説明

杭式桟橋構築におけるスラブ構築用支保工の解体方法

【課題】大型のクレーン台船を使用せずにスラブ構築用支保工を解体撤去でき、安価且つ安全にスラブ構築用支保工の解体を行うことができる杭式桟橋構築におけるスラブ施工用支保工の解体方法を提供する。
【解決手段】先に構築された桟橋本体部の互いに対向するコンクリート梁2,2...にスラブ構築用支保工23を支持させて設置し、場所打ちコンクリートによるスラブ4を構築した後に、スラブ4に上下に向けて貫通させた挿通孔29に仮止め具30を挿通させ、仮止め具によってスラブ構築用支保工23の荷重を受け持たせる。然る後、桟橋本体部に対するスラブ構築用支保工の支持を解除し、次いで仮止め具をスラブ上に載せたクレーン41にて吊り持ち、スラブ上面側の仮止めを解いて仮止め具を降下させることにより、スラブ構築用支保工を所望の高さまで降下させ、スラブ構築用支保工を解体し、適宜搬送手段にて杭式桟橋下より搬出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水底地盤に支持させて立設した多数の杭に桟橋本体部を支持させた杭式桟橋の構築に際し、スラブ構築に使用した支保工を解体するための杭式桟橋構築におけるスラブ構築用支保工の解体方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の杭式桟橋としては、図12、13に示すように、水底に所定の配置に立設させた多数の支持杭1,1...の頭部に支持させて杭頭部間を連結するコンクリート梁2,2...を格子状配置に有する桟橋本体部3を備え、この桟橋本体部3の上面部に場所打ちコンクリートによるスラブ4を設けるように構成されたものが知られている。
【0003】
この種の杭式桟橋の構築に際しては、図14に示すように、角筒型又はH型の鋼材からなる支保工用梁材6,6を格子状に組み立てた支保工7を形成し、この支保工7を所定の高さの位置で杭頭部間を連結する連結材5等に吊下げ支持させ、この支保工7上に桟橋本体部3を形成するための型枠用部材8a,8bを組むと共に、支保工7上にスラブ4を形成するための型枠部材9を支持するH型鋼等を格子状に組んだスラブ構築用支保工10を支柱11を介して設置し、これにより設置された型枠内に場所打ちコンクリートを打設するようにしている(例えば、特許文献1)。
【0004】
また、コンクリートの打設が完了した後は、桟橋上面部がスラブ4により閉鎖されているため、図15に示すように、大型のクレーン台船13を使用し、海側から上述の支保工7,10及び型枠12の解体撤去作業を行い、支持杭1に仮支持用のブラケット14を設置し、支保工7の下面を支持させた状態で、ウインチ等により支保工用梁材6及びスラブ構築用支保工10用の部材を桟橋本体部3下より引き出し、その引き出した部分をクレーン13aにより吊り上げて撤去するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平8−277514号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし上述の如き従来の技術では、桟橋の上面部がスラブにより閉鎖されているため、上述の支保工及びスラブ構築用支保工を解体撤去するには、海上より大型のクレーン台船を使用して作業を行う必要があり、その施工は気象条件・海象条件に大きな影響を受けるため工期が長期化するおそれがあり、また、大型クレーン台船の使用自体に多大な費用がかかるという問題があった。
【0007】
更には、支保工用梁材及びスラブ構築用支保工を構成する部材を桟橋本体部下より撤去する際に、桟橋本体部下より引き出された部分しかクレーンにより吊り持ちすることができないためバランスを取るのが困難で、作業に危険が伴うという問題があり、この問題は構築する桟橋の大きさが大きく支保工用梁材を引き出す距離が大きくなるほどその危険性が増すという問題があった。
【0008】
