説明

本質的にインク受容性のフィルム基材

【課題】トップコーティングの必要も多孔質ミクロ構造への依存もなくするようなインク受容性の基材、すなわち「本質的に」インク受容性の基材を製造する。
【解決手段】インク受容基材は水不溶性ポリマーから形成される基層と基層上に配置されたインク受容層とを含む。インク受容層は水溶性ポリマーと実質的に水不溶性のポリマーの溶融加工性ブレンドから形成され、更なる表面処理を経ることなく本質的にインク受容性の表面を与える。インク受容層用ブレンドはブレンド総重量を基準にして20〜80質量%(重量%)の水溶性ポリマーと20〜80質量%(重量%)の実質的に水不溶性のポリマーを含む。該ブレンドの溶融温度域は約100〜600°Fである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はインク受容性のプリント媒体として使用されるフィルム基材に、特に少なくとも片面をインク受容性とした非トップコート処理フィルム基材、このようなフィルム基材を使用したラベルおよびラベル用素材等の構造、およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット印刷は印刷素材に画像を記録する周知常用の手段である。インクジェット印刷には一般に染料系、ピグメント系という2種類のインクのうちいずれかを使用する。染料系インクでは、インク着色料は液体キャリヤーに対して可溶性の染料である。一般的なタイプの液体キャリヤーは水とグリコールの混合物を含有する。このような染料系インクは比較的安価で、加工が容易であり、また長期堅牢性が問題とされないような低コスト用途への使用に適する。ピグメント系インクでは、液体キャリヤーに溶解ではなく分散する粒子がインク着色料となる。常用ピグメントはほとんどが有機溶媒に対して不溶性であり、耐光堅牢度の確保には水を選ぶことができる。
【0003】
両種のインクには使用液体キャリヤーが一般に水溶性であるという共通点がある。従って、インクジェット受容媒体として有用な基材は、インクジェット印刷ヘッドにより生成されるインク液滴の速乾を可能にするようなインク受容性を有する表面を備えるのが好ましい。インクジェット受容媒体として有用な周知の基材には基層とトップコート層を含む2層構造基材がある。そうした公知の基材態様では、基層はポリプロピレン、ポリエステル又はポリ塩化ビニルなどのポリマーフィルムで形成される。トップコート層はインク受容性を付与するよう特別に配合され、後に乾燥で飛ばされることになる溶媒を使用して基層表面に塗布される。
【0004】
しかし、基材にインク受容性を付与するためにトップコートを使用すると、製造面にある種の限界が生じるうえに、他の基材特性に悪影響を及ぼしインク印刷基材の用途を最終的に制限しかねないことも判明している。例えばトップコート・インクジェット基材は堅牢性を欠くことが知られており、またほとんどのトップコート・コンパウンドは水溶性成分を含むため感湿性であり、従って印刷後にオーバーラミネート層又は皮膜を使用して保護する必要がある。更に、トップコート・コンパウンド中の有効成分濃度は、コーターで取り扱えるトップコート・コンパウンド粘度により制限される。そのため、トップコートの効果を高めるには一般にトップコート層を厚くする必要があるが、それはコストの増大と塗布量のバラツキを招くことが知られており、そうしたバラツキは最終品すなわちインクジェット印刷基材の性能に悪影響を及ぼしかねず、好ましくない。
【0005】
トップコート基材の前述のような弊害を避けるために、インク受容性の度合いが種々異なる非トップコート基材が開発されてきた。例えば米国特許第4,438,175号はインク受容表面をもつ二軸延伸ポリマーフィルムを含むフィルム構造について開示しているが、該フィルム構造は二軸延伸ポリマーフィルムを、それぞれ表皮層をもつ2つの分離層へと離層することにより形成される。得られるポリマーフィルム構造は第1層が熱可塑性ポリマー母材からなり、空孔層を伴う。空孔生成用の固体粒子が相当数の空孔中に存在し、母材とは明確に識別される非相溶性の相をなす。該第1層は空孔の存在と分布に起因する、一様でない、マイクロクレーターを伴う、ラメラ様の、肌理がランダムなインク受容構造表面を有する。第2層は母材上に表皮層を配して形成され、無空孔表面をもつ。
【0006】
同特許はトップコーティングによらずに形成されるインク受容表面をもつ基材を開示しているものの、該基材は、まずポリマーフィルムと表皮層の一体構造を成形し、次いで該一体構造を2つのインク受容フィルム構造へと離層するという2段階の製造工程を必要とする。従って、同特許が開示する基材はトップコーティングの使用を避けられるものの、複数の製造段階に頼らざるをえず、なお非能率、高コストである。
【0007】
米国特許第4,861,644号は、超高分子ポリオレフィン母材、高濃度の水不溶性微粉化シリカ質充填剤、および連続気孔を含むインク受容表面をもつ基材について開示している。該基材は、まずポリオレフィン、シリカ質充填剤および他の加工助剤の混合物から押出シートを成形し、押出シートをカレンダー加工し、カレンダー加工シートを乾燥し、更に乾燥シートを延伸して所望の二軸延伸配向を付与するという方法で製造される。該基材もまたトップコーティングによらずにインク受容性を獲得するものの、押出、カレンダー加工、乾燥、延伸といった多段階の工程を用いて成形される。
【0008】
国際公開第WO 92/00188は、微小空孔を内在させた有効量の粒子充填剤を含む連続オレフィン樹脂母材からフィルム押出成形法により製造される筆記・印刷適性の非延伸合成紙について開示している。微小空孔を内在させた粒子充填剤は連続オレフィン樹脂母材全体に不均一かつランダムに分散して機械的生成によらない微小空孔を与えるが、それらの微小空孔が表面気孔とつながることによりインク受容性を付与する。同特許の合成紙はオレフィン樹脂母材と粒子充填剤の混合物を所望の厚さのシートへと押出成形したものである。該基材はトップコーティングによらずにインク受容表面を形成するものの、性能面の限界につながりかねない多孔質表面構造の形成に依存する。
【0009】
国際公開第WO 92/00188はインクジェット印刷適性の微孔性エチレン−ビニルアルコール=コポリマーフィルムを開示している。該フィルムは次のようにして製造される。エチレン−ビニルアルコール=コポリマーと相溶性ポリマー又はコンパウンドの混合物を溶融混合し、該コポリマーをその溶融温度で溶融して溶液とし、該溶液をフィルムへと成形し、冷却する。この冷却段階で、相溶性ポリマー又はコンパウンドとエチレン−ビニルアルコール=コポリマーの間に相分離が起こり、第1相のエチレン−ビニルアルコール=コポリマー粒子が第2相の相溶性ポリマー又はコンパウンド中に分散してなる集合体を含むフィルムが与えられる。冷却したフィルムは回収し、相溶性ポリマー又はコンパウンド抽出後に延伸加工する。相溶性ポリマー又はコンパウンドの抽出により、フィルム構造中に微孔が形成される。該基材はトップコーティングによらずにインク受容表面を形成するものの、やはり性能面の限界につながりかねない多孔質表面構造の形成に依存する。
【0010】
以上述べた非トップコート処理インク受容基材の共通点は、いずれも多孔質基材表面を使用してインク受容性の表面構造を実現している点である。しかし、多孔質構造の基材表面の使用には限界がないわけではない。例えばこのような基材は低画像品質が難点になりかねないと判明している。そうした表面構造の基材はスポンジのように働き、インクを基材本体へと深く吸収する傾向があるため、しばしば色濃度や解像力の不足を招く。また、これらの基材は光学的品質も低くなりがちである。これは表面空孔のせいで表面がしばしばほとんど不透明又は半透明になるためであり、基材の潜在用途が限定される結果ともなる。更に、この種の多孔質表面構造の基材はしばしば複雑な製造工程を必要とする。例えばこの種の基材は複雑な原料配合および/又は多段階工程を経ることも珍しくないため、基材製造コストおよび時間の両面で負担が増しかねない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】米国特許第4,438,175号
【特許文献2】米国特許第4,861,644号
【特許文献3】WO 92/00188
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
