説明

染着ポリアルキレンテレフタレート繊維からの染料除去方法

【課題】染着ポリエステル繊維製品から染料を含むポリエステル繊維から染料成分を効率的、且つ経済的に除去すること。
【解決手段】染着ポリアルキレンテレフタレートを含有する繊維から、抽出溶剤を用いて染料成分を抽出除去するに当たり、
装置内にかさ密度が0.2〜0.5g/cmとなるように繊維を充填した後、予め加温された溶剤を装置内に供給して溶剤を内部の繊維と接触させ染料の抽出を行った後、装置内の繊維に含有する溶剤成分重量を圧搾操作により低減させることを特徴とするポリエステル繊維からの染料除去方法により上記課題が解決される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリエステル繊維から高純度の有用成分を回収し、再使用可能するための前処理方法に関し、具体的には染料を含むポリエステル繊維から染料成分を効率的、且つ経済的に除去する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリエステル、例えばポリエチレンテレフタレートはその優れた特性により繊維、フィルム、樹脂等として広く用いられているが、これらの製造工程において発生する繊維状、フィルム状、樹脂状等のポリエステル屑の有効利用はコストの面からのみならず環境問題も含め大きな課題となっている。
【0003】
その処理方法としてマテリアルリサイクル、サーマルリサイクル、ケミカルリサイクルによる各種の提案が成されている。このうちマテリアルリサイクルではペットボトル等のポリエステル樹脂屑に関しては、自治体を中心に回収され積極的な再利用が実施されているが、繊維屑に関しては、このリサイクル方法を適用することが極めて困難であり、その実施例は皆無である。
【0004】
また、ポリエステル廃棄物を燃料に転化するサーマルリサイクルは、ポリエステル廃棄物の燃焼熱の再利用という利点を有するが、発熱量が比較的低く、多量のポリエステル廃棄物を燃焼させることに他ならないため、ポリエステル原料損失という問題点があり、省資源の面から好ましくない。
【0005】
これに対してケミカルリサイクルではポリエステル廃棄物を原料モノマーに再生するため、再生するため、再生に伴う品質の低下が少なく、クローズドループのリサイクルとして優れている。
【0006】
ケミカルリサイクルにおいては樹脂屑、フィルム屑を対象としたものが大部分である。ポリエステル繊維屑の再生利用法としては、例えば、ポリエステル屑を過剰のエチレングリコール(以下、EGと略記することがある)により解重合した後、得られたビス−β−ヒドロキシエチルテレフタレートを直接重縮合して再生ポリエステルを得る方法等が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。しかし、この方法は解重合工程においてポリエステル屑とEGを解重合反応系に一括投入して解重合しているため、投入したポリエステル屑が反応機内部で塊となり、攪拌ができなくなる場合がある。そのため、解重合系が不均一となり解重合時間が長くなること、また使用するEGの量が多いため経済的に不利になるばかりでなく、ジエチレングリコール等の不純物が副生し、その結果得られるポリエステルの物理的性質、特に軟化点を著しく低下させ、品位の低いポリエステルしか得られない等の欠点があった。このように、従来の技術においてはポリエステル繊維屑を効率的に処理する技術は完成されていない。
【0007】
また、ポリエステル製造工程外の繊維を回収対象とした場合、染料などの異素材を含むポリエステル繊維の混入が避けられないときがある。ポリエステル繊維に含まれる染料は触媒存在下、高温での解重合等の一連の反応中に分解して、回収有用成分中に分散し、品質を著しく悪化させる。こういった問題点に対し、解重合などの反応処理に先立ち、エチレングリコールなどのアルキレングリコールなどを用いて解重合反応が進行しない温度域で抽出処理することにより、問題となる染料やナイロンを除去する取り組みがなされている(例えば、特許文献2参照。)。この方法であれば、回収有用成分の品質を悪化させることなく、有用成分の回収が可能となるものの、染料を抽出した後のアルキレングリコールと繊維のハンドリング、固液分離を可能とするため実質的にアルキレングリコールを多量に使用する必要がある上、多くの場合繊維中に含まれる染料濃度が高く、複数回抽出作業を行わないと十分な抽出効果が得られず、操作上も煩雑であるという問題があった。
【0008】
【特許文献1】特開昭48−61447号公報(特許請求の範囲)