そこで本発明は、上述の如き従来の問題を鑑み、大型のクレーン台船を使用せずにスラブ構築用支保工を解体撤去でき、安価且つ安全にスラブ構築用支保工の解体を行うことができる杭式桟橋構築におけるスラブ施工用支保工の解体方法の提供を目的としてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述の如き従来の問題を解決し、所期の目的を達成するための請求項1に記載の発明の特徴は、所定配置に多数立設した支持杭に支持させて互いに隣り合う杭頭部間を連結するコンクリート梁を格子状配置に有する桟橋本体部を構築し、該桟橋本体部上に場所打ちコンクリートによるスラブを構築した後、該スラブを構築するためのスラブ構築用型枠を支持させたスラブ構築用支保工を解体する杭式桟橋構築におけるスラブ施工用支保工の解体方法において、先に構築された前記桟橋本体部の互いに対向するコンクリート梁に前記スラブ構築用支保工を支持させて設置し、前記場所打ちコンクリートによるスラブを構築した後に、該スラブに上下に向けて貫通させた挿通孔に棒状の仮止め具を挿通させ、該仮止め具の下端側を前記スラブ構築用支保工に固定するとともに上端側をスラブ上面側に仮止めすることにより、前記仮止め具によって前記スラブ構築用支保工の荷重を受け持たせ、然る後前記桟橋本体部に対する前記スラブ構築用支保工の支持を解除し、次いで前記仮止め具を前記スラブ上に載せたクレーンにて吊り持ち、前記スラブ上面側の仮止めを解いて前記仮止め具を降下させることにより、前記スラブ構築用支保工を所望の高さまで降下させ、然る後前記スラブ構築用支保工を解体し、適宜搬送手段にて前記杭式桟橋下より搬出させることにある。
【0010】
請求項2に記載の発明の特徴は、請求項1の構成に加え、互いに対向する前記コンクリート梁の対向側面部に支保工受部材を着脱可能に突設させ、該支保工受部材上に前記スラブ構築用支保工の端部を支持させたことにある。
【0011】
請求項3に記載の発明の特徴は、請求項1又は2の構成に加え、前記仮止め具としてボルトを使用し、その上端に螺嵌したナットを介して前記スラブ上面部に対して仮止めすることにある。
【0012】
請求項4に記載の発明の特徴は、請求項1、2又は3の構成に加え、前記吊り用棒状材の上端を、複数の該吊り用棒状材を支持できる吊り枠に支持させ、該吊り枠を前記クレーンにて吊り持ち操作させることにより、複数の吊り用棒状材を同時に降下させることにある。
【0013】
請求項5に記載の発明の特徴は、請求項1〜3又は4の構成に加え、前記吊り用棒状材は、長さ方向に継ぎ足すことによって長さを延長させつつ前記スラブ構築用支保工を所望の高さまで降下させることにある。
【0014】
請求項6に記載の発明の特徴は、請求項1の構成に加え、前記搬送手段による搬送は、解体した支保工用の鋼材を水面上に浮かべた浮体に吊り下げて曳航することにある。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る杭式桟橋構築におけるスラブ施工用支保工の解体方法は、上述したように、所定配置に多数立設した支持杭に支持させて互いに隣り合う杭頭部間を連結するコンクリート梁を格子状配置に有する桟橋本体部を構築し、該桟橋本体部上に場所打ちコンクリートによるスラブを構築した後、該スラブを構築するためのスラブ構築用型枠を支持させたスラブ構築用支保工を解体する杭式桟橋構築におけるスラブ施工用支保工の解体方法において、先に構築された前記桟橋本体部の互いに対向するコンクリート梁に前記スラブ構築用支保工を支持させて設置し、前記場所打ちコンクリートによるスラブを構築した後に、該スラブに上下に向けて貫通させた挿通孔に棒状の仮止め具を挿通させ、該仮止め具の下端側を前記スラブ構築用支保工に固定するとともに上端側をスラブ上面側に仮止めすることにより、前記仮止め具によって前記スラブ構築用支保工の荷重を受け持たせ、然る後前記桟橋本体部に対する前記スラブ構築用支保工の支持を解除し、次いで前記仮止め具を前記スラブ上に載せたクレーンにて吊り持ち、前記スラブ上面側の仮止めを解いて前記仮止め具を降下させることにより、前記スラブ構築用支保工を所望の高さまで降下させ、然る後前記スラブ構築用支保工を解体し、適宜搬送手段にて前記杭式桟橋下より搬出させることにより、桟橋本体を構築する際に使用する支保工とスラブ構築用の支保工との解体を別々に行うことができ、且つスラブ構築用支保工の解体撤去がクレーン台船を使用せずに行え、費用の低減を図ることができる。また、スラブ構築用支保工をコンクリート梁間の長さとしたことで、小型クレーン等により作業することができ危険を低減することができる。
