説明

校正手段、校正方法、及びプログラム

【課題】 分光測定装置においては、経時変化や温度変化などによって、波長とセンサ上での検出位置が変化する場合があり、予め特定されてある範囲内では検出位置と波長との対応関係を適切に取得することができない場合がある。その結果、正しく分光測定装置の校正を行うことができない。
【解決手段】 分光測定装置の校正装置であって、入射光に含まれる輝線の波長と、探索範囲とを対応付けて記憶し、輝線を含む入射光の探索範囲内における画素値に基づいて、第一の検出位置を取得し、探索範囲内における画素値が所定の条件を満たした場合、探索範囲を変更し、変更された探索範囲内における画素値に基づいて第二の検出位置を取得し、第一の検出位置又は第二の検出位置と、輝線の波長との対応関係に基づいて、前記分光測定装置の校正を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に、センサにおける輝線の検出位置と波長との対応関係に基づき分光測定装置の校正を行う校正装置、校正方法、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
図10は、凹面回折格子と受光センサ(ラインセンサ)を組み合わせたローランド型分光測定装置である。光源によって照らされたサンプルの反射光は、スリットを通過し分光測定装置に入射する。次に、凹面回折格子に入射した光は分光し反射する。さらに、反射した光は、凹面回折格子上の曲率半径を直径とする円上に結像する。そして、結像位置に配置したラインセンサを用いて、分光した光の強度を画素値として取得することで、入射光の分光情報を測定することができる。このような構成の分光測定装置において、入射光の波長とラインセンサ上の画素位置との対応関係を正確に求めなければ、精度良く分光情報を測定することはできない。
【0003】
上記のような構成の分光測定装置では、次の二つの特性によって、画素位置と波長との対応関係が非線形になってしまう。第一に、光学的に分光した光は円周上に結像するが、ラインセンサは平面であることが一般的であるため、本来結像すべき位置と、ラインセンサ上での位置が異なってしまう。第二に、凹面回折格子の光学特性によって、分光した光はボケてしまう。加えて、ボケ特性は波長によって異なる。このような二つの特性から、画素位置と波長との対応関係は非線形となる。
【0004】
そこで、このような非線形な画素位置と波長との対応関係を算出する手法として、単波長を分光測定装置に入射し、モノクロメータを用いて画素ごとに対応関係を導き出すことが一般的である。しかしながら、モノクロメータを要する分光測定装置をプリンタなどの機器に組み込むことは現実的でない。
【0005】
また、簡易的な校正方法として、次のような手法が考えられる。まず、複数の輝線を持つ光源からの光を分光測定装置に入射し、輝線の波長と対応する検出位置を算出する。そして、複数の輝線の波長と対応する検出位置との組から回帰曲線を生成することによって、画素位置と波長との対応関係を導き出すことが知られている(例えば、特許文献1)。なお、本明細書中では、特定の輝線に対応するセンサ上での画素位置を検出位置という。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特登録2689707号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載されている手法の場合、画素位置と波長との対応関係を求めるためには、予め輝線が結像する検出位置の範囲を特定する必要がある。しかし、分光測定装置においては、経時変化や温度変化などによって、波長とセンサ上での検出位置が変化する場合があり、予め特定されてある範囲内では検出位置と波長との対応関係を適切に取得することができない場合がある。その結果、正しく分光測定装置の校正を行うことができない。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明の分光測定装置の校正装置は、
入射光に含まれる輝線の波長と、前記分光測定装置のセンサにおける前記輝線の第一の検出位置を取得する際の探索範囲とを対応付けて記憶する記憶手段と、
前記分光測定装置のセンサにより撮像された前記輝線を含む入射光の前記探索範囲内における画素値に基づいて、前記センサにおける前記輝線の第一の検出位置を取得する取得手段と、
前記探索範囲内における画素値が所定の条件を満たした場合、前記探索範囲を変更し、前記変更された探索範囲内における前記入射光の画素値に基づいて、前記輝線のセンサにおける第二の検出位置を取得する再取得手段と、
