説明

末端酸化酵素及びその使用

本発明は、ヒト細胞中でのシアン化物非感受性代替的キシダーゼ(AOX)の異地性発現によるミトコンドリアの酸化的リン酸化の系に影響を与える疾患に対抗するための方法に関する。ヒト細胞及びショウジョウバエ中で首尾よくAOXを発現させることによって、ミトコンドリアに対して著しいシアン化物耐性を与え、酸化的ストレス、アポトーシスに対する感受性及び代謝性アシドーシスが軽減されることが示されている。AOXは、生物個体で遍在性に発現された場合に、十分耐容される。AOX発現は、呼吸鎖欠乏の有害事象を制限するための価値あるツールである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シアン化物非感受性の末端酸化酵素(AOX)をコードするcDNA;前記cDNAを含む構築物及び組成物;並びに哺乳動物細胞又はヒト細胞において又は生物個体において、ミトコンドリア中の前記AOXの異地性発現によって呼吸鎖欠乏の有害事象を制限するための方法に関する。本方法を使用することによって、酸化的リン酸化の系の遮断の有害事象は克服され、ミトコンドリア病及び加齢に関する遺伝子治療に対する経路が提供される。
【背景技術】
【0002】
1919年のOtto Warburgの先駆的研究(Warburg,Biochem.Z.,100:230−270, 1919)以来、シアン化物耐性呼吸は、ほとんどの植物及び微小生物を、哺乳動物及び他のより高等な動物と区別することが知られている。従って、シアン発生化合物は、捕食動物に抵抗するために、最も頻繁に自然で遭遇する毒物である(Tattersall et al.,Science,293:1826−1828, 2001)。植物及び微小生物には、シアン化物耐性の非一般的呼吸様式など、シアン化物耐性を与える多様な成分が付与されている。この代替的な呼吸は、一般に、独特なタンパク質であるいわゆる末端酸化酵素(AOX)の存在に依存し、AOXは、ミトコンドリア呼吸鎖(RC)のキノンプールから酸素へと電子を直接伝達し、これにより、呼吸鎖のチトクロムセグメントを完全に迂回することによって(図1A)(Affourtit et al.,FEBS Lett.,510:121-126, 2002)、基質酸化に関連する水素イオン放出を強力に減弱させると同時に、ATP産生を低下させる。従って、植物では、葉緑体のリン酸化活性から生じる高いATPレベルによって、ミトコンドリアの基質酸化の抑制を防止する(Rustin and Queiroz−Claret,Mania,164:415−422, 1985)。
【0003】
さらに、AOXは、スーパーオキシド産生を好むことが知られているミトコンドリアキノンプールの過剰低下を防止することによって、抗酸化タンパク質として作用すると考えられている(Lam et al.,Nature,411:848−853, 2001;Maxwell et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USa,96:8271−8276, 1999)。植物では、電子流におけるAOXタンパク質の何らかの顕著な関与は、非常に特異な条件によってのみ惹起される。第一に、この関与は、キノール基質に対するAOXの低い親和性によるキノンプールの顕著な低下を必要とし(Bahr and Bonner,J.Biol.Chem.,248:3446−3450, 1973)、第二に、酵素をアロステリックに制御する有機酸、主としてピルビン酸塩のサブセットの存在を必要とする(Umbach et al.,Biochem.Biophys.Acta,1554:118−128, 2002)。RC及び高レベルのピルビン酸塩の低下した酸化還元状態は、ミトコンドリアRCのチトクロムセグメントに限局された遺伝性のヒト代謝性疾患から生じる正確な状態である(Munnich et al.,Clinical presentation of respiratory chain deficiency.In:The metabolic and molecular bases of inherited disease.8th ed.,McGraw−Hill Medical Publishing Division,New York,pp 2261−2274, 2001)。この知見に基づいて、電子流の救出が行われ得るようにする目的で、及び病的なRC欠乏の有害事象を軽減する目的で、ヒト細胞中にAOXを発現させることが、本発明者の長年の目標であった。ヒト細胞中で植物AOX遺伝子を発現させるための最初の試みは、明らかに制御されない致死をもたらした(P.Rustin、未刊行データ)。Vanlerberghe及び共同研究者によるゲノムデータベース検索によって、幾つかの動物門中にAOXが存在することが明らかとなっても、この目標は達成されなかったので、ヒト細胞中でAOX遺伝子を発現させる問題に対する解決策はなお未解決のままである。より一般的には、RC欠乏に関連する多様な疾病及び症状の効果を治療又は軽減するための新たな材料及び方法に関する必要性が存在する。
【発明の開示】
【0004】
本発明において、ミトコンドリアの酸化的リン酸化(OXPHOS)の機能障害の主たる有害事象に対して、海洋無脊椎生物であるチオナ・インテスティナリス(Ciona intestinalis)由来の末端酸化酵素(AOX)の、細胞中での異地性発現が細胞を保護することが示されている。これらには、基質酸化、(呼吸鎖を通じてではなく、乳酸脱水素酵素を通じてNADHを再酸化する必要性があることによる)代謝性アシドーシス及び細胞損傷又は細胞死(アポトーシス)に至る酸素ラジカルの過剰産生が含まれる。ミトコンドリアDNA(mtDNA)の変異の過剰蓄積は、早期老化の特性を誘導することが示されているので、AOX発現が上記結果を低下又は遅延させることにより、おそらくは、加齢を遅延させ、寿命を延長し、又は生活の質を改善することが期待される。
【0005】
治療戦略として使用するために、AOX発現は、劇的で有害な生理学的効果なしに、生物個体によって耐容されるべきである。本発明において、前記AOX発現の実施可能性が、生物個体での動物モデルにおいて示された。モデル系として、ショウジョウバエであるキイロショウジョウバエ(Drosophila melanogaster)を使用して検査を実施した。本発明において、ショウジョウバエの発達を通じてAOX発現が耐容されること、表現型に対して著しい有害な効果を有さず、呼吸鎖機能障害に対して、培養されたヒト細胞と同一の保護を与えることが示された。
【0006】
ヒト及び他の哺乳動物における遺伝子治療ツールとしてのAOX発現の可能性を探るために、哺乳動物遺伝子に対して典型的なレベルで長期間安定的にAOXを発現させることができる多用途の発現系を開発した。細胞増殖に何ら明らかな有害な効果を有さずに、ヒトHEK293に由来する細胞のレンチウィルスベクターを基礎とした形質導入後何週間も、AOX発現が維持されることが示された。レンチウィルスベクターAOXを発現する細胞は、没食子酸プロピルに対して感受性を有するシアン化物非感受性呼吸を示すことが示された。従って、レンチウィルスベクターによって形質導入されたAOXは、代謝性疾患の種々の哺乳動物モデルにおいて呼吸鎖の迂回路を作るためのツールとして適切である。
【0007】
本発明において使用されるポリヌクレオチド又はcDNA配列は、好ましくは、配列番号1に示されているDNA配列である。前記ポリヌクレオチド又はcDNA配列は、配列番号1に示されるDNA配列の断片、相同体又は類縁体でもあり得、DNA配列によってコードされるポリペプチドの機能性に関して、すなわちポリペプチドの折りたたみ又は活性に関して有害ではないように、ヌクレオチド配列のわずかな付加、置換及び欠失させることができる。相同体は、第二配列が第一配列から誘導されたことを示唆する、2つの配列間の同一性の程度として決定される。ヌクレオチド配列の比較は、本分野で公知のアルゴリズム、例えば、http://us.expasy.orgでのSIB BLAST Network Service及びその初期設定のパラメータを使用することによって実施される。本発明のcDNA配列は、配列番号1に示されるDNA配列のコード領域と少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも81%、少なくとも82%、少なくとも83%、少なくとも84%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の同一性の程度を示すDNA配列である。
【0008】
従って、本発明は、配列番号2のアミノ酸配列を有するシアン化物非感受性の末端酸化酵素(AOX)又は少なくとも135のアミノ酸のブロックにわたって配列番号2と少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも81%、少なくとも82%、少なくとも83%、少なくとも84%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%のアミノ酸配列同一性を有する類縁体若しくは相同体をコードするcDNA配列に関する。チオナ・インテスティナリスAOX中の少なくとも135のアミノ酸の領域は、配列番号2のアミノ酸配列中の140から365までのアミノ酸の領域内にあり、異なる植物、真菌又はより下等な後生動物中で保存されているアミノ酸配列である。アミノ酸配列の比較は、http://us.expasy.orgでのSIB BLAST Network Service及びその初期設定のパラメータ等の標準的なBLASTアルゴリズムを使用して実施することが可能である。
【0009】
cDNAは、配列番号1に限定されないが、cDNA配列の機能性に有害ではないわずかなアミノ酸の置換、欠失及び付加を含むわずかな変動を含み得る。(遺伝コードの重複性のため)同一のポリペプチドをコードする全ての配列、同一の生化学的活性を有するバリアントポリペプチド(例えば、酵素の主要な機能に影響しないアミノ酸置換を有するもの)をコードする全ての配列、及び本発明に基づいて予測可能である同一の効果を有するポリペプチドをコードする別の生物体由来の全ての関連AOX配列も含まれ得る。特に、配列の5’−末端又は3’−末端は、配列番号3及び配列番号5に開示されているように、フラッグ又はmycをコードする配列でタグ付けされ得る。可能性のある他の配列には、配列番号1のDNA配列へ融合された緑色蛍光タンパク質(GFP)をコードするヌクレオチド配列が含まれる。
【0010】
好ましくは、アミノ酸置換が使用される場合、置換は保存されており、すなわちアミノ酸は同様の大きさで同様の荷電特性を有するものによって置換される。
【0011】
本明細書で使用される「保存的置換」という用語は、生物学的に類似する別の残基によるアミノ酸残基の置換を示す。保存的置換の例には、イソロイシン、バリン、ロイシン、アラニン、システイン、グリシン、フェニルアラニン、プロリン、トリプトファン、チロシン、ノルロイシン又はメチオニンを別のものと置換すること、又はアルギニンをリジンと置換すること、グルタミン酸をアスパラギン酸と置換すること、又はグルタミンをアスパラギンと置換することなど、ある極性を有し若しくは荷電された残基を、同様の極性若しくは荷電を有する別の残基と置換することが挙げられる。互いに置換されることが可能である中性の親水性アミノ酸には、アスパラギン、グルタミン、セリン及びスレオニンが含まれる。「保存的置換」という用語には、置換されていない親アミノ酸の代わりに、置換されたアミノ酸を使用することも含まれる。
【0012】
あるいは、保存されたアミノ酸は、以下に記載されているように、Lehninger(Biochemistry,Second Edition;Worth Publishers,Inc.NY:NY,pp.71−77, 1975)に記載のとおりグループ化することが可能である。
【0013】
非極性(疎水性)
A.脂肪族:A、L、I、V、P
B.芳香族:F、W
C.硫黄含有:M
D.境界域:G
非荷電−極性
A.ヒドロキシル:S、T、Y
B.アミド:N、Q
C.スルフヒドリル:C
D.境界域:G
正に荷電(塩基性):K、R、H
負に荷電(酸性):D、E
【0014】
本発明は、配列番号2のアミノ酸配列、その断片、類縁体又は相同体を有するシアン化物非感受性の末端酸化酵素(AOX)をコードし、配列番号1とハイブリッド形成するcDNA配列にも関し、ハイブリッド形成条件は例えば、Sambrook et al.1989(Analysis and cloning of eukaryotic genomic DNA.In:Molecular cloning,a laboratory manual.Cold Spring Harbor Laboratory Press,New York,2nd ed.,pp 9.52−9.55, 1989;Synthetic oligonucleotide probes.In:Molecular cloning,a laboratory manual.Cold Spring Harbor Laboratory Press,New York,2nd ed.,pp 11.45−11.46, 1989;Synthetic oligonucleotide probes.In:Molecular cloning,a laboratory manual.Cold Spring Harbor Laboratory Press,New York,2nd ed.,pp.11.55-11.57, 1989)又は他の研究マニュアルに記載されているものである。配列番号1の100ないし200を超えるヌクレオチド又はより好ましくは配列番号1の完全なコード領域からなるDNAプローブとのハイブリッド形成は、通常、高い厳密性条件で実施される。すなわち、完全ハイブリッドの算出された融解温度Tmを下回る20ないし25℃の温度でハイブリッド形成が実施される。洗浄は、低塩濃度(例えば、0.1×SSC)及びTmを下回る12ないし20℃の温度で実施される。100ないし200を超えるヌクレオチドのDNAプローブのための典型的な条件は、Sambrook et al.1989(Analysis and cloinng of eukaryotic genomic DNA.In:Molecular cloning,a laboratory manual.2nd ed.Cold Spring Harbor Laboratory Press,New York,1989)の9.52ないし9.55ページに示されている。短いオリゴヌクレオチドプローブ(又はオリゴヌクレオチドプローブの混合物)のためのハイブリダイゼーション条件は、100ないし200を超えるヌクレオチドを含むDNA配列に対する条件とは異なる。より長いDNA分子間で形成されるハイブリッドは、ハイブリダイゼーション洗浄のために使用される条件下で実質的に安定であるのに対し、短いオリゴヌクレオチドを包含するハイブリッドは安定ではない。それゆえ、このようなハイブリッドのハイブリダイゼーション後の洗浄は、プローブが、その標的配列から解離しないように、迅速に実施されなければならない。オリゴヌクレオチドプローブのための有用なハイブリダイゼーション条件及び洗浄条件は、Sambrook et al.1989(Synthetic oligonucleotide probes.In:Molecular cloning,a laboratory manual.2nd ed.Cold Spring Harbor Laboratory Press,New York,1989)の11.45ないし11.46ページ及び11.55ないし11.57ページに示されている。
【0015】
本発明のcDNA配列は、ヒト又は後生動物の細胞中へ挿入されると、異局所的に発現してミトコンドリアの基質酸化をシアン化物に対して非感受性にし、代謝性アシドーシスを低下させ、酸化的ストレスを軽減し、ミトコンドリア呼吸鎖のチトクロムセグメントの迂回路を提供し、アポトーシス又は細胞死に至る細胞損傷に対する感受性を低下することのできるAOXをコードする。
【0016】
本発明において、cDNA配列は、植物、真菌及び無脊椎動物を含む多様な生物から取得することが可能である。好ましくは、cDNA配列は、ホヤ類から、より好ましくは尾索類のチオナ・インテスティナリスから得られる。
【0017】
本発明は、上述のcDNAを含む組換えDNA構築物も提供する。好ましくは、DNA構築物は、シグナル配列、エンハンサー、プロモーター及び終止配列を含む適切な制御配列へ機能的に連結された、シアン化物非感受性AOXをコードするcDNAを含む。好ましくは、ヒト細胞系における発現を誘導するプラスミドベクター又はウィルスベクター、例えばpcDNA5/FRT/TO若しくはpWPIベクター、又は動物個体における、例えばショウジョウバエにおける発現のためのペリカンシリーズの発現ベクター(Barolo et al.,Biotechniques 29:726−732, 2000)等の適切な発現ベクター中へ、組換えDNA構築物が挿入される。本発明の好ましい実施形態において、前記ベクターはレンチウィルスベクターである。
【0018】
AOXをコードするcDNAを含むDNA構築物を伝達するベクターは、哺乳動物細胞、例えばヒト細胞又はげっ歯類、例えばラット、マウス、ハムスター等由来の細胞であり得る適切な細胞を形質転換又は形質移入するのに使用されるが、他の動物細胞も使用されることが可能である。適切なヒト細胞は、Flp−In(商標)T−REx(商標)−293(Invitrogen)細胞系から、又はHEK293由来の細胞系から得られる細胞である。
【0019】
本発明は、配列番号2のアミノ酸配列を有するシアン化物非感受性の末端酸化酵素(AOX)ポリペプチド、その断片、類縁体又は相同体にも関する。相同体は好ましくは、少なくとも135のアミノ酸のブロックにわたって、配列番号2のアミノ酸配列と少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも81%、少なくとも82%、少なくとも83%、少なくとも84%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性を有するべきである。チオナ・インテスティナリスAOX中の少なくとも135のアミノ酸の領域は、配列番号2のアミノ酸配列中の140から365までのアミノ酸の領域内にあり、異なる植物、真菌又はより下等な後生動物中で保存されるアミノ酸配列である。アミノ酸配列の比較は、http://us.expasy.orgでのSIB BLAST Network Service及びその初期設定のパラメータ等の標準的なBLASTアルゴリズムを使用して実施されることが可能である。
【0020】
本発明において有用なポリペプチドは、チオナ・インテスティナリスAOX配列、同一の生化学的活性を有するバリアントポリペプチド(例えば、酵素の主要機能に影響しないアミノ酸置換を有するもの)をコードする全ての配列、及び本発明に基づいて推定可能である同一効果を有する別の生物由来の全ての関連AOXアミノ酸配列を含む、植物、真菌及びより下等な後生動物門等の異なる生物から得られることが可能であるアミノ酸配列を含む。
【0021】
アミノ酸配列のC末端又はN末端は、配列番号4及び配列番号6に開示されるフラッグ又はmyc配列でタグ付けされ得る。あるいは、他のタグ、例えば緑色蛍光タンパク質(GFP)も、配列番号2のアミノ酸配列へ融合され得る。
【0022】
AOXをコードするcDNAと関連して上述に論議されるように、異局所的に発現するAOXは、ミトコンドリアの基質酸化をシアン化物非感受性にし、代謝性アシドーシスを低下させ、酸化的ストレスを軽減し、ミトコンドリア呼吸鎖のチトクロムセグメントの迂回路を提供し、アポトーシス又は細胞死を含む細胞損傷に対する感受性を低下させる。
【0023】
本発明のシアン化物非感受性AOXポリペプチドは、植物、真菌及びより下等な後生動物を含む多様な生物から得られることが可能である。好ましくは、cDNA配列は、ホヤ類から、より好ましくは尾索類のチオナ・インテスティナリスから得られる。
【0024】
本発明は、AOXをコードするcDNAを導入した後、ヒト又は後生動物の細胞中でAOXを異局所的に発現させることによって、ミトコンドリアの基質酸化をシアン化物非感受性にし、代謝性アシドーシスを低下させ、酸化定ストレスを軽減し、ミトコンドリア呼吸鎖のチトクロムセグメントを遮断又は迂回させ、好ましくは通性に迂回させ、アポトーシス又は細胞死に対する感受性を低下させるなど、呼吸鎖欠乏の多くの有害事象を制限することが可能である方法にも関する。
【0025】
本発明は、ミトコンドリア呼吸鎖又は酸化的リン酸化の系における病変形成又は欠損を治療するための、本発明のAOXをコードするcDNAを導入し、及びヒト又は後生動物の細胞中でAOXを異局所的に発現させる方法にも関する。
【0026】
本発明は、本発明のcDNAを導入し、ヒト又は後生動物の細胞中でAOXを異局所的に発現させることによって、ヒトにおける加齢過程を遅延させるための方法を提供する。
【0027】
本発明は、本発明のcDNAを導入し、ヒト又は後生動物の細胞中でAOXを異局所的に発現させることによって、加齢と関連した疾病を治療するための方法を提供する。
【0028】
本発明は、ミトコンドリアの基質酸化をシアン化物非感受性にし、代謝性アシドーシスを低下させるための、酸化的ストレスを軽減し、ヒト細胞における加齢過程を遅延させ、人細胞においてアポトーシスに対する感受性を低下させるための、本発明のcDNA配列の医学的使用に関する。
【0029】
また、本発明に含まれているのは、ミトコンドリア呼吸鎖又は酸化的リン酸化の系に影響する疾病を治療するための医薬の製造のための、本発明のcDNA配列の使用である。これは、細胞中にcDNAを導入し、ヒト又は後生動物の細胞中で前記cDNAを異局所的に発現させることによって達成される。
【0030】
