、化合物IV−1:
【化18】
を含む組成物を提供する。
【0046】
別の具体例において、本発明は、化合物III−1、II−1、および、任意に、化合物IV−1を含む固形組成物を提供し、ここに、少なくとも約99.6%、99.7%、99.8%、99.85%、99.9%、または99.95%の化合物III−1が、窒素に関して(R)配置であり、化合物II−1は、60、10、5、3.3、2.5、1ppm未満の量で存在する。別の具体例において、本発明は、化合物III−1、化合物II−1、および、任意に、化合物IV−1を含む組成物を提供し、ここに、化合物II−1およびIV−1は、合計で、約60、約10、約5、約3.3、約2.5、または約1ppm未満の量で存在する。
【0047】
いくつかの具体例において、本発明は、化合物III−1および化合物II−1を含む液体組成物を提供し、ここに、化合物II−1は、約25、約100、約125、約150、約185、約187、または約190ppm未満の量で存在する。いくつかの具体例において、本発明は、化合物III−1、化合物II−1、および、任意に、化合物IV−1を含む液体組成物を提供し、ここに、化合物II−1およびIV−1は、合計で約25、約100、約125、約150、約185、約187、または約190ppm未満の量で存在する。
【0048】
ある具体例において、本発明は、メチルナルトレキソンを含む液体組成物を含むプレフィルドシリンジを提供する。かかる液体組成物の非限定的な例としては、米国特許出願US2008−0070975に詳細に記載されており、これは出典明示により本明細書に組み入れる。いくつかの具体例において、本発明は、メチルナルトレキソンまたはその医薬上許容される塩、カルシウム塩、およびキレート化剤を含む液体組成物の単位投与量を含むプレフィルドシリンジを提供する。ある具体例において、本発明は、実質的にタングステンを含まず、メチルナルトレキソン、カルシウムキレート化剤、および緩衝化剤を含む液体組成物の単位投与量を含むプレフィルドシリンジを提供する。ある具体例において、本発明は、実質的にタングステンを含まず、メチルナルトレキソン、カルシウムキレート化剤、緩衝化剤および等張化剤を含む液体組成物の単位投与量を含むプレフィルドシリンジを提供する。いくつかの具体例において、本発明は、実質的にタングステンを含まず、メチルナルトレキソンブロマイド、エデト酸カルシウム二ナトリウム、およびグリシンヒドロクロライドを含む液体組成物の単位投与量を含むプレフィルドシリンジを提供する。いくつかの具体例において、本発明は、実質的にタングステンを含まず、メチルナルトレキソンブロマイド、エデト酸カルシウム二ナトリウム、グリシンヒドロクロライド、および塩化ナトリウムを含む液体組成物の単位投与量を含むプレフィルドシリンジを提供する。
【0049】
ある具体例において、液体組成物は、約pH2.0〜約pH6.0のpHを有する。いくつかの具体例において、処方のpHは、約pH2.6〜約pH5.0である。いくつかの具体例において、処方のpHは、約pH3.0〜約pH4.0である。いくつかの具体例において、処方のpHは、約pH3.4〜約pH3.6である。いくつかの具体例において、処方のpHは、約pH3.5である。ある具体例において、液体組成物は、約2.5〜約6のpHを有する。
【0050】
いくつかの具体例において、本発明は、メチルナルトレキソンを、約0.5mg〜約200mg、約1mg〜約80mg、約5mg〜約40mgの量で、またはメチルナルトレキソンブロマイドを、約8mg、約12mg、約16mg、約18mg、または約24mgの量で含む液体組成物を含むプレフィルドシリンジを提供する。
【0051】
いくつかの具体例において、本発明は、メチルナルトレキソンおよびキレート化剤を、処方中に約0.01mg/mL〜約2mg/mLまたは約0.1mg/mL〜約1mg/mL、または処方の約0.2mg/mL〜約0.8mg/mL含む液体組成物を含むプレフィルドシリンジを提供する。いくつかの具体例において、キレート化剤は、処方中に、約0.2mg/mL、約0.3mg/mL、約0.4mg/mL、約0.5mg/mL、または約0.6mg/mLの量で存在してもよい。
【0052】
キレート化剤の例としては、エチレンジアミンテトラ酢酸(EDTA、エデト酸、ベルセン酸、およびセキエストレンと同義でも用いられる)、およびEDTA誘導体、例えば、ナトリウムEDTA、およびカリウムEDTA、二アンモニウムEDTA、二カリウムEDTA、二ナトリウムEDTA、TEA−EDTA、四ナトリムEDTA、三カリウムEDTA、三ナトリウムEDTA、HEDTA、および三ナトリウムHEDTA、およびその関連する塩が挙げられる。他のキレート化剤は、ナイアシンアミドおよびその誘導体およびデソキシコール酸ナトリウムおよびその誘導体、エチレングリコール−ビス−(2−アミノエチル)−N,N,N’,N’−テトラ酢酸(EGTA)およびその誘導体、ジエチレントリアミンペンタ酢酸(DTPA)およびその誘導体、N,N−ビス(カルボキシメチル)グリシン(NTA)およびその誘導体、ニトリロトリ酢酸およびその誘導体を含む。さらに別のキレート化剤は、クエン酸およびその誘導体を含む。また、クエン酸は、クエン酸一水和物としても知られている。クエン酸の誘導体は、無水クエン酸およびクエン酸三ナトリウム−二水和物を含む。いくつかの具体例において、キレート化剤は、EDTAまたはEDTA誘導体またはEGTAまたはEGTA誘導体から選択される。いくつかの具体例において、キレート化剤は、EDTA二ナトリウム、例えば、EDTA二ナトリウム水和物を含む。
【0053】
いくつかの具体例において、本発明は、メチルナルトレキソンおよびカルシウム塩を、約0.01mg/mL〜約2mg/mLまたは約0.1mg/mL〜約1mg/mL、または約0.2mg/mL〜約0.8mg/mL、約0.2mg/mL、約0.3mg/mL、約0.4mg/mL、約0.5mg/mL、または約0.6mg/mLの量で含む液体組成物を含むプレフィルドシリンジを提供する。
【0054】
カルシウム塩の例としては、限定するものではないが、塩化カルシウム、酢酸カルシウム、クエン酸カルシウム、硫酸カルシウム等が挙げられる。
いくつかの具体例において、本発明は、メチルナルトレキソンおよびカルシウム塩キレート化剤を、約0.01mg/mL〜約2mg/mLまたは約0.1mg/mL〜約1mg/mL、または約0.2mg/mL〜約0.8mg/mLを含む液体組成物を含むプレフィルドシリンジを提供する。いくつかの具体例において、カルシウム塩キレート化剤は、約0.2mg/mL、約0.3mg/mL、約0.4mg/mL、約0.5mg/mL、または約0.6mg/mLの量で存在してもよい。
【0055】
一般的なカルシウム塩キレート化剤は、限定するものではないが、カルシウムエチレンジアミンテトラ酢酸(EDTA)およびカルシウム塩EDTA誘導体、カルシウムエチレングリコール−ビス−(2−アミノエチル)−N,N,N’,N’−テトラ酢酸(EGTA)およびカルシウム塩EGTA誘導体、カルシウムジエチレンとリア民ペンタ酢酸(DTPA)およびカルシウム塩DTPA誘導体、カルシウムN,N−ビス(カルボキシメチル)グリシン(NTA)およびカルシウム塩NTA誘導体、およびクエン酸カルシウムおよびその誘導体を含む。いくつかの具体例において、キレート化剤は、カルシウムEDTAまたはカルシウム塩EDTA誘導体またはカルシウムEGTAまたはカルシウム塩EGTA誘導体から選択される。いくつかの具体例において、キレート化剤は、カルシウムEDTA二ナトリウム、例えばカルシウムEDTA二ナトリウム水和物である。
【0056】
いくつかの具体例において、本発明は、メチルナルトレキソンおよび等張剤を含む液体組成物を含むプレフィルドシリンジを提供する。一般的な等張剤は、塩化ナトリウム、マンニトール、ラクトース、デキストロース(水和または無水)、シュークロース、グリセロール、およびソルビトールおよびその溶液からなる群から選択される剤を含む。
【0057】
いくつかの具体例において、本発明は、メチルナルトレキソンおよび安定化剤を、約0.01mg/mL〜約2mg/mLまたは約0.05mg/mL〜約1mg/mL、または約0.1mg/mL〜約0.8mg/mLの量で含む液体組成物を含むプレフィルドシリンジを提供する。いくつかの具体例において、安定化剤は、約0.15mg/mL、約0.2mg/mL、約0.25mg/mL、約0.3mg/mL、約0.35mg/mL、または約0.4mg/mLの量で存在する。
【0058】
安定化剤の例としては、グリシン、安息香酸、クエン酸、グリコール酸、乳酸、リンゴ酸およびマレイン酸が挙げられる。いくつかの具体例において、処方はグリシンを含む。いくつかの具体例において、グリシンはグリシン−HClを含む。
【0059】
ある具体例において、本発明は、式IIIで示される化合物および式IIで示される化合物を含む液体組成物を含むプレフィルドシリンジを提供し、ここに、式IIで示される化合物は、約25、約100、約125、約150、約185、約187、または約190ppm未満の量で存在する。いくつかの具体例において、本発明は、式IIIで示される化合物、式IIで示される化合物、および、任意に、式IVで示される化合物を含む液体組成物を含むプレフィルドシリンジを提供し、ここに、式IIおよびIVで示される化合物は、合計で、約25、約100、約125、約150、約185、約187、または約190ppm未満の量で存在する。
【0060】
いくつかの具体例において、本発明によるプレフィルドシリンジの調製に用いられるシリンジは、「タングステン不含」または「実質的にタングステン不含」である。いくつかの具体例において、「タングステン不含」または実質的にタングステン不含シリンジは、Becton Dickinson社,Schott社および他社から市販されている。かかるシリンジは、「超低量(ウルトラロー:ultra low)」タングステンシリンジまたは「タングステン不含」とも称されうる。
【0061】
ある具体例において、タングステンを「実質的に不含」は、式IIIで示される化合物の分解に寄与する量未満のタングステンレベルを意味する。ある具体例において、実質的にタングステン不含であるシリンジは、10億あたり約60部未満または10億あたり約50部未満または10億あたり約40部未満の量でタングステンを含有する。いくつかの具体例において、実質的にタングステン不含であるシリンジは、10億あたり約12部未満の量でタングステンを含有する。タングステンを「実質的に不含」であるとされるシリンジは、タングステン不含のシリンジを含むことは明らかであろう。シリンジ中のタングステンのレベルは、US20080103438およびより詳細には下記実施例8に記載のように、種々の当業者に公知の方法により測定することができる。
【0062】
いくつかの具体例において、本発明によるプレフィルドシリンジの調製に用いられるシリンジは、プレフィル可能ガラスおよび/またはポリマーシリンジである。かかるシリンジは、例えば、Schott社から市販されている。いくつかの具体例において、ポリマーシリンジは、シクロオレフィンポリマーから製造される。
【0063】
特定の理論に縛られることを望まず、シリンジ中のタングステンの存在は、シリンジ中に貯蔵されるメチルナルトレキソン溶液の分解に寄与すると考えられる。かかる分解は、式Iで示される化合物の形成を含む。かくして、本発明のいくつかの態様において、メチルナルトレキソン溶液は、タングステンから溶液を単離する手段により貯蔵される(すなわち、メチルナルトレキソンは、タングステンと接触しない)。ある具体例において、本発明は、タングステン、またはその誘導体を含まない、あるいはタングステンを、10億あたり約60部未満または10億あたり約50部未満または10億あたり約40部未満または10億あたり約12部未満の量で含むメチルナルトレキソンプレフィルドシリンジを提供する。タングステンのレベルは、例えば、ICP−MSにより測定することができる。
【0064】
ある具体例において、本発明は実質的にタングステンを含まず、化合物III−1および化合物II−1を含む液体組成物を含むプレフィルドシリンジを提供し、ここに、化合物II−1は、約25、約100、約125、約150、約185、約187、または約190ppm未満の量で存在する。いくつかの具体例において、本発明は、実質的にタングステンを含まず、化合物III−1、化合物II−1、および、任意に化合物IV−1を含む液体組成物を含むプレフィルドシリンジを提供し、ここに、化合物II−1およびIV−1は、合計で、約25、約100、約125、約150、約185、約187、または約190ppm未満の量で存在する。
【0065】
いくつかの具体例において、本発明は、実質的にタングステンを含まず、約0.4mLの水中に約8mgの化合物III−1、および化合物II−1を含む液体組成物を含むプレフィルドシリンジを提供し、ここに、化合物II−1は、約25、約100、約125、約150、約185、約187、または約190ppm未満の量で存在する。ある具体例において、本発明は、実質的にタングステンを含まず:(a)8mgの化合物III−1;(b)0.16mgエデト酸カルシウム二ナトリウム;および(c)0.12mgグリシンヒドロクロライドを含む液体組成物を含むプレフィルドシリンジを提供し、ここに、該プレフィルドシリンジは、化合物II−1を、約25、約100、約125、約150、約185、約187、または約190ppm未満の量で含む。ある具体例において、本発明は、実質的にタングステンを含まず:(a)8mgの化合物III−1;(b)0.4mLの水;(c)2.6mg塩化ナトリウム;(d)0.16mgエデト酸カルシウム二ナトリウム;および(e)0.12mgグリシンヒドロクロライドを含む液体組成物を含むプレフィルドシリンジを提供し、ここに、該プレフィルドシリンジは、化合物II−1を、約25、約100、約125、約150、約185、約187、または約190ppm未満の量で含む。
【0066】
いくつかの具体例において、本発明は、実質的にタングステンを含まず、約0.6mLの水中約12mgの化合物III−1、および化合物II−1を含む液体組成物を含むプレフィルドシリンジを提供し、ここに、化合物II−1は、約25、約100、約125、約150、約185、約187、または約190ppm未満の量で存在する。ある具体例において、本発明は、実質的にタングステンを含まず:(a)12mgの化合物III−1;(b)0.24mgエデト酸カルシウム二ナトリウム;および(c)0.18mgグリシンヒドロクロライドを含む液体組成物を含むプレフィルドシリンジを提供し、ここに、該プレフィルドシリンジは、化合物II−1を、約25、約100、約125、約150、約185、約187、または約190ppm未満の量で含む。ある具体例において、本発明は、実質的にタングステンを含まず:(a)12mgの化合物III−1;(b)0.6mLの水;(c)3.9mg塩化ナトリウム;(d)0.24mgエデト酸カルシウム二ナトリウム;および(e)0.18mgグリシンヒドロクロライドを含む液体組成物を含むプレフィルドシリンジを提供し、ここに、該プレフィルドシリンジは、化合物II−1を、約25、約100、約125、約150、約185、約187、または約190ppm未満の量で含む。
【0067】
いくつかの具体例において、本明細書に記載にように、実質的にタングステン不含であり、メチルナルトレキソンを含有する1個またはそれ以上の提供されるプレフィルドシリンジは、光からシリンジを保護した容器中に貯蔵される。ある具体例において、1個またはそれ以上のプレフィルドシリンジは、光からシリンジを保護するブリスターパックで貯蔵される。いくつかの具体例において、1個またはそれ以上のプレフィルドシリンジは、光からシリンジを保護した箱に貯蔵される。
【0068】
いくつかの具体例において、本明細書に記載にように、実質的にタングステン不含であり、メチルナルトレキソンを含有するプレフィルドシリンジは、少なくとも9ヶ月または少なくとも12ヶ月、または少なくとも18ヶ月または少なくとも24ヶ月の間、典型的な不活性貯蔵条件下で分解に対し安定である、メチルナルトレキソンの単位投与量を提供する。本明細書で用いられる場合、「典型的な不活性貯蔵条件」なる用語は、25℃/60%RHである。ある具体例において、本発明は、本明細書に記載されるように、化合物II−1を、少なくとも9ヶ月、少なくとも12ヶ月、少なくとも14ヶ月、少なくとも16ヶ月、少なくとも18ヶ月、または少なくとも24ヶ月の間、約25ppm未満で含むプレフィルドシリンジを提供する。ある具体例において、本発明は、本明細書に記載されるように、化合物II−1および/またはIV−1を、少なくとも9ヶ月、少なくとも12ヶ月、少なくとも14ヶ月、少なくとも16ヶ月、少なくとも18ヶ月、または少なくとも約24ヶ月の間、合計約25、約100、約125、約150、約185、約187、または約190ppm未満の量で含むプレフィルドシリンジを提供する。
【0069】
ある具体例において、本発明は、結晶性固体の化合物II−1を提供する。いくつかの具体例において、化合物II−1は、非晶質固体として提供される。
【0070】
本明細書で用いられる場合、「実質的にアモルファス化合物II−1を不含」なる用語は、結晶性固体が、有意な量のアモルファス化合物II−1を含有しないことを意味する。本発明のある具体例において、「実質的にアモルファス化合物II−1を不含」なる用語は、固体中の少なくとも約95重量%の化合物II−1が、結晶形態であることを意味する。本発明のある具体例において、「実質的にアモルファス化合物II−1を不含」なる用語は、固体中の少なくとも約99重量%の化合物1が、結晶形態であることを意味する。
【0071】
本明細書で用いられる場合、「実質的に他の形態の化合物II−1を不含」なる用語は、固体が、有意な量の他の固体形態の化合物II−1を含まないことを意味する。本発明のある具体例において、「実質的に他の形態の化合物II−1を不含」なる用語は、少なくとも約95重量%の化合物II−1は、とくていの固体形態で存在することを意味する。本発明のある具体例において、「実質的に他の形態の化合物II−1を不含」なる用語は、少なくとも約99重量%の化合物II−1は、特定の固体形態で存在することを意味する。
【0072】
化合物II−1多形体の粉末XRDは、9.8、10.8、12.7、14.7、15.0、15.9、16.7、17.5、18.7、19.4、20.5、21.0、21.7、22.6、23.0、24.3、24.8、25.5、25.9、26.8、27.2、28.2、28.8、29.5、30.1、31.2、32.1、32.9、33.5、34.9、36.0および38.5℃2θでピークを含む。ある具体例において、本発明は、9.8、10.8、12.7、14.7、15.0、15.9、16.7、17.5、18.7、19.4、20.5、21.0、21.7、22.6、23.0、24.3、24.8、25.5、25.9、26.8、27.2、28.2、28.8、29.5、30.1、31.2、32.1、32.9、33.5、34.9、36.0および38.5℃2θから選択される粉末X線回折パターンでの1つまたはそれ以上のピークを有することにより特徴付けられる化合物II−1の結晶形態を提供する。ある具体例において、本発明は、9.8、10.8、12.7、14.7、15.0、15.9、16.7、17.5、18.7、19.4、20.5、21.0、21.7、22.6、23.0、24.3、24.8、25.5、25.9、26.8、27.2、28.2、28.8、29.5、30.1、31.2、32.1、32.9、33.5、34.9、36.0および38.5℃2θから選択される粉末X線回折パターンでの2つまたはそれ以上のピークを有することにより特徴付けられる化合物II−1の結晶形態を提供する。ある具体例において、本発明は、9.8、10.8、12.7、14.7、15.0、15.9、16.7、17.5、18.7、19.4、20.5、21.0、21.7、22.6、23.0、24.3、24.8、25.5、25.9、26.8、27.2、28.2、28.8、29.5、30.1、31.2、32.1、32.9、33.5、34.9、36.0および38.5℃2θから選択される粉末X線回折パターンでの実質的にすべてのピークを有することにより特徴付けられる化合物II−1の結晶形態を提供する。
【0073】
一の態様によれば、化合物II−1多形体は、実質的に図15に示されるすべてのピークを含むXRDパターンを有する。本明細書で用いられる場合、「実質的にすべてのピーク」なる用語は、化合物が、そのXRDにおいて、リストの少なくとも約80%のピークを示すことを意味する。別の具体例において、「実質的にすべてのピーク」なる用語は、化合物が、そのXRDにおいて、リストの少なくとも約85、90、95、97、98、または99%のピークを示すことを意味する。
【0074】
他の具体例において、本発明は、非晶質固体としての化合物II−1を提供する。非晶質固体は当業者によく知られており、典型的には、特に凍結乾燥、融解および超臨界流体からの析出のような方法により調製される。非晶質化合物II−1の製造方法は、下記する実施例において記載する。
【0075】
ある具体例において、本発明は、実質的に結晶性化合物II−1を含まない非晶質化合物II−1を提供する。本明細書で用いられる場合、「実質的に結晶性の化合物II−1を含まない」なる用語は、化合物が、有意な量の結晶性化合物II−1を含まないことを意味する。本発明のある具体例において、少なくとも約95重量%の化合物II−1は、非晶質化合物II−1である。本発明のさらに別の具体例において、少なくとも約99重量%の化合物II−1が、非晶質化合物II−1である。
【0076】
別の具体例において、本発明は、非晶質化合物II−1および少なくとも1つの結晶性形態の化合物II−1を含む組成物を提供する。かかる化合物II−1の結晶性形態は、本明細書に記載のような化合物II−1多形、または非晶質化合物II−1の調製の結果および/または単離の結果得られる化合物II−1の他の結晶性形態を含む。ある具体例において、本発明は、本明細書に記載のような、非晶質化合物II−1および少なくとも1つの結晶性形態の化合物II−1を含む組成物を提供する。
【0077】
いくつかの具体例において、本発明は、下記工程:
(a)式III:
【化19】
[式中、A−は適当なアニオンである]
で示される化合物を提供すること;および
(b)式IIIで示される化合物を酸化剤で処理して、式II:
【化20】
[式中、X−は適当なアニオンである]
で示される化合物を形成すること
を含む方法を提供する。
【0078】
式IIで示される化合物を製造するための式IIIで示される化合物との反応に適当な酸化剤は、当業者によく知られている。いくつかの具体例において、酸化剤は、過酸化物、ベンゾキノン、または過酸である。ある具体例において、酸化剤は、過酸化水素、t−ブチル過酸化水素、MCPBA(メタ−クロロペル安息香酸)、過酢酸、オキソン(ペルオキシモノ硫酸カリウム)、またはDDQ(2,3−ジクロロ−5,6−ジシアノベンゾキノン)である。
【0079】
ある具体例において、本発明は、工程:
(a)化合物III−1:
【化21】
を提供すること;および
(b)化合物III−1を酸化剤で処理して、化合物II−1:
【化22】
を形成すること
を含む方法を提供する。
【0080】
いくつかの具体例において、化合物III−1から酸化反応を介して化合物II−1を調製する方法は、さらに、塩交換を行い化合物II−3を得る工程を含む。
【0081】
当業者には、化合物II−3が、容易に、化合物II−1から、例えば、トリフルオロ酢酸を含有する溶出液を用いるHPLC精製により調製できることは明らかだろう。
【0082】
4. 使用、処方および投与
化合物II−1を、(R)−N−メチルナルトレキソンブロマイドの新規分解生成物として同定した。特に、(R)−N−メチルナルトレキソンブロマイドプレフィルドシリンジについて行った安定性研究では、新規で未知の不純物が得られた。この不純物は、LC/MSにより、RRT0.60で溶出された新規ピークとして同定された。このピークを、実施例1に詳細に記載するように分取HPLCにより単離した。当業者は、例示に記載のように溶媒溶出を用いる分取HPLCから単離した式IIで示される化合物がトリフルオロ酢酸塩、化合物II−3であったことは理解できるだろう。加えて、化合物II−1を合成して、その構造を確認した。かくして、本発明の化合物は、活性医薬成分としての(R)−N−メチルナルトレキソンブロマイドの純度を測定するのに用いるための分析標準として有用である。
【0083】
ある具体例において、本発明は、工程:
(a)(R)−N−メチルナルトレキソンブロマイドの試料を提供すること;
(b)(R)−N−メチルナルトレキソンブロマイドの試料の分析を行うこと;および
(c)(R)−N−メチルナルトレキソンブロマイドの試料中の化合物II−1の量を決定すること;
を含む方法を提供する。
【0084】
ある具体例において、本発明は、工程:
(a)(R)−N−メチルナルトレキソンブロマイドの試料を提供すること;
(b)(R)−N−メチルナルトレキソンブロマイドの試料の分析を行うこと;および
(c)(R)−N−メチルナルトレキソンブロマイドの試料中の化合物II−1および化合物IVの量を決定すること;
を含む方法を提供する。
【0085】
ある具体例において、本発明は、工程:
(a)(R)−N−メチルナルトレキソンブロマイドの試料を提供すること;
(b)化合物II−1の試料を提供すること;および
(c)(R)−N−メチルナルトレキソンブロマイドの試料および化合物II−1の試料のHPLC分析を行うこと;および
(d)(R)−N−メチルナルトレキソンブロマイドの試料中の化合物II−1の量を決定すること
を含む方法を提供する。
【0086】
ある具体例において、工程(d)は、(R)−N−メチルナルトレキソンブロマイドの試料中の化合物II−1(または、適当な場合、化合物II−3)の量が、約60ppm、約10ppm、約5ppm、約3.3ppm、約2.5ppm、または約1.0ppm未満であることを決定することを含む。いくつかの具体例において、工程(d)は、(R)−N−メチルナルトレキソンブロマイドの試料中の化合物II−1(または、適当な場合、化合物II−3)の量が、約25、約100、約125、約150、約185、約187、または約190ppm未満であることを決定することを含む。
【0087】
いくつかの具体例において、本発明は、工程:
(a)(R)−N−メチルナルトレキソンブロマイドの試料のHPLCクロマトグラムを提供すること;
(b)化合物II−1の試料のHPLCクロマトグラムを提供すること;
