説明

柔らかく嵩高い複合布

連続フィラメントから形成された不織ウェブと水圧交絡された短繊維を含む複合布が提供される。短繊維の一部はウェブと交絡され、別の部分はウェブから突き出ている。結果として得られる表面形態は、大半が滑らかな短繊維である一方の表面と、大半が不織ウェブからの連続フィラメントであるが、幾らかの突き出ている滑らかな短繊維を含む他方の表面とを有する。したがって、各表面は、滑らかな短繊維を含み、柔らかい。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
家庭用及び産業用拭取り材は、極性液体(例えば、水及びアルコール)と非極性液体(例えば油)との両方を素早く吸収するために用いられることが多い。拭取り材は、圧力によって、例えば絞ることによって液体を除去することが望まれるまでは、拭取り材の構造体内に液体を保持するのに十分なだけの吸収力をもっていなければならない。さらに、拭取り材はまた、使用の間にしばしばかかる引き裂き力、引き伸ばし力、及び摩擦力に耐えるために、良好な物理的強度及び耐摩耗性をもっていなければならない。さらに、拭取り材はまた、柔らかな感触でなければならない。
【0002】
過去において、メルトブローン不織ウェブのような不織ウェブが、拭取り材として幅広く用いられてきた。メルトブローン不織ウェブは、液体を吸収し、保持するのに適した繊維間毛管構造を有する。しかしながら、メルトブローン不織ウェブは、高耐久性拭取り材として用いるために必要な物理的特性、例えば引き裂き強度及び耐摩耗性が足りないことがある。このため、メルトブローン不織ウェブは通常、研磨面又は粗い面に用いるのには望ましくない場合がある支持層、例えば不織ウェブにラミネートされる。スパンボンドウェブは、メルトブローン不織ウェブよりも厚く強い繊維を含み、引き裂き強度及び耐摩耗性といった良好な物理的特性を与えることができる。しかしながら、スパンボンドウェブには、拭取り材の吸収特性を増強する微細な繊維間毛管構造が不足していることがある。さらに、スパンボンドウェブは、不織ウェブ内での液体の流れ又は移動を妨げる場合がある結合点を含むことが多い。これらの及び他の問題に対応して、パルプ繊維と水圧交絡された連続フィラメント不織ウェブを含む複合布も開発された。これらの布は、良好な強度レベルをもっていたが、良好な油吸収特性が不足していることがあった。
【0003】
これらの及び他の問題に対応して、パルプ繊維が連続フィラメント不織ウェブと水圧交絡された不織複合布が開発された。これらの布は、良好な強度レベルをもっていたが、不十分な柔らかさ及び手触りを示すことが多かった。例えば、水圧交絡は、水の高い体積及び圧力によって繊維を交絡させるものである。残った水は、一連の乾燥カンを通して除去することができる。しかしながら、高い水圧及び乾燥カンの比較的高い温度は、本質的に繊維を圧縮し又は収縮させて、硬く嵩の低い構造にする。したがって、強度を大きく低下させることなく不織複合布を柔らかくすることを試みる技術が開発された。こうした技術の1つは、引用によりその全てをここに組み入れる、Anderson他の米国特許第6,103,061号に記載されている。Anderson他は、クレープ加工のような機械的柔軟化処理を受けた不織複合布に向けられている。複合材を柔らかくするための他の試みには、化学薬品の添加、カレンダ加工及びエンボス加工がある。しかしながら、これらの改善をもってしても、不織複合布は、それらに「布のような」感触を与えるのに必要な柔らかさ及び手触りが依然として不足している。
したがって、強く、柔らかく、なおかつ多様な拭取り材用途に用いるための良好な吸収特性を呈する布への必要性が残っている。
【発明の開示】
【0004】
本発明の一実施形態によれば、布を形成する方法が開示される。この方法は、短繊維を、連続フィラメントから形成された不織ウェブと水圧交絡して、複合材を形成することを含む。短繊維は、約0.3から約25ミリメートルの平均繊維長さを有し、短繊維の少なくとも一部は合成繊維である。複合材は、第1表面と第2表面を定め、第1表面は大半の短繊維を含み、第2表面は大半の連続フィラメントを含む。さらに、短繊維の少なくとも一部はまた、第2表面から突き出している。
本発明の別の実施形態によれば、布を形成する方法が開示される。この方法は、短繊維を、連続フィラメントから形成されたスパンボンドウェブと水圧交絡して、複合材を形成することを含む。短繊維は、約3から約8ミリメートルの平均繊維長さを有し、短繊維の少なくとも約50重量%は合成繊維である。複合材の嵩は、約5cm3/gより大きい。
本発明のさらに別の実施形態によれば、連続フィラメントから形成された不織ウェブと水圧交絡された短繊維を含む複合布が開示される。短繊維は、約0.3から約25ミリメートルの平均繊維長さを有し、短繊維の少なくとも一部は合成繊維である。複合布は、第1表面と第2表面を定め、第1表面は大半の短繊維を含み、第2表面は大半の連続フィラメントを含む。さらに、短繊維の少なくとも一部はまた、第2表面から突き出している。
【0005】
本発明の他の特徴及び態様を、以下で詳細に説明する。
当業者に向けられた、最良の形態を含む本発明の十分な及び本発明を可能にする開示が、付属の図面を参照しながら本明細書の残りの部分でさらに具体的に説明される。
本明細書及び図面における参照番号の反復使用は、本発明の同じ又は類似した特徴又は要素を表すことを意図されている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
これより本発明の種々の実施形態の詳細な説明が行われ、以下にそのうちの1つ又はそれ以上の実施例が示される。各実施例は、本発明を限定するのではなく、本発明を説明する目的で与えられる。事実、本発明の範囲又は精神を逸脱することなしに、本発明に種々の修正および変形を施せることが、当業者には明らかであろう。例えば、1つの実施形態の一部として図示され又は説明された特徴を、別の実施形態に用いて、更に別の実施形態を得ることができる。従って、そうした修正及び変形を、添付の請求項及びその均等物の範囲内に入るものとして網羅することを、本発明は意図されている。
【0007】
定義
ここで用いられる「連続フィラメント」という用語は、それらの直径より非常に大きい長さを有する、例えば、約15,000対1より大きい、或る場合には約50,000対1より大きい長さ対直径比を有するフィラメントのことをいう。
ここで用いられる「不織ウェブ」という用語は、編まれた布における識別可能な形態によるものではなく、個々の繊維又は糸が重なり合わされた構造を有するウェブのことを意味する。不織ウェブは、例えば、メルトブローンウェブ、スパンボンドウェブ、カーデッドウェブ、湿式堆積ウェブ、空気堆積ウェブなどを含む。
【0008】
