核破砕中性子源水銀ターゲット容器の診断方法及び装置
【課題】中性子発生のための大型構造物の内部(底部)に設置された核破砕中性子発生源水銀ターゲット容器の外周振動を構造体外部から非接触で放射線の影響を受けずに精度よく計測し、水銀ターゲット容器の損傷の評価及び疲労劣化の評価を行うことができる核破砕中性子源水銀ターゲット容器の診断技術を提供する。
【解決手段】レーザドップラ振動計から入射ビームを、中性子発生のためにパルス入射陽子線が照射されている核破砕中性子源水銀ターゲット容器に照射し、その反射ビームを受け取り、計測信号を取得し、その計測信号の特定の特徴に基づいて水銀ターゲット容器の損傷、疲労劣化の評価を行う。
【解決手段】レーザドップラ振動計から入射ビームを、中性子発生のためにパルス入射陽子線が照射されている核破砕中性子源水銀ターゲット容器に照射し、その反射ビームを受け取り、計測信号を取得し、その計測信号の特定の特徴に基づいて水銀ターゲット容器の損傷、疲労劣化の評価を行う。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この出願の発明は、核破砕中性子源水銀ターゲット容器の診断方法及び装置に関し、詳しくは中性子発生のための大型構造物の内部(底部)に設置された核破砕中性子発生源水銀ターゲット容器の振動を構造体外部から非接触で放射線の影響を受けずに精度よく計測し、水銀ターゲット容器の損傷の評価及び疲労劣化の評価を行うことができる核破砕中性子源水銀ターゲット容器の診断方法及び装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
日本原子力研究所と高エネルギー加速器機構で開発を進めている中性子散乱施設では、大強度のパルス陽子を重金属ターゲットに入射して、核破砕反応により従来の研究炉等よりも強度が1桁高い中性子を発生させ、生命科学や物質科学などの先端科学分野の研究を行う(非特許文献1)。
【0003】
重金属ターゲットには、中性子収率に優れていること、ターゲット自体を冷却材に用いることができるため除熱の観点で有利であることから、液体水銀を用いる計画である。ここでは、大強度の陽子線が液体水銀ターゲット中に入射するため、液体水銀内部では急激な発熱反応に伴う熱膨張により、圧力波が生じる。この圧力波は、液体水銀中を伝播し水銀を封じている固体金属容器に達する。圧力波により容器構造材料に負荷される荷重は、容器構造の健全性に影響する(非特許文献2)。
【0004】
液体/固体金属の音響インピーダンスの差異から、容器構造材料の急速変形時にその液体側及び固体側界面で巨視的あるいは微視的な不連続変形に伴う負圧が起こると考えられる。この発生する負圧により液体界面近傍では、いわゆるキャビテーションが生じる条件が成立するため、固体側界面でキャビテーション壊食が懸念され、固体金属容器の寿命を決定する因子の一つとなっている(非特許文献3)。さらに、繰り返し衝撃圧が加わることにより容器構造材料の疲労劣化が懸念される。
【0005】
過去に、キャビテーションを発生させる陽子パルス入射時に生じる圧力波に起因する振動を圧電素子型振動計を用いて計測することが試みられた(非特許文献4)。ところが、従来の圧電素子型振動計では、陽子入射時に生じる誘起電流が計測電気信号に対して雑音となり計測に影響を及ぼすとともに、耐放射性の観点から改善の余地がある。また、光ファイバーセンサーを用いた振動計による計測では、放射線劣化によりファイバーの長期耐久性が維持できない。
【非特許文献1】Planning division for neutron science, Proceeding of the 3rd Workshop on Neutron Science Project-Science and technology in the 21st century opened by intense spallation neutron source, JAERI-Conf 99-003, (1999)
【非特許文献2】M. Futakawa, K. Kogawa, R. Hino, H. Date, H. Takeishi, Erosion damage on solid boundaries in contact with liquid metals by impulsive pressure injection, Int. J. Imp. Eng., 28, 123-135 (2003)
【非特許文献3】M. Futakawa, T. Naoe, H. Kogawa, C. C. Tsai, Y. Ikeda, Pitting damage formation up 10 million cycles-Off-line test by MIMTM-, J. Nucl. Sci. Rech., 40, 895-904, (2003)
【非特許文献4】M. Futakawa, K. Kikuchi, H. Conrad, H. Stechemesser, Pressure and stress waves in a spallation neutron source mercury target generated by high-power proton pulses, Nucl. Instrum Methods Phys. Res. A, 439, 1-7(2000)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このように、従来の技術では、大強度の陽子パルス入射時に生じる圧力波に起因する水銀ターゲット容器に振動を十分な耐放射線対策を講じつつ精度良く計測することができなかった。
【0007】
また、キャビテーション壊食による水銀ターゲット容器の損傷の状況あるいは繰り返し衝撃圧が加わることによる水銀ターゲット容器材料の疲労劣化の把握が十分とはいえなかった。
【0008】
そこで、この出願の発明は、以上のとおりの事情に鑑みてなされたもので、中性子発生のための大型構造物の内部(底部)に設置された核破砕中性子発生源水銀ターゲット容器の外周振動を構造体外部から非接触で放射線の影響を受けずに精度よく計測し、水銀ターゲット容器の損傷の評価及び疲労劣化の評価を行うことができる核破砕中性子源水銀ターゲット容器の診断方法及び装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この出願の発明は、上記課題を解決するため、第1には、中性子発生のための構造物内に設置された核破砕中性子源水銀ターゲット容器の診断方法であって、レーザドップラ振動計から入射ビームを、中性子発生のためにパルス入射陽子線が照射されている核破砕中性子源水銀ターゲット容器に照射し、その反射ビームを受け取り、計測信号を取得し、その計測信号の波形から高調波振動波形を分離し、分離された高調波振動波形の振幅から損傷ポテンシャルを求め、その損傷ポテンシャルに基づいて損傷の評価を行うことを特徴とする核破砕中性子源水銀ターゲット容器の診断方法を提供する。
【0010】
また、第2には、中性子発生のための構造物内に設定された核破砕中性子源水銀ターゲット容器の診断方法であって、レーザドップラ振動計から入射ビームを、中性子発生のためにパルス入射陽子線が照射されている核破砕中性子源水銀ターゲット容器に照射し、その反射ビームを受け取り、計測信号を取得し、その計測信号の波形から高調波振動波形を分離し、分離された高調波振動波形の出現時刻の時間遅れからキャビテーション強度を求め、求めたキャビテーション強度に基づいて損傷の評価を行うことを特徴とする核破砕中性子源水銀ターゲット容器の診断方法を提供する。
【0011】
また、第3には、中性子発生のための構造物内に設置された核破砕中性子源水銀ターゲット容器の診断方法であって、レーザドップラ振動計から入射ビームを、中性子発生のためにパルス入射陽子線が照射されている核破砕中性子源水銀ターゲット容器に照射し、その反射ビームを受け取り、計測信号を取得し、その計測信号の波形から源波形を分離し、分離された源波形から疲労亀裂伝播誘起音響振動を解析し、解析した疲労亀裂伝播誘起音響振動に基づいて疲労劣化の評価を行うことを特徴とする核破砕中性子源水銀ターゲット容器の診断方法を提供する。
