説明

核磁気共鳴技術のための細胞標識及び定量

この開示は、部分において、細胞数をイン・ビボで定量する方法を提供する。この開示は、標識細胞を核磁気共鳴技術により定量する方法及び同定量のためのコンピューターによる方法を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この出願は、2006年4月14日出願の暫定米国出願第60/792,003号(その全開示を参考として本明細書中に援用する)の優先権の利益を請求する。
【0002】
連邦協賛の研究又は開発に関する陳述
こここに記載の発明は、全体的に又は部分的に、連邦助成金番号R01−EB003453、R01−EB004155、P01−HD047675、P50−ES012359及びP41EB−001977により支援された。合衆国政府は、この発明において、一定の権利を有する。
【背景技術】
【0003】
多くの生物学的過程が、細胞集団により行なわれる。例えば、免疫系の細胞は、血流から、炎症又は感染領域にリクルートされて、冒された部位に免疫細胞の集積を生じる。免疫細胞の顕著な浸潤が、しばしば、自己免疫疾患、癌及び感染症に冒された組織において起きる。同様に、移植の拒絶が、宿主の免疫細胞により媒介され、それらは、移植された組織に侵入して破壊する。骨髄起源の幹細胞が血流により移動して損傷を受けた組織の再生を助成するという増大しつつある証拠もある。
【0004】
その上、生物学的治療の最も直接的に有望な領域には、細胞療法の新生領域が含まれる。細胞療法は、広く、身体外で即ちエキソ・ビボで、選択し、増殖させて、薬理学的に処理した治療用細胞の投与によるヒトの病気の治療として定義される。これらの細胞は、当の患者から得ることができ(自家細胞)、他人から(同種異系細胞)、他の生物から(異種細胞)、又は不滅化細胞株から得ることができる。
【0005】
細胞は、複雑な機能を実行するそれらの能力及び周囲の組織又は宿主の器官に対する応答の故に、最終的な治療システムを代表するものである。細胞療法の最も簡単なモデルにおいて、細胞を分離し、エキソ・ビボで生育し、そして、患者に移植して、病気の機構に直対応する可溶性因子を生成して分泌させることができる。細胞は又、組織、器官、又は免疫応答の再構成のような複雑な仕事をも、身体内の特異的部位に向かい、循環から出て、特定の組織に組み込まれ又は新たな組織に分化するそれらの能力に基いて達成することができる。他の細胞療法を、腫瘍を殺し又は転移を処置するためにプログラムすることができる(例えば、免疫療法)。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
動的細胞集団は、重大な病気において鍵となる役割を演じるが、イン・ビボでの細胞の位置及び動きをモニターする現在の技術は、極めて限られたものである。典型的には、細胞の運動は、組織生検の組織学的分析によって得られる単なる「スナップショット」でモニターされるだけである。しかしながら、組織のサンプリングの工程が、しばしば、細胞の挙動を変え、限られた数の生検しか特定の組織又は器官から得られない。イン・ビトロアッセイで細胞の動きを研究し及び単離した組織をエキソ・ビボで研究することにより、幾つかの進歩が為された。生きた生物を非侵襲的に分析するための現行の装置は、生きた細胞を追跡するのには不適当なものである。光ベースのイメージング技術例えば生物化学発光(例えば、ルシフェラーゼ)技術は、しばしば、深部構造の可視化に無力である(何故なら、殆どの哺乳動物組織は、不透明だから)。放射性標識したプローブを用いる陽電子放射断層撮影(PET)技術は、高感度である。しかしながら、PET装置は、しばしば、数ミリメートルの解像度に限られ、組織及び器官を詳細に解像することができない。その上、標識された細胞は、典型的なPET用放射性同位体の半減期を超えて検出することはできず、PETは、長期的研究には有用でない。細胞過程の基本的理解を得るためには、イン・ビボで特定の細胞型の動的集団を可視化して定量するための新たな方法が開発されなければならない。
【0007】
磁気共鳴イメージング(MRI)は、広く用いられている臨床診断用ツールである。何故なら、それは、非侵襲性であり、不透明な患者の中を見ることを可能にし、そして相当に高い空間的解像度で軟組織間のコントラストを与えるからである。慣用のMRIは、殆ど専ら、解剖学的解像に集中しており、何れかの特定の細胞型に対する特異性は有していない。慣用のMRIにより用いられる「プローブ」は、可動性の水分子中に遍在するプロトン(1H)である。新規なクラスの外因性MRI用プローブ又は試薬が、生きている患者内の細胞特異的イメージングを促進するのに必要とされる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
概要
ある面において、この開示は、細胞を、エキソ・ビボで、核磁気共鳴技術によって検出することのできるイメージング用試薬例えばフルオロカーボンイメージング用試薬で修飾するための新規な方法及び試薬を提供する。ある面において、この開示は、特定の位置の標識した細胞の数を、イン・ビボで、定量するための方法及びソフトウェアを提供する。細胞は、フルオロカーボン例えば過フルオロポリエーテル(PFPE)を含む標識を用いて標識することができ、生物学的組織が有する内因性フッ素の含有量は極僅かであるので、イン・ビトロ19F MRIは、標識された細胞を検出する有効な手段を提供することができる。幾つかの具体例においては、これらのイメージを、次いで、慣用の1H MRIに重ね合わせて、解剖学的位置を測定する。
【0009】
標識した細胞を患者に投与し、次いで、核磁気共鳴技術によって検出することができる。核磁気共鳴技術の例には、磁気共鳴イメージング(MRI)及び局所的磁気共鳴スペクトル分析(MRS)が含まれる。核磁気共鳴技術は、一般に、非侵襲的手順として行なわれるので、標識した細胞は、生きている患者において、一以上の時点で検出することができる。標識した細胞は又、細胞培養においても検出することができ又は本質的に核磁気共鳴技術を実施することのできる任意の他の環境例えば組織の外植片、患者から取り出した器官又は組織(できるだけ、移植片のレシピエントへの移植前)、人工的に生成した組織並びに細胞を播種した様々なマトリクス及び構造において検出することができる。
【0010】
ある面において、この開示は、細胞を標識する方法を提供する。かかる方法は、エキソ・ビボで培養した細胞をフルオロカーボンイメージング用試薬と、そのフルオロカーボンイメージング用試薬がその細胞と結合するような条件下で接触させることを含むことができる。過フルオロポリエーテル(PFPE)は、適当なフルオロカーボンイメージング用試薬の例である。過フルオロポリエーテルは、直鎖状であっても、環状であってもよい(例えば、過フルオロ−クラウンエーテル)。イメージング用試薬は、エマルジョンとして配合することができる(しばしば、界面活性剤を含む)。一例は、PFPE(Exfluor, テキサス、Round Rock)とPluronicL−35又はF68(Sigma-Aldrich, ミズーリ、St. Louis)を含むエマルジョンである。適宜、細胞を、フルオロカーボンイメージング用試薬と、そのフルオロカーボンイメージング用試薬の取り込みを増進させる試薬の存在下で接触させることができる。様々なカチオン性分子例えばカチオン性脂質又はプロタミンサルフェートは、適当な取り込み増進試薬の例であり;他のかかる試薬は、本明細書中に記載されており、この明細書の故に、当分野で公知である。ある具体例において、界面活性剤の組成を、カチオン性表面をエマルジョン粒子に与えるようにデザインすることができ、これは、細胞によるエマルジョンの取り込みを、増進試薬を必要としないで増進させる。ある具体例において、これらの細胞は、電気穿孔法によって、フルオロカーボンエマルジョン粒子で標識される。
【0011】
フルオロカーボンイメージング剤は、細胞によって内在化されうるが、それは、細胞の細胞外表面とも結合することができる。細胞外表面との結合は、イメージング試薬を細胞ターゲティング成分に結合させることにより増大させることができる。細胞ターゲティング成分は、本質的に、所望の細胞に結合する任意の分子的実体例えば、細胞外環境に曝されたエピトープに結合する抗体であってよい。イメージング試薬の細胞内への取り込みは、イメージング試薬を内在化成分に結合させることにより増大させることができる。内在化成分は、イメージング試薬が細胞内に入るのを刺激し又は促進する任意の分子的実体である。例には、レセプター又は他の細胞表面タンパク質に結合する内在化ペプチド及び部分(これらは、例えば、レセプター媒介のエンドサイトーシスにより内在化される)が含まれる。この細胞は、本質的に、原核細胞及び真核細胞を含む任意の細胞であってよい。好適具体例において、この細胞は、哺乳動物細胞である。ある具体例においては、この細胞は、免疫系の細胞例えば樹状細胞又はT細胞である。細胞は又、幹細胞又は、細胞療法の部分として患者への投与のため又は移植のために用意された細胞例えば末梢血幹細胞移植物又は骨髄移植物であってよい。他の細胞型は、おそらくは、治療法に関連して、標識してイメージ化することができる(例えば、胚性幹細胞、膵臓の島など)。
【0012】
ある面において、この開示は、細胞をフルオロカーボンイメージング試薬で標識する方法を提供する。好適なフルオロカーボンイメージング試薬は、次の特性の少なくとも一つを有する:低減された細胞傷害性;簡単な19F NMRスペクトル(理想的には、最も簡単で、狭い共鳴を有して、化学シフトによるアーティファクトを最小化する);多数のNMR当量のフッ素原子(分子当たり);及び多くの細胞型の効率的標識を可能にする配合物に適していること。好適なフルオロカーボンイメージング試薬には、過フルオロ−15−クラウン−5、過フルオロ−18−クラウン−6及び過フルオロ−12−クラウン−4が含まれる。ある具体例において、このフルオロカーボンイメージング試薬は、下記の平均的式を有する過フッ化ポリエーテルである:
【化1】

(式中、Yは、下記よりなる群から選択される:
【化2】

(式中、nは、8〜20の整数であり;X及びZは、同じであって過フルオロアルキル、過フルオロエーテル、フルオロアシル、カルボキシル、アミド又はエステルで終端するフルオロアルキル、メチロール、酸クロリド、アミド、アミジン、アクリレート及びエステルよりなる群から選択される))。特に好適な具体例において、nは、10〜12であり、最も好ましくは11である。更なる具体例において、X及び/又はZは、更なる部分の追加を促進する基(例えば、カルボキシル基)で終端するポリエーテルである。適宜、このイメージング試薬は、更なる官能性部分を含む。その官能性部分は、核磁気共鳴技術以外の技術による試薬の検出を促進する検出部分であってよい。検出部分の例には、蛍光検出部分及びPET検出部分が含まれる。従って、この開示は、一以上のポリマー末端で少なくとも一種の官能性部分により誘導体化された直鎖状フルオロカーボンを提供する(ここに、少なくとも一種の官能性部分は、検出部分、親水性部分、ターゲティング部分及び細胞取り込み用部分よりなる群から選択される)。検出部分の組込みは、二重(又は、一層高次の)標識部分を創出し、それは、一種以上の技術(例えば、PET及びMRI又は蛍光顕微鏡検査及びMRS)による検出を促進する。適宜、イメージング試薬をエマルジョンとして配合することができる。好適なエマルジョンは、体温(ヒトの場合37℃)及び貯蔵温度(例えば、4℃)又は室温(20〜25℃)で安定である。好ましくは、エマルジョンは、イメージング剤の患者の細胞による取り込みを促進するようにデザインする。エマルジョンは、直径10〜500nmの平均粒子(又は、液滴)サイズを有することができる(これは、このエマルジョンは、直径が10nmより小さい粒子又は500nmより大きい粒子を含むことはできるが、当分野で公知の方法により計算して、10〜500nmに入る相加平均の粒子直径を有することを意味する)。一具体例において、このエマルジョンの平均粒子直径は、30〜300nm又は30〜200nm(20、10又は5nm未満)である。好ましくは、このエマルジョンの平均粒径は、90〜120nm又は100〜110nm+/−80、40、20、10又は5nm未満である。
【0013】
ある面において、この開示は、患者内の細胞を検出する方法を提供する。一つの方法は、患者に、フルオロカーボンイメージング試薬で標識した細胞を投与してその患者の少なくとも一部分を核磁気共鳴技術により検査することを含むことができる。かかる分析には、MRI又はMRSが含まれうる(19Fについてのデータを集めてその分布のイメージを生成するを含むことができる)。イメージングは又、慣用の解剖学的1Hイメージについてのデータを集めてそのイメージを生成することもできる。好適具体例において、19F及び1Hイメージを生成して比較する(適宜、重複像又はオーバーレイによる)。適宜、標識した細胞を、19F MRSを利用して検出することができる。好適具体例において、慣用の解剖学的1Hイメージを、19F MRSについての一以上の局所的ボクセルの位置に導くテンプレートとして利用する。NMRデータは、生のデータと処理したデータの両方を包含するものと理解される。
【0014】
ある面において、この開示は、イン・ビボで細胞数を定量する方法を提供する。一つの方法は、患者に、フルオロカーボンイメージング試薬で標識した細胞を投与すること;及びその患者の少なくとも一部分を核磁気共鳴技術により検査し、それにより、その患者において標識された細胞を検出すること;及び関心ある領域(ROI)における標識された細胞の数を定量することを含む。ある具体例において、この開示は、標識された細胞を含む移植物のレシピエントにおいて標識された細胞を定量する方法を提供する。
【0015】
特定の細胞集団の標識剤の平均「細胞投与量」の較正が、イン・ビボの定量測定に対して前以て必要でありうる。この細胞投与量のイン・ビトロの当量は、細胞又は細胞量当りの19F分子(F's)の数として言及されるが、イン・ビボでの細胞当りの標識の量の任意の測定であると理解される。ある具体例においては、標識した細胞集団の細胞又は細胞量当りの19F分子(F's)の平均数を、細胞の患者への投与又は移植の前に、先ず、イン・ビトロで測定する(即ち、較正する)。ある具体例においては、標識した細胞集団の細胞又は細胞数当りの19F分子(F's)の平均数を、標識した細胞の試験と同時に測定する(即ち、較正する)。ある具体例においては、標識した細胞集団の細胞又は細胞量当りの19F分子(F's)の平均数を、標識した細胞を試験した後で較正する。ある具体例においては、標識した細胞集団の細胞又は細胞投与量当りの19F分子(F's)の平均数を、特定の型の細胞の試験集団において較正する(必ずしも患者に向けられたものではないが、特定の標識プロトコール又は条件の組の故に標識剤の細胞投与量を較正するのに用いられ;細胞投与量の値は、次いで、その後の、同じ細胞型集団において同じ標識プロトコールを用いる標識及びイン・ビボイメージング実験に用いられる)。ある具体例においては、細胞投与量又は標識剤の細胞量を、様々な定量技術を利用して、例えば既知数の標識細胞の細胞ペレットの19F NMRスペクトルの統合領域を利用してアッセイする。19F NMR以外にも、多くの他の定量法を利用して、細胞量又は細胞投与量を、ここに記載のようにアッセイすることができる。ある具体例において、この細胞量又は細胞投与量は、従来のデータによって表され又は推定することができる。ある具体例において、この細胞投与量又は細胞量は、19F分子において直接には計数されえないが、標識試薬の細胞投与量の単位は、これを表し、そして同等であると理解されよう。
【0016】
ある具体例において、定量は、ROIにおける較正された19Fシグナルを利用することを含む。較正された19Fシグナルは、ここに記載した様々な較正技術又はこの記載から明らかとなる他の技術によって、そのシグナルと19F分子の代表的数又は細胞量との関係を推定することができるようなシグナルである。一例として、較正は、ROIのイメージング中に、既知量の19F分子のバイアルをMRI検出領域に置くことにより達成することができる。これは、ROI内のシグナル強度と19F分子の数との間の関係を計算することを可能にする。
【0017】
ある具体例において、この開示は、ROI内で標識された細胞の数をイン・ビボで定量する方法を提供する。例えば、細胞投与後に、及びイン・ビボの19F MRI/MRS後に、ROI内の全(例えば、統合した)19Fシグナル強度を、較正された19F基準と比較することができる。この19F基準は、例えば、既知濃度の19F核の溶液を含む容器であってよい。この容器は、好ましくは、イメージ形成される被験者又は患者の外に又は並べて、又は適宜内部に、データ獲得前に、置かれる。好適具体例において、この基準は、同じイメージ視野において、被験者と共に、イメージ形成される。適宜、この基準は、異なるスキャンにおいてイメージ化され、又は外部の基準は使用されえない。
【0018】
19F MRI/MRSデータからのパラメーターの鍵となる組をコンピューターにより操作し又は結合することにより、ここに記載したように、ROI中に存在する標識した細胞の数を計算することができる。例えば、パラメーターの鍵となる組は、(i)標識剤のイン・ビトロで測定した細胞投与量(即ち、Fc);(ii)標識細胞投与後の一以上の時点において被験者に取り込まれたイン・ビボの19F MRI/MRSデータセット;(iii)ボクセル体積;(iv)平面内のボクセル領域(即ち、イメージピクセルの領域);(v)随意の、19F基準からのMRI/MRSデータセット;(vi)随意の、被験者材料における19F MRI/MRSデータの測定されたジョンソンノイズ;(vii)随意の、患者材料における19F MRI/MRSデータセットの一以上のボクセルの測定されたシグナル対ノイズ比(SNR);(viii)随意の、基準からの19F MRI/MRSデータセットの一以上のボクセルの測定されたSNR;(ix)随意の、被験者材料の19F NMRの緩和時間(T1、T2及びT2*);(x)随意の、基準の19F NMRの緩和時間(T1、T2及びT2*)を含むことができる(例えば、Magnetic Resonance Imaging, 第三版、第4章、D.D. Stark及びW.G. Bradley編、Mosby, Inc., ミズーリ、St. Louis 1999参照)。当業者は、他のパラメーター、上記の組の組合せ、又はこれらの誘導物を、特に、19F MRI/MRSデータセットから引き出すことができ、それを利用して、イン・サイチューで標識された細胞の数を定量することができる。ある具体例において、鍵となるパラメーターの上記の組を利用して、標識された細胞の正確な又は信頼できる測定数の定量的又は統計的測定を得ることができる。
【0019】
鍵となるパラメーター(上記のi−x)、これらの任意の部分集合、又はそれらの組合せ若しくは近似値を組み合わせて、Ncにより示される患者材料における19F MRIにより観察される標識された細胞の有効数を評価する多くの方法がある。例えば、下記の形式の方程式を利用することができる
【数1】

