説明

核酸および/またはポリペプチドを検出するための方法および装置

核酸またはポリペプチドのサンプル中の少なくとも1つの標的核酸または標的ポリペプチドを検出および/または定量化するための方法であって、a)核酸またはポリペプチドを含むサンプルを供するステップ;b)該核酸またはポリペプチドをリガンド複合体で標識するステップであって、該リガンド複合体は、該核酸またはポリペプチドに結合する第1の成分および捕獲リガンドである第2の成分を含むステップ;c)該核酸−リガンド複合体またはポリペプチド−リガンド複合体を、少なくとも1つの捕獲プローブと接触させるステップであって、該捕獲プローブは、少なくとも1つの標的核酸または標的ポリペプチドとハイブリダイズするかまたは結合するステップ;d)i)該捕獲リガンドにより認識される酸化還元酵素、またはii)捕獲レセプターに結合した酸化還元酵素を含む複合体であって、該捕獲レセプターが、該捕獲リガンドに結合できる複合体を、加えるステップ;e)酸化還元ポリマーを加えるステップであって、該酸化還元ポリマーが、該酸化還元酵素に結合し、それによって、電子が、酵素から該酸化還元ポリマーを経て電極表面に移動するステップ;およびf)該標的核酸または標的ポリペプチドの存在を検出および/または定量化するステップ;を含む方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、関心のある少なくとも1つの標的遺伝子の発現を検出および/または定量化するための方法に関する。具体的には、本発明は、複数の標的遺伝子、特に、選択された発現遺伝子の同時検出および/または定量化において有用である。本発明はまた、該検出および/または定量化を実行するための装置も提供する。
【背景技術】
【0002】
最も一般的に使用される遺伝子発現の定量化方法としては、ノーザンブロッティング(Watson,J.ら、Recombinant DNA,第2版。W.H.Freeman and Company,New York,1992)、リボヌクレアーゼプロテクション法(Chan,S.D.H.ら、Anal.Biochem.,242,214,1996)および逆転写−ポリメラーゼ連鎖反応(RT−PCR)(Cottrez,F.ら、Nucleic Acids Res.,22,2712,1994;Totze,G.ら、Mol.Cell.Probes,10,427,1996)などがある。最初の2法は、10〜100μgのmRNAを必要とし、106〜107コピーレベルで1つのmRNA分子を検出することができる。このような量は、バルク組織から容易に単離することができるが、限られた量のサンプルで多数の遺伝子を定量化しなければならなかったり、分析のためにある特定のタイプの細胞のみを分離する必要があったりする場合、ノーザンブロッティングおよびリボヌクレアーゼプロテクション法技術は適さない。RT−PCRは理論的には、1つの核酸分子を100万倍に増幅することができ、したがって、非常に小さいサンプルサイズに非常に有用な可能性がある。しかし、RT−PCR増幅は、汚染を招く傾向がある。RT−PCR増幅はまた、プライマー・セットのかなりの最適化およびサンプルの前処理をも必要とし、したがって、アッセイ時間が長引く。さらに頻繁に、出発mRNA混合物中の様々な量のmRNA配列は、選択的で非直線的な標的増幅のため、最終RT−PCR産物中に同一レベルで提示されないことがある。cDNA合成工程中のRNA二次構造の不完全変性もまた、ポリメラーゼを休止させ、その結果、標的mRNAの、より短いcDNAコピーをもたらすことがある。こうした制限は、結果として得られるデータの正確さおよび質に影響を及ぼし、しばしば、遺伝子発現の歪曲した情報を与える。多重複製は、このような実験の結果に信頼を得るのに役立つが、少量サンプルまたは希少サンプルに適当ではない。
【0003】
RT−PCRと関連した上述の問題を回避するために、シスプラチン−ジゴキシゲニン誘導体複合物を使用して、標識核酸分子を直接標識する技術が最近、開発された(Hoevel T.ら、Biotechniques,27(5):1064-7,1999)。直接核酸標識方法論の主要な利点は、簡単で速くかつ核酸分子の撹乱が少ないことである。結果として得られる標識された核酸により、発現が異なる遺伝子をより正確に同定することが可能になる。しかし、既存の核酸検出技術の感度が低いため、遺伝子発現の定量化は困難である。
【0004】
通常は、定量目的には数マイクログラムのmRNAが必要である(Hoevel T.ら、Biotechniques,27(5):1064,1999;Boon,E.M.ら、Nat.Biotechnol.,18,1096,2000)。高感度遺伝子検出は、現在および未来の分子診断学における課題の1つである。
【0005】
