説明

材料組織観察装置

【課題】診断対象部位からレプリカを採取する必要がなく、現場で簡単かつ短時間に金属組織を観察することができる材料組織観察装置を提供すること。
【解決手段】密閉構造の顕微鏡本体15内に設けられてレーザーを発信する半導体レーザーと、この半導体レーザーから発信されたレーザーを屈曲させて導く上記顕微鏡本体内に設けられた光路と、この光路の先端部に取り付けられて上下方向に移動可能な対物レンズと、上記光路に設けられて反射するレーザーを受信する画像センサと、顕微鏡本体15を左右方向に傾動可能に支持する第一台座と、この第一台座が取り付けられた第二台座と、この第二台座下面に当接する第三台座を備え、第二台座と第三台座は直交する2軸方向に移動可能であって、対物レンズ、第二台座および第三台座を移動させる移動機構と、顕微鏡本体15を傾動させる傾動機構を備え、さらに、被観察対象に固定するための固定治具装置44、45、46を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は材料組織観察装置に関し、さらに詳しくは、金属材料のクリープ損傷による劣化の程度を診断するために、診断対象部位の金属組織を現場で簡単且つ短時間に、直接観察できるレーザー顕微鏡を用いた材料組織観察装置に関する。
【背景技術】
【0002】
発電プラントや化学プラントなどは、高温下や高温高圧下で使用されることにより損傷を受けやすく、点検や保守などが必要である。これらの構造材料として用いられているクロム−モリブデン鋼やステンレス鋼などは、長期間使用すると、クリープ損傷に代表される経年劣化損傷が生じる。
【0003】
このためこれらのプラントを長期間安全に運転するためには、構造部材が受けたクリープ損傷の程度を知る必要があり、それによって設備の余寿命を予測することができる。従来からクリープ寿命の予測を行う方法については種々提案されているが、その一つにクリープ損傷に伴う組織変化を観察してクリープ寿命を予測する方法があり、結晶粒に発生するボイドの数と面積とによるボイド面積率法がある。このボイド面積率法では、クリープ損傷を知る必要がある部位を選び、その部位について現場でレプリカを採取してこれを持ち帰り、金属蒸着処理後、走査型電子顕微鏡でクリープボイドを観察してボイド面積率を求め、予め求めてあるクリープ損傷度とボイド面積率の関係を示す検定曲線からクリープ損傷度を求めている。
【0004】
また、クリープ損傷度を評価する方法の一つとして、金属組織の結晶粒の形状の伸張程度を定量化して評価する方法があるが(例えば、非特許文献1参照)、この場合も、現場でクリープ損傷を知る必要がある部位のレプリカを採取してこれを持ち帰り、そのレプリカを顕微鏡観察し、手書きで金属組織写真上の結晶粒形状を別紙にトレースし、そのトレースした形状を画像処理装置に取り込んで解析する方法が知られている。
【0005】
また、金属材料の結晶粒度を算出する場合、JIS−G−0551やJIS−G−0552に規定されるように、観察された金属組織写真を標準図と比較する比較法や一定の長さの直交する2つの線分で切断される結晶粒度を測定する切断法も用いられている。この場合も、現場でクリープ損傷を知る必要がある部位のレプリカを採取してこれを持ち帰り、そのレプリカを顕微鏡観察する必要がある。
【非特許文献1】日本機械学会編「動力プラント・構造物の余寿命評価技術」技報堂出版発行
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、レプリカの採取や上記評価にかなり熟練を要し、作業者の技能差によって診断結果にばらつきが生じ易く、しかも、短時間で診断結果を出すことができないという不都合な点がある。その上、結晶粒形状を手書きでトレースしたり、比較法や切断法により結晶粒度を測定する方法は熟練を要する上に、身体的疲労、特に目の疲労が激しいため、検出の精度が大きく低下する。
【0007】
さらに、金属材料の結晶粒形状を検出するために使用される一般的な画像処理技術の場合、金属組織写真の様相やゴミやちりなどの画像処理上のノイズの影響を受けやすく、図21に示すように、求めた結晶粒形状が不完全であることが多い。
【0008】
本発明は従来の技術の有するこのような問題点に鑑みてなされたものであって、その目的は、診断対象部位からレプリカを採取する必要がなく、現場で簡単かつ短時間に金属組織を観察することができる材料組織観察装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために本発明の材料組織観察装置は、密閉構造の顕微鏡本体内に設けられてレーザーを発信する半導体レーザーと、この半導体レーザーから発信されたレーザーを屈曲させて導く上記顕微鏡本体内に設けられた光路と、この光路の先端部に取り付けられて上下方向に移動可能な対物レンズと、上記光路に設けられて反射するレーザーを受信する画像センサと、上記顕微鏡本体を左右方向に傾動可能に支持する第一台座と、この第一台座が取り付けられた第二台座と、この第二台座下面に当接する第三台座を備え、第二台座と第三台座は直交する2軸方向に移動可能であって、対物レンズ、第二台座および第三台座を移動させる移動機構と、顕微鏡本体を傾動させる傾動機構を備え、さらに、被観察対象に固定するための固定治具装置を有することを特徴としている。
【0010】