本発明の幾つかの態様は、ミトコンドリアOXPHOS機能障害の主な有害事象に対する保護を補助するための、脊椎動物(特にヒト)細胞又は生物体中での(海洋無脊椎動物チオナ・インテスティナリス由来の末端酸化酵素(AOX)等の)AOXの異局所的な発現の効果に関する。ミトコンドリアOXPHOS機能障害と関連した障害の寛解のためのポリペプチド及びポリヌクレオチド材料並びに方法は、本発明の好ましい実施形態の範囲に属する。
【0031】
本発明の一態様には、末端酸化酵素活性を有する単離及び/又は精製されたポリペプチドが含まれる。幾つかの実施形態において、末端酸化酵素活性を有する単離及び/又は精製されたポリペプチドは、配列番号2に記載のアミノ酸配列又は末端酸化酵素活性を有するその断片と少なくとも75%同一であるアミノ酸配列を含む。典型的な断片は、アミノ末端のミトコンドリア輸送ペプチドを欠失し、AOX活性に関与しない他の配列を欠失する断片である。他の実施形態において、単離及び/又は精製されたポリペプチドは、配列番号2に記載のアミノ酸配列又は末端酸化酵素活性を有するその断片とさらに大きな類似性、例えば少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%又は少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%若しくは99%同一であるアミノ酸配列を含む。「末端酸化酵素活性」という用語は、標準的な電子伝達系から電子を迂回させ、前記電子をユビキノールから酸素まで転移させ、(酸化されたユビキノールとともに)水及び熱を生成物として発生することによって、ミトコンドリア中の幾つかの条件下で生じるユビキノールの酸化の触媒を指す。
【0032】
幾つかのバリエーションにおいて、ポリペプチドは、全てAOX遺伝子が存在するという証拠がある軟体動物門、線形動物門及び脊索動物門からなる群から選択される門由来の生物に由来する。AOXは、数多くの他の動物門にも存在すると予想される。幾つかの実施形態において、ポリペプチドは、尾索動物亜門由来の生物に、又は他のマメボヤ目由来の生物に、又はユウレイボヤ科由来の生物に由来する。生物由来の野生型配列は、非常に好ましく、公知の技術を使用して単離される。ある態様において、ポリペプチドは、チオナ・インテスティナリス由来であり、配列番号2に記載されているアミノ酸配列を含む。
【0033】
本発明のポリペプチドの全て又は一部をコードするヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドは、本発明のさらなる態様である。幾つかの実施形態において、野生型配列が使用される。他の実施形態において、配列変動は、アミノ酸配列に関して上述のとおり考えられる。インビトロでの産生のための発現ベクター及びポリペプチドのインビボでの産生/発現のための遺伝子治療ベクターなどのベクターも、本発明の一態様である。
【0034】
例えば、本発明には、上述に論議され、以下の明細書中にさらに詳細に記載されている末端酸化酵素活性を有するポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む単離又は精製されたポリヌクレオチドが含まれる。一態様において、単離又は精製されたポリヌクレオチドは、配列番号1に記載のヌクレオチド配列と少なくとも50%、60%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、又は99%同一であるヌクレオチド配列を含む。
【0035】
別の態様において、本発明は、植物、真菌又は原生生物由来の末端酸化酵素活性を有するポリペプチドのアミノ酸配列に融合された動物由来のミトコンドリア輸送ペプチドのアミノ酸配列を含むキメラポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドを提供する。動物輸送ペプチドの使用は、非動物AOXタンパク質の動物ミトコンドリアへの標的化を改良するためのツールとして考えられる。幾つかのバリエーションにおいて、ミトコンドリア輸送ペプチドは、脊椎動物、哺乳動物又はヒトに由来し、末端酸化酵素活性を有するポリペプチドは、植物又は真菌由来の成体型末端酸化酵素である。他のバリエーションにおいて、ミトコンドリア輸送ペプチドは、脊椎動物由来であり、末端酸化酵素活性を有するポリペプチドは、無脊椎動物由来である。具体的な実施形態において、末端酸化酵素活性を有するポリペプチドは、無脊椎動物の脊索動物種由来であり、ミトコンドリア輸送ペプチドは、哺乳動物由来である。
【0036】
幾つかの実施形態において、本発明のポリヌクレオチドは、哺乳動物細胞中でのポリヌクレオチドの発現を促進するプロモーター配列をさらに含む。幾つかの態様において、プロモーター配列は、哺乳動物由来である。他の態様において、プロモーター配列は、ミトコンドリアタンパク質をコードする核遺伝子のプロモーターである。
【0037】
本発明には、本発明のポリヌクレオチドを含む発現ベクターも含まれる。一態様において、ポリヌクレオチドは、発現調節配列へ作用可能に連結されている。発現ベクターは、核酸の発現に使用される全てのベクターであり得、例えば、アデノウィルスベクター、アデノ随伴ウィルスベクター、及びレンチウィルスベクターからなる群から選択され得る。多くの適用において、このようなベクターの複製欠損形態が好ましい。本発明のポリヌクレオチド及びベクターは、ポリヌクレオチド又はベクターが医薬として許容される担体、賦形剤又は希釈剤中に存在する組成物として製剤され得、従って、本来AOX活性を欠如する細胞へAOX活性を導入することによってエクスビボ及びインビボの両者に対して適用可能な医学組成物を製造するのに有用であり得る。
【0038】
本発明の別の態様には、本発明のポリヌクレオチド又はベクターで形質転換又は形質移入された宿主細胞が含まれる。幾つかのバリエーションにおいて、細胞は、本発明のポリペプチドを発現させるために、例えば形質転換又は形質移入を通じて修飾されることが可能である全ての原核細胞又は真核細胞である。幾つかのバリエーションにおいて、細胞は、エクスビボデの形質移入又は形質転換に適しており、これにより、後に宿主生物中へ再度移植される医学的組成物を製造するための方法を提供する。
【0039】
一態様において、本発明は、末端酸化酵素活性を有するポリペプチドを発現し、アンチマイシンA、シアン化物(CN)又はオリゴマイシンに対して野生型細胞と比較して増大した耐性の1つ又はそれ以上を呈する、前記ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドで形質転換又は形質移入された脊椎動物細胞を提供する。これらの耐性は、細胞中のAOX活性に関する証拠の3つの例である。他の例は、以下に詳述されている。
【0040】
別の態様において、本発明は、末端酸化酵素活性を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチドで形質転換又は形質移入された、チトクロム代謝経路を通じてATPを産生するための酸化的リン酸化を示すポリペプチドを発現し、前記酸化的リン酸化の阻害剤の存在下で、末端酸化酵素経路を通じてユビキノールを酸化する脊椎動物細胞を提供する。一つのバリエーションにおいて、末端酸化酵素活性は、代謝性アシドーシスを好む条件下で代謝性アシドーシスを阻害するためにピルビン酸塩によってアロステリックに制御される。
【0041】
本発明のポリヌクレオチド又はベクターで形質転換又は形質移入された単離又は精製された細胞も提供される。幾つかのバリエーションにおいて、単離された細胞は、胚性幹細胞、成体幹細胞又は神経幹細胞を含む幹細胞である。全能性又は多能性又は多分化能さえ有する細胞は、本発明のエクスビボでの遺伝子治療の態様に関する好ましい細胞種に属する。
【0042】
本発明の他の態様は、本発明のポリペプチド、ポリヌクレオチド又はベクター、又はこのようなポリヌクレオチド若しくはこのようなベクターで形質転換又は形質移入された細胞を使用する、ミトコンドリアOXPHOS機能障害と関連した疾患の治療のための医薬を製造するための方法に関する。一態様において、本発明のポリペプチドを含む組成物と細胞を接触させることによって、哺乳動物細胞における代謝性アシドーシスを低下させ又は酸化的ストレスを緩和するための方法が提供される。他の態様において、方法は、本発明のポリヌクレオチド又はベクターで細胞を形質転換又は形質移入することを含む。
【0043】
細胞中で代謝性アシドーシスを低下させるのに有効な量で本発明のポリペプチドを含み、治療を要する哺乳動物対象へ投与されたときに、該哺乳動物対象において代謝性アシドーシスを低下させる医学的組成物を製造するための方法も提供される。
【0044】
一態様において、本方法は、ポリペヌクレオチド、ベクター又はこのようなポリヌクレオチド若しくはこのようなベクターで形質転換又は形質移入された細胞を含む医学的組成物を製造することを含み、該医学的組成物は、投与されたときに、哺乳動物対象の細胞中で代謝性アシドーシスを低下させるポリペプチドの有効量を発現させることが可能である。
【0045】
本発明の他の実施形態は、本発明のポリペプチドの有効量を含み、治療を要する哺乳動物対象へ投与されたときに、哺乳動物対象中で酸化的ストレスを緩和できる医学的組成物を製造する方法に関する。
【0046】
投与が必要な哺乳動物対象へ投与されたときに、本発明のポリペプチドの有効量を発現することができ、これにより該哺乳動物対象において酸化的ストレスを低下させる、ポリヌクレオチド、ベクター又は形質転換若しくは形質移入された細胞を含む医学的組成物を製造する方法も、本発明の一態様として想定される。
【0047】
本発明のポリペプチド又はポリヌクレオチド、ベクター又は形質転換若しくは形質移入された細胞の有効量を含み、肥満のための治療を要する哺乳動物対象へ投与されたときに、本発明のペプチドの有効量を発現させる医学的組成物を製造又は提供するための方法が想定され、これにより別の方法では難治性である肥満の治療を提供することが、幾つかのバリエーションにおいて想定される。
【0048】
具体的な実施形態において、哺乳動物対象はヒトである。
【0049】
幾つかの態様において、組成物は、酸化的ストレスの代謝性アシドーシスによって影響を受ける細胞を含む組織又は臓器へ局所的に投与可能である。他の態様において、組成物は、全身投与可能である。
【0050】
本発明の具体的な実施形態において、ミトコンドリアOXPHOS機能障害と関連した疾患は、リー症候群;MERRF症候群;パーキンソン病及び関連疾患;進行性外眼筋麻痺、カーンズ・セイヤー症候群及びMELAS症候群を含むミトコンドリア脳筋症;肝臓、腎臓、中枢神経系、心臓、骨格筋、並びに内分泌系及び感音系等の臓器に影響する多様な多系統の小児科疾患;筋萎縮性側索硬化症、アルツハイマー病、フリードライヒ運動失調症及び抗酸化防御における欠損に起因し得る循環器疾患の形態を含む、ミトコンドリア中の活性酸素種の過剰な産生を包含することが公知であるか又は包含すると信じられている疾病;POLG、c10orf2(Twinkle)又はミトコンドリアDNAの維持の系の他の成分における遺伝学的欠損から生じる他の運動失調及び神経疾患;症候性及び非症候性の両者のミトコンドリア聴力欠陥;ミトコンドリアOXPHOS系の欠損に起因し得る糖尿病の形態;ミトコンドリアOXPHOS系に影響する抗レトロウィルス療法の副作用;難治性肥満及び食物源の移動における障害から生じる他の代謝性疾患;カーンズ・セイヤー症候群;NARP症候群;アルパース・フッテンロッハー(Huttenlocher)病;感音性難聴;乳児良性筋障害;乳児致死性筋障害;小児筋障害;成人筋障害;横紋筋融解;レーバー遺伝性視神経ニューロパチー;心筋症;バース(Barth)症候群;ファンコニー症候群;ミトコンドリアDNA欠乏症候群;ピアソン症候群;糖尿病及び乳酸性酸血症等の、損なわれたミトコンドリア呼吸機能である。
【0051】
本発明のさらなる特性及びバリエーションは、図面及び詳細な記述を含む本願の全体から当業者に自明であり、このような特性は全て、本発明の態様であると考えられる。同様に、本明細書に記載されている本発明の特性は、特性の組み合わせが本発明の態様又は実施形態として具体的に上記されているかどうかに関わらず、本発明の態様としても予定されるさらなる実施形態の中に再度組み合わせることができる。本発明にとって不可欠であるとして本明細書中に記載されているこのような限定のみを限定とみなすべきであり、本明細書中に不可欠であるとして記載されていない限定を欠如する本方法の変形は、本発明の態様と考えられる。
【0052】
前記に加え、具体的に上記されている変形より、何れかの点で範囲がより狭い本発明の実施形態が、さらなる態様として、本発明に含まれる。例えば、本発明の態様は、簡略化するために、属又は値の範囲に対する表記によって記載されている場合があり得るが、属の各要素及び前記範囲内の各値又は下位範囲が本発明の態様として予定されていることを理解すべきである。同様に、本発明の様々な態様及び特徴は組み合わせることが可能であり、本発明の範囲に属することが予定されたさらなる態様をもたらす。本出願人は、本明細書に添付されている特許請求の完全な範囲を発明したが、添付されている特許請求の範囲は、その範囲内に、他者の先行技術を包含することを意図するものではない。従って、特許庁又は他の団体若しくは個人によって、特許請求の範囲内に属する法定の先行技術が本出願人に告知された場合には、出願人は、このような特許請求の範囲の主題を定義し直して、このような特許請求の範囲からこのような法定先行技術又は法定先行技術の自明な変形を具体的に除外するために、準拠する特許法に基づいて補正を行う権利を留保するものとする。このような補正された特許請求の範囲によって定義される本発明の変形も、本発明の態様として予定される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0053】
定義
本発明において使用される用語は、組換えDNA技術、遺伝学、発生生物学、細胞生物学及び生化学の分野において前記用語が通常有する意味を有する。しかしながら、幾つかの用語は、若干異なる様式で使用される場合があり得、幾つかの用語については、特許に関して正確に解釈されるためのさらなる説明が有益である。それゆえ、用語の幾つかは、以下により詳細に説明される。
【0054】
「異地性発現」という用語は、異なる場所における発現を意味する。本発明において、本用語は、一つの生物(又は生物由来の細胞)における、相同的な遺伝子が第一の生物のゲノム中に見出されていない別の生物由来の遺伝子の発現を表すために使用される。ゲノム中にAOX遺伝子を有さない生物中でのAOX発現は、本発明の実験の部において示されているように、ミトコンドリアの生化学の劇的な形質転換をもたらした。結果は、異地性AOX発現が、ミトコンドリア呼吸鎖及びOXPHOS系に影響を及ぼす病理学的状態の遺伝子治療として実行可能な戦略であることを示している。
【0055】
「ミトコンドリアの基質酸化」という用語は、分子状酸素の消費を伴う、ミトコンドリア内部での基質分子(例えば、糖、有機酸)の酸化、又はインビトロでのミトコンドリア懸濁液中での基質分子の酸化、又はインビトロで研究されている透過処理された細胞の内部での基質分子の酸化を意味する。
【0056】
「NADHの再酸化」という用語は、ユビキノン等の下流の電子受容体が関与する、還元型NADHの酵素酸化を介したNAD(異化作用におけるほとんどの工程中で極めて重要な電子受容体)の再生を意味する。
【0057】
本発明において、「代謝性アシドーシス」という用語は、「乳酸性アシドーシス」を意味する。「乳酸性アシドーシス」とは、呼吸鎖の封鎖の有害な副作用であり、この場合、ミトコンドリアは、NADHの再酸化のために正常な経路を使用することができず、細胞がNADHを再酸化するために使用することが可能な唯一の代替的経路は、乳酸脱水素酵素と誤称される酵素を介してピルビン酸塩を乳酸塩へ変換する経路である。次に、乳酸塩は細胞から乳酸として排出され、細胞外環境の酸性化をもたらす。AOXは、NADHを再酸化するために、代替的であるが、なおミトコンドリアの経路である呼吸経路を提供することによってこれを全て防止し、これにより、細胞にとって不要な乳酸脱水素酵素経路を使用する。
【0058】
本明細書で使用される「酸化的ストレスを軽減又は緩和すること」という用語は、スーパーオキシド、一重項酸素、ペルオキシナイトライト又は過酸化水素などの(但し、これらに限定されない。)活性酸素種によって引き起こされる動物細胞又は植物細胞に対する損傷を低下させ又は除去し、従って前記細胞から構成される臓器及び組織に対する損傷を低下させ又は除去することを表す。酸化的ストレスは、一般に、プロオキシダントが優越した状態にある、プロオキシダントと抗酸化剤との間の不均衡として定義される。
【0059】
酸化的ストレスは、血液又は尿中のマロンアルデヒド又はチオバルビツール酸反応物質等の脂質酸化産物の測定(Gutteridge et al.,Anal.Biochem.,91:250−257, 1978;Yagi et al.,Chem.Phys.Lipids,45:337−351, 1987;Ekstrom et al.,Chem.−Biol.Interact.,66:177−187, 1988;Ekstrom,et al.,Chem.−Biol.Interact.,67:25−31, 1988;Boyd,et al.,Cancer Lett.,50:31−37, 1990;Dhanakoti,et al.,Lipids,22:643−646, 1987);(LDL等の)血液画分の易酸化性(Harats et al.,Atherosclerosis,79:245−252, 1989);末梢血液細胞(Liou et al.,Cancer Res.,49:4929−4935, 1989;Leanderson et al.,Agents Actions,36:50−57, 1992)又は尿(Shigenaga et al.,In:L.Packer and A.N.Glazer (eds.),Methods in Enzymology,Vol.186,pp.521−529.New York:Academic Press,1990;Gomes et al.,Chem.Res.Toxicol.,3:307−310, 1990;Cundy et al.,In:M.G.Simic,K.A.Taylor,J.F.Ward,and C.von Sonntag(eds.),Oxygen Radicals in Biology and Medicine,pp.479−482.New York:Plenum Press,1988)中の修飾されたDNA塩基及び/又はDNA付加物;(LDLを含む)血液画分中のビタミンE又はビタミンCレベル(Clausen et al.,Biol.Trace Elem.Res.,20:135−151, 1989;Van Rensburg et al.,Mutat.Res.,215:167−172, 1989;Jessup et al.,Biochem.I.,265:399−405, 1990;Nierenberg et al.,In:T.E.Moon and M.S.Micozzi(eds.),Nutrition and Cancer Prevention,pp.181−212,New York:Marcel Dekker,Inc.,1989);血液画分中のカタラーゼ又はスーパーオキシドジスムターゼレベル(Hageman et al.,in,Larramendy et al.,Mutat.Res.,214:129−136, 1989);血中の脂質過酸化物(Pryor,et al.,Free Radical Biol.Med.,7:177−178, 1989;Frei et al.,Anal.Biochem.,175:120−130, 1988;Yamamoto et al.,In:L.Packer and A.N.Glazer (eds.),Methods in Enzymology,Vol.186,pp.371−379.New York:Academic Press,1990);呼気中のエタン及びペンタン等の揮発性化合物(Refat et al.,Pediatr.Res.,10:396−403, 1991;Kazui et al.,Free Radical Biol.Med.,13:509−515, 1992;Kneepkens et al.,Clin.Invest.Med.,15:163−186, 1992);血液画分中のグルタチオン/グルタチオンジスルフィド(Buhl et al.,Lancet,2:1294−1298, 1989;Hughes et al.,In:L.Packer and A.N.Glazer(eds.)J.Methods in Enzymology,Vol.186,pp.681−685.New York:Academic Press,1990;Lang et al.,Gerontologist,29:187A,1989;Sies et al.,In:L.Packer(ed),Methods in Enzymology,vol.105,pp.445−451.Orlando:Academic Press,Inc.,1984);尿中のエイコサノイド(Judd et al.,J.Am.Coll.Nutr.,5:386−399, 1989);血漿中の自己酸化的、非シクロオキシゲナーゼ由来のエイコサノイド(Morrow et al.,Free Radical Biol.Med.,10:195−200, 1991);血清のペルオキシルラジカル全体を捕捉する抗酸化剤の強さを測定する「TRAP」アッセイ(Wayner et al.,Biochim.Biophys.Acta,924:408−419, 1987)などの、多様な方法で測定することが可能である。
【0060】
本発明の一般的な記述
