説明

架橋ポリエチレンからなる再生樹脂組成物及び熱収縮性フィルム

【課題】架橋フィルムの製造工程で発生するフィルムのスクラップを再利用した際にゲル状ブツや引き裂き強度低下のない架橋ポリエチレン再生樹脂組成物、及びその再生樹脂組成物を使用した熱収縮性フィルムを提供することを目的とする。
【解決手段】架橋ポリエチレン系樹脂組成物を押出機を用いて溶融、混練後、冷却固化させ、特定の溶融粘度指数を満足する架橋ポリエチレン再生樹脂組成物とし、その再生樹脂を一定割合で混合する事からなる熱収縮性フィルムによって上記課題が解決できることを見いだし本発明に至った。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱収縮性フィルムや電線被覆等からなる架橋されたポリエチレンを出発原料とした再生樹脂組成物、及びその再生樹脂組成物を用いた熱収縮性フィルムに関するものであり、その再生樹脂組成物を用いても均質な成形物を得る事ができ、特に包装用フィルムに用いても透明性の低下や引き裂き強度の低下がない事を特徴とするものである。
【背景技術】
【0002】
ポリエチレンを架橋することによって製造される熱収縮フィルムや電線などの絶縁被覆材は、耐熱性の向上、形状記憶効果などの様々な利点を有しているが、その半面、分子の架橋構造や高分子量化に伴う溶融粘度増大により、著しく溶融流動性は低下し、通常の押出成形方法では、再利用することは極めて難しい。具体的には、押出成形時の押出機にかかる負荷が高くなり、押し出し自体が難しくなったり、成形物の中に肉眼でも容易にわかるようなゲル状ブツが多数存在し外観を損ねたり、また高い透明性が望まれる包装用フィルムへの再利用では、白っぽく透明性が低下したり、引き裂き強度が低下する等の種々の問題点が上げられる。これらの問題は、架橋によって増大した局部的な高分子量成分が、通常の押出成形時の溶融、混練では十分な均質化が図れておらず、特に引き裂き強度の低下の抑制に対しては高度な均質化が必要であると本発明者らは推定している。
このため、以下の特許文献のように、これら架橋ポリエチレン樹脂組成物を再利用しようとする幾つかの提案が試みられている。

【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−269980
【特許文献2】特開平10−250012
【特許文献3】特開平10−36600
【特許文献4】特開平8−52781
【特許文献5】特開平7−47548
【0004】
これらの試みは、単軸混練押出機、二軸混錬押出機、石臼型混錬押出機をもちいて剪断力をかけながら混練することにより、架橋構造を分断し、分子量を下げて、溶融成形可能な材料を得ようとするものであり、これにより、押出成形は可能になっている。特許文献1、2、4には、包装用フィルムに用いた場合のゲル状ブツの抑制や透明性低下の抑制について記載されているが、具体的な架橋ポリエチレン再生樹脂組成物の性質についての明確な記載や、引き裂き強度低下の抑制に関しては何ら言及されていない。

【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、架橋フィルムの製造工程で発生するフィルムのスクラップを再利用した際にゲル状ブツや引き裂き強度低下のない架橋ポリエチレン再生樹脂組成物、及びその再生樹脂組成物を使用した熱収縮性フィルムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意検討を行った。その結果、架橋ポリエチレン系樹脂組成物を押出機を用いて溶融、混練後、冷却固化させ、特定の溶融粘度指数を満足する架橋ポリエチレン再生樹脂組成物とし、その再生樹脂を一定割合で混合する事からなる熱収縮性フィルムによって上記課題が解決できることを見いだし本発明に至った。
【0007】
すなわち本発明は、下記(A)の特徴を有する架橋ポリエチレン系樹脂組成物を押出機を用いて溶融、混練後、冷却固化させる事からなり、下記(B)、(C)、(D)の特徴をすべて満足するポリエチレン系再生樹脂組成物、及びポリエチレン系再生樹脂組成物とポリエチレン系樹脂からなり、電子線照射により架橋した後、延伸加工を施された架橋ポリエチレン系熱収縮性フィルムを提供するものである。
(A)温度250℃、荷重21.6kgの条件で測定した溶融粘度指数(以下、H1-MFRと記す)が、0.05g/10分以上である。
(B)温度250℃、荷重21.6kgの条件で測定した溶融粘度指数(以下、H2-MFRと記す)が、90〜280g/10分の範囲である。
(C)温度250℃、荷重2.16kgの条件で測定した溶融粘度指数(以下、L-MFRと記す)が、0.1〜5g/10分である。
(D)(H2-MFR)/(L-MFR)の比が、20〜200の範囲である。