生体電子DNA分析システムの開発における最近の進歩は、分子診断学の新しい機会を開き、また多大な研究努力を集めた(Boon,E.M.ら、Nat.Biotechnol.,18,1096,2000;Rodriguez,M.およびBard,A.J.Anal.Chem.,62,1658,1990)。光学的(Jordan,C.E.ら、Anal.Chem.,69,4939,1997;Fotin,A.V.ら、Nucleic Acids Res.,26,1515,1998)、電気化学的(Kelley,S.O.ら、Bioconjug.Chem.,8,31,1997;Kelly,S.O.ら、Nucleic Acids Res.,27,4830,1999)、ならびに微小重力測定的および水晶振動子マイクロバランス(Bardea,A.ら、Chem.Commun.,839,1998;Wang,J.、Nucleic Acids Res.,28,3011,2000)、形質導入法がDNAハイブリダイゼーション・イベントの検出用に報告されている。近年、核酸認識事象の増幅された電気的形質導入(Caruana,D.J.およびHeller,A.、J.Am.Chem.Soc.,121,769,1999;Patolsky,F.ら、Chem.Int.,40,2261,Ed.2001;Patolsky,F.ら、J.Am.Chem.Soc.,122,418,2000;Zhang,Y.ら、Anal.Chem.,75,3267,2003)にも、取り組まれてきた。電気化学的バイオセンサーの本質的小型化、および進歩した半導体技術とのそれらの適合性は、遺伝病の早期診断のための簡単で正確かつ安価な基盤を提供することが期待される。過去5年間に電気化学的核酸バイオセンサーにおいて大きな進歩を遂げたにもかかわらず、市場に一歩近づくためには、幾つかの重大なハードルを克服することが必要である。第1は、現実世界のサンプルからのゲノム核酸で、バイオセンサーをテストすることである(Lay,P.A.ら、Inorg.Synth.,24,291,1986)。今までのところ、電気化学的バイオセンサーの多くは、比較的短い合成オリゴヌクレオチドかまたは一連のPCR増幅から始める。もう1つの課題は、電気化学的バイオセンサーを多重化することおよびそれらの有用なセンサーアレイへの組み立てである。一般的に、診断目的には、30〜100のアレイが必要とされる。たとえば、乳癌スクリーニングは、陽性対照および陰性対照に加えて、20〜30の癌マーカー遺伝子のテストが必要である。(Drummond,T.G.ら、Nat.Biotechnol.,21,1192,2003)。
【0006】
したがって、少量の核酸を同定および/または分析するための、改良された能率的な方法の開発が当該技術分野で必要である。特に、サンプル中に存在する全mRNA中の標的遺伝子を直接同定および/または分析するための改良された能率的な方法が必要である。
【発明の開示】
【0007】
本発明は、先行技術の必要性に対処し、標的核酸を検出および/または定量化するための簡単で迅速かつ超高感度の方法および装置を提供する。本発明による方法および装置はまた、標的タンパク質の検出および/または定量化にも適用することができる。
【0008】
第1の態様によれば、本発明は、核酸またはポリペプチドのサンプル中の、少なくとも1つの標的核酸または標的ポリペプチドを検出および/または定量化する方法であって、
a)核酸またはポリペプチドを含むサンプルを供するステップと;
b)該核酸またはポリペプチドをリガンド複合体で標識するステップであって、該リガンド複合体が、該核酸またはポリペプチドに結合する第1の成分および捕獲リガンドである第2の成分を含むステップと;
c)該核酸−リガンド複合体またはポリペプチド−リガンド複合体を、少なくとも1つの捕獲プローブと接触させるステップであって、該捕獲プローブが、少なくとも1つの標的核酸または標的ポリペプチドとハイブリダイズまたは結合するステップと;
d)i)該捕獲リガンドにより認識される酸化還元酵素、またはii)捕獲レセプターに結合した酸化還元酵素を含む複合体であって、該捕獲レセプターが、該捕獲リガンドに結合できる複合体を加えるステップと;
e)酸化還元ポリマーを加えるステップであって、該酸化還元ポリマーが、該酸化還元酵素に結合し、それによって、電子が、酵素から該酸化還元ポリマーを経て電極表面に移動するステップと;
f)該標的核酸または標的ポリペプチドの存在を検出および/または定量化するステップと;
を含む方法を提供する。
【0009】
該捕獲プローブは、電極表面上に固定されていてもよい。あるいは、該捕獲プローブは、溶液中で自由であってもよく、また電極表面に固定することを可能にする手段を含んでもよい。
【0010】
核酸のサンプルは、哺乳動物サンプル、たとえばヒトサンプルまたはマウスサンプルであってもよい。該サンプル、たとえば全mRNAのサンプルは、組織から抽出してもよい。