【0012】
また、第4には、中性子発生のための構造物内に設置された核破砕中性子源水銀ターゲット容器の診断装置であって、入射ビームを、中性子発生のためにパルス入射陽子線が照射されている核破砕中性子源水銀ターゲット容器に照射し、その反射ビームを受け取り、計測信号を取得するレーザドップラ振動計と、核破砕中性子発生源水銀ターゲット容器に取り付けられた再帰性ミラーと、入射ビームをレーザドップラ振動計から再帰ミラーまで到達させ、反射ビームを再帰ミラーからレーザドップラ振動計まで帰還させるミラーアッセンブリと、取得した計測信号の波形から高調波振動波形を分離する分離手段、分離された高調波振動波形の振幅から損傷ポテンシャルを求める損傷ポテンシャル演算手段、及び求めた損傷ポテンシャルに基づいて損傷の評価を行う損傷評価手段を有する損傷評価装置を備えることを特徴とする核破砕中性子源水銀ターゲット容器の診断装置を提供する。
【0013】
また、第5には、中性子発生のための構造物内に設置された核破砕中性子源水銀ターゲット容器の診断装置であって、入射ビームを、中性子発生のためにパルス入射陽子線が照射されている核破砕中性子源水銀ターゲット容器に照射し、その反射ビームを受け取り、計測信号を取得するレーザドップラ振動計と、核破砕中性子源水銀ターゲット容器に取り付けられた再帰性ミラーと、入射ビームをレーザドップラ振動計から再帰ミラーまで到達させ、反射ビームを再帰ミラーからレーザドップラ振動計まで帰還させるミラーアッセンブリと、取得した計測信号の波形から高調波振動波形を分離する分離手段、分離された高調波振動波形の出現時刻の時間遅れからキャビテーション強度を求めるキャビテーション強度演算手段、及び求めたキャビテーション強度に基づいて損傷の評価を行う損傷評価手段を有する損傷評価部を備えることを特徴とする核破砕中性子源水銀ターゲット容器の診断装置を提供する。
【0014】
さらに、第6には、構造物内に設置された核破砕中性子源水銀ターゲット容器の診断装置であって、入射ビームを、中性子発生のためにパルス入射陽子線が照射されている核破砕中性子源水銀ターゲット容器に照射し、その反射ビームを受け取り、計測信号を取得するレーザドップラ振動計と、核破砕中性子発生源水銀ターゲット容器に取り付けられた再帰性ミラーと、入射ビームをレーザドップラ振動計から再帰ミラーまで到達させ、反射ビームを再帰ミラーからレーザドップラ振動計まで帰還させるミラーアッセンブリと、取得した計測信号の波形から源波形を分離する分離手段、分離された源波形から疲労亀裂伝播励起音響振動を解析する解析手段、及び解析した疲労亀裂伝播連記音響振動に基づいて疲労劣化の評価を行う疲労劣化評価手段を有する疲労劣化評価部を備えることを特徴とする核破砕中性子源水銀ターゲット容器の診断装置を提供する。
【発明の効果】
【0015】
この出願の発明の方法及び装置は、中性子発生のための大型構造物の内部(底部)に設置された核破砕中性子発生源水銀ターゲット容器の外周振動を構造物外部から遠隔・非接触で計測可能とし、それにより計測できる音響振動に関する情報から、大強度の陽子パルス入射時に生じる圧力波による損傷の程度及び疲労劣化の程度を評価することができる。これにより、水銀ターゲット容器の予寿命評価に関するその場診断技術が確立でき、核破砕中性子源の運転安全性を確保できる。
【0016】
また、この出願の発明の方法及び装置は、従来の高速振動計測に比べ、耐放射線対策が十分がなされている上、測定光の位置ズレや角度ズレに対する優位性があり、光学系の構造物への設置が簡便である利点がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
この出願の発明は、上記のとおりの特徴をもつものであるが、以下にその実施の形態について説明する。
【0018】
この出願の発明は、中性子発生のための構造物内に設置され核破砕中性子源水銀ターゲット容器の診断に係わるものである。パルス陽子線を核破砕中性子源水銀ターゲット容器の液体水銀ターゲット中に入射して中性子を発生させると、液体水銀内部では急激な発熱反応に伴う熱膨張によりパルス衝撃圧力波が生じ、この圧力波は液体水銀ターゲット容器の損傷及び容器材料の疲労劣化を招き、ひいては核破砕中性子源の運転安全性に多大な影響を及ぼす。そこで、この出願の発明は、構造物外部から高放射線場の影響を受けずに、遠隔、非接触で水銀ターゲット容器の高速振動を計測し、その場で水銀ターゲット容器の損傷、疲労劣化を評価、診断するものである。
【0019】
図1は、この出願の発明による水銀ターゲット容器の診断システム(方法)の構成及び流れを示したものである。また、図2は、この出願の発明による水銀ターゲット容器の診断装置における振動計測のための光学系(レーザ光路)を概略的に示す図、図3は、反射体に設置される減速材配管取付溝を利用したレーザ光路を示す図で、(a)は側面からの景観図、(b)は底面からの景観図である。
【0020】
この出願の発明による水銀ターゲット容器の診断装置は、上記光学系に加えて損傷及び疲労劣化の評価を行う評価部(図示略)を有する。この評価部は、コンピュータ等を利用して各機能を実現させることができる。
【0021】
先ず、水銀ターゲット容器の外周振動の計測のための光学系について述べると、振動計測にはレーザドップラ振動計(1)を用いる。このレーザドップラ振動計(1)は、入射ビームを出射して被測定物に照射し、その反射ビームを受け取り、入射ビームと反射ビームとの干渉効果により、被測定物の振動特性を表す計測信号を得るものである。ここで被測定物は水銀ターゲット容器(2)であり、また反射ビームを受光するため水銀ターゲット容器(2)の外壁面適所には金属製再帰性ミラー(5)が設けてある。
【0022】
また、水銀ターゲット容器(2)は、放射能に対する遮蔽機能が十分施される必要があるため、レーザ光(6)の光路は狭窄な光路として形成する必要がある。そのため、この実施形態では、極低温水素減速材システム内部構造体を設置するために設けた反射体側溝部を利用して光路を確保している。すなわち、レーザ光路を遮蔽構造体と減速材配管との間に形成することにより、レーザ光(6)の入射と水銀ターゲット容器(2)からの反射の受光を行う。
【0023】
光路途中には直角な屈曲部が2カ所設置される。このため、金属表面研磨型連結ミラーアセンブリA(3)、B(4)をそれぞれ配置する。研磨ミラーには耐放射線性を考慮して、たとえばSUS316ステンレス鋼などの耐放射性金属材料を用いる。金属表面研磨型連結ミラーアセンブリA(3)、B(4)は、高度放射線環境に曝されるため、遠隔操作による着脱可能な構造とする。
【0024】
また、水銀ターゲット容器(2)の外周壁に取り付ける再帰性ミラー(5)としてはマイクロミラー群から構成される再帰性反射ミラー板を取り付ける。マイクロミラー群とは数百ミクロンの再帰性反射ミラーが約百万個集合した板状ミラー群のことである。これにより、入射角度のズレを補正する必要がなく入射方向へ光を反射することができる。
【0025】
図4には、各部位の反射効率を考慮してセンサ受光量を検討した結果を示すが、振動情報が取得可能な1μW以上の受光パワーを十分上回ることが確認できる。
【0026】
次に、損傷及び疲労劣化の評価を行う評価部について述べる。上記したようにこの評価部は、たとえばコンピュータを利用してその機能を実現することができるが、その機能実現手段としては、
(A)レーザドップラ振動計(1)で取得した計測信号の波形から高調波振動波形と源波形号を分離する分離手段、
(B)分離された高調波振動波形の振幅から損傷ポテンシャルを求める損傷ポテンシャル演算手段、
(C)分離された高調波振動波形の出現時刻の時間遅れからキャビテーション強度を求める時間遅れ演算手段、
