説明

杭埋設方法

【課題】 強固な支持力を発揮し得る基礎杭を安価且つ簡易に埋め込み施工することができる杭埋設方法を提供する。
【解決手段】 本方法は、筒状のケーシング10の下端部に、外方に拡がる翼体3を有する先端ヘッド1を着脱自在に装着させた状態で、前記ケーシング及び前記先端ヘッドを回転させつつ地中に埋め込み、次に、前記ケーシングの内部に補強部材(鉄筋かごR)を挿入し、次いで、前記ケーシングの内部に硬化前のコンクリート(生コンクリートC)を投入し、その後、前記先端ヘッドの装着を解除した状態で、前記ケーシングを地中より引き抜く。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、杭埋設方法に関し、さらに詳しくは、強固な支持力を発揮し得る基礎杭を安価且つ簡易に埋め込み施工することができる杭埋設方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来一般に、プレボーリング工法及び中堀工法等の杭埋設方法では、多量の掘削土砂が排出されるので、地盤がゆるめられて杭の支持力が低下される等の問題があった。また、大量の掘削土砂に加えて、スライム処理での多量の産業廃棄物が排出されることとなり、それらの保管、運搬、処理等の費用が高額なものとなっていた。
そこで、上記問題を解決する従来の杭埋設方法として、外周にらせん翼を設けたパイルを地盤にねじ込む方法が知られている(例えば、特許文献1〜3参照)。
しかし、上記特許文献1〜3では、パイルを回転させつつ地中に押し込むようにしているので、比較的長尺なパイルでは、土の摩擦力によってパイルに戻りモーメントが大きく作用してパイルが損傷することがあり、その結果、基礎杭の支持力が低下してしまう場合があった。
【0003】
ここで、従来の杭埋設方法として、パイルの下端部に回転自在に支持された推進ヘッド(先端ヘッド)に回転ロッドを連結し、回転ロッドにより推進ヘッドを回転させつつ、パイルを非回転で戻りモーメントを抑制して地中に埋め込むようにしたものが知られている(例えば、特許文献4及び5参照)。
しかし、上記特許文献4及び5では、パイル下端部に推進ヘッドを回転自在に支持するために、推進ヘッドに多数の転動部材を設ける必要があり、推進ヘッド自体が高価なものとなり、更に回転ロッドを回転させる駆動手段の他にパイルの上端部を挟持するクランプ手段を備える必要があり、全体として高額な施工となっていた。
【0004】
【特許文献1】特開昭59−85028号公報
【特許文献2】特開平7−292666号公報
【特許文献3】特開2002−339353号公報
【特許文献4】特開2002−81059号公報
【特許文献5】特開2003−147770号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
以上より本発明は、上記現状に鑑みてなされたものであり、強固な支持力を発揮し得る基礎杭を安価且つ簡易に埋め込み施工することができる杭埋設方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、以下の通りである。
1.筒状のケーシングの下端部に、外方に拡がる翼体を有する先端ヘッドを着脱自在に装着させた状態で、前記ケーシング及び前記先端ヘッドを回転させつつ地中に埋め込み、
次に、前記ケーシングの内部に補強部材を挿入し、
次いで、前記ケーシングの内部に硬化前のコンクリートを投入し、
その後、前記先端ヘッドの装着を解除した状態で、前記ケーシングを地中より引き抜くことを特徴とする杭埋設方法。
2.(1)複数の分割ケーシングを軸方向に連結して筒状の分割ケーシング連結体をなし、該分割ケーシング連結体の最下端側の前記分割ケーシングの下端部に、外方に拡がる翼体を有する先端ヘッドを着脱自在に装着させた状態で、前記分割ケーシング連結体及び前記先端ヘッドを回転させつつ地中に埋め込み、
次に、(2)前記分割ケーシング連結体の内部に補強部材を挿入し、
次いで、(3)少なくとも最下端側の前記分割ケーシングの内部に硬化前のコンクリートを投入した後、前記先端ヘッドの装着を解除した状態で、前記分割ケーシング連結体を上方に向って移動させて、最上端側の前記分割ケーシングを、地中より引き抜いて該分割ケーシング連結体から分離し、
その後、(4)必要に応じて上記(3)を繰り返し行って前記分割ケーシング連結体を地中から引き抜くことを特徴とする杭埋設方法。
3.筒状のケーシングの下端部に、外方に拡がる翼体を有する先端ヘッドを着脱自在に装着させた状態で、前記ケーシング及び前記先端ヘッドを回転させつつ地中に埋め込む工程と、
地中に埋め込まれた前記ケーシングの内部に固化材を投入する工程と、
地中に埋め込まれた前記ケーシングの内部に杭体を挿入する工程と、
前記先端ヘッドの装着を解除した状態で、前記ケーシングを地中より引き抜く工程と、を備えることを特徴とする杭埋設方法。
4.前記固化材を投入する工程の後、前記杭体を挿入する工程が行われる上記3.記載の杭埋設方法。
5.前記杭体を挿入する工程の後、前記固化材を投入する工程と前記ケーシングを引き抜く工程とが同時に行われる上記3.記載の杭埋設方法。
6.前記ケーシングを地中より引き抜く際、該ケーシングの下端部に形成された攪拌部によって、該ケーシングの下端部から漏出される前記固化材を攪拌させる上記3.乃至5.のいずれか一項に記載の杭埋設方法。
7.前記固化材がセメントミルクである上記3.乃至6.のいずれか一項に記載の杭埋設方法。
8.前記杭体が、コンクリート製の中空パイルである上記3.乃至7.のいずれか一項に記載の杭埋設方法。
【発明の効果】
【0007】
本発明の杭埋設方法によると、地中の所定の深さ位置に残された先端ヘッドと硬化後のコンクリートとが結合されると共に、硬化後のコンクリートの外周側の周辺地盤が固められ、強固な支持力を発揮し得る基礎杭を提供することができる。また、長尺なケーシングを吊下支持可能な杭埋込機を用いて、より短時間で杭埋込作業を完了させることができる。
