説明

杭の打設方法、杭および杭打設治具

【課題】 杭の鉛直精度を簡易に保ち打設することができる杭の打設方法、杭および杭打設治具を提供する。
【解決手段】 杭10を、先端に底部12を有する有底中空形状とし、前記杭10内に棒状の杭打設治具15を挿入して前記杭10内の底部12に当接させ、前記杭打設治具15の上部に下降力を与えて杭10の前記底部12を押し下げることで、前記杭10を地盤20に貫入させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば、建物等の構造物を支える杭の打設方法、杭および杭打設治具に関し、杭の鉛直精度を簡易に保ち打設することができる技術に関する。
【背景技術】
【0002】
構造物を支える杭を地盤に打設する技術が種々実用に供されている(例えば、特許文献1)。図9は、従来例の杭の打設方法を段階的に示す図である。従来、杭1の鉛直精度を確保するため、打設時の杭1の鉛直精度を確認しながら、この杭1の上部つまり杭頭部1aに下降力を与えて地盤2に打設していた。打設中に杭1の鉛直精度の狂いが確認された場合には、前記下降力を与える方向d1を、鉛直方向に対し傾斜する方向に調整して修正していた。
【特許文献1】特開2002−21067号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従来技術の問題点は、以下の通りである。
・杭打機オペレータの熟練度に頼っている。単に、前記下降力を与える方向を鉛直方向に管理するだけでは、杭を鉛直に打設できず、打設中常に、杭の鉛直精度の確認および修正が必要となる。
・前記杭頭部に下降力を与えているため、力の方向が僅かに狂っただけでも、杭の鉛直精度が狂う。
・地盤に存在する軽石等の障害物により、杭の鉛直精度が狂いやすい。
・杭の鉛直精度を前述のように修正した場合には、図9(c)に示すように、例えば、杭の長手方向途中部1bに不所望に変形が発生するだけでなく、杭1の打設後にも残留応力が生じる。
【0004】
この発明の目的は、杭の鉛直精度を簡易に保ち打設することができる杭の打設方法、杭および杭打設治具を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この発明の杭の打設方法は、杭を、先端に底部を有する有底中空形状とし、前記杭内に棒状の杭打設治具を挿入して前記杭内の前記底部に当接させ、前記杭打設治具の上部に下降力を与えて前記杭の前記底部を押し下げることで、前記杭を地盤に貫入させることを特徴とする。
この発明において、「打設」とは、杭を地盤に打撃貫入していく概念と、杭をその軸心回りに回転させて地盤に貫入していく概念とを含む。
【0006】
この構成によると、杭は有底中空形状である。杭内に棒状の杭打設治具を挿入してこの杭打設治具の先端を杭内の底部に当接させ、杭打設治具の上部に下降力を与える。これにより、杭の底部を押し下げる。よって、杭の底部が地盤に貫入していき、杭の底部以外の大部分は、底部に引っ張られて地盤に貫入されていく。換言すれば、杭頭部等に下降力を与えることなく、杭打設治具を用いて杭の底部に下降力を伝達している。
したがって、杭打設治具で杭の底部に鉛直方向下方に下降力を与えることで、打設時の杭の鉛直精度を容易に確保することができる。軽石等に杭の先端が干渉しても、杭の鉛直精度を容易に修正することができる。杭打機オペレータは、打設時において、杭打設治具の鉛直精度を確保するだけで、従来技術のものより鉛直精度の高い杭を打設することができる。杭の底部を杭打設治具で押し下げるので、杭頭部を押し下げる場合と異なり、杭に軸方向の圧縮力が作用しない。そのため、杭の長手方向途中部が不所望に変形することがなく、杭の打設後に残留応力が生じることを未然に防止することが可能となる。また、杭の打設作業を簡単化して工期の短縮を図ることが可能となる。
【0007】