また、本発明者は画像処理装置を材料組織の観察に使用することに着目し、本発明の材料組織観察装置は、画像処理装置に取り込まれた金属組織写真の画像データ上の結晶粒界を画定する境界線の内部に最初の位置である中心点を指定する中心線指定手段と、上記中心点を含む閉曲線を境界線の近傍に設定する閉曲線設定手段と、上記閉曲線近傍の画像データの濃淡情報に基づいて閉曲線を変形する閉曲線変形手段と、変形した閉曲線が画像データ上の結晶粒界を画定する境界線のすべてと重なった場合に当該閉曲線を結晶粒界とする結晶粒界決定手段と、結晶粒界決定手段により決定された結晶粒界から結晶粒の変形度を求める第一演算処理手段と、記憶手段に予め記憶された同一材料のクリープ損傷度と結晶粒の変形度との検定曲線に基づいて第一演算処理手段で求めた結晶粒の変形度からクリープ損傷度を求める第二演算処理手段を有することを特徴としている。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、次のような効果がある。
(1)請求項1記載の発明によれば、顕微鏡本体を密閉構造とすることで防塵性を高め、一連の観察機器を固定治具装置により被観察対象に取り付け、第二台座と第三台座を直交する2軸方向に適宜の距離だけ移動させるとともに、対物レンズを上下方向に適宜の距離だけ昇降させ、さらに、顕微鏡本体を適宜の距離だけ右方または左方に傾動させることにより、必要な観察部位の材料組織の画像データを現場において連続的に得ることができる。
(2)請求項2記載の発明によれば、機器の作動に伴って発生する熱は排熱フードから排出されるので、機器内に作動の障害となるような熱がこもることはなく、安定した作動が確保される。
(3)請求項3〜6記載の発明によれば、ノイズの影響を受けにくく、画像データの濃淡情報に基づいて設定した閉曲線を結晶粒界に沿うように変形させる手法であって、診断対象部位からレプリカを採取する必要がなく、現場で簡単かつ短時間にクリープ損傷度を診断することができる。
(4)請求項7記載の発明によれば、レーザー顕微鏡による観察装置と画像処理装置とを組み合わせて構成するようにしており、現場における診断対象の画像の採取から画像処理を行ってクリープ損傷の診断を行うまでの全ての操作を自動的に行うことが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明の材料組織観察装置は、上下方向に移動可能な対物レンズと、直交する2軸方向に移動可能な第二台座と第三台座を備えるとともに、顕微鏡本体が左右方向に傾動可能であることを特徴としているが、本発明は画像処理装置と組み合わせた場合に顕著な効果を発揮しうる。そこで、画像処理装置による材料組織観察手法とクリープ診断手法について説明する。
1.前処理による結晶粒界の出現
観察対象である金属材料に対して、一般的に行われている金属組織観察の手法に基づいて、対象部分をエミリー紙などで機械研磨を行い、その後アルミナ懸濁液やダイヤモンドペーストを用いて鏡面仕上げする。
【0013】
鏡面仕上げされた部位に対して金属材料ごとに選択される腐食液を用いて該当部位を化学腐食させることにより結晶粒界を出現させる。
2.金属組織写真の画像データの画像処理装置への取り込み
次ぎに、レーザー顕微鏡によって金属組織を観察し、観察画像のデータを直接、画像処理装置(例えば、パソコン)に取り込むか、観察時に写真撮影し、その写真をカメラ入力やスキャナー等の汎用装置を使ってパソコンで取り扱うことのできる画像データとしてパソコンに取り込む。
3.金属組織写真の画像データのパソコンでの処理と結晶粒界の決定
取り込んだ画像データをパソコンにおいて、次ぎに説明するようなステップで処理する。
(a) 対象画像データを読み込む。
(b) 局所平均化法によるノイズの除去を行う。
(c) 取り込んだ画像データ上の任意の結晶粒内の点を指定する。
(d) その指定した点を含む閉曲線を結晶粒の粒界近傍に設定する。
(e) 画像データの濃淡情報を利用して閉曲線近傍において境界線探索を行う。
(f) 境界線探索の結果を基に閉曲線を変形させる。
(g) その閉曲線が最初にパソコンに取り込んだ画像データ(図1)の結晶粒界を画定する境界線のすべてと重なった場合は、その閉曲線を結晶粒界として決定する(図2)。
【0014】
しかし、その閉曲線がパソコンに取り込まれた画像データの結晶粒界を画定する境界線の一部と重ならない場合、同一の結晶粒内において別の点を指定して上記の(d)〜(f)のステップを繰り返して複数の閉曲線を設定して変形させ、変形した複数の閉曲線のうち最も外側の曲線をつないだ閉曲線が画像データ上の結晶粒界を画定する境界線のすべてと重なった場合は、上記のようにつないだ閉曲線を結晶粒界として決定する。
【0015】
画像ノイズなどにより当該結晶粒の形状を正確に決定することができない場合、すなわち、画像データ上の当該結晶粒の結晶粒界を画定する境界線の内部に最初の位置である中心点を指定し、上記中心点を含む閉曲線を境界線の近傍に設定し、上記閉曲線近傍の画像データの濃淡情報に基づいて閉曲線を変形し、変形した閉曲線が画像データ上の当該結晶粒の結晶粒界を画定する境界線の一部またはすべてと重ならない場合、上記のようにして、画像データ上の当該結晶粒を取り囲むように隣接する複数の結晶粒のそれぞれについて結晶粒界を決定し、画像データ上の当該結晶粒の結晶粒界を画定する境界線の一部またはすべてと重ならない閉曲線の部分については、当該結晶粒を取り囲むように隣接する複数の結晶粒の結晶粒界を優先させることにより当該結晶粒の結晶粒界を決定することができる。
4.クリープ損傷度の診断