ここで用いられる「スパンボンドウェブ」という用語は、小直径の連続フィラメントから形成された不織ウェブのことをいう。このウェブは、溶融した熱可塑性材料を、通常は円形である紡糸口金の複数の微細な毛管からフィラメントとして押し出し、次いで、押し出されたフィラメントの直径を、例えば、抽出引き出しすること、及び/又は他の周知のスパンボンド機構によって、急速に縮小することにより形成される。スパンボンドウェブの製造法は、例えば、それぞれの全体を引用によりここに組み入れる、アッペル他に付与された米国特許第4,340,563号、ドーシュナー他に付与された米国特許第3,692,618号、マツキ他に付与された米国特許第3,802,817号、キニーに付与された米国特許第3,338,992号及び3,341,394号、ハートマンに付与された米国特許第3,502,763号、レヴィに付与された米国特許第3,502,538号、ドーボー他に付与された米国特許第3,542,615号、及びパイク他に付与された米国特許第5,382,400号に記載され、示されている。スパンボンド繊維は、集積面に堆積されたときには、通常は粘着性がない。スパンボンド繊維は、時には約40ミクロンより小さく、しばしば約5から約20ミクロンの間の直径を有する。
【0009】
ここで用いられる「メルトブローンウェブ」という用語は、溶融した熱可塑性材料を、複数の微細な、通常は円形のダイ毛管を通じて、収束する高速高温ガス(例えば空気)流の中へ溶融糸又はフィラメントとして押し出し、熱可塑性材料のフィラメントがガス流によって細められ、直径が、マイクロファイバーの直径にまで縮小されることにより形成された不織ウェブのことをいう。その後、メルトブローン繊維は、高速ガス流により運ばれ、集積面に堆積されて、不規則に分散されたメルトブローン繊維のウェブを形成する。このような工程は、例えば、引用によりその全体をここに組み入れる、ビューティン他に付与された米国特許第3,849,241号に開示されている。一般的に、メルトブローン繊維は、連続的又は非連続的なマイクロファイバーであり、通常は直径が10ミクロンより小さく、集積面に堆積されるときには、通常は粘着性がある。
【0010】
ここで用いられる「一構成材」という用語は、ただ1つのポリマー構成材を用いて1以上の押出成形機から形成された繊維又はフィラメントのことをいう。1つのポリマー構成材から形成されるが、一構成材繊維又はフィラメントは、着色(例えばTiO2)、静電気防止特性、光沢、親水性などを与える添加剤を含有することができる。
【0011】
ここで用いられる「多構成材」という用語は、少なくとも2つのポリマー構成材から形成された繊維又はフィラメントのことをいう。こうした材料は、普通は、別々の押出器から押し出されるが、互いに紡績される。それぞれの構成材のポリマーは、普通は互いに異なっているが、同様の又は同一のポリマー材料を含む別の構成材を用いることができる。個々の構成材は、通常は、繊維/フィラメントの断面にわたって実質的に一定に位置された個別の区域に配置され、繊維/フィラメントの全長に沿って実質的に延びる。このような材料の構成は、例えば、並列配置、パイ配置、又はその他の配置とすることができる。二構成材繊維又はフィラメント及びこれを形成する方法は、引用によりその全体をここに組み入れる、Kanekoらの米国特許第5,108,820号、Kruege他の米国特許第4,795,668号、Pikeらの米国特許第5,382,400号、Strack他の米国特許第5,336,552号、及びMarmon他の米国特許第6,200,669号に教示されている。多構成材繊維又はフィラメント及びこれを含む個々の構成材は、引用によりその全体をここに組み入れる、Hogle他の米国特許第5,277,976号、Hillsの米国特許第5,162,074号、Hillsの米国特許第5,466,410号、Largman他の米国特許第5,069,970号、及びLargman他の米国特許第5,057,368号に記載されているような種々の不規則な形状を有することができる。
【0012】
ここで用いられる「平均繊維長さ」という用語は、例えばフィンランド、カヤーニ所在のKajaani Oy Electronics社から入手可能なKajaani繊維分析器、モデルNo.FS−100を用いて測定された繊維の加重平均長さのことをいう。試験手順によれば、サンプルは、繊維束又は結束が存在しないことを確実なものにするために、浸軟液で処理される。サンプルの各々を、熱水中で崩壊させて、およそ0.001%の溶液となるように希釈する。標準カヤーニ繊維分析試験手順を用いて試験するときに、希釈溶液から個々の試験サンプルをおよそ50から100mlまでの分量で分取する。加重平均繊維長さは、次式で表すことができる。

ここで、k=最大繊維長さ、xi=繊維長さ、ni=長さxiの繊維の数、n=測定した繊維の総数、である。
【0013】
ここで用いられる「低平均繊維長パルプという用語は、大量の短繊維と非繊維粒子を含むパルプのことをいう。多くの二次木材繊維パルプは低平均繊維長パルプであると考えられるが、二次木材繊維パルプの品質は、再生された繊維の品質と前の処理の量に依存することになる。低平均繊維長パルプは、例えばKajaani繊維分析器、モデルNo.FS−100(フィンランド、カヤーニ所在のKajaani Oy Electronics社製)のような光ファイバー分析器によって測定された、約1.2mmより小さい平均繊維長を有することができる。例えば、低平均繊維長パルプは、約0.7から1.2mmまでの範囲の平均繊維長を有することができる。例示的な低平均繊維長パルプは、バージン硬木パルプ、及び例えば、事務所廃棄物、新聞印刷紙、及びボール紙のくずのようなものからの二次繊維パルプを含む。
【0014】
ここで用いられる「高平均繊維長パルプ」という用語は、比較的少量の短繊維と非繊維粒子を含むパルプのことをいう。高平均繊維長パルプは、典型的には、特定の非二次(すなわちバージン)繊維から形成される。ふるいにかけられた二次繊維パルプはまた、高平均繊維長を有することができる。高平均繊維長パルプは、典型的には、例えばKajaani繊維分析器、モデルNo.FS−100(フィンランド、カヤーニ所在のKajaani Oy Electronics社製)のような光ファイバー分析器によって測定された、約1.5mmより大きい平均繊維長を有する。例えば、高平均繊維長パルプは、約1.5mmから約6mmまでの平均繊維長を有することができる。木材繊維パルプである例示的な高平均繊維長パルプは、例えば、漂白された及び漂白されていないバージン軟木繊維パルプを含む。
【0015】
詳細な説明
一般に、本発明は、連続フィラメントから形成された不織ウェブと水圧交絡された短繊維を含む複合布に向けられている。理論によって限定されることを意図するのではなく、短繊維の低い摩擦係数は、他のタイプの繊維よりも交絡中にそれらがより容易に連続フィラメントの不織ウェブを通過できるようにすると考えられる。したがって、短繊維の一部はウェブと交絡され、別の部分はウェブから突き出ている。結果として得られる表面形態は、大半が滑らかな短繊維である一方の表面と、大半が不織ウェブからの連続フィラメントであるが、幾らかの突き出ている滑らかな短繊維を含む他方の表面とを有する。したがって、各表面は、滑らかな短繊維を含み、柔らかい。驚いたことに、こうした複合布において優れた液体取り扱い特性及び嵩も達成される。
上述の所望の「両面」柔軟性を有する複合布を達成するために、複合不織布を形成するのに用いられる材料及び方法が選択的に制御される。これに関しては、短繊維、連続フィラメント不織ウェブの様相を選択的に制御するための種々の実施形態と、複合布を形成するための方法をここでより詳しく説明する。しかしながら、ここで説明された実施形態は単なる例であることを理解されたい。