【発明の効果】
【0008】
架橋チューブ状未延伸フィルムや架橋された延伸フィルム等のスクラップである架橋ポリエチレン系樹脂組成物を溶融、混練、押し出しを行い、特定の溶融粘度指数を満足するポリエチレン系再生樹脂組成物とすることで、当該再生樹脂組成物を利用した成型品が極めて均質な製品となるものである。特に、再生樹脂を用いた包装用熱収縮性フィルム製品の引き裂き強度の低下の抑制が出来たことをはじめとし、その他の高い均質性が要求される用途に対しても有用なものである。

【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を詳しく説明する。本発明における架橋ポリエチレンの元となる、つまり架橋前の状態であるポリエチレン系樹脂とは、エチレンの単独重合体、及び/又は、エチレンと少量の他のモノマーとの共重合体である。ここでいう他のモノマーは特に限定されないが、プロピレン、ブテン−1、ヘキセン−1、オクテン−1、4−メチル−ペンテン−1等のα−オレフィン、酢酸ビニル、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸の金属イオン中和物等からなる単独樹脂組成物、或いは混合樹脂組成物、或いは樹脂積層体が挙げられる。

【0010】
そして、本発明における架橋ポリエチレン系樹脂組成物とは、前記ポリエチレン系樹脂に架橋助剤を用いて化学的に架橋させたもの、電離放射線を利用して架橋させたもの、及びこれらの架橋方法を組み合わせて架橋させたもの等を意味する。
【0011】
なお、架橋ポリエチレン系樹脂組成物には、本発明に支障の無い範囲であれば、ポリエチレン系樹脂以外の熱可塑性樹脂を含んでもよく、また、それぞれの有効な作用を具備させる目的で、酸化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤等の安定剤、滑剤、ブロッキング防止剤、帯電防止剤、防曇剤、核剤、架橋促進剤、架橋抑制剤、タルク、炭酸カルシウム、マイカ、酸化チタン等の充填剤、着色剤等を適宜使用することが出来る。
【0012】
そして、この架橋ポリエチレン系樹脂組成物は、H1-MFRが、0.05g/10分以上であることが必要である。H1―MFRが、0.05g/10分未満であると均質な再生樹脂組成物を得る事が極めて困難となる。
【0013】
次に、本発明におけるポリエチレン系再生樹脂組成物は、特定の溶融粘度指数、及び溶融粘度指数の比を満足するものである。具体的には、H2-MFRが、90〜280g/10分の範囲であり、かつL-MFRが、0.1〜5g/10分であり、かつ(H-MFR)/(L-MFR)の比が、20〜200の範囲である事が必要である。このH2−MFR、及びL−MFRが下限値未満であると、均質な再生樹脂組成物が得られず、ゲル状ブツの発生や、フィルムにした場合の透明性の低下や引き裂き強度の低下が生じやすくなり、上限値を超えると、溶融流動性が良くなりすぎて、かえって均質性を低下させたり、成型品に架橋して用いる場合は耐熱性の低下を招く事となる。(H2-MFR)/(L-MFR)の比では、20未満であると溶融流動性が劣りやすくなり、200を超えると架橋によって生成したものと思われるが、ゲル状ブツ、透明性や引き裂き強度の低下の原因となる高分子量成分が残存している可能性が高くなる。
【0014】
これらの特定の溶融粘度指数、及び溶融粘度指数の比を満足させる方法としては、架橋ポリエチレン系樹脂組成物を溶融、混練できる方法であれば特に限定はしないが、単軸押出機、同方向回転二軸押出機、異方向回転二軸押出機が一般的に用いられる。溶融、混練にかかわる押出温度、スクリュ形状、スクリュ回転数、押出量等の条件は、架橋ポリエチレン系樹脂組成物の性質や押出機の能力により、本発明の特定の溶融粘度指数、及び溶融粘度指数の比となるように条件を選定すればよい。これらの条件の影響の仕方としては、押出温度は高く、ミキシング部分や高せん断部分を多く有するスクリュ形状であり、スクリュ回転数が高く、押出量は低いほど、混練やせん断が強くなり、溶融粘度指数は高くなる傾向にある。
