板状体の整列装置
【課題】多数の板状体を把持具に効率良く移載することができる板状体の整列装置を提供する。
【解決手段】フェライト板1が収納される多数の凹部17が設けられた板状体収納部11と、前記凹部17と連通可能となるように前記凹部17に対応する位置に貫通孔18が形成されて前記板状体収納部11の上面に摺動自在に載置されたスライド部材12とを備え、前記凹部17の深さHがフェライト板1の厚みTと略同一とされ、かつスライド部材12の厚みT′がフェライト板1の厚みT′以上となるように形成されている。
【解決手段】フェライト板1が収納される多数の凹部17が設けられた板状体収納部11と、前記凹部17と連通可能となるように前記凹部17に対応する位置に貫通孔18が形成されて前記板状体収納部11の上面に摺動自在に載置されたスライド部材12とを備え、前記凹部17の深さHがフェライト板1の厚みTと略同一とされ、かつスライド部材12の厚みT′がフェライト板1の厚みT′以上となるように形成されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は板状体の整列装置に関し、より詳しくは磁性体素子に使用されるフェライト板等の薄層板状体を把持具で保持させる際に使用される板状体の整列装置に関する。
【背景技術】
【0002】
磁性体素子に使用される円板状のフェライト板は、通常、保持孔を有する把持具に保持させて取り扱われるが、この保持孔は弾性体によって形成されており、フェライト板はこの保持孔に圧入することにより、フェライト板の側面が保持孔の内壁で保持されるようになっている。
【0003】
ところで、フェライト板を把持具の保持孔に圧入するためには、所定の高精度でフェライト板と保持孔とを位置合わせした状態で圧入する必要があるが、通常、一個の把持具には多数の保持孔が所定ピッチを有して列設されており、したがって効率面から多数のフェライト板を一度に保持孔に圧入するのが望ましい。
【0004】
多数のフェライト板を一度に把持具の保持孔に保持させる方法としては、フェライト板を強制的に整列させる整列装置を使用する方法がある。すなわち、把持具の保持孔に対応させて形成された多数の凹部を有する整列装置を設け、該整列装置を振動・揺動等させて前記フェライト板を凹部に振り込み、該凹部に振り込まれたフェライト板を吸引ノズルで吸引して取り出し、その後該吸引ノズルでフェライト板を保持孔に圧入し、これにより多数のフェライト板を一度に把持具に保持させることが可能となる。
【0005】
しかしながら、この方法では、前記凹部の深さがフェライト板の厚み相当しかない場合は、フェライト板が一旦凹部に振り込まれても、整列装置の振動・揺動により、該フェライト板が凹部から外部に飛び出してしまうおそれがあり、所望の高い充填効率が得られないという欠点がある。
【0006】
そこで、従来より、図11に示すように、投入された多数の薄物ワーク101(板状体)を整列させるワーク整列箱102と、このワーク整列箱102を一方向に沿う円弧状及びその直交方向に沿う直線状に揺動動作させる揺動動作機構(不図示)とを備え、ワーク整列箱102の一方側底面には投入された薄物ワーク101を受け止めて保持するワーク溜め凹部103を設ける一方、その他方側底面には複数枚ずつの薄物ワーク101を収納しうる深さとされ、かつ、所定位置ごとに形成された複数の収納孔104を設けた薄物ワーク整列装置が提案されている(特許文献1)。
【0007】
特許文献1では、収納孔104の深さが複数枚の薄物ワーク101を収納しうる深さとされているので、整列装置を振動・揺動させても一旦収納孔104に収納された薄物ワーク101が収納孔104から飛び出すのを防止することが可能となり、充填効率の向上を図ることができる。
【0008】
【特許文献1】特開平4−266318号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献1では、収納孔104の深さが複数枚の薄物ワーク101を収納しうる深さとされているため、薄物ワーク101が収納孔104から外部に飛び出すことは防止できるものの、1個の収納孔104に対する薄物ワーク101の振り込み個数にばらつきが生じ、1枚の薄物ワーク101しか収納されなかった収納孔104や複数枚の薄物ワーク101が収納された収納孔104が混在する。このため、吸引ノズルで各薄物ワーク101を吸引する際に、吸引ノズルの垂直方向の上下位置を各薄物ワーク101毎に個別調整する必要があるという問題点があった。
【0010】
また、上記薄物ワーク101のような板状体を収納孔104から把持具の保持孔に移載する方法としては、上述した吸引ノズルを使用する他、収納孔104の裏側から押し上げピン等で押し上げて把持具の保持孔に圧入する方法もあるが、複数枚の板状体101が収納孔104に収納された場合は、斯かる複数枚の板状体101が押上げピンによって全て押し上げられることとなり、収納孔104に収納されている板状体101を把持具の保持孔に1枚ずつ効率良く移載することができないという問題点があった。
