説明

架設管理システム

【課題】 移動対象物の移動位置や姿勢をGPS位置測定装置を使用して三次元的に測定して管理する架設管理システムを提供すること。
【解決手段】 移動対象物50にGPS位置測定装置11〜14が取り付けられ、そこから得られる位置データに基づき移動対象物の位置や姿勢を求めるものであって、GPS位置測定装置は、複数のGPSアンテナ11がそれぞれ異なる箇所に設置され、各箇所の座標に関する位置データを地上側に無線送信する送信装置を備えるものであり、地上側には、位置データを受信する受信装置21と、位置データに基づいて移動対象物の移動位置や姿勢を算出し、予め記憶された障害物の三次元座標データに基づいて障害物の位置を算出する演算処理装置23と、その演算処理装置により算出された結果に基づいて移動対象物の移動状況を画面表示する表示装置23とを備える架設管理システム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばクレーンで吊った橋桁を移動させて架設する際、その移動対象物である架設桁の位置や傾きなどの姿勢をGPSを使用して三次元的に測定して管理する架設管理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
橋梁の架設工事では、橋桁をクレーンで吊り上げ、それを橋脚や仮設備の鋼製ベントなどへ移動して載置させる。その際、その架設桁を配置しておいた位置から目標到達位置までの間、架設桁が他の橋脚や鋼製ベントなどに接触しないようにしたり、吊り下げた架設桁のバランスをとる等の安全管理が必要になる。そこで、従来から行われている架設管理方法では、担当者による目視の安全確認や位置確認が行われる他、移動中の位置をデータで管理する方法が採られている。すなわち、従来の架設管理方法では、移動中の架設桁の位置を「数字」で得る方法が採用されていた。具体的には、架設桁に取り付けられたプリズムをトータルステーションで追尾し、移動する架設桁の座標を得るようにしたものであって、こうしたトータルステーションとプリズムとの複数のセットによって橋桁の位置や姿勢が求められていた。
【0003】
一方、橋梁の架設工法には、クレーンを利用して架設桁を吊り下げ移動させる工法の他、送り出し架設と呼ばれる方法がある。これは、架設位置の延長線上で台車に架設桁が搭載され、その先端に架設機械である手延べ機が設置される。そして、台車を前進させて架設位置まで送り出して架設桁を移動させることにより、橋脚を掛け渡して架設するものである。このような送り出し架設工法では、架設桁の移動中その位置及び姿勢を逐次把握して目標軌道で移動しているか否かなどを確認し、定められた経路から外れている場合にはこれを是正することが必要である。そこで、特開2000−292520号公報には、GPS位置測定装置を備えた架設管理システムが提案されている。
【0004】
この架設管理システムでは、GPS衛星からの信号電波を架設桁に設置されたGPSアンテナによって受信し、GPS位置測定装置によって、そのGPSアンテナの位置を測定すると共に、正確な絶対位置の解っている場所に固定設置された同様な構成の基準局から発せられる位置情報に基づいて測定位置を補正して正確な位置が測定される。そこで、こうしたいわゆるリアルタイムキネマチィック測量によって正確な水平方向及び高さ方向の位置が計測される。
【特許文献1】特開2000−292520号公報(第3−5頁、図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、従来のこうした架設管理システムには次のような問題があった。先ず、トータルステーションを使用したシステムの場合、例えばクレーンに吊られた橋桁上の複数のプリズムがトータルステーションの光軸方向に並んだ状態になってしまうと、対応するプリズムが他のものと区別できなくなって座標の測定に失敗してしまうことがある。また、架設桁を橋脚などの障害物を避けて移動させる際、その障害物にプリズムが隠れてしまって座標計測が不可能になってしまうことがある。
【0006】
更には、クレーンによって吊られた架設桁は、クレーンの旋回中心に対して円弧状に移動するため、トータルステーションからの向きが変化することによって測定値が不連続になってしまうことがある。こうした点、前記特許文献1に開示されたGPSを使用した架設管理システムでは、プリズムをトータルステーションで追尾する際の上記問題はない。しかし、特許文献1の発明は送り出し架設工法を行う場合の架設管理システムであったため、クレーンで移動させる場合にはそのまま利用することができなかった。
