板ガラス接合用応力発生部材の使用方法
【課題】従来の板ガラスの接合方法である摩擦接合において、接合用ボルト・ナットなどで強く板ガラスを締め付けると、締め付け部に極所的な力が生じ、特に板ガラスの孔端部から破損しやすいという問題があった。
【解決手段】板ガラスG1と接合部材3を重ね、板ガラスと接合部材に形成した貫通孔にボルトを挿通し、ボルト1に螺合させたナット2とで板ガラスG1と接合部材3を締め付けて生じるボルト1軸方向の60kN以上、300kN以下の力により板ガラスG1と接合部材3を接合した板ガラスG1の接合部において、ヤング率、180GPa以上、230GPa以下、ロックウェル硬度、HRC35以上、HRC45以下の応力発生部材4を板ガラスG1と接合部材3との間に挟みこみ、板ガラスG1に圧接させることを特徴とする板ガラス接合用応力発生部材4を使用する接合方法を用いる。
【解決手段】板ガラスG1と接合部材3を重ね、板ガラスと接合部材に形成した貫通孔にボルトを挿通し、ボルト1に螺合させたナット2とで板ガラスG1と接合部材3を締め付けて生じるボルト1軸方向の60kN以上、300kN以下の力により板ガラスG1と接合部材3を接合した板ガラスG1の接合部において、ヤング率、180GPa以上、230GPa以下、ロックウェル硬度、HRC35以上、HRC45以下の応力発生部材4を板ガラスG1と接合部材3との間に挟みこみ、板ガラスG1に圧接させることを特徴とする板ガラス接合用応力発生部材4を使用する接合方法を用いる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、貫通孔を擁する板ガラスと接合部材を重ね、貫通孔に挿通させた一対の締め付け部材の締め付けにより生じる力で板ガラスと接合部材を接合する板ガラスの接合部、または、貫通孔を擁する少なくとも2枚以上の板ガラスを重ね、貫通孔に挿通させた一対の締め付け部材の締め付けにより生じる力で板ガラス同士を接合する板ガラスの接合部に使用し、板ガラス内部に応力を発生させるための板ガラス接合用応力発生部材の使用方法に関する。
【0002】
特に、本発明は、貫通孔を擁する板ガラスと接合部材を重ね、貫通孔にボルトを挿通し、ボルトに螺合させたナットとで板ガラスと接合部材を締め付けて生じるボルト軸方向の力により板ガラスと接合部材を接合する板ガラスの接合部、または、貫通孔を擁する少なくとも2枚以上の板ガラス同士を重ね、貫通孔にボルトを挿通しボルトに螺合させたナットとで少なくとも2枚以上の板ガラスを締め付けて生じるボルト軸方向の力により板ガラス同士を接合する板ガラスの接合部において、板ガラス内部に圧縮応力を発生させる板ガラス接合用応力発生部材の使用方法に関する。
【0003】
本発明の板ガラス接合用応力発生部材の使用方法は、建築分野に使用され、使用される建築物は、大型建築物であるガラス壁、ガラス屋根、およびガラススクリーン、例えば、リブガラスを用いたリブガラススクリーンなどが挙げられる。
【背景技術】
【0004】
ガラス壁、ガラス屋根、大板ガラスを使用した開口部構成よりなるガラススクリーンなどの大型建築物において、板ガラスを高強度で接合すると、設計の自由度が高められる。例えば、目立つ金属方立の代りに、目立たないガラス方立て(リブガラス)を用いて、正面ガラス(フェイスプレート)に加わる風荷重を支持する工法に、ガラス・スタビライザー工法がある。
【0005】
接合部材を介して板ガラスを高強度で接合することを、ガラス・スタビライザー工法に用い、リブガラススクリーンを建設すれば、リブガラスに取り付けた接合板を介してフェイスプレートと接合することも可能であり、接合部材を介してリブガラス同士、フェイスプレート同士が接合されることから、リブガラススクリーンの設計の自由度が高まる。また、板ガラス同士を高強度で接合することを、大型建築物に用いることができれば、大型建築物の設計の自由度が高まる。
【0006】
従来の板ガラスの接合方法には、板ガラスと接合部材としての金属板とを重ねて、板ガラスと金属板に形成した貫通孔に一対の接合部材、例えば、ボルト・ナットを通して締めて固定することで、板ガラス同士を接合する、板ガラスを建造物などに接合する際に使用される摩擦接合がある。摩擦接合は、一対の締め付け部材で、板ガラスと接合部材とを厚み方向に締め付けて、板ガラスと接合部材との摩擦力で荷重を受け止める接合方法である。
【0007】
摩擦接合においては、接合部を増やし、一対の締め付け部材である、例えば、接合用のボルト・ナットを多く用いることで受け止められる支持荷重を大きくする。摩擦接合において、接合部を増やし接合ボルト・ナットを多く用い、個々の接合部において受け止める荷重を大きくしなかった背景には、ガラスは脆性材料であり、締め付ける際に一箇所に大きな力がかかると割れることがあった。
【0008】
一方、板ガラスと他の構造部材とを接合するために板ガラスに添接させた、あるいは板ガラスと板ガラスに掛け渡しした金属板などの接合部材の間に接着シートを挟みこみ、板ガラスと接合部材を接着し接合強度を得、加えて板ガラスと接合部材に設けた貫通孔に、一対の締め付け部材である接合用ネジ部材を貫通させて締め込み、板ガラスと接合部材を固定し留める方法が、特許文献1〜7にて開示されている。
【0009】
例えば、特許文献1には、板ガラスと接合部材との間に、未硬化の接着剤を含浸させてある繊維材からなるシートを挟んで、板ガラスと接合部材とに形成した貫通孔に挿通したネジ部材で締め付け固定するガラスパネルの接合方法が開示されている。接合後のガラスパネルと板材との相対変位の発生を抑制するために、板ガラスと接合部材との間に未硬化の接着剤を含浸させてある繊維材からなるシートを挟んで締め付け接合しておくことにより、その接着剤が硬化するとシートがガラスパネルと板材の双方の表面に沿った形状に固まり、シートと一体に硬化した強固な接着層を介して、ガラスパネルと板材とを接着接合できると開示されている。
【0010】
また、特許文献3には、特許文献1よりも接合部の耐久力を高めるため、接着剤を含浸させてある繊維材からなるシートに含浸させた接着剤が未硬化の状態で締め付け、接着剤硬化後に、所定の軸力に再度締め付けて接合する脆性部材の接合方法が開示されている。
【0011】
さらに、特許文献7には、上記の接着による接合方法において、雄ネジ部材と雌ネジ部
材などの締め付け具にて板ガラスと接合部材を締め付ける際に、貫通孔に充填剤を介在させて各締め付け具の外周面と板ガラス側貫通孔の内周面との間に隙間が生じない状態で締め付けることによって、板ガラスと接合部材との間にわたって応力が作用した際に、複数の板ガラス側貫通孔に作用する応力が均一化されるようにして、特定の板ガラス側貫通孔に応力が集中するのを回避して、板ガラスの損傷を抑制する板ガラスの接合方法が開示されている。
【0012】
特許文献1〜7に記載の板ガラスの接合方法は、板ガラスと接合部材とを強く締め付けて接合するものでなく、板ガラスと接合部を接着して接合強度を得る方法である。板ガラスの割れの発生を懸念して接合用のネジ部材による締め付けは程々にし、接合強度は板ガラスと接合部材の接着に依存している。
【0013】
詳しくは、特許文献3によれば、板ガラスに厚さが12mm〜19mmの強化ガラスであり、且つ、使用する接着剤がエポキシ系接着剤の場合、接合用ネジ部材の締め付け軸力は29.4kN〜53.9kN程度が望ましいとされている。ガラスに貫通孔を開ける場合、孔周りは荒ズリ加工されるため、ガラスの孔周りの強度は、ガラス表面の強度に比べて弱く、ガラスの孔周りに60kN程度の締め付け力が作用するとガラスが破損することがあった。そのため、孔周りに締め付け力が作用する特許文献1や特許文献3の方法では、締め付け軸力を上げることで接合箇所の耐久性を高めるには限界があった。
【特許文献1】特開2000−87924号公報
【特許文献2】特開2000−87925号公報
【特許文献3】特開2002−155909号公報
【特許文献4】特開2002−162325号公報
【特許文献5】特開2002−266818号公報
【特許文献6】特開2004−340178号公報
【特許文献7】特開2003−327453号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
従来の板ガラスの接合方法である摩擦接合において、板ガラスの貫通孔に挿入した一対の締め付け部材、例えば、ボルト・ナットで強く板ガラスを締め付けると、締め付け部に局所的な力が生じ、特に板ガラスの貫通孔の端部から破損しやすいという問題があった。
【0015】
特に、貫通孔を設けた板ガラス同士を重ねて、ボルト・ナットなどで強く板ガラスを締め付けることは、板ガラスの貫通孔の端部から破損しやすいため、行われたことはなかった。
【0016】
また、前述した従来の板ガラスと接合部材を接着する接合方法においては、板ガラスの接合部をネジ部材で留めてはいるものの、接合強度は板ガラスと接合部材である板材の間に挟みこんだ接着シートによる接着に頼っており、一対の締め付け部材として、例えば、ボルト・ナットで強く締め付けて生じるボルト軸方向の力を、板ガラス内部に強い圧縮応力が生じるまで与え、ガラス自体の剛性を利用して板ガラスと板材を接合するものではなかった。
【0017】
また、接着シートによる接着により接合するため、接合後の解体が困難である。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明は、上記問題を解決するための、建築物を構成する板ガラスの接合部において、一対の締め付け部材の締め付けによる力、例えば、ボルト・ナットで強く締め付けて発生するボルト軸方向の力により、板ガラス内部に強い圧縮応力を発生させることで、強い接合強度を得る建築分野で使用する板ガラス接合用応力発生部材の使用方法を提供することを目的とする。
【0019】
詳しくは、本発明の板ガラス接合用応力発生部材の使用方法は、応力発生部材として、例えば、貫通孔を有する座金を使用し、板ガラスの貫通孔の孔周りには、一対の締め付け部材の締め付けによる力、例えば、ボルト・ナットの締め付けによるボルト軸方向の力を加えないで、孔周りを避けて、ボルト・ナットの締め付けによるボルト軸方向の力を板ガラスに加え、板ガラス内部にクラックの発生および伝播を抑制する圧縮応力を生じさせて、見掛けの強度を増加させることを特徴とし、板ガラスと接合部材を強固に接合する、または接合部材を介して板ガラス同士を強固に接合する、あるいは接合部材を介さないで少なくとも2枚以上の板ガラスを重ね、板ガラス同士を強固に接合するもので、接合部がずれることのない耐久性の高い板ガラスと接合部材との接合部、板ガラス同士の接合部を提供するものである。
【0020】
本発明の板ガラス接合用応力発生部材の使用方法は、一対の締め付け部材であるボルト・ナットなどの強力な締め付けにより生じるボルト軸方向の力を、板ガラスと接合部材の間、または重ねた板ガラスの間、ボルト頭と板ガラスの間、ナットと板ガラスの間に挟みこみ、板ガラスに圧接する応力発生部材、例えば、座金などを介して伝達する際、座金の内径を板ガラスの貫通孔の直径より大きくし同心状に配置することで、割れが発生しやすい板ガラスの孔部を避けてボルト軸方向の力を伝えること、また板ガラスに接触させた座金を介し、板ガラスに直に小面積でボルト軸方向の力を伝え、板ガラス内部に強い圧縮応力を生じさせ、圧縮応力を生じさせた板ガラス圧縮部位のクラックの発生および伝播を抑制し、板ガラスの見掛けの強度を増加させることを特徴とする。
【0021】
なお、一対の締め付け部材には、一対の油圧部材、バネ部材、ネジ部材が挙げられるが、トルクレンチなどで締め付け力の調整ができ、ボルト・ナットの締め付けにより強いボルト軸方向の力が容易に得られるボルト・ナットを用いることが好ましく、特に、強いボルト軸方向の力が得られ、ボルト軸方向の力の調整が容易な六角ボルト・ナットを用いることが好ましい。
【0022】
このように、本発明の板ガラス接合用応力発生部材の使用方法は、板ガラスに応力発生部材を強く圧接することで、板ガラス自体の剛性を利用した強い接合強度を得る、いうなれば圧縮接合というべき概念である全く新規の板ガラスの接合構造に関する。
【0023】
板ガラス内部に強い圧縮応力を生じさせると、板ガラス圧縮部位のクラックの発生および伝播の方向性が制限されるので、板ガラス圧縮部位のクラックの発生および伝播が抑制され、強い圧縮応力により、板ガラスの見掛けの強度が増加する。
【0024】
即ち、圧縮接合は、前述の摩擦接合、ガラスと金属板材を接着する接合方法とは全く異なる考えの接合構造であり、一対の締め付け部材である、例えば、ボルト・ナットの強力な締め付けによるボルト軸方向の力を、板ガラスと接合部材の間、または重ねた板ガラスの間、ボルト頭と板ガラスの間、ナットと板ガラスの間に挟んだ応力発生部材、例えば、座金を強く板ガラスに圧接させて、板ガラス内部に強い圧縮応力が生じるように伝達し、圧縮応力を生じさせた板ガラス圧縮部位におけるクラックの発生および伝播を抑制し、板ガラスの見掛の強度を増加させることを特徴とし、板ガラス自体の剛性を利用して板ガラスと接合部材とを接合する、または、接合部材を介して板ガラス同士を接合する、あるいは接合部材を介さないで少なくとも2枚以上の板ガラスを重ねて板ガラス同士を接合するものである。
【0025】
本発明の板ガラス接合用応力発生部材の使用方法によれば、応力発生部材に座金など使用し、座金の貫通孔の直径、言い換えれば、座金の内径を、板ガラスの貫通孔の直径より大きくして、同心状に配置して締め付けることで、割れが発生しやすい板ガラスの貫通孔部を避けて、一対の締め付け部材の締め付けにより生じる強い力、例えば、ボルト・ナットの締め付けによるボルト軸方向の力を伝えられ、また座金を介して小面積でボルト軸方向の力を伝えるので、座金からの強い単位面積当たりの力により、板ガラスに対する強い圧接が得られ、板ガラスと接合部材に強い接合強度が得られる。
【0026】
本発明において、圧接とは、応力発生部材を板ガラスに強く圧することで、応力発生部材を強い力で板ガラスに接触させることを指す。応力発生部材とは、板ガラスを強く圧し、板ガラス内部に圧縮応力を発生させる部材である。
【0027】
さらに、接合構造を解体するときはボルト・ナットを弛めればよいので、板ガラスと接合部材を接着する従来の接合方法に比べ解体が容易である。
【0028】
応力発生部材の貫通孔の直径を、前記板ガラスに形成した貫通孔の直径より大きくすることにより、板ガラスにあけた貫通孔の端部にボルト・ナットの締め付けによるボルト軸方向の力が作用しなくなり、大きなボルト軸方向の力で板ガラスに大きな圧縮応力を生じさせることが可能となり、耐久性の高い板ガラスの接合構造が得られた。即ち、橋やビル等の鋼構造物の接合方法として用いられている、高力ボルト摩擦接合で使用されるボルト・ナットの締め付けによる60kN以上のボルト軸方向の力で板ガラスと接合部材、あるいは板ガラス同士を締め付けても板ガラスが破損せず、強い接合強度が得られた。
【0029】
板ガラスの接合構造に圧縮接合を用いることで、板ガラスの接合部を、橋やビル等の鋼構造物の接合方法として用いられている高力ボルト摩擦接合で導入される強力なボルト軸方向の力、60kN以上で、板ガラスと接合部材を締め付けることが可能なった。即ち、板ガラスをボルト・ナットで締め付ける際のボルト軸方向の力を、今までにない60kN以上に容易に掛けられる。尚、300kNより大きいと、板ガラス本来の高い剛性があっても破損の恐れがある。本発明の板ガラス接合用応力発生部材の使用方法において、応力発生部材は、ボルト・ナットの強力な締め付けにより、変形しない硬さおよび剛性が必要である。
【0030】
前記応力発生部材、例えば、座金が、ボルト・ナットの締め付けによる60kN以上のボルト軸方向の力に耐え、板ガラス内部に圧縮応力が発生するには、曲げ剛性、たわみ剛性と称され、弾性範囲内において応力に対する歪の値を決める定数であるヤング率において、応力発生部材のヤング率が、180GPa以上であることが好ましい。ヤング率の上限は、鋼鉄など、高剛性の金属におけるヤング率の上限であり、230GPa以下である。230GPaより大きいヤング率を要する材料は実用的ではない。180GPa以上、230GPa以下の範囲のヤング率を有する材料としては、炭素鋼、ステンレス鋼が挙げられる。好ましくは190GPa以上、220GPa以下である。
【0031】
また、前記応力発生部材、例えば、座金が、ボルト・ナットの締め付けによる60kN以上のボルト軸方向の力に耐え、板ガラス内部に圧縮応力が発生するには、応力発生部材が高硬度であることが必要であり、圧子を用い、試験片に基準荷重、9.8N、試験荷重、再び基準荷重、9.8Nを加えて圧子の侵入深さの差で求めた硬さであるロックウェル硬度において、応力発生部材のロックウェル硬度が、HRC、35以上であることが好ましい。ロックウェル硬度の上限は、鋼鉄などの高硬度の金属のロックウェル硬度の上限であり、HRC、45以下である。45より大きいロックウェル硬度を要する材料は実用的ではない。
【0032】
また、一対の締め付け部材、例えば、ボルト・ナットの締め付けによる60kN以上のボルト軸方向の力を板ガラスの与え、板ガラス内部に圧縮応力を発生させるには、呼び径、M12〜M24のボルト・ナットが用いることが好ましく、それに対応して、本発明の板ガラス接合用応力発生部材の使用方法における座金の内径は、17.0mm以上であることが好ましい。M12より小さいボルトは、ボルト・ナットの締め付けによる60kN以上のボルト軸方向の力を伝えるには不向きであり、座金の内径、17.0mm未満は本発明において使用されない。M24より大きいボルトを使うのは実用的でなく、座金の内径が32.0mmより大きい座金を使うことは、実用的でない。本発明において、座金の内径は、17.0mm以上、32.0mm以下であることが好ましい。