前記取得手段で取得された第一の検出位置又は前記再取得手段で取得された第二の検出位置と、前記輝線の波長との対応関係に基づいて、前記分光測定装置の校正を行う校正手段と、
を有する。
【発明の効果】
【0009】
本発明の分光測定装置の校正装置、校正方法、及びプログラムによれば、経時変化や温度変化などによって波長と検出位置との対応関係が変化した場合であっても、検出位置と波長との対応関係を適切に取得することができる。その結果、正しく分光測定装置の校正を行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本実施形態1、2における分光測定装置のブロック図
【図2】本実施形態1、2における全体処理の流れを示すためのフローチャート
【図3】本実施形態1の校正処理の流れを示すフローチャート
【図4】本実施形態1のパラメータを説明するための図
【図5】本実施形態1における極値の判定を説明するための図
【図6】本実施形態1における極値の判定を説明するための図
【図7】本実施形態2の校正処理の流れを示すフローチャート
【図8】本実施形態2のダーク解析を説明するための図
【図9】本実施形態2のパラメータを説明するための図
【図10】ローランド型分光器を説明するための図
【発明を実施するための形態】
【0011】
<実施形態1>
本実施形態1は、まず基準白色板に対する測定データから極値(頂点)を算出する。ここで極値とは、画素位置(入力)―画素値(出力)との関係における極値である。そして、探索した極値が正しいかどうかを判定し、誤っている場合には、探索に使用したパラメータ(探索範囲やフィティング次元数)を変更し、再探索することで、正しい極値を算出するものである。
【0012】
本実施形態の分光測定装置101の構成について、図1のブロック図を用いて説明する。光源102から照射された光はサンプル116で反射される。その反射光は、スリット103で光線幅が制限され、分光測定装置101に入射光として入射される。なお、スリット103は分光測定装置101の一部である。凹面回折格子104はスリット103から入射される光を分光して反射する。受光センサ105(ラインセンサ105)は凹面回折格子104にて分光、反射した光を受光する。制御処理部106は光源102や受光センサ105の動作制御や受光センサ105にて受光した分光データの取り込み、さらに、処理を行う。Central−Processing−Unit(CPU)107は制御処理部106内の各ユニットを制御する。Read−Only−Memory(ROM)108は変更を必要としないプログラムやパラメータなどを格納する記憶部である。Random−Access―Memory(RAM)109は外部装置から供給されるプログラムやデータを一時記憶する。また、RAM109は、CPU107による各種制御や計算に必要とされるワークメモリとして機能する。光源コントローラ110は、光源102の光量、発光タイミングや発光時間を制御するための光源コントローラである。受光センサコントローラ111は、受光センサ105を制御する。A/D変換部112は、受光センサコントローラ111を用いて受光センサ105から取得(撮像)したアナログ信号値をデジタル信号値に変換する。信号処理部113はA/D変換部112にて変換されたデジタル信号値に対して各種の処理する。外部インターフェース114は、信号処理部113にて処理されたデジタル信号値などを外部に出力したり、外部からの制御信号を入力する。システムバス115は、制御処理部106の各ユニット間でのデータ通信可能とする。センサ校正処理(センサキャリブレーション処理)を行う際は、サンプル116として基準白色板が用いられる。
【0013】
<全体処理の流れ>
本実施形態1の分光測定装置101における処理の流れについて、図2及び図3のフローチャートを用いて詳細に説明する。
まず、ステップS201では、分光測定装置101の電源を入れるなど測定するための準備を行う。ステップS202では、分光測定装置101のキャリブレーション処理(校正処理)を行う(詳細は後述する)。ステップS203では、校正処理された分光測定装置101を用いて測定対象の分光データの測定を行う。
【0014】
<校正処理>
