説明

板金部品の結合構造及び画像形成装置

【課題】簡単な加工や構成にて二つの板金部品をねじ部材で導通性よく結合することのできる板金部品の結合構造及び該結合構造を備えた画像形成装置を得る。
【解決手段】第1の板金部品31と第2の板金部品41とをそれぞれの結合面を対向させてねじ部材50で結合した板金部品の結合構造。第1の板金部品31にねじ部材50よりも小径の第1の下穴32を形成するとともに、第1の下穴32の周囲に第1の下穴32よりも小径の第1の小穴33を多数形成した。第1の板金部品31と第2の板金部品41とをねじ部材50で結合する際、第1の下穴32にねじ部材50をねじ込むことにより第1の下穴32の周囲に歪み力が生じ、該歪み力で第1の小穴33に形成された突起が第2の板金部品41と接触する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、板金部品の結合構造、特に、二つの板金部品をそれぞれの結合面を対向させてねじ部材で結合した板金部品の結合構造、及び、該結合構造を備えた複写機やプリンタなどの画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、複写機、プリンタ、ファクシミリなどの画像形成装置や、コンピュータ、通信機器などの電子機器や各種電気機器などにおいては、その骨格をなす金属構造体に各種部品、ユニットを組み付け、さらに、その外面に外装体を組み付けた構造を備えている。
【0003】
現在、金属構造体は、複数の板金部品を互いの結合面を対向させてねじやリベットなどの結合部材を用いて、あるいは、溶接などにより結合しており、静電気対策やEMI(ノイズ)対策などのために、接地手段としても利用されている。
【0004】
ところで、従来、板金部品としては、防錆効果を備えた6価クロム膜をコーティングした亜鉛処理鋼板が使用されていた。しかし、6価クロムは環境を悪化させる原因となるため、世界的規模でその使用の見直しが迫られている。
【0005】
それゆえ、最近では、亜鉛処理鋼板の代用品として、6価クロムを含まない樹脂コート層を備えた鋼板(クロムフリー鋼板)が開発され、徐々に機器の構造体に使用されるようになっている。この樹脂コート層は、数μm程度の薄い絶縁性樹脂膜であり、防錆効果を有している。
【0006】
しかし、絶縁性樹脂膜をコーティングしたクロムフリー鋼板からなる板金部品どうしを結合する場合、結合面に介在する絶縁性樹脂膜のために結合面における導通不良が発生しやすく、構造体全体としての接地性に難点があり、静電気対策やEMI対策の点で問題を有している。また、従来から使用されている亜鉛処理鋼板においても、近年の電子機器の高周波化に伴い、通常の板金の接触構造ではEMI対策の点で接触性が不十分なことが生じてきた。
【0007】
このような課題に対して、例えば、特許文献1においては、板金部品の結合面にローレット形成領域を配置し、ローレット形成領域を介して二つの板金部品どうしを直接的に結合した構成が示されている。また、特許文献2においては、板金部品のねじ穴の近傍に鋭利な突起を配置して結合面の被覆を剥す構造とし、接触安定性を確保しようとしている。しかしながら、このような対策では、板金部品に特殊な工具を使用して突起などを形成する必要があり、加工の難易度も高く、コストの上昇を招くことにもなる。
【特許文献1】特開2003−283154号公報
【特許文献1】特開2004−055731号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで、本発明の目的は、簡単な加工や構成にて二つの板金部品をねじ部材で導通性よく結合することのできる板金部品の結合構造及び該結合構造を備えた画像形成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
以上の目的を達成するため、本発明の一形態である板金部品の結合構造は、
第1の板金部品と第2の板金部品とをそれぞれの結合面を対向させてねじ部材で結合した板金部品の結合構造において、
第1の板金部品にねじ部材よりも小径の第1の下穴が形成されるとともに、該第1の下穴の周囲に該第1の下穴よりも小径の第1の小穴が少なくとも一つ形成されており、
第1の板金部品と第2の板金部品とがねじ部材で結合される際に形成された突起であって、前記第1の下穴にねじ部材がねじ込まれることにより該第1の下穴の周囲に生じた歪み力によって前記第1の小穴に形成された突起が第2の板金部品と接触していること、
を特徴とする。
【0010】
前記板金部品の結合構造においては、第1の下穴にねじ部材をねじ込むと第1の下穴の周囲に歪み力が生じる。この歪み力で第1の小穴が潰されて突起が形成され、この突起が第2の板金部品と接触する。これにて、第1及び第2の板金部品が、絶縁性樹脂膜でコーティングされている場合であっても、導通性よく結合されることになる。それゆえ、接地性が確保され、EMI対策も効果的なものとなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明に係る板金部品の結合構造及び画像形成装置の実施例について、添付図面を参照して説明する。
【0012】
(画像形成装置の概略構成、図1参照)