【0011】
本発明はこのような問題点に鑑みなされたものであって、多数の板状体を把持具に効率良く移載することができる板状体の整列装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために本発明に係る板状体の整列装置は、板状体が収納される多数の凹部が設けられた板状体収納部と、前記凹部と連通可能となるように前記凹部に対応する位置に貫通孔が形成されて前記板状体収納部の上面に摺動自在に載置されたスライド部材とを備え、前記凹部の深さが前記板状体の厚みと略同一とされ、かつ前記スライド部材の厚みが前記板状体の厚み以上となるように形成されていることを特徴としている。
【0013】
また、本発明の板状体の整列装置は、前記板状体を吸引する吸引手段が、前記各凹部に対応する位置に配されていることを特徴としている。
【0014】
さらに、本発明の板状体の整列装置は、前記凹部の裏面側から前記板状体を押し上げる押上手段が前記各凹部に対応する位置に配されていることを特徴としている。
【0015】
また、本発明の板状体の整列装置は、前記板状体収納部を揺動させる揺動手段を備えていることを特徴としている。
【0016】
また、本発明の板状体の整列装置は、前記板状体収納部を加振させる振動手段を備えていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0017】
上記板状体の整列装置によれば、板状体が収納される多数の凹部が設けられた板状体収納部と、前記凹部と連通可能となるように前記凹部に対応する位置に貫通孔が形成されて前記板状体収納部の上面に摺動自在に載置されたスライド部材とを備え、前記凹部の深さが前記板状体の厚みと略同一とされ、かつ前記スライド部材の厚みが前記板状体の厚み以上となるように形成されているので、凹部と貫通孔とが連通状態となるように板状体収納部上にスライド部材を載置した状態で板状体を凹部に振り込むことにより、凹部に一旦収納された板状体は外部に飛び出すこともなく、また複数の板状体が凹部に対して振り込まれた場合であっても、最下層の板状体以外の板状体は凹部上の貫通孔内に収納される。したがって、スライド部材を摺動させて該スライド部材を板状体収納部上から除去することにより、1枚の板状体のみが残存した状態で凹部が露見することとなり、多数の板状体を高充填率でもって整列装置内に収納することができる。
【0018】
また、上記板状体の整列装置によれば、前記板状体を吸引する吸引手段が、前記各凹部に対応する位置に配されているので、各吸引手段毎に垂直方向の位置調整を行う必要もなく、凹部内に収納された各板状体を吸引手段を介して吸引することができ、したがって板状体を容易且つ迅速に把持具の保持孔に移載することが可能となる。
【0019】
さらに、上記板状体の整列装置によれば、前記凹部の裏面側から前記板状体を押し上げる押上手段が、前記各凹部に対応する位置に配されているので、押上手段を駆動させることにより、上述と同様、板状体を把持具の保持孔に容易且つ迅速に移載することができ、該板状体を保持穴で把持することができる。
【0020】
また、上記板状体の整列装置によれば、前記板状体収納部を揺動させる揺動手段、及び/又は前記板状体収納部を加振させる振動手段を備えているので、スライド部材の貫通孔と連通状態にある板状体収納部の凹部に効率良く板状体を収納することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
次に、本発明の実施の形態を詳説する。
【0022】
図1は本発明に係る板状体の整列装置の一実施の形態(第1の実施の形態)を示す概略斜視図であって、該板状体の整列装置は、円板形状に形成された多数のフェライト板(板状体)1を整列させるための装置本体2と、該装置本体2を矢印x方向及び矢印y方向に揺動させる揺動操作部3とを備えている。
【0023】
揺動操作部3は、具体的には、平板矩形状の基台4の側面所定位置から一対の支持板5a、5bが対向状に立設されると共に、支持板5a、5bには支持軸6が枢着されている。また、支持軸6には装置本体2に連接された一対の揺動板7a、7bが支持板5a、5bの近傍位置に取り付けられ、かつ揺動板7a、7bは連結棒8を介して互いに接続されている、そして、連結棒8の略中央にはシリンダ9のシリンダ軸9aが連接され、該シリンダ軸9aを矢印x方向に進退運動させることにより、装置本体2が矢印x方向に揺動するように構成されている。
【0024】
また、基台4の側面略中央部にはシリンダ10のシリンダ軸10aが固着され、シリンダ軸10aを矢印y方向に進退運動させることにより、装置本体2が矢印y方向に揺動するように構成されている。尚、装置本体2の揺動運動はガイドレール(不図示)によって規制され、また、揺動操作部3の全体動作は不図示の同調制御装置によって制御される。