【0015】
その中でも、押出機を用いて行う溶融、混練後、冷却固化させる工程を2回以上繰り返す事が、本発明で特定している溶融粘度指数、及び溶融粘度指数の比を満足する再生樹脂組成物が得られやすく好ましい。また、その溶融、混練後、冷却固化させる1回目の工程後の樹脂組成物の温度250℃、荷重21.6kgの条件で測定した溶融粘度指数(以下、H3-MFRと記す)が、20〜90g/10分の範囲である事が最終的な特定の溶融粘度指数、及び溶融粘度指数の比になりやすく好ましい。これらの工程を2回繰り返す事が効果的となる理由については発明者らもよくわからないが、溶融温度以上の高温で、連続的かつ一度に架橋構造をせん断、破壊していくよりも、一旦冷却、固化させた後に再び溶融、混練していく方が、より選択的に架橋点の破壊につながるのではないかと推定している。
【0016】
以上のようにして得られたポリエチレン系再生樹脂組成物は、元のポリエチレン系樹脂と同様に、その性質が適合する様々な用途に再利用する事ができる。中でも、本発明によって得られるポリエチレン系再生樹脂組成物は、均質性が高く、フィルム用途に再利用しても、透明性の低下抑制だけでなく、引き裂き強度の低下がない事が特徴である。
【0017】
具体的には、本発明のポリエチレン系再生樹脂組成物とポリエチレン系樹脂からなり、電子線照射により架橋した後、延伸加工を施された架橋ポリエチレン系熱収縮性フィルムがある。ここでいう、ポリエチレン系樹脂とは、前述の架橋ポリエチレン系樹脂組成物の元となる樹脂、及び樹脂混合物と同様のものである。ポリエチレン系再生樹脂組成物の配合比には特に限定はないが、延々と繰り返し再利用する場合の樹脂自体の熱劣化を考慮すると、5〜70%の範囲が好ましいと考えられる。また、再生樹脂組成物の再生工程における品質のばらつきが懸念される場合等には、再生樹脂を使用する層の両側に再生樹脂を含まない層を配置させた3層以上の多層構成とする事で、バラツキの影響を緩和しやすくなり好ましい。
【0018】
そして、本発明の熱収縮性フィルムは、架橋された未延伸原反フィルムを二軸延伸加工して得られる。二軸延伸加工は、公知の延伸方法によって行うことができ、例えば、チューブラー同時二軸延伸、テンター同時二軸延伸、テンター逐次二軸延伸法等である。ここでは、チューブラー同時二軸延伸法を例にとって本発明の製造方法を述べるが、これに限定されるものではない。
【0019】
前記のような原料組成の樹脂を3台の押出機に供給し、押出機先端に接合された3層構成の環状ダイスより樹脂を溶融して押し出し、冷媒を用いてチューブ状に冷却固化させて未延伸原反フィルムを作製する。次いで、原反フィルムを電子線照射装置に供給して、両面から照射し架橋させる。その後、原反チューブ内にエアーを供給しながら原反を再加熱し、延伸バブルを形成させ、エアーの圧力で縦横同時に延伸する。延伸倍率は、縦、横それぞれ3〜8倍、好ましくは4〜7倍になるように、縦は延伸前後のロール速度比で、横はエアー供給量で延伸バブルの径を調整する。延伸倍率が3倍未満であると、熱収縮率が小さくなり、8倍を越えるとフィルムが破れ易くなるので好ましくない。その時の延伸温度は、延伸ムラが発生せず、延伸バブルが安定した形状を維持出来、熱収縮性が付与される範囲であれば特に限定はしない。原料の種類や組み合わせや各層の厚み構成比、或いは架橋度によって、延伸バブルが安定する延伸温度範囲が狭い場合には、二軸延伸後の熱処理によっても熱収縮力の調整を行う事ができる。その際の熱処理方法としては、公知の方法が用いられ、例えば、熱ロール、テンター、バブル熱処理等が用いられる。熱処理温度と熱処理弛緩率は、要求される熱収縮力の程度に応じて選択すればよいが、熱処理温度としては70〜125℃、弛緩率としては0〜15%の範囲で行うのが好ましい。また、得られたフイルムは、必要に応じて、エージング、コーティング等の後処理を行うことができる。