全ての植物、多くの真菌及び幾つかの原生動物由来のミトコンドリアは、電子伝達鎖上での末端オキシダーゼとして、チトクロムcオキシダーゼの代替物として機能し、酸素を水2分子へと還元するシアン化物耐性の末端酸化酵素を含有する。この「代替的」経路への電子流は、ユビキノンプールのレベルで、従来の(しばしば、チトクロム経路と称される。)呼吸電子伝達経路から分岐する。従って、触媒的には、代替的経路は、ユビキノールオキシダーゼとして機能する単一の酵素(末端酸化酵素)からなる。末端酸化酵素を通じた電子伝達は、水素イオンの転位と共役されておらず、このため、エネルギー保存の3つの部位の2つが迂回され、放出される遊離エネルギーが熱として失われる。AOXは、ユビキノールプールから電子を受け取り、同時に分子状酸素を水へ還元する。チトクロム経路とは異なり、代替的経路は非リン酸化的であり、それゆえ、酸化的リン酸化に直接寄与しない。この代替的経路は呼吸の効率を低下させる可能性を有するので、AOXは、2つの機構によって厳格に制御される。AOXは、非共有結合された二量体として活性があり、ジスルフィド結合を介して共有結合されると不活性となる(Umbach et al.,Plant Physiol.,103:845−854, 1993)が、完全に活性状態となるためにはピルビン酸塩等の2−オキソ酸を必要とする(Millar et al.,FEBS Lett.,329:259−262, 1993)。AOX経路が、ストレスの間、AOXを発現する植物等の生物を保護するように機能し得ることが一般的に想定されている(Wagner et al.,FEBS Lett.,368:339−342, 1995;Robson et al.,Plant Physiol.,129:1908−1920, 2002)多くの研究は、植物又は細胞培養物の多様なストレス処理の後にAOX合成の誘導を示しており(例えば、Vanlerberghe et al.,Plant Physiol.,111:589−595, 1996;Amora et al.,FEBS Lett.,477:175−180, 2000;Sweetlove et al.,Plant J.,32:891−904, 2002)、AOXアンチセンスタバコ細胞培養物を利用する研究は、ミトコンドリア中に存在する活性酸素種(ROS)のより高いレベルを示す一方で、AOXの過剰発現は、ROSのより低いレベルを生じた(Maxwell et al.,Proc.Natl Acad.Sci.U.S.A.96:8271−8276, 1999)。
【0061】
末端酸化酵素は、(ミキソチアゾール(myxothiazol)及びアンチマイシンを含む)電子伝達複合体III及び(シアン化物を含む)IVにおいて作用する阻害剤に対して耐性があるが、サリチルヒドロキサム酸(SHAM)及び没食子酸n−プロピルを含む幾つもの化合物によって特異的に阻害されることが可能である(Moore et al.,Biochim.Biophys.Acta 1059:121−140, 1991)。
【0062】
現在、AOXの2つの構造モデルが存在する。Siedow et al.(Siedow et al.,FEBS Lett.,362:10−14, 1995;Moore et al.,J.Bioenerg.Biomembr.,27:367−377, 1991)によって提唱された最初のモデルは、比較的少数のAOX配列に基づいており、リボヌクレオチド還元酵素のR2サブユニット及びメタンモノオキシゲナーゼのヒドロキシラーゼ成分も含むタンパク質の二鉄ファミリーの一員としてAOXを分類した。疎水性親水性指標分析に基づいて、AOXは、膜間空間に局在する螺旋によって接続された2つの膜貫通螺旋を含有すると予測された(Moore et al.,J.Bioenerg.Biomembr.,27:367−377, 1995)。このモデルが提唱されたので、さらなるAOX配列が同定され、Andersson and Nordlund(FEBS Lett.,449:17−22, 1999)による別の構造モデルに関する提唱がもたらされた。この第二のモデルも、AOXを二鉄タンパク質として分類するが、二鉄中心の精確な連結球体が異なっている(Andersson and Nordlund,FEBS Lett.,449:17−22, 1999)。例えば、Glu−270を含有する、Siedowら(Siedow et al.,FEBS Lett.,362:10−14, 1995;Moore et al.,J.Bioenerg.Biomembr.,27:367−377, 1995)によって同定されたC末端のGlu−X−X−Hisモチーフの1つは、新たに同定された配列中で完全に保存されているようには見受けられず、その結果、鉄を連結する機能を果たす可能性はないようである。替わりに、Andersso及びNordlund(1999)は、鉄原子を配位するために、(Siedowらのモデルに従って膜間空間中に局在するGlu−217を含有する)第三のGlu−X−X−Hisモチーフを使用した。このような選択は、膜貫通螺旋がもはや保持できないことを示唆するため、Andersson及びNorlund(Andersson and Norlund,FEBS Lett.,449:17−22, 1999)は、AOXが膜貫通タンパク質ではなく、界面タンパク質であると提唱した。
【0063】
最近、アラビドプシス・サリアナ(Arabidopsis thaliana)由来のIMMUTANS(Im)遺伝子が配列決定され、興味深いことに、AOXと関連性が低いと見られる色素体末端オキシダーゼ(PTOX)をコードすることが発見された(Wu et al.,Plant Cell,11:43−55, 1999;Carol et al.,Plant Cell 11:57−68, 1999)。Im遺伝子とAOXとの、限定的ではあるが有意な相同性には、鉄結合に関与し得る位置に配置された幾つものグルタミン酸残基及びヒスチジン残基が含まれる。また、二鉄中心を配位することがAndersson及びNordlund(1999)によって提唱されたアミノ酸残基の1つ(Glu−269)を除き、全てがIm配列中に存在した。しかしながら、重要なことに、このモデルは僅かに適合され、その結果、Glu−269がGlu−268(AOX配列及びPTOX配列全てを通じて実際に完全に保存される残基である。)によって置換される。
【0064】
多種多様な分類学的な基(表1)由来のAOXタンパク質が全て、McDonaldら(Plant.Mol.Biol.,53:865−876, 2003)(その開示が参照により本明細書に組み入れられる。)中に記載されている多重配列比較で見出されるタンパク質の中央領域中の保存された重要なアミノ酸残基を共有することが報告されている。保存されたアミノ酸残基には、二鉄のカルボン酸タンパク質の特徴のある6個の鉄結合残基(Berthold et al.,Annu.Rev.Plant Biol.,54:497−517, 2003)、4個の鉄結合モチーフ内の他の残基、及び幾つかの他のアミノ酸が含まれる。重要なことに、これらの残基は全て、動物タンパク質中でも完全に保存されている(McDonald et al.,IUBMB Life,56:333−341, 2004)。
【0065】
【表1】


【0066】
同様に、多様な種由来の末端酸化酵素配列を検討することにより、末端酸化酵素がペプチドのN末端に(長さ50なしい80残基の範囲の)ミトコンドリア輸送ペプチドを含むことが示される。例えば、サウロマタム・グッタタム(Sauromatum guttatum)(Swiss Prot受託番号P22185)由来のAOXは、N末端(残基1ないし62)に配置されたミトコンドリア輸送ペプチドの後に、成体AOX配列(残基63ないし354)を有する。
【0067】
本発明において、ヒト細胞中でシアン化物非感受性AOXを発現させるための経路が開発され、その実施可能性が、生物個体のモデルにおいて示された。哺乳動物ミトコンドリアの内側に付随する代謝条件へ該経路を適応できることが、成功した結果によって示された。
【0068】
シアン化物高感受性酵素であるチトクロムcオキシダーゼのみを通じて分子状酸素を還元する点で、ヒトミトコンドリア呼吸は、ほとんどの植物、微生物及びさらには幾つかの後生動物のものとは異なる。本発明者は、シアン化物非感受性の末端酸化酵素(AOX)の発現が、培養されたヒト細胞によって十分耐容されることを観察した。シアン化物非感受性AOXは、海洋由来のホヤ類、すなわちチオナ・インテスティナリス中に同定された。しかしながら、チオナ・インテスティナリスは、唯一のAOX源ではない。AOXは、他の生物中にも同様に見出され得る。
【0069】
本発明の具体的な一実施形態において、AOXの発現は、ミトコンドリアの基質酸化に多大なシアン化物耐性を与え、酸化的ストレス、アポトーシス、すなわち細胞死感受性、及び代謝性アシドーシスを軽減する。さらに、AOXは、生物個体のモデル中で遍在性に発現された場合に、十分に耐容されることが示された。それゆえ、同素形のAOX発現は、ヒト細胞及び動物個体モデルにおいて呼吸鎖欠乏の有害事象を制限するための価値あるツールであることが示された。AOXの発現は、ミトコンドリアに限局されるように見受けられた。電子流におけるAOXの関与は、呼吸鎖の非常に低下した酸化還元状態によって惹起され、ピルビン酸塩によって亢進され、さもなければ、酵素は実質的に不活性のままである。
【0070】
本発明の別の実施形態において、ヒト細胞中で発現された場合に、チオナ・インテスティナリスの末端酸化酵素(AOX)は、ミトコンドリアへ正確に標的化され、呼吸鎖阻害剤であるシアン化カリウムに対して、ミトコンドリアの基質酸化を非感受性にすることが示された。AOX阻害剤である没食子酸プロピルを使用した場合、呼吸鎖が正常に機能している条件下で、AOXが酵素的に不活性であることがさらに示される。
【0071】
本発明のさらなる実施形態において、呼吸鎖複合体IIIのレベルで呼吸鎖を遮断する薬物であるアンチマイシンAで細胞を処理すると、間接的アッセイによって、AOXは、活性酸素種(ROS)の発生を阻害することが示された。通常、この処理は、キニンプールが高度に還元された場合に、活性酸素種(ROS)の過剰産生の結果として、ミトコンドリアのスーパーオキシドジスムターゼであるSOD2に対するmRNAの大幅な誘導を導く。これは、基質酸化の遮断を克服するための経路を提供することによって、AOXが、ROS産生の増大により損傷を与えるという副作用も防止するという予測と一致して、AOXを発現する細胞中で軽減される。
【0072】
本発明のさらなる実施形態において、AOX発現は、培養中のヒト細胞の増殖速度に影響を及ぼさないことが示された。
【0073】
本発明の一実施形態は、アポトーシス又は細胞死の防御に関する。本発明において、細胞中でのAOX発現が、呼吸鎖の遮断及びROSの大幅な過剰産生を生じる、ATP合成酵素の阻害剤である薬物オリゴマイシンによって誘導されるアポトーシス又は細胞死から細胞を完全に保護することを示す実験研究が開示される。
【0074】
これらの観察は、毒素の摂取によるものであれ、又はミトコンドリアDNA若しくはミトコンドリアの酸化的リン酸化(OXPHOS)の系の成分をコードする核遺伝子の、発病性変異若しくは加齢関連の変異の結果によるものであれ、呼吸鎖のチトクロムセグメントが阻害された場合に、ヒト細胞中でのAOX発現が、呼吸を回復させるための効果的な方法であり得ることを示した。
【0075】
本発明のさらなる実施形態において、AOX発現が、早期老化の特性を誘導することが他の研究者によって示されているmtDNA変異の過剰蓄積の結果を制限又は防止し得ることが示された。従って、本発明の前記実施形態において、体重減少、皮下脂肪の減少、脱毛症(毛髪の損失)、脊柱後弯症(脊椎の弯曲)、骨粗鬆症、貧血、低下した受精能及び心肥大等の、加齢の生理学的効果が遅延され、寿命が延長されるはずである。
【0076】
本発明のさらなる実施形態は、RC機能障害の結果を研究するためのツールを提供することである。RCの多くを通じた電子流をリン酸化過程から断絶するという特有の可能性を与えるので、ヒト細胞中におけるチオナ・インテスティナリスAOXの発現の成功は、RCの機能障害の結果をさらに研究するための有望なツールとなる。別の実施形態において、AOXの異地的な発現は、現在、難治性であるRC疾病に対する有効な治療法として考えられる。この試行における第一段階は、生物個体モデル、例えばRC欠乏症を示すマウス又はショウジョウバエにおけるAOXの発現である。
【0077】
従って、本発明の実験部分において、培養されたヒト細胞中でホヤ類のチオナ・インテスティナリス由来の末端酸化酵素(AOX)を発現させる効果が、ドキシサイクリンによる誘導に反応して高レベルの導入遺伝子発現を支持するFlp−In(商標)T−REx発現系を使用することによって示された。この系によって、AOXがミトコンドリアに標的化され、呼吸鎖のチトクロムセグメントの迂回路として公知の特性によって予測されるように、代謝変化をもたらすことが示された。従って、AOX発現によって、ヒト細胞は、対照細胞中での呼吸を完全に遮断するシアン化物の濃度の存在下で回復することが可能である。
【0078】
シアン化物非感受性呼吸は、AOXの特異的な阻害剤である没食子酸プロピルによって阻害された。逆に、呼吸鎖への毒素の不在下での酸素消費は、没食子酸プロピルに対して非感受性であり、呼吸鎖が正常に機能しているときの電子流に関与していないことを示す。AOX発現は、呼吸鎖活性に対して有意な効果を有さないが、アンチマイシン等の呼吸毒の存在下でスーパーオキシドジスムターゼ活性の誘導を遮断し、呼吸鎖が不適切に低下されると、亢進したROS産生を軽減することを示した。さらに、呼吸鎖が利用できない場合には、NADHを再酸化するために乳酸産生に依存することによって生じるシアン化物の存在下で細胞を一晩培養することによって生じた培地の酸性化は、AOX発現によって大きく低下した。最終的に、AOX発現は、培養6時間で、オリゴマイシン誘発性細胞死に対する有意な防御を供与した。
【0079】
これらの寛解は全て、AOX発現が、毒素によるものであろうと変異によるものであろうと、呼吸鎖又はATP合成酵素のチトクロムセグメントの阻害の有害な効果に対抗する上で有益な効果を有し得ることを示す。このように、心虚血又は脳虚血、並びに神経変性疾患、例えばパーキンソン病等の、酸化的リン酸化(OXPHOS)の系の病理学的阻害によって特徴付けられる多種多様な状態などのOXPHOSの疾患に対して処方される広範な範囲の遺伝子治療法として、AOXが有用である可能性が示唆される。
【0080】
本発明の特に好ましい実施形態は、AOXの異地的発現を使用することによる遺伝子治療ツールの提供である。遺伝子治療ツールとしてのAOXの潜在能力及び実施可能性を探索するために、長期間にわたって哺乳動物遺伝子に関して典型的なレベルでAOXが安定して発現できる、より多用途の発現系が、最新のレンチウィルスベクターを使用することによって開発された(Wiznerowicz and Trono,Trends Biotechnol.,23:42−47, 2005)。前記発現系によって、さまざまな標的細胞の型及び種を形質転換できるようになる。これにより、ミトコンドリアOXPHOS系による妨害が病理学的機構として提唱される、ヒト疾病の多様な動物モデルにおいて有害な表現型を軽減するための戦略としてのAOXの有効性を検査するための道が開かれる。レンチウィルスベクター−AOXは、罹患した組織及び臓器中の特異的な病変部位に注射することが可能である。形質導入の成功及び注射部位で形質導入された細胞の生存は、pWPIのGFPリポーターを使用して都合よく観察することが可能である。
【0081】
本発明において、チオナ・インテスティナリスAOXは、遍在性に作用する、生理学的に適切なプロモーターの調節下でレンチウィルスベクターの形質導入を用いて、ヒト細胞中で発現された。この経路によって達成されるmRNAレベルでの発現は、最大の形質導入の下でFlp−In(商標)T−REx(商標)−293系を使用した場合より約2桁低かったが、ミトコンドリア呼吸代謝に及ぼす顕著な効果は、実質的に同一であった。従って、レンチウィルスベクターにより送達されるAOXは、呼吸鎖のチトクロムセグメントが、例えば毒素、変異又は一過性の低酸素等の他の侵襲によって阻害される条件下で、呼吸鎖のチトクロムセグメントの条件的迂回路を提供するために使用することが可能である。
【0082】
レンチウィルスベクターによって送達されるAOX発現である本発明の特に好ましい実施形態において、形質導入された細胞は、増殖上の検出不可能な利点又は欠点を有しながら、少なくとも3週間維持されることが可能である。多くの外来タンパク質とは異なり、ヒト細胞中でこのレベルで発現するAOXは、それゆえ、何ら毒性効果を有さないように見える。さらに、TCA回路酵素であるフマル酸ヒドラターゼ及びコハク酸脱水素酵素に変異を包含するミトコンドリア異化反応における多様な妨害が、細胞増殖又は腫瘍形成能さえも刺激し得(Warburg,Science,123:309−314, 1956;Pollard et al.,Ann.Med.,35:632−639, 2003)、レンチベクターにより送達されるAOXは、この点において実質的に不活性であるように見える。これは、動物検査によって、その有用性が確認される場合、遺伝子治療ツールとして安全に採用されることが可能であるという論拠を強める。
【0083】
従って、本発明の実験の部において、ショウジョウバエ−ドロソフィラ(Drosophila)におけるAOX発現の効果が示された。ドロソフィラ中での遍在性発現は、ヒト生物個体が、付与された外来遺伝子産物の発現を許容できるかどうかの最初の検査である。ドロソフィラ細胞は、ヒト細胞と同一の遺伝的及び生体エネルギー原理で機能し、同一の主要な細胞種、組織が全てショウジョウバエ中に存在し、臓器さえも存在する。利用可能なハエ遺伝系を使用して、多くの異なる遺伝的背景における効果を短時間にチェックすることが可能である。その知見は、その全般的な生理がさらに類似している哺乳動物、例えばマウス中での実験を設計し、最終的には、ヒトを用いた臨床試験での実験を設計するために使用することができる。
【0084】
ショウジョウバエ実験の結果によって、AOXの生物個体全体での発現が十分に許容されていることが示され、有害事象なしに正常に発達することが裏付けられた。AOXを発現するハエは、形態学的に正常であるように見え、繁殖性があり、非遺伝子組換えハエと交配されると、子孫の正常な数を産生した。AOX遺伝子組換えハエは、最も長命の野生型と同じくらい長命であるように見えた。さらに、酵素は、培養されたヒト細胞中で活性を有するものと同様の生化学的条件下で成体ハエのミトコンドリア中で活性を有していた。ドロソフィラ中でのAOXの発現によって、ミトコンドリアの基質酸化がシアン化物非感受性となり、シアン化物毒性からハエをさらに部分的に保護した。1mMKCNにおいてでさえ、AOXを発現しているハエは、30分以内で完全に麻痺し、処置を生存し、16時間後に再度活動を示した。AOXを発現しているハエは、ハエの餌へ添加すると野生型のハエに対して毒性のある複合体III阻害剤であるアンチマイシンに対しても耐性があった。呼吸鎖活性は、対照ハエと比較して、AOXを発現しているハエ由来のミトコンドリア中において有意に変化せず、ヒト培養細胞中と同様に、必要とされる条件下を除き、生物個体においてAOXが酵素的に不活性であることを示した。
【0085】
遺伝子治療
DNAが、多様なウィルスベクターを使用して、細胞中へ導入され得ることは、いまや広く認識されている。このような実施形態において、対象遺伝子を含有するウィルスベクターを含む発現構築物は、アデノウィルスベクター(例えば、参照により本明細書に各々組み入れられる米国特許第5,824,544号、米国特許第5,707,618号、米国特許第5,693,509号、米国特許第5,670,488号、米国特許第5,585,362号参照)、レトロウィルスベクター(例えば、参照により本明細書に各々組み入れられる米国特許第5,888,502号、米国特許第5,830,725号、米国特許第5,770,414号、米国特許第5,686,278号、米国特許第4,861,719号参照)、アデノ随伴ウィルスベクター(例えば、参照により本明細書に各々組み入れられる米国特許第5,474,935号、米国特許第5,139,941号、米国特許第5,622,856号、米国特許第5,658,776号、米国特許第5,773,289号、米国特許第5,789,390号、米国特許第5,834,441号、米国特許第5,863,541号、米国特許第5,851,521号、米国特許第5,252,479号参照)、アデノウィルス−アデノ随伴ウィルスハイブリッドベクター(例えば、参照により本明細書に組み入れられる米国特許第5,856,152号参照)、ワクシニアウィルスベクター若しくはヘルペスウィルスベクター(例えば、参照により本明細書に各々組み入れられる米国特許第5,879,934号、米国特許第5,849,571号、米国特許第5,830,727号、米国特許第5,661,033号、米国特許第5,328,688号参照)又はレンチウィルスベクター(例えば、参照により本明細書に各々組み入れられる米国特許第6,207,455号及び米国特許第6,235,522号)であり得る。多くの使用において、ウィルスの複製欠損系が好ましい。
【0086】
当業者は、インビボ及びエクスビボでの状況へ遺伝子送達を適用どのように適用するかを知悉している。ウィルスベクターの場合、当業者は、一般的に、ウィルスベクターストックを調製する。ウィルスの種類及び達成可能な力価に応じて、当業者は、1×10、1×10、1×10、1×10、1×10、1×10、1×1010、1×1011又は1×1012の感染粒子を患者へ送達する。同様の数字は、相対的な取り込み効率を比較することによって、リポソーム製剤又は他の非ウィルス製剤に関して推定され得る。医薬として許容される組成物としての製剤は、以下に論述されている。
【0087】