(式中、Nc=RIO中の標識された細胞の総数;[FR]=較正された19F基準溶液(又は、ゲル)中の19Fの濃度;v=ボクセル体積;IR=MRI/MRSスキャン、平均された一以上のボクセルにより得られ、較正された19F基準の平均強度;Fc=イン・ビトロで測定した標識剤の平均19F細胞投与量;NROI=標識した細胞を含むROI中のボクセルの数;Ic(i)=標識した細胞を含むROI中のi番目ボクセルのイメージ強度;i=標識した細胞を含むROI中のボクセルの単位なしインデックス)。
【0020】
ある面において、この開示は、19F標識された細胞の定量のための及び適宜、測定した細胞数における不確実性の統計的測定のための計算システムを提供する。ある具体例において、この開示は、コンピューター;機能的にコンピューターに結合されたコンピューター読み取り可能な媒体、及びROI中の19F標識された細胞の数をイン・ビボで定量することのできるコンピューター読み取り可能な媒体プログラムコードを提供する。ある具体例において、このシステムは、ROI中の19Fシグナルの強度及び標識細胞の体積を基準と比較した比によって、標識された細胞の数を計算する。ある具体例において、このシステムは、標識細胞の数を、式(例えば、その一例を上記した)に従って、計算する。ある具体例において、この定量は、較正されたNMRシグナルを細胞投与量に関連付けることを含む。
【0021】
ある面において、この開示は、コンピューター読み取り可能な媒体であって、19F標識細胞のイン・ビボでの定量及び随意の測定された細胞数の不確実性の統計的測定の実施をその中で具体化するコンピューター読み取り可能プログラムコードを有する媒体を提供する。ある面において、このコンピューター読み取り可能な媒体プログラムコードは、磁気共鳴技術により検出されたROIにおける19F標識細胞の数を計算する。ある具体例において、このシステムは、標識細胞数を、ROI中の標識細胞の19Fシグナル強度と体積を基準と比較した比によって計算する。ある具体例において、このシステムは、標識細胞の数を、式によって計算する。ある具体例においては、同じコンピューターを、この細胞数計算に伴う統計的信頼係数を計算するために利用することができる。ある具体例において、この定量は、較正されたNMRシグナルを細胞投与量に関係付けることを含む。
【0022】
この開示から明らかとなるであろうが、ここに記載した方法は、様々な臨床手順において有用なものとなろう。例えば、この開示は、レシピエント(例えば、移植物レシピエント又は他の型の細胞ベースの治療法のレシピエント)中のドナー細胞を検出する方法を提供する。かかる方法は、移植物の細胞を移植物レシピエントに投与することを含むことができ、少なくともその移植物の細胞の一部分は、フルオロカーボンイメージング試薬で標識されており;そして被験者の少なくとも一部分を核磁気共鳴技術により調べることを含み、それにより、標識細胞を検出する。これらの標識細胞の検出は、一回で行なうことも繰り返すこともでき、移植物のレシピエントにおける標識細胞の局在性及び交通についての情報を得るように行なうことができる。細胞レシピエントの例には、骨髄移植物(又は、一般に骨髄に由来するが専ら骨髄に由来するのではない造血幹細胞、末梢血又は臍帯血を含む細胞画分)のレシピエント及び他の細胞又は器官移植物のレシピエントが含まれる。器官のレシピエントには、ドナーの器官例えば肝臓、心臓、肺、腎臓、膵臓組織、神経組織又は他の移植物のレシピエントが含まれる。レシピエントには又、ドナーに直接由来するドナー細胞(自家細胞の場合、「ドナー」は、レシピエントと同じ個体である)のレシピエント又は使用前に限定的培養若しくは大規模培養にかけた細胞のレシピエントも含まれうる。ドナー細胞は、本質的に、有用な細胞の供給源として役立つ任意の組織に由来してよく、造血幹細胞、血管芽細胞、肝臓幹細胞、神経幹細胞、筋肉幹細胞(例えば、サテライト細胞)、心筋細胞前駆細胞、膵臓幹細胞、血管内皮前駆細胞、間充織幹細胞、骨又は軟骨前駆細胞などの幹細胞(前駆細胞を含む)を含むことができ、又は成熟細胞例えば樹状細胞、免疫細胞(例えば、T細胞、B細胞)、軟骨細胞、骨芽細胞などを含むことができる。投与のための細胞は、自家細胞、異種細胞であってよく又は他の生物体例えばブタに由来するものであってさえよい。本発明の他の面は、下記の開示から明らかとなろう。
【0023】
図面の簡単な説明
図1.細胞の標識、イメージング及び定量のための経路の図式表示。破線の連結は、随意のステップを示している。
図2.細胞をエキソ・ビボで標識して、宿主にトランスファーし、19F及び1Hを利用してイメージ化し、そして複合19F/1Hイメージにより可視化することの説明。
図3A〜3D.T細胞を、PFPEナノ粒子を用いてエキソ・ビボで十分に標識する。(a)は、ペレット化した、標識したT細胞(1×106)の19F NMRスペクトルを示している。このPFPEは、2つのピーク(一つは、−92ppmで、他は、−79ppm)を有している。トリフルオロ酢酸(TFA)を含むキャピラリーを、細胞ペレットと並べた基準として用いた。そして−76ppmにピークを示している。19F NMRを、470MHzで測定した。(b)標識し、活性化したT細胞の共焦点蛍光顕微鏡写真。PFPEナノ粒子を細胞標識前にDil(桃色)で処理した。細胞核を、TOTO3染色し(青色)、細胞質も弱く染色されている。ナノ粒子を、細胞表面と細胞内の両方で可視化する。スケールバーは、8μmを表している。(c)PEG600のジメチルエステル誘導体であるPFPEの分子構造(約40F’/細胞を有する)。この分子は、例えばプルロニックL35を用いて乳化することができる。(d)動的光散乱法により示されたエマルジョン粒子のサイズ(左のパネル)及び電子顕微鏡観察(EM)(右のパネル)。動的光散乱法を用いて、PBS中のナノ粒子のサイズ分布を測定した。そのプロットは、ナノ粒子の平均数(%)を平均粒子直径(nm)に対してを示している。これらのナノ粒子は、103±4nmの平均直径を有している。
図4A−4B.イン・ビトロでの、細胞の、様々なトランスフェクション剤を用いる、フルオロカーボン(即ち、PFPE)による標識。示した薬剤は、プロタミンサルフェート(Sigma, Inc.)、リポフェクタミン(Invitrogen, Inc.)、DOTAP(Roche, Inc.)、及びFuGene(Roche, Inc.)である。例は、樹状細胞(DC)(パネルa)及びT細胞(パネルb)を含む典型的な細胞型について与えてある。パネルa〜bにおいては、種々のカチオン性トランスフェクション試薬が用いられており、有意に、PFPE粒子の培養における取り込みを高め且つ標識用インキュベーション時間を1〜3時間のオーダーで低減した。この19F含量は、標識細胞ペレットの統合19F NMRスペクトルを利用してアッセイされた(値は、細胞数及び細胞ペレットの次に位置するTFA基準に対して規格化された)。
図5A−5B.イン・ビトロでの、細胞の、電気穿孔法を利用した、過フルオロカーボン(即ち、PFPE)による標識。DCを、培養培地中で電気穿孔法にかけた。パネルaは、標識細胞ペレットの典型的な19F NMRスペクトルを示している。パネルbは、培地中の固定したPFPE濃度での、電気穿孔電圧の関数としての19F含量を示している。細胞内19F含量を、標識細胞ペレットの19F NMR分光法を利用してアッセイした(値は、細胞数及び細胞ペレットの次に位置するTFA基準に対して規格化されている)。
図6.PFPE標識した一次T細胞のイン・ビトロでのMTT毒性アッセイ。PFPE標識による最小毒性が認められる。データは、標識の2時間後及び4時間後に採取した細胞アリコートから得たものである。この例において、一のトランスフェクション剤(FuGene)を用いて、取り込みを高めた。データは、未処理対照に対して規格化されて、100を乗じたものであり、この実験は、n=9を超える試行の平均したものである。
図7A−7C.PFPE標識したT細胞におけるFACSの結果。パネル(a)及び(b)は、それぞれ、トランスフェクション剤法を用いた標識後4及び24時間での、CD62L+及びCD4+の発現レベルである。パネル(c)は、電気穿孔法による標識後4時間での、CD4+及びCD62L+の発現を示している。
図8.PFPE標識したT細胞を受けたNOD SCIDマウスからの膵臓組織の組織学的切片の蛍光顕微鏡写真。マウスは、4×106の標識したBDC2.5T細胞を48時間前に受けた。固定した切片の染色は、次の通りである:インスリンは、緑色に、核は、白色に、アクチンは青色に、そしてT細胞は赤色に染色されている。これらのイメージは、T細胞の島内への及び周囲の血管への浸潤を伴う、初期のインスリン炎を示しており、これは、PFPE標識が、T細胞の交通を害しないことを示唆している。
図9A−9D.トランスファーされたT細胞が膵臓に向かうことを示す、イン・ビボのMRI。パネル(a)−(c)は、マウスの胴体の複合19F/1Hイメージであり、19Fは、擬似カラーで与えられ、1Hは、グレースケールになっている。19Fシグナルを含むスライスのみが示されている。(a)NOD SCIDマウスに48時間前にトランスファーされた、PFPE標識され、イン・ビトロで活性化された糖尿病誘発性T細胞(5×106)のイメージ。このイメージは、特異的T細胞(擬似カラー)が膵臓(P)に向かうことを示している。19F基準キャピラリー(R)は、このマウスの次に位置されている。肺、脾臓(S)及び肝臓(L)は、標識されている。パネル(b)は、PBS中の無細胞のPFPEナノ粒子(1×107の標識T細胞の19F投与量に匹敵)を受けたNOD SCIDマウスの負の対照のイメージを示している。我々は、PFPE(擬似カラー)を消化管(G)の近くでのみ検出した。パネル(c)は、活性化された、標識されたMHCミスマッチのT細胞を受けたNOD SCIDマウスの、負の対照のイメージを示している。我々は、膵臓、肝臓若しくは脾臓又はそれらの周囲でシグナルを検出しなかったが、細胞(擬似カラー)を、腎臓(K)に近い部位で見ることができる。パネル(d)は、NOD SCIDマウスの同齢集団についての、見かけのT細胞の膵臓指向性のイン・ビボ定量の結果を示している。これらの値は、膵臓で検出された細胞の、i.p.トランスファーされた細胞の総数と比較したパーセンテージを表している(2〜6×106細胞に及ぶ)。エラーバーの説明のための方法を参照されたい。
図10A−10B.標識したT細胞を接種されたNOD SCIDマウスから摘出した膵臓(a)及び脾臓(b)の19F NMRスペクトル。すべての固定した器官についての、19F NMRを、イン・ビボMRI(図9a)の後に行なった。19Fのピークは、膵臓(a)で検出されるが、脾臓(b)では存在せず、これは、イン・ビボMRIの所見(図9a)と一致する。TFA19F基準を、器官に隣接したシールされたキャピラリー中に位置させた。(a)と比べて、より多くの平均(8倍)を利用して、(b)を得た。
図11A−11B.19F MRイメージを利用したT細胞定量法を確認する像(phantom
)研究。パネル(a)は、複合19F/1Hイメージ(左側)及び、アガロース中に懸濁させた種々の密度の標識T細胞を含むキャピラリーチューブを含む像により強度を適正化した(intensity-rescaled)19Fイメージ(右側)を示している(キャピラリーA=12、B=6、C=3、D=1.5、及びE=0.75(×104)細胞/ボクセルであり、Rは、較正された19F基準キャピラリーである)。19Fイメージ(a、右側)は、中間の細胞密度即ちキャピラリーB、C、Dを示すように適正化されたものである。キャピラリーE(7,500細胞/ボクセル)は、このスケールでは見れないが、我々の定量分析は、この試料中の細胞を検出して測定することができる。これらのデータは、図9と同様のイメージングパラメーターを用いて得られた。CF2末端基の化学シフトのアーティファクト即ち高濃度のRキャピラリーからの「ゴースト」が、キャピラリーAの近くで認められる。パネル(b)は、この像研究における、実際の細胞数対MRIで測定された細胞数を示している。ピアソン相関係数は、0.98である。この線形的適合は、視覚的誘導である。縦座標についてのエラーバーは、示しておらず、それらは、データ点記号より小さい。
図12.急性炎症のマウスモデルのイメージング実験を示す図式表示。抗原特異的な、MHCマッチしたT細胞を、PFPE標識及びトランスファー前に、イン・ビトロで活性化した。宿主マウスは、炎症応答を開始するために、右側の大腿四頭筋(quadrucepts)に、s.c. オバルブミン/IFAを受け、対照として、右肢にPBS注射を受けた。これらのマウスは、その後、身体の長軸に沿って、同じイメージングセッションで、細胞トランスファー後、2、4、7、11及び21日目に、19F及び1Hを用いてイメージ化された。
図13.PFPE標識T細胞の注射後の様々な時点での、鼠蹊リンパ節を含むスライス。これらのT細胞は、オバルブミン/IFAが投与されたスライドにおいてのみ、鼠蹊節で見ることができる(i、4日目のパネル)。腸間膜節への幾らかの局在化も認められる(m、4日目のパネル)。測定可能な19Fシグナルを有するスライスのみを示してある。
図14.トランスファー後、2、4、7、11及び21日目の鼠蹊リンパ節におけるT細胞の平均数のプロット。これらの定量的データは、イン・ビボ19Fイメージから直接測定された。
図15A−15B.細胞トランスファー後、4日目のイン・ビボの光学イメージング。Alexa−PFPE標識は、4日目に、毛を剃ったマウスの皮膚を通して見ることができる。(a)蛍光は、腸間膜領域及び排出鼠蹊リンパ節に集中している。そのボックスは、排出鼠蹊節を超える領域を強調表示している。(b)腸間膜領域からの邪魔なしで鼠蹊節の蛍光を比較するために、それらのリンパ節を摘出して、別個にイメージ化した。そのイメージは、白色光イメージ上への蛍光イメージ(偽カラー)のオーバーレイである。大きさ並びに蛍光の差異は、鼠蹊リンパ節において明らかである(対照用リンパ節は、左にある)。
図16.一般的目的のコンピューターシステム200の、コンピューター104の機能を、この発明の説明のための具体例によって実施するための、機能的ブロックダイヤグラム。
【0024】
詳細な説明
1.概観
ある面において、この開示は、細胞を、エキソ・ビボで、核磁気共鳴イメージング試薬例えばフルオロカーボンイメージング試薬で標識するための並びに標識した細胞を、イン・ビボ又はエキソ・ビボで定量するための新規な方法及び試薬を提供する。標識した細胞は、19F核磁気共鳴技術(例えば、MRI/MRS)によって検出することができ、ここに記載した方法によって定量することができる。19F核磁気共鳴技術は、内因性バックグラウンドシグナルがないので、生物学的系に対する優れたイメージングツールである。フッ素は、生きている生物体においては、あったとしても非常に低レベルで存在し、一般に、液体状態の核磁気共鳴技術により検出可能な化学的形態にない。これは、精密な解剖学的に詳細な可視化を与えるが特定の細胞集団の選択的検出を可能にしない慣用の1H MRIと極めて異なっている。ここに開示したある方法は、生きている被験者における、標識された細胞の分布を可視化するための全身の又は身体の部分的スクリーニングを可能にする。19F核磁気共鳴により検出される標識された細胞の正確な解剖学的位置決めは、例えば、解剖学的詳細を与える1H MRIイメージの重ね合わせにより決定することができる。好適具体例において、1Hイメージは、記録を確実にするために、19Fイメージと同じイメージングセッション中に(被験者を動かさずに)得られる。加えて、ここに開示した核磁気共鳴技術は、組織試料、摘出した器官及び細胞培養物の場合のようなエキソ・ビボのコンテキストにおいて、有効に適用することができる。ここに開示したイメージング技術は、一層多くの生物学的及び医学的問題に適用することができる。
【0025】
ある面において、この発明の方法は、細胞を、エキソ・ビボで、19Fイメージング試薬により標識すること、標識した細胞を被験者に投与すること、及びその被験者において標識された細胞を検出することを含むことができる。これらの標識すべき細胞は、粗細胞画分又は組織試料であってよく、又はこれらの細胞は、標識する前に、培養し及び/又は富化させることができる。例えば、特定の細胞型を、標識する前に、蛍光活性化セルソーティング(FACS)によって選択することができる。他のソーティング又は選択的富化方法は、関心を持たれうる様々な異なる細胞型について当分野で公知である。これらの標識される細胞型は又、イメージング剤の性質によって制御することもできる。例えば、イメージング試薬の単純コロイド懸濁液は、貪食能を有する細胞により迅速に取り込まれる傾向をもつ。他の例として、イメージング試薬を、イメージング試薬の特定の細胞集団に対する選択的ターゲティングを促進するターゲティング成分と配合するか又は共有結合させることができる。イメージング試薬は、更に、以下に記載されている。標識後、細胞を、直接投与することができ、又は貯蔵し、更に培養し、精製し、富化し、分離し又はかかる細胞の意図した利用と相容れなくない任意の方法で処理することもできる。
【0026】
ある面において、標識した細胞は、治療目的のために投与される。ここに記載したテクノロジーは、細胞治療剤の、イン・ビボでの又は任意の他の所望の環境例えば組織外植片での交通をモニターするために利用することができる。骨髄細胞移植物は、癌の切除療法のレシピエントにおいて多年にわたって広く利用されてきている。様々な精製された細胞集団例えば造血幹細胞を富化させた細胞集団(例えば、臍帯血又は末梢血から細胞を採取することができる)も又、骨髄の代わりに利用されてきた。血流に入った後、これらの幹細胞は、一般に、骨髄に移行し、そこで、それらは、新しい白血球細胞、赤血球細胞及び血小板を生成し始める。この植付けは、通常、移植後、約2〜4週間以内に起きる。伝統的に、植付けは、よくある基本(frequent basis)上での血球算定によりモニターされ、そして免疫機能の完全な回復は、一般に、数カ月(自家移植物レシピエントの場合)〜数年(同種異系又は同系移植物の場合)を要する。骨髄の吸引による細胞の採取は、移植細胞の機能についての更なる情報を与える。これらのモニタリング技術は、移植すべき細胞(又は、かかる細胞の幾分小さい画分)をエキソ・ビボで標識し、そうして、移植された細胞の位置及び動きの核磁気共鳴技術による非侵襲的モニタリングを可能にすることによって増進されうる。骨髄切除をしない同種異系移植(即ち、強度を下げた移植物)は、幾つかの種類の癌の治療に有効でありうる類似の細胞療法である。一般に、この技術は、一層低線量の照射及び/又は一層低投与量の化学療法剤、及び限定的な移植片宿主病(移植物からの免疫細胞の残留する宿主の癌細胞に対する作用)に依存して、十分な抗癌活性、並びに患者の造血系を回復するための移植片細胞の潜在的造血能力を与える。伝統的な摘出した移植片を用いた場合、本発明の技術を利用して、骨髄切除をしない同種異系移植において、移植片細胞の位置及び動きをモニターすることができる。
【0027】
細胞治療剤は又、治療用タンパク質の送達用にも開発中である。一具体例において、細胞を分離して、エキソ・ビボで量的に増殖させ、その後、移植して、局所的に活性である(例えば、酵素、サイトカイン及び神経伝達物質)か又は遠方で活性である(例えば、ホルモン及び成長レギュレーター)可溶性因子を産生及び分泌させることができる。細胞は又、複雑な治療目的例えば組織、器官、又は免疫応答の再生を、それらの身体内の特異的部位に向かい、循環から出て、周囲の組織に組み込まれ又は分化して損傷を受けた組織と置き換わる能力に基いて達成するために、患者に投与することもできる。幹細胞療法も又、神経病学的疾患、特に、細胞死により特徴付けられるもの(例えば、パーキンソン病、脳卒中及び外傷により引き起こされた脳の傷害)、心臓血管病(例えば、心筋梗塞)、筋肉の再生(例えば、悪液質又は他の消耗性疾患に苦しんでいる患者において)、糖尿病における膵臓の再生、肝臓の再生などを含む無数の病気のために提案されてきた。各事例において、細胞又はその亜集団を、イメージング試薬により、投与前にエキソ・ビボで標識して、そうして、これらの細胞をイン・ビボでモニターすることを可能にする。核磁気共鳴技術によるイン・ビボでのモニタリングは、例えば、投与した細胞の生存力を評価するのに有用でありうる。医師は、投薬スケジュールを、投与後、患者において標識細胞が検出される程度に応じて作ることができる。イン・ビボでのモニタリングは又、治療用細胞が所望の位置に位置されてきたかどうかの測定においても有用でありうる。一般に、治療用細胞のイン・ビボでの移動挙動並びに治療用細胞のイン・ビボでの数及び/又は生存と治療結果との間の相関関係を研究することは可能となろう。かかる相関関係が樹立されている場合には、治療用細胞のイン・ビボイメージングは、予後指示として利用することができ、これは、適当な投薬量、投与方法及び患者に利益となる追加的治療介入の選択を助成することができる。この発明のあるイメージングの進歩は、広範囲の細胞治療ストラテジーに利益となろう。何故なら、これらのイメージング方法論は、何時、何処に、治療用細胞がイン・ビボで所望の標的に送達されたかどうかを検出することができるであろうから。加えて、標識した細胞の検出は、ROI(例えば、特定の器官又は組織)内の標識細胞の定量により増進されうる。