【0011】
該サンプルが、mRNA、cDNAおよび/またはゲノムDNAのような核酸のサンプルであるとき、該捕獲プローブは、該標的核酸の少なくとも一部分に相補的であり、該標的核酸の少なくとも一部分とハイブリダイズすることができるオリゴヌクレオチドである。
【0012】
ある特定の実施形態によれば、該サンプルは、全mRNAのサンプルであり、該電極表面上に固定される該捕獲プローブは、該標的mRNAの一部に相補的なオリゴヌクレオチドである。
【0013】
この方法は、直接検出および/または定量化mRNA法に属するものである。
【0014】
該サンプルがポリペプチド、たとえばタンパク質のサンプルであるとき、該捕獲プローブは、該標的ポリペプチドを認識して結合することができる任意のリガンド、たとえば該標的ポリペプチドに特異的な抗体であってもよい。
【0015】
該核酸または該ポリペプチドに結合する第1の成分は、一般的に、標識剤、たとえば、シスプラチン、白金結合シアニン3、白金結合シアニン5であってもよい。該捕獲リガンドは、ビオチン、ジゴキシゲニン、該捕獲レセプターに結合する抗体または抗原、該酸化還元酵素に結合する抗体、アプタマー、タンパク質および/またはタンパク質レセプターのような、該捕獲レセプターに結合することができる任意の責任ある(liable)(置換可能な)リガンドであってもよい。
【0016】
該捕獲レセプターは、アビジン、ストレプトアビジン、抗ジゴキシゲニン、該捕獲リガンドに結合する抗原または抗体、アプタマー、タンパク質および/またはタンパク質レセプターであってもよい。
【0017】
ある特定の実施形態によれば、該リガンド複合体は、シスプラチン−ビオチンであり、該捕獲レセプターは、アビジンまたはストレプトアビジンである。具体的には、該複合体は、GOX−ストレプ(アビジン)である。
【0018】
別の実施形態によれば、該酸化還元酵素は、該捕獲リガンドに結合し、該捕獲リガンドは、抗体である。
【0019】
該酸化還元酵素は、本発明の目的に適する任意の酵素、たとえばオキシダーゼ、デヒドロゲナーゼ、モノオキシゲナーゼ、ヒドロキシラーゼ、ジオキシゲナーゼ、ペルオキシダーゼ、ヒドロゲナーゼ等々であってもよい。該オキシダーゼは、本発明の目的に適する任意のオキシダーゼ、たとえば、グルコースオキシダーゼ(GOX)、ラクターゼオキシダーゼ(LAX)、ピルビン酸オキシダーゼ(PYX)、チロシナーゼまたはそれらの混合物であってもよい。
【0020】
該酸化還元ポリマーは、当該技術分野で公知でかつ本発明の目的に適する任意の酸化還元ポリマーであってもよい。たとえば、該酸化還元ポリマーは、酸化還元活性なポリマー材料、ポリ(ビニルイミダゾール−コ−アクリルアミド)、[Os(bpy)2]、[Os(dmbpy)2]、[(Osbpy)2(im)、[Os(dabpy)2]および/または[Os(bpy)2(Mim)]と部分的にイミダゾール複合化したポリ(ビニルイミダゾール−コ−アクリルアミド)、ポリ[ビニルピリジンOs(ビス−ビピリジン)2Cl−コ−アリルアミン](PVP−Os−AA)、西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)、フェロセンをベースとするポリマー、および/またはルテニウムをベースとするポリマーであってもよい。
【0021】
ある特定の実施形態によれば、本発明の方法は、1つ以上の標的遺伝子を検出および/または定量化するための診断方法である。該標的遺伝子は、下記の少なくとも1つである:腫瘍タンパク質p53(TP53)、熱ショックタンパク質90(HSP90)、乳癌遺伝子1(BRCA1)、および/またはヒストンH4(His4)。本発明による診断方法はまた、異なる標的遺伝子を同時に検出および/または定量化することも可能である。
【0022】
本発明による方法は、非常に少量の核酸またはポリペプチドの検出を可能にする。たとえば、該サンプルが全mRNAのサンプルであるとき、本発明の方法は、0.10〜0.95fgの範囲内で、標的mRNAの検出を可能にする。
【0023】
別の態様によれば、本発明は、本発明の方法を実行するための装置を提供する。
【0024】
該装置は、センサーアレイで構成される。詳細には、サンプル分析物中の標的核酸および/またはポリペプチドを検出するためのセンサーアレイ装置は、スペーサー/絶縁層で隔てられた第1および第2の電極を含み、該電極は、該分析物を第2の電極に作用させたとき、接続される。2つの電極を通過する電流は、作用させた分析物の量を反映する。電極材は、本発明の目的に適する任意の材料で作られる。たとえば、該電極材は、金、白金、グラッシーカーボン、グラファイト、カーボンペースト(CPE)、電流測定用カーボン−エポキシ複合材、ドープダイアモンドフィルム、カーボンナノチューブ、インジウム−酸化スズ、および/または任意の導電体、たとえば導電性ポリマー、ドープ半導体等で作られていてもよい。特に、該スペーサー/絶縁層は、底部から上部にかけて、粘着性のスペーシング/絶縁層、スクリーン印刷したAg/AgCl層および疎水性層を含む。さらに、支持材は、ガラス支持材であってもよい。該分析物は、全mRNAのサンプル、cDNAまたはゲノムDNAのサンプルであってもよい。