この発明の杭は、管部およびこの管部の先端に設けられて外面が先細りとなる底部を有する有底中空形状であり、前記底部の内底面に、前記管部内に挿入される棒状の杭打設治具の先端を傾き許容状態で、かつ位置ずれ阻止状態に当接させる調心治具受け部を設けたことを特徴とする。
【0008】
この構成によると、棒状の杭打設治具を管部内に挿入し、前記内底面の調心治具受け部に、杭打設治具の先端を当接させて、杭の先端となる底部を押すことで、打設が行える。そのため、鉛直精度を確保し易く、また障害物に当っても杭が折れ曲がり難い。また、このとき、杭打設治具の先端は、前記内底面に対し相対的に傾き許容状態で、かつ位置ずれ阻止状態になっている。このような杭打設治具の先端を当接させる、いわゆる調心性のある調心治具受け部を前記内底面に設けたため、杭の打設時において、管部の底部に鉛直方向下方への下降力を確実に与えることが可能となる。また、杭打設治具の先端を調心性のある調心治具受け部に当接させるので、杭打設治具を円滑に調心治具受け部に当接させることができるうえ、打設時に、この杭打設治具の先端が不所望に位置ずれする等の不具合を未然に防止することができる。
前記底部は、外面が先細りとなっているので、杭打設治具の先端に内底面が押圧等されることにより、鉛直方向下方へ推進し易くなる。このように杭の打設作業を簡単化して工期の短縮を図ることが可能となる。その他請求項1と同様の作用、効果を奏する。
【0009】
この発明の杭打設治具は、有底中空形状の杭を地盤に打設する杭打設治具であって、棒状の治具本体と、この治具本体の先端に設けられた調心押し当て部とを有し、この調心押し当て部は、前記杭の内底面に設けられた凸球面状または凹球面状の調心治具受け面に嵌まり合う凹球面状または凸球面状の押し当て面を有することを特徴とする。
【0010】
この構成によると、杭打設治具における、治具本体の先端の調心押し当て部が、杭の内底面の調心治具受け面に嵌まる。この場合において、調心押し当て部の凹球面状の押し当て面が凸球面状の調心治具受け面に嵌まり合うか、または、調心押し当て部の凸球面状の押し当て面が凹球面状の調心治具受け面に嵌まり合う。これにより、杭の打設時において、杭の内底面に鉛直方向下方への下降力を確実に与えることが可能となる。また、打設時において、調心押し当て部の押し当て面が、調心治具受け面に対し不所望に離脱することを防止することができる。よって、打設作業を簡単化して工期の短縮を図ることが可能となる。その他請求項1と同様の作用、効果を奏する。
【発明の効果】
【0011】
この発明の杭の打設方法は、杭を、先端に底部を有する有底中空形状とし、前記杭内に棒状の杭打設治具を挿入して前記杭内の前記底部に当接させ、前記杭打設治具の上部に下降力を与えて前記杭の前記底部を押し下げることで、前記杭を地盤に貫入させるため、杭の鉛直精度を簡易に保ち打設することができる。
この発明の杭は、管部およびこの管部の先端に設けられて外面が先細りとなる底部を有する有底中空形状であり、前記底部の内底面に、前記管部内に挿入される棒状の杭打設治具の先端を傾き許容状態で、かつ位置ずれ阻止状態に当接させる調心治具受け部を設けたため、杭の鉛直精度を簡易に保ち打設することができる。
この発明の杭打設治具は、有底中空形状の杭を地盤に打設する杭打設治具であって、棒状の治具本体と、この治具本体の先端に設けられた調心押し当て部とを有し、この調心押し当て部は、前記杭の内底面に設けられた凸球面状または凹球面状の調心治具受け面に嵌まり合う凹球面状または凸球面状の押し当て面を有するため、杭の鉛直精度を簡易に保ち打設することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
この発明の第1の実施形態を図1ないし図4と共に説明する。先ず、杭および杭打設治具等の構造について説明し、その後、杭の打設方法について説明する。
図1、図2に示すように、杭10は、管部11と底部12とを有する有底中空形状であり、例えば、略円筒形状の鋼管等からなる。管部11は、この長手方向一端つまり基端から長手方向他端つまり先端にわたって略同一径となるように形成されている。この管部11の先端に底部12が一体に設けられている。底部12は、先端に向かうに従って先細りとなる円錐形状に形成されている。ただし、底部12の形状は、円錐形状に限定されるものではない。