【0007】
そこで、本発明は、かかる課題を解決すべく、移動対象物の移動位置や姿勢をGPS位置測定装置を使用して三次元的に測定して管理する架設管理システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る架設管理システムは、吊り下げられた状態で空中を移動する架設桁などの移動対象物にGPS位置測定装置が取り付けられ、そのGPS位置測定装置によって得られる位置データに基づき当該移動対象物の位置や姿勢を求めるものであって、前記GPS位置測定装置は、前記移動対象物に対して複数のGPSアンテナがそれぞれ異なる箇所に設置され、そのGPSアンテナが設置された各箇所の座標に関する位置データを地上側に無線送信する送信装置を備えるものであり、地上側には、前記送信装置から送信された位置データを受信する受信装置と、その位置データに基づいて前記移動対象物の移動位置や姿勢を算出し、予め記憶された架設現場に存在する障害物の三次元座標データに基づいて当該障害物の位置を算出する演算処理装置と、その演算処理装置により算出された結果に基づいて移動対象物の移動状況を画面表示する表示装置とを備えることを特徴とする。
【0009】
また、本発明に係る架設管理システムは、前記演算処理装置が、前記障害物を表示した架設現場マップを作成し、移動対象物がそのマップ上を移動する状況を前記表示装置に表示するようにしたものであることが好ましい。
また、本発明に係る架設管理システムは、前記演算処理装置が、前記GPSアンテナが設置された各箇所の座標に関する位置データを得て、その複数の座標の相対値からGPSアンテナが設置された各箇所の三次元座標や移動対象物の姿勢を算出するものであることが好ましい。
また、本発明に係る架設管理システムは、前記演算処理装置では、算出した前記移動対象物の各箇所の三次元座標や移動対象物の姿勢の値に基づいて当該移動対象物の状態図を作成し、その状態図及び/又は三次元座標や姿勢に関する数値を前記表示装置に表示するようにしたものであることが好ましい。
また、本発明に係る架設管理システムは、前記演算処理装置で算出される移動対象物の移動位置が予め設定された管理範囲を超えて障害物に近づいた場合に警報表示または警報音を出力する警報手段を有することが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
よって、本発明に係る架設管理システムによれば、移動対象物が移動している場合、GPS衛星からの電波がそれぞれのGPSアンテナによって捉えられ、各箇所の座標が求められ位置データとして送信機によって地上側に送信され、地上側ではこの位置データを受信機で受信し、演算処理装置によって移動対象物の移動位置や姿勢が、架設現場に存在する障害物の位置とともに算出され、表示装置によって移動対象物の移動状況が画面表示される。そこで例えば、監督者がクレーンの操縦者に指示しながら架設桁などの移動を行う場合、監督者は、表示装置の画面から正確に架設桁の移動位置や姿勢を把握することができ、的確な指示を与えることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
次に、本発明に係る架設管理システムについて、その一実施形態を図面を参照しながら以下に説明する。
図1は、大型クレーンによる架設桁の吊下げ状態を示した図である。本実施形態では、移動式の大型クレーン1を使用して橋桁を吊下げ移動し、橋脚に対してその橋桁(架設桁)を掛け渡すようにして橋梁の架設が行われる。図示する大型クレーン1は、3000t級のクローラクレーンであり、クローラを備えた走行部2の上に旋回可能な上部旋回体3が設けられている。その上部旋回体3からはブーム4が伸び、先端のシーブを介して送り出されたウインチからのワイヤロープに架設桁50などが吊り下げられる。
【0012】
次に、図2は、この大型クレーン1を使用した橋梁の架設現場を簡略化して示した平面図である。この架設現場では、鉄道の線路80が通り、その上を横切るように高速道路のランプ箇所となるランプ橋が建設される。ランプ橋が造られるこの現場は、図1に示すように、所定の箇所に橋脚60が先に建てられ、そこに架設桁50が掛け渡される。橋脚60は、図示するように基礎杭61の上にフーチング62が形成され、そこに埋設された不図示のアンカーボルトを介して立設されている。そして、橋脚60の間に架設桁50が掛け渡される施工時には、橋脚60の周りには鋼製ベント70と呼ばれる仮設備が設けられている。