【実施例】
【0020】
以下、実施例により本発明を詳細に説明する。なお、本実施例の中で示した各物性測定や評価は以下の方法によった。
1)H1−MFR、H2−MFR、L―MFR、H3−MFR
JIS−K7210に準拠し測定した。(単位:g/10分)
2)ヘイズ
JIS−K6714により測定した。(単位:%)
3)ゲル状ブツ
フィルムを目視観察し、以下の基準で評価した。
○:ブツがほとんどない。
△:ブツが多い。
×:大きなブツが多い。
4)引き裂き強度
JIS P 8116に準拠し、東洋精機製軽荷重引裂試験機で測定した。
5)耐熱温度
フィルムを木枠(縦×横:20×20mm)に固定し、熱風を発生するトンネル内を5秒間通過させ、フィルムが白化したり溶融したりしない最高温度を測定した。
【0021】
また製造例、実施例及び比較例に用いたポリエチレン及び添加剤は以下のとおり。
PE−1;直鎖状低密度ポリエチレン、d=0.920g/cm3 、MI=1.0g/10分
PE−2;直鎖状低密度ポリエチレン、d=0.920g/cm3 、MI=0.6g/10分
PE−3;高圧法ポリエチレン、d=0.922g/cm3 、MI=0.5g/10分
酸化防止剤:チバ・スペシャルティ・ケミカルズ株式会社製IRGAFOS168
滑剤:エルカ酸アミドとオレイン酸アミドの混合物(1:1)
ブロッキング防止剤:不定形シリカ微粒子
防曇剤:ジグリセリンオレイン酸エステル

【0022】
(製造例1)PE−1を両表面層、PE−1を70%とPE−3を30%を芯層とし、各層には、酸化防止剤0.15%、及び滑剤0.1%添加し、更に両表面層にはブロッキング防止剤0.5%を添加して、3台の押出機でそれぞれ170℃〜240℃にて溶融、混練し、層比が1:5:1になるように各押出機の押出量を設定し、240℃に保った3層環状ダイスより下向きに共押出した。形成された3層構成チューブを、内側は冷却水が循環している円筒状冷却マンドレルの外表面を摺動させながら、外側は水槽を通すことにより冷却して引き取り、チューブ状未延伸フィルムを得た。このチューブ状未延伸フィルムの両面に、電子線照射装置(日新ハイボルテージ株式会社製)を用いて、照射線量50kGyの電子線照射を行った後、架橋チューブ状未延伸フィルムをチューブラー二軸延伸装置に導き、90〜110℃で縦横それぞれ5倍に延伸した。次いで、得られたチューブ状延伸フィルムを折り畳み、60℃に設定した熱固定ロールでアニーリングした後、両端をトリミングし、上下2枚のフィルムを各々フラットフィルムとして巻き取った。得られた延伸フィルムは、厚み15μで、ゲル状ブツもなく、透明性も良好で、引き裂き強度や耐熱温度も十分なものであった。

