説明

杭穴の根固め部の築造方法、杭穴の掘削方法、根固め部の築造装置、掘削ヘッド

【課題】杭穴掘削、根固め層・杭周固定液層を効率よく形成して、良質の基礎杭を短時間で築造する。
【解決手段】地面20から、掘削ヘッド1で杭穴21の軸部22及び拡底部23を掘削する(a)(b)。第一吐出口6から縦方向32、第二吐出口7から横方向33に各種掘削液等を供給し、掘削刃5、11の刃先5a、11a付近に掘削液が供給される。次に、根固め液を第一吐出口7から縦方向32に、第二吐出口7から横方向33に噴射する(c)。根固め液を水平方向で放射状に噴射により、水平方向で幅広く根固め液が行き渡る。続いて、第一吐出口6、第二吐出口7から杭周固定液を噴射しながら掘削ロッド14を引き上げる(d)。第一吐出口6から根固め液等の必要量の大半を供給し、第二吐出口7から杭穴壁周辺に供給できる。次に、杭穴21内に、環状リブ27を形成した既製杭26を沈下させて、定着させる(e)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、第一吐出口、第二吐出口という異なる種類の吐出口を有する掘削ヘッドを使用した根固め部の築造方法、杭穴の掘削方法、この築造方法、掘削方法に使用する根固め部の築造装置、掘削ヘッドに関する。
【背景技術】
【0002】
支持杭では、杭穴の下端部に固化材を注入し、杭穴の軸部に比して固化強度の高いセメントミルクを注入して、基礎杭や鉄筋篭の下端部を根固め部内に埋設して、基礎杭を構築していた。
【0003】
この際、掘削ヘッドの掘削刃で杭穴を掘削し、そのまま、掘削ロッドの中空部を通して、掘削ヘッドを取り付けて、杭穴掘削し、杭穴の底部に強度を高めた根固め部を形成して、基礎杭の性能を高めていた。
【0004】
従来の技術では、掘削ヘッドの吐出口に弁を取り付けて、地上から弁の開閉及び開口量を操作して、所定量のセメントミルクを杭穴内に噴射していた(特許文献1)。
【特許文献1】特開2000−356086
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記従来の技術では、掘削ヘッドに取り付けた弁の開口量を操作して、所定量のセメントミルクが噴射できるようにしていたので、杭穴内の掘削土の性質によっては、弁の制御が難しい場合も生じる問題点があった。とりわけ、掘削ヘッドを回転又は昇降してセメントミルクと掘削土とを撹拌混合する場合には、生じるおそれがあった。
【0006】
この場合、セメントミルクと掘削土とを充分に撹拌混合して良質の根固め部を形成する工法においては、根固め部の質を高める要望が強かった。
【課題を解決するための手段】
【0007】
然るに、この発明は、地上で圧力を調節したセメントミルク等の固化材を掘削ヘッドから噴射するので、前記問題点を解決した。
【0008】
即ちこの発明は、第一吐出口及び第二吐出口を形成した掘削ヘッドを有する掘削ロッドにより掘削した杭穴内に、該掘削ヘッドの各吐出口より固化材を注入して、前記杭穴内に根固め部を形成する方法において、以下の手順をとることを特徴とした杭穴の根固め部の築造方法である。
(1)前記第一吐出口より前記固化材を縦方向に噴射し、同時に又は前後して、前記第二吐出口より前記固化材を横方向に噴射する。
(2) 前記掘削ヘッドで前記杭穴内を撹拌混合して、固化材層を形成して、
(3) その後、前記掘削ロッドを地上に引き上げる。
【0009】
また、他の発明は、第一吐出口及び第二吐出口を形成した掘削ヘッドを有する掘削ロッドにより掘削した杭穴内に、該掘削ヘッドの各吐出口より固化材を注入して、前記杭穴内に根固め部を形成する方法において、以下の手順をとることを特徴とした杭穴の根固め部の築造方法である。
(1) 前記杭穴の底に近接した位置に配置した前記第一吐出口から前記固化材を噴射し、同時に又は前後して、前記杭穴の壁に近接した位置に配置した第二吐出口から前記固化材を噴射する。
(2) 前記掘削ヘッドで、前記杭穴内を撹拌混合して、固化材層を形成して、
(3) その後、前記掘削ロッドを地上に引き上げる。