【0013】
前記管部11内に、後述する棒状の杭打設治具15を挿入可能になっており、底部12の内底面12aに、調心治具受け部16を設けている。この調心治具受け部16は、凸球面状の調心治具受け面16aを有し、この調心治具受け面16aは、図2(b)に示すように、内底面12aの中央部に形成される。換言すれば、調心治具受け面16aの中心は管部11の軸心L1に一致する。また、底部12の円錐面12bの頂部12baも管部11の軸心L1に一致する。杭打設治具15の治具本体17の先端に、凹球面状の調心押し当て面18aを有する調心押し当て部18が設けられ、前記調心治具受け面16aに、調心押し当て面18aが嵌まり合うように構成されている。
【0014】
調心治具受け面16aの凸球面の曲率半径は、調心押し当て面18aの凹球面の曲率半径と略同一または凹球面の曲率半径よりも若干小さくなるように形成されている。また、調心治具受け面16aの凸球面に、調心押し当て面18aの凹球面が嵌まり合った状態において、調心治具受け部16に対し、調心押し当て部18が相対的に角変位可能に当接される。
また、調心治具受け部16は、管部11内に挿入される棒状の杭打設治具15の先端を傾き許容状態で、かつ位置ずれ阻止状態に当接させる機能を有する。
【0015】
杭打設治具15は、この杭打設治具15を略鉛直方向に支持したうえで、図1(a)に示すように、杭打機19により下降力を与えられる。前記「略鉛直方向」は鉛直方向をも含む。この下降力により、杭10を地盤20に打設するようになっている。図2(a)に示すように、この杭打設治具15は、棒状の治具本体17と、この治具本体17の先端に設けられた調心押し当て部18とを有する。
【0016】
調心押し当て部18は円柱形状に形成されるうえ、治具本体17の軸心と同一軸心となる。この円柱の外径寸法d2は、治具本体17の外径寸法d3よりも大径で且つ、管部11の内径寸法d4よりも所定長さ小径に形成される。これにより、図1に示すように、調心押し当て部18と、治具本体17の大部分とを、管部11内に円滑に挿入し得る。調心押し当て部18の下面において、前記調心治具受け面16aの凸球面に嵌合する凹球面状の調心押し当て面18aが設けられている。この調心押し当て面18aの中心は、治具本体17の軸心に一致するように形成されている。
【0017】
調心治具受け面16aの凸球面に、調心押し当て面18aの凹球面が嵌まり合った状態において、調心押し当て部18の外径面が管部11の内径面に干渉することなく、調心治具受け部16に対し、調心押し当て部18が相対的に角変位可能に当接する。また、調心治具受け面16aに調心押し当て面18aが嵌まり合った状態において、図1に示すように、治具本体17の上部17aが管部11外に所定小距離突出するようになっている。これにより、図1(a)に示すように、杭打機19により、治具本体17の上部17aに下降力を付与し得る。
【0018】
杭の打設方法について説明する。
図1(a)、図2(a)に示すように、管部11内に杭打設治具15を挿入して、底部12の調心治具受け部16の調心治具受け面16aに、調心押し当て面18aが嵌まり合うように当接させる。この嵌合状態において、治具本体17を略鉛直方向に支持したうえで、この治具本体17の上部17aに下降力を与えてこの杭10の底部12を押し下げる。この場合、杭打機19により前記上部17aに振動を与えながら杭10の底部12を押し下げるようにしても良いし、杭打機19により前記上部17aに下降力を与えて杭10の底部12を圧入させるようにしても良い。