【0013】
そのため架設現場には、図2に示すように、複数の橋脚60が建てられ、その周りを囲む鋼製ベント70とが各所に配置されている。そして、更には他の空いた箇所に、いま架設しようとしている架設桁50の他に、複数の架設桁52〜55が仮置きされている。従って、例えば架設桁50を仮置き場A地点から、二点鎖線で示すように移動させ、線路80を跨ぐようにして橋脚60に掛け渡して架設しようとする場合、その移動に際して途中の橋脚60や鋼製ベント70、更には他の架設桁52,53などが障害物となる。
【0014】
そのため、大型クレーン1によるクレーン工法では、ブーム4を備えた上部旋回体3を旋回させ、吊り下げた架設桁50を二点鎖線で示すように円弧状に移動させる場合、ブーム4の角度を変えるなどして途中の橋脚60や鋼製ベント70などの障害物に架設橋50が接触しないように回避させながら大型クレーン1を操作する必要がある。
本実施形態では、こうした大型クレーン1の操作に際し、架設桁50の位置や姿勢が求められ、周りの障害物との接触の危険などを監督者が確認し、クレーン操縦者に知らせるようにした橋梁の架設管理システムが構築されている。
【0015】
図3は、橋梁の架設管理システムについて、その一実施形態を概念的に示した図である。架設桁50の上には、架設桁50の位置や姿勢計測に必要な座標を得るための複数の箇所、例えば架設桁50の前後左右の角部(図には2箇所のみ示している)にGPSアンテナ11がそれぞれ設置されている。こうしたGPSアンテナ11は、複数のGPS衛星100から到来するGPS電波を受信する。そして、各GPSアンテナ11には、同じく架設桁50に設置されたデータ収集ボックス12が接続されている。データ収集ボックス12には、各GPSアンテナ11で捕捉したGPS電波を受信するGPS受信機13、このGPS受信機13で受信したGPS電波に基づいて測位動作を行って座標データを送信する無線LAN内蔵のGPS端末14が収められている。
【0016】
GPS端末14は、例えばCPU、通信モジュール、無線LAN用の送信装置などが備えられたものであり、データ収集ボックス12に収められた不図示のバッテリから動作電源が供給されるようになっている。そして、このようなGPS端末14では、GPSアンテナ11を介してGPS衛星100からのGPS衛星信号を受信して測位動作が行われ、各GPSアンテナ11の位置データが生成される。また、通信モジュールでは通信用アンテナを介して管理センター20側へ通信が行われるように構成され、CPUによってGPS端末14の各動作が制御されるようになっている。
【0017】
一方、この架設現場に設置された管理センター20は、仮設のコンテナハウスであって、そこには無線LANのための無線ユニットを備えた受信装置21が設けられ、ハブ22を介してコンテナハウス内のモニタ用コンピュータ23やサーバ用コンピュータ24が接続されている。ここに設けられたモニタ用コンピュータ(以下、「モニタ用PC」とする)23は、実際に行われる架設工事において架設桁50の施工状況を監視することができるようにしたものであり、サーバ用コンピュータ(以下、「サーバ用PC」とする)24は、モニタ用PC23で施工状況を画像表示するための三次元座標データなどが格納され、データベースとして機能するものである。また、図示していないが、ルータを介してインターネットに接続され、架設現場から離れた場所でもモニタ用PC23と同じように施工状況の画面を見ることができるようになっている。
【0018】
サーバ用PC24には、現場管理データや大型クレーン1などに関する三次元座標データが入力されて格納されている。現場管理データは、図2に示すように大型クレーン1の周りに設置された橋脚60や鋼製ベント70、更には他の橋脚52〜55など、現場に存在して障害となり得る立体構造物の位置や大きさに関する三次元座標データである。ここで、図4は、モニタ用PC23のディスプレイに表示された管理画面を表示した図である。モニタ用PC23には、図1及び図2に示したクレーンの作業状態や、架設桁の移動位置を示すマップを表示するための架設管理ソフトが格納されている。架設管理ソフトは、サーバ用PC24に格納された三次元データやGPSアンテナ11から得られる受信データなどを利用して管理画面を作成するものである。