【0025】
装置本体2は、フェライト板1を収納するための板状体収納部11と、該板状体収納部11の上面に摺動自在に載置されたスライド部材12とを備えている。
【0026】
具体的には、板状体収納部11は、図2に示すように、上面及び一端部が開放状に形成されると共に平面視矩形状の略箱型に形成されている。そして板状体収納部11の一側面部13に連接する底面には、シュータ(不図示)から投入されたフェライト板1を貯留するための板状体溜め部14が形成されると共に、該板状体溜め部14は傾斜面15を介して収納部本体16に連接されている。
【0027】
また、収納部本体16は、多数の凹部17が所定ピッチで縦横に列設されており、フェライト板1の収納が可能となるように構成されている。
【0028】
また、スライド部材12は、幅寸法が前記板状体収納部11の幅寸法と略同一寸法を有する平面視矩形状に形成されると共に、前記凹部17と連通可能となるように前記凹部17に対応する位置に多数の貫通孔18が形成されている。また、該スライド部材12の一方の端部は傾斜状に形成されると共に、他方の端部には板状体収納部11の側壁と略同一高さを有する側壁19が形成され、該側壁19の略中央部にはシリンダ軸20aにより進退運動を行うシリンダ20が取り付けられている。シリンダ20は不図示の駆動手段に接続され、該駆動手段によりシリンダ軸20aの動作が制御される。尚、この図2では省略しているが、各凹部17の上方には吸引ノズルが配されている。
【0029】
図3は装置本体2の要部拡大図である。
【0030】
凹部17の直径Dと貫通孔18の直径D′とは、略同一寸法に形成され、かつ、フェライト板1の振り込みが可能となるようにフェライト板1の直径dよりも大きく形成されている。
【0031】
また、凹部17の深さHは、フェライト板1の厚みTと略同一となるように形成され、さらに貫通孔18の深さH′、すなわちスライド部材12の厚みT′はフェライト板1の厚みTの複数枚分となるように形成されている。
【0032】
次に、上記板状体の整列装置の動作原理について説明する。
【0033】
まず、凹部17と貫通孔18とが全て連通状態となるようにスライド部材12を板状体収納部11の収納部本体16上に載置し、シリンダ軸20を伸長させた状態で堅固に固定させた後、不図示のシュータから多数のフェライト板1を装置本体2に投入し、該フェライト板1を板状体溜め部14に貯留する。そしてこの後、揺動操作部3を駆動させて板状体収納部11(装置本体2)を矢印x方向及び矢印y方向に揺動させる。
【0034】
すると、図4に示すように、フェライト板1は貫通孔18内に振り込まれ、凹部17内に収納される。すなわち、スライド部材12が板状体収納部11の収納部本体16上に堅固に載置された状態で前記板状体収納部11は矢印x方向及びy方向に揺動運動を行い、これにより貫通孔18及び貫通孔18と連通する凹部17には少なくとも1枚のフェライト板1が収納される。
【0035】
次いで、シリンダ20を駆動させてシリンダ軸20aを後退させると、図5に示すように、スライド部材12は矢印A方向に摺動する。そして、凹部17の深さHがフェライト板1の厚みTと略同一に形成されているので、該凹部17には1枚のフェライト板1が収納された状態で露見することとなる。
【0036】
次いで、図6の矢印Bに示すように、板状体収納部11の凹部17の上方に配された吸引ノズル21を降下させてフェライト板1を該吸引ノズル21で吸引させ、その後図7の矢印Cに示すように、吸引ノズル21を上昇させ、これによりフェライト板1を凹部17から離脱させる。
【0037】
そしてその後、図8に示すように、フェライト板1が先端に吸引された吸引ノズル21を、矢印Dに示すように、把持具22の保持孔23に圧入する。すなわち、保持孔23はフェライト1の直径dよりも若干小さく形成されると共に、その内壁はゴム等の弾性体からなり、したがって吸引ノズル21を使用してフェライト板1を保持孔23に圧入すると、フェライト板1の外周が保持孔23の内壁で把持され、これにより多数のフェライト板1が同時に保持孔23に圧入されて保持されることとなる。
【0038】
このように本実施の形態では、フェライト板1を収納するための多数の凹部17が設けられた板状体収納部11と、凹部17と連通状態となるように前記凹部17に対応する位置に貫通孔18が形成されて板状体収納部11の上面に摺動自在に載置されたスライド部材12とを備え、凹部17の深さHがフェライト板1の厚みTと略同一とされ、かつスライド板12の厚みT′がフェライト板1の厚みT以上となるように形成されているので、凹部17と貫通孔18とが連通状態となるように板状体収納部11上にスライド部材12を載置した状態でフェライト板1を振り込むことにより、凹部17に一旦収納されたフェライト板1は凹部17から外部に飛び出すこともなく、また、複数のフェライト板1が凹部17に対して振り込まれた場合であっても、最下層のフェライト板1以外のフェライト板1は凹部17上の貫通孔18内に収納される。したがって、スライド部材12を摺動させて板状体収納部11から除去することにより、凹部17内には1枚のフェライト板1のみが残存した状態で該凹部17は露見することとなり、多数のフェライト板1を高充填率でもって整列装置内に収納することができる。