ボイラに多く用いられている低合金鋼は高延性材料であり、母材部においてはクリープ特有の粒界すべりによるボイドの発生は少なく、延性破壊の形態をとる。従って、クリープ変形はミクロ的には結晶粒の変形により担われていることになる。このことから、結晶粒の変形度合を損傷パラメーターとして定量化することによってクリープ損傷度を求めることができる。
【0016】
金属材料にクリープ損傷が発生すれば、一般に結晶粒は主応力方向に扁平化するので、その扁平程度(結晶粒の変形度)に基づいてクリープ損傷度を知ることが可能である。図3は、STPA24製の鋼管に7kg/mm2以下の応力を負荷した場合において、その鋼管表面のレプリカを採取して、そのレプリカを顕微鏡観察して写真撮影した複数個(約500個)の結晶粒を画像解析装置で処理することにより求めた結晶粒の変形度とクリープ損傷度の関係を示す図である。すなわち、図3(a)に示すように、結晶粒1の主応力方向の一方の長さをaiとし、他方の長さをbiとし、biをaiで除したもの(bi/ai)をα(変形度)とした場合に、図3(b)に示すように、そのαとクリープ損傷度の関係を得た。図3(b)において、実線、点線はそれぞれ顕微鏡視野内に存在する複数個(約500個)の結晶粒の変形度の最小値、最大値を示す。
【0017】
クリープ損傷度とは、消費された材料の寿命(所定の応力を負荷した場合において、試験開始からその時までに消費された時間)を材料の破断寿命(所定の応力を負荷した場合において、試験開始からクリープ破断するまでの時間)で除した数値をいう。クリープ損傷度=ゼロとは、クリープ損傷が全くない初期状態をいい、クリープ損傷度の数値がゼロから増えるに従ってクリープ損傷度が大きくなったことを示し、クリープ損傷度=1において、クリープ破断したことを示す。
【0018】
従って、結晶粒界決定手段により決定された結晶粒界から結晶粒の変形度を求めれば、図3(b)に一例として示すような結晶粒の変形度とクリープ損傷度との検定曲線に基づいて、当該観察対象である金属材料のクリープ損傷度を求めることができる。
【実施例】
【0019】
以下に本発明の実施例を説明するが、本発明は下記実施例に限定されるものではなく、本発明の技術的範囲を逸脱しない範囲において、適宜変形と修正が可能である。
1.材料組織観察装置の各構成要素を示す図面
図4は、本発明の材料組織観察装置の全体構成図である。図4において、2はレーザー顕微鏡、3は後記する第二台座と第三台座からなる水平方向移動機構、4はレーザー顕微鏡のメインコントローラー、5はレーザー顕微鏡の対物レンズを上下方向に移動させる移動機構のコントローラー、6は水平方向移動機構3のコントローラー、7はCCDカメラ、8は発行ダイオードによる照明機器、9はCCDカメラのコントローラー、10は被観察対象の材料組織のモニターおよびCCDカメラのモニター兼用の制御パソコンである。
【0020】
図5は、レーザー顕微鏡内の光路の概略斜視図である。図5において、11は半導体レーザー、12は光路、13は対物レンズ、14は画像センサーである。
【0021】
図6は、レーザー顕微鏡本体の概略構成図である。図6において、レーザー顕微鏡本体15は実質的に密閉構造であって、頂部には排熱フード16が取り付けられ、上下方向の筒体17は柔軟性に富むカバー18でほぼ完全に被覆されており、顕微鏡本体が外部と通じているのは対物レンズ13が上下方向に移動する箇所のみである。このように、本発明のレーザー顕微鏡は粉塵の影響を受けやすいという光学機器の欠点を考慮して、十分な防塵対策を施したので、粉塵による誤動作を起こしにくいという利点がある。一方、実質的に密閉構造であることにより、機器の作動に伴って発生する熱が内部にこもりやすいという欠点があるので、本発明は、フィン19の他に顕微鏡本体15の頂部に排熱フード16を取り付けている。この排熱フード16は中空の直方体形状であって、左右両側面と前・後面と上面および下面の一部から内部の熱が大量に放散されるので、フィン19とともに機器の温度上昇を抑える効果が期待できる。対物レンズ13は摺動部材20に内蔵されたステップモーターにより摺動部材20とともに筒体17内のガイド溝21に沿って上下方向に移動可能である。
【0022】
図7は、レーザー顕微鏡本体の傾動機構を示す概略斜視図である。図7において、柔軟性に富むカバー18(図6参照)の上から筒体17(図6参照)を挟持するようにして顕微鏡本体を支持する連結部材22(図11参照)に一体に固着された傾動部材23は、第一台座24の円弧状面25に突出するように刻設された溝部26に係合し、後記する螺子47を調節することによって、レーザー顕微鏡本体は円弧状面25に沿って両矢視27のいずれか一方の方向に傾動することが可能である。第一台座24は第二台座28に取り付けられている。
【0023】
図8は、第二台座28と、第二台座28下面に当接する第三台座29を示す斜視図である。30は可逆回転可能なステップモータを内蔵した第一摺動部材であり、ケーブル31により電源と接続されている。32は第三台座29に支持されたボールネジ(図9の番号33参照)を内蔵した第二摺動部材である。第一摺動部材30と第二摺動部材32は第二台座28と接続されており、第二摺動部材32に設けたボールナット(図9の番号34参照)が上記ボールネジにねじ込まれ、第一摺動部材30に内蔵したステップモータを一方の方向に回転して第三台座29に支持されたボールネジを駆動することで、第一摺動部材30および第二摺動部材32とともに第二台座28は、第三台座29上のガイド部材35に沿って右方にスライドし、第一摺動部材30に内蔵したステップモータを逆方向に回転して第三台座29に支持されたボールネジを駆動することで、第一摺動部材30および第二摺動部材32とともに第二台座28は、第三台座29上のガイド部材35に沿って左方にスライドするように構成されている。
