説明

枚葉紙のリジェクト装置

【課題】輪転印刷機の排紙部に排出される不良印刷紙を抜き取るリジェクト装置の提供。
【解決手段】枚葉紙1の棒積み状排紙部2にて、進入する後続の枚葉紙1を一時的に保持する一時紙受け装置3の下部に、横方向から倍速機構を介して前進・後退するリジェクト紙受板11を組み込んだリジェクトテーブル12を設置する。これにより不良印刷紙を選択的に棒積み状で別に排出できるので不良印刷紙の排出処理が簡潔にできると共に、不良印刷紙と共に排出された良紙を選別回収できるので効率的なプロセスである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は高速輪転印刷機の排紙部に設置される枚葉紙のリジェクト装置に関し、特に排紙部の一時紙受けの下部に、倍速機構を介して前進・後退するリジェクト紙受板を横方向から突出させて不良紙などの損紙を抜き取るリジェクト装置に関する。
【背景技術】
【0002】
枚葉紙の棒積み状排紙部にて、瓦積み状態で進入する後続の枚葉紙を一時的に保持する一時紙受け装置は、例えば特許文献1や特許文献2に提案されている。従来の一時紙受け装置は排紙パイル交換時の一時紙受けであり、後続紙は再びパイル上に棒積みされる。その為、混在する不良印刷紙を除去(リジェクト)するには別途手作業にて抜き取る必要があった。
また、シート材の振り分け、抜き取り技術は、例えば特許文献3や特許文献4に提案されている。これら従来技術ではシート材や枚葉紙はセパレート状に搬送される機械にのみ使用されるものである為、輪転印刷機のような高速運転には適用できない。
【0003】
【特許文献1】実開平2−119470号公報
【特許文献2】特開2003−341910号公報
【特許文献3】特開2002−114427号公報
【特許文献4】特開2001−171888号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、輪転印刷機の排紙部に排出される不良印刷紙を抜き取るリジェクト装置を提供することにある。


枚葉紙のリジェクト装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の目的を達成するため、請求項1の発明は待機位置から枚葉紙の棒積み経路に突出して、進入する後続の枚葉紙を一時的に保持する一時紙受け装置を備えた輪転印刷機の排紙部に設置される枚葉紙のリジェクト装置であって、
一時紙受け装置の下部に、横方向外部から前進・後退可能に設けられたリジェクト紙受板と、リジェクト紙受板を前進または後退させる横移動装置と、リジェクト紙受板を上昇または下降させる縦移動装置とを備え、
リジェクト紙受板を前進させた後、一時紙受け装置を待機位置に戻し、リジェクト紙をリジェクト紙受板に排出することを特徴としている。
【0006】
請求項2の発明は、請求項1の枚葉紙のリジェクト装置において、横移動装置はアクチュエータと、該アクチュエータのストロークに対してリジェクト紙受板の横移動距離を倍に伝える倍速機構とから成ることを特徴としている。
【発明の効果】
【0007】
請求項1の発明によれば、高速運転の輪転印刷機械等に付属される枚葉紙の棒積み状排紙部で、不良印刷紙を選択的に棒積み状で別に排出できるので不良印刷紙の排出処理が簡潔にできる。また棒積み状で排出するので、排出後に不良印刷紙と共に排出された良紙を選別回収出来るので効率的なプロセスである。更にシート搬送途中での排出操作では無く、排紙部に備えた一時紙受け装置の下部に、横方向外部から紙受け板を前進・後退可能に設けた構成なので、もしもリジェクト装置で紙詰まり等のトラブルや故障が発生しても輪転印刷機械等を運転停止させるトラブルを発生させない安全なプロセスである。
【0008】
請求項2の発明によれば、設置スペースが少なくコンパクトな装置であり、高速運転の輪転印刷機械等に付属される枚葉紙の棒積み状排紙装置部での各作業に支障を与えない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明は枚葉紙の棒積み状排紙部にて、進入する後続の枚葉紙を一時的に保持する一時紙受け装置の下部に、横方向から倍速機構を介して前進・後退するリジェクト紙受板を組み込んだリジェクトテーブルを設置することで実現した。