本発明の他の杭埋設方法によると、地中の所定の深さ位置に残された先端ヘッドと硬化後のコンクリートとが結合されると共に、硬化後のコンクリートの外周側の周辺地盤が固められ、強固な支持力を発揮し得る基礎杭を提供することができる。また、地表近くで分割ケーシングを支持可能である小型且つ簡易な構成の杭埋込機を用いて、より安価に杭埋込作業を行うことができる。
本発明の更に他の杭埋設方法によると、固化材によって、地中の所定の深さ位置に残された先端ヘッドと杭体とが結合されると共に、杭体の外周側の周辺地盤が固められ、強固な支持力を発揮し得る基礎杭を提供することができる。
また、前記固化材を投入する工程の後、前記杭体を挿入する工程が行われる場合は、より簡易且つ迅速に基礎杭を施工することができる。
また、前記杭体を挿入する工程の後、前記固化材を投入する工程と前記ケーシングを引き抜く工程とが同時に行われる場合は、杭体の外周側の周辺地盤をより強固且つ一様に固めることができる。
また、前記ケーシングを地中より引き抜く際、該ケーシングの下端部に形成された攪拌部によって、該ケーシングの下端部から漏出される前記固化材を攪拌させる場合は、杭体の外周側の周辺地盤を軸方向により一様に固めることができる。
また、前記杭体が、コンクリート製の中空パイルである場合は、より安価な中空パイルにより杭を形成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
(実施形態1)
本実施形態1に係る杭埋設方法は、以下に述べる埋込工程、挿入工程、投入工程、及び引抜き工程を備えている。
【0009】
上記「埋込工程」は、ケーシングの下端部に先端ヘッドを装着させた状態で、前記ケーシング及び前記先端ヘッドを回転させつつ地中に埋め込む工程である限り、その埋込形態、タイミング等は特に問わない。この埋込工程は、通常、長尺なケーシングを吊下支持可能な杭埋込機を用いて行われる。
上記ケーシングは筒状である限り、その材質、サイズ等は特に問わない。このケーシングは、通常、1本の長尺物である。また、このケーシングとしては、例えば、金属製(例えば、鋼製)、コンクリート製、樹脂製等のうちの1種又は2種以上の組み合わせを挙げることができる。
上記先端ヘッドは、外方に拡がる翼体を有する限り、その構造、形状等は特に問わない。この翼体は、例えば、1又は2以上の板状部材から構成されることができる。この板状部材としては、例えば、らせん板状、傾斜板状、水平板状、湾曲板、波板等を挙げることができる。また、この先端ヘッドは、上記ケーシングの下端部に対して着脱自在に装着可能である。この着脱形態としては、例えば、係止、螺合、嵌合、挟持、溶着、接着等を挙げることができる。
【0010】
上記「挿入工程」は、前記ケーシングの内部に補強部材を挿入する工程である限り、その挿入形態、タイミング等は特に問わない。
上記補強部材としては、例えば、鉄筋部材(例えば、鉄筋かご等)、鋼管等を挙げることができる。また、この補強部材の大きさは、通常、ケーシングの軸方向長さに対応している。
【0011】
上記「投入工程」は、前記ケーシングの内部に硬化前のコンクリートを投入する工程である限り、その投入形態、タイミング等は特に問わない。
上記コンクリートの投入量は、通常、上記ケーシングの内部空間の大きさに対応している。
尚、上記「硬化前のコンクリート」とは、通常、生コンクリートを示すが、施工現場で作業者により調合されるコンクリートであってもよい。これは以下の説明においても同様に適用されるものとする。
【0012】
上記「引抜工程」は、前記先端ヘッドの装着を解除した状態で、前記ケーシングを地中より引き抜く工程である限り、その引抜形態、タイミング等は特に問わない。この引抜工程は、例えば、ケーシングを回転させつつ引き抜くことができる。この場合、前記ケーシングを地中より引き抜く際、該ケーシングの下端部に形成された攪拌部によって、該ケーシングの下端部から漏出される前記硬化前のコンクリートを攪拌させることが好ましい。これにより、硬化後のコンクリートの外周側の周辺地盤をより一様に固めることができる。
【0013】
(実施形態2)
本実施形態2に係る杭埋設方法は、以下に述べる埋込工程(1)、挿入工程(2)、投入・分離工程(3)、及び引抜き工程(4)を備えている。
【0014】
上記「埋込工程(1)」は、分割ケーシング連結体の最下端側の前記分割ケーシングの下端部に先端ヘッドを装着させた状態で、前記分割ケーシング連結体及び前記先端ヘッドを回転させつつ地中に埋め込む工程である限り、その埋込形態、タイミング等は特に問わない。この埋込工程は、通常、地表近くで分割ケーシングを支持可能な杭埋込機(いわゆる全旋回機等)を用いて行われる。
上記分割ケーシング連結体は、複数の分割ケーシングを軸方向に連結してなり筒状である限り、その連結数、サイズ等は特に問わない。この分割ケーシングの材質、サイズ等は特に問わない。この分割ケーシングの連結形態としては、例えば、係止、螺合、嵌合、挟持、溶着、接着等を挙げることができる。また、この分割ケーシングとしては、例えば、金属製(例えば、鋼製)、コンクリート製、樹脂製等のうちの1種又は2種以上の組み合わせを挙げることができる。
上記先端ヘッドは、外方に拡がる翼体を有する限り、その構造、形状等は特に問わない。この翼体は、例えば、1又は2以上の板状部材から構成されることができる。この板状部材としては、例えば、らせん板状、傾斜板状、水平板状、湾曲板状、波板状等を挙げることができる。また、この先端ヘッドは、上記分割ケーシング連結体の最下端側の分割ケーシングの下端部に対して着脱自在に装着可能である。この着脱形態としては、例えば、係止、螺合、嵌合、挟持、溶着、接着等を挙げることができる。
【0015】