(D)分離された源波形から疲労亀裂伝播励起音響振動を解析する解析手段、
(E)損傷ポテンシャル演算手段(B)で求めた損傷ポテンシャルに基づいて損傷の評価を行う損傷評価セクション(E1);キャビテーション強度演算手段(C)で求めたキャビテーション強度に基づいて損傷の評価を行う損傷評価セクション(E2);及び解析手段(E)で解析した疲労亀裂伝播励起音響振動に基づいて疲労劣化の評価を行う疲労劣化評価セクション(E3)を有し、これらの評価結果に基づいて水銀ターゲット容器(2)の予寿命を評価する評価手段、
を備えるものとすることができる。
【0027】
なお、(A)、(B)、(E1)の組合せと、(A)、(C)、(E2)の組合せ、(A)、(D)、(E3)の組合せの単独のもの、あるいはそれらの組合せの2つを合わせたものとし、その評価結果に基づいて水銀ターゲット容器(2)の予寿命を評価することも可能である。
【0028】
分離手段(A)は、レーザドップラ振動計(1)で得た計測信号より源波形と高調波振動波形を分離する。計測信号の波形は、源波形に、キャビテーション気泡の崩壊により励起される高調波振動の波形が重畳されているため、両者の分離を行う。
【0029】
損傷ポテンシャル演算手段(B)は、分離手段(A)で分離した高調波振動波形の振幅から、後述の実施例1で詳細に定義、説明する損傷ポテンシャルを求める。計測信号の高調波振動波形の振幅と水銀ターゲット容器(2)の損傷の程度は、実験により相関があることがわかっている。そこで、定量的な評価のため、高調波振動波形の振幅と関係がある損傷ポテンシャルを定義し、それを演算する。
【0030】
キャビテーション強度演算手段(C)は、分離手段(A)で分離した高調波振動波形の時間遅れから、キャビテーション強度を求める。計測信号の高調波振動波形の出現時刻の時間遅れ(キャビテーション強度と関係がある)と水銀ターゲット容器(2)の損傷の程度も、実験により相関があることがわかっている。そこで、定量的な評価のため、高調波振動波形の出現時刻の時間遅れと関係があるキャビテーション強度を演算する。
【0031】
解析手段(D)は、分離手段(A)で分離した源波形から、疲労亀裂伝播励起音響振動を解析する。源波形には、繰り返し衝撃圧の負荷による疲労劣化に伴う亀裂伝播時に発生する音響信号が重畳する。特に、水銀ターゲット容器(2)の寿命末期にはこの種の音響信号が顕著となる。そこでこの音響信号を解析する。その解析はたとえば周波数スペクトル解析により行う。
【0032】
評価手段(E)は手段(B)、(C)、(D)で演算、解析した損傷ポテンシャル、キャビテーション強度、疲労亀裂伝播励起音響振動解析データに基づいて水銀ターゲット容器(2)の損傷、疲労劣化の評価を行う。そのため、あらかじめ損傷ポテンシャルと損傷の相関データ、キャビテーション強度と損傷の相関データ、疲労亀裂伝播励起音響振動解析結果と疲労劣化の関係データを、たとえばコンピュータのメモリに格納しておき、手段(B)、(C)、(D)からのデータと比較して、損傷、疲労劣化の程度を評価する。
【0033】
次に、この出願の発明による評価の手順を述べると、パルス陽子線を水銀ターゲット容器(2)内の液体水銀ターゲットに照射した状態で、レーザドップラ振動計(1)よりレーザビーム(6)をミラーアッセンブリA(3)を介して、水銀ターゲット容器(2)表面に取り付けてある再帰性ミラー(5)に向けて照射する。再帰性ミラー(5)で反射したレーザ光(6)はミラーアッセンブリB(4)を経てレーザドップラ振動計(1)で受光される。レーザドップラ振動計(1)で受光した信号は、評価部に送られる。
【0034】
評価部においては、先ず、分離手段(A)が、送られてきた計測信号より高調波振動波形と源波形を分離する。分離された高調波振動波形のデータは損傷ポテンシャル演算手段(B)とキャビテーション強度演算手段(C)に送られる。分離された源波形のデータは解析手段(D)に送られる。
【0035】
損傷ポテンシャル演算手段(B)は、送られてきた高調波振動波形の振幅データに基づいて損傷ポテンシャルを演算し、そのデータを評価手段(E)の損傷評価セクション(E1)に送る。損傷評価セクション(E1)は送られてきた損傷ポテンシャルデータを、あらかじめ記憶されている相関データと対照させ、損傷の程度を定量的に評価する。
【0036】
キャビテーション演算手段(C)は、送られてきた高調波振動波形の出現時刻の時間遅れデータに基づいてキャビテーション強度を演算し、そのデータを評価手段(E)の損傷評価セクション(E2)に送る。損傷評価セクション(E2)は送られてきたキャビテーション強度データを、あらかじめ記憶されている相関データと対照させ、損傷の程度を定量的に評価する。
【0037】
解析手段(D)は、送られてきた源波形のデータに基づいて疲労亀裂伝播励起音響振動を解析し、その解析データを評価手段(E)の疲労劣化評価セクション(E3)に送る。疲労劣化評価セクション(E3)は送られてきた解析データを、あらかじめ記憶されている関係データと対照させ、疲労劣化の程度を定量的に評価する。
【0038】
以上の各評価値からキャビテーション壊食による損傷程度を推定し、水銀ターゲット容器(2)の予寿命を評価する。さらに、これらの信号を分析することにより、水銀ターゲット容器(2)の交換時期等に関する情報を得ることができ、運転安全性の確保に資することができる。
【実施例】
【0039】
次に、この出願の発明の実施例を述べるが、これらはこの出願の発明を限定するものではない。
【0040】
(実施例1:音響振動振幅に基づく損傷ポテンシャルによる評価)
陽子線入射時に発生するパルス圧を機械的に水銀中に負荷することにより、キャビテーションを生じさせる装置を用いて、レーザドップラ振動計により遠隔・非接触で計測した信号と損傷の程度との相関を求めた。計測信号と損傷の程度との相関を定量的に規定するため、計測された音響振動に基づく損傷ポテンシャルを定義し、その損傷ポテンシャルを、以下の手順で求めた。ここでは、レーザドップラ振動計により計測される振動信号と同等の圧電素子加速度計から計測された加速度信号に基づいた評価例を示す。
【0041】
図5は、繰り返し周波数25Hzの衝撃パルスを入力パワー560Wと150Wに変化させて計測した結果である。図5から、入力パワーを増加するとキャビテーション気泡の崩壊により誘発される高調波振動が重畳されることを示している。サンプリング間隔は1μsである。衝撃負荷直後に約2ms程度の周期を持つ波形が現れ、560W波形には150W波形には見られない高周波成分が重畳していることが分かる。この高周波成分は、衝撃パルス負荷後に発生したキャビテーションによるマイクロバブルの崩壊により、高エネルギー密度の衝撃力が局所的に作用した結果生じたものである。すなわち、ピッティング損傷の形成因子であるキャビテーション衝撃の強度を示している。
【0042】
図6に応答振動の周波数スペクトル解析の結果を示す。入力パワー560Wの場合50kHz近傍の高調波成分が多く観測される。入力パワー150Wに比べ560Wには、ストライカーの応答に対応した1.5kHzより高い周波数成分が重畳し、特に10kHz以上の成分が多く観察されている。従って、キャビテーション衝撃に起因した15kHz以上の加速度をハイパスフィルターにより抽出する。その振動波形を図7に示す。次に、損傷量との相関を定量的に評価するために、1パルスで発生した局所衝撃エネルギーに相当する量Eを次式で求める。
【0043】
【数1】
【0044】
ここで、nは1パルス当たりに発生する局所衝撃の回数、Δtは局所衝撃の負荷時間である。さらに、Ethを損傷に対する下限値として、損傷ポテンシャルφを次式(2)で定義する。
【0045】
【数2】
【0046】
さらに、損傷ポテンシャルφのパルス負荷回数Nの影響を検討するために次式(3)で表す累積損傷ポテンシャルφaを導入する。
【0047】
【数3】
【0048】