【0033】
一対の締め付け部材、例えば、ボルト・ナットの締め付けによる60kN以上のボルト軸方向の力を板ガラスに圧接する座金の好適な単位面積当たりの力として与えるには、座金が二重円状の平座金である場合、平座金の内径と外形との差が13.3mm以上、29.0mm以下であることが好ましい。13.3mm未満であると、ボルト・ナットの締め付けによる60kN以上のボルト軸方向の力を伝えるには不向きであり、また29.0mmより大きいと、ボルト軸方向の力が300kNになったとしても、板ガラスに圧接する座金の好適な単位面積当たりの力が得られない。本発明に使用する平座金は、内径と外形との差が、13.3mm以上、29.0mm以下であることが好ましい。
【0034】
本発明に使用する座金には平座金を用いることが好ましく、その内径は、17.0mm以上、32.0mm以下、内径と外形との差は、13.3mm以上、29.0mm以下であることが好ましい。
【0035】
座金の厚みは、一対の締め付け部材、例えば、ボルト・ナットの締め付けによる60kN以上のボルト軸方向の力を板ガラスに圧接する座金の好適な単位面積当たりの力として与えるには、4.0mm以上であることが必要である。座金の厚みが8.7mmより大きい座金を使うことは、実用的でない。本発明において、座金の厚みは、4.0mm以上、8.7mm以下であることが好ましい。
【0036】
即ち、本発明は、板ガラスと接合部材を重ね、板ガラスと接合部材に形成した貫通孔に一対の締め付け部材を挿通し、板ガラスと接合部材を締め付けて生じる60kN以上、300kN以下の力により板ガラスと接合部材を接合した板ガラスの接合部において、ヤング率、180GPa以上、230GPa以下、ロックウェル硬度、HRC35以上、HRC45以下の応力発生部材を板ガラスと接合部材との間に挟みこみ、板ガラスに圧接させることを特徴とする建築分野で使用する板ガラス接合用応力発生部材の使用方法である。
【0037】
さらに、本発明は、一対の締め付け部材がボルト・ナットであり、板ガラスと接合部材を重ね、板ガラスと接合部材に形成した貫通孔にボルトを挿通し、ボルトに螺合させたナットとで板ガラスと接合部材を締め付けて生じるボルト軸方向の60kN以上、300kN以下の力により板ガラスと接合部材を接合した板ガラスの接合部において、ヤング率、180GPa以上、230GPa以下、ロックウェル硬度、HRC35以上、HRC45以下の応力発生部材を板ガラスと接合部材との間に挟みこみ、板ガラスに圧接させることを特徴とする上記の建築分野で使用する板ガラス接合用応力発生部材の使用方法である。
【0038】
また、本発明は、少なくとも2枚以上の板ガラスを重ね、板ガラスに形成した貫通孔に一対の締め付け部材を挿通し、板ガラスを締め付けて生じる60kN以上、300kN以下の力により板ガラス同士を接合した板ガラスの接合部において、ヤング率、180GPa以上、230GPa以下、ロックウェル硬度、HRC35以上、HRC45以下の応力発生部材をボルト頭部と板ガラスの間、板ガラスと板ガラスとの間に挟みこみ、板ガラスに圧接させることを特徴とする建築分野で使用する板ガラス接合用応力発生部材の使用方法である。
【0039】
さらに、本発明は、一対の締め付け部材がボルト・ナットであり、少なくとも2枚以上の板ガラスを重ね、板ガラスに形成した貫通孔にボルトを挿通し、ボルトとボルトに螺合させたナットとで板ガラスを締め付けて生じるボルト軸方向の60kN以上、300kN以下の力により板ガラス同士を接合した板ガラスの接合部において、ヤング率、180GPa以上、230GPa以下、ロックウェル硬度、HRC35以上、HRC45以下の応力発生部材を板ガラスと板ガラスとの間に挟みこみ、板ガラスに圧接させることを特徴とする建築分野で使用する上記の板ガラス接合用応力発生部材の使用方法である。
【0040】
さらに、本発明は、一対の締め付け部材がボルト・ナットであり、少なくとも2枚以上の板ガラスを重ね、板ガラスに形成した貫通孔にボルトを挿通し、ボルトとボルトに螺合させたナットとで複数の板ガラスを締め付けて生じるボルト軸方向の60kN以上、300kN以下の力により板ガラス同士を接合した板ガラスの接合部において、ヤング率、180GPa以上、230GPa以下、ロックウェル硬度、HRC35以上、HRC45以下の応力発生部材をボルト頭部と板ガラスの間、板ガラスと板ガラスの間、およびナットと板ガラスの間に挟みこみ、板ガラスに圧接させることを特徴とする上記の建築分野で使用する板ガラス接合用応力発生部材の使用方法である。
【0041】
また、本発明は、応力発生部材が、ヤング率、180GPa以上、230GPa以下、ロックウェル硬度、HRC35以上、HRC45以下であり、貫通孔を擁し、該貫通孔の直径が、板ガラスに形成した貫通孔の直径よりも大きい座金であり、板ガラスの貫通孔に対して同心状になるように配置し、貫通孔に一対の締付け部材またはボルトを挿通することを特徴とする上記の建築分野で使用する板ガラス接合用応力発生部材の使用方法である。
【0042】
さらに、本発明は、前記座金が、内径、17.0mm以上、32.0mm以下であることを特徴とする上記の建築分野で使用する板ガラス接合用応力発生部材の使用方法である。
【0043】
さらに、本発明は、座金が平座金であり、座金の内径と外形との差が、13.3mm以上、29.0mm以下であることを特徴とする上記の建築分野で使用する板ガラス接合用応力発生部材の使用方法である。
【0044】
さらに、本発明は、前記座金が、厚み、4.0mm以上、8.7mm以下であることを特徴とする上記の建築分野で使用する板ガラス接合用応力発生部材の使用方法である。
【0045】
ガラスの接合構造に圧縮接合を用い、本発明の板ガラス接合用応力発生部材を用いれば、クラックが発生しやすい板ガラスの端部を避けて応力伝達材料を板ガラスに圧着させられるとともに、圧着時の板ガラスと応力発生部材の接触面積は一定であり、板ガラスに対する圧縮応力を締め付けトルクにより任意に設定できるので、ボルト、ナットの締め付けトルクにより、好ましい圧縮応力を得ることができ、応力発生部材を使わない場合と異なり1点にボルト軸方向の力が集中することなく、締め付けトルクに対しての板ガラスが破壊される限界を飛躍的に上げることが可能となった。よって、強力に板ガラスをボルト、ナットで締め付けるのみで板ガラスと構造部材、または板ガラス同士が高強度で接合される。
【0046】
従来、ガラスは脆性材料であり1点に力がかかると割れる、板ガラスに貫通孔を設けボルトを通して強く板ガラスを締め付けると締め付け部に極所的な力が生じ板ガラスが破損するため、板ガラスに貫通孔を設け強く締め付けることは避けるべきであり、行ってはいけないとされ、板ガラスをボルト・ナットで強く締め付けて接合されることはなかったが、応力発生部材を用い、脆い板ガラスの孔端部を避け、板ガラスにボルト・ナットの締め付け力を決まった面積で伝え、板ガラス内部に好適な圧縮応力が発生するように調整することで、本来の板ガラスの持つ高い剛性を生かした前述の圧縮接合が可能となった。ボルト・ナットで少々強く締め付けても、板ガラスが破壊されることはなく強い接合強度が得られた。これは驚くべき結果である。
【0047】
本発明の建築用途に使用する板ガラス接合用応力発生部材の使用方法を用いることで、橋やビル等の鋼構造物の接合方法として用いられている高力ボルト摩擦接合で導入される強力なボルト軸方向の力、60kN以上で、板ガラスを締め付けることが可能なった。即ち、板ガラスと接合部材を締め付けるボルト・ナットで締め付ける際のボルト軸方向の力を、今までにない60kN以上に掛けられる。尚、300kNより大きいと、板ガラス本来の高い剛性があっても破損の恐れがある。
【0048】
この際、ボルト頭部・ナットの外径よりも応力発生部材の貫通孔の直径を小さくすることで、60kN以上のボルト軸方向の力で板ガラスと接合部材を締め付けることが容易となる。通常、六角ボルト・ナットにおいては、ボルト頭部、ナットの最大の外径を対角距離と呼ぶ。強い締め付けトルクを伝えるには六角ボルト・ナットを使用することが好ましく、中でも建築用で使用される摩擦接合用高力ボルト・ナットが好適に使用される。
【0049】
即ち、本発明は、ボルトの頭部・ナットの外径よりも応力発生部材である座金の貫通孔の直径を小さくしたことを特徴とする上記の建築分野で使用する板ガラス接合用応力発生部材の使用方法である。
【0050】
さらに、本発明は、ボルト・ナットが六角ボルト・ナットであり、六角ボルト・ナットの対角距離よりも応力発生部材である座金の貫通孔の直径を小さくしたことを特徴とする上記の建築分野で使用する板ガラス接合用応力発生部材の使用方法である。
【0051】
さらに、本発明は、上記の建築分野で使用する板ガラス接合用応力発生部材の使用方法が用いられてなる板ガラスの接合部である。
【0052】
さらに、本発明は、上記の板ガラスの接合部を要する板ガラスを用いた建築物である。
【発明の効果】
【0053】
ボルト・ナットの強力な締め付けによるボルト軸方向の力を、板ガラスと接合部材を重ねて板ガラスと接合部材の間に挟んだ応力発生部材、複数の板ガラスを重ねて複数の板ガラスの間に挟んだ応力発生部材、またはボルト頭部と板ガラス、ナットと板ガラスの間に挟んだ応力発生部材、例えば、座金などを介して圧縮応力として板ガラスに伝達し、板ガラスに応力発生部材を圧着することで板ガラス自体の剛性を利用する板ガラス接合構造において、応力発生部材に高剛性および高強度の材料、例えば、高剛性高強度、ヤング率、180GPa以上、ロックウェル硬度、HRC35以上の座金を利用し、座金孔の内径を板ガラスの貫通孔の直径より大きくすることで、割れが発生しやすい板ガラスの孔端部を避けて、ボルト・ナットの締め付けによるボルト軸方向の力を伝えられ、また座金を介して小面積でボルト軸方向の力を板ガラスに伝えるので、座金からの面圧により、板ガラスに強い圧縮応力が生じ、板ガラスと接合部材の優れた接合強度が得られた。
【0054】
また、貫通孔をあけた板ガラスと接合部材を重ねてボルト・ナットで締め付け、ボルト・ナットのボルト軸方向の力で板ガラスに圧縮応力を与えて接合する際に、複数の板ガラスの間に単純な応力発生部材である前記座金を入れることで、座金を介してボルト・ナットで締め付けた際のボルト軸方向の力により板ガラスに生じる圧縮応力を、ボルト・ナットの締め付け加減、および座金の板ガラスへの圧接面積で調整することが可能となった。
【0055】
また、貫通孔をあけた板ガラス同士を重ねてボルト・ナットで締め付け、ボルト・ナットのボルト軸方向の力で板ガラスに圧縮応力を与えて接合する際に、複数の板ガラスの間およびボルト頭と板ガラスの間、板ガラスと板ガラスの間、ナットと板ガラスの間に単純な応力発生部材である前記座金を入れることで、座金を介してボルト・ナットで締め付けた際のボルト軸方向の力による板ガラスへの圧縮応力を、ボルト・ナットの締め付け加減、および座金の板ガラスへの圧接面積で調整することが可能となった。
【0056】
また、前記座金の内径を、前記板ガラスに形成した貫通孔の直径よりも大きく、ボルト頭部の外径よりも小さくすることで、ボルト・ナットで締め付けた際のボルト軸方向の力が、確実に板ガラスにあけた貫通孔の孔端部に加わらなくなり、例えば、橋やビル等の鋼構造物の接合方法として用いられている高力ボルト摩擦接合で導入される強力なボルト軸方向の力、60kN〜300kNで板ガラスと接合部材とを締め付けても、板ガラスが破損しなくなり、接合後の耐久性の高い板ガラス同士の接合が可能となった。即ち、板ガラスと座金の狭い接触面でボルト軸方向の力が確実に伝わるので、接合した板ガラスが滑る恐れは少なくなり、接合後の耐久性の高い板ガラスの接合が可能となった。
【0057】
さらに、接合構造を解体するときはボルト・ナットを弛めればよいので、解体が容易である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0058】
最初に、前述の摩擦接合とは異なる圧縮接合というべき考えの本発明の板ガラス接合用応力発生部材を用いた板ガラスの接合構造について、図1を用いて説明する。
【0059】
図1は、本発明の板ガラス接合用応力発生部材の使用方法による板ガラスと接合部材の接合部の一例の拡大側面図である。なお、ボルト・ナット以外は断面で示している。
【0060】
図2の(A)は、本発明の板ガラス接合用応力発生部材の使用方法による板ガラスと接合部材の接合部の一例の正面図である。(B)はその側面図である。
【0061】
図3は、本発明の板ガラス接合用応力発生部材の使用方法による板ガラス同士の接合部の一例の拡大側面図である。なお、ボルト1、ナット2以外は断面で示している。
【0062】
図4は、本発明の板ガラス接合用応力発生部材の使用方法による板ガラス同士の接合部の一例の正面図である。
【0063】
図1に示すように、本発明の板ガラス接合用応力発生部材の使用方法は、ボルト1、ナット2の強力な締め付けによるボルト軸方向の力を、板ガラスG1と接合部材である金属板3の間に挟んだ応力発生部材である座金4などを介して板ガラスG1に圧縮応力となるように伝達し、板ガラスG1に座金4を圧着することで板ガラスG1内部に圧縮応力を発生させて、板ガラスG1自体の剛性を利用して接合するものである。
【0064】
また、図3に示すように、本発明の板ガラス接合用応力発生部材の使用方法は、一対の締め付け部材であるボルト1、ナット2の強い締め付けによるボルト軸方向の力を、応力発生部材である座金4、詳しくは、板ガラスG2、G3の間に挟んだ座金4、ボルト1とガラスG2との間に挟んだ座金4、またはナット2とガラスG3の間に挟んだ座金4を介して、板ガラスG2、G3に圧縮応力となるように伝達し、板ガラスG2、G3に座金4が圧接することで、板ガラスG2、G3の内部に圧縮応力を発生させ、板ガラスG2、G3の見掛の強度を増加させて、板ガラスG2、G3自体の剛性を利用して、板ガラスG2、G3同士を接合するものである。
【0065】
本発明の板ガラス接合用応力発生部材の使用方法によれば、座金4の孔の直径、言い換れば、座金4の内径を、板ガラスG1、G2、G3の貫通孔の直径より大きくすることで、割れが発生しやすい板ガラスG1、G2、G3の孔端部5を避けて、ボルト軸方向の力を伝えられ、また、座金4を介して小面積で板ガラスG1、G2、G3にボルト軸方向の力を伝えるので、座金4の圧接により強力な圧着が得られ、接合部がずれる恐れが少ない。
【0066】
また、この本発明の板ガラス接合用応力発生部材の使用方法により、板ガラスを接合する際は、座金4の大きさを選ぶことで、板ガラスG1、G2、G3への座金4の圧接面積が任意に設定でき、ボルト軸方向の力の加減により、板ガラスG1、G2、G3へ掛ける単位面積当たりの力が調整され、板ガラスG1、G2、G3の締付け部位で発生する圧縮応力の強さを調整可能となる。この際、応力発生部材である座金4には、二重円状の平座金を使用することが好ましく、本発明の板ガラス接合用応力発生部材の使用方法において、内径、17.0mm以上、32.0mm以下、座金の内径と外形との差、13.3mm以上、29.0mm以下である平座金が好適に用いられる。座金の厚みは、4.0mm以上、8.0mm以下である。
【0067】
このように、座金4の内径を板ガラスG1、G2、G3の貫通孔の直径より大きくすることで、本発明の本発明の板ガラス接合用応力発生部材の使用方法によって、板ガラスG1、G2、G3を接合した際、貫通穴に挿入したボルト1、ナット2で板ガラスG1、G2、G3を、応力発生部材である座金4を介して締め付けたとき、板ガラスG1、G2、G3と座金4との接触部からのみ、板ガラスG1、G2、G3にボルト1、ナット2の締め付けによるボルト軸方向の力が作用するようになり、ガラスに割れが発生しやすい板ガラスG1、G2、G3の孔端部5にボルト軸方向の力がかからなくなる、言い換えれば、ガラスに割れが発生しやすい板ガラスG1、G2、G3の孔端部5を避けて、板ガラスG1、G2、G3の内部に圧縮応力を発生させる。その結果、板ガラスG1、G2、G3が破損し難くなる。
【0068】
この際、ボルト1、ナット2を強く締め付けた際に発生するボルト軸方向の強い力により、割れを生じさせないためには、板ガラスG1、G2、G3に形成した貫通孔の直径より、応力発生部材である座金4の内径を、1.0mm以上、好ましくは4.0mm以上大きくする。この際、板ガラスG1、G2、G3の貫通孔の孔端部5と座金4が重ならないためには、円形の座金4である平座金を用い、板ガラスG1、G2、G3の貫通孔に対して平座金4を同心状に配置することが好ましい。
【0069】
このように、座金4の内径を、板ガラスG1、G2、G3の貫通孔に対し1.0mm以上、好ましくは4.0mm以上大きくする、要するに、板ガラスG1、G2、G3の貫通孔の孔端部5から座金4までの間隔を0.5mm以上、好ましくは2.0mm以上とする。座金4の内径を、板ガラスGの貫通孔に対し1mm未満、板ガラスG1、G2、G3の貫通孔の孔端部5から座金4の内周までの間隔が、0.5mm未満では、板ガラスG1、G2、G3の貫通孔の孔端部5に応力が発生し、割れが生じる恐れがある。座金4の内径を、板ガラスG1、G2、G3の貫通孔の直径に対して、20mmを超えて大きくすると、ボルト軸方向の力が伝達され難くなるので、20mm以内であることが好ましい。
【0070】
