説明

染毛剤用金属チューブ

【課題】染毛1剤を充填するのに適した内面塗料を塗装した、染毛剤用金属チューブ。
【解決手段】
金属チューブ1において、最内層の内面塗料が、ポリフッ化ビニリデン樹脂を主成分とした熱乾燥型樹脂4の塗料で構成されることを特徴とする染毛剤用金属チューブである。染毛剤用の金属チューブ1のアルミニウム3の表面から、内面塗料が剥離するのを防止できるので、アルミニウム3が腐食するのを防止することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属チューブに関し、さらに詳しくは染毛1剤を充填するのに適した内面塗料を塗装した、染毛剤用金属チューブに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、染毛剤は、一般的に第1剤と第2剤とが、各々別のチューブ容器に充填され、対になってセットで販売されている。図6(a)及び図7に示すように、第1剤56は塩基性酸化染料が主剤であり、気体及び液体を通さない密閉されたアルミニウム等の金属チューブ50内に充填され、図6(b)及び図8に示すように、第2剤57は第1剤56の染料を酸化重合させる目的をもった、過酸化水素を主成分とする内容物が主剤である。そして、金属チューブ50の材料である、アルミニウム51の内側には、第1剤56による腐食を防止するため、汎用のエポキシフェノールの内面塗料52が塗装されている。又、金属チューブ53の材料である、アルミニウム54等の内側には、 第2剤による腐食を防止するため、気体を通すが液体を通さない性質を有する、ガス透過性に優れたポリエチレン樹脂等の合成樹脂製の内筒55が内装されている(特許文献1の「従来の技術」を参照)。
【特許文献1】特開2001−31121号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、図6(a)及び図7に示すように、従来の染毛1剤を充填する金属チューブ50にあっては、容器本体のアルミニウム51等の内側に、アルミニウム51等の腐食を防止するため、汎用のエポキシフェノールの内面塗料52が塗装されている。汎用のエポキシフェノール樹脂の内面塗料の場合、含有するエポキシ樹脂の分子量が、5000〜10000と低分子量又は中分子量であるため、染毛1剤に含有する、重炭酸アンモニウムによって、アルミニウム51等と、内面塗料52が剥離するという問題があった。そして、染め上がり具合を良くするため、近年、この重炭酸アンモニウムの含有量を増加させる傾向にあるが、重炭酸アンモニウムの含有量を増加させた染毛1剤を、金属チューブ50内に長期間保存すると、アルミニウム51と、内面塗料52がより一層剥離しやすくなるという結果を招き、剥離した隙間に第1剤が入り込み、アルミニウム51が腐食するという欠点がある。
この発明は、このような従来の課題に着目してなされたものであり、金属チューブの材料であるアルミニウムの表面から、内面塗料が剥離しない染毛剤用金属チューブ容器を提供すること、又は内面塗料がエポキシフェノール樹脂である場合、このエポキシフェノール樹脂の内面塗料が剥離するのを防止すると共に、第1剤の浸透により、アルミニウムが腐食するのを防止した、染毛剤用金属チューブを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
この課題を解決するため、請求項1記載の発明の解決手段は、金属チューブにおいて、最内層の内面塗料が、ポリフッ化ビニリデン樹脂を主成分とした熱乾燥型樹脂の塗料で構成されることを特徴とする染毛剤用金属チューブである。染毛剤用チューブ容器のアルミニウムの表面から、内面塗料が剥離するのを防止できるので、アルミニウムが腐食するのを防止することができる。
【0005】
請求項2記載の発明の解決手段は、熱乾燥型樹脂の塗料が、少なくとも、ポリフッ化ビニリデン樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂及び密着補助剤で構成されることを特徴とする染毛剤用金属チューブである。
【0006】
請求項3記載の発明の解決手段は、熱乾燥型樹脂の塗料が、少なくとも2回以上塗装されることを特徴とする染毛剤用金属チューブである。2回以上の塗装により、より一層確実に染毛剤用チューブ容器の材料である、アルミニウムの表面から、内面塗料が剥離するのを防止できるので、アルミニウムが腐食するのを防止することができる。
【0007】
請求項4記載の発明の解決手段は、熱乾燥型樹脂の塗料は、ポリフッ化ビニリデン樹脂が60〜90%に対し、アクリル樹脂が10〜40%であることを特徴とする染毛剤用金属チューブ。
【0008】
請求項5記載の発明の解決手段は、金属チューブにおいて、最内層の内面塗料が、高分子量のエポキシ樹脂を含有するエポキシフェノール樹脂の塗料であることを特徴とする染毛剤用金属チューブである。高分子の分子量のエポキシ樹脂を含有するエポキシフェノール樹脂の内面塗料を使用することにより、金属チューブのアルミニウムの表面において、乾燥・硬化による塗膜の内部応力を低下(塗膜を軟らかくでき)でき、内面塗料の剥離及びアルミニウムの腐食を防止できる。
【0009】
請求項6記載の発明の解決手段は、エポキシフェノール樹脂のエポキシ樹脂の分子量が、50000〜60000であることを特徴とする染毛剤用金属チューブである。
【0010】
請求項7記載の発明の解決手段は、高分子量のエポキシ樹脂を用いたエポキシフェノール樹脂の塗料の焼付温度が、170〜220℃であることを特徴とする染毛剤用金属チューブである

