説明

柱体および該柱体を備えた車止め

【課題】構造物として必要な強度を保有しながらも、優れた外観の柱体および該柱体を備えた車止めを提供する。
【解決手段】本発明の柱体3は、繊維強化プラスチックにより形成された中空柱状の本体31と、本体31の内側に設置された発光体32とを有する。また、本発明の車止め100は、柱体3を備え、本体31が、地面に固設された保持部材2に保持されるようになっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、柱体および該柱体を備えた車止めに関する。さらに詳しくは、構造物として必要な強度を保有しながらも、優れた外観の柱体および該柱体を備えた車止めに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車道から歩道へ自動車などが侵入するのを防止するために、車道と歩道との境界に車止めが設けられている。車止めには、万が一、自動車が車道と歩道との境界を越えて侵入しようとした場合に備えて、自動車が歩道へ侵入するのを阻止できる程度の強度と、車止め自体の存在を他者に認識させて、車道と歩道との境界を越えないよう注意を喚起する機能とが必要である。
【0003】
特許文献1には、金属、硬質の合成樹脂、コンクリートなどを用いた芯柱と、芯柱を覆うように設けられたリサイクルゴムからなるカバー体とを有する車止め支柱が開示されている。
【特許文献1】特開2007−126933号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来の技術では、剛性を有する芯柱を地面に立てることで、車止め支柱の自立性を確保することはできるが、カバー体がゴム製であるため、暗い場所では、その存在が目立たない。また、車止め支柱に光を反射するシールを貼り付けて、車止めの存在をドライバーなどに認識させることも行われている。しかしながら、光反射シールは、自動車などのヘッドライトの光がうまい具合に光反射シールに照射されない限り、その機能を発揮しない。したがって、夜間における視認性の面で、改善すべき点が残されていた。
【0005】
本発明は、上記のような事情に鑑みてなされたものであり、構造物として必要な強度を保有しながらも、優れた外観の柱体および該柱体を備えた車止めを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の柱体は、繊維強化プラスチックにより形成された中空柱状の本体と、該本体の内側に設置された発光体とを有する。これにより、構造物として必要な強度を保有しながらも、優れた外観の柱体を得ることができる。既存の透明なプラスチックパイプ、たとえば、単純にABS樹脂、ポリプロピレン樹脂、アクリル樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリアセタール樹脂、テフロン(登録商標)樹脂、ナイロン樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリカーボネート樹脂、塩化ビニル樹脂などの樹脂のみで形成されたプラスチックパイプでは得ることができなかった、自動車の侵入を阻止できる程度の強度を確保することができる。
【0007】
また、前記本体が光透過性を有する繊維強化プラスチックにより形成され、その本体の内側であって、前記発光体の外側に、表面に模様が施された光透過性のフィルムが設けられていることが好ましい。これにより、明るい場所では、フィルムの外側面に施された模様を柱体の外部に表示させることができ、暗い場所では、本体の内側に設置された発光体を発光させることで、フィルムの表面に施された模様を柱体の外部に表示させることができる。なお、フィルムの内側面に文字などの模様が施されている場合でもこれが浮きあがる。そして、発光体の発光を止めると、浮き上がった文字などの模様は見えなくなる。
【0008】
さらに、本発明の車止めは、上記の柱体を備え、上記本体が、地面に固設された保持部材に保持されるようになっている。これにより、視認性に優れた車止めを得ることができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、構造物として必要な強度を保有しながらも、優れた外観の柱体および該柱体を備えた車止めを得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明の柱体は、繊維強化プラスチック(Fiber Reinforced Plastics)により形成された中空柱状の本体と、その本体の内側に設置された発光体とを有する。また、本発明の車止めは、上記柱体を備え、上記本体が、地面に固設された保持部材に保持されるようになっている。すなわち、本発明は、光透過性と強度をあわせもつ繊維強化プラスチックを柱体の本体に用いて、柱体の内部に設けられた発光体の光を外部へ透過させるものである。