図1〜図4に示した、板ガラス接合用応力発生部材において、板ガラスG1、G2、G3および接合部材3のボルト挿通孔を円形とし同心状に配置した際、座金4の内径が、板ガラスG1、G2、G3のボルト挿通孔の孔径よりも小さいと、ボルト1、ナット2でガラスG1、G2、G3または接続板3とを、応力発生部材である座金4を介して締め付けたとき、板ガラスG1、G2、G3の孔端部5に座金4からの軸方向の力により孔端部5に応力が発生し、割れが発生しやすく板ガラスG1、G2、G3が破損する恐れがある。
【0071】
また、この本発明の板ガラス接合用応力発生部材の使用方法を用いて、板ガラスを接合する際は、座金4の大きさを選ぶことで、板ガラスG1、G2、G3への座金4の圧接面積が任意に設定でき、加えて、ボルト1、ナット2の締め付けによるボルト軸方向の力の加減により、板ガラスG1、G2、G3に生じる圧縮応力の強さを調整可能となる。
【0072】
ボルト1、ナット2による締め付けトルクは、橋やビル等の鋼構造物の接合方法として用いられている高力ボルト摩擦接合で導入される強力な、ボルト1、ナット2の締め付けによるボルト軸方向の力、60kN〜300kNが得られる100N・m〜1000N・mに設定される。
【0073】
また、座金4の内径がボルト1の対角距離よりも小さいと、60kN以上のボルト軸方向の力で板ガラスG1、G2、G3、または接合部材3を締め付けることが容易となる。
【0074】
圧縮接合において、ボルト、ナットの強い締め付けによるボルト軸方向の力を得るためには、高力六角ボルト・ナット、言い換えると、機械的性質による等級がF8T以上の高力六角ボルト、または、強度区分が、8.8、10.9、12.9の六角ボルト・ナット、または、トルシア形高力ボルトを使用することが好ましく、中でも建築で使用される摩擦接合用高力ボルト・ナット、言い換えると、機械的性質による等級がF8T以上の高力六角ボルト・ナットが好適に使用される。
【0075】
ボルト1、ナット2の締め付けによる60kN以上のボルト軸方向の力に耐えるには、応力発生部材が高剛性であることが必要であり、弾性範囲内において応力に対する歪の値を決める定数であるヤング率が180GPa以上であることが好ましい。ヤング率は曲げ剛性、たわみ剛性と称される。また、60kN以上のボルト軸方向の力に耐えるには、応力発生部材が高硬度であることが必要であり、圧子を用い、試験片に基準荷重、9.8N、試験荷重、再び基準荷重、9.8Nを加えて圧子の侵入深さの差で求めた硬さであるロックウェル硬度でHRC35以上の硬度があることが必要である。即ち、応力発生部材である座金4には、F8T以上の高力六角ボルト・ナットの締め付けによる強力なボルト軸方向の力に耐え、変形することなきよう、座金の機械的性質による等級がF35以上の座金4が好適に用いられる。
【0076】
高力六角ボルト・ナット・座金の機械的性質による等級については、JIS B1186−1995「摩擦接合用高力六角ボルト六角ナット、平座金のセット」に準拠する。
【0077】
なお、ボルト1、ナット2を締め付ける際に締め付けやすく締め付け工具のトルクを伝えやすいので、ボルト1、ナット2と接合部材の間に座金6を噛ませると良い。
【0078】
以上、図1、図3に示すような接合部を多数設けて、図2、図4に示すように、板ガラスG1、G2、G3を接合すると板ガラスG1、G2、G3に優れた接合強度が得られる。
【0079】
本発明による合わせガラスに用いる板ガラスG1、G2、G3には、フロート法で製造した板ガラス、強化ガラス、倍強度ガラス、熱線吸収ガラス、熱線反射ガラス、各種表面処理を施してある板ガラスなどの複数枚を適宜組み合わせて構成したものが挙げられる。
【0080】
圧縮接合により強力なボルト1、ナット2の締め付けにより優れた接合強度を得るために、好ましくは表面圧縮応力が80MPa以上で、厚さが9.0mm以上の強化ガラスを用いることが好ましい。尚、孔部周辺の中間膜に替えて、貫通孔を擁する高剛性のスペーサーを板ガラス間に挟みこみ、ボルト1、ナット2の締め付けによるボルト軸方向の力に耐えるようにした合わせガラスなどにも本発明の板ガラス接合用応力発生部材の使用方法は適用される。
【実施例1】
【0081】
図5は、本実施例における試験片の上面図である。
【0082】
図5に示すように、中心に24mmφの貫通孔7をあけた板厚、12mm、大きさ、300mm×300mm角の強化ガラスG1を1枚用意した。強化ガラスG1はフロート法で製造した板ガラスを軟化点付近まで加熱後、風冷し表面に圧縮応力を与えたものである。
【0083】
図6は、本実施例における板ガラスの接合部の拡大側面図である。
【0084】
図6に示すように、強化ガラスG1と接合部材としての金属板3とを接合する際に、ボルト1、ナット2と金属板3との間に座金6を挟んだ。座金6は、呼び径、M20、厚み、4.5mm、外形、40mm、内径、21mm、機械的性質による等級はF35の平座金である。
【0085】
また、強化ガラスG1と金属板3との間に、応力発生部材として、強化ガラスGの貫通孔の孔端部5にボルト軸方向の力を作用させないために挟み込む座金4には、呼び径、M30、厚み5.5mm、外形、60mm、内径、31mm、機械的性質による等級はF35の平座金を用いた。座金4の内径と外径の差は、29mmであり、ヤング率、210GPa、ロックウェル硬度、HRC40である。
【0086】
これら呼び径、M20の座金6と、M30の座金4との間に、厚さ12mm、ボルト挿通用の24mmφの孔を有する、SS400製の金属板3を挟みこんだ。M30の座金4を強化ガラスG1に圧接する際は、強化ガラスG1の孔端部5には接触させないようにしている。
【0087】
図6に示すように、強化ガラスG1の貫通孔と座金4とが同心となるように配置し、座金4の内周から強化ガラスG1の孔端部5までの距離を3.5mmとしたことで、ボルト軸方向の力を加えた際、クラック発生の開始点となりやすい孔端部5を避けて、ボルト1、ナット2で締め付けられる。なお、強化ガラスG1の貫通孔と座金4の孔とが同心となるように配置する際の位置決めがしやすいように、図示しないゴムまたは樹脂製の貫通孔を有するスペーサーを貫通孔7の空間部に入れた。
【0088】
次いで、上記の強化ガラスG1と金属板3の締め付けテストを行った。
【0089】
締め付け用のボルト1、ナット2は、摩擦接合用高力六角ボルト・ナット座金のセット、株式会社NSボルテン製のものを使用した。ボルト1は呼び径、M20、首下長さ、85mm、対角距離、37mm、機械的性質による等級はF10Tである。ナット2は呼び径、M20、対角距離、37mm、機械的性質による等級はF10である。
【0090】
孔7に貫通させたボルト1にナット2をねじ込み、トルクレンチを用いて150N・mのトルクで一次締めした後、そこからナット2を120度回転させて、ナット回転法に従い締め付けたが、強化ガラスG1は破損しなかった。なお、このときボルト1に発生するボルト軸方向の力は250kNであった。
【0091】
250kNのボルト軸方向の力で締め付けて、強化ガラスG1が破損しなかったのは、割れが生じやすい、強化ガラスG1の貫通孔の孔端部5にボルト1、ナット2の締め付けによるボルト軸方向の力を直接作用させないようにしたことに加え、強化ガラスG1の圧縮部位において、圧縮応力により板ガラスのクラック発生および伝播が抑制され、板ガラスの見掛の強度を増加したことによると思われる。
【実施例2】
【0092】
図5に示すように中心に20mmφの孔7をあけた板厚、12mm、大きさ、300mm×300mm角の強化ガラスG1を1枚用意した。強化ガラスG1は軟化点付近まで加熱後、風冷し表面に圧縮応力を与えたものである。
【0093】
図6に示すように、板ガラスG1と金属板3を接合する際に、ボルト1、ナット2と金属板3との間に座金6を挟んだ。座金6は、M16の座金5、厚み4.5mm、外形、32mm、内径、17mm、機械的性質による等級はF35の平座金である。
【0094】
また、強化ガラスG1と金属板3との間に、応力発生部材として、強化ガラスGの孔端部5に圧縮応力を作用させないために挟み込む座金4には、呼び径、M24、厚み5.5mm、外形、48mm、内径、25mm、機械的性質による等級はF35の平座金を用いた。座金4の内径と外径の差は、23mmであり、ヤング率、210GPa、ロックウェル硬度、HRC40である。
【0095】
これら呼び径、M16の座金6と、M24の座金4との間に、厚さ12mm、ボルト挿通用の20mmφの孔を有する、SS400製の金属板3を挟みこんだ。M24の座金4を強化ガラスG1に圧接する際は、強化ガラスG1の孔端部5には接触させないようにしている。
【0096】
図6に示すように、強化ガラスG1の貫通孔と座金4とが同心となるように配置し、座金4の内周から強化ガラスG1の孔端部5までの距離を2.5mmとしたことで、ボルト軸方向の力を加えた際、クラック発生の開始点となる懸念の大きい孔端部5を避けて、ボルト1、ナット2で締め付けられる。なお、強化ガラスG1の貫通孔と座金4の孔とが同心となるように配置する際の位置決めがしやすいように、図示しないゴムまたは樹脂製の貫通孔を有するスペーサーを貫通孔7の空間部に入れた。
【0097】
次いで、上記の強化ガラスG1と金属板3の締め付けテストを行った。
【0098】
締め付け用のボルト1、ナット2は、摩擦接合用高力六角ボルト・ナット座金のセット、株式会社NSボルテン製のものを使用した、ボルト1は呼び径、M16、首下長さ、85mm、対角距離、31mm、機械的性質による等級はF10Tである。ナット2は呼び径、M16、対角距離、31mm、機械的性質による等級等はF10である。
【0099】
孔7に貫通させたボルト1にナット2をねじ込み、トルクレンチを用いて100N・mのトルクで一次締めした後、そこからナット2を120度回転させてナット回転法に従い締め付けたが、強化ガラスGは破損しなかった。なお、このときボルト1に発生するボルト軸方向の力は150kNであった。
【0100】
150kNのボルト軸方向の力で締め付けて、強化ガラスG1が破損しなかったのは、割れが生じやすい、強化ガラスG1の貫通孔の孔端部5にボルト1、ナット2の締め付けによるボルト軸方向の力を直接作用させないようにしたことに加え、強化ガラスG1の圧縮部位において、圧縮応力により板ガラスのクラック発生および伝播が抑制され、板ガラスの見掛の強度を増加したことによると思われる。
【実施例3】
【0101】
座金4に、呼び径、M20、厚み4.5mm、外形、40mm、内径、21m、機械的性質による等級はF35のものを用いた以外は、実施例2と同様の手順でガラスの締め付けテストを行った。座金4の内径と外径の差は、19mmであり、ヤング率、210GPa、ロックウェル硬度、HRC40である。
【0102】
座金4の内周から強化ガラスG1の孔端部5までの距離を0.5mmとしたことで、ボルト軸方向の力を加えた際、クラック発生の開始点となりやすい孔端部5を避けて、ボルト1、ナット2で締め付けられるようにした。
【0103】
実施例1、2と同様に、強化ガラスG1と金属板3の締め付けテストを行ったが、ガラスは破損しなかった。
【0104】
150kNのボルト軸方向の力で締め付けて、強化ガラスG1が破損しなかったのは、割れが生じやすい、強化ガラスG1の貫通孔の孔端部5にボルト1、ナット2の締め付けによるボルト軸方向の力を直接作用させないようにしたことに加え、強化ガラスG1の圧縮部位において、圧縮応力により板ガラスのクラック発生および伝播が抑制され、板ガラスの見掛の強度を増加したことによると思われる。
(比較例1)
座金4に、呼び径、M16、厚み4.5mm、外形、32mm、内径、17mm、械的性質による等級はF35のものを用いた以外は、実施例2と同様の手順で強化ガラスGと金属板3の締め付けテストを行った。座金4の内径と外径の差は、15mmであり、ヤング率、210GPa、ロックウェル硬度、HRC40である。
【0105】
座金4の内周から強化ガラスG5の孔端部5までの距離が、−1.5mmとなったことで、クラックの開始点となる懸念の大きい孔端部5と座金4が接触し、孔端部5にボルト1、ナット2で締め付けたときに生じるボルト軸方向の力が、押圧力として直接作用することになり、強化ガラスGと金属板3の締め付けテストを行った結果、強化ガラスGが破損した。即ち、ガラスの割れが生じやすい、強化ガラスGのボルト1、ナット2の締め付けによる孔端部7にボルト軸方向の力が直接作用し強化ガラスGが破損した。
【実施例4】
【0106】
図7は、本実施例における試験片の上面図である。
【0107】
図7に示すように、中心に24mmφの貫通孔7をあけた板厚、12mm、大きさ、300mm×300mm角の2枚の強化ガラスG2、G3を用意した。強化ガラスG2、G3はフロート法で製造した板ガラスを軟化点付近まで加熱後、風冷し表面に圧縮応力を与えたものである。
【0108】
図8は、本発明の実施例における板ガラスの接合部の拡大側面図である。なお、ボルト1、ナット2以外は断面で示している。
【0109】
図8に示すように、ボルト1、ナット2と座金4の間に座金6を挟んだ。座金6は、呼び径、M20、厚み、4.5mm、外径、40mm、内径、21mm、機械的性質による等級はF35の平座金である。座金6を用いることにより、一対の締め付け部材であるボルト1、ナット2を締め付ける際に締め付けやすく、締め付け工具のトルクを伝えやすい。
【0110】
また、強化ガラスG2、G3を重ねて接合する際に、強化ガラスG2、G3の孔端部5に圧縮応力を加えないように、応力発生部材として、強化ガラスG2、G3と座金6の間に挟みこむ座金4、および強化ガラスG2、G3の間に挟み込む座金4には、呼び径、M30、厚み、5.5mm、外径、60mm、内径、31mm、機械的性質による等級はF35の平座金を用いた。座金4の内径と外径の差は、29mmであり、ヤング率、210GPa、ロックウェル硬度、HRC40である。
【0111】
各々のM30の座金4を強化ガラスG2、G3に圧接する際は、強化ガラスG2、G3の貫通孔と同心となるように配置して、強化ガラスG2、G3の貫通孔の孔端部5には、座金4を接触させないようにしている。
【0112】
図8に示すように、強化ガラスG2、G3の貫通孔7と座金4が同心状となるように配置し、座金3の内周から強化ガラスG2、G3の孔端部5までの距離を3.5mmとし、ボルト1、ナット2の締め付けによるボルト軸方向の力を加えた際、割れ発生の開始点となりやすい貫通孔7の孔端部5を避けて、ボルト1、ナット2で締め付けられるようにした。なお、強化ガラスG2、G3の貫通孔7と座金4の貫通孔とが同心状となるように配置する際に、位置決めがしやすいよう、図示しないゴムまたは樹脂製の貫通孔を有するスペーサーを貫通孔7の空間部に入れた。
【0113】
次いで、上記の強化ガラスG2、G3の締め付けテストを行った。
【0114】
締め付け用のボルト1、ナット2は、摩擦接合用高力六角ボルト・ナット座金のセット、株式会社NSボルテン製のものを使用した。ボルト1は呼び径、M20、首下長さ、80mm、対角距離、37mm、機械的性質による等級はF10Tである。ナット2は呼び径、M20、対角距離、37mm、機械的性質による等級はF10である。
【0115】
重ね合わせた強化ガラスG2、G3、個々の座金4、6に貫通させたボルト1にナット2をねじ込み、トルクレンチを用いて150N・mのトルクで一次締めした後、そこからナット2を120度回転させて、ナット回転法に従い締め付けたが、強化ガラスG2、G3は破損しなかった。なお、このときボルト1に発生するボルト軸方向の力は250kNであった。
【0116】
250kNのボルト軸方向の力で締め付けて、強化ガラスG2、G3が破損しなかったのは、割れが生じやすい、強化ガラスG2、G3の貫通孔の孔端部4にボルト軸方向の力を直接作用させないようにしたことに加え、強化ガラスG2、G3の圧縮部位において、圧縮応力により板ガラスのクラック発生および伝播が抑制され、板ガラスの見掛の強度を増加したことによると思われる。
【実施例5】
【0117】
図7に示すように、中心に20mmφの貫通孔7をあけた板厚、12mm、大きさ、300mm×300mm角の2枚の強化ガラスG2、G3を用意した。強化ガラスG2、G3は軟化点付近まで加熱後、風冷し表面に圧縮応力を与えたものである。
【0118】
図8に示すように、一対の締め付け部材であるボルト1、ナット2と座金3との間に座金6を挟んだ。座金6には、呼び径、M16、厚み、4.5mm、外径、32mm、内径、17mm、機械的性質による等級はF35の平座金を用いた。座金6を用いることにより、ボルト1、ナット2を締め付ける際に締め付けやすく、締め付け工具のトルクを伝えやすい。
【0119】
また、強化ガラスG2、G3を重ねて接合する際に、強化ガラスG2、G3の貫通孔7の孔端部5に圧縮応力を作用させないよう応力発生部材として、強化ガラスG2、G3と座金6の間、および強化ガラスG2、G3の間に挟み込む座金4には、呼び径、M24、厚み5.5mm、外径、48mm、内径、25mm、機械的性質による等級はF35の平座金を用いた。座金4の内径と外径の差は、23mmであり、ヤング率、210GPa、ロックウェル硬度、HRC40である。
【0120】
各々のM24の座金4を強化ガラスG2、G3に圧接する際は、強化ガラスG2、G3の貫通孔7の孔端部5には、座金4を接触させないようにしている。
【0121】