【0019】
モニタ用PC23に表示される管理画面は、例えば図4に示すように、架設現場のマップ上に大型クレーン1による架設桁50の移動状況を表した図2に示すマップ画面31、各GPSアンテナ11が位置する架設桁50における各箇所の三次元座標を示す数値画面32、そして大型クレーン1によって吊り下げられた架設桁1の姿勢を表した図1に示す作業画面33などである。架設管理ソフトで作成される管理画面31〜33は、時間経過毎に更新され、架設桁50の移動位置や姿勢が図や数値によってリアルタイムに表示される。その際、複数あるGPSアンテナ11間で計測値に時間的なズレがあると誤差になってしまうため、本実施形態では、GPS時刻を用いて同期を取ることで、時間的なズレを極力小さくするようにしている。なお、架設現場には所定の場所に複数のWebカメラが設置されており、モニタ用PC23には、そのWebカメラでとらえた各映像が現場映像34として映し出せるようになっている。
【0020】
次に、本実施形態の架設管理システムを使用した、図2に示すような現場で架設桁50を橋脚60に掛け渡しする場合の架設管理方法について説明する。この架設管理システムを用いた橋梁の架設工事では、大型クレーン1を操縦する操縦者と、管理センター20内に居てモニタ用PC23前で架設桁50の移動状況を監視する監督者とがいる。操縦者と監督者とは互いに無線機で連絡がとれるようになっており、監督者は、モニタ用PC23を見ながら操縦者に指示を出し、操縦者は、監督者の指示に従って大型クレーン1を操縦して架設桁50を目標到達位置まで移動させる。
【0021】
そこで、例えば図2に示すように、仮置き場Aに置かれた架設桁50が、二点鎖線で示すような経路を通って吊下げ状態で移動し、線路80を跨ぐようにして移動先の橋脚60に掛け渡される。大型クレーン1は、上部旋回体3に設けられたブーム4の先端からワイヤロープが下ろされ、その先に架設桁50が吊り下げられる。従って、前方に傾けられたブーム4先端の下に吊設された架設桁50は、上部旋回体3が旋回すると、旋回中心から径方向に所定距離離れた二点鎖線で示す円弧上を移動する。
【0022】
移動する架設桁50には所定箇所に複数のGPSアンテナ11が設置されており、GPS衛星100からの電波がそれぞれのGPSアンテナ11によって捉えられる。そして、架設桁50にはデータ収集ボックス12が設置され、その中の各GPS受信機13によってそれぞれのGPSアンテナ11で捕捉されたGPS電波が受信され、更にGPS端末14では、受信したGPS電波に基づいて測位動作が行われ、各GPSアンテナ11の位置データが生成される。こうしてデータ収集ボックス12で得られた位置データは、無線LANで管理センター20へと送信される。
【0023】
データ収集ボックス12から送信された架設桁50の位置データは、管理センター20の受信装置21で受信され、ハブ22を介してサーバ用PC24に送られて記憶される。この位置データは、複数のGPSアンテナ11が設置された架設桁50の各箇所における座標データである。そして、このサーバ用PC24には、こうしたGPSアンテナ11から順次得られる位置データの他にも、予め架設現場における橋脚60や鋼製ベント70などの立体構造物や大型クレーン1に関する三次元座標データが現場管理データとして記憶されている。モニタ用PC23では、こうしたサーバ用PC24に格納された三次元座標データを利用して管理画面が作成される。
【0024】
受信装置21で受信された位置データは、ハブ22を介してモニタ用PC23にも取り込まれる。そこで、モニタ用PC23では、サーバ用PC24に格納されている現場管理データを取り込み、架設管理ソフトによって作成された架設現場内での架設桁50の移動状況を示す管理画面がディスプレイ上に表示される。架設管理ソフトでは先ず、現場の橋脚60や鋼製ベント70など、立体構造物に関する三次元座標データから図2示す架設現場のマップが作成される。特に監視対象となる架設桁50の仮置き場Aから目標到達位置までを含む周辺のマップが作成される。
【0025】