【0028】
ここに開示した技術の応用の一例は、樹状細胞(DC)の追跡にある。DCは、最も効率的な抗原提示細胞であることが知られており、ネイティブなT細胞を刺激して免疫応答を開始する能力を有している。DCは、身体中で最も強力な免疫応答スティミュレーターであるので、DCは、患者の免疫系に対する腫瘍の「可視性」の増大への可能な治療的アプローチを代表するものである。DCは、開発中の腫瘍ワクチンの焦点である。これらの樹状細胞を腫瘍抗原にエキソ・ビボでさらすために変化する方法が用いられ、その後、教育された樹状細胞は、強化されて、T細胞に媒介された腫瘍の死滅の発生を刺激する。本開示の一具体例をDC及び他の細胞型の標識及び追跡に応用するデータ(WO2005072780に与えられている)を、参考として、本明細書中に援用する。
【0029】
DCに加えて、他の細胞型が、癌及び他の病気例えば糖尿病の免疫療法に対する見込みを、たとえそれらの進歩が、動物及びヒトへの移植後にそれらの動きを観察できないことを含む多くの因子によって邪魔されてきても、示している。ナチュラルキラー(NK)細胞は、採取して、エキソ・ビボで処理して移植した場合、転移性腫瘍細胞を殺す能力を示した。癌免疫を促進するためにエキソ・ビボで処理されて移植される更なる細胞型には、リンホカイン活性化キラー(LAK)細胞、腫瘍浸潤性リンパ球、及び活性化キラー単球が含まれる。病原性細胞を攻撃する白血球細胞であるT細胞の移植は、膵臓癌(臨床的試みが始まりつつある)を含む様々な癌に対する見込み並びに多発性硬化症及びHIV感染に対する見込みを示した。
【0030】
ある面において、標識細胞は、非治療目的で、被験者に投与される。例えば、細胞を、エキソ・ビボで標識して、被験者に投与し、次いで、標識された細胞は、未標識の細胞とイン・ビボで同様に挙動するであろうから内在性の細胞集団の挙動をモニターするために利用することができるという期待をもって検出することができる。モニタリングを、細胞の動きを追跡するという目的のために、特に、高度に可動性であることが知られている細胞例えば免疫系の細胞、多くの型の幹細胞及び血液に運ばれる細胞の場合に、利用することができる。モニタリングは又、非可動性細胞の移植部位における生存又は粘着性を追跡する目的のために利用することもできる。多くの組織例えば筋肉、肝臓、膵臓、腎臓、脳又は皮膚の細胞は、比較的動かないが、標識の消失は、高い死亡率、低い粘着性、又は他の情報を示しうる。現代の細胞培養及びソーティング技術は、事実上、様々な幹細胞、免疫細胞型、及び他の血液細胞型を含む任意の所望の細胞集団を選択的にプールして標識することを可能にしている。例えば、細胞表面マーカーを利用して、混ざった細胞集団をソートして、関心ある集団を精製することができる。上記の例に記載したように、T細胞及び樹状細胞の両者は、エキソ・ビボ及びイン・ビボで標識することができる。
【0031】
一例として、標識した免疫細胞を、患者における免疫細胞の動きについての検出可能な代理として利用することができる。免疫細胞は、炎症性及び自己免疫疾患並びに癌及びアテローム性動脈硬化性プラークの形成に関与し、その宿主についてのマーカーである。一般的方法論として、免疫細胞のリクルートを含む任意の過程を、その患者に標識した免疫細胞を投与することにより検出することができる。特定の領域における標識の蓄積は、身体のその部分で起きている免疫応答の程度の指示を与える。伝統的に、これらの型の研究には、生きている被験者と両立しえない組織学的技術が包含される。この開示のある方法は、ヒトの病気の治療のための治療ストラテジーの開発を容易にする。免疫細胞の選択した集団を、非侵襲的に且つ放射性同位体を用いずに追跡する能力は、基礎免疫学及び臨床免疫学の多くの分野(例えば、多発性硬化症、糖尿病、臓器移植の拒絶のモニタリング、及び癌)に強い影響を与えうる。例えば、腫瘍は、しばしば、免疫細胞によって高度に浸潤される。標識された細胞は、被験者においてイメージ化されて、腫瘍の位置を明らかにすることができ、幾つかの場合には、非侵襲的検出スクリーニングとして有用でありうる。初期の癌の検出は、非常に重要な問題である。何故なら、殆どの初期段階の癌は、衰弱させる化学療法剤の助けを求めることなく、外科手術によって容易に治療することができるからである。同様に、他の免疫学的疾患の進行を、患者における免疫細胞の動力学を追跡することによりモニターすることができる。免疫抑制剤療法の効力も又、アッセイすることができる。臓器移植のレシピエントの場合には、そのレシピエントに、ある投与量の標識した免疫細胞を、移植の前に与えることができる。次いで、その移植物における免疫細胞の蓄積のイン・ビボでのモニタリングを、拒絶の初期の警告サインとして利用することができよう。移植物の場合には、ここに開示した方法は、別法の生検は臓器の拒絶のリスクを増大させることがよく知られているので、特に望ましい。
【0032】
更なる例として、骨髄細胞移植に用いるための、又は末梢血幹細胞移植に用いるための細胞は、ここに記載したように、エキソ・ビボで標識して、投与して、核磁気共鳴技術によってイン・ビボでモニターすることができる。かかるモニタリングは、ドナー細胞のレシピエントの骨の空隙における植付け並びに、標識した細胞のレシピエントにおける生存及び動きを評価するために利用することができる。医師は、ドナー細胞のレシピエントにおける交通に関する情報を、手順の成功又は失敗のもっともらしい初期の指示として利用することができる。この型の初期の検出は、医師が、移植後の治療養生法を必要に応じて調整することを可能にするであろう。この検出技術を適用することのできる他の細胞性の癌の治療は、同種異系の非骨髄切除式、又は強度を減じた移植である。この手順は、ドナーリンパ球注入と共に利用して、癌細胞を破壊する移植片対腫瘍効果を高めることができる。ここに、移植された細胞の全集団又は画分を、注入前に標識することができよう。次いで、核磁気共鳴技術を利用して、それらの細胞が、身体中の何処に行くのか測定することができ、それは、この手順の効力を示すことができる。拒絶を最小にするための同種異系細胞の投与量を制限することはしばしば望ましいので、それらの細胞の交通パターンを利用して、投与量を較正することができる。上記の癌細胞治療において、治療的効力を有すると考えられる移植された細胞(例えば、CD34+幹細胞又はT細胞)の一以上の亜集団を選択的に標識することは、望ましいことでありうる。
【0033】
更なる例として、新しい組織の形成例えば血管形成に関与する細胞を標識して、被験者に投与し、そして検出して、組織形成のホットスポットを同定することができる。例えば、平滑筋細胞及び/又は内皮前駆細胞を標識して、血流に導入することができる。かかる細胞は、血管形成活性の部位に蓄積することが予想される。血管形成活性は、月経周期、妊娠初期、動脈の閉塞に応じての副行血管の形成、腫瘍の発生及び傷の治癒などの生理学的事象及び病理学的事象と関連している。同様に、傷の治癒に関与する細胞例えば繊維芽細胞を標識して、全身投与し又は傷の疑われる部位に投与することができる(細胞挙動をモニターするため)。
【0034】
例えば、標識した心筋細胞系統の細胞凝集物又はそれに由来する細胞を含む医薬又は送達用デバイスを、ヒト又は動物の身体の治療のために与えることができる(心臓治療用の配合物を含む)。心筋細胞系統の細胞は、心臓組織における収縮性及び/又は脈搏調整活性を再構成し又は補うための方法において、患者に投与することができる(米国特許出願No.20060040389、20050112104、20050244384(これらを、参考として、本明細書中に援用する)を参照されたい)。
【0035】
本発明によれば、標識された心筋細胞系統の細胞は、病気又は退行によりダメージを受けた有紋心筋を再生し又は修復するために利用される。これらの標識した心筋細胞系統の細胞は、レシピエントの健康な組織と統合されて、死んだ又はダメージを受けた細胞の機能に取って代わり、それにより、全体として、心筋を再生する。心筋は、通常、修復能力を有していない。これらの標識された心筋細胞系統の細胞は、例えば、次の重要な指示に関して、心筋再生に利用される:(i)虚血性心臓移植;(ii)鬱血性心不全の患者の治療;(iii)冠動脈バイパス移植を受けた患者についての更なる病気の予防;(iv)通道組織の再生;(v)血管平滑筋の再生;及び(vi)弁の再生。
【0036】
これらの細胞の投与は、様々な手順によって、心臓に向けることができる。局所的投与が好ましい。その間充織幹細胞は、優先順位の高い順に、自家、同種異系、又は異種を含む起源の範囲からのものであってよい。この面に対する、下記を含む幾つかの具体例がある。本発明は、これらの細胞のイン・ビボでの進行をモニターすることを可能にする。
【0037】
これらの心筋細胞系統の細胞は、心筋細胞前駆細胞、又は分化した心筋細胞であってよい。分化した心筋細胞は、一以上の一次心筋細胞、結節(ペースメーカー)心筋細胞;伝導心筋細胞;及びワーキング(収縮性)心筋細胞を含む(これらは、心房型であってよく、又は心室型であってもよい)。ある具体例において、細胞は、筋前駆細胞例えばサテライト細胞を含む筋肉試料(又は、他の試料)に由来する(米国特許出願No.20050244384参照)。ある具体例において、細胞は、間充織幹細胞(MSC)である(米国特許出願No.20050112104参照)。
【0038】
「心筋細胞前駆細胞」は、心筋細胞を含む子孫を(脱分化又は再プログラミングなしで)生成することのできる細胞として定義される。かかる前駆細胞は、心筋トロポニンI(cTnI)、心筋トロポニンT(cTnT)、筋節ミオシン重鎖(MHC)、GATA4、Nkx2.5、N−カドヘリン、ベータ1−アドレノセプター(ベータ1−AR)、ANF、転写因子のMEF−2ファミリー、クレアチンキナーゼMB(CK−MB)、ミオグロビン、又は心房性ナトリウム利尿因子(ANF)を含む(これらに限定はしない)その細胞系統に典型的なマーカーを発現することができる。
【0039】
ある例において、細胞は、関心ある生物学的部位又は構造と完全に結合するので、標識された細胞を、かかる構造の可視化を助成する単一目的のために投与しうることが判明しうる。上述のように、免疫細胞は、特徴的に、腫瘍に浸潤する。従って、標識された免疫細胞を、腫瘍を可視化する目的のために投与することができる。
【0040】
ここに開示した技術は、ヒトの病気の動物モデルの研究に適用することができる。様々な病気の動物モデルは、変化した動力学又は一以上の細胞集団の生存を示すことができる。かかる細胞集団を標識して、動物に投与してモニターすることができる。例えば、免疫細胞の、糖尿病のためのNODマウスモデルの膵臓への浸潤をモニターすることができる。動物モデルの他の例には、実験的アレルギー性脳脊髄炎(多発性硬化症モデル)、神経膠肉腫モデル、及び臓器移植の拒絶が含まれる。これらのモデルにおける免疫細胞の表現型で規定された集団を追跡することにより、病気の原因論の面を解明して、細胞の交通が治療剤によって如何に影響されるかをモニターすることができる。この方法は、例えば、動物モデルにおいて所望の効果を有する薬物をスクリーニングするために利用することができる。薬物スクリーニングアッセイは、標識した細胞を動物に投与すること及びそれらの細胞を、試験薬剤の存在下で、イン・ビボで検出することを含むことができる。試験薬剤の存在と相関する細胞挙動の変化は、治療効果を示しうる。かかる変化は、適当な基準との比較により検出することができる(試験薬剤での処理の前後の同じ動物又は別々の、未処理の動物を含む)。試験薬剤に加えて、これらの方法は、試験条件(例えば、運動養生法、傷、遺伝的変化など)の効果を評価するために利用することができる。例として、自己免疫疾患の治療のための薬物は、免疫細胞が冒された組織に蓄積する傾向を減じるであろうということが予想される。静的状態での評価に加えて、ここに開示した方法は、細胞の同力学的特性例えば細胞が特定の部位に到達する割合及びある部位におけるシグナルの持続時間を評価するために利用することができる。薬物スクリーニングアッセイは、厳格に規定した細胞集団例えば様々な疾患と関連する免疫細胞のあるグループのイン・ビボモニタリングと組み合わせた場合に特に強力でありうる。例えば、標識した細胞傷害性T細胞のモニタリングは、移植の拒絶の予防に有用でありうる薬物の同定において特に有用でありうる。細胞をイン・ビボでモニターする能力は、本質的に任意の実験動物(例えば、様々なトランスジェニックマウス或は生成されている突然変異マウスの何れかを含む)の分析に適用することのできる強力なアッセイを提供する。
【0041】
幾つかのグループが、免疫細胞をMRIコントラスト剤を用いて標識して可視化することを研究してきた。他の研究者達は、MRIコントラスト剤を利用して、幹細胞及びニューロン前駆細胞などの細胞型を標識してきた。これらの研究の大多数は、超常磁性の酸化鉄(SPIO)剤の取り込みにより細胞に磁気的区別を与えている。他の型の金属イオン、特に、ガドリニウム及びマグネシウムを組み込んだコントラスト剤により標識された細胞も又、用いられてきた。これらの金属イオンベースの薬剤を利用する研究において、それらの化合物は、直接イメージ化されるのではなく、それらの周囲の水に対する間接的効果を観察するものである。この薬剤の存在は、この化合物の近傍で水の緩和時間(T1、T2、又はT2*)を短くする傾向があり、これらの効果は、緩和時間−重み付きイメージにて検出することができる。SPIO剤は、例えば、近くの可動性水分子が受ける磁場を局所的に混乱させることにより、慣用の1Hイメージにコントラストを与え、これは、更に、T1、T2、又はT2*を変調する。ここに記載した方法は、イメージング試薬中の19F核からのシグナルは、直接検出することができ、適宜、イメージ化することができるので、金属イオンベースのコントラスト剤を利用するすべての方法と明らかに異なるものである。
【0042】
標識された細胞を金属イオンベースのコントラスト剤を利用して検出することの本来的欠点は、しばしば、標識された細胞を含むと考えられる領域におけるグレースケールのコントラストの微妙な変化を解釈することが必要な状況になることである。組織中に存在する高濃度の可動性の水からの大きい1Hバックグラウンドシグナルは、標識された細胞を含む領域を明りょうに同定することを困難にしうる。これは、標識された細胞の生体内分布が先験的に知られていない場合に、特に問題である。「スナップショット」イメージの結果は、しばしば、標識された細胞がある特定の組織に存在しているかどうかに関して不明りょうである。これは、特に、鉄を多く含む器官においてSPIO標識された細胞の検出を試みる場合に悩ませる問題であり、それらの器官は、もともと、解剖学的(T2−、又はT2*−重み付けした)イメージにおいて、肝臓又は脾臓におけるように暗く見える。しばしば、特定の器官において、標識された細胞が蓄積したことを確かめるために、数時間にわたって、微速度イメージ強度変化の検出を行なわなければならない。その上、関心ある領域における標識された細胞の、金属イオンベースのコントラスト剤を利用するイン・ビボでの定量は、問題があり、一般に、緩和時間重み付きMRIを利用して又は定量的緩和時間MRIマップを利用することによりこれを行なう単純で信頼できる方法はない。
【0043】
従って、ここに開示した方法及び組成物は、医学及び生物学の分野で非常に必要とされているツールを提供する。
【0044】
2.イメージング試薬及び配合物
主題の方法で用いるイメージング試薬は、フルオロカーボン即ち少なくとも一つの炭素−フッ素結合を含む分子である。19F原子によって、ここに開示したイメージング試薬は、19F MRI及び他の核磁気共鳴技術例えばMRS技術によって検出することができる。ある好適具体例において、フルオロカーボンイメージング試薬は、次の特性の少なくとも一つを有する:1)低減された細胞傷害性;2)単純な(理想的には、化学シフトによるアーティファクトを最小にする、単一で、狭い共鳴を有する)19F NMRスペクトル;3)各分子中に多数のNMR当量フッ素原子を有することによる高い感度;4)多くの細胞型の効率的標識を与えるように配合されて貪食細胞に限られないこと。
【0045】
典型的な化合物には、アリール又はヘテロアリールトリフルオロメチルスルホン酸エステル(トリフラート)又はスルホンアミド(トリフラミド)、フッ素化アルコール(例えば、2,2,2−トリフルオロエタノール、過フルオロ−t−ブタノール及び2,2,3,3,3−ペンタフルオロプロパノール)のエステル、過フルオロアルカン酸(例えば、トリフルオロ酢酸、過フルオロテトラデカン酸、及びノナフルオロペンタン酸)のエステル及びアミド、過フルオロアルカンのエーテルなどが含まれる。好ましくは、このイメージング試薬は、炭素に結合された複数の例えば5個より多くの、10個より多くの、15個より多くの又は20個より多くのフッ素を含む。好ましくは、少なくとも4個の、少なくとも8個の、少なくとも12個の又は少なくとも16個のフッ素が、凡そ当量のNMR化学シフトを有する。
【0046】
ある具体例において、イメージング試薬は、過フルオロクラウンエーテル例えば過フルオロ−15−クラウン−5、過フルオロ−18−クラウン−6、過フルオロ−12−クラウン−4などであり、ここでは、環状過フルオロポリエーテル(環状PFPE)とも呼ばれる。かかる化合物は、これらの分子の19F核が、類似の又は同一のNMR共鳴を有し、これは、一層高いシグナル対ノイズ比のイメージを、化学シフトイメージアーティファクトなしで生じるであろうという点で有利である。大環状分子の過フルオロ−15−クラウン−5エーテルは、特に好適な特性を有している。それは、親油性でもなく、親水性でもなくて、過フルオロポリエーテルに典型的であり、水溶液中に乳化される。典型的なエマルジョンは、水溶液中で安定であって且つ細胞によって取り込まれうる小さい粒子(直径約10〜500nm)である。当業者は、他のフッ素化化合物、特に、各フッ素原子が類似の化学的環境にあるフッ素化化合物が望ましい特性を有するであろうということを認識するであろう。過フルオロ−t−ブタノール、1,3,5−トリス(トリフルオロメチル)ベンゼン、ヘキサフルオロアセトン、ポリ(トリフルオロメチルエチレン)、及び過フルオロシクロヘキサンのエステルは、多数のフッ素原子を有し、同じ又は殆ど同じラーモア周波数を有する19F共鳴を有する化合物の例である。
【0047】
ある具体例において、イメージング試薬は、ポリマーである。ある具体例において、イメージング試薬は、直鎖の過フルオロポリマー(直鎖状PFPE)であり又はそれを含む。例えば、反復ユニット−[O−CF2(CF2)xCF2]n−(式中、xは、0〜10の、好ましくは0〜3の整数であり、nは、2〜100の、好ましくは4〜40の整数である)を含む構造又はその部分を有する化合物。例えば、過フッ素化直鎖状ポリエチレンオキシドは、Exfluor Corp.(テキサス、Round Rock)から入手することができる。何れかの末端又は両端(又は、分枝鎖ポリマーの場合には、複数の末端)を、更なる所望の機能を与える成分を用いて誘導体化することができる。例えば、イメージング試薬は、式A−B−C(式中、A及び/又はCは、官能性成分であってよく、Bは、反復ユニット−[O−CF2(CF2)xCF2]n−(式中、xは、0〜10の、好ましくは0〜3の整数であり、nは、2〜100の、好ましくは4〜40の整数である)を含む)を有することができる。官能性成分(例えば、特定の所望の機能を与える非フッ素化モノマー)は、更に、以下で検討する。
【0048】
直鎖状の過フルオロポリマーは、下記の平均的式を有する組成物としても記載することができる:
【化3】