次に、図3を用いて、ステップS202の校正処理について詳細に説明する。ステップS301では、CPU107は、光源コントローラ110を駆動させ、光源102を点灯させる。さらに、CPU107は、受光センサコントローラ111を駆動させ、基準白色板116の分光データを測定する。測定したデータは、A/D変換部112や信号処理部113により後述する各種処理を実行しやすいようなデジタルデータに変換され、RAM109に格納される。ステップS302では、CPU107は、ROM108から、波長と検出位置との対応関係や探索範囲、及び、フィッティング次元数などの初期パラメータ(詳細は後述する)を読み込み、RAM109に格納する。ステップS303では、CPU107は、ステップS302にて読み込んだ初期パラメータに基づいて画素位置における画素値の分布の極値の探索を探索範囲内で行う(詳細は後述する)。ステップS304では、CPU107は、ステップS303にて探索した極値の判定が所定の条件を満たすか否かの判断を行う(詳細は後述する)。正しい場合には、探索された検出位置と波長との対応関係をRAM109に記憶し、ステップS306に進む。誤っている場合にはステップS305に進む。ステップS305では、CPU107は、ROM108に格納している次の候補パラメータを読み込み、RAM109に格納し、ステップS303に戻る(パラメータの更新についての詳細は後述する)。そして、再度ステップS303にて、更新されたパラメータに基づき、極値を再探索(再取得)をし、ステップS304以下の処理を継続する。
【0015】
ステップS306では、CPU107は、すべての極値に対して探索したかどうかを判定する。すべての極値に対して探索した場合には、ステップS308に進み、そうでない場合には、ステップS307に進む。ステップS307では、探索する極値の更新を行いステップS203に戻る。ステップS303からステップS307までの処理を繰り返し、すべての極値について、検出位置を取得する。ステップS308では、CPU107は、ステップS303〜S307にて取得した極値に対応する波長と検出位置との関係から回帰曲線を算出する。この回帰曲線は、波長とラインセンサ105の検出位置との対応関係を示す。最後に、ステップS309では、CPU107は、ステップS308にて算出した回帰曲線を基に画素位置と波長との対応テーブルを生成し、RAM109に格納する。RAM109に格納された対応テーブルにより分光測定装置101の校正がなされる。
【0016】
<パラメータ>
図4(a)(b)に本実施形態におけるパラメータの一例を示す。図4(a)(b)に記載されているパラメータは、ROM108やRAM109に記憶されている。本実施形態において必要なパラメータは以下の通りである。
・探索する極値の総数(401)
・初期状態における極値の波長(402〜404)
・極値を算出するためのn次元多項式の初期のフィッティング次元数(405)
・フィッティング判定の閾値(406)
・それぞれの極値の探索範囲(407〜410)
なお、極値の波長は入射光の輝線の波長に対応している。また、重回帰分析によって、多項式近似を行い、それによって、極値を求める場合には、少なくとも(フィッティング次元数+1)個の画素数が必要となる。一般的に、受光センサの出力にはノイズが含まれている。そのため、あまりにもフィッティング次元数を高く設定してしまうと、ノイズによる変動に対してフィッティングしてしまう。結果、誤った極値を算出することになる。そこで、できるだけ小さいフィッティング次元数を用いることが望ましい。
【0017】
<極値探索>
ステップS303の極値の算出方法について詳細に説明する。例えば、2次元の多項式近似を用いて極値を近似する場合、探索範囲の検出位置をx0,x1,x2…、対応する基準白色板116を測定した際の出力値(画素値)をy0,y1,y2,…、2次元多項式の係数をa,b,cとする。最小二乗法を用いると係数a,b,cは(数式1)のようにして求めることができる。
【0018】
【数1】

【0019】
(数式1)によって求められた係数a,b,cを用いて、極値を取る検出位置(極値位置)を(数式2)によって求める。
極値位置=−b/2a ・・・(数式2)
2次元より大きな次元の多項式の場合についても同様に幾何的、代数的に極値を求める。
【0020】
<極値の判定>
ステップS304の極値の判定について、図5、及び図6を用いて詳細に説明する。
【0021】