【0023】
(実施例1)製造例1の製造過程で得られた架橋チューブ状未延伸フィルムや架橋された延伸フィルムのスクラップを架橋ポリエチレン系樹脂組成物として使用した。この架橋ポリエチレン系樹脂組成物をフィルム粉砕機により粉砕後、同方向回転2軸押出機(東芝機械株式会社製 TEM−58SS、L/D=49.6、φ=58mm)により、スクリュ回転数400rpm、押出温度230℃、押出量40kg/hにて溶融、混練し、ストランド状に押し出し、水冷後、ストランドカットし、ペレット状のポリエチレン系再生樹脂組成物を得た。これらのH1-、H2−、L−MFR、(H2−MFR)/(L―MFR)比は、表1に示す通りであった。次に、芯層の原料樹脂として、このポリエチレン系再生樹脂組成物を30%とPE−1を49%とPE−3を21%にした以外は製造例1と同様にして延伸フィルムを作った。得られた延伸フィルムは、厚み15μで、ゲル状ブツもなく、透明性も良好で、引き裂き強度や耐熱温度も十分なものであった。
【0024】
(実施例2)製造例1の製造過程で得られた架橋チューブ状未延伸フィルムや架橋された延伸フィルムのスクラップを架橋ポリエチレン系樹脂組成物として使用した。この架橋ポリエチレン系樹脂組成物を粉砕機を付した単軸押出機(萩原工業株式会社製 NGR再生ペレット製造装置、L/D=37、φ=85mm)により、溶融、混練、押し出し、水冷固化させ、一旦、ペレット状の組成物を得た。次いで、同方向回転2軸押出機(東芝機械株式会社製 TEM−58SS、L/D=49.6、φ=58mm)により、スクリュ回転数300rpm、押出温度230℃、押出量40kg/hにて溶融、混練し、ストランド状に押し出し、水冷後、ストランドカットし、ペレット状のポリエチレン系再生樹脂組成物を得た。これらのH1-、H2−、L−MFR、(H2−MFR)/(L―MFR)比は、表1に示す通りであった。次に、芯層の原料樹脂として、このポリエチレン系再生樹脂組成物を60%とPE−1を28%とPE−3を12%にした以外は製造例1と同様にして延伸フィルムを作った。得られた延伸フィルムは、厚み15μで、ゲル状ブツもなく、透明性も良好で、引き裂き強度や耐熱温度も十分なものであった。
【0025】
(比較例1)製造例1の製造過程で得られた架橋チューブ状未延伸フィルムや架橋された延伸フィルムのスクラップを架橋ポリエチレン系樹脂組成物として使用した。この架橋ポリエチレン系樹脂組成物を用いて、実施例2と同様に、単軸押出機、次いで同方向回転2軸押出機による押し出しを行い、ポリエチレン系再生樹脂組成物を得た。但し、同方向回転2軸押出機による押し出しは、スクリュ回転数400rpm、押出温度230℃、押出量40kg/hにて行った。これらのH1-、H2−、L−MFR、(H2−MFR)/(L―MFR)比は、表1に示す通りであった。次に、このポリエチレン系再生樹脂組成物を用いて、製造例1と同様に、延伸フィルムを作ったが、チューブラー二軸延伸加工時の延伸バブルはやや白っぽく感じられた。得られた延伸フィルムは、ゲル状ブツはほとんど見られなかったが、透明性がやや劣り、耐熱性が低いものであった。
【0026】
(製造例2)PE−1を両表面層、PE−2を芯層とし、各層には、酸化防止剤0.15%、及び防曇剤2%添加して、3台の押出機でそれぞれ170℃〜240℃にて溶融、混練し、層比が1:5:1になるように各押出機の押出量を設定し、240℃に保った3層環状ダイスより下向きに共押出した。形成された3層構成チューブを、内側は冷却水が循環している円筒状冷却マンドレルの外表面を摺動させながら、外側は水槽を通すことにより冷却して引き取り、チューブ状未延伸フィルムを得た。このチューブ状未延伸フィルムの両面に、電子線照射装置(日新ハイボルテージ株式会社製)を用いて、照射線量100kGyの電子線照射を行った後、架橋チューブ状未延伸フィルムをチューブラー二軸延伸装置に導き、100〜120℃で縦横それぞれ6倍に延伸した。次いで、得られたチューブ状延伸フィルムを折り畳み、80℃に設定した熱固定ロールでアニーリングした後、両端をトリミングし、上下2枚のフィルムを各々フラットフィルムとして巻き取った。得られた延伸フィルムは、厚み10μで、ゲル状ブツもなく、透明性も良好で、引き裂き強度や耐熱温度も十分なものであった。
【0027】
(実施例3)製造例2の製造過程で得られた架橋チューブ状未延伸フィルムや架橋された延伸フィルムのスクラップを架橋ポリエチレン系樹脂組成物として使用した。
この架橋ポリエチレン系樹脂組成物を粉砕機を付した単軸押出機(萩原工業株式会社製 NGR再生ペレット製造装置、L/D=37、φ=85mm)により、溶融、混練、押し出し、水冷固化させ、一旦、ペレット状の組成物を得た。次いで、同方向回転2軸押出機(東芝機械株式会社製 TEM−58SS、L/D=49.6、φ=58mm)により、スクリュ回転数400rpm、押出温度230℃、押出量40kg/hにて溶融、混練し、ストランド状に押し出し、水冷後、ストランドカットし、ペレット状のポリエチレン系再生樹脂組成物を得た。これらのH1-、H2−、L−MFR、(H2−MFR)/(L―MFR)比は、表2に示す通りであった。次に、芯層の原料樹脂として、このポリエチレン系再生樹脂組成物を30%とPE−2を70%にした以外は製造例2と同様にして延伸フィルムを作った。得られた延伸フィルムは、厚み10μで、ゲル状ブツもなく、透明性も良好で、引き裂き強度や耐熱温度も十分なものであった。
【0028】
(比較例2)照射線量を130kGyとした以外は、製造例2と同様の製造過程で得られた架橋チューブ状未延伸フィルムや架橋された延伸フィルムのスクラップを架橋ポリエチレン系樹脂組成物として使用した。この架橋ポリエチレン系樹脂組成物を用いて、実施例3と同様に、単軸押出機、次いで同方向回転2軸押出機による押し出しを行い、ポリエチレン系再生樹脂組成物を得た。これらのH1-、H2−、L−MFR、(H2−MFR)/(L―MFR)比は、表2に示す通りであった。次に、このポリエチレン系再生樹脂組成物を用いて、製造例2と同様に(照射線量は100kGy)、延伸フィルムを作った。得られた延伸フィルムは、ゲル状ブツが多く、透明性も劣り、引き裂き強度が低いものであった。
【0029】
(比較例3)製造例2の製造過程で得られた架橋チューブ状未延伸フィルムや架橋された延伸フィルムのスクラップを架橋ポリエチレン系樹脂組成物として使用した。この架橋ポリエチレン系樹脂組成物を用いて、実施例3と同様に、単軸押出機、次いで同方向回転2軸押出機による押し出しを行い、ポリエチレン系再生樹脂組成物を得た。但し、同方向回転2軸押出機による押し出しは、スクリュ回転数150rpm、押出温度230℃、押出量40kg/hにて行った。これらのH1-、H2−、L−MFR、(H2−MFR)/(L―MFR)比は、表2に示す通りであった。次に、このポリエチレン系再生樹脂組成物を用いて、製造例2と同様に、延伸フィルムを作った。得られた延伸フィルムは、ゲル状ブツが多く、透明性も劣り、引き裂き強度が低いものであった。

