説明

染毛前処理剤組成物及び染毛前処理方法

【課題】金属が残留する毛髪に対して染毛処理を行うにあたり、残留金属に起因する染毛上の不具合を予防できる染毛前処理剤組成物及び染毛前処理方法を提供する。
【解決手段】金属が残留する毛髪に対して酸化染毛処理を行う際の前処理用の組成物であって、(A)成分:シスチンと、(B)成分:アンモニア水及び第1級〜第3級アミンから選ばれる1種以上とを含む染毛前処理剤組成物。及びこれを用いる染毛前処理方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、染毛前処理剤組成物及び染毛前処理方法に関する。更に詳しくは、本発明は、金属が残留する毛髪に対して染毛処理を行うにあたり、前記残留金属に起因する染毛上の不具合を予防することができる染毛前処理剤組成物及び染毛前処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
白髪染め等を行う染毛剤として、周知のように、酸化染料を配合した酸化染毛剤、酸性染料や塩基性染料等の直接染料を配合した染毛料、金属の発色作用を利用した金属染毛剤等が知られている。これらの染毛剤はそれぞれに一長一短があるため、利用者は必要に応じてこれらを選択して使用している。
【0003】
上記の染毛剤のうち、金属染毛剤としては、鉄塩とタンニン等のポリフェノール類との反応で有色の錯化合物を形成させて染毛する「お歯黒」式の染毛剤や、銀と毛髪タンパク質の相互作用を利用して染毛する銀染毛料等が知られている。これらの金属染毛剤は、一般的に手軽に染毛できるという利点がある。そのため、例えば、酸化染毛剤により染毛した毛髪の色調がやや褪せてきた際、次回の酸化染毛処理を行うまでのつなぎとして金属染毛剤を用いることも多い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表2004−524333号公報。 この特許文献1はキレート剤及びコンディショニング剤を含む酸化組成物、並びに毛髪の処理方法に関する。具体的には、高濃度のキレート剤を含有する組成物により酸化染毛処理前の毛髪表面の金属イオンを除去することで、酸化染毛処理時において過酸化水素からのフリーラジカルの生成を抑制し、毛髪のダメージを低減するという技術を開示している。
【0005】
【特許文献2】特開平5−78229号公報。 この特許文献2は毛髪脱色剤に関する。具体的には、酸化剤を用いずに、アスコルビン酸又はその誘導体による還元作用を利用して毛髪の脱染を行う毛髪脱色剤を開示している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、金属染毛剤で染毛した毛髪を上記のように次回の酸化染毛処理に供すると、酸化染毛剤が設計通りの染毛度と色調に発色しないという染毛阻害の問題があった。具体的には、例えば濃茶色となるはずの染毛色調が、ほとんど茶色味を感じられず、緑色味を帯びてしまうといった現象が認められる。その理由は以下のように考えられる。
【0007】
即ち、金属染毛剤は毛髪への残留性が高く、長期にわたって毛髪に金属成分が残留する。一方、酸化染毛剤は、周知のようにパラフェニレンジアミン等の染料主剤とレゾルシン等のカプラーを、毛髪内で過酸化水素等の酸化剤の存在下に酸化・重合させて発色するように設計されている。そして毛髪に金属成分が残留した状態で酸化染毛剤を適用した場合、金属成分が酸化剤の分解を促進してしまう。その結果、(1)毛髪内での染料の酸化・重合にムラが生じて期待通りの発色重合をせず、(2)酸化剤の毛髪内への浸透も不足するため酸化染毛剤のブリーチ性能も不十分となって、染毛色調に大きく影響し、(3)毛髪に残留した金属成分自体が、光の干渉によって外観上のいわゆる構造色を呈する、等の点から設計した色調通りに発色しないと考えられる。
【0008】
このような染毛阻害の問題自体は、本願発明者の新規な知見ではなく以前から認識されていた。しかしながら、本願発明者は、過去において技術的課題としてこの問題の解決に取り組んだ事例を知らない。