図5(a)は、極値の探索が正しい場合を示している。基準白色板の測定値501に対して、探索範囲502内で、多項式近似503を行い、極値位置504を上記の方法で算出する。この場合、基準白色板の測定値の極値と多項式近似から求めた極値位置504が一致している(又は許容される誤差の範囲内にある)。一方、図5(b)は、極値の探索が誤っている場合を示している。上記と同様に、基準白色板の測定値505に対して、探索範囲506で多項式近似507を行い極値位置508を算出する。この場合、基準白色板の測定値505の極値と、多項式近似から求めた極値位置508は一致しない。これは、探索範囲506が正しくないためである。この判定方法は、算出した極値位置504、508が、探索範囲502,506内にあるかどうかを判定すれば良い。つまり、極値位置が、探索範囲内にあれば、正しい極値であり、探索範囲の境界、又は探索範囲外にあれば、誤った極値となる。
【0022】
次に、図6(a)も、極値の探索が正しい場合を示している。基準白色板の測定値601に対して、探索範囲602内で、多項式近似603を行い、極値位置604を上記の方法で算出する。この場合、基準白色板の測定値の極値と多項式近似から求めた極値位置604が一致している(又は許容される誤差の範囲内にある)。一方、図6(b)は、極値の探索が誤っている場合を示している。上記と同様に、基準白色板の測定値605に対して、探索範囲606で多項式近似607を行い、極値位置608を算出する。この場合、基準白色板の測定値605の極値と、多項式近似から求めた極値位置608は一致しない。これは、上記の探索範囲内に極値があるにも係わらず、探索が誤っている場合である。この場合は、近似対象が左右非対処な形状に対して、多項式近似時のフィッティング次元数が異なるために、探索が失敗している。そこで、(数式3)のように多項式近似した結果と基準白色板の測定値との最小二乗誤差値をとり、フィッティング判定の閾値406と比較することにより、誤った極値であるか否かを判断する。本実施形態では、最小二乗誤差値が閾値406以上であった場合、誤った極値であると判定する。
【0023】
【数2】

【0024】
<パラメータの更新>
ステップS305のパラメータ更新について説明する。
【0025】
上述のように、ステップS304にて、正しくない極値と判定された場合(所定の条件を満たした場合)は、以下の二通りある。
(a)極値が探索範囲の境界、又は探索範囲外にある
(b)多項式近似時のフィッティング次元数が不適切である
そこで、上述の二通りの場合、及びその組合せにおけるパラメータの更新を説明する。
【0026】
(a)探索範囲の更新
極値が探索範囲の境界、又は探索範囲外にあり、正しくない極値と判定された場合、図4の408〜410のように探索範囲をずらす。図4の例では、最初に探索範囲1(407)で見つからなかった場合には、探索範囲2(408)のように左に4画素シフトさせる。また、更に見つからない場合には、探索範囲3(409)のように右にシフトさせる。それでも見つからない場合には、探索範囲4(410)のように探索範囲を広げて探索を行う。
なお、多項式近似のフィッティングの精度を向上させるためには、極値の探索範囲は、探索範囲を狭くすることが望ましい。極値と離れた画素値のデータにより極値付近のデータの精度が悪くなることを回避するためである。
この探索範囲のパラメータの更新は、この例に限定されるものではないのは言うまでもない。センサの温度特性などに応じて予め極値が移動しやすい方向に探索範囲を選択するようにすれば、探索時間などの短縮を行える。
【0027】
(b)フィッティング次元数の更新
多項式近似のフィッティング次元数が不適切であり、正しくない極値と判定された場合、フィッティング次元数を上げる。例えば、図4の例では、最初にフィッティング次元数を2として探索するが、最小二乗誤差誤差がフィッティング判定閾値406以上である場合に、フィッティング次元数を3にする。
ノイズによるフィッティングの影響を軽減するために、フィッティング次元数は、なるべく小さいほど良い。本実施形態によれば、低い次元数でフィッティングを行い、所定の条件を満たした場合に限り、次元数を上げることからノイズの影響を極力排除したフィッティングを可能にしている。
【0028】
(c)探索範囲、及びフィッティング次元数の更新
図4(c)に記載されているように、探索範囲、及びフィッティング次元数の両者を組み合わせた形で更新することも考えられる。この例では、極値(1)について、最初に探索パラメータ1でフィッティングを実行する。このフィッティングの際のフィッティング次元数は2である。この際の極値位置が、探索範囲境界、又は探索範囲外である場合、或いは、最小二乗誤差がフィッティング判定閾値以上である場合は、探索パラメータを探索パラメータ2に更新する。
この実施形態によれば、探索範囲とフィッティング次元数の両者を考慮したフィッティングを行うことが可能となり、より精度の高いフィッティングを実現することができる。