図8に示すように、強化ガラスG2、G3の貫通孔7と座金4とが同心状になるように配置し、座金4の内周から強化ガラスG2、G3の孔端部5までの距離を2.5mmとし、ボルト軸方向の力を加えた際、割れ発生の開始点となりやすい貫通孔7の孔端部5を避けて、ボルト1、ナット2で締め付けられるようにした。なお、強化ガラスG2、G3の貫通孔7と座金4とが同心状になるように配置する際の位置決めがしやすいよう、図示しないゴムまたは樹脂製の貫通孔を有するスペーサーを貫通孔7の空間部に入れた。
【0122】
次いで、上記の強化ガラスG2、G3の締め付けテストを行った。
【0123】
締め付け用のボルト1、ナット2は、摩擦接合用高力六角ボルト・ナット座金のセット、株式会社NSボルテン製のものを使用した、ボルト1は呼び径、M16、首下長さ、80mm、対角距離、31mm、機械的性質による等級はF10Tである。ナット2は呼び径、M16、対角距離、31mm、機械的性質による等級等はF10である。
【0124】
重ね合わせた強化ガラスG2、G3に、個々の座金4、6に貫通させたボルト1にナット2をねじ込み、トルクレンチを用いて100N・mのトルクで一次締めした後、そこからナット2を120度回転させて、ナット回転法に従い締め付けたが、強化ガラスG2、G3は破損しなかった。なお、このときボルト1に発生するボルト軸方向の力は250kNであった。
【0125】
250kNのボルト軸方向の力で締め付けて、強化ガラスG2、G3が破損しなかったのは、割れが生じやすい、強化ガラスG2、G3の貫通孔の孔端部5にボルト軸方向の力を直接作用させないようにしたことに加え、強化ガラスG2、G3の圧縮部位において、圧縮応力により板ガラスのクラック発生および伝播が抑制され、板ガラスの見掛の強度が増加したことによると思われる。
【実施例6】
【0126】
座金4に、呼び径、M20、厚み4.5mm、外径、40mm、内径、21m、機械的性質による等級はF35の平座金を用いた以外は、実施例2と同様の手順でガラスの締め付けテストを行った。座金4の内径と外径の差は、19mmであり、ヤング率、210GPa、ロックウェル硬度、HRC40である。
【0127】
座金4の内周から強化ガラスGの貫通孔の孔端部5までの距離を0.5mmとしたことで、ボルト軸方向の力を加えた際、割れ発生の開始点となりやすい孔端部4を避けて、ボルト1、ナット2で締め付けられるようにした。
【0128】
実施例1、2と同様に、強化ガラスG2、G3の締め付けテストを行ったが、ガラスは破損しなかった。
【0129】
150kNのボルト軸方向の力で締め付けて、強化ガラスG2、G3が破損しなかったのは、割れが生じやすい、強化ガラスG2、G3の貫通孔の孔端部5にボルト軸方向の力を直接作用させないようにしたことに加え、強化ガラスG2、G3の圧縮部位において、圧縮応力により板ガラスのクラック発生および伝播が抑制され、板ガラスの見掛の強度が増加したことによると思われる。
(比較例2)
座金4に、呼び径、M16、厚み4.5mm、外径、32mm、内径、17mm、械的性質による等級はF35の平座金を用いた以外は、実施例2と同様の手順で強化ガラスG2、G3の締め付けテストを行った。座金4の内径と外径の差は、15mmであり、ヤング率、210GPa、ロックウェル硬度、HRC40である。
【0130】
座金4の内周から強化ガラスG2、G3の貫通孔の孔端部5までの距離が、−1.5mmとなり、貫通孔7の孔端部5と座金4が重なり、割れ等が発生し易く破損の開始点となる懸念の大きい貫通孔7の孔端部5と座金4が接触し、貫通孔7の孔端部5にボルト1、ナット2で締め付け他時に生じるボルト軸方向の力が、押圧力として直接作用することになり、強化ガラスG2、G3の締め付けテストを行った結果、強化ガラスG2、G3が破損した。即ち、ガラスの割れが生じやすい、強化ガラスG2、G3の貫通孔7の孔端部5にボルト軸方向の力が直接作用し強化ガラスG2、G3が破損した。
(接合部の耐荷重試験)
次いで、本発明の板ガラス接合用応力発生部材の使用方法による板ガラスと金属板の接合強度の評価試験を行った。
【0131】
図9が、本発明の接合構造を有するガラス試験片の形状を示す説明図である。
【0132】
最初に接合強度の評価試験に用いたガラス試験片について説明する。
【0133】
試験に用いた強化ガラスG4の寸法は、板厚、19mm、幅500mm、長さ2300mmであり、片方の孔端部に強化ガラスG4の幅方向に300mmの間隔、長さ方向に200mmの間隔で、孔径、24mmのボルト挿入穴8が4箇所設けている。
【0134】
図10の(A)は、接合部の耐荷重試験装置の側面図であり、(B)は上面図である。
【0135】
図10の(A)、(B)に示すように、固定部9にボルト10で締め付けて固定した金属板3としての厚さ、12mmの一対のL字型のステンレス鋼板に、ボルト1、ナット2および座金4、6を用いて、前記強化ガラスGの孔端部を本発明の板ガラス接合用応力発生部材の使用方法となるように固定した。
【0136】
ボルト1には、呼び径、M20、首下長さ120mmを、機械的性質による等級、F10Tのものを用い、ナット2には、呼び径、M20、機械的性質による等級、F10のものを用い、座金6には、呼び径、M20、厚み4.5mm、外形、40mm、内径、21mm、機械的性質による等級はF35を用いた。
【0137】
また、強化ガラスG4と金属板3との間に、応力発生部材として、強化ガラスG4の孔端部5に圧縮応力を作用させないために挟み込む座金4には、呼び径、M30の座金6、厚み5.5mm、外形、60mm、内径、31mm、機械的性質による等級はF35のものを用いた。座金4の内径と外径の差は、29mmであり、ヤング率、210GPa、ロックウェル硬度、HRC40である。
【0138】
ボルト1にナット2をねじ込み、トルクレンチを用いて150N・mのトルクで一次締めした後、そこからナット2を120度回転させて、ナット回転法に従い締め付けた。なお、このときボルト1に発生するボルト軸方向の力は250kNであった。
【0139】
図10に示す耐荷重試験装置において、強化ガラスG4の固定した反対側の端部に、図6中の矢印の方向へ、0〜20kNの鉛直上向きに荷重を作用させた際の、接合部11のボルトの鉛直上向きの変位量、接合部11の真上の強化ガラスG4の鉛直上向きの変位量を計測し、強化ガラスG4の鉛直上向きの変位量からボルトの鉛直上向きの変位量を引いたものを強化ガラスGのすべり量として計測した。
【0140】
図11は、強化ガラスのすべり量と鉛直上向きの荷重の相関を示すグラフである。
【0141】
図11のグラフに示すように、荷重が17kNまでは、ボルト1と強化ガラスG4の変位量はほぼ等しく、すべりが発生しなかった。この状態では、ボルト1が強化ガラスG4のボルト挿入孔、言い換えれば貫通孔の孔端部5に接触することがないので、強化ガラスG4が破損しない。
【0142】
それに対して、荷重が17kNより高くなると、強化ガラスG4の変位量が急激に増加し、強化ガラスG4が滑り始め、強化ガラスG4が4つの接合部の中心を支点として回転し始めた。これは、鉛直上向きの荷重を加えることにより本発明の板ガラス接合用応力発生部材の使用方法による圧縮接合の接合力よりも接合部に働く偶力が大きくなったためと考えられる。つまり、このリブガラスの接合強度は17kNである。言い換えれば、このリブガラスの固定端の反対側に17kNの荷重が加わっても、ガラスが破損することはない。また、強化ガラスG4が滑り始めてからも20kNまで荷重を付加したが強化ガラスG4が破損することはなかった。これは、強化ガラスG4が滑り始めてからも圧縮接合による動摩擦力が働き、強化ガラスG4の貫通孔に作用する力の一部を分担するためと考えられる。
【0143】
この試験結果を、板ガラスと接合部材を接着する従来のガラスパネルの固定方法と比較すると、例えば、特許文献1の実施例では、強化ガラス板の長さが1719mm、固定端の幅が325mm、先孔端部(荷重負荷側)の幅が244mm、厚みが19mmで、100mmのピッチで3本の雄ねじ部材を挿通した場合、約9.8kN(1000kgf)でガラスが破壊したと記載されている。接合部から荷重を与える部位までの距離であるモーメント長を加味して、本接合部の耐荷重試験と比較すると、本発明の板ガラス接合用応力発生部材の使用方法による圧縮接合の接合強度は、モーメント長が長く、耐荷重試験として過酷であるにも拘らず、板ガラスの接合強度が1.7倍高い。
【0144】
なお、接着部が破壊されると一気に接合部が破壊される板ガラスと接合部材を接着する従来のガラスパネルの固定方法と比較して、本発明の板ガラス接合用応力発生部材の使用方法による圧縮接合は、ボルト1、ナット2の強力な締め付けボルト軸方向の力による接合部のずれが生じても、圧縮接合による動摩擦力が働き、強化ガラスG4の貫通孔に作用する力の一部を分担するためガラスが破損することはなく、強化ガラスG4が滑り始めてからも20kNまで荷重を付加したが強化ガラスG4が破損することはなかった。強化ガラスG4の貫通孔と座金4が同心となるように配置する際の位置決めに、図示しないゴムまたは樹脂製の同心状のスペーサーを貫通孔の空間部に入れておくと、ずれが生じた際、直接、強化ガラスG4の孔端部5とボルト1の軸部が触れ合うことなく緩衝し破壊が更に抑制されるのでスペーサーを入れることが好ましい。
【0145】
本発明の板ガラス接合用応力発生部材の使用方法においては、強化板ガラスG4と座金4とL型金属板3とが、ボルト1とナット2とのボルト軸方向の力により座金4を介して一体化して、鉛直荷重が作用しても強化ガラスGのすべり変位が生じにくくなり、従来の板ガラスと接合部材を接着する接合方法に比較して、より接合部の接合強度および耐久性が向上していることがわかった。
【0146】
また、板ガラスと接合部材を接着する従来のガラスパネルの固定方法では板ガラスが滑り始める前に板ガラスが破損していることから、接合数を増やすことでこれ以上接合強度を増やすことができないが、本件の接合方法では、接合数を増やすことで容易に接合強度を高めることも可能である。
【0147】
このことより、例えば、ガラススクリーンを建設する際、ガラススクリーンをなす面ガラスの支持に用いる方立てガラスとしてのリブガラスを長くし、その上で孔端部を接合し支持する際、本発明の板ガラス接合用応力発生部材の使用方法の方が、接合強度が高く、有利であることがわかった。
【0148】
このように、本発明の板ガラス接合用応力発生部材の使用方法は接着剤を用いないで優れた支持強度を得ることができ、接着剤を使わないことにより、ガラススクリーンを建設後、不用となった際の解体も容易である。
【産業上の利用可能性】
【0149】
本発明の板ガラス接合用応力発生部材の使用方法は、ガラス壁、ガラス屋根、大板ガラスを使用した開口部構成よりなるガラススクリーンなどの大型建築物に使用される。
【0150】
例えば、目立つ金属方立ての代りに、目立たないガラス方立て(リブガラス)を用いて、正面ガラス(フェイスプレート)に加わる風荷重を支持する工法であるガラス・スタビライザー工法によるリブガラススクリーンに使用される。
【0151】
本発明の板ガラス接合用応力発生部材の使用方法および接合方法を用い、ガラス板を接合することで、長いガラス方立て、言い換えれば、長いリブガラスが提供される。
【0152】
また、リブガラスに取り付けた接合板をガラススクリーンと接続することも可能であり、ボルトでガラススクリーンと接続できることからリブガラススクリーンの設計の自由度が広がる。
【図面の簡単な説明】
【0153】
【図1】本発明の板ガラス接合用応力発生部材の使用方法による板ガラスと接合部材の接合部の一例の拡大側面図である。
【図2】(A)は、本発明の板ガラス接合用応力発生部材の使用方法による板ガラスと接合部材の接合部の一例の正面図である。(B)はその側面図である。
【図3】本発明の板ガラス接合用応力発生部材の使用方法による板ガラス同士の接合部の一例の拡大側面図である。
【図4】本発明の板ガラス接合用応力発生部材の使用方法による板ガラス同士の接合部の一例の正面図である。
【図5】本実施例における試験片の上面図である
【図6】本実施例における板ガラスの接合部の拡大側面図である。
【図7】本実施例における試験片の上面図である。
【図8】本発明の実施例における板ガラスの接合部の拡大側面図である。
【図9】本発明の接合構造を有するガラス試験片の形状を示す説明図である。
【図10】(A)は、接合部の耐荷重試験装置の側面図であり、(B)は上面図である。
【図11】強化ガラスのすべり量と鉛直上向きの荷重の相関を示すグラフである。
【符号の説明】
【0154】
G1、G2、G3、G4 板ガラス(強化ガラス)
1 ボルト
2 ナット
3 金属板(接合部材)
4 座金(応力発生部材)
5 孔端部
6 座金
7 貫通孔
8 貫通穴
9 固定部
10 ボルト
11 接合部
【技術分野】
【0001】
本発明は、貫通孔を擁する板ガラスと接合部材を重ね、貫通孔に挿通させた一対の締め付け部材の締め付けにより生じる力で板ガラスと接合部材を接合する板ガラスの接合部、または、貫通孔を擁する少なくとも2枚以上の板ガラスを重ね、貫通孔に挿通させた一対の締め付け部材の締め付けにより生じる力で板ガラス同士を接合する板ガラスの接合部に使用し、板ガラス内部に応力を発生させるための板ガラス接合用応力発生部材の使用方法に関する。
【0002】
特に、本発明は、貫通孔を擁する板ガラスと接合部材を重ね、貫通孔にボルトを挿通し、ボルトに螺合させたナットとで板ガラスと接合部材を締め付けて生じるボルト軸方向の力により板ガラスと接合部材を接合する板ガラスの接合部、または、貫通孔を擁する少なくとも2枚以上の板ガラス同士を重ね、貫通孔にボルトを挿通しボルトに螺合させたナットとで少なくとも2枚以上の板ガラスを締め付けて生じるボルト軸方向の力により板ガラス同士を接合する板ガラスの接合部において、板ガラス内部に圧縮応力を発生させる板ガラス接合用応力発生部材の使用方法に関する。
【0003】
本発明の板ガラス接合用応力発生部材の使用方法は、建築分野に使用され、使用される建築物は、大型建築物であるガラス壁、ガラス屋根、およびガラススクリーン、例えば、リブガラスを用いたリブガラススクリーンなどが挙げられる。
【背景技術】
【0004】
ガラス壁、ガラス屋根、大板ガラスを使用した開口部構成よりなるガラススクリーンなどの大型建築物において、板ガラスを高強度で接合すると、設計の自由度が高められる。例えば、目立つ金属方立の代りに、目立たないガラス方立て(リブガラス)を用いて、正面ガラス(フェイスプレート)に加わる風荷重を支持する工法に、ガラス・スタビライザー工法がある。
【0005】
接合部材を介して板ガラスを高強度で接合することを、ガラス・スタビライザー工法に用い、リブガラススクリーンを建設すれば、リブガラスに取り付けた接合板を介してフェイスプレートと接合することも可能であり、接合部材を介してリブガラス同士、フェイスプレート同士が接合されることから、リブガラススクリーンの設計の自由度が高まる。また、板ガラス同士を高強度で接合することを、大型建築物に用いることができれば、大型建築物の設計の自由度が高まる。
【0006】
従来の板ガラスの接合方法には、板ガラスと接合部材としての金属板とを重ねて、板ガラスと金属板に形成した貫通孔に一対の接合部材、例えば、ボルト・ナットを通して締めて固定することで、板ガラス同士を接合する、板ガラスを建造物などに接合する際に使用される摩擦接合がある。摩擦接合は、一対の締め付け部材で、板ガラスと接合部材とを厚み方向に締め付けて、板ガラスと接合部材との摩擦力で荷重を受け止める接合方法である。
【0007】
摩擦接合においては、接合部を増やし、一対の締め付け部材である、例えば、接合用のボルト・ナットを多く用いることで受け止められる支持荷重を大きくする。摩擦接合において、接合部を増やし接合ボルト・ナットを多く用い、個々の接合部において受け止める荷重を大きくしなかった背景には、ガラスは脆性材料であり、締め付ける際に一箇所に大きな力がかかると割れることがあった。
【0008】
一方、板ガラスと他の構造部材とを接合するために板ガラスに添接させた、あるいは板ガラスと板ガラスに掛け渡しした金属板などの接合部材の間に接着シートを挟みこみ、板ガラスと接合部材を接着し接合強度を得、加えて板ガラスと接合部材に設けた貫通孔に、一対の締め付け部材である接合用ネジ部材を貫通させて締め込み、板ガラスと接合部材を固定し留める方法が、特許文献1〜7にて開示されている。
【0009】
例えば、特許文献1には、板ガラスと接合部材との間に、未硬化の接着剤を含浸させてある繊維材からなるシートを挟んで、板ガラスと接合部材とに形成した貫通孔に挿通したネジ部材で締め付け固定するガラスパネルの接合方法が開示されている。接合後のガラスパネルと板材との相対変位の発生を抑制するために、板ガラスと接合部材との間に未硬化の接着剤を含浸させてある繊維材からなるシートを挟んで締め付け接合しておくことにより、その接着剤が硬化するとシートがガラスパネルと板材の双方の表面に沿った形状に固まり、シートと一体に硬化した強固な接着層を介して、ガラスパネルと板材とを接着接合できると開示されている。
【0010】
また、特許文献3には、特許文献1よりも接合部の耐久力を高めるため、接着剤を含浸させてある繊維材からなるシートに含浸させた接着剤が未硬化の状態で締め付け、接着剤硬化後に、所定の軸力に再度締め付けて接合する脆性部材の接合方法が開示されている。
【0011】
さらに、特許文献7には、上記の接着による接合方法において、雄ネジ部材と雌ネジ部
