説明

柔軟性のある多層フッ化ビニリデンチューブ

本発明は、フッ化ビニリデン接触層を有し、耐久性、柔軟性のある多層チューブ又はその他構造体に関する。このようなチューブは高い純度の接触用途又は化学耐性が必要な用途に特に使用される。フッ化ビニリデン層は溶融可能であり、ホモポリマー、コポリマー、又はターポリマーであれば良い。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接触層としてフッ化ビニリデンホモポリマー又はコポリマーを有し、耐久性を有し、柔軟性のある多層フッ化ビニリデンチューブ又はその他構造体に関する。そのようなチューブは、化学耐性が必要となる高純度のものに接触する用途、及び/又は化学薬品に接触する用途に特に有用である。フッ化ビニリデン層は、融解処理可能であり、又、ホモポリマー、コポリマー、ターポリマー、それらのブレンド又はアロイであれば良い。
【背景技術】
【0002】
耐久性を有し、柔軟性のあるチューブは多くの商業的工業的用途に有用である。このようなチューブは、長い時間ひねりを加えることもでき、長い時間加圧しても良く、それでも、素早くもとの形に戻る。このようなチューブは使用に際して、柔軟性を失うことは許されず、クラックや破損が生じることも許されない。
【0003】
多くの用途及び製造工程においては、耐久性を有し、柔軟性があるだけでなく、化学的及び生物学的に不活性であるチューブが必要とされている。そのようなチューブの内側表面は、流体(液体又は気体)が通過するときにそれらと反応することは許されず、優れたバリア特性を有し、抽出物が無いか殆ど出ないようにすべきである。
【0004】
現在のチューブ技術分野では、生物薬剤用途には、シリコーン、熱可塑性ポリオレフィン(TPO)、熱可塑性ポリエチレン(TPE)及び延伸PTFE複合体チューブが使用されている。
【0005】
チューブの用途の一つとして、蠕動ポンプへの使用がある。蠕動ポンプは非接触の移送式ポンプであり、流体の移送に使用される。流体の移送は、連続的なチューブ壁の加圧によるものであり、これにより流体を移動させる圧力を発生させる。このような用途においては、優れた形状記憶と回復力が必要とされる。これらの用途には、高い純度、優れたバリア特性を有する化学耐性を持つチューブが必要となる。蠕動ポンプは、流体がポンプに接触することなく、化学及び生物薬剤物質を移送するのに有用である。
【0006】
フッ化ビニリデン(PVDF)は、その高い化学耐性と、その不活性性が知られている。しかしながら不運なことに、PVDFは、蠕動ポンプの厳しいサイクルに耐えるのに必要な高い柔軟性と回復力を有していない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明は、ポリフッ化ビニリデン接触薄層、及び、エラストマー非接触層を含む柔軟性を有する多層構造体に関する。
【0010】
ここで使用する「柔軟性を有する」とは、多層構造体が繰り替えしの変形の後であっても元の形を回復する能力を保持することを意味する。その構造は、変形可能でなければならず、元の構造への回復力を示さなければならない。
【0011】
PVDF接触層は、抽出物が出ないか非常に少ないことと併せて、優れた化学耐性及び透過抵抗を示す。PVDFは、抽出物のために純粋に商業的に利用可能なポリマーの一つである。又、半結晶フッ素化ポリマーも、広い範囲の化学物質に対して良好な化学耐性を示す。さらに、H2O、CO2、O2、CO及び炭化水素燃料、並びに、他の多くの化合物に対して良好な透過抵抗を示す。
【0012】
本発明のポリフッ化ビニリデンポリマーは、フッ化ビニリデン(VDF)を重合したホモポリマー、及び、コポリマー、ターポリマー、さらに高次のポリマーであって良く、フッ化ビニリデン単位は、ポリマー中の全てのモノマー単位の重量に対して、70%以上であり、好ましくは75%以上である。