【0029】
<本実施形態の効果>
本実施形態によれば、波長と検出位置との対応関係の校正を行うことができる。そして、本実施形態では、探索範囲やフィッティング次元数などを予めパラメータとして保持しておくため、探索範囲や次元数を逐一決定しながら最適化する手法に比べて高速な処理が可能となる。また、本実施形態では、探索範囲を狭めてフィッティングすることから精度の高いフィッティングを行うことができる。更に、本実施形態では、なるべく低い次元の多項式でフィッティングをすることから、ノイズの影響を受けないフィッティングを可能としている。
【0030】
<実施形態2>
本実施形態2の概要について述べる。
本実施形態2では、まず光源を光らせない状態の画素値のダークデータを取得する。そして、取得したダークデータを解析することで、分光測定装置の状態を取得し、パラメータ(探索範囲やフィティング次元数)を変更することで、精度良く極値を算出するものである。
本実施形態2の分光測定装置の構成は、実施形態1のブロック図と等しいため省略する。
【0031】
<全体処理の流れ>
本実施形態2の分光測定装置における全体処理の流れは実施形態1と等しいため省略する。
【0032】
<校正処理>
図2のステップS202の校正処理について、実施形態1と異なるため、図7のフローチャートを用いて詳細に説明する。
まず、ステップS701では、CPU107は、受光センサコントローラ111を駆動させ、ダークデータを取得する。ステップS702では、CPU107は、ステップS701にて取得したダークデータを解析する(詳細は後述する)。ステップS703では、CPU107は、ステップS702にて解析した結果に基づいて、パラメータを設定する(詳細は後述する)。ステップS704では、CPU107は光源コントローラ110を駆動させ、光源102を点灯させる。さらに、受光センサコントローラ111を駆動させ、基準白色板116の分光データを測定する。ステップS705では、CPU107は、ステップS703にてパラメータに基づいて、ステップS704で取得した基準白色板の分光データから実施形態1にステップS303と同様の処理を用いて極値を探索する。ステップS706では、CPU107は、ステップS705にて取得した極値と対応する波長の関係から回帰曲線を生成する。最後に、ステップS707では、CPU107は、ステップS706にて算出した回帰曲線に基づいて画素位置と波長との対応テーブルを算出し、RAM109に格納する。
【0033】
<ダーク解析>
ステップS702のダーク解析について詳細に説明する。本実施形態2における分光測定装置101の波長と検出位置との対応関係を変動させる要因の一つとして、分光測定装置自体の温度による変動がある。例えば、温度変動によって、機体が膨張伸縮するということが考えられる。その結果、波長と検出位置との対応関係が変化する。図8は、ダークデータの受光センサの平均出力値(暗電流成分)と、温度との対応関係を示している。図8が示すように、ダークデータの平均出力値によって、受光センサの温度を取得する。
【0034】
<パラメータの設定>
図9にステップS703のパラメータの一例について示す。本実施形態2において必要なパラメータは、探索極値数(901)、極値の波長(902〜904)、及び、センサ温度に対応する探索範囲とフィッティング次元数(905〜909)である。ステップS702にて、取得した受光センサの温度に対応する探索範囲とフィッティング次元数をRAM109にセットする。
【0035】
<実施形態1との組合せについて>
本実施形態2は、実施形態1と組み合わせて実施することも可能である。この場合、最初の探索範囲を本実施形態2の手法を用いて取得する。そして、極値が探索範囲の境界、又は探索範囲外に存在する場合、或いは、最小二乗誤差がフィッティング判定閾値以上である場合は、実施形態1の手法に従って、探索範囲、又はフィッティング次元数を更新する。
【0036】
<実施形態2の効果>
本実施形態2では、分光測定装置の温度状況に応じて極値の探索範囲を切り替える。これにより、分光測定装置の温度状況が変化したとしても、波長と画素の対応関係を精度良く算出することができる。
【0037】
<実施形態3>
また、本発明は、以下の処理を実行することによっても実現される。即ち、上述した実施形態の機能を実現するソフトウェア(プログラム)を、ネットワーク又は各種記憶媒体を介してシステム或いは装置に供給し、そのシステム或いは装置のコンピュータ(またはCPUやMPU等)がプログラムを読み出して実行する処理である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