(c)HPLCクロマトグラムを比較し、(R)−N−メチルナルトレキソンブロマイドの試料中の化合物II−1の量を決定すること;
を含む方法を提供する。
【0088】
ある具体例において、工程(c)は、(R)−N−メチルナルトレキソンブロマイドの試料中の化合物II−1(または、適当な場合、化合物II−3)の量が、約60ppm、約10ppm、約5ppm、約3.3ppm、約2.5ppm、または約1.0ppm未満であることを決定することを含む。いくつかの具体例において、工程(c)は、(R)−N−メチルナルトレキソンブロマイドの試料中の化合物II−1(または、適当な場合、化合物II−3)の量が、約25、約100、約125、約150、約185、約187、または約190ppm未満であることを決定することを含む。
【0089】
ある具体例において、工程(b)は、さらに、化合物IV−1の試料を提供することを含み、工程(c)は、さらに、(R)−N−メチルナルトレキソンブロマイドの試料中の化合物IV−1の量を決定することを含む。ある具体例において、工程(c)は、(R)−N−メチルナルトレキソンブロマイドの試料中の化合物II−1および化合物IV−1の量が、合計で約60ppm、約10ppm、約5ppm、約3.3ppm、約2.5ppm、または約1ppm未満であることを決定することを含む。ある具体例において、工程(c)は、(R)−N−メチルナルトレキソンブロマイドの試料中の化合物II−1および化合物IV−1の量が、約25、約100、約125、約150、約185、約187、または約190ppm未満であることを決定することを含む。
【0090】
いくつかの具体例において、工程(c)は、(R)−N−メチルナルトレキソンブロマイドの試料が、投与あたり(すなわち、1日あたり)、1.5マイクログラムの化合物II−1および化合物IV−1を与えることを決定することを含む。
【0091】
ある具体例において、本発明の化合物は、生物学的および病理的現象における末梢ミューオピオイドアンタゴニストの研究および末梢ミューオピオイドアンタゴニストの比較評価に有用である。
【0092】
ある具体例において、式Iで示される化合物は、末梢ミューオピオイド受容体アンタゴニストとして有用である。本発明の別の態様によれば、本明細書に記載の式Iで示される化合物、および、任意に医薬上許容される担体、アジュバントまたはビヒクルを含む医薬上許容される組成物を提供する。本発明のある具体例において、かかる医薬上許容される組成物は、1つまたはそれ以上のさらなる治療剤をさらに任意に含んでいてもよい。
【0093】
上記のように、本発明の医薬上許容される組成物は、付加的に、医薬上許容される担体、アジュバントまたはビヒクルを含み、本明細書中で使用される場合、それらは、所望される特定の投与形態に適すような、あらゆる溶媒、希釈剤または他の液体ビヒクル、分散補助剤または懸濁補助剤、界面活性剤、等張剤、増粘剤または乳化剤、保存料、固体結合剤、滑沢剤などを包含する。Remingtons Pharmaceutical Sciences,17th edition,ed.Alfonoso R.Gennaro,Mack Publishing Company,Easton,PA(1985)は、医薬上許容される組成物を処方するのに使用される種々の担体およびその製造のための既知の技術を開示する。いずれかの従来の担体媒体が、例えば、いずれかの望ましくない生物学的効果を生じることによって、あるいは、医薬上許容される組成物のいずれか他の成分と有害な方法で相互作用することによって、本発明の塩に不適合である場合を除き、その使用は本発明の範囲内にあると解釈される。医薬上許容される担体として働くことのできる材料のいくつかの例は、限定するものではないが、イオン交換体、アルミナ、ステアリン酸アルミニウム、レシチン、血清タンパク質、例えば、ヒト血清アルブミン、緩衝物質、例えば、ホスフェート、グリシン、ソルビン酸、またはソルビン酸カリウム、飽和植物性脂肪酸の部分グリセリド混合物、水、塩または電解質、例えば、硫酸プロタミン、リン酸水素2ナトリウム、リン酸水素カリウム、塩化ナトリウム、亜鉛塩、コロイド状シリカ、三ケイ酸マグネシウム、ポリビニルピロリドン、ポリアクリレート、ワックス、ポリエチレン−ポリオキシプロピレン−ブロックポリマー、羊毛脂、糖類、例えば、ラクトース、グルコースおよびシュークロース;デンプン、例えば、トウモロコシデンプンおよびジャガイモデンプン;セルロースおよびその誘導体、例えば、ナトリウムカルボキシメチルセルロース、エチルセルロースおよびセルロースアセテート;粉末状トラガカントゴム;麦芽;ゼラチン;タルク;賦形剤、例えば、ココア脂および座薬用ワックス;油、例えば、ラッカセイ油、綿実油、サフラワー油、ゴマ油、オリーブ油、コーン油および大豆油;グリコール、例えば、プロピレングリコールまたはポリエチレングリコール;エステル、例えば、オレイン酸エチルおよびラウリン酸エチル;寒天;緩衝化剤、例えば、水酸化マグネシウムおよび水酸化アルミニウム;アルギン酸;発熱物質不含水;等張性セーライン;リンガー液;エチルアルコール、およびリン酸緩衝液、ならびに他の非毒性適合性滑沢剤、例えば、ラウリル硫酸ナトリウムおよびステアリン酸マグネシウムを包含し、同様に、着色剤、解除剤、コーティング剤、甘味料、フレーバー剤および香料、保存料および抗酸化剤もまた、処方する者の判断にしたがって、組成物中に配合することができる。
【0094】
ある特定の具体例において、本発明は、式Iの少なくとも1つの化合物および一以上の医薬上許容される担体、賦形剤または希釈剤を含む組成物に関する。かかる組成物は、許容される製薬手法、例えば、Remingtons(出典明示により、全体として本明細書の一部とされる)に記載の手法にしたがって調製される。医薬上許容される担体は、処方中の他の成分と適合性の担体であり、生物学的に許容されるものである。
【0095】
本発明の組成物は、そのままで、または従来の医薬担体と組み合わせて、経口または非経口投与される。許容される固形担体は、フレーバー剤、滑沢剤、可溶化剤、懸濁化剤、増量剤、潤滑剤、圧縮補助剤、結合剤、錠剤崩壊剤、またはカプセル材料としても作用することができる1以上の物質を包含する。粉末において、担体は、微粉化した活性成分と混合される微粉化した固体である。錠剤において、活性成分は、必要な圧縮性を有する担体と、適当な割合で混合され、次いで、所望の形状および大きさに成形される。適当な固形担体は、例えば、リン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、タルク、糖、ラクトース、デキストリン、澱粉、ゼラチン、セルロース、メチルセルロース、ナトリウムカルボキシメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、低融点ワックスおよびイオン交換樹脂を包含する。
【0096】
液体担体は、溶液、懸濁液、エマルジョン、シロップおよびエリキシルの調製に使用できる。活性成分は、医薬上許容される液体担体、例えば、水、有機溶媒、これら2つの混合物、または医薬上許容される油脂中に溶解またか懸濁することができる。液体担体は、他の適当な医薬添加剤、例えば、可溶化剤、乳化剤、緩衝剤、保存料、甘味料、フレーバー剤、懸濁化剤、増粘剤、着色料、粘度調節剤、安定化剤または浸透圧調節剤を含有することができる。経口および非経口投与用液体担体の適当な例は、水(特に、上記の添加剤を含有する水、例えば、セルロース誘導体、好ましくは、ナトリウムカルボキシメチルセルロース溶液)、アルコール(一価アルコールおよび多価アルコール、例えば、グリコールを包含する)およびその誘導体、および油(例えば、分別ココヤシ油および落花生油)を包含する。非経口投与の場合、担体は、油性エステル、例えば、オレイン酸エチルおよびミリスチン酸イソプロピルであることもできる。滅菌液体担体は、非経口投与用滅菌液体形態の組成物において使用される。加圧組成物用液体担体は、ハロゲン化炭化水素または他の医薬上許容されるプロペラントであることができる。
【0097】
滅菌溶液または懸濁液である液体医薬組成物は、例えば、筋内、腹腔内または皮下注射によって投与することができる。滅菌溶液は、また、静脈内投与することもできる。経口投与用組成物は、液体または固体形態のいずれかであることができる。
【0098】
ある特定の具体例において、本発明の組成物は、従来の座剤の形態で経直腸または経膣的に投与される。鼻腔内または気管支内吸入または通気による投与の場合、本発明の組成物は、水性または部分的に水性の溶液中に処方されることができ、ついでそれをエーロゾルの形態で利用することができる。本発明の組成物は、また、活性化合物および該活性化合物に不活性で、皮膚に非毒性で、かつ、皮膚を介する血中への全身的吸収のための薬剤のデリバリーを可能にする担体を含有する経皮パッチの使用によって経皮的に投与することもできる。該担体は、クリームおよび軟膏、ペースト、ゲル、および閉塞性装置などのいくつかの形態を取ることができる。クリームおよび軟膏は、粘性液体または水中油型もしくは油中水型のいずれかの半固体エマルジョンであることができる。また、活性成分を含有するペトロリュームまたは親水性ペトロリューム中に分散させた吸収性粉末からなるペーストも適当である。担体を伴って、または伴わずに活性成分を含有するリザーバーを覆う半浸透性膜、または活性成分を含有するマトリックスなどの種々の閉塞性装置を用いて、活性成分を血流中に放出させることができる。他の閉塞性装置は、文献において知られている。
【0099】
いくつかの具体例において、医薬組成物は、単位投与形態、例えば、錠剤、カプセル、粉末、溶液、懸濁液、エマルジョン、顆粒、または座剤の形態である。かかる形態において、組成物は、適量の活性成分を含有する単位投与量にさらに分けられ、該単位投与形態は、パッケージされた組成物、例えば、パックした粉末、バイアル、アンプル、予め充填したシリンジまたは液体を含有する小袋(sachet)であることができる。単位投与形態は、例えば、カプセルまたは錠剤自体であることができ、またはいずれかのかかる組成物の適当な数をパッケージした形態であることができる。
【0100】
対象に提供される本発明の組成物の量は、投与されているもの、投与目的、例えば、予防または治療、対象の状態、投与方法などに依存して変化するであろう。治療的適用の場合、本発明の組成物は、疾患に罹患した対象に、該疾患の症状およびその合併症を治療または少なくとも部分的に治療するのに十分な量で提供される。これを達成するのに十分な量とは、本明細書中に上記したような「治療上有効量」である。特定のケースの治療において使用されるべき投与量は、担当の医師によって主観的に決定されなければならない。関与する変数は、特定の病態ならびに対象の大きさ、年齢および応答パターンを包含する。物質濫用の治療は、担当の医師の手引きの下、主観的薬物投与の同じ方法に従う。一般に、開始投与量は、1日に約5mgであり、1日に約150mgまで毎日の投与量において徐々に増加させて、対象における所望の投与量レベルを提供する。
【0101】
いくつかの具体例において、本発明は、8mgまたは12mgの投与量の式IIIで示される化合物を皮下注射により対象に投与することを含む方法を提供する。ある具体例において、本発明は、工程:
(i)実質的にタングステンを含まず、8mgの化合物III−1および化合物II−1を含む単位用量の液体組成物を含み、化合物II−1が、約25、約100、約125、約150、約185、約187、または約190ppm未満の量で存在する、および/または、化合物II−1および化合物IV−1が、合計約25、約100、約125、約150、約185、約187、または約190ppm未満の量で存在する、プレフィルドシリンジを提供すること;
(ii)対象に、単位剤形を皮下注射で投与すること;
を含む方法を提供する。
【0102】
ある具体例において、本発明は、工程:
(i)実質的にタングステンを含まず、0.4mLの水中の8mgの化合物III−1、および化合物II−1を含む単位用量の液体組成物を含み、化合物II−1が、約25、約100、約125、約150、約185、約187、または約190ppm未満の量で存在する、および/または化合物II−1および化合物IV−1が、合計で約25、約100、約125、約150、約185、約187、または約190ppm未満の量で存在する、プレフィルドシリンジを提供すること;
(ii)対象に、単位剤形を皮下注射で投与すること;
を含む方法を提供する。
【0103】
ある具体例において、本発明は、工程:
(i)実質的にタングステンを含まず、(a)8mgの化合物III−1;(b)0.16mgのエデト酸カルシウム二ナトリウム;および(c)0.12mgのグリシンヒドロクロライドを含む単位用量の液体組成物を含み、化合物II−1を、約25、約100、約125、約150、約185、約187、または約190ppm未満の量で含む、および/または化合物II−1および化合物IV−1が、合計で約25、約100、約125、約150、約185、約187、または約190ppm未満の量で存在する、プレフィルドシリンジを提供すること;
(ii)対象に、単位剤形を皮下注射で投与すること;
を含む方法を提供する。
【0104】
ある具体例において、本発明は、工程:
(i)実質的にタングステンを含まず、(a)8mgの化合物III−1;(b)0.4mLの水;(c)2.6mgの塩化ナトリウム;(d)0.16mgのエデト酸カルシウム二ナトリウム;および(e)0.12mgのグリシンヒドロクロライドを含む単位用量の組成物を含み、化合物II−1を、約25、約100、約125、約150、約185、約187、または約190ppm未満の量で含み、および/または化合物II−1および化合物IV−1が、合計で、約25、約100、約125、約150、約185、約187、または約190ppm未満の量で存在する、プレフィルドシリンジを提供すること;
(ii)対象に、単位剤形を皮下注射で投与すること;
を含む方法を提供する。
【0105】
ある具体例において、本発明は、工程:
(i)実質的にタングステンを含まず、12mgの化合物III−1および化合物II−1を含む単位用量の液体組成物を含み、化合物II−1が、約25、約100、約125、約150、約185、約187、または約190ppm未満の量で存在する、および/または化合物II−1および化合物IV−1が、合計で、約25、約100、約125、約150、約185、約187、または約190ppm未満の量で存在する、プレフィルドシリンジを提供すること;
(ii)対象に、単位剤形を皮下注射で投与すること;
を含む方法を提供する。
【0106】
ある具体例において、本発明は、工程:
(i)実質的にタングステンを含まず、0.6mLの水中の12mgの化合物III−1、および化合物II−1を含む単位用量の液体組成物を含み、化合物II−1が、約25、約100、約125、約150、約185、約187、または約190ppm未満の量で存在する、および/または化合物II−1および化合物IV−1が、合計で約25、約100、約125、約150、約185、約187、または約190ppm未満の量で存在する、プレフィルドシリンジを提供すること;
(ii)対象に、単位剤形を皮下注射で投与すること;
を含む方法を提供する。
【0107】
ある具体例において、本発明は、工程:
(i)実質的にタングステンを含まず、(a)12mgの化合物III−1;(b)0.24mgのエデト酸カルシウム二ナトリウム;および(c)0.18mgのグリシンヒドロクロライドを含む単位用量の液体組成物を含み、化合物II−1を、約25、約100、約125、約150、約185、約187、または約190ppm未満の量で含む、および/または化合物II−1および化合物IV−1が、合計で、約25、約100、約125、約150、約185、約187、または約190ppm未満の量で存在する、プレフィルドシリンジを提供すること;
(ii)対象に、単位剤形を皮下注射で投与すること.
を含む方法を提供する。
【0108】
ある具体例において、対象は、約62〜約114kgの体重である。いくつかの具体例において、対象は、オピオイド誘発便秘を患っており、限定するものではないが、例えば、末期症状であるか、慢性の痛みを有する対象である。
【0109】
本発明の他の具体例において、組成物は、少なくとも約97、97.5、98、98.5、99、99.5、99.8重量パーセントの量で式IまたはIIのいずれかの化合物を含有する(ここに、パーセンテージは、該化合物の遊離塩基に基づき、組成物の全重量に基づく)。他の具体例において、式IまたはIIのいずれかの化合物を含有する組成物は、HPLCクロマトグラムの全面積に対して、HPLC面積が約2.0パーセント以下の全有機不純物、より好ましくは、HPLC面積が約1.5パーセント以下の全有機不純物を含有する。
【0110】
本発明の他の具体例において、式IIIの化合物、少なくとも1つの式IまたはIIの化合物、および少なくとも1つの医薬上許容される担体を含む組成物が提供される。いくつかの具体例において、組成物は、式IまたはIIの化合物を約1重量パーセント〜約99重量パーセントの量で含有する(ここに、パーセンテージは、該化合物の遊離塩基に基づき、組成物の全重量に基づく)。他の具体例において、式IまたはIIの化合物を含有する組成物は、HPLCクロマトグラムの全面積に対して、HPLC面積が約2.0パーセント以下の全有機不純物、より好ましくは、HPLC面積が約1.5パーセント以下の全有機不純物を含有する。
【0111】
ある特定の具体例において、本発明は、上記のように、式Iの化合物のプロドラッグを含む組成物に向けられる。「プロドラッグ」なる語は、本明細書中で使用される場合、代謝手段(例えば、加水分解)によってイン・ビボで式Iの化合物に変換可能な化合物を意味する。例えば、Bundgaard,(編),Design of Prodrugs,Elsevier(1985);Widderら(編),Methods in Enzymology,vol.4,Academic Press(1985);Krogsgaard−Larsenら(編)Design and Application of Prodrugs,Textbook of Drug Design and Development,Chapter 5,113−191(1991),Bundgaardら、Journal of Drug Delivery Reviews,8:1−38(1992),Bundgaard,J.of Pharmaceutical Sciences,77:285 et seq.(1988);およびHiguchiおよびStella(編)Prodrugs as Novel Drug Delivery Systems,American Chemical Society(1975)(各々、出典明示により、全体として本明細書の一部とされる)に論じられるような種々の形態のプロドラッグが当該分野で知られている。
【0112】
組み合わせ生産物および組み合わせた投与
ある特定の具体例において、本発明の組成物およびその処方は、本明細書中に記載されるような1以上の障害を治療するために単独で投与してもよく、または本明細書中に記載されるような1以上の障害を治療するのに有用な1以上の他の活性剤と組み合わせて(同時または連続的に)投与してもよい。かくして、本発明の組成物またはその処方は、1以上の活性剤と同時に、1以上の活性剤より前に、または1以上の活性剤の次に投与することができる。
【0113】
ある特定の具体例において、本発明の組成物は、式Iの化合物の他に、式Iの化合物ではない1以上の他の活性剤を含む。ある特定の具体例において、本発明は、式Iの化合物および少なくとも1つの付加的な活性剤をデリバリーする処方を提供する。
【0114】
いくつかの具体例において、本発明の処方は、オピオイドおよび式Iの化合物の両方を含む。オピオイドおよび式Iの化合物の両方を含有するかかる組み合わせ生産物は、疼痛の軽減およびオピオイド関連副作用(例えば、胃腸影響(例えば、胃内容排出の遅延、GI管運動性の変化)など)の最小限化を同時に可能とする。
【0115】
痛覚脱失の治療において有用なオピオイドは、当該分野で知られている。例えば、オピオイド化合物は、限定するものではないが、アルフェンタニル(alfentanil)、アニレリジン(anileridine)、アシマドリン(asimadoline)、ブレマゾシン(bremazocine)、ブルプレノルフィン(burprenorphine)、ブトルファノール(butorphanol)、コデイン(codeine)、デゾシン(dezocine)、ジアセチルモルヒネ(ヘロイン)、ジヒドロコデイン、ジフェノキシレート、エチルモルヒネ、フェドトジン(fedotozine)、フェンタニル(fentanyl)、フナルトレキサミン(funaltrexamine)、ヒドロコドン(hydrocodone)、ヒドロモルホン(hydromorphone)、レバロルファン(levallorphan)、レボメタジルアセテート(levomethadylacetate)、レボルファノール(levorphanol)、ロペラミド(loperamide)、メペリジン(meperidine)(ペチジン(pethidine))、メタドン(methadone)、モルヒネ、モルヒネ−6−グルコロニド、ナルブフィン(nalbuphine)、ナロルフィン(nalorphine)、ニコモルヒネ(nicomorphine)、オピウム(opium)、オキシコドン(oxycodone)、オキシモルホン(oxymorphone)、パパベレタム(papaveretum)、ペンタゾシン(pentazocine)、プロピラム(propiram)、プロポキシフェン(propoxyphene)、レミフェンタニル(remifentanyl)、スフェンタニル(sufentanil)、チリジン(tilidine)、トリメブチン(trimebutine)およびトラマドール(tramadol)を包含する。いくつかの具体例において、オピオイドは、アルフェンタニル、ブプレノルフィン(buprenorphine)、ブトルファノール、コデイン、デゾシン、ジヒドロコデイン、フェンタニル、ヒドロコドン、ヒドロモルホン、レボルファノール、メペリジン(ペチジン)、メタドン、モルヒネ、ナルブフィン、ニコモルヒネ、オキシコドン、オキシモルホン、パパベレタム、ペンタゾシン、プロピラム、プロポキシフェン、スフェンタニルおよび/またはトラマドールから選択される少なくとも1つのオピオイドである。本発明のある特定の具体例において、オピオイドは、モルヒネ、コデイン、オキシコドン、ヒドロコドン、ジヒドロコデイン、プロポキシフェン、フェンタニル、トラマドール、およびその混合物から選択される。特定の具体例において、オピオイドは、ロペラミドである。他の具体例において、オピオイドは、ブトルファノールなどの混合アゴニストである。いくつかの具体例において、対象は、1よりも多くのオピオイド、例えば、モルヒネおよびヘロインまたはメタドンおよびヘロインを投与される。
【0116】
本発明の組み合わせ組成物中に存在する付加的な活性剤の量は、典型的には、該活性剤を唯一の治療剤として含む組成物において通常投与される量よりも多くはない。本発明のある特定の具体例において、付加的な活性剤の量は、該化合物を唯一の治療剤として含む組成物中に通常存在する量の約50%〜100%の範囲である。
【0117】
ある特定の具体例において、本発明の処方は、また、便秘および腸機能不全の改善を促進するために、胃腸機能不全の通常の治療と同時に、および/または組み合わせて使用してもよい。例えば、通常の治療は、限定するものではないが、腸管の機能的刺激、便柔軟剤、緩下剤(例えば、ジフェニルメタン緩下剤、寫下性緩下剤、浸透圧性緩下剤、セーライン緩下剤など)、バルク形成剤および緩下剤、滑剤、静脈内からの水分補給、および経鼻胃減圧を包含する。
【0118】
本発明の処方の使用およびキット
上記で論じたように、本発明は、オピオイド鎮痛療法の望ましくない副作用(例えば、胃腸影響(例えば、胃内容排出の遅延、GI管運動性の変化)など)を拮抗するのに有用な化合物および組成物を提供する。さらに、化合物または組成物は、μオピオイド受容体に結合することによって改善される病態を有する対象を治療するために、またはμオピオイド受容体系の一時的な抑制が望まれるいずれかの治療において(例えば、イレウスなど)、使用してもよい。本発明のある特定の具体例において、処方の使用方法は、ヒト対象におけるものである。
【0119】
したがって、提供される化合物または組成物の投与は、オピオイド使用の副作用、例えば、胃腸管機能不全(例えば、腸運動の阻害、便秘、GI括約筋収縮、悪心、嘔吐、胆道の痙攣、オピオイド腸機能不全、疝痛、ディスフォーリア、掻痒、尿閉、呼吸の低下、乳頭収縮、心血管影響、胸壁硬直および咳の抑制、ストレス応答の低下、および麻酔性鎮痛薬の使用に関連する免疫抑制等、またはその組み合わせの治療、予防、改善、遅延、または減少させるのに有利でありうる。かくして、提供される化合物または組成物の使用は、オピオイドを受容する対象の生活の質の見地から、ならびに慢性便秘から生じる合併症、例えば、痔、食欲抑制、粘膜破壊、敗血症、直腸癌の危険性、および心筋梗塞を減少させるために有益でありうる。
【0120】
いくつかの具体例において、提供される化合物または組成物は、急性オピオイド投与を受けている対象への投与に有用である。いくつかの具体例において、提供される化合物または組成物は、術後胃腸機能不全に罹患している対象への投与に有用である。
【0121】
他の具体例において、提供される化合物または組成物は、また、慢性オピオイド投与を受けている対象(例えば、オピオイド療法を受けている末期患者、例えば、AIDS患者、癌患者、心血管患者;疼痛管理のための慢性オピオイド療法を受けている対象;オピオイド離脱の維持のためのオピオイド療法を受けている患者)への投与に有用である。いくつかの具体例において、対象は、慢性疼痛管理のためにオピオイドを用いている対象である。いくつかの具体例において、対象は、末期患者である。他の具体例において、対象は、オピオイド離脱維持療法を受けている人である。
【0122】
提供される化合物または組成物に関する別法または付加的な使用は、例えば、内皮細胞(例えば、血管内皮細胞)の異常な移動または増殖、血管形成の増加、および日和見感染病原体(例えば、Pseudomonas aeruginosa)由来の致死因子産生の増加を包含するオピオイド使用の影響を治療、減少、阻害または予防するためであってもよい。提供される化合物または組成物の付加的な有利な使用は、オピオイド誘導性免疫抑制の治療、血管形成の阻害、血管増殖の阻害、疼痛の治療、炎症性腸症候群などの炎症状態の治療、感染性疾患および筋骨格系の疾患、例えば、骨粗鬆症、関節炎、骨炎、骨膜炎、ミオパシーの治療、および自己免疫疾患の治療を包含する。