【0009】
更に、理由は明確ではないが、金属染毛剤で染毛した毛髪をそのまま次回の酸化染毛処理に供すると、酸化染毛処理後の毛髪の強度や感触も損なわれる傾向があった。
【0010】
しかし、前記の特許文献1では、「毛髪表面の金属イオンを除去する」とはいえ、この場合の金属イオンは元々毛髪表面に存在する微量の重金属イオンであって、金属染毛剤の使用後に毛髪に残留する金属成分に比較してはるかに微量であるし、しかもキレート剤は金属イオンを捕捉するが、金属染毛剤の使用後に残留する非イオン態の金属成分(金属微粒子)を捕捉できない。従って、後述する実施例欄における比較例としての評価からも分かるように、特許文献1の発明では上記の染毛阻害の問題を解決できない。
【0011】
又、前記の特許文献2に関して、上記した問題との関連で述べれば、脱染剤とは毛髪内部で形成された染料重合体を分解するものであるから、酸化染毛処理における設計された染毛色調の確保とは直接の接点を持たない。従って、後述する実施例欄における比較例としての評価からも分かるように、アスコルビン酸の還元作用によっては上記の染毛阻害の問題を解決できない。
【0012】
更に、先行技術文献としては提示しないが、銀を用いた金属染毛料が市販されており、その販売に際して、「当該金属染毛料の使用後に酸化染毛剤を用いると、毛髪が緑色になってしまうことがあり、その場合には硫黄入りの入浴剤での毛髪処理を推奨する」旨の注意がなされている。
【0013】
しかしこの場合は、毛髪が緑色になるという染毛阻害に対する予防ではなく後処理の提案であり、後述する実施例欄における比較例としての評価からも分かるように、このような硫黄含有剤を染毛阻害の予防に用いても効果を期待できない。更に、硫黄含有剤は臭うために実用的ではなく、毛髪がかなり損傷することも予想される。
【0014】
そこで本発明は、毛髪に残留する金属に起因して酸化染毛処理における染毛度と色調が設計通りに発色しないという染毛阻害の問題を解消し、更には酸化染毛処理後の毛髪の強度や感触も良好に維持できる手段を提供することを、解決すべき技術的課題とする。
【0015】
本願発明者は、このような技術的課題の解決手段を追求する過程で、上記のような酸化染毛処理に対する前処理としてシスチンと一定のアルカリ性物質とを含む組成物を毛髪に適用することの有効性を見出し、本発明を完成した。
【課題を解決するための手段】
【0016】
(第1発明)
上記課題を解決するための本願第1発明の構成は、金属が残留する毛髪に対して酸化染毛処理を行う際の前処理用の組成物であって、下記(A)成分及び(B)成分を含有する、染毛前処理剤組成物である。
【0017】
(A)成分:シスチン。
【0018】
(B)成分:アンモニア水及び第1級〜第3級アミンから選ばれる1種以上。
【0019】
(第2発明)
上記課題を解決するための本願第2発明の構成は、前記第1発明において(A)成分と(B)成分との質量比〔(B)成分がアンモニア水である場合には28%アンモニア水の質量として計算する〕が(A)/(B)=0.2〜0.5の範囲内である、染毛前処理剤組成物である。
【0020】
(第3発明)
上記課題を解決するための本願第3発明の構成は、前記第1発明又は第2発明において第1級〜第3級アミンが下記(1)〜(4)のいずれかに該当する、染毛前処理剤組成物である。
【0021】
(1)一般式NR(一般式中、R〜Rはそれぞれ、水素原子又は炭素数が1〜6の直鎖状又は分岐状で飽和又は不飽和の炭化水素基を表し、炭化水素基中の任意の水素原子が水酸基に置換されていても良く、かつ、R〜Rの全てが水素原子であることはない)で表されるものである。
【0022】
(2)分子量が200以下のものである。
【0023】
(3)25℃において液状のものである。
【0024】
(4)モノエタノールアミン、モノイソプロパノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノールのいずれか。
【0025】
(第4発明)