【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、ポリフッ化ビニリデン樹脂を主成分とした熱乾燥型樹脂の塗料を塗装したから、染毛1剤を充填しても、アルミニウムの表面から、内面塗料が剥離しない効果を有する。又は内面塗料がエポキシフェノール樹脂の場合、エポキシ樹脂を高分子量とすることで、第1剤中の重炭酸アンモニウムの含有量が増加しても、エポキシフェノール樹脂がアルミニウム等の金属から剥離するのを防止できる効果を有し、結果的に第1剤の浸透により、アルミニウム等の表面が腐食するのを防止できる効果を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明の実施例を、図面に基づいて説明する。
【実施例1】
【0013】
図1は、本発明の実施例1を示す図面である。図1において、1は金属チューブである。この金属チューブ1内には、塩基酸化染料を主剤とする第1剤2が充填されている。図1に示す実施例1において、金属チューブ1のA部拡大断面を図2に示す。すなわち、図2に示すように、内側からアルミニウム3、次にポリフッ化ビニリデン樹脂を主成分とした熱乾燥型樹脂4で構成されている。このポリフッ化ビニリデン樹脂を主成分とした熱乾燥型樹脂4は、実施例として、ポリフッ化ビニリデン樹脂の他、アクリル樹脂、エポキシ樹脂及び密着補助剤から構成されるのが好ましい。
【0014】
ポリフッ化ビニリデン樹脂とアクリル樹脂の比率は、60〜90%:40〜10%が適し、より好ましくは、70〜75%:30〜25%が適する。ポリフッ化ビニリデン樹脂が80%以上では、金属チューブ1のアルミニウム3と、ポリフッ化ビニリデン樹脂を主成分とした熱乾燥型樹脂4の密着性が低下し、均一な連続塗膜の形成が阻害される。逆に、ポリフッ化ビニリデン樹脂が60%以下では、ポリフッ化ビニリデン樹脂の、優れた耐薬品性や表面張力の特性の低下を招く。次にエポキシ樹脂の添加量は、1〜10%が適し、より好ましくは3〜6%が適する。エポキシ樹脂10%以上では、他の成分との相溶性が阻害される。1%以下ではアルミニウム3との密着性に欠ける。その他、密着補助剤としてシランカップリング剤が添加されるのが好ましい。
【0015】
図2の実施例1に示すように、このポリフッ化ビニリデン樹脂を主成分とした熱乾燥型樹脂4は、金属チューブ1の焼鈍後に、少なくとも2回以上塗装されるのが好ましい。すなわち、金属チューブ1の焼鈍後に、1回目のポリフッ化ビニリデン樹脂を主成分とした熱乾燥型樹脂4のスプレー塗装を施す。その後、140→250℃の乾燥炉内で10分間昇温乾燥し、余分な溶剤を飛散させ乾燥し、さらに2回目のスプレー塗装を施し、最後に、同様に140→250℃の乾燥炉内で10分間昇温乾燥して仕上げる。この実施例1の2回の塗装では、ポリフッ化ビニリデン樹脂を主成分とした熱乾燥型樹脂4の膜厚は、10〜25μmが適し、より好ましくは14〜20μmが適する。10μm以下では、目的とする耐食性が得られない。25μm以上では、スプレー塗装時及び乾燥時に塗料が流れたり、発泡する虞がある。