【0010】
前記根固め部の築造方法において、地上に設置した固化材吐出装置と掘削ロッドの中空部を通して掘削ロッドの吐出口に至る流路を形成し、前記固化材吐出装置で、前記吐出量又は吐出圧力を調節した固化材を、第一吐出口及び第二吐出口に夫々供給することを特徴とする根固め部の築造方法である。また、第一吐出口を大口径に形成し、あるいは固化材を大量又は低圧で噴射可能とし、第二吐出口を前記第一吐出口より、小口径に形成し、あるいは固化材を少量又は高圧で噴射可能とすることを特徴とする根固め部の築造方法である。
【0011】
また、他の発明は、下方に開口した第一吐出口及び放射方向に開口した第二吐出口を形成した掘削ヘッドを有する掘削ロッドを使用し、以下のような手順をとることを特徴とする杭穴の掘削方法である。
(1) 前記第一吐出口より掘削液を加圧して下方へ噴射し、同時に又は前後して、前記第二吐出口より掘削液を加圧して横方向に噴射しながら杭穴を掘削する。
(2) 所定の杭穴を掘削したならば、前記掘削ロッドを地上に引き上げる。
【0012】
また、他の発明は、掘削刃を有する掘削ヘッドの中空部と固化材輸送装置とを送液路で連結した根固め部の築造装置において、以下のような特徴を有する根固め部の築造装置である。
(1) 前記掘削ヘッド部に、第一吐出口、第二吐出口を形成し、
(2) 該第一吐出口に大断面の第一送液路の一側を開放し、前記第二吐出口に小断面の第二送液路の一側を開放し、
(3) 前記両送液路の他側を、固化材輸送装置の吐出口に、圧力又は流量を調節自在に連結した。
【0013】
更に、他の発明は、以下のような構成としたことを特徴とする掘削ヘッドである。
(1) 掘削ヘッドに、外気に開放する第一吐出口及び第二吐出口を形成した。
(2) 前記掘削ヘッドの中空部に、前記第一吐出口に至る第一送液路を形成し、
前記第二吐出口に至る第二送液路を形成した。
(3) 前記掘削ヘッドで杭穴を掘削した際に、該杭穴の穴底に近接した位置に前記第一吐出口を形成し、該杭穴の穴壁に近接した位置に前記第二吐出口を形成した。
【0014】
前記における大量とは、第一吐出口から出る固化材が第二吐出口から出る固化材より相対的に低圧で大量であり、逆に前記における少量とは、第二吐出口から出る固化材が第一吐出口から出る固化材より相対的に高圧で少量であることを意味する。例えば、
・第一吐出口から 0〜30kg/cm
・第二吐出口から 100kg/cm
程度とすることが考えられる。
【0015】
また、前記における第一吐出口の縦方向は、垂直下方に対して、45度程度の振れを含む。また、第二吐出口の横方向とは、水平方向に対して上方30度、下方60度程度の振れを含む。
【0016】
この発明を適用する掘削ヘッドは、ヘッド本体に揺動自在の掘削腕を形成した構造に適するが、スパイラル状の掘削ヘッド等その構造は任意であり、中空掘削ロッドの下端に、中空部と連通する吐出口を形成できれば、総て適用できる。
【発明の効果】
【0017】
(1) この発明は、掘削ヘッドの第一吐出口より固化材を縦方向に噴射し、第二吐出口より固化材を横方向に噴射するので、根固め部の形成に必要な量の固化材は第一吐出口より杭穴の根固め部の中心側に供給され、第二吐出口より杭穴根固め部の穴壁側にも確実に固化材が供給され、短時間で良質な杭穴根固め部を形成できる効果がある。
【0018】
また、杭穴底に近接した第一吐出口から固化材を噴射し、杭穴壁に近接した第二吐出口から固化材を噴射するので、杭穴壁まで充分かつ確実に根固め液を行き渡らせることができ、土塊を細かく粉砕し更に撹拌できるので、良質な根固め部を短時間で築造できる効果がある。
【0019】
(2) 更に、(1)の場合、第一吐出口より固化材を大量又は低圧で噴射し、第二吐出口より固化材を少量又は高圧で噴射する場合には、更に、効率良い固化材の充填ができ、良質の根固め部を短時間で築造できる効果がある。
【0020】