上記課題を解決するための本願第4発明の構成は、金属が残留する毛髪に対して酸化染毛処理を行うに当たり、第1発明〜第3発明のいずれかに記載した染毛前処理剤組成物を用いて前処理を行う、染毛前処理方法である。
【0026】
(第5発明)
上記課題を解決するための本願第5発明の構成は、前記第4発明において毛髪に残留する金属が銀である、染毛前処理方法である。
【発明の効果】
【0027】
毛髪に残留する金属に起因して、「発明が解決しようとする課題」の欄で述べたように、その後に酸化染毛処理を行う際に、酸化染毛剤が設計通りに発色しないという染毛阻害の問題がある。その原因としては、金属成分が酸化染毛剤中の酸化剤を分解させることによる(1)毛髪内での染料の酸化・重合の不足、(2)酸化剤の毛髪内への浸透の不足、更には、(3)毛髪に残留した金属成分の光干渉に基く構造色の発現、等が考えられる。
【0028】
本発明に係る染毛前処理剤組成物及び染毛前処理方法によれば、上記の染毛阻害の問題を解消することができる。このような効果が得られる理由は明確には解明していないが、(B)成分によって毛髪が膨潤したもとで、(A)成分であるシスチンが毛髪に残留した金属(金属微粒子)に何らかの作用を及ぼし、その結果として、酸化染毛剤中の酸化剤の分解が抑制され、かつ金属の光干渉に基く構造色の発現も抑制されるためである、と推定される。
【0029】
本発明の染毛前処理剤組成物及び染毛前処理方法は、金属が残留する毛髪に対して好ましく適用されるものであって、その典型的な例が金属染毛剤による染毛処理を受けた毛髪であるが、それ以外の種々の原因で金属(金属微粒子)が残留する毛髪にも好ましく適用される。
【0030】
(B)成分としては、アンモニア水、第1級〜第3級アミンから選ばれる1種以上を好ましく使用することができ、第1級〜第3級アミンについては特に第3発明の(1)〜(4)のいずれかに規定するものが好ましい。
【0031】
染毛前処理剤組成物における(A)成分と(B)成分との含有量の質量比は必ずしも限定されないが、(A)/(B)=0.2〜0.5の範囲内であることが好ましい。(A)/(B)値が0.2未満であると、髪質によっては本発明の効果が不足しがちであり、この値が0.5を超えると、製剤によっては(A)成分が安定に配合できなくなるおそれがある。
【0032】
本発明の染毛前処理方法は、銀を用いた金属染毛剤の使用等に起因して毛髪上に銀が残留している場合に、特に好ましく適用される。
【0033】
なお、本発明の染毛前処理剤組成物及び染毛前処理方法によれば、酸化染毛処理における仕上がり後の毛髪の強度、感触も良好に維持される。
【発明を実施するための形態】
【0034】
次に、本発明を実施するための形態を、その最良の形態を含めて説明する。
【0035】
〔染毛前処理剤組成物〕
本発明の染毛前処理剤組成物は、金属が残留する毛髪に対して酸化染毛処理を行う際の、前処理用の組成物である。
【0036】
ここに、「金属が残留する毛髪」とは、金属染毛剤による染毛処理を受けた毛髪が典型的に例示されるが、それ以外の種々の原因により金属(金属微粒子)が残留する毛髪も含まれる。又、残留する金属の種類は必ずしも限定されないが、例えば銀を用いた金属染毛剤で染毛した毛髪のように残留金属が銀である場合に、本発明の染毛前処理剤組成物が特に好ましく適用される。又、「酸化染毛処理」とは、酸化染毛剤による染毛処理のように、酸化剤による酸化過程を利用して染毛を行う処理をいう。
【0037】
染毛前処理剤組成物のpHは任意に設定でき、例えばpH9〜13程度とすることができる。pHの調整方法は特に制限されず、一般に使用される酸やアルカリで調整すればよい。染毛前処理剤組成物に緩衝能を持たせる事も可能である。
【0038】
染毛前処理剤組成物は、液体状、乳液状、クリーム状、ゲル状、ペースト状、霧状またはエアゾールフォーム等の種々の剤型とすることができる。
【0039】
本発明の染毛前処理剤組成物は、少なくとも以下に述べる必須成分を含有する他、染毛阻害の防止という本発明の効果を妨げない限りにおいて、その他の各種成分を任意に含有することができる。
【0040】