そして、大型クレーン1によって吊下げられて架設桁50が移動すると、GPSアンテナ11が設置された各箇所の位置データが得られるため、そのデータに基づいて架設桁50の実際の移動位置がマップ上に表示される。すなわち、モニタ用PC23では、所定の時間間隔で送信される位置データに基づいて図4に示すマップ画面31が作成され、そこには同様の内容を図示した図2に示した二点鎖線の経路上を架設桁50が徐々に位置をずらすように移動していく様子が表示される。大型クレーン1によって吊り下げられる架設桁50の実際の移動速度は約10cm/s程度である。そのため、この速度で移動する架設桁50の移動位置がリアルタイムに表示される。
【0026】
また、GPSアンテナ11及びデータ収集ボックス12などからなるGPS位置測定装置では、架設桁50に設置された複数箇所の座標が位置データとして得られる。そして、モニタ用PC23では、この複数の座標の相対値からGPSアンテナ11が設置された各箇所の三次元座標及び架設桁50の姿勢が算出される。各箇所の三次元座標は、図4に示す数値画面32にそれぞれ表示される。また、架設桁50の姿勢は、ローリングおよびピッチング方向の傾き、更には架設桁50の向きが求められ、図1に示すように大型クレーン1によって吊り下げられた架設桁1の姿勢が作業画面33として表示される。なお、ローリングおよびピッチング方向の傾きなど、架設桁50の姿勢情報を数値画面32に加えて表示するようにしてもよい。そして、架設現場に設置された複数のWebカメラからは各映像が取り込まれ、モニタ用PC23に現場映像34が表示される。
【0027】
よって、管理センター20内でモニタ用PC23を監視している監督者は、マップ画面31からは架設桁50の現在位置と、周りに存在する障害物との距離、更に目標到達位置までの距離を把握することができ、また数値画面32や作業画面33からは架設桁50の姿勢が把握でき、大型クレーン1によって吊り下げた荷重のアンバランスが確認できる。更に、現場映像34によって実際の状況も把握することができる。
そこで、監督者は、モニタ用PC23から得られる各種情報に基づいて判断し、架設桁50の安全を確認しながら、無線機を利用して操縦者へ指示を出す。そして、操縦者は、それに従って大型クレーン1を操縦する。
【0028】
ところで、この架設管理システムでは、監督者がモニタ用PC23を見ながら操縦者に指示を出して架設桁50が障害物に接触するなどの危険を回避している。しかし、更に安全を期すため、図2に示す二点鎖線の移動経路上に安全に移動可能な範囲を管理範囲として設定し、その管理範囲データを入力する。なお、この管理範囲データは、例えば架設桁50と橋脚60などの障害物との離間距離によって設定されるものである。
そして、モニタ用PC23では、移動する架設桁50と橋脚60や鋼製ベント70などとの距離を算出し、その距離が管理範囲を超えて近づいた場合には、ディスプレイ上に何らかの警報表示を示したり、警報音を出すようにする。また、管理範囲を架設桁50と橋脚60や鋼製ベント70などとの距離を段階的に設定し、近くなるに従って警報表示や警報音を変化させるようにしてもよい。そしてこの場合、警報装置を大型クレーン1の操縦席に設け、モニタ用PC23との間で無線通信を行うなどして同時に動作させるようにしてもよい。
【0029】
よって、本実施形態の架設管理システムによれば、GPSアンテナ11やGPS受信機13、GPS端末14などのGPS位置測定装置を使用し、モニタ用PC23にマップ画面31などによって作業状況を表示するようにしたので、正確に架設桁50の移動位置や姿勢を把握することが可能になった。
すなわち、トータルステーションを使用した従来のシステムでは、周りに存在する障害物や移動方向によって正確に架設桁50を計測できないでいたが、本実施形態の架設管理システムでは、架設桁50の位置を周りの障害物との関係で正確に確かめることができるようになった。そして、送出し工法とは異なり架設桁50の姿勢が変化するクレーン工法でも、三次元的に測定して架設桁50の姿勢を求めるので、安全な状態を確認しながら作業を進めることができるようになった。
【0030】
ところで、架設桁50に設置した複数のGPSアンテナ11を含むGPS位置測定装置に発生する外乱はほぼ等しいとみなせる。従って、GPS位置測定装置で得られる位置座標の相対値からGPSアンテナ11が設置された各箇所の三次元座標や架設桁50の姿勢を求める場合、相対値の評価によって外乱分を相殺することができるので、結果的に架設桁50の正確な位置や姿勢を求めることができる。
