説明

柔軟洗剤組成物

【課題】柔軟性を有した繊維製品の洗浄を行うと同時に、且つ粘土鉱物や粘土造粒物中の不純物が衣類に残留しにくい柔軟洗剤組成物を提供すること。
【解決手段】(a)下記一般式(I)で表されるスメクタイト型粘土鉱物を主成分とする粘土造粒物1〜20質量%を含有する柔軟洗剤組成物であって、[Si(MgAl)O20(OH)X−・X/n[Me]n+ (I)(式中、0<a≦6、0≦b≦4、0.2≦x=12−2a−3b≦1.2であり、MeはNa、K、Li、Ca 、Mg およびNHの少なくとも1種を、nはMeの価数を表す)但し、JIS Z 8801規定の標準篩(目開き74μm)に供した場合、式(II)で算出される該粘土造粒物の未溶解率が0.2〜2.5%である柔軟洗剤組成物。 未溶解率(%)=T/S×100 (II) S : 粘土造粒物の投入質量(g) T : 篩上の残存する未溶解物の乾燥質量

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、柔軟化基剤として粘土鉱物を用いた柔軟洗剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、洗浄後の繊維製品が、繊維処理剤の脱落や塩類の付着等によって、柔らかさを失い、ごわごわした感触になるのを防止するために、洗剤に柔軟化剤を配合することが検討されている。例えば、繊維表面に沈着して繊維製品の風合いに柔軟性を付与する柔軟化剤として、従来、スメクタイト等の粘土鉱物(例えば特許文献1参照。)、ジアルキル型第4級アンモニウム塩等の陽イオン性界面活性剤(例えば非特許文献1参照。)、ポリジメチルシロキサン等のシリコーン(例えば特許文献2参照。)等の配合が知られている。また、近年、配合の容易性、環境対応等の点から、粘土鉱物による柔軟効果の増強方法が検討されている。例えば、ベントナイトとペンタエリトリトール化合物との併用(例えば特許文献3参照。)、粘土鉱物と凝集剤との併用(例えば特許文献4参照。)、ベントナイトと可溶性カリウム塩との併用(例えば特許文献5、非特許文献1参照。)等が知られている。
【0003】
一方、環境・エネルギー問題や経済性への対応に基づいた、洗濯水の低温化、運転時間の短縮化等の近年の洗濯機の傾向は、いずれもスメクタイト等の粘土造粒物の分散速度の遅延の要因となり、そのことに起因する、粘土造粒物の未分散粒子が衣類に残留する心配が増大している。
【0004】
また、分散性が良好であっても粘土造粒物中に含まれる不純物が衣類に残留するという課題を見出した。
【0005】
【特許文献1】特開昭49−85102号公報
【特許文献2】特開2002−249799号公報
【特許文献3】特開平5−140869号公報
【特許文献4】特表2002−541342号公報
【特許文献5】特表平8−506843号公報
【非特許文献1】周知・慣用技術集(衣料用粉末洗剤)、平成10(1998).3.26 発行
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は柔軟洗剤組成物を用いることにより、柔軟性を有した繊維製品等の洗浄を行うと同時に、且つ粘土鉱物や粘土造粒物中の不純物が衣類に残留しにくい柔軟洗剤組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
即ち、本発明の要旨は、
〔1〕 (a)下記一般式(I)で表されるスメクタイト型粘土鉱物を主成分とする粘土造粒物1〜20質量%を含有する柔軟洗剤組成物であって、
[Si(MgAl)O20(OH)X−・X/n[Me]n+ (I)
(式中、0<a≦6、0≦b≦4、0.2≦x=12−2a−3b≦1.2であり、MeはNa、K、Li、Ca 、Mg およびNHの少なくとも1種を、nはMeの価数を表す)
但し、以下に示す攪拌条件とJIS Z 8801規定の標準篩(目開き74μm)に供した場合、式(II)で算出される該粘土造粒物の未溶解率が0.2〜2.5%である柔軟洗剤組成物、
攪拌条件:1リットルのイオン交換水(20℃)に該粘土造粒物1gを投入し、1リットルビーカー(内径105mm)内で攪拌子(長さ35mm、直径8mm)にて20分間攪拌(回転数800rpm)