【0024】
36は可逆回転可能なステップモータを内蔵した第三摺動部材であり、ケーブル37により電源と接続されている。38は第四台座39に支持されたボールネジ(図9の番号33参照)を内蔵した第四摺動部材である。第三摺動部材36と第四摺動部材38は第三台座29と接続されており、第四摺動部材38に設けたボールナット(図9の番号34参照)が上記ボールネジにねじ込まれ、第三摺動部材36に内蔵したステップモータを一方の方向に回転して第四台座39に支持されたボールネジを駆動することで、第三摺動部材36および第四摺動部材38とともに第三台座29は、第四台座39上のガイド部材40に沿って紙面手前方向にスライドし、第三摺動部材36に内蔵したステップモータを逆方向に回転して第四台座39に支持されたボールネジを駆動することで、第三摺動部材36および第四摺動部材38とともに第三台座29は、第四台座39上のガイド部材40に沿って紙面手前から離れる方向にスライドするように構成されている。ガイド部材35とガイド部材40は直角に交わるように配置されているので、第二台座28と第三台座29は水平面内において互いに直交する方向にスライドすることが可能である。
【0025】
図10は、本発明の材料組織観察装置を固定治具装置により被観察対象に取り付けた状態を示す正面図である。なお、CCDカメラ7と照明機器8とカバー18は省略されている。第四台座39は基台41に取り付けられ、さらに、基台41は左右のボルト42、42と紙面反対側のもう一本のボルト42の合計3本のボルトによって被観察対象である管体43に対して押圧され、さらに、ベルト44を管体43に巻き付け、ベルト44の両端部を鉤形部材45で係止し、鉤形部材45は連結部材46により基台41に連結されている。これらベルト44、鉤形部材45および連結部材46により固定治具装置が構成されている。ボルト42とベルト44の長さを調節することにより、様々な直径(例えば、φ1、φ2)の管体に固定することが可能である。螺子47は顕微鏡本体15を左右に傾動させるためのもので、螺子47を一方に回すことによって顕微鏡本体15を筒体17とともに右方に角度θ1だけ傾動させ、螺子47を逆方向に回すことによって顕微鏡本体15を筒体17とともに左方に角度θ2だけ傾動させることができる。
【0026】
図11は、本発明の材料組織観察装置の要部を示す側面図である。48は照明機器用電源、47aは図7に示す傾動機構により傾動させた顕微鏡本体を固定するための螺子である。
2.排熱フードによる放熱効果
本発明は図6に示すように、フィン19以外に放熱手段として顕微鏡本体15の頂部に排熱フード16を有しているので、排熱フードの有無による放熱効果について調査した。測温箇所は、図6において、フィン19の表面49と、排熱フードの上面50またはフレームの上面51(排熱フードがない場合)と、フレーム側面の前側の内部52と、フレーム側面の後側の内部53である。
【0027】
図12は排熱フードがない場合の温度推移を示し、図13は排熱フードがある場合の温度推移を示す。図12に示すように、排熱フードがない場合、フレーム上面の温度は約25℃であるが、フィンの表面温度は約43℃に達している。一方、図13に示すように、排熱フードを設けることによって、いずれの測定個所の温度もほぼ30℃±5℃の範囲に入り、表面最高温度は約8℃低下し、全体の温度差も小さくなっていることが分かる。
3.画像処理装置を用いたクリープ損傷度の診断
次に、レーザー顕微鏡による観察装置で得られる画像データを用いて結晶粒の変形度からクリープ損傷度を診断する方法について詳細に説明する。
(1)装置のセット
まず、図10に示すように、診断対象である管体43に対して固定治具装置を固定する。このとき、ボルト42の長さを適宜調整することにより、水平度を調整する。次に、レーザー顕微鏡を固定治具装置に取り付け、図11に示す状態にする。顕微鏡本体の大まかな水平方向の位置合わせを、図4のコントローラー6によりステップモータを駆動して、第二台座28と第三台座29(図8参照)を上記のようにスライドさせることによって行う。
【0028】
次に、図4において、制御パソコン10のモニター10aに映し出される画像を見ながら、コントローラー5によりステップモータを駆動して、カメラ本体の対物レンズを上下方向に適宜移動させることによって画像の焦点合わせを行う。また、隅部を診断するときは、図7に示す傾動機構により適宜の角度だけ顕微鏡本体を傾動させればよい。
【0029】
このとき、図11において、照明機器8の明度を調整することにより診断部位の明るさを調整しながら、CCDカメラ7で観察される診断部位の外観状態を制御パソコン10のモニター10aに映し出される画像で確認しながら、照明機器8の照明投入方向や明度を微調整しつつ、診断部位が明瞭に観察されるような状態を確保する。このようにして、診断部位のレーザー顕微鏡による観察画像を得るための準備が完了する。
【0030】
次に、診断部位に関する情報の入力を行う。この診断に関する情報としては、診断日時、診断設備(例えば、〇△株式会社の××発電所、第二ボイラー)および診断箇所(例えば、第一高圧パイプの第一ベント部)などのデータを予め制御パソコン10に入力しておく。また、必要に応じて、診断部位に前処理を施して結晶粒界を出現させる。