これらの理由から、トップコーティングの必要も多孔質ミクロ構造への依存もなくするようなインク受容性の基材、すなわち「本質的に」インク受容性の基材を製造するのが望ましい。そうした本質的にインク受容性の基材は多孔質ミクロ構造により実現される画像品質や光学面の性質に優る性質を与えるのが望ましい。そうした本質的にインク受容性の基材は時間も費用もかかる多段階工程を不要にするようなやり方で製造するのが望ましい。さらに、本発明の本質的にインク受容性の基材構造はインクジェット法等のインク転移法による付着インクを受容しうるようにするのが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明のインク受容基材は水不溶性の熱可塑性ポリマーで形成される基層と該基層上に配置されたインク受容層とを含む。インク受容層は水溶性ポリマーと実質的に水不溶性であるポリマーとの溶融加工性ブレンドから形成され、本質的にインク受容性である表面が後続の処理を経ることなく得られる。基層とインク受容層の間には随意に結合層を介在させることができる。
【0014】
基層原料は、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリウレタン、ポリ塩化ビニル、ポリアミド、ポリスチレン、エチレン−ビニルアルコールおよびそれらの混合物からなる熱可塑性原料群から選択される。インク受容性ブレンドは全ブレンド重量を基準にして20〜80質量%(重量%)の水溶性ポリマーと20〜80質量%(重量%)の実質的に水不溶性のポリマーとを含む。該ブレンドは随意に、水溶性ポリマーと実質的に水不溶性のポリマーの両方に対して化学的に相溶性である相溶化剤を含んでよい。
【0015】
該ブレンドは溶融温度域が約100〜600°Fである。該ブレンドの水溶性ポリマー成分はポリビニルアルコール、ポリアルキルオキサゾリン、ポリフェニルオキサゾリン、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸メチル、ポリメチルメタクリル酸、スチレンマレイン酸無水物、アルキルセルロース、カルボキシアルキルセルロース、ヒドロキシアルキルセルロース、ポリ酸化エチレン、ポリエチレン−イミン、およびそれらの混合物からなる化合物群から選択される。好ましい水溶性ポリマーはポリアルキルオキサゾリンやポリビニルアルコールなどである。
【0016】
該ブレンドの実質的に水不溶性のポリマー成分は改質および非改質ポリエステル、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリブチレン、それらのコポリマーおよび混合物からなるポリオレフィン群から選択される。
【0017】
好ましい一態様では、インク受容基材の基層とインク受容層は共押出法により同時的に形成される。本発明のインク受容基材は基層の片面又は両面上にインク受容層を含んでもよいし、感圧接着ラベル型の構造、すなわちインク受容層の裏側の基層表面に感圧接着剤を配置された構造にしてもよい。
【0018】
本発明のインク受容層は、インク受容性の実現に際してトップコーティングの必要や多孔質ミクロ構造への依存をなくしているという意味で本質的にインク受容性である。本発明のインク受容層は、画像品質や光学的性質が多孔質ミクロ構造をもつ基材により与えられる性質をしのぐ。本発明のインク受容層は時間も費用もかかる多段階工程を不要にするようなやり方で製造される。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】図1は本発明のインク受容基材の、片面をインク受容表面とする態様の略側断面図である。
【図2】図2は本発明のインク受容基材の、片面をインク受容表面とする別の態様の略側断面図である。
【図3】図3は本発明のインク受容基材の、両面をインク受容表面とする更に別の態様の略側断面図である。
【図4】図4は本発明のインク受容基材の更に別の、ラベル素材型態様の略側断面図である。
【図5】図5は本発明のインク受容基材の成形に使用される方法の略側面図である。
【図6】図6は、図5の方法に使用される分配用マニホールドおよびダイの、互いに対し90度回転させた略断面図である。
【図7】図7は図5の方法に使用される分配用マニホールドおよびダイの、互いに対し90度回転させた略断面図である。
【図8】図8は第6図の分配マニホールドの8−8線に沿った分配ブロック面の略正面図である。
【図9】図9は第1〜2図のインク受容基材の成形に使用される分配ブロック面の略正面図である。
【図10】図10は図3のインク受容基材の成形に使用される分配ブロック面の略正面図である。
【図11】図11は第6図の分配マニホールドの11−11線に沿った分配ブロック面の略正面図である。
【図12】図12は本発明のインク受容基材の、表面を二重インク受容層とする態様の略側断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明のインク印刷適性基材が「本質的に」インク受容性又はインクジェット印刷適性であるとされるのは基材の表面構造が後続のトップコーティング、処理(コロナ放電処理など)に俟つことなく、また多孔質ミクロ構造に依存することなくインク媒体受容性をもつよう工夫されているからである。より正確に言えば、本発明の原理に基づいて製造される基材はその表面を水溶性ポリマーと実質的に水不溶性のポリマーとの特殊設計ブレンドで形成することにより、トップコート表面又は多孔質表面を備えた在来基材に優るインク受容性を実現する。
【0021】
図1は本発明のインク受容基材10の態様を示すが、該基材は背中合わせの表面を有する基層12と該基層の1表面上に配置されたインク受容層14を含む。基層12は基材の最終用途次第で多種多様な熱可塑性ポリマーから形成することができる。本発明の基材を成形するうえで好適な基層原料は、ポリオレフィン例えばポリエチレン、ポリプロピレンおよびポリブチレン、ポリ塩化ビニル、ポリアミド、ポリエステル、ポリスチレン、ポリウレタン、ポリアクリレート、ポリ酢酸ビニル、ポリスルホン、ポリ塩化ビニリデン、ポリエチレン−アクリル酸メチル(EMA)、ポリエチレン−メタクリル酸(EMAA)、ポリエチレン−エチルアクリレート、ナイロン、ポリビニルピロリドン、ポリエーテルエステル、ポリエーテルアミド、ポリカーボネート、スチレン−アクリロニトリル=ポリマー、エチレン/メタクリル酸のナトリウム塩又は亜鉛塩をベースにしたイオノマー、ポリメタクリル酸メチル、セルロース樹脂、フッ素樹脂、アクリロニトル−ブタジエン−スチレン=ポリマー、ポリエチレン−ビニルアルコール、それらのコポリマーおよび混合物を含む原料群から選択される溶融性皮膜形成物質などである。選択した基層原料には充填剤、ピグメント、加工および/又は作業助剤を加えてもよい。
【0022】
基層の形成に有用な好ましい熱可塑性ポリマーは加工温度が約150〜600°F、特に好ましくは250〜550°Fである。好ましい基層原料の例はユニオンカーバイド社(Union Carbide Corporation)からUCC ポリプロピレンの商品名で出ているポリプロピレンのホモポリマーおよびコポリマー、イーストマンケミカル社(Eastman Chemical Company)からイースター(Eastar;登録商標)の商品名で出ているポリエステルおよびダウケミカル社(Dow Chemical Company)からダウレックス(Dowlex;登録商標)の商品名で出ているポリエチレンなどである。これらの原料が好ましいのは比較的安価で、押出加工適性の皮膜形成能および大部分の用途に好適なある程度の腰と強さを備えるためである。
【0023】
インク受容層は水溶性ポリマーと実質的に水不溶性のポリマーのブレンドからなる。インク受容層の形成に有用好適な水溶性ポリマーはポリビニルアルコール、ポリアルキルオキサゾリン、ポリフェニルオキサゾリン、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸メチル、ポリメチルメタクリル酸、スチレンマレイン酸無水物、メチルセルロース、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ポリ酸化エチレン、ポリエチレン−イミン、およびそれらの混合物などである。該ブレンドの水不溶性ポリマー成分は水溶性ポリマーと化学的に相溶性であるか、又は適当な相溶化剤の使用により水溶性ポリマーと相溶性にすることができる。
【0024】
これら2ポリマーのブレンドからインク受容表面を形成するのが好ましいのは、この水溶性ポリマーと実質的に水不溶性のポリマーとの組み合わせがインク受容表面の創出に好都合な親水性度をもたらすからである。インク受容表面の形成に有用な原料にはさらに陽イオン改質剤、湿潤剤、コロイドシリカ、IDP(帯電防止能内在ポリマー)、防水剤、および帯電防止剤を含めてもよい。
【0025】