【0011】
以下で、本発明の柱体および車止めについて図面を用いて詳細に説明する。
【0012】
(実施の形態1)
実施の形態1の車止め100は、柱体3と、該柱体3の下部を保持し、地面に固定された保持部材2と、柱体3の上部を塞ぐ蓋4と、柱体3および保持部材2の境界を覆うように柱体3の外周面に設けられたベースカバー5と、柱体3の上方に取り付けられた鎖用フック6とから構成されている。
【0013】
柱体3は、繊維強化プラスチック(以下、FRPという)により形成された中空柱状の本体31と、その本体31の内側に設置された発光体(以下、照明器具という)32とを有する。図1は、実施の形態1の車止め100の断面図である。
【0014】
本体31は、図1に示されるように、円筒状の中空体であり、その長手方向を地表面G.L.に対して垂直に向けて設けられている。また、本体31の上方には、鎖用フック6を固定するための鎖用フックねじ孔31aが一対形成され、本体31の下方には、本体31自体を保持部材3に固定するための連結ボルト貫通孔31bが一対形成されている。
【0015】
本体31を形成するFRPは、主に、母材とその母材を強化する強化材とから構成されている。
【0016】
FRPの母材としては、とくに限定されないが、たとえば、エポキシ樹脂、塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂、ポリスチレン、ABS樹脂、アクリル樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、フッ素樹脂、ポリアミド樹脂、アセタール樹脂、ポリカーボネート、繊維素プラスチックなどの熱可塑性樹脂、フェノール樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ジアリルフタレート樹脂、ポリウレタン樹脂、ケイ素樹脂、ポリイミド樹脂などの熱硬化性樹脂を用いることができる。本実施の形態では、耐熱性、耐アルカリ性(セメントアルカリ)、耐薬品性、力学的特性に富んでいるという理由から、エポキシ樹脂を用いている。
【0017】
FRPの強化材の素材としては、とくに限定されないが、たとえば、ガラス繊維、炭素繊維、アラミド繊維、綿繊維、麻繊維、絹繊維、羊毛、ジュート、ビニロン繊維、ナイロン繊維、テトロン繊維、レーヨン繊維、ボロン繊維、チラノ繊維、ステンレス繊維およびこれらの群から選ばれる少なくとも1種を含む混合物などがあげられる。本実施の形態では、光の透過性に優れるという理由から、ガラス繊維を強化材として用いている。また、強化材の色としては、とくに限定されないが、たとえば、上記の繊維を染めた色つけ糸、上記の繊維を蛍光色に染めた蛍光繊維、上記の繊維を蓄光塗料で染めた蓄光繊維などを用いることもできる。さらに、強化材の状態としては、とくに限定されないが、たとえば、上記の繊維を撚ったより糸状、上記の繊維を組み紐状にして用いることもできる。
【0018】
また、FRPには、母材および強化材のほかにも、補強材や充填材を適宜含有させてもよい。
【0019】
補強材としては、とくに限定されないが、たとえば、ガラスビーズ、ガラスフレーク、ガラスパウダー、ミルドガラス、ガラスフリット、シリカなどを用いることができる。
【0020】
充填材としては、とくに限定されないが、たとえば、水酸化アルミニウム、炭酸カルシウム、酸化チタン、マイカなどのフィラー、チタン酸カリウムウイスカ、チタン酸バリウムウイスカなどのウイスカなどを用いることができる。
【0021】
FRPの成形方法としては、とくに限定されないが、たとえば、手積み法、スプレーアップ法、マッチドダイ法、プリミックス法、プリプレグ法、ローリングテーブル法、シートワインディング法、テープワインディング法、フィラメントワインディング法、引き抜き成形法、射出成形法、押し出し成形法などを用いることができる。本実施の形態では、強化材として連続長繊維のガラス繊維を用いることにより、極めて強度の高い成形品が得られ、強度特性を所望に応じて自由に設計することができ、さらに、一つの筒状中空成形体に、複数の外径を設定できるという理由から、フィラメントワインディング法を用いて成形している。ここで、フィラメントワインディング法とは、多数のフィラメントを束状にしたものに樹脂を浸透させて、このものを芯型に巻き付けることにより成形される強化プラスチックの成形方法である。本実施の形態では、フィラメントワインディング法を用いて本体31を成形する際に、最内層、中間層および最外層の3つの層を成層する。この3つの層は、樹脂が含浸されたフィラメントの束を、芯型に巻き付ける際の巻き付け角度、すなわち、繊維配向角度が異なるものである。