尚、上記埋込工程(1)は、例えば、先ず、〔a〕上記分割ケーシングの下端部に上記先端ヘッドを着脱自在に装着させた状態で、この分割ケーシング及び先端ヘッドを回転させつつ地中に埋め込み、次に、〔b〕この分割ケーシングの上端側に他の分割ケーシングを連結して分割ケーシング連結体をなし、この分割ケーシング連結体及び先端ヘッドを回転させつつ地中に埋め込み、次いで、〔c〕必要に応じて上記〔b〕を繰り返し行う工程であることができる。
【0016】
上記「挿入工程(2)」は、前記分割ケーシング連結体の内部に補強部材を挿入する工程である限り、その挿入形態、タイミング等は特に問わない。
上記補強部材は、例えば、鉄筋かごであることができる。また、この補強部材の大きさは、通常、分割ケーシング連結体の軸方向長さに対応している。
【0017】
上記「投入・分離工程(3)」は、少なくとも最下端側の前記分割ケーシングの内部に硬化前のコンクリートを投入した後、前記先端ヘッドの装着を解除した状態で、前記分割ケーシング連結体を上方に向って移動させて、最上端側の前記分割ケーシングを、地中より引き抜いて該分割ケーシング連結体から分離する工程である限り、その投入形態、分離形態、各タイミング等は特に問わない。この投入・分離工程は、例えば、分割ケーシング連結体を回転させつつ上方へ移動させることができる。この場合、前記分割ケーシング連結体を地中より引き抜く際、最下端側の分割ケーシングの下端部に形成された攪拌部によって、該分割ケーシングの下端部から漏出される前記硬化前のコンクリートを攪拌させることが好ましい。これにより、硬化後のコンクリートの外周側の周辺地盤をより一様に固めることができる。
上記コンクリートの投入量は、例えば、1つの上記分割ケーシングの内部空間の大きさに対応していることができる。
【0018】
上記「引抜工程(4)」は、必要に応じて上記投入・分離工程(3)を繰り返し行って前記分割ケーシング連結体を地中から引き抜く工程である限り、その引抜形態、タイミング等は特に問わない。この引抜工程は、例えば、分割ケーシング連結体を回転させつつ引き抜くことができる。この場合、前記分割ケーシング連結体を地中より引き抜く際、最下端側の分割ケーシングの下端部に形成された攪拌部によって、該分割ケーシングの下端部から漏出される前記硬化前のコンクリートを攪拌させることが好ましい。これにより、硬化後のコンクリートの外周側の周辺地盤をより一様に固めることができる。
尚、「必要に応じて」とは、分割ケーシング連結体の連結個数に応じることを意味する。例えば、分割ケーシング連結体の連結個数が2つの場合には、上記投入・分離工程(3)を1回繰り返して行われ、また、分割ケーシング連結体の連結個数が3つの場合には、上記投入・分離工程(3)を2回繰り返して行われることとなる。
【0019】
(実施形態3)
本実施形態3に係る杭埋設方法は、以下に述べる埋込工程、投入工程、挿入工程、及び引抜工程を備えている。
【0020】
上記「埋込工程」は、ケーシングの下端部に先端ヘッドを装着させた状態で、前記ケーシング及び前記先端ヘッドを回転させつつ地中に埋め込む工程である限り、その埋込形態、タイミング等は特に問わない。この埋込工程は、通常、長尺なケーシングを吊下支持可能な杭埋込機を用いて行われる。
上記ケーシングとしては、例えば、上記実施形態1に係る杭埋込方法で説明した形態を適用することができる。
上記先端ヘッドとしては、例えば、上記実施形態1に係る杭埋込方法で説明した形態を適用することができる。
【0021】
上記「投入工程」は、地中に埋め込まれた前記ケーシングの内部に固化材を投入する工程である限り、その投入形態、タイミング等は特に問わない。
上記固化材としては、例えば、セメントミルク、モルタル、接着剤等を挙げることができる。安価で取扱い容易であるといった観点から、上記固化材がセメントミルクであることが好ましい。
【0022】
上記「挿入工程」は、地中に埋め込まれた前記ケーシングの内部に杭体を投入する工程である限り、その挿入形態、タイミング等は特に問わない。
上記杭体は、例えば、中空パイルであることができる。この中空パイルとしては、例えば、コンクリート製、金属製(鋼製等)、樹脂製等のうちの1種又は2種以上の組み合わせを挙げることができる。安価で取扱い容易であるといった観点から、中空パイルがコンクリート製であることが好ましい。
【0023】
上記「引抜工程」は、前記先端ヘッドの装着を解除した状態で、前記ケーシングを地中より引き抜く工程である限り、その引抜形態、タイミング等は特に問わない。この引抜工程は、例えば、ケーシングを回転させつつ引き抜くことができる。この場合、前記ケーシングを地中より引き抜く際、該ケーシングの下端部に形成された攪拌部によって、該ケーシングの下端部から漏出される前記固化材を攪拌させることが好ましい。この攪拌部は、例えば、ケーシングの下端部外周面より外方に突出していることができる。
【0024】
ここで、上述の各工程の実施順序、タイミング等は特に問わない。上記投入工程及び上記挿入工程の実施順序としては、例えば、〔1〕前記固化材を投入する工程の後、前記杭体を挿入する工程が行われる形態、〔2〕前記杭体を挿入する工程の後、前記固化材を投入する工程が行われる形態、〔3〕前記固化材を投入する工程と前記杭体を挿入する工程とが同時に行われる形態等を挙げることができる。
【0025】
上記〔1〕形態の場合、例えば、前記投入工程は、地中に埋め込まれた前記ケーシングの内部に所定量の前記固化材を投入する工程であり、前記挿入工程は、所定量の該固化材が投入された該ケーシングの内部に前記杭体を挿入する工程であることができる。これにより、1本のケーシングを用いて、より簡易且つ迅速に基礎杭の施工を実施することができる。
【0026】
上記〔2〕形態の場合、例えば、前記杭体を挿入する工程の後、前記固化材を投入する工程と前記ケーシングを引き抜く工程とが同時に行われることができる。これにより、固化材をケーシングの内周側と杭体の外周側との間に一様に行き渡らせることがき、杭体の外周側の周辺地盤をより強固且つ一様に固めることができる。