【0016】
図3は、ポリフッ化ビニリデン樹脂を主成分とした熱乾燥型樹脂4を1回塗装した場合の実施例を示す図面である。1回の塗装によっても、本発明の効果は得られる。しかし、2回以上の塗装に比し、膜厚は7〜10μmと薄く、塗布量が制限されるため、特に重炭酸アンモニウム10%含有の染毛1剤にあっては、塗膜に欠陥が生じると共に剥がれ易い虞がある。すなわち、図3に示すように、内側からアルミニウム13、次にポリフッ化ビニリデン樹脂を主成分とした熱乾燥型樹脂14で構成されている。
【実施例2】
【0017】
図4及び図5は、本発明の実施例2を示す図面である。図4において、21は金属チューブである。この金属チューブ21内には、塩基酸化染料を主剤とする第1剤22が充填されている。図4に示す実施例2において、金属チューブ21のB部拡大断面を図5に示す。すなわち、図5に示すように、内側からアルミニウム23、次に高分子量のエポキシ樹脂を含有するエポキシフェノール樹脂26の塗料で構成されている。一般的に分子量が5000以下は低分子量、分子量が5000〜10000は中分子量、分子量が10000より大きい高分子量に分類される。実施例2の特徴は、分子量が10000より大きい高分子量のエポキシ樹脂、好ましくは50000〜60000の高分子量のエポキシ樹脂を含有するエポキシフェノール樹脂26を内面塗料にする点に特徴がある。
【0018】
発明者等は、この高分子のエポキシ樹脂を含有するエポキシフェノール樹脂26の内面塗料を塗装した金属チューブ21に、重炭酸アンモニウムの含有量の多い塩基性酸化染料の1剤を充填しても、エポキシフェノール樹脂26の内面塗料の剥離が発生しないことを見い出したのである。塗装方法は、この高分子のエポキシ樹脂を含有するエポキシフェノール樹脂の内面塗料をスプレー塗装した後、乾燥炉で焼き付けて乾燥する温度、時間は、170〜220℃で8〜15分間が適し、より好ましくは180〜200℃で10〜12分間が適する。塗膜内部の内部応力を低下(内面塗料を軟らかくする)させるように、比較的温度を低めに設定するのが好ましい。
【0019】
(実施例1の保存試験結果)
本発明に係るポリフッ化ビニリデン樹脂を主成分とした熱乾燥型樹脂の内面塗料を、アルミチューブ内に塗装し、重炭酸アンモニウムを含有する染毛1剤成分モデルを充填し、アルミニウム表面の腐食性を観察した。
(試験条件)
・内容物;3%アンモニウム水に、重炭酸アンモニウムの含有量を変えた複数の染毛1剤成分モデル。
・保存試験期間;50℃で1ヶ月。
・試験試料の寸法;25.4φのアルミチューブ
・内面塗料;ポリフッ化ビニリデン樹脂にアクリル樹脂、エポキシ樹脂及び密着補助剤を混合した内面塗料(各々混合割合を変えた複数の内面塗料)、或いはこれらの内面塗料から、エポキシ樹脂又は密着補助剤を除いた内面塗料。
・内面塗料の塗装回数;1回又は2回。
・内面塗料の塗装方法;スプレー塗装。
・内面塗料の焼付条件;140→250℃の乾燥炉内で10分間昇温乾燥。
・内面塗料の膜厚;1回塗装は7〜10μm、2回塗装は14〜20μm
【0020】
【表1】