多様な経路が、多様な細胞の種類に対して想定される。実際に全ての細胞、組織又は臓器の種類に関して、全身送達が想定される。他の実施形態において、多様な直接的、局部的及び局所的アプローチが採用され得る。例えば、細胞、組織又は臓器は、発現ベクター又はタンパク質を直接注射され得る。
【0088】
本発明において使用するための遺伝子治療用の好ましいプロモーターには、EF−αプロモーター、サイトメガロウィルス(CMV)プロモーター/エンハンサー、レトロウィルスの末端反復配列(LTR)、ケラチン14プロモーター、及びαミオシン重鎖プロモーターが含まれる。臓器特異的プロモーターは、限局化されたAOX発現が望ましい疾病又は状態に関して有利であり得る。
【0089】
本明細書中に論述されているポリヌクレオチド又はベクターで(安定的に又は一過性に)形質転換又は形質移入された原核細胞及び真核細胞を含む宿主細胞は、本発明の一態様として考えられる。本発明のポリヌクレオチドは、環状プラスミドの一部として、又は単離されたタンパク質コード領域若しくはウィルスベクターを含む直鎖DNAとして宿主細胞中へ導入され得る。本分野で周知であり、定型的に実施される、DNAを宿主細胞中へ導入するための方法には、形質転換、形質移入、電気穿孔法、核注入、又はリポソーム、ミセル、ゴースト菌体、及びプロトプラスト等の担体との融合がある。上述のように、このような宿主細胞は、ポリヌクレオチドを増幅させるために、及びポリヌクレオチドによってコードされる本発明のポリペプチドを発現させるために有用である。宿主細胞は、単離され得るか及び/又は精製され得る。宿主細胞は、インビボでのポリペプチドの一過性又は持続性発現を生じるための、インビボで形質転換された細胞でもあり得る。宿主細胞は、例えば、治療目的のためにインビボでポリペプチドを産生するために、エクスビボで形質転換され、形質転換後に導入される単離された細胞でもあり得る。宿主細胞の定義は、遺伝子導入ヒトを明確に排除する。一態様において、エクスビボでの治療は、特定の組織/臓器の種類の分化した、未分化の又は部分的に分化した細胞中へ導入される。典型的な分化した細胞には、体細胞、神経細胞、骨格筋細胞、平滑筋細胞、膵臓細胞、肝細胞及び心筋細胞が含まれる。細胞の典型的な種類には、以下に限定されるものではないが、幹細胞、全能性細胞、多能性細胞、胚性幹細胞、内部細胞塊、成体幹細胞、骨髄細胞、臍帯血由来の細胞及び外胚葉、中胚葉又は内胚葉由来の細胞がある。
【0090】
このような宿主細胞は、本明細書に記載のアッセイにおいて有用である。本発明のポリペプチドの発現に関し、細菌、酵母、植物、無脊椎動物(例えば、昆虫)、脊椎動物、及び哺乳動物の宿主細胞を含む(がそれらに限定されない)全ての宿主細胞が許容される。治療用調製物を開発するために、哺乳動物細胞系、特にヒト細胞系における発現が好ましい。本発明の組換え発現産物に関する最適な生物活性を付与することが望ましい場合があり得るように、哺乳動物宿主細胞の使用は、翻訳後修飾(例えば、グリコシル化、切り詰め、脂質付加、及びリン酸化)を提供することが予想される。ポリペプチドのグリコシル化された形態及び非グリコシル化された形態が、本発明によって包含される。同様に、本発明はさらに、ポリエチレングリコール、ポリオキシエチレングリコール又はポリプロピレングリコール等の1つ又はそれ以上の水溶性ポリマー付着を含むように共有結合で修飾された上述のポリペプチドを包含する。
【0091】
同様に、本発明は、ミトコンドリア呼吸鎖中での欠損によって特徴付けられる疾患及び細胞中での酸化的損傷によって特徴付けられる疾患を含む(がそれらに限定されない)本明細書に記載の疾患の治療のための医薬の製造における、本発明のポリペプチド又はポリヌクレオチド又は宿主細胞の使用を提供する。関連した実施形態において、本発明は、容器へ装着されるか又は容器とともに梱包され、容器の含有物を記載し、本明細書に記載されている1つ又はそれ以上の疾病を治療するために容器の含有物の使用に関する表示及び/又は説明を提供するラベルをさらに含む、バイアル又は瓶等の容器中に詰められた本発明のポリヌクレオチド、ポリペプチド又は組成物を含むキットを提供する。
【0092】
他の実施形態において、非ウィルス送達が考えられる。これらには、リン酸カルシウム沈殿(Graham and Van Der Eb,Virology,52:456−467, 1973;Chen and Okayama,Mol.Cell Biol.,7:2745−2752, 1987;Rippe,et al.,Mol.Cell Biol.,10:689−695, 1990)、DEAE−デキストラン(Gopal,Mol.Cell Biol.,5:1188−1190, 1985)、電気穿孔法(Tur−Kaspa,et al.,Mol.Cell Biol.,6:716−718, 1986;Potter,et al.,Proc.Nat.Acad.Sci.USA,81:7161−7165, 1984)、直接的微量注入法(Harland and Weintraub,J.Cell Biol.,101:1094−1099, 1985)、DNA入りのリポソーム(Nicolau and Sene,Biochim.Biophys.Acta,721:185−190, 1982;Fraley,et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,76:3348−3352, 1979;Felgner,Sci.Am.,276(6):102−6, 1997;Felgner,Hum.Gene Ther.,7(15):1791−3, 1996)、細胞超音波処理(Fechheimer,et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,84:8463−8467, 1987)、高速微粒子銃を使用する遺伝子照射(Yang,et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,87:9568−9572, 1990)、及び受容体仲介性形質移入(Wu and Wu, J.Biol.Chem.,262:4429−4432, 1987;Wu and Wu,Biochemistry,27:887−892, 1988;Wu and Wu,Adv.Drug Delivery Rev.,12:159−167, 1993)が含まれる。
【0093】
本発明の具体的な実施形態において、発現構築物(又はタンパク質)は、リポソーム中に捕捉され得る。リポソームは、リン脂質二層膜及び内部の水性媒体によって特徴付けられる小胞構造である。多重膜リポソームは、水性媒体によって分離される複数の脂質層を有する。多重膜リポソームは、リン脂質が水溶液の過剰量中で懸濁されると、自発的に形成される。脂質成分は、閉鎖された構造の形成前に自己再編成を経験し、脂質二層間に水及び溶解された溶質を捕捉する(Ghosh and Bachhawat,In:Liver Diseases,Targeted Diagnsis And Therapy Using Specific Receptors And Ligands,Wu,G.,Wu,C.,ed.,New York:Marcel Dekker,pp.87−104, 1991)。陽イオン性リポソームへのDNAの添加によって、リポソームから、光学的に複屈折の液体−結晶により濃縮された小球への形態的な移行が生じる(Radler,et al.,Science,275(5301):810−4, 1997)。これらのDNA−脂質複合体は、遺伝子治療及び送達において使用するための有望な非ウィルスベクターである。リポソームにより媒介される核酸送達及びインビトロでの外来DNAの発現は、大きな成功を収めている。また、本発明において考えられるのは、「リポフェクション」技術を包含する多様な商業的アプローチである。本発明のある実施形態において、リポソームは、センダイウィルス(HVJ)と複合体を形成され得る。これは、細胞膜との融合を容易にし、リポソームにより被包されたDNAの細胞流入を促進することが示されている(Kaneda,et al.,Science,243:375−378, 1989)。他の実施形態において、リポソームは、核非ヒストン染色体タンパク質(HMG−1)とともに複合体形成され得、又は核非ヒストン染色体タンパク質(HMG−1)とともに使用され得る(Kato,et al.,J.Biol.Chem.,266:3361−3364, 1991)。さらなる実施形態において、リポソームは、HVJ及びHMG−1の両者とともに複合体形成され得、又はHVJ及びHMG−1の両者とともに使用され得る。このような発現において、構築物は、核酸のインビトロ及びインビボでの転移及び発現においてうまく使用された後、本発明に適用することが可能である。
【0094】
治療用遺伝子をコードする核酸を細胞中へ送達するために使用されることができる他のベクター送達系には、受容体媒介性送達媒体がある。前記媒体は、ほぼ全ての真核細胞における受容体仲介性エンドサイトーシスによる巨大分子の選択的取り込みを利用する。多様な受容体の細胞種特異的分布のため、送達は非常に特異的であり得る(Wu and Wu,Adv.Drug Delivery Rev.,12:159−167, 1993)。
【0095】
受容体仲介性遺伝子を標的とする媒体は、一般的には、2つの成分、すなわち細胞受容体特異的リガンド及びDNA結合剤からなる。幾つものリガンドが、受容体仲介性遺伝子移入に使用されてきた。最も詳しく性質が明らかとなっているリガンドは、アシアロオロソムコイド(ASOR)(Wu and Wu(1987)、上述)及びトランスフェリン(Wagner, et al.,Proc.Natl.Acad Sci.USA,87(9):3410−3414, 1990)である。近年、ASORと同一の受容体を認識する新たな合成糖タンパク質が、遺伝子送達媒体として使用されており(Ferkol,et al.,FASEB. J.,7:1081−1091, 1993;Perales,et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.,USA 91:4086−4090, 1994)、上皮増殖因子(EGF)も扁平上皮癌細胞へ遺伝子を送達するのに使用されている(Myers,欧州特許庁0273085)。
【0096】
他の実施形態において、送達媒体は、リガンド及びリポソームを含み得る。例えば、Nicolau,et al.,Methods Enzymol.,149:157−176(1987)は、リポソーム中へ組み込まれるガラクトース末端アシアルガングリオシド(asialganglioside)であるラクトシル−セラミドを採用し、肝細胞によるインスリン遺伝子の取り込みの亢進を観察した。従って、治療用遺伝子をコードする核酸も、リポソームを有すか又は有さないあらゆる受容体−リガンド系によって、特定の細胞種中へ特異的に送達され得ることが実施可能である。
【0097】
本発明の別の実施形態において、発現構築物は単純に、むき出しの組換えDNA又はプラスミドからなり得る。構築物の転移は、細胞膜を物理的又は化学的に透過処理する上述の方法の何れかによって実施され得る。これは、インビトロでの転移に対して特に適用可能であるが、インビボでの使用に対しても同様に適用され得る。Dubensky,et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,81:7529−7533(1984)は、活発なウィルス複製及び一過性の感染を示す成体マウス及び新生児マウスの肝臓及び脾臓中へ、CaPO4沈殿物の形態にあるポリオーマウィルスDNAを注射することに成功した。Benvenisty and Neshif,Proc.Nat.Acad.Sci.USA,83:9551−9555(1986)も、CaPO4で沈殿したプラスミドの直接的な腹腔内注射が、形質移入された遺伝子の発現をもたらすことを示した。
【0098】
むき出しのDNA発現構築物を細胞中へ転移させるための本発明の別の実施形態は、粒子の照射を包含し得る。本方法は、細胞膜を貫通することができ、細胞を死滅させずに細胞に移入できる高速度へ、DNAコーティングされた微粒子銃を加速させる能力に依存する(Klein,et al.,Nature,327:70−73, 1987)。小粒子を加速させるための幾つもの装置が開発されてきた。このような一装置は、電流を発生させるための高電位放電に依存し、前記電流が次に、動力を供与する(Yang,et al.,Proc.Natl.Acad.Sci USA,87:9568−9572, 1990)。使用された微粒子銃は、タングステン又は金のビーズ等の生物学的に不活性な物質からなっている。
【0099】
考えられる他の非ウィルス送達機構には、リン酸カルシウム沈殿(Graham and Van Der Eb,Virology,52:456−467, 1973;Chen and Okayama,Mol.Cell Biol.,7:2745−2752, 1987;Rippe,et al.,Mol.Cell Biol.,10:689−695, 1990)、DEAE−デキストラン(Gopal,Mol.Cell Biol.,5:1188−1190, 1985)、電気穿孔法(Tur−Kaspa,et al.,Mol.Cell Biol.,6:716−718, 1986;Potter,et al.,Proc.Nat.Acad.Sci.USA,81:7161−7165, 1984)、直接的微量注入法(Harland and Weintraub,J.Cell Biol.,101:1094−1099, 1985)、DNA入りのリポソーム(Nicolau and Sene,Biochim.Biophys.Acta,721:185−190, 1982;Fraley,et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,76:3348−3352, 1979;Felgner,Sci.Am.,276(6):102−6, 1997;Felgner,Hum.Gene Ther.,7(15):1791−3, 1996)、細胞超音波処理(Fechheimer,et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,84:8463−8467, 1987)、高速微粒子銃を使用する遺伝子照射(Yang,et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,87:9568−9572, 1990)、及び受容体仲介性形質移入(Wu and Wu, J.Biol.Chem.,262:4429−4432, 1987;Wu and Wu,Biochemistry,27:887−892, 1988;Wu and Wu,Adv.Drug Delivery Rev.,12:159−167, 1993)が含まれる。
【0100】
ミトコンドリアに対する標的化
さらに他の実施形態において、送達媒体は、ポリヌクレオチドをミトコンドリアへ特異的に送達し得る(その開示が全体として参照により本明細書に組み入れられる開示である米国特許出願公開第2006/0211647号)。
【0101】
小器官への特異的ポリペプチドの標的化は、前記ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを修飾して、特異的な小器官標的化シグナルを発現させることによって達成されることが可能である。これらのシグナルは、特異的小器官を標的にするが、幾つかの実施形態においては、標的化シグナルと小器官との相互作用は、古典的な受容体:リガンド相互作用を通じて生じることはない。真核細胞は、分散した多くの膜結合区画、又は小器官を含む。各小器官の構造及び機能は大部分が、構成体のポリペプチドのその特異的な補体によって決定される。しかしながら、これらのポリペプチドの大部分は、細胞質中でそれらの合成を開始する。従って、小器官の生合成及び優れた状態での維持は、新たに合成されたタンパク質がそれらの適切な区画を正確に標的とし得ることを必要とする。これは、しばしば、アミノ末端シグナル伝達配列、並びに翻訳後修飾及び二次構造によって達成される。ミトコンドリアに関して、幾つものアミノ末端標的化シグナルが推定されてきた。典型的なミトコンドリア標的化シグナルには、Genbank受託番号NP633590、Q9DCW4、NP000099、NP067274、NP080720、AA031763、NP032641、AAH49802、NP000273、NP031647、XP331748、NP000008、WP000117、NP002147、XP326125、NP002216、NP898871、NP002387、NP004101、NP001599、NP005720、P22572、AAP88794、AAH55030、AAH53661、NP036216、NP032329、NP001600、P42126、NP031408、NM201263、NP060297、AAH27412、AAC25560、NP006558、NP001688、AAP35327、NP061820、CAA29050、NP056155、AAG31658、NP0323289、NP497429、NP000681、NP005262、NP000099、NP000275、AAH00439、NP005381、NP000700、P08249、NP004083、JC4022、AAP35352、NP032123、NP499075、NP509584、NP034607、AAB27965、AAC52130、AAH05476、NP000007、AAH39158、DSHUN、AAC42010、NP005382、AAA56664、NP000174、AAH11617、NP005318、AAH16180、AAF21941、AAH01917、AAC52130、NP495693、NP000522、CAA30121、NP000021、NP733844、NP009320、NP055975、NP002603、CAA42060、NP034455、NP023676、CAA39695、PI9974、AAH57347、NP032836、CAA32052、P33540、NP001976、P42125、NP000246、CAE35137、NP499264、NP002148、NP006671、NP032023、NP034152、NP031559、NP000427、NP492290、NP510764、NP000679、NP056155、XP323115、t15761、NP033463、NP005923、NP003468、NP002071、NP000265、NP000021、AAH08119、P39726、NP009531、NP009515、NP009473、NP009463、NP009678、CAA55624、NP009704、NP009780、NP009786、NP009810、NP009827、NP009841、NP009929、NP009953、NP009958、NP009975、NP010079、NP010432、NP010480、NP010750、NP116635、NP011760、NP011872、NP012194、CAA89390、NP012647、NP012884、NP013073、NP013160、NP013597、NP013778、NP013788、NP014546、NP014683、NP014785、NP015207、NP015190、NP015071、NP015061、CAA89167及びNP015392として列挙されるものがある。
【0102】
一実施形態において、小器官標的化シグナルは、少なくとも2つの、少なくとも5ないし15の、又は約11の荷電基を含有することが可能であり、正味の反対の電荷を有する小器官へ標的化シグナルを引き込ませる。別の実施形態において、標的化シグナルは、電磁ポテンシャル勾配に逆らって又は前記勾配に沿って標的化シグナルを小器官中へと輸送させる一連の荷電基を含有することが可能である。適切な荷電基は、荷電された官能基、アミノ基、核酸等を有するアミノ酸等の、細胞内条件下で荷電された基である。ミトコンドリア局在化/標的化シグナルは、一般に、タンパク質が高度に負に荷電されたミトコンドリアへ標的化できるようにする高度に正に荷電されたアミノ酸のリーダー配列からなる。リガンドが受容体に接近するために確率論的ブラウン運動に依存する受容体:リガンドアプローチとは異なり、幾つかの実施形態のミトコンドリア局在化シグナルは、電荷のために、ミトコンドリアへ引っ張られる。
【0103】
ミトコンドリアに進入するために、タンパク質は一般的に、Tim及びTom複合体(ミトコンドリア内膜/外膜のトランスロカーゼ)からなるミトコンドリア輸入装置と相互作用しなければならない。ミトコンドリア標的化シグナルに関して、正の電荷は、前記複合体と連結されたタンパク質を引っ張り、前記タンパク質をミトコンドリア中へ引っ張り続ける。Tim及びTom複合体によって、タンパク質は膜を通過できる。従って、本発明の幾つかの実施形態は、正に荷電した標的化シグナル及びミトコンドリア輸入装置を利用して、組成物をミトコンドリア内部空間へと送達する。
【0104】
別の実施形態において、本発明には、小器官局在化シグナルをコードするポリヌクレオチドへ、翻訳領域内で作用可能に接続された成熟AOXポリペプチドをコードするポリヌクレオチドが含まれる。このようなキメラ構築物は、細胞の小器官中へ導入されることが可能である。細胞は、細胞培養物中で無制限に維持されることができる形質転換された細胞系であり得、又は細胞は、一次細胞培養由来であり得る。典型的な細胞系には、アメリカン・タイプ・カルチャー・コレクションから入手可能なものが含まれる。核酸は、形質移入された細胞系の細胞の核内で複製及び転写されることが可能である。成熟AOXポリペプチドをコードするポリヌクレオチドは、標的小器官中に残存できるように、標的化シグナルは、必要であれば、酵素的に切断することができる。
【0105】