(式中、Yは、下記よりなる群から選択される:
【化4】

(式中、nは、8〜30の整数であり;X及びZは、同じであって過フルオロアルキル、過フルオロエーテル、フルオロアシル、カルボキシル、アミド又はエステルで終端するフルオロアルキル、メチロール、酸クロリド、アミド、アミジン、アクリレート及びエステル並びに前記の官能性成分により誘導体化された何れかのものよりなる群から選択される))。
【0049】
完全にフッ素化されたポリマーを、例えば、過フッ素化二酸を過フッ素化ジハロカーボン(例えば、1,4−ジヨードオクタフルオロブタン)と反応させることによって形成することができるが、フッ素化モノマーを、他のモノマー(適宜、フッ素化されてなくてよい官能化成分)と反応させて、イメージング試薬として有用なハイブリッドポリマーを形成することができる。様々な異なる非フッ素化モノマーを用いて、全体的ポリマーの化学的及び物理的特性を変えることができ、イメージング試薬を特定の用途に応じて作ることを可能にする。例えば、高度に親油性のイメージング試薬は、培養細胞中に集中しえて、それは、細胞療法剤の部分として患者に予定されよう。
【0050】
培養中の細胞を標識するために、これらのイメージング試薬を、次の3つの様式の1つ以上にて用いることができる:1)如何なる共有結合又は他の結合の形成もなく、標的細胞によって内在化され或は吸収されるイメージング試薬;2)標的細胞に共有結合により結合されるイメージング試薬;及び3)標的細胞上に存在する分子に結合する分子例えば抗体又はリガンドに結合されたイメージング試薬。
【0051】
第一の型のイメージング試薬は、かなりの期間にわたって分解しせず、例えば、少なくとも1時間の、少なくとも4時間の、少なくとも約1日の、少なくとも約3日の、又は少なくとも約1週間で、細胞における半減期を有する、過フルオロクラウンエーテル及び他のPFPE(細胞により取り込まれ、好ましくは、細胞内に維持される)を含む。明白な理由の故に、イメージング試薬が、通常の細胞機能を邪魔しないこと又は標識に用いる濃度で細胞傷害性を示さないことは、好ましい。ここに示したように、過フルオロポリエーテルは、標識した細胞に対する低減された傷害性効果を示している。
【0052】
第二の型のイメージング試薬は、細胞表面の求核性部位例えば露出されたチオール、アミノ及び/又はヒドロキシル基と反応する求電子化合物を包含する。従って、イメージング試薬例えばマレイミド、アルキルヨージド、N−ヒドロキシスクシンイミド又はN−ヒドロキシスルホスクシンイミドエステル(NHS又はスルホ−NHSエステル)、アシルスクシンイミドなどは、細胞表面と共有結合を形成することができる。タンパク質結合に用いられる他の技術は、イメージング試薬を細胞表面タンパク質に結合するために適合させることができる。かかる結合への更なるアプローチについては、Means等(1990) Bioconjugate Chemistry 1:2-12 を参照されたい。
【0053】
第三の型のイメージング試薬は、第二の型のイメージング試薬を、細胞自身とでなく、細胞を標的とするリガンド又は抗体である官能性成分と反応させることによって製造することができる。適当なリガンド及び抗体を、関心ある応用のために選択することができる。例えば、造血細胞を選択的に標的とするリガンドを、ここに記載したようなイメージング試薬で標識して患者に注射などによって投与することができる。
【0054】
或は、イメージング試薬を、無差別内在化ペプチド例えばアンテペネペディアタンパク質、HIVトランス活性化(TAT)タンパク質、マストパラン、メリチン、ボンボリチン、デルタ溶血素、パーダキシン、シュードモナス外毒素A、クラスリン、ジフテリア毒素、C9補体タンパク質、又はこれらの何れかの断片に結合することができる。この無差別分子によりエキソ・ビボで処理した細胞は、イメージング試薬を吸収する。かかる標識した細胞を動物(例えば、哺乳動物)に移植した場合には、このイメージング試薬を利用して、移植された細胞を核磁気共鳴技術によって可視化及び/又は追跡することができる。
【0055】
一具体例において、この内在化ペプチドは、ショウジョウバエのアンテペネペディアタンパク質又はその同族体から得られる。このホメオタンパク質アンテペネペディアの60アミノ酸長のホメオドメインは、生物学的膜によって転移させることが示されており、それが結合した異種ポリペプチドの転移を促進することができる。例えば、Derossi等(1994) J Biol Chem 269: 10444-10450; 及びPerez等(1992) J Cell Sci 102:717-722を参照されたい。このタンパク質の16アミノ酸長ほどの小さい断片が内在化を駆動するのに十分であることが示されている。Derossi等(1996) J Biol Chem 271:18188-18193を参照されたい。
【0056】
内在化ペプチドの他の例は、HIVトランスアクチベーター(TAT)タンパク質である。このタンパク質は、4つのドメインに分割されるようである(Kuppuswamy等(1989) Nucl. Acids Res. 17:3551-3561)。精製されたTATタンパク質は、組織培養物中の細胞により取り込まれ(Frankel及びPabo, (1989) Cell 55:1189-1193)、そしてペプチド例えばTATの残基37〜62に相当する断片は、イン・ビトロで細胞により迅速に取り込まれる(Green及びLoewenstein, (1989) Cell 55:1179-1188)。その高度に塩基性の領域が、内在化及び内在化成分の核ターゲティングを媒介する(Ruben等 (1989) J. Viol. 63:1-8)。この高度に塩基性の領域に存在する配列を含むペプチド又は類似体をフッ素化イメージング試薬に結合させて、内在化及びこれらの試薬の細胞内環境へのターゲティングを助成することができる。
【0057】
他の関心あるPFPE組成物は、様々な末端基を用いて誘導体化した直鎖状PFPE(構造は、上記)である。これらの直鎖状化合物は、様々な官能性実体を末端基に結合することができる(例えば、様々な種類の官能性成分)という利点を有している。これらの直鎖状化合物の19F NMRスペクトルは、一般に、大環状化合物よりも一層複雑であるが、2つの十分離れたNMRシグナルを有するPFPEを利用することもできる。この場合には、一層小さい共鳴に適用される一以上のオフ共鳴飽和パルスを組み込んで如何なる化学シフトアーティファクトをも排除するMRIパルスシーケンスを利用するのが望ましいであろう。
【0058】
特に有用な直鎖状PFPEの応用は、19F核磁気共鳴技術によって検出することができて、第二の検出方法による検出を容易にする検出成分を含有する「二重モード」剤の合成である。例えば、末端基に結合された蛍光成分は、19F MRI及び蛍光顕微鏡を用いて可視化することのできるイメージング試薬を生成するために利用することができる。広範囲の蛍光成分を二重モード剤において利用することができる。フルオロセイン、リッサミン、フィコエリトリン、ローダミン(Perkin Elmer Cetus)、Cy2、Cy3、Cy3.5、Cy5、Cy5.5、Cy7、FluorX(Amersham)、及びAlexa染料(Molecular Probes)を含む多くの適当な蛍光体が知られている。蛍光成分は、フルオロセイン、ベンゾキサジオアゾール、クマリン、エオシン、ルシファーイエロー、ピリジロキサゾール及びローダミンの誘導体を包含する。これらの及び多くの他の典型的な蛍光成分を、Handbook of Fluorescent Probes and Research Chemicals (2000, Molecular Probes, Inc.)中に見出すことができる。更なる蛍光成分には、蛍光ナノクリスタル例えば、Quantum Dot Corporation (カリフォルニア、Hayward)から入手できる「量子ドット」生成物が含まれる。かかるナノクリスタルは、適当な発光スペクトルを有する半導体コア(例えば、CdS、CdSe、CdTe)、効率的に下のコア物質に結合されうる非発光性の透明な比較的非反応性の物質(例えば、ZnS)、及び望ましい溶解度(例えば、生理的水溶液における溶解度)及びここに記載したフルオロカーボンへの結合のための可能な反応性の基を与えるコーティングよりなるシェルを用いて構築されうる。
【0059】
蛍光検出を可能にする二重モードイメージング試薬は、様々な応用において、特に有用である。例えば、蛍光標識は、蛍光ベースの細胞ソーティング機構例えば蛍光活性化細胞ソーティング(FACS)の利用を可能にする。細胞ソーティングは、例えば、上首尾に標識された細胞の集団を富化させるのに望ましいであろう。これは、特に、標識が、ラレル(rarer)細胞集団に向けられている場合に、有用でありうる。二重モード剤は又、標識された細胞の、それらを生きている被験者に移植した後での、発見及び特性決定にも有用である。この出願では、細胞を、生検することができ、又は他の幾つかの手段により、被験者から、それらがそこに幾らかの期間存在した後に採取することができる。その後、これらの採取された細胞の生物学的分析を行なうことができる。例えば、FACS分析を、採取した細胞について行なうことができ、蛍光PFPE標識について細胞を陽性に選択した後に、それらの細胞を、特定の細胞表面マーカーの発現についてアッセイして(異なる色の蛍光プローブを利用)、移植後に起きた細胞表現型における任意の変化を研究することができる。蛍光標識は又、細胞の蛍光顕微鏡観察のために利用することもできる(特に、三次元共焦点蛍光顕微鏡観察を利用して)。蛍光顕微鏡は、一般に、標識細胞を含む深部組織のイン・ビボでの可視化に有用ではないであろうが、表面組織並びに組織試料は、可視化することができる。二重標識は、特に、任意の新規なフルオロカーボンベースの核磁気共鳴標識法の較正及び確認において価値があろう。例えば、MRI/MRSにより得られた結果は、培養標識細胞(生検又は別法によるもの)及びイン・ビボの両方で、蛍光検出により得られたものに匹敵しうる(可能な程度まで)。公知のユニット分子当りの蛍光シグナル強度を利用して、MRI/MRS測定値を較正することができる。
【0060】
PETイメージングに適した検出成分も又、核磁気共鳴技術により及びPET技術により検出可能な二重モードイメージング試薬を創出するために利用することができる。例えば、18F同位体は、PET検出法のための強力な標識である。フルオロカーボンイメージング試薬は、18F及び19F同位体の混合物を含むことができ、そうして、二重モード標識を与え、それは、MRI/MRS及びPETに適している。18F及び19Fは又、別々のモノマーにて加えて、混合されたコポリマーを形成することもでき、又は18F部分を直鎖状ポリエーテルの何れかの末端に、殆どの他の官能性成分が加えられる位置に局在化させることもできる。18Fは、NMRシグナルを有さず、それ故、例えば、NMRの線幅を減じ、NMRスペクトルを単純化し又は核磁気共鳴技術により得られる読み出しに悪影響を与える共鳴からの化学シフトを軽減する位置に加えることができる。加えて、フルオロカーボンイメージング試薬の分子は、有効なPETプローブである他の放射性同位体例えば11C、15O及び13Nを組み込むことができる。当業者は、この明細書の故に、この開示のイメージング試薬の末端基に組み込む(又は、例えば、結合させる)ことのできる多くの他のPET検出可能な成分を考案することができる。
【0061】
ある具体例において、直鎖状の過フルオロポリエーテルを、一端において、又は好ましくは両端において、比較的親水性の成分を用いて誘導体化することができる。例えば、この親水性成分は、ポリエチレングリコールであってよく、そうして、各末端に水溶性領域を有して中央に疎水性領域を有するトリ−ブロックコポリマーが形成される。水性環境で混合した場合に、この型のイメージング試薬は、水溶性コートで囲まれたPFPEコアと共にミセルを形成する傾向があろう。アミノ−PEGブロックは、ある分子量範囲のものが市販されている。PFPEコアを他の基例えば脂肪族アミン及びホスファチジルエタノールアミンと、親水性画分の代わりに結合させることは、異なる溶解度特性を有する誘導体を与えるであろう(WO2005072780参照)。
【0062】
ある具体例において、この開示は、細胞による取り込みに適しているイメージング試薬の配合物を提供する。適宜、イメージング試薬は、エマルジョンとして配合することができる。例えば、好適具体例において、標識配合物は、PFPEとPluronic−35又はF68を1:1のモル比で含む。フルオロカーボンイメージング試薬例えばPFPEを含むエマルジョンは、好ましくは、適当な細胞による取り込みを与える粒子サイズの分布を有する。ある具体例においては、均一な粒子サイズが有利でありうる。所望の程度の均一性の粒子サイズは、その応用によって変化しうる。例えば、平均粒子サイズが、10〜500nmの範囲に、好ましくは30〜150nmの範囲又は約350〜500nmの範囲に入ることは、一般に、望ましいであろう。適宜、これらの粒子の25%、50%、75%又はそれより多くが、やはり、選択した範囲内に入るであろう。粒子サイズは、例えば、光散乱法により又はEM顕微鏡写真を利用してエマルジョン粒子を可視化することによって評価することができる。ある比較的少量の細胞質を有する細胞型例えば殆どの幹細胞においては、好適な粒子サイズは、直径10〜50nmの範囲(適宜、直径100〜200nm)となろう。
【0063】
細胞における使用のためのエマルジョンは、好ましくは、広い温度範囲で安定であるべきである。好適エマルジョンは、体温(ヒトの場合、37℃)及び貯蔵温度例えば4℃又は室温(20〜25℃)で安定であろう。例えば、このエマルジョンを、冷たい温度で、2〜10℃での範囲で、好ましくは4℃で貯蔵し、その後、そのエマルジョンを室温(例えば、18〜28℃、一層典型的には20〜25℃)まで暖めることは、しばしば、望ましいであろう。細胞の標識後に、このエマルジョンを、約37℃にする。従って、好適なエマルジョンは、所望の粒子サイズの範囲を、冷蔵温度〜体温に及ぶ温度において保持する。
【0064】
これらのエマルジョンの特性は、主として、イメージング試薬自身の特性、界面活性剤及び/又は用いる溶媒の性質、そして処理装置の種類(例えば、ソニケーター、ミクロフルイダイザー、ホモジェナイザーなど)によって制御することができる。PFPEエマルジョンを形成する方法は、米国特許第5,330,681号及び4,990,283号に詳細に記載されている。ポリヒドロキシル化化合物例えば濃い水溶液中のポリアルコール及び糖類の連続相は、有効でありうる。次のポリアルコール及び糖類は、特に有効であることが判明した:グリセロール、キシリトール、マンニトール、ソルビトール、グルコース、フルクトース、サッカロース、マルチトール、グリセロールの二量体化合物(ジ−グリセロール又はビス(2,3−ジ−ヒドロキシプロピル)エーテル、糖としての固体の水溶性ポリヒドロキシル化化合物及びトリグリセロール及びテトラグリセロールとしてのグリセロール縮合生成物。エマルジョン中の分散は、カチオン性、アニオン性、両性の及び非イオン性界面活性剤を含む慣用の界面活性剤の存在下で行なうことができ、イオン性界面活性剤が好適である。適当な界面活性剤の例には、ラウリル硫酸ナトリウム、スルホスクシネート(スルホスクシニックヘミエステル)、ココ−アンホカルボキシグリシネート、セチルリン酸カリウム、アルキル−ポリオキシエチレン−エーテルカルボン酸ナトリウム、塩化ベンザルコニウムカリウム、アルキルアミドプロピルベタイン、セチル−ステアリン酸エトキシル化アルコール、及びソルビタン−エトキシレート(20)−モノ−オレエートツイーン20が含まれる。熱力学的法的式を利用して、所望の粒子サイズ及び安定性を有するエマルジョンを与えるであろうイメージング試薬の混合物の予想を試みることができるが、様々な混合物の実際の試験が最も有効であろうということが一般に受け入れられている。この混合物の乳化は、単純で且つ迅速であり、広範囲の組成物を迅速に試験して、ここに開示した方法での使用に適したエマルジョンを生じさせるものを同定する。
【0065】
好ましくは、エマルジョンは、被験者の細胞によるイメージング剤の取込みを容易にするようにデザインする。界面活性剤を、多量のPFPEを水相に運ぶ安定なエマルジョンを形成するようにデザインすることができる。加えて、それは、可能な最少インキュベーション時間でエマルジョン粒子の細胞内送達を増大させるという特性を有しうる。PFPEの細胞内充填を増大させることは、充填された細胞に対する感度を改善する。その上、培養時間を最少にすることは、一次細胞培養物を用いて研究する場合には、重要でありうる。細胞内取込みの効率は、細胞型に依る。例えば、マクロファージ及び幾つかの樹状細胞は、殆ど如何なる粒子でもエンドサイトーシスによって取り込むが、他の関心ある細胞型は、弱い食作用を有しうるだけである。何れの場合にも、取込み効率は、実質的に、界面活性剤を、エマルジョン粒子の表面が培養における細胞による取込みを促進する特性を有するようにデザインすることによって高めることができる(即ち、「自己送達」エマルジョン粒子)。このエマルジョン粒子の表面は、親油性にすることができ、適宜、カチオン性にすることができる(適当な表面デザインによって)。例えば、この界面活性剤は、脂質例えばカチオン性脂質、水中油エマルジョン、ミセル、混合ミセル、又はリポソームを組み込むことができ、これらは、これらは、細胞表面と結合し又は融合し、それにより、エマルジョン粒子の取込みを増進する傾向がある。送達用ビヒクルとしてイン・ビトロ及びイン・ビボで使うのに好適なコロイド系は、リポソーム(即ち、人工的な膜小胞)である。かかるシステムの製法及び利用は、当分野で周知である。適当なカチオン性脂質は、下記に記載されており、そっくりそのまま、本明細書中に援用する:Felgner等、1987, PNAS 84, 7413-7417; Eppstein等、米国特許第4,897,355号)、(Rose, 米国特許第5,279,833号;Eppand等、米国特許第5,283,185号;Gebeyehu等、米国特許第5,334,761号;Nantz等、米国特許第5,527,928号;Bailey等、米国特許第5,552,155号;Jesse, 米国特許第5,578,485号)。他のアプローチは、細胞への侵入を促進する界面活性剤ペプチド(例えば、オリゴ−Arg9及びTAT様ペプチド)、又は特異的な細胞表面分子を標的とする抗体への組込みを含む。加えて、ある具体例において、小さいカチオン性タンパク質を、この界面活性剤に組み込んで細胞の取込みを増進させることができる(例えば、プロタミンサルフェート)。プロタミンサルフェートは、細胞に対して非毒性であり、ヘパリンアンタゴニストとしてのヒトでの使用につきFDAの認可を有している。ある具体例においては、コロイド分散系が用いられる(例えば、巨大分子複合体、ナノカプセル、ミクロスフェア及びビーズ)。乳化フルオロカーボンの取込み(例えば、更なるトランスフェクション剤の利用又は電気穿孔法の利用によるもの)を増進するための他のアプローチは、本明細書中に記載されている。
【0066】
好適具体例において、エマルジョンは、「自己送達」性を有しており、取込み増進用の試薬を加える必要はない。該エマルジョンは、好ましくは、安定であり、数ヶ月又は数年の貯蔵寿命を有する。
【0067】
界面活性剤と取込み増進用試薬は、排他的グループを意味するものではなく、幾つかの場合には、それらは、重複しうるということは、理解される。
【0068】
3.細胞及び標識
ここに記載の方法は、原核細胞及び真核細胞(好ましくは、哺乳動物細胞)の両方を含む広範囲の細胞で利用することができる。細胞調製のための技術には、細胞培養、クローニング、核移植、遺伝子改変及びカプセル封入が含まれる。
【0069】
適当な哺乳動物細胞の部分的リストには、血液細胞、筋芽細胞、骨髄細胞、末梢血液細胞、臍帯血細胞、心筋細胞(及びその前駆細胞)、軟骨細胞(軟骨細胞)、樹状細胞、胎児神経組織、繊維芽細胞、肝細胞(肝細胞)、膵臓の島細胞、ケラチノサイト(皮膚細胞)及び幹細胞が含まれる。ある好適具体例においては、用いる細胞は、免疫細胞の分画された集団である。免疫細胞の認識された亜集団には、リンパ球例えばBリンパ球(Fcレセプター、MHCクラスII、CD19+、CD21+)、ヘルパーTリンパ球(CD3+、CD4+、CD8−)、細胞溶解性Tリンパ球(CD3+、CD−、CD8+)、ナチュラルキラー細胞(CD16+)、単核食細胞(単球、好中球及びマクロファージを含む)、及び樹状細胞が含まれる。他の関心を持ちうる細胞型には、好酸球及び好塩基球が含まれる。
【0070】
細胞は、自家細胞(即ち、同一個体に由来するもの)又は同系細胞(即ち、遺伝的に同一の個体例えば同質遺伝子的同腹子又は一卵性双生児に由来するもの)であってよい。もっとも、同種異系細胞(即ち、同じ種の遺伝的に異なる個体に由来する細胞)も又、企図される。一層好ましくはないが、異種細胞(即ち、レシピエントと異なる種に由来する細胞)例えばトランスジェニックブタに由来する細胞も又、投与することができる。ドナー細胞が異種性の場合には、それらの細胞を同一目内の種から得るのが好ましく、一層好ましくは、同一の超科又は科内の種から得るのが好ましい(例えば、レシピエントがヒトの場合、これらの細胞は、霊長類に由来するのが好ましく、一層好ましくは、ヒト超科のメンバーに由来するのがよい)。
【0071】
細胞は、医学的及び道徳的に適当な場合には、出生前(例えば、胚又は胎児)、幼児(例えば、ヒトの場合、誕生から約3年まで)、児童(例えば、ヒトの場合、約3〜13歳)、若者(例えば、ヒトの場合、約13〜18歳)、若い成人(例えば、ヒトの場合、約18〜35歳)、成人(ヒトの場合、約35〜55歳)又は高年者(例えば、ヒトの場合、約55歳以上)を含む如何なる発生ステージのドナー個体からでも得ることができる。
【0072】
多くの具体例において、細胞は、それらの細胞を、イメージング試薬のエマルジョンとその試薬が細胞によって取り込まれるように接触させることにより標識される。食細胞及び非食細胞の両方を、かかる方法によって標識することができる。例えば、WO2005072780に示されたように、樹状細胞(食細胞)及び神経膠肉腫細胞(非食細胞)の両方を、これらの細胞をイメージング試薬のエマルジョンと接触させることにより標識することができる。
【0073】
ある具体例において、これらの標識すべき細胞は、幹細胞である。幹細胞療法は、一般に、高い線量の照射及び/又は化学療法剤を伴う癌の治療のための切除養生法の部分として利用される。切除養生法は、一般に、例えば、末梢血、臍帯血又は骨髄から得られるような造血幹細胞、又は造血幹細胞を含む細胞集団を用いる。この型の細胞、又はその一部分を標識して、イン・ビボで追跡して、適当な位置での生存及び植付けをモニターすることができる。他の型の幹細胞は、広範な様々な病気の治療剤として、益々、魅力的となっている。
【0074】
例えば、細胞は、マウスの胚性幹細胞であってよく、又は他のモデル動物からのES細胞であってもよい。かかる細胞の標識は、かかるマウスに投与された細胞の運命の追跡において有用でありえ、適宜、胚性幹細胞治療法の開発のための前臨床的研究プログラムの部分として有用でありうる。マウスの胚性幹細胞の例には、M. Qiu等、Genes Dev 9, 2523 (1995)に記載されたJM1 ES細胞株、及びG. Friedrich, P. Soriano, Genes Dev 5, 1513 (1991)に記載されたROSA系統、及び米国特許第6,190,910号に記載されたマウスES細胞が含まれる。多くの他のマウスES系統は、Jackson Laboratories (メイン、Bar Harbor)から入手可能である。ヒトの胚性幹細胞の例には、次の供給者から入手可能なものが含まれる:Arcos Bioscience, Inc. (カリフォルニア、Foster City)、CyThera, Inc. (カリフォルニア、San Diego)、BresaGen, Inc. (ジョージア、Athens)、ES Cell International (オーストラリア、Melbourne)、Geron Corporation (カリフォルニア、Menlo Park)、Goteborg Unversity (スウェーデン、Goteborg)、Karolinska Institute (スウェーデン、Stockholm)、Maria Biotech Co. Ltd. - Maria Infertility Hospital Institute (韓国、Seoul)、MizMedi Hospital University (韓国、Seoul)、National Center for Biological Sciences/Tata Institute of Fundamental Research (インド、Bangalore)、Pochon CHA University (韓国、Seoul)、Reliance Life Sciences (インド、Mumbai)、ReNeuron (英国、Surrey)、StemCells, Inc. (カリフォルニア、Palo Alto)、Technion Unversity (イスラエル、Haifa)、Unversity of Califormia (カリフォルニア、San Francisco)、及びWisconsin Alumni Research Foundation (ウィスコンシン、Madison)。加えて、胚性幹細胞の例は、次の米国特許及び公開された特許出願に記載されている:6,245,566;6,200,806;6,090,622;6,331,406;6,090,622;5,843,780;20020045259;20020068045。好適具体例において、これらのヒトES細胞は、国立衛生研究所から提供される認可された細胞株のリストから選択され、http://escr.nih.gov.にてアクセス可能である。ある好適具体例において、胚性幹細胞は、次を含む群から選択される:J.Thomson博士(Univ. of Wisconsin)から得られるWA09系統及びUC01及びUC06系統(両方とも、現在、NIHに登録されている)。
【0075】
ある具体例において、開示した方法において使用するための幹細胞は、神経又は神経内分泌系起源の幹細胞例えば中枢神経系由来の幹細胞(例えば、米国特許第6,468,794号;6,040,180号;5,753,506号;5,766,948号参照)、神経冠由来の幹細胞(例えば、米国特許第5,589,376号;5,824,489号参照)、嗅球または末梢神経組織由来の幹細胞(例えば、公開された米国特許出願第20030003574号;20020123143号;20020016002号及びGritti等、2002 J Neurosci 22(2):437-45参照)、脊髄由来の幹細胞(例えば、米国特許第6,361,996号、5,851,832号参照)又は神経内分泌系細胞系統例えば副腎、下垂体又は消化管のある部分に由来する幹細胞(例えば、米国特許第6,171,610号及びKimura等、1994 J. Biol. Chem. 269:18961-67に記載のPC12細胞参照)である。好適具体例において、神経幹細胞は、末梢組織又は容易に治癒組織から得られ、それにより、自家細胞集団が移植のために提供される。