フッ化ビニリデンのコポリマー、ターポリマー、及び、高次のポリマーは、フッ化ビニリデンを下記の群から選択される一つか二つ以上のモノマーと反応させることにより製造する;フッ化ビニル、トリフルオロエテン、テトラフルオロエテン、一つ以上が部分的に又は全体にフッ素化されたα−オレフィン(例えば、3,3,3−トリフルオロ−1−プロペン、1,2,3,3,3−ペンタフルオロプロペン、3,3,3,4,4−ペンタフルオロ−1−ブテン及びヘキサフルオロプロペン)、部分的にフッ素化されたオレフィンであるヘキサフルオロイソブチレン、ペルフルオロ化されたビニルエーテル(例えば、ペルフルオロメチルビニルエーテル、ペルフルオロエチルビニルエーテル、ペルフルオロ−n−プロピルビニルエーテル、及び、ペルフルオロ−2−プロポキシプロピルビニルエーテル)、フッ素化されたジオキソール(例えば、ペルフルオロ(1,3−ジオキソール)及びペルフルオロ(2,2−ジメチル−1,3−ジオキソール))、アリル(例えば、2−ヒドロキシエチルアリルエーテル若しくは3−アリルオキシプロパンジオール)、部分的にフッ素化されたアリルモノマー、若しくは、フッ素化されたアリルモノマー、並びに、エテン、又は、プロペン。フッ化ビニル、トリフルオロエテン、テトラフルオロエテン(TFE)及びヘキサフルオロプロペン(HFP)と形成するコポリマー、及び、ターポリマーが好ましい。
【0013】
コポリマーとしては、約71〜99重量%VDFを含み、それに対応して、約1〜29重量%TFEを含むこと、約71〜99重量%VDFを含み、それに対応して、約1〜29重量%HFP(例えば、米国特許第3,178,399号明細書に開示されている)を含むこと、並びに、約71〜99重量%VDFを含み、それに対応して、約1〜29重量%クロロトリフルオロエチレン(CTFE)を含むことが好ましい。
【0014】
ターポリマーとしては、VDF、HFP及びTFEのターポリマー、並びに、VDF、トリフルオロエテン及びTFEのターポリマーが好ましい。71重量%以上のVDFを含み、他のコモノマーの割合が変化し、ターポリマー中29%以下であるターポリマーが特に好ましい。
【0015】
最も好ましいPVDFコポリマーは、KYNAR FLEX 2800、2750及び2500樹脂(アーケマ社(Arkema Inc.))などのHFPを2〜30重量%有するポリマーである。
【0016】
ポリフッ化ビニリデンは、アーケマ社(Arkema Inc.)のKynar ADXなどの、共重合化、又は、ポスト重合官能化などにより製造される官能化されたPVDFであっても良い。Kynar ADXはブレンドでも、純粋なグラフト化ポリマーでも良い。官能化されたPVDFの接触層への使用は、高純度が主な懸案事項でない工業的応用分野では有用である。しかしながら、生物薬剤用途、及び、高純度が必要とされる他の用途においては、官能化されたモノマーがPVDFから侵出するため、官能化されたPVDFは、直接的な表面接触には有用でない。このように、無水マレイン酸グラフト化PVDFのような機能的PVDFは、化学耐性が必要な場合に使用されたが、生物薬剤用途としては最良の選択とはならない。
【0017】
PVDFは、他のPVDFポリマー、及び、PVDFと相溶可能なポリマーとのブレンド、アロイとしても良い。相溶可能なポリマーとしては、ポリメタクリル酸メチルとポリメタクリル酸メチル共重合体;並びにTHV(テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン及びフッ化ビニリデンのフッ素化ターポリマー)である。ブレンドやアロイの場合、組成物全体でPVDFが50重量%以上含まれている。
【0018】
PVDF接触層は、厚さが3〜500μm、好ましくは15〜150μm、より好ましくは25〜75μmである。PVDF層の厚さと組成は、その構造が使用されるであろうその用途によって決まる。
【0019】
ここで使用される「多層」構造又は「多層」チューブは、接触層(チューブの内側の層)がPVDFである、2つか3つ以上の層を有する構造を意味する。この構造は、2、3、4、5、6、又は7以上の層の接触を含む。結合層及び接着層は、構造の一部として含んでも良く、又、異なる層は、結合層及び接着層なしに接着しても良い。
【0020】
一般的に、ポリフッ化ビニリデンは、変形が続いた時に、その元の形に戻るのに十分な柔軟性を有していない。従って、発明の構造としては、PVDF接触層、及び、PVDF接触層の欠点を補填する弾性を有するエラストマー層を有する多層構造体である必要がある。それにより、全体の多層構造体として、柔軟性と回復力を有し、それにより数百回、数千回の変形回復が可能となる。
【0021】