特異的な核酸、例えば代謝性遺伝子を発現する小器官を生じるためにあらゆる真核細胞を形質移入することが可能であり、前記細胞には、初代培養細胞及び確立された細胞系が含まれる。細胞の典型的な種類には、以下に限定されるものではないが、幹細胞、全能性細胞、多能性細胞、胚性幹細胞、内部細胞塊、成体幹細胞、骨髄細胞、臍帯血由来の細胞、及び外胚葉、中胚葉又は内胚葉由来の細胞が含まれる。典型的な分化した細胞には、体細胞、神経細胞、骨格筋細胞、平滑筋細胞、膵臓細胞、肝細胞及び心筋細胞が含まれる。
【0106】
ヒトの疾病、細胞増殖、細胞死及び加齢におけるミトコンドリアの重要性を考えると、本発明の実施形態は、(LHON、MELASを含む)公知のミトコンドリアの疾病及び(加齢、アルツハイマー病、パーキンソン病、糖尿病、心臓病を含む)ミトコンドリアの推定上の疾病が治療される手段を供給するためのミトコンドリアゲノムの操作も包含する。
【0107】
本発明のAOXポリヌクレオチド及びポリペプチドの治療上の使用
本発明は、本発明のAOXポリペプチド及びポリヌクレオチドを使用するインビトロ及びインビボでの数多くの方法を提供する。一態様において、AOXは、遺伝されると、又は老化中に体細胞性に生じるとに関わらず、ミトコンドリアOXPHOS系に影響を及ぼす変異から生じる生体エネルギー欠損を補正するための遺伝子治療ツールとして使用される。ミトコンドリア呼吸鎖が、チトクロムセグメント又はATP合成酵素内で部分的に遮断されている条件下で、AOXは電子流を再開させる。しかしながら、AOXにより支持される電子流は、非水素イオンポンピングであり、従って、ATP生成に直接関与しない。これに対して、チトクロム鎖が、複合体III又はIVにおいて遮断される場合、複合体Iを流れる電子及び水素イオンの流れは、AOXによって再開することが可能であり、これは、ATP生成を少なくとも部分的に回復させるはずである。本発明者の知見からの予測は、例えば、構造的なサブユニットにおけるミスセンス変異又は、チトクロム鎖に幾らかの活性を残留させ、従って臨界閾値を下回ってATP生成を低下させない集合因子及びシャペロン(例えば、Surf1)の喪失からもたらされる、複合体IIIにおいて又は複合体IIIを越えて呼吸鎖を部分的に遮断する条件下で、AOXは有用性を有するはずであるということである。これらの状況下で、逆向きの電子流を遮断し、NADHの再酸化を支持し、これにより、有害なROS生成、代謝性アシドーシス及びアポトーシス促進性シグナルの発生を最小化する上でのAOXの保護的効果は、呼吸鎖の生理学的機能障害の結果を軽減することを補助すべきである。
【0108】
従って、AOX発現が、生物個体において害がなく、且つ有益であることが示されるているので、遺伝子治療を介して、ミトコンドリア呼吸鎖に対して影響を受けるヒトの疾患の広範な範囲を治療するための有用なツールであることが推察され得る。
【0109】
ミトコンドリア呼吸鎖の疾病は、神経、筋肉、眼科系、心臓、腎臓、肝臓、血液、胃腸管、内分泌系及び代謝性代償不全を含む身体の多くの領域にそれ自体存在し得る。ミトコンドリア呼吸鎖疾患に関する総説は、その開示が全体として参照により本明細書に組み入れられるMorris et al.(Morris et al.J.Royal Soc,Med,88:217P−222P,1995)に見出され得る。典型的なミトコンドリア呼吸鎖疾患には、(ATP合成酵素若しくは他のOXPHOS複合体のサブユニットに関してミトコンドリア遺伝子における、又は複合体IV集合因子SURF1若しくは、OXPHOS系の生合成に関与する他のタンパク質に関する核遺伝子における変異によって引き起こされる)リー症候群;(ミトコンドリアtRNA−Lys又はミトコンドリア翻訳装置の他の成分における変異によって引き起こされる)MERRF症候群;パーキンソン病及び(mtDNAポリメラーゼPOLG、ミトコンドリアタンパク質キナーゼシグナル伝達、タンパク質代謝又は酸化的ストレスに対する耐性を含む、ミトコンドリア機能に関する遺伝子における変異によって引き起こされる)関連疾患;進行性外眼筋麻痺、カーンズ・セイヤー症候群及び(ミトコンドリアDNA、mtDNAの維持に関与する核遺伝子又は呼吸鎖の生合成の欠失又は点変異によって引き起こされる)MELAS症候群;(OXPHOSサブユニット、集合因子、ミトコンドリアタンパク質合成成分、ミトコンドリアタンパク質の移入、加工及び代謝回転、OXPHOSに関する補欠分子族及び電子担体の代謝産物輸送又は合成に関する遺伝子の変異の結果として生じる)肝臓、腎臓、中枢神経系、心臓、骨格筋、並びに内分泌系及び感音系等の臓器に影響する多系統性小児疾患;病変形成が、筋萎縮性側索硬化症、アルツハイマー病、フリードライヒ運動失調症及び抗酸化剤防御の欠損に起因し得る循環器疾患の形態を含む、ミトコンドリア中での活性酸素種の過剰産生を包含することが公知であるか又は包含すると考えられている、疾病;POLG、c10orf2(Twinkle)又はミトコンドリアDNAの維持の系の他の成分における遺伝的欠損の結果生じる他の運動失調症及び神経学的疾患;(12S rRNA、tRNASer(UCN)又はミトコンドリア翻訳装置の他の成分に関するミトコンドリア遺伝子における変異によって生じる)症候性及び非症候性の両方のミトコンドリア性聴力機能障害;(mtDNAの欠失、点変異又は配列多形性の結果生じる)ミトコンドリアOXPHOS系の欠損に起因し得る糖尿病の形態;ミトコンドリアOXPHOS系に影響を与える抗レトロウィルス治療の副作用;食物源の流動における障害の結果生じる難治性肥満及び他の代謝性疾患;NARP症候群;アルパース・フッテンロッハー病;感音性難聴;乳児良性筋障害;乳児致死性筋障害;小児筋障害;成人筋障害;横紋筋融解;レーバー遺伝性視神経ニューロパチー;心筋症;バース症候群;ファンコニー症候群;mtDNA欠乏症候群;ピアソン症候群;糖尿病及び乳酸性酸血症がある。
【0110】
ミトコンドリアの疾病は、脳、心臓、肝臓、骨格筋、腎臓並びに内分泌系及び呼吸器系の細胞に対して最も多大な損傷を生じるようである。従って、これらの細胞及び組織中のミトコンドリアのAOXによる形質移入は、本発明の範囲に属する。ミトコンドリアが、ミトコンドリア中に天然に存在するかどうかに関わらず、又はmtDNA若しくは核DNAにより自然にコードされるかどうかに関わらず、全てのタンパク質を発現するように形質移入され得ることが理解される。どの細胞が影響を受けるかに依存して、治療されるべき疾病の症状には、運動調節の損失、筋肉の脆弱さ及び疼痛、胃腸管疾患及び嚥下障害、成長不足、心臓病、肝臓病、糖尿病、呼吸器合併症、痙攣、視覚/聴覚障害、乳酸性アシドーシス、発達遅延並びに感染に対する感受性が含まれ得る。
【0111】
動物モデル
(ショウジョウバエ及びマウスを含む)動物モデルは、ミトコンドリア呼吸鎖のさまざまな疾患の治療における本発明のAOX治療に関する治療上の有効性を示すために使用されることが可能である。典型的なショウジョウバエモデルには、oxen(Frolov et al.,Genetics,156:1727−1736, 2000)、Surf1−KD(Zordan et al.,Genetics,172:229−241, 2006)、park(Green et al.,Hum.Mol.Genet.14:799−811, 2005;Park et al.,Nature 441:1157−1161, 2006)、dj−1β(Muelener et al.,Proc Natl Acad Sci USA.103:12517−12522, 2006)、cyclope(Szublewski et al.,Genetics 158:1629−1643, 2001)、Httex1p Q93(Marse et al.,Bioessays 26:485−496, 2004)、及びdfh(Anderson et al.,Drosophila.Hum.Mol.Genet.14:3397−3405, 2005)が含まれ、前記モデルは次の疾患、すなわち複合体III欠乏症、チトクロムcオキシダーゼ欠乏性リー症候群、パーキンソン病、乳児性チトクロムcオキシダーゼ欠乏症、ハンチントン病及びフリードライヒ運動失調症の1つを示す。
【0112】
典型的なマウスモデルには、Cox6a2(Radford et al.,Am.J.Physiol.Heart Circ.Physiol.,282:H726−H733, 2002)、Cox10(Diaz et al.,Hum.Mol.Genet.14:2737−2748, 2005)、Mecp2(Kriaucionis et al.,Mol.Cell.Biol.,26:5033−5042, 2006)、Harlequin(Vahsen et al.,EMBO J.,23:4679−4689, 2004;Simon et al.,J.Neurosci.,24:1987−1995, 2004)並びに次の疾患、すなわち拡張期心不全、貧血、難聴、心筋症、リー症候群、レット症候群、神経細胞変性及び網膜変性を伴う複合体I欠乏症、冠状動脈疾患並びに脳卒中の1つを示す他のもの(Maddedu et al.,Vascul Pharmacol.,2006 Aug 22;[印刷前の電子刊行];Traystman et al.,ILAR J.,44:85−95, 2003;Szentirmai et al.,Neurosurgery 55:283-286, 2004)がある。
【0113】
一態様において、AOX cDNAは、遺伝子治療を介して、ミトコンドリア呼吸鎖のヒト疾患のための動物モデルへ(全身的に又は、カテーテル若しくは他の適切な医用装置を通じて臓器へ局所的にの何れかで)投与される。考えられる治療効果には、低下した代謝性アシドーシス、低下又は排除された酸化的ストレス、アポトーシスに対する低下した感受性又はアポトーシスの低下した速度がある。
【0114】
遺伝子導入動物を作製する方法
遺伝子導入動物は、多くの方法で作製することができる。遺伝子導入生物は、そのゲノム中へ組み込まれたDNAの過剰の若しくは外来性の断片を有する生物であり、DNAの内因性断片を置換する場合がある。少なくとも本発明において、ゲノムがAOXを本来含まず、AOX遺伝子(又はAOX活性を有するAOXバリアント)を導入するように修飾された全ての動物及び形質転換/形質移入されたその子孫は、遺伝子導入動物と考えられる。過剰の若しくは外来性のDNAの安定した遺伝を達成するために、組み込み事象は、機能的生殖細胞を生じることが可能である細胞種において生じなければならない。遺伝子導入動物を作製するために使用される2つの動物細胞種は、受精卵細胞及び胚性幹細胞である。
【0115】
胚性幹(ES)細胞は、インビトロでの培養物から、その中でES細胞が発育している動物中へ組み入れられ、生殖細胞を含む全ての組織中の遺伝子導入細胞を生じることが可能である「宿主」胚へと戻されることが可能である。ES細胞は、培養中に形質移入された後、細胞を胚中へ注入することによって変異を生殖系へと伝達する。次に、変異を受けた生殖細胞を有する動物が交配されて、遺伝子導入子孫をもたらす。マウス生殖系中に遺伝的を施すためのES細胞の使用は、十分認識されている。本技術の総説に関して、当業者は、Bronson & Smithies,J.Biol.Chem.,269(44):27155−27158, 1994;Torres,Curr.Top.Dev.Biol.,36:99−114, 1998及びそれらの文献に含有される参考文献に付託される。
【0116】
一般的に、胚盤胞は、発達中の一定の段階で妊娠中のマウスから単離され、例えば、マウス由来の胚盤胞は、発達第4日(第1日は、交配日として定義される。)に、未分化の多能性状態にあるES細胞を持続させる適切な緩衝液中へと単離され得る。ES細胞系は、当業者に周知の多くの方法によって単離され得る。例えば、胚盤胞は、培養皿へ付着させられ、約7日後に、増殖している内部細胞塊を取り出し、トリプシン処理され、同一培地中で別の培養皿へ転移され得る。ES細胞コロニーは、外植された各内部細胞塊から生じる5ないし7個の各コロニー間で、2ないし3週間後に現れる。次に、ES細胞系は、さらなる分析のために増殖させることが可能である。あるいは、ES細胞系は、内部細胞塊を外植する前に抗マウス抗体を使用して栄養外胚葉細胞が破壊される免疫手術技術(Martin,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,78:7634−7638, 1981に記載)を使用して単離されることが可能である。
【0117】
遺伝子導入動物を作出する上で、相同組換えによって操作されたES細胞系は、(Williams et al.,Cell,52:121−131, 1988に記載のとおり)胚盤胞注入によって胚性環境中へ再度導入される。簡潔に述べると、胚盤胞は、妊娠中のマウスから単離され、増殖される。増殖された胚盤胞は、培養前に油滴培養物中で4℃で10分間維持される。ES細胞は、個々のコロニーを取り出した後、リン酸緩衝塩類溶液、0.5mM EGTA中で5分間温置されることによって調製され、単一細胞懸濁液は、1%(v/v)ヒヨコ血清を含有するトリプシン−EDTA溶液中で、4℃でさらに5分間温置することによって調製される。(20mM HEPES[pH8]中で緩衝された10%(v/v)ウシ胎仔血清及び3,000単位/mLのDNAase 1を有するダルベッコ変法イーグル培地中の)5ないし20個のES細胞を各胚盤胞中へ注入する。次に、擬似妊娠レシピエント中へ胚盤胞を転移させ、正常に発達させる。コートマーカーによって遺伝子導入マウスを同定する(Hogan et al.,Manipulating the Mouse Embryo,Cold Spring Harbor,N.Y.,1986)。ES細胞を単離及び増殖するさらなる方法は、例えば、各々が参照により本明細書に組み入れられる米国特許第5,166,065号、米国特許第5,449,620号、米国特許第5,453,357号、米国特許第5,670,372号、米国特許第5,753,506号、米国特許第5,985,659号において見出され得る。
【0118】
遺伝子導入動物を作出するための接合体注入方法を包含する別の方法は、例えば、参照により本明細書に組み入れられる米国特許第4,736,866号に記載されている。遺伝子導入動物を作出するためのさらなる方法は一般的に、Wagner and Hoppe(参照により本明細書に組み入れられる米国特許第4,873,191号)、Brinster et al.(Proc.Natl.Acad.Sci.USA,82(13):4438−4442, 1985;その全ての内容が全体として参照により本明細書に組み入れられる)及びManipulating The Mouse Embryo;A Laboratory Manual,2nd edition(eds.,Hogan,Beddington,Costantimi and Long,Cold Spring Harbor Laboratory Press,1994;その全ての内容が全体として参照により本明細書に組み入れられる)によって記載されている。
【0119】
簡潔に述べると、本方法は、受精卵又は接合体中へDNAを注入した後、擬似妊娠中の母親において前記卵を発達させることを包含する。接合体は、同系のオス及びメスの動物を使用して、及び異なる系のオス及びメスの動物から得られることが可能である。創始生物である生まれた遺伝子導入動物を交配して、同一のDNA挿入を有するより多くの動物を作出する。遺伝子導入動物を作出する方法において、新たなDNAが典型的に、非相同性組換え事象によってゲノム中へ無作為に組み込む。DNAのコピーの1ないし何千もが、ゲノム中の一部位で組み込み得る。
【0120】
一般的に、DNAは、前核、通常はより大きなオスの前核の1つの中へ注入される。次に、接合体が同日に転移され、又は一晩培養して2細胞胚を形成した後、擬似妊娠中のメスの卵管中へ転移される。組み込まれた望ましいDNAの存在に関して、生まれた動物をスクリーニングする。
【0121】
微量注入のためのDNAクローンは、本分野で公知のいずれかの手段によって調製されることが可能である。微量注入のためのDNAクローンは、細菌プラスミド配列を除去するために適切な酵素で切断され、DNA断片は、標準的な技術を使用して、TBE緩衝液中、1%アガロースゲル上で電気泳動されることが可能である。臭化エチジウムによる染色によって、DNAバンドを可視化し、発現配列を含有するバンドを切り出す。次に、0.3M酢酸ナトリウム(pH7.0)を含有する透析バッグ中に、切り出されたバンドを配置する。DNAを、透析バッグ中へと電気溶出し、1:1のフェノール:クロロホルム溶液で抽出し、エタノール2容積によって沈殿させる。低塩緩衝液(0.2M NaCl、20mMトリス(pH7.4)、及び1mM EDTA)1mL中でDNAを再度溶解し、Elutip−D(商標)カラムで精製する。カラムをまず高塩緩衝液(1M NaCl、20mMトリス(pH7.4)、及び1mM EDTA)3mLでまず刺激した後、低塩緩衝液5mLで洗浄する。DNA溶液をカラムに3回通過させ、DNAをカラムマトリクスへ結合させる。低塩緩衝液3mLで1回洗浄した後、DNAを0.4mLの高塩緩衝液で溶出し、エタノール2容積によって沈殿させる。紫外線分光光度計において260nmでの吸収により、DNA濃度を測定する。微量注入のため、5mMトリス(pH7.4)及び0.1mM EDTA中でDNA濃度を3mg/mLへ調整する。
【0122】
微量注入のためのDNAの生成のためのさらなる方法は、Manipulating the Mouse Embryo(Cold Spring Harbor Laboratory,Cold Spring Harbor,NY,1986)、Palmiter et al.(1982)(Palmiter et al.,Nature,300:611, 1982)、Qiagen,Inc.,Chatsworth,CAによって刊行されるThe Qiagenologist,Application Protocols,3rd edition、及びSambrook et al.Molecular Cloning:A Laboratory Manual(Cold Spring Harbor Laboratory,Cold Spring Harbor,NY,1989)に記載されている。
【0123】
典型的な微量注入手法において、過排卵するように、6週齢のメスのマウスを誘導する。過排卵しているメスをオスとともに配置し、交配させる。約21時間後、交配したメスを屠殺し、摘出した卵管から胚を回収し、適切な緩衝液、例えば0.5%ウシ血清アルブミン(BSA;Sigma)含有のダルベッコリン酸緩衝塩類溶液中に配置する。取り囲んでいる卵丘細胞をヒアルロニダーゼ(1mg/mL)で除去する。次に、前核胚を洗浄し、5%CO2、95%空気で加湿された大気を有する37.5℃のインキュベータ中の0.5%BSAを含有するイーグル平衡化塩類溶液中に、注入時まで配置する。胚は、2細胞期で移植されることが可能である。
【0124】
無秩序に発情周期に入っている成メスマウスを、精管切除されたオスと対形成させる。C57BL/6若しくはSwissマウス又は他の同等の系は、本目的のために使用されることが可能である。レシピエントのメスを、ドナーのメスと同時に交配させる。胚転移のとき、体重1gあたり2.5%アベルチン(avertin)0.015mLの腹腔内注射を使用して、レシピエントのメスを麻酔する。単一正中線背側切開によって、卵管を露出させる。次に、体壁を通じて、直接的に卵管にわたって切開部を作製する。次に、卵巣嚢を時計製造用ピンセットで摘出する。転移されるべき胚をDPBS(ダルベッコリン酸緩衝塩類溶液)中に配置し、転移ピペットの先に配置する(約10ないし12個の胚)。ピペットの先を卵管漏斗中へ挿入し、胚を転移させる。転移後、切開部を2回の縫合によって封鎖する。次に、妊娠中の動物は、遺伝子導入系を確立するために使用される創始動物を出産する。
【0125】
医薬製剤及び投与経路
本発明のポリペプチド及び/又はポリヌクレオチドは、医薬として許容される適切な媒体、例えば、医薬として許容される希釈剤、アジュバント、賦形剤又は担体を使用する何れかの適切な様式で投与され得る。医薬媒体、賦形剤、又は培地として機能する液体、半固体又は固体の希釈剤が好ましい。本分野で公知の全ての希釈剤が使用され得る。典型的な希釈剤には、水、塩類溶液、モノラウリン酸ポリオキシエチレンソルビタン、ステアリン酸マグネシウム、ヒドロキシ安息香酸メチル及びヒドロキシ安息香酸プロピル、滑石、アルギン酸塩、デンプン、乳糖、ショ糖、デキストロース、ソルビトール、マンニトール、グリセロール、リン酸カルシウム、ミネラルオイル、及びカカオバターが含まれるが、これらに限定されるわけではない。このような製剤は、例えば投薬計画にある(ヒトを含む)哺乳動物対象へ、本発明のポリペプチド又はポリヌクレオチドを投与するために有用である。
【0126】
本発明の方法に従って投与されるべき組成物は、好ましくは、水、塩類溶液、リン酸緩衝塩類溶液、グルコース、又は静脈内注射で治療薬を送達するのに通常使用される他の担体等の、医薬として許容される担体を含む。多重遺伝子治療も考えられ、その場合、組成物は、場合によって、本発明のポリヌクレオチド/ベクター、及びミトコンドリア性疾患若しくはそれらの症状を治療するために選択される別のポリヌクレオチド/ベクターの両者を含む。
【0127】
本方法に従って実施される「投与」は、治療薬を哺乳動物対象の血管中へ直接的に又は間接的に導入するための医学的に許容される何れかの手段を使用して実施され得、それには、注射(例えば、静脈内、筋肉内、皮下、又はカテーテル)、経口摂取、鼻内投与又は局所投与等が含まれるが、これらに限定されるわけではない。好ましい実施形態において、本発明のポリヌクレオチドを含む組成物の投与は、静脈内注射、動脈内注射、又は冠動脈内注射等、血管内で実施される。治療組成物は、患者へ複数の部位で送達され得る。複数の投与は、同時に与えられ得、又は何時間にもわたって投与され得る。特定の場合、治療組成物の連続流を提供することは有益であり得る。さらなる治療法が、定期的に、例えば毎日、毎週又は毎月投与され得る。標的以外の組織における副作用を最小化するため、投与の好ましい方法は、筋肉内注射による投与等の局所投与の方法である。