【0123】
ある特定の具体例において、提供される化合物または組成物は、限定するものではないが、過敏性大腸症候群、オピオイド誘導性腸機能不全、大腸炎、術後または分娩後イレウス、悪心および/または嘔吐、胃運動および内容排出の減少、胃の阻害、ならびに小さい、および/または大きい腸推進力、非推進性分節性収縮の幅の増加、オッジ括約筋の収縮、肛門括約筋の緊張の増加、直腸拡張を伴う反射性弛緩異常、胃液、胆汁、膵液または腸液分泌の低下、腸内容物からの水の吸収増加、胃食道逆流、胃不全麻痺、筋けいれん、膨満、腹または上腹部の疼痛および不快、便秘、特発性便秘、腹部手術(例えば、結腸切除(例えば、右半結腸切除、左半結腸切除、横行半結腸切除、結腸切除テイクダウン(takedown)、低位前方切除))後の術後胃腸機能不全、および経口投与された医薬または栄養物質の吸収の遅延を包含する胃腸機能不全を予防、阻害、減少、遅延、低下または治療する方法において使用されうる。
【0124】
提供される化合物または組成物の提供される形態は、また、血管形成を伴う癌、免疫抑制、鎌状赤血球貧血、血管創傷、および網膜症を包含する病態の治療、炎症関連障害(例えば、過敏性大腸症候群)、免疫抑制、慢性炎症の治療において有用である。
【0125】
まださらなる具体例において、提供される化合物または組成物の使用の獣医学的適用(例えば、家畜、例えば、ウマ、イヌ、ネコなどの治療)が提供される。かくして、ヒト対象について上記で論じられたものと類似の獣医学的適用において提供される処方の使用が意図される。例えば、ウマの胃腸運動の阻害、例えば、疝痛および便秘は、ウマにとって致命的でありうる。疝痛に罹患したウマが経験する疝痛の結果生じる疼痛は、死誘導ショックをもたらすことができ、一方、長期の便秘もまた、ウマの死を引き起こしうる。末梢性オピオイド受容体アンタゴニストでのウマの治療は、例えば、米国特許公報第20050124657号(2005年1月20日公開)において記載されている。
【0126】
また、当然のことながら、提供される化合物または組成物は、組み合わせ療法において使用することができる。すなわち、提供される化合物または組成物は、1以上の他の所望の治療薬または医学的手法と同時に、1以上の他の所望の治療薬または医学的手法の前に、または1以上の他の所望の治療薬または医学的手法の次に投与することができる。組み合わせ計画に用いるための特定の組み合わせ療法(治療薬または手法)は、所望の治療薬および/または手法ならびに達成されるべき所望の治療効果との適合性を考慮に入れるであろう。また、当然のことながら、用いられる療法は、同じ障害に望まれる効果を達成してもよく(例えば、処方は、同じ障害を治療するために使用される別の化合物と同時に投与されうる)、またはそれらは、異なる効果を達成してもよい(例えば、いずれかの負の影響の制御)。本明細書中で使用される場合、特定の疾患または病態を治療または予防するために通常投与される付加的な治療化合物は、「治療されている疾患または病態に適当」なものとして知られている。
【0127】
他の具体例において、提供される化合物または組成物、および単位投与形態は、限定するものではないが、オピオイド使用の副作用(例えば、胃腸副作用(例えば、腸運動の阻害、GI括約筋収縮、便秘)、悪心、嘔吐、ディスフォーリア、掻痒など)またはその組み合わせの治療に有用な医薬を包含する医薬の調製に有用である。本発明の化合物、およびその医薬上許容される組成物および処方は、急性オピオイド療法を受けている患者(例えば、急性オピオイド投与を受けている術後胃腸管機能不全に罹患している患者)または慢性的にオピオイドを用いている対象(例えば、オピオイド療法を受けている末期患者、例えば、AIDS患者、癌患者、心血管患者;疼痛管理のための慢性オピオイド療法を受けている対象;オピオイド離脱の維持のためのオピオイド療法を受けている対象)の治療において有用な医薬の調製に有用である。またさらに、疼痛の治療、炎症状態、例えば、炎症性腸症候群の治療、感染性疾患の治療、筋骨格系の疾患、例えば、骨粗鬆症、関節炎、骨炎、骨膜炎、ミオパシーの治療、自己免疫疾患および免疫抑制の治療、腹部手術(例えば、結腸切除(例えば、右半結腸切除、左半結腸切除、横行半結腸切除、結腸切除テイクダウン(takedown)、低位前方切除)後の術後胃腸機能不全、特発性便秘、およびイレウス(例えば、術後イレウス、分娩後イレウス)の療法、および血管形成、慢性炎症および/または慢性疼痛を伴う癌、鎌状赤血球貧血、血管創傷、および網膜症などの障害の治療において有用な医薬の調製に有用である。
【0128】
またさらに、本願発明には、提供される化合物および組成物、および容器(例えば、ホイルまたはプラスチックパッケージ、または他の適当な容器)を含む医薬パックおよび/またはキットが包含される。かかるキットには、使用説明書が付加的に提供されていてもよい。
【0129】
本明細書に記載のように、本発明は、(R)−N−メチルナルトレキソンブロマイドの試料の純度の測定方法を提供する。ある具体例において、かかる方法は、標準試薬を用いることができる。「標準試薬」なる用語は、本明細書で用いられる場合、米国薬局方に定義されるように、「薬剤物質、賦形剤、不純物、分解生成物、栄養補助剤、公定書試薬および性能較正剤の、高度に特徴付けられた標本(正式なUSP-NF試験およびアッセイを行うのに使用することが要求されている)」を意味する。当業者には明らかなように、USP標準試薬はまた、較正剤(例えば、粒子数、融点および滴定の標準化、ブランクおよび対照として)としても用いられる。標準試薬は、主に、クロマトグラフィーおよび分光光度法において用いられる。ある具体例において、本発明は、標準試薬としての化合物II−1を提供する。いくつかの具体例において、本発明は、下記実施例1に詳細に記載するように、化合物II−1標準試薬および任意に1つまたはそれ以上の(R)−N−メチルナルトレキソンブロマイド、不純物B、不純物C、不純物D、不純物E、不純物F、不純物G、不純物H、および不純物Iの標準試薬を含むキットを提供する。
【0130】
本明細書中に記載の発明がより十分に理解されるように、下記の実施例を示す。これらの実施例は、単なる例示目的であり、如何なる方法においても、本願発明を限定するものとして解釈されるものではないことが理解されるべきである。
【0131】
本発明の各態様の全ての特徴は、適宜変更して、全ての他の態様に準用する。
【実施例】
【0132】
実施例
一般的手法
化合物III−1は、例えば、WO2006/127899(出典明示により本明細書に組み入れる)に詳細に記載されている方法に従って調製することが出来る。
質量分析は、Agilent 1100 HPLCシステムと正イオン化モードで操作するエレクトロスプレーイオン化イオン源を備えたApplied Biosystems−PE SCIEX QSTAR PULSAR i 四重極飛行時間タンデム質量分光計を用いて測定した。HPLC溶出液は、質量分光計のイオン源に約50μL/分で流れるように分割した。
化合物II−1のNMRスペクトル分析はDMSO−d6で行い、そのスペクトルは、三重共鳴逆検出(TXI)プローブを備えたBruker DRX−500 NMR分光計で得た。TMSをプロトン共鳴用の内部標準として用い(δ1H、0.00)、溶媒DMSO−d6を、炭素共鳴の内部標準として用いた(δ13C、39.5)。
【0133】
以下の略語を本明細書で用い、その意味は以下の通りである:
【表1】
【0134】
実施例1
RRT0.60の単離および特徴付け
予め、メチルナルトレキソン(化合物III−1)の少なくとも3つの分解生成物を、20mg/mL等張性セイライン溶液でHPLCにより同定した(生成物をHPLCで分析した場合、約0.72、0.89、および1.48でのピークとして同定した)。例えば、米国特許出願第20040266806号(2004年12月30日公開)およびWO2008/019115(2008年2月14日公開)を参照のこと。メチルナルトレキソン−含有プレフィルドシリンジが、分解生成物について試験された。約0.60でのRRTを有する新規分解生成物が観察された。図1は、プレフィルドシリンジの40℃および75%相対湿度、6ヶ月後での安定性試験のLC/MS結果を示す。
【0135】
HPLC分析について、Prodigy ODS−3 15cm×2.0mm、3μm粒子(Phenomenex)HPLCカラム、流速0.25mL/分、下記溶出液を用いた:
移動相:強度(定組成:75:25(v/v)水中0.1%TFA/メタノール
純度:(勾配):
移動相A=95:5(v/v)水中0.1%TFA/メタノール
移動相B=35:65(v/v)水中0.1%TFA/メタノール
【0136】
勾配プログラム:
【表2】
カラム温度:50℃
流速:0.25mL/分
検出:UV,280nmまたは310nm
注入量:20μL
サンプル溶媒:0.05Mの二塩基性リン酸ナトリウム、pH6.8
【0137】
以下の化合物および公知の不純物の基準を、計算した相対保持時間(「RRT」)および相対係数因子(「RRF」)について同定した。
【0138】
化合物 RRT RRF
不純物A:ジオール分解物(II−1) 0.60 0.0068
不純物B:環縮小 0.79 1.00
不純物C:キノン分解物 0.89 0.0126
不純物D:S−メチルナルトレキソンブロマイド 0.91 1.09
メチルナルトレキソンブロマイド 1.00 1.00
不純物E:ナルトレキソン塩基 1.16 0.79
不純物F:2,2,ビス−メチルナルトレキソンブロマイド1.45 0.54
不純物G:O−メチルナルトレキソンメトブロマイド 1.55 1.08
不純物H:アルドールダイマー 1.64 0.86
不純物I:ホフマン脱離 2.26 0.16
【0139】
「環縮小」と称されるRRT0.79分解物の不純物Bは、(R)−N−メチルナルトレキソンブロマイドの環縮小形態として同定され、下記構造式:
【化23】
を有する。
【0140】
「キノン分解物」と称されるRRT0.89分解物であり、本明細書で化合物IV−1とも称される不純物Cは、(R)−N−メチルナルトレキソンブロマイドの光分解生成物として同定され、下記構造式:
【化24】
を有する。
【0141】
ある具体例において、本発明は、1つまたはそれ以上の不純物A、不純物B、不純物C、不純物D、不純物E、不純物F、不純物G、不純物H、および不純物Iを含む組成物を提供する。いくつかの具体例において、本発明は、(R)−N−メチルナルトレキソンブロマイド、不純物A、不純物B、不純物C、不純物D、不純物E、不純物F、不純物G、不純物H、および不純物Iの各々を含むバイアルを含むキットを提供する。ある態様において、本発明は、(R)−N−メチルナルトレキソンブロマイド、不純物A、不純物B、不純物C、不純物D、不純物E、不純物F、不純物G、不純物H、および不純物Iの各々を含み、各不純物化合物が別個のバイアルに含まれるキットを提供する。
【0142】
「ジオール分解物」と称されるRRT0.60化合物である不純物Aは、単離され、特徴付けられ、化合物II−1に対応する。具体的には、LC/MSを、(R)−N−メチルナルトレキソンプレフィルドシリンジ安定試料においてRRT0.60で溶出される未知のピークに対して行った。図2は、RRT0.60に関して得られた、総イオンクロマトグラム(TIC)、UVクロマトグラム(λ=280nm)、マスおよびUVスペクトルを示す。UVスペクトルは、310nm付近で独自の吸収を示し、これは、約0.89RRTで以前に同定されたキノン化合物と類似する。
【0143】
測定された372.1809amuの精密質量は、C21H26NO5+の原子組成(誤差:0.4mDa)に対応する。その分子式は、未知のピークが、上記したキノン化合物よりも1個多い酸素原子を含むことを示している。
【0144】
実施例2
化合物II−1およびII−3の合成:
【化25】
【0145】
方法A
化合物III−1の溶液を、1MのTRIS(pH8)バッファー中に溶解し、H2O2(30%)を1:1.2のモル比で加えた。HPLC注入前に、反応をTFAを添加して停止させると、溶液は褐色/赤色から黄色に変化した。溶液を、Sunfireカラム(50×250mm、C18、5μm)を取り付けた分取HPLCに注入した(流速100mL/分、移動相:6%MeOH/0.25%TFAで開始して1分、ついで、30分で12%MeOH/0.25%TFA勾配に変更した)。回収したフラクションを、2部の水で希釈し、化合物を、逆相高分子吸着剤(Strata−X、Phenomenex)に吸収させた。カラムを減圧下に置いて、全ての残った液体を除去し、アセトニトリルを用いて化合物を溶出した。
【0146】
約20%水を溶出液に加え、ついで、ブロマイドでチャージした強アニオン交換カラム(Strata−SAX、Phenomenex)に通した。アセトニトリルを、ジクロロメタンで抽出して溶出液から除去した。水層のpHを4.2(加水分解を回避するのに最適な酸性度)に調節し、ついで、凍結乾燥して、赤色粉末を得た。化合物を、赤色粉末を水に溶解し、70℃の水浴に溶液を置いてすぐに結晶が生させることにより結晶化した。結晶を濾過し、減圧下で乾燥して、化合物II−1を赤色結晶として得た。得られた結晶性化合物II−1のX線回折パターンを、図12に示す。得られた結晶性化合物II−1の質量スペクトルを、図13に示す。得られた結晶性化合物II−1の1H NMRを、図14に示す。
【0147】
方法B
化合物III−1の溶液を、1MのTRIS(pH8)バッファーに溶解し、H2O2(30%)を、1:2のモル比で加えた。室温にて約30分後、反応をTFAを添加して停止させると、溶液は、褐色/赤色から黄色に変化した。溶液を、Sunfireカラム(50×250mm、C18、5μm)を取り付けた分取HPLCに注入した(流速、100mL/分、移動相:6%MeOH/0.25%TFAで開始して1分、ついで、30分で12%MeOH/0.25%TFA勾配に変更した)。回収したフラクションをすぐに冷凍し、凍結乾燥して、黄色固体として化合物II−3を得た。
【0148】
化合物II−3を形成する化合物III−1とH2O2の反応を、異なるpH条件下で行って、反応に与えるpHの影響を測定した。酸性pHで、化合物III−1とH2O2の反応が非常にゆっくりになり、塩基性pHで、pHが増加するに従い、反応がより早くなったことが見出された(図3を参照)。
【0149】
化合物II−3の構造解明を、以下に詳細に記載されているように、UVスペクトル;ESI−MS;MS/MS;1HNMR、13CNMR、および2次元NMR法を用いて行った。位置番号を書きに示す。
【0150】
NMR結果
1Hおよび13C NMR共鳴を、COSY、HSQC、HMBCおよびROESYスペクトルを用いてアサインした。アサインメントを下記表1に示す。
表1.DMSO−d6中の化合物II−1に関する1Hおよび13C共鳴アサインメント
【表3】
【0151】
COSYスペクトル(図6)は、すべての1H−1Hスピン系が、キノン化合物である不純物Dで観察されたものと、H−5を除いて同じであることを示している。キノン化合物である不純物Dは、C−5が、2つの分解されたジアステレオプロトンを有するメチレン炭素であり、化合物II−1において、H−5は、δ5.08でのメチンプロトンである。C−5メチンの存在は、酸素に結合した典型的な化学シフトであるδ74.8で炭素に結合していることを示す、HSQCスペクトル(図7)により確認された。
【0152】
1H NMRスペクトル(図8)において、δ12.21および8.58で観察される2つのヒドロキシルプロトンがあり、それぞれ、C−4およびC−5OH基であることがアサインされた。これらのダウンフィールド化学シフトおよびブロードピークは、これらが互いに非常に接近していることを示しており、下記に示すように、C−5ヒドロキシルがα配置であることを示す。
【0153】
HMBCスペクトル(図9)は、C−5のヒドロキシル基が、下向きであることのさらなる証拠を与えている。H−5は、下記するように同一平面にない関係を必要とする、C−12に対するつよい3つの結合相関を示している。
【化26】
【0154】
H−5のアキシアル配置は、ROESYスペクトル(図10)によって確認された。H−5は、δ6.82でC−14−OHに対し、δ2.70でH−8に対し、およびδ2.50でH−14に対し、1,3−ジアキシアル型のNOEを示した。化合物II−3の13C NMRスペクトルを、図11に示す。
【0155】
実施例3
合成化合物II−3および単離したRRT0.60の比較
実施例2,方法Bに従って調製した化合物II−3を、LC−MSにより分析した。図2に示されるように、約9分で溶出される主なピークは、RRT0.60ピークのものと同じ質量およびUVスペクトルを有する。また、測定した372.1785amuの精密質量は、同じイオン式を与える(誤差:−2.0mDa)。加えて、実施例2,方法Bで調製された化合物II−3を、実施例1に記載した安定性試験から得られた試料に混ぜた。図4は、混ぜていない、および混ぜた試料の両方のUVクロマトグラムを示す。RRT0.60でのピークは、明らかに、合成化合物II−3が、同じ化合物であることを示している。LC−MS/MSを、m/z372のイオンについて行い、構造情報を得た。RRT0.60ピークおよび合成試料のMS/MSデータを、図4の下2つのボックスに示す。合成化合物が、より良好なフラグメントイオン強度を与えているが、両方のスペクトルは全く同じである。NMRデータに基づく化学構造のフラグメンテーションアサインメントを図5に示す。LC/MSデータは、NMR試験により測定された構造と一致した。
【0156】
実施例4
酸化方法の評価:
【化27】
【0157】
実施例2に記載したように、化合物II−1を、化合物III−1をH2O2で酸化することにより調製した。さらなる酸化剤のスクリーニングを、酸化反応の収率および純度を最適化するために行った。行った反応のまとめを、下記表Aから表Eに示す。本明細書で用いられる場合、「SLI」なる用語は、単一の最も多い不純物を意味する。
【0158】
下記表Aに要約されるように、反応を、1当量の異なる酸化剤を用いて、室温で行った。
個々の反応に関して、0.5gのIII−1を、6mLのTRIS・HCl(1M、pH8.0)と水中で合した。酸化剤(1当量)を加え、得られた混合物を室温にて指定時間撹拌した。すべての反応を、280nMでHPLCによりモニターした。記録された%値は、クロマトグラムから得られたそのものである。
【0159】
【表4】
【0160】
下記表Bに要約されるように、酸化反応を、酸化剤の当量(すなわち、酸化剤)および反応時間を変化させて行った。
個々の反応について、0.5gのIII−1を、6mLの水中TRIS・HCl(1M、pH8.0)と合し、約10℃に冷却した。酸化剤(特定量)を加え、得られた混合物を室温にて所定の時間撹拌した。
【0161】
【表5】
【0162】
下記表Cに要約されるように、酸化反応を、H2O2およびtBHPで、当量を変化させ、室温にて長時間撹拌して行った。
個々の反応に関して、0.5gのIII−1を、6mLの水中TRIS・HCl(1M、pH8.0)と合した。酸化剤を加え、得られた混合物を所定の時間撹拌した。
【0163】
【表6】
【0164】
下記表Dに要約されるように、酸化反応を、tBHPで、当量を変化させ、長時間、高い温度(35℃)で行った。
個々の反応について、0.5gのIII−1を、6mLの水中TRIS・HCl(1M、pH8.0)と合した。酸化剤を所定の量で加えて、反応物を35℃で所定の時間撹拌した。
【0165】
【表7】
【0166】
下記表Eに要約されるように、酸化反応を、tBHPを用い、溶媒を変更して行った。
個々の反応について、0.5gのIII−1を、3mLのTRIS・HClバッファー(1M、pH8.0)および所定の溶媒(3mL)と合した。70%のTBHP(5当量)を加え、得られた混合物を室温にて48時間撹拌した。
【0167】
【表8】
【0168】
実施例5
タングステート安定性試験
短期評価を、高温および酸素曝露のストレス条件下でのRRT0.60の形成について、タングステートのメチルナルトレキソンブロマイドに与える影響を調査するために行った。ストレス試料について、処方に、1mMのタングステン酸ナトリウムを加え、酸素を室温にて1時間散布した。ついで、溶液を121℃で1時間オートクレーブした。各々の溶液をタングステート、酸素または熱への曝露なしに調製し、対照試料を調製した。
【0169】
上記したストレス条件後、タングステン、酸素および熱に曝露した試料は、28ppmのRRT0.60分解物を精製した。この分解物は、対照試料においてはより低レベルで観察された。この研究に基づいて、タングステンは、RRT0.60分解物の形成の触媒を補助し得る。対照試料で観察されたRRT0.60分解物のレベルは、温度および酸素含量もまた、この酸化分解反応の要因であることを示す。
【0170】
【表9】
【0171】
18ヶ月の長期評価を、標準的な滅菌、無菌、充填可能(SCFTM)シリンジ(1mL Becton Dickinson(BD)シリンジ、タイプ1 ホウケイ酸ガラス、ステンレス鋼針 27G×1/2インチ、BD Stopper 11510、West 4023/50 灰色ブロモブチルラバー、コーティング:接触部をDaikyo Fluro Tec、残りの部分を、B2−40コーティング、BD Rigid Needle Shield、FM27/0ラバーニードルシールドおよびポリプロピレン密閉カバー)における標準条件下でのRRT0.60の形成について、タングステートのメチルナルトレキソンブロマイドに与える影響を調査するために行った。この研究において、8mgメチルナルトレキソン単位用量(2.6mg塩化ナトリウム、0.16mgエデト酸カルシウム二ナトリウム、および0.12mgグリシンヒドロクロライドを含有する、0.4mLの水中の8mgメチルナルトレキソン)または12mgメチルナルトレキソン単位用量(3.9mg塩化ナトリウム、0.24mgエデト酸カルシウム二ナトリウム、および0.18mgグリシンヒドロクロライドを含有する、0.6mLの水中の12mgメチルナルトレキソン)のいずれかを含有するシリンジを、下記条件下で貯蔵した:25℃/60%RH、30℃/75%RH、および40℃/75%RH。この試験の結果は、RRT0.60化合物が、25℃および60%RHで、40ppmのレベル、30℃および75%RHで204ppmまでのレベルで形成したことを示している。40℃および75%RHで6ヶ月では、145ppmが観察された。これらの結果を、下記表2に示す。
【0172】
【表10】
【0173】
他の安定性試験を、RRT0.60形成について、「超低量」タングステンシリンジ(Becton Dickenson)中でのメチルナルトレキソンブロマイドの貯蔵での影響を評価するために行った(1mL BDシリンジ、タイプ1、ホウケイ酸ガラス、ステンレス鋼針 29G×1/2インチ、(超低量タングステン)、BD Stopper 11510、West 4023/50 灰色ブロモブチルラバー、コーティング:接触サイドをDaikyo Fluro Tec、残りの部分をB2−40コーティング、BD Rigid Needle Shield、熱可塑性エラストマー(TPE)ニードルシールドおよびポリプロピレン密閉カバー)。この試験の結果は、40℃および75%相対湿度で6ヶ月または25℃および60%相対湿度で9ヶ月後でも、25ppmまたはそれ以上で形成したRRT0.60化合物はないことを示す。これらの結果を下記表3に示す。
【0174】
【表11】
【0175】
実施例6
化合物II−1多形のX線回折試験
実施例2,方法Aに従って調製した化合物II−1多形の粉末XRDを、X’PERT−MPD粉末X−線回折計で行った。
試料を微粉末に挽き、ゼロバックグラウンドプレートを有する中空型試料ホルダー中にパックした。粉末X線回折のアングルポジション(2θ)により特徴付けられたピーク位置を、図15に示す。ある具体例において、本発明は、実質的に図15に示されるものと同じ粉末X線回折パターンを有する形態であることにより特徴付けられる、化合物II−1の結晶形態を提供する。
【0176】
実施例7
HPLC方法
本明細書に記載のように、メチルナルトレキソンブロマイドの可能性ある不純物の検出および定量は、薬剤の質および純度の面で、重要であり、規定されている。本発明の他の態様において、本明細書ではRRT0.60分解物、不純物または化合物および化合物II−1とも称される不純物Aの、規制基準に要求されるレベルでの検出に有用な分析方法を提供する。ある具体例において、分析方法は、不純物Aを、N−メチルナルトレキソンブロマイドの試料中約2.5ppmのレベルで検出可能である。いくつかの具体例において、分析方法は、不純物Aを、N−メチルナルトレキソンブロマイドの試料中、約25、約100、約125、約150、約185、約187、または約190ppm未満のレベルで検出可能である。ある具体例において、かかる分析方法は以下の通りである:
カラム:Prodigy ODS(3)15cm×4.6mm、3μm粒子;
流速:1.0mL/分;
検出:310nmUV;
カラム温度:37℃;
オートサンプラー温度:5℃;
試料溶媒:EDTA含有酢酸ナトリウムバッファー(pH5.0)(3Lの水中に約238gのNaOAcを溶解し、45mLの氷酢酸を加え、水で50Lに希釈して調製した);
移動相A=950mL/50mL/1mLの水/メタノール/TFA;
移動相B=500mL/500mL/1mLの水/メタノール/TFA;
勾配プログラム:
【表12】
【0177】
0.0004mg/mLの濃度でのN−メチルナルトレキソンブロマイドの標準試料の調製は、以下のように行う:20mgのN−メチルナルトレキソンブロマイドを、2つの別個の100.0mL容量フラスコに量り取る。50mLの試料溶媒を加えて、N−メチルナルトレキソンブロマイドを溶解し、得られた溶液を試料溶媒で希釈する。2.0mLの得られた溶液を、ピペットで、第二の100mL容量フラスコに量り取り、ついで、これを試料溶媒で希釈する。
(R)−N−メチルナルトレキソンブロマイドの試料中に存在する化合物II−1の量は、下記式を用いて計算する:
化合物II−1(ppm)=(Ai)(Cr)(V)(RF)(1000000)
(Ar)(Ws)
式中:
Ai=試料クロマトグラムからの不純物ピークの面積;
Cr=(R)−N−メチルナルトレキソンブロマイドの標準品における濃度(mg/mL);
V=試料溶液の体積(mL);
RF=化合物II−1に関する応答係数相関;
1000000=変換係数(ppm);
Ar=標準クロマトグラムからの(R)−N−メチルナルトレキソンブロマイドの平均面積;
Ws=(R)−N−メチルナルトレキソンブロマイドの試料重量(mg).