尚、上記「同時に行われる」とは、各工程の開始及び終了時期の一致、不一致等に拘わらず、固化材が投入されつつケーシングが引き抜かれることを意味する。
【0027】
上記〔2〕形態の場合、例えば、下部ケーシングと、この下部ケーシングの上端部に連結され且つその下端部から固化材を噴射し得る上部ケーシングと、からなるケーシングを用いて施工することができる。この場合、上記埋込工程は、例えば、下部ケーシングの下端部に、上記先端ヘッドを装着させた状態で、連結状態の下部ケーシング及び上部ケーシングと共に上記先端ヘッドを回転させつつ地中に埋め込む工程であることができる。また、上記挿入工程は、例えば、地中に埋め込まれた下部ケーシングから上部ケーシングを切離した状態で、この下部ケーシングの内部に上記杭体を挿入する工程であることができる。また、上記投入工程は、例えば、地中に埋め込まれた下部ケーシングに上部ケーシングを連結させた状態で、この下部ケーシングの内部に、上部ケーシングの下端部から噴射された固化材を投入する工程であることができる。また、上記引抜工程は、例えば、前記先端ヘッドの装着を解除した状態で、連結状態の上部ケーシング及び下部ケーシングを地中より引き抜く工程であることができる。
基礎杭の施工性といった観点から、上記挿入工程の後、地中に埋め込まれた下部ケーシングに上部ケーシングを連結させた状態で、連結状態の下部ケーシング及び上部ケーシングと共に上記先端ヘッドを回転させつつ再度地中に埋め込む再埋込工程を更に備えることが好ましい。
尚、上記上部ケーシングは、例えば、その内部に設けられ且つ固化材が供給される筒体と、この筒体の下端側に連なる噴射ノズル部材と、を有することができる。この筒体は、例えば、上部ケーシングの内部で回転自在且つ軸方向に伸縮自在に設けられていることができる。これにより、既存の杭埋込機を用いてケーシングを回転圧入させることができると共に、上部ケーシングから固化材を好適に噴射させることができる。
【0028】
本実施形態3に係る杭埋設方法は、例えば、固定材投入工程を更に備えることができる。この固定材投入工程は、上記ケーシングが地中より引抜かれた後、上記中空パイル(杭体)の内部に、固定材を投入する工程である限り、その投入形態、タイミング等は特に問わない。この固定材としては、例えば、モルタル、コンクリート等を挙げることができる。この投入工程を備えることにより、先端ヘッドと杭体とをより強固に結合させることができる。
【0029】
尚、上述の実施形態1〜3に係る杭埋設方法で用いられる上記先端ヘッドは、例えば、筒状の本体の外周面に外方に拡がる翼体を設けてなり、且つ、筒状のケーシング(又は分割ケーシング;以下省略する。)により地中に埋め込まれるようにした基礎杭用の先端ヘッドであって、前記本体に設けられ且つ前記ケーシングに設けられた被係止部と係脱可能な係止部を備え、該係止部及び該被係止部の係止によって、前記ケーシング及び前記先端ヘッドをつれ回りさせつつ地中に埋め込めることができると共に、該係止部及び該被係止部の係止解除によって、前記先端ヘッドを所定深さの地中に残したまま前記ケーシングを地中より引き抜くことができ、前記翼体は、前記本体に外嵌可能な内径を有する環状板を径方向に分割してなり且つ同一水平面内に配設される複数の分割板を有し、複数の該分割板のそれぞれは、水平部と、該水平部に連なり且つ一方の分割端側で上方に向って曲折された第1曲折部と、該水平部に連なり且つ他方の分割端側で下方に向って曲折された第2曲折部と、を有し、複数の該分割板のうちで隣接する該分割板では、一方の該第1曲折部と他方の該第2曲折部とが近接していることを特徴とすることができる。
【0030】
上記先端ヘッドでは、例えば、前記本体の底壁部の上面には補強部が設けられていることができる。これにより、地中の所定深さ位置に位置する先端ヘッドと中空杭(例えば、鋼管杭、PC杭、場所打ちコンクリート杭等)とをより強固に結合させることができる。上記補強部としては、例えば、鉄筋部、鋼管部等を挙げることができる。
上記先端ヘッドでは、例えば、前記係止部が、前記本体の上部周面側に設けられ且つ径方向に向って突出する凸部であり、前記被係止部が、前記ケーシングの下端縁から上方に向って切り欠かれた切欠部であり、前記先端ヘッド及び前記ケーシングの軸方向への相対移動によって、前記凸部が前記切欠部に挿脱し得るようになっていることができる。請求項1又は2に記載の杭埋設方法。これにより、より簡易な構造でケーシング及び先端ヘッドの着脱機構を構成できる。両者の連結性といった観点から、上記凸部及び切欠部は、円周方向に沿って等ピッチ間隔で複数設けられていることが好ましい。
上記先端ヘッドでは、例えば、前記分割板が、前記環状板を円周方向に沿って等ピッチ間隔で径方向に分割してなることができる。これにより、地盤に対する支持力をより向上させることができる。
上記先端ヘッドでは、例えば、前記本体の底壁部には、下方に向って突出する突出部が設けられていることができる。これにより、突出部によって案内掘削でき、掘削性をより向上させることができる。
【0031】
なお、掘削性(推力)及び食込み力といった観点から、上記第1及び第2曲折部の曲折角度が略同じ値に設定され、その値が5〜30度、より7〜27度、特に10〜25度であることが好ましい。また、上記突出部は、例えば、1又は2以上の板材からなることができる。この板材の形状としては、例えば、平面状、湾曲状、波状、屈曲状等を挙げることができる。
【実施例】
【0032】
以下、図面を用いて実施例により本発明を具体的に説明する。
(1)先端ヘッドの構成
本実施例に係る先端ヘッド1について説明する。この先端ヘッド1は、図1〜3に示すように、筒状の本体2と、この本体2の外周面に設けられた翼体3と、この本体2の上端部に設けられた凸部4(本発明に係る「係止部」として例示する。)と、この本体2の下端部に設けられ且つ先端に向って尖って突出する平板状の突出部5と、を備えている。
【0033】