弾性ポリマーは、負荷が無くなった時、その元の形に戻す能力を有するポリマーである。本発明のエラストマー層に最も有効な弾性ポリマーは、溶融加工が容易なポリマーである。弾性層としては、PVDF層に適用可能であり、第二の操作でキュアできるものであれば良い。使用できるエラストマーの例としては、これに限定されるわけではないが、PEBAX(アーケマ社(Arkema Inc.))などの弾性ポリアミドTPE(熱可塑性エラストマー);SANTOPRENE(Advanced Elastomer Systems製のポリプロピレン−EPDM TPV)などの熱可塑性硬質ゴム(TPV); Engage(ダウケミカル社(Dow Chemical)製のエチレンープロピレンのポリオレフィンエラストマー)などの熱可塑性ポリオレフィン(TPO);SANTOPRENEなどのグラフト化又は反応させた無水マレイン酸又はグリシダルメタクリル酸を含む官能基を含む熱可塑性硬質ゴム(TPV); ポリアミドベース(PAベース)又は熱可塑性ポリエステルエラストマーベース(例えば、デュポン製のHYTRELなど)の熱可塑性硬質ゴム;SEBS(Shell製のスチレン−エチレン−ブチレン−スチレン共重合体)などのアクリル酸ゴム;熱可塑性ポリウレタン(ポリエステル又はポリエーテルをベースとしたTPU);HYTRELなどのポリエステルタイプのTPE;フルオロエラストマー(デュポン製のVITON、アーケマ社製のKynar Ultraflex);シリコーン、ネオプレン、ニトリルゴム、ブチルゴム、ポリアミド類、ポリオレフィン(例えばポリエチレンとポリプロピレン)、塩化ビニル(例えば、PVC及び柔軟性を有する典型的には可塑化されたPVC)などである。
【0022】
PVDFを有する多層構造体の構築の難しさの一つは、少ない物質で良好なPVDFへの接着を得ることであり、従って、回復力を有する多層構造体の構築は挑戦的な試みである。ある実施形態例によれば、アーケマ社製のKYNAR ADXなどの無水マレイン酸による官能化されたPVDFに直接接着させることで、その後多くのエラストマー配合物を接着させることができる。
【0023】
PVDFのエラストマーへの接着の他の方法は、結合層の利用である。結合層は、本分野では周知であり、エラストマー層の種類によって選択されるべきものである。又、結合層としては、これに限定されないが、以下の物質から選択される;KYNAR ADX、LOTADER(アーケマ製の官能化されたポリエチレン)、OREVAC(アーケマ製の官能化されたPE)、熱可塑性ポリウレタン(TPU)、CPE(塩化ポリエチレン)、官能化された結合層(TPO−熱可塑性オレフィン)、ポリアミド類、アミン末端のポリアミド、フッ素重合体、ポリオレフィン、ポリメチルメタクリレート、及び他のアクリルである。場合によって、これらの物質をブレンドすることで優れた結合層を得ることができる。例えば、TPU及びPebaxのブレンドであれば、Kynar及びPebax構造のための優れた高温結合層を提供することができる。他の例としては、EngageをLotaderにブレンドし、Kynar ADXを接着するに十分に官能化された柔軟性のある結合層を製造することができる。さらに、KynarとPMMAとをブレンドすることで、PMMAの特性を強調させることができ、全体の構造をより強固にできる。
【0024】
エラストマー層は、最終的な用途に必要とされる大きさによって、その厚さを変化させれば良い。一般的には、エラストマー層の厚さは、250〜1500μmの範囲にある。PVDFと同じか、薄くても良いが、エラストマー層の厚さは、その構造の回復力を最大にするためには、一般的には、PVDFよりも厚くなる。
【0025】
本発明の多層構造体を、柔軟性のあるチューブに使用するに際して、チューブはいずれの大きさであっても良い。蠕動ポンプに使用する典型的なチューブサイズは1/8インチ〜2インチである。
【0026】
多層構造中、一つか二つ以上の中間のエラストマー層と共に、外側層として接触層と同じか異なる組成物を持つPVDF層を有するものも本発明の範囲内である。外側のPVDF層を持つことによりPVDFバッグのような他のPVDF構成要素を結合することができ、それにより生物薬剤用途に使用することが可能となる。外側のPVDFとしては、純粋なPVDF、又は、可塑剤をDBS(ジブチルセバシン酸)とした可塑性PVDFいずれでも良い。可塑剤を添加することで、PVDFの剛性を減少させることができ、良好な回復力を提供できる。
【0027】