また、とりわけ、杭穴壁に近接した位置の第二吐出口から高圧噴射することにより、短時間で、根固め部の周辺部までくまなく固化材を充填できる。従って、均質で高強度の根固め部の築造が可能である。また、この場合、揺動する掘削腕を有する掘削ヘッドを使用した場合、掘削腕などで粉砕した土塊を高圧噴射により、さらに細かく粉砕して、撹拌むらのない良質な根固め部を築造できる。
【0021】
(3) また、第一吐出口から下方に掘削液を加圧噴出し、第二吐出口から放射状に掘削液を加圧噴出して杭穴を掘削すれば、掘削ヘッドと併用して効率良く掘削をすることができる効果がある。とりわけ、第二吐出口からの噴射により、大径に根固め部を形成する場合(例えば、杭穴の軸部径の2倍程度)であっても、根固め部を正確に掘削できる効果がある。あるいは、掘削ヘッドの負担を軽減して、杭穴を掘削することができる。
【0022】
また、杭穴を掘削する際に、第二吐出口から高圧噴射することにより土塊を細かく粉砕でき、杭穴の拡底部の穴壁まで確実に均質な杭穴(掘削孔)を造成することができる。
【0023】
(4) また、掘削ヘッド内に2つの液路を形成し、夫々を吐出口に開放するので、同時に異なる性質の液体を、杭穴内に供給できる効果がある。尚、異なる性質の液体として、濃度や圧力が異なる固化材が考えられる。
【0024】
(5) また、第二吐出口より固化材を横方向に噴射するので、根固め部を大径、例えば杭穴軸部径の2倍程度に形成した場合であっても、充分に根固め液を充填させて、良質の根固め部を構成できる効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
(1) 掘削刃5、5を有するヘッド本体2内に中空部が形成され、中空部内に大径の第一搬送パイプ8及びこれに沿わせて小径の第二搬送パイプ9を配置する。第一搬送パイプの下端は第一吐出口6に開放し、第二搬送パイプの下部が2つに分岐して夫々第二吐出口7、7に開放している。尚、第二搬送パイプの第二吐出口7は、少なくとも1つあれば可能であるが、複数形成することが望ましい。
【0026】
掘削ロッド14にも中空部が形成され、中空部内に大径の第一搬送パイプ8Aと、これに沿わせた小径の第二搬送パイプ9Aが配置されている。
【0027】
掘削ロッド14の下端連結部15に、掘削ヘッド1の連結部4を嵌挿して連結する。この際、掘削ヘッド1の第一搬送パイプ8、第二搬送パイプ9と、掘削ロッド14の第一搬送パイプ8A、第二搬送パイプ9Aが連結部4内で連結される(図3(a))。
【0028】
(2) 前記において、大径の第一搬送パイプ8と小径の第二搬送パイプ9とを沿うように配置したが(図3(a))、第一搬送パイプ8内に、第二搬送パイプ9を配置することもできる(図3(b))。この場合、第一搬送パイプ9の下部で、分岐した第二搬送パイプ9、9が貫通して、第二搬送パイプ9、9は第一吐出口7、7に開放する。
【0029】
また、この場合、掘削ロッド14内でも、第一搬送パイプ8A内に、第二搬送パイプ9Aが配置される(図3(b))。
【0030】
(3) 第一搬送パイプ8Aを、第一搬送パイプ8Bを介して、セメントミルク搬送装置17の第一供給口(大径)18に連結する。第二搬送パイプ9Aを、第二搬送パイプ9Bを介して、セメントミルク搬送装置17の第二供給口(小径)19に連結する(図1(a))。
【0031】
(4) セメントミルク搬送装置17の第一供給口18を調節することにより、比較的低圧で大量のセメントミルクを掘削ヘッド1の下端の第一吐出口6から杭穴内に供給できる。また、セメントミルク搬送装置17の第二供給口19を調節することにより、比較的少量ではあるが、高圧のセメントミルクを掘削ヘッド1の側面の第二吐出口7、7から杭穴内に供給できる。
【0032】
これにより、杭穴根固め部の穴壁周辺にも確実にセメントミルクを充填でき、良質の根固め部を形成できる。
【0033】
(5) また、杭穴掘削時に、セメントミルク搬送装置17を使って、セメントミルクではなく、水等各種掘削液を各供給口18、19から各吐出口6、7に搬送すれば、効率良い掘削も実現できる。
【0034】