材などの締め付け具にて板ガラスと接合部材を締め付ける際に、貫通孔に充填剤を介在させて各締め付け具の外周面と板ガラス側貫通孔の内周面との間に隙間が生じない状態で締め付けることによって、板ガラスと接合部材との間にわたって応力が作用した際に、複数の板ガラス側貫通孔に作用する応力が均一化されるようにして、特定の板ガラス側貫通孔に応力が集中するのを回避して、板ガラスの損傷を抑制する板ガラスの接合方法が開示されている。
【0012】
特許文献1〜7に記載の板ガラスの接合方法は、板ガラスと接合部材とを強く締め付けて接合するものでなく、板ガラスと接合部を接着して接合強度を得る方法である。板ガラスの割れの発生を懸念して接合用のネジ部材による締め付けは程々にし、接合強度は板ガラスと接合部材の接着に依存している。
【0013】
詳しくは、特許文献3によれば、板ガラスに厚さが12mm〜19mmの強化ガラスであり、且つ、使用する接着剤がエポキシ系接着剤の場合、接合用ネジ部材の締め付け軸力は29.4kN〜53.9kN程度が望ましいとされている。ガラスに貫通孔を開ける場合、孔周りは荒ズリ加工されるため、ガラスの孔周りの強度は、ガラス表面の強度に比べて弱く、ガラスの孔周りに60kN程度の締め付け力が作用するとガラスが破損することがあった。そのため、孔周りに締め付け力が作用する特許文献1や特許文献3の方法では、締め付け軸力を上げることで接合箇所の耐久性を高めるには限界があった。
【特許文献1】特開2000−87924号公報
【特許文献2】特開2000−87925号公報
【特許文献3】特開2002−155909号公報
【特許文献4】特開2002−162325号公報
【特許文献5】特開2002−266818号公報
【特許文献6】特開2004−340178号公報
【特許文献7】特開2003−327453号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
従来の板ガラスの接合方法である摩擦接合において、板ガラスの貫通孔に挿入した一対の締め付け部材、例えば、ボルト・ナットで強く板ガラスを締め付けると、締め付け部に局所的な力が生じ、特に板ガラスの貫通孔の端部から破損しやすいという問題があった。
【0015】
特に、貫通孔を設けた板ガラス同士を重ねて、ボルト・ナットなどで強く板ガラスを締め付けることは、板ガラスの貫通孔の端部から破損しやすいため、行われたことはなかった。
【0016】
また、前述した従来の板ガラスと接合部材を接着する接合方法においては、板ガラスの接合部をネジ部材で留めてはいるものの、接合強度は板ガラスと接合部材である板材の間に挟みこんだ接着シートによる接着に頼っており、一対の締め付け部材として、例えば、ボルト・ナットで強く締め付けて生じるボルト軸方向の力を、板ガラス内部に強い圧縮応力が生じるまで与え、ガラス自体の剛性を利用して板ガラスと板材を接合するものではなかった。
【0017】
また、接着シートによる接着により接合するため、接合後の解体が困難である。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明は、上記問題を解決するための、建築物を構成する板ガラスの接合部において、一対の締め付け部材の締め付けによる力、例えば、ボルト・ナットで強く締め付けて発生するボルト軸方向の力により、板ガラス内部に強い圧縮応力を発生させることで、強い接合強度を得る建築分野で使用する板ガラス接合用応力発生部材の使用方法を提供することを目的とする。
【0019】
詳しくは、本発明の板ガラス接合用応力発生部材の使用方法は、応力発生部材として、例えば、貫通孔を有する座金を使用し、板ガラスの貫通孔の孔周りには、一対の締め付け部材の締め付けによる力、例えば、ボルト・ナットの締め付けによるボルト軸方向の力を加えないで、孔周りを避けて、ボルト・ナットの締め付けによるボルト軸方向の力を板ガラスに加え、板ガラス内部にクラックの発生および伝播を抑制する圧縮応力を生じさせて、見掛けの強度を増加させることを特徴とし、板ガラスと接合部材を強固に接合する、または接合部材を介して板ガラス同士を強固に接合する、あるいは接合部材を介さないで少なくとも2枚以上の板ガラスを重ね、板ガラス同士を強固に接合するもので、接合部がずれることのない耐久性の高い板ガラスと接合部材との接合部、板ガラス同士の接合部を提供するものである。
【0020】
本発明の板ガラス接合用応力発生部材の使用方法は、一対の締め付け部材であるボルト・ナットなどの強力な締め付けにより生じるボルト軸方向の力を、板ガラスと接合部材の間、または重ねた板ガラスの間、ボルト頭と板ガラスの間、ナットと板ガラスの間に挟みこみ、板ガラスに圧接する応力発生部材、例えば、座金などを介して伝達する際、座金の内径を板ガラスの貫通孔の直径より大きくし同心状に配置することで、割れが発生しやすい板ガラスの孔部を避けてボルト軸方向の力を伝えること、また板ガラスに接触させた座金を介し、板ガラスに直に小面積でボルト軸方向の力を伝え、板ガラス内部に強い圧縮応力を生じさせ、圧縮応力を生じさせた板ガラス圧縮部位のクラックの発生および伝播を抑制し、板ガラスの見掛けの強度を増加させることを特徴とする。
【0021】
なお、一対の締め付け部材には、一対の油圧部材、バネ部材、ネジ部材が挙げられるが、トルクレンチなどで締め付け力の調整ができ、ボルト・ナットの締め付けにより強いボルト軸方向の力が容易に得られるボルト・ナットを用いることが好ましく、特に、強いボルト軸方向の力が得られ、ボルト軸方向の力の調整が容易な六角ボルト・ナットを用いることが好ましい。
【0022】
このように、本発明の板ガラス接合用応力発生部材の使用方法は、板ガラスに応力発生部材を強く圧接することで、板ガラス自体の剛性を利用した強い接合強度を得る、いうなれば圧縮接合というべき概念である全く新規の板ガラスの接合構造に関する。
【0023】
板ガラス内部に強い圧縮応力を生じさせると、板ガラス圧縮部位のクラックの発生および伝播の方向性が制限されるので、板ガラス圧縮部位のクラックの発生および伝播が抑制され、強い圧縮応力により、板ガラスの見掛けの強度が増加する。
【0024】
即ち、圧縮接合は、前述の摩擦接合、ガラスと金属板材を接着する接合方法とは全く異なる考えの接合構造であり、一対の締め付け部材である、例えば、ボルト・ナットの強力な締め付けによるボルト軸方向の力を、板ガラスと接合部材の間、または重ねた板ガラスの間、ボルト頭と板ガラスの間、ナットと板ガラスの間に挟んだ応力発生部材、例えば、座金を強く板ガラスに圧接させて、板ガラス内部に強い圧縮応力が生じるように伝達し、圧縮応力を生じさせた板ガラス圧縮部位におけるクラックの発生および伝播を抑制し、板ガラスの見掛の強度を増加させることを特徴とし、板ガラス自体の剛性を利用して板ガラスと接合部材とを接合する、または、接合部材を介して板ガラス同士を接合する、あるいは接合部材を介さないで少なくとも2枚以上の板ガラスを重ねて板ガラス同士を接合するものである。
【0025】
本発明の板ガラス接合用応力発生部材の使用方法によれば、応力発生部材に座金など使用し、座金の貫通孔の直径、言い換えれば、座金の内径を、板ガラスの貫通孔の直径より大きくして、同心状に配置して締め付けることで、割れが発生しやすい板ガラスの貫通孔部を避けて、一対の締め付け部材の締め付けにより生じる強い力、例えば、ボルト・ナットの締め付けによるボルト軸方向の力を伝えられ、また座金を介して小面積でボルト軸方向の力を伝えるので、座金からの強い単位面積当たりの力により、板ガラスに対する強い圧接が得られ、板ガラスと接合部材に強い接合強度が得られる。
【0026】
本発明において、圧接とは、応力発生部材を板ガラスに強く圧することで、応力発生部材を強い力で板ガラスに接触させることを指す。応力発生部材とは、板ガラスを強く圧し、板ガラス内部に圧縮応力を発生させる部材である。
【0027】
さらに、接合構造を解体するときはボルト・ナットを弛めればよいので、板ガラスと接合部材を接着する従来の接合方法に比べ解体が容易である。
【0028】
応力発生部材の貫通孔の直径を、前記板ガラスに形成した貫通孔の直径より大きくすることにより、板ガラスにあけた貫通孔の端部にボルト・ナットの締め付けによるボルト軸方向の力が作用しなくなり、大きなボルト軸方向の力で板ガラスに大きな圧縮応力を生じさせることが可能となり、耐久性の高い板ガラスの接合構造が得られた。即ち、橋やビル等の鋼構造物の接合方法として用いられている、高力ボルト摩擦接合で使用されるボルト・ナットの締め付けによる60kN以上のボルト軸方向の力で板ガラスと接合部材、あるいは板ガラス同士を締め付けても板ガラスが破損せず、強い接合強度が得られた。
【0029】
板ガラスの接合構造に圧縮接合を用いることで、板ガラスの接合部を、橋やビル等の鋼構造物の接合方法として用いられている高力ボルト摩擦接合で導入される強力なボルト軸方向の力、60kN以上で、板ガラスと接合部材を締め付けることが可能なった。即ち、板ガラスをボルト・ナットで締め付ける際のボルト軸方向の力を、今までにない60kN以上に容易に掛けられる。尚、300kNより大きいと、板ガラス本来の高い剛性があっても破損の恐れがある。本発明の板ガラス接合用応力発生部材の使用方法において、応力発生部材は、ボルト・ナットの強力な締め付けにより、変形しない硬さおよび剛性が必要である。
【0030】
前記応力発生部材、例えば、座金が、ボルト・ナットの締め付けによる60kN以上のボルト軸方向の力に耐え、板ガラス内部に圧縮応力が発生するには、曲げ剛性、たわみ剛性と称され、弾性範囲内において応力に対する歪の値を決める定数であるヤング率において、応力発生部材のヤング率が、180GPa以上であることが好ましい。ヤング率の上限は、鋼鉄など、高剛性の金属におけるヤング率の上限であり、230GPa以下である。230GPaより大きいヤング率を要する材料は実用的ではない。180GPa以上、230GPa以下の範囲のヤング率を有する材料としては、炭素鋼、ステンレス鋼が挙げられる。好ましくは190GPa以上、220GPa以下である。
【0031】
また、前記応力発生部材、例えば、座金が、ボルト・ナットの締め付けによる60kN以上のボルト軸方向の力に耐え、板ガラス内部に圧縮応力が発生するには、応力発生部材が高硬度であることが必要であり、圧子を用い、試験片に基準荷重、9.8N、試験荷重、再び基準荷重、9.8Nを加えて圧子の侵入深さの差で求めた硬さであるロックウェル硬度において、応力発生部材のロックウェル硬度が、HRC、35以上であることが好ましい。ロックウェル硬度の上限は、鋼鉄などの高硬度の金属のロックウェル硬度の上限であり、HRC、45以下である。45より大きいロックウェル硬度を要する材料は実用的ではない。
【0032】
また、一対の締め付け部材、例えば、ボルト・ナットの締め付けによる60kN以上のボルト軸方向の力を板ガラスの与え、板ガラス内部に圧縮応力を発生させるには、呼び径、M12〜M24のボルト・ナットが用いることが好ましく、それに対応して、本発明の板ガラス接合用応力発生部材の使用方法における座金の内径は、17.0mm以上であることが好ましい。M12より小さいボルトは、ボルト・ナットの締め付けによる60kN以上のボルト軸方向の力を伝えるには不向きであり、座金の内径、17.0mm未満は本発明において使用されない。M24より大きいボルトを使うのは実用的でなく、座金の内径が32.0mmより大きい座金を使うことは、実用的でない。本発明において、座金の内径は、17.0mm以上、32.0mm以下であることが好ましい。
【0033】
一対の締め付け部材、例えば、ボルト・ナットの締め付けによる60kN以上のボルト軸方向の力を板ガラスに圧接する座金の好適な単位面積当たりの力として与えるには、座金が二重円状の平座金である場合、平座金の内径と外形との差が13.3mm以上、29.0mm以下であることが好ましい。13.3mm未満であると、ボルト・ナットの締め付けによる60kN以上のボルト軸方向の力を伝えるには不向きであり、また29.0mmより大きいと、ボルト軸方向の力が300kNになったとしても、板ガラスに圧接する座金の好適な単位面積当たりの力が得られない。本発明に使用する平座金は、内径と外形との差が、13.3mm以上、29.0mm以下であることが好ましい。
【0034】
本発明に使用する座金には平座金を用いることが好ましく、その内径は、17.0mm以上、32.0mm以下、内径と外形との差は、13.3mm以上、29.0mm以下であることが好ましい。
【0035】
座金の厚みは、一対の締め付け部材、例えば、ボルト・ナットの締め付けによる60kN以上のボルト軸方向の力を板ガラスに圧接する座金の好適な単位面積当たりの力として与えるには、4.0mm以上であることが必要である。座金の厚みが8.7mmより大きい座金を使うことは、実用的でない。本発明において、座金の厚みは、4.0mm以上、8.7mm以下であることが好ましい。
【0036】
即ち、本発明は、板ガラスと接合部材を重ね、板ガラスと接合部材に形成した貫通孔に一対の締め付け部材を挿通し、板ガラスと接合部材を締め付けて生じる60kN以上、300kN以下の力により板ガラスと接合部材を接合した板ガラスの接合部において、ヤング率、180GPa以上、230GPa以下、ロックウェル硬度、HRC35以上、HRC45以下の応力発生部材を板ガラスと接合部材との間に挟みこみ、板ガラスに圧接させることを特徴とする建築分野で使用する板ガラス接合用応力発生部材の使用方法である。
【0037】
さらに、本発明は、一対の締め付け部材がボルト・ナットであり、板ガラスと接合部材を重ね、板ガラスと接合部材に形成した貫通孔にボルトを挿通し、ボルトに螺合させたナットとで板ガラスと接合部材を締め付けて生じるボルト軸方向の60kN以上、300kN以下の力により板ガラスと接合部材を接合した板ガラスの接合部において、ヤング率、180GPa以上、230GPa以下、ロックウェル硬度、HRC35以上、HRC45以下の応力発生部材を板ガラスと接合部材との間に挟みこみ、板ガラスに圧接させることを特徴とする上記の建築分野で使用する板ガラス接合用応力発生部材の使用方法である。
【0038】
また、本発明は、少なくとも2枚以上の板ガラスを重ね、板ガラスに形成した貫通孔に一対の締め付け部材を挿通し、板ガラスを締め付けて生じる60kN以上、300kN以下の力により板ガラス同士を接合した板ガラスの接合部において、ヤング率、180GPa以上、230GPa以下、ロックウェル硬度、HRC35以上、HRC45以下の応力発生部材をボルト頭部と板ガラスの間、板ガラスと板ガラスとの間に挟みこみ、板ガラスに圧接させることを特徴とする建築分野で使用する板ガラス接合用応力発生部材の使用方法である。
【0039】
さらに、本発明は、一対の締め付け部材がボルト・ナットであり、少なくとも2枚以上の板ガラスを重ね、板ガラスに形成した貫通孔にボルトを挿通し、ボルトとボルトに螺合させたナットとで板ガラスを締め付けて生じるボルト軸方向の60kN以上、300kN以下の力により板ガラス同士を接合した板ガラスの接合部において、ヤング率、180GPa以上、230GPa以下、ロックウェル硬度、HRC35以上、HRC45以下の応力発生部材を板ガラスと板ガラスとの間に挟みこみ、板ガラスに圧接させることを特徴とする建築分野で使用する上記の板ガラス接合用応力発生部材の使用方法である。
【0040】
さらに、本発明は、一対の締め付け部材がボルト・ナットであり、少なくとも2枚以上の板ガラスを重ね、板ガラスに形成した貫通孔にボルトを挿通し、ボルトとボルトに螺合させたナットとで複数の板ガラスを締め付けて生じるボルト軸方向の60kN以上、300kN以下の力により板ガラス同士を接合した板ガラスの接合部において、ヤング率、180GPa以上、230GPa以下、ロックウェル硬度、HRC35以上、HRC45以下の応力発生部材をボルト頭部と板ガラスの間、板ガラスと板ガラスの間、およびナットと板ガラスの間に挟みこみ、板ガラスに圧接させることを特徴とする上記の建築分野で使用する板ガラス接合用応力発生部材の使用方法である。
【0041】
また、本発明は、応力発生部材が、ヤング率、180GPa以上、230GPa以下、ロックウェル硬度、HRC35以上、HRC45以下であり、貫通孔を擁し、該貫通孔の直径が、板ガラスに形成した貫通孔の直径よりも大きい座金であり、板ガラスの貫通孔に対して同心状になるように配置し、貫通孔に一対の締付け部材またはボルトを挿通することを特徴とする上記の建築分野で使用する板ガラス接合用応力発生部材の使用方法である。
【0042】
さらに、本発明は、前記座金が、内径、17.0mm以上、32.0mm以下であることを特徴とする上記の建築分野で使用する板ガラス接合用応力発生部材の使用方法である。
【0043】
さらに、本発明は、座金が平座金であり、座金の内径と外形との差が、13.3mm以上、29.0mm以下であることを特徴とする上記の建築分野で使用する板ガラス接合用応力発生部材の使用方法である。
【0044】
さらに、本発明は、前記座金が、厚み、4.0mm以上、8.7mm以下であることを特徴とする上記の建築分野で使用する板ガラス接合用応力発生部材の使用方法である。
【0045】
ガラスの接合構造に圧縮接合を用い、本発明の板ガラス接合用応力発生部材を用いれば、クラックが発生しやすい板ガラスの端部を避けて応力伝達材料を板ガラスに圧着させられるとともに、圧着時の板ガラスと応力発生部材の接触面積は一定であり、板ガラスに対する圧縮応力を締め付けトルクにより任意に設定できるので、ボルト、ナットの締め付けトルクにより、好ましい圧縮応力を得ることができ、応力発生部材を使わない場合と異なり1点にボルト軸方向の力が集中することなく、締め付けトルクに対しての板ガラスが破壊される限界を飛躍的に上げることが可能となった。よって、強力に板ガラスをボルト、ナットで締め付けるのみで板ガラスと構造部材、または板ガラス同士が高強度で接合される。