未溶解率(%)=T/S×100 (II)
S : 粘土造粒物の投入質量(g)
T : 上記攪拌条件にて得られた水溶液を上記篩に供したときに、篩上の残存する未溶解物の乾燥質量(乾燥条件:105℃の温度下に1時間保持した後、シリカゲルを入れたデシケーター(25℃)内で30分間保持する)(g)、及び
〔2〕 スメクタイト型粘土鉱物を主成分とする水分6〜18質量%の粘土鉱物を、調湿されたドライエアーを使用した分級機構を備えた粉砕機を用いて粉砕することで、粉砕後の粘土鉱物の水分を粉砕前の粘土鉱物の水分から5〜25%低減する工程を含む、柔軟洗剤組成物用の粘土造粒物の製造方法、
に関する。
【発明の効果】
【0008】
本発明の柔軟洗剤組成物を用いることにより、柔軟性を有した繊維製品等の洗浄を行うことができ、且つ粘土鉱物及び粘土造粒物中の不純物が衣類に残留しにくいという効果が奏される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
・ 柔軟洗剤組成物
以下、本発明の柔軟洗剤組成物についてさらに詳しく説明する。
<(a)成分>
本発明の(a)成分は、下記一般式(I)で表されるスメクタイト型粘土鉱物を主成分(本願において主成分とは造粒物中50質量%以上含むものを言う)とする粘土造粒物である。
[Si(MgAl)O20(OH)X−・X/n[Me]n+ (I)
(式中、0<a≦6、0≦b≦4、0.2≦x=12−2a−3b≦1.2であり、好ましくは0<a<6、0<b<4、0.2≦x=12−2a−3b≦1.2であり、MeはNa、K、Li、Ca 、Mg およびNHの少なくとも1種を、nはMeの価数を表す)
【0010】
柔軟性能、洗浄性能の点で、柔軟洗剤組成物中の(a)成分の含有量は、1〜20質量%であり、2〜18質量%が好ましく、4〜16質量%がより好ましく、6〜15質量%が更に好ましく、8〜14質量%が特に好ましい。
【0011】
粘土鉱物は、一般的にクォーツ、クリストバライト、カルサイト、長石などの不純物を含有するため、(a)成分の含有量とは、これらの不純物も含んだものである。また、造粒時に供した水やバインダーや添加剤等の成分も(a)成分の含有量に含まれる。また、本発明に用いられる(a)成分としては、ベントナイト等が好ましい。
【0012】
本発明の柔軟洗剤組成物は、粘土造粒物の分散性、衣類残留性の観点から、以下に示す攪拌条件とJIS Z 8801規定の標準篩(目開き74μm)に供した場合、式(II)で算出される粘土造粒物の未溶解率が0.2〜2.5%であることに特徴がある。
攪拌条件:1リットルのイオン交換水(20℃)に該粘土造粒物1gを投入し、1リットルビーカー(内径105mm)内で攪拌子(長さ35mm、直径8mm)にて20分間攪拌(回転数800rpm)
未溶解率(%)=T/S×100 (II)
S : 粘土造粒物の投入質量(g)
T : 上記攪拌条件にて得られた水溶液を上記篩に供したときに、篩上の残存する未溶解物の乾燥質量(乾燥条件:105℃の温度下に1時間保持した後、シリカゲルを入れたデシケーター(25℃)内で30分間保持する)(g)
【0013】
式(II)で表される粘土造粒物の未溶解率は、分散性の観点から、0.4%以上が好ましく、0.6%以上が更に好ましく、0.9%以上が特に好ましい。また、未溶解物の衣類への残留抑制の観点から、2.2%以下が好ましく、1.7%以下が更に好ましく、1.3%以下が特に好ましい。
【0014】
本発明で定義する未溶解率を所望の割合に調整する方法として、造粒工程の前の工程、例えば原料を粉砕する工程で調整することができる。具体的にはバッチ式であれば粉砕時間等、連続式であれば、粉砕機の回転数や分級条件等を調整することで調整が可能である。
【0015】
更に粘土造粒物の分散性の向上の観点から、該粘土造粒物中のNa量が1.0質量%以上であることが好ましく、1.5質量%以上が更に好ましく、2.0質量%以上が特に好ましい。また、同様に粘土造粒物の分散性の向上の観点から、粘土造粒物中のNa/Caの質量比率は1.0以上が好ましく、1.5以上が更に好ましく、2.0以上が特に好ましい。