第1の好ましいインク受容層はポリアルキルオキサゾリンとポリオレフィンのブレンドからなる。好ましいブレンドはポリエチルオキサゾリンとポリオレフィンの樹脂ブレンド、それに相溶化剤を含む。水溶性ポリエチルオキサゾリンとポリオレフィンのブレンドが好ましいのは、実質的に疎水性のポリオレフィンが実質的に水不溶性であるインク受容表面の創出に好都合な親水性度を与えるのに役立つからである。更に、相溶化剤をブレンドに使用することで、ポリエチルオキサゾリンとポリオレフィンの混和性ポリマーブレンドが得られる。従って、相溶化剤は該ブレンドを、ポリエチレンオキサゾリンとポリオレフィンの非相溶性に起因する欠陥を伴わないフィルムへと加工することを可能にする。
【0026】
該ブレンドの形成に好都合なポリエチルオキサゾリンは分子量が約50,000〜約1,000,000、より好ましくは約200,000〜約500,000であり、また動粘度が約18〜約90センチストークスである。分子量がこの範囲外のポリエチルオキサゾリンは通常の熱可塑性樹脂加工技術では容易に加工しえない。好ましいポリエチレンオキサゾリンの例は以下の実施例1および2で更に詳しく述べる。
【0027】
ポリエチレンオキサゾリンと組み合わせてインク受容層ブレンドを形成するうえで有用なポリオレフィンは改質および非改質ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリブチレン、それらのコポリマーおよび混合物を含む群から選択することができる。この種のポリオレフィン類が好ましいのは、好適な相溶化剤の存在下でポリエチレンオキサゾリンと混和性ブレンドを形成しうるうえに、適度の濃度で連続相となるからである。この実質的に疎水性のポリオレフィンは連続相であるため、ブレンド中のポリオレフィン濃度を変えることにより表面の親水性度を加減することが可能になる。
【0028】
インク受容層の形成に有用な相溶化剤は無水物改質ポリオレフィン例えば無水物改質ポリプロピレン、無水物改質ポリエチレン、無水物改質エチレン−酢酸ビニル、無水物改質エチル−メチルアクリレート、無水物改質エチレン−エチルアクリレート、無水物改質エチル−アクリル酸、無水物改質エチル−グリシジルメタクリレート、無水物改質エチル−n−ブチルアクリレート、およびそれらのコポリマー、ターポリマーおよび混合物などを含む群から選択することができる。これらの種類の無水物改質ポリオレフィン類が好ましいのは、該ポリオレフィン類がポリオレフィン・ブレンド成分中でそれらを混和性にするよう選択されたポリオレフィン主鎖をもち、また無水物基がポリアルキルオキサゾリン・ブレンド成分のオキサゾリン基と反応しうるからである。
【0029】
ポリアルキルオキサゾリン、ポリオレフィンおよび随意添加される相溶化剤のブレンドで特に好ましいのは、約20〜80質量%(重量%)のポリアルキルオキサゾリン、約10〜80質量%(重量%)のポリオレフィンおよび約40質量%(重量%)以下の相溶化剤を含むブレンドである。ポリアルキルオキサゾリン、ポリオレフィンおよび相溶化剤の含有量をこれらの範囲外にするのは、インク受容層として機能するための最適親水性度が実現されないおそれがあるため、望ましくない。
【0030】
該ブレンド形成用の好ましいポリアルキルオキサゾリンは例えばポリマーケミストリー イノベーションズ(Polymer Chemistry Innovations)社(米国アリゾナ州ツーソン)からアクアゾル(Aquazol;登録商標)の商品名で出ている。該ブレンド形成用の好ましいポリオレフィンは例えばユニオンカーバイド社からUCC ポリプロピレンの商品名で出ているポリプロピレンである。該ブレンド形成用の好ましい無水物改質ポリオレフィンは例えばデュポン(E.I. DuPont)社からバイネル(Bynel;登録商標)の商品名で出ている無水物改質エチレン酢酸ビニルである。
【0031】
第2の好ましいインク受容層はポリビニルアルコールと脂肪族ポリエステルとのブレンドを含む。アルコール/ポリエステル・ブレンドの一例は、参照指示により本書に組み込まれる米国特許第5,658,977号で開示されており、ポリビニルアルコールと脂肪族ポリエステルとの混和性ブレンド、それに少量の希釈剤、加工および作業助剤を含む。ポリビニルアルコールと別の水溶性ポリマーとのブレンドやポリビニルアルコール単味ではなくポリビニルアルコールと脂肪族ポリエステルとのブレンドが望ましいのは、脂肪族ポリエステルが実質的に水不溶性であるインク受容表面を創出するうえで望ましい親水性度を与えるのに役立つからである。更に、米国特許第5,658,977号で開示されている液体エステル希釈剤はポリビニルアルコールの融点を引き下げ又は押し下げてフィルム加工をしやすくするのに有効である。
【0032】
以下でもっと詳しく述べるように、液体脂肪族エステル成分は混合物の溶融温度域を280〜360°Fに引き下げる役目を果たす。従って、液体脂肪族エステルは、それを下回ればポリビニルアルコールが本来熱崩壊を起こすような温度で本発明のブレンドをフィルムへと加工することを可能にする。更に、この溶融温度域は本発明のインク受容基材を多層共押出法で成形するうえで望ましい。というのは、その溶融温度域は加工温度域をポリビニルアルコール単味の場合よりも広くし、また基層原料の溶融温度域にうまく収まるからである。
【0033】
該ブレンドを形成するうえで望ましいポリビニルアルコールは加水分解度が約80〜98%の範囲であり、重合度が約150〜650の範囲である。加水分解度が前記範囲外のポリビニルアルコール成分は、印刷画像のひげや泣き出しの原因となりかねない印刷性能や乾燥性および着色性の不良を招くおそれがあるため、望ましくない。重合度が前記範囲外のポリビニルアルコール成分は次の理由から望ましくない。すなわち、ポリビニルアルコールは重合度が約150未満だと高感水性となり共押出がきわめて困難又は不可能になると判明しているし、また重合度が約650超だと比較的高粘度となり連続薄手フィルムの成形に困難をきたしかねない。
【0034】
ポリビニルアルコール成分は前記の望ましい性質をもつ限りで、単一種のポリビニルアルコールを含んでもよいし、複数種のポリビニルアルコールの混合物を含んでもよい。
【0035】
インク受容層ブレンドの形成に有用な脂肪族ポリエステルは、ポリカプロラクトン、ポリエチレン−アジピン酸エステル、不飽和ポリエステル、シクロポリエステル、置換脂肪族ポリエステル、およびそれらの混合物を含む群から選択することができる。これらの脂肪族ポリエステル類が好ましいのは、ポリビニルアルコールと混和性であり、また適度の濃度で連続相ブレンドとなるからである。この実質的に疎水性の脂肪族ポリエステルは連続相であるため、ブレンド中の脂肪族ポリエステル濃度を変えることにより表面の親水性度を加減することが可能になる。
【0036】
特に好ましいポリビニルアルコール/脂肪族ポリエステル・ブレンドは約20〜80質量%(重量%)のポリビニルアルコールと約20〜80質量%(重量%)の脂肪族ポリエステルを含む。該ブレンドのポリビニルアルコール含有量が約20質量%(重量%)未満では使用に耐える乾燥時間をもたらしうるような親水性度を実現しないおそれがある。該ブレンドのポリビニルアルコール含有量が約80質量%(重量%)超では高親水性の表面を生み出し、それにより大気中から水分を吸収し表面保全性を損なうおそれがある。特に好ましいポリビニルアルコール/脂肪族ポリエステル・ブレンドは約40質量%(重量%)のポリビニルアルコールを含む。
【0037】
該ブレンドの脂肪族ポリエステル含有量が約20質量%(重量%)未満では、ブレンド連続相を形成しないおそれが、従って表面親水性度を加減する機能を果たさないおそれがある。該ブレンドの脂肪族ポリエステル含有量が約80質量%(重量%)超では、表面が完全に疎水性になり、インク受容性が不良となるおそれがある。特に好ましいポリビニルアルコール/脂肪族ポリエステル・ブレンドは約60質量%(重量%)の脂肪族ポリエステルを含む。
【0038】
該ブレンドを形成するうえで好ましいポリビニルアルコールは例えばデュポン社からエルバノール(Elvanol;登録商標)の商品名で、またエアープロダクツアンドケミカルズ(Air Products and Chemicals;米国ペンシルベニア州アレンタウン)社からエアーボル(Airvol;登録商標)の商品名で、それぞれ出ている。該ブレンドを形成するうえで好ましい脂肪族ポリエステルは例えばユニオンカーバイド社からトーン(Tone;登録商標)の商品名で出ている。
【0039】
図2は本発明のインク受容基材16の別の態様を示すが、該基材は背中合わせの表面を有する基層18と該基層の一露出表面側に形成されるインク受容層20を含む。図1の態様と違って、この態様は更に、基層18とインク受容層20の間に介在させた相溶化結合層22を含む。基層18とインク受容層20はそれぞれ前述のような同種原料で形成される。結合層22は基層とインク受容層形成用に選択された原料との相溶性を示す原料で形成され、基層とインク受容層を一つに結合することにより、後にもっと詳しく述べる本発明の基材の共押出法による成形を容易にする。