【0016】
A.短繊維
短繊維は、それらが滑らかで、可撓性があり、交絡中に連続フィラメント不織ウェブを通って延びることができるように選択される。短繊維の平均繊維長さ及びデニールは、例えば、短繊維が連続フィラメント不織ウェブを通って突き出る能力に影響を及ぼすことがある。選択された平均繊維長さ及びデニールは、通常は、短繊維の性質、連続フィラメントウェブの性質、使用される交絡圧などを含む種々の因子に依存することになる。短繊維の平均繊維長さは、通常は、個々の繊維の一部が連続フィラメント不織ウェブと直ちに交絡するのに十分なだけ短く、なおかつ繊維の別の部分がそこから突き出ることができるのに十分なだけ長い。これに関しては、短繊維は、典型的には、約0.3から約25ミリメートル、或る実施形態においては約0.5から約10ミリメートル、或る実施形態においては約3から約8ミリメートルの範囲内の平均繊維長さを有する。短繊維の1フィラメントあたりのデニールはまた、約6より小さく、或る実施形態においては約3より小さく、或る実施形態においては約0.5から約3とすることができる。
【0017】
さらに、使用される短繊維の大部分は合成繊維であることが通常は望ましい。例えば、連続フィラメント不織ウェブと交絡された短繊維の少なくとも約50重量%、或る実施形態においては少なくとも約70重量%、或る実施形態においては少なくとも約90重量%が合成繊維である。理論によって限定されることを意図するのではないが、発明者らは、合成短繊維は、滑らかで低い摩擦係数を有することができ、それにより交絡中にそれらがより容易に連続フィラメントの不織ウェブを通過できるようになると考えている。好適な合成短繊維の幾つかの例には、例えば、ポリビニルアルコール、レーヨン(例えばリヨセル)、ポリエステル、ポリ酢酸ビニル、ナイロン、ポリオレフィンなどのようなポリマーから形成されたものを含む。
【0018】
短繊維の大部分は通常は合成繊維であるが、短繊維の幾らかの部分はまたセルロース繊維であってもよい。例えば、セルロース繊維は、コストを減少させると共に、複合布に改善された吸収性のような他の利点を付与するために用いることができる。好適なセルロース繊維源の幾つかの例には、サーモメカニカル漂白及び未漂白パルプ繊維のようなバージン木材繊維がある。パルプ繊維は、高平均繊維長、低平均繊維長、又はこれらの混合物を有することができる。好適な高平均繊維長パルプの幾つかの例には、この限りではないが、北方軟木、南方軟木、セコイア、米杉、ドクニンジン、パイン(例えば北方パイン)、トウヒ(例えば黒色トウヒ)、これらの組み合わせなどがある。例示的な高平均繊維長木材パルプには、「Longlac19」という商標名でキンバリー・クラーク社から入手可能なものがある。好適な低平均繊維長パルプ繊維の幾つかの例には、この限りではないが、特定のバージン硬木パルプと、例えば新聞用紙、再生ボール紙及びオフィス廃棄物のような発生源からの二次(すなわち再生)繊維パルプがある。ユーカリ、メープル、バーチ、アスペンなどのような硬木繊維もまた、低平均繊維長パルプとして用いることができる。高平均繊維長パルプと低平均繊維長パルプとの混合物を用いてもよい。オフィス廃棄物、新聞用紙、褐色包装紙ストック、ボール紙のくずなどから得られるような二次又は再生繊維を用いてもよい。さらに、マニラアサ、アマ、トウワタ、綿、改質綿、綿リンターのような植物繊維を用いてもよい。
一般に、多くのタイプのセルロース繊維は、合成短繊維より高い摩擦係数をもつと考えられる。そのため、使用されるときには、セルロース繊維は、通常は、連続フィラメント不織ウェブと交絡された短繊維の約50重量%より少ない、或る実施形態においては約30重量%より少ない、或る実施形態においては約10重量%より少ない量である。
【0019】
短繊維はまた、一構成材及び/又は多構成材(例えば二構成材)とすることができる。例えば、多構成材繊維に適した構成には、並列構成及び芯鞘構成があり、好適な芯鞘構成には、中心を異にする芯鞘及び同心の芯鞘構成がある。或る実施形態においては、当業者には周知であるように、多構成材繊維を形成するのに用いられるポリマーは、異なる結晶化及び/又は凝固特性を呈するのに十分なだけ異なる融点を有する。多構成材繊維は、約20重量%から約80重量%、或る実施形態においては約40重量%から約60重量%の低融点ポリマーを有することができる。さらに、多構成材繊維は、約80重量%から約20重量%、或る実施形態においては約60重量%から約40重量%の高融点ポリマーを有することができる。使用されるときには、多構成材繊維は種々の利点を有することができる。例えば、多構成材繊維によって与えられることがある、より大きい繊維デニールは、結果として得られる布にテクスチャード加工された表面を与えることができる。さらに、多構成材繊維はまた、嵩、及び交絡後の短繊維と連続フィラメント不織ウェブとの間の結合レベルを増強することができる。
【0020】
交絡の前に、短繊維は通常はウェブに形成される。ウェブが形成される方法は、使用される短繊維の長さのような種々の因子に応じて変化することになる。一実施形態においては、例えば、短繊維ウェブは、従来の製紙技術による湿式堆積プロセスを用いて形成することができる。湿式堆積プロセスにおいては、短繊維完成紙料が水と混合されて水性懸濁液が形成される。水性懸濁液の固体濃度は、通常は0.01重量%から約1重量%までの範囲である。しかしながら、より低い濃度(例えば約0.01重量%から約0.1重量%)は、より高い濃度(例えば約0.1重量%から約1重量%)よりも、より長い繊維に容易に適応することができる。水性懸濁液は、例えば、単層化又は多層化ヘッドボックスを用いてワイヤ又はフェルト上に堆積される。その後、堆積された懸濁液は、乾燥されて短繊維ウェブを形成する。
【0021】
しかしながら、湿式堆積に加えて、他の従来のウェブ形成技術を用いることもできる。例えば、短繊維は、カーデッドウェブに形成することができる。こうしたウェブは、短繊維のベールを、繊維を分離するピッカに入れることによって形成することができる。次に、繊維は、短繊維をさらに分離し機械方向に整列させて、機械方向に配向された繊維性不織ウェブを形成する、結合又はカーディング・ユニットを通して送られる。空気堆積は、短繊維をウェブに形成することができる、別の周知のプロセスである。空気堆積プロセスにおいては、短繊維の束が分離され、空気供給に随伴されて、随意的に真空供給の補助を伴って形成スクリーン上に堆積される。空気堆積及びカーディング法は、より長い短繊維からウェブを形成するのに特に適している。さらに別のプロセスはまた、短繊維をウェブに形成するのに用いることができる。
【0022】
必要であれば、短繊維ウェブは、巻取り、移送、及び繰り出しのための一時的な乾燥強度を改善するために、公知の方法を用いて結合されてもよい。こうした結合方法の1つは粉末結合であり、粉末化された接着剤がウェブ全体に分散され、次いで普通はウェブと接着剤を高温空気で加熱することによって活性化される。別の結合方法は、パターン結合であり、加熱されたカレンダ・ロール又は超音波結合装置を用いて、普通は局所化された結合パターンで繊維を互いに結合する。さらに別の方法は、ウェブを結合するために通気乾燥機を用いることを含む。特に、加熱空気がウェブに強制的に通されて、繊維をそれらの交差点で溶融し互いに結合する。典型的には、非結合短繊維ウェブが、形成ワイヤ又はドラム上に支持される。通気結合は、多構成材短繊維から形成されたウェブに特に有用である。