【0031】
以上で、診断前の準備が完了し、以後、パソコン10に組み込まれた中心点指定手段(第一・第二・第三中心点指定手段)、閉曲線設定手段(第一・第二・第三閉曲線設定手段)、閉曲線変形手段(第一・第二・第三閉曲線変形手段)、結晶粒界決定手段(第一・第二結晶粒界決定手段)、第一演算処理手段および第二演算処理手段により全自動でクリープ損傷度の診断を行うことができる。
(2)画像データの取り込み
診断対象である管体表面の観察映像をパソコンで取り扱うことのできる画像データとして図4のパソコン10に取り込む(図14(a))。
【0032】
このとき、観察映像がモノクロ映像の場合には、多階調の画像データ(濃淡データ)としてパソコンに取り込み、観察映像がカラーの場合、カラー画像からモノクロ画像に変換を行い、多階調の画像データ(濃淡データ)としてパソコンに取り込む。これにより、映像の濃淡情報(明暗の情報)を濃淡値(明るさの度合を数値化したもの)で表現された画像データとしてパソコンに取り込むことができる。
(3)ノイズの除去
ノイズを除去するために、この画像データに対して局所平均化法による平滑化を行う(図14(b))。
【0033】
局所平均化法による平滑化は、注目画素とその周辺画素の濃淡値の平均値をその注目画素の新たな値として計算する処理を、画像データのすべての画素について実施する処理であり、一般に、この処理によって画像データのノイズを除去することができる。
(4)中心点の指定と閉曲線の設定
ノイズ除去を行った後の画像データ上の任意の結晶粒において、粒内の点を中心点として指定し、この点から放射状に結晶粒の境界線探索の位置を設定し(図14(c))、境界線探索の線上の点を結ぶことにより閉曲線を設定する。
【0034】
例えば、図15(a)のように中心点61を含む最初の円形の閉曲線62を設定する。このときの閉曲線の大きさは結晶粒の大きさに合わせて設定する。つまり、中心点61から放射状に設定された探索線上で、且つ中心点から設定されたある距離の点を初期状態として、探索線上の隣り合う点を連続的につなぐことにより閉曲線を設定する。この閉曲線は、画像データ上の結晶粒界を画定する境界線の近傍に設定することが好ましいが、必ずしも境界線の内側に設定する必要はなく、境界線の外側に設定してもよい。
(5)結晶粒界を画定する境界線の探索手法と閉曲線の変形
結晶粒界の位置と濃淡分布の一例を示せば図16のとおりであって、結晶粒界は肉眼に見える写真では黒くなっているが、パソコン内の画像データでは黒い部分の数値は小さいので、図17に示すように、中心点63から放射状に設定された境界線探索のA1〜A16の各線上において、濃淡値の小さい点を探索する(図14(d))。以下、具体的な手法について説明する。
【0035】
例えば、図17において、放射線A16、A1およびA2において、各放射線が閉曲線と交わる点a16、a1、a2と中心点63とのそれぞれの距離L16、L1、L2を計算し、その平均距離Lm (L16とL1とL2の算術平均)を求める。さらに、その平均距離とその点の中心点からの距離の差を求める。境界線を決定するための評価値として、「画像データの濃淡値」と、「その点の中心点63からの距離と平均距離Lm との差の絶対値」に係数(例えば、定数α)を乗じたものの合計値を採用し、この合計値が小さい点を探索する。
【0036】
すなわち、放射線A1上の点a1 における画像データの濃淡値をc1とすれば、点a1の 評価値は、「c1+α|L1−Lm|」となる。 点a1 から放射線A1 上を外側に1画素離れた点a1’の画像データの濃淡値をc1’、点a1’と中心点63との距離をL1’とすると、点a1’の評価値は、「c1’+α|L1’−Lm|」となる。 また、点a1から放射線A1上を外側に2画素離れた点a1”の画像データの濃淡値をc1”、点a1”と中心点63との距離をL1”とすると、点a1”の評価値は、「c1”+α|L1”−Lm|」となる。さらに、点a1 から放射線A1上を内側に1画素離れた点や2画素離れた点についても評価値が計算できる。このようにして計算された5つの評価値のうち、最も小さな評価値をもつ点を探索する。
【0037】
次ぎに、放射線A1、A2およびA3において、各放射線が閉曲線と交わる点a1、a2、a3と中心点63とのそれぞれの距離L1、L2、L3を計算し、その平均距離Ln を求める 。その平均距離Lnは放射線A2上において点a2及びその近傍における評価値の小さな点を探索するために利用し、放射線A1上において上記のようにして求めた方法と同じようにして放射線A2上で最も小さな評価値をもつ点を探索する。
【0038】
さらに、放射線A3、A4、A5、・・・、A16上において、次々と、点a3、a4、a5、・・・、a16とその近傍の評価値を計算し、各放射線上における最も小さな評価値をもつ点を探索する。
【0039】
このようにして、放射線A1、A2、A3、・・・、A16上において探索した、最も小さな評価値をもつ点を、それぞれ、新たな点a1、a2、a3、・・・、a16として決定し、第1回目の計算を終了する。新たに決定した各点を連続的につなぐことにより、図15(b)に示すような変形した閉曲線を得る。
【0040】
次ぎに、第2回目の計算では、第1回目の計算で得られた閉曲線に対して、同上方法により、放射線A1、A2、A3、A4、・・・、A16上において、最も小さな評価値をもつ点を探索し、変形した閉曲線を得る。以後、第3回目、第4回目、・・・と計算していくと、計算の度に閉曲線が変形し、金属結晶粒の結晶粒界に近づいていく。境界線探索に関する第2回〜第10回の各計算結果による閉曲線の変形の様子を図15(c)〜(k)に示す。