上記本体2は、円板状の底壁部2a及びこの底壁部2aの周縁から上方に立ち上がる周壁部2bを有し、上方を開放している(図3参照)。
上記翼体3は、本体2に外嵌可能な内径、即ち本体2の外径と略一致する内径を有する環状板を径方向に2分割してなる2枚の分割板3a,3bを有している。これら各分割板3a,3bは、同一水平面内に配設されている。また、各分割板3a,3bは、水平部7と、この水平部7に連なり且つ一方の分割端側で上方に向って曲折された第1曲折部8、及び他方の分割端側で下方に向って曲折された第2曲折部9と、を有している。そして、これら分割板3a,3bの間では、一方の第1曲折部8と他方の第2曲折部9とが近接している。
【0034】
上記凸部4は、本体2の上部外周面に円周方向に沿って等ピッチ間隔(90度間隔)で4つ設けられている。これら各凸部4は、本体2の外周より遠心方向に向って突出している。また、各凸部4は、筒状のケーシング10の下端部に形成された切欠部11(本発明に係る「被係止部」として例示する。)に係脱し得るようになっている。
【0035】
上記切欠部11は、ケーシング10の下端内周側に円周方向に沿って等ピッチ間隔(90度間隔)で4つ形成されている。これら各切欠部11は、ケーシング10の下端縁から上方に向って切り欠かれて形成されている。また、各切欠部11は、その軸方向長さが上記凸部4の軸方向長さより大きな値に設定されていると共に、その円周方向幅が上記凸部4の円周方向幅より大きな値に設定されている。また、各切欠部11には、凸部4の挿入口を狭めるように円周方向に延びるフック片12が設けられている。
【0036】
ここで、上記先端ヘッド1及びケーシング10を、それぞれの軸芯を一致させた状態で、軸方向に相対移動させると、先端ヘッド1の凸部4がケーシング10の切欠部11に対して挿入・脱出する。そして、この凸部4を切欠部11に挿入させた状態で、ケーシング10を所定方向(時計回り)に回転させると、凸部4と切欠部11とが側方で係止して、ケーシング10及び先端ヘッド1がつれ回りされることとなる(図3参照)。また、そのつれ回りを停止させた状態で、先端ヘッド1が自重により下方に移動しても、先端ヘッド1の凸部4がフック部12に当接するので、ケーシング10から先端ヘッド1が脱落してしまうことが防止される。そして、先端ヘッド1を位置決めした状態で、ケーシング10を、所定方向(反時計回り)に回転させると共に下方に移動させると、凸部4が切欠部11から脱出して、先端ヘッド1及びケーシング10の係合が解除されることとなる。
【0037】
(実施例1)
(2)杭埋込方法
次に、実施例1に係る杭埋設方法について説明する。この杭埋設方法では、上記先端ヘッド1及びケーシング10を用いることとする。
【0038】
先ず、図4(a)に示すように、先端ヘッド1の凸部4をケーシング10の切欠部11に挿入した状態、即ち、ケーシング10の下端部に先端ヘッド1を装着させた状態で、吊下式杭埋込機(図示せず)によって、ケーシング10を時計回りに回転させつつ下方に押し込む。すると、凸部4及び切欠部11の係止によって、ケーシング10と共に先端ヘッド1がつれ回りされる。その結果、図4(b)に示すように、先端ヘッド1及びケーシング10は地中に埋め込まれる。
【0039】
次に、図4(c)(d)に示すように、ケーシング10の内部に鉄筋かごR(本発明に係る「補強部材」として例示する。)が挿入される。次いで、図4(e)に示すように、ケーシング10の内部に所定量の生コンクリートCが投入される。
【0040】
その後、図4(f)に示すように、先端ヘッド1に対してケーシング10を反時計回りに回転させつつ上方に移動させる。すると、凸部4が切欠部11から脱出して、ケーシング10に対する先端ヘッド1の装着状態が解除され、先端ヘッド1が地中内の所定の深さ位置に残されたままケーシング10が上方に移動される。このとき、ケーシング10の下端開放部より生コンクリートCが漏出して掘削孔内に流入する。その後、図4(g)に示すように、ケーシング10が地中より完全に引抜かれ、生コンクリートCの硬化によって基礎杭が完成されることとなる。
【0041】
(3)実施例1の効果
以上より、本実施例1では、生コンクリートCの硬化によって、杭体(コンクリート)の下端部及び先端ヘッド1が強固に連結されると共に、杭体の外周側の周辺地盤が強固に固められて基礎杭が形成されるので、地震や風圧等により強力な外力が加わったとしても、極めて強固な支持力を発揮することができる。また、長尺物であるケーシング10を吊下支持可能な杭埋込機を用いて、より短時間で杭埋込作業を完了させることができる。
【0042】
(実施例2)
(4)杭埋込方法
次に、実施例2に係る杭埋設方法について説明する。この杭埋設方法では、上記先端ヘッド1及び以下に説明する複数の分割ケーシングを用いることとする。
【0043】
上記分割ケーシング20a〜20dは、図5に示すように、軸方向の両端側に継手部21を有している。この継手部21によって、各分割ケーシング20a〜20dを軸方向に連結して分割ケーシング連結体22(図6参照)を構成し得るようになっている。なお、上記分割ケーシング20aは、他の分割ケーシング20b〜20dより短尺に形成されている。また、この分割ケーシング20aは、その上端側にのみ上記継手部21を有し、その下端側には、実施例1のケーシングと同様な構成の切欠部11を有している。
【0044】
先ず、図6(a)に示すように、先端ヘッド1の凸部4を分割ケーシング20aの切欠部11に挿入した状態、即ち、分割ケーシング20aの下端部に先端ヘッド1を装着させた状態で、全旋回式杭埋込機40によって、分割ケーシング20aを時計回りに回転させつつ下方に押し込む。すると、凸部4及び切欠部11の係止によって、分割ケーシング20aと共に先端ヘッド1がつれ回りされる。その結果、先端ヘッド1及び分割ケーシング20aが地中に埋め込められる。次に、分割ケーシング20aの上端側に他の分割ケーシング20bを連結して分割ケーシング連結体22をなし、この分割ケーシング連結体22及び先端ヘッド1を回転させつつ地中に埋め込める。そして、上記作用を必要に応じて繰り返し行って、全ての分割ケーシング20a〜20dが地中に埋め込まれる。