【0023】
或る場合には、短繊維ウェブには、強度増強成分を用いて、巻取り、移送及び繰り出しのための一時的な乾燥強度を付与することができる。例えば、熱水に可溶のポリビニルアルコール繊維を用いることができる。これらの繊維は、華氏約120度より高いといった特定の温度で溶解する。そのため、熱水に可溶の繊維は、巻取り、移送及び繰り出しの間にウェブの中に含められ、交絡の前に短繊維から簡単に溶かし出すことができる。或いは、こうした繊維の強度は、温度を、繊維を完全に溶解させるのに要求されるよりも低い温度まで上昇させることによって簡単に弱められる。こうした繊維の幾つかの例には、この限りではないが、クラレ社(日本)によって製造されたVPB105−1(華氏158度)、VPB105−2(華氏140度)、VPB201(華氏176度)、又はVPB304(華氏194度)の短繊維がある。好適なポリビニルアルコール繊維の他の例は、引用によりその全体をここに組み入れる米国特許第5,207,837号に開示されている。交絡の前に一時的に乾燥強度を改善するために用いられるときには、強度増強成分は、不織ウェブの約3重量%から約15重量%、或る実施形態においては不織ウェブの約4重量%から約10重量%、或る実施形態においては短繊維ウェブの約5重量%から約8重量%の量とすることができる。上述の強度増強繊維はまた、本発明においては短繊維として用いることができることを理解されたい。例えば、上述のように、ポリビニルアルコール繊維を短繊維として用いることができる。
【0024】
B.連続フィラメント不織ウェブ
種々の公知の技術を用いて、連続フィラメント不織ウェブを形成することができる。連続フィラメント不織押出法の幾つかの例には、この限りではないが、公知の溶媒紡糸又は溶融紡糸法がある。一実施形態においては、例えば、連続フィラメント不織ウェブはスパンボンドウェブである。不織ウェブのフィラメントは、一構成材又は多構成材とすることができ、通常は1つ又はそれ以上の熱可塑性ポリマーから形成することができる。こうしたポリマーの例には、この限りではないが、ポリオレフィン、ポリアミド、ポリエステル、ポリウレタン、これらのブレンド及びコポリマーなどがある。熱可塑性フィラメントは、望ましくはポリオレフィン、さらにより望ましくはポリプロピレン及び/又はポリエチレンを含む。好適なポリマー組成物はまた、該ポリマー組成物にブレンドされた熱可塑性エラストマーと共に、顔料、酸化防止剤、流動促進剤、安定剤、香料、研磨粒子、フィラーなどを含むことができる。不織ウェブを形成するのに用いられる連続フィラメントの1フィラメントあたりのデニールも変化させることができる。例えば、特定の実施形態においては、不織ウェブを形成するのに用いられる連続フィラメントの1フィラメントあたりのデニールは、約6より小さく、或る実施形態においては約3より小さく、或る実施形態においては約1から約3である。
【0025】
必ずしもそうである必要はないが、不織ウェブはまた、ウェブの耐久性、強度、手触り、美観及び/又は他の特性を改善するために結合することができる。例えば、不織ウェブは、熱、超音波、接着剤及び/又は機械により結合することができる。例えば、不織ウェブは、点結合して、多くの小さな個別の結合点を有するようにすることができる。例示的な点結合プロセスは熱点結合であり、通常は、彫刻パターン形成ロール及び第2結合ロールのような加熱ロール間に1つ又はそれ以上の層を通すことを含む。彫刻ロールは、特定の方法でパターン形成して、ウェブがその表面全体にわたって結合されないようにし、第2結合ロールは、滑らかな又はパターン形成されたものとすることができる。したがって、彫刻ロールのための種々のパターンが、機能的並びに美観的理由のために開発されている。例示的な結合パターンには、この限りではないが、引用によりその全体をここに組み入れる、Hansen他の米国特許第3,855,046号、Levy他の米国特許第5,620,779号、Haynes他の米国特許第5,962,112号、Sayovitz他の米国特許第6,093,665号、Romano他の米国意匠特許第428,267号、及びBrownの米国意匠特許第390,708号に記載されたものがある。例えば、或る実施形態においては、不織ウェブは、約30%より少ない全結合域(従来の光学顕微鏡法によって求められる)及び/又は1平方インチあたり約100結合より多い一様な結合密度をもつように随意的に結合することができる。例えば、不織ウェブは、約2%から約30%の全結合域及び/又は1平方インチあたり約250から約500ピン結合の結合密度をもつことができる。こうした全結合域及び/又は結合密度の組み合わせは、或る実施形態においては、滑らかなアンビルロールに十分に接触したときに約30%より少ない全結合表面積を与える1平方インチあたり約100ピン結合より多いピン結合パターンにより不織ウェブを結合することによって達成される。或る実施形態においては、結合パターンは、1平方インチあたり約250から約350ピン結合のピン結合密度及び/又は滑らかなアンビルロールに接触したときに約10%から約25%の全結合表面積を有することができる。
【0026】
さらに、不織ウェブは、連続シーム又はパターンによって結合することができる。付加的な例として、不織ウェブは、シートの周辺に沿って又は単純に縁部に隣接するウェブの幅又は横方向(CD)にわたって結合することができる。熱結合及びラテックス含浸の組み合わせのような他の結合技術を用いても良い。或いは及び/又はそれに加えて、樹脂、ラテックス又は接着剤を、例えばスプレーすること又は印刷することによって不織ウェブに適用し、乾燥させて、所望の結合を与えることができる。さらに別の適切な結合技術は、引用によりその全体をここに組み入れる、Everhart他の米国特許第5,284,703号、Anderson他の第6,103,061号及びVaronaの米国特許第6,197,404号に記載されている。
不織ウェブはまた、随意的にクレープ加工される。クレープ加工は、ウェブに小さな折り目を与えて、種々の異なる特性をもたらすことができる。例えば、クレープ加工は、不織ウェブの孔構造を開いて、その透過性を増加することができる。さらに、クレープ加工はまた、機械方向及び/又は機械横方向のウェブの引き伸ばし性を増強するとともに、その柔らかさ及び嵩を増加することができる。不織ウェブをクレープ加工するための種々の技術は、その全体を引用によりここに組み入れる、Varonaの米国特許第6,197,404号に記載されている。
【0027】
C.布を形成する方法
複合布は、当該技術分野では公知の種々の交絡技術のいずれか(例えば水圧、空気、機械など)を用いて、連続フィラメント不織ウェブを短繊維と一体に交絡することによって形成される。典型的な水圧交絡プロセスは、高圧の水のジェット流を用いて、繊維とフィラメントを交絡させて非常に交絡され固められた複合構造体を形成する。水圧交絡された不織複合材は、例えば、引用によりその全体をここに組み入れる、Evansの米国特許第3,494,821号、Bouoltonの米国特許第4,144,370号、Everhart他の米国特許第5,284,703号、及びAnderson他の米国特許第6,315,864号に開示されている。