【0076】
造血幹細胞又は間充織幹細胞は、ある開示した方法で用いることができる。最近の研究は、骨髄由来の造血幹細胞(HSC)及び間充織幹細胞(MSC)(これらは、容易に単離することができる)が、以前に認められていたよりも一層広い分化の潜在能力を有することを示唆している。精製したHSCは、血中のすべての細胞を生じさせるだけでなく、肝細胞のような通常内胚葉から生じる細胞に発生することもできる(Krause等、2001, Cell 105:369-77; Lagasse等、2000 Nat Med 6: 1229-34)。同様に、末梢血由来の及び臍帯血由来のHSCは、有用な発生潜在能力のスペクトルを与えることが期待される。MSCは、同様に、多分化能性であるようであり、例えば、神経細胞のマーカーを発現することのできる子孫を生じる(Pittenger等、1999 Science 284: 143-7; Zhao等、2002 Exp Neuro 174: 11-20)。造血幹細胞の例には、米国特許第4,714,680号;5,061,620号;5,437,994号;5,914,108号;5,925,567号;5,763,197号;5,750,397号;5,716,827号;5,643,741号;5,061,620号に記載されたものが含まれる。間充織幹細胞の例には、米国特許第5,486,359号;5,827,735号;5,942,225号;5,972,703号、PCT公開番号WO00/53795;WO00/02654;WO98/20907に記載されたもの、及びPittenger等及びZhao等(前出)に記載されたものが含まれる。
【0077】
幹細胞株は、好ましくは、哺乳動物例えばゲッ歯類(例えば、マウス又はラット)、霊長類(例えば、サル、チンパンジー又はヒト)、ブタ、及び反芻動物(例えば、ウシ、ヒツジ及びヤギ)、並びに好ましくはヒトから得る。ある具体例において、幹細胞は、自家起源又はHLA型のマッチした起源から得る。例えば、幹細胞は、膵臓ホルモン産生細胞を必要とする被験者(例えば、インスリン産生細胞を必要とする糖尿病患者)から得て、培養して、自家インスリン産生細胞を生成することができる。他の幹細胞の起源は、被験者から容易に得ることができる(例えば、筋肉組織からの幹細胞、皮膚(真皮又は上皮)からの幹細胞及び脂肪からの幹細胞)。
【0078】
幾つかの好適具体例において、ヒトへの投与のための細胞は、米国食品医薬品局(FDA)又は他の国の同等の取締り部局により設定された良好な組織プラクティスガイドラインと合致するべきである。かかる細胞株を開発する方法は、ドナーを試験すること、及び非ヒト細胞及び産物への曝露を避けることを含みうる。
【0079】
ドナーに由来する細胞(適宜、患者がドナーである)は、分画した細胞又は分画してない細胞として投与することができる(送達される細胞の目的により指示される)。細胞を分画して、投与前にある細胞型を富化させることができる。分画の方法は、当分野で周知であり、一般に、正の選択(即ち、特定の特性に基く細胞の保持)と負の選択(即ち、特定の特性に基く細胞の排除)の両方を含む。当業者には明らかであるように、正及び負の選択に用いられる特定の特性(例えば、表面マーカー)は、所望の細胞集団に依存する。細胞の選択/富化に利用される方法には、イムノアフィニティー技術又は密度遠心法が含まれうる。イムノアフィニティー技術は、当分野で周知のように、様々な形態をとることができるが、一般に、抗体又は抗体誘導体を幾つかの種類の分離技術と組み合わせて利用する。この分離技術は、一般に、抗体が結合した細胞と抗体が結合しなかった細胞の物理的分離を生じるが、幾つかの例では、抗体が結合した細胞を殺すこの分離技術を、負の選択のために利用することができる。
【0080】
使用するために選択した細胞の選択/富化のために、蛍光活性化細胞ソーティング(FACS)、パニング、免疫磁気分離、イムノアフィニティークロマトグラフィー、抗体媒介の補体結合、イムノトキシン、密度勾配分離などを含む任意の適当なイムノアフィニティー技術を利用することができる。このイムノアフィニティー工程における処理後に、所望の細胞(正の選択の場合のイムノアフィニティー試薬が結合した細胞、及び負の選択の場合のイムノアフィニティー試薬が結合しなかった)を集めて、更に数回のイムノアフィニティー選択/富化にかけるか又は患者への投与のために保存する。
【0081】
イムノアフィニティー選択/富化は、典型的には、所望の細胞型を含む細胞調製物を抗体又は抗体由来のアフィニティー試薬(例えば、所定の表面マーカーに特異的な抗体)とインキュベートしてから、結合したアフィニティー試薬を利用して、抗体が結合した細胞を選択し又はそれとは逆に選択することにより行なわれる。この選択工程は、一般に、物理的分離例えば単一細胞を含む液滴を結合したアフィニティー試薬の有無によって異なる容器に振り向けることにより(FACS)、固相基質に結合した(直接又は間接に)抗体を利用することにより(パニング、イムノアフィニティークロマトグラフィー)、又は磁場を利用して、磁性粒子に結合した細胞をアフィニティー試薬により集めること(免疫磁気的分離)により達成しうるものを包含する。或は、望ましくない細胞を、調製物から、細胞傷害をアフィニティー試薬が結合した細胞に生じさせるアフィニティー試薬を利用して、排除することができる。この細胞傷害は、アフィニティー試薬(例えば、補体結合)によって活性化することができ、又はアフィニティー試薬(例えば、イムノとキシン例えばリシンB鎖)によって標的細胞に局在化することができる。
【0082】
ここに開示した方法は、細胞をイン・ビボでモニターするために頻繁に用いられることが予想されるが、これらの方法論は、培養物中の、組織試料中の又は他のエキソ・ビボ細胞材料中の細胞をモニターするためにも同様に有効であることには注意すべきである。治療のための利用については、細胞を、患者への投与のための調製の、所望の工程で標識することができる。
【0083】
様々な方法を利用して、細胞をイメージング試薬で標識することができる。一般に、細胞は、イメージング試薬と接触して置かれ、それで、そのイメージング試薬がその細胞と結合される。条件は、しばしば、細胞の生存を維持するためにデザインされた標準的細胞培養条件である。用語「結合される」は、イン・ビボ又はイン・ビトロで、イメージング試薬と細胞が十分に近い物理的近位に、イメージング試薬が細胞の位置について有用な情報を提供することを可能にするのに十分な時間にわたって維持される任意の方法を包含することを意図している。イメージング試薬は、例えば食作用又は界面活性剤の媒介により細胞内に入った後に、細胞内に位置されうる。免疫細胞例えば樹状細胞、マクロファージ及びT細胞は、しばしば、高度に食作用を示し、ここに提示するデータ及び他の研究におけるデータは、かかる細胞及び他の食作用性細胞型が容易に標識されることを示している。他の細胞型例えば幹細胞も又、食作用活性に関係なく標識することができる。イメージング試薬は、細胞膜に挿入され得て、又は共有結合若しくは非共有結合によって細胞の細胞外成分に結合されうる。例えば、ここに記載のある直鎖状フルオロカーボンは、少なくとも一つのターゲティング成分に結合するように誘導体化することができる。ターゲティング成分は、イメージング試薬の、標識すべき細胞との結合を促進するように選択される。ターゲティング成分は、フルオロカーボンの細胞膜への非特異的挿入を引き起こすようにデザインすることもできるし(例えば、疎水性アミノ酸配列又は他の疎水性成分例えばパルミトイル成分又はミリストイル成分)又は非特異的に細胞に入るようにデザインすることもできる。ターゲティング成分は、レセプターリガンドの場合などは、細胞表面成分に結合することができる。ターゲティング成分は、特異的結合対のメンバーであってよく、そのパートナーは、細胞表面成分である。このターゲティング成分は、例えば、レセプターのリガンド、又は抗体例えばモノクローナル抗体若しくはポリクローナル抗体若しくは免疫グロブリンの可変部分を含む様々なポリペプチド結合剤(例えば、Fv断片、一本鎖Fv(scFv)断片、Fab'断片、F(ab')2断片、単一ドメイン抗体、キメラ化抗体、ヒト化抗体、ディアボディー、トリボディー、テトラボディー)であってよい。
【0084】
フルオロカーボンエマルジョンによる細胞標識は又、細胞送達を助成するトランスフェクション剤を利用して促進することもできる。しばしば、トランスフェクション剤は、カチオン性脂質、カチオン性リポソーム、ポリカチオンなどよりなる。このトランスフェクション剤は、フルオロカーボンエマルジョン標識剤と予備混合され、それにより、それは、エマルジョン粒子と結合し又はそれらの粒子をコートする。これらのトランスフェクション剤処理されたエマルジョン粒子は、その後、培養細胞に加えられて、インキュベートされ、それで、その細胞は標識される。一般的なトランスフェクション剤には、リポフェクタミン(Invitrogen, Inc)FuGene、DOTAP(Roche Diagnostics, Inc.)、及びポリ−L−リジンが含まれる。小型タンパク質たとえば多種類のプロタミンも又、トランスフェクション剤として利用することができる。プロタミンは、殆どの脊椎動物の精子の核中の主要なDNA結合タンパク質であり、DNAを、体細胞核の5%未満の体積に納めている。プロタミンは、低分子量の単純タンパク質であって、アルギニンに富み、強塩基性である。市販のプロタミンは、サケ及び他の種の魚の精子に由来するものである。用語「プロタミン」は、ここで用いる場合、低分子量カチオン性の、アルギニンリッチなポリペプチドを指す。このプロタミン分子は、典型的には、約20〜200アミノ酸を含み、一般に、少なくとも20%、50%又は70%のアルギニンを含むことを特徴とする。プロタミンは、しばしば、少なくとも一つの対イオンを有する塩(例えば、硫酸塩、リン酸塩及び塩化物)として配合される。
【0085】
この出願において提供するデータは、プロタミン(例えば、プロタミンサルフェート)が、PFPEフルオロカーボンエマルジョン粒子の培養細胞への送達に大いに有効であることを示している。適当なプロタミンサルフェートは、様々な起源(例えば、サケ、ニシン、マスなど)に由来しえて、様々な等級及び形態のものがあり(例えば、USP、II、III、X等級など)、ヒストンを伴うもの及び伴わないもの又は任意の組換え誘導体がある。トランスフェクション剤として利用することのできる他のプロタミン溶液の例には、プロタミンホスフェート、プロタミンクロリド、プロタミンサルフェート−2、プロタミンサルフェート−3、プロタミンサルフェート−10、及びプロタミン遊離塩基が含まれる。
【0086】
細胞の電気穿孔を利用して、フルオロカーボンエマルジョン粒子を細胞に送達することができる。電気穿孔は、標識が非常に迅速な工程であり、トランスフェクション剤の使用を必要としないという利点を有している。細胞の電気穿孔の多くの方法が、この分野では広範な細胞型について公知であり、幾つかの市販の電気穿孔用器具が入手可能である(例えば、BTX, Inc., Harvard Apparatus, Inc, Amaxa Biosystems, Inc.など)。電気穿孔法を利用して、核酸、分子、及び小さい粒子をイン・ビトロで細胞内に送達する。マグネトエレクトロポレーションは、細胞培養物におけるMRIに有効であることが示されている(Walczak P., Magn Reson Med. 2005. 10月;54(4):769-74)。この出願におけるデータは、細胞の電気穿孔法が、直鎖状PFPEフルオロカーボンエマルジョン粒子の樹状細胞への送達に有効であることを示しており、同方法を、多くの他の食作用性及び非食作用性細胞型例えば幹細胞をフルオロカーボン標識するために用いることには何の障害もない。
【0087】
細胞を治療養生法で用いる場合には、細胞の送達のために、注射及び様々な器官で細胞を移植するための特殊な器具を含む様々な方法が、利用されてきた。本発明は、如何なる特定の送達方法にも縛られない。ここに与えたデータは、標識された細胞が、特定の部位に直接送達されるか又は全身に送達されるかに関係なく、モニターされうることを示している。例えば、標識したDCは、組織内への焦点移植又は静脈注射後に、上首尾にイメージ化され、T細胞は、腹腔内注射後に、イメージ化された。細胞を、被験者への注射又は移植により導入を容易にする送達用デバイスに挿入することができる。かかる送達用デバイスには、細胞及び液体をレシピエント披験者の身体に注入するためのチューブ例えばカテーテルが含まれうる。好適具体例において、これらのチューブは、更に、この開示の細胞を被験者に所望の位置で導入することのできる針を有する(例えば、注射器)。これらの細胞は、様々な異なる形態での送達のために調製することができる。例えば、これらの細胞は、溶液又はゲルに懸濁させることができ、又は支持体マトリクスに包埋することができる(そのような送達用デバイスに含まれる場合)。細胞は、この開示の細胞が生存し続ける製薬上許容しうるキャリアー又は希釈剤と混合することができる。製薬上許容しうるキャリアー及び希釈剤には、塩溶液、緩衝剤水溶液、溶剤及び/又は分散媒が含まれる。かかるキャリアー及び希釈剤の利用は、当分野では、周知である。この溶液は、好ましくは無菌の液体である。好ましくは、この溶液は、製造条件下及び貯蔵の条件下で安定であり、微生物例えば細菌及び真菌の汚染に対して、例えばパラベン、クロロブタノール、フェノール、アスコルビン酸、チメロサールなどの利用によって保護されている。この開示の溶液は、ここに記載の細胞及び、必要であれば、上記の他の成分を製薬上許容しうるキャリアー又は希釈剤に混合し、その後、フィルター殺菌することにより調製することができる。
【0088】
4.核磁気共鳴技術
ここに記載のように、核磁気共鳴技術を利用して、標識した細胞の集団を検出すことができる。用語「検出する」は、標識された分子又は細胞の存否を、特に核磁気共鳴技術によって確認するための任意の努力を含むように用いられる。用語「検出する」は又、定量測定及び2又は3次元イメージの生成を含む一層複雑な測定を含むことも意図される。例えば、MRIを利用して、かかる細胞のイメージを生成することができる。多くの例において、標識された細胞を生きている被験者に投与することができる。これらの細胞の投与後に、被験者の幾らかの部分又は全被験者を、MRIにより試験して、MRIデータセットを生成することができる。「データセット」は、ここで用いる場合、被験者材料の磁気共鳴プロービング中に集めた生のデータ、獲得パラメーター並びに生データから処理され、トランスフォームされ又は抽出された情報を含むことを意図している。この生データは、MRI/MRSにより得られる一過性のシグナルを含み、これらは、遊離の誘導減衰、スピン−エコー、誘導エコー及び/又は勾配エコーを含む。処理された情報の例には、被験者材料の二次元又は三次元画像表現が含まれる。この処理された情報は又、マグニチュードイメージ、リアル及びイマジナリーイメージ並びに関連相マップイメージをも含みうる。他の抽出されたデータは、被験者材料中のイメージング試薬又は19Fシグナルの濃度量を表すスコアである。被験者材料中の19Fシグナルの量及び細胞予備移植当たりのイメージング試薬の平均量の較正を利用することにより、この被験者材料中の細胞の絶対数を評価することができる。被験者材料中に存在する19Fシグナルは、多くの方法により表し又は計算することができ;例えば、関心ある領域(ROI)についての19Fシグナルの平均シグナル対ノイズ比(SNR)を測定して、標識細胞の豊富さを計算するために利用することができる。ある具体例においては、19Fシグナルの平均強度、又はピクセル又はボクセルワイズの合計を用いて、標識細胞の豊富さを計算することができる。この型のデータは、被験者の単一領域例えば脾臓又は標識細胞と特に関連のある他の器官に集めることができる。標識細胞は、被験者における以外のコンテキストで試験することができる。標識細胞を培養物において試験することは望ましいであろう。ある具体例において、標識細胞を、組織試料に加え又はその試料中で生成させることができ、それ故、標識細胞をそれらのコンテキストにおいてもイメージ化することができる。例えば、再移植すべき器官、組織又は他の細胞材料をイメージング試薬と接触させて標識細胞を生成してから、かかる被験者に移植することができる。
【0089】
一般に、この開示の標識剤は、慣用のMRI検出システムにおける使用のためにデザインされている。最も普通のMRIの実施においては、被験者材料中の可動性の水の分子中の水素の核(プロトン、1H)が観察される。ここに開示した標識を検出するためには、別の核19Fが検出される。19F MRIは、1Hと比較して固有感度が僅かに低いだけで;相対的感度は、約0.83である。両者とも、+1/2の核スピンを有している。19Fの天然の同位体の豊富さは、100%であり、これは、1Hについての99.985%に匹敵する。これらの検出及びイメージ形成の背後の物理的原理は、1Hと19F MRIの両者について同じである。被験者材料は、大きい静磁場中に置かれる。この場は、1Hと19F核に関連する磁気モーメントを場の向きに整列させる傾向がある。これらの核は、ラーモア振動数でのパルス化高周波(RF)照射によって動揺され、それは、核が共鳴によりエネルギーを吸収する磁場強度についての特徴的周波数割合である。RFの除去に際して、その核は、一過性の電圧をレシーバーアンテナ中に誘導し;この一過性の電圧が核磁気共鳴(NMR)シグナルを構成する。空間的情報は、大きな静的場に重ね合わされる磁場勾配の選択的適用によって、周波数及び/又はNMRシグナルの位相の両方にコード化される。これらの一過性の電圧は、一般に、デジタル化され、次いで、それらのシグナルは、例えば、コンピューターを利用することにより処理されてイメージを生じうる。
【0090】
一定の磁場強度で、19Fのラーモア振動数だけが、1Hと比較して僅かに低い(約6%)。従って、慣用のMRIスキャナーを適合させて、19Fのデータを得ることは簡単なことである(ハードウェア及びソフトウェアの両方とも)。19Fの検出は、種々の型の磁気共鳴スキャン例えばMRI、MRS又は他の技術と結合させることができる。典型的には、1H MRIイメージを得ることは、19Fイメージと比較して望ましいであろう。生きている生物体又は他の生物学的試料において、プロトンMRIは、被験者材料のイメージを与え、19Fイメージで検出された標識された細胞の解剖学的コンテキストを限定することを可能にするであろう。この開示の好適具体例において、データは、19F及び1Hの両者について同じセッションで集められる(被験者は、これらの獲得中、2つのデータセットが空間描写にあることをより良く確認するために、動かされない)。通常、19F及び1Hデータセットは、何れかの順序で、順次的に得られる。RFコイル(即ち、アンテナ)を構築することができ、それは、電気的に、19F及び1Hラーモア振動数から調和されうる。これらの2つの振動数の調和は、手作業で行なうことができるし(例えば、電気機械式可変コンデンサー又は誘導体による)、又は電気的に、活性な電子回路により行なうことができる。或は、MRI装置のハードウェア及び/又はソフトウェアに対する適当な改変によって、両データセットを、同時に得て、イメージング時間を節約することができる。19F及び1Hデータセットの同時の獲得は、電気的に同時に19F及び1Hラーモア振動数に調和させることのできるRFコイル(即ち、二重調和コイル)又はアンテナを必要とする。或は、RFコイルは、両方(即ち、19F及び1H)のラーモア振動数をカバーする一つの広く調和した電気的共鳴を有する「ブロードバンド」であってよい。他のイメージング技術例えば蛍光検出を19F MRIと結合することができる。これは、フルオロカーボンイメージング試薬が蛍光成分により誘導体化されている場合に、特に望ましい。他の具体例において、19F MRIスキャンは、同じ被験者又は患者において、二重モデルの放射性18F/19Fフルオロカーボン標識試薬を上記のように利用することにより、PETスキャンと組み合わせることができる。
【0091】
MRI試験を、当分野で公知の任意の適当な方法論に従って行なうことができる。多くの異なる種類のMRIパルス配列、又はデータのコレクションを編成するためのMRI装置により用いられる指示のセット、及びシグナル処理技術(例えば、フーリエ変換及び投影再構成)が、イメージデータを集めて処理するために、数年間にわたって開発されてきている(例えば、Magnetic Resonance Imaging, 第三版、D.D. Stark 及びW.G. Bradley編、Mosby, Inc., ミズーリ、St. Louis 1999参照)。この開示のこれらの試薬及び方法は、如何なる特定のイメージングパルス配列又は生のNMRシグナルのプロセッシング方法にも縛られない。例えば、この開示に適用することのできるMRI方法は、広く、スピン−エコー、誘導エコー、勾配エコー、自由誘導減衰ベースのイメージング及びこれらの任意の組合せを包含する。速いイメージング技術は、k空間内の一本より多い線又はk空間の大きいセグメントが各励起シグナルから得られる場合には、19F(又は、1H)のデータを得るのにも速くて適している。速いイメージング技術の例には、速いスピン−エコーアプローチ(例えば、FSE、ターボSE、TSE、RARE又はHASTE)、エコー−平面イメージング(EPI)、組み合わされた勾配エコー及びスピンエコー技術(例えば、GRASE)、スパイラルイメージング、及びバーストイメージングが含まれる。その上、当分野で公知の減じたk空間サンプリングを利用する迅速獲得のスキームは、19Fイメージングに非常に適している(例えば、鍵穴イメージング、単一値分解コード化、減じたイメージング、生成したシリーズ再生を利用、RIGRなど)。理想的には、これらのサンプリングスキームにおいて、k空間の中央部分のみが得られ、そこに、殆どの19Fシグナルが存在している。たとえ幾らかの端の解像度の損失が起きえても、しばしば、低解像度の19Fイメージだけが必要とされ、1Hイメージのオーバーレイは、微細な解剖学的詳細を与える。新しい、改善されたパルス配列及びシグナル処理方法の開発は、連続的に発展している分野であり、当業者は、19F標識細胞をそれらの解剖学的コンテキストにおいてイメージ化するための多重式方法を工夫することができる。
【0092】
核磁気共鳴技術の他の例として、MRSを利用して、局所的組織又は器官におけるフルオロカーボン標識された細胞の存在を検出することができる。通常、MRS法は、慣用のMRIスキャナーにて実行される。しばしば、この局在化された関心ある体積(VOI)は、慣用の解剖学的1H MRIスキャン内で規定される。続いて、このVOI内で観察された19F MRIシグナルの等級を、直接、標識細胞の数及び/又は組織若しくは器官に存在する細胞当りのPFPEの平均濃度に関連付ける。遥かに大きい被験者内のVOIを単離する方法は、当分野で周知である(例えば、Magnetic Resonance Imaging, 第三版、第9章、D.D. Stark及びW.G. Bradley編、Mosby, Inc.,ミズーリ、St. Louis 1999)。例には、VOIの近くでの局所的RF表面コイルの利用、表面を傷めること、表面コイルB1−勾配法、スライス−選択的B0−勾配技術、STEAM、PRESS,イメージ選択的イン・ビボ分光学(ISIS)、及び磁気共鳴分光イメージング(MRSI)が含まれる。新しい改良されたパルス配列及びシグナル処理法の開発は、MRSに関しては連続的に発展しており、当業者は、多重化方法を工夫して、VOI中のフルオロカーボン標識された細胞から発せられる19F NMRシグナルを検出することができる。
【0093】
ある具体例において、この開示は、ROI内の標識された細胞数を、イン・ビボで又は被験者材料において定量する方法を与える。ROIは、被験者内のすべての標識細胞を含むことができ若しくは特定の器官例えば膵臓、特異的組織例えばリンパ節内の標識細胞を含むことができ、又は検出可能なMRI/MRS 19Fシグナルを示す一以上のボクセルの任意の領域を含むことができる。或は、ROIは、特定の実験を越えて不確定の領域であってよい。上記のように、被験者材料において又はイン・ビボで、標識細胞を定量することのできる幾つかの方法がある。
【0094】
特定の細胞集団の移植前に、19F標識剤の平均「細胞投与量」を較正することは、しばしば、被験者材料又は患者における細胞の定量的測定に、前以て必要である。種々の細胞型が、標識剤をイン・ビトロで取り込む生得的な異なる能力を有し、それ故、標識剤の細胞投与量も変化するということが予想される。その上、種々の起源(例えば、異なる患者)から得られた同じ細胞型の異なる細胞は、標識剤に対する異なる親和性を有しうる。従って、細胞投与量の較正は、必要でありうる。この較正は、最初、標識プロトコール(即ち、インキュベーション条件、細胞を標識用フルオロカーボンエマルジョンとインキュベートする期間、標識中の培養培地中のフルオロカーボンエマルジョンの濃度など)を改変して、標識した細胞を実際にイメージ化すべき被験者において用いる前に、細胞投与量のある範囲を達成するために利用することができる。或は、標識条件及びプロトコールを固定して、イメージ化すべき被験者におけるその後の定量のために、細胞当りの19F標識された平均値を測定することができる。ある具体例において、標識細胞集団の細胞当りの19F分子の平均数(F’s)をイン・ビトロで測定し(即ち、較正し)、その後、それらの細胞を被験者又は患者に投与する。ある具体例においては、標識細胞集団の細胞当りの19F分子の平均数(F’s)を、特定の種類の細胞の試験集団(必ずしも、患者に向けられていないが、特定の標識プロトコール又は条件の組に従って、適宜、細胞投与量の値を将来、同じ細胞型集団で同じ標識プロトコールを用いて標識及びイン・ビボイメージング実験で用いる標識剤の細胞投与量を較正するのに用いられる)において較正する。
【0095】
標識剤の細胞投与量を、イン・ビトロで、様々な定量技術を利用してアッセイすることができる。例えば、既知の数の標識細胞の細胞ペレット、細胞懸濁液又は細胞溶解液から得られる一次元(1D)19F NMRスペクトルを利用することができる。このスペクトルから、19Fスペクトル又はその一部分の統合領域を計算することができる(細胞に結合した標識試薬に由来する)。19Fスペクトルの統合領域(Scellsで示す)は、直接、細胞ペレット、上清又は溶解物中の19Fの全量と比例する。19F核の絶対数を測定するために、測定されたScells19F基準に対して規格化することができる。19F基準は、例えば、既知の体積及び濃度のフルオロ化学薬品の溶液であってよく、この基準中の19F核の全数(Fstan で示す)を計算することができる。適当なフルオロ化学薬品参照基準は、理想的には、単純な19F NMRスペクトルを、好ましくは、単一の狭い共鳴(例えば、トリフルオロ酢酸又はトリフルオロエタノール)及び適宜19F化学シフト(標識用フルオロカーボンとは有意に異なるもの)を有する。19F標準は、測定される標識細胞材料と同じNMRチューブ中、別個のチューブ中に置くことができ、適宜、別々の実験において、同じNMR器具を用いて測定することができる。次いで、この19F標準由来のスペクトルの統合領域(Sstan で示す)を、測定することができる。その後、標識細胞当たりの19Fの平均数(Fcで示す)を、例えば下記式を用いて計算することができる:
【数2】