【0046】
従来、ガラスは脆性材料であり1点に力がかかると割れる、板ガラスに貫通孔を設けボルトを通して強く板ガラスを締め付けると締め付け部に極所的な力が生じ板ガラスが破損するため、板ガラスに貫通孔を設け強く締め付けることは避けるべきであり、行ってはいけないとされ、板ガラスをボルト・ナットで強く締め付けて接合されることはなかったが、応力発生部材を用い、脆い板ガラスの孔端部を避け、板ガラスにボルト・ナットの締め付け力を決まった面積で伝え、板ガラス内部に好適な圧縮応力が発生するように調整することで、本来の板ガラスの持つ高い剛性を生かした前述の圧縮接合が可能となった。ボルト・ナットで少々強く締め付けても、板ガラスが破壊されることはなく強い接合強度が得られた。これは驚くべき結果である。
【0047】
本発明の建築用途に使用する板ガラス接合用応力発生部材の使用方法を用いることで、橋やビル等の鋼構造物の接合方法として用いられている高力ボルト摩擦接合で導入される強力なボルト軸方向の力、60kN以上で、板ガラスを締め付けることが可能なった。即ち、板ガラスと接合部材を締め付けるボルト・ナットで締め付ける際のボルト軸方向の力を、今までにない60kN以上に掛けられる。尚、300kNより大きいと、板ガラス本来の高い剛性があっても破損の恐れがある。
【0048】
この際、ボルト頭部・ナットの外径よりも応力発生部材の貫通孔の直径を小さくすることで、60kN以上のボルト軸方向の力で板ガラスと接合部材を締め付けることが容易となる。通常、六角ボルト・ナットにおいては、ボルト頭部、ナットの最大の外径を対角距離と呼ぶ。強い締め付けトルクを伝えるには六角ボルト・ナットを使用することが好ましく、中でも建築用で使用される摩擦接合用高力ボルト・ナットが好適に使用される。
【0049】
即ち、本発明は、ボルトの頭部・ナットの外径よりも応力発生部材である座金の貫通孔の直径を小さくしたことを特徴とする上記の建築分野で使用する板ガラス接合用応力発生部材の使用方法である。
【0050】
さらに、本発明は、ボルト・ナットが六角ボルト・ナットであり、六角ボルト・ナットの対角距離よりも応力発生部材である座金の貫通孔の直径を小さくしたことを特徴とする上記の建築分野で使用する板ガラス接合用応力発生部材の使用方法である。
【0051】
さらに、本発明は、上記の建築分野で使用する板ガラス接合用応力発生部材の使用方法が用いられてなる板ガラスの接合部である。
【0052】
さらに、本発明は、上記の板ガラスの接合部を要する板ガラスを用いた建築物である。
【発明の効果】
【0053】
ボルト・ナットの強力な締め付けによるボルト軸方向の力を、板ガラスと接合部材を重ねて板ガラスと接合部材の間に挟んだ応力発生部材、複数の板ガラスを重ねて複数の板ガラスの間に挟んだ応力発生部材、またはボルト頭部と板ガラス、ナットと板ガラスの間に挟んだ応力発生部材、例えば、座金などを介して圧縮応力として板ガラスに伝達し、板ガラスに応力発生部材を圧着することで板ガラス自体の剛性を利用する板ガラス接合構造において、応力発生部材に高剛性および高強度の材料、例えば、高剛性高強度、ヤング率、180GPa以上、ロックウェル硬度、HRC35以上の座金を利用し、座金孔の内径を板ガラスの貫通孔の直径より大きくすることで、割れが発生しやすい板ガラスの孔端部を避けて、ボルト・ナットの締め付けによるボルト軸方向の力を伝えられ、また座金を介して小面積でボルト軸方向の力を板ガラスに伝えるので、座金からの面圧により、板ガラスに強い圧縮応力が生じ、板ガラスと接合部材の優れた接合強度が得られた。
【0054】
また、貫通孔をあけた板ガラスと接合部材を重ねてボルト・ナットで締め付け、ボルト・ナットのボルト軸方向の力で板ガラスに圧縮応力を与えて接合する際に、複数の板ガラスの間に単純な応力発生部材である前記座金を入れることで、座金を介してボルト・ナットで締め付けた際のボルト軸方向の力により板ガラスに生じる圧縮応力を、ボルト・ナットの締め付け加減、および座金の板ガラスへの圧接面積で調整することが可能となった。
【0055】
また、貫通孔をあけた板ガラス同士を重ねてボルト・ナットで締め付け、ボルト・ナットのボルト軸方向の力で板ガラスに圧縮応力を与えて接合する際に、複数の板ガラスの間およびボルト頭と板ガラスの間、板ガラスと板ガラスの間、ナットと板ガラスの間に単純な応力発生部材である前記座金を入れることで、座金を介してボルト・ナットで締め付けた際のボルト軸方向の力による板ガラスへの圧縮応力を、ボルト・ナットの締め付け加減、および座金の板ガラスへの圧接面積で調整することが可能となった。
【0056】
また、前記座金の内径を、前記板ガラスに形成した貫通孔の直径よりも大きく、ボルト頭部の外径よりも小さくすることで、ボルト・ナットで締め付けた際のボルト軸方向の力が、確実に板ガラスにあけた貫通孔の孔端部に加わらなくなり、例えば、橋やビル等の鋼構造物の接合方法として用いられている高力ボルト摩擦接合で導入される強力なボルト軸方向の力、60kN〜300kNで板ガラスと接合部材とを締め付けても、板ガラスが破損しなくなり、接合後の耐久性の高い板ガラス同士の接合が可能となった。即ち、板ガラスと座金の狭い接触面でボルト軸方向の力が確実に伝わるので、接合した板ガラスが滑る恐れは少なくなり、接合後の耐久性の高い板ガラスの接合が可能となった。
【0057】
さらに、接合構造を解体するときはボルト・ナットを弛めればよいので、解体が容易である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0058】
最初に、前述の摩擦接合とは異なる圧縮接合というべき考えの本発明の板ガラス接合用応力発生部材を用いた板ガラスの接合構造について、図1を用いて説明する。
【0059】
図1は、本発明の板ガラス接合用応力発生部材の使用方法による板ガラスと接合部材の接合部の一例の拡大側面図である。なお、ボルト・ナット以外は断面で示している。
【0060】
図2の(A)は、本発明の板ガラス接合用応力発生部材の使用方法による板ガラスと接合部材の接合部の一例の正面図である。(B)はその側面図である。
【0061】
図3は、本発明の板ガラス接合用応力発生部材の使用方法による板ガラス同士の接合部の一例の拡大側面図である。なお、ボルト1、ナット2以外は断面で示している。
【0062】
図4は、本発明の板ガラス接合用応力発生部材の使用方法による板ガラス同士の接合部の一例の正面図である。
【0063】
図1に示すように、本発明の板ガラス接合用応力発生部材の使用方法は、ボルト1、ナット2の強力な締め付けによるボルト軸方向の力を、板ガラスG1と接合部材である金属板3の間に挟んだ応力発生部材である座金4などを介して板ガラスG1に圧縮応力となるように伝達し、板ガラスG1に座金4を圧着することで板ガラスG1内部に圧縮応力を発生させて、板ガラスG1自体の剛性を利用して接合するものである。
【0064】
また、図3に示すように、本発明の板ガラス接合用応力発生部材の使用方法は、一対の締め付け部材であるボルト1、ナット2の強い締め付けによるボルト軸方向の力を、応力発生部材である座金4、詳しくは、板ガラスG2、G3の間に挟んだ座金4、ボルト1とガラスG2との間に挟んだ座金4、またはナット2とガラスG3の間に挟んだ座金4を介して、板ガラスG2、G3に圧縮応力となるように伝達し、板ガラスG2、G3に座金4が圧接することで、板ガラスG2、G3の内部に圧縮応力を発生させ、板ガラスG2、G3の見掛の強度を増加させて、板ガラスG2、G3自体の剛性を利用して、板ガラスG2、G3同士を接合するものである。
【0065】
本発明の板ガラス接合用応力発生部材の使用方法によれば、座金4の孔の直径、言い換れば、座金4の内径を、板ガラスG1、G2、G3の貫通孔の直径より大きくすることで、割れが発生しやすい板ガラスG1、G2、G3の孔端部5を避けて、ボルト軸方向の力を伝えられ、また、座金4を介して小面積で板ガラスG1、G2、G3にボルト軸方向の力を伝えるので、座金4の圧接により強力な圧着が得られ、接合部がずれる恐れが少ない。
【0066】
また、この本発明の板ガラス接合用応力発生部材の使用方法により、板ガラスを接合する際は、座金4の大きさを選ぶことで、板ガラスG1、G2、G3への座金4の圧接面積が任意に設定でき、ボルト軸方向の力の加減により、板ガラスG1、G2、G3へ掛ける単位面積当たりの力が調整され、板ガラスG1、G2、G3の締付け部位で発生する圧縮応力の強さを調整可能となる。この際、応力発生部材である座金4には、二重円状の平座金を使用することが好ましく、本発明の板ガラス接合用応力発生部材の使用方法において、内径、17.0mm以上、32.0mm以下、座金の内径と外形との差、13.3mm以上、29.0mm以下である平座金が好適に用いられる。座金の厚みは、4.0mm以上、8.0mm以下である。
【0067】
このように、座金4の内径を板ガラスG1、G2、G3の貫通孔の直径より大きくすることで、本発明の本発明の板ガラス接合用応力発生部材の使用方法によって、板ガラスG1、G2、G3を接合した際、貫通穴に挿入したボルト1、ナット2で板ガラスG1、G2、G3を、応力発生部材である座金4を介して締め付けたとき、板ガラスG1、G2、G3と座金4との接触部からのみ、板ガラスG1、G2、G3にボルト1、ナット2の締め付けによるボルト軸方向の力が作用するようになり、ガラスに割れが発生しやすい板ガラスG1、G2、G3の孔端部5にボルト軸方向の力がかからなくなる、言い換えれば、ガラスに割れが発生しやすい板ガラスG1、G2、G3の孔端部5を避けて、板ガラスG1、G2、G3の内部に圧縮応力を発生させる。その結果、板ガラスG1、G2、G3が破損し難くなる。
【0068】
この際、ボルト1、ナット2を強く締め付けた際に発生するボルト軸方向の強い力により、割れを生じさせないためには、板ガラスG1、G2、G3に形成した貫通孔の直径より、応力発生部材である座金4の内径を、1.0mm以上、好ましくは4.0mm以上大きくする。この際、板ガラスG1、G2、G3の貫通孔の孔端部5と座金4が重ならないためには、円形の座金4である平座金を用い、板ガラスG1、G2、G3の貫通孔に対して平座金4を同心状に配置することが好ましい。
【0069】
このように、座金4の内径を、板ガラスG1、G2、G3の貫通孔に対し1.0mm以上、好ましくは4.0mm以上大きくする、要するに、板ガラスG1、G2、G3の貫通孔の孔端部5から座金4までの間隔を0.5mm以上、好ましくは2.0mm以上とする。座金4の内径を、板ガラスGの貫通孔に対し1mm未満、板ガラスG1、G2、G3の貫通孔の孔端部5から座金4の内周までの間隔が、0.5mm未満では、板ガラスG1、G2、G3の貫通孔の孔端部5に応力が発生し、割れが生じる恐れがある。座金4の内径を、板ガラスG1、G2、G3の貫通孔の直径に対して、20mmを超えて大きくすると、ボルト軸方向の力が伝達され難くなるので、20mm以内であることが好ましい。
【0070】
図1〜図4に示した、板ガラス接合用応力発生部材において、板ガラスG1、G2、G3および接合部材3のボルト挿通孔を円形とし同心状に配置した際、座金4の内径が、板ガラスG1、G2、G3のボルト挿通孔の孔径よりも小さいと、ボルト1、ナット2でガラスG1、G2、G3または接続板3とを、応力発生部材である座金4を介して締め付けたとき、板ガラスG1、G2、G3の孔端部5に座金4からの軸方向の力により孔端部5に応力が発生し、割れが発生しやすく板ガラスG1、G2、G3が破損する恐れがある。
【0071】
また、この本発明の板ガラス接合用応力発生部材の使用方法を用いて、板ガラスを接合する際は、座金4の大きさを選ぶことで、板ガラスG1、G2、G3への座金4の圧接面積が任意に設定でき、加えて、ボルト1、ナット2の締め付けによるボルト軸方向の力の加減により、板ガラスG1、G2、G3に生じる圧縮応力の強さを調整可能となる。
【0072】
ボルト1、ナット2による締め付けトルクは、橋やビル等の鋼構造物の接合方法として用いられている高力ボルト摩擦接合で導入される強力な、ボルト1、ナット2の締め付けによるボルト軸方向の力、60kN〜300kNが得られる100N・m〜1000N・mに設定される。
【0073】
また、座金4の内径がボルト1の対角距離よりも小さいと、60kN以上のボルト軸方向の力で板ガラスG1、G2、G3、または接合部材3を締め付けることが容易となる。
【0074】
圧縮接合において、ボルト、ナットの強い締め付けによるボルト軸方向の力を得るためには、高力六角ボルト・ナット、言い換えると、機械的性質による等級がF8T以上の高力六角ボルト、または、強度区分が、8.8、10.9、12.9の六角ボルト・ナット、または、トルシア形高力ボルトを使用することが好ましく、中でも建築で使用される摩擦接合用高力ボルト・ナット、言い換えると、機械的性質による等級がF8T以上の高力六角ボルト・ナットが好適に使用される。
【0075】
ボルト1、ナット2の締め付けによる60kN以上のボルト軸方向の力に耐えるには、応力発生部材が高剛性であることが必要であり、弾性範囲内において応力に対する歪の値を決める定数であるヤング率が180GPa以上であることが好ましい。ヤング率は曲げ剛性、たわみ剛性と称される。また、60kN以上のボルト軸方向の力に耐えるには、応力発生部材が高硬度であることが必要であり、圧子を用い、試験片に基準荷重、9.8N、試験荷重、再び基準荷重、9.8Nを加えて圧子の侵入深さの差で求めた硬さであるロックウェル硬度でHRC35以上の硬度があることが必要である。即ち、応力発生部材である座金4には、F8T以上の高力六角ボルト・ナットの締め付けによる強力なボルト軸方向の力に耐え、変形することなきよう、座金の機械的性質による等級がF35以上の座金4が好適に用いられる。
【0076】
高力六角ボルト・ナット・座金の機械的性質による等級については、JIS B1186−1995「摩擦接合用高力六角ボルト六角ナット、平座金のセット」に準拠する。
【0077】
なお、ボルト1、ナット2を締め付ける際に締め付けやすく締め付け工具のトルクを伝えやすいので、ボルト1、ナット2と接合部材の間に座金6を噛ませると良い。
【0078】
以上、図1、図3に示すような接合部を多数設けて、図2、図4に示すように、板ガラスG1、G2、G3を接合すると板ガラスG1、G2、G3に優れた接合強度が得られる。
【0079】
本発明による合わせガラスに用いる板ガラスG1、G2、G3には、フロート法で製造した板ガラス、強化ガラス、倍強度ガラス、熱線吸収ガラス、熱線反射ガラス、各種表面処理を施してある板ガラスなどの複数枚を適宜組み合わせて構成したものが挙げられる。
【0080】
圧縮接合により強力なボルト1、ナット2の締め付けにより優れた接合強度を得るために、好ましくは表面圧縮応力が80MPa以上で、厚さが9.0mm以上の強化ガラスを用いることが好ましい。尚、孔部周辺の中間膜に替えて、貫通孔を擁する高剛性のスペーサーを板ガラス間に挟みこみ、ボルト1、ナット2の締め付けによるボルト軸方向の力に耐えるようにした合わせガラスなどにも本発明の板ガラス接合用応力発生部材の使用方法は適用される。
【実施例1】
【0081】
図5は、本実施例における試験片の上面図である。
【0082】
図5に示すように、中心に24mmφの貫通孔7をあけた板厚、12mm、大きさ、300mm×300mm角の強化ガラスG1を1枚用意した。強化ガラスG1はフロート法で製造した板ガラスを軟化点付近まで加熱後、風冷し表面に圧縮応力を与えたものである。
【0083】
図6は、本実施例における板ガラスの接合部の拡大側面図である。
【0084】
図6に示すように、強化ガラスG1と接合部材としての金属板3とを接合する際に、ボルト1、ナット2と金属板3との間に座金6を挟んだ。座金6は、呼び径、M20、厚み、4.5mm、外形、40mm、内径、21mm、機械的性質による等級はF35の平座金である。
【0085】
また、強化ガラスG1と金属板3との間に、応力発生部材として、強化ガラスGの貫通孔の孔端部5にボルト軸方向の力を作用させないために挟み込む座金4には、呼び径、M30、厚み5.5mm、外形、60mm、内径、31mm、機械的性質による等級はF35の平座金を用いた。座金4の内径と外径の差は、29mmであり、ヤング率、210GPa、ロックウェル硬度、HRC40である。
【0086】
これら呼び径、M20の座金6と、M30の座金4との間に、厚さ12mm、ボルト挿通用の24mmφの孔を有する、SS400製の金属板3を挟みこんだ。M30の座金4を強化ガラスG1に圧接する際は、強化ガラスG1の孔端部5には接触させないようにしている。
【0087】
図6に示すように、強化ガラスG1の貫通孔と座金4とが同心となるように配置し、座金4の内周から強化ガラスG1の孔端部5までの距離を3.5mmとしたことで、ボルト軸方向の力を加えた際、クラック発生の開始点となりやすい孔端部5を避けて、ボルト1、ナット2で締め付けられる。なお、強化ガラスG1の貫通孔と座金4の孔とが同心となるように配置する際の位置決めがしやすいように、図示しないゴムまたは樹脂製の貫通孔を有するスペーサーを貫通孔7の空間部に入れた。
【0088】
次いで、上記の強化ガラスG1と金属板3の締め付けテストを行った。
【0089】