【特許文献2】特開2003−128616号公報(特許請求の範囲)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、従来技術が有していた問題点を解決し、染着ポリエステル繊維製品から、染料成分を効率的かつ経済的に除去する方法を確立することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは上記技術に鑑み、鋭意検討を行った結果、染着ポリアルキレンテレフタレートを含有する繊維を抽出溶剤により染料成分などを抽出除去するに当たり、円筒型脱染料装置内にかさ密度が0.2〜0.5g/cmとなるように繊維を充填した後、予め加温された抽出溶剤を上部或いは下部から供給して抽出溶剤を内部の繊維層を通過させ抽出を行った後、円筒型脱染料装置内の繊維に含有する液成分を圧搾操作により低減させることにより上記課題が解決できることを見出した。
【発明の効果】
【0011】
本発明により、染着ポリエステル繊維製品から、効率よく染料を抽出除去することが可能となり、経済的な染料除去方法が提供される。また、本発明を使用することにより樹脂、フィルムなどと同様にポリエステル繊維製品のケミカルリサイクル方法において回収成分の品質を低下を防止することができ、従来方法と比較して、より効率的かつ経済的な有用成分回収方法も実現できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
本発明の解重合方法においては、対象とするポリアルキレンテレフタレート繊維としては、典型的には、ポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートよりなる繊維や他のポリエステルよりなる繊維を例示できるが、ナイロンや木綿等の他の素材を、混紡等の形で含んでいてもよく、表面改質等の目的のために使用される他のプラスチック成分を含んでいてもよい。なかでもポリエチレンテレフタレートからなる繊維である場合が好ましい。
【0013】
本発明では染料の抽出除去を円筒型脱染料装置内で行うことが好ましい。円筒型脱染料装置は最上部に繊維の投入口、下端に液排出口、上端若しくは下端に液供給口を、更に、容器最下部には処理後の繊維を解重合反応槽に供給するための排出口を装備する。同じ抽出操作において繊維層への抽出溶剤の供給はアップフロー/ダウンフローいずれも使用可能であり、下端の排出口を抽出溶剤供給時には供給口として兼用してもよい。液排出口には内部繊維屑が同伴しないようにフィルターを設置することが好ましい。また、液供給口或いは液排出口は円筒型脱染料装置の径が大きい、或いは内容積が多い場合には複数設置することが好ましい。
【0014】
染料としてはポリアルキレンテレフタレート繊維を染色するのに通常用いられる分散染料であれば特に限定はない。染着されたポリアルキレンテレフタレート繊維には、種々の分散染料等が使用されており、その分子内にジアゾ基を初めとする官能基等に含まれている窒素原子やハロゲン(ClやBr)原子等、回収する有用成分の品位を低下せしめる成分を含むものが多い。
【0015】
これらの成分を含んだ状態で、染着ポリアルキレンテレフタレート繊維を触媒存在下アルキレングリコールによる解重合反応に供すると、ジアゾ基の開裂反応やハロゲン原子の溶出が併発し、回収する有用成分の品位を著しく低下せしめる。
【0016】
分散染料等はポリアルキレンテレフタレート繊維と分子間力によって結合しており、ここで抽出溶剤として用いるキシレンとは、主としてキシレンからなる溶剤である。また、抽出溶剤として用いるアルキレングリコールとは、主としてアルキレングリコールよりなる溶剤である。
【0017】
一方、分散染料等は、ポリアルキレンテレフタレート繊維と分子間力によって結合しており、溶剤抽出によって繊維から染料を脱色・除去することが可能である。
例えばポリアルキレンテレフタレート繊維から塩化メチレンによって染料や表面仕上剤を除去する方法を例示することができる。しかしながら、塩化メチレンが解重合反応工程に混入すると、溶剤自身に含有するCl成分が回収有用成分に混入する可能性が高く、抽出溶剤としては適していない。これらの問題点は、染料抽出溶剤を染料などの抽出対象に合わせて任意に選択することにより解消可能である。つまり、染料の種類により抽出効果には差があり、これらの染料を抽出する際、染料の種類等によって効果的な抽出溶剤は異なるため、複数の抽出溶剤を組み合わせて用いて、或いは繰り返し抽出することがポリアルキレンテレフタレート繊維中の種々の分散染料を除去することが効果的である。