【0016】
また本発明において、互いに対向する前記コンクリート梁の対向側面部に支保工受部材を着脱可能に突設させ、該支保工受部材上に前記スラブ構築用支保工の端部を支持させたことにより、支保工をコンクリート梁間に支持させることができる。
【0017】
さらに本発明において、前記仮止め具としてボルトを使用し、その上端に螺嵌したナットを介して前記スラブ上面部に対して仮止めすることにより、スラブ底面と型枠部材との間の距離を調整することができ、作業を容易に行うことができる。
【0018】
更にまた、本発明において、前記吊り用棒状材の上端を、複数の該吊り用棒状材を支持できる吊り枠に支持させ、該吊り枠を前記クレーンにて吊り持ち操作させることにより、複数の吊り用棒状材を同時に降下させることにより、効率よく作業を行うことができる。
【0019】
前記吊り用棒状材は、長さ方向に継ぎ足すことによって長さを延長させつつ前記支保工を所望の高さまで降下させることにより、段階的に所望の高さまで降下させることができる。
【0020】
前記搬送手段による搬送は、解体した支保工用の鋼材を水面上に浮かべた浮体に吊り下げて曳航することにより、支持杭間を移動しやすい。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明に係る杭式桟橋構築におけるスラブ構築用支保工の解体方法においてスラブ構築用支保工を仮止め具により仮止めさせた状態を示す縦断面図である。
【図2】図1中の支保工受部材を示す部分拡大縦断面図である。
【図3】同上の仮止め具の設置状態を示す縦断面図である。
【図4】同上の定着体の一例を示す平面図である。
【図5】本発明に係る杭式桟橋構築におけるスラブ構築用支保工の解体方法における支保工受部材取り外し作業の概略を示す縦断面図である。
【図6】同上の吊り用棒状材の連結作業の概略を示す縦断面図である。
【図7】同上のスラブ構築用支保工の吊り下ろし作業の概略を示す縦断面図である。
【図8】同上の吊り用棒状材の連結作業の概略を示す縦断面図である。
【図9】同上のスラブ構築用支保工の吊り下ろし作業の概略を示す縦断面図である。
【図10】同上のスラブ構築用支保工の積み替え作業の概略を示す縦断面図である。
【図11】同上のスラブ外縁部におけるスラブ構築用支保工の撤去作業の概略を示す縦断面図である。
【図12】従来の杭式桟橋の一例を示す側面図である。
【図13】図12中のa−a線断面図である。
【図14】従来の支保工設置状態を示す縦断面図である。
【図15】従来の支保工撤去作業の概略を示す縦断面図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
次に本発明の実施の形態を図面に示した実施例に基づいて説明する。尚、上述の従来例と同様の構成には同一の符合を付して説明する。
【0023】
杭式桟橋は、水底に所定の配置に多数立設した支持杭1,1...に支持され杭頭部間を連結するコンクリート梁2,2...を格子状配置に有する桟橋本体部3を備え、この桟橋本体部3上に場所打ちコンクリートによるスラブ4を構築する構造となっている。
【0024】
支持杭1は、鋼管杭をもって構成され、この鋼管杭を水底に直立配置に立設させた直立杭及び水底に対し長さ方向を桟橋幅方向又は桟橋長さ方向に向けて傾けた配置に立設させた斜杭として使用する。また、互いに隣り合う支持杭1の杭頭部間は、H形鋼や角筒型鋼等からなる連結材5により連結されている。
【0025】
桟橋本体部3の構築は、図13に示す従来例と同様に、角筒型又はH型の鋼材からなる支保工用梁材6,6...を格子状に組み立てた支保工7を形成し、この支保工7を所定の高さで連結材5に吊下げ支持させることにより固定し、この支保工7上に桟橋本体部3を形成するための型枠用部材8a、8bを組み、この型枠内に場所打ちコンクリートを打設することによって行う。