【0128】
ウィルス送達を採用する遺伝子治療の実施形態において、単位用量は、投与されているウィルス粒子の用量に関して算出され得る。ウィルス用量には、ウィルス粒子又はプラーク形成単位(pfu)の具体的な数が含まれる。アデノウィルスを包含する実施形態に関して、具体的な単位用量には、10、10、10、10、10、10、10、1010、1011、1012、1013又は1014pfuが含まれる。粒子用量は、感染の不完全な粒子が存在することにより、幾分高め(10ないし100倍)であり得る。
【0129】
ウィルスベクターを採用する実施形態において、好ましいポリヌクレオチドにはさらに、適切なプロモーター及び上述のようなポリアデニル化配列が含まれる。さらに、これらの実施形態において、ポリヌクレオチドにはさらに、本発明のポリペプチドをコードする配列へ作用可能に接続されたベクターポリヌクレオチド配列(例えば、アデノウィルスポリヌクレオチド配列)が含まれる。
【0130】
同様に、本発明には、本発明の方法を実施するために、本発明の化合物又は組成物の使用を容易にする様式で包装された本発明の化合物又は組成物を含むキットが含まれる。最も単純な実施形態において、このようなキットには、容器へ固定されたか又はパッケージ中に含まれる、本発明の方法を実施するための化合物又は組成物の使用を記載するラベルとともに、密封された瓶又は管等の容器中に詰められ、本発明の実施に有用な、本明細書に記載の化合物又は組成物(例えば、本発明のポリヌクレオチド又はポリペプチド)が含まれる。好ましくは、前記化合物又は組成物は、単位剤形で包装される。別の実施形態において、本発明のキットには、本発明の方法を実施するのに有用な、ステント、カテーテル、血管外カラー、ポリマーフィルム、包帯、縫合糸又はそれらの類似物等の身体用デバイスとともに包装されるポリヌクレオチド又はポリペプチドの両者の組成物が含まれる。別の実施形態において、本発明のキットには、ヒドロゲルポリマー、又は微粒子ポリマー、又は患者へ前記ポリヌクレオチド又はポリペプチドを送達するのに有用な、本明細書に記載の他の担体とともに包装される、本発明のポリヌクレオチド又はポリペプチドの両者の組成物が含まれる。
【0131】
本発明は、以下の非限定的な実施例に関して更に記載される。
【実施例1】
【0132】
AOX発現ベクターの構築
ホヤ類チオナ・インテスティナリスから得られるAOX cDNA(配列番号1)を、ドキシサイクリン誘導性哺乳動物ベクターpCDNA5/FRT/TOベクター中へ、エピトープタグあり又はなしの何れかで直接連結した。
【0133】
エピトープタグ発現ベクターの構築のため、アニールされたオリゴヌクレオチド対
GJ247(配列番号7):
5’GGCCGCGGAACAAAAACTCATCTCAGAAGAGGATCTGTGATGA3’プラス
GJ248(配列番号8):
5’TCGATCATCACAGATCCTCTTCTGAGATGAGTTTTTGTTCCGC3’(myc)及び
GJ249(配列番号9):
5’GGCCGCGGATTACAAGGATGACGACGATAAGTGA3’(配列番号9)プラス
GJ250(配列番号10):
5’TCGATCACTTATCGTCGTCATCCTTGTAATCCGC3’(フラッグ)
を、NotI及びXhoIで切断したpCDNA5/FRT/TO(Invitrogen)中へ連結した。チオナ・インテスティナリスAOX cDNAの重複する伸展を運搬するNotI及びXhoI.pBluescript IIクローン(cieg032g14及びcic1022c03、http://ghost.zool.kyoto−u.ac.jp/indexrl.html)を使用して、プライマー対:
GJ241(配列番号11):
5’GGGAAGCTTCCACCATGTTGTCTACCGGAAGTAAAAC3’プラス
GJ242(配列番号12):
cieg032g14上の5’GGGGTACCGAGAGTATAACCAGAAAAAAC3’、及び
GJ243(配列番号13):
5’GGTACCTACACTGGACGGCTAGATGAG3’プラス
GJ244(配列番号14):
5’GGGGCGGCCGCTTGTCCAGGTGGATAAGGATTC3’又は
GJ245(配列番号15)
cic1022c03上の5’GGGGCGGCCGCTATTGTCCAGGTGGATAAGGATTC3’
を使用するPCRによって、完全長cDNAを集合させた。
【0134】
配列を確認した後、サブクローニングされたN末端及びC末端の断片を、pCDNA5/FRT/TO中へ、又はHindIII−KpnI及びKpnI−NotI断片のようにそれぞれ、修飾されエピトープタグを含有するベクター中へ連結した。
【実施例2】
【0135】
ヒト細胞培養の形質移入
200μMウリジン及び2mMピルビン酸及び5%TET非含有ウシ胎仔血清(Ozyme)(Spelbrink et al.,J.Biol.Chem.,275:24818−24828, 2000)プラス導入遺伝子選択のための適切な抗菌剤を補充された標準的なDMEM培地中で、市販のヒト胚性腎臓由来の細胞であるFlp−In(商標)T−REx(商標)−293細胞(Invitrogen)を培養し、実施例1のpcDNA5/FRT/TO−AOX発現構築物を、又は製造元の説明書に従ってリポフェクタミン(商標)(Invitrogen)を使用して空ベクターを形質移入した。
【0136】
1μg/mLのドキシサイクリンを培地へ添加することによって染色体上の正確な位置中に挿入されたAOX導入遺伝子(又は空ベクター)の単一コピーを含有する、抗菌剤による細胞生存処理(Flp−In(商標)T−REx発現系の完全な説明に関しては、www.invitrogen.comを参照)を誘導して、AOXを発現させた。
【0137】
誘導24時間後、AOX発現をSDS−PAGE及びイムノブロッティングによって確認した(図1B)。ミトコンドリア移入後のcDNA配列(42kDa)によって推定される大きさで遊走する、チオナ・インテスティナリスAOX AOX−myc(配列番号6)及びAOX−フラッグ(配列番号4)のエピトープタグのついた両バージョンを検出した。機能に関してあらかじめ要求されるように、AOXタンパク質は、ミトコンドリアに対して標的化されなければならない。これは、フラッグをタグ付けされたAOXによって生じるシグナルが、ミトコンドリアのマーカーであるMitotracker(登録商標)Redのシグナルと重複する免疫細胞化学(Garrido et al.,Mol.Biol.Cell,14:1583−1596, 2003)によって確認された(図1CないしE)。同様の重複は、前記タンパク質のmycをタグ付けされたバージョンで観察された(非表示)。
【実施例3】
【0138】
pcDNA/FRT/TO−AOXを形質移入されたヒト細胞の生化学的分析
細胞可溶化液を調製し、AOX発現に関して、SDSポリアクリルアミドゲル電気泳動後のイムノブロッティングによって分析した。使用された一次抗体は、マウス抗Mycモノクローナル9E10(Roche Molecular Biochemicals)及び抗フラッグM2抗体(Stratagene)であった。ペルオキシダーゼ抱合型ヤギ抗マウスIgG(Vector Laboratories,Inc.)を二次抗体として使用した(Spelbrink et al.,J.Biol.Chem.,275:24818−24828, 2000)。
【0139】
0.3Mマンニトール、5mM KCl、5mM MgCl2、10mMリン酸緩衝液(pH7.2)及び1mg/mLのウシ血清アルブミンからなる培地250μL中で、37℃で維持された磁石で撹拌された250μLチャンバーへ取り付けられたClark酸素電極(Hansatech,UK)を使用して、ジギトニンで透過処理された細胞による細胞呼吸及びコハク酸酸化を、48時間のドキシサイクリン誘導後に測定した。KCN、100μMシアン化カリウム;PG、100μM没食子酸n−プロピル;Pyr、10mMピルビン酸塩;Succ、10mMコハク酸塩。SODによる自己酸化速度の50%の低下が1Uとして定義されるピロガロール自己酸化アッセイによって、全体のSOD活性(EC1.15.1.1;Mn−及びCuZn−依存性酵素)を測定した(Roth and Gilbert,Anal.Biochem.,137:50−53, 1984)。結果をU/タンパク質mgとして表した。
【0140】
誘導48時間後に、AOX又は空ベクターのタグ付けされたか又はタグ付けされていないかの何れかのバージョンを有する細胞の37℃での呼吸特性を比較した。形質移入されていない親細胞系と同様、空ベクターを有する細胞の呼吸は、100μMシアン化カリウムに対して完全に感受性があった(図2A、トレースa)。対照的に、AOXを発現するよう誘導された細胞の呼吸は、タグ付けされていようといまいと、シアン化物に対して20%から40%までの耐性を一貫して示した(図2A、トレースb)。シアン化カリウムの3倍亢進した濃度は、さらなる阻害を何ら生じなかった(非表示)。
【0141】
次に、ジギトニンで透過処理された細胞によるミトコンドリア基質であるコハク酸の酸化を研究した。(全ての阻害性オキサロ酢酸の産生を回避するためのロテノンの存在下での)対照細胞によるコハク酸の酸化は、シアン化物に対して完全に感受性があった(図2A、トレースc)。対照的に、AOXを発現するよう誘導された細胞によるコハク酸の酸化は、シアン化物に対して60%まで有意に耐性があった(図2A、トレースd)。このシアン化物耐性酸化は、植物ミトコンドリアにおけるAOXの特異的阻害剤である(Siedow and Bickett,Arch.Biochem.Biophys.,207:32−39, 1981)100μM没食子酸プロピルのその後の添加によって完全に阻害された。重要なことに、シアン化物の不在下での没食子酸プロピルの添加は、酸素の取り込みを5%阻害しただけであり(図2A、トレースf)、AOXが、このような条件下で概して不活性であるが、シアン化物の存在によって活性化されることを示した。残留コハク酸の酸化は、100μMシアン化物によって完全に阻害された。驚くべきことに、AOXは、冷海水生物であるチオナ・インテスティナリスにおいて非常により低温でおそらく作用するが、ヒト細胞において発現されるタンパク質は、37℃で容易に活性があり、安定していた。
【0142】
AOXは、ミトコンドリアにより産生されるATPを有意に減少させ得るため、構成的に活性のあるリン酸化していないAOXが、細胞生存に有害ではないことを確認することが重要であった。細胞増殖(図2B)及び培地の酸性化(非表示)に及ぼすAOXの長期発現の効果を検査した。(4回までの細胞継代、18日間)AOXを発現する細胞及び対照細胞の増殖の間で、差異は観察できなかった。乳酸排出により誘発される培地の酸性化において何れの変化もなかったことは、AOXを発現している細胞(ATP産生のための解糖に依存している細胞)において、解糖とミトコンドリア呼吸との相対的な使用における検出可能な移行がなかったことを示す。これは、正常条件下で、電子流が、リン酸化しているチトクロムセグメントを使用するのに対し、AOXが本質的に不活性であるという解釈と一致する。
【0143】
従って、AOXタンパク質の存在が、インビトロで測定されるコハク酸−チトクロムc還元酵素の活性の有意な変化、すなわち、電子が、機能的AOXによって酸素へ直接迅速に運搬される場合に予測されるであろう低下がないことも観察された(非表示)。さらに、植物において、AOXは、非常に還元されたキノンプールから生じるスーパーオキシド生成を防止することによって、抗酸化剤酵素として作用することも示されている(Maxwell et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,96:8271−8276, 1999)。それゆえ、持続的に活性のあるAOXは、スーパーオキシド性性を低下させるべきであり、誘導性スーパーオキシドジスムターゼ活性(SOD)の低下したレベルを誘導すべきである(Geromel et al.,Hum.Mol.Genet.,10:1221−1228, 2001)。これを研究するため、誘導性及び非誘導性AOX細胞の両者におけるSOD活性を比較すると、有意差は見出されなかった(図2C)。総合すると、エピトープをタグ付けされた(myc又はflag)及びタグ付けされていないAOXバージョンの両者に関して複製されたこれらのデータは、ミトコンドリアキノンプールが非常に還元されない限り、すなわち、RCのチトクロムセグメントが機能的なままである限り、酵素が不活性なままであることを支持する。
【0144】
ピルビン酸は、植物ミトコンドリアAOXのアロステリックな作動体として公知であり、ミトコンドリアの疾病において非常に重要である(Stacpoole et al.,N.Engl.J.Med.,298:526−530, 1978)。この有機酸が、発現されたチオナ・インテスティナリスAOXにも影響を及ぼすかどうかを決定するため、実験を実施した。それゆえ、ロテノンを添加して、ピルビン酸の不在下又は存在下で、状態4の条件下でのコハク酸酸化のシアン化物感受性を、透過処理されたAOX誘導性細胞において比較した(図2A、トレースd、g)。複合体Iに特異的なこの後者の阻害剤(ロテノン)を添加し、添加されたピルビン酸の持続された酸化に必要なNADHの再酸化を遮断した。ピルビン酸の存在下で、シアン化物耐性のあるコハク酸酸化における有意な亢進(60%から80%まで)が留意された。これは、推定アミノ酸配列におけるおそらく決定的に重要なシステイン残基がないにもかかわらず、発現されたチオナ・インテスティナリスAOXが、有機酸による植物酵素と同様のアロステリックな制御へ供されたことを示唆する(McDonald and Vanlerberghe,IUBMB Life,56:333−341, 2004)。
【0145】
最後に、(上述の)シアン化物の存在下で一晩培養した後、AOXを発現していない細胞は、約1.0のpH単位ほど培地酸性化を示したのに対し、AOXを発現している細胞は、0.2ないし0.3のpH単位のみの培地酸性化を付与した。これは、ミトコンドリア呼吸鎖のチトクロムセグメントが遮断される条件下で、AOX発現が、ピルビン酸の乳酸への亢進した還元から生じる代謝性アシドーシスを緩和し、そのことが、チトクロム鎖が機能していないとき、NADHを再酸化する細胞の唯一の利用可能な手段であることを示す。
【実施例4】
【0146】
後生動物個体におけるAOXの発現
次に、AOXが、後生動物の個体、すなわちショウジョウバエにおいて、副作用なしで遍在性に発現することが可能であるかどうかを検査した。
【0147】
導入遺伝子が絶縁体要素によって隣接され、酵母転写活性因子Gal4pによるトランス活性化に依存する最小のプロモーターの調節下に配置される、挿入部位遺伝子中への又は挿入部位遺伝子中からの読み過ごし転写を防止する、(ベクターのペリカンシリーズ(Barolo et al.,Biotechniques,29:726−732, 2000)をベースにして)注文に応じて作られたショウジョウバエP要素ベクター中で、チオナ・インテスティナリス由来のAOX cDNA(配列番号1)を再度クローニングした(図3)。並行して作製された遺伝子導入系における発現を確認するため、本発明者は、AOXがC末端でMycエピトープによりタグ付けされたこの構築物の一バージョンも作製した(配列番号5)。
【0148】
AOXに関する8個の遺伝子導入創始者系並びに、AOX−mycに関するこのような系の数十個を、ベクターによって運搬される白色+(赤色)眼色マーカーに関して、標準的な方法を使用して、微量注入及び選択によって確立した(図4A及び4B)。
【0149】
標準的な逆方向PCRを使用して、AOX導入遺伝子のゲノム挿入部位を同定し、系の1つ(AOX系F6−1)に関して結果を図5に示した。この系は、ホモ接合体として生存可能であり繁殖性であり、第二染色体において単一のAOX導入遺伝子挿入を有した。系F6−1をその後の研究に使用し、1つ以上の他のAOX遺伝子導入系と並行した各場合において、観察された表現型がAOXに起因し、単一の遺伝子導入系における挿入効果又は他の変異原性効果に起因しないことを確認した。
【0150】
娘を持たない遺伝子の遍在性に作用するプロモーターの調節下で、遺伝子導入創始者を、GAL4を運搬するGal4駆動因子ハエと交配した。AOX又はAOX mycを発現するハエは、発達し、予測された数で囲い込み、健常に見えた。図6Aは、AOXを遍在性に発現させるために娘を持たないGAL4駆動因子を使用してセットアップされる交配を示す。図6Bは、発現するハエを表現型でどのように同定するか、及び前記ハエが、生存可能で表現型として正常であることを示す。
【0151】
図7は、RNAレベルでAOX導入遺伝子の発現がどのように、すなわち生体内原位置でのハイブリダイゼーションを使用して確認されるかを示す。
【0152】
図8は、AOX−myc発現がda−GAL4駆動因子によって誘導されるハエ個体における、抗myc抗体に対するウェスタンブロッティングを使用するAOX−mycの発現の確認を示す。
【0153】
両方の性別のAOXを発現するハエは、形態学的に正常であるように見え、繁殖性があり、遺伝子導入していないハエと交配されると、子孫の正常な数を産じた。AOXを発現するハエは、対照ハエと比較して、非常にわずかな発達の遅延を示した(表2)。
【0154】
表2:発達時間
AOXを発現する(AOX+)オスは、発現しない(AOX−)対照オスよりも、25℃で半日遅く孵化し、メスの孵化時間において顕著な差異はほとんどなかったが、反復した実験の多い数のため、有意差はなおもある(スチューデントのt検定によるp>0.001)。
【0155】
【表2】

【0156】
生涯期間に関する予備測定結果において、AOX遺伝子導入ハエは、最も長命の野生型の系(最長生涯期間〜105日)と同じくらい長命であるように見えた。実際の交配において、AOX発現ハエ及びAOX遺伝子導入「非発現ハエ」のオスは両者とも、対照の野生型のオスよりも有意に長命であった。しかしながら、「非発現ハエ」のオスは、発現ハエのオスよりも一貫して長命であり、AOX発現の低レベルが、長期の健常な生涯期間を促進するのに有益でありうることを示唆した。異なるAOX遺伝子導入系は、異なる程度まで、オスの生涯期間の延長を示した。導入遺伝子挿入部位はそれゆえ、結果に影響を及ぼし得る。又、AOX遺伝子導入した処女メスは、本アッセイにおいて最小の生涯期間の延長を示した。
【0157】
図9は、成体としての生涯期間の第1週の間、対照ハエよりも、より迅速でより顕著な体重減少をAOX発現ハエが経験したことを示す。これは、ミトコンドリアのエネルギー産生の効率が、一定の食餌摂取量に関してわずかに低下することをさらに示す。この観察が、哺乳動物においても当てはまることが示される場合、AOXがなければ難治性である肥満の治療におけるAOXの有用性を示す。非常に有害な副作用を有する脱共役剤による従来の疑われる治療とは異なり、AOXは、OXPHOS系の完全に天然で自己制御する迂回路を呈する。さらに、制限された食餌摂取量は、多くの他の実験生物(Weindruch et al.,Biogerontol.,7:169−171, 2006)と同様に、ハエにおける生涯期間を長期化することが公知である(Bross et al.,Aging Cell,4:309−317, 2005;Piper et al.,Exp.Gerontol.40:857−862, 2005)ため、ミトコンドリアでの異化作用の効率のわずかな変調は、加齢及び生涯期間に及ぼすAOX発現の有益な効果の根底にあり得る。
【0158】
総じて、これらの研究は、AOXが、後生動物の個体で発達を損なわず、有害な生理学的効果ではなく、わずかに有益な効果を有しながら、発現することが可能であるという原理の証明を提供する。
【実施例5】
【0159】
AOXを発現するハエ由来のミトコンドリアにおけるAOX活性
本実験において、ショウジョウバエにおいて発現するチオナ・インテスティナリスAOXは酵素活性があり、ヒト細胞におけるのと同様の特性を呈することが確認された。図10は、AOXを発現するハエが、シアン化カリウムに対する顕著な耐性を示し、数分以内で野生型のハエを死滅させる濃度の毒素を含有する培地上で、数時間まで生存可能なままであったことを示す。図11及び12は、ハエ全体由来のミトコンドリア懸濁液を使用した、代表的な酸素電極トレースの1セットを示す。
【0160】
AOXを発現するハエ及び発現していないハエ由来のミトコンドリア調製物を、多様な基質の存在下における呼吸鎖阻害剤に対する感受性に関して比較した。AOXを発現していないハエ由来のミトコンドリアによるピルビン酸+リンゴ酸の酸化は、シアン化カリウムに対して感受性があったのに対し、AOXを発現しているハエ由来のものは、シアン化物に対して主として耐性があった(>70%)(図12)。残留しているシアン化物非感受性の呼吸鎖活性は、没食子酸n−プロピル又はサリチルヒドロキサム酸等のAOXの阻害剤(SHAM,Schonbaum et al.,Plant Physiol.,47:124−128, 1971)に対して感受性があったのに対し、これらの阻害剤は、シアン化物が不在のとき、わずかな効果のみを有した。ヒト細胞内と同様、ピルビン酸の存在は、AOXを発現している細胞由来のミトコンドリアの生体エネルギーわずかに修飾し、呼吸調節比(RCR、ATP産生の際の呼吸の依存状態に関する測定結果)を約20%低下させ、従って、ピルビン酸等の有機酸が主要基質であるとき、リン酸化する条件下で呼吸性電子流に対し、AOXがわずかな程度関与することを示した。RCRは、加齢の間に進行性の低下を示す(Ferguson et al.,Biochem.J.,390:501−511, 2005)が、検査される全ての齢で、AOXを発現しているハエは、同齢の対照又はAOXを発現していないハエよりも低いRCRを呈した。AOXを発現しているハエにおいて、酵素(AOX)は、ミトコンドリア懸濁液の呼吸のシアン化物耐性に基づいて、1ヶ月齢及び2ヶ月齢でなおも活性があった。