連続フィラメント不織ウェブは、通常は、いずれかの所望の量の結果として得られる複合布を含むことができる。例えば、或る実施形態においては、連続フィラメント不織ウェブは、布の約60重量%より少ない量、或る実施形態においては布の約50重量%より少ない量、或る実施形態においては布の約10重量%から約40重量%の量とすることができる。同様に、短繊維は、布の約40重量%より多い量、或る実施形態においては布の約50重量%より多い量、或る実施形態においては布の約60重量%から約90重量%の量とすることができる。
【0028】
本発明の1つの態様によれば、交絡プロセスの特定のパラメータは、結果として得られる複合布に「両面の」柔軟性を与えるように選択的に制御することができる。これに関しては、ここで図1を参照しながら、水圧交絡装置10を用いて複合布を形成するプロセスを選択的に制御するための種々の実施形態を、より詳しく説明する。
最初に、例えば、水に懸濁された約0.01重量%から約1重量%の短繊維を含有するスラリーが与えられる。繊維性スラリーは、流し樋14を介して従来の形成布又は表面16上に堆積された従来の製紙ヘッドボックス12に運ばれる。次いで、短繊維の懸濁液から水が除去されて、均一な層18を形成する。強度及び耐摩耗性を改善するために、層18の形成前に、形成中に及び/又は形成後に少量の湿潤強度樹脂及び/又は樹脂バインダを短繊維に加えることができる。架橋剤及び/又は水和剤を加えてもよい。水素結合の度合いを減少させるために、剥離剤を短繊維に加えてもよい。例えば、布の約1重量%から約4重量%の量の特定の剥離剤を加えることはまた、測定された静的及び動的摩擦係数を減少させ、複合布の耐摩耗性を改善するように見える。剥離剤は、潤滑剤又は摩擦減少剤として働くと考えられる。
【0029】
連続フィラメント不織ウェブ20がまた、回転供給ロール22から繰り出され、スタック・ローラ28及び30によって形成されたS−ロール配置26のニップ24を通過する。次いで、連続フィラメント不織ウェブ20は、従来の水圧交絡機の有孔交絡面32上におかれ、短繊維層18がウェブ20上に堆積される。必須ではないが、通常は、短繊維層18は、連続フィラメント不織ウェブ20と水圧交絡マニホルド34との間に位置決めされることが望ましい。短繊維層18と連続フィラメント不織ウェブ20は、1つ又はそれ以上の水圧交絡マニホルド34の下に通され、流体のジェットで処理されて、短繊維層18が不織ウェブ20のフィラメントと交絡され、それらが不織ウェブの中に及び貫通するようにされて、複合布36を形成する。或いは、水圧交絡は、短繊維層18及び連続フィラメント不織ウェブ20が湿式堆積を行う同一の有孔スクリーン(例えばメッシュ布)の上にある状態で行われる。本発明はまた、連続フィラメント不織ウェブ20上に乾燥短繊維層18を重ね、乾燥されたシートを特定の粘度まで再水和させ、次いで、再水和されたシートを水圧交絡させることを考慮している。水圧交絡は、短繊維層18が水で高度に飽和された状態で行うことができる。例えば、短繊維層18は、水圧交絡の直前に約90重量%までの水を含むことができる。或いは、短繊維層18は、空気堆積又は乾燥堆積層とすることができる。
【0030】
水圧交絡は、例えば、引用によりその全体をここに組み入れる、Everhart他の米国特許第5,284,703号、及びEvansの米国特許第3,485,706号に記載されているような従来の水圧交絡装置を用いて達成することができる。水圧交絡は、例えば、水のようなあらゆる適切な作動流体を用いて行うことができる。作動流体は、流体を一連の個々の孔又はオリフィスに均等に分配するマニホルドを通って流れる。これらの孔又はオリフィスは、直径約0.003インチから約0.015インチとすることができ、各列にあらゆる数、例えば1インチあたり30−100のオリフィスを有する1つ又はそれ以上の列に配置することができる。例えば、ノースカロライナ州シャーロット所在のFleissner社によって製造されたマニホルドは、1インチあたり30穴の直径0.007インチのオリフィスを有するストリップを含み、1列の穴を用いることができる。しかしながら、多くの他のマニホルド構成及び組み合わせを用いることもできることを理解されたい。例えば、単一のマニホルドを用いてもよいし、又は幾つかのマニホルドを連続的に配置してもよい。
【0031】
流体は、約10×10から約100×100のメッシュサイズを有する単一平面メッシュのような有孔面によって支持される、短繊維層18及び連続フィラメント不織ウェブ20に衝突する。有孔面はまた、約50×50から約200×200のメッシュサイズを有する多プライ・メッシュとすることができる。多くの水ジェット処理法においては典型的であるように、真空スロット38を、水ニードリング・マニホルドの下に又は交絡マニホルドの下流の有孔交絡面32の下に直接配置して、水圧交絡された複合布36から余分な水が引き出されるようにすることができる。
特定の作動理論のいずれにも縛るものではないが、連続フィラメント不織ウェブ20上におかれた短繊維層18に直接当たる作動流体の柱状ジェットは、短繊維をウェブ20における繊維のマトリックス又はネットワークの中に入れ、及び部分的に貫通させるように働く。すなわち、流体ジェット及び短繊維層18が連続フィラメント不織ウェブ20と相互に作用するときには、個々の短繊維の一部が、ウェブ20を通して突き出すことができ、別の部分はウェブ20と交絡される。このように短繊維が連続フィラメント不織ウェブ20を通って突き出ることは、柱状ジェットの圧力を選択的に制御することを通じて容易にすることができる。圧力が高すぎる場合には、短繊維は、ウェブ20を通って延びすぎることがあり、所望の度合いの交絡をもたない。一方、圧力が低すぎる場合には、短繊維は、ウェブ20を通って突き出ることはできない。短繊維の種類、連続フィラメントの種類、不織ウェブの坪量及びキャリパなどのような種々の因子が、最適な圧力に影響する。ほとんどの実施形態においては、所望の結果は、約100から約4000psig、或る実施形態においては約200から約3500psig、或る実施形態においては約300から約2400psigの範囲の流体圧で達成することができる。説明された圧力の上部範囲で処理されたときには、複合布36は、毎分約1000フィート(fpm)までの速度で処理することができる。
【0032】
流体ジェット処理の後に、結果として得られる複合布36を、乾燥部(例えば圧縮性、非圧縮性など)に移送することができる。異なる速度のピックアップロールを用いて、材料を水圧ニードリングベルトから乾燥部に移送することができる。或いは、従来の真空型ピックアップ及び移送布を用いることができる。必要であれば、圧縮布36は、乾燥部に移送される前に湿式クレープ加工することができる。