(6)このような、第一第二吐出口を使用した掘削方法を採用すれば、とりわけ杭穴の軸部に比して拡底部径が大きい杭穴の場合に特に有効である。例えば、杭穴の軸部径1000mmで形成し、根固め部を拡径して2000mmとするような杭穴であっても、寸法精度が良い杭穴(即ち、所定のサイズの根固め部を均質精巧に)を造ることができる。根固め部内に土塊が無く、より均質なソイルセメントが充填され、杭穴壁も整えられた円筒形で築造できる。
【実施例1】
【0035】
図面に基づいて、この発明の実施例を説明する。
【0036】
[1]掘削ヘッド1の構成
【0037】
この発明の掘削ヘッド1は、中空のヘッド本体2の側面2aに水平軸3を形成して、この水平軸3に揺動自在に掘削腕10、10を取り付けて構成する。ヘッド本体2は、上端部に、通路を有する中空の掘削ロッド14の下端連結部15に連結できる連結部4を形成して、連結部4を通して、掘削ロッド14の通路とヘッド本体2の中空部とが連通できる。また、ヘッド本体2の下端部には、固定掘削刃5、5が下方に向けて形成されている。また、掘削腕10の下端部に掘削刃11、11を形成してある。
【0038】
また、ヘッド本体2の下端で、固定掘削刃5、5の間に第一吐出口6を形成し、またヘッド本体2の側面で、水平軸3と略直交する側面2bに、第二吐出口7を形成する。従って、第二吐出口7は、掘削腕10、10の揺動面とは異なる面に形成される。
【0039】
掘削ロッド2の中空部を挿通した大径の第一搬送パイプ8が、ヘッド本体2内に至り、ヘッド本体2の下端の第一吐出口6に開放している。また、第一搬送パイプ8に沿って、第二搬送パイプ9が挿通され、第二搬送パイプ9は、ヘッド本体2の中空部に至り、中空部内で分岐して、2つの第二吐出口7、7に開放している。2つの第二吐出口7、7はほぼ同一高さに設定されている。
【0040】
第一吐出口6、第二吐出口7には、夫々開閉弁(図示していない)を取り付けてある。以上のようにして、掘削ヘッド2を構成する(図2)。
【0041】
[2]掘削ロッド14、掘削装置30
【0042】
(1) 掘削ロッド14は、掘削ヘッド2の連結部4に嵌装できる下端連結部15を有し、全長に亘り、中空部が形成されている。中空部内に、掘削ヘッド2内の第一搬送パイプ8に連結する第一搬送パイプ8A、掘削ヘッド2内の第二搬送パイプ9に連結する第二搬送パイプ9A、が夫々配置されている(図3(a)、図2)。第一搬送パイプ8と第一搬送パイプ8Aとは同一内径で、第二搬送パイプ9と第二搬送パイプ9Aとも同一内径で、夫々連結部4内で連結されている。また、掘削ヘッド2の上方にほぼ全長に亘って、杭穴壁を均す為の練付ドラム16を取り付けてある(図1(b)〜(d))。
【0043】
(2) オーガに連結した掘削ロッド14の先端15に掘削ヘッド1を連結してある。
【0044】
また、地上20に置いてあるセメントミルク輸送装置(固化材輸送装置)17の第一供給口(大径)18に第一搬送パイプ8Bの一端、第二供給口(小径)19に第二搬送パイプ9Bの一端が夫々連結されている。第一搬送パイプ8Bの他端を掘削ロッド14の第一搬送パイプ8Aに接続し、第二搬送パイプ9Bの他端を掘削ロッド14の第二搬送パイプ9Aに接続する(図1(a))。
【0045】
従って、ほぼ同一内径で形成される第一搬送パイプ8、8A、8Bが一体に連結され、ほぼ同一内径で形成される第二搬送パイプ9、9A、9Bが一体に連結される。
【0046】
(3) 掘削ヘッド1を連結した掘削ロッド14と、セメントミルク輸送装置17と、これを連結した搬送パイプ8B、9Bとから掘削装置30を構成する(図1(a))。
【0047】
[3]掘削方法
【0048】
(1) 所定の掘削位置で、掘削ロッド14を回転させて、杭穴21の軸部22を掘削する(図1(a))。この際、必要ならば、前記第一吐出口6及び/又は第二吐出口7から水等の各種掘削液等を供給する。従って、掘削ヘッド1の第一吐出口6から垂直下方(矢示32方向)に向けて比較的大量に比較的小圧力で掘削液が、杭穴21の中心側に加圧して噴射され、固定掘削刃5、5の刃先付近に掘削液が供給される。また、掘削ヘッド2の第二吐出口7、7から水平放射状(矢示33、33方向)に比較的少量で比較的大圧力で掘削液が、杭穴の外周側に加圧して噴射され、掘削腕10、10の掘削刃11付近に掘削液が供給される。