【0039】
また、フェライト板1の上面を吸引する吸引ノズル21を各凹部17の上方に配しているので、凹部17内に収納された各フェライト板1を吸引ノズル21で容易に吸引することができ、したがって各吸引ノズル21毎に垂直方向の位置調整を行う必要もなく、吸引されたフェライト板1を容易に把持具22の保持孔23に圧入することが可能となる。
【0040】
図9は本発明の第2の実施の形態に係る板状体収納部24の断面図であって、本第2の実施の形態では、板状体収納部24に形成された凹部25の底面には押上ピンの挿通が可能な小径の小孔26が設けられている。
【0041】
本第2の実施の形態でも、第1の実施の形態と同様の動作原理によって各凹部25には1枚のフェライト板1が収納される。そして、図10に示すように、押上ピン27を小孔26内に挿入し、フェライト板1を矢印E方向に押し上げることにより、該フェライト板1を把持具22の保持穴23に圧入することができ、これにより第1の実施の形態と同様、フェライト板1を保持穴23で保持することができる。
【0042】
尚、本発明は上記実施の形態に限定されるものではない。上記実施の形態では、板状体収納部11、24を揺動させることによりフェライト板1を凹部17、25に供給しているが、揺動運動に代えて、或いは揺動運動に加えて振動運動を板状体収納部11、24に負荷するようにしてもよい。
【0043】
また、上記実施の形態ではフェライト板1を板状体の一例として述べたが、フェライト板1以外の板状体にも適用できるのはいうまでもなく、また、形状についても円板形状に限定されることはなく、例えば楕円形状や四角形状、その他の多角形状であっても、凹部形状及び貫通孔形状を適宜変更することにより、同様に適用できるのはいうまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明に係る板状体の整列装置の一実施の形態を示す概略斜視図である。
【図2】上記板状体の整列装置の装置本体を示す概略斜視図である。
【図3】前記装置本体の要部拡大図である。
【図4】板状体収納部上にスライド部材が載置された状態でフェライト板が収納された状態を示す断面図である。
【図5】図4の状態からスライド部材を矢印A方向に摺動させた状態を示す断面図である。
【図6】板状体収納部に収納されているフェライト板に吸引ノズルを吸引させた状態を示す斜視図である。
【図7】フェライト板を吸引ノズルに吸引させて該吸引ノズルを上昇させた状態を示す断面図である。
【図8】フェライト板を把持具の保持穴に圧入しようとする状態を示す斜視図である。
【図9】板状体収納部の第2の実施の形態を示す断面図である。
【図10】第2の実施の形態の板状体収納部を使用してフェライト板を把持具の保持穴に圧入しようとする状態を示す斜視図である。
【図11】特許文献1に記載された整列装置の要部斜視図である。
【符号の説明】
【0045】
1 フェライト板(板状体)
3 揺動操作部(揺動手段)
11 板状体収納部
12 スライド部材
17 凹部
18 貫通孔
21 吸引ノズル(吸引手段)
24 板状体収納部
27 押上ピン(押上手段)
【技術分野】
【0001】
本発明は板状体の整列装置に関し、より詳しくは磁性体素子に使用されるフェライト板等の薄層板状体を把持具で保持させる際に使用される板状体の整列装置に関する。
【背景技術】
【0002】
磁性体素子に使用される円板状のフェライト板は、通常、保持孔を有する把持具に保持させて取り扱われるが、この保持孔は弾性体によって形成されており、フェライト板はこの保持孔に圧入することにより、フェライト板の側面が保持孔の内壁で保持されるようになっている。
【0003】
ところで、フェライト板を把持具の保持孔に圧入するためには、所定の高精度でフェライト板と保持孔とを位置合わせした状態で圧入する必要があるが、通常、一個の把持具には多数の保持孔が所定ピッチを有して列設されており、したがって効率面から多数のフェライト板を一度に保持孔に圧入するのが望ましい。
【0004】
多数のフェライト板を一度に把持具の保持孔に保持させる方法としては、フェライト板を強制的に整列させる整列装置を使用する方法がある。すなわち、把持具の保持孔に対応させて形成された多数の凹部を有する整列装置を設け、該整列装置を振動・揺動等させて前記フェライト板を凹部に振り込み、該凹部に振り込まれたフェライト板を吸引ノズルで吸引して取り出し、その後該吸引ノズルでフェライト板を保持孔に圧入し、これにより多数のフェライト板を一度に把持具に保持させることが可能となる。