分光測定装置の校正装置であって、
入射光に含まれる輝線の波長と、前記分光測定装置のセンサにおける前記輝線の第一の検出位置を取得する際の探索範囲とを対応付けて記憶する記憶手段と、
前記分光測定装置のセンサにより撮像された前記輝線を含む入射光の前記探索範囲内における画素値に基づいて、前記センサにおける前記輝線の第一の検出位置を取得する取得手段と、
前記探索範囲内における画素値が所定の条件を満たした場合、前記探索範囲を変更し、前記変更された探索範囲内における前記入射光の画素値に基づいて、前記輝線のセンサにおける第二の検出位置を取得する再取得手段と、
前記取得手段で取得された第一の検出位置又は前記再取得手段で取得された第二の検出位置と、前記輝線の波長との対応関係に基づいて、前記分光測定装置の校正を行う校正手段と、
を有する校正装置。
【請求項2】
前記取得手段により取得される第一の検出位置を、前記探索範囲内における画素値の分布の極値に基づいて取得することを特徴とする請求項1に記載の校正装置。
【請求項3】
前記再取得手段により取得される第二の検出位置を、前記変更された探索範囲内における画素値の分布の極値に基づいて取得することを特徴とする請求項1又は2に記載の校正装置。
【請求項4】
前記極値は、n次元多項式の最小二乗法によって算出されることを特徴とする請求項2又は3に記載の校正装置。
【請求項5】
前記所定の条件は、前記第一の検出位置が前記記憶手段に記憶されている前記探索範囲内にあるか否かであることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の校正装置。
【請求項6】
前記再取得手段は、前記所定の条件を満たした場合、前記n次元多項式の次元数を更新することを特徴とする請求項4に記載の校正装置。
【請求項7】
前記記憶手段は、前記輝線の波長と、前記探索範囲とを対応付けて複数記憶し、
前記再取得手段は、前記探索範囲を変更する際に、前記記憶手段に記憶されている前記複数の探索範囲のうち一つを選択することを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の校正装置。
【請求項8】
前記所定の条件は、前記探索範囲内に前記画素値の分布の極値が存在するか否かであることを特徴とする請求項1に記載の校正装置。
【請求項9】
前記所定の条件は、前記最小二乗法の二乗誤差値と閾値との比較により判定されることを特徴とする請求項4に記載の校正装置。
【請求項10】
前記探索範囲は、前記センサの温度に基づいて設定することを特徴とする請求項1乃至請求項9の何れかに記載の校正装置。
【請求項11】
前記センサの温度は、前記センサにより光源を光らせないで撮像した画素値に基づいて取得される請求項10に記載の校正装置。
【請求項12】
請求項1に記載された校正装置の各手段を有し、
更に前記入射光を撮像するセンサを有することを特徴とする分光測定装置。
【請求項13】
分光測定装置の校正方法であって、
記憶手段から、入射光に含まれる輝線の波長と、前記分光測定装置のセンサにおける前記輝線の第一の検出位置を取得する際の探索範囲とを対応付けて読出す読出し工程と、
前記分光測定装置のセンサにより撮像された前記輝線を含む入射光の前記探索範囲内における画素値に基づいて、前記センサにおける前記輝線の第一の検出位置を取得する取得工程と、
前記探索範囲内における画素値が所定の条件を満たした場合、前記探索範囲を変更し、前記入射光の前記変更された探索範囲内における画素値に基づいて、前記輝線のセンサにおける第二の検出位置を取得する再取得工程と、
前記取得工程で取得された第一の検出位置又は前記再取得工程で取得された第二の検出位置と、前記輝線の波長との対応関係に基づいて、前記分光測定装置の校正を行う校正工程と、
を有する校正方法。
【請求項14】
コンピュータを請求項1の各手段として機能させるためのプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−117777(P2011−117777A)
【公開日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−273888(P2009−273888)
【出願日】平成21年12月1日(2009.12.1)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】