【0041】
この境界線探索手法は、評価値が小さい点の探索を行うことを特徴としているが、必要以上に多く計算を繰り返しても、評価値に変化がなくなる場合があるので、一定以下の計算回数で終了するのが経済的である。
【0042】
もちろん、放射線の数は16に限定されるものではなく、任意の数を採用することができる。さらに、境界線を探索するための放射線の組み合わせは3本に限定されるものでなく、任意の複数本を採用することができるし、境界線を探索するための探索点の数は5に限定されるものではない。
(6)結晶粒界の決定
図15(k)に示す閉曲線が、図15(a)に示す結晶粒界を画定する境界線62aのすべてと重なった場合は、その閉曲線を結晶粒界として決定する(図14(e))。
(7)次の結晶粒界の処理の判定
そして、次の結晶粒界を処理するかどうかの判定を行い(図14(f))、イエスの場合は、図14(c)〜図14(e)のステップを繰り返し、ノーの場合は、結晶粒界領域を抽出し(図14(g))、処理は終了する(図14(h))。
【0043】
しかし、以上のような境界線探索処理によって得た閉曲線が結晶粒界を画定する境界線の一部と重ならない場合、例えば、図18(b)の閉曲線64が図18(a)の原画像データ上の結晶粒界を画定する境界線65の一部と重ならない場合または図19(b)の閉曲線66が図19(a)の原画像データ上の結晶粒界を画定する境界線67の一部と重ならない場合には、図18(c)または図19(c)のように同一の結晶粒内において、別の点を中心点として指定し、上記と同様にして複数の閉曲線を設定して変形させ、複数ある閉曲線64、68または66、69、70、71、72、73のうちで最も外側の曲線同士をつないだ閉曲線が原画像データの結晶粒界を画定する境界線65または67のすべてと重なった場合に、最も外側の曲線をつないだ閉曲線を結晶粒界と決定して、図18(d)または図19(d)の白色部分のように結晶粒形状が決定される。
【0044】
また、画像ノイズなどにより当該結晶粒の形状を正確に決定することができない場合、すなわち、図20(a)に示すように、結晶粒Aにおいて上記のようにして変形することによって得た閉曲線が画像データ上の結晶粒Aの結晶粒界を画定する境界線の一部と重ならない場合(点線で示すように、境界線よりはみ出た部分が結晶粒82、83、85の内部まで達している)、結晶粒Aを取り囲むように隣接する結晶粒81、82、83、84、85、86のそれぞれにおいて上記方法により結晶粒界を決定し、画像データ上の結晶粒Aの結晶粒界を画定する境界線の一部と重ならない閉曲線の部分については、結晶粒Aを取り囲むように隣接する結晶粒82、83、85の結晶粒界を優先させることにより結晶粒Aの結晶粒界を決定することができる。
【0045】
また、図20(b)に示すように、結晶粒Aにおいて上記のようにして変形することによって得た閉曲線が画像データ上の結晶粒Aの結晶粒界を画定する境界線の一部と重ならない場合(点線で示すように、境界線よりはみ出た部分が結晶粒82の内部まで達している)、結晶粒Aを取り囲むように隣接する結晶粒81、82、83、84、85、86のそれぞれにおいて上記方法により結晶粒界を決定し、画像データ上の結晶粒Aの結晶粒界を画定する境界線の一部と重ならない閉曲線の部分については、結晶粒Aに隣接する結晶粒82の結晶粒界を優先させることにより結晶粒Aの結晶粒界を決定することができる。
【0046】
これらの作業を繰り返して行い、すべての結晶粒形状の決定が完了した後、個々の結晶粒の形状からアスペクト比、フェレ径比、円相当径、面積、周長などの数値データを算出することができる。
(8)結晶粒の変形度の演算
以上のようにして決定された結晶粒界に基づいて、図3(a)に示すように、結晶粒1の主応力方向の一方の長さaiと、他方の長さbiと、biをaiで除した数値(変形度=α)をパソコン10の第一演算処理手段により求める。
(9)クリープ損傷度の評価
パソコン10の記憶手段には、例えば、図3(b)に示すような診断対象と同一材料についてのクリープ損傷度と結晶粒の変形度との検定曲線を記憶させておき、第二演算処理手段によって、第一演算処理手段で求めた結晶粒の変形度から上記検定曲線に基づいてクリープ損傷度を求める。同時に、図4に示すパソコン10のモニター10aの画面上に、上記のようにして求めた診断部位の結晶粒の変形度を検定曲線上に表示したものを映し出す。必要があれば、パソコン10に接続したプリンタにプリントアウトすることができる。
【0047】
本発明によれば、以上のようにして、実際の現場において簡単且つ短時間にクリープ損傷度を診断することができる。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明は、ボイラ余寿命診断やクリープセンサ(例えば、特許第3517229号参照)を用いた各種構造部材の損傷評価に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】パソコンに取り込んだ金属組織写真の画像データの一例を示す図である。
【図2】図1の画像データに基づいて本発明により得た結晶粒界の例を示す図である。
【図3】図3(a)(b)は、結晶粒変形法によりクリープ損傷度を求める方法を説明する図である。
【図4】本発明の材料組織観察装置の全体構成図である。