【0178】
実施例8
タングステン、またはその誘導体のレベルは、US20080103438に記載の方法を含むいずれの技術により測定することができる。空のシリンジ中のタングステン、またはその誘導体のレベルは、抽出、ついで、ICP−MS分析により測定することができる。かかる抽出および分析方法は当業者に公知であり、EPA Methods 6020Aおよび200.8に記載のものを含む(出典明示により本明細書に組み入れる)。
【0179】
個別の方法は、どの程度積極的にタングステンまたはその誘導体を、医療用ガラス容器から除去するかに応じて、個別の結果を与える(すなわち、例えば酸を用いるより積極的な方法は、より高いレベルのタングステン残渣を除去する)。例えば、Wang,et al.,Journal of Pharmaceutical and Biomedical Analysis,19(1999)937−943,「Determination of Tungsten in Bulk Drug Substance and Intermediates by ICP−AES and ICP−MS」(出典明示により本明細書に組み入れる)に記載のように、医療用ガラス容器を、酸含有溶液で洗浄、すなわち、抽出し、抽出物をタングステンについて測定することができる。同様の方法を、タングステン−含有残渣レベルの測定に用いることができる。
【0180】
以下の方法は、空のシリンジ中に存在するタングステンの量を測定するのに用いることができる一般的な方法である:
1.医療用ガラス容器(例えば、空シリンジ)に、精製水(例えば、研究精製システム、Millipore Milli Ro 4により調製)を充填し、医薬用ガラス容器を密封する(例えば、チップキャップで);
2.充填した医療用ガラス容器を、常温で60分間、水を含む超音波浴に置く;
3.医療用ガラス容器を取り出し、溶液を試料容器に分配する;および
4.Inductively Coupled Plasma Mass Spectrometry(ICP/MS)により溶液中のタングステンの濃度を測定する。
【0181】
実施例9
【化28】
【0182】
上記一般スキームに従って、化合物III−1の溶液を、1MのTRIS(pH8)バッファー中に溶解し、t−ブチルヒドロペルオキシド(5モル当量)を加え、得られた混合物を室温にて2日間撹拌した。反応をTFAを添加して停止させ、溶液をジクロロメタンで抽出した。水相を分離し、HPLC注入用に濃縮した。分取HPLC精製を、Sunfireカラム(50×250mm、C18、5μm、Waters)(流速50mL/分、5%ACN/0.1%TFAで開始し、30分にわたって10%ACN/0.1%TFA勾配に変化させる移動相)で行った。回収したフラクションを凍結乾燥し、第一の工程と同様の第2の精製工程に付した。プールしたフラクションを、逆相SPE(固相抽出)チューブ(Strata−X、Phenomenex)に付し、これを減圧下において残りの溶媒をすべて除去した。ついで、20%アセトニトリル/水を用いて化合物を抽出し、ついで、臭化ナトリウムで前処理した強アニオン交換SPEチューブ(Strata−SAX、Phenomenex)に通した。回収した溶液を凍結乾燥して、化合物II−1を赤色粉末として得た。
【0183】
より具体的には、100gN−(シクロプロピルメチル)−モロキシモルホンメトブロマイド(III−1)を、熱電対を備えた磁気撹拌2lフラスコにチャージし、ついで、600mlのトリス(ヒドロキシメチル)アミノエタンを加えた。ついで、スラリーに、180mlの70%t−ブチルヒドロペルオキシド(5当量)を加え、この時点で、スラリーは溶液になり、ゆっくりと暗い色になった。溶液を常温で69時間撹拌し、HPLCにより62−67%変換と測定された。ついで、溶液に、20mlのトリフルオロ酢酸を加えてpH2とし、800mlの塩化メチレンで洗浄した。層を分離し、再び水層を200ml塩化メチレンで洗浄した。消費した有機フラクションを合し、2×200ml水で逆抽出した。ついで、すべての水性を合して、2×400mlのフラッシュ塩化メチレンで洗浄した。ついで、層を分離し、化合物II−3を含有する水性部分(約1.1L)を単離し(収率は不明)、精製工程まで−20℃で貯蔵した。変換%の評価に利用した分析方法は、以下の通りであった:
【0184】
粗水性生成物の分析方法
Agilent 1100 HPLC
カラム:4.6mm×150mm Sunfire C18
λ280nm
流速:1ml/分
勾配:
【表13】
【0185】
粗化合物II−3を、下記方法を用いる分取HPLCにより精製した。
Varian Prostar 320 Detectorを有するVarian PrepStar ポンプ
カラム:50mm×250mm Sunfire C18 5ミクロン
λ260nm
流速:50ml/分
勾配
【表14】
【0186】
第一の段階の分取HPLC精製は、注入あたり100mlを注入し、オートフラクションコレクターを用いて50mlフラクションを回収することにより行った。典型的には、フラクション15−22を回収し、合し、凍結乾燥した。
【0187】
第二の段階の分取HPLC精製は、回収した粗TFA塩物質(粗II−3)を、各々約2g充填し、20ml水で希釈し、同じ勾配および同じバッファー系でカラムに戻した。フラクション23−29を、典型的には回収し、合した。ついで、この合したフラクションを、水で1:1に希釈し、4つの等しい溶液に分け、ついで、4回Strata−X SPE Giga Tube(60ml、逆相樹脂トラップ)に付し、以下の方法で精製した:
・逆相カラムでのフラッシュプロシージャ(Strata×33ミクロン);
・3ベッド容量のアセトニトリル、ついで、3ベッド容量の水で溶出した;および
・チューブを5分間減圧乾燥し、ついで、所望のフラクションを、20%ACN−水で抽出して、回収した(約20ml×4)。
【0188】
合した溶液を、4つの等しい容量に分け、4回Strata SAX SPE Giga Tube(60ml、強アニオン交換樹脂)に付し、以下の方法で調製した:
・イオン交換カラムStrata SAX 55ミクロンのフラッシュプロシージャ;および
・3ベッド容量のアセトニトリル、ついで、3ベッド容量の1M臭化ナトリウム、ついで、5ベッド容量の水で溶出。
【0189】
所望のフラクションを回収し、無色の溶液が溶出されるまでチューブを20%ACN−水で洗浄した。合計で、約45ml×4を回収し、プールし、凍結乾燥した。
【0190】
複数のロットの凍結乾燥物質を、水中に再び溶解し(150mlの水中約16g)、凍結乾燥して、15.9gのII−1を暗赤色綿状固体として得た。
【0191】
本発明の多くの具体例を記載するが、これらの基本的な実施例は、本発明の化合物および方法を利用する他の具体例に改変することができることは明らかだろう。したがって、本発明の範囲は、実施例に示される特定の具体例よりも、特許請求の範囲により規定されることは明らかだろう。
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2008年9月30日に出願された米国仮特許出願番号第61/101,201号および2009年7月17日に出願された第61/226,581号(その全体として出典明示により、本明細書の一部とされる)に対する優先権を主張する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
オピオイドは、苦痛を軽減するために、進行性の癌および他の末期疾患の患者に幅広く使用される。オピオイドは、中枢神経系に位置するオピオイド受容体を活性化して疼痛を緩和する麻酔性医薬である。しかしながら、オピオイドは、中枢神経系の外にある受容体とも反応して、便秘、悪心、嘔吐、尿閉、および重篤な掻痒を包含する副作用をもたらす。最も顕著なものは、胃腸管(GI)における影響であり、ここに、オピオイドは、胃内容排出および腸の推進性の運動活性を阻害し、それにより、腸管輸送速度を減少させ、便秘をもたらす。疼痛に対するオピオイドの有効性は、しばしば、結果として生じる副作用のために制限され、該副作用は患者を衰弱させることがあり、しばしば、患者にオピオイド麻酔薬の使用を止めさせることとなる。
【0003】
麻酔性オピオイドにより誘発される副作用の他に、内在性オピオイド化合物および受容体もまた、胃腸(GI)管の活性に影響を及ぼすことがあり、動物および人間の両方における、腸運動および流体の粘膜輸送の正常な調節に関与しうることが研究により示唆されている(Koch,T.Rら、Digestive Diseases and Sciences 1991,36,712−728;Schuller,A.G.P.ら、Society of Neuroscience Abstracts 1998,24,524,Reisine,T.,およびPasternak,G.,Goodman & Gilman’s The Pharmacological Basis of Therapeutics Ninth Edition 1996,521−555およびBagnol,D.ら、Regul.Pept.1993,47,259−273)。かくして、内在性化合物および/または受容体活性の異常な生理学的レベルは、腸機能不全をもたらす。
【0004】
例えば、外科手術、特に、腹部の外科手術を受けた患者は、しばしば、天然オピオイドレベルの変動によって引き起こされうる術後(外科手術後)イレウスと呼ばれる特定の腸機能不全に罹患する。同様に、最近出産した女性は、一般に、出産ストレスの結果として生じる同様な天然オピオイドレベルの変動によって引き起こされると考えられる産後イレウスに罹患する。術後または産後イレウスに関連する胃腸管機能不全は、典型的に、3〜5日間続き、いくつかの重篤なケースでは、1週間以上続くこともある。術後の患者へのオピオイド麻酔薬の投与は、現在、最もよく行われている慣行であるが、腸機能不全を悪化させることがあり、それにより、正常な腸機能の回復を遅らせ、入院を長引かせ、医療費を増加させる。
【0005】
メチルナルトレキソン(「MNTX」)は、オピオイドアンタゴニスト、ナルトレキソンの誘導体であり、それゆえに、該アミンは四級化されている。MNTXは、通常、塩、例えば臭化水素酸塩として提供される。MNTXの臭化水素酸塩はまた、文献において:メチルナルトレキソンブロマイド;N−メチルナルトレキソンブロマイド;ナルトレキソンメトブロマイド;ナルトレキソンメチルブロマイド;およびMRZ2663BRとして公知である。MNTXは、最初に、Goldbergらにより、米国特許第4,176,186号に記載のように報告された。メチル基のナルトレキソンの環窒素への付加は、ナルトレキソンよりも、大きな極性を有し、脂溶性が低い荷電した化合物が形成され、MNTXがヒトの血液能関門の通過を通過することを防止すると考えられる。結果として、MNTXは、中枢神経系よりもむしろ末梢系においてその効果を発揮し、中枢神経系でのオピオイドの鎮痛効果を妨げないという利点を有する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
一般的に、医薬組成物は、薬剤の品質および純度の承認基準を満たすために、高レベルの純度が要求される。例えば、MNTXの合成および/または貯蔵の間、MNTXの治療効果を妨害する、および/または十分高い量で存在した場合毒性である不純物が形成し得る。かくして、MNTXの純度を測定することができる能力を有することが望まれている。これを受けて、MNTXの純度を確認する基準として、クロマトグラフィー法を用いることができる不純物および分解物を、同定、単離および化学的特徴付けることが重要である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
ある具体例において、本発明は、MNTXの不純物の同定、精製および合成に関する。この化合物は、MNTXの製造における不純物として、またはMNTXのある種の溶液がある条件下で貯蔵された場合の分解物として生じることが見出されている。したがって、ある具体例において、本発明は、式I:
【化1】
[式中、X−、R1、およびR2は、本明細書の記載と同意義である]
で示される化合物を提供する。いくつかの具体例において、末梢μオピオイド受容体アンタゴニストである化合物を提供する。所定の化合物の他の使用は、以下に記載する。
【0008】
本発明はまた、メチルナルトレキソンを含むプレフィルドシリンジ含有液体組成物を提供する。いくつかの具体例において、プレフィルドシリンジは、実質的にタングステンまたはその誘導体を含まない。かかるプレフィルドシリンジおよびその使用は、本明細書に詳細に記載される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】図1は、40℃および75%相対湿度で、6ヶ月後のメチルナルトレキソンプレフィルドシリンジの安定性試験のLC/MS結果を示す。
【図2】図2は、トータルイオンクロマトグラム(TIC)、UVクロマトグラム(λ=280nm)、RRT0.60ピークで得られたマスおよびUVスペクトルを示す。
【図3】図3は、化合物II−1を形成する化合物III−1とH2O2の反応に対するpHの影響を示す。
【図4】図4は、安定性試料のUVクロマトグラムおよび実施例2に従って調製された化合物II−1を混ぜた安定性試料のクロマトグラムを示す。
【図5】図5は、NMRデータに基づく化学構造を有する化合物II−1のフラグメントアサインメントを示す。
【図6】図6は、化合物II−1のCOSYスペクトルを示す。
【図7】図7は、化合物II−1のHSQCスペクトルを示す。
【図8】図8は、化合物II−1の1HNMRスペクトルを示す。
【図9】図9は、化合物II−1のHMBCスペクトルを示す。
【図10】図10は、化合物II−1のROESYスペクトルを示す。
【図11】図11は、化合物II−1の13CNMRスペクトルを示す。
【図12】図12は、結晶性化合物II−1のX線回折パターンを示す。
【図13】図13は、化合物II−1結晶のM+Hイオンの質量スペクトグラムおよび質量測定を示す。
【図14】図14は、化合物II−1の1HNMRスペクトルを示す。
【図15】図15は、結晶性化合物II−1のX線回折パターンを示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
1. 化合物および定義:
ある具体例において、本発明は、式I:
【化2】
[式中:
R1およびR2は、各々独立して、C1−6脂肪族であり;
X−は適当なアニオンである]
で示される化合物を提供する。
【0011】
「脂肪族」または「脂肪族基」なる語は、本明細書中で使用される場合、完全に飽和しているか、または1以上の不飽和単位を含有する直鎖(すなわち、分枝していない)または分枝炭化水素鎖、あるいは完全に飽和しているか、または1以上の不飽和単位を含有するが、芳香族ではない単環式炭化水素(本明細書中、「炭素環」、「環状脂肪族」または「シクロアルキル」ともいう)であって、分子の残部に対する単一の結合点を有するものを意味する。ある特定の具体例において、脂肪族基は、1−4個の脂肪族炭素原子を含有し、また他の具体例において、脂肪族基は、1−3個の脂肪族炭素原子を含有する。いくつかの具体例において、「環状脂肪族」(または「炭素環」)は、完全に飽和しているか、または1以上の不飽和単位を含有するが、芳香族ではない単環式C3−C6炭化水素であって、分子の残部に対する単一の結合点を有するものをいう。かかる環状脂肪族基は、シクロアルキル、シクロアルケニル、およびシクロアルキニル基を包含する。適当な脂肪族基は、限定するものではないが、直鎖状または分枝鎖アルキル、アルケニル、アルキニル基およびそのハイブリッド、例えば、(シクロアルキル)アルキル、(シクロアルケニル)アルキルまたは(シクロアルキル)アルケニルを包含する。例示的な脂肪族基は、アリル、ビニル、シクロプロピルメチル、メチル、エチル、イソプロピルなどを包含する。
【0012】
「不飽和」なる語は、本明細書中で使用される場合、ある基が1以上の不飽和単位を有することを意味する。
【0013】
「低級アルキル」なる語は、本明細書中で使用される場合、4個までの炭素原子、好ましくは、1〜3個の炭素原子、より好ましくは1〜2個の炭素原子を有する炭化水素鎖をいう。「アルキル」なる語は、限定するものではないが、直鎖および分子鎖、例えば、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチルまたはt−ブチルを包含する。
【0014】
本明細書中で使用される場合、化合物または医薬上許容される組成物の「有効量」は、所望の治療および/または予防効果を達成することができる。いくつかの具体例において、「有効量」は、末梢性μオピオイド受容体の変調に関連する障害または病態の1以上の症状、例えば、オピオイド鎮痛療法に関連する副作用(例えば、胃腸機能不全(例えば、運動不全便秘など)、悪心、嘔吐(例えば、吐き気)など)を治療するのに十分な化合物または化合物を含有する組成物の少なくとも最少量である。ある特定の具体例において、化合物、または化合物を含有する組成物の「有効量」は、異常内在性末梢オピオイドまたはμオピオイド受容体活性に関連する1以上の症状、疾患(例えば、特発性便秘、イレウスなど)を治療するのに十分である。
【0015】
「プレフィルドシリンジ」なる語は、薬剤生成物、例えばメチルナルトレキソンの溶液を含有するシリンジを意味し、対象による使用、例えば自己投与用に、または他人、例えば医療専門家による投与用にプレパックされている。ある具体例において、プレフィルドシリンジは、滅菌パッケージで提供される。いくつかの具体例において、かかるパッケージは、複数のプレフィルドシリンジを含有する。
【0016】
「対象」なる語は、本明細書中で使用される場合、哺乳動物を意味し、ヒトおよび動物対象、例えば、家畜(例えば、ウマ、イヌ、ネコなど)を包含する。
【0017】
「罹患」なる語は、本明細書中で使用される場合、患者が診断されている、または疑いのある1以上の病態をいう。
【0018】
「治療」なる語は、本明細書中で使用される場合、障害または病態、あるいは障害または病態の1以上の症状の部分的または完全な緩和、阻害、発症の遅延、予防、改善および/または軽減をいう。
【0019】
「治療上活性剤」または「活性剤」なる語は、予防および治療を包含する療法(例えば、ヒト療法、獣医学的療法)に有用な物質をいい、生物学的活性物質を包含する。治療上活性剤は、薬物化合物、ペプチド、タンパク質、炭水化物、単糖類、オリゴ糖、多糖類、核タンパク質、ムコタンパク質、リポタンパク質、合成ポリペプチドまたはタンパク質、タンパク質に結合した小型分子、糖タンパク質、ステロイド、核酸、DNA、RNA、ヌクレオチド、ヌクレオシド、オリゴヌクレオチド、アンチセンスオリゴヌクレオチド、脂質、ホルモン、およびビタミンである有機分子を包含する。治療上活性剤は、疾患、病態、または障害の治療、予防、遅延、軽減または改善のための医薬として使用されるいずれの物質をも包含する。なかでも、本発明の処方において有用な治療上活性剤は、オピオイド受容体アンタゴニスト化合物、オピオイド鎮痛性化合物などである。治療上活性剤として有用な化合物のさらに詳細な記載は下記する。治療上活性剤は、例えば、第2の化合物の効力を増幅または負の影響を減少することによって、第2の化合物の影響または有効性を増加させる化合物を包含する。
【0020】
「タングステンまたはその誘導体」なる用語は、タングステン、その塩、その酸化形態またはタングステン−含有合金を意味する。「タングステン」なる語は、「タングステン、またはその誘導体」なるフレーズと同じ意味で用いられる。
【0021】
「単位投与形態」なる表現は、本明細書中で使用される場合、治療すべき対象への投与に適当な本発明の処方の物理的に別個の単位をいう。しかしながら、本発明の組成物の全一日量が、健全な医学的判断の範囲内で担当の医師によって決定されることは、理解されるであろう。いずれかの特定の対象または生物に対する特定の有効投与レベルは、治療されている障害および障害の重篤度、使用される特定の活性剤の活性、使用される特定の組成物、対象の年齢、体重、総体的な健康状態、性別および食事、使用される特定の活性剤の投与時期および排出速度、治療期間、使用される特定の化合物と組み合わせて、または同時に使用される薬物および/または付加的な治療剤、および医学分野でよく知られた同様の因子を包含する種々の因子に依存するであろう。
【0022】
2. 例示的化合物の記載:
一般的に上記したように、本発明は、式I:
【化3】
[式中:
R1およびR2は、各々独立して、C1−6脂肪族であり;
X−は適当なアニオンである]
で示される化合物を提供する。
【0023】
当業者は、式Iに描かれた窒素原子がキラル中心であり、したがって、(R)または(S)配置のいずれかで存在できることを理解するであろう。一の態様によれば、本発明は、化合物が窒素に関して(R)配置である式Iの化合物を提供する。本発明のある特定の具体例において、式Iの化合物の少なくとも約99.6%、99.7%、99.8%、99.85%、99.9%、または99.95%が窒素に関して(R)配置である。
【0024】
一般的に上記で定義したように、式IのX−基は、適当なアニオンである。ある特定の具体例において、X−は適当なブレンステッド酸のアニオンである。例示的なブレンステッド酸は、ハロゲン化水素、カルボン酸、スルホン酸、硫酸、およびリン酸を包含する。ある特定の具体例において、X−は、塩化物、臭化物、ヨウ化物、フッ化物、硫酸塩、重硫酸塩、酒石酸塩、硝酸塩、クエン酸塩、重酒石酸塩、炭酸塩、リン酸塩、リンゴ酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、スルホン酸塩、メチルスルホン酸塩、ギ酸塩、カルボン酸塩、硫酸塩、メチル硫酸塩またはクエン酸塩である。ある具体例において、X−はトリフルオロアセテートである。一の態様によれば、X−は臭化物である。
【0025】
式Iの化合物が四級化窒素基およびフェノール性ヒドロキシル基の両方を含有することは、容易に理解される。当業者は、式Iの化合物のフェノール性ヒドロキシル基が式Iの化合物の四級化窒素と塩を形成できることを理解するであろう。かかる塩は、分子間相互作用を介して式Iの化合物の2つの分子間に形成することができ、または分子内相互作用を介して同じ化合物の基間に形成することができる。本発明は、かかる塩形態の両方を意図する。かくして、ある具体例において、本発明は、式I−a:
【化4】
[式中、R1およびR2は、各々独立して、C1−6脂肪族である]
で示される化合物を提供する。
【0026】
いくつかの具体例において、本発明は、式I−b:
【化5】
[式中、R1およびR2は、各々独立して、C1−6脂肪族であり;
X−は適当なアニオンである]
で示される化合物を提供する。
【0027】
ある具体例において、本発明は、R1がC1−4脂肪族であり、R2が低級アルキルである式Iで示される化合物を提供する。別の具体例において、R1基は、(シクロアルキル)アルキル基またはアルケニル基である。ある具体例によれば、R1はシクロプロピルメチルまたはアリルである。別の具体例において、R1はシクロプロピルメチルまたはアリルであり、R2はメチルである。いくつかの具体例において、R1はメチルであり、R2はシクロプロピルメチルまたはアリルである。
【0028】
一の具体例によれば、本発明は、式IIまたはII’:
【化6】
[式中、X−は、上記と同意義の適当なアニオンである]
で示される化合物を提供する。
【0029】
ある具体例において、本発明は、化合物II−a:
【化7】
で示される化合物を提供する。
【0030】
式IIの例示的化合物は、化合物II−1、II−2、およびII−3:
【化8】
を含む。
【0031】
他の態様によれば、本発明は:
(a)式IIIまたはIII’:
【化9】
[式中、A−は適当なアニオンである]
で示される化合物;
(b)式I:
【化10】
[式中:
R1およびR2は、各々独立して、C1−6脂肪族であり;
X−は適当なアニオンである]
で示される少なくとも一の化合物;および
(c)任意に、式IV:
【化11】
[式中:
R1およびR2は、各々独立して、C1−6脂肪族であり;
X−は適当なアニオンである]
で示される化合物を含む組成物を提供する。
【0032】
いくつかの具体例において、組成物は、経口投与用に処方される。ある具体例において、式IIIで示される化合物式Iで示される化合物、および、任意に式IVで示される化合物を含む組成物は、固体組成物であり:
(a)少なくとも約99.6%、99.7%、99.8%、99.85%、99.9%、または99.95%の式IIIで示される化合物は、窒素に関して(R)配置であり;
(b)式Iで示される化合物は、60、10、5、3.3、2.5、1ppm未満の量で存在する。
【0033】
別の具体例において、本発明は、式IIIで示される化合物、式Iで示される化合物、および式IVで示される化合物を含む組成物を提供し、ここに、式IおよびIVで示される化合物は、合計約60、約10、約5、約3.3、約2.5、または約1ppm未満の量で存在する。いくつかの具体例において、提供される固体処方は、固体処方の総重量に基づいて、約7%〜約75%または約25%〜約65%または約25%〜約55%または約40%〜約50%または約20%〜約40%の式IIIで示される化合物を含む。ある具体例において、提供される固体処方は、固体処方の総重量に基づいて、約7%、約8%、約10%、約20%、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%、または約75%の式IIIで示される化合物を含む。
【0034】
いくつかの具体例において、経口固体処方は、50mg、75mg、100mg、125mg、150mg、175mg、200mg、225mg、250mg、275mg、300mg、325mg、350mg、375mg、400mg、425mg、450mg、475mg、または500mg、525mg、550mg、575mg、600mg、625mg、650mg、675mg、700mg、725mg、750mg、775mg、800mg、825mg、850mg、875mg、900mg、925mg、950mg、975mg、1000mg、1025mg、1050mg、1075mg、1100mg、1125mg、1150mg、1175mg、1200mg、1225mg、1250mg、1275mg、1300mg、1325mg、1350mg、1375mg、1400mg、1425mg、1450mg、1475mg、1500mgの式IIIで示される化合物を含む。いくつかの具体例において、経口固体処方は、50mg〜900mg、または特に150mg〜450mgの式IIIで示される化合物を含む。いくつかの具体例において、経口固体処方は、75mg、150mg、225mg、300mg、450mg、600mg、または900mgの式IIIで示される化合物を含有する。ある具体例において、いずれの経口固体処方において、式IおよびIVで示される化合物は、合計約60、約10、約5、約3.3、約2.5、または約1ppm未満の量である。
【0035】
いくつかの具体例において、本発明は式IIIで示される化合物、式IIで示される化合物、および任意に式IVで示される化合物を含み、投与あたり1.5マイクログラム以下の式IIで示される化合物を与える、経口投与用固体処方を提供する。ある具体例において、本発明は、式IIIで示される化合物、式IIで示される化合物、および式IVで示される化合物を含み、投与あたり1.5マイクログラム以下の式IIで示される化合物および式IVで示される化合物を与える、経口投与固体処方を提供する。
【0036】
ある具体例において、かかる組成物は、液体処方に処方される。かかる液体処方は、2008年2月14日に公開されたWO2008/019115(出典明示により本明細書に組み入れる)に詳細に記載されている。いくつかの具体例において、本発明は、式IIIで示される化合物および式Iで示される化合物を含む組成物であって、組成物中の式Iで示される化合物の量が、約25、約100、約125、約150、約185、約187、または約190ppm未満である組成物を提供する。いくつかの具体例において、本発明は、式IIIで示される化合物、式Iで示される化合物、および式IVで示される化合物を含む組成物であって、式IおよびIVで示される化合物が、合計約25、約100、約125、約150、約185、約187、または約190ppm未満の量で存在する、組成物を提供する。