【0040】
インク受容層と基層の間への結合層の使用は随意とするが、インク受容層および結合層用に選択される原料間の相溶性次第では必要となる場合もある。結合層の形成に有用好適な原料の例には、すでに掲げた基層形成用の有用原料、すなわちインク受容層の形成に使用される水溶性ポリマーと実質的に水不溶性のポリマーとのブレンドに対してある程度の相溶性を示すように予め改質処理した原料がある。従って、選択される基層およびインク受容層原料が異なれば結合層の原料も異なる可能性がある。
【0041】
好ましい結合層原料の例は無水物改質オレフィン例えば無水物改質ポリプロピレン、無水物改質ポリエチレン、無水物改質エチレン−酢酸ビニル、無水物改質エチル−メチルアクリレート、無水物改質エチル−アクリル酸、それらのコポリマーおよび混合物などである。特に好ましい結合層形成用原料は例えばデュポンからバイネル(登録商標)の商品名で出ている無水物改質エチレン−酢酸ビニルである。特にこのタイプの無水物改質ポリオレフィンが好ましいのは、エチレン系およびポリピレン系のポリオレフィン、イオノマー、ポリアミド、ポリビニルアルコール、ポリエチルオキサゾリン、ポリエステル、ポリカーボネートおよびスチレンポリマー等の種々の基質に共有又はイオン結合しうる反応性モノマーにより官能化されるからである。
【0042】
図3は本発明のインク受容基材24の、両面をインク受容表面とする更に別の態様を示す。特に、この態様のインク受容基材は基層26、その各露出表面上に配置された結合層28および結合層の各露出表面上に配置されたインク受容層30を含む。基層、結合層およびインク受容層形成用に選択される原料は前述のとおりである。この態様は、両面印刷にするのが好ましく、また後述の多層共押出法で成形するのが好ましいインクジェット印刷適性媒体などの用途に有効である。
【0043】
図4は本発明のインク受容基材32の、ラベル素材の形をとる更に別の態様を示す。特に、インク受容基材32は基層34を含み該基層は第1表面と第2表面からなる。随意に結合層36を基層第1表面上に配し、結合層表面上にインク受容層38を配する。その要領はすでに説明し図2に示した態様の場合とほぼ同じであるが、図2の態様と違ってこの態様ではインク受容基材はラベル素材の形をとり、基層第2表面上に配置された接着剤層40を更に含む。
【0044】
接着剤層40を溶媒活性化接着剤で形成する場合には隣接表面との思いがけない接着を防ぐために基材32に追加の基材保護層を設ける必要はない。接着剤層40を感圧接着剤で形成する場合には隣接表面との思いがけない接着を防ぐために基材32の接着剤層の上に剥離材42を配する必要がある。こうした構造にすれば、インク受容基材32は印刷後に接着剤層を露出させて特定の支持体表面に貼付するラベル素材として機能することができる。
【0045】
基層34、結合層36およびインク受容層38はそれぞれ、前述した各層用の原料から形成される。接着剤層40は周知の溶媒活性化接着剤又は感圧接着剤から形成することができる。好適な感圧接着剤(PSA)にはシリコーン系、ゴム系、アクリル系などがあり、その形態にはホットメルト、エマルション又は水性分散液、溶媒溶液型又はフィルム膜型がある。ホットメルト使用に好適な慣用のゴム系PSAの例は、参照指示により本書に組み込まれる米国特許第3,239,478号で開示されている。このようなホットメルト接着剤の市販品例はAto Findley, Inc.(米国ウィスコンシン州ウォーワトサ)のH2187−01ホットメルトPSAである。好適なエマルション又は溶媒溶液型のアクリル系PSAの例は、参照指示により本書に組み込まれる米国特許第5,639,811号および5,164,444号でそれぞれ開示されている。
【0046】
接着剤層を形成する接着剤原料は基層表面に、多層共押出法により基層、インク受容層および(必要ならば)結合層と共にホットメルトの形で、予め形成した基層上に押出被覆法によりホットメルトの形で、又は予め形成した基層上に被覆法によりエマルション又は水性分散液の形で、又は溶媒溶液かフィルム膜として、適用することができる。
【0047】
前述の各インク受容基材を構成するインク受容層は、多層共押出法により基層および随意に結合層と同時に形成してよいし、また予め形成した基層上に押出法により単独で又は随意の結合層と共に配してもよい。
【実施例】
【0048】
以下の実施例は本発明のインク受容基材の例証となる。
【0049】
実施例1
ポリオキサゾリン/ポリエステル・インク受容表面を含むインク受容基材
すでに説明し第1〜2図に示したインク受容基材を、図5に示す多層共押出法50により次の要領で製造した。インク受容層形成原料押出用の第1押出機52に、ポリマーケミストリーイノベーションズ社製アクアゾル(登録商標)ポリ(2−エチル−2−オキサゾリン)、イーストマンケミカル社製のコダール(Kodar;登録商標)ポリ(エチレン−テレフタレート)コポリエステル(名称:PETG)、およびデュポン社製セラール(Selar;登録商標)改質ポリエステルコポリマーのブレンドを装入した。第1押出機中のブレンドは溶融加工温度域が約150〜600°Fであり、該押出機の使用温度域は約450〜550°Fとした。
【0050】
基層形成原料押出用の第3押出機56にイーストマンケミカル社製コダール(登録商標)ポリ(エチレン−テレフタレート)コポリエステル(名称:PETG)を装入し、その使用温度域は約450〜550°Fとした。
【0051】
第2押出機54は、インク受容層と基層の間に介在して両層と接着する結合層を形成するポリマー原料の押出用として、随意に使用する。接着性結合層の必要性は、最終製品に求められる基層とインク受容層の間の層接着度次第であろう。この実施例では、結合層形成原料のセラール(登録商標)を第2押出機54に装入し、その使用温度域は約450〜550°Fとした。
【0052】
押出機52、54および56はそれぞれスクリュー押出機であり、約20〜80rpmのスクリュー回転速度、約750〜4000psiの押出圧力で使用した。押出機52、54および56からの各押出物は分配マニホールド58へと押し出されたが、該マニホールドは3つの供給原料の流れを集合し、集合した流れを使用温度域約450〜550°Fのダイ60へと導くように構成してある。
【0053】
ダイ60は、それぞれ互いに同時に形成されるインク受容層64、結合層66および基層68を含む多層排出流62を生み出すように構成してある。こうして成形されたインク受容基材は冷却ローラー(図では示されていない)に通して冷却し、回収ロール66に巻き取った。実施例2 ポリオキサゾリン/ポリオレフィン・インク受容表面を含むインク受容基材
実施例1で説明し図5に示した方法を再び行った。ただしインク受容層形成原料押出用の第1押出機52にはアクアゾル(登録商標)ポリ(2−エチル−2−オキサゾリン)、ユニオンカーバイド社製UCCポリプロピレンDS6D81およびバイネル(登録商標)無水物改質エチレン−酢酸ビニルのブレンドを装入した。第1押出機中のブレンドは溶融加工温度域が約250〜500°Fであり、該押出機の使用温度域は約350〜450°Fとした。
【0054】
基層形成原料押出用の第3押出機56にはUCCポリプロピレンDS6D81を装入し、その使用温度域は約350〜450°Fとした。
【0055】
第2押出機54は、インク受容層と基層の間に介在して両層と接着する結合層を形成するポリマー原料の押出用として、随意に使用する。結合層形成用接着性ポリマー原料のバイネル(登録商標)を第2押出機54に装入し、その使用温度域は約350〜450°Fとした。押出機52、54および56はそれぞれスクリュー押出機であり、約20〜80rpmのスクリュー回転速度、約750〜4000psiの押出圧力で使用した。次いで各押出物を実施例1の場合と同様にダイ60へと導いたが、その使用温度域は約350〜450°Fとした。
【0056】
ダイ60は、それぞれ互いに同時に形成されるインク受容層64、結合層66および基層68を含む多層排出流62を生み出すように構成してある。こうして成形されたインク受容基材は冷却ローラー(図では示されていない)に通して冷却し、回収ロール66に巻き取った。実施例3 ポリビニルアルコール/ポリエステル・インク受容表面を含むインク受容基材