中でも芳香族炭化水素及び/又はアルキレングリコールを用いることが好ましい。芳香族炭化水素の具体例としてはキシレンが、アルキレングリコールの具体例としてはエチレングリコール、ジエチレングリコールを挙げることができる。すなわち抽出に用いる溶剤としてはキシレン、エチレングリコール及びジエチレングリコールからなる群より選ばれる少なくとも1種の溶剤であることが好ましい。さらにはキシレン及びアルキレングリコールを抽出溶剤として組み合わせて使用することがより好ましい。ここで抽出溶剤として用いるキシレンとは、主としてキシレンからなる溶剤であり他の溶剤が10重量%以下の範囲で含まれていても良い。また、抽出溶剤として用いるアルキレングリコールとは、主としてアルキレングリコールよりなる溶剤であり他の溶剤が10重量%以下の範囲で含まれていても良い。
【0018】
キシレンを染料抽出溶剤として用いることは本来なら布帛にキシレンが残存し、テレフタル酸ジメチルの品質を落とすことになる。しかしながら、キシレンの沸点は138℃〜144℃であり、アルキレングリコールによる染料抽出時及び、有用成分回収のために行う解重合反応時にキシレンの大部分を布帛より除去することが可能である。
【0019】
染料抽出工程で使用するキシレンは混合キシレン、パラキシレン、メタキシレン及びオルソキシレンよりなる群から選ばれた少なくとも1つのキシレンを用いることが好ましい。これらは単独で使用してもよいし、2種類以上の混合物として使用しても構わない。ここで混合キシレンとはパラキシレン、メタキシレン、オルソキシレン及びエチルベンゼンの混合物のことを指し、特に組成比は問わない。
【0020】
また、ポリアルキレンテレフタレート繊維からの染料抽出に使用するアルキレングリコールは、ポリアルキレンテレフタレート繊維の骨格構造を形成できるグリコールであることが好ましい。すなわちポリアルキレンテレフタレート繊維を構成するポリアルキレンテレフタレートの繰り返し単位を構成する成分と同一であることが好ましい。より好ましくは主たる繰り返し単位を構成する成分(具体的にはポリアルキレンテレフタレートの繰り返し単位を構成する全成分に対して80モル%以上)であることが好ましい。良好な品質の有用成分が得られやすくなること、有用成分、特にアルキレングリコールの回収が容易になること、染料の抽出あるいは有用成分回収のために行う解重合反応工程等での循環使用が可能になること等の利点が得られるからである。
【0021】
なお、骨格構造を形成できるグリコールとは、たとえば、ポリアルキレンテレフタレート繊維がポリエチレンテレフタレートからなる場合にはエチレングリコールを、ポリブチレンテレフタレートからなる場合には1,4−ブタンジオールをポリトリメチレンテレフタレートからなる場合には1,3−プロパンジオールを例示できる。エチレンテレフタレート構造とブチレンテレフタレート構造とを有するポリマーの場合は、エチレングリコール、1,4−ブタンジオール,エチレングリコールと1,4−ブタンジオールとの混合物いずれでも良い。
【0022】
ポリアルキレンテレフタレート繊維から効率的に染料を抽出除去するには、抽出除去後の繊維と染料を含有する抽出溶剤を分離する際に、繊維に残留する抽出溶剤を低減することも重要と成る。特に高濃度の染料を含有する繊維から染料を抽出するために複数回抽出操作を行う場合、繊維に残留する抽出溶剤が十分に低減できない場合には著しく抽出効果が低下し、結果として繊維に染料成分が残留し、抽出回数が増加する。また、染料に応じて複数種類の抽出溶剤を使用する場合、特に前述のキシレンとアルキレングリコールを順に使用する場合、繊維内に残留する抽出溶剤が多いと、次に使用する抽出溶剤の抽出効果が著しく低下する。
【0023】
本発明においては染料などを含有するポリアルキレンテレフタレート繊維を該容器内部に所定のかさ密度になるように充填した後、円筒型脱染料装置の上部或いは下部より充填した繊維層に予め加温された抽出溶剤を流通させて抽出操作を行う。また、抽出後の抽出溶剤は容器の液排出口より排出され、更に、繊維層内に残留する抽出溶剤を圧搾操作により低減させる。圧搾操作としては特に限定されるものではないが、円筒型脱染料装置上部に窒素ガスラインを接続し、液排出口特に窒素ガスによる加圧液排出を行うと、同時に圧搾効果も得られ、繊維層内に残留する抽出溶剤量を低減することもでき、好ましい。
【0024】