本発明の一実施形態例によれば、PVDFホモポリマー又はコポリマーの二層構造が、柔軟性のある層として、アーケマ社のKYNARFLEXなどの柔軟性のあるPVDFに囲まれていても良い。これであれば全体的にポリフッ化ビニリデンにより作成されているので、リサイクル、再使用に大きな利点を有する。
【0028】
バリア特性、色、透明度、コスト削減、及び、物理的特性の強化等他の特定の特性を与えるために多層構造体に他の層を加えても良い。ある実施形態例においては、ポリビニルアルコール層がバリア層として加えられる。
【0029】
本発明において、他の可能な構造を以下に示す。以下のリストと情報を基礎として、当業者であれば多くの類似構造を想起可能である。リストにあるように、最初にリストされる物質(PVDF)は生物薬剤または化学物質と接触し、又、PVDFのホモポリマー、及び、コポリマー、ターポリマー、官能化されたホモポリマー、又は、官能化されたコポリマーであって良い。
−PVDF/KYNAR ADX/結合層/エラストマー
−PVDF/KYNAR ADX/LOTADER/PEBAX
−PVDF/KYNAR ADX/TPU/PEBAX
−KYNAR ADX/TPU/PEBAX
−PVDF/KYNAR ADX/ポリアミド(アミン末端が好ましい)/PEBAX
−PVDF/KYNAR ADX/TPU/EVOH/TPU
−PVDF/TPU/EVOH/TPU
−PVDF/KYNAR ADX/LOTADER/PEBAX/LOTADER/KYNAR ADX/PVDF
−KYNAR ADX/LOTADER/PEBAX
−PVDF/KYNAR ADX/LOTADER/TPO
−KYNAR ADX/LOTADER/TPO
−PVDF/TPU/PEBAX
−KYNAR/ゴム
−KYNAR ADX/ゴム
−KYNAR/KYNAR ADX/ゴム
−KYNAR/KYNAR ULTRAFLEX
−KYNAR/KYNAR ULTRAFLEX/TPU
−KYNAR/KYNAR ADX/シリコーン
−KYNAR 2500/KYNAR ADXとKYNAR 2500のブレンド/LOTADER/PEBAX
−KYNAR 2500/KYNAR ADXとKYNAR 2500のブレンド/LOTADER/ENGAGE
−KYNAR/KYNAR ADX/EVOH/OREVAC/ポリエチレン
−KYNAR/KYNAR ADX/EVOH/ナイロン
−KYNAR/PMMA/PVC
−KYNAR/TPU/PVC
−KYNAR/KYNAR ADX/TPU+PVC
【0030】
PVDFを内側、外側に両方に含んだ構造としては、例えば、以下の通りであるが、以下に限定されるわけではない。
−PVDF/KYNAR ADX/LOTADER/PEBAX/LOTADER/KYNAR ADX/PVDF
−PVDF/KYNAR ADX/LOTADER/TPO/LOTADER/KYNAR ADX/PVDF
−PVDF/TPU/PEBAX/TPU/PVDF
−PVDF/TPU/PVDF
−PVDF/ゴム/PVDF
−PVDF/KYNAR ULTRAFLEX/PVDF
−PVDF/KYNAR ULTRAFLEX/TPU/PVDF
−PVDF/シリコーン/PVDF
【0031】
本発明の多層構造体は、共押出成形やラミネート加工のような既知の手段で形成することができる。好ましい方法としては、2〜7層を押出す方法である多層押出成形による方法である。
【0032】
本発明の多層構造体好ましい使用は、柔軟性のあるチューブとしての使用である。PVDF接触層を有する多層チューブは、その単一構造において、柔軟性、耐久性、純度、熱抵抗力、透過抵抗、張力の強度及び化学耐性を有している。このような構造体であれば、表面張力が低い表面を有することができ、従って、蛋白質、コレステロール及び脂質の接着を低くすることができる。
【0033】
多層構造体は、多くの最終製品に使用するためにフィルムに形成することもできる。本分野の当業者であれば、本発明の柔軟で、耐久性を有し、不活性物質の多くの用途を想像できる。可能性のある用途しては、容器、チューブ及びバッグなどであり、単一の接触流体物質を使用するシステムに提供する能力がある。柔軟性のある構造体は良好な化学耐性と不活性性を有しているので、本発明のフィルムを使用して、多くの化学物質を製造することができ、特に、生物学的、生医学的、生物薬剤に接触する用途に特に使用可能である。本発明の他の用途としては、ガスサンプリングバッグであり、例えば、自動車排出物、ドラムのための化学耐性裏地、温室などのカバー等である。