すなわち、計測された音響振動信号に式(1)から式(3)を適用して、損傷ポテンシャルを求める。このようにして、評価した累積損傷ポテンシャルと実測された損傷面積率との関係を図8に示す。両者は、良い相関があることが理解される。従って、この出願の発明に提案された音響振動に基づく損傷ポテンシャルにより、パルス衝撃圧負荷により発生するキャビテーション壊食の大きさの程度を被対象物の外側から予測できる。
【0049】
(実施例2:時間遅れによるキャビテーション強度の推定)
パルス入射陽子線による衝撃圧負荷の発生時刻に対するキャビテーション気泡崩壊時間の時間遅れは、衝撃圧により発生したキャビテーション気泡の大きさに依存することを、実験及び数値解析結果から明らかにした。この観点から、キャビテーション損傷を誘発するキャビテーション気泡崩壊の時間遅れを精度良く測定することにより、キャビテーション強度及び損傷の程度を推定できる。
【0050】
図9は入力パワーの変化、すなわちパルス衝撃圧によるキャビテーション気泡崩壊に伴う高調波成分の時間変化を示している。衝撃パルスが増加するに従って、高調波振動の発生時刻、すなわちキャビテーション気泡崩壊時刻が遅くなっていることが分かり、入力パワーの増加に伴い、パルス圧負荷開始時刻に対する高調波成分の出現時刻までの時間遅れが増大する。
【0051】
また、気泡動力学に基づいた数値解析結果を図10に示すが、負荷衝撃圧力の大きさが増加するに従って、発生気泡の膨張収縮時間が長くなることが理解できる。入力パルス圧が増加するにしたがって、キャビテーション気泡の成長期間は長くなる。この結果、キャビテーション気泡の崩壊により励起された高調波成分の出現までの遅れ時間からキャビテーション強度が推定できる。
【0052】
さらに、キャビテーション気泡崩壊の時間遅れと実測された損傷面積率との関係を図11に示すが、時間遅れと共に損傷の程度が増加することが分かるので、時間遅れから損傷の程度を推定できる。
【0053】
これらより、パルス圧力負荷に対するキャビテーション気泡崩壊の時間遅れに着目すれば、キャビテーション強度、あるいは損傷の程度を推測できる。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】この出願の発明による水銀ターゲット容器の診断システムの構成及び流れを示す図である。
【図2】水銀ターゲット容器の診断装置における振動計測のための光学系(レーザ光路)を概略的に示す図である。
【図3】反射体に設置される減速材配管取付溝を利用したレーザ光路を示す図である。
【図4】レーザ光路に設置される反射板における反射率を考慮した光出力の検討結果を示す図である。
【図5】応答振動の入力パワー依存性を示す図である。
【図6】応答振動の周波数スペクトル解析を示す図である。
【図7】フィルターを用いた後の振動応答波形を示す図である。
【図8】累積損傷ポテンシャルと実測損傷面積率の関係を示す図である。
【図9】入力パワーによる時間遅れの変化を示す図である。
【図10】入力パルス圧の大きさとバブル成長周期との関係を示す図である。
【図11】キャビテーション気泡崩壊により励起される高調振動出現の時間遅れと実測損傷面積率の関係を示す図である。
【符号の説明】
【0055】
1 レーザドップラ振動計
2 水銀ターゲット容器
3 ミラーアッセンブリA
4 ミラーアッセンブリB
5 再帰性ミラー
6 レーザビーム
【技術分野】
【0001】
この出願の発明は、核破砕中性子源水銀ターゲット容器の診断方法及び装置に関し、詳しくは中性子発生のための大型構造物の内部(底部)に設置された核破砕中性子発生源水銀ターゲット容器の振動を構造体外部から非接触で放射線の影響を受けずに精度よく計測し、水銀ターゲット容器の損傷の評価及び疲労劣化の評価を行うことができる核破砕中性子源水銀ターゲット容器の診断方法及び装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
日本原子力研究所と高エネルギー加速器機構で開発を進めている中性子散乱施設では、大強度のパルス陽子を重金属ターゲットに入射して、核破砕反応により従来の研究炉等よりも強度が1桁高い中性子を発生させ、生命科学や物質科学などの先端科学分野の研究を行う(非特許文献1)。
【0003】
重金属ターゲットには、中性子収率に優れていること、ターゲット自体を冷却材に用いることができるため除熱の観点で有利であることから、液体水銀を用いる計画である。ここでは、大強度の陽子線が液体水銀ターゲット中に入射するため、液体水銀内部では急激な発熱反応に伴う熱膨張により、圧力波が生じる。この圧力波は、液体水銀中を伝播し水銀を封じている固体金属容器に達する。圧力波により容器構造材料に負荷される荷重は、容器構造の健全性に影響する(非特許文献2)。
【0004】
液体/固体金属の音響インピーダンスの差異から、容器構造材料の急速変形時にその液体側及び固体側界面で巨視的あるいは微視的な不連続変形に伴う負圧が起こると考えられる。この発生する負圧により液体界面近傍では、いわゆるキャビテーションが生じる条件が成立するため、固体側界面でキャビテーション壊食が懸念され、固体金属容器の寿命を決定する因子の一つとなっている(非特許文献3)。さらに、繰り返し衝撃圧が加わることにより容器構造材料の疲労劣化が懸念される。
【0005】
過去に、キャビテーションを発生させる陽子パルス入射時に生じる圧力波に起因する振動を圧電素子型振動計を用いて計測することが試みられた(非特許文献4)。ところが、従来の圧電素子型振動計では、陽子入射時に生じる誘起電流が計測電気信号に対して雑音となり計測に影響を及ぼすとともに、耐放射性の観点から改善の余地がある。また、光ファイバーセンサーを用いた振動計による計測では、放射線劣化によりファイバーの長期耐久性が維持できない。
【非特許文献1】Planning division for neutron science, Proceeding of the 3rd Workshop on Neutron Science Project-Science and technology in the 21st century opened by intense spallation neutron source, JAERI-Conf 99-003, (1999)
【非特許文献2】M. Futakawa, K. Kogawa, R. Hino, H. Date, H. Takeishi, Erosion damage on solid boundaries in contact with liquid metals by impulsive pressure injection, Int. J. Imp. Eng., 28, 123-135 (2003)
【非特許文献3】M. Futakawa, T. Naoe, H. Kogawa, C. C. Tsai, Y. Ikeda, Pitting damage formation up 10 million cycles-Off-line test by MIMTM-, J. Nucl. Sci. Rech., 40, 895-904, (2003)
【非特許文献4】M. Futakawa, K. Kikuchi, H. Conrad, H. Stechemesser, Pressure and stress waves in a spallation neutron source mercury target generated by high-power proton pulses, Nucl. Instrum Methods Phys. Res. A, 439, 1-7(2000)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このように、従来の技術では、大強度の陽子パルス入射時に生じる圧力波に起因する水銀ターゲット容器に振動を十分な耐放射線対策を講じつつ精度良く計測することができなかった。
【0007】