〔染毛前処理剤組成物の必須成分〕
本発明の染毛前処理剤組成物は、必須成分として下記(A)成分及び(B)成分を含有する。
【0041】
(A)成分はシスチンである。因みに、シスチンは含硫アミノ酸であるシステインの2分子がジスルフィド結合したものであるが、後述の実施例でも示すように、シスチンに代えてシステインを配合しても本発明の効果は得られない。
【0042】
(B)成分は、アンモニア水及び第1級〜第3級アミンから選ばれる1種以上である。第1級〜第3級アミンの種類は限定されないが、好ましくは下記(1)〜(3)のいずれかに該当するものである。
【0043】
(1)一般式NR(一般式中、R〜Rはそれぞれ、水素原子又は炭素数が1〜6の直鎖状又は分岐状で飽和又は不飽和の炭化水素基を表し、炭化水素基中の任意の水素原子が水酸基に置換されていても良く、かつ、R〜Rの全てが水素原子であることはない)で表されるものである。
【0044】
(2)分子量が200以下のものである。
【0045】
(3)25℃において液状のものである。
【0046】
(4)モノエタノールアミン、モノイソプロパノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノールのいずれか。
【0047】
染毛前処理剤組成物における(A)成分の含有量は別段に限定されないが、組成物中の0.1〜5質量%の範囲内、特に0.5〜2質量%の範囲内であることが好ましい。(A)成分の含有量が0.1質量%未満であると、有効成分の不足により染毛阻害に対する十分な防止効果を確保できない恐れがあり、逆に5質量%を超えても効果が飽和して無駄である。
【0048】
染毛前処理剤組成物における(B)成分の含有量も別段に限定されないが、組成物中の0.2〜10質量%の範囲内、特に1〜4質量%の範囲内であることが好ましい。(B)成分の含有量が0.2質量%未満であると毛髪の膨潤度の不足により染毛阻害に対する十分な防止効果を確保できない恐れがあり、逆に10質量%を超えると毛髪の損傷等が起こりがちである。
【0049】
染毛前処理剤組成物における(A)成分と(B)成分との質量比も必ずしも限定されるものではないが、「発明の効果」欄で述べた理由から、(A)/(B)=0.2〜0.5の範囲内であることが好ましい。(B)成分がアンモニア水である場合には、28%アンモニア水の質量として(A)/(B)の質量比を計算する。
【0050】
〔染毛前処理剤組成物におけるその他の成分〕
本発明の染毛前処理剤組成物には、本発明の効果を妨げない限りにおいて公知の各種成分を、適宜な配合量で任意に配合することができる。例えば油性成分、界面活性剤、高分子物質、ポリペプタイド、タンパク加水分解物、金属封鎖剤、酸化防止剤、香料、殺菌・防腐剤、抗炎症剤、紫外線吸収剤、噴射剤、増粘剤、着色料等を任意に配合することができる。又、染毛前処理剤組成物の各成分の溶媒又は分散媒として水が配合され、各成分の濃度(質量パーセンテージ)が調整される。これらの配合成分の幾つかについて、以下に詳しく述べる。
【0051】
(油性成分)
油性成分としては、炭化水素、多価アルコール、ワックス類、油脂、高級アルコール、高級脂肪酸、アルキルグリセリルエーテル、エステル類、シリコーン類等が挙げられる。これらは、その1種類を単独に配合し、又は2種類以上を併せ配合することができる。
【0052】
炭化水素としては、パラフィン、ポリエチレン末、マイクロクリスタリンワックス、ワセリン等が挙げられる。又、常温で液状の炭化水素類として、α−オレフィンオリゴマー、軽質イソパラフィン、軽質流動イソパラフィン、合成スクワラン、植物性スクワラン、スクワラン、ポリブテン、流動イソパラフィン、流動パラフィン等が挙げられる。
【0053】
多価アルコールとしては、グリコール類、グリセリン類等が挙げられる。グリコール類としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、イソプレングリコール、1,3−ブチレングリコール等、グリセリン類としては、グリセリン、ジグリセリン、ポリグリセリン等が挙げられる。