実施例1および2で説明し図5に示した方法を再び行った。ただしインク受容層形成原料押出用の第1押出機52にはエアーボル(登録商標)ポリビニルアルコール、トーン(登録商標)ポリ(カプロラクトン)および少量のトリアセチンとグリセリンのブレンドを装入した。第1押出機中のブレンドは溶融加工温度域が約250〜450°Fであり、該押出機の使用温度域は約250〜350°Fとした。
【0057】
基層形成原料押出用の第3押出機56にポリプロピレンDX5E66を装入し、その使用温度域を約350〜450°Fとした。第2押出機54はインク受容層と基層の間に介在し両層と接着する結合層を形成するポリマー原料の押出用として随意に使用する。結合層形成用接着性ポリマー原料のバイネル(登録商標)無水物改質エチレン−酢酸ビニルを第2押出機54に装入し、その使用温度域を約350〜450°Fとした。押出機52、54および56はそれぞれスクリュー押出機であり、約20〜80rpmのスクリュー回転速度、約750〜4000psiの押出圧力で使用した。次いで各押出物を実施例1および2の場合と同様にダイ60へと導いたが、その使用温度域は約350〜450°Fとした。
【0058】
ダイ60は、それぞれ互いに同時に形成されるインク受容層64、結合層66および基層68を含む多層排出流62を生み出すように構成してある。こうして成形されたインク受容基材は冷却ローラー(図では示されていない)に通して冷却し、回収ロール66に巻き取った。
【0059】
第6〜7図は図5の多層共押出法50に使用される分配マニホールド58とダイ60の(互いに90度回転させた)略断面図である。分配マニホールド58は第1押出機52から排出されるインク受容層形成原料用の第1押出物受入口82、第2押出機54から排出される接着性結合層形成原料用の第2押出物受入口84、および第3押出機56から排出される基層形成原料用の第3押出物受入口86を備える。
【0060】
第1、第2および第3押出物受入口82、84および86は、3つの供給原料の流れの排出端70、72および74が分配ブロック76(第6図参照)の面80(第6図参照)で終わるように構成する。図8は第6図の8−8線で切り取った面80の断面図であり、3つの排出端70、72および74を示す。第6図に戻ると、分配ブロック76は一端に第1又は供給面88を、対向端に第2又は排出面90を備える。こうした分配ブロックの設計および使用法は数件の特許の主題となっており、例えば、参照指示により本書に組み込まれる米国特許第3,924,990号は種々の分配ブロック設計を用いて多様な製品を提供するための共押出装置を開示している。
【0061】
分配ブロックの主眼は供給原料の流路を分配マニホールド内で所期のとおり変更することにある。図9は第1〜2図に示すインク受容基材構造を与えるために使用した分配ブロック76aを示す。この場合には供給原料の流れが面88から面90に至る間に90度回転する。図11は、第6図の隣り合う平行スロット92を具備する集合ブロック78の入口部の11−11線断面図である。集合ブロックは分配マニホールド内に分配ブロックと隣接させて配置してあり、分配ブロックを通過する異なる原料層を集合すると同時にダイへの均一流量を確実にする。分配マニホールドと各押出物受入口は各押出物に関する前述の温度域で使用される。
【0062】
第5〜6図に戻ると、ダイ60は分配マニホールド58の分配端94に取り付けてあり、フィードブロック押出口98と流体連絡している受入口96を備える。ダイは、受入口96の下流に位置しそれと流体連絡している最終排出口100を備える。最終排出口100のサイズと形状は所望の多層インク受容基材を提供するように決定する。押出機、フィードブロック、およびダイはそれぞれ、所望のシート全厚および所望の個別層(インク受容層、接着性結合層、基層)厚をもつインク受容基材をもたらすように使用する。
【0063】
特定基材構造の全厚も個別層厚も当然、多数の要因例えば各層に使用する原料の種類、結合層の有無、および基材用途の種類などに応じて変化する。
【0064】
前述の原料から形成される基層、結合層およびインク受容層の三層構造を含む一具体例では、基材のシート全厚は約10〜750マイクロメートル(μm)、より好ましくは約20〜500μmとし、基層厚は約5〜745μm、より好ましくは約10〜500μmとし、結合層厚は約2〜745μm、より好ましくは約5〜500μmとし、インク受容層厚は約2〜745μm、より好ましくは約5〜500μmとすることができる。
【0065】
特定の実施例で前記構造のインク受容基材をインクジェット印刷適性OHPシートとして使用する場合には、好ましくは基材の全厚を約100μm、基層厚を約80μm、結合層厚を約10μm、インク受容層厚を約10μmとする。実施例4 両面インク受容層を含むインク受容基材
すでに説明し図3に示したインク受容層を図5に示す多層共押出法により次の要領で製造した。図3のような構造を与えるための分配ブロックの設計を図10に示す。この場合には、分配ブロック76bは供給原料の流れを90度回転させると同時に、インク受容層原料の流れ(図8の流れA)を分割して2つの対向インク受容層がインク受容層と基層(図8の流れBに対応)の間に挟まれた2つの対向結合層(図8の流れCに対応)と共に形成されるようにする。
【0066】
前述の原料から形成される基層、それに接する2つの対向結合層および両結合層に接する2つの対向インク受容層からなる多層構造の両面インク受容基材を含む一態様では基材のシート全厚を約10〜750μm、より好ましくは約20〜500μmとし、基層厚を約5〜740 μm、より好ましくは約10〜500μmとし、各結合層厚を約2〜370 μm、より好ましくは約5〜250μmとし、また各インク受容層厚を約2〜370μm、より好ましくは約5〜250μmとすることができる。
【0067】
特定の態様で前記構造のインク受容基材を両面インクジェット印刷適性グラフィックメディアとして使用する場合には、好ましくは基材の全厚を約175μm、基層厚を約125μm、各結合層厚を約10μm、各インク受容層厚を約15μmとする。実施例5 ラベル素材型のインク受容基材
すでに説明し図4に示したようなインク受容基材を実施例1、2および3のいずれかで説明した要領で製造し、それに加えて感圧接着剤(PSA)層を露出基層表面に、PSA 40の直接塗布か又はインク受容基材裏面に配置される剥離材からの転移により、付着させた。
【0068】
前述の原料から形成される基層、接着性結合層、インク受容層、PSA層および剥離材からなるラベル素材構造のインク受容基材を含む一態様では、該構造のシート全厚を約10〜1500μm、より好ましくは約20〜1000μmとし、基層厚を約5〜745μm、より好ましくは約10〜500μmとし、接着性結合層厚を約2〜740μm、より好ましくは約5〜500μmとし、インク受容層厚を約2〜745μm、より好ましくは約10〜500μmとし、PSA層厚を約2〜500μm、より好ましくは約5〜250μmとし、また剥離材厚の範囲を約10〜1480μm、より好ましくは約20〜1000μmとすることができる。
【0069】
特定の態様で前記構造のインク受容基材をインクジェット印刷適性ラベル素材として使用する場合には、好ましくは構造の全厚を約300μm、基層厚を約80μm、接着性結合層厚を約10μm、インク受容層厚を約10μm、PSA層厚を約25μm、剥離材厚を約175μmとする。
【0070】
図12は本発明の原理に基づく他態様として二重インク受容層構造のインク受容基材100を示す。一般に、この態様はすでに説明し図1に示した態様と類似し、基層102と、基層102表面上に配置された第1インク受容層106と第1インク受容層表面上に配置された第2インク受容層108を含む二重インク受容層構造とを含む。
【0071】
この二重層構造では、第1インク受容層106はすでに説明し第1〜図4に示したインク受容層と同じである。更に、該インク受容層はすでに説明し第5〜図11に示した要領で形成される。
【0072】
第2インク受容層108は、インク受容性を増進し他の望ましい性質も基材構造に付与するような塗料で形成される。例えば第2インク受容層108は、基材表面にインク受容性を付与するだけでなく耐候性および/又は耐紫外線性をも付与するような塗料で形成することができる。
【0073】
第1例では、第2インク受容層は参照指示により本書に組み込まれる1997年7月24日出願の米国特許出願第08/899,562号で開示されているような塗料である。一態様では、第2インク受容層108はエマルションポリマーと1以上の水溶性陽イオンポリマーとを含有する塗料を含む。該塗料の形成に有用なエマルションポリマーはエチレン−酢酸ビニル(EVA)エマルションポリマー、アクリルポリマーおよびポリウレタンポリマーなどである。
【0074】