【0016】
粘土造粒物中のNa量が1.0質量%以上であるとは、下記の方法により測定したNaが1.0質量%以上の粘土造粒物のことをいい、Na源としては鉱石中に予め存在しているものや、粘土造粒物の製造工程にて添加できるNa塩が挙げられる。
【0017】
粘土造粒物中のNa量が1.0質量%以上、或いはNa/Caの質量比率が1.0以上の粘土造粒物を得る方法として、天然品であれば、産地を選択すればよいし、または、例えば粘土造粒物を製造する際に、Na塩等を添加して調整することも可能である。
【0018】
粘土造粒物中のNa/Caの質量比率、及びNa質量%は、次の方法で測定する。
粘土造粒物を乳鉢で粉砕し、目開き125μmの篩を通過した試料0.1gをマイクロウェーブ湿式灰化装置(自動)で硫酸−過酸化水素分解したのち、メスフラスコにて50mLにメスアップして、ICP発光分析装置で測定してNaとCa量を定量して計算する。
【0019】
粘土造粒物の嵩密度は、非分級性の観点から、好ましくは500〜1200g/L、より好ましくは600〜1100g/L、特に好ましくは700〜1050g/Lである。ここで嵩密度は、JIS K 3362により規定された方法を用いて測定する。該粘土造粒物の平均粒径は、低発塵性、非分級性の観点から、好ましくは200〜1000μm、より好ましくは300〜900μm、特に好ましくは400〜800μmである。ここで平均粒径は、JIS Z 8801の標準篩を用いて5分間振動させた後、篩目のサイズによる質量分率から求めることができる。
【0020】
加えて、発塵性、外観の観点から180〜1410μmの平均粒径を含む粘土造粒物が全体の90質量%以上を占めることが好ましく、95質量%以上を占めることがより好ましい。
【0021】
粘土造粒物の水分値としては、粘土造粒物の粒子強度の観点から18質量%以下が好ましく、16質量%以下がより好ましく、14質量%以下が更に好ましい。
【0022】
粘土造粒物の分散液のpHは20℃、2質量%の測定条件にて、ガラス電極法を用いて測定する。品質管理の観点から9.0以上が好ましく、9.5以上がより好ましく、10.0以上が更に好ましい。
【0023】
<柔軟洗剤組成物用の粘土造粒物の製造方法>
本発明の製造方法により製造された粘土造粒物を柔軟洗剤組成物に用いることにより、柔軟性を有した繊維製品等の洗浄を行うと同時に、粘土鉱物や粘土造粒物中の不純物が衣類に残留しにくい柔軟洗剤組成物を提供することを可能にしている。
【0024】
柔軟洗剤組成物用の粘土造粒物の製造方法としては、スメクタイト型粘土鉱物を主成分とする水分6〜18質量%の粘土鉱物を、調湿されたドライエアーを使用した分級機構を備えた粉砕機を用いて粉砕することで、粉砕後の粘土鉱物の水分を粉砕前の粘土鉱物の水分から5%以上低減する工程を含むことが挙げられる。
【0025】
粉砕前の粘土鉱物の水分は粉砕機内への付着抑制や粉砕性の点から6〜18質量%、好ましくは7〜16質量%、更に好ましくは8〜14質量%である。これを分級機構を備えた粉砕機に用いて粉砕するときに調湿されたドライエアーを使用することで、粉砕後の水分を調整することが可能となり、ドライエアーの湿度は、粉砕性の点から温度20〜30℃の相対湿度50%以下が好ましく、相対湿度35%以下が更に好ましく、相対湿度20%以下が特に好ましい。また、該ドライエアーを用いて風力分級を行うことで、分級装置への粘土鉱物の付着抑制に非常に有効である。
【0026】
更に、粉砕後の水分を粉砕前の粘土鉱物の水分から5〜25%低減することが、粘土造粒物中の未溶解率を所望の範囲に調整するために重要であり、粉砕後の水分は7〜22質量%が好ましく、10〜20質量%が更に好ましい。
【0027】
<(b)成分>
(b)成分の非イオン性界面活性剤は、柔軟洗剤組成物中に0.5〜18質量%含有するのが好ましい。柔軟性能、洗浄性能、衣類残留性の点で、その含有量は、1.0〜15質量%がより好ましく、2.5〜12質量%がさらに好ましく、3〜9質量%がより更に好ましく、4〜8質量%が特に好ましい。
【0028】