【0034】
ある実施形態例においては、本発明の柔軟性のある多層構造体は、個人の保護服の部品として使用でき、特に、PVDF接触層を有するチューブを裏返して環境に露出させ、柔軟性のある層を内側とする。この構造体であれば、化学及び生物耐性を有する保護スーツ、ブーツ、手袋、又は他の上着に使用することができることが見出された。肌に接触する層としてPEBAXを使用することで、個人用保護具に一定の通気性を提供することができる。水を吸着する結合層を使用したPEBAX/結合層/PVDFが、化学物質又は生物試薬を排除し、体は快適となる。このような保護衣服は、PVDF層により動きに対応する柔軟性、耐久性、強度と抵抗性を有している。
【実施例】
【0035】
多層チューブは、共押出成形により形成し、チューブがどれくらいのサイクル抵抗力を有するのかチェックするために、一定時間、蠕動ポンプ試験により試験を行った。チューブにはさらに、以下の一か二以上の試験を行った。ASTM試験;引っ張り特性(D412);伸張(D412);デュロメーター(D2240);100%及び200%の伸張係数(D412);引き裂き抵抗(D624);及び、比重(D792)。
【0036】
実施例1
3層チューブPEBAX 4033/LOTADER AX8900/KYNAR 2750を製造した。層の厚さは、650μm/75μm/150−170μmであった。チューブの外側の径は8mmであった。チューブは優れた柔軟性と回復力を示した。
【0037】
実施例2
4層チューブPEBAX 4033/LOTADER AX8900/KYNAR ADX/KYNAR 2750を製造した。層の厚さは、790−830μm/150μm/94−75μm/330−380μmであった。チューブの外側の径は8mmであった。
【0038】
実施例3(比較例)
13%のDBS可塑剤を添加する場合と添加しない場合、両方でKYNAR 2500によりチューブを製造した。チューブの外側の径は3/8インチであり、チューブの厚さは35mmである。可塑剤があるチューブは実質的に可塑剤のないKYNAR 2500製のチューブより柔軟性を有していた。
【0039】
実施例4(比較例)
4層チューブSantoprene 101−64/LOTADER AX8840/ADX 2285−03/KYNAR 2750を製造した。層の厚さは、790−830μm/150μm/94−75μm/330−380μmであった。チューブの外側の径は8mmであった。
【0040】
実施例5
LOTADER AX8840にEngage7086をブレンドしてチューブ全体の柔軟性と接着性を改善したこと以外は実施例4の記載と同様に4層チューブを製造した。
【0041】
実施例6
2つの4層チューブの径は6.2mm及び8.2mmであり、多層金型と多層押出成形を利用して、以下の構造体を製造した。
【0042】
【表1】

【0043】
チューブは層間で良好な接着力を示し、蠕動ポンプに使用するに十分な柔軟性と回復力を有していた。
【0044】
実施例7
8.2mm径の4層チューブであり、以下の構造を有するチューブを、多層ヘッドと多層押出成形により形成した。
【0045】
【表2】

【0046】
チューブは層間で良好な接着力を示し、蠕動ポンプに使用するに十分な柔軟性と回復力を有していた。
【0047】
実施例8−14
本発明では以下の構造体をチューブとして作成した:
−KYNAR 2800/KYNAR ADX/LOTADER/PEBAX 2533、厚さ 5mm/5mm/3mm/35mm
−KYNAR 2800/KYNAR ADX/LOTADER/TPO、厚さ 5mm/5mm/3mm/35mm
−KYNAR 2800/KYNAR ADX/LOTADER/TPU、厚さ 5mm/5mm/3mm/35mm
−KYNAR 2800/KYNAR ULTRAFLEX
−KYNAR2800/可塑性KYNAR ULTRAFLEX、又は、KYNAR 2500
−外側内側両方にKYNAR 2800を有し、内側にKYNAR ULTRAFLEX、又は、KYNAR 2500を有する対称構造
−内側のKYNAR 2800をKYNAR 2500又はKYNAR 740などの他のグレードのKYNARに入れ替えた構造

【特許請求の範囲】
【請求項1】
柔軟性を有する多層構造体であって、
a)ポリフッ化ビニリデンポリマー(PVDF)接触層;
及び、