該塗料は随意に組成物中に分散させた又は混合したピグメントを含む。陽イオンポリマーは水性インク中の酸性染料着色剤を固着させて染料の拡散を弱める。好ましくは、該塗料は2以上の水溶性陽イオンポリマーを含む。陽イオンポリマー例は重合ジアリルジメチルアンモニウム化合物およびジメチルアミノエチル=アクリレート又はメタクリレートと1以上のヒドロキシ−低級有機基=アクリレート又はメタクリレート[ヒドロキシエチルアクリレート(HEA)とヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)が最も好ましい]のコポリマーである。
【0075】
態様によっては、塗膜の印刷品質を高めるために該塗料に非イオン又は陽イオン界面活性剤を含める。好ましいインク受容塗料は重量(乾量)%ベースで約15〜70%のエマルションポリマー、約5〜50%の1以上の水溶性陽イオンポリマー、約60%以下のピグメントおよび約10%以下の1以上の界面活性剤を含む。
【0076】
好適なEVAエマルションポリマーは、例えばエアープロダクツアンドケミカルズ社(米国ペンシルベニア州アレンタウン)からエアーフレックス(AIRFLEX)の商標で出ている。例はエアーフレックス 465(登録商標)(固形分65%)およびエアーフレックス 7200(登録商標)(固形分72〜74%)である。もう1つ好適なEVAエマルションポリマーはエアーフレックス 426(登録商標)、すなわちカルボキシル基で部分的に官能化された高固形分のカルボキシル化EVAポリマーである。このポリマーは、基材表面に水性インクで画像が記録されるときなどにインク受容塗料の耐水性を高めると考えられる。エアーフレックスブランドのEVAエマルションポリマーは5質量%(重量%)以下のポリビニルアルコール(PVOH)および/又は(塗料次第で)非イオン界面活性剤で安定化する。本発明に使用されるEVAエマルションポリマーは、好ましくは固形分が約40〜75%である。
【0077】
EVAエマルションポリマーは好ましくは、乾量ベース(すなわち組成比の計算に水分を含めない)でインク受容塗料の約15〜70質量%(重量%)、より好ましくは約25〜65質量%(重量%)を占める。
【0078】
この実施例の第2インク受容層を形成するうえで有用な水溶性陽イオンポリマーの非限定的な例はポリ四級アンモニウム塩[別名四級アンモニウム・ポリマー、ポリ四(polyquats)および四級ポリマー]である。ポリ四級アンモニウム塩の非限定例はポリジアリルメチルアンモニウム化合物、および四級ジメチルアミノエチル=アクリレート又はメタクリレートと1以上のヒドロキシ−低級有機アクリレート又はメタクリレート[例えばヒドロキシエチルアクリレート(HEA)やヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)]のコポリマーである。電荷の中性を維持するために一価又は二価の対イオンZを各四級アンモニウム中心と会合させる。こうした対イオンの非限定例はハロゲン化物(塩化物など)とジメチルスルフェート陰イオンである。
【0079】
一態様では、該塗料はさらに、任意の随意ピグメントを湿潤させるのに役立つ、および/又は得られる組成物の印刷品質を向上させるのに役立つ陽イオン又は非イオン界面活性剤を含む。非イオン界面活性剤の非限定例はアルキルフェノールエトキシレート例えばノニルフェノールエトキシレート、およびHenkel of America Inc.(イリノイ州キングオブプラシャ)のエトキシル化非イオン界面活性剤商品Disponil A 3065である。陽イオン界面活性剤の非限定例はAkzo Nobel Chemicals Inc.(イリノイ州シカゴ)から出ているヘキサデシル=トリメチルアンモニウム=クロリド(HDTMAC)である。陰イオン界面活性剤は、陽イオン性の水溶性ポリマーと静電反応を起こす可能性があるので避けるのがよい。
【0080】
好ましくは、約10質量%(重量%)(乾量ベース)以下の1以上の界面活性剤をインク受容塗料に使用する。界面活性剤の含有量が多すぎると、塗料に気泡が混じる原因となり、フィルム基材に塗料を塗布したときに印刷品質に悪影響を及ぼす結果となりかねない。該塗料には加工性を高めるために他の成分例えば増粘剤や脱泡剤などを加えることができる。
【0081】
該塗料には不透明性を増したり、下地の塗布済み第1インク受容層の多孔性を加減したりするために、随意にピグメントを加えてよい。無機ピグメントが特に好ましく、その非限定例はシリカ(好ましくは非晶質シリカゲル)、ケイ酸、粘土、ゼオライト、アルミナ、TiO、MgCOなどである。ピグメントはインクの吸収を強め、塗膜の印刷品質や耐水性を高め、また染料着色剤を含む水性インクやピグメント系水性インクへの塗料の対応を可能にする。本発明に基づいて調製される好ましいインク受容塗料は乾量ベースで全塗料の約60質量%(重量%)以下のピグメントを含有することができる。
【0082】
第2例では、第2インク受容層を完全に水溶性の(すなわち前述のエマルションポリマーを含まない)ポリマーコンパウンドでも形成することができる。このタイプのコンパウンド例は、水溶性ビニルポリマー樹脂例えばポリビニルアルコールおよびポリビニルピロリドン; ポリアクリル系ポリマー樹脂; 水溶性セルロース系ポリマー樹脂例えばメチルセルロース、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロースおよびヒドロキシエチルセルロース; および合成水溶性ポリマー樹脂例えばポリ酸化エチレンおよびポリエチレン−イミンなどを含む群から選択される1以上の水溶性樹脂を含む。
【0083】
更に、該水溶性ポリマーコンパウンドにはコロイドシリカを含有させて、コロイドシリカ自体のSiOH基および結合水の存在により第2インク受容層の湿潤性を改善するようにしてもよい。コロイドシリカには第2インク受容層に帯電防止性を付与する効果もある。該水溶性コンパウンドは前述の水溶性陽イオンポリマーを含んでもよい。第2インク受容層の形成に有用な水溶性コンパウンドの例は、参照指示により本書に組み込まれる米国特許第5,622,997号で開示されている。
【0084】
好ましい第2例では、水溶性コンパウンドは約50〜90質量%(重量%)の水溶性ポリマー(単味でも2以上の前述の水溶性ポリマーの混合でもよい)、約30質量%(重量%)以下の水溶性陽イオンポリマー、それに残量のピグメント、界面活性剤および殺菌剤を含有する。
【0085】
好ましい第2例では、第2インク受容層はN−ビニルピロリドンコポリマーとポリビニルアルコールのブレンド、ジアリルジメチルアンモニウム=クロリド、脱泡剤、界面活性剤、および殺菌剤を前述の含有率の範囲内で含有する。
【0086】
第2インク受容層は第1インク受容層の表面上に吹付け塗布、ロール塗布、押出等の在来法で配置する。一態様では、第2インク受容層の形成は第1インク受容層の形成後に順次行う。
【0087】
第2インク受容層は基底の第1インク受容層と相溶性である(両層とも親水性である)という特徴がある。そのため、両層間に相溶化層又は結合層を設ける必要がなくなる。
【0088】
第2インク受容層は基底の第1インク受容層と協力して、インクジェット印刷に特に見事に対応し、かつピグメント系、染料系両方のカラーおよび黒インクに対し優れたインク受容性を示す基板表面を形成する。前述のように、第2インク受容層は耐候性や耐紫外線性などの有利な性質をもたせるように配合することができる。
【0089】
第2インク受容層は、基材表面に移されたインク媒体とイオン結合を形成することによりインク受容性を高める働きをする。基底の第1インク受容層106は第2インク受容層108と協力して、すでに詳しく述べたとおり、第1インク受容層本来の性質である親水性によりインク媒体を吸収することにより、インク受容性を更に高める。本発明の一態様である二重インク受容層基材は在来インク受容基材に優る性質(色濃度、解像力、色の諧調、乾燥時間、防汚性および耐水堅牢度)を備えたインク受容表面を与える。
【0090】
本発明の一態様である二重インク受容層基材のもう1つの特徴は、薄手フィルム構造として製造しうる点にある。第1および第2インク受容層が相補的/相乗的に協力し合って基材表面を形成するため、各層の有効厚はさもなくば単一インク受容層基材の場合に求められる有効厚よりも薄くすることができる。そのため、本発明の二重インク受容層基材では第1および第2インク受容層合計厚を単一インク受容層からなるインク受容基材の場合よりも薄くすることができる。
【0091】
一態様では、第1インク受容層の皮膜厚は第1〜図4に示した態様のインク受容基材に関する前述の範囲内である。第2インク受容層の皮膜厚の範囲は第1インク受容層のそれと同じにすることができる。
【0092】