【0022】
最内層の繊維配向角度は、芯型の軸線に対して、80〜89°であることが好ましい。最内層の繊維配向角度をこのようにすることにより、本体31の円周方向が強化され、本体31の強度を向上させることができる。また、最内層の繊維配向角度をこのようにすることにより、本体31の温度変化による径方向への伸縮を防止することができる。また、成形体に亀裂が発生するのを防止することができる。
【0023】
中間層の繊維配向角度は、芯型の軸線に対して、0〜40°であることが好ましい。中間層の繊維配向角度が40°を超えると、成形体の曲げ強度が低下する傾向がある。
【0024】
つまり、繊維配向角度を40°以下に小さくする方が曲げ強度が高くなることから、上記の例では、上記中間層により車止めに要求される曲げ強度を確保するようにしている。
【0025】
最外層の繊維配向角度は、芯型の軸線に対して、80〜89°であることが好ましい。最外層の繊維配向角度をこのようにすることにより、本体31の円周方向が強化され、本体31の強度を向上させることができる。また、最外層の繊維配向角度をこのようにすることにより、本体31の温度変化による径方向への伸縮を防止することができる。さらに、最外層の繊維配向角度をこのようにすることにより、繊維を均等・均一かつ密に巻き付けることが可能なので、本体31の表面を凹凸の少ない仕上がりにすることができる。このほか、本体31の表面を凹凸の少ない仕上がりにするために、上述の強化材を用いた不織布、クロス状のテープ、シートを最外層の表面に巻き付けてもよい。
【0026】
なお、繊維配向角度は最内層、中間層および最外層がおなじ配向角度であってもよい。
【0027】
このようなFRPにより形成された本体31は、光透過性を有する。さらに、本実施の形態に用いられるFRPの比重は約1.8〜2.2g/cmであり、従来車止めに用いられている鋼管の比重は、本実施の形態に用いられるFRPの比重の約4倍である。したがって、本体31の重量は、本実施の形態の本体31と同一のサイズの鋼管の重量の約4分の1程度になる。本実施の形態の本体31は、鋼管と比較して軽量であるので、本体3を搬送する際の作業が容易になるとともに、搬送する際のコストを低減させることができる。また、本体31は、鋼管と同程度以上の曲げ強度を有する。さらに、本体31の熱伝導率は鋼などの金属より低く、加えて、比熱が大きい。したがって、屋外に本体31を設置しても、本体31が高温になり難い。さらに、本体31は、鋼などの金属より、本体31の表面の硬度や弾性率が低いので、弾性変形領域内での衝撃吸収性が良い(すなわち、衝突時に受ける衝撃が小さい)。さらに、本体31に衝撃を加えて本体31を破壊した場合であっても、本体31が粉々になって飛散することはない。さらに、本体31は金属と異なり、耐酸性を有するので錆びない。さらに、本体31は、耐熱性に優れている。
【0028】
本体31の曲げ強さは、230MPa(JIS G 3444に規定するSTK−400相当)以上であることが好ましく、300MPa以上であることがより好ましい。本体31の曲げ強度が230MPa未満であると、車止めとしての機能・性能を得られない。
【0029】
本体31は、暗い場所で、本体31の内部に納められた照明器具32を点灯した際に、の車止めの視認性を向上させることができる程度の光透過性を有することが好ましい。具体的には、波長400〜800μmの光を発光する照明器具を用いた場合に、本体31の光透過率は、1%以上であることが好ましく、2%以上であることがより好ましい。光透過率が1%未満であると、暗闇の中であっても、光源を認識するのが困難になる傾向がある。本実施の形態では、波長570〜600μmの光を発光する蛍光灯を照明器具として用いた場合に3%以上の光透過率が得られる本体31を用いている。ここで、光透過率とは、2つの媒質の境界面を透過する光のエネルギーと入射する光のエネルギーとの比を意味している。
【0030】