以下に本発明の実施例を図面に基づいて説明する。
【実施例1】
【0010】
図1は本発明のリジェクト装置を枚葉紙の棒積み状排紙部に設置した外観斜視図、図2は図1のY方向から見た一部断面で示す正面図、図3は図2のA−A線に沿った縦断面図、図4は図2のZ方向から見た上面図、図5は本発明のリジェクト装置を実施した輪転印刷機の排紙部の一時紙受け装置の待機状態を示す側面図、図6は本発明のリジェクト装置を実施した輪転印刷機の排紙部の一時紙受け装置の一時紙受け状態を示す側面図である。
【0011】
図1において、輪転印刷機には枚葉紙1の棒積み状排紙部2が付属されており、高速輪転印刷機の場合は高速で進行してくる枚葉紙1が排紙部2入り口で瓦積み状態となり、棒積みパイル台4上で棒積み状態となる。排紙部2は棒積みパイル台4交換時において、瓦積み状態で枚葉紙1を紙受けし、棒積み状態で一時的に保持する一時紙受け装置3を備え、この一時紙受け装置3の下部にはメインパイル99上に棒積みパイル台4が昇降可能に設置されている。棒積みパイル台4交換時、一時紙受け装置3を待機位置から紙受位置に移動させ、枚葉紙1を瓦積み状態で紙受けし、棒積み状態で一時保持する。この間に棒積みパイル台4を図示の位置から前方に引き出し、新たな棒積みパイル台4を排紙部2にセットする。続いて、メインパイル99及び棒積みパイル台4を一時紙受け装置3の下方に上昇させ、停止させた後、一時紙受け装置3を待機位置に移動させ、一時的に保持している枚葉紙1を棒積みパイル台4に移し、棒積みを続行する。
【0012】
一時紙受け装置の概略を図5及び図6を参照しながら説明する。輪転印刷機(図示省略)の排紙部2には高速運転により進入する枚葉紙を、図示の如く棒積み紙5用の棒積みパイル台4が上下移動可能に設置されている。棒積みパイル台4上への枚葉紙の排出時には、一時紙受け装置3が図5に示す状態で待機している。一時紙受け装置3は枚葉紙の横幅を超えた長さのローラーを、枚葉紙の縦幅を超えて並列配置したローラ列構造が採用され、このローラ列を伝動チェーンによって前進・後退させるよう構成されている。
【0013】
棒積みパイル台4交換時には棒積みパイル台4の下降と同時に排紙部に瓦積み状に進入する枚葉紙の紙尻を支える紙尻受け(図示省略)が突出する。その後、一時紙受け装置3が紙尻側から、図6に示す一時紙受け位置に突出する。紙尻受けを復帰させて、一時紙受け装置3に枚葉紙を一時的に保持する。この間に、棒積みパイル台4を交換し、一時紙受け装置3に近い位置まで上昇させる。続いて、一時紙受け装置3を図5の位置に後退させ、この過程で一時的に保持されていた枚葉紙を棒積みパイル台4上に移し、棒積みする。
【0014】
棒積みパイル台4の出入れを棒積み状排紙部2の正面側で行うよう構成されている場合には、左右いずれかの横方向にリジェクト装置10が設置される。リジェクト装置10は一時紙受け装置3の一時紙受け位置の直下で、かつ一時紙受け装置3に近い位置にリジェクト紙受板11を待機位置から排紙部2での紙受け位置へ前進させ、見本紙、あるいは不良紙などのリジェクト紙100の紙受けを行う。リジェクト装置10はテーブル面として移動可能なリジェクト紙受板11を設けたリジェクタテーブル12を上下方向に移動させる縦移動機構と、リジェクト紙受板11を横方向から排紙部2へ前進させる横移動機構とを備えている。
【0015】
図2において、縦移動機構は床に設置される横長の箱形フレーム13の上面部に配置されたモータ14に連結した2本の駆動ネジ15が垂直に回転可能に設置されている。フレーム13の底部には一方の駆動ネジ15と他方の駆動ネジ15とを連結する水平連動軸16が配置されている。図3には一方の伝動歯車部17が示されており、他方の駆動ネジの伝動歯車部も同じ構造になっている。伝動歯車部17は駆動ネジ15の下部に固定された傘歯車18が、水平連動軸16の軸端に取り付けられた傘歯車19に噛み合って構成されている。モータ14の回転が一方の駆動ネジ15、伝動歯車部17、水平連動軸16を介して他方の駆動ネジ15に伝えられ、2本の駆動ネジ15が同時回転する。他方の駆動ネジ15は一方の駆動ネジが設置されたフレーム13の側部に対向する側部に配置されている。各駆動ネジ15に対向したリジェクタテーブル12側部にはアーム部材20が固着されており、このアーム部材20にそれぞれの駆動ネジ15に螺合する雌ネジ21が設けられている。