b)一又は二以上のエラストマー層を含み、
前記ポリフッ化ビニリデン接触層が直接又は間接的にエラストマー層に接着される多層構造体。
【請求項2】
前記PVDF接触層が官能化されたポリフッ化ビニリデンポリマーを含む請求項1に記載の多層構造体。
【請求項3】
前記PVDF接触層が官能化されておらず、可塑剤、色素、添加剤、加工助剤の何れも含まない請求項1に記載の多層構造体。
【請求項4】
前記ポリフッ化ビニリデン接触層の厚さが3〜500μmである請求項1に記載の多層構造体。
【請求項5】
前記エラストマー層の厚さが250〜1500μmである請求項1に記載の多層構造体。
【請求項6】
前記PVDF層がPVDFのユニットを70〜99重量%含むコポリマー又はターポリマーである請求項1に記載の多層構造体。
【請求項7】
前記PVDF層と前記エラストマー層の間に一又は二以上の結合層をさらに含む請求項1に記載の多層構造体。
【請求項8】
官能化されたPVDF、官能化されたポリエチレン、熱可塑性ポリウレタン、塩化ポリエチレン、熱可塑性ポリオレフィン、ポリメチルメタクリレート、ポリアミド、官能化されたポリアミド、及び、これらのブレンドから成る群から選択される一又は二以上の結合層を有する請求項7に記載の多層構造体。
【請求項9】
前記エラストマーが、弾性ポリアミド、官能基をグラフト化若しくは反応させた熱可塑性ポリオレフィン、ポリオレフィンエラストマー、エチレン/プロピレンコポリマー、ゴム、スチレン−エチレン−ブチレン−スチレン重合体、熱可塑性ポリウレタン、フルオロエラストマー、シリコーン、シリコーンゴム、ネオプレン、コポリエステルブロック熱可塑性ポリエチレン、ニトリルゴム、ブチルゴム、熱可塑性硬質ポリアミド、ポリオレフィン、及び、塩化ビニルから成る群から選択される請求項1に記載の多層構造体。
【請求項10】
前記エラストマー層が、弾性ポリアミドを含む請求項1に記載の多層構造体。
【請求項11】
前記PVDF層と前記エラストマー層の間にエチレンビニルアルコール層をさらに含む請求項1に記載の多層構造体。
【請求項12】
チューブ、フィルム、又は、バッグである請求項1に記載の多層構造体。
【請求項13】
前記チューブが蠕動ポンプに連結して使用される請求項12に記載の多層構造体。
【請求項14】
前記PVDF接触層が化学的流体又は生物薬剤流体に直接接触する請求項1に記載の多層構造体。
【請求項15】
個人用保護具の部品であって、PVDF層が外側表面にあり環境に露出し、エラストマー層が内側表面である請求項1に記載の多層構造体。
【請求項16】
エラストマー層としてのポリエーテル−ブロック−ポリアミド層、PVDF接触層、並びに、PVDF層とポリエーテル−ブロック−ポリアミド層の間に一以上の結合層を有する請求項1に記載の多層構造体。
【請求項17】
結合層が、
a)熱可塑性ポリウレタン(TPU)、若しくは、ポリエーテル−ブロック−ポリアミドとブレンドしたTPUを含む単一層;
又は、
b)第一層として、TPU、アミン末端ポリアミド又は官能化されたポリエチレンを有し
、第二層として、官能化されたPVDFを有する二重層;
のいずれかを含む請求項16に記載の多層構造体。
【請求項18】
エラストマー層としてTPUを含み、任意にTPUとPVDFの間に結合層を含む請求項1に記載の多層構造体。
【請求項19】
エラストマー層としてオレフィンベースの熱可塑性硬質ゴム、エラストマー層の隣にエチレン−プロピレンのポリオレフィンエラストマーがブレンドされている結合層、PVDF接触層、並びに、エチレン−プロピレンポリオレフィンエラストマーとPVDF接触層の間の官能化されたPVDF層を有する請求項1に記載の多層構造体。
【請求項20】
前記エラストマー層が柔軟性を有するポリ塩化ビニリデンである請求項1に記載の多層構造体。

【公表番号】特表2009−542476(P2009−542476A)
【公表日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−518498(P2009−518498)
【出願日】平成19年6月26日(2007.6.26)
【国際出願番号】PCT/US2007/072082
【国際公開番号】WO2008/005744
【国際公開日】平成20年1月10日(2008.1.10)
【出願人】(500307340)アーケマ・インコーポレイテッド (119)
【Fターム(参考)】