【図5】レーザー顕微鏡内の光路の概略斜視図である。
【図6】レーザー顕微鏡本体の概略構成図である。
【図7】レーザー顕微鏡本体の傾動機構を示す概略斜視図である。
【図8】第二台座と、第二台座下面に当接する第三台座を示す斜視図である。
【図9】ボールネジとボールナットの螺合状態を示す斜視図である。
【図10】本発明の材料組織観察装置を固定治具装置により被観察対象に取り付けた状態を示す正面図である。
【図11】本発明の材料組織観察装置の要部を示す側面図である。
【図12】排熱フードがない場合のレーザー顕微鏡の各部の温度推移である。
【図13】排熱フードがある場合のレーザー顕微鏡の各部の温度推移である。
【図14】本発明のパソコンによる画像処理ステップの一例を示す図である。
【図15】図15(a)〜(k)は、本発明により結晶粒内の閉曲線を変形させる一例を示す図である。
【図16】結晶粒界の位置と濃淡分布の一例を示す図である。
【図17】閉曲線上の点から結晶粒界を画定する境界線を探索する方法を説明する図である。
【図18】図18(a)〜(d)は、画像データに基づいて本発明により結晶粒界を決定する他の例を示す図である。
【図19】図19(a)〜(d)は、画像データに基づいて本発明により結晶粒界を決定する、さらに他の例を示す図である。
【図20】図20(a)(b)は、画像データに基づいて本発明により結晶粒界を決定する、さらに他の例を示す図である。
【図21】従来の画像処理技術により得られた結晶粒界を示す図である。
【符号の説明】
【0050】
1 結晶粒
2 レーザー顕微鏡
3 水平方向移動機構
4 レーザー顕微鏡のメインコントローラー
5 対物レンズ移動機構のコントローラー
6 水平方向移動機構のコントローラー
7 CCDカメラ
8 照明機器
9 CCDカメラのコントローラー
10 パソコン
11 半導体レーザー
12 光路
13 対物レンズ
14 画像センサー
15 レーザー顕微鏡本体
16 排熱フード
17 筒体
18 カバー
19 フィン
20 摺動部材
21 ガイド溝
22 連結部材
23 傾動部材
24 第一台座
25 円弧状面
26 溝部
28 第二台座
29 第三台座
30 第一摺動部材
31 ケーブル
32 第二摺動部材
33 ボールネジ
34 ボールナット
35 ガイド部材
36 第三摺動部材
37 ケーブル
38 第四摺動部材
39 第四台座
40 ガイド部材
41 基台
42 ボルト
43 管体
44 ベルト
45 鉤形部材
46 連結部材
47 螺子
47a 螺子
48 照明機器用電源
49 フィンの表面
50 排熱フードの上面
51 フレームの上面
52 フレーム側面の前側の内部
53 フレーム側面の後側の内部
61 中心点
62 閉曲線
63 中心点
62a 境界線
64 閉曲線
65 境界線
66 閉曲線
67 境界線
68 閉曲線
69 閉曲線
70 閉曲線
71 閉曲線
72 閉曲線
73 閉曲線
81 結晶粒
82 結晶粒
83 結晶粒
84 結晶粒
85 結晶粒
86 結晶粒

【特許請求の範囲】
【請求項1】
密閉構造の顕微鏡本体内に設けられてレーザーを発信する半導体レーザーと、この半導体レーザーから発信されたレーザーを屈曲させて導く上記顕微鏡本体内に設けられた光路と、この光路の先端部に取り付けられて上下方向に移動可能な対物レンズと、上記光路に設けられて反射するレーザーを受信する画像センサと、上記顕微鏡本体を左右方向に傾動可能に支持する第一台座と、この第一台座が取り付けられた第二台座と、この第二台座下面に当接する第三台座を備え、第二台座と第三台座は直交する2軸方向に移動可能であって、対物レンズ、第二台座および第三台座を移動させる移動機構と、顕微鏡本体を傾動させる傾動機構を備え、さらに、被観察対象に固定するための固定治具装置を有することを特徴とする材料組織観察装置。
【請求項2】
顕微鏡本体頂部に排熱フードを取り付けたことを特徴する請求項1記載の材料組織観察装置。
【請求項3】
画像処理装置に取り込まれた金属組織写真の画像データに基づいて材料組織の観察をする装置であって、画像データ上の結晶粒界を画定する境界線の内部に最初の位置である中心点を指定する中心線指定手段と、上記中心点を含む閉曲線を境界線の近傍に設定する閉曲線設定手段と、上記閉曲線近傍の画像データの濃淡情報に基づいて閉曲線を変形する閉曲線変形手段と、変形した閉曲線が画像データ上の結晶粒界を画定する境界線のすべてと重なった場合に当該閉曲線を結晶粒界とする結晶粒界決定手段と、結晶粒界決定手段により決定された結晶粒界から結晶粒の変形度を求める第一演算処理手段と、記憶手段に予め記憶された同一材料のクリープ損傷度と結晶粒の変形度との検定曲線に基づいて第一演算処理手段で求めた結晶粒の変形度からクリープ損傷度を求める第二演算処理手段を有することを特徴とする材料組織観察装置。
【請求項4】