よって、杭10の底部12が地盤20に貫入していき、杭10の底部12以外の大部分は、底部12に引っ張られて地盤20に貫入していく。換言すれば、杭頭部21等に下降力を与えることなく、杭打設治具15を用いて杭10の底部12に下降力を伝達している。これにより、順次、図1(a)〜図1(d)に示すように、杭10を地盤20に次第に貫入させていく。その後、杭打設治具15を杭10から取り外し再利用に供する。構造物22に応じて、複数本の杭10が図3、図4に示すように所定間隔おきに打設される。その後、例えば、各管部11の杭頭部21に、金物23等を介して基礎コンクリート24等を形成する。
【0019】
以上説明した第1の実施形態に係る杭の打設方法によれば、杭10内に棒状の杭打設治具15を挿入してこの杭打設治具15の先端を杭10内の底部12に当接させ、治具本体17を鉛直方向に支持したうえで、杭打設治具15の上部に下降力を与える。これにより、杭10の底部12を押し下げる。よって、杭10の底部12が地盤20に貫入していき、杭10の底部12以外の大部分は、底部12に引っ張られて地盤20に貫入されていく。換言すれば、杭頭部21等に下降力を与えることなく、杭打設治具15を用いて杭10の底部12に下降力を伝達している。
【0020】
したがって、杭打設治具15で杭10の底部12に鉛直方向下方に下降力を与えることで、打設時の杭10の鉛直精度を容易に確保することができる。地盤20に埋設された軽石等に杭10の先端が干渉しても、杭10の鉛直精度を容易に修正することができる。杭打機オペレータは、打設時において、杭打設治具15の鉛直精度を確保するだけで、従来技術のものより鉛直精度の高い杭10を打設することができる。杭10の底部12を杭打設治具15で押し下げるので、杭頭部21を押し下げる場合と異なり、杭10に軸方向の圧縮力が作用しない。そのため、杭10の長手方向途中部が不所望に変形することがなく、杭10の打設後に残留応力が生じることを未然に防止することが可能となる。また、杭10の打設作業を簡単化して工期の短縮を図ることが可能となる。
【0021】
本実施形態に係る杭10の構成によると、棒状の杭打設治具15を管部11内に挿入し、内底面12aの調心治具受け部16に、杭打設治具15の先端を当接させて、杭10の先端となる底部12を押すことで、打設が行える。そのため、鉛直精度を確保し易く、また障害物に当っても杭10が折れ曲がり難い。また、杭打設治具15の先端は、内底面12aに対し相対的に傾き許容状態で、かつ位置ずれ阻止状態になっている。このような杭打設治具15の先端を当接させる、いわゆる調心性のある調心治具受け部16を前記内底面12aに設けたため、杭10の打設時において、管部11の底部12に鉛直方向下方への下降力を確実に与えることが可能となる。また、杭打設治具15の先端を調心性のある調心治具受け部16に当接させるので、杭打設治具15を円滑に調心治具受け部16に当接させることができるうえ、打設時に、この杭打設治具15の先端が不所望に位置ずれする等の不具合を未然に防止することができる。
前記杭10は中空形状であるので中実の杭よりも、軽量化を図り、搬送容易となり、打設作業の作業効率を高めることができる。
【0022】
前記底部12は、外面が先端に向かうに従って先細りとなる円錐形状に形成されているので、杭打設治具15の先端に内底面12aが押圧されることにより、鉛直方向下方へ推進し易くなる。底部12の円錐面12bが、地盤20に埋設された軽石等に干渉して杭10が曲がろうとしても、底部12等の円周方向特定箇所の掘削抵抗が不所望に大きくなる。この状態において、杭打設治具15の鉛直精度を確保して打設していくと、底部12等における円周方向の掘削抵抗の均一化が図られる。これにより、調心治具受け面16a、調心押し当て面18a間の嵌合状態を維持しつつ、杭打設治具15の押し当て面18aに対して、杭10の調心治具受け面16aが調心して杭10が鉛直方向に復帰する。このように打設時において、杭打設治具15の鉛直精度を確保するだけで、従来技術のものより鉛直精度の高い杭を打設することができる。この場合において、調心治具受け面16a、調心押し当て面18a間にグリース、油等の潤滑剤を塗布しておいても良い。この場合、杭10の調心治具受け面16aの調心性をより向上させることが可能となる。