また、本実施形態の架設管理システムでは、サーバ用PC24がデータベースとして機能し、計測された架設桁50の位置座標や姿勢が時系列に記憶されている。従って、この架設記録を利用して架設作業の終了後でも作業内容を画面上で再現することができ、作業効率や安全向上のための検討に役立てることができる。
【0031】
以上、本発明に係る架設管理システムについて一実施形態を説明したが、本発明はこれに限定されることなく、その趣旨を逸脱しない範囲で様々な変更が可能である。
例えば、前記実施形態では架設桁50の移動について説明したが、移動対象物は架設桁に限らず監視が必要なものが対象となる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】大型クレーンによる架設桁の吊下げ状態を示した図である。
【図2】大型クレーンを使用した橋梁の架設現場を簡略化して示した平面図である。
【図3】橋梁の架設管理システムについて、その一実施形態を概念的に示した図である。
【図4】架設管理ソフトによってモニタ用PCに表示された管理画面を示した図である。
【符号の説明】
【0033】
1 大型クレーン
11 GPSアンテナ
12 データ収集ボックス
13 GPS受信機
14 GPS端末
20 管理センター
21 受信装置
23 モニタ用PC
24 サーバ用PC
50 架設桁
60 橋脚
70 鋼製ベント

【特許請求の範囲】
【請求項1】
吊り下げられた状態で空中を移動する架設桁などの移動対象物にGPS位置測定装置が取り付けられ、そのGPS位置測定装置によって得られる位置データに基づき当該移動対象物の位置や姿勢を求める架設管理システムであって、
前記GPS位置測定装置は、前記移動対象物に対して複数のGPSアンテナがそれぞれ異なる箇所に設置され、そのGPSアンテナが設置された各箇所の座標に関する位置データを地上側に無線送信する送信装置を備えるものであり、
地上側には、前記送信装置から送信された位置データを受信する受信装置と、その位置データに基づいて前記移動対象物の移動位置や姿勢を算出し、予め記憶された架設現場に存在する障害物の三次元座標データに基づいて当該障害物の位置を算出する演算処理装置と、その演算処理装置により算出された結果に基づいて移動対象物の移動状況を画面表示する表示装置とを備えることを特徴とする架設管理システム。
【請求項2】
請求項1に記載する架設管理システムにおいて、
前記演算処理装置は、前記障害物を表示した架設現場マップを作成し、移動対象物がそのマップ上を移動する状況を前記表示装置に表示するようにしたものであることを特徴とする架設管理システム。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載する架設管理システムにおいて、
前記演算処理装置は、前記GPSアンテナが設置された各箇所の座標に関する位置データを得て、その複数の座標の相対値からGPSアンテナが設置された各箇所の三次元座標や移動対象物の姿勢を算出するものであることを特徴とする架設管理システム。
【請求項4】
請求項3に記載する架設管理システムにおいて、
前記演算処理装置では、算出した前記移動対象物の各箇所の三次元座標や移動対象物の姿勢の値に基づいて当該移動対象物の状態図を作成し、その状態図及び/又は三次元座標や姿勢に関する数値を前記表示装置に表示するようにしたものであることを特徴とする架設管理システム。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4のいずれかに記載する架設管理システムにおいて、
前記演算処理装置で算出される移動対象物の移動位置が予め設定された管理範囲を超えて障害物に近づいた場合に警報表示または警報音を出力する警報手段を有することを特徴とする架設管理システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−2494(P2007−2494A)
【公開日】平成19年1月11日(2007.1.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−182875(P2005−182875)
【出願日】平成17年6月23日(2005.6.23)
【出願人】(000004617)日本車輌製造株式会社 (722)
【Fターム(参考)】