(式中、Ncellsは、イン・ビトロ試験試料に含まれる標識された細胞の数である)。この較正手順の例は、本明細書中の実施例に記載されている。19F及び他の核についての定量的NMR法は、当分野で周知であり、当業者は、上記の細胞投与量の較正手順に多くの変化を考案することができる。19F NMRに加えて、標識試薬の細胞投与量のアッセイに利用することのできる他の定量的方法がある。例えば、試薬を、蛍光標識、化学発光標識又は適宜放射性標識することができる。
【0096】
19F MRI/MRSデータセットから標識細胞の正確な定量を抽出するために、更なる較正及び標準を採用することができる。例えば、較正された外部19F参照基準(即ち、ファントム)を、標識細胞を含む被験者材料の19F MRI/MRSスキャン中利用することができる。この較正されたファントムのイメージ強度を、19F MRI/MRSデータセットを分析する場合に利用して、19F核の数についての絶対的標準を与える(被験者材料又は患者を試験する場合)。この較正されたファントムを利用して、イメージ化すべき特定の被験者に課した特定のMRI/MRSシステムの感度を規格化する。この19F参照基準は、例えば、既知濃度の19F核の溶液を含む一つ以上の容器であってよい。好適具体例において、この溶液は、希釈濃度の乳化フルオロカーボン標識剤を含む。適宜、この溶液は、乳化してないフルオロカーボン標識剤、ゲル、又は液体(適当な溶剤で希釈されたもの)を含む。適宜、この溶液は、他のフルオロ化学薬品、理想的には、単純な19F NMRスペクトルを、好ましくは、単一の狭いNMR共鳴(例えば、トリフルオロ酢酸(TFA)又はトリフルオロアセタミド(TFM)及び他のフッ素化酸)有するものよりなってよい。好適具体例において、この参照溶液のT1及びT2値は、標識試薬のものと類似している。適宜、この溶液は、過フルオロカーボン標識した細胞又はその溶解物を含むことができる。非細胞性参照基準は、貯蔵期間が一層長いという利点を有する。適宜、この溶液を、ゲルの形態とすることができる。この溶液を含む容器は、好ましくは、密閉可能であり、様々な幾何学的形態をとりうる(好ましくは、容器の幾何学的形態は、楕円体、円筒形、球形、及び並行管形状を含む)。19F参照溶液を含む一つ以上の容器を、被験者材料の19F MRI/MRS中に利用することができる。もし多数の19F参照溶液(即ち、容器)を用いるならば、それらは、同じ19F濃度又は異なる濃度を含むことができ、後者の場合には、それらは、理想的には、等級付けられた濃度のフルオロ化学薬品を含む。較正した19F参照容器を、好ましくは、イメージ化される被験者又は患者の外即ちそばに、又は適宜内部に位置させてから、データを得る。好適具体例においては、この参照溶液は、19F MRIを被験者に沿って同じイメージ視野(FOV)内で利用して、イメージ化することができる。適宜、19F MRSデータが、この参照にて、順次的に又は被験者データセットと並行して得られる。適宜、この参照基準からのデータは、別々のスキャンで得られたMRI/MRSを利用して得ることができる。適宜、この外部参照基準は、各19F MRI/MRS試験において、被験者に沿ってスキャンされず、むしろ、MRI/MRSを利用して得られた参照基準19Fシグナル強度の値を利用する(匹敵する被験者又は刺激された被験者のスキャンに由来)。所定の19F MRI/MRSスキャンにおいて、較正された19F標準は、一以上のボクセルによりサンプルすることができる。一のボクセルにより生成される観察できる19F強度は、溶液(又は、ゲル)の、このボクセル体積のフルオロ化学薬品の濃度に比例しうる。しばしば、19F MRIスキャンにおいて、この参照標準は、多くのボクセルよりなる。しばしば、参照標準中の、一の、幾つかの又はすべてのボクセルの平均強度を計算する。適宜、この平均イメージ強度は、参照標準の19Fイメージ内で規定されたROIにわたって計算される。適宜、この参照標準容器の物理的幾何学形状は、観察された19Fシグナル強度の限定に寄与する(例えば、この19F参照溶液を含む体積コンパートメントは、ボクセル体積よりも小さい)。他の具体例において、この較正された外部参照基準は、既知数の検出可能な1Hの1Hシグナル強度を含む溶液に依存する。この場合、被験者材料中の19Fシグナルの強度は、1H較正された標準への照合である。理想的には、1H較正された参照基準(上記の容器に含まれる)において、この溶液又はゲルは、単純な1H NMRスペクトルを、好ましくは、単一狭いNMR共鳴を生じる(例えば、H2O、又はH2O−D2Oの混合物)。異なる核以外では、1H標準の利用は、多くの他の面において、19F参照基準について上記したものと同じである。幾つかの具体例において、幾つかの具体例において、1H参照基準は、内部器官又は組織の領域であり、そのデータは、生であり又は規格化されうる。適宜、較正された参照標準は、任意の他のMRI/MRS活性核を含む。他の具体例において、この参照基準は、被験者によりスキャンされないが、関連因子例えば患者の体重又は体腔の大きさによって較正される標準である。
【0097】
19F MRI/MRSデータセットからのパラメーターの鍵となるセットをコンピューターにより操作し又は合わせることによって、ここに記載のようにROI内に存在する標識細胞の数を計算することができる。例えば、パラメーターの鍵となるセットは、(i)イン・ビトロで測定された標識剤の細胞内投与量(即ち、Fc);(ii)標識細胞投与後の一以上の時点において被験者に取り込まれたイン・ビボの19F MRI/MRSデータセット;(iii)ボクセル体積;(iv)平面内のボクセル領域(即ち、イメージピクセルの領域);(v)随意の、19F参照基準からのMRI/MRSデータセット;(vi)随意の、被験者材料における19F MRI/MRSデータの測定されたジョンソンノイズ;(vii)随意の、患者材料における19F MRI/MRSデータセットの一以上のボクセルの測定されたシグナル対ノイズ比(SNR);(viii)随意の、参照基準からの19F MRI/MRSデータセットの一以上のボクセルの測定されたSNR;(ix)随意の、被験者材料の19F NMRの緩和時間(T1、T2及びT2*);(x)随意の、参照基準の19F NMRの緩和時間(T1、T2及びT2*)を含むことができる(例えば、Magnetic Resonance Imaging, 第三版、第4章、D.D. Stark及びW.G. Bradley編、Mosby, Inc., ミズーリ、St. Louis 1999参照)。当業者は、他のパラメーター、上記の組の組合せ、又はこれらの誘導物を、特に、19F MRI/MRSデータセットから引き出すことができ、それを利用して、イン・サイチューで標識された細胞の数を定量することができる。ある具体例において、鍵となるパラメーターの上記の組を利用して、標識された細胞の正確な又は信頼できる測定数の定量的又は統計的測定を得ることができる。
【0098】
鍵となるパラメーター(上記のi−x)、これらの任意の部分集合、又はそれらの組合せ若しくは近似値を組み合わせて、Ncにより示される患者材料における19F MRIにより観察される標識された細胞の有効数を評価する多くの方法がある。例えば、下記の形式の方程式を利用することができる
【数3】