【0045】
次に、図6(b)に示すように、分割ケーシング連結体22の内部に鉄筋かごR(本発明に係る「補強部材」として例示する。)が挿入される。
【0046】
次いで、図6(c)に示すように、分割ケーシング20a,20bの内部に生コンクリートCが投入される。その後、先端ヘッド1に対して分割ケーシング連結体22を反時計回りに回転させつつ上方に移動させる。すると、凸部4が切欠部11から脱出し、分割ケーシング20aに対する先端ヘッド1の装着状態が解除され、先端ヘッド1が地中内の所定の深さ位置に残されたまま、分割ケーシング連結体22が上方に移動される。このとき、分割ケーシング20aの下端開放部から生コンクリートCが漏出して掘削孔内に流入する。その後、最上端側の分割ケーシング20dが、地中より引き抜かれて分割ケーシング連結体22から分離される。
そして、図6(d)に示すように、上記作用が必要に応じて繰り返し行われる。その結果、図6(e)に示すように、全ての分割ケーシング20a〜20dが地中から引抜かれる。
【0047】
(5)実施例2の効果
以上より、本実施例2では、生コンクリートCの硬化によって、杭体(コンクリート)の下端部及び先端ヘッド1が強固に連結されると共に、杭体の外周側の周辺地盤が強固に固められて基礎杭が形成されるので、地震や風圧等により強力な外力が加わったとしても、極めて強固な支持力を発揮することができる。また、上記ケーシング10に比べて短尺物である分割ケーシング20a〜20dを支持可能な全旋回式杭埋込機40を用いて、より安価に杭埋込作業を行うことができる。
【0048】
(実施例3)
(6)杭埋込方法
次に、実施例3に係る杭埋設方法について説明する。この杭埋設方法では、上記先端ヘッド1及びケーシング10を用いることとする。
【0049】
先ず、図7(a)に示すように、先端ヘッド1の凸部4をケーシング10の切欠部11に挿入した状態、即ち、ケーシング10の下端部に先端ヘッド1を装着させた状態で、吊下式杭埋込機(図示せず)によって、ケーシング10を時計回りに回転させつつ下方に押し込む。すると、凸部4及び切欠部11の係止によって、ケーシング10と共に先端ヘッド1がつれ回りされる。その結果、図7(b)に示すように、先端ヘッド1及びケーシング10が地中に埋め込まれる。
【0050】
次に、図7(c)に示すように、ケーシング10の内部に、所定量のセメントミルクM(本発明に係る「固化材」として例示する。)が投入される。次いで、図7(d)に示すように、ケーシング10の内部に、コンクリート製の中空パイルP(本発明に係る「杭体」として例示する。)が挿入される。なお、この中空パイルPの下端は塞がれているものとする。すると、図7(e)に示すように、セメントミルクMが、ケーシング10の内部で中空パイルPの外周側で軸方向に一様にいきわたることとなる。
【0051】
その後、図7(f)に示すように、先端ヘッド1に対してケーシング10を反時計回りに回転させつつ上方に移動させる。すると、凸部4が切欠部11から脱出し、ケーシング10に対する先端ヘッド1の装着状態が解除され、先端ヘッド1が地中内の所定の深さ位置に残されたままケーシング10が上方に移動する。このとき、ケーシング10の下端開放部よりセメントミルクMが漏出して掘削孔内に流入する。その後、図7(g)に示すように、ケーシング10が地中より完全に引抜かれ、セメントミルクMの硬化によって基礎杭が完成されることとなる。
【0052】
(7)実施例3の効果
以上より、本実施例3では、セメントミルクMの硬化によって、中空パイルPの下端部及び先端ヘッド1が強固に連結されると共に、中空パイルPの外周側の周辺地盤が強固に固められて基礎杭が形成されるので、地震や風圧等により強力な外力が加わったとしても、極めて強固な支持力を発揮することができる。
【0053】
(実施例4)
(8)杭埋込方法
次に、実施例4に係る杭埋設方法について説明する。この杭埋設方法では、上記先端ヘッド1及び以下に説明するケーシング60を用いることとする。
【0054】
上記ケーシング60は、図21及び22に示すように、下部ケーシング60aと、この下部ケーシング60aの上端部に連結される上部ケーシング60bとを有している。この上部ケーシング60bは、筒体62と、この筒体62の下端部に連なる複数の噴射ノズル部材63と、を有している。従って、筒体62にその上方より供給される後述の固化材は、複数の噴射ノズル部材63より噴射されて下部ケーシング60aの内部に投入されるようになっている(図21中の矢印参照)。なお、上記筒体62は、2重筒構造をなしており、上部ケーシング60bの内部で回転自在且つ軸方向に伸縮自在に設けられている。また、下部ケーシング60aの下端部は、上述のケーシング10の下端部と略同じ構成であり、切欠部11が形成されている。
【0055】
先ず、図23(a)に示すように、先端ヘッド1とケーシング60(連結状態の下部ケーシング60a及び上部ケーシング60b)との軸心を一致させた状態より、図23(b)に示すように、先端ヘッド1の凸部4を下部ケーシング60aの切欠部11に挿入し、即ち、下部ケーシング60aの下端部に先端ヘッド1を装着させる。次に、吊下式杭埋込機(図示せず)によって、ケーシング60を時計回りに回転させつつ下方に押し込む。すると、凸部4及び切欠部11の係止によって、ケーシング60と共に先端ヘッド1がつれ回りされる。その結果、図23(c)に示すように、先端ヘッド1及びケーシング60が地中に埋め込まれる。
【0056】
次いで、図23(d)に示すように、地中に埋め込まれた下部ケーシング60aから上部ケーシング60bを切り離す。その後、図23(e)に示すように、上方を開放した下部ケーシング60aの内部にPC杭65(本発明に係る「杭体」及び「中空パイル」として例示する。)を挿入する。次に、図23(f)に示すように、下部ケーシング60aに上部ケーシング60bを連結する。次いで、図23(g)に示すように、ケーシング60及び先端ヘッド1を、再度つれ回りさせつつ地中の所定深度まで埋め込ませる。