材料36の非圧縮乾燥を用いて、布36の表面上に存在する短繊維が平坦化されずに、所望の「両面の」柔らかさ及び嵩が減少するようにすることが望ましい。例えば、一実施形態においては、非圧縮乾燥は、従来の通気乾燥機42を用いて達成することができる。通気乾燥機42は、孔46を通して吹き込まれた高温空気を受け入れるための外側フード48と組み合わされた、孔46を有する外側回転可能シリンダ44とすることができる。通気乾燥機ベルト50は、通気乾燥機の外側シリンダ40の上部にわたって複合布36を運ぶ。通気乾燥機42の外側シリンダ44の孔46に強制的に通される加熱空気が、複合布36から水を除去する。通気乾燥機42によって複合布36に強制的に通される空気の温度は、華氏約200度から華氏約500度の範囲とすることができる。他の有用な通気乾燥法及び装置は、例えば、引用によりその全体をここに組み入れる、Niksの米国特許第2,666,369号及びShawの米国特許第3,821,068号において見出されている。
【0033】
上述のように、特定の乾燥技術(例えば圧縮)は、表面から突き出ている短繊維を平坦化することがある。必ずしもそうである必要はないが、付加的な仕上げステップ及び/又は後処理プロセスを用いて、この「平坦化」の影響を減少させ、及び/又は他の選択された特性を複合布36に付与することができる。例えば、布36は、嵩を改善するためにブラシをかけられてもよい。布36はまた、カレンダ・ロールによって軽く押し付け、クレープ加工し、又は他の手法で処理して、強度を増強させ、及び/又は一様な外観及び/又は特定の触覚特性を与えることができる。例えば、適切なクレープ加工技術は、引用によりその全体をここに組み入れる、Gentile他の米国特許第3,879,257号及びAnderson他の米国特許第6,315,864号に記載されている。或いは又はそれに加えて、接着剤又は染料のような種々の化学的後処理を布36に付加してもよい。使用可能な付加的な後処理が、引用によりその全体をここに組み入れる、Levy他の米国特許第5,853,859号に記載されている。
【0034】
本発明に係る短繊維と連続フィラメント不織ウェブとの交絡によって、種々の利点をもつ複合布が得られる。例えば、複合布は、「両面の」柔らかさを有する。すなわち、短繊維の一部は連続フィラメント不織ウェブのマトリックスを通して、及びマトリックスの中に押し込まれ、短繊維の幾らかは、依然として複合布の表面に又はその付近に残っている。したがって、この表面は、より多くの割合の短繊維を含むことができ、一方、他の表面はより多くの割合の連続フィラメントを含むことができる。一方の表面は、大部分が短繊維であり、非常に柔らかく、ビロードのような感触を与える。例えば、表面は、約50重量%より多い短繊維を含むことができる。他方の表面は、大部分が連続フィラメントであり、滑らかな、よりプラスチックのような感触を与える。例えば、表面は、約50重量%より多い連続フィラメントを含むことができる。それにもかかわらず、大部分の連続フィラメントを含んでいる表面上に突き出ている短繊維の存在により、この表面はまた柔らかい。
【0035】
改善された柔らかさをもつことに加えて、複合布はまた、改善された嵩をもつことができる。特に、理論によって制限されることを意図するのではないが、布の中の短繊維、特に短繊維の大部分を有する布の側に含まれている短繊維は、主にz方向(すなわち、布の厚さの方向)に配向されていると考えられる。したがって、布の嵩が増大され、約5cm3/gより多い、或る実施形態においては約7cm3/gから約50cm3/g、或る実施形態においては約10cm3/gから約40cm3/gの量とすることができる。さらに、本発明者らはまた、複合布が良好な油及び水吸収特性を有することを見出している。
【0036】
D.拭取り材
本発明の複合布は、拭取り材として特に有用である。拭取り材は、約20グラム毎平方メートル(「gsm」)から約300gsm、或る実施形態においては約30gsmから約200gsm、或る実施形態においては約50gsmから約150gsmの坪量を有することができる。低坪量の製品は、典型的には軽い汚れ用の拭取り材として用いるのに好適であり、一方、高坪量の製品は、産業用拭取り材として好適である。拭取り材はまた、種々の拭取り用途のためにあらゆる大きさとすることができる。拭取り材はまた、約8センチメートルから約100センチメートルまで、或る実施形態においては約10センチメートルから約50センチメートルまで、或る実施形態においては約20センチメートルから約25センチメートルまでの幅を有することができる。さらに、拭取り材は、約10センチメートルから約200センチメートル、或る実施形態においては約20センチメートルから約100センチメートル、或る実施形態においては約35センチメートルから約45センチメートルの長さを有することができる。
【0037】
必要に応じて、拭取り材はまた、水、水なしの手指洗浄剤又はその他の適切な液体のような液体で予め湿らせることができる。液体は、防腐剤、難燃剤、界面活性剤、皮膚軟化剤、湿潤剤などを含んでもよい。一実施形態においては、例えば、引用によりその全体をここに組み入れる、Clark他の米国特許出願第2003/0194932号に記載されたような殺菌組成物を拭取り材に塗布することができる。液体は、スプレーすること、浸漬すること、飽和すること、含浸すること、ブラシコーティングすることなどのような当該技術分野で公知の適切な方法のいずれかによって塗布することができる。拭取り材に付加される液体の量は、複合布の性質、拭取り材を保存するのに用いられる容器の種類、液体の性質、及び拭取り材の所望の最終用途に応じて変えることができる。一般に、各拭取り材は、拭取り材の乾燥重量に基づき、約150重量%より多い、或る実施形態においては約150から約1500重量%、或る実施形態においては約300から約1200重量%の液体を含有する。
【0038】
一実施形態においては、拭取り材は、連続する有孔ロールにおいて与えられる。穿孔は、拭取り材がより容易に分離することを可能にする脆弱ラインを与える。例えば、一実施形態においては、高さ6インチのロールは、v字に折畳まれた幅12インチの拭取り材を含む。ロールは、12インチ毎に穿孔されて、12インチ×12インチの拭取り材を形成する。別の実施形態においては、拭取り材は、個々の拭取り材のスタックとして提供される。拭取り材は、この限りではないが、ロール、ボックス、タブ、可撓性のパッケージ材料などを含む種々の形態、材料及び/又は容器でパッケージすることができる。例えば、一実施形態においては、拭取り材は、選択的に再密封可能な容器(例えば円筒形)の端部に入れられる。適切な容器の幾つかの例には、剛性のタブ、フィルムパウチなどがある。拭取り材を保持するための適切な容器の1つの特定の例は、剛性の円筒形のタブ(例えばポリエチレン製の)であり、容器の上部において再密封可能な密封蓋が嵌められる。蓋は、該蓋の下に位置する開口部を最初に覆うヒンジ付きキャップを有する。開口部は、密封された容器の内部から拭取り材が通過できるようにし、それにより拭取り材をつかみ、各ロールのシームを破ることによって個々の拭取り材を取り出すことができる。蓋の開口部は、拭取り材が容器から取り出される際に各拭取り材から過剰な液体が除去されるのに十分なだけの圧力を与えるような大きさにされる。