まず、本発明に係る画像形成装置の一実施例について図1を参照して説明する。図1は電子写真方式による画像形成システムの概略構成を示し、プリンタ本体10と、画像読取り装置15と、ステープラ17などを備えたフィニッシャ16と、システム全体をコントロールする制御部20とで構成されている。
【0013】
画像読取り装置15で読み取られた原稿画像情報又はホストコンピュータなどから転送された画像情報は制御部20に入力され、感光体ドラムなどを含む画像形成ステーション11でトナー画像として形成される。用紙は4段に配置された給紙カセット12のいずれかから1枚ずつ給紙され、転写部13でトナー画像を転写されるとともに定着ユニット14で定着された後、フィニッシャ16で綴じ処理など必要な処理を施され、トレイ18上に排出される。なお、プリンタ本体10はタンデム方式でフルカラーの画像を形成するように構成されており、この種の構成や画像形成プロセスは周知であり、その説明は省略する。
【0014】
制御部20の制御基板には、CPUなどを動作させるための水晶振動子やクロックジェネレータが搭載されており、EMIなどの放射ノイズの源となっている。このようなノイズを抑制するために、制御基板上には、EMIフィルタやコンデンサなどのノイズ対策部品も搭載されている。また、プリンタ本体10の骨格をなす金属構造体を全体的に均一な接地状態とすることで、EMIノイズが外部に放射しないように遮断する構成を採用している。
【0015】
このようにEMIノイズ抑制の効果を得るとともに、プリンタ本体10の強度を確保するために、プリンタ本体10の大部分の構造体、電装系は、板金部品で構成されている。板金部品間の結合は、多くの箇所で、作業性、コスト面での利点を有するねじ止めが採用されている。板金部品としては、亜鉛処理鋼板や金属部分の表層に絶縁性樹脂膜をコーティングしたクロムフリー鋼板が用いられている。
【0016】
(第1実施例、図2〜図4参照)
制御部20や各給紙カセット12及びフィニッシャ16などには制御基板が配置され、図2に示すように、これらの制御基板21は、ベースとなる構造用板金部品41(以下、第2の板金部品と称する)に取り付けられており、シールドカバー31(以下、第1の板金部品と称する)にて覆われている。本発明に係る板金部品の結合構造は、この第1実施例では、第1の板金部品31を第2の板金部品41に電気的に導通状態を確保して接合するための構造である。
【0017】
具体的には、図3に示すように、第1の板金部品31にねじ部材50よりも小径の第1の下穴32を形成するとともに、該第1の下穴32の周囲に該第1の下穴32よりも小径の第1の小穴33を複数形成した。例えば、ねじ部材50の径は3mm、第1の下穴32の径は2.5mm、第1の小穴33の径は0.5mmである。また、第1の下穴32と第1の小穴33の間隔は1mmである。
【0018】
第1の板金部品31と第2の板金部品41とをねじ部材50で結合する過程を図4に示す。図4(A)に示すように、ねじ部材50よりも小径の第1の下穴32にねじ部材50をねじ込んでいく。これにより、第1の板金部品31には、第1の下穴32の周囲に図3及び図4(B)に矢印aで示す歪み力が生じ、該歪み力でこの領域は放射状に押し出されるかたちで変形する。これにより、第1の小穴33は押し潰された状態となり、はみ出した部分で第2の板金部品41に向かう突起が形成される。この突起が第2の板金部品41と接触し、第2の板金部品41が絶縁性樹脂膜でコーティングされていても該樹脂膜を破壊した状態で第1及び第2の板金部品31,41が結合される(図4(C)参照)。それゆえ、第1及び第2の板金部品31,41どうしが導通性よく結合され、接地性が確保され、EMI対策も効果的なものとなる。
【0019】
なお、第2の板金部品41にもねじ部材50を受けるための第2の下穴42が形成されており、この第2の下穴42もねじ部材50よりも小径とされている。但し、第2の下穴42の径はねじ部材50よりも大径であってもよく、この場合にはねじ部材50を螺着するナットが必要となる。
【0020】
ところで、第1の小穴33は、予めめっき処理やコーティング処理された鋼板に穴抜き加工を施して形成されるため、第1の小穴33の抜き跡には絶縁性樹脂膜が被覆されていない状態である。ねじ部材50を第1の下穴32にねじ込んでいく過程で、歪み力によって第1の小穴33に形成された突起が第2の板金部品41の接合面を削りながら第2の板金部品41と多点で接触する。従って、第2の板金部品41が表層に絶縁性樹脂膜を備えたクロムフリー鋼板であっても、表層の絶縁性樹脂膜が剥離されることで安定した導通状態での接触が可能になる。
【0021】
(第2実施例、図5及び図6参照)
第2実施例である結合構造は、図5に示すように、第2の板金部品41にもねじ部材50よりも小径の第2の下穴42を形成するとともに、前記第1の小穴33と対向する位置に第2の小穴43を形成したものである。ねじ部材50による結合過程は図4に示したとおりであり、本第2実施例では、第2の小穴43の部分の抜き跡には絶縁性樹脂膜が被覆されていないので、第1及び第2の板金部品31,41が結合された状態での両者の電気的導通はより良好になる。
【0022】
また、第2の板金部品41に形成した第2の下穴42もねじ部材50よりも小径とすることで、ねじ部材50によるねじ締め時に第2の下穴42の周囲にも歪み力が生じる。この歪み力で第2の小穴43が押し潰されて突起が形成され、この突起が第1の小穴33に形成された突起と衝突するので、さらに良好な導通状態が得られる。