【実施例6】
【0161】
AOXは、呼吸鎖毒からハエを保護する
AOXを発現しているハエは、シアン化カリウムの毒性効果に対し、顕著な耐性を示し、数分以内で野生型のハエを死滅させる濃度の毒素を含有する培地上で、数時間まで生存可能なままであることを示した(図13)。1mM KCNでさえ、AOXを発現しているハエは、30分以内で完全に麻痺し、処置を生き残り、16時間後に再度活動的であった。AOXを発現しているハエは、ハエの餌へ添加すると野生型のハエに対して毒性のある複合体III阻害剤であるアンチマイシンに対しても耐性があった(図14)。10μg/mLの用量で、野生型の胚は、孵化して幼生を形成したが、蛹の段階に一度も到達できなかったのに対し、AOXを発現している幼生は、正常に成ハエへと発達した。30μg/mLで、アンチマイシンは、野生型のハエの幼生段階への発達さえ完全に遮断したが、AOXを発現しているハエは、発達を完了でき、生存可能な繁殖性の成体を形成したが、発達の完了は、数日間ほど遅延した。AOX発現は、複合体V(ATP合成酵素)の阻害剤であるオリゴマイシンの中程度の用量に対する保護も生じた。
【0162】
これらの知見は、遺伝されていようと加齢中に体細胞性に発生しようと、ミトコンドリアOXPHOS系に影響する変異から生じる生体エネルギー的欠損を補正するための遺伝子治療ツールとしてのAOXの潜在的な有用性を確認する。ミトコンドリア呼吸鎖が、チトクロムセグメント又はATP合成酵素内で部分的に遮断される条件下で、AOXによって電子流が再開できる。しかしながら、AOXにより支持される電子流は、非水素イオンポンピングであり、それゆえ、ATP生成に直接関与しない。その一方で、チトクロム鎖が、複合体III又はIVにおいて遮断される場合、複合体Iを流れる電子及び水素イオンの流れは、AOXによって再開することが可能であり、そのことは、ATP生成を少なくとも部分的に回復させるべきである。本発明者の知見からの予測は、例えば、構造的なサブユニットにおけるミスセンス変異又は、チトクロム鎖に残留する幾らかの活性を残し、従って臨界閾値を下回ってATP生成を低下させない集合因子及びシャペロン(例えば、Surf1)の損失から結果的に生じる、複合体IIIにおいて又は複合体IIIを越えて呼吸鎖を部分的に遮断する条件下で、AOXは有用性を有するべきであるということである。これらの状況下で、逆向きの電子流を遮断し、NADHの再酸化を支持し、従って有害なROS生成、代謝性アシドーシス及びアポトーシス促進性シグナルの発生を最小化する上でのAOXの保護的効果は、呼吸鎖の生理学的機能障害の結果を軽減するのを補助すべきである。
【0163】
これは、より穏やかな効果を有する他のもの、例えばoxen(Frolov et al.,Genetics,156:1727−1736, 2000)又はSurf1のノックダウン(Zordan et al.,Genetics,172:229−241, 2006)の何れかによってチトクロム鎖を完全に遮断する変異(cyclope等)とAOX発現を組み合わせることによって、ショウジョウバエにおいて直接及び簡便に検査されることが可能である。
【実施例7】
【0164】
レンチウィルス−AOX発現構築物の構築
レンチウィルスベクターpWI(Addgene,Cambridge,MA,USA;Kvell et al.,Mol.Ther.,12:892−899, 2005)のPmeI部位中での平滑末端クローニングを介してSmaI断片として、上述の実施例1に記載のベクターpcDNA5/FRT/TO(Invitrogen)中へクローニングされたチオナ・インテスティナリスAOX cDNAを2段階で再度クローニングし、構築物pWPI−AOXを作製した(図15)。pWPIは、安定した単一コピーの挿入を確立するための機会を生じるだけでなく、導入遺伝子の発現を持続した。pWPIは又、導入遺伝子が、内部リボソーム移入部位(IRES)の先行する同一mRNAにおいてシス位で不活性なリポーター(GFP)のコード配列の挿入された上流であるという事実により、うまく形質導入された細胞の簡単で非侵襲的な検出も可能にする。
【0165】
不活性で取り囲んでいるベクターの配列は、両者の鎖に関して認証され、チオナ・インテスティナリスAOX(Dehal et al.,Science,298:2157−2167, 2002;McDonald and Vanlerberghe,IUBMB Life,56:333−341, 2004;Hakkaart et al.,EMBO Rep.,7:341−345, 2006)及びpWI(www.addgene.org)に関して既に報告されている配列に相当したが、例外は、供給されるようなベクターDNAの単離物中でも発見された導入遺伝子構築物:
5’AAAATTTTCCGATCACGAGAC3’(配列番号17)の替わりの
5’AAAATTTTATCGATCACGAGAC3’(配列番号16)
の核局在化を亢進させるベクターのcPPT領域内での1つの置換であった。
【実施例8】
【0166】
ウィルスのパッケージング、細胞培養及びヒト細胞培養物の形質導入
ウィルス生成は、標準的な手法(Bovia et al.,Blood,101:1727−1733, 2003;Zufferey et al.,Nat.Biotechnol.,15:871−875, 1997)、及び既に記載されているように(Pellinen et al.,Int.J.Oncol.,25:1753−1762, 2004)、内蔵の安全特性を組み込む第二世代パッケージングシステム(www.lentiweb.com/protocols lentivectors.php)を使用した。200μMウリジン、2mMピルビン酸及び5%TET非含有ウシ胎仔血清(Ozyme)で補充された標準的なDMEM培地中で、Flp−In(商標)T−REx(商標)−293細胞(Invitrogen)を培養した。形質導入は、標準的な方法を使用した(Salmon et al.,2000;lentiweb.com/protocols LVtitration.php参照)。1μg/mLのドキシサイクリンで細胞を処理することによって、形質移入されたFlp−In(商標)T−REx(商標)−293細胞中でAOX発現を誘導した(Hakkaart et al.,EMBO Rep.,7:341−345, 2006)。
【0167】
インビトロでのpWPI−AOXのウィルスパッケージングは、5.3×10TU/mLにまで上るウィルス力価を生じた。Flp−In(商標)T−REx(商標)−293細胞中への形質導入を、低い感染効率(MOI1)で実施した。この細胞系の使用によって、先行の誘導性発現系との直接的な比較が可能となった。24時間後、細胞の約25%が、GFPに関して陽性であり、選択の何れの種類もなしで3週間細胞を増殖した後の場合でさえGFPに関して陽性であった。
【実施例9】
【0168】
レンチウィルス−AOXベクター構築物によって形質移入されたヒト細胞の、蛍光標識細胞分取(FACS)及び顕微鏡による分析
GFPを発現している実施例8由来のFIp−In(商標)T−REx(商標)−293細胞を、製造元の説明書に従って、フローサイトメトリー(FACSCalibur,BD Biosciences,San Jose,CA,USA)により分取した。クリプトンランプ(励起フィルター492/18nm)及び白色光(ハロゲンランプ)による同時照射を使用するOlympus BX61 Live Imagingステーションを使用して、GFP発現に関して細胞を分析した。Hamamatsu Orca ER(高解像デジタルB/W CCD)カメラを取り付けられた40倍のLUMPlanFl水浸対物レンズ(開口数0.8)によって、励起蛍光及び送信された光を同時に検出し、GFPを発現している細胞(明るい)と発現していない細胞(あまり明るくない)とを識別した。
【0169】
形質導入された細胞の表現型をより詳細に評価するため、GFPリポーターに基づいた蛍光標識細胞分取(FACS)を採用して、形質導入された細胞集団を選択した。GFPを発現している細胞は、濃縮された細胞集団の80ないし90%であった(図16)。AOX特異的プローブに対するノザンハイブリダイゼーションによって、AOX−GFP mRNAの存在を確認した(図17)。もとの発現構築物pcDNA5−AOXからAOXを発現するように誘導されたFlp−In(商標)T−REx(商標)−293細胞と比較すると、転写産物はより長く(1.8kbとは反対の4.1kb、IRES、GFP及びさらなる3’非翻訳配列のさらなる存在を反映)、約2オーダー分という非常により低い存在量で存在し、生理学的により関連性のあるプロモーター(最初期のCMVとは反対のEF1α)からの発現に加え、レンチウィルス形質導入が、プラスミド由来の配列の組み込まれたタンデム配列よりもむしろ単一のゲノム挿入を生じるという事実を反映していた。GFP発現に基づいて分取された形質導入された細胞の複数のバッチは、mRNAレベルでの同様の発現を付与した。空ベクターを形質移入されたFlp−In(商標)T−REx(商標)−293細胞は、シグナルを付与しなかった。
【実施例10】
【0170】
レンチウィルス−AOXベクター構築物で形質移入されたヒト細胞における酸素消費
Clark酸素電極(Hansatech,UK)並びに阻害剤としての終濃度100μMのシアン化カリウム(KCN)及び終濃度10μMの没食子酸n−プロピル(PG)を使用して、ジギトニンで透過処理された細胞における呼吸を既に記載のとおり測定した(Hakkaart et al.,EMBO Rep.,7:341−345, 2006)。
【0171】
次に、元の発現構築物pcDNA5−AOXからAOXを発現するよう誘導されたFlp−In(商標)T−REx−293細胞、及びネガティブ対照として空ベクターを形質移入された細胞と比較して、分取された形質導入済みの細胞のミトコンドリアの生化学的特性を分析した(図18)。空ベクターを形質移入された細胞の呼吸は、100μMのシアン化カリウムによって完全に阻害されたのに対し、pcDNA5−AOXを形質移入された細胞から誘導されたAOX発現は、シアン化物に対して呼吸が〜70%非感受性であり、先行研究(Hakkaart et al.,EMBO Rep.,7:341−345, 2006)と同様であった。しかしながら、シアン化物の存在下で、呼吸は、10μMの没食子酸n−プロピルによってほぼ完全に阻害された。pWPI−AOXを形質導入された細胞は、同様に挙動した。呼吸活性のわずかに低い割合(〜60%)は、シアン化物に対して非感受性であり、分取後のGFPを発現している細胞の割合を反映していた。しかしながら、この残留呼吸は、期待されたように、10μMの没食子酸n−プロピルをさらに添加することによって、完全に阻害された。
【実施例11】
【0172】
チオナ・インテスティナリスAOXを発現する遺伝子導入マウスの系の構築
産物がミトコンドリアへ標的化され、OXPHOS系に関与するが、穏やかな表現型効果のみを有しながらヘテロ接合性に欠失されることが可能である遺伝子のコード配列を置換するノックイン戦略を介して、AOXをコードする配列をマウスの生殖系列へと導入する。これによって、AOX導入遺伝子が「典型的なミトコンドリアパターン」で発現され、無秩序な遺伝子導入的挿入と関連した問題の多くを確実に克服できるようになる。Tfamヘテロ接合性マウスは、心臓における減少したミトコンドリアDNAコピー数及び穏やかな生化学的欠損を示すに過ぎず、明白な病理学的徴候を示さないので、マウスTfam(ミトコンドリア転写因子A)遺伝子は、適切なこのような置換の標的である(Larsson et al.,Nature Genetics,18:231−236, 1998)。pDELBOYシリーズ又はそのバリアント等の典型的な遺伝子標的化ベクターが使用される。具体的な組織及び発達段階におけるAOXの発現を研究すること、及びAOXの発現が生物個体で許容されることが可能であるかどうかを厳密に検査することが望ましいので、loxP組換え部位によって隣接される(及び選択可能なマーカーを含む)STOPカセット(Lakso et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,89:6232−6236, 1992)が導入される。これは、AOX導入遺伝子を含有する系が、望ましい組織特異的パターンでCreリコンビナーゼを発現する系と交配されるときを除き、AOXの発現を防止する。Creリコンビナーゼを遍在性に発現する系との交配は、全ての組織においてAOX導入遺伝子を活性化するので、全ての組織におけるAOX発現が生物個体で支持される正規の検査である。制限された組織においてのみ、例えば黒質においてのみCreリコンビナーゼを発現する系との交配は、AOX発現が、前記組織において何らかの有害な効果を生じるかどうかのみならず、前記組織に制限されたAOX発現が、付与された疾病モデルにおいて、前記組織で明らかにする病理学的表現型を代償するかどうかも検査する方法である。
【図面の簡単な説明】
【0173】
【図1】図1は、AOXが、ヒト細胞中で発現可能であり、ミトコンドリアへと標的化されることを示す。Garrido et al.(Garrido et al.,Mol.Biol.Cell,14:1583−1596, 2003)によって記載のとおり、免疫細胞化学を実施した。図1Aは、ミトコンドリア呼吸及び、AOXによって付与されるチトクロムセグメントの迂回路の簡素化された生化学的仕組みである。RCの5つの複合体が、ローマ数字によって示される。図1Bは、AOX−フラッグ若しくはAOX−myc構築物又は空ベクターのいずれかで形質移入され、示される一次抗体で探索されたFlp−In(商標)T−REx(商標)−293(Invitrogen)細胞クローン由来の20μgの細胞可溶化液全体のイムノブロットである。(+)で示されるレーンは、導入遺伝子発現を誘導するための1μg/mLのドキシサイクリンで処理された細胞由来の可溶化液であった。使用された一次抗体は、マウス抗Mycモノクローナル9E10及び抗フラッグM2抗体であった。図1Cは、フラッグ一次抗体を使用する免疫細胞化学によるAOX−フラッグ構築物で形質移入された細胞の蛍光顕微鏡図のパネルである。図1Dは、Mitotracker(登録商標)レッド(Molecular Probes)での染色を適用する、AOX−フラッグ構築物で形質移入された細胞の蛍光顕微鏡図である。図1Eは、図1C及び図1Dに示されるパネルからの画像が重ね合わせられた、AOX−フラッグ構築物で形質移入された細胞の蛍光顕微鏡図のパネルである。
【図2】図2は、AOX発現が、ヒト細胞においてミトコンドリアの生化学的反応を修飾することを示す。図2Aは、本文中に記載の多様な有機酸及び阻害剤の添加の際の、細胞全体(トレースa、b)に関する及びジギトニン透過処理(Ctrl−d、AOX−d)細胞(トレースcないしg)に関する48時間のドキシサイクリン誘導後の酸素電極トレースを示し、その中で、Ctrlは、空ベクターで形質移入された細胞を意味し、AOXは、タグ付けされていないAOX構築物で形質移入された細胞を意味する。Clark酸素電極を使用して、細胞呼吸及びコハク酸塩の酸化を測定した。KCN、100μMシアン化カリウム;PG、10μM没食子酸n−プロピル;Pyr、10mMピルビン酸塩;Succ、10mMコハク酸塩。図2Bは、細胞増殖曲線を示し、その中で、AOXは、タグ付けされていないAOX構築物で形質移入された細胞を意味し、Ctrl.は、ウリジン及びピルビン酸塩で補充された標準的なDMEM培地及びドキシサイクリン中で増殖された、空ベクターで形質移入された細胞を意味する(Spelbrink et al.,J.Biol.Chem.,275:24818−24828, 2000)。図2Cは、ドキシサイクリン誘導のある(+)又はない(−)の何れかとともに増殖された、空ベクターを形質移入された細胞及びタグ付けされていないAOXを形質移入された細胞のSOD活性を示す。
【図3】図3は、特注されたショウジョウバエ遺伝子導入発現ベクター中へのAOX及びAOX−mycのクローニングを示す。p{UAS}AOX H−ペリカン(左)は、ベクターのペリカンシリーズの修飾されたバージョン(Barolo et al.,Biotechniques,29:726−732, 2000)であり、その中で、pGreen HペリカンのeGFPコード配列は、チオナ・インテスティナリスAOXのものによって置換され、Gal4p反応性5×UAS配列は、最小プロモーター要素(Hsp70 TATAボックス)の上流のベクターのもとのマルチクローニング部位中に挿入される。遺伝子導入ベクターの他の要素は、次のように示される。P要素5’及び3’−P−要素トランスポサーゼをコードする同時注入されたプラスミドの存在下でショウジョウバエの胚においてP要素トランスポゾンの動員を可能にするP要素トランスポゾンの末端配列;w−レシピエント白色胚中での集積後に赤い眼の色を与える白色マーカー遺伝子;インスレーター−染色体集積部位にあるAOX導入遺伝子へ又はAOX導入遺伝子からの転写を遮断するgypsyトランスポゾン由来のインスレーター要素;pUC8プラスミドDNA及び白色リンカー配列 − イー・コリ(E.coli)中での増殖に必要なプラスミドの要素又は得られた遺伝子導入系において集積されない白色マーカー遺伝子の一部。遺伝子導入的に挿入されるDNAは、より明確に示される(右)。インスレーター要素(I)は、明灰色で示され、Gal4p反応性プロモーター要素(PUAS)の後に暗灰色のAOXコード遺伝子があり、P要素末端は黒色で、染色体集積部位のDNAは太線で示される。
【図4A】図4は、個々のハエから独立した遺伝子導入系を生じる遺伝子導入ハエの微量注入及び選択を示す。図4Aは、遺伝子導入ハエの微量注入及び第一選択を示す。遺伝子導入ベクターp{UAS}AOX H−ペリカン(図3参照)及びP要素トランスポサーゼをコードするプラスミドを白色レシピエントのショウジョウバエ胚(卵)中へ同時注入すると、子孫の体細胞及び生殖細胞の両者において遺伝子導入カセットの無作為な集積が生じる。子孫は主としてキメラであるため、眼の色は、遺伝子型の信頼できる指標ではない。全ての生存ハエは、白色ハエへと交配され、次世代において(水平線で記される)黄色又は(格子で記される)淡オレンジ色の眼を示す遺伝子導入子孫を選択する。
【図4B】図4は、個々のハエから独立した遺伝子導入系を生じる遺伝子導入ハエの微量注入及び選択を示す。図4Bは、遺伝子導入ショウジョウバエの系の作出を示す。黄色又は淡オレンジ色の眼を示す、図4Aに記載のとおり選択された遺伝子導入子孫を順に、白色ハエと交配し、単一の常染色体性挿入(すなわち、性別に無関係に50/50を分離する)、又は望まれる場合、X染色体挿入を含有する系を確立する。ホモ接合体としての前記系の生存率に関して前記系を検査した後、さらなる研究のためにヘミ接合体として維持する。異なる常染色体性部位での単一挿入を含有するAOX遺伝子導入ハエの8つのこのような系を本研究において確立した。淡オレンジ色の眼を格子で標識し、赤色の眼を黒色で標識する。
【図5】図5は、その後の研究に使用された、確立された系(AOXのF6−1系)の1つにおける導入遺伝子のゲノム挿入部位を示す。本図は、(図3にあるように示される)AOX遺伝子導入カセットが、(www.flybase.netでゲノムブラウザから出力される)遺伝子導入系であるF6−1中に挿入したキイロショウジョウバエ染色体2Rの一領域の模式的なマップを示す。8つのAOX遺伝子導入系は全て、異なる挿入部位を示したが、AOX導入遺伝子発現レベル及びヘミ接合体の表現型は、各実験において検査された系全てに関して同一であった。
【図6A】図6は、ヘミ接合体のAOXハエとTm3Sbバランス装置染色体を有するヘミ接合体のda−GAL4駆動因子ハエとの間の交雑を示す。この設定において、娘のないGAL4駆動因子を使用して、適切な遺伝的体質の子孫においてAOX又は(AOX−myc)導入遺伝子を一様に発現させた。図6Aは、白色の眼の色に基づいて、AOX発現ハエを発生及び選択するための模式図である。遺伝子導入カセット中の白色マーカーの単一コピーの結果として淡オレンジ色の眼を有する白色背景にあるヘミ接合性AOX遺伝子導入ハエを、da−GAL4導入遺伝子カセット中で伝達されもする白色マーカーの非常に低い発現の結果として均一なより淡い黄色の眼を有する、娘のない(da)−GAL4導入遺伝子のための平衡の取れたヘミ接合体と交配する。後者のバランス装置染色体は、(刈り株状に)短い剛毛を与える個別の(優性)マーカーSbを伝達する。交雑による子孫は、存在する場合、遺伝した導入遺伝子がどれかに依存して異なる眼の色を有する。これらは個別の常染色体上にあるため、独立して分離する。Sbマーカーは、AOXを発現するもの(赤色の眼)を、AOXを発現しない遺伝子導入ハエ(淡オレンジ色の眼)と識別するためにさらなるチェックを提供する。黄色の眼は、水平線で標識され、淡オレンジ色の眼は、格子で標識され、赤色の眼は黒色で標識される。
【図6B】図6は、ヘミ接合体のAOXハエとTm3Sbバランス装置染色体を有するヘミ接合体のda−GAL4駆動因子ハエとの間の交雑を示す。この設定において、娘のないGAL4駆動因子を使用して、適切な遺伝的体質の子孫においてAOX又は(AOX−myc)導入遺伝子を一様に発現させた。図6Bは、AOXを発現するハエの眼の色及び剛毛の形態によって、前記ハエが表現型的にどのように同定されたかを示す。写真は、同様の数で脱蛹した実際の子孫の4つのクラスの各々の例である。白色の眼のハエは、白色を含有しない導入遺伝子を伝達する。黄色の眼(及び正常な剛毛)を有するものは、da−GAL4導入遺伝子のみを遺伝した。淡オレンジ色の眼(及び短い剛毛)を有するものは、AOX導入遺伝子のみを遺伝した。赤色の眼を有するものは、白色マーカー遺伝子の2つのコピー、すなわち両者の導入遺伝子を遺伝した。遍在性のdaプロモーターからのGAL4の発現は、AOX導入遺伝子の遍在的及び高レベルの転写を支持し、そのことは、AOX特異的プライマーを使用する半定量的蛍光RT−PCRによって赤色の眼の子孫において確認された。黄色の眼は、水平線で標識され、淡オレンジ色の眼は、格子で標識され、赤色の眼は黒色で標識される。