本発明のインク受容基材は、水溶性ポリマーと実質的に水不溶性のポリマーからなる特殊設計ブレンドを用いて優れたインク受容表面を与える。この種のインク受容表面を好適な基層上に配置されて後続の処理又はトップコーティングを経ることなく実現される本質的に印刷適性の基材は、印刷に使用すると、トップコートを施した多孔性表面構造をもつ在来インク受容基材に優る性質(光学的透明性、印刷品質および表面保全性)を示す。特に、本発明のインク受容基材では光沢度および曇り度、色濃度、耐水堅牢性、耐スカッフィング性が改善する。
【0093】
以上、本発明のインク受容基材およびその製造方法についてそのインク受容性はインクジェット法に対応するものと説明、解説してきたが、本発明のインク受容基材が他の方法で転移される染料系およびピグメント系インクに対しても受容性であることは言うまでもない。従って、本発明のインク受容基材はインクジェット印刷を含む多様なインク転移法への対応も意図されている。
【0094】
更に、そうしたインク受容層および基層構造を含む本発明のインク受容基材は多層共押出法で製造されるが、この押出法は多孔性表面構造の在来インク受容基材の製造に使用されるトップコーティング等の処理を伴う多段階法よりも能率的かつ費用効果的である。特に、多層共押出法を使用するとインク受容層を基層又は任意の接着性中間結合層と同時に形成することが、従って多段階加工を避けることが可能になる。
【0095】
以上、本発明の原理に基づくインク受容基材とその製造方法の態様を説明してきたが、数多くの変更や変法が当業者には自明であろう。従って、本発明のインク受容基材が以上具体的に述べた以外の方法でも、添付の特許請求の範囲内で、製造しうることは言うまでもない。
【0096】
本発明のこれらや他の特徴および利点については、明細書、特許請求の範囲および添付図面の参照により理解、評価が増すであろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
インク受容基材構造であって、
水不溶性の熱可塑性ポリマーから形成された基層、および
該基層上に配置され、水溶性ポリマーと実質的に水不溶性ポリマーの溶融加工性ブレンドから形成されたインク受容層を含み;該インク受容層が更なる表面処理を経ることなく本質的にプリント受容性の表面を与えるインク受容基材構造。
【請求項2】
ブレンドがブレンド総重量を基準にして20〜80質量%(重量%)の水溶性ポリマーと20〜80質量%(重量%)の実質的に水不溶性のポリマーを含む請求項1記載の構造。
【請求項3】
水溶性ポリマーがポリビニルアルコール、ポリアルキルオキサゾリン、ポリフェニルオキサゾリン、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸メチル、ポリメチルメタクリル酸、スチレンマレイン酸無水物、アルキルセルロース、カルボキシアルキルセルロース、ヒドロキシアルキルセルロース、ポリ酸化エチレン、ポリエチレン−イミン、およびそれらの混合物からなる化合物群から選択される請求項1記載の構造。
【請求項4】
実質的に水不溶性のポリマーが改質および非改質ポリエステル、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリブチレン、それらのコポリマーおよび混合物からなるポリオレフィンおよびポリエステル群から選択される請求項1記載の構造。
【請求項5】
ブレンドの溶融温度域が約100〜600°Fである請求項1記載の構造。
【請求項6】
水溶性ポリマーがポリアルキルオキサゾリンである請求項1記載の構造。
【請求項7】
ポリアルキルオキサゾリンの重量平均分子量が約50,000〜約1,000,000、より好ましくは約200,000〜約5000,000であり、動粘度が約18〜約90センチストークスである請求項6記載の構造。
【請求項8】
ブレンドが水溶性ポリマーと実質的に水不溶性のポリマーの両方に対して化学的に相溶性である相溶化剤を更に含む請求項6記載の構造。
【請求項9】
実質的に水不溶性のポリマーがポリオレフィンである請求項6記載の構造。
【請求項10】
相溶化剤が無水物改質ポリオレフィンである請求項8記載の構造。
【請求項11】
実質的に水不溶性のポリマーがポリエステルである請求項6記載の構造。
【請求項12】
ブレンドが改質ポリエステルを相溶化剤として更に含む請求項11記載の構造。
【請求項13】
水溶性ポリマーがポリビニルアルコールである請求項1記載の構造。
【請求項14】
ポリビニルアルコールの加水分解度が約80〜98%であり、また重合度が約150〜650である請求項13記載の構造。
【請求項15】
実質的に水不溶性のポリマーがポリエステル化合物であるである請求項13記載の構造。
【請求項16】
ポリエステル化合物がポリカプロラクトン、ポリエチレン−アジピン酸エステル、不飽和ポリエステル、シクロポリエステル、置換脂肪族ポリエステル、およびそれらの混合物からなる群から選択される請求項11又は15記載の構造。
【請求項17】
インク受容層形成用ブレンドの溶融温度域が約100〜600°Fである請求項1記載の構造。
【請求項18】
基層の形成に使用する水不溶性の熱可塑性ポリマーの溶融温度域が約150〜600°Fである請求項1記載の構造。
【請求項19】
基層がポリオレフィン、ポリエステル、ポリウレタン、ポリ塩化ビニル、ポリアミド、ポリスチレン、エチレン−ビニルアルコール、およびそれらの混合物からなる熱可塑性原料群から選択される請求項1記載の構造。
【請求項20】
基層とインク受容層が共押出法により同時に形成される請求項1記載の構造。
【請求項21】
基層とインク受容層の間に挟まれた結合層を更に含み、該結合層が両隣接層と化学的に相溶性である熱可塑性ポリマー原料で形成される請求項1記載の構造。
【請求項22】
基層、結合層およびインク受容層が同時に形成される請求項21記載の構造。
【請求項23】
インク受容層とは反対側の基層表面上に配置された接着剤層と該接着剤層上に配置された剥離表面を有する軟質支持体とを更に含む請求項1記載の構造。
【請求項24】
インク受容層(第1インク受容層)上に配置された第2のインク受容層を更に含む請求項1記載の構造。
【請求項25】
第2インク受容層がエチレン−酢酸ビニル、アクリル樹脂、ポリウレタン、およびそれらの混合物からなる群から選択されるエマルションポリマーを更に含む請求項24記載の構造。
【請求項26】
第2インク受容層が1以上の水溶性ポリマーを含む請求項24又は25記載の構造。
【請求項27】
1以上の水溶性ポリマーがビニルポリマー樹脂、ポリアクリルポリマー樹脂、セルロースポリマー樹脂、合成水溶性ポリマー樹脂、およびそれらの混合物からなる群から選択される請求項26記載の構造。
【請求項28】
無機ピグメントを更に含む請求項26記載の構造。
【請求項29】
プリント媒体を受容するインク受容基材であって、
加工温度域が約250〜550EFである水不溶性の熱可塑性ポリマーから形成される基層、
該基層上に配置された、溶融温度域が約100〜600EFである水溶性ポリマーと実質的に水不溶性のポリマーのブレンドから形成されるインク受容層、および
該基層と該インク受容層の間に挟まれた、両隣接層と化学的に相溶性である熱可塑性ポリマーから形成される結合層を含み、該インク受容層が更なる表面処理を経ることなく本質的にインク受容性の表面を与えるインク受容基材。
【請求項30】
ブレンドがブレンド総重量を基準にして20〜80質量%(重量%)の水溶性ポリマーと20〜80質量%(重量%)の実質的に水不溶性のポリマーとを含む請求項29記載の構造。
【請求項31】
水溶性ポリマーがポリビニルアルコール、ポリアルキルオキサゾリン、ポリフェニルオキサゾリン、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸メチル、ポリメチルメタクリル酸、スチレンマレイン酸無水物、アルキルセルロース、カルボキシアルキルセルロース、ヒドロキシアルキルセルロース、ポリ酸化エチレン、ポリエチレン−イミン、およびそれらの混合物からなる化合物群から選択される請求項29記載の構造。
【請求項32】
実質的に水不溶性のポリマーが改質および非改質ポリエステル、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリブチレン、それらのコポリマーおよび混合物からなるポリオレフィンおよびポリエステル群から選択される請求項31記載の構造。
【請求項33】
水溶性ポリマーがポリアルキルオキサゾリンである請求項29記載の構造。
【請求項34】
ポリアルキルオキサゾリンの重量平均分子量が約50,000〜約1,000,000であり、動粘度が約18〜約90センチストークスである請求項33記載の構造。