【0054】
ワックス類としては、例えばミツロウ(蜜蝋)、キャンデリラロウ、カルナウバロウ、ホホバ油、ラノリン、鯨ロウ、コメヌカロウ、サトウキビロウ、パームロウ、モンタンロウ、綿ロウ、ベイベリーロウ、イボタロウ、カポックロウ、セラックロウ等を例示することができる。
【0055】
油脂としてはマカデミアナッツ油等の植物油や動物油等が挙げられる。
【0056】
高級アルコールとしては、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、セチルアルコール(セタノール)、ステアリルアルコール、セトステアリルアルコール、アラキルアルコール、ベヘニルアルコール、2−ヘキシルデカノール、イソステアリルアルコール、2−オクチルドデカノール、デシルテトラデカノール、オレイルアルコール、リノレイルアルコール、リノレニルアルコール、ラノリンアルコール等が挙げられる。
【0057】
高級脂肪酸としては、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘニン酸、イソステアリン酸、ヒドロキシステアリン酸、12−ヒドロキシステアリン酸、オレイン酸、ウンデシレン酸、リノール酸、リシノール酸、ラノリン脂肪酸等が挙げられる。
【0058】
アルキルグリセリルエーテルとしては、バチルアルコール(モノステアリルグリセリルエーテル)、キミルアルコール(モノセチルグリセリルエーテル)、セラキルアルコール(モノオレイルグリセリルエーテル)、イソステアリルグリセリルエーテル等が挙げられる。
【0059】
エステル類としては、大豆油、オリーブ油、硬化ヒマシ油等のグリセリン系の各種の植物油やペンタエリスリトール系の脂肪酸エステル等の多価アルコール脂肪酸エステル、アジピン酸ジイソプロピル、アジピン酸ジイソブチル、アジピン酸ジオクチル、アジピン酸−2−ヘキシルデシル、アジピン酸ジイソステアリル、ミリスチン酸イソプロピル、オクタン酸セチル、イソオクタン酸セチル、イソノナン酸イソノニル、イソノナン酸イソデシル、イソノナン酸イソトリデシル、セバシン酸ジイソプロピル、ミリスチン酸オクチルドデシル、パルミチン酸イソプロピル、ステアリン酸ブチル、ステアリン酸ステアリル、ラウリン酸ヘキシル、ミリスチン酸ミリスチル、オレイン酸デシル、ジメチルオクタン酸ヘキシルデシル、ミリスチン酸トリイソデシル、ミリスチン酸イソステアリル、パルミチン酸2−エチルへキシル、リシノール酸オクチルドデシル、脂肪酸(C10−30)(コレステリル/ラノステリル)、乳酸ラウリル、乳酸セチル、乳酸ミリスチル、乳酸オクチルドデシル、酢酸ラノリン、ステアリン酸イソセチル、イソステアリン酸イソセチル、12−ヒドロキシステアリン酸コレステリル、ジ−2−エチルヘキサン酸エチレングリコール、ジペンタエリスリトール脂肪酸エステル、モノイソステアリン酸N−アルキルグリコール、カプリン酸セチル、トリカプリル酸グリセリル、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール、リンゴ酸ジイソステアリル、ラノリン誘導体等が挙げられる。
【0060】
シリコーン類としては、メチルポリシロキサン、ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン、平均重合度が650〜10000の高重合シリコーン、アミノ変性シリコーン、ポリエーテル変性シリコーン、ベタイン変性シリコーン、アルキル変性シリコーン、アルコキシ変性シリコーン、メルカプト変性シリコーン、カルボキシ変性シリコーン、トリメチルシロキシケイ酸、メチルハイドロジェンポリシロキサン等が挙げられる。アミノ変性シリコーンとしては、アミノプロピルメチルシロキサン・ジメチルシロキサン共重合体(アミノプロピルジメチコン)、アミノエチルアミノプロピルシロキサン・ジメチルシロキサン共重合体(アモジメチコン)、アミノエチルアミノプロピルメチルシロキサン・ジメチルシロキサン共重合体(トリメチルシリルアモジメチコン)等が挙げられる。