【0057】
次に、図23(h)に示すように、上部ケーシング60bを構成する筒体62にセメントミルク(本発明に係る「固化材」として例示する。)が供給される。すると、そのセメントミルクは、噴射ノズル部材63より噴射されて下部ケーシング60aの内周側とPC杭65の外周側との間に投入される(図21参照)。そして、図23(i)に示すように、そのセメントミルクの投入(噴射)を続けながら、先端ヘッド1に対してケーシング60を反時計回りに回転させつつ上方に移動させる。すると、凸部4が切欠部11から脱出し、ケーシング60に対する先端ヘッド1の装着状態が解除され、先端ヘッド1が地中内の所定の深さ位置に残されたままケーシング60が上方に移動する。このとき、ケーシング60の下端開放部よりセメントミルクが漏出してPC杭65の外周側の掘削孔内に流入する。その後、図23(j)に示すように、ケーシング60が地中より完全に引抜かれ、セメントミルクの硬化によって基礎杭が完成されることとなる。
【0058】
(9)実施例4の効果
以上より、本実施例4では、セメントミルクの硬化によって、PC杭65の下端部及び先端ヘッド1が強固に連結されると共に、PC杭65の外周側の周辺地盤が強固に固められて基礎杭が形成されるので、地震や風圧等により強力な外力が加わったとしても、極めて強固な支持力を発揮することができる。
【0059】
尚、本発明においては、前記実施例1〜4に限られず、目的、用途に応じて本発明の範囲内で種々変更した実施例とすることができる。即ち、本実施例3及び4において、ケーシング10,60を地中より引き抜く際(図7(g)及び図23(j)参照)、ケーシング10,60を回転させつつ上方に移動させて、ケーシング10,60の下端外周部に形成された攪拌部30(例えば、突起部、らせん翼、環状部等)によって、ケーシング10,60の下端部から漏出されるセメントミルクMを攪拌させるようにしてもよい。これにより、セメントミルクMを周辺地盤により一様にいきわたらせることができる。
【0060】
また、本実施例1〜4では、先端ヘッド1の本体2の外周側に凸部4を設けるようにしたが、これに限定されず、例えば、図8に示すように、先端ヘッド1の本体2の内周側に凸部4を設けるようにしてもよい。また、本実施例1〜3では、角棒状の凸部4を例示したが、これに限定されず、例えば、図8に示すように、丸棒状の凸部4としてもよい。さらに、本実施例1〜3では、軸方向に一様な外径のケーシング10(又は分割ケーシング20a)の内周側に切欠部11を設けるようにしたが、これに限定されず、例えば、図9に示すように、ケーシング10の下端部に拡径部10aを設け、この拡径部10aの内周側に切欠部11を設けるようにしてもよい。さらに、先端ヘッド1に切欠部11を設け且つケーシング10に凸部4を設けるようにしてもよい。
【0061】
また、本実施例1〜4では、互いに係脱可能な凸部4及び切欠部11によって、先端ヘッド1とケーシング10との着脱機構を構成したが、これに限定されず、例えば、図10に示すように、互いに係脱可能な枠部32及び凸部33等によって、着脱機構を構成するようにしてもよい。さらに、互いに係脱可能な一対の噛合歯部によって、着脱機構を構成するようにしてもよい。
【0062】
また、本実施例1〜4では、先端に向って尖った1枚の平板である突出部5を例示したが、これに限定されず、例えば、平板の先端側に複数の凹部を設けて突出部5a(図11(a)参照)としたり、1枚の矩形平板からなる突出部5b(図11(b)参照)としたり、2枚の略三角平板を所定間隔で併設してなる突出部5c(図11(c)参照)としたり、2枚の矩形平板を所定間隔で併設してなる突出部5d(図11(d)参照)としたりしてもよい。さらに、一対の湾曲部を、各湾曲部と交差する平板部で連結してなる平面略Z字状の突出部5e(図12参照)としたり、一対の平板部を、各平板部と交差する平板部で連結してなる平面略Z字状の突出部5f(図13参照)としたり、一対の湾曲板を所定間隔で併設してなる突出部5g(図14参照)としたり、一対の平板を所定間隔で併設してなる突出部5h(図15参照)としたり、一対の湾曲板を、中心軸(又は中心孔)を介して併設してなる突出部5i(図16参照)としたり、一対の平板を、中心軸(又は中心孔)を介して併設してなる突出部5j(図17参照)としたりしてもよい。
【0063】
また、本実施例1〜4に係る先端ヘッド1において、例えば、図18及び19に示すように、その底壁部2aの上面に、複数の鉄筋材35を交差させて適宜固定(例えば、電気溶接固定、ネジ固定等)してなる鉄筋部36(本発明に係る「補強部」として例示する。)を設けるようにしてもよい。これにより、実施例1及び2に係る杭埋設方法(ケーシングの内部に生コンクリートを投入する形態)では、硬化後のコンクリート杭の下端部と先端ヘッド1とがより強固に結合される(図18参照)。また、実施例3及び4に係る杭埋設方法(ケーシングの内部に鋼管杭、PC杭等の中空パイルを挿入する形態)では、ケーシングを地中から引抜いた後、中空パイルPの内部にモルタル、コンクリート等の固定材を投入すれば、この固定材の硬化によって、中空パイルPの下端部と先端ヘッド1とがより強固に結合される(図19参照)。特に、既製の中空パイルPの下端面に、中空パイルPの内径より小さな内径を有する環状の引抜抵抗板37を適宜固定(例えば、電気溶接固定、ネジ固定等)しておけば、引抜き荷重に対して更に強い抵抗力を発揮できる。
【0064】