拭取り材を供給するための他の適切な拭取り材ディスペンサ、容器及びシステムは、引用によりここに組み入れる、Buczwinski他の米国特許第5,785,179号、Zanderの米国特許第5,964,351号、Zanderの米国特許第6,030,331号、Haynes他の米国特許第6,158,614号、Huang他の米国特許第6,269,969号、Huang他の米国特許第6,269,970号、及びNewman他の米国特許第6,273,359号に記載されている。
本発明は、以下の実施例を参照しながら良く理解することができる。
【0039】
試験方法
以下の試験方法が各実施例において用いられる。
:嵩は、1つの製品シートの乾燥キャリパをその坪量で割ることによって定められる。嵩は、立方センチメートルの寸法をグラムで割ったもの(cm3/g)である。乾燥キャリパは、制御された荷重下で測定された乾燥製品の厚さである。嵩は、以下の方法で測定される。一般に、Emveco社製のEMVECO Model200−Aキャリパ試験機のような装置が用いられる。特に、長さ約4インチ×幅約4インチの5つのサンプルが、個々に圧力を受ける。特に、直径2.21インチの円形の金属板であるプラテンがシートに下向きに押し付けられる。プラテンによってかかる圧力は、通常は、約2キロパスカル(0.29psi)である。プラテンがシートに下向きに押し付けられた後に、キャリパが測定される。次いで、プラテンが自動的に戻し上げられる。5つのシートの平均がキャリパとして記録される。TAPPIで指定された温度及び湿度条件でサンプルを調整した後に坪量が求められる。
【0040】
吸収力:吸収力は、材料がある時間にわたって液体(例えば、水又は液体機械油)を吸収する能力のことをいい、その飽和点で材料によって保持された液体の総量に関係する。吸収力は、産業用及び公共施設用タオル及び拭取り紙についての連邦規格No.UU−T−595Cにしたがって測定される。特に、吸収力は、液体の吸収に起因するサンプル重量の増加を測定することによって求められ、吸収された液体の重量をサンプルの重量で割ったものとしてパーセントで表され、次式のとおりである。
吸収力=[(飽和したサンプル重量−サンプル重量)/サンプル重量]×100
試験を行うために用いられた軽質機械油は、品番「6228−1GL」としてE.K.Industriesから入手可能な白色鉱油であった。油は、「NFグレード」のものであり、80ないし90のセーボルトユニバーサル(SU)粘度を有するものであった。
【0041】
テーバ耐磨耗性:テーバ耐磨耗性は、制御された回転摩擦作用によってもたらされた布の破壊に関する耐摩耗性のことをいう。耐摩耗性は、特に指定のない限り、連邦標準試験法No.191A方法5306に従って測定される。試験片を磨耗するために単一のホイールのみが用いられる。12.7×12.7cmの試験片が、摩擦ヘッド上のストーンホイール(No.H−18)及び各アーム上の500グラムの釣合い重りを有するテーバ標準摩擦機(モデルNo.E−140−15試験片ホルダを備えたモデルNo.504)の試験片プラットホームにクランプされる。破壊強度の損失は、耐摩擦性を求めるための基準として用いられない。結果は、破損時の摩擦サイクルで得られ、報告され、破損は、布に0.5cmの孔が形成された時点で起こると考えた。
【実施例1】
【0042】
本発明による複合布を形成する能力が実証された。
20の異なるサンプルが、当該技術分野では周知の低濃度湿式堆積製紙機を用いて、6.35ミリメートル(リヨセル及び/又はポリエステル)の平均繊維長を有する合成短繊維と随意的にパルプ繊維から形成された。リヨセル繊維は、1フィラメントあたり1.5デニールを有し、「Tencel」という名称でコネチカット州シェルトン所在のEngineered Fibers Technologies社から得られた。ポリエステル繊維は、1.5デニールの一構成材繊維であり、「Type103」という名称でKosa社から得られた。パルプ繊維は、50重量%の北方軟材クラフト繊維と50重量%の南方軟材クラフト繊維を含むものであった。幾つかの例においては、交絡前の乾燥強度を強化するために短繊維ウェブを形成する前にポリビニルアルコール繊維も加えられた。ポリビニルアルコール繊維は、日本の大阪所在のクラレ社から「VPB−105−1」という商品名で得られ、華氏158度の温度で水に溶けた。結果として得られた湿式堆積短繊維ウェブは、約40から約100グラム毎平方メートルの範囲の坪量を有するものであった。
サンプル1−20を形成するのに用いられた短繊維ウェブの含量を以下の表1に示す。



【0043】
【表1】

【0044】
各短繊維ウェブは、Everhart他の米国特許第5,204,703号にしたがってポリプロピレンスパンボンドウェブ(13.6又は27.2グラム毎平方メートルの坪量)と交絡された。特に、短繊維ウェブは、Albany Internationalから入手可能なAlbany 14FT形成ワイヤ上に堆積され、幾つかの連続するマニホルドを用いて300から1800ポンド毎平方インチまで増減された交絡圧でスパンボンドウェブと水圧交絡された。交絡プロセスの間に用いられた水は、華氏130度から180度の温度であり、それによりポリビニルアルコール繊維を溶解させ、それらを布から除去した。交絡された布は、通気乾燥機(華氏280度の温度の空気)により1分間にわたって非圧縮乾燥され、それにより布は華氏200度までの最大温度に達する。結果として得られる布サンプルは、約50から約125グラム毎平方メートルの範囲の坪量を有し、種々の割合のスパンボンドウェブと短繊維を含むものであった。サンプル1−20の坪量及び総繊維含量を以下の表2に示す。
【0045】
【表2】


幾つかのサンプルの種々の特性を試験した。結果を以下の表3に示す。











【0046】
【表3】

【0047】
上述のように、サンプルの種々の特性は、短繊維の濃度の増加と共に改善された。例えば、布の嵩は、ポリエステル短繊維の濃度の増加と共に増加した。同様に、水と油の両方の吸収力は、短繊維の総量の増加と共に増加した。
さらに、サンプル14のSEM写真も図2及び図3に示されている。図示のように、布100は、表面103と表面105とを有する。表面103は、突き出ている大部分の短繊維102を含む。同様に、表面105は、大部分のスパンボンド繊維104を含むが、幾らかの短繊維102も含む。特に、短繊維102の端部又は湾曲部のいずれかが、表面105から突き出る。それらが突き出る形に関係なく、短繊維102は、各表面103及び105に増強された柔らかさ及び手触りを与えることができる。さらに、短繊維102は、主にz方向に配向され、一方、スパンボンド繊維104は、主にx及びy方向に配向される。
【実施例2】
【0048】
本発明による複合布を形成する能力が実証された。
7つの異なるサンプルが、当該技術分野では周知の高濃度湿式堆積製紙機を用いて、3.175ミリメートル(リヨセル及び/又はポリエステル)の平均繊維長を有する合成短繊維と随意的にパルプ繊維から形成された。リヨセル繊維は、1フィラメントあたり1.5デニールを有し、「Tencel」という名称でコネチカット州シェルトン所在のEngineered Fibers Technologies社から得られた。2つのタイプのポリエステル繊維が用いられた。第1のタイプは、「Type103」という名称でKosa社から得られた一構成材ポリエステル繊維(1.5デニール)であった。第2のタイプは、「Type105」という名称でKosa社から得られた二構成材ポリエステル繊維(3デニール)であった。さらに、パルプ繊維は、50重量%の北方軟材クラフト繊維と50重量%の南方軟材クラフト繊維を含むものであった。結果として得られた湿式堆積短繊維ウェブは、約30から約90グラム毎平方メートルの範囲の坪量を有するものであった。