【0037】
一般的に上記で定義したように、式IのX−基は、適当なアニオンである。ある特定の具体例において、X−は適当なブレンステッド酸のアニオンである。例示的なブレンステッド酸は、ハロゲン化水素、カルボン酸、スルホン酸、硫酸、およびリン酸を包含する。ある特定の具体例において、X−は、塩化物、臭化物、ヨウ化物、フッ化物、硫酸塩、重硫酸塩、酒石酸塩、硝酸塩、クエン酸塩、重酒石酸塩、炭酸塩、リン酸塩、リンゴ酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、スルホン酸塩、メチルスルホン酸塩、ギ酸塩、カルボン酸塩、硫酸塩、メチル硫酸塩またはクエン酸塩である。ある具体例において、X−はトリフルオロアセテートである。一の態様によれば、X−は臭化物である。
【0038】
式Iの化合物が四級化窒素基およびフェノール性ヒドロキシル基の両方を含有することは、容易に理解される。当業者は、式Iの化合物のフェノール性ヒドロキシル基が式Iの化合物の四級化窒素と塩を形成できることを理解するであろう。かかる塩は、分子間相互作用を介して式Iの化合物の2つの分子間に形成することができ、または分子内相互作用を介して同じ化合物の基間に形成することができる。本発明は、かかる塩形態の両方を意図する。
【0039】
国際特許出願公開第WO2006/127899号は、化合物III−1、(R)−N−メチルナルトレキソン臭化物を記載し、下記の構造式:
【化12】
を有する。ここに、該化合物は、窒素に関して(R)配置にある。本発明のある特定の具体例において、化合物III−1の少なくとも約99.6%、99.7%、99.8%、99.85%、99.9%、または99.95%が窒素に関して(R)配置である。試料中に存在する(S)−N−メチルナルトレキソン臭化物の量と比較した場合の同試料中に存在する(R)−N−メチルナルトレキソン臭化物の量を決定する方法は、WO2006/127899(出典明示により、全体として本明細書の一部とされる)に記載されている。他の具体例において、化合物III−1は、0.15%以下の(S)−N−メチルナルトレキソン臭化物を含有する。
【0040】
ある特定の具体例において、本発明は、単離形態の本発明の化合物を提供する。本明細書中で使用される場合、「単離」なる語は、化合物の通常の環境(例えば、反応混合物、クロマトグラフィー溶出、医薬組成物等)において存在しうる他の成分から分離した形態で化合物が提供されることを意味する。ある特定の具体例において、単離化合物は固体形態である。いくつかの具体例において、単離化合物は、適当なHPLC法によって決定された場合、少なくとも約50%純粋である。ある特定の具体例において、単離化合物は、適当なHPLC法によって決定された場合、少なくとも約60%、70%、80%、90%、95%、98%または99%純粋である。
【0041】
ある具体例において、本発明は:
(a)式IIIおよび/またはIII’:
【化13】
[式中、A−は適当なアニオンである]
で示される化合物;
(b)少なくとも1つの式IIおよび/またはII’:
【化14】
[式中、X−は、本明細書に記載されるような適当なアニオンである]
で示される化合物;および
(c)任意に、式IV−aおよび/またはIV−a’:
【化15】
[式中、X−は、本明細書に記載されるような適当なアニオンである]
で示される化合物を含む組成物を提供する。
【0042】
ある具体例において、本発明は、式IIIで示される化合物、式IIで示される化合物、および、任意に、式IV−aで示される化合物を含む固形組成物を提供する:ここに
(a)少なくとも約99.6%、99.7%、99.8%、99.85%、99.9%、または99.95%の式IIIで示される化合物は、窒素に関して(R)配置であり;
(b)式IIで示される化合物は、60、10、5、3.3、2.5、1ppm未満の量で存在する。
【0043】
別の具体例において、本発明は、式IIIで示される化合物、式IIで示される化合物、および、任意に、式IV−aで示される化合物を含む組成物を提供する:ここに、式IIおよびIV−aで示される化合物は、合計で、約60、約10、約5、約3.3、約2.5、または約1ppm未満の量で存在する。
【0044】
ある具体例において、かかる組成物は、液体処方に処方される。いくつかの具体例において、本発明は、式IIIで示される化合物および式IIで示される化合物を含む液体組成物を提供し、ここに、組成物中の式IIで示される化合物の量は、約25、約100、約125、約150、約185、約187、または約190ppm未満である。いくつかの具体例において、本発明は、式IIIで示される化合物、式IIで示される化合物、および、所望により、式IV−aで示される化合物を含む組成物を提供し、ここに、式IIおよびIV−aで示される化合物は、存在する場合、合計で約25、約100、約125、約150、約185、約187、または約190ppm未満の量で存在する。
【0045】
別の具体例において、本発明は:
(a)化合物III−1:
【化16】
(b)化合物II−1:
【化17】
および、(c)任意に、化合物IV−1:
【化18】
を含む組成物を提供する。
【0046】
別の具体例において、本発明は、化合物III−1、II−1、および、任意に、化合物IV−1を含む固形組成物を提供し、ここに、少なくとも約99.6%、99.7%、99.8%、99.85%、99.9%、または99.95%の化合物III−1が、窒素に関して(R)配置であり、化合物II−1は、60、10、5、3.3、2.5、1ppm未満の量で存在する。別の具体例において、本発明は、化合物III−1、化合物II−1、および、任意に、化合物IV−1を含む組成物を提供し、ここに、化合物II−1およびIV−1は、合計で、約60、約10、約5、約3.3、約2.5、または約1ppm未満の量で存在する。
【0047】
いくつかの具体例において、本発明は、化合物III−1および化合物II−1を含む液体組成物を提供し、ここに、化合物II−1は、約25、約100、約125、約150、約185、約187、または約190ppm未満の量で存在する。いくつかの具体例において、本発明は、化合物III−1、化合物II−1、および、任意に、化合物IV−1を含む液体組成物を提供し、ここに、化合物II−1およびIV−1は、合計で約25、約100、約125、約150、約185、約187、または約190ppm未満の量で存在する。
【0048】
ある具体例において、本発明は、メチルナルトレキソンを含む液体組成物を含むプレフィルドシリンジを提供する。かかる液体組成物の非限定的な例としては、米国特許出願US2008−0070975に詳細に記載されており、これは出典明示により本明細書に組み入れる。いくつかの具体例において、本発明は、メチルナルトレキソンまたはその医薬上許容される塩、カルシウム塩、およびキレート化剤を含む液体組成物の単位投与量を含むプレフィルドシリンジを提供する。ある具体例において、本発明は、実質的にタングステンを含まず、メチルナルトレキソン、カルシウムキレート化剤、および緩衝化剤を含む液体組成物の単位投与量を含むプレフィルドシリンジを提供する。ある具体例において、本発明は、実質的にタングステンを含まず、メチルナルトレキソン、カルシウムキレート化剤、緩衝化剤および等張化剤を含む液体組成物の単位投与量を含むプレフィルドシリンジを提供する。いくつかの具体例において、本発明は、実質的にタングステンを含まず、メチルナルトレキソンブロマイド、エデト酸カルシウム二ナトリウム、およびグリシンヒドロクロライドを含む液体組成物の単位投与量を含むプレフィルドシリンジを提供する。いくつかの具体例において、本発明は、実質的にタングステンを含まず、メチルナルトレキソンブロマイド、エデト酸カルシウム二ナトリウム、グリシンヒドロクロライド、および塩化ナトリウムを含む液体組成物の単位投与量を含むプレフィルドシリンジを提供する。
【0049】
ある具体例において、液体組成物は、約pH2.0〜約pH6.0のpHを有する。いくつかの具体例において、処方のpHは、約pH2.6〜約pH5.0である。いくつかの具体例において、処方のpHは、約pH3.0〜約pH4.0である。いくつかの具体例において、処方のpHは、約pH3.4〜約pH3.6である。いくつかの具体例において、処方のpHは、約pH3.5である。ある具体例において、液体組成物は、約2.5〜約6のpHを有する。
【0050】
いくつかの具体例において、本発明は、メチルナルトレキソンを、約0.5mg〜約200mg、約1mg〜約80mg、約5mg〜約40mgの量で、またはメチルナルトレキソンブロマイドを、約8mg、約12mg、約16mg、約18mg、または約24mgの量で含む液体組成物を含むプレフィルドシリンジを提供する。
【0051】
いくつかの具体例において、本発明は、メチルナルトレキソンおよびキレート化剤を、処方中に約0.01mg/mL〜約2mg/mLまたは約0.1mg/mL〜約1mg/mL、または処方の約0.2mg/mL〜約0.8mg/mL含む液体組成物を含むプレフィルドシリンジを提供する。いくつかの具体例において、キレート化剤は、処方中に、約0.2mg/mL、約0.3mg/mL、約0.4mg/mL、約0.5mg/mL、または約0.6mg/mLの量で存在してもよい。
【0052】
キレート化剤の例としては、エチレンジアミンテトラ酢酸(EDTA、エデト酸、ベルセン酸、およびセキエストレンと同義でも用いられる)、およびEDTA誘導体、例えば、ナトリウムEDTA、およびカリウムEDTA、二アンモニウムEDTA、二カリウムEDTA、二ナトリウムEDTA、TEA−EDTA、四ナトリムEDTA、三カリウムEDTA、三ナトリウムEDTA、HEDTA、および三ナトリウムHEDTA、およびその関連する塩が挙げられる。他のキレート化剤は、ナイアシンアミドおよびその誘導体およびデソキシコール酸ナトリウムおよびその誘導体、エチレングリコール−ビス−(2−アミノエチル)−N,N,N’,N’−テトラ酢酸(EGTA)およびその誘導体、ジエチレントリアミンペンタ酢酸(DTPA)およびその誘導体、N,N−ビス(カルボキシメチル)グリシン(NTA)およびその誘導体、ニトリロトリ酢酸およびその誘導体を含む。さらに別のキレート化剤は、クエン酸およびその誘導体を含む。また、クエン酸は、クエン酸一水和物としても知られている。クエン酸の誘導体は、無水クエン酸およびクエン酸三ナトリウム−二水和物を含む。いくつかの具体例において、キレート化剤は、EDTAまたはEDTA誘導体またはEGTAまたはEGTA誘導体から選択される。いくつかの具体例において、キレート化剤は、EDTA二ナトリウム、例えば、EDTA二ナトリウム水和物を含む。
【0053】
いくつかの具体例において、本発明は、メチルナルトレキソンおよびカルシウム塩を、約0.01mg/mL〜約2mg/mLまたは約0.1mg/mL〜約1mg/mL、または約0.2mg/mL〜約0.8mg/mL、約0.2mg/mL、約0.3mg/mL、約0.4mg/mL、約0.5mg/mL、または約0.6mg/mLの量で含む液体組成物を含むプレフィルドシリンジを提供する。
【0054】
カルシウム塩の例としては、限定するものではないが、塩化カルシウム、酢酸カルシウム、クエン酸カルシウム、硫酸カルシウム等が挙げられる。
いくつかの具体例において、本発明は、メチルナルトレキソンおよびカルシウム塩キレート化剤を、約0.01mg/mL〜約2mg/mLまたは約0.1mg/mL〜約1mg/mL、または約0.2mg/mL〜約0.8mg/mLを含む液体組成物を含むプレフィルドシリンジを提供する。いくつかの具体例において、カルシウム塩キレート化剤は、約0.2mg/mL、約0.3mg/mL、約0.4mg/mL、約0.5mg/mL、または約0.6mg/mLの量で存在してもよい。
【0055】
一般的なカルシウム塩キレート化剤は、限定するものではないが、カルシウムエチレンジアミンテトラ酢酸(EDTA)およびカルシウム塩EDTA誘導体、カルシウムエチレングリコール−ビス−(2−アミノエチル)−N,N,N’,N’−テトラ酢酸(EGTA)およびカルシウム塩EGTA誘導体、カルシウムジエチレンとリア民ペンタ酢酸(DTPA)およびカルシウム塩DTPA誘導体、カルシウムN,N−ビス(カルボキシメチル)グリシン(NTA)およびカルシウム塩NTA誘導体、およびクエン酸カルシウムおよびその誘導体を含む。いくつかの具体例において、キレート化剤は、カルシウムEDTAまたはカルシウム塩EDTA誘導体またはカルシウムEGTAまたはカルシウム塩EGTA誘導体から選択される。いくつかの具体例において、キレート化剤は、カルシウムEDTA二ナトリウム、例えばカルシウムEDTA二ナトリウム水和物である。
【0056】
いくつかの具体例において、本発明は、メチルナルトレキソンおよび等張剤を含む液体組成物を含むプレフィルドシリンジを提供する。一般的な等張剤は、塩化ナトリウム、マンニトール、ラクトース、デキストロース(水和または無水)、シュークロース、グリセロール、およびソルビトールおよびその溶液からなる群から選択される剤を含む。
【0057】
いくつかの具体例において、本発明は、メチルナルトレキソンおよび安定化剤を、約0.01mg/mL〜約2mg/mLまたは約0.05mg/mL〜約1mg/mL、または約0.1mg/mL〜約0.8mg/mLの量で含む液体組成物を含むプレフィルドシリンジを提供する。いくつかの具体例において、安定化剤は、約0.15mg/mL、約0.2mg/mL、約0.25mg/mL、約0.3mg/mL、約0.35mg/mL、または約0.4mg/mLの量で存在する。
【0058】
安定化剤の例としては、グリシン、安息香酸、クエン酸、グリコール酸、乳酸、リンゴ酸およびマレイン酸が挙げられる。いくつかの具体例において、処方はグリシンを含む。いくつかの具体例において、グリシンはグリシン−HClを含む。
【0059】
ある具体例において、本発明は、式IIIで示される化合物および式IIで示される化合物を含む液体組成物を含むプレフィルドシリンジを提供し、ここに、式IIで示される化合物は、約25、約100、約125、約150、約185、約187、または約190ppm未満の量で存在する。いくつかの具体例において、本発明は、式IIIで示される化合物、式IIで示される化合物、および、任意に、式IVで示される化合物を含む液体組成物を含むプレフィルドシリンジを提供し、ここに、式IIおよびIVで示される化合物は、合計で、約25、約100、約125、約150、約185、約187、または約190ppm未満の量で存在する。
【0060】
いくつかの具体例において、本発明によるプレフィルドシリンジの調製に用いられるシリンジは、「タングステン不含」または「実質的にタングステン不含」である。いくつかの具体例において、「タングステン不含」または実質的にタングステン不含シリンジは、Becton Dickinson社,Schott社および他社から市販されている。かかるシリンジは、「超低量(ウルトラロー:ultra low)」タングステンシリンジまたは「タングステン不含」とも称されうる。
【0061】
ある具体例において、タングステンを「実質的に不含」は、式IIIで示される化合物の分解に寄与する量未満のタングステンレベルを意味する。ある具体例において、実質的にタングステン不含であるシリンジは、10億あたり約60部未満または10億あたり約50部未満または10億あたり約40部未満の量でタングステンを含有する。いくつかの具体例において、実質的にタングステン不含であるシリンジは、10億あたり約12部未満の量でタングステンを含有する。タングステンを「実質的に不含」であるとされるシリンジは、タングステン不含のシリンジを含むことは明らかであろう。シリンジ中のタングステンのレベルは、US20080103438およびより詳細には下記実施例8に記載のように、種々の当業者に公知の方法により測定することができる。
【0062】
いくつかの具体例において、本発明によるプレフィルドシリンジの調製に用いられるシリンジは、プレフィル可能ガラスおよび/またはポリマーシリンジである。かかるシリンジは、例えば、Schott社から市販されている。いくつかの具体例において、ポリマーシリンジは、シクロオレフィンポリマーから製造される。
【0063】
特定の理論に縛られることを望まず、シリンジ中のタングステンの存在は、シリンジ中に貯蔵されるメチルナルトレキソン溶液の分解に寄与すると考えられる。かかる分解は、式Iで示される化合物の形成を含む。かくして、本発明のいくつかの態様において、メチルナルトレキソン溶液は、タングステンから溶液を単離する手段により貯蔵される(すなわち、メチルナルトレキソンは、タングステンと接触しない)。ある具体例において、本発明は、タングステン、またはその誘導体を含まない、あるいはタングステンを、10億あたり約60部未満または10億あたり約50部未満または10億あたり約40部未満または10億あたり約12部未満の量で含むメチルナルトレキソンプレフィルドシリンジを提供する。タングステンのレベルは、例えば、ICP−MSにより測定することができる。
【0064】
ある具体例において、本発明は実質的にタングステンを含まず、化合物III−1および化合物II−1を含む液体組成物を含むプレフィルドシリンジを提供し、ここに、化合物II−1は、約25、約100、約125、約150、約185、約187、または約190ppm未満の量で存在する。いくつかの具体例において、本発明は、実質的にタングステンを含まず、化合物III−1、化合物II−1、および、任意に化合物IV−1を含む液体組成物を含むプレフィルドシリンジを提供し、ここに、化合物II−1およびIV−1は、合計で、約25、約100、約125、約150、約185、約187、または約190ppm未満の量で存在する。
【0065】
いくつかの具体例において、本発明は、実質的にタングステンを含まず、約0.4mLの水中に約8mgの化合物III−1、および化合物II−1を含む液体組成物を含むプレフィルドシリンジを提供し、ここに、化合物II−1は、約25、約100、約125、約150、約185、約187、または約190ppm未満の量で存在する。ある具体例において、本発明は、実質的にタングステンを含まず:(a)8mgの化合物III−1;(b)0.16mgエデト酸カルシウム二ナトリウム;および(c)0.12mgグリシンヒドロクロライドを含む液体組成物を含むプレフィルドシリンジを提供し、ここに、該プレフィルドシリンジは、化合物II−1を、約25、約100、約125、約150、約185、約187、または約190ppm未満の量で含む。ある具体例において、本発明は、実質的にタングステンを含まず:(a)8mgの化合物III−1;(b)0.4mLの水;(c)2.6mg塩化ナトリウム;(d)0.16mgエデト酸カルシウム二ナトリウム;および(e)0.12mgグリシンヒドロクロライドを含む液体組成物を含むプレフィルドシリンジを提供し、ここに、該プレフィルドシリンジは、化合物II−1を、約25、約100、約125、約150、約185、約187、または約190ppm未満の量で含む。
【0066】
いくつかの具体例において、本発明は、実質的にタングステンを含まず、約0.6mLの水中約12mgの化合物III−1、および化合物II−1を含む液体組成物を含むプレフィルドシリンジを提供し、ここに、化合物II−1は、約25、約100、約125、約150、約185、約187、または約190ppm未満の量で存在する。ある具体例において、本発明は、実質的にタングステンを含まず:(a)12mgの化合物III−1;(b)0.24mgエデト酸カルシウム二ナトリウム;および(c)0.18mgグリシンヒドロクロライドを含む液体組成物を含むプレフィルドシリンジを提供し、ここに、該プレフィルドシリンジは、化合物II−1を、約25、約100、約125、約150、約185、約187、または約190ppm未満の量で含む。ある具体例において、本発明は、実質的にタングステンを含まず:(a)12mgの化合物III−1;(b)0.6mLの水;(c)3.9mg塩化ナトリウム;(d)0.24mgエデト酸カルシウム二ナトリウム;および(e)0.18mgグリシンヒドロクロライドを含む液体組成物を含むプレフィルドシリンジを提供し、ここに、該プレフィルドシリンジは、化合物II−1を、約25、約100、約125、約150、約185、約187、または約190ppm未満の量で含む。
【0067】
いくつかの具体例において、本明細書に記載にように、実質的にタングステン不含であり、メチルナルトレキソンを含有する1個またはそれ以上の提供されるプレフィルドシリンジは、光からシリンジを保護した容器中に貯蔵される。ある具体例において、1個またはそれ以上のプレフィルドシリンジは、光からシリンジを保護するブリスターパックで貯蔵される。いくつかの具体例において、1個またはそれ以上のプレフィルドシリンジは、光からシリンジを保護した箱に貯蔵される。
【0068】
いくつかの具体例において、本明細書に記載にように、実質的にタングステン不含であり、メチルナルトレキソンを含有するプレフィルドシリンジは、少なくとも9ヶ月または少なくとも12ヶ月、または少なくとも18ヶ月または少なくとも24ヶ月の間、典型的な不活性貯蔵条件下で分解に対し安定である、メチルナルトレキソンの単位投与量を提供する。本明細書で用いられる場合、「典型的な不活性貯蔵条件」なる用語は、25℃/60%RHである。ある具体例において、本発明は、本明細書に記載されるように、化合物II−1を、少なくとも9ヶ月、少なくとも12ヶ月、少なくとも14ヶ月、少なくとも16ヶ月、少なくとも18ヶ月、または少なくとも24ヶ月の間、約25ppm未満で含むプレフィルドシリンジを提供する。ある具体例において、本発明は、本明細書に記載されるように、化合物II−1および/またはIV−1を、少なくとも9ヶ月、少なくとも12ヶ月、少なくとも14ヶ月、少なくとも16ヶ月、少なくとも18ヶ月、または少なくとも約24ヶ月の間、合計約25、約100、約125、約150、約185、約187、または約190ppm未満の量で含むプレフィルドシリンジを提供する。
【0069】
ある具体例において、本発明は、結晶性固体の化合物II−1を提供する。いくつかの具体例において、化合物II−1は、非晶質固体として提供される。
【0070】
本明細書で用いられる場合、「実質的にアモルファス化合物II−1を不含」なる用語は、結晶性固体が、有意な量のアモルファス化合物II−1を含有しないことを意味する。本発明のある具体例において、「実質的にアモルファス化合物II−1を不含」なる用語は、固体中の少なくとも約95重量%の化合物II−1が、結晶形態であることを意味する。本発明のある具体例において、「実質的にアモルファス化合物II−1を不含」なる用語は、固体中の少なくとも約99重量%の化合物1が、結晶形態であることを意味する。
【0071】
本明細書で用いられる場合、「実質的に他の形態の化合物II−1を不含」なる用語は、固体が、有意な量の他の固体形態の化合物II−1を含まないことを意味する。本発明のある具体例において、「実質的に他の形態の化合物II−1を不含」なる用語は、少なくとも約95重量%の化合物II−1は、とくていの固体形態で存在することを意味する。本発明のある具体例において、「実質的に他の形態の化合物II−1を不含」なる用語は、少なくとも約99重量%の化合物II−1は、特定の固体形態で存在することを意味する。
【0072】
化合物II−1多形体の粉末XRDは、9.8、10.8、12.7、14.7、15.0、15.9、16.7、17.5、18.7、19.4、20.5、21.0、21.7、22.6、23.0、24.3、24.8、25.5、25.9、26.8、27.2、28.2、28.8、29.5、30.1、31.2、32.1、32.9、33.5、34.9、36.0および38.5℃2θでピークを含む。ある具体例において、本発明は、9.8、10.8、12.7、14.7、15.0、15.9、16.7、17.5、18.7、19.4、20.5、21.0、21.7、22.6、23.0、24.3、24.8、25.5、25.9、26.8、27.2、28.2、28.8、29.5、30.1、31.2、32.1、32.9、33.5、34.9、36.0および38.5℃2θから選択される粉末X線回折パターンでの1つまたはそれ以上のピークを有することにより特徴付けられる化合物II−1の結晶形態を提供する。ある具体例において、本発明は、9.8、10.8、12.7、14.7、15.0、15.9、16.7、17.5、18.7、19.4、20.5、21.0、21.7、22.6、23.0、24.3、24.8、25.5、25.9、26.8、27.2、28.2、28.8、29.5、30.1、31.2、32.1、32.9、33.5、34.9、36.0および38.5℃2θから選択される粉末X線回折パターンでの2つまたはそれ以上のピークを有することにより特徴付けられる化合物II−1の結晶形態を提供する。ある具体例において、本発明は、9.8、10.8、12.7、14.7、15.0、15.9、16.7、17.5、18.7、19.4、20.5、21.0、21.7、22.6、23.0、24.3、24.8、25.5、25.9、26.8、27.2、28.2、28.8、29.5、30.1、31.2、32.1、32.9、33.5、34.9、36.0および38.5℃2θから選択される粉末X線回折パターンでの実質的にすべてのピークを有することにより特徴付けられる化合物II−1の結晶形態を提供する。
【0073】
一の態様によれば、化合物II−1多形体は、実質的に図15に示されるすべてのピークを含むXRDパターンを有する。本明細書で用いられる場合、「実質的にすべてのピーク」なる用語は、化合物が、そのXRDにおいて、リストの少なくとも約80%のピークを示すことを意味する。別の具体例において、「実質的にすべてのピーク」なる用語は、化合物が、そのXRDにおいて、リストの少なくとも約85、90、95、97、98、または99%のピークを示すことを意味する。
【0074】
他の具体例において、本発明は、非晶質固体としての化合物II−1を提供する。非晶質固体は当業者によく知られており、典型的には、特に凍結乾燥、融解および超臨界流体からの析出のような方法により調製される。非晶質化合物II−1の製造方法は、下記する実施例において記載する。
【0075】
ある具体例において、本発明は、実質的に結晶性化合物II−1を含まない非晶質化合物II−1を提供する。本明細書で用いられる場合、「実質的に結晶性の化合物II−1を含まない」なる用語は、化合物が、有意な量の結晶性化合物II−1を含まないことを意味する。本発明のある具体例において、少なくとも約95重量%の化合物II−1は、非晶質化合物II−1である。本発明のさらに別の具体例において、少なくとも約99重量%の化合物II−1が、非晶質化合物II−1である。
【0076】
別の具体例において、本発明は、非晶質化合物II−1および少なくとも1つの結晶性形態の化合物II−1を含む組成物を提供する。かかる化合物II−1の結晶性形態は、本明細書に記載のような化合物II−1多形、または非晶質化合物II−1の調製の結果および/または単離の結果得られる化合物II−1の他の結晶性形態を含む。ある具体例において、本発明は、本明細書に記載のような、非晶質化合物II−1および少なくとも1つの結晶性形態の化合物II−1を含む組成物を提供する。
【0077】
いくつかの具体例において、本発明は、下記工程:
(a)式III:
【化19】
[式中、A−は適当なアニオンである]
で示される化合物を提供すること;および
(b)式IIIで示される化合物を酸化剤で処理して、式II:
【化20】
[式中、X−は適当なアニオンである]
で示される化合物を形成すること
を含む方法を提供する。
【0078】
式IIで示される化合物を製造するための式IIIで示される化合物との反応に適当な酸化剤は、当業者によく知られている。いくつかの具体例において、酸化剤は、過酸化物、ベンゾキノン、または過酸である。ある具体例において、酸化剤は、過酸化水素、t−ブチル過酸化水素、MCPBA(メタ−クロロペル安息香酸)、過酢酸、オキソン(ペルオキシモノ硫酸カリウム)、またはDDQ(2,3−ジクロロ−5,6−ジシアノベンゾキノン)である。
【0079】
ある具体例において、本発明は、工程:
(a)化合物III−1:
【化21】
を提供すること;および
(b)化合物III−1を酸化剤で処理して、化合物II−1:
【化22】
を形成すること
を含む方法を提供する。
【0080】
いくつかの具体例において、化合物III−1から酸化反応を介して化合物II−1を調製する方法は、さらに、塩交換を行い化合物II−3を得る工程を含む。
【0081】
当業者には、化合物II−3が、容易に、化合物II−1から、例えば、トリフルオロ酢酸を含有する溶出液を用いるHPLC精製により調製できることは明らかだろう。
【0082】
4. 使用、処方および投与
化合物II−1を、(R)−N−メチルナルトレキソンブロマイドの新規分解生成物として同定した。特に、(R)−N−メチルナルトレキソンブロマイドプレフィルドシリンジについて行った安定性研究では、新規で未知の不純物が得られた。この不純物は、LC/MSにより、RRT0.60で溶出された新規ピークとして同定された。このピークを、実施例1に詳細に記載するように分取HPLCにより単離した。当業者は、例示に記載のように溶媒溶出を用いる分取HPLCから単離した式IIで示される化合物がトリフルオロ酢酸塩、化合物II−3であったことは理解できるだろう。加えて、化合物II−1を合成して、その構造を確認した。かくして、本発明の化合物は、活性医薬成分としての(R)−N−メチルナルトレキソンブロマイドの純度を測定するのに用いるための分析標準として有用である。
【0083】
ある具体例において、本発明は、工程:
(a)(R)−N−メチルナルトレキソンブロマイドの試料を提供すること;
(b)(R)−N−メチルナルトレキソンブロマイドの試料の分析を行うこと;および
(c)(R)−N−メチルナルトレキソンブロマイドの試料中の化合物II−1の量を決定すること;
を含む方法を提供する。
【0084】
ある具体例において、本発明は、工程:
(a)(R)−N−メチルナルトレキソンブロマイドの試料を提供すること;
(b)(R)−N−メチルナルトレキソンブロマイドの試料の分析を行うこと;および
(c)(R)−N−メチルナルトレキソンブロマイドの試料中の化合物II−1および化合物IVの量を決定すること;
を含む方法を提供する。
【0085】
ある具体例において、本発明は、工程:
(a)(R)−N−メチルナルトレキソンブロマイドの試料を提供すること;
(b)化合物II−1の試料を提供すること;および
(c)(R)−N−メチルナルトレキソンブロマイドの試料および化合物II−1の試料のHPLC分析を行うこと;および
(d)(R)−N−メチルナルトレキソンブロマイドの試料中の化合物II−1の量を決定すること
を含む方法を提供する。
【0086】
ある具体例において、工程(d)は、(R)−N−メチルナルトレキソンブロマイドの試料中の化合物II−1(または、適当な場合、化合物II−3)の量が、約60ppm、約10ppm、約5ppm、約3.3ppm、約2.5ppm、または約1.0ppm未満であることを決定することを含む。いくつかの具体例において、工程(d)は、(R)−N−メチルナルトレキソンブロマイドの試料中の化合物II−1(または、適当な場合、化合物II−3)の量が、約25、約100、約125、約150、約185、約187、または約190ppm未満であることを決定することを含む。
【0087】
いくつかの具体例において、本発明は、工程:
(a)(R)−N−メチルナルトレキソンブロマイドの試料のHPLCクロマトグラムを提供すること;
(b)化合物II−1の試料のHPLCクロマトグラムを提供すること;
(c)HPLCクロマトグラムを比較し、(R)−N−メチルナルトレキソンブロマイドの試料中の化合物II−1の量を決定すること;
を含む方法を提供する。
【0088】
ある具体例において、工程(c)は、(R)−N−メチルナルトレキソンブロマイドの試料中の化合物II−1(または、適当な場合、化合物II−3)の量が、約60ppm、約10ppm、約5ppm、約3.3ppm、約2.5ppm、または約1.0ppm未満であることを決定することを含む。いくつかの具体例において、工程(c)は、(R)−N−メチルナルトレキソンブロマイドの試料中の化合物II−1(または、適当な場合、化合物II−3)の量が、約25、約100、約125、約150、約185、約187、または約190ppm未満であることを決定することを含む。
【0089】
ある具体例において、工程(b)は、さらに、化合物IV−1の試料を提供することを含み、工程(c)は、さらに、(R)−N−メチルナルトレキソンブロマイドの試料中の化合物IV−1の量を決定することを含む。ある具体例において、工程(c)は、(R)−N−メチルナルトレキソンブロマイドの試料中の化合物II−1および化合物IV−1の量が、合計で約60ppm、約10ppm、約5ppm、約3.3ppm、約2.5ppm、または約1ppm未満であることを決定することを含む。ある具体例において、工程(c)は、(R)−N−メチルナルトレキソンブロマイドの試料中の化合物II−1および化合物IV−1の量が、約25、約100、約125、約150、約185、約187、または約190ppm未満であることを決定することを含む。
【0090】
いくつかの具体例において、工程(c)は、(R)−N−メチルナルトレキソンブロマイドの試料が、投与あたり(すなわち、1日あたり)、1.5マイクログラムの化合物II−1および化合物IV−1を与えることを決定することを含む。
【0091】
ある具体例において、本発明の化合物は、生物学的および病理的現象における末梢ミューオピオイドアンタゴニストの研究および末梢ミューオピオイドアンタゴニストの比較評価に有用である。
【0092】
ある具体例において、式Iで示される化合物は、末梢ミューオピオイド受容体アンタゴニストとして有用である。本発明の別の態様によれば、本明細書に記載の式Iで示される化合物、および、任意に医薬上許容される担体、アジュバントまたはビヒクルを含む医薬上許容される組成物を提供する。本発明のある具体例において、かかる医薬上許容される組成物は、1つまたはそれ以上のさらなる治療剤をさらに任意に含んでいてもよい。
【0093】
上記のように、本発明の医薬上許容される組成物は、付加的に、医薬上許容される担体、アジュバントまたはビヒクルを含み、本明細書中で使用される場合、それらは、所望される特定の投与形態に適すような、あらゆる溶媒、希釈剤または他の液体ビヒクル、分散補助剤または懸濁補助剤、界面活性剤、等張剤、増粘剤または乳化剤、保存料、固体結合剤、滑沢剤などを包含する。Remingtons Pharmaceutical Sciences,17th edition,ed.Alfonoso R.Gennaro,Mack Publishing Company,Easton,PA(1985)は、医薬上許容される組成物を処方するのに使用される種々の担体およびその製造のための既知の技術を開示する。いずれかの従来の担体媒体が、例えば、いずれかの望ましくない生物学的効果を生じることによって、あるいは、医薬上許容される組成物のいずれか他の成分と有害な方法で相互作用することによって、本発明の塩に不適合である場合を除き、その使用は本発明の範囲内にあると解釈される。医薬上許容される担体として働くことのできる材料のいくつかの例は、限定するものではないが、イオン交換体、アルミナ、ステアリン酸アルミニウム、レシチン、血清タンパク質、例えば、ヒト血清アルブミン、緩衝物質、例えば、ホスフェート、グリシン、ソルビン酸、またはソルビン酸カリウム、飽和植物性脂肪酸の部分グリセリド混合物、水、塩または電解質、例えば、硫酸プロタミン、リン酸水素2ナトリウム、リン酸水素カリウム、塩化ナトリウム、亜鉛塩、コロイド状シリカ、三ケイ酸マグネシウム、ポリビニルピロリドン、ポリアクリレート、ワックス、ポリエチレン−ポリオキシプロピレン−ブロックポリマー、羊毛脂、糖類、例えば、ラクトース、グルコースおよびシュークロース;デンプン、例えば、トウモロコシデンプンおよびジャガイモデンプン;セルロースおよびその誘導体、例えば、ナトリウムカルボキシメチルセルロース、エチルセルロースおよびセルロースアセテート;粉末状トラガカントゴム;麦芽;ゼラチン;タルク;賦形剤、例えば、ココア脂および座薬用ワックス;油、例えば、ラッカセイ油、綿実油、サフラワー油、ゴマ油、オリーブ油、コーン油および大豆油;グリコール、例えば、プロピレングリコールまたはポリエチレングリコール;エステル、例えば、オレイン酸エチルおよびラウリン酸エチル;寒天;緩衝化剤、例えば、水酸化マグネシウムおよび水酸化アルミニウム;アルギン酸;発熱物質不含水;等張性セーライン;リンガー液;エチルアルコール、およびリン酸緩衝液、ならびに他の非毒性適合性滑沢剤、例えば、ラウリル硫酸ナトリウムおよびステアリン酸マグネシウムを包含し、同様に、着色剤、解除剤、コーティング剤、甘味料、フレーバー剤および香料、保存料および抗酸化剤もまた、処方する者の判断にしたがって、組成物中に配合することができる。
【0094】
ある特定の具体例において、本発明は、式Iの少なくとも1つの化合物および一以上の医薬上許容される担体、賦形剤または希釈剤を含む組成物に関する。かかる組成物は、許容される製薬手法、例えば、Remingtons(出典明示により、全体として本明細書の一部とされる)に記載の手法にしたがって調製される。医薬上許容される担体は、処方中の他の成分と適合性の担体であり、生物学的に許容されるものである。
【0095】
本発明の組成物は、そのままで、または従来の医薬担体と組み合わせて、経口または非経口投与される。許容される固形担体は、フレーバー剤、滑沢剤、可溶化剤、懸濁化剤、増量剤、潤滑剤、圧縮補助剤、結合剤、錠剤崩壊剤、またはカプセル材料としても作用することができる1以上の物質を包含する。粉末において、担体は、微粉化した活性成分と混合される微粉化した固体である。錠剤において、活性成分は、必要な圧縮性を有する担体と、適当な割合で混合され、次いで、所望の形状および大きさに成形される。適当な固形担体は、例えば、リン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、タルク、糖、ラクトース、デキストリン、澱粉、ゼラチン、セルロース、メチルセルロース、ナトリウムカルボキシメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、低融点ワックスおよびイオン交換樹脂を包含する。
【0096】
液体担体は、溶液、懸濁液、エマルジョン、シロップおよびエリキシルの調製に使用できる。活性成分は、医薬上許容される液体担体、例えば、水、有機溶媒、これら2つの混合物、または医薬上許容される油脂中に溶解またか懸濁することができる。液体担体は、他の適当な医薬添加剤、例えば、可溶化剤、乳化剤、緩衝剤、保存料、甘味料、フレーバー剤、懸濁化剤、増粘剤、着色料、粘度調節剤、安定化剤または浸透圧調節剤を含有することができる。経口および非経口投与用液体担体の適当な例は、水(特に、上記の添加剤を含有する水、例えば、セルロース誘導体、好ましくは、ナトリウムカルボキシメチルセルロース溶液)、アルコール(一価アルコールおよび多価アルコール、例えば、グリコールを包含する)およびその誘導体、および油(例えば、分別ココヤシ油および落花生油)を包含する。非経口投与の場合、担体は、油性エステル、例えば、オレイン酸エチルおよびミリスチン酸イソプロピルであることもできる。滅菌液体担体は、非経口投与用滅菌液体形態の組成物において使用される。加圧組成物用液体担体は、ハロゲン化炭化水素または他の医薬上許容されるプロペラントであることができる。
【0097】
滅菌溶液または懸濁液である液体医薬組成物は、例えば、筋内、腹腔内または皮下注射によって投与することができる。滅菌溶液は、また、静脈内投与することもできる。経口投与用組成物は、液体または固体形態のいずれかであることができる。
【0098】
ある特定の具体例において、本発明の組成物は、従来の座剤の形態で経直腸または経膣的に投与される。鼻腔内または気管支内吸入または通気による投与の場合、本発明の組成物は、水性または部分的に水性の溶液中に処方されることができ、ついでそれをエーロゾルの形態で利用することができる。本発明の組成物は、また、活性化合物および該活性化合物に不活性で、皮膚に非毒性で、かつ、皮膚を介する血中への全身的吸収のための薬剤のデリバリーを可能にする担体を含有する経皮パッチの使用によって経皮的に投与することもできる。該担体は、クリームおよび軟膏、ペースト、ゲル、および閉塞性装置などのいくつかの形態を取ることができる。クリームおよび軟膏は、粘性液体または水中油型もしくは油中水型のいずれかの半固体エマルジョンであることができる。また、活性成分を含有するペトロリュームまたは親水性ペトロリューム中に分散させた吸収性粉末からなるペーストも適当である。担体を伴って、または伴わずに活性成分を含有するリザーバーを覆う半浸透性膜、または活性成分を含有するマトリックスなどの種々の閉塞性装置を用いて、活性成分を血流中に放出させることができる。他の閉塞性装置は、文献において知られている。
【0099】
いくつかの具体例において、医薬組成物は、単位投与形態、例えば、錠剤、カプセル、粉末、溶液、懸濁液、エマルジョン、顆粒、または座剤の形態である。かかる形態において、組成物は、適量の活性成分を含有する単位投与量にさらに分けられ、該単位投与形態は、パッケージされた組成物、例えば、パックした粉末、バイアル、アンプル、予め充填したシリンジまたは液体を含有する小袋(sachet)であることができる。単位投与形態は、例えば、カプセルまたは錠剤自体であることができ、またはいずれかのかかる組成物の適当な数をパッケージした形態であることができる。
【0100】
対象に提供される本発明の組成物の量は、投与されているもの、投与目的、例えば、予防または治療、対象の状態、投与方法などに依存して変化するであろう。治療的適用の場合、本発明の組成物は、疾患に罹患した対象に、該疾患の症状およびその合併症を治療または少なくとも部分的に治療するのに十分な量で提供される。これを達成するのに十分な量とは、本明細書中に上記したような「治療上有効量」である。特定のケースの治療において使用されるべき投与量は、担当の医師によって主観的に決定されなければならない。関与する変数は、特定の病態ならびに対象の大きさ、年齢および応答パターンを包含する。物質濫用の治療は、担当の医師の手引きの下、主観的薬物投与の同じ方法に従う。一般に、開始投与量は、1日に約5mgであり、1日に約150mgまで毎日の投与量において徐々に増加させて、対象における所望の投与量レベルを提供する。
【0101】
いくつかの具体例において、本発明は、8mgまたは12mgの投与量の式IIIで示される化合物を皮下注射により対象に投与することを含む方法を提供する。ある具体例において、本発明は、工程:
(i)実質的にタングステンを含まず、8mgの化合物III−1および化合物II−1を含む単位用量の液体組成物を含み、化合物II−1が、約25、約100、約125、約150、約185、約187、または約190ppm未満の量で存在する、および/または、化合物II−1および化合物IV−1が、合計約25、約100、約125、約150、約185、約187、または約190ppm未満の量で存在する、プレフィルドシリンジを提供すること;
(ii)対象に、単位剤形を皮下注射で投与すること;
を含む方法を提供する。
【0102】
ある具体例において、本発明は、工程:
(i)実質的にタングステンを含まず、0.4mLの水中の8mgの化合物III−1、および化合物II−1を含む単位用量の液体組成物を含み、化合物II−1が、約25、約100、約125、約150、約185、約187、または約190ppm未満の量で存在する、および/または化合物II−1および化合物IV−1が、合計で約25、約100、約125、約150、約185、約187、または約190ppm未満の量で存在する、プレフィルドシリンジを提供すること;
(ii)対象に、単位剤形を皮下注射で投与すること;
を含む方法を提供する。
【0103】
ある具体例において、本発明は、工程:
(i)実質的にタングステンを含まず、(a)8mgの化合物III−1;(b)0.16mgのエデト酸カルシウム二ナトリウム;および(c)0.12mgのグリシンヒドロクロライドを含む単位用量の液体組成物を含み、化合物II−1を、約25、約100、約125、約150、約185、約187、または約190ppm未満の量で含む、および/または化合物II−1および化合物IV−1が、合計で約25、約100、約125、約150、約185、約187、または約190ppm未満の量で存在する、プレフィルドシリンジを提供すること;
(ii)対象に、単位剤形を皮下注射で投与すること;
を含む方法を提供する。
【0104】
ある具体例において、本発明は、工程:
(i)実質的にタングステンを含まず、(a)8mgの化合物III−1;(b)0.4mLの水;(c)2.6mgの塩化ナトリウム;(d)0.16mgのエデト酸カルシウム二ナトリウム;および(e)0.12mgのグリシンヒドロクロライドを含む単位用量の組成物を含み、化合物II−1を、約25、約100、約125、約150、約185、約187、または約190ppm未満の量で含み、および/または化合物II−1および化合物IV−1が、合計で、約25、約100、約125、約150、約185、約187、または約190ppm未満の量で存在する、プレフィルドシリンジを提供すること;
(ii)対象に、単位剤形を皮下注射で投与すること;
を含む方法を提供する。
【0105】
ある具体例において、本発明は、工程:
(i)実質的にタングステンを含まず、12mgの化合物III−1および化合物II−1を含む単位用量の液体組成物を含み、化合物II−1が、約25、約100、約125、約150、約185、約187、または約190ppm未満の量で存在する、および/または化合物II−1および化合物IV−1が、合計で、約25、約100、約125、約150、約185、約187、または約190ppm未満の量で存在する、プレフィルドシリンジを提供すること;
(ii)対象に、単位剤形を皮下注射で投与すること;
を含む方法を提供する。
【0106】
ある具体例において、本発明は、工程:
(i)実質的にタングステンを含まず、0.6mLの水中の12mgの化合物III−1、および化合物II−1を含む単位用量の液体組成物を含み、化合物II−1が、約25、約100、約125、約150、約185、約187、または約190ppm未満の量で存在する、および/または化合物II−1および化合物IV−1が、合計で約25、約100、約125、約150、約185、約187、または約190ppm未満の量で存在する、プレフィルドシリンジを提供すること;
(ii)対象に、単位剤形を皮下注射で投与すること;
を含む方法を提供する。
【0107】
ある具体例において、本発明は、工程:
(i)実質的にタングステンを含まず、(a)12mgの化合物III−1;(b)0.24mgのエデト酸カルシウム二ナトリウム;および(c)0.18mgのグリシンヒドロクロライドを含む単位用量の液体組成物を含み、化合物II−1を、約25、約100、約125、約150、約185、約187、または約190ppm未満の量で含む、および/または化合物II−1および化合物IV−1が、合計で、約25、約100、約125、約150、約185、約187、または約190ppm未満の量で存在する、プレフィルドシリンジを提供すること;
(ii)対象に、単位剤形を皮下注射で投与すること.
を含む方法を提供する。
【0108】
ある具体例において、対象は、約62〜約114kgの体重である。いくつかの具体例において、対象は、オピオイド誘発便秘を患っており、限定するものではないが、例えば、末期症状であるか、慢性の痛みを有する対象である。
【0109】
本発明の他の具体例において、組成物は、少なくとも約97、97.5、98、98.5、99、99.5、99.8重量パーセントの量で式IまたはIIのいずれかの化合物を含有する(ここに、パーセンテージは、該化合物の遊離塩基に基づき、組成物の全重量に基づく)。他の具体例において、式IまたはIIのいずれかの化合物を含有する組成物は、HPLCクロマトグラムの全面積に対して、HPLC面積が約2.0パーセント以下の全有機不純物、より好ましくは、HPLC面積が約1.5パーセント以下の全有機不純物を含有する。
【0110】
本発明の他の具体例において、式IIIの化合物、少なくとも1つの式IまたはIIの化合物、および少なくとも1つの医薬上許容される担体を含む組成物が提供される。いくつかの具体例において、組成物は、式IまたはIIの化合物を約1重量パーセント〜約99重量パーセントの量で含有する(ここに、パーセンテージは、該化合物の遊離塩基に基づき、組成物の全重量に基づく)。他の具体例において、式IまたはIIの化合物を含有する組成物は、HPLCクロマトグラムの全面積に対して、HPLC面積が約2.0パーセント以下の全有機不純物、より好ましくは、HPLC面積が約1.5パーセント以下の全有機不純物を含有する。
【0111】
ある特定の具体例において、本発明は、上記のように、式Iの化合物のプロドラッグを含む組成物に向けられる。「プロドラッグ」なる語は、本明細書中で使用される場合、代謝手段(例えば、加水分解)によってイン・ビボで式Iの化合物に変換可能な化合物を意味する。例えば、Bundgaard,(編),Design of Prodrugs,Elsevier(1985);Widderら(編),Methods in Enzymology,vol.4,Academic Press(1985);Krogsgaard−Larsenら(編)Design and Application of Prodrugs,Textbook of Drug Design and Development,Chapter 5,113−191(1991),Bundgaardら、Journal of Drug Delivery Reviews,8:1−38(1992),Bundgaard,J.of Pharmaceutical Sciences,77:285 et seq.(1988);およびHiguchiおよびStella(編)Prodrugs as Novel Drug Delivery Systems,American Chemical Society(1975)(各々、出典明示により、全体として本明細書の一部とされる)に論じられるような種々の形態のプロドラッグが当該分野で知られている。
【0112】
組み合わせ生産物および組み合わせた投与
ある特定の具体例において、本発明の組成物およびその処方は、本明細書中に記載されるような1以上の障害を治療するために単独で投与してもよく、または本明細書中に記載されるような1以上の障害を治療するのに有用な1以上の他の活性剤と組み合わせて(同時または連続的に)投与してもよい。かくして、本発明の組成物またはその処方は、1以上の活性剤と同時に、1以上の活性剤より前に、または1以上の活性剤の次に投与することができる。
【0113】
ある特定の具体例において、本発明の組成物は、式Iの化合物の他に、式Iの化合物ではない1以上の他の活性剤を含む。ある特定の具体例において、本発明は、式Iの化合物および少なくとも1つの付加的な活性剤をデリバリーする処方を提供する。
【0114】
いくつかの具体例において、本発明の処方は、オピオイドおよび式Iの化合物の両方を含む。オピオイドおよび式Iの化合物の両方を含有するかかる組み合わせ生産物は、疼痛の軽減およびオピオイド関連副作用(例えば、胃腸影響(例えば、胃内容排出の遅延、GI管運動性の変化)など)の最小限化を同時に可能とする。
【0115】
痛覚脱失の治療において有用なオピオイドは、当該分野で知られている。例えば、オピオイド化合物は、限定するものではないが、アルフェンタニル(alfentanil)、アニレリジン(anileridine)、アシマドリン(asimadoline)、ブレマゾシン(bremazocine)、ブルプレノルフィン(burprenorphine)、ブトルファノール(butorphanol)、コデイン(codeine)、デゾシン(dezocine)、ジアセチルモルヒネ(ヘロイン)、ジヒドロコデイン、ジフェノキシレート、エチルモルヒネ、フェドトジン(fedotozine)、フェンタニル(fentanyl)、フナルトレキサミン(funaltrexamine)、ヒドロコドン(hydrocodone)、ヒドロモルホン(hydromorphone)、レバロルファン(levallorphan)、レボメタジルアセテート(levomethadylacetate)、レボルファノール(levorphanol)、ロペラミド(loperamide)、メペリジン(meperidine)(ペチジン(pethidine))、メタドン(methadone)、モルヒネ、モルヒネ−6−グルコロニド、ナルブフィン(nalbuphine)、ナロルフィン(nalorphine)、ニコモルヒネ(nicomorphine)、オピウム(opium)、オキシコドン(oxycodone)、オキシモルホン(oxymorphone)、パパベレタム(papaveretum)、ペンタゾシン(pentazocine)、プロピラム(propiram)、プロポキシフェン(propoxyphene)、レミフェンタニル(remifentanyl)、スフェンタニル(sufentanil)、チリジン(tilidine)、トリメブチン(trimebutine)およびトラマドール(tramadol)を包含する。いくつかの具体例において、オピオイドは、アルフェンタニル、ブプレノルフィン(buprenorphine)、ブトルファノール、コデイン、デゾシン、ジヒドロコデイン、フェンタニル、ヒドロコドン、ヒドロモルホン、レボルファノール、メペリジン(ペチジン)、メタドン、モルヒネ、ナルブフィン、ニコモルヒネ、オキシコドン、オキシモルホン、パパベレタム、ペンタゾシン、プロピラム、プロポキシフェン、スフェンタニルおよび/またはトラマドールから選択される少なくとも1つのオピオイドである。本発明のある特定の具体例において、オピオイドは、モルヒネ、コデイン、オキシコドン、ヒドロコドン、ジヒドロコデイン、プロポキシフェン、フェンタニル、トラマドール、およびその混合物から選択される。特定の具体例において、オピオイドは、ロペラミドである。他の具体例において、オピオイドは、ブトルファノールなどの混合アゴニストである。いくつかの具体例において、対象は、1よりも多くのオピオイド、例えば、モルヒネおよびヘロインまたはメタドンおよびヘロインを投与される。
【0116】
本発明の組み合わせ組成物中に存在する付加的な活性剤の量は、典型的には、該活性剤を唯一の治療剤として含む組成物において通常投与される量よりも多くはない。本発明のある特定の具体例において、付加的な活性剤の量は、該化合物を唯一の治療剤として含む組成物中に通常存在する量の約50%〜100%の範囲である。
【0117】
ある特定の具体例において、本発明の処方は、また、便秘および腸機能不全の改善を促進するために、胃腸機能不全の通常の治療と同時に、および/または組み合わせて使用してもよい。例えば、通常の治療は、限定するものではないが、腸管の機能的刺激、便柔軟剤、緩下剤(例えば、ジフェニルメタン緩下剤、寫下性緩下剤、浸透圧性緩下剤、セーライン緩下剤など)、バルク形成剤および緩下剤、滑剤、静脈内からの水分補給、および経鼻胃減圧を包含する。
【0118】
本発明の処方の使用およびキット
上記で論じたように、本発明は、オピオイド鎮痛療法の望ましくない副作用(例えば、胃腸影響(例えば、胃内容排出の遅延、GI管運動性の変化)など)を拮抗するのに有用な化合物および組成物を提供する。さらに、化合物または組成物は、μオピオイド受容体に結合することによって改善される病態を有する対象を治療するために、またはμオピオイド受容体系の一時的な抑制が望まれるいずれかの治療において(例えば、イレウスなど)、使用してもよい。本発明のある特定の具体例において、処方の使用方法は、ヒト対象におけるものである。
【0119】
したがって、提供される化合物または組成物の投与は、オピオイド使用の副作用、例えば、胃腸管機能不全(例えば、腸運動の阻害、便秘、GI括約筋収縮、悪心、嘔吐、胆道の痙攣、オピオイド腸機能不全、疝痛、ディスフォーリア、掻痒、尿閉、呼吸の低下、乳頭収縮、心血管影響、胸壁硬直および咳の抑制、ストレス応答の低下、および麻酔性鎮痛薬の使用に関連する免疫抑制等、またはその組み合わせの治療、予防、改善、遅延、または減少させるのに有利でありうる。かくして、提供される化合物または組成物の使用は、オピオイドを受容する対象の生活の質の見地から、ならびに慢性便秘から生じる合併症、例えば、痔、食欲抑制、粘膜破壊、敗血症、直腸癌の危険性、および心筋梗塞を減少させるために有益でありうる。