【0026】
この場所打ちコンクリートの打設においては、後述する支保工受部材20及びアイボルト等の足場設置用部材21,21...を固定する際に使用するナット等の固定用部材22を多数コンクリート梁2側面部の所定の高さ位置に水平方向に並べて埋め込んでおく。
【0027】
コンクリートを養生硬化させて桟橋本体部3を構築した後は、スラブ4を構築するより先に脱型するとともに支保工7を解体し、支保工用梁材6,6...を撤去する。
【0028】
支保工用梁材6の撤去は、図14に示す従来例と同様に、支持杭1に仮受け用のブラケット14,14を設置して支保工用梁材6を支持させた後、支保工用梁材6を連結部材5より取り外し、下面をブラケット14に支持させた状態で端部をウインチ等により桟橋本体部3下より引き出すとともに、その端部をクレーン船13により吊り持ち動作することによりクレーン船又は運搬用台船に積み込むようにしている。
【0029】
このとき、桟橋本体部3は、各コンクリート梁2,2...に囲まれた格子状の各升目部3a,3a...が上下方向に開口貫通した状態にあり、クレーン台船13による引き出し作業を桟橋本体部3上より確認・管理しつつ行うことができ、また、必要に応じて升目部3aを通してクレーン41よりワイヤーを垂下させ、クレーン台船13により吊り持ち動作される側とは反対側の端部を吊り持ちさせながら作業を行うこともできる。
【0030】
また、スラブ構築用支保工20の撤去作業を別に行うため、その分のクレーン台船13の使用する時間を抑えることができる。
【0031】
次に、支保工7の撤去を終えたら、互いに対向するコンクリート梁2,2の対向面部上側部に支保工受部材20,20...を固定し、この支保工受部材20に両端部を支持させてH形又は角筒型の鋼材からなるスラブ構築用支保工23を互いに平行配置に設置し、このスラブ構築用支保工23上に角材24,24等介して型枠部材25を組み、スラブ構築用型枠を設置し、この型枠内に場所打ちコンクリートを打設してスラブ4を構築する。
【0032】
支保工受部材20は、図2に示すように、上下方向に向けた長孔状の挿通孔26を有する平板状の取付け部27を有し、挿通孔26を通して取付用ボルト28をコンクリート梁2内に埋設されたナット22に螺合させ締め付けることによりコンクリート梁2の対向面部に固定されるようになっている。
【0033】
また、スラブ構築用型枠25内には、図示しない鉄筋とともに後述する吊り材挿通孔29を形成するための筒材29aをスラブ構築用支保工23上に位置するように上下方向に向けて設置するとともに、筒材29a内に下端をスラブ構築用支保工23に固定させた棒状の仮止め具30を挿通させておく。
【0034】
尚、仮止め具30は、上下両端部又は全長に亘って雄ねじ部を有するボルトをもって構成されている。
【0035】
次に、スラブ4構築後にスラブ構築用支保工23及びスラブ構築用型枠25を解体するには、まず、図1、図3に示すように、各挿通孔29のスラブ4上面側開口縁部に平板状の定着体31を設置し、この定着体31にナット32により仮止め具30の上端部を定着し、仮止め具30を介してスラブ構築用支保工23の荷重をスラブ4に受け持たせる。
【0036】
定着体31は、図4に示すように、一対の半割板33,33を突き合わせて構成され、半割板33には、互いに突き合わされる接合面側縁部中央に仮止め具30が挿通される挿通孔31aを成すように挿通凹部が形成されている。
【0037】
また、この定着体31は、半割板33,33間を連結具34,34により連結して構成されており、この連結具34を取り外すことにより分割でき、挿通孔31aに仮止め具30等の棒状材を挿通させた状態であっても吊り材挿通孔29の開口縁部において着脱できるようになっている。
【0038】