サンプル21−27を形成するのに用いられた短繊維ウェブの含量を以下の表4に示す。



【0049】
【表4】

【0050】
各短繊維ウェブは、Everhart他の米国特許第5,204,703号にしたがってポリプロピレンスパンボンドウェブ(11.9又は27.2グラム毎平方メートルの坪量)と交絡された。特に、短繊維ウェブは、Albany Internationalから入手可能なAlbany 14FT形成ワイヤ上に堆積され、幾つかの連続するマニホルドを用いて300から1800ポンド毎平方インチまで増減された交絡圧でスパンボンドウェブと水圧交絡された。交絡プロセスの間に用いられた水は、華氏130度から180度の温度であり、それによりポリビニルアルコール繊維を溶解させ、それらを布から除去した。交絡された布は、通気乾燥機(華氏280度の温度の空気)により1分間にわたって非圧縮乾燥され、それにより布は華氏200度までの最大温度に達する。結果として得られる布サンプルは、約50から約115グラム毎平方メートルの範囲の坪量を有し、種々の割合のスパンボンドウェブと短繊維を含むものであった。サンプル21−27の坪量及び総繊維含量を以下の表5に示す。
【0051】
【表5】

【0052】
本発明は、特定の実施形態に関して詳細に説明されたが、上記の理解が得られれば、これらの実施形態の変化、変形及び均等物を直ちに想起できることが、当業者には明らかであろう。したがって、本発明の範囲は、添付の請求項及びそのいずれかの均等物として評価されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本発明の複合布を形成するための一実施形態の概略図である。
【図2】実施例1において形成されたサンプルの断面SEM写真(5.00kV、x35)である。
【図3】図2に示されたサンプルの別の断面SEM写真(5.00kV、x25)である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
布を形成する方法であって、約0.3から約25ミリメートルの平均繊維長さを有し、少なくとも一部が合成繊維である短繊維を連続フィラメントから形成された不織ウェブと水圧交絡して複合材を形成し、前記短繊維は、前記複合材は第1表面と第2表面を定め、前記第1表面は前記短繊維を多く含み、前記第2表面は前記連続フィラメントを多く含み、前記短繊維の少なくとも一部が前記第2表面から突出するようにすることを特徴とする方法。
【請求項2】
前記短繊維を前記連続フィラメントから形成された不織ウェブと水圧交絡する前に、前記短繊維をウェブに形成することをさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記短繊維は、約100から約4000psig、好ましくは約200から約3500psig、好ましくは約300から約2400psigの流体圧力で前記不織ウェブと水圧交絡されることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記複合材を非圧縮乾燥することをさらに含むことを特徴とする請求項1、請求項2又は請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記複合材を通気乾燥することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項6】
連続フィラメントから形成された不織ウェブと水圧交絡された短繊維を含む複合材であって、前記短繊維が約0.3から約25ミリメートルの平均繊維長さを有し、前記短繊維の少なくとも一部が合成繊維であり、前記複合材が第1表面と第2表面を定め、前記第1表面が大半の前記短繊維を含み、前記第2表面が大半の前記連続フィラメントを含み、前記短繊維の少なくとも一部がまた、前記第2表面から突き出していることを特徴とする複合材。
【請求項7】
前記短繊維が、前記複合材の約40重量%より多い量であり、好ましくは前記複合材の約60重量%から約90重量%の量であることを特徴とする上記請求項のいずれかに記載の方法又は複合材。
【請求項8】
前記短繊維が、約0.5から約10ミリメートル、好ましくは約3から約8ミリメートルの平均繊維長さを有することを特徴とする上記請求項のいずれかに記載の方法又は複合材。
【請求項9】
前記短繊維が、約6より小さい、好ましくは約3より小さい、1フィラメント当たりのデニールを有することを特徴とする上記請求項のいずれかに記載の方法又は複合材。
【請求項10】
前記短繊維の少なくとも約50重量%、好ましくは少なくとも約70重量%、好ましくは少なくとも約90重量%が合成繊維であることを特徴とする上記請求項のいずれかに記載の方法又は複合材。
【請求項11】
前記合成短繊維が、ポリビニルアルコール、レーヨン、ポリエステル、ポリ酢酸ビニル、ナイロン、及びポリオレフィンからなる群から選択された1つ又はそれ以上のポリマーから形成されることを特徴とする上記請求項のいずれかに記載の方法又は複合材。
【請求項12】
前記短繊維はさらにセルロース繊維を含むことを特徴とする上記請求項のいずれかに記載の方法又は複合材。
【請求項13】
前記セルロース繊維が、前記短繊維の約50重量%より少ない、好ましくは約30重量%より少ない、好ましくは約10重量%より少ない量であることを特徴とする請求項12に記載の方法又は複合材。
【請求項14】
前記連続フィラメントから形成された不織ウェブがスパンボンドウェブであることを特徴とする上記請求項のいずれかに記載の方法又は複合材。
【請求項15】
前記複合材が、約5cm3/gより大きい、好ましくは約7から約50cm3/g、好ましくは約10から約40cm3/gの嵩を有することを特徴とする上記請求項のいずれかに記載の方法又は複合材。
【請求項16】
上記請求項のいずれかに記載の複合材から形成された拭取り材。
【請求項17】
前記拭取り材が、前記複合材の約150重量%より多い量の液体を含有することを特徴とする請求項16に記載の拭取り材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2007−516363(P2007−516363A)
【公表日】平成19年6月21日(2007.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−546945(P2006−546945)
【出願日】平成16年6月10日(2004.6.10)
【国際出願番号】PCT/US2004/018873
【国際公開番号】WO2005/068702
【国際公開日】平成17年7月28日(2005.7.28)
【出願人】(504460441)キンバリー クラーク ワールドワイド インコーポレイテッド (396)
【Fターム(参考)】