(b)成分の具体的な化合物としては、ポリオキシアルキレンアルキル(炭素数8〜20)エーテル、アルキルポリグリコシド、ポリオキシアルキレンアルキル(炭素数8〜20)フェニルエーテル、ポリオキシアルキレンソルビタン脂肪酸(炭素数8〜22)エステル、ポリオキシアルキレングリコール脂肪酸(炭素数8〜22)エステル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックポリマーなどを挙げることができる。特に、炭素数10〜18のアルコールにエチレンオキシドやプロピレンオキシド等のアルキレンオキシドが付加しているポリオキシアルキレンアルキルエーテルが好ましい。アルキレンオキシドの平均付加モル数は柔軟性向上の点から4〜20が好ましく、4〜16がより好ましく、4〜12が更に好ましく、4〜8が特に好ましい。非イオン性界面活性剤は、HLB値(グリフィン法で算出)が10. 5〜15. 0のものが好ましく、更に11. 0〜14. 5のものが好ましい。
【0029】
<(c)成分>
(c)成分の非石鹸陰イオン性界面活性剤は柔軟洗剤組成物中、6〜27質量%含有するのが好ましい。柔軟性能、洗浄性能の点で、その含有量は、8〜26質量%がより好ましく、10〜25質量%がさらに好ましく、12〜25質量%がより更に好ましく、15〜25質量%が特に好ましい。
【0030】
(c)成分の具体的な化合物としては、炭素数10〜18のアルコールの硫酸エステル塩、炭素数8〜20のアルコールのアルコキシル化物の硫酸エステル塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、パラフィンスルホン酸塩、α−オレフィンスルホン酸塩、α−スルホ脂肪酸塩、α−スルホ脂肪酸アルキルエステル塩などを挙げることができる。本発明では特に、アルキル鎖の炭素数が10〜14の、より好ましくは12〜14の直鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩やアルキル鎖の炭素数が10〜18のアルキル硫酸塩を含有することが好ましい。対イオンとしては、アルカリ金属塩やアミン類が好ましく、特にナトリウム及び/又はカリウム、モノエタノールアミン、ジエタノールアミンが好ましい。
また、アルキル硫酸塩との混合系がより好ましく、アルキルベンゼンスルホン酸塩/アルキル硫酸塩の質量比が30/1〜1/1が更に好ましく、5/1〜6/5が特に好ましい。さらに、柔軟性の観点より、アルキル硫酸塩のアルキル基の分岐鎖/直鎖の比率は、好ましくは10/90〜99/1、より好ましくは20/80〜97/3、さらに好ましくは30/70〜95/5、特に40/60〜90/10が好ましい。
【0031】
<(d)成分>
本発明の柔軟洗剤組成物はさらにアルカリ剤を好ましくは10〜35質量%含有する。アルカリ剤成分としては、炭酸塩、結晶性珪酸塩、非晶質珪酸塩等を挙げることができる。洗浄性の観点から炭酸塩は柔軟洗剤組成物中、12〜30質量%がより好ましく、15〜25質量%がさらに好ましい。結晶性珪酸塩と非晶質珪酸塩を合わせた珪酸塩の含有量は、柔軟性の観点から、好ましくは6質量%以下、より好ましくは4質量%、更に好ましくは2質量%以下である。
【0032】
<(e)成分>
本発明の柔軟洗剤組成物は(e)成分としてゼオライト等の結晶性アルミノ珪酸塩を好ましくは3〜35質量%配合する。(e)成分としては、種々のゼオライト、好ましくは平均粒径が1〜5μmであるゼオライトを挙げることができ、洗浄性及び粘土造粒物の分散性の観点から(e)成分は柔軟洗剤組成物中、6〜30質量%がより好ましく、8〜27質量%がさらに好ましい。
【0033】
また、本発明の柔軟洗剤組成物は、さらに柔軟性の点で、柔軟洗剤組成物中、脂肪酸塩を0.3〜3質量%含有することが好ましく、0.4〜2質量%がより好ましく、0.5〜1.5質量%が更に好ましい。
【0034】
脂肪酸塩としては、例えば、炭素数10〜22の脂肪酸等が挙げられる。炭素数は10〜18が好ましい。対イオンとしてはナトリウムやカリウム等のアルカリ金属の塩が好ましく、特にナトリウム塩が好ましい。
【0035】
<水分>