照明器具32としては、とくに限定されるものではないが、たとえば、蛍光灯、白熱電球、LEDなどを用いることができる。本実施の形態では、他の照明器具と比較して寿命が長く、取替え作業が容易であるという理由から、蛍光灯を用いる。とくに、照明器具32には蛍光灯の外側にカバーを設けるなどの防水機能が付加されていることが好ましい。また、照明器具32から出射される光の色は、とくに限定されない。たとえば、照明器具32を交換して、照明器具32から出射される光の色を変更することにより、車止め100の様相を変えることもできる。
【0031】
車止め100の保持部材2は、図1および図2(b)に示されるように、地表面G.L.に対して平行な状態で地中に埋設される四角い板状の底部21と、底部21に直立するように同一の軸を中心として一体的に設けられた3つの円筒状の部分(以下、第1直立部22、第2直立部23、第3直立部24という)と、第1直立部22の内側に水平に設けられた受け具25とから構成されている。第1直立部22、第2直立部23および第3直立部24は、それぞれ外径が異なり、第1直立部22の外径が最も大きく、第2直立部23の外径は、第3直立部24の外径より大きい。外径が大きい順に、まず底部21に第1直立部22が設けられ、第1直立部22の上端に第2直立部23が設けられ、第2直立部23の上端に第3直立部24が設けられている。したがって、第1直立部22と第2直立部23との境界には、第2直立部23の外径より外側に突出した水平部分である本体載置部22bが、第2直立部23と第3直立部24との境界には、第3直立部24の外径より外側に突出した水平部分である転写フィルム載置部23bが形成される。本体載置部22bは、本体31の下端面が載置される部分である。また、転写フィルム載置部23bは、後述の転写フィルムの下端面を載置する部分である。
【0032】
また、底部21には、照明器具32の配線を車止め100の外部へ導出するための開口22cが形成されている。さらに第2直立部23には、本体31を保持部材2に固定するための連結ボルトBを貫通させるための孔23aが形成されており、この孔23aには、連結ボルトBの軸部を螺合するナットが組み込まれている。
【0033】
受け具25は、照明器具32の下端を支持するためのものであり、第1直立部22と一体に設けられている。受け具25は、中央に照明器具32の下端を導出するための孔が形成された円盤状を呈している。
【0034】
保持部材2の材質としては、とくに限定されないが、たとえば、アルミニウム、鉄、青銅、マグネシウム、アンチモン、錫、鉛などを用いることができる。本実施の形態では、軽量で酸化しにくいという理由から、アルミニウムを用いる。
【0035】
車止め100の蓋4は、柱体31の上部から、柱体31の内部に異物が侵入するのを防ぐためのものである。図2(a)に示されるように、蓋4は柱体31の上端に載置された上部41と、本体31の内側に嵌り込む嵌合部42とを一体に有する。嵌合部42には、照明器具32の上端を固定するための凹部42aが形成されている。また、蓋4を接着剤などにより本体31の上部に固定してもよい。
【0036】
車止め100のベースカバー5は、連結ボルトBの頭部を覆うためのものである。ベースカバー5は、図2(b)に示されるように、本体31と保持部材2との境界であって、地表面G.L.に接する位置に、柱体3の外周を囲むように設けられた環状の部材である。ベースカバー5の内周面上部は、本体31の外周面に密接している。また、ベースカバー5の内周面下部は、その内径が柱体3の外径より若干大きくなっており、中空部5aが形成されている。中空部5aは、本体31を保持部材2に固定するための連結ボルトBの頭部を収容する。
【0037】
ベースカバー5の材質としては、とくに限定されるものではないが、たとえば、EPDMなどを用いることができる。
【0038】
車止め100の鎖用フック6は、複数の車止め100を鎖で連結する場合に用いられるものである。鎖用フック6は、柱体3の上方に取り付けられている。鎖用フック6としてはとくに限定されるものではないが、たとえば、図2(a)に示されるように、フック部材61を本体31の外側表面に設け、締結板62を本体31の内側表面に当接するように設けて、ねじ63をフック部材61に形成されたねじ孔61b、本体31に形成された鎖用フックねじ孔31aおよび締結板62に形成されたねじ孔62aに挿通させてナットで締め付けて固定されるものであってもよい。鎖用フック6を使用する際には、フック部材61に形成された鎖連結孔61aに鎖を係合させる。これにより、鎖を介して車止め100と他の車止め100とが繋がれる。鎖用フック6の材質としては、とくに限定されないが、本実施の形態では、軽量で酸化しにくいという理由から、アルミニウムを用いる。