【0120】
いくつかの具体例において、提供される化合物または組成物は、急性オピオイド投与を受けている対象への投与に有用である。いくつかの具体例において、提供される化合物または組成物は、術後胃腸機能不全に罹患している対象への投与に有用である。
【0121】
他の具体例において、提供される化合物または組成物は、また、慢性オピオイド投与を受けている対象(例えば、オピオイド療法を受けている末期患者、例えば、AIDS患者、癌患者、心血管患者;疼痛管理のための慢性オピオイド療法を受けている対象;オピオイド離脱の維持のためのオピオイド療法を受けている患者)への投与に有用である。いくつかの具体例において、対象は、慢性疼痛管理のためにオピオイドを用いている対象である。いくつかの具体例において、対象は、末期患者である。他の具体例において、対象は、オピオイド離脱維持療法を受けている人である。
【0122】
提供される化合物または組成物に関する別法または付加的な使用は、例えば、内皮細胞(例えば、血管内皮細胞)の異常な移動または増殖、血管形成の増加、および日和見感染病原体(例えば、Pseudomonas aeruginosa)由来の致死因子産生の増加を包含するオピオイド使用の影響を治療、減少、阻害または予防するためであってもよい。提供される化合物または組成物の付加的な有利な使用は、オピオイド誘導性免疫抑制の治療、血管形成の阻害、血管増殖の阻害、疼痛の治療、炎症性腸症候群などの炎症状態の治療、感染性疾患および筋骨格系の疾患、例えば、骨粗鬆症、関節炎、骨炎、骨膜炎、ミオパシーの治療、および自己免疫疾患の治療を包含する。
【0123】
ある特定の具体例において、提供される化合物または組成物は、限定するものではないが、過敏性大腸症候群、オピオイド誘導性腸機能不全、大腸炎、術後または分娩後イレウス、悪心および/または嘔吐、胃運動および内容排出の減少、胃の阻害、ならびに小さい、および/または大きい腸推進力、非推進性分節性収縮の幅の増加、オッジ括約筋の収縮、肛門括約筋の緊張の増加、直腸拡張を伴う反射性弛緩異常、胃液、胆汁、膵液または腸液分泌の低下、腸内容物からの水の吸収増加、胃食道逆流、胃不全麻痺、筋けいれん、膨満、腹または上腹部の疼痛および不快、便秘、特発性便秘、腹部手術(例えば、結腸切除(例えば、右半結腸切除、左半結腸切除、横行半結腸切除、結腸切除テイクダウン(takedown)、低位前方切除))後の術後胃腸機能不全、および経口投与された医薬または栄養物質の吸収の遅延を包含する胃腸機能不全を予防、阻害、減少、遅延、低下または治療する方法において使用されうる。
【0124】
提供される化合物または組成物の提供される形態は、また、血管形成を伴う癌、免疫抑制、鎌状赤血球貧血、血管創傷、および網膜症を包含する病態の治療、炎症関連障害(例えば、過敏性大腸症候群)、免疫抑制、慢性炎症の治療において有用である。
【0125】
まださらなる具体例において、提供される化合物または組成物の使用の獣医学的適用(例えば、家畜、例えば、ウマ、イヌ、ネコなどの治療)が提供される。かくして、ヒト対象について上記で論じられたものと類似の獣医学的適用において提供される処方の使用が意図される。例えば、ウマの胃腸運動の阻害、例えば、疝痛および便秘は、ウマにとって致命的でありうる。疝痛に罹患したウマが経験する疝痛の結果生じる疼痛は、死誘導ショックをもたらすことができ、一方、長期の便秘もまた、ウマの死を引き起こしうる。末梢性オピオイド受容体アンタゴニストでのウマの治療は、例えば、米国特許公報第20050124657号(2005年1月20日公開)において記載されている。
【0126】
また、当然のことながら、提供される化合物または組成物は、組み合わせ療法において使用することができる。すなわち、提供される化合物または組成物は、1以上の他の所望の治療薬または医学的手法と同時に、1以上の他の所望の治療薬または医学的手法の前に、または1以上の他の所望の治療薬または医学的手法の次に投与することができる。組み合わせ計画に用いるための特定の組み合わせ療法(治療薬または手法)は、所望の治療薬および/または手法ならびに達成されるべき所望の治療効果との適合性を考慮に入れるであろう。また、当然のことながら、用いられる療法は、同じ障害に望まれる効果を達成してもよく(例えば、処方は、同じ障害を治療するために使用される別の化合物と同時に投与されうる)、またはそれらは、異なる効果を達成してもよい(例えば、いずれかの負の影響の制御)。本明細書中で使用される場合、特定の疾患または病態を治療または予防するために通常投与される付加的な治療化合物は、「治療されている疾患または病態に適当」なものとして知られている。
【0127】
他の具体例において、提供される化合物または組成物、および単位投与形態は、限定するものではないが、オピオイド使用の副作用(例えば、胃腸副作用(例えば、腸運動の阻害、GI括約筋収縮、便秘)、悪心、嘔吐、ディスフォーリア、掻痒など)またはその組み合わせの治療に有用な医薬を包含する医薬の調製に有用である。本発明の化合物、およびその医薬上許容される組成物および処方は、急性オピオイド療法を受けている患者(例えば、急性オピオイド投与を受けている術後胃腸管機能不全に罹患している患者)または慢性的にオピオイドを用いている対象(例えば、オピオイド療法を受けている末期患者、例えば、AIDS患者、癌患者、心血管患者;疼痛管理のための慢性オピオイド療法を受けている対象;オピオイド離脱の維持のためのオピオイド療法を受けている対象)の治療において有用な医薬の調製に有用である。またさらに、疼痛の治療、炎症状態、例えば、炎症性腸症候群の治療、感染性疾患の治療、筋骨格系の疾患、例えば、骨粗鬆症、関節炎、骨炎、骨膜炎、ミオパシーの治療、自己免疫疾患および免疫抑制の治療、腹部手術(例えば、結腸切除(例えば、右半結腸切除、左半結腸切除、横行半結腸切除、結腸切除テイクダウン(takedown)、低位前方切除)後の術後胃腸機能不全、特発性便秘、およびイレウス(例えば、術後イレウス、分娩後イレウス)の療法、および血管形成、慢性炎症および/または慢性疼痛を伴う癌、鎌状赤血球貧血、血管創傷、および網膜症などの障害の治療において有用な医薬の調製に有用である。
【0128】
またさらに、本願発明には、提供される化合物および組成物、および容器(例えば、ホイルまたはプラスチックパッケージ、または他の適当な容器)を含む医薬パックおよび/またはキットが包含される。かかるキットには、使用説明書が付加的に提供されていてもよい。
【0129】
本明細書に記載のように、本発明は、(R)−N−メチルナルトレキソンブロマイドの試料の純度の測定方法を提供する。ある具体例において、かかる方法は、標準試薬を用いることができる。「標準試薬」なる用語は、本明細書で用いられる場合、米国薬局方に定義されるように、「薬剤物質、賦形剤、不純物、分解生成物、栄養補助剤、公定書試薬および性能較正剤の、高度に特徴付けられた標本(正式なUSP-NF試験およびアッセイを行うのに使用することが要求されている)」を意味する。当業者には明らかなように、USP標準試薬はまた、較正剤(例えば、粒子数、融点および滴定の標準化、ブランクおよび対照として)としても用いられる。標準試薬は、主に、クロマトグラフィーおよび分光光度法において用いられる。ある具体例において、本発明は、標準試薬としての化合物II−1を提供する。いくつかの具体例において、本発明は、下記実施例1に詳細に記載するように、化合物II−1標準試薬および任意に1つまたはそれ以上の(R)−N−メチルナルトレキソンブロマイド、不純物B、不純物C、不純物D、不純物E、不純物F、不純物G、不純物H、および不純物Iの標準試薬を含むキットを提供する。
【0130】
本明細書中に記載の発明がより十分に理解されるように、下記の実施例を示す。これらの実施例は、単なる例示目的であり、如何なる方法においても、本願発明を限定するものとして解釈されるものではないことが理解されるべきである。
【0131】
本発明の各態様の全ての特徴は、適宜変更して、全ての他の態様に準用する。
【実施例】
【0132】
実施例
一般的手法
化合物III−1は、例えば、WO2006/127899(出典明示により本明細書に組み入れる)に詳細に記載されている方法に従って調製することが出来る。
質量分析は、Agilent 1100 HPLCシステムと正イオン化モードで操作するエレクトロスプレーイオン化イオン源を備えたApplied Biosystems−PE SCIEX QSTAR PULSAR i 四重極飛行時間タンデム質量分光計を用いて測定した。HPLC溶出液は、質量分光計のイオン源に約50μL/分で流れるように分割した。
化合物II−1のNMRスペクトル分析はDMSO−d6で行い、そのスペクトルは、三重共鳴逆検出(TXI)プローブを備えたBruker DRX−500 NMR分光計で得た。TMSをプロトン共鳴用の内部標準として用い(δ1H、0.00)、溶媒DMSO−d6を、炭素共鳴の内部標準として用いた(δ13C、39.5)。
【0133】
以下の略語を本明細書で用い、その意味は以下の通りである:
【表1】
【0134】
実施例1
RRT0.60の単離および特徴付け
予め、メチルナルトレキソン(化合物III−1)の少なくとも3つの分解生成物を、20mg/mL等張性セイライン溶液でHPLCにより同定した(生成物をHPLCで分析した場合、約0.72、0.89、および1.48でのピークとして同定した)。例えば、米国特許出願第20040266806号(2004年12月30日公開)およびWO2008/019115(2008年2月14日公開)を参照のこと。メチルナルトレキソン−含有プレフィルドシリンジが、分解生成物について試験された。約0.60でのRRTを有する新規分解生成物が観察された。図1は、プレフィルドシリンジの40℃および75%相対湿度、6ヶ月後での安定性試験のLC/MS結果を示す。
【0135】
HPLC分析について、Prodigy ODS−3 15cm×2.0mm、3μm粒子(Phenomenex)HPLCカラム、流速0.25mL/分、下記溶出液を用いた:
移動相:強度(定組成:75:25(v/v)水中0.1%TFA/メタノール
純度:(勾配):
移動相A=95:5(v/v)水中0.1%TFA/メタノール
移動相B=35:65(v/v)水中0.1%TFA/メタノール
【0136】
勾配プログラム:
【表2】
カラム温度:50℃
流速:0.25mL/分
検出:UV,280nmまたは310nm
注入量:20μL
サンプル溶媒:0.05Mの二塩基性リン酸ナトリウム、pH6.8
【0137】
以下の化合物および公知の不純物の基準を、計算した相対保持時間(「RRT」)および相対係数因子(「RRF」)について同定した。
【0138】
化合物 RRT RRF
不純物A:ジオール分解物(II−1) 0.60 0.0068
不純物B:環縮小 0.79 1.00
不純物C:キノン分解物 0.89 0.0126
不純物D:S−メチルナルトレキソンブロマイド 0.91 1.09
メチルナルトレキソンブロマイド 1.00 1.00
不純物E:ナルトレキソン塩基 1.16 0.79
不純物F:2,2,ビス−メチルナルトレキソンブロマイド1.45 0.54
不純物G:O−メチルナルトレキソンメトブロマイド 1.55 1.08
不純物H:アルドールダイマー 1.64 0.86
不純物I:ホフマン脱離 2.26 0.16
【0139】
「環縮小」と称されるRRT0.79分解物の不純物Bは、(R)−N−メチルナルトレキソンブロマイドの環縮小形態として同定され、下記構造式:
【化23】
を有する。
【0140】
「キノン分解物」と称されるRRT0.89分解物であり、本明細書で化合物IV−1とも称される不純物Cは、(R)−N−メチルナルトレキソンブロマイドの光分解生成物として同定され、下記構造式:
【化24】
を有する。
【0141】
ある具体例において、本発明は、1つまたはそれ以上の不純物A、不純物B、不純物C、不純物D、不純物E、不純物F、不純物G、不純物H、および不純物Iを含む組成物を提供する。いくつかの具体例において、本発明は、(R)−N−メチルナルトレキソンブロマイド、不純物A、不純物B、不純物C、不純物D、不純物E、不純物F、不純物G、不純物H、および不純物Iの各々を含むバイアルを含むキットを提供する。ある態様において、本発明は、(R)−N−メチルナルトレキソンブロマイド、不純物A、不純物B、不純物C、不純物D、不純物E、不純物F、不純物G、不純物H、および不純物Iの各々を含み、各不純物化合物が別個のバイアルに含まれるキットを提供する。
【0142】
「ジオール分解物」と称されるRRT0.60化合物である不純物Aは、単離され、特徴付けられ、化合物II−1に対応する。具体的には、LC/MSを、(R)−N−メチルナルトレキソンプレフィルドシリンジ安定試料においてRRT0.60で溶出される未知のピークに対して行った。図2は、RRT0.60に関して得られた、総イオンクロマトグラム(TIC)、UVクロマトグラム(λ=280nm)、マスおよびUVスペクトルを示す。UVスペクトルは、310nm付近で独自の吸収を示し、これは、約0.89RRTで以前に同定されたキノン化合物と類似する。
【0143】
測定された372.1809amuの精密質量は、C21H26NO5+の原子組成(誤差:0.4mDa)に対応する。その分子式は、未知のピークが、上記したキノン化合物よりも1個多い酸素原子を含むことを示している。
【0144】
実施例2
化合物II−1およびII−3の合成:
【化25】
【0145】
方法A
化合物III−1の溶液を、1MのTRIS(pH8)バッファー中に溶解し、H2O2(30%)を1:1.2のモル比で加えた。HPLC注入前に、反応をTFAを添加して停止させると、溶液は褐色/赤色から黄色に変化した。溶液を、Sunfireカラム(50×250mm、C18、5μm)を取り付けた分取HPLCに注入した(流速100mL/分、移動相:6%MeOH/0.25%TFAで開始して1分、ついで、30分で12%MeOH/0.25%TFA勾配に変更した)。回収したフラクションを、2部の水で希釈し、化合物を、逆相高分子吸着剤(Strata−X、Phenomenex)に吸収させた。カラムを減圧下に置いて、全ての残った液体を除去し、アセトニトリルを用いて化合物を溶出した。
【0146】
約20%水を溶出液に加え、ついで、ブロマイドでチャージした強アニオン交換カラム(Strata−SAX、Phenomenex)に通した。アセトニトリルを、ジクロロメタンで抽出して溶出液から除去した。水層のpHを4.2(加水分解を回避するのに最適な酸性度)に調節し、ついで、凍結乾燥して、赤色粉末を得た。化合物を、赤色粉末を水に溶解し、70℃の水浴に溶液を置いてすぐに結晶が生させることにより結晶化した。結晶を濾過し、減圧下で乾燥して、化合物II−1を赤色結晶として得た。得られた結晶性化合物II−1のX線回折パターンを、図12に示す。得られた結晶性化合物II−1の質量スペクトルを、図13に示す。得られた結晶性化合物II−1の1H NMRを、図14に示す。
【0147】
方法B
化合物III−1の溶液を、1MのTRIS(pH8)バッファーに溶解し、H2O2(30%)を、1:2のモル比で加えた。室温にて約30分後、反応をTFAを添加して停止させると、溶液は、褐色/赤色から黄色に変化した。溶液を、Sunfireカラム(50×250mm、C18、5μm)を取り付けた分取HPLCに注入した(流速、100mL/分、移動相:6%MeOH/0.25%TFAで開始して1分、ついで、30分で12%MeOH/0.25%TFA勾配に変更した)。回収したフラクションをすぐに冷凍し、凍結乾燥して、黄色固体として化合物II−3を得た。
【0148】
化合物II−3を形成する化合物III−1とH2O2の反応を、異なるpH条件下で行って、反応に与えるpHの影響を測定した。酸性pHで、化合物III−1とH2O2の反応が非常にゆっくりになり、塩基性pHで、pHが増加するに従い、反応がより早くなったことが見出された(図3を参照)。
【0149】
化合物II−3の構造解明を、以下に詳細に記載されているように、UVスペクトル;ESI−MS;MS/MS;1HNMR、13CNMR、および2次元NMR法を用いて行った。位置番号を書きに示す。
【0150】
NMR結果
1Hおよび13C NMR共鳴を、COSY、HSQC、HMBCおよびROESYスペクトルを用いてアサインした。アサインメントを下記表1に示す。
表1.DMSO−d6中の化合物II−1に関する1Hおよび13C共鳴アサインメント
【表3】
【0151】
COSYスペクトル(図6)は、すべての1H−1Hスピン系が、キノン化合物である不純物Dで観察されたものと、H−5を除いて同じであることを示している。キノン化合物である不純物Dは、C−5が、2つの分解されたジアステレオプロトンを有するメチレン炭素であり、化合物II−1において、H−5は、δ5.08でのメチンプロトンである。C−5メチンの存在は、酸素に結合した典型的な化学シフトであるδ74.8で炭素に結合していることを示す、HSQCスペクトル(図7)により確認された。
【0152】
1H NMRスペクトル(図8)において、δ12.21および8.58で観察される2つのヒドロキシルプロトンがあり、それぞれ、C−4およびC−5OH基であることがアサインされた。これらのダウンフィールド化学シフトおよびブロードピークは、これらが互いに非常に接近していることを示しており、下記に示すように、C−5ヒドロキシルがα配置であることを示す。
【0153】
HMBCスペクトル(図9)は、C−5のヒドロキシル基が、下向きであることのさらなる証拠を与えている。H−5は、下記するように同一平面にない関係を必要とする、C−12に対するつよい3つの結合相関を示している。
【化26】
【0154】
H−5のアキシアル配置は、ROESYスペクトル(図10)によって確認された。H−5は、δ6.82でC−14−OHに対し、δ2.70でH−8に対し、およびδ2.50でH−14に対し、1,3−ジアキシアル型のNOEを示した。化合物II−3の13C NMRスペクトルを、図11に示す。
【0155】
実施例3
合成化合物II−3および単離したRRT0.60の比較
実施例2,方法Bに従って調製した化合物II−3を、LC−MSにより分析した。図2に示されるように、約9分で溶出される主なピークは、RRT0.60ピークのものと同じ質量およびUVスペクトルを有する。また、測定した372.1785amuの精密質量は、同じイオン式を与える(誤差:−2.0mDa)。加えて、実施例2,方法Bで調製された化合物II−3を、実施例1に記載した安定性試験から得られた試料に混ぜた。図4は、混ぜていない、および混ぜた試料の両方のUVクロマトグラムを示す。RRT0.60でのピークは、明らかに、合成化合物II−3が、同じ化合物であることを示している。LC−MS/MSを、m/z372のイオンについて行い、構造情報を得た。RRT0.60ピークおよび合成試料のMS/MSデータを、図4の下2つのボックスに示す。合成化合物が、より良好なフラグメントイオン強度を与えているが、両方のスペクトルは全く同じである。NMRデータに基づく化学構造のフラグメンテーションアサインメントを図5に示す。LC/MSデータは、NMR試験により測定された構造と一致した。
【0156】
実施例4
酸化方法の評価:
【化27】
【0157】
実施例2に記載したように、化合物II−1を、化合物III−1をH2O2で酸化することにより調製した。さらなる酸化剤のスクリーニングを、酸化反応の収率および純度を最適化するために行った。行った反応のまとめを、下記表Aから表Eに示す。本明細書で用いられる場合、「SLI」なる用語は、単一の最も多い不純物を意味する。
【0158】
下記表Aに要約されるように、反応を、1当量の異なる酸化剤を用いて、室温で行った。
個々の反応に関して、0.5gのIII−1を、6mLのTRIS・HCl(1M、pH8.0)と水中で合した。酸化剤(1当量)を加え、得られた混合物を室温にて指定時間撹拌した。すべての反応を、280nMでHPLCによりモニターした。記録された%値は、クロマトグラムから得られたそのものである。
【0159】
【表4】
【0160】
下記表Bに要約されるように、酸化反応を、酸化剤の当量(すなわち、酸化剤)および反応時間を変化させて行った。
個々の反応について、0.5gのIII−1を、6mLの水中TRIS・HCl(1M、pH8.0)と合し、約10℃に冷却した。酸化剤(特定量)を加え、得られた混合物を室温にて所定の時間撹拌した。
【0161】
【表5】
【0162】
下記表Cに要約されるように、酸化反応を、H2O2およびtBHPで、当量を変化させ、室温にて長時間撹拌して行った。
個々の反応に関して、0.5gのIII−1を、6mLの水中TRIS・HCl(1M、pH8.0)と合した。酸化剤を加え、得られた混合物を所定の時間撹拌した。
【0163】
【表6】
【0164】
下記表Dに要約されるように、酸化反応を、tBHPで、当量を変化させ、長時間、高い温度(35℃)で行った。
個々の反応について、0.5gのIII−1を、6mLの水中TRIS・HCl(1M、pH8.0)と合した。酸化剤を所定の量で加えて、反応物を35℃で所定の時間撹拌した。
【0165】
【表7】
【0166】
下記表Eに要約されるように、酸化反応を、tBHPを用い、溶媒を変更して行った。
個々の反応について、0.5gのIII−1を、3mLのTRIS・HClバッファー(1M、pH8.0)および所定の溶媒(3mL)と合した。70%のTBHP(5当量)を加え、得られた混合物を室温にて48時間撹拌した。
【0167】
【表8】
【0168】
実施例5
タングステート安定性試験
短期評価を、高温および酸素曝露のストレス条件下でのRRT0.60の形成について、タングステートのメチルナルトレキソンブロマイドに与える影響を調査するために行った。ストレス試料について、処方に、1mMのタングステン酸ナトリウムを加え、酸素を室温にて1時間散布した。ついで、溶液を121℃で1時間オートクレーブした。各々の溶液をタングステート、酸素または熱への曝露なしに調製し、対照試料を調製した。
【0169】
上記したストレス条件後、タングステン、酸素および熱に曝露した試料は、28ppmのRRT0.60分解物を精製した。この分解物は、対照試料においてはより低レベルで観察された。この研究に基づいて、タングステンは、RRT0.60分解物の形成の触媒を補助し得る。対照試料で観察されたRRT0.60分解物のレベルは、温度および酸素含量もまた、この酸化分解反応の要因であることを示す。
【0170】
【表9】
【0171】
18ヶ月の長期評価を、標準的な滅菌、無菌、充填可能(SCFTM)シリンジ(1mL Becton Dickinson(BD)シリンジ、タイプ1 ホウケイ酸ガラス、ステンレス鋼針 27G×1/2インチ、BD Stopper 11510、West 4023/50 灰色ブロモブチルラバー、コーティング:接触部をDaikyo Fluro Tec、残りの部分を、B2−40コーティング、BD Rigid Needle Shield、FM27/0ラバーニードルシールドおよびポリプロピレン密閉カバー)における標準条件下でのRRT0.60の形成について、タングステートのメチルナルトレキソンブロマイドに与える影響を調査するために行った。この研究において、8mgメチルナルトレキソン単位用量(2.6mg塩化ナトリウム、0.16mgエデト酸カルシウム二ナトリウム、および0.12mgグリシンヒドロクロライドを含有する、0.4mLの水中の8mgメチルナルトレキソン)または12mgメチルナルトレキソン単位用量(3.9mg塩化ナトリウム、0.24mgエデト酸カルシウム二ナトリウム、および0.18mgグリシンヒドロクロライドを含有する、0.6mLの水中の12mgメチルナルトレキソン)のいずれかを含有するシリンジを、下記条件下で貯蔵した:25℃/60%RH、30℃/75%RH、および40℃/75%RH。この試験の結果は、RRT0.60化合物が、25℃および60%RHで、40ppmのレベル、30℃および75%RHで204ppmまでのレベルで形成したことを示している。40℃および75%RHで6ヶ月では、145ppmが観察された。これらの結果を、下記表2に示す。
【0172】
【表10】
【0173】
他の安定性試験を、RRT0.60形成について、「超低量」タングステンシリンジ(Becton Dickenson)中でのメチルナルトレキソンブロマイドの貯蔵での影響を評価するために行った(1mL BDシリンジ、タイプ1、ホウケイ酸ガラス、ステンレス鋼針 29G×1/2インチ、(超低量タングステン)、BD Stopper 11510、West 4023/50 灰色ブロモブチルラバー、コーティング:接触サイドをDaikyo Fluro Tec、残りの部分をB2−40コーティング、BD Rigid Needle Shield、熱可塑性エラストマー(TPE)ニードルシールドおよびポリプロピレン密閉カバー)。この試験の結果は、40℃および75%相対湿度で6ヶ月または25℃および60%相対湿度で9ヶ月後でも、25ppmまたはそれ以上で形成したRRT0.60化合物はないことを示す。これらの結果を下記表3に示す。
【0174】
【表11】
【0175】
実施例6
化合物II−1多形のX線回折試験
実施例2,方法Aに従って調製した化合物II−1多形の粉末XRDを、X’PERT−MPD粉末X−線回折計で行った。
試料を微粉末に挽き、ゼロバックグラウンドプレートを有する中空型試料ホルダー中にパックした。粉末X線回折のアングルポジション(2θ)により特徴付けられたピーク位置を、図15に示す。ある具体例において、本発明は、実質的に図15に示されるものと同じ粉末X線回折パターンを有する形態であることにより特徴付けられる、化合物II−1の結晶形態を提供する。
【0176】
実施例7
HPLC方法
本明細書に記載のように、メチルナルトレキソンブロマイドの可能性ある不純物の検出および定量は、薬剤の質および純度の面で、重要であり、規定されている。本発明の他の態様において、本明細書ではRRT0.60分解物、不純物または化合物および化合物II−1とも称される不純物Aの、規制基準に要求されるレベルでの検出に有用な分析方法を提供する。ある具体例において、分析方法は、不純物Aを、N−メチルナルトレキソンブロマイドの試料中約2.5ppmのレベルで検出可能である。いくつかの具体例において、分析方法は、不純物Aを、N−メチルナルトレキソンブロマイドの試料中、約25、約100、約125、約150、約185、約187、または約190ppm未満のレベルで検出可能である。ある具体例において、かかる分析方法は以下の通りである:
カラム:Prodigy ODS(3)15cm×4.6mm、3μm粒子;
流速:1.0mL/分;
検出:310nmUV;
カラム温度:37℃;
オートサンプラー温度:5℃;
試料溶媒:EDTA含有酢酸ナトリウムバッファー(pH5.0)(3Lの水中に約238gのNaOAcを溶解し、45mLの氷酢酸を加え、水で50Lに希釈して調製した);
移動相A=950mL/50mL/1mLの水/メタノール/TFA;
移動相B=500mL/500mL/1mLの水/メタノール/TFA;
勾配プログラム:
【表12】
【0177】
0.0004mg/mLの濃度でのN−メチルナルトレキソンブロマイドの標準試料の調製は、以下のように行う:20mgのN−メチルナルトレキソンブロマイドを、2つの別個の100.0mL容量フラスコに量り取る。50mLの試料溶媒を加えて、N−メチルナルトレキソンブロマイドを溶解し、得られた溶液を試料溶媒で希釈する。2.0mLの得られた溶液を、ピペットで、第二の100mL容量フラスコに量り取り、ついで、これを試料溶媒で希釈する。
(R)−N−メチルナルトレキソンブロマイドの試料中に存在する化合物II−1の量は、下記式を用いて計算する:
化合物II−1(ppm)=(Ai)(Cr)(V)(RF)(1000000)
(Ar)(Ws)
式中:
Ai=試料クロマトグラムからの不純物ピークの面積;
Cr=(R)−N−メチルナルトレキソンブロマイドの標準品における濃度(mg/mL);
V=試料溶液の体積(mL);
RF=化合物II−1に関する応答係数相関;
1000000=変換係数(ppm);
Ar=標準クロマトグラムからの(R)−N−メチルナルトレキソンブロマイドの平均面積;
Ws=(R)−N−メチルナルトレキソンブロマイドの試料重量(mg).