(式中、Nc=RIO中の標識された細胞の総数;[FR]=較正された19F基準溶液(又は、ゲル)中の19Fの濃度;v=ボクセル体積;IR=MRI/MRSスキャン、平均された一以上のボクセルにより得られ、較正された19F基準の平均強度;Fc=イン・ビトロで測定した標識剤の平均19F細胞投与量;NROI=標識した細胞を含むROI中のボクセルの数;Ic(i)=標識した細胞を含むROI中のi番目ボクセルのイメージ強度;i=標識した細胞を含むROI中のボクセルの単位なしインデックス)。
【0099】
19FデータセットからNcを近似するための多くの方法もある。例えば、下記の式を利用することができよう
【数4】

(式中、Icavgは、標識細胞を含むROIの平均強度である(即ち、NROIボクセルの平均強度))。他の例として、下記を利用することができよう
【数5】

(式中、Vcは、標識細胞を含むROIの全体積である)。更なる例として、下記を利用することができよう
【数6】

(式中、VRは、19F MRI/MRS中の参照基準の有効体積であり、NRは、VR中の19F核の数である)。上記のすべての式のうちで、様々な強度(即ち、IR、Icavg、Ic(i))は、イメージノイズに対して規格化されうるものであり、従って、上記の式は、特定の領域について適当なSNR値によって同等に表されうるということに注意されたい。従って、標識された細胞の数Ncを評価するための多くの方法があり、これらの基礎的式の多くの類似の形態は、基礎的数学的操作によって誘導することができるが、すべては、(i〜x)に記載したインプットパラメーター内に含まれる同じ基礎的内容に依存している。その上、ROI中の標識された細胞の定量は、絶対数又は有効細胞数によって表す必要がない。ROI中の細胞の量を示す他の定量的インデックスを誘導することができる。例えば、比Icavg/IR、又はROI中で観察された平均SNR値と参照基準との比を計算することができる(これらのすべては、上記の式及び/又はパラメーターの部分集合内に入る)。ある具体例においては、見かけのPFPE標識された細胞の量は、イン・ビボMRIデータセット、外部19F参照基準、及び測定されたFc(この計算は、スライスベースで行なわれる)から直接計算される。
【0100】
上記の細胞数及び関連するインデックスの分析は、フルオロカーボン標識の19F NMR緩和時間(即ち、特に、T1及び/又はT2)が、較正された19F参照標準中の物質と凡そ同じであることを仮定しているということは、注意される。これらの緩和時間が匹敵しないという場合には、当業者は、容易に、これを、用いている特定のイメージングプロトコールの公知のMRI強度方程式を用いることによって正すことができる(T1及びT2により表される)。
【0101】
適宜、被験者材料の19F MRIデータセットは、実際の細胞定量の計算を実施する前に、後処理を受けうる(上記の通り)。例えば、後処理アルゴリズムは、19Fデータセットの「ノイズ除去」を含むことができる。これは、例えば、低い強度のノイズを削除するようにイメージの閾値を設定することによって達成することができる(これは、イメージ強度を、低い値がゼロにセットされるように設定し直すことを含む)。等級MRIイメージ、ランダムジョンソンノイズは、しばしば、イメージFOVを横切って明らかに不均一に分布される。真の正のシグナルを含んでいない(即ち、19F及び/又は1H核を欠いている)ことが知られた領域が強度がなく又は殆どなく見えるように、低レベルのイメージ強度を閾値の外に出すことができるということは、当分野では周知である。このプロセスは、この目的のための様式(即ち、「手作業で」又は視覚的検査)で行なうことができ、又はコンピューターアルゴリズムを利用することにより行なうこともできる。他の具体例において、データセットのノイズ除去は、他のアルゴリズムを利用することにより、例えばウェーブレット分析又はRician修正(21)を利用することにより達成することができ、当分野では、イメージのノイズ除去のための多くの方法が公知である。下記の参考文献を、そっくりそのまま、本明細書中に援用する:Khare, A.等、INTERNATIONAL JOURNAL OF WAVELETS MULTIRESOLUTION AND INFORMATION PROCESSING, 3(4):477-496 DEC 2005; Cruz-Enriquez, H.等、IMAGE ANALYSIS AND RECOGNITION, 3656: 247-354 2005; Awate, SP.等、INFORMATION PROCESSING IN MEDICAL IMAGING, PROCEEDINGS, 3565: 677-688 2005; Ganesan, R.等、IIE TRANSACTIONS, 36(9): 787-806 SEP 2004; Scheunders, P., IEEE TRANSACTIONS ON IMAGE PROCESSING, 13(4): 475-483 APR 2004; Ghugre, NR., MAGNETIC RESONANCE IMAGING, 21(8): 913-921 OCT 2003; Bao, P.等、IEEE TRANSACTIONS ON MEDICAL IMAGING, 22(9): 1089-1099 SEP 2003; Wu, ZQ.等、ELECTRONICS LETTERS, 39(7): 603-605 APR 3 2003; LaConte, SM等、MAGNETIC RESONANCE IN MEDICINE, 44(5): 746-757 NOV 2000; Laine, AF., ANNUAL REVIEW OF BIOMEDICAL ENGINEERING, 2: 511-550 2000; Zaroubi, S.等、MAGNETIC RESONANCE IMAGING, 18(1): 59-68 JAN 2000; Nowak, RD., IEEE TRANSACTIONS ON IMAGE PROCESSING, 8(10): 1408-1419 OCT 1999; 及び Healy, DM.等、ANNALS OF BIOMEDCAL ENGINEERING, 23(5): 637-665 SEP-OCT 1995。
【0102】
他の型の後処理アルゴリズムは、当分野で公知であり、定量の前後で、19F MRIデータセットに適用することができ、例えば、zero-filling (A Handbook of Nuclear Magnetic Resonance, 第二版、Ray Freeman, Addison Wesley Longman Press 1997)及び various image interpolation, de-noising, 及び image smoothing algorithms (例えば、The Image Processing Handbok, 第三版、John C. Russ, CRC Press/IEEE Press参照)が公知である。
【0103】
ある具体例において、鍵となるパラメーターの上記のセット(i〜x)を利用して、標識細胞の測定数の又は関連インデックスの、正確な又は信頼できる、定量的又は統計的測定を誘導することができる。19F MRI/MRSデータセットは、しばしば、ROI内でSNR限界に当たり、それ故、測定の信頼性又は精度の計量を計算することは、しばしば有用である。MRI及び他の生物医学的イメージの統計的分析のための多くの方法は、当分野で公知である。クレームした態様は、これらの公知の方法を包含するものと理解される。
【0104】
5.コンピューターによる方法
標識細胞を定量する方法は、典型的には、コンピューターの補助を受けて行なわれ、かかる定量の目的のためにデザインされたソフトウェアを作動させることができる。かかるソフトウェアは、スタンドアロンプログラムであってもよいし、又は他のソフトウェアに組み込まれるものであってもよい(例えば、MRIイメージ処理プログラム)。図16は、
この開示の説明のための具体例に従ってコンピューター機能を実施するための、一般的な目的のコンピューターシステム200の機能的ブロックダイヤグラムを示している。典型的なコンピューターシステム200は、中央処理ユニット(CPU)202、メモリ204及びインターコネクトバス206を含む。CPU202は、単一のマイクロプロセッサーを含むか、又はコンピューターシステム200をマルチプロセッサーシステムとして構成するために複数のマイクロプロセッサーを含む。メモリ204は、説明上、メインメモリとリードオンリーメモリを含む。コンピューター200は又、大容量記憶装置208をも含み、これは、例えば、様々なディスクドライブ、テープドライブなどを有する。メインメモリ204は又、ダイナミックランダムアクセスメモリ(DRAM)及び高速キャッシュメモリをも包含する。操作においては、このメインメモリ204は、CPU202による実行のための指示及びデータの少なくとも部分を保存している。
【0105】
大容量記憶装置208は、CPU202による使用のためのデータ及び指示を保存するための、少なくとも一の磁気ディスク若しくはテープ用ドライブ又は光ディスクドライブを含むことができる。大容量記憶システム208の少なくとも一つの構成要素は、好ましくは、ディスクドライブ又はテープドライブの形態であり、この開示の細胞定量の処理のために用いられるデータベースを保存する。この大容量記憶システム208は又、様々な携帯用媒体例えばフロッピー(登録商標)ディスク、コンパクトディスクリードオンリーメモリ(CD−ROM)、又は集積回路不揮発性メモリアダプター(即ち、PC−MCIAアダプター)のための一以上のドライブを、コンピューターシステム200へのデータ及びコードの入出力のために、含むこともできる。
【0106】
コンピューターシステム200は又、通信のためのに、インターフェース210のような、ネットワーク212を介したデータ通信のための、一以上の入出力インターフェースを含むこともできる。データ用インターフェース210は、モデム、イーサネット(登録商標)カード又は任意の他の適当なデータ通信用デバイスであってよい。コンピューターの機能を与えるために、データ用インターフェース210は、ネットワーク212(例えば、イントラネット、インターネット、又はザ・インターネット)への比較的高速度のリンクを与えることができる(直接又は他の外部インターフェースを介して)。このネットワーク212への通信リンクは、例えば、光、ワイヤ、又はワイヤレス(例えば、サテライト又はセルラーサテライト経由)であってよい。或は、コンピューターシステム200は、ネットワーク212を介してWebベースの通信ができるメインフレーム又は他の型のホストコンピューターシステムを含むことができる。
【0107】
コンピューターシステム200は又、適当な入出力ポートをも含み又は、プログラミング及び/又はデータ回復目的のための局所的ディスプレー216及びキーボード214又は同様の局所的なユーザーインターフェースに役立つものとの相互接続のためのインターコネクトバス206を利用する。或は、サーバー操作職員は、このシステム200と、システムを制御し及び/又はプログラムするために、離れた端末装置からネットワーク212を介して相互作用することができる。
【0108】
コンピューターシステム200は、様々なアプリケーションプログラムを動かすことができ、関連データを大規模記憶システム208のデータベースに保存することができる。一以上のかかるアプリケーションは、定量に関するサーバー機能を実行するために、サーバーとして運転することを可能にするメッセージの受け取り及び送達を可能にすることができる。
【0109】
このコンピューターシステム200に含まれるこれらの構成要素は、サーバー、ワークステーション、パーソナルコンピューター、ネットワーク端末などとして用いられる一般的目的のコンピューターシステムにおいて典型的に見出されるものである。事実、これらの構成要素は、当分野で周知であるかかるコンピューター構成要素の広いカテゴリーを表すことを意図している。この開示のある面は、実行可能コードなどのソフトウェア要素及び定量システムのサーバー機能のためのデータベースに関係しうる。
【0110】
この開示は、下記の実施例を参照することにより、一層容易に理解されよう。それらは、単に、本願のある面及び具体例の説明を目的とするものであり、この開示を制限することを意図したものではない。
【実施例】
【0111】
WO2005072780に提示されたデータは、免疫細胞及び他の細胞型の細胞が、エキソ・ビボで、フルオロカーボンイメージング試薬を用いて容易に標識されうること及び標識された細胞をイン・ビボで検出することができることを示した。この節では、開示した方法の更なる実行可能性を示すデータを提供し、それには、標識細胞のイン・ビボでの定量を示すデータが含まれる。その全体的スキームは、図1にまとめてある。この開示の典型的具体例は、フッ素ベースのイメージング試薬を利用して、培養細胞を標識する。標識した細胞を、図2に示したように、生きている被験者に導入して、19F MRI又はMRSを利用して、イン・ビボで追跡する。19F MRIイメージは、1H MRIイメージと重ね合わされて、図2、9A及び13に示したように、標識細胞の解剖学的位置を確立する。これらの実施例においては、被験者のROI中の標識細胞の定量を、ROIの19F強度及び較正された外部19F参照基準を利用して測定する。
【0112】
1.エマルジョンの調製
1:1モル比の、図3cに示したPFPE(Exfluor, テキサス、Round Rock)分子とPluronic L−35(Sigma-Aldrich, ミズーリ、St. Lois)よりなる標識用配合物を調製した。PFPEと水をオートクレーブにかけ、Pluronic L−35は、0.22μmフィルターを通して無菌を確実にした。この混合物を、氷上で、プローブソニケーションにより乳化した。標準的手段を利用する光散乱を、乳化生成物上で行なって、図3dに示したように、粒子サイズ分布を確認した。動的光散乱を、Malvern Zetasizer Nano ZS (Malvern Instruments, 英国、Worcestershire)器具を利用して行なった。これらのナノ粒子は、103±4nmの平均直径を有している。
【0113】
2.細胞の標識
T細胞を、マウスの脾臓から抽出して、脾臓細胞の単独細胞懸濁液を、MACSpanT細胞単離用キット(Miltenyi Biotec, カリフォルニア、Auburn)を利用して保存した。(更なる詳細については、実施例6を参照されたい。) T細胞を、それらを、抗TCR、抗CD−28及びIL−2でコートしたプレート中で3日間インキュベートすることにより標識する前に活性化した。これらの細胞を、10%ウシ胎児血清(FBS)、100μg/mlのストレプトマイシン及びペニシリンを含み、10μg/mlのIL−2及び1μl/mlの2−メルカプトエタノールを補ったRPMI中に維持した。その後、細胞を採取して、新鮮な培地に2百万/mlで再懸濁させた。2μlのPFPEエマルジョンと8μlのFuGene6(Roche, Inc., インディアナ、Indianapolis)を、300μlのFBSフリーの培地中で20分間混合することによって、標識を用意し、細胞懸濁液に2μl標識/ml細胞で加えて、3時間標識した。細胞を、PBSで、2回洗い、300μlのHBSSに再懸濁させてから、被験者に投与した。4〜8百万の細胞を、各実験に用いた(n=6)。
【0114】
図3aに示した19F NMRを利用して、細胞標識を確認し、標識試薬の細胞内投与量(即ち、Fc又は「細胞投与量」)を定量した。図3aは、活性化され、標識されたT細胞の19F NMRスペクトルを示している。直鎖状PFPE分子のスペクトルは、−92ppmの主要CF2ピークと−79ppmのCF2末端基(図3c)からのマイナーピークの2つのピークを有している。これらのピークのスペクトルの重みの比は、10:1であり、一般に、このマイナーピークは、イン・ビボでのMRIの検出能より低い。−76ppmの第三のピークは、シールしたキャピラリー内のTFA参照基準からのものである。我々は、細胞当たりの平均19F含有量(Fc)を、2.2×1013の標識後フッ素原子であると計算した。これらの標識細胞の共焦点顕微鏡観察は、PFPE標識の分布が細胞内であること及び細胞表面にもあることを確認した(図3b)。
【0115】
FuGene以外に、多くの他のトランスフェクション剤を利用して、多くの細胞型のPFPE標識を高めることができる。図4bは、T細胞がリポフェクタミン(Invitrogen, Inc., カリフォルニア、Carlsbad)及びDOTAP(Roche)でも標識されうることを示している。図4aに示した他の例においては、DCの標識は、小型のカチオン性タンパク質、プロタミンサルフェートの助成によって高めることができ、標識結果は、リポフェクタミンで達成しうるのと同じオーダーの等級を与えている(図4a)。図4に示した例において、19F含有量は、標識細胞ペレットの統合した19F NMRスペクトルを利用してアッセイした(値は、細胞数及び細胞ペレットの次に位置するTFA参照基準に対して規格化した)。
【0116】
トランスフェクション剤の利用の代わりとして、細胞の電気穿孔法を利用して、PFPE標識を高めることができる。図5aは、培養中にPFPEエマルジョン粒子を電気穿孔されたペレット化DCの19NMRスペクトルを示している。図5bに示したように、電気穿孔電圧などの電気穿孔パラメーターを変えることにより、細胞に内在化される標識の量を組織的に変えて最適化することができる。上記のように、19F含有量は、標識細胞ペレットの統合した19F NMRスペクトルを利用してアッセイした(値は、細胞数及び細胞ペレットの次に位置するTFA参照基準に対して規格化した)。これらの電気穿孔実験においては、市販の装置を利用した(ECM830、BMX, Inc., マサチューセッツ、Holliston)。電気穿孔前に、DCをHBSSに再懸濁させ、それで、各試料は、キュベットにおいて、700μl中に約100〜160万細胞を有した。このPFPEエマルジョン(2μl/ml)を直接キュベットに加えた。図5bに示したデータに関して、単一の20μsの電気穿孔パルスを用いた。このパルスの1分後に、1mlの培養培地を加えて、試料を、氷上に約10分間維持した。その後、これらの細胞をPBSで2回洗って、過剰の(即ち、取り込まれなかった)PFPEを除去した。
【0117】
3.19F標識は、細胞の挙動に影響しない
T細胞の標識を、最大取込み及び最少細胞傷害性のために最適化した。標識の取込みは、19F NMRにより測定し、細胞傷害性は、標準的アッセイ例えばトリパンブルー排除及びMTTアッセイにより測定した。標識したT細胞の生存力及び表現型を確認するために、我々は、幾つかのイン・ビトロアッセイを実施した。標識した細胞の生存力(標識直後にトリパンブルーを利用してアッセイ)は、未処理対照に対して94±3.7%の生存力を示した。エラーバーは、n=6ウェルについての標準偏差であり;標識後48時間で、これらの細胞は、95±6%の生存力を示した(n=3)。MTTアッセイ(ATCC、バージニア、Manassas)を、標識後2及び4時間で採取したT細胞アリコートにおいて行なった。データは、未処理対照に対して規格化した。標識した細胞は、図6に示したように、MTTにおいて、対照に対して最少の減少を示した。従って、これらのデータは、この標識工程が、何ら明白な傷害性を引き起こさないことを示唆している。加えて、細胞傷害性のないことは、トリパン排除アッセイ及び直接細胞計数によって確認された。
【0118】
この標識工程自体はT細胞を活性化しないことを確認するために、我々は、細胞表面マーカーCD62L及びCD4の発現をネイティブなBDC2.5T細胞にて、標識後に調べた。CD62L、レクチン結合タンパク質(リンパ球の回転を助成する)は、ネイティブなT細胞上でのみ高レベルで発現される。我々は、未処理細胞と比較しての最少のダウンレギュレーションを、CD62Lの標識細胞における発現において見出し(図7a)、これは、標識がネイティブなT細胞を活性化しないことを示している。CD4、コレセプター(MHCII分子と相互作用する)は、ネイティブなT細胞と活性化されたT細胞の両方で発現される。CD4発現のレベルは、このトランスフェクション剤を利用する標識の直後に低下したが、24時間以内に回復した(図7b)。この一過性のダウンレギュレーションの原因を一層理解するために、T細胞を、電気穿孔法により、トランスフェクション剤を用いずに標識した。電気穿孔法を利用する標識の直後にはCD4発現の低下はなく(図7c)、これは、この効果が、おそらく、トランスフェクション剤の使用によるアーティファクトであることを示している。
【0119】
イン・ビトロ保持研究は、この標識が、少なくとも24時間保持されることを示した。この標識の細胞内局在化は、電子顕微鏡観察により確認された。
【0120】
標識細胞の、イン・ビボでの、正しい細胞ホーミング及び機能を、蛍光顕微鏡観察を利用して確認した(図8)。これを試験するために、我々は、T細胞の膵臓への浸潤を、I型糖尿病モデルにおいて調べた。すべてのイン・ビボ実験について、我々は、再現可能な糖尿病誘導を生じることが示されている(22、23)確立された養子移入法を用いた。BDC2.5T細胞(約4×106)を精製し、イン・ビトロで活性化し、PFPE標識して、レシピエントのNOD SCIDマウス(Jackson Labs, メイン、Bar Harbor)に腹腔内注射した。このNOD BDC−2.5トランスジェニック動物中のすべてのT細胞は、特異的β細胞顆粒タンパク質由来のペプチドだけを認識する。NOD BDC2.5T細胞の養子移入は、NOD SCIDマウスにおいて糖尿病を引き起こすことが知られている。すべてのマウスは、8〜10週齢であり、各マウスは、約500万の標識細胞を受けた。対照用マウスは、同等量の標識(緩衝液中)を受けた。すべてのNOD SCIDマウスは、PBS中の200mg/kgのシクロホスファミド(Sigma Aldrich)を、細胞移入の24時間前に、腹腔内注射された。
【0121】
図8は、PFPE標識した細胞が、膵臓に向かうことができることを確実にするものであり、この標識方法がイン・ビボで細胞機能を邪魔しないことを示している。注射された細胞は、予想通り、島及び血管又はそれらの周囲でのみ見ることができた。これは、単に膵臓内の細胞に蓄積するのではなく、特異的に島に向かうことを示唆している。これらの顕微鏡写真は又、強いCD4+免疫染色をも示しており、これは、強いCD4発現レベルを意味している。この膵臓で検出されたすべてのT細胞は、NOD SCIDマウスは、内因性リンパ球を欠くので、標識されて移入されたものである。
【0122】
4.イン・ビボでの細胞の追跡
イン・ビボでの、MRI実験を利用して、標識された細胞が、適当な器官(例えば、膵臓)で検出されうることを確認した。トランスジェニックNOD BDC2.5マウスから精製したT細胞を、上記のように、イン・ビトロで活性化して標識し、宿主のNOD SCIDマウス(Jackson Labs, メイン、Bar Harbor)に腹腔内注射により移入させた。すべてのマウスは、8〜10週齢であり、各マウスは、300〜800万の標識細胞を受けた。対照用マウスは、同等量の乳化PFPE(緩衝液中)を、細胞なしで、受けた。すべてのNOD SCIDマウスは、200mg/kgのシクロホスファミド(CY)を、細胞移入の24時間前に、腹腔内注射により、受けた。
【0123】
動物を、細胞移入の48時間後にイメージ化した。MRIの前に、マウスを麻酔して、挿管し、機械的人工呼吸装置に接続した。PBS1ml当たり1018のフッ素原子を含むPFPEエマルジョンからなる19F参照基準を含むキャピラリーチューブを、イメージの視野内で、動物の次に置いた。MRIを、11.7T、89mm垂直の穴を開けたミクロイメージングシステム(Bruker Instruments, Inc., マサチューセッツ、Billerica)を利用して行なった。19Fイメージが、RAREシーケンス(TR/TE=1000/6.4ms、RARE因子8、164×32イメージポイント、スライス厚2mm)を利用して、得られた。その後すぐに、1Hイメージングを、2DFTスピン−エコーシーケンス(TR/TE=1200/22ms、512×256イメージポイント、19Fと同じ幾何学的座標)を利用して行なった。すべてのイン・ビボのイメージングは、呼吸ゲート制御され、動物の温度は、37℃に維持された。
【0124】
代表的な19F/1H複合イメージを、図9aに示してある。アンダーレイとして役立つ解剖学的T2重み付き1Hイメージ(グレースケール)が、同じ幾何学形状のスライスを用いて、19Fと同じイメージングセッションで得られた。胴体の19Fイメージは、膵臓と一致する一領域内の局在化されたシグナルを示している(擬似カラー、図9a)。肝臓及び脾臓を含む何れの他の領域においても、シグナルは検出されず、これは、これらの細胞がそれらの器官によって有意の数だけ取り込まれないことを示している。その上、循環に残っていた細胞又は低濃度で他の器官若しくは組織に局在化された細胞は、検出されていない。如何なる他の領域においてもシグナルが完全にないということは、膵臓への特異的交通を示しており、それは、イン・ビボでの予想された免疫学的応答である。
【0125】
検出されたシグナルが、特異的なT細胞のホーミングのためであることを確認するために、我々は、2つの対照用イン・ビボMRI実験をNODモデルにおいて行なった。これらは、無細胞のPFPEナノ粒子又は非特異的な標識T細胞の腹腔内注射を用いた。48時間後のイメージング結果(図9b)は、膀胱内又はその付近での無細胞PFPEからの19Fの蓄積を示しているが、膵臓ではそういうことはない。第二の対照実験は、MHCミスマッチのBALB/cマウスからの、精製した非特異的CD4+T細胞を用いた。T細胞は、MHCのコンテキストで抗原を認識するので、BALB/cT細胞は、NODマウスにおいて特異的ホーミングを行なうことは予想されない。図9cは、48時間後に、膵臓又はその周囲で19Fが検出されなかったことを示している。
【0126】
5.イン・ビボMRIによる定量
イン・ビボ19F MRIデータを利用して、我々は、関心ある領域内に移入された細胞の有効数を定量するためにアルゴリズム(実施例6参照)を適用した。図9dは、動物(n=4)からの膵臓における細胞定量結果の概要を示している。検出された見かけのT細胞の数は、移入された全細胞の凡そ1.5〜3.4%に及んだ(図9d)。この同齢集団について検出された細胞の平均数は、移入された全細胞の2.2±0.9%であり、不確定性は、標準偏差である(n=4)。イン・ビボでの平均細胞密度は、この膵臓では、約28,000細胞/ボクセルであった。
【0127】
我々は、独立に、標識細胞の膵臓へのホーミングの量を、摘出した器官において、高解像度の19F NMR分光法で確認した(図10)。このマウスを、MRIスキャン後に、犠牲にして、膵臓及び他の器官を採取して固定した。図10aは、無傷の、摘出した膵臓からの19F NMRスペクトルを示している。膵臓の19F NMRピークの下の面積(同じNMRチューブ中のTFA参照基準試料に関して測定)は、この器官内の全19F含有量を与える。これらの膵臓において、この同齢集団についてNMRを用いて検出された細胞の平均数は、移入された全細胞の2.9±0.3%であった(不確定性は、n=4についての標準偏差である)。従って、この摘出した器官においてNMRにより得られた平均細胞数は、イン・ビボ19F MRIを用いて得られる値と一致する。摘出した脾臓は、MRIデータに見られるように、最少の19F NMRシグナルを示した(図10b)。
【0128】
MRI細胞定量法の精度の更なる確認として、我々は、アガロース中に懸濁させた既知の密度の固定した標識T細胞を含むファントムをイメージ化した。図11aは、このファントムの複合19F/1Hイメージ及び19Fイメージを示しており;このイメージは、イン・ビボデータ(図9a)につき用いたのと同じパラメーターを用いて得られた。キャピラリーAの隣りに見られる「ゴースト」は、高度に濃縮された参照基準キャピラリーRからのCF2末端基の化学シフトによるアーティファクトである。我々は、ボクセル当たりの見かけの細胞数を、19F MRイメージから、イン・ビボデータについて用いたのと同じ方法を用いて直接計算した。測定された結果は、キャピラリーA、B、C、D及びEにつき、それぞれ、120、80、43、18及び5.7(×103)細胞/ボクセルである(図11b)。ピアソン相関係数は、ボクセル当たりの実際の細胞数と比較した場合、0.98であった。全体的に、このファントム実験は、凡そ7,500細胞/ボクセルの最少細胞検出限界で、これらの定量法の妥当な精度を示した。
【0129】
6.実施例1〜5のための方法
標識の合成及び特性表示
PFPEエマルジョンを、1:1モル比のオートクレーブした過フルオロポリエチレングリコール(分子量約1500、Exfluor, テキサス、Round Rock)と無菌のフィルター処理したPluronicL35(Sigma-Aldrich, ミズーリ、St. Louis)を用いて調製した。乳化を、プローブソニケーションにより、Sonifier Cell Disruptor (Misonix Inc., ニューヨーク、Farmingdale)を用いて行なった。平均エマルジョン粒子直径は、Malvern Zetasizer Nano ZS 器具 (Malvern Instruments, 英国、Worcestershire)を用いる動的光散乱によって、103±4nmであると測定された。蛍光性PFPEエマルジョン粒子を、2μl PFPEエマルジョン、ジメチルスルホキシド(1μl)に溶解させた1μg ジアルキルカーボシアニン染料(DiI, Molecular Probes-Invitrogen, カリフォルニア、Carlsbad)、8μl FuGENE6(Invitrogen)及び100μl Roswell Park Memorial Institute(RPMI)培地を混合することにより調製した。
【0130】
T細胞の精製、活性化及び標識
BDC2.5TCRトランスジェニックマウス由来のT細胞を、脾臓細胞の単一細胞懸濁液から、磁気細胞ソーティング(MACS)パンT細胞単離用キット(Miltenyi Biotec, カリフォルニア、Auburn)を用いて精製した。細胞を、10% ウシ胎児血清(FBS) (Gibco, カリフォルニア、Carlsbad)、各100μg/mlのストレプトマイシン及びペニシリン、並びに1μl/mlの2−メルカプトエタノールを含むRPMI(Gibco, カリフォルニア、Carlsbad)中で増殖させた。細胞を、イン・ビトロで、抗TCR抗体をコートしたプレート上で、1μg/ml 抗CD28及び10U/ml IL−2の存在下で3日間インキュベーションすることによって活性化させた。その後、細胞を採取して、新鮮な培地に、2×106/mlで再懸濁させた。PFPEエマルジョン(2μl)を、8μlのFuGENE6(Roche, インディアナ、Indianapolis)トランスフェクション剤と、300μlのFBSフリーの培地中で20分間予備混合し;この混合物を、細胞懸濁液に2μl/mlで加えて、3.5時間インキュベートした。細胞を、リン酸緩衝塩溶液(PBS)で2回洗い、接種前に300μlのハンクス液(HBSS)中に再懸濁させた。或は、電気穿孔法による細胞標識を、5×106のT細胞のアリコートに対してHBSS中で行なった。一方向性の80mVの、20msの長さのパルスを、BTX830電気穿孔機(Harvard Apparatus, マサチューセッツ、Holliston)により送達した。その後、細胞を、培地の添加及び37℃での4時間の更なるインキュベーションの前に、氷上で、10分間インキュベートした。
【0131】
細胞の傷害性、増殖及び表現型
細胞の生存力を、メチルトリアゾールテトラゾリウム(MTT)アッセイ(ATCC、バージニア、Manassas)を、製造業者の指示に従って利用して測定した。細胞のアリコートを、標識後、2、4及び48時間でアッセイした。標識細胞の細胞傷害性も又、トリパンブルー排除アッセイを利用して評価した(細胞のアリコートをトリパンブルーと混合してから、血球計で計数した)。蛍光活性化細胞ソーティング(FACS)分析のために、細胞を、フルオレセインイソチオシアネート(FITC)又はフィコエリトリン(PE)結合したCD4及びCD62Lに対する抗体(PharMingen, カリフォルニア、San Diego)を用いて染色した。これらのマーカーの発現レベルを、LSRII FACS装置(Becton Dickinson, カリフォルニア、Mountain View)におけるフローサイトメトリーによって測定した。
【0132】
マウス糖尿病モデル
実験を、Carnegie Mellon Institutional Animal Care and Use Committee (IACUC)及び National Institute of Health Guide for the Care and Use of Laboratory Animalsにより与えられたガイドラインに従って行なった。NOD SCID及びBALB/cマウスを、Jackson Laboratriesから購入し、NOD BDC2.5マウスは、血統内で繁殖させた。すべてのマウスを、ピッツバーグ大学又はカーネギーメロン大学の生物医学研究用のピッツバーグNMRセンターの動物施設に収容した。養子移入実験のために、NOD BDC2.5マウスの脾臓由来の精製したT細胞をイン・ビトロで活性化し、標識して、宿主のNOD SCIDマウスに腹腔内注射(i.p.)により移入した。レシピエントマウスは、細胞移入の24時間前に、PBS中の200mg/kgのシクロホスファミド(Sigma-Aldrich)で予備処理(i.p.)した(20)。すべてのマウスは、8〜10週齢であり、各マウスは、2〜6×106の標識細胞を受けた(i.p.)。
【0133】
イン・ビボ対照実験を、正確に同じ方法で実施した。但し、マウスは、HBSS中の無細胞PFPEを、約1×107の標識T細胞と同等の19F投与量で受け又はMHCミスマッチのBALB/cマウス由来の標識された活性化T細胞を、BDC2.5T細胞の代わりに受けた。
【0134】
光学顕微鏡検査
イン・ビトロで活性化したT細胞を、蛍光性エマルジョン調製物(上記)とインキュベートして、2回洗った。T細胞を、ポリ−L−リジンコートされたカバーガラス上で30分間インキュベートしてから、1% パラホルムアルデヒド(PFA)で固定した。それらの固定した細胞を、RNアーゼ処理後に、10μg/ml TOTO−3核染料(Molecular Probe-Invitrogen)を含むVectaShield(Vector Labs, カリフォルニア、Burlingame)マウンティングメディウムにてマウントした。その後、これらのスライドを、Leica TCS SP2分光共焦点顕微鏡(Leica Microscopes, Inc., ペンシルベニア、Exton)を用いてイメージ化した。
【0135】
PFPE標識したNOD BDC2.5T細胞を受けたNOD SCIDマウスに由来する膵臓の組織切片も又、調製した。このマウスを、細胞移入の48時間後に、2% パラホルムアルデヒド(PFA)で潅流して、その膵臓を摘出して、2% PFAに浸した。凍結切片(6μm)をスライドガラス上にマウントし、染色して、Olympus BX51 顕微鏡(Olympus America, Inc., ペンシルベニア、Center Valley)にて検分した。細胞核を、4’−6−ジアミジノ−2−フェニルインドール(DAPI)を用いて染色し、且つアクチンをファロイジンで染色した。T細胞を、ラットの抗マウスCD4一次抗体(Pharmingen-BD Biosciences, カリフォルニア、San Jose)及びヤギの抗ラットCy3二次抗体(Jackson ImmunoResearch Laboratories, Inc., ペンシルベニア、West Grove)を利用して、免疫染色した。インスリンを、抗インスリンウサギポリクローナル抗体(Santa Cruz Biotechnology, Inc., カリフォルニア、Santa Cruz)及びヤギ抗ウサギCy5二次抗体(Jackson ImmunoResearch Laboratories, Inc.)を利用して染色した。
【0136】
NMR
すべての19F NMR測定は、Bruker DRX500分光計(Bruker BioSpin, Inc., マサチューセッツ、Billerica)を用いて、470MHzで行なった。細胞当たりの平均の細胞内19F投与量、Fcを、1×106の標識細胞をNMRチューブ内でペレット化することによって測定した。このNMRチューブは又、5μlの5%v/vトリフルオロ酢酸(TFA)を含む小さいシールされたキャピラリーをも含み、これは、較正された19Fスピンの量を与える。Fcを計算した。このFcを、PFPEとTFAスペクトルの統合した面積の比から計算した。全器官のNMRのために、MRIの直後にマウスを犠牲にして、これらの器官を採取して4% PFAで48時間固定した。これらの固定した器官を、TFA19F参照基準溶液を含むシールされたキャピラリーをも含むNMRチューブに入れた。すべての19Fスペクトル(記した場合を除く)を、8sのリサイクルディレイ、12μsパルス幅、20kHzのスペクトル幅、256平均、2048獲得点、及び90°のフリップ角を利用して得た。
【0137】
MRI
イメージング前に、マウスを、ケタミン/キシラジンカクテルで麻酔し、IPカテーテルを縫合糸で固定し、実験の持続期間(2〜3時間)にわたってマウスに追加のカクテルを注入するためのシリンジポンプに接続した。最大総投与量約0.33mgのケタミン及び0.02mgのキシラジンを、インクリメンタルステップ−ダウン投与量プロトコールにて送達した。スキャン中、このマウスを保温して、機械式ベンチレーター(Harvard Apparatus Inc., マサチューセッツ、Hilliston)に接続し、これは、2:1のO2/NO2を送達する。マウスをクレードル中に位置させて、11.7T、89mm垂直孔ミクロイメージングシステム(Bruker)を用いてイメージ化した。大きな鳥かご型共鳴器を用いたが、これは、19Fについての470MHz又は1Hについての500MHzを調べることができる。このマウスの温度を、動物クレードルを囲む水充填ジャケット(調節された閉サイクルの水浴に接続されている)を用いて、35〜37℃に維持した。希釈PFPEエマルジョンを含むシールされたチューブを、イメージ視野内で、胴体の隣りに置いて、較正された外部19F参照基準とした。19Fイメージを、増大された緩和による迅速な獲得(RARE)シーケンスを、8に等しいRARE因子、TR/TE=1000/6.4ms、64×32イメージ点及び50kHzのバンド幅で利用して得た。1Hイメージを、2DFTスピン−エコーシーケンスを、TR/TE=1200/22ms及び512×256イメージ点で利用して得た。19F及び1Hの両者につき、正確に同じ座標で、胴体内の8個の隣接した2mm厚のスライスを得た。この視野は、すべての獲得につき、5×2.8cmであった。全MRI励起物を、呼吸ゲート制御した。
【0138】
このMRIによる細胞定量法を確認するために、我々は、PBS中の2%アガロースに懸濁された、異なる密度の標識T細胞を含む5mmのキャピラリーを含むファントムを構築した。用いた細胞密度は、87.0、43.5、21.9、10.8及び5.4細胞/nlであった。これは、それぞれ、12、6、3、1.5及び0.75(×104)細胞/ボクセルに相当する。希釈エマルジョンの19F参照基準用キャピラリーも又、ファントム中に置かれた(イン・ビボイメージングに用いられる)。すべてのキャピラリーは、アガロース中に包埋され、イメージングは、37℃で、同じ鳥かご型共鳴器及びパルスシーケンスパラメーターを利用して行われた(これらは、イン・ビボイメージングに用いられた)。
【0139】
MRIを利用した細胞の定量
見かけのPFPE標識された細胞の量を、MRIデータセット、外部19F参照基準、及び測定されたFcから直接計算した。この計算を、スライス当たりベースで行なった。19Fイメージの実数値のノイズ等級Nを、イメージの周辺付近のボクセル値の標準偏差を計算することにより測定した。このNは、実又は虚のコンポーネントから等しく計算することができる。次に、これらの等級値を、各ボクセルにつき計算し、その後、生成したRician分布したノイズ(低シグナル対ノイズ比イメージで認められる)を補償するように修正された(21)。我々のRician修正は、等級値mを一層低い値m’にリセットし、それで、各コンポーネントm’に加えられるノイズNでの(m’+0i)の等級の予想される値は、m=E(|(m’+n1)+n2i|)であり、式中、Eは、予想された値を示し、n1及びn2は、正規分布するランダム変数 (ゼロが平均で、標準偏差はN) である。このmは、所定のm’について、n1及びn2の一組のランダムな値についてのmの平均値を見出すことにより、統計的に見積もることができる。n1及びn2のランダムな対(1,000,000試行)が、mの各見積りにつき引かれた。各ピクセル値についてのこの計算を回避するために、mは、m’=0、0.1N、0.2N、・・・8Nについて見積もられた。このm’は、mにおいて単調であり、それ故、更なるm値は、m’結果を、Matlab関数のinterp1()を用いて補間することによって計算された。8Nより上では、Rician分布がガウス分布に近似し、修正の意味がないので、調整を行なわなかった。次に、平均等級シグナル値Rを、19F参照基準を含むROI内で計算した。このRは、参照基準を含むボックスを対話的に選択して、その中の等級が2.5Nより大きいボクセルを自動的に同定し、それにより、記録したボクセルが実際の19Fシグナルを含むことの99%より大きい信頼因子を設定することによって計算された。この自動的に計算されたROIを、次いで、任意の近くのシグナルを捕らえるための平面内の半ボクセル及び部分的ボリューム効果の計算によって広げた。この分析から、我々は、パラメーターr(参照基準内のボクセル当たりの19Fの量)をも計算した。次に、膵臓中の全シグナルPを計算した。ROIは、この膵臓を含むボックスを対話的に選択することにより規定され、2.5Nより大きいシグナルを有するボクセルを自動的に等級イメージ内に同定した。やはり、同定された領域の周辺も、1/2ボクセルにより広げられた。このPを、次いで、すべての同定されたボクセルからの調整された等級値のシグナルを合計することにより計算した。この膵臓に含まれる見かけの細胞の数Cは、関係C=(Pr)/(RFc)を利用して計算された。Cにおける不確定性は、方程式σ(R)r/(RFc)を利用することにより見積もられた。式中、
【数7】