【0039】
実施の形態1の車止め100を夜間に使用する際には、照明器具32が点灯される。照明器具32が点灯されると、光りの一部は、柱体3の本体31を透過する。同じ照明器具32を用いても、本体31に用いられたFRPの光透過率が高い場合には、本体31に用いられたFRPの光透過率が低い場合より、車止め100はより明るく輝く。したがって、自動車のドライバーや歩行者は、車止め100から離れた位置でも、車止め100の存在を認識しやすい。また、意図して光透過率が低いFRPを本体31に用いることによって、磨りガラスを透過したような光を演出することもできる。また、本発明の車止め100を駐車場などの外灯として活用することもできる。
【0040】
(実施の形態2)
実施の形態2の車止め110は、実施の形態1の車止め100の本体31に、とくに、光透過性に優れたFRPを用いたものであり、さらに、本体31と照明器具32との間に、表面に模様が施された光透過性のフィルム(以下、転写フィルム7という)を配置している。
【0041】
FRPの光透過性については、本体31の内部に収められた転写フィルム7に施された模様が、照明器具32を点灯した際に視認できる程度が好ましく、ほぼ透明なFRPであることがとくに好ましい。具体的には、波長400〜800μmの光を発光する照明器具を用いた場合に、本体31の光透過率は、15%以上であることが好ましく、25%以上であることがより好ましい。本体31の光透過率が15%未満であると、内部の照明器具32を点灯しても、転写フィルム7に施された文字、図柄などの模様をはっきりと視認できない傾向がある。とくに、光透過率が3%未満であると転写フィルム7に施された文字や柄の認識はほとんどできない。また、光透過率が60%以上である場合には、内部の照明器具32を点灯していない状態であっても、本体31の内部に収められた転写フィルム7の外側表面(本体31の内側面に対向する面)に施された模様を視認することが可能である。このような、光透過性に優れた(光透過率25%以上)FRPの製造方法としては、とくに限定されるものではなく、適宜変更可能である。本実施の形態では、本体31の波長570〜600μmの光を発光する蛍光灯を照明器具として用いた場合に、光透過率が60%以上のほぼ透明なFRPを用いている。
【0042】
転写フィルム7は、光透過性を有し、かつ、可撓性を有する薄膜である。その一方の面には、文字や図柄などの模様が施されている。転写フィルム7としては、とくに限定されないが、たとえば、特開2004−45529号公報、特開2002−182594号公報に開示されている、照明器具32が消灯しているときは、転写フィルム7に施された模様が隠蔽され、照明器具32が点灯しているときのみ、転写フィルム7に施された模様が表示されるような転写フィルムを用いることもできる。本実施の形態では、半透明の転写フィルム7の内側面に光を透過しない塗料で模様が印刷されたものを用いている。
【0043】
以下で、転写フィルム7の取り付け方法について説明する。図3は、実施の形態2の車止め110を説明するための斜視図であり、(a)は車止め100の保持部材2から本体31を外した状態を示し、(b)は本体31と照明器具32との間に転写フィルム7を挿入する状態を示し、(c)は転写フィルム7が挿入された状態の車止め110を示している。まず、図3(a)に示されるように、実施の形態1の車止め100の保持部材2から本体31が外され、保持部材2の上部が開放される。つぎに、図3(b)に示されるように、転写フィルム7は模様が施された面を内側に向けて筒状に丸められた状態で、本体31の内側であって、照明器具32の外側(すなわち、本体31と照明器具32との間)に設置され、再び本体31が保持部材2に嵌め込まれる(図3(c)参照)。本実施の形態では、本体31を形成するFRPがほぼ透明であるので、柱体3の外部からは、転写フィルム7の外側(模様が施されていない面)がはっきりと見える。
【0044】
本実施の形態の車止め110を夜間に使用する際には、照明器具32が点灯される。照明器具32が点灯されると、光りは、柱体3の内部に納められた転写フィルム7および本体31を透過する。このとき、転写フィルム7の内側面に施された模様は、照明器具32から出射した光を遮る。したがって、柱体3の外部には、転写フィルム7の内側面に施された模様が影模様となって映し出される。よって、転写フィルム7を交換するだけで、車止め110の外観を多様に変化させることができる。また、転写フィルム7に、模様として文字が施されている場合には、周囲に情報を伝達することもできる。
