説明

柑橘系果実ペーストの製造方法及びそれを用いた飲料水

【課題】 柑橘系果実の果汁、果肉、さのう、果皮などの産業廃棄物を出さずに、これらの柑橘系果実の果汁、果肉、さのう、果皮を丸ごと原料にした柑橘系果実ペーストの製造方法及び柑橘系果実ペーストを用いた飲料水を提供すること。
【解決手段】 果皮が緑色を呈する未完熟の柑橘系果実を複数個準備し、これを水で洗浄する工程と、洗浄した柑橘系果実に所定量の水を加えて、該果実と水とを圧力下で煮沸して果実エキスを含んだ溶液と柔らかくなった柑橘系果実とを生成する工程と、柔らかくなった柑橘系果実と果実エキスを含んだ溶液とをミキサーに投入して所定時間粉砕混合し、微細に粉砕された柑橘系果実と果実エキスを含んだ溶液とを得る工程と、該微細に粉砕された柑橘系果実と果実エキスを含んだ溶液とを銅製釜に投入し、攪拌しながら所定温度で所定時間煮沸して該溶液を濃縮し、緑色を呈する果実ペーストを得る工程とを具備している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、柑橘系果実の果汁、果肉、さのう、果皮から産業廃棄物を出さずに、これらの柑橘系果実の果汁、果肉、さのう、果皮を丸ごと原料にした柑橘系果実ペーストの製造方法及びそれを用いた飲料水に関する。
【背景技術】
【0002】
【特許文献1】特開平11−206349号公報
【特許文献2】特開2001−128637号公報
【0003】
柑橘系果実は、そのままデザートとして食したり果実飲料などとして多く利用され、独特の酸味を有しており、この独特の酸味と甘味とのバランスが嗜好食品としての大きな魅力となっている。
【0004】
ところで、柑橘系果実には、フラボノイドの栄養成分(ノビレチレン、タンジェレチン、ペクチン、ヘスペリジン)が含まれており、その他にもビタミンCや天然クエン酸も豊富に含まれている。とくに、ノビレチレン、タンジェレチンなどのフラボノイド(機能性化合物)の有効成分が含まれており、そのフラボノイドには体に有害な活性酸素を抑制する機能(抗酸化機能)があると言われている。また、ノビレチレンには血糖値及び血圧上昇抑制作用、抗腫瘍作用、抗炎症作用などの効果があると言われている。
【0005】
さらに、柑橘系果実のさのうから果汁を搾り取った後の残渣としてでる柑橘パルプ(さのう)には、炭水化物、植物繊維及びペクチンが多量に含まれている。ペクチンやペクチン酸等のペクチン質は、未完熟の果実中でセルロースと結合してプロトペクチンという複合体の形で存在し、とくに柑橘系果実に多量に含まれている。この柑橘パルプを加えた果汁飲料水も開発されている(特許文献1及び特許文献2参照)。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このように柑橘系果実、とくに未完熟の柑橘系果実には多くの栄養成分が含まれているにも拘らず、果肉や果汁以外のさのう、果皮などは産業廃棄物として処理されているのが現状であり、これら産業廃棄物も年々増加している。
【0007】
本発明は、前記諸点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、柑橘系果実の果汁、果肉、さのう、果皮などの産業廃棄物を出さずに、これらの柑橘系果実の果汁、果肉、さのう、果皮を丸ごと原料にした柑橘系果実ペーストの製造方法を提供することにある。
【0008】
本発明の他の目的とするところは、柑橘系果実ペーストを用いた飲料水を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の柑橘系果実ペーストの製造方法は、果皮が緑色を呈する未完熟の柑橘系果実を複数個準備し、これを水で洗浄する工程と、洗浄した柑橘系果実に所定量の水を加えて、該果実と水とを圧力下で煮沸して果実エキスを含んだ溶液と柔らかくなった柑橘系果実とを生成する工程と、柔らかくなった柑橘系果実と果実エキスを含んだ溶液とをミキサーに投入して所定時間粉砕混合し、微細に粉砕された柑橘系果実と果実エキスを含んだ溶液とを得る工程と、該微細に粉砕された柑橘系果実と果実エキスを含んだ溶液とを銅製釜に投入し、攪拌しながら所定温度で所定時間煮沸して該溶液を濃縮し、緑色を呈する果実ペーストを得る工程とを具備している。
【0010】