また、キャビテーション壊食による水銀ターゲット容器の損傷の状況あるいは繰り返し衝撃圧が加わることによる水銀ターゲット容器材料の疲労劣化の把握が十分とはいえなかった。
【0008】
そこで、この出願の発明は、以上のとおりの事情に鑑みてなされたもので、中性子発生のための大型構造物の内部(底部)に設置された核破砕中性子発生源水銀ターゲット容器の外周振動を構造体外部から非接触で放射線の影響を受けずに精度よく計測し、水銀ターゲット容器の損傷の評価及び疲労劣化の評価を行うことができる核破砕中性子源水銀ターゲット容器の診断方法及び装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この出願の発明は、上記課題を解決するため、第1には、中性子発生のための構造物内に設置された核破砕中性子源水銀ターゲット容器の診断方法であって、レーザドップラ振動計から入射ビームを、中性子発生のためにパルス入射陽子線が照射されている核破砕中性子源水銀ターゲット容器に照射し、その反射ビームを受け取り、計測信号を取得し、その計測信号の波形から高調波振動波形を分離し、分離された高調波振動波形の振幅から損傷ポテンシャルを求め、その損傷ポテンシャルに基づいて損傷の評価を行うことを特徴とする核破砕中性子源水銀ターゲット容器の診断方法を提供する。
【0010】
また、第2には、中性子発生のための構造物内に設定された核破砕中性子源水銀ターゲット容器の診断方法であって、レーザドップラ振動計から入射ビームを、中性子発生のためにパルス入射陽子線が照射されている核破砕中性子源水銀ターゲット容器に照射し、その反射ビームを受け取り、計測信号を取得し、その計測信号の波形から高調波振動波形を分離し、分離された高調波振動波形の出現時刻の時間遅れからキャビテーション強度を求め、求めたキャビテーション強度に基づいて損傷の評価を行うことを特徴とする核破砕中性子源水銀ターゲット容器の診断方法を提供する。
【0011】
また、第3には、中性子発生のための構造物内に設置された核破砕中性子源水銀ターゲット容器の診断方法であって、レーザドップラ振動計から入射ビームを、中性子発生のためにパルス入射陽子線が照射されている核破砕中性子源水銀ターゲット容器に照射し、その反射ビームを受け取り、計測信号を取得し、その計測信号の波形から源波形を分離し、分離された源波形から疲労亀裂伝播誘起音響振動を解析し、解析した疲労亀裂伝播誘起音響振動に基づいて疲労劣化の評価を行うことを特徴とする核破砕中性子源水銀ターゲット容器の診断方法を提供する。
【0012】
また、第4には、中性子発生のための構造物内に設置された核破砕中性子源水銀ターゲット容器の診断装置であって、入射ビームを、中性子発生のためにパルス入射陽子線が照射されている核破砕中性子源水銀ターゲット容器に照射し、その反射ビームを受け取り、計測信号を取得するレーザドップラ振動計と、核破砕中性子発生源水銀ターゲット容器に取り付けられた再帰性ミラーと、入射ビームをレーザドップラ振動計から再帰ミラーまで到達させ、反射ビームを再帰ミラーからレーザドップラ振動計まで帰還させるミラーアッセンブリと、取得した計測信号の波形から高調波振動波形を分離する分離手段、分離された高調波振動波形の振幅から損傷ポテンシャルを求める損傷ポテンシャル演算手段、及び求めた損傷ポテンシャルに基づいて損傷の評価を行う損傷評価手段を有する損傷評価装置を備えることを特徴とする核破砕中性子源水銀ターゲット容器の診断装置を提供する。
【0013】
また、第5には、中性子発生のための構造物内に設置された核破砕中性子源水銀ターゲット容器の診断装置であって、入射ビームを、中性子発生のためにパルス入射陽子線が照射されている核破砕中性子源水銀ターゲット容器に照射し、その反射ビームを受け取り、計測信号を取得するレーザドップラ振動計と、核破砕中性子源水銀ターゲット容器に取り付けられた再帰性ミラーと、入射ビームをレーザドップラ振動計から再帰ミラーまで到達させ、反射ビームを再帰ミラーからレーザドップラ振動計まで帰還させるミラーアッセンブリと、取得した計測信号の波形から高調波振動波形を分離する分離手段、分離された高調波振動波形の出現時刻の時間遅れからキャビテーション強度を求めるキャビテーション強度演算手段、及び求めたキャビテーション強度に基づいて損傷の評価を行う損傷評価手段を有する損傷評価部を備えることを特徴とする核破砕中性子源水銀ターゲット容器の診断装置を提供する。
【0014】
さらに、第6には、構造物内に設置された核破砕中性子源水銀ターゲット容器の診断装置であって、入射ビームを、中性子発生のためにパルス入射陽子線が照射されている核破砕中性子源水銀ターゲット容器に照射し、その反射ビームを受け取り、計測信号を取得するレーザドップラ振動計と、核破砕中性子発生源水銀ターゲット容器に取り付けられた再帰性ミラーと、入射ビームをレーザドップラ振動計から再帰ミラーまで到達させ、反射ビームを再帰ミラーからレーザドップラ振動計まで帰還させるミラーアッセンブリと、取得した計測信号の波形から源波形を分離する分離手段、分離された源波形から疲労亀裂伝播励起音響振動を解析する解析手段、及び解析した疲労亀裂伝播連記音響振動に基づいて疲労劣化の評価を行う疲労劣化評価手段を有する疲労劣化評価部を備えることを特徴とする核破砕中性子源水銀ターゲット容器の診断装置を提供する。
【発明の効果】
【0015】
この出願の発明の方法及び装置は、中性子発生のための大型構造物の内部(底部)に設置された核破砕中性子発生源水銀ターゲット容器の外周振動を構造物外部から遠隔・非接触で計測可能とし、それにより計測できる音響振動に関する情報から、大強度の陽子パルス入射時に生じる圧力波による損傷の程度及び疲労劣化の程度を評価することができる。これにより、水銀ターゲット容器の予寿命評価に関するその場診断技術が確立でき、核破砕中性子源の運転安全性を確保できる。
【0016】
また、この出願の発明の方法及び装置は、従来の高速振動計測に比べ、耐放射線対策が十分がなされている上、測定光の位置ズレや角度ズレに対する優位性があり、光学系の構造物への設置が簡便である利点がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
この出願の発明は、上記のとおりの特徴をもつものであるが、以下にその実施の形態について説明する。
【0018】
この出願の発明は、中性子発生のための構造物内に設置され核破砕中性子源水銀ターゲット容器の診断に係わるものである。パルス陽子線を核破砕中性子源水銀ターゲット容器の液体水銀ターゲット中に入射して中性子を発生させると、液体水銀内部では急激な発熱反応に伴う熱膨張によりパルス衝撃圧力波が生じ、この圧力波は液体水銀ターゲット容器の損傷及び容器材料の疲労劣化を招き、ひいては核破砕中性子源の運転安全性に多大な影響を及ぼす。そこで、この出願の発明は、構造物外部から高放射線場の影響を受けずに、遠隔、非接触で水銀ターゲット容器の高速振動を計測し、その場で水銀ターゲット容器の損傷、疲労劣化を評価、診断するものである。
【0019】
図1は、この出願の発明による水銀ターゲット容器の診断システム(方法)の構成及び流れを示したものである。また、図2は、この出願の発明による水銀ターゲット容器の診断装置における振動計測のための光学系(レーザ光路)を概略的に示す図、図3は、反射体に設置される減速材配管取付溝を利用したレーザ光路を示す図で、(a)は側面からの景観図、(b)は底面からの景観図である。
【0020】
この出願の発明による水銀ターゲット容器の診断装置は、上記光学系に加えて損傷及び疲労劣化の評価を行う評価部(図示略)を有する。この評価部は、コンピュータ等を利用して各機能を実現させることができる。
【0021】
先ず、水銀ターゲット容器の外周振動の計測のための光学系について述べると、振動計測にはレーザドップラ振動計(1)を用いる。このレーザドップラ振動計(1)は、入射ビームを出射して被測定物に照射し、その反射ビームを受け取り、入射ビームと反射ビームとの干渉効果により、被測定物の振動特性を表す計測信号を得るものである。ここで被測定物は水銀ターゲット容器(2)であり、また反射ビームを受光するため水銀ターゲット容器(2)の外壁面適所には金属製再帰性ミラー(5)が設けてある。
