説明

査証用ICタグ

【課題】この発明は、簡単な方法により使用不能にできる査証用ICタグを提供することを課題とする。
【解決手段】査証用ICタグ1は、LSI4を接続したアンテナコイル2を有し、これらLSI4およびアンテナコイル2がカバーフィルム8によって被覆されている。アンテナコイル2の最内周の巻線には、第1のランド11が内側に突出して設けられ、最外周の巻線には、第2のランド12が外側に突出して設けられている。査証用ICタグ1を使用不能にするとき、カバーフィルム8のマークMを目安にしてステープルSを打ち込み、アンテナコイル2を短絡させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、パスポートに添付する査証用のICタグに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、パスポートに添付した査証は、使用後、例えば係員によって切り取られて使用不能となる。
【0003】
近年、パスポートの査証として無線通信によってデータの読み書きが可能な査証用ICタグの開発が進んでいる。この査証用ICタグの運用においても、使用後に何等かの方法によって使用不能とする必要がある。特に、ICタグを査証として利用する場合、有効期限が切れた使用済のICタグがパスポートにそのまま添付されていると、使用可能なICタグとの間で無線通信する際に、使用済のICタグと交信してしまったり、混信してしまったりする可能性があり、正常な通信処理ができなくなる。
【0004】
ICタグなどの無線通信媒体を使用不能にする技術として、製造工程の途中の検査の結果、不良品と判断されたICインレットを通信不可状態とする処理部を有するIC製品検査装置が知られている(例えば、特許文献1参照。)。この特許文献には、処理部の実施例として、不良品と判断されたICインレットのICチップまたはアンテナを部分的に打ち抜く打抜手段について開示されている。
【0005】
また、処理部の第1の変形例として、アンテナを切断するロータリーカッターなど切断手段について開示されており、第2の変形例として、ギャップを狭くした一対のローラの間を通過させてICチップを破壊する破壊手段について開示されており、第3の変形例として、アンテナの線間を跨ぐように導電ペーストを塗布したり、アンテナの線間を跨ぐように金属箔を貼り付けたり、アンテナの線間を跨ぐようにステープルを打ち込んだりする短絡手段について開示されている。
【0006】
しかし、上述した査証用ICタグを使用不能とするため、上述した特許文献に開示された技術を利用すると、種々の不具合を生じる。例えば、査証用ICタグを通信不能とするためICチップやアンテナの一部を打ち抜こうとした場合、査証用ICタグが冊子状のパスポートに添付されているため、パスポートの他の部位を打ち抜いてしまったり、未使用のICタグを間違って打ち抜いてしまったりする可能性がある。
【0007】
また、上述した第1の変形例のようにICタグのアンテナを切断しようとした場合も同様に、パスポートを切断してしまったり、未使用のICタグを間違って切断してしまったりする可能性がある。また、第2の変形例のようにICチップを押し潰して破壊しようとした場合も、未使用のICチップを破壊してしまう可能性がある。
【0008】
さらに、第3の変形例のようにアンテナの線間を跨いで導電部材を接触させて短絡させる方法を採用しようとした場合、アンテナ線が媒体の表面に露出している必要があり、この方法を査証用ICタグに適用することはできない。
【特許文献1】特開2004−86785号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
この発明の目的は、簡単な方法により使用不能にできる査証用ICタグを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、パスポートに貼り付ける本発明の査証用ICタグは、基材フィルムと、この基材フィルムに形成したアンテナコイルと、このアンテナコイルの両端に接続されたLSIと、上記アンテナコイルおよびLSIを形成した上記基材フィルムの表面を被覆したカバーフィルムと、上記アンテナコイルを短絡するステープル位置を表示した上記カバーフィルム上のマークと、を有する。
【0011】
上記発明によると、有効期限の切れた査証用ICタグを使用不能とする際に、カバーフィルム上に形成されたマークを目印にしてステープルを打ち込むだけで、アンテナコイルを短絡させることができ、査証用ICタグを簡単に使用不能にできる。
【0012】
また、パスポートに貼り付ける本発明の査証用ICタグは、基材フィルムと、この基材フィルムに形成した複数巻のアンテナコイルと、このアンテナコイルの両端に接続されたLSIと、上記アンテナコイルの最内周の巻線から内側に突出した第1のランドと、この第1のランドに対して上記巻線と交差する方向に対向し、上記アンテナコイルの最外周の巻線から外側に突出した第2のランドと、上記アンテナコイル、2つのランド、およびLSIを形成した上記基材フィルムの表面を被覆したカバーフィルムと、上記第1および第2のランドを短絡するステープル位置を表示した上記カバーフィルム上のマークと、を有する。
【0013】