締め付け用のボルト1、ナット2は、摩擦接合用高力六角ボルト・ナット座金のセット、株式会社NSボルテン製のものを使用した。ボルト1は呼び径、M20、首下長さ、85mm、対角距離、37mm、機械的性質による等級はF10Tである。ナット2は呼び径、M20、対角距離、37mm、機械的性質による等級はF10である。
【0090】
孔7に貫通させたボルト1にナット2をねじ込み、トルクレンチを用いて150N・mのトルクで一次締めした後、そこからナット2を120度回転させて、ナット回転法に従い締め付けたが、強化ガラスG1は破損しなかった。なお、このときボルト1に発生するボルト軸方向の力は250kNであった。
【0091】
250kNのボルト軸方向の力で締め付けて、強化ガラスG1が破損しなかったのは、割れが生じやすい、強化ガラスG1の貫通孔の孔端部5にボルト1、ナット2の締め付けによるボルト軸方向の力を直接作用させないようにしたことに加え、強化ガラスG1の圧縮部位において、圧縮応力により板ガラスのクラック発生および伝播が抑制され、板ガラスの見掛の強度を増加したことによると思われる。
【実施例2】
【0092】
図5に示すように中心に20mmφの孔7をあけた板厚、12mm、大きさ、300mm×300mm角の強化ガラスG1を1枚用意した。強化ガラスG1は軟化点付近まで加熱後、風冷し表面に圧縮応力を与えたものである。
【0093】
図6に示すように、板ガラスG1と金属板3を接合する際に、ボルト1、ナット2と金属板3との間に座金6を挟んだ。座金6は、M16の座金5、厚み4.5mm、外形、32mm、内径、17mm、機械的性質による等級はF35の平座金である。
【0094】
また、強化ガラスG1と金属板3との間に、応力発生部材として、強化ガラスGの孔端部5に圧縮応力を作用させないために挟み込む座金4には、呼び径、M24、厚み5.5mm、外形、48mm、内径、25mm、機械的性質による等級はF35の平座金を用いた。座金4の内径と外径の差は、23mmであり、ヤング率、210GPa、ロックウェル硬度、HRC40である。
【0095】
これら呼び径、M16の座金6と、M24の座金4との間に、厚さ12mm、ボルト挿通用の20mmφの孔を有する、SS400製の金属板3を挟みこんだ。M24の座金4を強化ガラスG1に圧接する際は、強化ガラスG1の孔端部5には接触させないようにしている。
【0096】
図6に示すように、強化ガラスG1の貫通孔と座金4とが同心となるように配置し、座金4の内周から強化ガラスG1の孔端部5までの距離を2.5mmとしたことで、ボルト軸方向の力を加えた際、クラック発生の開始点となる懸念の大きい孔端部5を避けて、ボルト1、ナット2で締め付けられる。なお、強化ガラスG1の貫通孔と座金4の孔とが同心となるように配置する際の位置決めがしやすいように、図示しないゴムまたは樹脂製の貫通孔を有するスペーサーを貫通孔7の空間部に入れた。
【0097】
次いで、上記の強化ガラスG1と金属板3の締め付けテストを行った。
【0098】
締め付け用のボルト1、ナット2は、摩擦接合用高力六角ボルト・ナット座金のセット、株式会社NSボルテン製のものを使用した、ボルト1は呼び径、M16、首下長さ、85mm、対角距離、31mm、機械的性質による等級はF10Tである。ナット2は呼び径、M16、対角距離、31mm、機械的性質による等級等はF10である。
【0099】
孔7に貫通させたボルト1にナット2をねじ込み、トルクレンチを用いて100N・mのトルクで一次締めした後、そこからナット2を120度回転させてナット回転法に従い締め付けたが、強化ガラスGは破損しなかった。なお、このときボルト1に発生するボルト軸方向の力は150kNであった。
【0100】
150kNのボルト軸方向の力で締め付けて、強化ガラスG1が破損しなかったのは、割れが生じやすい、強化ガラスG1の貫通孔の孔端部5にボルト1、ナット2の締め付けによるボルト軸方向の力を直接作用させないようにしたことに加え、強化ガラスG1の圧縮部位において、圧縮応力により板ガラスのクラック発生および伝播が抑制され、板ガラスの見掛の強度を増加したことによると思われる。
【実施例3】
【0101】
座金4に、呼び径、M20、厚み4.5mm、外形、40mm、内径、21m、機械的性質による等級はF35のものを用いた以外は、実施例2と同様の手順でガラスの締め付けテストを行った。座金4の内径と外径の差は、19mmであり、ヤング率、210GPa、ロックウェル硬度、HRC40である。
【0102】
座金4の内周から強化ガラスG1の孔端部5までの距離を0.5mmとしたことで、ボルト軸方向の力を加えた際、クラック発生の開始点となりやすい孔端部5を避けて、ボルト1、ナット2で締め付けられるようにした。
【0103】
実施例1、2と同様に、強化ガラスG1と金属板3の締め付けテストを行ったが、ガラスは破損しなかった。
【0104】
150kNのボルト軸方向の力で締め付けて、強化ガラスG1が破損しなかったのは、割れが生じやすい、強化ガラスG1の貫通孔の孔端部5にボルト1、ナット2の締め付けによるボルト軸方向の力を直接作用させないようにしたことに加え、強化ガラスG1の圧縮部位において、圧縮応力により板ガラスのクラック発生および伝播が抑制され、板ガラスの見掛の強度を増加したことによると思われる。
(比較例1)
座金4に、呼び径、M16、厚み4.5mm、外形、32mm、内径、17mm、械的性質による等級はF35のものを用いた以外は、実施例2と同様の手順で強化ガラスGと金属板3の締め付けテストを行った。座金4の内径と外径の差は、15mmであり、ヤング率、210GPa、ロックウェル硬度、HRC40である。
【0105】
座金4の内周から強化ガラスG5の孔端部5までの距離が、−1.5mmとなったことで、クラックの開始点となる懸念の大きい孔端部5と座金4が接触し、孔端部5にボルト1、ナット2で締め付けたときに生じるボルト軸方向の力が、押圧力として直接作用することになり、強化ガラスGと金属板3の締め付けテストを行った結果、強化ガラスGが破損した。即ち、ガラスの割れが生じやすい、強化ガラスGのボルト1、ナット2の締め付けによる孔端部7にボルト軸方向の力が直接作用し強化ガラスGが破損した。
【実施例4】
【0106】
図7は、本実施例における試験片の上面図である。
【0107】
図7に示すように、中心に24mmφの貫通孔7をあけた板厚、12mm、大きさ、300mm×300mm角の2枚の強化ガラスG2、G3を用意した。強化ガラスG2、G3はフロート法で製造した板ガラスを軟化点付近まで加熱後、風冷し表面に圧縮応力を与えたものである。
【0108】
図8は、本発明の実施例における板ガラスの接合部の拡大側面図である。なお、ボルト1、ナット2以外は断面で示している。
【0109】
図8に示すように、ボルト1、ナット2と座金4の間に座金6を挟んだ。座金6は、呼び径、M20、厚み、4.5mm、外径、40mm、内径、21mm、機械的性質による等級はF35の平座金である。座金6を用いることにより、一対の締め付け部材であるボルト1、ナット2を締め付ける際に締め付けやすく、締め付け工具のトルクを伝えやすい。
【0110】
また、強化ガラスG2、G3を重ねて接合する際に、強化ガラスG2、G3の孔端部5に圧縮応力を加えないように、応力発生部材として、強化ガラスG2、G3と座金6の間に挟みこむ座金4、および強化ガラスG2、G3の間に挟み込む座金4には、呼び径、M30、厚み、5.5mm、外径、60mm、内径、31mm、機械的性質による等級はF35の平座金を用いた。座金4の内径と外径の差は、29mmであり、ヤング率、210GPa、ロックウェル硬度、HRC40である。
【0111】
各々のM30の座金4を強化ガラスG2、G3に圧接する際は、強化ガラスG2、G3の貫通孔と同心となるように配置して、強化ガラスG2、G3の貫通孔の孔端部5には、座金4を接触させないようにしている。
【0112】
図8に示すように、強化ガラスG2、G3の貫通孔7と座金4が同心状となるように配置し、座金3の内周から強化ガラスG2、G3の孔端部5までの距離を3.5mmとし、ボルト1、ナット2の締め付けによるボルト軸方向の力を加えた際、割れ発生の開始点となりやすい貫通孔7の孔端部5を避けて、ボルト1、ナット2で締め付けられるようにした。なお、強化ガラスG2、G3の貫通孔7と座金4の貫通孔とが同心状となるように配置する際に、位置決めがしやすいよう、図示しないゴムまたは樹脂製の貫通孔を有するスペーサーを貫通孔7の空間部に入れた。
【0113】
次いで、上記の強化ガラスG2、G3の締め付けテストを行った。
【0114】
締め付け用のボルト1、ナット2は、摩擦接合用高力六角ボルト・ナット座金のセット、株式会社NSボルテン製のものを使用した。ボルト1は呼び径、M20、首下長さ、80mm、対角距離、37mm、機械的性質による等級はF10Tである。ナット2は呼び径、M20、対角距離、37mm、機械的性質による等級はF10である。
【0115】
重ね合わせた強化ガラスG2、G3、個々の座金4、6に貫通させたボルト1にナット2をねじ込み、トルクレンチを用いて150N・mのトルクで一次締めした後、そこからナット2を120度回転させて、ナット回転法に従い締め付けたが、強化ガラスG2、G3は破損しなかった。なお、このときボルト1に発生するボルト軸方向の力は250kNであった。
【0116】
250kNのボルト軸方向の力で締め付けて、強化ガラスG2、G3が破損しなかったのは、割れが生じやすい、強化ガラスG2、G3の貫通孔の孔端部4にボルト軸方向の力を直接作用させないようにしたことに加え、強化ガラスG2、G3の圧縮部位において、圧縮応力により板ガラスのクラック発生および伝播が抑制され、板ガラスの見掛の強度を増加したことによると思われる。
【実施例5】
【0117】
図7に示すように、中心に20mmφの貫通孔7をあけた板厚、12mm、大きさ、300mm×300mm角の2枚の強化ガラスG2、G3を用意した。強化ガラスG2、G3は軟化点付近まで加熱後、風冷し表面に圧縮応力を与えたものである。
【0118】
図8に示すように、一対の締め付け部材であるボルト1、ナット2と座金3との間に座金6を挟んだ。座金6には、呼び径、M16、厚み、4.5mm、外径、32mm、内径、17mm、機械的性質による等級はF35の平座金を用いた。座金6を用いることにより、ボルト1、ナット2を締め付ける際に締め付けやすく、締め付け工具のトルクを伝えやすい。
【0119】
また、強化ガラスG2、G3を重ねて接合する際に、強化ガラスG2、G3の貫通孔7の孔端部5に圧縮応力を作用させないよう応力発生部材として、強化ガラスG2、G3と座金6の間、および強化ガラスG2、G3の間に挟み込む座金4には、呼び径、M24、厚み5.5mm、外径、48mm、内径、25mm、機械的性質による等級はF35の平座金を用いた。座金4の内径と外径の差は、23mmであり、ヤング率、210GPa、ロックウェル硬度、HRC40である。
【0120】
各々のM24の座金4を強化ガラスG2、G3に圧接する際は、強化ガラスG2、G3の貫通孔7の孔端部5には、座金4を接触させないようにしている。
【0121】
図8に示すように、強化ガラスG2、G3の貫通孔7と座金4とが同心状になるように配置し、座金4の内周から強化ガラスG2、G3の孔端部5までの距離を2.5mmとし、ボルト軸方向の力を加えた際、割れ発生の開始点となりやすい貫通孔7の孔端部5を避けて、ボルト1、ナット2で締め付けられるようにした。なお、強化ガラスG2、G3の貫通孔7と座金4とが同心状になるように配置する際の位置決めがしやすいよう、図示しないゴムまたは樹脂製の貫通孔を有するスペーサーを貫通孔7の空間部に入れた。
【0122】
次いで、上記の強化ガラスG2、G3の締め付けテストを行った。
【0123】
締め付け用のボルト1、ナット2は、摩擦接合用高力六角ボルト・ナット座金のセット、株式会社NSボルテン製のものを使用した、ボルト1は呼び径、M16、首下長さ、80mm、対角距離、31mm、機械的性質による等級はF10Tである。ナット2は呼び径、M16、対角距離、31mm、機械的性質による等級等はF10である。
【0124】
重ね合わせた強化ガラスG2、G3に、個々の座金4、6に貫通させたボルト1にナット2をねじ込み、トルクレンチを用いて100N・mのトルクで一次締めした後、そこからナット2を120度回転させて、ナット回転法に従い締め付けたが、強化ガラスG2、G3は破損しなかった。なお、このときボルト1に発生するボルト軸方向の力は250kNであった。
【0125】
250kNのボルト軸方向の力で締め付けて、強化ガラスG2、G3が破損しなかったのは、割れが生じやすい、強化ガラスG2、G3の貫通孔の孔端部5にボルト軸方向の力を直接作用させないようにしたことに加え、強化ガラスG2、G3の圧縮部位において、圧縮応力により板ガラスのクラック発生および伝播が抑制され、板ガラスの見掛の強度が増加したことによると思われる。
【実施例6】
【0126】
座金4に、呼び径、M20、厚み4.5mm、外径、40mm、内径、21m、機械的性質による等級はF35の平座金を用いた以外は、実施例2と同様の手順でガラスの締め付けテストを行った。座金4の内径と外径の差は、19mmであり、ヤング率、210GPa、ロックウェル硬度、HRC40である。
【0127】
座金4の内周から強化ガラスGの貫通孔の孔端部5までの距離を0.5mmとしたことで、ボルト軸方向の力を加えた際、割れ発生の開始点となりやすい孔端部4を避けて、ボルト1、ナット2で締め付けられるようにした。
【0128】
実施例1、2と同様に、強化ガラスG2、G3の締め付けテストを行ったが、ガラスは破損しなかった。
【0129】
150kNのボルト軸方向の力で締め付けて、強化ガラスG2、G3が破損しなかったのは、割れが生じやすい、強化ガラスG2、G3の貫通孔の孔端部5にボルト軸方向の力を直接作用させないようにしたことに加え、強化ガラスG2、G3の圧縮部位において、圧縮応力により板ガラスのクラック発生および伝播が抑制され、板ガラスの見掛の強度が増加したことによると思われる。
(比較例2)
座金4に、呼び径、M16、厚み4.5mm、外径、32mm、内径、17mm、械的性質による等級はF35の平座金を用いた以外は、実施例2と同様の手順で強化ガラスG2、G3の締め付けテストを行った。座金4の内径と外径の差は、15mmであり、ヤング率、210GPa、ロックウェル硬度、HRC40である。
【0130】
座金4の内周から強化ガラスG2、G3の貫通孔の孔端部5までの距離が、−1.5mmとなり、貫通孔7の孔端部5と座金4が重なり、割れ等が発生し易く破損の開始点となる懸念の大きい貫通孔7の孔端部5と座金4が接触し、貫通孔7の孔端部5にボルト1、ナット2で締め付け他時に生じるボルト軸方向の力が、押圧力として直接作用することになり、強化ガラスG2、G3の締め付けテストを行った結果、強化ガラスG2、G3が破損した。即ち、ガラスの割れが生じやすい、強化ガラスG2、G3の貫通孔7の孔端部5にボルト軸方向の力が直接作用し強化ガラスG2、G3が破損した。
(接合部の耐荷重試験)
次いで、本発明の板ガラス接合用応力発生部材の使用方法による板ガラスと金属板の接合強度の評価試験を行った。
【0131】
図9が、本発明の接合構造を有するガラス試験片の形状を示す説明図である。
【0132】
最初に接合強度の評価試験に用いたガラス試験片について説明する。
【0133】
試験に用いた強化ガラスG4の寸法は、板厚、19mm、幅500mm、長さ2300mmであり、片方の孔端部に強化ガラスG4の幅方向に300mmの間隔、長さ方向に200mmの間隔で、孔径、24mmのボルト挿入穴8が4箇所設けている。
【0134】
図10の(A)は、接合部の耐荷重試験装置の側面図であり、(B)は上面図である。
【0135】
図10の(A)、(B)に示すように、固定部9にボルト10で締め付けて固定した金属板3としての厚さ、12mmの一対のL字型のステンレス鋼板に、ボルト1、ナット2および座金4、6を用いて、前記強化ガラスGの孔端部を本発明の板ガラス接合用応力発生部材の使用方法となるように固定した。
【0136】
ボルト1には、呼び径、M20、首下長さ120mmを、機械的性質による等級、F10Tのものを用い、ナット2には、呼び径、M20、機械的性質による等級、F10のものを用い、座金6には、呼び径、M20、厚み4.5mm、外形、40mm、内径、21mm、機械的性質による等級はF35を用いた。
【0137】
また、強化ガラスG4と金属板3との間に、応力発生部材として、強化ガラスG4の孔端部5に圧縮応力を作用させないために挟み込む座金4には、呼び径、M30の座金6、厚み5.5mm、外形、60mm、内径、31mm、機械的性質による等級はF35のものを用いた。座金4の内径と外径の差は、29mmであり、ヤング率、210GPa、ロックウェル硬度、HRC40である。
【0138】
ボルト1にナット2をねじ込み、トルクレンチを用いて150N・mのトルクで一次締めした後、そこからナット2を120度回転させて、ナット回転法に従い締め付けた。なお、このときボルト1に発生するボルト軸方向の力は250kNであった。
【0139】
図10に示す耐荷重試験装置において、強化ガラスG4の固定した反対側の端部に、図6中の矢印の方向へ、0〜20kNの鉛直上向きに荷重を作用させた際の、接合部11のボルトの鉛直上向きの変位量、接合部11の真上の強化ガラスG4の鉛直上向きの変位量を計測し、強化ガラスG4の鉛直上向きの変位量からボルトの鉛直上向きの変位量を引いたものを強化ガラスGのすべり量として計測した。
【0140】
図11は、強化ガラスのすべり量と鉛直上向きの荷重の相関を示すグラフである。
【0141】