抽出操作を行う際、円筒装置内部に充填するポリアルキレンテレフタレート繊維はかさ密度が0.2〜0.5g/cmとなるように充填されることが好ましい。かさ密度が0.2g/cm未満である場合には上部より抽出溶剤を供給した場合、抽出溶剤が繊維層内部を均一には流れず、また上部より抽出溶剤を供給する場合抽出溶剤の繊維層内部の流速が極めて速くなり、十分な抽出効果が得られない。また、下部より抽出溶剤を供給する場合には繊維層全体にいきわたるために必要となる抽出溶剤量は繊維層のかさ密度が低下するにつれて増加するため、結果としてかさ密度に反比例し、円筒型脱染料装置内に充填される繊維層のかさ密度は高くするほど少ない抽出溶剤量で抽出が可能となる。
【0025】
更に抽出溶剤を排出した後、繊維層のかさ密度が0.2g/cm未満の場合には該圧搾後の残留抽出溶剤量が多くなり、抽出効果が低下する。一方、繊維層のかさ密度が0.5g/cmを超えるの場合には抽出溶剤が繊維層を通過する際の抵抗が高く、抽出溶剤の供給において高圧が必要となる他、染料を含有する抽出溶剤を排出した後、繊維の圧搾による残留抽出溶剤の低減が困難となり、円筒型脱染料装置そのもののにも極めて高い圧力への耐圧性能も必要となるので好ましくない。
【0026】
充填に当たってはポリアルキレンテレフタレート繊維を2〜30mm程度に粉砕して充填した。また、充填した繊維層のかさ密度を高くするにはポリアルキレンテレフタレート繊維屑を裁断後、押し出し造粒機などにより造粒することが有用である。また、抽出溶剤は繊維層全体にいきわたる必要があり、上部から供給されるダウンフローで使用する場合にはシャワーノズルなどを用いて分散させることが好ましい。
【0027】
抽出に使用する抽出溶剤は予め加温された状態で繊維層に供給される必要がある。十分加温されてない場合には抽出溶剤がポリアルキレンテレフタレート繊維内へと拡散する速度が不充分となり、染料及び/又はナイロン成分などの抽出除去効果が十分得られない観点より、抽出溶剤は100℃以上に加温することが好ましく、特に好ましくは120℃以上である。このため円筒型脱染料装置外面は放熱を防止するための保温などを施工することが好ましい。
【0028】
一方、抽出溶剤の温度が高すぎると染料の分解を招く結果となる。すなわち、抽出温度としては、使用する抽出溶剤の種類により最適温度は異なるが、アルキレングリコール以外の溶媒では、ポリアルキレンテレフタレート繊維を形成するポリエステルのガラス転移点以上220℃以下であることから210℃以下に加温することが好ましく、設備の観点から特に好ましくは、抽出溶剤の沸点以下に加温することが好ましい。なお、アルキレングリコールを使用する場合には180℃以上ではポリエステルの解重合反応も同時に進行する観点から、170℃以下とすることが好ましい。
【0029】
尚、染料抽出を終えた後の染料を含む抽出溶剤は、抽出溶剤回収工程において、蒸留によってキシレン、アルキレングリコールを回収し、再度キシレン、アルキレングリコール抽出溶剤として使用することができ、経済的に有効である。この時染料を含む抽出溶剤の蒸留と他のアルキレングリコール等の蒸留とを併せて実施してもよい。蒸留等の簡素化が図られ更に経済的に有利となるからである。
【実施例】
【0030】
以下、実施例により本発明の内容を更に具体的に説明する。なお、ポリエステル繊維中の染料は単一成分でないため、染料に由来する窒素含有量を染料濃度と考え、実施例中の各数値は以下の方法により求めた。
【0031】
(窒素含有量)
ポリエステル繊維並びに抽出後の抽出溶剤に含まれる窒素含有量は微量全窒素分析装置(三菱化成製TN−110)で測定した。
本発明に係る染着されたポリエステル繊維である、黒色に染色されたポリエチレンテレフタレート布帛(染料抽出前の繊維中の窒素含有量:1500ppm)を20mmに裁断したものを使用した。
【0032】
(染料抽出率)
ポリエステル繊維からの染料の抽出率は下記の式により求めた。
抽出率(%)=Σ(抽出操作後の抽出液窒素含有量)÷(染料抽出前の繊維中窒素含有量)×100
【0033】
[実施例1]
図1の設備内に該染料を含有するポリエチレンテレフタレート繊維100重量部を、かさ密度を0.2g/cmとなるように充填高さを調整しながら、充填した。
充填した繊維層の上部より130℃に加温したパラキシレン400重量部を流入させ抽出操作を行った。染料を抽出した抽出溶剤は下部液排出口より排出した。その後、円筒容器上部に接続された0.1MPaに調整された窒素ガスを供給し、内部の繊維層を圧搾しながらパラキシレンを追い出した。排出されたパラキシレンは330重量部であった。この後、160℃に加温したエチレングリコール600重量部を使用して同様に抽出操作を行い、染料を抽出した。回排出されたエチレングリコール量は590重量部であった。また、圧搾後、下部蓋を開放し、繊維を取り出した、薄灰色のポリエステル繊維が回収された。抽出後のパラキシレン、エチレングリコールの窒素含有量を測定した結果、抽出率は93%であった。