【0045】
以上の実施の形態によれば、車止め100および110は、曲げ強度と光透過性とを併せ持つFRP(ガラス繊維強化プラスチック)により形成された中空柱状の本体31の内部に、照明器具32を備えた柱体3を用いている。これにより、構造物として必要な強度を保有しながらも、優れた外観の柱体3および該柱体3を備えた車止め100、110を得ることができる。
【0046】
なお、上記実施の形態では、柱体3を車止めに用いた場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、柱体3を屋内外での広告塔、案内塔、誘導塔などとして用いてもよい。また、柱体3をオブジェ、装飾柱、建築物などの柱に用いてもよい。
【0047】
また、上記実施の形態では、本体31の形状が円筒状の中空体である形態について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、本体31の形状は錐体を中空状にしたものであってもよいし、角柱状のものを中空体にした形態であってもよい。あるいは、本体31の形状は、外径の異なる複数の筒状中空体が同一軸を中心として連結された形態であってもよい。本体31の形状は中空柱状であればよい。
【0048】
また、上記実施の形態では、受け具25が円盤状を呈し、第1直立部22に一体に形成されている形態について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、受け具として、プレート状やアンカーボルトのような棒状のものを第1直立部22の内側に設けて用いてもよい。
【0049】
また、上記実施の形態では、蓋4が柱体3の上部に嵌め込まれて、柱体3の上部を塞いでいる形態について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、蓋4に相当する部分が本体3と一体に成型された形態であってもよい。
【0050】
また、上記実施の形態2では、転写フィルム7の一方の面にのみ模様が施され、その面が柱体3の内側になるように、柱体3の内部に設けられた形態について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、両面に模様が施された転写フィルム7を柱体3の内部に設けてもよい。この場合、照明器具32を点灯しないときには、転写フィルム7の外側面に施された模様を外部に表示し、照明器具32を点灯したときには、転写フィルム7の内側面に施された模様を外部に表示することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】実施の形態1の車止めの断面図である。
【図2】図1の一部を拡大したものであり、(a)は上方部分を示し、(b)は下方部分を示している。
【図3】実施の形態2の車止めを説明するための斜視図であり、(a)は車止めの蓋を外した状態を示し、(b)は本体と照明器具との間に転写フィルムを挿入する状態を示し、(c)は転写フィルムが挿入された状態の車止めを示している。
【符号の説明】
【0052】
2 保持部材
3 柱体
31 本体
32 照明器具(発光体)
7 転写フィルム(表面に模様が施された光透過性のフィルム)
100、110 車止め

【特許請求の範囲】
【請求項1】
繊維強化プラスチックにより形成された中空柱状の本体と、
該本体の内側に設置された発光体とを有する柱体。
【請求項2】
前記本体が光透過性を有する繊維強化プラスチックにより形成され、
その本体の内側であって、前記発光体の外側に、表面に模様が施された光透過性のフィルムが設けられている請求項1記載の柱体。
【請求項3】
請求項1または2に記載の柱体を備え、上記本体が、地面に固設された保持部材に保持されるようになっている車止め。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−41319(P2009−41319A)
【公開日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−209646(P2007−209646)
【出願日】平成19年8月10日(2007.8.10)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
【出願人】(000238234)シキボウ株式会社 (33)
【出願人】(591067831)帝金株式会社 (9)
【Fターム(参考)】