【0023】
前記杭打設治具15は、棒状の治具本体17と、この治具本体17の先端に設けられた調心押し当て部18とを有し、この調心押し当て部18は、前記杭10の内底面12aに設けられた凸球面状の調心治具受け面16aに嵌まり合う凹球面状の押し当て面18aを有するため、杭10の打設時において、杭10の内底面12aに鉛直方向下方への下降力を確実に与えることが可能となる。また、打設時において、調心押し当て部18の押し当て面18aが、調心治具受け面16aに対し不所望に離脱することを防止することができる。よって、打設作業を簡単化して工期の短縮を図ることが可能となる。
【0024】
次に、この発明の第2の実施形態を図5ないし図7と共に説明する。以下の説明においては、各形態で先行する形態で説明している事項に対応している部分には同一の参照符を付し、重複する説明を略する場合がある。構成の一部のみを説明している場合、構成の他の部分は、先行して説明している形態と同様とする。実施の各形態で具体的に説明している部分の組合せばかりではなく、特に組合せに支障が生じなければ、実施の形態同士を部分的に組合せることも可能である。
【0025】
第2の実施形態においては、回転圧入式の杭10Aおよびその杭打設治具15Aを適用している。また、棒状の杭打設治具15Aに上下方向の下降力を与えると共に、この杭打設治具15Aに回転駆動力を与える減速機モータM等が用いられる。この杭10Aにおいて、図6に示すように、底部12の基端部分の外周面には、半径方向外方に突出する支持翼部25であって概ね一周程度にわたる螺旋状の支持翼部25が設けられている。図6、図7に示すように、底部12の内底面12aに、調心治具受け部16Aを設け、この調心治具受け部16Aは、凹球面状の調心治具受け面16Aaを有する。杭打設治具15Aの治具本体17Aの先端に、凸球面状の調心押し当て面18Aaを有する調心押し当て部18Aが設けられ、前記凹球面状の調心治具受け面16Aaに、調心押し当て面18Aaが嵌まり合うように構成されている。
【0026】
これら調心押し当て部18A、調心治具受け部16Aには、前記減速機モータM等からの回転駆動力を伝達する正面視十字形状の動力伝達部18Ab、被動力伝達部16Abが形成されている。動力伝達部18Abは、例えば、プラスのドライバーの先端部と同様の形状を成している。被動力伝達部16Abは、動力伝達部18Abに噛み合う十字溝に形成されている。ただし、このような形状に限定されるものではない。被動力伝達部16Abに動力伝達部18Abが噛み合い可能に構成され、この噛み合った状態において減速機モータM等からの回転駆動力を杭打設治具15Aを介して杭10Aに伝達し、この杭10Aを軸線回りに回転させる。これにより、図5(a)〜図5(c)に示すように、支持翼部25および円錐形状の円錐面12b等により土砂が掘削され、杭10Aが地盤20に次第に貫入されていく。
【0027】
以上説明した第2の実施形態によれば、治具本体17Aを鉛直方向に支持したうえで、杭打設治具15Aをこの軸心回りに回転させる。これにより、杭10Aの底部12を鉛直方向下方に掘進させる。よって、杭10Aの底部12が地盤20に貫入していき、杭10Aの底部12以外の大部分は、底部12に引っ張られて地盤20に貫入されていく。このように、第2の実施形態においても、杭頭部21等に下降力を与えることなく、杭打設治具15Aを用いて杭10Aの底部12に下降力を伝達している。したがって、図1に示す第1の実施形態と同様の効果を奏する。
【0028】
この発明の他の実施形態に係る杭および杭打設治具を、図8と共に説明する。
図8(a)に示すように、杭本体13と底部材14とを別体に構成し、この杭本体13の先端13aに底部材14の基端を、溶接W、図示外のボルトナット等により接合しても良い。この場合、杭本体13を汎用性の高い鋼管を適用することができ、杭全体の製作コストの低減を図ることができる。また、底部材14を鋼により形成し、杭本体13を鋼以外の材料、例えば、プラスチック等の樹脂材料、木材等により形成しても良い。その他、底部材14を例えばセラミックス等の非金属材料により形成しても良い。これらの場合、杭の軽量化を図り搬送容易となり、打設作業の作業能率を高めることができる。