【請求項35】
実質的に水不溶性のポリマーがポリオレフィンである請求項33記載の構造。
【請求項36】
ブレンドが水溶性ポリマーと実質的に水不溶性のポリマーの両方に対して化学的に相溶性である相溶化剤を更に含む請求項34記載の構造。
【請求項37】
相溶化剤が無水物改質ポリオレフィンである請求項36記載の構造。
【請求項38】
実質的に水不溶性のポリマーがポリエステルである請求項33記載の構造。
【請求項39】
ブレンドが改質ポリエステルを相溶化剤として更に含む請求項38記載の構造。
【請求項40】
水溶性ポリマーがポリビニルアルコールである請求項29記載の構造。
【請求項41】
ポリビニルアルコールの加水分解度が約80〜98%であり、また重合度が約150〜650である請求項40記載の構造。
【請求項42】
実質的に水不溶性のポリマーがポリエステル化合物であるである請求項40記載の構造。
【請求項43】
ポリエステル化合物がポリカプロラクトン、ポリエチレン−アジピン酸エステル、不飽和ポリエステル、シクロポリエステル、置換脂肪族ポリエステル、およびそれらの混合物からなる群から選択される請求項42記載の構造。
【請求項44】
基層がポリオレフィン、ポリエステル、ポリウレタン、ポリ塩化ビニル、ポリアミド、ポリスチレン、エチレン−ビニルアルコール、およびそれらの混合物からなる熱可塑性原料群から選択される請求項29記載の構造。
【請求項45】
基層、結合層およびインク受容層が同時に形成される請求項29記載の構造。
【請求項46】
インク受容層とは反対側の基層表面上に配置された接着剤層と該接着剤層上に配置された剥離表面を有する軟質支持体とを更に含む請求項29記載の構造。
【請求項47】
第1インク受容層上に配置された第2インク受容層を更に含む請求項29記載の構造。
【請求項48】
第2インク受容層がエチレン−酢酸ビニル、アクリル樹脂、ポリウレタン、およびそれらの混合物からなる群から選択されるエマルションポリマーを更に含む請求項47記載の構造。
【請求項49】
第2インク受容層が1以上の水溶性ポリマーを含む請求項47又は48記載の構造。
【請求項50】
1以上の水溶性ポリマーがビニルポリマー樹脂、ポリアクリルポリマー樹脂、セルロースポリマー樹脂、合成水溶性ポリマー樹脂、およびそれらの混合物からなる群から選択される請求項49記載の構造。
【請求項51】
無機ピグメントを更に含む請求項49記載の構造。
【請求項52】
インク受容基材構造であって、
加工温度域が約250〜550EFである水不溶性の熱可塑性ポリマーから形成される基層、
該基層上に配置された、水溶性ポリマーと実質的に水不溶性のポリマーの、溶融温度域が約100〜600EFであるブレンドから形成される第1インク受容層、および
第1インク受容層上に配置された第2インク受容層を含み、第1インク受容層と第2インク受容層が総合体として本質的にインク受容性の表面を与えるインク受容基材構造。
【請求項53】
第2インク受容層がエチレン−酢酸ビニルポリマーと1以上の水溶性陽イオンポリマーを含む請求項52記載の構造。
【請求項54】
インク受容基材ラベル構造であって、
水不溶性の熱可塑性ポリマーから形成される基層、
該基層の第1表面上に配置された、水溶性ポリマーと実質的に水不溶性のポリマーの溶融加工性ブレンドから形成されるインク受容層であって、該ブレンドがブレンド総重量を基準にして約20〜80質量%(重量%)の水溶性ポリマーと約20〜80質量%(重量%)の実質的に水不溶性のポリマーを含み、該インク受容層が更なる表面処理を経ることなく本質的にインク受容性の表面を与えるインク受容層、および
該基層の第2表面上に配置された、基層とインク受容層を所望の支持体表面に接着してラベルとするための接着剤層を含むインク受容基材ラベル構造。
【請求項55】
水溶性ポリマーがポリビニルアルコール、ポリアルキルオキサゾリン、ポリフェニルオキサゾリン、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸メチル、ポリメチルメタクリル酸、スチレンマレイン酸無水物、アルキルセルロース、カルボキシアルキルセルロース、ヒドロキシアルキルセルロース、ポリ酸化エチレン、ポリエチレン−イミン、およびそれらの混合物からなる化合物群から選択される請求項54記載の構造。
【請求項56】
実質的に水不溶性のポリマーが改質および非改質ポリエステル、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリブチレン、それらのコポリマーおよび混合物からなるポリオレフィンおよびポリエステル群から選択される請求項54記載の構造。
【請求項57】
水溶性ポリマーがポリアルキルオキサゾリンである請求項54記載の構造。
【請求項58】
ポリアルキルオキサゾリンの重量平均分子量が約50,000〜約1,000,000であり、動粘度が約18〜約90センチストークスである請求項57記載の構造。
【請求項59】
実質的に水不溶性のポリマーがポリオレフィンである請求項54記載の構造。
【請求項60】
ブレンドが水溶性ポリマーと実質的に水不溶性のポリマーの両方に対して化学的に相溶性である相溶化剤を更に含む請求項59記載の構造。
【請求項61】
相溶化剤が無水物改質ポリオレフィンである請求項60記載の構造。
【請求項62】
実質的に水不溶性のポリマーがポリエステル化合物である請求項54記載の構造。
【請求項63】
ブレンドが水溶性ポリマーと実質的に水不溶性のポリマーの両方に対して化学的に相溶性である相溶化剤を更に含む請求項62記載の構造。
【請求項64】
相溶化剤が改質ポリエステル化合物である請求項63記載の構造。
【請求項65】
水溶性ポリマーがポリビニルアルコールである請求項54記載の構造。
【請求項66】
ポリビニルアルコールの加水分解度が約80〜98%であり、また重合度が約150〜650である請求項65記載の構造。
【請求項67】
実質的に水不溶性のポリマーがポリエステル化合物であるである請求項66記載の構造。
【請求項68】
ポリエステル化合物がポリカプロラクトン、ポリエチレン−アジピン酸エステル、不飽和ポリエステル、シクロポリエステル、置換脂肪族ポリエステル、およびそれらの混合物からなる群から選択される請求項67記載の構造。
【請求項69】
接着剤層上に配置された剥離表面を有する剥離材を更に含む請求項54記載のラベル構造。
【請求項70】
基層とインク受容層が同時に形成される請求項54記載のラベル構造。
【請求項71】
インク受容基材の成形方法であって、
水不溶性の熱可塑性ポリマーから溶融加工性基層を形成するステップ、および
同時に、該基層上に配置されたインク受容層を、水溶性ポリマーと実質的に水不溶性のポリマーのブレンドから形成するステップを含み、該インク受容層が後続の処理を経ることなく本質的にインク受容性の印刷適性表面を与える成形方法。
【請求項72】
インク受容層を形成するステップの前に、熱可塑性ポリマーから結合層を基層上に、基層およびインク受容層の形成と同時に形成するステップを更に含む請求項71記載の方法。
【請求項73】
インク受容層とは反対側の基層表面上に接着剤層を形成してラベルを提供するようにするステップを更に含む請求項71の方法。
【請求項74】
基層とインク受容層が共押出法で形成される請求項71の方法。
【請求項75】
実質的に水不溶性のポリマーがポリオレフィンであり、また水溶性ポリマーがポリビニルアルコール、ポリアルキルオキサゾリン、ポリフェニルオキサゾリン、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸メチル、ポリメチルメタクリル酸、スチレンマレイン酸無水物、アルキルセルロース、カルボキシアルキルセルロース、ヒドロキシアルキルセルロース、ポリ酸化エチレン、ポリエチレン−イミン、およびそれらの混合物からなる化合物群から選択される請求項71の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−196972(P2012−196972A)
【公開日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−140095(P2012−140095)
【出願日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【分割の表示】特願2001−574380(P2001−574380)の分割
【原出願日】平成13年4月11日(2001.4.11)
【出願人】(595100646)アベリー・デニソン・コーポレイション (6)
【氏名又は名称原語表記】Avery Dennison Corporation
【Fターム(参考)】