【0022】
また、水銀ターゲット容器(2)は、放射能に対する遮蔽機能が十分施される必要があるため、レーザ光(6)の光路は狭窄な光路として形成する必要がある。そのため、この実施形態では、極低温水素減速材システム内部構造体を設置するために設けた反射体側溝部を利用して光路を確保している。すなわち、レーザ光路を遮蔽構造体と減速材配管との間に形成することにより、レーザ光(6)の入射と水銀ターゲット容器(2)からの反射の受光を行う。
【0023】
光路途中には直角な屈曲部が2カ所設置される。このため、金属表面研磨型連結ミラーアセンブリA(3)、B(4)をそれぞれ配置する。研磨ミラーには耐放射線性を考慮して、たとえばSUS316ステンレス鋼などの耐放射性金属材料を用いる。金属表面研磨型連結ミラーアセンブリA(3)、B(4)は、高度放射線環境に曝されるため、遠隔操作による着脱可能な構造とする。
【0024】
また、水銀ターゲット容器(2)の外周壁に取り付ける再帰性ミラー(5)としてはマイクロミラー群から構成される再帰性反射ミラー板を取り付ける。マイクロミラー群とは数百ミクロンの再帰性反射ミラーが約百万個集合した板状ミラー群のことである。これにより、入射角度のズレを補正する必要がなく入射方向へ光を反射することができる。
【0025】
図4には、各部位の反射効率を考慮してセンサ受光量を検討した結果を示すが、振動情報が取得可能な1μW以上の受光パワーを十分上回ることが確認できる。
【0026】
次に、損傷及び疲労劣化の評価を行う評価部について述べる。上記したようにこの評価部は、たとえばコンピュータを利用してその機能を実現することができるが、その機能実現手段としては、
(A)レーザドップラ振動計(1)で取得した計測信号の波形から高調波振動波形と源波形号を分離する分離手段、
(B)分離された高調波振動波形の振幅から損傷ポテンシャルを求める損傷ポテンシャル演算手段、
(C)分離された高調波振動波形の出現時刻の時間遅れからキャビテーション強度を求める時間遅れ演算手段、
(D)分離された源波形から疲労亀裂伝播励起音響振動を解析する解析手段、
(E)損傷ポテンシャル演算手段(B)で求めた損傷ポテンシャルに基づいて損傷の評価を行う損傷評価セクション(E1);キャビテーション強度演算手段(C)で求めたキャビテーション強度に基づいて損傷の評価を行う損傷評価セクション(E2);及び解析手段(E)で解析した疲労亀裂伝播励起音響振動に基づいて疲労劣化の評価を行う疲労劣化評価セクション(E3)を有し、これらの評価結果に基づいて水銀ターゲット容器(2)の予寿命を評価する評価手段、
を備えるものとすることができる。
【0027】
なお、(A)、(B)、(E1)の組合せと、(A)、(C)、(E2)の組合せ、(A)、(D)、(E3)の組合せの単独のもの、あるいはそれらの組合せの2つを合わせたものとし、その評価結果に基づいて水銀ターゲット容器(2)の予寿命を評価することも可能である。
【0028】
分離手段(A)は、レーザドップラ振動計(1)で得た計測信号より源波形と高調波振動波形を分離する。計測信号の波形は、源波形に、キャビテーション気泡の崩壊により励起される高調波振動の波形が重畳されているため、両者の分離を行う。
【0029】
損傷ポテンシャル演算手段(B)は、分離手段(A)で分離した高調波振動波形の振幅から、後述の実施例1で詳細に定義、説明する損傷ポテンシャルを求める。計測信号の高調波振動波形の振幅と水銀ターゲット容器(2)の損傷の程度は、実験により相関があることがわかっている。そこで、定量的な評価のため、高調波振動波形の振幅と関係がある損傷ポテンシャルを定義し、それを演算する。
【0030】
キャビテーション強度演算手段(C)は、分離手段(A)で分離した高調波振動波形の時間遅れから、キャビテーション強度を求める。計測信号の高調波振動波形の出現時刻の時間遅れ(キャビテーション強度と関係がある)と水銀ターゲット容器(2)の損傷の程度も、実験により相関があることがわかっている。そこで、定量的な評価のため、高調波振動波形の出現時刻の時間遅れと関係があるキャビテーション強度を演算する。
【0031】
解析手段(D)は、分離手段(A)で分離した源波形から、疲労亀裂伝播励起音響振動を解析する。源波形には、繰り返し衝撃圧の負荷による疲労劣化に伴う亀裂伝播時に発生する音響信号が重畳する。特に、水銀ターゲット容器(2)の寿命末期にはこの種の音響信号が顕著となる。そこでこの音響信号を解析する。その解析はたとえば周波数スペクトル解析により行う。
【0032】
評価手段(E)は手段(B)、(C)、(D)で演算、解析した損傷ポテンシャル、キャビテーション強度、疲労亀裂伝播励起音響振動解析データに基づいて水銀ターゲット容器(2)の損傷、疲労劣化の評価を行う。そのため、あらかじめ損傷ポテンシャルと損傷の相関データ、キャビテーション強度と損傷の相関データ、疲労亀裂伝播励起音響振動解析結果と疲労劣化の関係データを、たとえばコンピュータのメモリに格納しておき、手段(B)、(C)、(D)からのデータと比較して、損傷、疲労劣化の程度を評価する。
【0033】
次に、この出願の発明による評価の手順を述べると、パルス陽子線を水銀ターゲット容器(2)内の液体水銀ターゲットに照射した状態で、レーザドップラ振動計(1)よりレーザビーム(6)をミラーアッセンブリA(3)を介して、水銀ターゲット容器(2)表面に取り付けてある再帰性ミラー(5)に向けて照射する。再帰性ミラー(5)で反射したレーザ光(6)はミラーアッセンブリB(4)を経てレーザドップラ振動計(1)で受光される。レーザドップラ振動計(1)で受光した信号は、評価部に送られる。
【0034】
評価部においては、先ず、分離手段(A)が、送られてきた計測信号より高調波振動波形と源波形を分離する。分離された高調波振動波形のデータは損傷ポテンシャル演算手段(B)とキャビテーション強度演算手段(C)に送られる。分離された源波形のデータは解析手段(D)に送られる。
【0035】
損傷ポテンシャル演算手段(B)は、送られてきた高調波振動波形の振幅データに基づいて損傷ポテンシャルを演算し、そのデータを評価手段(E)の損傷評価セクション(E1)に送る。損傷評価セクション(E1)は送られてきた損傷ポテンシャルデータを、あらかじめ記憶されている相関データと対照させ、損傷の程度を定量的に評価する。
【0036】
キャビテーション演算手段(C)は、送られてきた高調波振動波形の出現時刻の時間遅れデータに基づいてキャビテーション強度を演算し、そのデータを評価手段(E)の損傷評価セクション(E2)に送る。損傷評価セクション(E2)は送られてきたキャビテーション強度データを、あらかじめ記憶されている相関データと対照させ、損傷の程度を定量的に評価する。
【0037】
解析手段(D)は、送られてきた源波形のデータに基づいて疲労亀裂伝播励起音響振動を解析し、その解析データを評価手段(E)の疲労劣化評価セクション(E3)に送る。疲労劣化評価セクション(E3)は送られてきた解析データを、あらかじめ記憶されている関係データと対照させ、疲労劣化の程度を定量的に評価する。
【0038】
以上の各評価値からキャビテーション壊食による損傷程度を推定し、水銀ターゲット容器(2)の予寿命を評価する。さらに、これらの信号を分析することにより、水銀ターゲット容器(2)の交換時期等に関する情報を得ることができ、運転安全性の確保に資することができる。
【実施例】
【0039】
次に、この出願の発明の実施例を述べるが、これらはこの出願の発明を限定するものではない。
【0040】
(実施例1:音響振動振幅に基づく損傷ポテンシャルによる評価)