【0061】
(界面活性剤)
界面活性剤としては、上記した硬化ひまし油脂肪酸エステル誘導体類以外の、カチオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤及び両性界面活性剤が挙げられる。これらは、その1種類を単独に配合し、又は2種類以上を併せ配合することができる。
【0062】
カチオン性界面活性剤としては、塩化ラウリルトリメチルアンモニウム、塩化セチルトリメチルアンモニウム、塩化ステアリルトリメチルアンモニウム、塩化ジステアリルジメチルアンモニウム、メチル硫酸ベヘニルトリメチルアンモニウム、塩化トリ(ポリオキシエチレン)ステアリルアンモニウム、クオタニウム−91(INCI名称)、塩化ベヘニルトリメチルアンモニウム、塩化ジステアリルジメチルアンモニウム、エチル硫酸ラノリン脂肪酸アミドプロピルエチルジメチルアンモニウム、臭化セチルトリメチルアンモニウム、臭化ステアリルトリメチルアンモニウム、ステアリルトリメチルアンモニウムサッカリン、セチルトリメチルアンモニウムサッカリン、N,N−ジ(アシロキシ),N−(ヒドロキシエチル),N−メチルアンモニウムメトサルフェート等が挙げられる。
【0063】
非イオン性界面活性剤としては、ポリオキシエチレン(以下、POEという)セチルエーテル等の各種のPOEアルキルエーテル類、POEアルキルフェニルエーテル類、POE・ポリオキシプロピレンアルキルエーテル類、POEソルビタン脂肪酸エステル類、POEプロピレングリコール脂肪酸エステル、ヤシ油脂肪酸ジエタノールアミド等の脂肪族アルカノールアミド類等が挙げられる。
【0064】
アニオン性界面活性剤としては、ラウリル硫酸ナトリウム等のアルキル硫酸塩、ラウレス硫酸ナトリウム等のPOEアルキル硫酸塩、ラウリル硫酸トリエタノールアミン等のアルキル硫酸エステル塩、ステアロイルメチルタウリンナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸トリエタノールアミン、テトラデセンスルホン酸ナトリウム、POEラウリルエーテルリン酸及びその塩、N−ラウロイルグルタミン酸塩類、N−ラウロイルメチル−β−アラニン塩類等が挙げられる。
【0065】
両性界面活性剤としては、2−ウンデシル−N−カルボキシメチル−N−ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタインナトリウム、コカミドプロピルベタイン、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン等が挙げられる。
【0066】
(高分子物質)
高分子物質としては、カチオン化セルロース等のカチオン性ポリマー、カルボキシビニルポリマー等のアニオン性ポリマー、ジアリル4級アンモニウム塩/アクリル酸共重合体等の両性ポリマー、あるいは各種の水溶性ポリマーが例示される。これらは、その1種類を単独に配合し、又は2種類以上を併せ配合することができる。
【0067】
水溶性ポリマーの具体例としては、アラビアガム、キサンタンガム、カラギーナン、ペクチン、寒天、デンプン等の植物性ポリマー、デキストラン、プルラン等の微生物系ポリマー、コラーゲン、カゼイン、ゼラチン等の動物性ポリマー、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース等のセルロース系ポリマーが例示され、その他にも、アルギン酸ナトリウム、ポリオキシエチレン系ポリマー、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリアクリルアミドポリ塩化ジメチルメチレンピペリジニウム等が挙げられる。
【0068】
(ポリペプタイド、タンパク加水分解物)
ポリペプタイドとしては、コラーゲン、ケラチン、エラスチン、フィブロイン、エッグ、シルク、コンキオリン、カゼイン、ゼラチン等の蛋白質、コメ、コムギ、オオムギ、カラスムギ、ダイズ、エンドウ、アーモンド、ブラジルナッツ、ジャガイモ及びトウモロコシなどの植物から得られるタンパク質が挙げられる。タンパク加水分解物としては、上記の各種のタンパク質を酸、アルカリ、酵素等により加水分解したタンパク加水分解物が挙げられる。