【0049】
各掘削刃5、11の刃先5a、11a付近に掘削液が供給されるので、少ない量の掘削液の供給でも効率良い掘削が実現できる。とりわけ、掘削腕10の掘削刃11、11では杭穴壁21aを削ぐように掘削がなされるので、高圧での掘削液の噴射により杭穴壁21aの表面が強制的に湿潤状態となり崩れやすくなるので、掘削効率を高められる。ここで、杭穴軸部の崩落を防止するためには、掘削ロッド14に、杭穴の内壁面21aを均す練付ドラム16、あるいは、掘削土を粉砕撹拌する撹拌棒16aを装着することが有効である。
【0050】
(2) 所定の杭穴21の軸部22の掘削に続き、掘削ロッド14(掘削ヘッド2)を逆転させて、杭穴拡底部23を掘削する(図1(b))。拡底部23の掘削は、
a.所定の地盤強度が確認される地盤まで軸部22の径で掘削し、その後、逆転して掘削径を拡大して、穴壁を拡げるように、穴底壁を拡大掘削して、拡底部23を形成する。
b.予め設定した深さに至ったならば、掘削ロッド14を逆転して、その深さから下方を、初めから拡大掘削して拡底部23を形成する。所定の地盤強度が確認される地盤まで、拡大掘削を続ける。
このようないずれの掘削方法を採用しても可能である。
【0051】
但し、前者aは地盤強度が比較的低く、崩れ易く掘削が容易な場合に適している。また、後者bは、地盤強度が比較的高く、掘削ロッド14にねじりに対する強度が必要であり、掘削性が良くない場合に有効である。
【0052】
また、拡底部23を掘削する際にも、前記軸部の掘削(1)と同様に、必要ならば、第一吐出口6から垂直下方(示32方向)に掘削液を吐出し、第二吐出口7、7から水平放射状(矢示33、33方向)に掘削液を吐出する(図1(a)参照)。
【0053】
(3) 所定の拡底部23の掘削が完了したならば、掘削ヘッド2の第一吐出口7から根固め液(富配合のセメントミルク)を垂直下方(矢示32方向)に向けて、噴射する。同時に、掘削ヘッド2の第二吐出口7、7から根固め液を水平放射状(矢示33、33方向)に噴射する(図1(c)、図2)。根固め液を水平方向で放射状に噴射により、水平方向で幅広く根固め液が行き渡る。ここで、当該地盤で高支持力を発現する為には、根固め液は、掘削土と撹拌混合した後に支持地盤の強度以上の固化強度となるように、調整することが望ましい。
【0054】
この際に、掘削ヘッド1を回転し、また拡底部23内で少なくとも1回は掘削ヘッド1を昇降させて、練付ドラム16で杭穴壁21aを均しつつ、セメントミルクと掘削土とを撹拌混合させることが望ましい。また、崩れやすい杭穴壁21aに向けて、第二吐出口7、7からの根固め液が直接に当たるので杭穴壁21aが強化されると共に、土塊が細かく粉砕・撹拌され、均質で高品質な拡大根固め部24を形成できる。また、複数箇所からのセメントミルクの噴射で、より短時間で、拡大根固め部24を形成できる。
【0055】
以上のようにして、拡大根固め部24の築造が完了する。
【0056】
(4) 続いて、掘削ヘッド1の第一吐出口6から比較的小圧力で大量に、杭周固定液(貧配合のセメントミルク)を噴射しながら、掘削ロッド14を地上20に向けて引き上げる。同時に第二吐出口7、7からも比較的大圧力で少量の杭周固定液を噴射する(図1(d))。第一吐出口6からの杭周固定液で必要量の大半を供給でき、かつ第二吐出口7、7からの杭周固定液で、崩れやすい杭穴壁付近も杭周固定液が直接に当たり杭穴壁周辺にも貯まり、穴壁が強化される。
【0057】
また、この際、掘削ロッド14を引き上げながら掘削ヘッド1を回転させれば、杭穴軸部22内に、より均質に杭周固定液を充填できる。掘削時と同様に、杭穴壁を均す為の練付ドラム16、セメントミルクを撹拌する撹拌バー16aを形成してあれば、より品質の確かな杭穴21を築造できる。
【0058】