【0016】
リジェクタテーブル12には、図3に示すようにリジェクト紙受板11を水平(横)方向に摺動自在に支持し、この横移動機構が組み込まれている。リジェクト紙受板11の両側面はテーブルフレーム22の上部に取り付けられたガイド板23に案内されて摺動する。リジェクタテーブル12の上下方向の移動を案内するため、リジェクト紙100を取り扱う正面側かつ排紙部側を除くフレーム13の複数箇所、例えば3隅に棒状のガイド部材24が配置されている。
各ガイド部材24に対向したリジェクタテーブル12側部にはガイドアーム部材25が固着されており、このガイドアーム部材25がガイド部材24に嵌入されている。
【0017】
モータ14による2本の駆動ネジ15の正逆回転によって、リジェクタテーブル12は図2の断面で示すリジェクト紙100を受けるアッパー位置と棒積みされたリジェクト紙100を外部へ移すロアー位置(図中の一点鎖線)の間を上下移動する。符号26はリジェクタテーブル12をロアー位置に規制するストッパーである。このストッパー26の下方に水平連動軸16が配置されており、リジェクタテーブル12の下降時に水平連動軸16との干渉が避けられる。
【0018】
リジェクト紙受板11はリジェクタテーブル12の上面となるよう設置され、リジェクタテーブル12の縦方向移動に対して直交する横方向に移動するようにリジェクタテーブル12に組み込まれている。図3において、テーブルフレーム22に底プレート27を固着し、リジェクト紙紙受板11と底プレート27の間の空間に横移動機構が装備されている。
【0019】
横移動機構を詳しく説明する。リジェクト紙受板11の移動方向に直行してシャフト28が配置され、このシャフト28の中央部分に固定された連結具29とエアシリンダ30のロッド30aの先端が連結されている。図2に示すように、エアシリンダ30は底プレート27にブラケット31によってシリンダ後端が支持されている。ここで、横移動機構のアクチュエータとして、エアシリンダ30を使用しているが、他に油圧シリンダでも良い。
【0020】

シャフト28の両端にはベアリング32を介して歯車33aを形成した回転体33が回転可能に取り付けられている。各歯車33aに対向する底プレート27にはリジェクト紙受板11の移動方向に伸びる第1ラック34が固定されている。一方、各歯車33aに対向するリジェクト紙受板11の背面には第1ラック34に平行して第2ラック35が固定されている。
【0021】
第1ラック34及び第2ラック35は歯車33aにぞれぞれが噛み合って、倍速機構を構成している。倍速機構は、図4に示すようにエアシリンダ30を中央にして一対配置されており、リジェクト紙受板11を安定かつ高速で排紙部2に前進させたり、排紙部2から後退させたりの動作を可能にしている。
【0022】
回転体33は歯車33aに近い外周面にリジェクト紙受板支持体36の裏面に当接するベアリング37が設けられている。リジェクト紙受板支持体36はリジェクト紙受板11の両側にネジ止めにより一体化されており、リジェクト紙受板支持体36の両側面はガイド板23に摺動自在に支持される。リジェクト紙受板11はベアリング37の外周面に接触した状態で、ベアリング37を回転させながらスムーズに前進・後退動作が可能になっている。
【0023】
リジェクト紙受板11の横移動機構の動作を説明する。図2に示すエアシリンダ30のロッド30aの後退状態ではリジェクト紙受板11がリジェクタテーブル12内に待機している。リジェクト信号ONによりエアシリンダ30のロッド30aが排紙部方向に伸長する。するとシャフト28の前進に伴って、歯車33aが第1ラック34に噛み合って回転する。同時に歯車33aの回転は第2ラック35に伝えられ、リジェクト紙受板11を前進させる。
【0024】
シャフト28がエアシリンダ30のロッド30aの伸長距離を移動する間に、歯車33aの回転によってシャフト28の移動距離と同じ距離だけリジェクト紙受板11を前進させる。この動作によってリジェクト紙受板11はエアシリンダ30のロッド30aの伸長距離、つまりシャフト28の移動距離の倍の距離を移動することになる。このような倍速機構を採用することにより、リジェクト紙受板11を高速で前進・後退させることで、高速輪転印刷機の損紙のリジェクトが可能になる。また、リジェクト紙受板11の前進距離に対し、エアシリンダ30のロッド30aの伸長距離が半分で済むことから、リジェクタテーブル12の長さを短くすることが可能となる。