【0005】
しかしながら、この方法では、前記凹部の深さがフェライト板の厚み相当しかない場合は、フェライト板が一旦凹部に振り込まれても、整列装置の振動・揺動により、該フェライト板が凹部から外部に飛び出してしまうおそれがあり、所望の高い充填効率が得られないという欠点がある。
【0006】
そこで、従来より、図11に示すように、投入された多数の薄物ワーク101(板状体)を整列させるワーク整列箱102と、このワーク整列箱102を一方向に沿う円弧状及びその直交方向に沿う直線状に揺動動作させる揺動動作機構(不図示)とを備え、ワーク整列箱102の一方側底面には投入された薄物ワーク101を受け止めて保持するワーク溜め凹部103を設ける一方、その他方側底面には複数枚ずつの薄物ワーク101を収納しうる深さとされ、かつ、所定位置ごとに形成された複数の収納孔104を設けた薄物ワーク整列装置が提案されている(特許文献1)。
【0007】
特許文献1では、収納孔104の深さが複数枚の薄物ワーク101を収納しうる深さとされているので、整列装置を振動・揺動させても一旦収納孔104に収納された薄物ワーク101が収納孔104から飛び出すのを防止することが可能となり、充填効率の向上を図ることができる。
【0008】
【特許文献1】特開平4−266318号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献1では、収納孔104の深さが複数枚の薄物ワーク101を収納しうる深さとされているため、薄物ワーク101が収納孔104から外部に飛び出すことは防止できるものの、1個の収納孔104に対する薄物ワーク101の振り込み個数にばらつきが生じ、1枚の薄物ワーク101しか収納されなかった収納孔104や複数枚の薄物ワーク101が収納された収納孔104が混在する。このため、吸引ノズルで各薄物ワーク101を吸引する際に、吸引ノズルの垂直方向の上下位置を各薄物ワーク101毎に個別調整する必要があるという問題点があった。
【0010】
また、上記薄物ワーク101のような板状体を収納孔104から把持具の保持孔に移載する方法としては、上述した吸引ノズルを使用する他、収納孔104の裏側から押し上げピン等で押し上げて把持具の保持孔に圧入する方法もあるが、複数枚の板状体101が収納孔104に収納された場合は、斯かる複数枚の板状体101が押上げピンによって全て押し上げられることとなり、収納孔104に収納されている板状体101を把持具の保持孔に1枚ずつ効率良く移載することができないという問題点があった。
【0011】
本発明はこのような問題点に鑑みなされたものであって、多数の板状体を把持具に効率良く移載することができる板状体の整列装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために本発明に係る板状体の整列装置は、板状体が収納される多数の凹部が設けられた板状体収納部と、前記凹部と連通可能となるように前記凹部に対応する位置に貫通孔が形成されて前記板状体収納部の上面に摺動自在に載置されたスライド部材とを備え、前記凹部の深さが前記板状体の厚みと略同一とされ、かつ前記スライド部材の厚みが前記板状体の厚み以上となるように形成されていることを特徴としている。
【0013】
また、本発明の板状体の整列装置は、前記板状体を吸引する吸引手段が、前記各凹部に対応する位置に配されていることを特徴としている。
【0014】
さらに、本発明の板状体の整列装置は、前記凹部の裏面側から前記板状体を押し上げる押上手段が前記各凹部に対応する位置に配されていることを特徴としている。
【0015】
また、本発明の板状体の整列装置は、前記板状体収納部を揺動させる揺動手段を備えていることを特徴としている。
【0016】
また、本発明の板状体の整列装置は、前記板状体収納部を加振させる振動手段を備えていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0017】
上記板状体の整列装置によれば、板状体が収納される多数の凹部が設けられた板状体収納部と、前記凹部と連通可能となるように前記凹部に対応する位置に貫通孔が形成されて前記板状体収納部の上面に摺動自在に載置されたスライド部材とを備え、前記凹部の深さが前記板状体の厚みと略同一とされ、かつ前記スライド部材の厚みが前記板状体の厚み以上となるように形成されているので、凹部と貫通孔とが連通状態となるように板状体収納部上にスライド部材を載置した状態で板状体を凹部に振り込むことにより、凹部に一旦収納された板状体は外部に飛び出すこともなく、また複数の板状体が凹部に対して振り込まれた場合であっても、最下層の板状体以外の板状体は凹部上の貫通孔内に収納される。したがって、スライド部材を摺動させて該スライド部材を板状体収納部上から除去することにより、1枚の板状体のみが残存した状態で凹部が露見することとなり、多数の板状体を高充填率でもって整列装置内に収納することができる。