【0030】
【表1】

【0031】
【表2】





【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(A)の特徴を有する架橋ポリエチレン系樹脂組成物を押出機を用いて溶融、混練後、冷却固化させる事からなり、下記(B)、(C)、(D)の特徴をすべて満足するポリエチレン系再生樹脂組成物。
(A)温度250℃、荷重21.6kgの条件で測定した溶融粘度指数(以下、H1-MFRと記す)が、0.05g/10分以上である。
(B)温度250℃、荷重21.6kgの条件で測定した溶融粘度指数(以下、H2-MFRと記す)が、90〜280g/10分の範囲である。
(C)温度250℃、荷重2.16kgの条件で測定した溶融粘度指数(以下、L-MFRと記す)が、0.1〜5g/10分である。
(D)(H2-MFR)/(L-MFR)の比が、20〜200の範囲である。

【請求項2】
押出機を用いて行う溶融、混練後、冷却固化させる工程を2回以上繰り返す事を特徴とする請求項1記載のポリエチレン系再生樹脂組成物。

【請求項3】
押出機を用いて行う溶融、混練後、冷却固化させる1回目の工程後の樹脂組成物の温度250℃、荷重21.6kgの条件で測定した溶融粘度指数(以下、H3-MFRと記す)が、20〜90g/10分の範囲である事を特徴とする請求項2のポリエチレン系樹脂組成物。

【請求項4】
下記(A)の特徴を有する架橋ポリエチレン系樹脂組成物を押出機を用いて溶融、混練後、冷却固化させる事からなり、下記(B)、(C)、(D)の特徴をすべて満足するポリエチレン系再生樹脂組成物とポリエチレン系樹脂からなり、電子線照射により架橋した後、延伸加工を施された架橋ポリエチレン系熱収縮性フィルム。
(A)温度250℃、荷重21.6kgの条件で測定した溶融粘度指数(以下、H1-MFRと記す)が、0.05g/10分以上である。
(B)温度250℃、荷重21.6kgの条件で測定した溶融粘度指数(以下、H2-MFRと記す)が、90〜280g/10分の範囲である。
(C)温度250℃、荷重2.16kgの条件で測定した溶融粘度指数(以下、L-MFRと記す)が、0.1〜5g/10分である。
(D)(H2-MFR)/(L-MFR)の比が、20〜200の範囲である。

【請求項5】
ポリエチレン系再生樹脂組成物を5〜70%とポリエチレン系樹脂を30〜95%からなる事を特徴とする請求項4記載の架橋ポリエチレン系熱収縮性フィルム。

【請求項6】
押出機を用いて行う溶融、混練後、冷却固化させる工程を2回以上繰り返す事を特徴とする請求項4〜5記載の架橋ポリエチレン系熱収縮性フィルム。

【請求項7】
押出機を用いて行う溶融、混練後、冷却固化させる1回目の工程後の樹脂組成物の温度250℃、荷重21.6kgの条件で測定した溶融粘度指数(H3-MFRと記す)が、20〜90g/10分の範囲である事を特徴とする請求項6の架橋ポリエチレン系熱収縮性フィルム。

【公開番号】特開2011−105882(P2011−105882A)
【公開日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−264044(P2009−264044)
【出願日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【出願人】(000142252)株式会社興人 (182)
【Fターム(参考)】