【0025】
次に本実施例の作用を説明する。図7はリジェクト動作のフローを示す。図中に付けた(1)〜(6)がリジェクト装置の作用を示す。運転状態でリジェクト信号ONすると、印刷機(M/C)の回転数Nをカウントし、所定回転数Nに達すると紙尻受けが突出し、メインパイルが下降する。メインパイルの下降後で紙尻受け突出からS1秒経過後、一時紙受け装置が待機位置から一時紙受け位置へ突出し、枚葉紙の一時紙受けを行うと、同時に紙尻受けが復帰する。T1秒経過後にリジェクタテーブルからリジェクト紙受板を前進させ、排紙部に突出させる。一時紙受け装置が待機位置に戻り、この工程でリジェクト紙がリジェクト紙受板上に排出され、この後、リジェクタテーブルは紙積み高さに連動して下降する。
【0026】
リジェクト信号がOFFすると、印刷機(M/C)の回転数Nをカウントし、所定回転数Nに達すると紙尻受けが突出し、リジェクタテーブルを下降させる。リジェクタテーブルの下降後で紙尻受け突出からS1秒経過後、一時紙受け装置が待機位置から一時紙受け位置へ突出し、枚葉紙の一時紙受けを行うと、同時に紙尻受けが復帰する。T1秒経過後、リジェクト紙受板が後退し、リジェクタテーブルが下降し、リジェクト紙が損紙として排出される。この工程に合わせて、メインパイルが上昇し、一時紙受け装置が戻り、シーターパイル積みが続行される。
本実施例によれば、リジェクト信号がONからOFFになる間に、リジェクト紙受板上に積まれたリジェクト紙の量が損紙部数となる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明のリジェクト装置を枚葉紙の棒積み状排紙部に設置した外観斜視図である。
【図2】図1のY方向から見た一部断面で示す正面図である。
【図3】図2のA−A線に沿った縦断面図である。
【図4】図2のZ方向から見た上面図である。
【図5】本発明のリジェクト装置を実施した輪転印刷機の排紙部の一時紙受け装置の一時紙受け状態を示す側面図である。
【図6】図5の一時紙受け装置の待機状態を示す側面図である。
【図7】本発明の実施例のリジェクト動作のフローを示す図である。
【符号の説明】
【0028】
1 枚葉紙
2 排紙部
3 一時紙受け装置
4 棒積みパイル台
5 棒積み紙
10 リジェクト装置
11 リジェクト紙受板
12 リジェクトテーブル
14 モータ
15 駆動ネジ
16 水平伝動軸
17 伝動歯車部
24 ガイド部材
30 エアシリンダ
33 回転体
34 第1ラック
35 第2ラック
99 メインパイル
100 棒積みリジェクト紙

【特許請求の範囲】
【請求項1】
待機位置から枚葉紙の棒積み経路に突出して、進入する後続の枚葉紙を一時的に保持する一時紙受け装置を備えた輪転印刷機の排紙部に設置される枚葉紙のリジェクト装置であって、
前記一時紙受け装置の下部に、横方向外部から前進・後退可能に設けられたリジェクト紙受板と、前記リジェクト紙受板を前進または後退させる横移動装置と、前記リジェクト紙受板を上昇または下降させる縦移動装置とを備え、
前記リジェクト紙受板を前進させた後、前記一時紙受け装置を待機位置に戻し、リジェクト紙を前記リジェクト紙受板に排出することを特徴とするリジェクト装置。
【請求項2】
請求項1の枚葉紙のリジェクト装置において、横移動装置はアクチュエータと、該アクチュエータのストロークに対して前記リジェクト紙受板の横移動距離を倍に伝える倍速機構とから成ることを特徴とする枚葉紙のリジェクト装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−153594(P2007−153594A)
【公開日】平成19年6月21日(2007.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−354286(P2005−354286)
【出願日】平成17年12月8日(2005.12.8)
【出願人】(000230113)日本ボールドウィン株式会社 (23)
【Fターム(参考)】