上記発明によると、有効期限の切れた査証用ICタグを使用不能とする際に、カバーフィルム上に形成されたマークを目印にしてステープルを打ち込むだけで、アンテナコイルの第1および第2のランドを短絡させることができ、査証用ICタグを簡単に使用不能にできる。
【0014】
更に、パスポートに貼り付ける本発明の査証用ICタグは、基材フィルムと、この基材フィルムに形成した複数巻のアンテナコイルと、このアンテナコイルの両端に接続されたLSIと、上記アンテナコイルの最内周の巻線から内側に突出した第1のランドと、この第1のランドに対して上記巻線と交差する方向に対向し、上記アンテナコイルの最外周の巻線から外側に突出した第2のランドと、上記アンテナコイル、2つのランド、およびLSIを形成した上記基材フィルムの表面を被覆したカバーフィルムと、を有し、上記カバーフィルムは、少なくとも上記第1および第2のランドを被覆した部位が透明に形成されている。
【0015】
上記発明によると、有効期限の切れた査証用ICタグを使用不能とする際に、カバーフィルムを少なくとも部分的に透明にした部位を介して第1および第2のランドを視認し、これら第1および第2のランドを短絡させるようにステープルを打ち込むだけで、アンテナコイルを短絡させることができ、査証用ICタグを簡単に使用不能にできる。
【発明の効果】
【0016】
この発明の査証用ICタグは、上記のような構成および作用を有しているので、簡単な方法により査証用ICタグを使用不能にでき、有効期限の切れた査証用ICタグと通信する不具合を防止でき、混信を防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、図面を参照しながらこの発明の実施の形態について詳細に説明する。
図1には、この発明の実施の形態に係る査証用ICタグ1の平面図を示してあり、図2には、この査証用ICタグのカバーフィルム8を取り除いた状態の平面図を示してある。なお、図2では、アンテナコイル2を短絡させるためのステープルSを2つのランドに打ち込んだ状態を図示してある。この査証用ICタグ1は、パスポートの頁に貼り付けられ、図示しないリーダライタとの間で無線通信を行なう。
【0018】
すなわち、査証用ICタグ1は、図示しないリーダライタとの間で無線通信するためのアンテナコイル2、およびLSI4を有する。アンテナコイル2は、例えば、厚さ0.038[mm]のポリエチレンテフタレート(PET)の基材フィルム6上に厚さ0.03[mm]のパターンでアルミニウムにより形成される。本実施の形態では、アンテナコイル2は、3回巻に形成されている。
【0019】
LSI4は、いわゆるフリップチップ(Flip Chip)方式により基材フィルム6の表面に実装される。この際、LSI4は、アンテナコイル2の両端に電気的に接続される。さらに、この基材フィルム6の表裏面がPET−G非結晶性ポリエステル樹脂(非結晶性PETコポリマー)シート(図示せず)で挟まれて、真空ホットプレスにて一体化される。アンテナコイル2およびLSIを被覆した基材フィルム6の表面側のPET−Gシートは、
本発明のカバーフィルム8として機能する。
【0020】
また、3回巻にされたアンテナコイル2の最内周の巻線には、その内側に突出した第1のランド11が形成されている。また、アンテナコイル2の最外周の巻線には、巻線と交差する方向に第1のランドに対向した第2のランド12が外側に突出して形成されている。第1および第2のランドの大きさや位置は、後述するように第1および第2のランド11、12にステープルSを打ち込んだとき、第1および第2のランド11、12を確実に短絡させることのできる値に設計されている。
【0021】
もし、アンテナコイル2に第1および第2のランド11、12を設けない場合、巻線の幅が狭いアンテナコイル2をステープルSによって短絡させることは困難であるが、不可能ではない。しかし、巻線の内側と外側に幅の広いランド11、12を設けることで、より確実にステープルSによる短絡を可能にできる。
【0022】
この査証用ICタグ1は、図示しないリーダライタから供給される磁力線をアンテナコイル2を介して電力に変換し、この電力によってLSI4を動作させ、残りの電力でリーダライタにレスポンスを返す。このように、査証用ICタグ1は、非接触によりリーダライタとの間でデータ通信を行なう。
【0023】
パスポートに貼り付けた査証は、有効期限が経過したとき無効にされる。本実施の形態の査証用ICタグ1は、パスポートの頁に貼り付けられて使用されるため、使用後に頁から容易に取り外すことができない。また、リーダライタとの間の通信距離を稼ぐため、アンテナコイル2の大きさをできるだけ大きくする必要があり、査証用ICタグの大きさは頁いっぱいの大きさとなっている。このため、査証用ICタグ1を無効にするには、その通信機能を不能にする処理が必要となる。
【0024】
本実施の形態では、ステープルSによりアンテナコイル2を短絡させることで、有効期限切れの査証用ICタグ1を無効にするようにした。つまり、図1に示すように、第1および第2のランド11、12の上のカバーフィルム8にステープルSを打ち込む目安となるマークMを印刷し、このマークMの位置でステープルSを打ち込むよう案内を印刷した。
【0025】