陽子線入射時に発生するパルス圧を機械的に水銀中に負荷することにより、キャビテーションを生じさせる装置を用いて、レーザドップラ振動計により遠隔・非接触で計測した信号と損傷の程度との相関を求めた。計測信号と損傷の程度との相関を定量的に規定するため、計測された音響振動に基づく損傷ポテンシャルを定義し、その損傷ポテンシャルを、以下の手順で求めた。ここでは、レーザドップラ振動計により計測される振動信号と同等の圧電素子加速度計から計測された加速度信号に基づいた評価例を示す。
【0041】
図5は、繰り返し周波数25Hzの衝撃パルスを入力パワー560Wと150Wに変化させて計測した結果である。図5から、入力パワーを増加するとキャビテーション気泡の崩壊により誘発される高調波振動が重畳されることを示している。サンプリング間隔は1μsである。衝撃負荷直後に約2ms程度の周期を持つ波形が現れ、560W波形には150W波形には見られない高周波成分が重畳していることが分かる。この高周波成分は、衝撃パルス負荷後に発生したキャビテーションによるマイクロバブルの崩壊により、高エネルギー密度の衝撃力が局所的に作用した結果生じたものである。すなわち、ピッティング損傷の形成因子であるキャビテーション衝撃の強度を示している。
【0042】
図6に応答振動の周波数スペクトル解析の結果を示す。入力パワー560Wの場合50kHz近傍の高調波成分が多く観測される。入力パワー150Wに比べ560Wには、ストライカーの応答に対応した1.5kHzより高い周波数成分が重畳し、特に10kHz以上の成分が多く観察されている。従って、キャビテーション衝撃に起因した15kHz以上の加速度をハイパスフィルターにより抽出する。その振動波形を図7に示す。次に、損傷量との相関を定量的に評価するために、1パルスで発生した局所衝撃エネルギーに相当する量Eを次式で求める。
【0043】
【数1】
【0044】
ここで、nは1パルス当たりに発生する局所衝撃の回数、Δtは局所衝撃の負荷時間である。さらに、Ethを損傷に対する下限値として、損傷ポテンシャルφを次式(2)で定義する。
【0045】
【数2】
【0046】
さらに、損傷ポテンシャルφのパルス負荷回数Nの影響を検討するために次式(3)で表す累積損傷ポテンシャルφaを導入する。
【0047】
【数3】
【0048】
すなわち、計測された音響振動信号に式(1)から式(3)を適用して、損傷ポテンシャルを求める。このようにして、評価した累積損傷ポテンシャルと実測された損傷面積率との関係を図8に示す。両者は、良い相関があることが理解される。従って、この出願の発明に提案された音響振動に基づく損傷ポテンシャルにより、パルス衝撃圧負荷により発生するキャビテーション壊食の大きさの程度を被対象物の外側から予測できる。
【0049】
(実施例2:時間遅れによるキャビテーション強度の推定)
パルス入射陽子線による衝撃圧負荷の発生時刻に対するキャビテーション気泡崩壊時間の時間遅れは、衝撃圧により発生したキャビテーション気泡の大きさに依存することを、実験及び数値解析結果から明らかにした。この観点から、キャビテーション損傷を誘発するキャビテーション気泡崩壊の時間遅れを精度良く測定することにより、キャビテーション強度及び損傷の程度を推定できる。
【0050】
図9は入力パワーの変化、すなわちパルス衝撃圧によるキャビテーション気泡崩壊に伴う高調波成分の時間変化を示している。衝撃パルスが増加するに従って、高調波振動の発生時刻、すなわちキャビテーション気泡崩壊時刻が遅くなっていることが分かり、入力パワーの増加に伴い、パルス圧負荷開始時刻に対する高調波成分の出現時刻までの時間遅れが増大する。
【0051】
また、気泡動力学に基づいた数値解析結果を図10に示すが、負荷衝撃圧力の大きさが増加するに従って、発生気泡の膨張収縮時間が長くなることが理解できる。入力パルス圧が増加するにしたがって、キャビテーション気泡の成長期間は長くなる。この結果、キャビテーション気泡の崩壊により励起された高調波成分の出現までの遅れ時間からキャビテーション強度が推定できる。
【0052】
さらに、キャビテーション気泡崩壊の時間遅れと実測された損傷面積率との関係を図11に示すが、時間遅れと共に損傷の程度が増加することが分かるので、時間遅れから損傷の程度を推定できる。
【0053】
これらより、パルス圧力負荷に対するキャビテーション気泡崩壊の時間遅れに着目すれば、キャビテーション強度、あるいは損傷の程度を推測できる。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】この出願の発明による水銀ターゲット容器の診断システムの構成及び流れを示す図である。
【図2】水銀ターゲット容器の診断装置における振動計測のための光学系(レーザ光路)を概略的に示す図である。
【図3】反射体に設置される減速材配管取付溝を利用したレーザ光路を示す図である。
【図4】レーザ光路に設置される反射板における反射率を考慮した光出力の検討結果を示す図である。
【図5】応答振動の入力パワー依存性を示す図である。
【図6】応答振動の周波数スペクトル解析を示す図である。
【図7】フィルターを用いた後の振動応答波形を示す図である。
【図8】累積損傷ポテンシャルと実測損傷面積率の関係を示す図である。
【図9】入力パワーによる時間遅れの変化を示す図である。
【図10】入力パルス圧の大きさとバブル成長周期との関係を示す図である。
【図11】キャビテーション気泡崩壊により励起される高調振動出現の時間遅れと実測損傷面積率の関係を示す図である。
【符号の説明】
【0055】
1 レーザドップラ振動計
2 水銀ターゲット容器
3 ミラーアッセンブリA
4 ミラーアッセンブリB
5 再帰性ミラー
6 レーザビーム
【特許請求の範囲】
【請求項1】
中性子発生のための構造物内に設置された核破砕中性子源水銀ターゲット容器の診断方法であって、
レーザドップラ振動計から入射ビームを、中性子発生のためにパルス入射陽子線が照射されている核破砕中性子源水銀ターゲット容器に照射し、その反射ビームを受け取り、計測信号を取得し、
その計測信号の波形から高調波振動波形を分離し、
分離された高調波振動波形の振幅から損傷ポテンシャルを求め、
その損傷ポテンシャルに基づいて損傷の評価を行うことを特徴とする核破砕中性子源水銀ターゲット容器の診断方法。
【請求項2】
中性子発生のための構造物内に設定された核破砕中性子源水銀ターゲット容器の診断方法であって、
レーザドップラ振動計から入射ビームを、中性子発生のためにパルス入射陽子線が照射されている核破砕中性子源水銀ターゲット容器に照射し、その反射ビームを受け取り、計測信号を取得し、
その計測信号の波形から高調波振動波形を分離し、
分離された高調波振動波形の出現時刻の時間遅れからキャビテーション強度を求め、
求めたキャビテーション強度に基づいて損傷の評価を行うことを特徴とする核破砕中性子源水銀ターゲット容器の診断方法。
【請求項3】
中性子発生のための構造物内に設置された核破砕中性子源水銀ターゲット容器の診断方法であって、
レーザドップラ振動計から入射ビームを、中性子発生のためにパルス入射陽子線が照射されている核破砕中性子源水銀ターゲット容器に照射し、その反射ビームを受け取り、計測信号を取得し、
その計測信号の波形から源波形を分離し、
分離された源波形から疲労亀裂伝播誘起音響振動を解析し、
解析した疲労亀裂伝播誘起音響振動に基づいて疲労劣化の評価を行うことを特徴とする核破砕中性子源水銀ターゲット容器の診断方法。
【請求項4】
中性子発生のための構造物内に設置された核破砕中性子源水銀ターゲット容器の診断装置であって、
入射ビームを、中性子発生のためにパルス入射陽子線が照射されている核破砕中性子源水銀ターゲット容器に照射し、その反射ビームを受け取り、計測信号を取得するレーザドップラ振動計と、
核破砕中性子発生源水銀ターゲット容器に取り付けられた再帰性ミラーと、
入射ビームをレーザドップラ振動計から再帰ミラーまで到達させ、反射ビームを再帰ミラーからレーザドップラ振動計まで帰還させるミラーアッセンブリと、