画像処理装置に取り込まれた金属組織写真の画像データに基づいて材料組織の観察をする装置であって、画像データ上の結晶粒界を画定する境界線の内部に最初の位置である第一中心点を指定する第一中心点指定手段と、第一中心点を含む第一閉曲線を境界線の近傍に設定する第一閉曲線設定手段と、第一閉曲線近傍の画像データの濃淡情報に基づいて第一閉曲線を変形する第一閉曲線変形手段と、変形した第一閉曲線が画像データ上の結晶粒界を画定する境界線の一部と重ならない場合に同一結晶粒の内部の第一中心点とは異なる位置に一つまたは二つ以上の別の中心点を指定する第二中心点指定手段と、第一中心点とは異なる中心点を含む一つまたは二つ以上の閉曲線を境界線の近傍に設定する第二閉曲線設定手段と、当該閉曲線近傍の画像データの濃淡情報に基づいて閉曲線を変形する第二閉曲線変形手段と、変形した複数の閉曲線のうち最も外側の曲線をつないだ閉曲線が画像データ上の結晶粒界を画定する境界線のすべてと重なった場合に境界線のすべてと重なった閉曲線を結晶粒界とする結晶粒界決定手段と、結晶粒界決定手段により決定された結晶粒界から結晶粒の変形度を求める第一演算処理手段と、記憶手段に予め記憶された同一材料のクリープ損傷度と結晶粒の変形度との検定曲線に基づいて第一演算処理手段で求めた結晶粒の変形度からクリープ損傷度を求める第二演算処理手段を有することを特徴とする材料組織観察装置。
【請求項5】
画像処理装置に取り込まれた金属組織写真の画像データに基づいて材料組織の観察をする装置であって、画像データ上の当該結晶粒の結晶粒界を画定する境界線の内部に最初の位置である中心点を指定する第一中心点指定手段と、上記中心点を含む閉曲線を境界線の近傍に設定する第一閉曲線設定手段と、上記閉曲線近傍の画像データの濃淡情報に基づいて閉曲線を変形する第一閉曲線変形手段と、変形した閉曲線が画像データ上の当該結晶粒の結晶粒界を画定する境界線の一部またはすべてと重ならない場合に画像データ上の当該結晶粒を取り囲むように隣接する複数の結晶粒のそれぞれについて結晶粒界を画定する境界線の内部に最初の位置である中心点を指定する第二中心点指定手段と、上記中心点を含む閉曲線を境界線の近傍に設定する第二閉曲線設定手段と、上記閉曲線近傍の画像データの濃淡情報に基づいて閉曲線を変形する第二閉曲線変形手段と、変形した閉曲線が画像データ上の結晶粒界を画定する境界線のすべてと重なった場合に境界線のすべてと重なった閉曲線が当該結晶粒を取り囲むように隣接する各結晶粒の結晶粒界であるとする第一結晶粒界決定手段と、画像データ上の当該結晶粒の結晶粒界を画定する境界線の一部またはすべてと重ならない閉曲線の部分については当該結晶粒を取り囲むように隣接する複数の結晶粒の結晶粒界を優先させることにより当該結晶粒の結晶粒界を決定する第二結晶粒界決定手段と、第一および第二結晶粒界決定手段により決定された結晶粒界から結晶粒の変形度を求める第一演算処理手段と、記憶手段に予め記憶された同一材料のクリープ損傷度と結晶粒の変形度との検定曲線に基づいて第一演算処理手段で求めた結晶粒の変形度からクリープ損傷度を求める第二演算処理手段を有することを特徴とする材料組織観察装置。
【請求項6】
画像処理装置に取り込まれた金属組織写真の画像データに基づいて材料組織の観察をする装置であって、画像データ上の当該結晶粒の結晶粒界を画定する境界線の内部に最初の位置である中心点を指定する第一中心点指定手段と、上記中心点を含む閉曲線を境界線の近傍に設定する第一閉曲線設定手段と、上記閉曲線近傍の画像データの濃淡情報に基づいて閉曲線を変形する第一閉曲線変形手段と、変形した閉曲線が画像データ上の当該結晶粒の結晶粒界を画定する境界線の一部またはすべてと重ならない場合に画像データ上の当該結晶粒を取り囲むように隣接する複数の結晶粒のそれぞれについて結晶粒界を画定する境界線の内部に最初の位置である第二中心点を指定する第二中心点指定手段と、第二中心点を含む第二閉曲線を境界線の近傍に設定する第二閉曲線設定手段と、第二閉曲線近傍の画像データの濃淡情報に基づいて第二閉曲線を変形する第二閉曲線変形手段と、変形した第二閉曲線が画像データ上の結晶粒界を画定する境界線の一部と重ならない場合に同一結晶粒の内部に第二中心点とは異なる位置に一つまたは二つ以上の別の中心点を指定する第三中心点指定手段と、第二中心点とは異なる中心点を含む一つまたは二つ以上の閉曲線を境界線の近傍に設定する第三閉曲線設定手段と、当該閉曲線近傍の画像データの濃淡情報に基づいて閉曲線を変形する第三閉曲線変形手段と、変形した複数の閉曲線のうち最も外側の曲線をつないだ閉曲線が画像データ上の結晶粒界を画定する境界線のすべてと重なった場合に境界線のすべてと重なった閉曲線が当該結晶粒を取り囲むように隣接する各結晶粒の結晶粒界であるとする第一結晶粒界決定手段と、画像データ上の当該結晶粒の結晶粒界を画定する境界線の一部またはすべてと重ならない閉曲線の部分については当該結晶粒を取り囲むように隣接する複数の結晶粒の結晶粒界を優先させることにより当該結晶粒の結晶粒界を決定する第二結晶粒界決定手段と、第一および第二結晶粒界決定手段により決定された結晶粒界から結晶粒の変形度を求める第一演算処理手段と、記憶手段に予め記憶された同一材料のクリープ損傷度と結晶粒の変形度との検定曲線に基づいて第一演算処理手段で求めた結晶粒の変形度からクリープ損傷度を求める第二演算処理手段を有することを特徴とする材料組織観察装置。
【請求項7】
画像処理装置に取り込まれる金属組織写真の画像データを、請求項1記載の画像センサからの画像データとしたことを特徴とする請求項3、4、5または6記載の材料組織観察装置。





【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【公開番号】特開2007−41395(P2007−41395A)
【公開日】平成19年2月15日(2007.2.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−226845(P2005−226845)
【出願日】平成17年8月4日(2005.8.4)
【出願人】(000000974)川崎重工業株式会社 (1,710)
【Fターム(参考)】