また、柔軟洗剤組成物は、安定性、生産性の点で、水(JIS K 3362:1998記載の過熱減量法による水分)を柔軟洗剤組成物中、0. 1〜10質量%含有することが好ましく、0. 2〜6質量%がより好ましく、0. 5〜4質量%が更に好ましい。
【0036】
<その他の成分>
本発明の柔軟洗剤組成物は、衣料用洗剤の分野で公知のビルダー(非晶質アルミノ珪酸塩、トリポリリン酸ナトリウム、ピロリン酸ナトリウム、有機系ビルダーとしては、アミノカルボン酸塩、ヒドロキシアミノカルボン酸塩、ヒドロキシカルボン酸塩、シクロカルボン酸塩、エーテルカルボン酸塩及び有機カルボン酸(塩)ポリマー等)、再汚染防止剤(ポリアクリル酸塩、カルボキシメチルセルロース等)、その他の柔軟化剤、蛍光染料、抑泡剤(石鹸、シリコーン等)、酵素(プロテアーゼ、セルラーゼ、アミラーゼ、リパーゼ等)、酵素安定化剤、着色剤、香料、漂白剤、漂白活性化剤等を含有させることができる。
【0037】
以上のような組成を有する本発明の柔軟洗剤組成物は、前記各成分を公知の方法で混合することによって製造することができ、流動性および耐ケーキング性の点で、表面改質剤を用いて表面改質されてもよい。
【0038】
2.柔軟洗剤組成物の物性
本発明の柔軟洗剤組成物は、安定性の点で、粉末や錠剤形態であることが好ましく、粉末形態がより好ましい。低温溶解性、安定性の点で、JIS K 3362:1998記載のふるい分け機械によるふるい分け方法によって測定される粒度から求められる平均粒径は200〜1000μmが好ましく、より好ましくは250〜900μm、更に好ましくは300〜800μmである。低温溶解性、安定性の点で、JIS K 3362:1998記載方法によって測定される見かけ密度は300〜1200g/Lが好ましく、400〜1100g/Lがより好ましく、600〜1000g/Lが更に好ましく、700〜980g/Lが特に好ましい。
【0039】
洗浄性能、柔軟性能、損傷性の点で、柔軟洗剤組成物のJIS K3362:1998記載の20℃で測定する0.1質量%の水溶液のpHは8〜12が好ましく、9〜11.5がより好ましく、9.5〜11が更に好ましく、10〜11が特に好ましい。
【0040】
本発明の他の態様においては、該粘土造粒物を除いた洗剤粒子の未溶解率が、以下に示す攪拌条件とJIS Z 8801規定の標準篩(目開き74μm)に供した場合、式(III)で算出され、0.50%未満である、柔軟洗剤組成物が挙げられる。
攪拌条件:1リットルの硬水(71.2mgCaCO /リットル、Ca/Mgのモル比7/3、 5℃)に該洗剤粒子1gを投入し、1リットルビーカー(内径105mm)内で攪拌子(長さ35mm、直径8mm)にて10分間攪拌(回転数800rpm)
未溶解率(%)=M/D×100 (III)
D : 洗剤粒子の投入質量(g)
M : 上記攪拌条件にて得られた水溶液を上記篩に供したときに、篩上の残存する未溶解物の乾燥質量(乾燥条件:105℃の温度下に1時間保持した後、シリカゲルを入れたデシケーター(25℃)内で30分間保持する)(g)
粘土造粒物を除いた洗剤粒子の未溶解率は、衣類への残留抑制の観点から、0.50%未満、好ましくは0.40%未満、更に好ましくは、0.30%未満、特に好ましくは0.20%未満である。
このような溶解性に優れた洗剤粒子を得る方法としては、特に限定されないが、例えば特許第3269616号実施例2記載の洗剤粒子、特許第2936220号実施例1記載の洗剤粒子、特開2004−115791実施例1記載の洗剤粒子等の製法が挙げられる。
【実施例】
【0041】
実施例1〜9、比較例1〜2
粘土造粒物、漂白剤、漂白活性化剤、酵素、香料、および表面改質用ゼオライト6質量%を除いた成分で、洗剤ベースを得た。これに、残りの成分を混合して柔軟洗剤組成物を得た。柔軟洗剤組成物の組成を表1に示す。
【0042】
得られた柔軟洗剤組成物は、全て、JIS K3362:1998記載の20℃で測定する0.1質量%の水溶液のpHは10〜11の範囲、平均粒径は300〜800μmの範囲、見かけ密度は700〜980g/Lの範囲であった。また、粘土造粒物を除いた洗剤粒子(洗剤ベースともいう)の未溶解率は全て0.02%〜0.45%の範囲であった。
【0043】
【表1】