【0069】
〔染毛前処理方法〕
本発明の染毛前処理方法は、金属が残留する毛髪に対して酸化染毛処理を行うに先立って、上記いずれかの染毛前処理剤組成物を用いて前処理を行う方法である。染毛前処理剤組成物の適用方法としては、前処理剤として頭髪に均一に塗布した後にしばらく放置し、そのまま自然乾燥させたり、水で洗い流してから乾燥させる方法等を採用することができる。
【0070】
「金属が残留する毛髪」の意味や、毛髪に残留する金属の種類、「酸化染毛処理」の意味等については、染毛前処理剤組成物に関連して前記した通りである。
【実施例】
【0071】
以下に本発明の実施例を比較例と共に説明する。本発明の技術的範囲は以下の実施例及び比較例によって限定されない。
【0072】
〔金属染毛料処理〕
処理用の毛束サンプルとして(株)ビューラックス製の人毛100%の白髪からなる長さ15cmの毛束を必要数準備し、これらの毛束サンプルに対して末尾の表1に示す組成の金属染毛剤を毛束1グラムあたり0.2グラム塗布し、その状態で人工太陽灯の6時間の照射を合計7回繰り返した。以上の処理により各毛束サンプルは赤黒く発色した。
【0073】
なお、表1及び後述の他の表において、成分の配合量を示す欄に表記した数値は、いずれも「質量%」を表す。
【0074】
〔第1群の毛束サンプルに対する処理〕
上記の金属染毛剤処理を終えた毛束サンプル群の一部を「第1群の毛束サンプル」とし、これらの第1群の毛束サンプルに対して、末尾の表2〜表4に示す実施例1〜実施例13及び比較例1〜比較例7に係る組成の染毛前処理剤を、それぞれ毛束1グラムあたり0.2グラム塗布し、そのまま自然乾燥させるという前処理を行った。
【0075】
表2〜表4において「成分」欄に「A」と表記したものは本発明の(A)成分であることを、「B」と表記したものは本発明の(B)成分であることを、「a」と表記したものは本発明の(A)成分に対する比較用の成分であることを、「b」と表記したものは本発明の(B)成分に対する比較用の成分であることを、それぞれ示す。
【0076】
次いで、上記前処理を行った各実施例、各比較例に係る第1群の毛束サンプルに対して、ホーユー(株)製の市販の酸化染毛剤である「ビゲンクリームトーン4G」を用いた酸化染毛処理を常法に従って行った。
【0077】
〔第2群の毛束サンプルに対する処理〕
前記の金属染毛料処理を終えた毛束サンプル群の他の一部を「第2群の毛束サンプル」とし、これらの第2群の毛束サンプルに対しては、第1群の毛束サンプルの場合とは異なり、(1)末尾の表5に第1剤、第2剤として組成を示す2剤式のブリーチ剤による処理を常法に従って行い(表4に、比較例8として示す)、あるいは、(2)末尾の表6に第1剤、第2剤として組成を示す2剤式の脱染剤による処理を常法に従って行った(表4に比較例9として示す)。なお、上記した2剤式のブリーチ剤は、使用直前に質量比で1剤:2剤=1:3となるように混合調製するものであり、上記した2剤式の脱染剤は、使用直前に質量比で1剤:2剤=10:1となるように混合調製するものである。
【0078】
次いで第1群の毛束サンプルの場合と同様に、酸化染毛剤「ビゲンクリームトーン4G」を用いた酸化染毛処理を常法に従って行った。
【0079】
〔比較用の毛束サンプル〕
前記の金属染毛料処理を終えた毛束サンプル群の更に他の一部を「比較用の毛束サンプル」とし、これらについては、第1群の毛束サンプルや第2群の毛束サンプルの場合のような前処理を行わず、そのまま酸化染毛剤「ビゲンクリームトーン4G」を用いた酸化染毛処理を常法に従って行った。
【0080】
〔評価〕
以上の処理を終えた各実施例及び各比較例に係る第1群、第2群の毛束サンプルについて、以下に示す「染毛阻害防止効果」、「仕上がり後の毛髪の強度」、「仕上がり後の毛髪の感触」をそれぞれ評価し、それらの評価結果を該当する実施例、比較例の欄に示した。
【0081】