本発明の製造方法によれば、果皮が緑色を呈する未完熟の柑橘系果実を丸ごと原料に使用するので、果皮やさのうなどの産業廃棄物を出すことがない。また、柑橘系果実を丸ごと原料に使用するため、柑橘系果実に含まれている栄養成分をそのまま含有した柑橘系果実ペーストを提供することができる。さらに、銅製釜で所定温度及び所定時間煮沸することにより、果皮の緑色をそのまま生かした緑色の果実ペーストを提供することができる。
【0011】
本発明の製造方法の好ましい一つの例では、果皮が緑色を呈する未完熟の柑橘系果実は、シークワサー、ミカン、夏ミカン、レモン、ダイダイ、すだち及びかぼすなどから選択される。柑橘系果実にあっては、特定の果実の生育を促進するために間引き作業が通常行われるが、この間引き作業によって取り除かれた未完熟の柑橘系果実は、本発明においては有効に利用される。
【0012】
本発明の製造方法では、洗浄した柑橘系果実に加える所定量の水は、柑橘系果実の重量に対して同量もしくはそれ以下であるとよい。
【0013】
本発明の製造方法では、柑橘系果実と水との加圧下での煮沸を、圧力容器を用いて行うとよく、この場合、圧力容器は、圧力釜または圧力鍋であってもよく、本発明の製造方法の好ましい例では、柑橘系果実と水との加圧下での煮沸を60〜90分間行う。
【0014】
本発明の製造方法では、微細に粉砕された柑橘系果実と果実エキスを含んだ溶液との煮沸は、銅製釜で攪拌しながら40〜60分間行うとよい。
【0015】
斯かる製造方法によれば、柑橘系果実を丸ごと原料に使用し得、柑橘系果実の果皮やさのうなどの産業廃棄物を出すことなく、また柑橘系果実に含まれる多くの栄養成分をそのまま含有した果実ペーストを提供することができる。
【0016】
本発明の柑橘系果実ペーストを含む飲料水は、上記製造方法で得た柑橘系果実ペーストに、適量のオリゴ糖、クエン酸、蜂蜜及び所定量の水を加えて所定の温度で所定時間煮沸することによって得ることができる。
【0017】
本発明では、柑橘系果実ペーストと、オリゴ糖、クエン酸、蜂蜜及び所定量の水との煮沸を、80〜90℃の温度で行うとよい。
【0018】
本発明の柑橘系果実ペーストを含む飲料水によれば、該柑橘系果実ペーストに含まれている栄養成分をそのまま含有しており、適量のオリゴ糖、クエン酸、蜂蜜等が含有されているので、苦味や酸っぱさを感じることなく飲みやすくなっている。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、果皮が緑色を呈する未完熟の柑橘系果実を丸ごと原料に使用するので、果皮やさのうなどの産業廃棄物を出すことがなく、柑橘系果実に含まれている栄養成分をそのまま含有した果実ペーストの製造方法を提供し得る。
【0020】
また本発明によれば、上記製造方法で得られた柑橘系果実ペーストに適量のオリゴ糖、クエン酸、蜂蜜及び水を加えて所定の温度で所定時間煮沸することにより飲料水として提供し得る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
次に、実施例により本発明を詳細に説明するが、本発明は、その要旨を超えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0022】
実施例1
果皮が緑色を呈する未完熟の柑橘系果実としてシークワサーを選択し、このシークワサーの果実を複数個水で洗浄したのち、果実5kgを計量した。果実5kgを圧力釜に投入すると共に該圧力釜に水5リットルを加え、これを100℃の温度で60分間煮沸して果実のエキスを溶出し、柔らかくなった果実と果実エキスを含んだ溶液とを得た。
【0023】
柔らかくなった果実及び果実エキスを含んだ溶液をミキサーに投入して5分間、粉砕混合し、微細に粉砕された果実と果実エキスを含んだ溶液とを得た。
【0024】
回転翼を具備した銅製の直火固定釜を準備し、該釜中に前記微細に粉砕された果実と果実エキスを含んだ溶液とを投入し、90℃の温度で60分間撹拌しながら煮沸し、溶液中の水分を蒸発させて濃縮した果実ペーストを得た。この煮沸により果実ペーストは、その果皮の緑色に変色していることを確認した。
【0025】
かくして得られた果実ペーストは緑色を呈し、果実(シークワサー)の具有するフラボノイドの栄養成分等を全て含有するものであった。
【0026】
このようにして得られた果実ペーストは、例えばヨーグルトに適量を加えて食することができ、その他、次のような方法により、飲料水とすることもできる。