次に、図5に示すように、コンクリート梁2,2の対向面部下側に支持されたアイボルト21にチェーン等の吊り材36,36を設置し、この吊り材36,36に支持させて桟橋本体部3下の所望の高さに吊り足場37を設置するとともに、アイボルト21にブラケット38aを介して足場用部材を支持させてコンクリート梁2に沿って足場38を設置する。
【0039】
そして、この足場38を用いて支保工受部材20を固定しているボルト28を緩めて支保工受部材20を取り外し、スラブ構築用支保工23及びスラブ構築用型枠25が仮止め具30を介してスラブ4の上面部に支持された状態とする。
【0040】
次に、定着体31にナット32を定着させた状態でナット32を回転させることにより仮止め具30を相対的に降下させ、スラブ4下面と型枠25との間に間隙35を形成する。
【0041】
しかる後、図6に示すように、仮止め具30の上端に長ナット等の連結部材39を介して上下端部又は全長に亘って雄螺子部が設けられた吊り用棒状材40の下端を連結して仮止め具30の延長方向に向けて吊り用棒状材40を連結し、更に、所望の長さまで順次吊り用棒状材40を継ぎ足すとともに、最上部の吊り用棒状材40の上端をスラブ4上に載せたラフタークレーン41に吊り持ち動作される吊り枠42に連結する。
【0042】
この吊り枠42には、支保工の長さ方向及び幅方向に間隔を置いて複数の支持用ボルト43,43...が下向きに突設されており、この支持用ボルト43の下端に各吊り用棒状材40の上端を連結させて吊り枠42を吊り持ち動作することにより、複数の吊り用棒状材40を同時に吊り持ち動作できるようしている。
【0043】
尚、各吊り用棒状材40間の連結及び吊り用棒状材40と支持用ボルト43との連結には、仮止め具30と吊り用棒状材40との連結と同様に、長ナット等の連結部材39を使用する。
【0044】
次に、図7に示すように、ラフタークレーン41により若干吊り枠42を吊りあげ、ナット32の定着体31に対する定着を解除して仮止めを解除するとともに、定着体31を半割にして挿通孔29の開口縁部より撤去し、仮止め具30及び吊り用棒状材40が挿通孔26を通して移動可能な状態とし、その状態でクレーン41により吊り枠42をその脚部42a,42aがスラブ4上に着地するまで吊り下ろし、支保工23及び型枠25が所望の高さ、即ち吊り足場37上で解体作業を行うのに適した高さまで吊り下ろす。
【0045】
この位置で、吊り用棒状材40を挟み込むように定着体31を吊り材挿通孔29の上側開口縁部に設置し、この定着体31に最上部の吊り用棒状材40の上端部をナット32等により定着し、スラブ構築用支保工23及びスラブ構築用型枠25を仮止め具30及び吊り用棒状材40を介してスラブ4上面部に支持させて仮止めする。
【0046】
この状態で、スラブ構築用支保工23上に支持されたスラブ構築用型枠25を解体し、解体された角材24や型枠用板材25を作業用筏等に搭載して桟橋本体部3下より移動させ、それを桟橋の外側部よりクレーン41により吊り上げ、桟橋上に仮置きした後又は直接運搬用船に積み込みスラブ構築用型枠25の撤去が完了する。
【0047】
また、型枠25の撤去が完了した後、桟橋本体部3下に設置されていた吊り足場37を撤去し、スラブ構築用支保工23を吊り下ろすことができるようにする。
【0048】
次に、図8に示すように、最上部の吊り用棒状材40の延長方向上側に向けて所望の長さまで順次吊り用棒状材40,40を継ぎ足すとともに、最上部の吊り用棒状材40の上端を吊り枠42に連結し、しかる後、ラフタークレーン41により若干吊り枠42を吊りあげ、ナット32の定着体31に対する定着を解除するとともに、定着体31を半割にして挿通孔29の開口縁部より撤去し、仮止め具30及び吊り用棒状材40が挿通孔26を通して移動可能な状態とし、その状態でクレーン41により吊り枠42を吊り下ろし、スラブ構築用支保工23が所望の高さ、即ちスラブ構築用支保工23を搬送手段への積み替え作業を行うのに適した高さまで降下させる。
【0049】
搬送手段としては、水面上に浮かべた浮体44を使用し、この浮体44にスラブ構築用支保工23を吊り下げ、それを曳航するようにする。
【0050】