【0021】
【表2】

【0022】
【表3】

【0023】
【表4】

【0024】
(実施例2の試験結果)
本発明に係る分子量50000〜60000の高分子のエポキシ樹脂を含有するエポキシフェノール樹脂の内面塗料を、アルミニウムチューブ内に塗装し、重炭酸アンモニウムを含有する染毛1剤成分モデルを充填し、アルミニウム表面の腐食性を観察した。
(試験条件)
・内容物;3%アンモニア水及び10%重炭酸アンモニウムを含有した染毛1剤成分モデル。
・保存試験期間;50℃で1ヶ月。
・試験試料の寸法;25.4φのアルミニウムチューブ。
・内面塗料の塗装回数;1回又は2回。
・内面塗料の塗装方法;スプレー塗装。
・内面塗料の焼付条件;190℃の乾燥炉内で10分間。
・内面塗料の膜厚;1回塗装は4〜6μm、2回塗装は8〜12μm。
【0025】
【表5】

【0026】
(試験結果)
実施例1において、表1及び表2(内面塗料NO.1及び2)に示すように、ポリフッ化ビニリデン樹脂を主成分とした熱乾燥型樹脂の塗料において、ポリフッ化ビニリデン樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂及び密着補助剤で構成される内面塗料を、塗装した染毛剤用チューブは、重炭酸アンモニウム10%を含有する染毛1剤成分モデルを充填した場合、50℃で1ヶ月の保存試験においても、アルミの表面は概ね良好であった。しかし、表3及び表4(内面塗料N0.3及び4)に示すように、エポキシ樹脂又は密着補助剤を省いた内面塗料の場合は、いずれもアルミの表面に、小ブリスター又は小腐食、或いは大ブリスター又は進行した腐食が発生していた。又実施例2では、エポキシフェノール樹脂のエポキシ樹脂の分子量が、50000〜60000の場合の内面塗料を塗装した染毛剤チューブは、エポキシ樹脂の分子量が、10000以下の場合のエポキシフェノール樹脂の内面塗料と比較して、重炭酸アンモニウム10%を含有する染毛1剤成分モデルを充填した場合であっても、アルミの表面は概ね良好であった。当初の目的が、重炭酸アンモニウム10%を含有する染毛1剤成分モデルを充填した場合において、50℃で1ヶ月でも腐食が発生しないことを目標としていたが、この目標を概ね達成できた。
【産業上の利用可能性】
【0027】
本発明に係る発明は、染毛剤用の金属チューブのみならず、ボトル、エアゾール缶等にも広く適用することができる。又金属チューブは材料がアルミニウム以外に、スティール等の金属であってもよく、この発明に係る内面塗料を塗装し、染毛1剤を充填できることはいうまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明に係る染毛剤用金属チューブの実施例1を示す正面図。
【図2】本発明に係る染毛剤用金属チューブの実施例1である、図1のA部拡大断面図。
【図3】本発明に係る染毛剤用金属チューブの実施例1の他の実施例である、図1のA部拡大断面図。
【図4】本発明に係る染毛剤用金属チューブの実施例2を示す正面図。
【図5】本発明に係る染毛剤用金属チューブの実施例2である、図4のB部拡大断面図。
【図6】従来の染毛剤用金属チューブの第1剤用チューブ(a)及び第2剤用チューブ(b)。
【図7】従来の染毛剤用金属チューブの第1剤用チューブ図6(a)のX部拡大断面図。
【図8】従来の染毛剤用金属チューブの第2剤用チューブ図6(b)のY部拡大断面図。
【符号の説明】
【0029】
1 11 21 金属チューブ
2 12 22 第1剤
3 13 23 アルミニウム
4 14 熱乾燥型樹脂
26 エポキシフェノール樹脂

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属チューブにおいて、最内層の内面塗料が、ポリフッ化ビニリデン樹脂を主成分とした熱乾燥型樹脂の塗料で構成されることを特徴とする染毛剤用金属チューブ。
【請求項2】
前記熱乾燥型樹脂の塗料が、少なくとも、ポリフッ化ビニリデン樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂及び密着補助剤で構成されることを特徴とする請求項1記載の染毛剤用金属チューブ。
【請求項3】
前記熱乾燥型樹脂の塗料が、少なくとも2回以上塗装されることを特徴とする請求項1又は2記載の染毛剤用金属チューブ。
【請求項4】
前記熱乾燥型樹脂の塗料は、ポリフッ化ビニリデン樹脂が60〜90%に対し、アクリル樹脂が10〜40%であることを特徴とする請求項1〜3記載の染毛剤用金属チューブ。
【請求項5】
金属チューブにおいて、最内層の内面塗料が、高分子量のエポキシ樹脂を含有するエポキシフェノール樹脂の塗料であることを特徴とする染毛剤用金属チューブ。
【請求項6】
前記エポキシフェノール樹脂のエポキシ樹脂の分子量が、50000〜60000であることを特徴とする請求項5記載の染毛剤用金属チューブ。
【請求項7】
前記高分子量のエポキシ樹脂を用いたエポキシフェノール樹脂の塗料の焼付温度が、170〜210℃であることを特徴とする請求項5又は6記載の染毛剤用金属チューブ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−189364(P2008−189364A)
【公開日】平成20年8月21日(2008.8.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−26604(P2007−26604)
【出願日】平成19年2月6日(2007.2.6)
【出願人】(000238614)武内プレス工業株式会社 (72)
【Fターム(参考)】