即ち、Pの標準偏差、そしてnは、シグナルを有するとして同定されたボクセルの数である。この細胞の定量のアルゴリズムは又、異なる既知の密度の標識T細胞をアガロースに懸濁させて有するキャピラリーを含む較正されたファントムについても試験された。
【0140】
7.急性炎症部位におけるT細胞のイメージング及び定量
フルオロカーボンベースの細胞標識及びイメージング法の有用性の更なる例として、急性炎症モデルにおける実験を記載する。我々は、二重の19F MRI−蛍光細胞PFPE標識の有用性を、局所的炎症のマウスモデルにおいて示す。我々は、活性化されたT細胞をPFPEナノ粒子を用いて、エキソ・ビボで、効率的に標識することができることを示す(ホーミングの選択的可視化及び炎症位置のイン・ビボでの体軸に沿ったMRI並びに光学的イメージング方法による定量を可能にする)。これは、T細胞動力学の研究に便利なモデルを与える。我々は、抗原特異的なT細胞のイン・ビボでの移動を最長で21日間追跡した。細胞数の定量を、5つの時点で、イン・ビボイメージのデータセットから直接行なった。我々は、移入された細胞の約30%が、移入後48時間で排液リンパ節に到達することを見出した。19F PFPE標識に共有結合した蛍光染料は、イン・ビボで、光学イメージング並びに標識T細胞の回収及び特性決定を、組織学及びFACSにより可能にした。まとめると、我々のデータは、この新規な二重モデルが、細胞移動の非侵襲的追跡及び定量を、細胞移入後少なくとも最大で3週間可能にすることを示している。ここに記載した局所的炎症モデルは、臓器拒絶、癌治療及び自己免疫疾患などの多くの病状の免疫学的及び炎症的面を研究するために利用することができる。この実施例の動物モデル及びPFPEイメージングプラットフォームを利用して、炎症応答を変調し又は減衰するためにデザインされた小型分子薬物、組換えタンパク質又は任意の他の生物学的若しくは細胞ベースの治療の効力を定量的に評価することもできる。
【0141】
二重方式のPFPEナノ粒子(即ち、MRI及び蛍光活性)を、1:1モル比の過フルオロポリエチレングリコール(分子量約1500、Exfluor, テキサス、Round Rock) と無菌のフィルター処理したPluronicL35(Sigma-Aldrich, ミズーリ、St. Louis)を用いて調製した。生のPFPE分子の末端基の画分を明るいAlexa647蛍光染料(Molecular Probes)に共有結合した。水中での乳化を、プローブソニケーションにより、Sonifier Cell Disruptor (Misonix Inc., ニューヨーク、Farmingdale)を用いて行なった。平均エマルジョン粒子直径は、Malvern Zetasizer Nano ZS 器具 (Malvern Instruments, 英国、Worcestershire)を用いる動的光散乱によって、122±17nmであると測定された。D010.11オバルブミン−トランスジェニックマウス由来のT細胞を、脾臓細胞の単一細胞懸濁液から、MACSパンT細胞単離用キット(Miltenyi Biotec, カリフォルニア、Auburn)を用いて精製した。細胞を、10% ウシ胎児血清、各100μg/mlのストレプトマイシン及びペニシリン、並びに1μl/mlの2−メルカプトエタノール(Gibco-Invitrogen, カリフォルニア、Carlsbad)を含むRPMI中で増殖させた。細胞を、イン・ビトロで、抗TCRmAbをコートしたプレート上で、1μg/ml 抗CD28及び10U/ml IL−2の存在下で3日間インキュベーションすることによって活性化させた。その後、細胞を採取して、1μl/mlの2−メルカプトエタノールを含むHBSS中に2百万/mlで再懸濁させた。希釈量のPFPE標識を培地に加えて、細胞を、10%FBSを含むRPMIの添加の前に10分間氷上でインキュベートし、更に、1時間37℃でインキュベーションした。細胞を、リン酸緩衝塩溶液(PBS)で2回洗い、接種前に300μlのハンクス液(HBSS)中に再懸濁させた。19F NMRを、上記のように標識された代表的細胞ペレットについて行なった。スペクトルを、Bruker Advance 500MHz NMR分光計を用いて得た(化学シフトは、上記のように、TFAを参照した)。パラメーターFcを、既知数の標識細胞を、既知濃度のTFAを含む他のチューブと並べたキャピラリーチューブ内でペレット化することにより計算した。約1000万の細胞を各イン・ビボ実験に用いた。標識T細胞を、雌のBalb/c(Jackson Labs)MHC適合性マウスに腹腔内注射した(0日目)。これらのマウスは、同時に、PBS中の20μgのニワトリオバルブミン(Sigma)をIFA中に乳化させて、大腿四頭筋に、皮下注射され、無菌のPBSを反対側の脚に負の対照として注射された。MRIを、11.7T、89mm垂直の穴を開けたミクロイメージングシステム(Bruker Instruments, Inc., マサチューセッツ、Billerica)を利用して行なった。PBS中で希釈したPFPEエマルジョンの外部参照基準用キャピラリー(1ml当たり1019のフッ素原子を含む)を、イメージングセッション中、動物の隣りに置いた。19Fイメージが、TR/TE=1000/6.4msのRAREシーケンス(RARE因子8、64×32のマトリクス使用)を利用して、得られた。1Hイメージングを、2DFTスピン−エコーシーケンス(TR/TE=1200/22ms及び512×256のマトリクス使用)を利用して行なった。8個の隣接した2mm厚のスライス及び同じスライス座標を、1H及び19Fの両方に用いた。すべてのイン・ビボのイメージングは、呼吸ゲート制御され、温度は、37℃に調節された。イン・ビボの光学的イメージを、カスタムフィルターホルダー及びレンズアダプター(Bioptechs, ペンシルベニア、Butler)を装着したPhotometrics (アーカンサス、Tucson)のC258冷却CCDカメラにて得た。動物を、4台の250Wの石英−ハロゲン照明器(Cuda Products, フロリダ、Jacksonville)を用いて、照明した。励起フィルターは、530/50nmであり、放射フィルターは、630/30nmであった。マウスは、イメージング前に、毛により引き起こされるバックグラウンドを低減するために、毛を剃られた。これらのマウスは、イメージング後に、犠牲にされて、リンパ節が、組織学のために取り出された。
【0142】
図12は、この研究に用いたモデルの全体的模式図を示している。イン・ビトロで活性化された、オバルブミン特異的T細胞を標識して、MHCマッチした宿主マウスに注射した(このマウスは、IFA中に乳化させた抗原の腹腔内注射も受けた)。無菌のPBSを、別の脇腹に負の対照として注射した。図13〜15は、これらの実験からの典型的な結果を示している。イン・ビボMRIの結果(図13)は、特異的T細胞のリンパ節排液抗原へのホーミングを示している。T細胞は、対照用リンパ節では、見られない。19Fは又、腸間膜領域でも検出された(特に、一層初期の時点で)。外部19F参照基準用キャピラリーの助成により、我々は、このリンパ節中に存在する見かけの細胞数を、上記の方法を用いて定量した(図14)。イン・ビボ光学イメージング(図15a)は、標識細胞における、この二重方式のPFPEナノ粒子が、生きているマウスの表面領域(腸間膜及び表面リンパ節を含む)においてイメージ化されうることを示している。鼠径リンパ節は、腸のループと重なりうる。位置測定の曖昧さを防ぐために、このリンパ節を摘出して、別々にイメージ化した(図15b)。このパネルは、Ova/IFA注射のスライドにおいては、排液鼠径節においてのみ蛍光を示しているが、対照用の節は、蛍光を有さず大きさも一層小さい。
【0143】
参考文献の援用
本明細書中で言及されたすべての刊行物及び特許を、本明細書中に参考として、そっくりそのまま、個々の刊行物又は特許が特に個別に参考として援用されることを示されたように援用する。それらが矛盾する場合には、本願は、本願における任意の定義を含めて、調整する。









【0144】
同等物
本明細書では、主題の発明の特別の具体例を明示的に開示したが、上記の明細書は、説明のためのものであって、制限するものではない。これらの発明の多くの変形は、当業者には、この明細書及び下記の請求の範囲を見ることによって明らかとなろう。この発明の全範囲は、請求の範囲をそれらの同等物の全範囲と共に参照すること及び明細書をかかる変形物と共に参照することにより決定されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0145】
【図1】細胞の標識、イメージング及び定量のための経路の図式表示の図である。
【図2】細胞をエキソ・ビボで標識して、宿主にトランスファーし、19F及び1Hを利用してイメージ化し、そして複合19F/1Hイメージにより可視化することの説明の図である。
【図3A】T細胞を、PFPEナノ粒子を用いてエキソ・ビボで十分に標識する図である。
【図3B】T細胞を、PFPEナノ粒子を用いてエキソ・ビボで十分に標識する図である。
【図3C】T細胞を、PFPEナノ粒子を用いてエキソ・ビボで十分に標識する図である。
【図3D】T細胞を、PFPEナノ粒子を用いてエキソ・ビボで十分に標識する図である。
【図4】イン・ビトロでの、細胞の、様々なトランスフェクション剤を用いる、フルオロカーボン(即ち、PFPE)による標識を示す図である。
【図5A】イン・ビトロでの、細胞の、電気穿孔法を利用した、過フルオロカーボン(即ち、PFPE)による標識を示す図である。
【図5B】イン・ビトロでの、細胞の、電気穿孔法を利用した、過フルオロカーボン(即ち、PFPE)による標識を示す図である。
【図6】PFPE標識した一次T細胞のイン・ビトロでのMTT毒性アッセイを示す図である。
【図7】PFPE標識したT細胞におけるFACSの結果を示す図である。
【図8】PFPE標識したT細胞を受けたNOD SCIDマウスからの膵臓組織の組織学的切片の蛍光顕微鏡写真を示す図である。
【図9A】トランスファーされたT細胞が膵臓に向かうことを示す、イン・ビボのMRIを示す図である。
【図9B】トランスファーされたT細胞が膵臓に向かうことを示す、イン・ビボのMRIを示す図である。
【図9C】トランスファーされたT細胞が膵臓に向かうことを示す、イン・ビボのMRIを示す図である。
【図9D】トランスファーされたT細胞が膵臓に向かうことを示す、イン・ビボのMRIを示す図である。
【図10】標識したT細胞を接種されたNOD SCIDマウスから摘出した膵臓(a)及び脾臓(b)の19F NMRスペクトルを示す図である。
【図11】19F MRイメージを利用したT細胞定量法を確認する像(phantom)研究を示す図である。
【図12】急性炎症のマウスモデルのイメージング実験を示す図式表示を示す図である。
【図13】PFPE標識T細胞の注射後の様々な時点での、鼠蹊リンパ節を含むスライスを示す図である。
【図14】トランスファー後、2、4、7、11及び21日目の鼠蹊リンパ節におけるT細胞の平均数のプロットを示す図である。
【図15】細胞トランスファー後、4日目のイン・ビボの光学イメージングを示す図である。
【図16】一般的目的のコンピューターシステム200の、コンピューター104の機能を、この発明の説明のための具体例によって実施するための、機能的ブロックダイヤグラムを示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
細胞数をイン・ビボで定量するための方法であって、下記を含む当該方法:
a.被験者にフルオロカーボンイメージング試薬で標識された細胞を投与すること;
b.被験者の少なくとも一部分を、核磁気共鳴技術により調べ、それにより、その被験者中の標識細胞を検出すること;
及び
c.目的領域(ROI)における標識細胞数を定量すること。
【請求項2】
フルオロカーボンイメージング試薬が、パーフルオロポリエーテルである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
フルオロカーボンイメージング試薬が、パーフルオロ−クラウンエーテルである、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
イメージング試薬が、パーフルオロ−15−クラウン−5−エーテルである、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
フルオロカーボンが、下記の平均式を有する過フッ素化ポリエーテルである、請求項1に記載の方法:
【化1】

(式中、Yは、下記よりなる群から選択される:
【化2】

(式中、nは、8〜20の整数であり;X及びZは、同じであって過フルオロアルキル、過フルオロエーテル、フルオロアシル、カルボキシル、アミド又はエステルで終端するフルオロアルキル、メチロール、酸クロリド、アミド、アミジン、アクリレート及びエステルよりなる群から選択される))。
【請求項6】
フルオロカーボンイメージング試薬を、直鎖状過フルオロポリエーテル、環状過フルオロポリエーテル及びこれらの混合物よりなる群から選択する、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
被験者への投与前に、細胞を、フルオロカーボンイメージング試薬を含む組成物と接触させ、それにより、該細胞がフルオロカーボンイメージング試薬で標識される、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
被験者への投与前に、細胞を、電気穿孔法を利用して、過フルオロカーボンエマルジョン粒子で標識する、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
フルオロカーボンイメージング試薬を含む組成物が、取込み増進用試薬を更に含む、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
フルオロカーボンイメージング試薬を含む組成物が、更に、下記を含む、請求項7に記載の方法:
a.界面活性剤;及び
b.カチオン性脂質。
【請求項11】
取込み増進用試薬が、下記よりなる群から選択する化合物を含む、請求項9に記載の方法:
a.カチオン性脂質;及び
b.カチオン性ポリペプチド。
【請求項12】
カチオン性ペプチドが、プロタミンである、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
フルオロカーボンイメージング試薬の少なくとも一部分が細胞内に内在化される、請求項7に記載の方法。
【請求項14】
フルオロカーボンイメージング試薬を含む組成物が、Pluronic L-35を更に含む、請求項7に記載の方法。
【請求項15】
フルオロカーボンイメージング試薬をエマルジョンとして配合する、請求項7に記載の方法。
【請求項16】
エマルジョンが、30〜500nmの平均直径を有する粒子を含む、請求項7に記載の方法。
【請求項17】
細胞が、哺乳動物細胞である、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
細胞が、免疫系の細胞である、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
細胞が、T細胞である、請求項1に記載の方法。
【請求項20】
細胞が、樹状細胞である、請求項1に記載の方法。
【請求項21】
細胞が、幹細胞である、請求項1に記載の方法。
【請求項22】
核磁気共鳴技術によるイメージングが、19Fデータセットを集めることを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項23】
1Hデータセットを集めることを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項24】
19Fイメージ及び1Hイメージを生成すること及び比較することを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項25】
核磁気共鳴技術が、磁気共鳴イメージング(MRI)である、請求項1に記載の方法。
【請求項26】
核磁気共鳴技術が、磁気共鳴分光法(MRS)である、請求項1に記載の方法。
【請求項27】
細胞を被験者に、細胞治療養生法の部分として投与する、請求項1に記載の方法。
【請求項28】
フルオロカーボンイメージング試薬で標識された細胞を含む移植物のレシピエント中の該標識された細胞の数を定量する方法であって、下記を含む当該方法:
a.被験者の少なくとも一部分を核磁気共鳴技術により調べ、それにより、その被験者中の標識細胞を検出すること、
b.標識された細胞の数を定量すること。
【請求項29】
移植(recipient)レシピエントにおいて標識細胞の位置を検出し、適宜、標識細胞の追跡を行なう、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
核磁気共鳴技術を、磁気共鳴イメージング及び磁気共鳴分光法よりなる群から選択する、請求項28に記載の方法。
【請求項31】
移植レシピエントが、骨髄移植レシピエントである、請求項28に記載の方法。
【請求項32】
移植用の細胞が、造血幹細胞を含む、請求項28に記載の方法。
【請求項33】
移植用の細胞を、骨髄、臍帯血又は末梢血から得る、請求項28に記載の方法。
【請求項34】
移植レシピエントが、ドナーの器官のレシピエントである、請求項28に記載の方法。
【請求項35】
ドナーの器官の細胞の少なくとも一部分が、フルオロカーボンイメージング試薬で標識される、請求項28に記載の方法。
【請求項36】
移植レシピエントが、ヒトである、請求項28に記載の方法。
【請求項37】
定量することが、ROIにおける較正された19Fシグナルの利用を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項38】
定量することが、ROIにおける較正された19Fシグナルの利用を含む、請求項28に記載の方法。
【請求項39】
調べることが、予め較正された19Fシグナルを検出することを含み、それからROIにおける19Fシグナルと19F分子の代表的数又は細胞量との関係を推定することができる、請求項1又は28に記載の方法。
【請求項40】
調べることが、ROIにおける同時のシグナルを検出することを含み、それからそのシグナルと19F分子の代表的数又は細胞量との関係を推定することができる、請求項1又は28に記載の方法。
【請求項41】
調べることが、ROIにおける後で較正された19Fシグナルを検出することを含み、それからそのシグナルと19F分子の代表的数又は細胞量との関係を推定することができる、請求項1又は28に記載の方法。
【請求項42】
フルオロカーボンイメージング試薬の細胞投与量を、細胞の被験者への投与の前に計算する、請求項37に記載の方法。
【請求項43】
フルオロカーボンイメージング試薬の細胞投与量を、移植の前に計算する、請求項38に記載の方法。
【請求項44】
定量することが、被験者の19F MRI/MRSスキャン中に、較正された外部19F参照基準との比較によって行なわれる、請求項1に記載の方法。
【請求項45】
定量することが、被験者の19F MRI/MRSスキャン中に、較正された外部19F参照基準との比較によって行なわれる、請求項28に記載の方法。
【請求項46】
参照基準が、無細胞参照基準である、請求項44に記載の方法。
【請求項47】
参照基準が、無細胞参照基準である、請求項45に記載の方法。
【請求項48】
定量することが、19Fシグナルの強度と、参照基準と比較されるROI中の標識細胞の体積との比を計算することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項49】
定量することが、19Fシグナルの強度と、参照基準と比較されるROI中の標識細胞の体積との比を計算することを含む、請求項28に記載の方法。
【請求項50】
標識細胞の数を定量することが、下記よりなる群からのパラメーターの少なくとも一つを利用することを含む、請求項1に記載の方法:
(i)イン・ビトロで測定された標識剤の細胞内投与量(即ち、Fc);(ii)標識細胞投与後の一以上の時点において被験者に取り込まれたイン・ビボの19F MRI/MRSデータセット;(iii)ボクセル体積;(iv)平面内のボクセル領域(即ち、イメージピクセルの領域);(v)19F参照基準からのMRI/MRSデータセット;(vi)被験者材料における19F MRI/MRSデータの測定されたジョンソンノイズ;(vii)患者材料における19F MRI/MRSデータセットの一以上のボクセルの測定されたシグナル対ノイズ比(SNR);(viii)参照基準からの19F MRI/MRSデータセットの一以上のボクセルの測定されたSNR;(ix)被験者材料の19F NMRの緩和時間(T1、T2及びT2*);及び(x)参照基準の19F NMRの緩和時間(T1、T2及びT2*)。
【請求項51】
標識細胞の数を定量することが、下記式を利用することを含む、請求項1に記載の方法:
【数1】

(式中、Nc=RIO中の標識された細胞の総数;[FR]=較正された19F基準溶液(又は、ゲル)中の19Fの濃度;v=ボクセル体積;IR=MRI/MRSスキャン、平均された一以上のボクセルにより得られ、較正された19F基準の平均強度;Fc=イン・ビトロで測定した標識剤の平均19F細胞投与量;NROI=標識した細胞を含むROI中のボクセルの数;Ic(i)=標識した細胞を含むROI中のi番目ボクセルのイメージ強度;i=標識した細胞を含むROI中のボクセルの単位なしインデックス)。
【請求項52】
標識細胞の数を定量することが、下記よりなる群からのパラメーターの少なくとも一つを利用することを含む、請求項28に記載の方法:
(i)イン・ビトロで測定された標識剤の細胞内投与量(即ち、Fc);(ii)標識細胞投与後の一以上の時点において被験者に取り込まれたイン・ビボの19F MRI/MRSデータセット;(iii)ボクセル体積;(iv)平面内のボクセル領域(即ち、イメージピクセルの領域);(v)19F参照基準からのMRI/MRSデータセット;(vi)被験者材料における19F MRI/MRSデータの測定されたジョンソンノイズ;(vii)患者材料における19F MRI/MRSデータセットの一以上のボクセルの測定されたシグナル対ノイズ比(SNR);(viii)参照基準からの19F MRI/MRSデータセットの一以上のボクセルの測定されたSNR;(ix)被験者材料の19F NMRの緩和時間(T1、T2及びT2*);及び(x)参照基準の19F NMRの緩和時間(T1、T2及びT2*)。
【請求項53】
標識細胞の数を定量することが、下記式を利用することを含む、請求項28に記載の方法:
【数2】

【請求項54】
19F標識した細胞の定量のための計算システムであって、該システムは、下記:
コンピューター;
該コンピューターに機能的に結合されたコンピューター読み取り可能な媒体
を含み、
コンピューター読み取り可能な媒体のプログラムコードが、下記を含む機能を実行する当該システム:
核磁気共鳴技術により調べられたROI中の19F標識した細胞の定量。
【請求項55】
定量が、較正されたNMRシグナルを細胞投与量又は細胞量と関係付けることを含む、請求項54に記載のシステム。
【請求項56】
機能が、下記を含む、請求項54に記載のシステム:
標識細胞の数を、19Fシグナルの強度と参照基準と比較されたROI中の標識細胞の体積との比によって計算すること。
【請求項57】
機能が、下記を含む、請求項54に記載のシステム:
標識細胞の数を、下記よりなる群からのパラメーターの少なくとも一つを利用して計算すること:
(i)標識剤の細胞内投与量(即ち、Fc);(ii)標識細胞投与後の一以上の時点において被験者に取り込まれたイン・ビボの19F MRI/MRSデータセット;(iii)ボクセル体積;(iv)平面内のボクセル領域(即ち、イメージピクセルの領域);(v)19F参照基準からのMRI/MRSデータセット;(vi)被験者材料における19F MRI/MRSデータの測定されたジョンソンノイズ;(vii)患者材料における19F MRI/MRSデータセットの一以上のボクセルの測定されたシグナル対ノイズ比(SNR);(viii)参照基準からの19F MRI/MRSデータセットの一以上のボクセルの測定されたSNR;(ix)被験者材料の19F NMRの緩和時間(T1、T2及びT2*);及び(x)参照基準の19F NMRの緩和時間(T1、T2及びT2*)。
【請求項58】
機能が、下記を含む、請求項54に記載のシステム:
下記式に従って標識細胞の数を計算すること:
【数3】

【請求項59】
19F標識された細胞のイン・ビボ定量を実行するためのコンピューター読み取り可能なプログラムコードを内部に包含して有するコンピューター読み取り可能な媒体であって、コンピューター読み取り可能なプログラムコードが、下記を含む機能を実行する当該媒体:
磁気共鳴技術により検出されたROI中の19F標識された細胞の数を計算すること。
【請求項60】
機能が下記を含む、請求項59に記載のシステム:
標識細胞の数を、19Fシグナルの強度と、参照基準と比較されたROI中の標識細胞の体積との比によって計算すること。
【請求項61】
機能が下記を含む、請求項59に記載のシステム:
標識細胞の数を、下記よりなる群からのパラメーターの少なくとも一つを利用して計算すること:
(i)標識剤の細胞内投与量(即ち、Fc);(ii)標識細胞投与後の一以上の時点において被験者に取り込まれたイン・ビボの19F MRI/MRSデータセット;(iii)ボクセル体積;(iv)平面内のボクセル領域(即ち、イメージピクセルの領域);(v)19F参照基準からのMRI/MRSデータセット;(vi)被験者材料における19F MRI/MRSデータの測定されたジョンソンノイズ;(vii)患者材料における19F MRI/MRSデータセットの一以上のボクセルの測定されたシグナル対ノイズ比(SNR);(viii)参照基準からの19F MRI/MRSデータセットの一以上のボクセルの測定されたSNR;(ix)被験者材料の19F NMRの緩和時間(T1、T2及びT2*);及び(x)参照基準の19F NMRの緩和時間(T1、T2及びT2*)。
【請求項62】
機能が下記を含む、請求項59に記載のシステム:
標識細胞の数を、下記式に従って計算すること:
【数4】


【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図3C】
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【図3D】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9A】
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【図9B】
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【図9C】
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【図9D】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15A】
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【図15B】
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【図16】
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【公表番号】特表2009−533684(P2009−533684A)
【公表日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−505519(P2009−505519)
【出願日】平成19年4月16日(2007.4.16)
【国際出願番号】PCT/US2007/009391
【国際公開番号】WO2007/120911
【国際公開日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【出願人】(508307090)カーネギー・メロン・ユニバーシティ (1)
【氏名又は名称原語表記】CARNEGIE MELLON UNIVERSITY
【住所又は居所原語表記】Two Gateway Center,Suite 348,Pittsburgh,PA 15222 U.S.A.
【Fターム(参考)】