また、杭本体13を一体のものではなく、長手方向一定間隔おき又は適当間隔おきに繋いだものを適用しても良い。この場合においても、前述のような溶接やボルトナット等を用いて杭本体分割体を接合することができる。
【0029】
図2(a)に示す構成に代えて、図8(b)に示すように、調心治具受け面16Aaの凹球面に嵌合する凸球面状の調心押し当て面18Aaを設けても良い。この場合においても、第1の実施形態と同様の作用、効果を奏する。
また、図8(c)に示すように、底部12の内底面12aの中央部に円径孔12hを形成し、この円径孔12hに、杭打設治具15の先端が嵌合するようにしても良い。この場合において、前記円径孔12hは、杭打設治具15の先端の外径寸法よりもやや大径に形成されている。この円径孔12hが大径に形成されることにより、円径孔12hに杭打設治具15の先端が嵌合した状態において、底部12に対し杭打設治具15の先端が相対的に角変位可能に当接する。その他第1の実施形態と同様の作用、効果を奏する。
本実施形態では、杭打設治具の上端部に下降力を与えているが、前記上端部以外の部位、例えば杭打設治具の長手方向中間部等に下降力を与えても良い。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】この発明の第1の実施形態に係る杭の打設方法を段階的に示す断面図である。
【図2】同杭の要部を拡大して表す断面図であり、図2(a)は同杭における、管部の先端および底部と、杭打設治具とを表す断面図、図2(b)は図2(a)のIIb-IIb線断面図である。
【図3】複数の杭と構造物との関係を表す断面図である。
【図4】同杭と構造物との関係を概略表す平面図である。
【図5】この発明の第2の実施形態に係る杭の打設方法を段階的に示す断面図である。
【図6】同杭の要部を拡大して表す断面図である。
【図7】図6のVII-VII線断面図である。
【図8】この発明の他の実施形態に係る杭および杭打設治具を表す図である。
【図9】従来例の杭の打設方法を段階的に示す図である。
【符号の説明】
【0031】
10,10A…杭
11…管部
12…底部
12a…内底面
15,15A…杭打設治具
16,16A…調心治具受け部
16a,16Aa…調心治具受け面
18,18A…調心押し当て部
18a,18Aa…調心押し当て面
20…地盤

【特許請求の範囲】
【請求項1】
杭を、先端に底部を有する有底中空形状とし、前記杭内に棒状の杭打設治具を挿入して前記杭内の前記底部に当接させ、前記杭打設治具の上部に下降力を与えて前記杭の前記底部を押し下げることで、前記杭を地盤に貫入させる杭の打設方法。
【請求項2】
管部およびこの管部の先端に設けられて外面が先細りとなる底部を有する有底中空形状であり、前記底部の内底面に、前記管部内に挿入される棒状の杭打設治具の先端を傾き許容状態で、かつ位置ずれ阻止状態に当接させる調心治具受け部を設けた杭。
【請求項3】
有底中空形状の杭を地盤に打設する杭打設治具であって、棒状の治具本体と、この治具本体の先端に設けられた調心押し当て部とを有し、この調心押し当て部は、前記杭の内底面に設けられた凸球面状または凹球面状の調心治具受け面に嵌まり合う凹球面状または凸球面状の押し当て面を有することを特徴とする杭打設治具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−221702(P2009−221702A)
【公開日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−65790(P2008−65790)
【出願日】平成20年3月14日(2008.3.14)
【出願人】(390037154)大和ハウス工業株式会社 (946)
【Fターム(参考)】