この搬送手段に支保工23を積み替えるには、まず、図9に示すように、支保工23が海面よりやや上の位置に至るまで吊り枠42を降下させ、その位置で吊り用棒状材40挟み込むように定着体31を吊り材挿通孔29の上側開口縁部に設置し、吊り用棒状材40の上端部をナット32等により定着体31に定着し、スラブ構築用支保工23を仮止め具30及び吊り用棒状材40を介してスラブ4上面部に支持させる。
【0051】
この状態で支保工搬送用浮体44の両端部にワイヤー等の連結材45を介して浮体44を連結し、スラブ構築用支保工23を水中に沈めた際に浮体44により吊り下げられるようする。
【0052】
この連結作業が完了したら、図10に示すように、ラフタークレーン41により若干吊り枠42を吊りあげ、ナット32の定着体31に対する定着を解除するとともに、定着体31を半割にして挿通孔29の開口縁部より撤去し、仮止め具30及び吊り用棒状材40が挿通孔29を通して移動可能な状態とし、その状態でクレーン41により吊り枠42を脚部42aがスラブ4上に着地するまで吊り下ろし、スラブ構築用支保工23を水中に沈める。
【0053】
しかる後、吊り用棒状材40を挟み込むように定着体31を吊り材挿通孔29の開口縁部に設置し、吊り用棒状材40の上端部をナット32等により定着体31に定着し、スラブ構築用支保工23用梁材を仮止め具30及び吊り用棒状材40を介してスラブ4上面部に支持させた状態とし、最上部の吊り用棒状材40の上端部を支持用ボルトより取り外し、吊り枠42を撤去する。
【0054】
この状態において、吊り用棒状材40の所望の位置をバーナー等により溶断することによりスラブ構築用支保工23は、浮体44のみに吊り下げられた状態になりそれを曳航することにより桟橋本体部3下よりスラブ構築用支保工23を撤去する。
【0055】
次に、残された吊り用棒材及び定着体31を撤去し、必要に応じて挿通孔26内をグラウト等により閉鎖する。
【0056】
そして、上述の作業を各升目部3a,3aにおいて行うことによりスラブ構築用支保工の解体撤去が完了する。
【0057】
次に、桟橋の外側縁部に設置されたスラブ構築用支保工及び型枠の解体方法について説明する。尚、上述した構成と同様の構成については同一符号を付して説明を省略する。
【0058】
まず、図5に示す上述の実施例と同様に、各挿通孔29のスラブ4上面側開口縁部に平板状の定着体31を設置し、この定着体31にナット32により仮止め具30の上端部を定着し、仮止め具30を介してスラブ構築用支保工23の荷重をスラブ4に受け持たせるとともに、吊り足場37を利用して支保工受部材20を取り外す。
【0059】
次に、定着体31にナット32を定着させた状態でナット32を回転させることにより仮止め具30を相対的に降下させ、スラブ4下面と型枠との間に間隙を形成する。
【0060】
次に、ラフタークレーン41を用いて足場を設置し、この足場を利用して上記間隙より角材及び型枠用板材を引き抜き、スラブ上に仮置きしておく。
【0061】
そして、上述の図5、図6に示す実施例と同様の工程を行い、スラブ構築用支保工23を所望の高さまで降下させた後、図11に示すように、ラフタークレーン41に吊り持ち動作される玉掛け用ワイヤー51にスラブ構築用支保工23を吊り下げ、その状態で吊り用棒状材30を溶断又は切断し、しかる後ラフタークレーン41にて桟橋の外側縁より引き上げスラブ4上に仮置きする。
【0062】
最後に、残された吊り用棒材40及び定着体31を撤去し、必要に応じて挿通孔29内をグラウト等により閉鎖するとともに、吊り足場37を撤去して作業が完了する。
【0063】
このように構成された本願発明方法では、スラブ構築用支保工23の撤去作業をスラブ4上に設置したラフタークレーン41等のクレーンにより行うことができ、大型のクレーン船を使用して海上より行う必要がない。従って、安価に施工することができるとともに、気象・海象条件に左右されることが少ないので工期の短縮を図ることができる。
【0064】
また、本発明方法では、升目部3a単位でスラブ構築用支保工23の解体を行うので、短い部材を安定した状態で吊り下ろすことができ、安全に作業を行うことができる。