【0018】
また、上記板状体の整列装置によれば、前記板状体を吸引する吸引手段が、前記各凹部に対応する位置に配されているので、各吸引手段毎に垂直方向の位置調整を行う必要もなく、凹部内に収納された各板状体を吸引手段を介して吸引することができ、したがって板状体を容易且つ迅速に把持具の保持孔に移載することが可能となる。
【0019】
さらに、上記板状体の整列装置によれば、前記凹部の裏面側から前記板状体を押し上げる押上手段が、前記各凹部に対応する位置に配されているので、押上手段を駆動させることにより、上述と同様、板状体を把持具の保持孔に容易且つ迅速に移載することができ、該板状体を保持穴で把持することができる。
【0020】
また、上記板状体の整列装置によれば、前記板状体収納部を揺動させる揺動手段、及び/又は前記板状体収納部を加振させる振動手段を備えているので、スライド部材の貫通孔と連通状態にある板状体収納部の凹部に効率良く板状体を収納することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
次に、本発明の実施の形態を詳説する。
【0022】
図1は本発明に係る板状体の整列装置の一実施の形態(第1の実施の形態)を示す概略斜視図であって、該板状体の整列装置は、円板形状に形成された多数のフェライト板(板状体)1を整列させるための装置本体2と、該装置本体2を矢印x方向及び矢印y方向に揺動させる揺動操作部3とを備えている。
【0023】
揺動操作部3は、具体的には、平板矩形状の基台4の側面所定位置から一対の支持板5a、5bが対向状に立設されると共に、支持板5a、5bには支持軸6が枢着されている。また、支持軸6には装置本体2に連接された一対の揺動板7a、7bが支持板5a、5bの近傍位置に取り付けられ、かつ揺動板7a、7bは連結棒8を介して互いに接続されている、そして、連結棒8の略中央にはシリンダ9のシリンダ軸9aが連接され、該シリンダ軸9aを矢印x方向に進退運動させることにより、装置本体2が矢印x方向に揺動するように構成されている。
【0024】
また、基台4の側面略中央部にはシリンダ10のシリンダ軸10aが固着され、シリンダ軸10aを矢印y方向に進退運動させることにより、装置本体2が矢印y方向に揺動するように構成されている。尚、装置本体2の揺動運動はガイドレール(不図示)によって規制され、また、揺動操作部3の全体動作は不図示の同調制御装置によって制御される。
【0025】
装置本体2は、フェライト板1を収納するための板状体収納部11と、該板状体収納部11の上面に摺動自在に載置されたスライド部材12とを備えている。
【0026】
具体的には、板状体収納部11は、図2に示すように、上面及び一端部が開放状に形成されると共に平面視矩形状の略箱型に形成されている。そして板状体収納部11の一側面部13に連接する底面には、シュータ(不図示)から投入されたフェライト板1を貯留するための板状体溜め部14が形成されると共に、該板状体溜め部14は傾斜面15を介して収納部本体16に連接されている。
【0027】
また、収納部本体16は、多数の凹部17が所定ピッチで縦横に列設されており、フェライト板1の収納が可能となるように構成されている。
【0028】
また、スライド部材12は、幅寸法が前記板状体収納部11の幅寸法と略同一寸法を有する平面視矩形状に形成されると共に、前記凹部17と連通可能となるように前記凹部17に対応する位置に多数の貫通孔18が形成されている。また、該スライド部材12の一方の端部は傾斜状に形成されると共に、他方の端部には板状体収納部11の側壁と略同一高さを有する側壁19が形成され、該側壁19の略中央部にはシリンダ軸20aにより進退運動を行うシリンダ20が取り付けられている。シリンダ20は不図示の駆動手段に接続され、該駆動手段によりシリンダ軸20aの動作が制御される。尚、この図2では省略しているが、各凹部17の上方には吸引ノズルが配されている。
【0029】
図3は装置本体2の要部拡大図である。
【0030】
凹部17の直径Dと貫通孔18の直径D′とは、略同一寸法に形成され、かつ、フェライト板1の振り込みが可能となるようにフェライト板1の直径dよりも大きく形成されている。
【0031】
また、凹部17の深さHは、フェライト板1の厚みTと略同一となるように形成され、さらに貫通孔18の深さH′、すなわちスライド部材12の厚みT′はフェライト板1の厚みTの複数枚分となるように形成されている。
【0032】
次に、上記板状体の整列装置の動作原理について説明する。
【0033】