図11のグラフに示すように、荷重が17kNまでは、ボルト1と強化ガラスG4の変位量はほぼ等しく、すべりが発生しなかった。この状態では、ボルト1が強化ガラスG4のボルト挿入孔、言い換えれば貫通孔の孔端部5に接触することがないので、強化ガラスG4が破損しない。
【0142】
それに対して、荷重が17kNより高くなると、強化ガラスG4の変位量が急激に増加し、強化ガラスG4が滑り始め、強化ガラスG4が4つの接合部の中心を支点として回転し始めた。これは、鉛直上向きの荷重を加えることにより本発明の板ガラス接合用応力発生部材の使用方法による圧縮接合の接合力よりも接合部に働く偶力が大きくなったためと考えられる。つまり、このリブガラスの接合強度は17kNである。言い換えれば、このリブガラスの固定端の反対側に17kNの荷重が加わっても、ガラスが破損することはない。また、強化ガラスG4が滑り始めてからも20kNまで荷重を付加したが強化ガラスG4が破損することはなかった。これは、強化ガラスG4が滑り始めてからも圧縮接合による動摩擦力が働き、強化ガラスG4の貫通孔に作用する力の一部を分担するためと考えられる。
【0143】
この試験結果を、板ガラスと接合部材を接着する従来のガラスパネルの固定方法と比較すると、例えば、特許文献1の実施例では、強化ガラス板の長さが1719mm、固定端の幅が325mm、先孔端部(荷重負荷側)の幅が244mm、厚みが19mmで、100mmのピッチで3本の雄ねじ部材を挿通した場合、約9.8kN(1000kgf)でガラスが破壊したと記載されている。接合部から荷重を与える部位までの距離であるモーメント長を加味して、本接合部の耐荷重試験と比較すると、本発明の板ガラス接合用応力発生部材の使用方法による圧縮接合の接合強度は、モーメント長が長く、耐荷重試験として過酷であるにも拘らず、板ガラスの接合強度が1.7倍高い。
【0144】
なお、接着部が破壊されると一気に接合部が破壊される板ガラスと接合部材を接着する従来のガラスパネルの固定方法と比較して、本発明の板ガラス接合用応力発生部材の使用方法による圧縮接合は、ボルト1、ナット2の強力な締め付けボルト軸方向の力による接合部のずれが生じても、圧縮接合による動摩擦力が働き、強化ガラスG4の貫通孔に作用する力の一部を分担するためガラスが破損することはなく、強化ガラスG4が滑り始めてからも20kNまで荷重を付加したが強化ガラスG4が破損することはなかった。強化ガラスG4の貫通孔と座金4が同心となるように配置する際の位置決めに、図示しないゴムまたは樹脂製の同心状のスペーサーを貫通孔の空間部に入れておくと、ずれが生じた際、直接、強化ガラスG4の孔端部5とボルト1の軸部が触れ合うことなく緩衝し破壊が更に抑制されるのでスペーサーを入れることが好ましい。
【0145】
本発明の板ガラス接合用応力発生部材の使用方法においては、強化板ガラスG4と座金4とL型金属板3とが、ボルト1とナット2とのボルト軸方向の力により座金4を介して一体化して、鉛直荷重が作用しても強化ガラスGのすべり変位が生じにくくなり、従来の板ガラスと接合部材を接着する接合方法に比較して、より接合部の接合強度および耐久性が向上していることがわかった。
【0146】
また、板ガラスと接合部材を接着する従来のガラスパネルの固定方法では板ガラスが滑り始める前に板ガラスが破損していることから、接合数を増やすことでこれ以上接合強度を増やすことができないが、本件の接合方法では、接合数を増やすことで容易に接合強度を高めることも可能である。
【0147】
このことより、例えば、ガラススクリーンを建設する際、ガラススクリーンをなす面ガラスの支持に用いる方立てガラスとしてのリブガラスを長くし、その上で孔端部を接合し支持する際、本発明の板ガラス接合用応力発生部材の使用方法の方が、接合強度が高く、有利であることがわかった。
【0148】
このように、本発明の板ガラス接合用応力発生部材の使用方法は接着剤を用いないで優れた支持強度を得ることができ、接着剤を使わないことにより、ガラススクリーンを建設後、不用となった際の解体も容易である。
【産業上の利用可能性】
【0149】
本発明の板ガラス接合用応力発生部材の使用方法は、ガラス壁、ガラス屋根、大板ガラスを使用した開口部構成よりなるガラススクリーンなどの大型建築物に使用される。
【0150】
例えば、目立つ金属方立ての代りに、目立たないガラス方立て(リブガラス)を用いて、正面ガラス(フェイスプレート)に加わる風荷重を支持する工法であるガラス・スタビライザー工法によるリブガラススクリーンに使用される。
【0151】
本発明の板ガラス接合用応力発生部材の使用方法および接合方法を用い、ガラス板を接合することで、長いガラス方立て、言い換えれば、長いリブガラスが提供される。
【0152】
また、リブガラスに取り付けた接合板をガラススクリーンと接続することも可能であり、ボルトでガラススクリーンと接続できることからリブガラススクリーンの設計の自由度が広がる。
【図面の簡単な説明】
【0153】
【図1】本発明の板ガラス接合用応力発生部材の使用方法による板ガラスと接合部材の接合部の一例の拡大側面図である。
【図2】(A)は、本発明の板ガラス接合用応力発生部材の使用方法による板ガラスと接合部材の接合部の一例の正面図である。(B)はその側面図である。
【図3】本発明の板ガラス接合用応力発生部材の使用方法による板ガラス同士の接合部の一例の拡大側面図である。
【図4】本発明の板ガラス接合用応力発生部材の使用方法による板ガラス同士の接合部の一例の正面図である。
【図5】本実施例における試験片の上面図である
【図6】本実施例における板ガラスの接合部の拡大側面図である。
【図7】本実施例における試験片の上面図である。
【図8】本発明の実施例における板ガラスの接合部の拡大側面図である。
【図9】本発明の接合構造を有するガラス試験片の形状を示す説明図である。
【図10】(A)は、接合部の耐荷重試験装置の側面図であり、(B)は上面図である。
【図11】強化ガラスのすべり量と鉛直上向きの荷重の相関を示すグラフである。
【符号の説明】
【0154】
G1、G2、G3、G4 板ガラス(強化ガラス)
1 ボルト
2 ナット
3 金属板(接合部材)
4 座金(応力発生部材)
5 孔端部
6 座金
7 貫通孔
8 貫通穴
9 固定部
10 ボルト
11 接合部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
板ガラスと接合部材を重ね、板ガラスと接合部材に形成した貫通孔に一対の締め付け部材を挿通し、板ガラスと接合部材を締め付けて生じる60kN以上、300kN以下の力により板ガラスと接合部材を接合した板ガラスの接合部において、ヤング率、180GPa以上、230GPa以下、ロックウェル硬度、HRC35以上、HRC45以下の応力発生部材を板ガラスと接合部材との間に挟みこみ、板ガラスに圧接させることを特徴とする建築分野で使用する板ガラス接合用応力発生部材の使用方法。
【請求項2】
一対の締め付け部材がボルト・ナットであり、板ガラスと接合部材を重ね、板ガラスと接合部材に形成した貫通孔にボルトを挿通し、ボルトに螺合させたナットとで板ガラスと接合部材を締め付けて生じるボルト軸方向の60kN以上、300kN以下の力により板ガラスと接合部材を接合した板ガラスの接合部において、ヤング率、180GPa以上、230GPa以下、ロックウェル硬度、HRC35以上、HRC45以下の応力発生部材を板ガラスと接合部材との間に挟みこみ、板ガラスに圧接させることを特徴とする請求項1に記載の建築分野で使用する板ガラス接合用応力発生部材の使用方法。
【請求項3】
少なくとも2枚以上の板ガラスを重ね、板ガラスに形成した貫通孔に一対の締め付け部材を挿通し、板ガラスを締め付けて生じる60kN以上、300kN以下の力により板ガラス同士を接合した板ガラスの接合部において、ヤング率、180GPa以上、230GPa以下、ロックウェル硬度、HRC35以上、HRC45以下の応力発生部材を板ガラスと板ガラスとの間に挟みこみ、板ガラスに圧接させることを特徴とする建築分野で使用する板ガラス接合用応力発生部材の使用方法。
【請求項4】
一対の締め付け部材がボルト・ナットであり、少なくとも2枚以上の板ガラスを重ね、板ガラスに形成した貫通孔にボルトを挿通し、ボルトとボルトに螺合させたナットとで板ガラスを締め付けて生じるボルト軸方向の60kN以上、300kN以下の力により板ガラス同士を接合した板ガラスの接合部において、ヤング率、180GPa以上、230GPa以下、ロックウェル硬度、HRC35以上、HRC45以下の応力発生部材を板ガラスと板ガラスとの間に挟みこみ、板ガラスに圧接させることを特徴とする請求項3に記載の建築分野で使用する板ガラス接合用応力発生部材の使用方法。
【請求項5】
一対の締め付け部材がボルト・ナットであり、少なくとも2枚以上の板ガラスを重ね、板ガラスに形成した貫通孔にボルトを挿通し、ボルトとボルトに螺合させたナットとで複数の板ガラスを締め付けて生じるボルト軸方向の60kN以上、300kN以下の力により板ガラス同士を接合した板ガラスの接合部において、ヤング率、180GPa以上、230GPa以下、ロックウェル硬度、HRC35以上、HRC45以下の応力発生部材をボルト頭部と板ガラスの間、板ガラスと板ガラスの間、およびナットと板ガラスの間に挟みこみ、板ガラスに圧接させることを特徴とする請求項4に記載の建築分野で使用する板ガラス接合用応力発生部材の使用方法。
【請求項6】
応力発生部材が、ヤング率、180GPa以上、230GPa以下、ロックウェル硬度、HRC35以上、HRC45以下であり、貫通孔を擁し、該貫通孔の直径が、板ガラスに形成した貫通孔の直径よりも大きい座金であり、板ガラスの貫通孔に対して同心状になるように配置し、貫通孔に一対の締付け部材またはボルトを挿通することを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の建築分野で使用する板ガラス接合用応力発生部材の使用方法。
【請求項7】
前記座金が、内径、17.0mm以上、32.0mm以下であることを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれか1項に記載の建築分野で使用する板ガラス接合用応力発生部材の使用方法。
【請求項8】
座金が平座金であり、座金の内径と外形との差が、13.3mm以上、29.0mm以下であることを特徴とする請求項7に記載の建築分野で使用する板ガラス接合用応力発生部材の使用方法。
【請求項9】
前記座金が、厚み、4.0mm以上、8.7mm以下であることを特徴とする請求項1乃至請求項8のいずれか1項に記載の建築分野で使用する板ガラス接合用応力発生部材の使用方法。
【請求項10】
ボルトの頭部・ナットの外径よりも応力発生部材である座金の貫通孔の直径を小さくしたことを特徴とする請求項6乃至請求項9のいずれか1項に記載の建築分野で使用する板ガラス接合用応力発生部材の使用方法。
【請求項11】
ボルト・ナットが六角ボルト・ナットであり、六角ボルト・ナットの対角距離よりも応力発生部材である座金の貫通孔の直径を小さくしたことを特徴とする請求項10に記載の建築分野で使用する板ガラス接合用応力発生部材の使用方法。
【請求項12】
請求項1乃至請求項11いずれか1項に記載の建築分野で使用する板ガラス接合用応力発生部材の使用方法が用いられてなる板ガラスの接合部。
【請求項13】
請求項12に記載の板ガラスの接合部を要する板ガラスを用いた建築物。
【請求項1】
板ガラスと接合部材を重ね、板ガラスと接合部材に形成した貫通孔に一対の締め付け部材を挿通し、板ガラスと接合部材を締め付けて生じる60kN以上、300kN以下の力により板ガラスと接合部材を接合した板ガラスの接合部において、ヤング率、180GPa以上、230GPa以下、ロックウェル硬度、HRC35以上、HRC45以下の応力発生部材を板ガラスと接合部材との間に挟みこみ、板ガラスに圧接させることを特徴とする建築分野で使用する板ガラス接合用応力発生部材の使用方法。
【請求項2】
一対の締め付け部材がボルト・ナットであり、板ガラスと接合部材を重ね、板ガラスと接合部材に形成した貫通孔にボルトを挿通し、ボルトに螺合させたナットとで板ガラスと接合部材を締め付けて生じるボルト軸方向の60kN以上、300kN以下の力により板ガラスと接合部材を接合した板ガラスの接合部において、ヤング率、180GPa以上、230GPa以下、ロックウェル硬度、HRC35以上、HRC45以下の応力発生部材を板ガラスと接合部材との間に挟みこみ、板ガラスに圧接させることを特徴とする請求項1に記載の建築分野で使用する板ガラス接合用応力発生部材の使用方法。
【請求項3】
少なくとも2枚以上の板ガラスを重ね、板ガラスに形成した貫通孔に一対の締め付け部材を挿通し、板ガラスを締め付けて生じる60kN以上、300kN以下の力により板ガラス同士を接合した板ガラスの接合部において、ヤング率、180GPa以上、230GPa以下、ロックウェル硬度、HRC35以上、HRC45以下の応力発生部材を板ガラスと板ガラスとの間に挟みこみ、板ガラスに圧接させることを特徴とする建築分野で使用する板ガラス接合用応力発生部材の使用方法。
【請求項4】
一対の締め付け部材がボルト・ナットであり、少なくとも2枚以上の板ガラスを重ね、板ガラスに形成した貫通孔にボルトを挿通し、ボルトとボルトに螺合させたナットとで板ガラスを締め付けて生じるボルト軸方向の60kN以上、300kN以下の力により板ガラス同士を接合した板ガラスの接合部において、ヤング率、180GPa以上、230GPa以下、ロックウェル硬度、HRC35以上、HRC45以下の応力発生部材を板ガラスと板ガラスとの間に挟みこみ、板ガラスに圧接させることを特徴とする請求項3に記載の建築分野で使用する板ガラス接合用応力発生部材の使用方法。
【請求項5】
一対の締め付け部材がボルト・ナットであり、少なくとも2枚以上の板ガラスを重ね、板ガラスに形成した貫通孔にボルトを挿通し、ボルトとボルトに螺合させたナットとで複数の板ガラスを締め付けて生じるボルト軸方向の60kN以上、300kN以下の力により板ガラス同士を接合した板ガラスの接合部において、ヤング率、180GPa以上、230GPa以下、ロックウェル硬度、HRC35以上、HRC45以下の応力発生部材をボルト頭部と板ガラスの間、板ガラスと板ガラスの間、およびナットと板ガラスの間に挟みこみ、板ガラスに圧接させることを特徴とする請求項4に記載の建築分野で使用する板ガラス接合用応力発生部材の使用方法。
【請求項6】
応力発生部材が、ヤング率、180GPa以上、230GPa以下、ロックウェル硬度、HRC35以上、HRC45以下であり、貫通孔を擁し、該貫通孔の直径が、板ガラスに形成した貫通孔の直径よりも大きい座金であり、板ガラスの貫通孔に対して同心状になるように配置し、貫通孔に一対の締付け部材またはボルトを挿通することを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の建築分野で使用する板ガラス接合用応力発生部材の使用方法。
【請求項7】
前記座金が、内径、17.0mm以上、32.0mm以下であることを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれか1項に記載の建築分野で使用する板ガラス接合用応力発生部材の使用方法。
【請求項8】
座金が平座金であり、座金の内径と外形との差が、13.3mm以上、29.0mm以下であることを特徴とする請求項7に記載の建築分野で使用する板ガラス接合用応力発生部材の使用方法。
【請求項9】
前記座金が、厚み、4.0mm以上、8.7mm以下であることを特徴とする請求項1乃至請求項8のいずれか1項に記載の建築分野で使用する板ガラス接合用応力発生部材の使用方法。
【請求項10】
ボルトの頭部・ナットの外径よりも応力発生部材である座金の貫通孔の直径を小さくしたことを特徴とする請求項6乃至請求項9のいずれか1項に記載の建築分野で使用する板ガラス接合用応力発生部材の使用方法。
【請求項11】
ボルト・ナットが六角ボルト・ナットであり、六角ボルト・ナットの対角距離よりも応力発生部材である座金の貫通孔の直径を小さくしたことを特徴とする請求項10に記載の建築分野で使用する板ガラス接合用応力発生部材の使用方法。
【請求項12】
請求項1乃至請求項11いずれか1項に記載の建築分野で使用する板ガラス接合用応力発生部材の使用方法が用いられてなる板ガラスの接合部。
【請求項13】
請求項12に記載の板ガラスの接合部を要する板ガラスを用いた建築物。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2008−63737(P2008−63737A)
【公開日】平成20年3月21日(2008.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−240009(P2006−240009)
【出願日】平成18年9月5日(2006.9.5)
【出願人】(000002200)セントラル硝子株式会社 (1,198)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年3月21日(2008.3.21)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年9月5日(2006.9.5)
【出願人】(000002200)セントラル硝子株式会社 (1,198)
【Fターム(参考)】
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