【0027】
果実ペースト200gに対し水350ミリリットルを加え、さらに適量のオリゴ糖、クエン酸、蜂蜜を加えた後、これを80℃の温度で煮詰め、ついで冷却することにより飲料水(シークワサージュース)とすることができる。また、冷却した飲料水を所望の容器に注入し、85℃の温度で30分間殺菌処理を行うことで保存可能な飲料水とすることができる。
【0028】
実施例2
果皮が緑色を呈する未完熟の柑橘系果実として、間引きされたミカンを選択し、このミカンを複数個水で洗浄したのち、果実5kgを計量した。果実5kgを圧力釜に投入すると共に該圧力釜に水5リットルを加え、これを100℃の温度で60分間煮沸して果実のエキスを溶出し、柔らかくなった果実と果実エキスを含んだ溶液とを得た。以下、前記実施例1と同様の方法で、果実(ミカン)の具有する栄養成分等を全て含有する緑色を呈した果実ペーストを得た。このようにして得られた果実ペーストは、前記実施例1と同様、例えばヨーグルトに適量を加えて食することができ、その他、前記実施例と同様の方法で飲料水(ミカンジュース)とすることもできる。
【0029】
以上説明したように、本発明の製造方法によれば、果皮が緑色を呈する未完熟の柑橘系果実を丸ごと原料に使用するので、果皮やさのうなどの産業廃棄物を出すことがなく、柑橘系果実に含まれている栄養成分をそのまま含有した柑橘系果実ペーストを提供することができる。
【0030】
また、上記製造方法で得られた柑橘系果実ペーストに適量のオリゴ糖、クエン酸、蜂蜜及び水を加え、所定の温度で所定時間煮沸することにより飲料水として提供することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
果皮が緑色を呈する未完熟の柑橘系果実を複数個準備し、これを水で洗浄する工程と、洗浄した柑橘系果実に所定量の水を加えて、該果実と水とを圧力下で煮沸して果実エキスを含んだ溶液と柔らかくなった柑橘系果実とを生成する工程と、
柔らかくなった柑橘系果実と果実エキスを含んだ溶液とをミキサーに投入して所定時間粉砕混合し、微細に粉砕された柑橘系果実と果実エキスを含んだ溶液とを得る工程と、
該微細に粉砕された柑橘系果実と果実エキスを含んだ溶液とを銅製釜に投入し、攪拌しながら所定温度で所定時間煮沸して該溶液を濃縮し、緑色を呈する果実ペーストを得る工程と、
を具備した柑橘系果実ペーストの製造方法。
【請求項2】
果皮が緑色を呈する未完熟の柑橘系果実は、シークワサー、ミカン、夏ミカン、レモン、ダイダイ、すだち及びかぼすから選択される請求項1に記載の果実ペーストの製造方法。
【請求項3】
洗浄した柑橘系果実に加える所定量の水は、柑橘系果実の重量に対して同量もしくはそれ以下である請求項1又は2に記載の果実ペーストの製造方法。
【請求項4】
柑橘系果実と水との加圧下での煮沸を、圧力容器を用いて行う請求項1から3のいずれか一項に記載の果実ペーストの製造方法。
【請求項5】
圧力容器は、圧力釜または圧力鍋である請求項4に記載の果実ペーストの製造方法。
【請求項6】
柑橘系果実と水との加圧下での煮沸を60〜90分間行う請求項1から5のいずれか一項に記載の果実ペーストの製造方法。
【請求項7】
微細に粉砕された柑橘系果実と果実エキスを含んだ溶液との煮沸は、銅製釜で攪拌しながら40〜60分間行う請求項1から6のいずれか一項に記載の果実ペーストの製造方法。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか一項の製造方法で得られる柑橘系果実ペーストに、適量のオリゴ糖、クエン酸、蜂蜜及び所定量の水を加えて所定の温度で所定時間煮沸すことを特徴とする柑橘系果実ペーストを含む飲料水。
【請求項9】
柑橘系果実ペーストと、適量のオリゴ糖、クエン酸、蜂蜜及び所定量の水との煮沸を、80〜90℃の温度で行う請求項8に記載の柑橘系果実ペーストを含む飲料水。

【公開番号】特開2006−121950(P2006−121950A)
【公開日】平成18年5月18日(2006.5.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−312895(P2004−312895)
【出願日】平成16年10月27日(2004.10.27)
【出願人】(598069401)
【Fターム(参考)】