取得した計測信号の波形から高調波振動波形を分離する分離手段、分離された高調波振動波形の振幅から損傷ポテンシャルを求める損傷ポテンシャル演算手段、及び求めた損傷ポテンシャルに基づいて損傷の評価を行う損傷評価手段を有する損傷評価部を備えることを特徴とする核破砕中性子源水銀ターゲット容器の診断装置。
【請求項5】
中性子発生のための構造物内に設置された核破砕中性子源水銀ターゲット容器の診断装置であって、
入射ビームを、中性子発生のためにパルス入射陽子線が照射されている核破砕中性子源水銀ターゲット容器に照射し、その反射ビームを受け取り、計測信号を取得するレーザドップラ振動計と、
核破砕中性子発生源水銀ターゲット容器に取り付けられた再帰性ミラーと、
入射ビームをレーザドップラ振動計から再帰ミラーまで到達させ、反射ビームを再帰ミラーからレーザドップラ振動計まで帰還させるミラーアッセンブリと、
取得した計測信号の波形から高調波振動波形を分離する分離手段、分離された高調波振動波形の出現時刻の時間遅れからキャビテーション強度を求めるキャビテーション強度演算手段、及び求めたキャビテーション強度に基づいて損傷の評価を行う損傷評価手段を有する損傷評価部を備えることを特徴とする核破砕中性子源水銀ターゲット容器の診断装置。
【請求項6】
中性子発生のための構造物内に設置された核破砕中性子源水銀ターゲット容器の診断装置であって、
入射ビームを、中性子発生のためにパルス入射陽子線が照射されている核破砕中性子源水銀ターゲット容器に照射し、その反射ビームを受け取り、計測信号を取得するレーザドップラ振動計と、
核破砕中性子発生源水銀ターゲット容器に取り付けられた再帰性ミラーと、
入射ビームをレーザドップラ振動計から再帰ミラーまで到達させ、反射ビームを再帰ミラーからレーザドップラ振動計まで帰還させるミラーアッセンブリと、
取得した計測信号の波形から源波形を分離する分離手段、分離された源波形から疲労亀裂伝播励起音響振動を解析する解析手段、及び解析した疲労亀裂伝播励起音響振動に基づいて疲労劣化の評価を行う疲労劣化評価手段を有する疲労劣化評価部を備えることを特徴とする核破砕中性子源水銀ターゲット容器の診断装置。
【請求項1】
中性子発生のための構造物内に設置された核破砕中性子源水銀ターゲット容器の診断方法であって、
レーザドップラ振動計から入射ビームを、中性子発生のためにパルス入射陽子線が照射されている核破砕中性子源水銀ターゲット容器に照射し、その反射ビームを受け取り、計測信号を取得し、
その計測信号の波形から高調波振動波形を分離し、
分離された高調波振動波形の振幅から損傷ポテンシャルを求め、
その損傷ポテンシャルに基づいて損傷の評価を行うことを特徴とする核破砕中性子源水銀ターゲット容器の診断方法。
【請求項2】
中性子発生のための構造物内に設定された核破砕中性子源水銀ターゲット容器の診断方法であって、
レーザドップラ振動計から入射ビームを、中性子発生のためにパルス入射陽子線が照射されている核破砕中性子源水銀ターゲット容器に照射し、その反射ビームを受け取り、計測信号を取得し、
その計測信号の波形から高調波振動波形を分離し、
分離された高調波振動波形の出現時刻の時間遅れからキャビテーション強度を求め、
求めたキャビテーション強度に基づいて損傷の評価を行うことを特徴とする核破砕中性子源水銀ターゲット容器の診断方法。
【請求項3】
中性子発生のための構造物内に設置された核破砕中性子源水銀ターゲット容器の診断方法であって、
レーザドップラ振動計から入射ビームを、中性子発生のためにパルス入射陽子線が照射されている核破砕中性子源水銀ターゲット容器に照射し、その反射ビームを受け取り、計測信号を取得し、
その計測信号の波形から源波形を分離し、
分離された源波形から疲労亀裂伝播誘起音響振動を解析し、
解析した疲労亀裂伝播誘起音響振動に基づいて疲労劣化の評価を行うことを特徴とする核破砕中性子源水銀ターゲット容器の診断方法。
【請求項4】
中性子発生のための構造物内に設置された核破砕中性子源水銀ターゲット容器の診断装置であって、
入射ビームを、中性子発生のためにパルス入射陽子線が照射されている核破砕中性子源水銀ターゲット容器に照射し、その反射ビームを受け取り、計測信号を取得するレーザドップラ振動計と、
核破砕中性子発生源水銀ターゲット容器に取り付けられた再帰性ミラーと、
入射ビームをレーザドップラ振動計から再帰ミラーまで到達させ、反射ビームを再帰ミラーからレーザドップラ振動計まで帰還させるミラーアッセンブリと、
取得した計測信号の波形から高調波振動波形を分離する分離手段、分離された高調波振動波形の振幅から損傷ポテンシャルを求める損傷ポテンシャル演算手段、及び求めた損傷ポテンシャルに基づいて損傷の評価を行う損傷評価手段を有する損傷評価部を備えることを特徴とする核破砕中性子源水銀ターゲット容器の診断装置。
【請求項5】
中性子発生のための構造物内に設置された核破砕中性子源水銀ターゲット容器の診断装置であって、
入射ビームを、中性子発生のためにパルス入射陽子線が照射されている核破砕中性子源水銀ターゲット容器に照射し、その反射ビームを受け取り、計測信号を取得するレーザドップラ振動計と、
核破砕中性子発生源水銀ターゲット容器に取り付けられた再帰性ミラーと、
入射ビームをレーザドップラ振動計から再帰ミラーまで到達させ、反射ビームを再帰ミラーからレーザドップラ振動計まで帰還させるミラーアッセンブリと、
取得した計測信号の波形から高調波振動波形を分離する分離手段、分離された高調波振動波形の出現時刻の時間遅れからキャビテーション強度を求めるキャビテーション強度演算手段、及び求めたキャビテーション強度に基づいて損傷の評価を行う損傷評価手段を有する損傷評価部を備えることを特徴とする核破砕中性子源水銀ターゲット容器の診断装置。
【請求項6】
中性子発生のための構造物内に設置された核破砕中性子源水銀ターゲット容器の診断装置であって、
入射ビームを、中性子発生のためにパルス入射陽子線が照射されている核破砕中性子源水銀ターゲット容器に照射し、その反射ビームを受け取り、計測信号を取得するレーザドップラ振動計と、
核破砕中性子発生源水銀ターゲット容器に取り付けられた再帰性ミラーと、
入射ビームをレーザドップラ振動計から再帰ミラーまで到達させ、反射ビームを再帰ミラーからレーザドップラ振動計まで帰還させるミラーアッセンブリと、
取得した計測信号の波形から源波形を分離する分離手段、分離された源波形から疲労亀裂伝播励起音響振動を解析する解析手段、及び解析した疲労亀裂伝播励起音響振動に基づいて疲労劣化の評価を行う疲労劣化評価手段を有する疲労劣化評価部を備えることを特徴とする核破砕中性子源水銀ターゲット容器の診断装置。
【図1】
【図2】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図3】
【図4】
【図2】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図3】
【図4】
【公開番号】特開2006−84241(P2006−84241A)
【公開日】平成18年3月30日(2006.3.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−267496(P2004−267496)
【出願日】平成16年9月14日(2004.9.14)
【出願人】(000004097)日本原子力研究所 (55)
【出願人】(000145806)株式会社小野測器 (230)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年3月30日(2006.3.30)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年9月14日(2004.9.14)
【出願人】(000004097)日本原子力研究所 (55)
【出願人】(000145806)株式会社小野測器 (230)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]