【0023】
(小穴の抜き加工、図7及び図8参照)
図7及び図8に示すように、第1の小穴33は第2の板金部品41に向かって穴抜き加工されていることが好ましく(矢印A参照)、第2の小穴43は第1の板金部品31に向かって穴抜き加工されていることが好ましい(矢印B参照)。一般に、穴の抜き加工ではパンチなどで抜いた方向にエッジが突出したり、ダレが発生する。矢印A,B方向に抜き加工することで、互いに対向した方向に突起が発生し、絶縁性樹脂膜が存在することなく良好な状態で接触することになる。
【0024】
(第3実施例、図9参照)
第3実施例である結合構造は、図9に示すように、第2の板金部品41の結合面に第1の小穴33と対向する領域44にローレット加工を施したものである。ローレット加工は、旋盤などにローレット工具を取り付けて回転させながら工作物の表面に所望の刻み目を形成する周知の加工方法である。
【0025】
本第3実施例では、第1の小穴33が押し潰されて形成された突起がローレット形成領域44と擦れ合って接触することで第1及び第2の板金部品31,41が良好な導通状態で結合される。
【0026】
(他の実施例)
なお、本発明に係る板金部品の結合構造及び画像形成装置は前記実施例に限定するものではなく、その要旨の範囲内で種々に変更できることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明に係る画像形成装置の一実施例を示す概略構成図である。
【図2】第1実施例である結合構造を示す断面図である。
【図3】第1実施例である結合構造を示す斜視図である。
【図4】第1実施例である結合構造における結合過程を示す説明図である。
【図5】第2実施例である結合構造を示す斜視図である。
【図6】第2実施例である結合構造を示す断面図である。
【図7】小穴の抜き加工を示す断面図である。
【図8】小穴の抜き加工を示す斜視図である。
【図9】第3実施例である結合構造を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0028】
10…プリンタ本体
31…第1の板金部品
32…第1の下穴
33…第1の小穴
41…第2の板金部品
42…第2の下穴
43…第2の小穴
44…ローレット形成領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の板金部品と第2の板金部品とをそれぞれの結合面を対向させてねじ部材で結合した板金部品の結合構造において、
第1の板金部品にねじ部材よりも小径の第1の下穴が形成されるとともに、該第1の下穴の周囲に該第1の下穴よりも小径の第1の小穴が少なくとも一つ形成されており、
第1の板金部品と第2の板金部品とがねじ部材で結合される際に形成された突起であって、前記第1の下穴にねじ部材がねじ込まれることにより該第1の下穴の周囲に生じた歪み力によって前記第1の小穴に形成された突起が第2の板金部品と接触していること、
を特徴とする板金部品の結合構造。
【請求項2】
少なくとも第2の板金部品の結合面に絶縁性樹脂膜が形成されており、前記歪み力で前記第1の小穴に形成された突起により前記絶縁性樹脂膜が剥離された箇所において第2の板金部品と前記突起とが接触していること、を特徴とする請求項1に記載の板金部品の結合構造。
【請求項3】
前記第1の小穴は第2の板金部品に向かって穴抜き加工されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の板金部品の結合構造。
【請求項4】
前記第1の小穴の直径は前記第1の下穴の直径よりも小さいことを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の板金部品の結合構造。
【請求項5】
第2の板金部品にもねじ部材よりも小径の第2の下穴を形成したことを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の板金部品の結合構造。
【請求項6】
第2の板金部品にも前記第1の小穴と対向する位置に第2の小穴を形成したことを特徴とする請求項5に記載の板金部品の結合構造。
【請求項7】
前記第2の小穴は第1の板金部品に向かって穴抜き加工されていることを特徴とする請求項6に記載の板金部品の結合構造。
【請求項8】
前記第2の小穴の直径は前記第2の下穴の直径よりも小さいことを特徴とする請求項6又は請求項7に記載の板金部品の結合構造。
【請求項9】
第2の板金部品の結合面には前記第1の小穴と対向する領域にローレット加工が施されていることを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれかに記載の板金部品の結合構造。
【請求項10】
請求項1ないし請求項9のいずれかに記載の板金部品の結合構造を備えたことを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−60988(P2010−60988A)
【公開日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−228155(P2008−228155)
【出願日】平成20年9月5日(2008.9.5)
【出願人】(303000372)コニカミノルタビジネステクノロジーズ株式会社 (12,802)
【Fターム(参考)】