(5) 続いて、杭穴21内に、下端部に環状リブ27、27を形成したコンクリート製の既製杭26を沈下させて、環状リブ27が拡大根固め部24内に位置する状態で、定着させる(図1(e))。拡大根固め部24の根固め液が固化したならば、支持地盤の強度以上となる根固め部24を形成できる。
【0059】
(6) また、実施例のようなヘッド本体2に取り付けた掘削腕10、10を揺動させる掘削ヘッド1を使用して杭穴を掘削する方法は、掘削ヘッド1の形状が比較的小型にもかかわらず、従来に比して大径の杭穴、更に大径の拡底部を正確に掘削でき、杭穴掘削効率を大幅に改善させていた。しかし、この掘削腕10、10を使用した掘削ヘッド1であって、掘削腕10、10への負担が大きく、掘削時間が掛かるような地盤、土塊の粉砕が充分にできない地盤なども存在した。この場合であっても、第一第二吐出口7、8を併用すれば、掘削腕10、10への負担を軽減して、短時間で、かつ土塊を粉砕して、大径の拡底部を正確かつ効率的に掘削できる。
【0060】
[3]他の実施例
【0061】
前記実施例において、第二吐出口7を掘削ヘッド1の側面に形成したが、掘削腕10、10に形成することもできる。この場合には、掘削腕10を中空に形成し、第二吐出口7まで第二搬送パイプ9、9を通す(図示していない)。
【0062】
また、前記実施例において、掘削時に掘削液を注入したが、掘削液の注入は省略することもできる。
【0063】
また、前記実施例において、「固定掘削刃5、掘削腕10、10の掘削刃11を使用せず」あるいは、「固定掘削刃5及び掘削刃11の一方又は両方を省略した掘削ヘッドを使用して」、第一吐出口6、第二吐出口7からの掘削液の加圧噴出のみで、杭穴を掘削することもできる(図示していない)。
【0064】
また、前記実施例において、根固め部を拡大根固め部24としたが、杭穴軸部22と同径で根固め部を掘削することもできる(図示していない)。
【0065】
また、前記実施例において、第一吐出口6には、第一供給口18、第一搬送パイプ8、8A、8Bを介して杭穴充填物を充填し、また、第二吐出口7には、第二供給口19、第二搬送パイプ9、9A、9Bを介して杭穴充填物を充填できるので、異なる種類の杭穴充填物を夫々吐出口6、7に供給することができる。例えば、第二吐出口7から、杭穴壁21aを強化する各種混和剤などを混入したセメントミルクを吐出することもできる(図示していない)
また、同質の杭穴充填材を吐出する場合には、従来のように、各吐出口6、7のバルブの開閉を調節することにより、1本の搬送パイプで、縦方向(又は杭穴底に近接した側)と横方向(又は杭穴壁に近接した側)に所定量の杭穴充填物を吐出できる(図示していない)。
【0066】
また、前記第二吐出口7は、水平方向に設けたが、若干斜め上方又は斜め下方に向けて設置し、あるいは角度を変更可能に取り付けることもできる(図示していない)。
【0067】
また、前記実施例において、掘削ヘッド2を取り付けて掘削ロッド14を構成したが、掘削ロッド14の下端部に掘削ヘッド2を一体に形成することもできる(図示していない)。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】(a)〜(e)はこの発明の実施例の築造方法を説明する概略した縦断面図である。
【図2】この発明の実施例に使用する掘削ヘッドの拡大正面図である。
【図3】(a)(b)は、同じくヘッド内のパイプの配置を表す概念図である。
【符号の説明】
【0069】
1 掘削ヘッド
2 ヘッド本体
3 水平軸
4 ヘッド本体の連結部
5 ヘッド本体の固定掘削刃
6 ヘッド本体の第一吐出口
7 ヘッド本体の第二吐出口
8 ヘッド本体の第一搬送パイプ
9 ヘッド本体の第二搬送パイプ
10 掘削腕
11 掘削腕の掘削刃
14 掘削ロッド
15 掘削ロッドの下端連結
16 練付ドラム
16a 撹拌バー
17 セメントミルク輸送装置
18 セメントミルク輸送装置の第一供給口
19 セメントミルク輸送装置の第二供給口
20 地面(地上)
21 杭穴