これにより、オペレータは、マークMを目安にして、図3に示すようにステープルSを査証用ICタグ1に打ち込むだけで、アンテナコイル2を第1および第2のランド11、12間で容易に短絡させることができ、当該査証用ICタグ1を無効にできる。もし、マークMが無い場合、ステープルSを打ち込む位置が査証用ICタグ1の外観から判断することができないため、アンテナコイル2を短絡させることはできない。
【0026】
以上のように、本実施の形態によると、パスポートに貼り付けられた有効期限切れの査証用ICタグ1に対し、マークMを目安にしてステープルSを打ち込むだけで、当該査証用ICタグ1を容易に使用不能にでき、有効期限切れの査証用ICタグとの間で間違って通信を確立してしまう不具合を防止できる。
【0027】
なお、この発明は、上述した実施の形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上述した実施の形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより種々の発明を形成できる。例えば、上述した実施の形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除しても良い。
【0028】
例えば、上述した実施の形態では、ステープルSを打ち込む目安としてカバーフィルム8にマークMを印刷した場合について説明したが、これに限らず、第1および第2のランド11、12を被覆するカバーフィルム8の部位を少なくとも部分的に透明に形成しても良い。これにより、オペレータは、カバーフィルム8の透明な部位を介して第1および第2のランド11、12を視認し、これら第1および第2のランド11、12を短絡させるようにステープルSを打ち込むだけで、アンテナコイル2を短絡させることができ、査証用ICタグ1を簡単に使用不能にできる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】この発明の実施の形態に係る査証用ICタグの外観を示す平面図。
【図2】図1の査証用ICタグのカバーフィルムを取り除いた状態を示す平面図。
【図3】査証用ICタグにステープルを打ち込んだ状態を示す断面図。
【符号の説明】
【0030】
1…査証用ICタグ、2…アンテナコイル、4…LSI、6…基材フィルム、8…カバーフィルム、11…第1のランド、12…第2のランド、M…マーク、S…ステープル。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
パスポートに貼り付ける査証用のICタグであって、
基材フィルムと、
この基材フィルムに形成したアンテナコイルと、
このアンテナコイルの両端に接続されたLSIと、
上記アンテナコイルおよびLSIを形成した上記基材フィルムの表面を被覆したカバーフィルムと、
上記アンテナコイルを短絡するステープル位置を表示した上記カバーフィルム上のマークと、
を有することを特徴とする査証用ICタグ。
【請求項2】
上記アンテナコイルは複数回巻かれて形成されており、最内周の巻線から内側に突出した第1のランドと、最外周の巻線から外側に突出した第2のランドを有することを特徴とする請求項1に記載の査証用ICタグ。
【請求項3】
上記第1および第2のランドは、巻線と交差する方向に対向して形成されていることを特徴とする請求項2に記載の査証用ICタグ。
【請求項4】
上記カバーフィルム上のマークは、上記2つのランドの上に形成されていることを特徴とする請求項3に記載の査証用ICタグ。
【請求項5】
パスポートに貼り付ける査証用のICタグであって、
基材フィルムと、
この基材フィルムに形成した複数巻のアンテナコイルと、
このアンテナコイルの両端に接続されたLSIと、
上記アンテナコイルの最内周の巻線から内側に突出した第1のランドと、
この第1のランドに対して上記巻線と交差する方向に対向し、上記アンテナコイルの最外周の巻線から外側に突出した第2のランドと、
上記アンテナコイル、2つのランド、およびLSIを形成した上記基材フィルムの表面を被覆したカバーフィルムと、
上記第1および第2のランドを短絡するステープル位置を表示した上記カバーフィルム上のマークと、
を有することを特徴とする査証用ICタグ。
【請求項6】
パスポートに貼り付ける査証用のICタグであって、
基材フィルムと、
この基材フィルムに形成した複数巻のアンテナコイルと、
このアンテナコイルの両端に接続されたLSIと、
上記アンテナコイルの最内周の巻線から内側に突出した第1のランドと、
この第1のランドに対して上記巻線と交差する方向に対向し、上記アンテナコイルの最外周の巻線から外側に突出した第2のランドと、
上記アンテナコイル、2つのランド、およびLSIを形成した上記基材フィルムの表面を被覆したカバーフィルムと、を有し、
上記カバーフィルムは、少なくとも上記第1および第2のランドを被覆した部位が透明に形成されていることを特徴とする査証用ICタグ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−114962(P2007−114962A)
【公開日】平成19年5月10日(2007.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−304675(P2005−304675)
【出願日】平成17年10月19日(2005.10.19)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】