【図7】図7は、胚におけるAOXmRNA発現の生体内原位置でのハイブリダイゼーションによる確認を示す。daプロモーターからのGal4pの発現(AOX/da−Gal4胚)は、AOX導入遺伝子の遍在性の高レベルの転写を支持するのに対し、遺伝子導入「非発現因子」(AOX/−)胚は、発現を示さない。発現は、ネガティブ対照としてのアンチセンスプローブ(AOXコード配列)とともに、AOXに特異的なプローブ(アンチセンスプローブのmRNAと相補的な鎖であるセンスプローブ)を使用して発現を確認した。pGEM(登録商標)−T Easyベクター(Promega)のマルチクローニングサイト中へ挿入されたAOXコード配列の376bp断片のインビトロでの転写(Rocheキット)によってプローブを発生させた。本ベクターにおいて、インサートは、使用されるポリメラーゼに依存する両者の向きで転写が可能である2つのバクテリオファージプロモーターによって隣接されている。産卵の開始16時間後に、胚を回収した。卵黄膜及び絨毛膜を除去し、胚をメタノール中で固定した。標準的な手法を使用して、再度水和した胚中で生体内原位置でのハイブリダイゼーションを実施した(Tomancak et al.,Genome Biol.,3:research0088.1−0088.14, 2003)。
【図8】図8は、AOX−myc発現がda−GAL4駆動因子によって誘導されるハエの個体における、抗myc抗体に対するウェスタンブロッティングを使用するAOX−myc(配列番号6)の発現の確認を示す。図6に示される同様の模式図の下で選択される、AOXを発現する及び発現しないオス及びメスからタンパク質全体を抽出する。AOX−mycタンパク質をmyc−エピトープ特異的モノクローナル抗体で検出した。ヒト細胞由来のタンパク質抽出物の等価の量は、ポジティブ対照と並行して、同一のエピトープでタグ付けされたAOX−mycタンパク質を発現するよう誘導した。淡オレンジ色の眼を格子で標識し、赤色の眼を黒色で標識する。
【図9】図9は、成体の生涯期間の間にAOXを発現する及び発現しないハエの体重における変化を示す。ハエを回収し、標準的な補充された食品バイアル中で、バイアル当たり最大15匹のハエで生存させ、1週間当たりバイアルを3回交換した。ハエを氷上で麻酔し、ハエの体重を2週間ごとに脱蛹後に測定した。
【図10】図10は、部分的なシアン化物耐性を示す、AOXを発現するハエの表現型の分析を示す。
【図11】図11は、AOXを発現するハエ由来のミトコンドリア中のAOX活性を示す。
【図12】図12は、図6の模式図の下で選択されるAOXを発現する及び発現しないショウジョウバエから単離されたミトコンドリア懸濁液に関する酸素消費トレースを示す。Toivonen et al.によって記載されるとおりショウジョウバエミトコンドリアを調製し(Toivonen et al.,Genetics 159:241−254, 2001)、多様な基質及び阻害剤の存在下での酸素消費量を先行技術のとおり測定した(Hakkaart et al.,EMBO Rep.,7:341−345, 2006)。添加物は、ピルビン酸塩+リンゴ酸塩(各5mM)、ADP(1.5μmol)、KCN(100μM)及びSHAM(1mM)であった。呼吸調節比(RCR)は、状態3の呼吸に対する状態4の比、すなわち、外部基質又阻害剤が添加されなかった地点でのトレースにおける不連続性によって示される、ADPと、ADPが消費された後の呼吸の安静状態とによって駆動される呼吸である。RCRは、ミトコンドリアの連関の程度の測定結果であり、すなわちATP合成酵素を通じての流動によって呼吸がどの程度まで制限されているかである。
【図13】図13は、図6の模式図の下で選択される、AOXを発現するハエ、発現しないハエ、AOX遺伝子導入ハエ及び遺伝子導入をしていないハエの生存率に及ぼすシアン化物の効果を示す。バイアル中のアガロースプラグ円柱へ、KCNを多様な濃度でドラフト中で添加した。1群10匹の群中のハエをバイアルの内側に配置し、気密性ではない栓によってバイアルを封鎖し、ドラフト中に放置した。実験の開始から測定される時点で、ハエが全ての移動を停止したとき、ハエを生存可能ではないとして点数化した。実験の開始から測定される時点で、ハエが全ての移動を停止したとき、ハエを生存可能ではないとして点数化した。図13Aは、100μM KCNを含浸させたアガロースプラグを含有するバイアル中で30分間温置した後、AOXを発現するハエが全て生存可能であり、バイアルの側部をゆっくり這い上がることができるのに対し、発現因子を有さないハエは全て倒れ、アガロースの表面上に横になって死滅していた。図13Bは、示されるように、異なる遺伝子型のオス及びメスのハエの群の、1mM KCNを含浸させたアガロースプラグを含有するバイアル中での平均生存時間(±SD)を示す。遺伝子導入しない(WT)ハエ及び発現因子を有しないハエは約5分後に死滅したのに対し、AOXを発現するハエは、約30分間生存可能なままであり、致死的効果のないまま麻痺から一晩で回復することも可能であった。
【図14】図14は、10又は30μg/mLのアンチマイシンを含有する培地上での、AOXを発現するショウジョウバエ及び遺伝子導入しない(野生型)ハエの発達を示す。ハエは、産卵後約7日(左)又は10日(右)のハエが示されている。30μg/mLのアンチマイシンで、野生型のハエは、孵化しないか又は幼生が生存可能でないかの何れかである。10μg/mLのアンチマイシンで、野生型のハエは、早期の幼生段階に到達したが、さらに発達することはなかった。AOXを含有するハエは、第三齢の幼生段階に到達し、囲蛹殻化(pupariation)のための準備においてチューブを上り始めた後、ハエは健常な成体として脱蛹する。
【図15】図15は、pWPI−AOXの構成を示す。pWPIのマップ(左)は、www.adgene.comに示されるものから再描画されている。開始コドン及び終止コドンを含み、示されるSmaI半分部位によって隣接される1110bpのAOXコード配列(陰影のついたボックス、右)は、EF1α−プロモーター/cPPTセグメントとEMCV IRESセグメントとの間で、ベクターの独自のPmeI部位中へ平滑末端クローニングされた。
【図16】図16は、選別されていない細胞を示すpWPI−AOXにより形質導入された細胞(左)又はFACS濃縮後に再度播種された細胞(右)の生細胞画像である。GFP蛍光細胞は、単色の画像において明るい細胞として現れる。個別の対照画像(非表示)は、クリプトンランプの励起を使用する連続的な画像化(励起フィルター492/18nm、発光フィルター535/30)によって作製され、白色光(ハロゲンランプ)は、この解釈を確認した。
【図17】図17は、AOX発現のノザンブロット分析を示す。FACSにより濃縮され、pWPI−AOXで形質導入された細胞由来のRNA、並びにドキシサイクリンにより誘導されたpcDNA5−AOXの形質移入された細胞由来及び空のベクターの形質移入された細胞由来のRNAを、AOX特異的プローブとハイブリダイズさせた。a及びbと標識されたレーンは、二つ組のRNA調製物を表す。1a、2a等と標識されたレーンは、pWPI−AOXで形質導入された細胞の2つのバッチを表す。RNAサイズマーカーから転写産物の大きさを推定したところ、ベクターマップから推定されるものと一致する。
【図18】図18は、pWPI−AOXで形質導入された細胞の呼吸を示す。透過処理され、FACS濃縮され、pWPI−AOXで形質導入された細胞由来の酸素消費トレース、並びにドキシサイクリンにより誘導されるpcDNA5−AOXで形質移入された細胞及び空ベクターで形質移入された細胞由来の酸素消費トレースを示す。矢印は、シアン化カリウム(KCN)を100μMまで、及び没食子酸n−プロピル(PG)を10μMまで添加した時点を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)配列番号2;及び
(b)末端酸化酵素活性を有する(a)の断片
からなる群から選択されるアミノ酸配列と少なくとも75%同一であるアミノ酸配列を含むことを特徴とし、末端酸化酵素活性を有する、単離又は精製されたポリペプチド。
【請求項2】
(a)配列番号2;及び
(b)末端酸化酵素活性を有する(a)の断片
からなる群から選択されるアミノ酸配列と少なくとも95%同一であるアミノ酸配列を含むことを特徴とする、請求項1に記載の単離又は精製されたポリペプチド。
【請求項3】
ポリペプチドが、軟体動物門、線形動物門及び脊索動物門からなる群から選択される門からの生物に由来することを特徴とする、請求項1のポリペプチド。
【請求項4】
ポリペプチドが、尾索動物亜門からの生物に由来することを特徴とする、請求項1のポリペプチド。
【請求項5】
ポリペプチドが、ホヤ綱からの生物に由来することを特徴とする、請求項1のポリペプチド。
【請求項6】
ポリペプチドが、マメボヤ目からの生物に由来することを特徴とする、請求項1のポリペプチド。
【請求項7】
ポリペプチドが、ユウレイボヤ科からの生物に由来することを特徴とする、請求項1のポリペプチド。
【請求項8】
ポリペプチドが、チオナ・インテスティナリス(Ciona intestinalis)に由来することを特徴とする、請求項1のポリペプチド。
【請求項9】
配列番号2に記載されているアミノ酸配列、又は末端酸化酵素活性を有するその断片を含むことを特徴とする、請求項1のポリペプチド。
【請求項10】
エピトープタグをさらに含むことを特徴とする、請求項1のポリペプチド。
【請求項11】
請求項1ないし10の何れか一項のポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含むことを特徴とする、単離又は精製されたポリヌクレオチド。
【請求項12】
ポリヌクレオチドが、配列番号1に記載されているヌクレオチド配列と少なくとも95%同一であるヌクレオチド配列を含むことを特徴とする、請求項11のポリヌクレオチド。
【請求項13】
植物、真菌又は原生生物由来の末端酸化酵素活性を有するポリペプチドのアミノ酸配列へ融合された動物由来のミトコンドリア輸送ペプチドのアミノ酸配列を含むキメラポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含むことを特徴とする、ポリヌクレオチド。
【請求項14】
ミトコンドリア輸送ペプチドが、脊椎動物由来であることを特徴とする、請求項13に記載のポリヌクレオチド。
【請求項15】
ミトコンドリア輸送ペプチドが、哺乳動物由来であることを特徴とする、請求項13に記載のポリヌクレオチド。
【請求項16】
ミトコンドリア輸送ペプチドが、ヒト由来であることを特徴とする、請求項13に記載のポリヌクレオチド。
【請求項17】
末端酸化酵素活性を有するポリペプチドが、植物又は真菌由来の成熟型の末端酸化酵素であることを特徴とする、請求項13に記載のポリヌクレオチド。
【請求項18】
末端酸化酵素活性を有するポリペプチドが、植物由来であることを特徴とする、請求項13に記載のポリヌクレオチド。
【請求項19】
脊椎動物由来のミトコンドリア輸送ペプチドのアミノ酸配列と無脊椎動物由来の末端酸化酵素活性を有するポリペプチドのアミノ酸とを含むキメラポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含むことを特徴とする、ポリヌクレオチド。
【請求項20】
末端酸化酵素活性を有するポリペプチドが、無脊椎動物の脊索動物種からであることを特徴とする、請求項19に記載のポリヌクレオチド。
【請求項21】
ミトコンドリア輸送ペプチドが、哺乳動物由来であることを特徴とする、請求項19に記載のポリヌクレオチド。
【請求項22】
哺乳動物細胞中でのポリヌクレオチドの発現を促進するプロモーター配列をさらに含むことを特徴とする、請求項11ないし21の何れか一項に記載のポリヌクレオチド。
【請求項23】
プロモーターが、哺乳動物由来であることを特徴とする、請求項22に記載のポリヌクレオチド。
【請求項24】
プロモーターが、ミトコンドリアタンパク質をコードする核遺伝子のプロモーターであることを特徴とする、請求項23に記載のポリヌクレオチド。
【請求項25】
請求項11ないし24の何れか一項に記載のポリヌクレオチドを含むことを特徴とする、ベクター。
【請求項26】
発現調節配列へ作用可能に連結された、請求項11ないし24の何れか一項に記載のポリヌクレオチドを含むことを特徴とする、ベクター。
【請求項27】
複製欠損アデノウィルスベクター、アデノ随伴ウィルスベクター及びレンチウィルスベクターからなる群から選択されることを特徴とする、請求項25ないし26の何れか一項に記載のベクター。
【請求項28】
請求項11ないし24の何れか一項に記載のポリヌクレオチドと、及び医薬として許容される担体、希釈剤又は賦形剤とを含むことを特徴とする、組成物。
【請求項29】
請求項25ないし27の何れか一項のベクターと、及び医薬として許容される担体、希釈剤又は賦形剤とを含むことを特徴とする、組成物。
【請求項30】
請求項12ないし25の何れか一項のポリヌクレオチドで、又は請求項25ないし27の何れか一項のベクターで形質転換又は形質移入されることを特徴とする、細胞。
【請求項31】
ポリヌクレオチドによってコードされるポリペプチドを発現することを特徴とする、請求項30に記載の単離された細胞。
【請求項32】
細胞が、ポリペプチドを発現すること、並びに野生型細胞と比較して、以下の特性:
(a)アンチマイシンAに対する増大した耐性;
(b)シアン化物(CN)に対する増大した耐性;及び
(c)オリゴマイシンに対する増大した耐性
の1つ又はそれ以上を示すことを特徴とする、請求項31に記載の細胞。
【請求項33】
脊椎生物細胞であり、末端酸化酵素活性を有するポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドで形質転換又は形質移入されることを特徴とし、前記細胞がポリペプチドを発現し、並びに野生型細胞と比較して、以下の特性:
(a)アンチマイシンAに対する増大した耐性;
(b)シアン化物(CN)に対する増大した耐性;及び
(c)オリゴマイシンに対する増大した耐性
の1つ又はそれ以上を示す、前記細胞。
【請求項34】
脊椎生物細胞であり、末端酸化酵素活性を有するポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドで形質転換又は形質移入されることを特徴とし、
前記細胞が前記ポリペプチドを発現し;
前記細胞が酸化的リン酸化を示してチトクロム代謝経路を通じてATPを産生し;及び
前記細胞が前記酸化的リン酸化の阻害剤の存在下で、末端酸化酵素経路を通じてユビキノールを酸化する、前記細胞。
【請求項35】
脊椎生物細胞であり、末端酸化酵素活性を有するポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドで形質転換又は形質移入されることを特徴とし、
前記細胞が前記ポリペプチドを発現し;
前記細胞が酸化的リン酸化を示してチトクロム代謝経路を通じてATPを産生し;及び
代謝性アシドーシスを好む条件下で、末端酸化酵素活性が、代謝性アシドーシスを阻害するためのピルビン酸塩によってアロステリックに制御される、前記細胞。
【請求項36】
請求項30、31及び33ないし35の何れか一項に記載の単離又は精製された細胞。
【請求項37】
幹細胞であることを特徴とする、請求項36に記載の単離された細胞。
【請求項38】
胚性幹細胞であることを特徴とする、請求項37に記載の単離された細胞。
【請求項39】
成体幹細胞であることを特徴とする、請求項37に記載の単離された細胞。
【請求項40】
神経幹細胞であることを特徴とする、請求項38に記載の単離された細胞。
【請求項41】
哺乳動物細胞中で代謝性アシドーシスを減少させるための医学的組成物を製造するための、請求項1ないし10の何れか一項に記載のポリペプチドの使用。
【請求項42】
哺乳動物細胞中で代謝性アシドーシスを減少させるための、形質転換又は形質移入された細胞を含む医薬を製造するための、請求項11ないし24の何れか一項に記載のポリヌクレオチドの又は請求項25ないし27の何れか一項に記載のベクターの使用。
【請求項43】
哺乳動物細胞中で酸化的ストレスを緩和するための医学的組成物を製造するための、請求項1ないし10の何れか一項に記載のポリペプチドの使用。
【請求項44】
哺乳動物細胞中で酸化的ストレスを緩和するための、形質転換又は形質移入された細胞を含む医薬を製造するための、請求項11ないし24の何れか一項に記載のポリヌクレオチドの又は請求項25ないし27の何れか一項に記載のベクターの使用。
【請求項45】
哺乳動物対象の細胞中で代謝性アシドーシスを効果的に低下させる有効量で、ポリペプチドを含む医学的組成物を製造するための、請求項1ないし10の何れか一項に記載のポリペプチドの使用。
【請求項46】
哺乳動物対象の細胞中で代謝性アシドーシスを低下させるための、請求項1ないし10の何れかに記載のポリペプチドの有効量をコードする、医学的組成物を製造するための、請求項11ないし24の何れか一項に記載のポリヌクレオチドの、請求項25ないし27の何れか一項に記載のベクターの、又は請求項30ないし40の何れか一項に記載の細胞の、使用。
【請求項47】
哺乳動物対象において酸化的ストレスを緩和するための医薬を製造するための、哺乳動物対象の細胞中で酸化的ストレスを低下させるのに有効な量の、請求項1ないし10の何れか一項に記載のポリペプチドの使用。
【請求項48】
哺乳動物対象において酸化的ストレスを低下させるための、請求項1ないし10の何れか一項に記載のポリペプチドの有効量をコードする、医学的組成物を製造するための、請求項11ないし24の何れか一項に記載のポリヌクレオチドの、請求項25ないし27の何れか一項に記載のベクターの、又は請求項30ないし40の何れか一項に記載の細胞の、使用。
【請求項49】
哺乳動物対象がヒトである、請求項45ないし48の何れか一項に記載の使用。
【請求項50】
リー症候群;MERRF症候群;パーキンソン病及び関連症状;進行性外眼筋麻痺、カーンズ・セイヤー症候群及びMELAS症候群を含むミトコンドリア脳筋症;肝臓、腎臓、CNS、心臓、骨格筋並びに内分泌系及び感音系等の臓器を冒す多様な多系統の小児科疾患;筋萎縮性側索硬化症、アルツハイマー病、フリードライヒ運動失調症及び抗酸化防御の欠損に起因する循環器疾患の形態を含む、ミトコンドリア中の活性酸素種の過剰な産生を伴うことが公知であり、又は伴うと考えられている疾病;POLG、c10orf2(Twinkle)又はミトコンドリアDNAの維持の系の他の成分における遺伝学的欠損から生じる他の運動失調及び神経症状;症候性及び非症候性のミトコンドリア聴力欠陥;ミトコンドリアOXPHOS系の欠損に起因する糖尿病の形態;ミトコンドリアOXPHOS系に影響する抗レトロウィルス療法の副作用;難治性肥満及び食物源の流動障害から生じる他の代謝性疾患;カーンズ・セイヤー症候群;NARP症候群;アルパース・フッテンロッハー(Huttenlocher)病;感音性難聴;乳児良性筋障害;乳児致死性筋障害;小児筋障害;成人筋障害;横紋筋融解;レーバー遺伝性視神経ニューロパチー;心筋症;バース(Barth)症候群;ファンコニー症候群;mtDNA欠乏症候群;ピアソン症候群;糖尿病及び乳酸性酸血症からなる群から選択される損なわれたミトコンドリア呼吸機能の疾病又は疾患を治療するための、請求項41ないし49の何れか一項に記載の使用。
【請求項51】
医薬又は医薬組成物が、代謝性アシドーシス又は酸化的ストレスによって影響された細胞を含む組織又は臓器へ局所的に又は全身的に投与可能である、請求項41ないし50の何れか一項に記載の使用。
【請求項52】
ヒト又は他の後生動物の細胞においてAOXの異地性発現を可能にすることによって、シアン化物に対するミトコンドリアの感受性を低下させるための、請求項11ないし24の何れか一項に記載のポリヌクレオチドの使用。
【請求項53】
ヒト又は他の後生動物の細胞においてAOXの異地性発現を可能にすることによって、ミトコンドリアの酸化的リン酸化における欠損から生じる病理学的症状兆候を治療するための、請求項11ないし24の何れか一項に記載のポリヌクレオチドの使用。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4A】
image rotate

【図4B】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6A】
image rotate

【図6B】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate


【公表番号】特表2009−513153(P2009−513153A)
【公表日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−538372(P2008−538372)
【出願日】平成18年11月1日(2006.11.1)
【国際出願番号】PCT/FI2006/000348
【国際公開番号】WO2007/051898
【国際公開日】平成19年5月10日(2007.5.10)
【出願人】(508131495)リセンテイア・リミテツド (1)
【出願人】(594158585)アンステイテユ・ナシオナル・ドウ・ラ・サンテ・エ・ドウ・ラ・ルシエルシユ・メデイカル (3)
【Fターム(参考)】