22 杭穴の軸部
23 杭穴の拡底部
24 拡大根固め部
26 既製杭
27 既製杭の環状リブ
30 掘削装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一吐出口及び第二吐出口を形成した掘削ヘッドを有する掘削ロッドにより掘削した杭穴内に、該掘削ヘッドの各吐出口より固化材を注入して、前記杭穴内に根固め部を形成する方法において、以下の手順をとることを特徴とした杭穴の根固め部の築造方法。
(1)前記第一吐出口より前記固化材を縦方向に噴射し、同時に又は前後して、前記第二吐出口より前記固化材を横方向に噴射する。
(2) 前記掘削ヘッドで前記杭穴内を撹拌混合して、固化材層を形成して、
(3) その後、前記掘削ロッドを地上に引き上げる。
【請求項2】
第一吐出口及び第二吐出口を形成した掘削ヘッドを有する掘削ロッドにより掘削した杭穴内に、該掘削ヘッドの各吐出口より固化材を注入して、前記杭穴内に根固め部を形成する方法において、以下の手順をとることを特徴とした杭穴の根固め部の築造方法。
(1) 前記杭穴の底に近接した位置に配置した前記第一吐出口から前記固化材を噴射し、同時に又は前後して、前記杭穴の壁に近接した位置に配置した第二吐出口から前記固化材を噴射する。
(2) 前記掘削ヘッドで、前記杭穴内を撹拌混合して、固化材層を形成して、
(3) その後、前記掘削ロッドを地上に引き上げる。
【請求項3】
地上に設置した固化材吐出装置と掘削ロッドの中空部を通して掘削ロッドの吐出口に至る流路を形成し、
前記固化材吐出装置で、前記吐出量又は吐出圧力を調節した固化材を、第一吐出口及び第二吐出口に夫々供給することを特徴とする請求項1又は2記載の根固め部の築造方法。
【請求項4】
第一吐出口を大口径に形成し、あるいは固化材を大量又は低圧で噴射可能とし、第二吐出口を前記第一吐出口より、小口径に形成し、あるいは固化材を少量又は高圧で噴射可能とすることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項記載の根固め部の築造方法。
【請求項5】
下方に開口した第一吐出口及び放射方向に開口した第二吐出口を形成した掘削ヘッドを有する掘削ロッドを使用し、以下のような手順をとることを特徴とする杭穴の掘削方法。
(1) 前記第一吐出口より掘削液を加圧して下方へ噴射し、同時に又は前後して、前記第二吐出口より掘削液を加圧して横方向に噴射しながら杭穴を掘削する。
(2) 所定の杭穴を掘削したならば、前記掘削ロッドを地上に引き上げる。
【請求項6】
掘削刃を有する掘削ヘッドの中空部と固化材輸送装置とを送液路で連結した根固め部の築造装置において、以下のような特徴を有する根固め部の築造装置。
(1) 前記掘削ヘッド部に、第一吐出口、第二吐出口を形成し、
(2) 該第一吐出口に大断面の第一送液路の一側を開放し、前記第二吐出口に小断面の第二送液路の一側を開放し、
(3) 前記両送液路の他側を、固化材輸送装置の吐出口に、圧力又は流量を調節自在に連結した。
【請求項7】
以下のような構成としたことを特徴とする掘削ヘッド。
(1) 掘削ヘッドに、外気に開放する第一吐出口及び第二吐出口を形成した。
(2) 前記掘削ヘッドの中空部に、前記第一吐出口に至る第一送液路を形成し、
前記第二吐出口に至る第二送液路を形成した。
(3) 前記掘削ヘッドで杭穴を掘削した際に、該杭穴の穴底に近接した位置に前記第一吐出口を形成し、該杭穴の穴壁に近接した位置に前記第二吐出口を形成した。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−233749(P2006−233749A)
【公開日】平成18年9月7日(2006.9.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−14569(P2006−14569)
【出願日】平成18年1月24日(2006.1.24)
【出願人】(000176512)三谷セキサン株式会社 (91)
【Fターム(参考)】