【0044】
なお、得られた柔軟洗剤組成物の洗浄力及び柔軟性及び衣類残留性を以下の方法に従って評価した。これらの結果を表1に示す。
【0045】
(襟あか布の調製)
JIS K3362:1998記載の襟あか布を調製した。
【0046】
(洗浄条件及び評価方法)
JIS K 3362:1998記載の衣料用合成洗剤の洗浄力評価方法に準じ、表1の柔軟洗剤組成物と洗浄力判定用指標洗剤の洗浄力を比較した。表1の柔軟洗剤組成物の使用濃度を1. 0g/Lとした。
評価基準 ○:指標洗剤より勝る
△:指標洗剤と同等
×:指標洗剤より劣る
【0047】
(評価用タオルの調製)
市販の綿タオル(綿100%)をミニ洗濯機(National製「N−BK2」)に供し、また、その際の前処理剤には非イオン性界面活性剤(炭素数12の1級アルコールにエチレンオキサイドを平均6モル付加させたもの)、結晶性シリケート(プリフィード顆粒品)、炭酸ナトリウムを1:1:3(質量比)で混合したものを0.5g/Lで使用した。水温20℃で7分洗浄後、遠心脱水、3分ためすすぎ、脱水、3分ためすすぎ、脱水を合計5回繰り返し、処理剤を除去したものを使用した。
【0048】
(柔軟評価方法)
20℃の水5Lに表1の柔軟洗剤組成物5.0g、綿タオル0.3kg(70cm×30cmで4枚)を投入し、7分間洗った。脱水後、水5Lで3分ためすすぎ、脱水、3分ためすすぎ、脱水して風乾した。
柔軟洗剤組成物で洗ったタオルと前処理タオルとを一対として5人の判定者が手触りの柔らかさを官能評価した。差がない場合及び硬くなる場合を0点、わずかに柔らかくなる場合を1点、少し柔らかくなる場合を2点、明らかに柔らかくなる場合を3点とし、5人の合計点を以下のように示した。
評価基準
◎:合計10点以上
○:合計6点以上10点未満
△:合計3点以上6点未満
×:合計3点未満
【0049】
(衣類残留性の評価方法)
5℃の水5Lに表1の柔軟洗剤組成物10.0g、黒色綿ブロード40薄地((株)谷頭商店製)0.3kg(30cm×38cmに加工したもので19枚)を投入し、7分間洗った。脱水後、水5Lで3分ためすすぎ、脱水、3分ためすすぎ、脱水して風乾した。
柔軟洗剤組成物で洗った黒色綿ブロード布1枚あたりの表裏の残留物の数や大きさから以下の評価基準にて衣類残留性の評価を行った。
評価基準
◎:残留物が(ほとんど)認められない
○:大きめ(0.5mm以上)の粒子の残留物はなく、微粉(0.5mm未満)の残留物が数個〜10個認められる
△:大きめ(0.5mm以上)の粒子の残留物はなく、微粉(0.5mm未満)の残留物が十数個認められる
×:大きめ(0.5mm以上)の粒子の残留物があり、微粉(0.5mm未満)の残留物も認められる
××:大きめ(0.5mm以上)の粒子の残留物が数個以上あり、微粉(0.5mm未満)の残留物も多数認められる
【0050】
表1の結果より、実施例の1〜9において(a)〜(e)成分等を所定濃度・比率で配合することにより、衣類残留性、柔軟性、洗浄性に優れた柔軟洗剤組成物が得られたことがわかる。
【0051】
なお、実施例中、各成分としては、以下のものを用いた。
・ゼオライト:「ゼオビルダー」(ゼオビルダー社製、メジアン径:3.0μm)
・ LAS−Na:アルキル基の炭素数12〜14の直鎖アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム
・ AS-Na:アルキル基の炭素数12〜16のアルキル硫酸エステルナトリウム
・ 非イオン性界面活性剤:炭素数10〜14の1級アルコールにEOを平均6モル付加させたもの
・ 石鹸:アルキル基の炭素数14〜18の脂肪酸ナトリウム
・ PEG:ポリエチレングリコール(重量平均分子量8500)
・ 炭酸ナトリウム:デンス灰(セントラル硝子(株)製)
・ 硫酸ナトリウム:中性無水芒硝(四国化成(株)製)
・ 食塩:ナクルN(ナイカイ塩業(株)製)
・ 重炭酸ナトリウム:重炭酸ナトリウム(東ソー(株)製)
・ トリポリリン酸Na:トリポリ燐酸ソーダ(下関三井化学(株)製)
・ 結晶性シリケート:プリフィード顆粒品(株式会社トクヤマシルテック製)
・ 2号シリケート:2号珪酸ソーダ(富士化学(株)製)