【0034】
[比較例1]
実施例1にて使用した抽出処理前の染料を含有するポリエチレンテレフタレート繊維100重量部をパラキシレン400重量部と共に攪拌機を装備した抽出槽内に、温度130℃にて10分間加熱・攪拌した。このときの抽出槽内のポリエチレンテレフタレート繊維のかさ密度は0.1g/cm未満であった。
抽出終了後、固液分離工程として、繊維を圧搾しながらアスピレーターによる吸引濾過を行い、染料を含むパラキシレンとポリエステル繊維を分離した。該ポリエステル繊維を再度抽出槽内に投入後エチレングリコール600重量部と共に160℃にて10分間加熱・攪拌した後、染料を含むエチレングリコールとポリエステル繊維を分離した。分離された抽出後のパラキシレン、エチレングリコール、及び抽出後のポリエチレンテレフタレート繊維中の窒素含有量を測定した結果、抽出率は80%であった。
【0035】
[比較例2]
実施例1にてポリエチレンテレフタレート繊維のかさ密度が0.1g/cmとなるように図1容器に充填した以外は実施例1と同様に操作をおこなった。図1の容器より排出された繊維は含液率が高く、抽出後のパラキシレン、エチレングリコール、及び抽出後のポリエチレンテレフタレート繊維中の窒素含有量を測定した結果、抽出率は77%であった。
【0036】
[比較例3]
実施例1にてポリエチレンテレフタレート繊維を2倍とし充填密度が0.6g/cm、繊維の単位重量あたりのパラキシレン及びエチレングリコールの使用量が同じとなるように使用量を調整した以外は実施例1と同様に操作をおこなった。図1の容器より排出された繊維は含液率が高く、抽出後のパラキシレン、エチレングリコール、及び抽出後のポリエチレンテレフタレート繊維中の窒素含有量を測定した結果、抽出率は84%であった。
【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明により、染着ポリエステル繊維製品から、効率よく染料を抽出除去することが可能となり、経済的な染料除去方法が提供される。また、本発明を使用することにより樹脂、フィルムなどと同様にポリエステル繊維製品のケミカルリサイクル方法において回収成分の品質を低下を防止することができ、従来方法と比較して、より効率的かつ経済的な有用成分回収方法も実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明の一実施形態に係る円筒状染料除去容器の部分概略図である。1,2,3,6,8に付随する矢印は物質の流れも同時に表し、他の矢印は装置の部分を示している。
【符号の説明】
【0039】
1 ポリアルキレンテレフタレート繊維
2 窒素ガス
3 抽出溶剤供給口
4 繊維投入口
5 円筒型脱染料装置
6 抽出溶剤排出口
7 抽出後繊維排出口(バルブ)
8 抽出後繊維

【特許請求の範囲】
【請求項1】
染着ポリアルキレンテレフタレートを含有する繊維から、抽出溶剤を用いて染料成分を抽出除去するに当たり、
装置内にかさ密度が0.2〜0.5g/cmとなるように繊維を充填した後、予め加温された溶剤を装置内に供給して溶剤を内部の繊維と接触させ染料の抽出を行った後、装置内の繊維に含有する溶剤成分重量を圧搾操作により低減させることを特徴とするポリエステル繊維からの染料除去方法。
【請求項2】
溶剤が芳香族炭化水素及び/又はアルキレングリコールであることを特徴とする請求項1記載のポリエステル繊維からの染料除去方法。
【請求項3】
溶剤がキシレン、エチレングリコール及びジエチレングリコールからなる群より選ばれる少なくとも1種の溶剤であることを特徴とする請求項1〜2のいずれか1項記載のポリエステル繊維からの染料除去方法。
【請求項4】
ポリエステル繊維がポリエチレンテレフタレートからなる繊維である請求項1〜3のいずれか1項に記載のポリエステル繊維からの染料除去方法。

【図1】
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【公開番号】特開2010−90184(P2010−90184A)
【公開日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−258392(P2008−258392)
【出願日】平成20年10月3日(2008.10.3)
【出願人】(302011711)帝人ファイバー株式会社 (1,101)
【Fターム(参考)】