(染毛阻害防止効果)
各実施例及び各比較例に係る毛束サンプルの染毛度と色調を、比較用の毛束サンプルとの比較において、「染毛度が良好で色調も設計通りである」場合を2点、「染毛度がやや良好で色調が設計とやや異なる」場合を1点、「染毛度、色調ともに比較用の毛束サンプルと同等である」場合を0点とした。
【0082】
そして、上記の採点基準により10名の専門のパネラーが採点し、全パネラーの合計点が15点以上なら「○」、7〜14点なら「△」、6点以下なら「×」として、評価結果を表2〜表4に示した。
【0083】
(仕上がり後の毛髪の強度)
東洋ボールドウイン社製の引張試験機「テンシロンUTM−II」を用いて、水中において各実施例及び各比較例に係る毛束サンプルの破断応力値を測定した。その測定値が比較用の毛束サンプルでの測定値との対比において高く、強度向上を示した場合を「○」、同等である場合を「△」、強度低下を示した場合を「×」として、評価結果を表2〜表4に示した。
【0084】
(仕上がり後の毛髪の感触)
各実施例及び各比較例に係る毛束サンプルについて、10名の専門のパネラーが手触りで感触を評価した。比較用の毛束サンプルとの比較において、「感触が良好である」場合を2点、「感触が余り変わらない」場合を1点、「感触が劣る」場合を0点とした。10名の専門のパネラーの合計点が15点以上なら「○」、7〜14点なら「△」、6点以下なら「×」として、評価結果を表2〜表4に示した。
【0085】
【表1】

【0086】
【表2】

【0087】
【表3】

【0088】
【表4】

【0089】
【表5】

【0090】
【表6】

【産業上の利用可能性】
【0091】
本発明によって、金属が残留する毛髪に対して染毛処理を行うにあたり、残留金属に起因する染毛上の不具合を予防できる染毛前処理剤組成物及び染毛前処理方法が提供される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属が残留する毛髪に対して酸化染毛処理を行う際の前処理用の組成物であって、下記(A)成分及び(B)成分を含有することを特徴とする染毛前処理剤組成物。
(A)成分:シスチン。
(B)成分:アンモニア水及び第1級〜第3級アミンから選ばれる1種以上。
【請求項2】
前記(A)成分と(B)成分との質量比〔(B)成分がアンモニア水である場合には28%アンモニア水の質量として計算する〕が(A)/(B)=0.2〜0.5の範囲内であることを特徴とする請求項1に記載の染毛前処理剤組成物。
【請求項3】
前記第1級〜第3級アミンが下記(1)〜(4)のいずれかに該当することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の染毛前処理剤組成物。
(1)一般式NR(一般式中、R〜Rはそれぞれ、水素原子又は炭素数が1〜6の直鎖状又は分岐状で飽和又は不飽和の炭化水素基を表し、炭化水素基中の任意の水素原子が水酸基に置換されていても良く、かつ、R〜Rの全てが水素原子であることはない)で表されるものである。
(2)分子量が200以下のものである。
(3)25℃において液状のものである。
(4)モノエタノールアミン、モノイソプロパノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノールのいずれか。
【請求項4】
金属が残留する毛髪に対して酸化染毛処理を行うに当たり、請求項1〜請求項3のいずれかに記載した染毛前処理剤組成物を用いて前処理を行うことを特徴とする染毛前処理方法。
【請求項5】
前記毛髪に残留する金属が銀であることを特徴とする請求項4に記載の染毛前処理方法。

【公開番号】特開2010−248152(P2010−248152A)
【公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−101098(P2009−101098)
【出願日】平成21年4月17日(2009.4.17)
【出願人】(000113274)ホーユー株式会社 (278)
【Fターム(参考)】