まず、凹部17と貫通孔18とが全て連通状態となるようにスライド部材12を板状体収納部11の収納部本体16上に載置し、シリンダ軸20を伸長させた状態で堅固に固定させた後、不図示のシュータから多数のフェライト板1を装置本体2に投入し、該フェライト板1を板状体溜め部14に貯留する。そしてこの後、揺動操作部3を駆動させて板状体収納部11(装置本体2)を矢印x方向及び矢印y方向に揺動させる。
【0034】
すると、図4に示すように、フェライト板1は貫通孔18内に振り込まれ、凹部17内に収納される。すなわち、スライド部材12が板状体収納部11の収納部本体16上に堅固に載置された状態で前記板状体収納部11は矢印x方向及びy方向に揺動運動を行い、これにより貫通孔18及び貫通孔18と連通する凹部17には少なくとも1枚のフェライト板1が収納される。
【0035】
次いで、シリンダ20を駆動させてシリンダ軸20aを後退させると、図5に示すように、スライド部材12は矢印A方向に摺動する。そして、凹部17の深さHがフェライト板1の厚みTと略同一に形成されているので、該凹部17には1枚のフェライト板1が収納された状態で露見することとなる。
【0036】
次いで、図6の矢印Bに示すように、板状体収納部11の凹部17の上方に配された吸引ノズル21を降下させてフェライト板1を該吸引ノズル21で吸引させ、その後図7の矢印Cに示すように、吸引ノズル21を上昇させ、これによりフェライト板1を凹部17から離脱させる。
【0037】
そしてその後、図8に示すように、フェライト板1が先端に吸引された吸引ノズル21を、矢印Dに示すように、把持具22の保持孔23に圧入する。すなわち、保持孔23はフェライト1の直径dよりも若干小さく形成されると共に、その内壁はゴム等の弾性体からなり、したがって吸引ノズル21を使用してフェライト板1を保持孔23に圧入すると、フェライト板1の外周が保持孔23の内壁で把持され、これにより多数のフェライト板1が同時に保持孔23に圧入されて保持されることとなる。
【0038】
このように本実施の形態では、フェライト板1を収納するための多数の凹部17が設けられた板状体収納部11と、凹部17と連通状態となるように前記凹部17に対応する位置に貫通孔18が形成されて板状体収納部11の上面に摺動自在に載置されたスライド部材12とを備え、凹部17の深さHがフェライト板1の厚みTと略同一とされ、かつスライド板12の厚みT′がフェライト板1の厚みT以上となるように形成されているので、凹部17と貫通孔18とが連通状態となるように板状体収納部11上にスライド部材12を載置した状態でフェライト板1を振り込むことにより、凹部17に一旦収納されたフェライト板1は凹部17から外部に飛び出すこともなく、また、複数のフェライト板1が凹部17に対して振り込まれた場合であっても、最下層のフェライト板1以外のフェライト板1は凹部17上の貫通孔18内に収納される。したがって、スライド部材12を摺動させて板状体収納部11から除去することにより、凹部17内には1枚のフェライト板1のみが残存した状態で該凹部17は露見することとなり、多数のフェライト板1を高充填率でもって整列装置内に収納することができる。
【0039】
また、フェライト板1の上面を吸引する吸引ノズル21を各凹部17の上方に配しているので、凹部17内に収納された各フェライト板1を吸引ノズル21で容易に吸引することができ、したがって各吸引ノズル21毎に垂直方向の位置調整を行う必要もなく、吸引されたフェライト板1を容易に把持具22の保持孔23に圧入することが可能となる。
【0040】
図9は本発明の第2の実施の形態に係る板状体収納部24の断面図であって、本第2の実施の形態では、板状体収納部24に形成された凹部25の底面には押上ピンの挿通が可能な小径の小孔26が設けられている。
【0041】
本第2の実施の形態でも、第1の実施の形態と同様の動作原理によって各凹部25には1枚のフェライト板1が収納される。そして、図10に示すように、押上ピン27を小孔26内に挿入し、フェライト板1を矢印E方向に押し上げることにより、該フェライト板1を把持具22の保持穴23に圧入することができ、これにより第1の実施の形態と同様、フェライト板1を保持穴23で保持することができる。
【0042】
尚、本発明は上記実施の形態に限定されるものではない。上記実施の形態では、板状体収納部11、24を揺動させることによりフェライト板1を凹部17、25に供給しているが、揺動運動に代えて、或いは揺動運動に加えて振動運動を板状体収納部11、24に負荷するようにしてもよい。
【0043】
また、上記実施の形態ではフェライト板1を板状体の一例として述べたが、フェライト板1以外の板状体にも適用できるのはいうまでもなく、また、形状についても円板形状に限定されることはなく、例えば楕円形状や四角形状、その他の多角形状であっても、凹部形状及び貫通孔形状を適宜変更することにより、同様に適用できるのはいうまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明に係る板状体の整列装置の一実施の形態を示す概略斜視図である。