また、本実施例1〜4では、先端ヘッド1の翼体3として、水平部7及び第1、第2曲折部8,9を有する2枚の分割板3a,3bからなるものを例示したが、これに限定されず、例えば、1枚又は2枚以上のらせん板(図20参照)、傾斜板等によって翼体を構成するようにしてもよい。また、環状板を3つ以上に分割してなる分割板からなる翼体としてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0065】
回転圧入式の基礎杭の施工方法として適用される。特に、中低層住宅等の建築物あるいは小規模構造物等の基礎杭の施工方法として好適に使用される。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】本実施例に係る先端ヘッド及びケーシングの分離状態を示す側面図である。
【図2】図1のII矢視図である。
【図3】本実施例に係る先端ヘッド及びケーシングの装着状態を示す側面図である。
【図4】本実施例1に係る杭埋込方法を説明するための説明図である。
【図5】本実施例2に係る分割ケーシングを説明するための説明図である。
【図6】本実施例2に係る杭埋込方法を説明するための説明図である。
【図7】本実施例3に係る杭埋込方法を説明するための説明図である。
【図8】先端ヘッドの係止部の他の形態を説明するための説明図である。
【図9】先端ヘッドの係止部のさらに他の形態を説明するための説明図である。
【図10】先端ヘッドの係止部のさらに他の形態を説明するための説明図である。
【図11】先端ヘッドの突出部の他の形態を説明するための説明図である。
【図12】先端ヘッドの係止部のさらに他の形態を説明するための説明図である。
【図13】先端ヘッドの係止部のさらに他の形態を説明するための説明図である。
【図14】先端ヘッドの係止部のさらに他の形態を説明するための説明図である。
【図15】先端ヘッドの係止部のさらに他の形態を説明するための説明図である。
【図16】先端ヘッドの係止部のさらに他の形態を説明するための説明図である。
【図17】先端ヘッドの係止部のさらに他の形態を説明するための説明図である。
【図18】先端ヘッドの他の形態を説明するための説明図である。
【図19】先端ヘッドのさらに形態を説明するための説明図である。
【図20】先端ヘッドの翼体の他の形態を説明するための説明図である。
【図21】本実施例4の杭埋設方法で用いられるケーシング(筒部材が短縮状態)を説明するための説明図である。
【図22】本実施例4の杭埋設方法で用いられるケーシング(筒部材が伸長状態)を説明するための説明図である。
【図23】本実施例4の杭埋設方法を説明するための説明図である。
【符号の説明】
【0067】
1;先端ヘッド、10,60;ケーシング、20a〜20d;分割ケーシング、22;分割ケーシング連結体、60a;下部ケーシング、60b;上部ケーシング、65;PC杭、C;生コンクリート、M;セメントミルク、P;中空パイル、R;鉄筋かご。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状のケーシングの下端部に、外方に拡がる翼体を有する先端ヘッドを着脱自在に装着させた状態で、前記ケーシング及び前記先端ヘッドを回転させつつ地中に埋め込み、
次に、前記ケーシングの内部に補強部材を挿入し、
次いで、前記ケーシングの内部に硬化前のコンクリートを投入し、
その後、前記先端ヘッドの装着を解除した状態で、前記ケーシングを地中より引き抜くことを特徴とする杭埋設方法。
【請求項2】
(1)複数の分割ケーシングを軸方向に連結して筒状の分割ケーシング連結体をなし、該分割ケーシング連結体の最下端側の前記分割ケーシングの下端部に、外方に拡がる翼体を有する先端ヘッドを着脱自在に装着させた状態で、前記分割ケーシング連結体及び前記先端ヘッドを回転させつつ地中に埋め込み、
次に、(2)前記分割ケーシング連結体の内部に補強部材を挿入し、
次いで、(3)少なくとも最下端側の前記分割ケーシングの内部に硬化前のコンクリートを投入した後、前記先端ヘッドの装着を解除した状態で、前記分割ケーシング連結体を上方に向って移動させて、最上端側の前記分割ケーシングを、地中より引き抜いて該分割ケーシング連結体から分離し、
その後、(4)必要に応じて上記(3)を繰り返し行って前記分割ケーシング連結体を地中から引き抜くことを特徴とする杭埋設方法。
【請求項3】
筒状のケーシングの下端部に、外方に拡がる翼体を有する先端ヘッドを着脱自在に装着させた状態で、前記ケーシング及び前記先端ヘッドを回転させつつ地中に埋め込む工程と、
地中に埋め込まれた前記ケーシングの内部に固化材を投入する工程と、
地中に埋め込まれた前記ケーシングの内部に杭体を挿入する工程と、
前記先端ヘッドの装着を解除した状態で、前記ケーシングを地中より引き抜く工程と、を備えることを特徴とする杭埋設方法。
【請求項4】
前記固化材を投入する工程の後、前記杭体を挿入する工程が行われる請求項3記載の杭埋設方法。
【請求項5】
前記杭体を挿入する工程の後、前記固化材を投入する工程と前記ケーシングを引き抜く工程とが同時に行われる請求項3記載の杭埋設方法。
【請求項6】
前記ケーシングを地中より引き抜く際、該ケーシングの下端部に形成された攪拌部によって、該ケーシングの下端部から漏出される前記固化材を攪拌させる請求項3乃至5のいずれか一項に記載の杭埋設方法。
【請求項7】
前記固化材がセメントミルクである請求項3乃至6のいずれか一項に記載の杭埋設方法。
【請求項8】
前記杭体が、コンクリート製の中空パイルである請求項3乃至7のいずれか一項に記載の杭埋設方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【公開番号】特開2006−77388(P2006−77388A)
【公開日】平成18年3月23日(2006.3.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−242891(P2004−242891)
【出願日】平成16年8月23日(2004.8.23)
【出願人】(503386713)
【出願人】(593207499)
【Fターム(参考)】