【0178】
実施例8
タングステン、またはその誘導体のレベルは、US20080103438に記載の方法を含むいずれの技術により測定することができる。空のシリンジ中のタングステン、またはその誘導体のレベルは、抽出、ついで、ICP−MS分析により測定することができる。かかる抽出および分析方法は当業者に公知であり、EPA Methods 6020Aおよび200.8に記載のものを含む(出典明示により本明細書に組み入れる)。
【0179】
個別の方法は、どの程度積極的にタングステンまたはその誘導体を、医療用ガラス容器から除去するかに応じて、個別の結果を与える(すなわち、例えば酸を用いるより積極的な方法は、より高いレベルのタングステン残渣を除去する)。例えば、Wang,et al.,Journal of Pharmaceutical and Biomedical Analysis,19(1999)937−943,「Determination of Tungsten in Bulk Drug Substance and Intermediates by ICP−AES and ICP−MS」(出典明示により本明細書に組み入れる)に記載のように、医療用ガラス容器を、酸含有溶液で洗浄、すなわち、抽出し、抽出物をタングステンについて測定することができる。同様の方法を、タングステン−含有残渣レベルの測定に用いることができる。
【0180】
以下の方法は、空のシリンジ中に存在するタングステンの量を測定するのに用いることができる一般的な方法である:
1.医療用ガラス容器(例えば、空シリンジ)に、精製水(例えば、研究精製システム、Millipore Milli Ro 4により調製)を充填し、医薬用ガラス容器を密封する(例えば、チップキャップで);
2.充填した医療用ガラス容器を、常温で60分間、水を含む超音波浴に置く;
3.医療用ガラス容器を取り出し、溶液を試料容器に分配する;および
4.Inductively Coupled Plasma Mass Spectrometry(ICP/MS)により溶液中のタングステンの濃度を測定する。
【0181】
実施例9
【化28】
【0182】
上記一般スキームに従って、化合物III−1の溶液を、1MのTRIS(pH8)バッファー中に溶解し、t−ブチルヒドロペルオキシド(5モル当量)を加え、得られた混合物を室温にて2日間撹拌した。反応をTFAを添加して停止させ、溶液をジクロロメタンで抽出した。水相を分離し、HPLC注入用に濃縮した。分取HPLC精製を、Sunfireカラム(50×250mm、C18、5μm、Waters)(流速50mL/分、5%ACN/0.1%TFAで開始し、30分にわたって10%ACN/0.1%TFA勾配に変化させる移動相)で行った。回収したフラクションを凍結乾燥し、第一の工程と同様の第2の精製工程に付した。プールしたフラクションを、逆相SPE(固相抽出)チューブ(Strata−X、Phenomenex)に付し、これを減圧下において残りの溶媒をすべて除去した。ついで、20%アセトニトリル/水を用いて化合物を抽出し、ついで、臭化ナトリウムで前処理した強アニオン交換SPEチューブ(Strata−SAX、Phenomenex)に通した。回収した溶液を凍結乾燥して、化合物II−1を赤色粉末として得た。
【0183】
より具体的には、100gN−(シクロプロピルメチル)−モロキシモルホンメトブロマイド(III−1)を、熱電対を備えた磁気撹拌2lフラスコにチャージし、ついで、600mlのトリス(ヒドロキシメチル)アミノエタンを加えた。ついで、スラリーに、180mlの70%t−ブチルヒドロペルオキシド(5当量)を加え、この時点で、スラリーは溶液になり、ゆっくりと暗い色になった。溶液を常温で69時間撹拌し、HPLCにより62−67%変換と測定された。ついで、溶液に、20mlのトリフルオロ酢酸を加えてpH2とし、800mlの塩化メチレンで洗浄した。層を分離し、再び水層を200ml塩化メチレンで洗浄した。消費した有機フラクションを合し、2×200ml水で逆抽出した。ついで、すべての水性を合して、2×400mlのフラッシュ塩化メチレンで洗浄した。ついで、層を分離し、化合物II−3を含有する水性部分(約1.1L)を単離し(収率は不明)、精製工程まで−20℃で貯蔵した。変換%の評価に利用した分析方法は、以下の通りであった:
【0184】
粗水性生成物の分析方法
Agilent 1100 HPLC
カラム:4.6mm×150mm Sunfire C18
λ280nm
流速:1ml/分
勾配:
【表13】
【0185】
粗化合物II−3を、下記方法を用いる分取HPLCにより精製した。
Varian Prostar 320 Detectorを有するVarian PrepStar ポンプ
カラム:50mm×250mm Sunfire C18 5ミクロン
λ260nm
流速:50ml/分
勾配
【表14】
【0186】
第一の段階の分取HPLC精製は、注入あたり100mlを注入し、オートフラクションコレクターを用いて50mlフラクションを回収することにより行った。典型的には、フラクション15−22を回収し、合し、凍結乾燥した。
【0187】
第二の段階の分取HPLC精製は、回収した粗TFA塩物質(粗II−3)を、各々約2g充填し、20ml水で希釈し、同じ勾配および同じバッファー系でカラムに戻した。フラクション23−29を、典型的には回収し、合した。ついで、この合したフラクションを、水で1:1に希釈し、4つの等しい溶液に分け、ついで、4回Strata−X SPE Giga Tube(60ml、逆相樹脂トラップ)に付し、以下の方法で精製した:
・逆相カラムでのフラッシュプロシージャ(Strata×33ミクロン);
・3ベッド容量のアセトニトリル、ついで、3ベッド容量の水で溶出した;および
・チューブを5分間減圧乾燥し、ついで、所望のフラクションを、20%ACN−水で抽出して、回収した(約20ml×4)。
【0188】
合した溶液を、4つの等しい容量に分け、4回Strata SAX SPE Giga Tube(60ml、強アニオン交換樹脂)に付し、以下の方法で調製した:
・イオン交換カラムStrata SAX 55ミクロンのフラッシュプロシージャ;および
・3ベッド容量のアセトニトリル、ついで、3ベッド容量の1M臭化ナトリウム、ついで、5ベッド容量の水で溶出。
【0189】
所望のフラクションを回収し、無色の溶液が溶出されるまでチューブを20%ACN−水で洗浄した。合計で、約45ml×4を回収し、プールし、凍結乾燥した。
【0190】
複数のロットの凍結乾燥物質を、水中に再び溶解し(150mlの水中約16g)、凍結乾燥して、15.9gのII−1を暗赤色綿状固体として得た。
【0191】
本発明の多くの具体例を記載するが、これらの基本的な実施例は、本発明の化合物および方法を利用する他の具体例に改変することができることは明らかだろう。したがって、本発明の範囲は、実施例に示される特定の具体例よりも、特許請求の範囲により規定されることは明らかだろう。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式I:
【化1】
[式中:
R1およびR2は、各々独立して、C1−6脂肪族であり;
X−は、適当なアニオンである]
で示される化合物。
【請求項2】
X−が適当なブレンステッド酸のアニオンである、請求項1記載の化合物。
【請求項3】
ブレンステッド酸が、ハロゲン化水素、カルボン酸、スルホン酸、硫酸またはリン酸である、請求項2記載の化合物。
【請求項4】
X−が、クロライド、ブロマイド、ヨウダイド、フルオライド、スルフェート、ビスルフェート、タートレート、ニトレート、シトレート、ビタートレート、カルボネート、ホスフェート、マレート、マレアート、フマレート、スルホネート、メチルスルホネート、ホルメート、カルボキシレート、スルフェート、メチルスルフェート、トリフルオロアセテート、またはスクシネートである、請求項2記載の化合物。
【請求項5】
X−がブロマイドである、請求項4記載の化合物。
【請求項6】
R1がC1−4脂肪族であり、R2が低級アルキルである、請求項1記載の化合物。
【請求項7】
R1が(シクロアルキル)アルキル基またはアルケニル基である、請求項6記載の化合物。
【請求項8】
R1が、シクロプロピルメチルまたはアリルであり、R2がメチルである、請求項7記載の化合物。
【請求項9】
式IIまたはII’:
【化2】
[式中、X−は、各々適当なアニオンである]
で示される化合物である、請求項1記載の化合物。
【請求項10】
化合物II−1またはII−2:
【化3】
である、請求項9記載の化合物。
【請求項11】
化合物II−1:
【化4】
で示される結晶性形態。
【請求項12】
工程:
(a)(R)−N−メチルナルトレキソンブロマイドの試料を提供すること;
(b)(R)−N−メチルナルトレキソンブロマイドの試料の分析を行うこと;および
(c)(R)−N−メチルナルトレキソンブロマイドの試料中の化合物II−1の量を測定すること、
を含む方法。
【請求項13】
工程(c)が、さらに、(R)−N−メチルナルトレキソンブロマイドの試料中の化合物IV−1の量を測定する工程を含む、請求項12記載の方法。
【請求項14】
工程(c)が、(R)−N−メチルナルトレキソンブロマイドの試料中の化合物II−1および化合物IV−1の量が、合計、約60ppm、約10ppm、約5ppm、約3.3ppm、約2.5ppm、または約1ppm未満であることを測定することを含む、請求項13記載の方法。
【請求項15】
工程(c)が、(R)−N−メチルナルトレキソンブロマイドの試料中の化合物II−1および化合物IV−1の量が、合計、約25、約100、約125、約150、約185、約187、または約190ppm未満であることを測定することを含む、請求項13記載の方法。
【請求項16】
工程
(a)(R)−N−メチルナルトレキソンブロマイドの試料を提供すること;
(b)化合物II−1:
【化5】
の試料を提供すること;
(c)(R)−N−メチルナルトレキソンブロマイドの試料および化合物II−1の試料のHPLC分析を行うこと;および
(d)(R)−N−メチルナルトレキソンブロマイドの試料中の化合物II−1の量を測定すること、
を含む方法。
【請求項17】
工程:
(a)(R)−N−メチルナルトレキソンブロマイドの試料のクロマトグラムを提供すること;
(b)化合物II−1:
【化6】
の試料のクロマトグラムを提供すること;および
(c)HPLCクロマトグラムを比較し、(R)−N−メチルナルトレキソンブロマイド試料における化合物II−1の量を測定すること、
を含む方法。
【請求項18】
式I:
【化7】
[式中:
R1およびR2は、各々独立して、C1−6脂肪族であり;
X−は適当なアニオンである]
で示される化合物および式Iで示される化合物を含む容器を含むキット。
【請求項19】
化合物が化合物II−1:
【化8】
であり、さらに、1つまたはそれ以上の(R)−N−メチルナルトレキソンブロマイドの標準試薬、不純物B、不純物C、不純物D、不純物E、不純物F、不純物G、不純物H、および不純物Iを含む、請求項18記載のキット。
【請求項20】
標準試薬が、各々、別個のバイアルで提供される、請求項19記載のキット。
【請求項21】
標準試薬が、各々、同じバイアルで一緒に提供される、請求項19記載のキット。
【請求項22】
式III:
【化9】
[式中、A−は適当なアニオンである]
で示される化合物を含む液体組成物を含むプレフィルドシリンジであって、実質的にタングステンを含まないプレフィルドシリンジ。
【請求項23】
液体組成物が、約25、約100、約125、約150、約185、約187、または約190ppm未満の式II:
【化10】
[式中、X−は適当なアニオンである]
で示される化合物を含む、請求項22記載のプレフィルドシリンジ。
【請求項24】
液体組成物が、合計、約25、約100、約125、約150、約185、約187、または約190ppm未満の式IIおよび式IV:
【化11】
[式中:
R1およびR2は、各々独立して、C1−6脂肪族であり;
X−は、適当なアニオンである]
で示される化合物を含む、請求項23記載のプレフィルドシリンジ。
【請求項25】
化合物III−1:
【化12】
を含む液体組成物を含み、実質的にタングステンを含まない、プレフィルドシリンジ。
【請求項26】
液体組成物が、約25、約100、約125、約150、約185、約187、または約190ppm未満の化合物II−1:
【化13】
を含む、請求項25記載のプレフィルドシリンジ。
【請求項27】
合計、約25、約100、約125、約150、約185、約187、または約190ppmの化合物II−1および化合物IV−1:
【化14】
を含む、請求項26記載のプレフィルドシリンジ。
【請求項28】
8mgの化合物III−1:
【化15】
を0.4mLの水中に含む液体組成物、および化合物II−1:
【化16】
を含むプレフィルドシリンジであって、化合物II−1が、約25、約100、約125、約150、約185、約187、または約190ppm未満の量で存在し、実質的にタングステンを含まないプレフィルドシリンジ。
【請求項29】
液体組成物が、さらに、2.6mg塩化ナトリウム、0.16mgエデト酸カルシウム二ナトリウム、および0.12mgグリシンヒドロクロライドを含む、請求項28記載のプレフィルドシリンジ。
【請求項30】
12mgの化合物III−1:
【化17】
を0.6mLの水中に含む液体組成物、および化合物II−1:
【化18】
を含むプレフィルドシリンジであって、化合物II−1が、約25、約100、約125、約150、約185、約187、または約190ppm未満の量で存在し、実質的にタングステンを含まないプレフィルドシリンジ。
【請求項31】
液体組成物が、さらに、3.9mg塩化ナトリウム、0.24mgエデト酸カルシウム二ナトリウム、および0.18mgグリシンヒドロクロライドを含む、請求項30記載のプレフィルドシリンジ。
【請求項32】
工程:
(i)実質的にタングステンを含まず、8mgの化合物III−1:
【化19】
を0.4mLの水中に含む単位用量の液体組成物、および化合物II−1:
【化20】
を含み、化合物II−1が、約25、約100、約125、約150、約185、約187、または約190ppm未満の量で存在する、プレフィルドシリンジを提供すること;および
(ii)対象に、単位用量を皮下注射で投与すること;
を含む方法。
【請求項33】
対象がオピオイド誘発便秘を患っている、請求項32記載の方法。
【請求項34】
タングステンの量が、10億分の50部未満である、請求項32記載の方法。
【請求項35】
タングステンの量が、10億分の12部未満である、請求項34記載の方法。
【請求項36】
液体組成物が、さらにエデト酸カルシウム二ナトリウムおよびグリシンヒドロクロライドを含む、請求項32記載の方法。
【請求項37】
工程:
(i)実質的にタングステンを含まず、12mgの化合物III−1:
【化21】
を0.6mLの水中に含む単位用量の液体組成物、および化合物II−1:
【化22】
を含み、化合物II−1が、約25、約100、約125、約150、約185、約187、または約190ppm未満の量で存在する、プレフィルドシリンジを提供すること;
(ii)対象に、単位用量を皮下注射で投与すること;
を含む方法。
【請求項38】
対象がオピオイド誘発便秘を患っている、請求項37記載の方法。
【請求項39】
タングステンの量が、10億分の50部未満である、請求項37記載の方法。
【請求項40】
タングステンの量が、10億分の12部未満である、請求項39記載の方法。
【請求項41】
液体組成物が、さらにエデト酸カルシウム二ナトリウムおよびグリシンヒドロクロライドを含む、請求項39記載の方法。
【請求項42】
工程:
(a)式III:
【化23】
[式中、A−は適当なアニオンである]
で示される化合物を提供すること;および
(b)式IIIで示される化合物を、酸化剤で処理して、式II:
【化24】
[式中、X−は適当なアニオンである]
で示される化合物を形成すること;
を含む方法。
【請求項43】
式IIIで示される化合物がIII−1:
【化25】
である、請求項42記載の方法。
【請求項44】
式IIで示される化合物がII−1:
【化26】
である、請求項42記載の方法。
【請求項45】
酸化剤が、過酸化物、ベンゾキノンまたは過酸から選択される、請求項42記載の方法。
【請求項46】
酸化剤が、過酸化水素、t−ブチル過酸化水素、MCPBA(メタ−クロロペル安息香酸)、過酢酸、オキソン(ペルオキシモノ硫酸カリウム)、またはDDQ(2,3−ジクロロ−5,6−ジシアノベンゾキノン)から選択される、請求項42記載の方法。
【請求項1】
式I:
【化1】
[式中:
R1およびR2は、各々独立して、C1−6脂肪族であり;
X−は、適当なアニオンである]
で示される化合物。
【請求項2】
X−が適当なブレンステッド酸のアニオンである、請求項1記載の化合物。
【請求項3】
ブレンステッド酸が、ハロゲン化水素、カルボン酸、スルホン酸、硫酸またはリン酸である、請求項2記載の化合物。
【請求項4】
X−が、クロライド、ブロマイド、ヨウダイド、フルオライド、スルフェート、ビスルフェート、タートレート、ニトレート、シトレート、ビタートレート、カルボネート、ホスフェート、マレート、マレアート、フマレート、スルホネート、メチルスルホネート、ホルメート、カルボキシレート、スルフェート、メチルスルフェート、トリフルオロアセテート、またはスクシネートである、請求項2記載の化合物。
【請求項5】
X−がブロマイドである、請求項4記載の化合物。
【請求項6】
R1がC1−4脂肪族であり、R2が低級アルキルである、請求項1記載の化合物。
【請求項7】
R1が(シクロアルキル)アルキル基またはアルケニル基である、請求項6記載の化合物。
【請求項8】
R1が、シクロプロピルメチルまたはアリルであり、R2がメチルである、請求項7記載の化合物。
【請求項9】
式IIまたはII’:
【化2】
[式中、X−は、各々適当なアニオンである]
で示される化合物である、請求項1記載の化合物。
【請求項10】
化合物II−1またはII−2:
【化3】
である、請求項9記載の化合物。
【請求項11】
化合物II−1:
【化4】
で示される結晶性形態。
【請求項12】
工程:
(a)(R)−N−メチルナルトレキソンブロマイドの試料を提供すること;
(b)(R)−N−メチルナルトレキソンブロマイドの試料の分析を行うこと;および
(c)(R)−N−メチルナルトレキソンブロマイドの試料中の化合物II−1の量を測定すること、
を含む方法。
【請求項13】
工程(c)が、さらに、(R)−N−メチルナルトレキソンブロマイドの試料中の化合物IV−1の量を測定する工程を含む、請求項12記載の方法。
【請求項14】
工程(c)が、(R)−N−メチルナルトレキソンブロマイドの試料中の化合物II−1および化合物IV−1の量が、合計、約60ppm、約10ppm、約5ppm、約3.3ppm、約2.5ppm、または約1ppm未満であることを測定することを含む、請求項13記載の方法。
【請求項15】
工程(c)が、(R)−N−メチルナルトレキソンブロマイドの試料中の化合物II−1および化合物IV−1の量が、合計、約25、約100、約125、約150、約185、約187、または約190ppm未満であることを測定することを含む、請求項13記載の方法。
【請求項16】
工程
(a)(R)−N−メチルナルトレキソンブロマイドの試料を提供すること;
(b)化合物II−1:
【化5】
の試料を提供すること;
(c)(R)−N−メチルナルトレキソンブロマイドの試料および化合物II−1の試料のHPLC分析を行うこと;および
(d)(R)−N−メチルナルトレキソンブロマイドの試料中の化合物II−1の量を測定すること、
を含む方法。
【請求項17】
工程:
(a)(R)−N−メチルナルトレキソンブロマイドの試料のクロマトグラムを提供すること;
(b)化合物II−1:
【化6】
の試料のクロマトグラムを提供すること;および
(c)HPLCクロマトグラムを比較し、(R)−N−メチルナルトレキソンブロマイド試料における化合物II−1の量を測定すること、
を含む方法。
【請求項18】
式I:
【化7】
[式中:
R1およびR2は、各々独立して、C1−6脂肪族であり;
X−は適当なアニオンである]
で示される化合物および式Iで示される化合物を含む容器を含むキット。
【請求項19】
化合物が化合物II−1:
【化8】
であり、さらに、1つまたはそれ以上の(R)−N−メチルナルトレキソンブロマイドの標準試薬、不純物B、不純物C、不純物D、不純物E、不純物F、不純物G、不純物H、および不純物Iを含む、請求項18記載のキット。
【請求項20】
標準試薬が、各々、別個のバイアルで提供される、請求項19記載のキット。
【請求項21】
標準試薬が、各々、同じバイアルで一緒に提供される、請求項19記載のキット。
【請求項22】
式III:
【化9】
[式中、A−は適当なアニオンである]
で示される化合物を含む液体組成物を含むプレフィルドシリンジであって、実質的にタングステンを含まないプレフィルドシリンジ。
【請求項23】
液体組成物が、約25、約100、約125、約150、約185、約187、または約190ppm未満の式II:
【化10】
[式中、X−は適当なアニオンである]
で示される化合物を含む、請求項22記載のプレフィルドシリンジ。
【請求項24】
液体組成物が、合計、約25、約100、約125、約150、約185、約187、または約190ppm未満の式IIおよび式IV:
【化11】
[式中:
R1およびR2は、各々独立して、C1−6脂肪族であり;
X−は、適当なアニオンである]
で示される化合物を含む、請求項23記載のプレフィルドシリンジ。
【請求項25】
化合物III−1:
【化12】
を含む液体組成物を含み、実質的にタングステンを含まない、プレフィルドシリンジ。
【請求項26】
液体組成物が、約25、約100、約125、約150、約185、約187、または約190ppm未満の化合物II−1:
【化13】
を含む、請求項25記載のプレフィルドシリンジ。
【請求項27】
合計、約25、約100、約125、約150、約185、約187、または約190ppmの化合物II−1および化合物IV−1:
【化14】
を含む、請求項26記載のプレフィルドシリンジ。
【請求項28】
8mgの化合物III−1:
【化15】
を0.4mLの水中に含む液体組成物、および化合物II−1:
【化16】
を含むプレフィルドシリンジであって、化合物II−1が、約25、約100、約125、約150、約185、約187、または約190ppm未満の量で存在し、実質的にタングステンを含まないプレフィルドシリンジ。
【請求項29】
液体組成物が、さらに、2.6mg塩化ナトリウム、0.16mgエデト酸カルシウム二ナトリウム、および0.12mgグリシンヒドロクロライドを含む、請求項28記載のプレフィルドシリンジ。
【請求項30】
12mgの化合物III−1:
【化17】
を0.6mLの水中に含む液体組成物、および化合物II−1:
【化18】
を含むプレフィルドシリンジであって、化合物II−1が、約25、約100、約125、約150、約185、約187、または約190ppm未満の量で存在し、実質的にタングステンを含まないプレフィルドシリンジ。
【請求項31】
液体組成物が、さらに、3.9mg塩化ナトリウム、0.24mgエデト酸カルシウム二ナトリウム、および0.18mgグリシンヒドロクロライドを含む、請求項30記載のプレフィルドシリンジ。
【請求項32】
工程:
(i)実質的にタングステンを含まず、8mgの化合物III−1:
【化19】
を0.4mLの水中に含む単位用量の液体組成物、および化合物II−1:
【化20】
を含み、化合物II−1が、約25、約100、約125、約150、約185、約187、または約190ppm未満の量で存在する、プレフィルドシリンジを提供すること;および
(ii)対象に、単位用量を皮下注射で投与すること;
を含む方法。
【請求項33】
対象がオピオイド誘発便秘を患っている、請求項32記載の方法。
【請求項34】
タングステンの量が、10億分の50部未満である、請求項32記載の方法。
【請求項35】
タングステンの量が、10億分の12部未満である、請求項34記載の方法。
【請求項36】
液体組成物が、さらにエデト酸カルシウム二ナトリウムおよびグリシンヒドロクロライドを含む、請求項32記載の方法。
【請求項37】
工程:
(i)実質的にタングステンを含まず、12mgの化合物III−1:
【化21】
を0.6mLの水中に含む単位用量の液体組成物、および化合物II−1:
【化22】
を含み、化合物II−1が、約25、約100、約125、約150、約185、約187、または約190ppm未満の量で存在する、プレフィルドシリンジを提供すること;
(ii)対象に、単位用量を皮下注射で投与すること;
を含む方法。
【請求項38】
対象がオピオイド誘発便秘を患っている、請求項37記載の方法。
【請求項39】
タングステンの量が、10億分の50部未満である、請求項37記載の方法。
【請求項40】
タングステンの量が、10億分の12部未満である、請求項39記載の方法。
【請求項41】
液体組成物が、さらにエデト酸カルシウム二ナトリウムおよびグリシンヒドロクロライドを含む、請求項39記載の方法。
【請求項42】
工程:
(a)式III:
【化23】
[式中、A−は適当なアニオンである]
で示される化合物を提供すること;および
(b)式IIIで示される化合物を、酸化剤で処理して、式II:
【化24】
[式中、X−は適当なアニオンである]
で示される化合物を形成すること;
を含む方法。
【請求項43】
式IIIで示される化合物がIII−1:
【化25】
である、請求項42記載の方法。
【請求項44】
式IIで示される化合物がII−1:
【化26】
である、請求項42記載の方法。
【請求項45】
酸化剤が、過酸化物、ベンゾキノンまたは過酸から選択される、請求項42記載の方法。
【請求項46】
酸化剤が、過酸化水素、t−ブチル過酸化水素、MCPBA(メタ−クロロペル安息香酸)、過酢酸、オキソン(ペルオキシモノ硫酸カリウム)、またはDDQ(2,3−ジクロロ−5,6−ジシアノベンゾキノン)から選択される、請求項42記載の方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公表番号】特表2012−504635(P2012−504635A)
【公表日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−530179(P2011−530179)
【出願日】平成21年9月30日(2009.9.30)
【国際出願番号】PCT/US2009/059058
【国際公開番号】WO2010/039851
【国際公開日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【出願人】(309040701)ワイス・エルエルシー (181)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年9月30日(2009.9.30)
【国際出願番号】PCT/US2009/059058
【国際公開番号】WO2010/039851
【国際公開日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【出願人】(309040701)ワイス・エルエルシー (181)
【Fターム(参考)】
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