【図2】上記板状体の整列装置の装置本体を示す概略斜視図である。
【図3】前記装置本体の要部拡大図である。
【図4】板状体収納部上にスライド部材が載置された状態でフェライト板が収納された状態を示す断面図である。
【図5】図4の状態からスライド部材を矢印A方向に摺動させた状態を示す断面図である。
【図6】板状体収納部に収納されているフェライト板に吸引ノズルを吸引させた状態を示す斜視図である。
【図7】フェライト板を吸引ノズルに吸引させて該吸引ノズルを上昇させた状態を示す断面図である。
【図8】フェライト板を把持具の保持穴に圧入しようとする状態を示す斜視図である。
【図9】板状体収納部の第2の実施の形態を示す断面図である。
【図10】第2の実施の形態の板状体収納部を使用してフェライト板を把持具の保持穴に圧入しようとする状態を示す斜視図である。
【図11】特許文献1に記載された整列装置の要部斜視図である。
【符号の説明】
【0045】
1 フェライト板(板状体)
3 揺動操作部(揺動手段)
11 板状体収納部
12 スライド部材
17 凹部
18 貫通孔
21 吸引ノズル(吸引手段)
24 板状体収納部
27 押上ピン(押上手段)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
板状体が収納される多数の凹部が設けられた板状体収納部と、前記凹部と連通可能となるように前記凹部に対応する位置に貫通孔が形成されて前記板状体収納部の上面に摺動自在に載置されたスライド部材とを備え、
前記凹部の深さが前記板状体の厚みと略同一とされ、かつ前記スライド部材の厚みが前記板状体の厚み以上となるように形成されていることを特徴とする板状体の整列装置。
【請求項2】
前記板状体を吸引する吸引手段が、前記各凹部に対応する位置に配されていることを特徴とする請求項1記載の板状体の整列装置。
【請求項3】
前記凹部の裏面側から前記板状体を押し上げる押上手段が、前記各凹部に対応する位置に配されていることを特徴とする請求項1記載の板状体の整列装置。
【請求項4】
前記板状体収納部を揺動させる揺動手段を備えていることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の板状体の整列装置。
【請求項5】
前記板状体収納部を加振させる振動手段を備えていることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の板状体の整列装置。
【請求項1】
板状体が収納される多数の凹部が設けられた板状体収納部と、前記凹部と連通可能となるように前記凹部に対応する位置に貫通孔が形成されて前記板状体収納部の上面に摺動自在に載置されたスライド部材とを備え、
前記凹部の深さが前記板状体の厚みと略同一とされ、かつ前記スライド部材の厚みが前記板状体の厚み以上となるように形成されていることを特徴とする板状体の整列装置。
【請求項2】
前記板状体を吸引する吸引手段が、前記各凹部に対応する位置に配されていることを特徴とする請求項1記載の板状体の整列装置。
【請求項3】
前記凹部の裏面側から前記板状体を押し上げる押上手段が、前記各凹部に対応する位置に配されていることを特徴とする請求項1記載の板状体の整列装置。
【請求項4】
前記板状体収納部を揺動させる揺動手段を備えていることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の板状体の整列装置。
【請求項5】
前記板状体収納部を加振させる振動手段を備えていることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の板状体の整列装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2007−21627(P2007−21627A)
【公開日】平成19年2月1日(2007.2.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−205422(P2005−205422)
【出願日】平成17年7月14日(2005.7.14)
【出願人】(000006231)株式会社村田製作所 (3,635)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年2月1日(2007.2.1)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年7月14日(2005.7.14)
【出願人】(000006231)株式会社村田製作所 (3,635)
【Fターム(参考)】
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