・ AAポリマー:ポリアクリル酸(平均分子量 1.5万;GPCによる測定、ポリエチレングリコール換算、花王(株)製)
・ AA/MAポリマー:アクリル酸−マレイン酸コポリマー(ナトリウム塩(70モル%中和)であり、モノマー比はアクリル酸/マレイン酸=3/7(モル比)、平均分子量70000)
・ 酵素:「セルラーゼK」(特開昭63−264699号公報記載)、「カンナーゼ24TK」(ノボ社製)、「サビナーゼ6.0T」(ノボ社製)を3:1:2 の質量比で使用
・ 蛍光染料:「チノパールCBS−X」(チバガイギー社製)
・ 漂白剤:炭酸ナトリウム・過酸化水素付加物(過炭酸ナトリウム):特開2000−256699号公報の段落0019に記載の漂白剤
・ 漂白活性化剤:ラウロイルオキシベンゼンスルホン酸ナトリウム造粒物(特開2000−256699号公報の段落0018記載の漂白活性化剤
・ 亜硫酸ナトリウム:亜硫酸ソーダ(三井化学(株)製)
【0052】
なお、実施例中の粘土造粒物(I)〜(VII)としては、以下のものを用いた。
【0053】
粘土造粒物(I)〜(III)の製造方法は以下の通りである。
容量20LのヘンシェルミキサーにNa/Ca質量比率が0.10、水分25質量%のベントナイトの粘土鉱物100質量部と炭酸ナトリウム1.2質量部を投入して回転数900rpmにて3分間混合する。得られた混合物を押し出し造粒器(スクリーン径:3mmφ)にて造粒した。次に、この造粒物を80℃の乾燥機にて水分12質量%まで乾燥させたものを、ハンマータイプの粉砕機(アトマイザー;(株)ダルトン製)を用いて粉砕する。このときのハンマー回転数をコントロールして3種の粘土粉砕物を得た。
続いて、これらの粉砕物100質量部をそれぞれ容量2Lのヘンシェルミキサーに投入し回転数1600rpmにて混合中に水を25質量部添加し30秒間混合する。この混合物を80℃の乾燥機にて水分12質量%まで乾燥させたものをオーバーサイズ(1410μm以上)とアンダーサイズ(180μm以下)をカットして粘土造粒物(I)〜(III)を得る。この粘土造粒物の未溶解率、Na/Ca質量比率、Na質量%を表1に示す。
【0054】
粘土造粒物(IV)〜(VI)の製造方法は、以下の通りである。
容量20LのヘンシェルミキサーにNa/Ca質量比率が0.73、水分25質量%のベントナイトの粘土鉱物100質量部と炭酸ナトリウム4.0質量部を投入して回転数900rpmにて3分間混合する。得られた混合物を押し出し造粒器(スクリーン径:3mmφ)にて造粒した。次に、この造粒物を80℃の乾燥機にて水分12質量%まで乾燥させたものを、分級装置の付いたハンマーミル(ACMパルペライザー;ホソカワミクロン(株)製)を用いて粉砕する。このときの分級回転数と粉砕能力をコントロールして3種の粘土粉砕物を得た。
続いて、これらの粉砕物100質量部をそれぞれ容量2Lのヘンシェルミキサーに投入し回転数1600rpmにて混合中に水を25質量部添加し30秒間混合する。この混合物を80℃の乾燥機にて水分12質量%まで乾燥させたものをオーバーサイズ(1410μm以上)とアンダーサイズ(180μm以下)をカットして粘土造粒物(IV)〜(VI)を得る。この粘土造粒物の未溶解率、Na/Ca質量比率、Na質量%を表1に示す。
【0055】
粘土造粒物(VII)の製造方法は、以下の通りである。
容量20LのヘンシェルミキサーにNa/Ca質量比率が0.73、水分25質量%のベントナイトの粘土鉱物100質量部と炭酸ナトリウム4.0質量部を投入して回転数900rpmにて3分間混合する。得られた混合物を押し出し造粒器(スクリーン径:3mmφ)にて造粒した。次に、この造粒物を80℃の乾燥機にて水分14質量%まで乾燥させたものを、分級装置の付いたローラーミル(竪型ローラミル;石川島播磨工業(株)製)を用いて粉砕する。このとき、循環エアーとして温度25℃の相対湿度15%に調湿したドライエアーを用いて分級を行った。粉砕後の粘土鉱物の水分は12質量%であった。