【0065】
尚、上述の実施例では、定着体31に対し仮止め具30又は吊り用棒状材40をナット32により定着させて仮止めさせた例について説明したが、定着具には楔定着具等の他の定着具を使用してもよい。
【0066】
また、上述の実施例では、型枠の解体撤去と支保工の撤去作業を違う高さにおいて行い、吊り用棒状材を順次継ぎ足すことにより段階的に高さを調節した例について説明したが、型枠解体と支保工解体を同じ高さで行ってもよい。
【符号の説明】
【0067】
20 支保工受部材
21 アイボルト
22 固定用部材(ナット)
23 スラブ構築用支保工
24 角材
25 スラブ構築用型枠
26 挿通孔
27 取付部
28 取付用ボルト
29 吊り材挿通孔
30 仮止め具
31 定着体
32 ナット
33 半割板
34 連結具
35 間隙
36 吊り材
37 吊り足場
38 足場
39 連結部材
40 吊り用棒状材
41 ラフタークレーン
42 吊り枠
43 支持用ボルト
44 浮体
45 連結材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定配置に多数立設した支持杭に支持させて互いに隣り合う杭頭部間を連結するコンクリート梁を格子状配置に有する桟橋本体部を構築し、該桟橋本体部上に場所打ちコンクリートによるスラブを構築した後、該スラブを構築するためのスラブ構築用型枠を支持させたスラブ構築用支保工を解体する杭式桟橋構築におけるスラブ施工用支保工の解体方法において、
先に構築された前記桟橋本体部の互いに対向するコンクリート梁に前記スラブ構築用支保工を支持させて設置し、前記場所打ちコンクリートによるスラブを構築した後に、該スラブに上下に向けて貫通させた挿通孔に棒状の仮止め具を挿通させ、該仮止め具の下端側を前記スラブ構築用支保工に固定するとともに上端側をスラブ上面側に仮止めすることにより、前記仮止め具によって前記スラブ構築用支保工の荷重を受け持たせ、然る後前記桟橋本体部に対する前記スラブ構築用支保工の支持を解除し、次いで前記仮止め具を前記スラブ上に載せたクレーンにて吊り持ち、前記スラブ上面側の仮止めを解いて前記仮止め具を降下させることにより、前記スラブ構築用支保工を所望の高さまで降下させ、然る後前記スラブ構築用支保工を解体し、適宜搬送手段にて前記杭式桟橋下より搬出させることを特徴とてなる杭式桟橋構築におけるスラブ施工用支保工の解体方法。
【請求項2】
互いに対向する前記コンクリート梁の対向側面部に支保工受部材を着脱可能に突設させ、該支保工受部材上に前記スラブ構築用支保工の端部を支持させた請求項1に記載の杭式桟橋構築におけるスラブ施工用支保工の解体方法。
【請求項3】
前記仮止め具としてボルトを使用し、その上端に螺嵌したナットを介して前記スラブ上面部に対して仮止めする請求項1又は2に記載の杭式桟橋構築におけるスラブ施工用支保工の解体方法。
【請求項4】
前記吊り用棒状材の上端を、複数の該吊り用棒状材を支持できる吊り枠に支持させ、該吊り枠を前記クレーンにて吊り持ち操作させることにより、複数の吊り用棒状材を同時に降下させる請求項1、2又は3に記載の杭式桟橋構築におけるスラブ施工用支保工の解体方法。
【請求項5】
前記吊り用棒状材は、長さ方向に継ぎ足すことによって長さを延長させつつ前記支保工を所望の高さまで降下させる前記請求項1〜4に記載の杭式桟橋構築におけるスラブ施工用支保工の解体方法。
【請求項6】
前記搬送手段による搬送は、解体した支保工用の鋼材を水面上に浮かべた浮体に吊り下げて曳航する請求項1〜4又は5に記載の杭式桟橋構築におけるスラブ施工用支保工の解体方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2012−202106(P2012−202106A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−67431(P2011−67431)
【出願日】平成23年3月25日(2011.3.25)
【出願人】(000166627)五洋建設株式会社 (364)
【Fターム(参考)】