続いて、これらの粉砕物100質量部をそれぞれ容量2Lのヘンシェルミキサーに投入し回転数1600rpmにて混合中に水を25質量部添加し30秒間混合する。この混合物を80℃の乾燥機にて水分12質量%まで乾燥させたものをオーバーサイズ(1410μm以上)とアンダーサイズ(180μm以下)をカットして粘土造粒物(VII)を得る。この粘土造粒物の未溶解率、Na/Ca質量比率、Na質量%を表1に示す。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明の柔軟洗剤組成物は、例えば、綿製のタオル、バスタオルやTシャツ、トレーナーに代表される衣類等の繊維製品の柔軟洗剤として好適に使用することができる。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)下記一般式(I)で表されるスメクタイト型粘土鉱物を主成分とする粘土造粒物1〜20質量%を含有する柔軟洗剤組成物であって、
[Si(MgAl)O20(OH)X−・X/n[Me]n+ (I)
(式中、0<a≦6、0≦b≦4、0.2≦x=12−2a−3b≦1.2であり、MeはNa、K、Li、Ca 、Mg およびNHの少なくとも1種を、nはMeの価数を表す)
但し、以下に示す攪拌条件とJIS Z 8801規定の標準篩(目開き74μm)に供した場合、式(II)で算出される該粘土造粒物の未溶解率が0.2〜2.5%である柔軟洗剤組成物。
攪拌条件:1リットルのイオン交換水(20℃)に該粘土造粒物1gを投入し、1リットルビーカー(内径105mm)内で攪拌子(長さ35mm、直径8mm)にて20分間攪拌(回転数800rpm)
未溶解率(%)=T/S×100 (II)
S : 粘土造粒物の投入質量(g)
T : 上記攪拌条件にて得られた水溶液を上記篩に供したときに、篩上の残存する未溶解物の乾燥質量(乾燥条件:105℃の温度下に1時間保持した後、シリカゲルを入れたデシケーター(25℃)内で30分間保持する)(g)
【請求項2】
(b)非イオン性界面活性剤0.5〜18質量%、
(c)非石鹸陰イオン性界面活性剤6〜27質量%、
(d)アルカリ剤10〜35質量%(但し、珪酸塩の含有量は柔軟洗剤組成物中6質量%以下である。)、及び
(e)結晶性アルミノ珪酸塩3〜35質量%、
をさらに含有する請求項1記載の柔軟洗剤組成物。
【請求項3】
該粘土造粒物中のNa量が1.0質量%以上である粘土造粒物を含有する請求項1又は2記載の柔軟洗剤組成物。
【請求項4】
該粘土造粒物中のNa/Ca質量比率が1.0以上である粘土造粒物を含有する請求項1〜3いずれか記載の柔軟洗剤組成物。
【請求項5】
該粘土造粒物を除いた洗剤粒子の未溶解率が、以下に示す攪拌条件とJIS Z 8801規定の標準篩(目開き74μm)に供した場合、式(III)で算出され、0.50%未満である、請求項1〜4いずれか記載の柔軟洗剤組成物。
攪拌条件:1リットルの硬水(71.2mgCaCO /リットル、Ca/Mgのモル比7/3、 5℃)に該洗剤粒子1gを投入し、1リットルビーカー(内径105mm)内で攪拌子(長さ35mm、直径8mm)にて10分間攪拌(回転数800rpm)
未溶解率(%)=M/D×100 (III)
D : 洗剤粒子の投入質量(g)
M : 上記攪拌条件にて得られた水溶液を上記篩に供したときに、篩上の残存する未溶解物の乾燥質量(乾燥条件:105℃の温度下に1時間保持した後、シリカゲルを入れたデシケーター(25℃)内で30分間保持する)(g)
【請求項6】
スメクタイト型粘土鉱物を主成分とする水分6〜18質量%の粘土鉱物を、調湿されたドライエアーを使用した分級機構を備えた粉砕機を用いて粉砕することで、粉砕後の粘土鉱物の水分を粉砕前の粘土鉱物の水分から5〜25%低減する工程を含む、柔軟洗剤組成物用の粘土造粒物の製造方法。


【公開番号】特開2008−115231(P2008−115231A)
【公開日】平成20年5月22日(2008.5.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−298170(P2006−298170)
【出願日】平成18年11月1日(2006.11.1)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】