【0025】
ある特定の態様によれば、本発明による装置は、微小電気医学システム(MEMS)および/または完全自動化Micro Total Analysis System(μ−TAS)に組み込まれる。
【0026】
別の態様によれば、本発明は、下記の成分:A)i)電極表面上に固定される、またはii)電極表面に固定することが可能である手段を含む、少なくとも1つの捕獲プローブと;B)サンプルの核酸またはポリペプチドを標識するためのリガンド複合体であって、該核酸またはポリペプチドに結合する第1の成分、および捕獲リガンドである第2の成分を含むリガンド複合体と;C)i)捕獲リガンドにより結合され得る酸化還元酵素またはii)捕獲レセプターに結合した酸化還元酵素を含む複合体であって、該捕獲レセプターが、該捕獲リガンドに結合することができる、複合体と;D)酸化還元ポリマーと;を含む診断用キットを提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
本発明は、標的核酸を検出および/または定量化するための簡単で迅速、かつ能率的で超高感度な方法および装置を提供する。本発明による方法および装置は、標的タンパク質の検出および/または定量化にも応用することができる。
【0028】
詳細には、本発明の方法は、複合標的核酸またはポリペプチド/酵素/ポリマーアクティベーター二重層を形成することによる、好ましくはセンサーアレイで実行される、標的核酸またはポリペプチドのアンペロメトリー検出に基づく。
【0029】
第1の態様によれば、本発明は、核酸またはポリペプチドのサンプル中の、少なくとも1つの標的核酸または標的ポリペプチドを検出および/または定量化する方法であって、
a)核酸またはポリペプチドを含むサンプルを供するステップと;
b)該核酸またはポリペプチドをリガンド複合体で標識するステップであって、該リガンド複合体は、該核酸またはポリペプチドに結合する第1の成分および捕獲リガンドである第2の成分を含むステップと;
c)該核酸−リガンド複合体またはポリペプチド−リガンド複合体を、少なくとも1つの捕獲プローブと接触させるステップであって、該捕獲プローブは、少なくとも1つの標的核酸または標的ポリペプチドとハイブリダイズまたは結合するステップと;
d)i)該捕獲リガンドにより認識される酸化還元酵素か、またはii)捕獲レセプターに結合した酸化還元酵素を含む複合体であって、該捕獲レセプターは、該捕獲リガンドに結合できる複合体を加えるステップと;
e)酸化還元ポリマーを加えるステップであって、該酸化還元ポリマーは、該酸化還元酵素に結合し、それによって、電子が、酵素から該酸化還元ポリマーを経て電極表面に移動するステップと;
f)該標的核酸または標的ポリペプチドの存在を検出および/または定量化するステップと;
を含む方法を提供する。
【0030】
該捕獲プローブは、電極表面上に固定されていてもよい。あるいは、該捕獲プローブは、溶液中で自由であってもよく、また電極表面に固定することを可能にする手段を含んでもよい。電極表面上に固定するための手段は、標的核酸またはポリペプチドに結合した捕獲プローブの選択および回収を可能にし、かつ該捕獲プローブを該電極基材上に固定することができる、任意の手段であってもよい。たとえば、抗体を使用してもよい。あるいは、該手段は、磁気ビーズの使用からなることもあり、これは、該標的核酸またはポリペプチドに結合した捕獲プローブの選択および回収を可能にし、また該捕獲プローブを、該磁気ビーズを引きつけることができる電極表面に結合させるかまたは電極表面上に固定させることができる。こうした代替法によれば、該捕獲プローブに結合した核酸またはポリペプチド(該標的)のみが選択され、該電極表面上に固定される。
【0031】
核酸のサンプルは、mRNA、cDNAおよび/またはゲノムDNAのサンプルであってもよい。cDNAのサンプルは、たとえば、所望の標的cDNAが選択されるcDNAライブラリーであってもよい。サンプルが、ゲノムDNAまたは全mRNAのサンプルであるとき、該サンプルは、たとえば組織から得られる、任意の生体サンプルであってもよい。該サンプルまたは組織は哺乳動物から得られることもある。したがって、該サンプルまたは組織は、たとえば、ヒトまたはマウスのサンプルまたは組織である可能性もある。
【0032】
該サンプルが、mRNA、cDNAおよび/またはゲノムDNAのような、核酸のサンプルであるとき、該捕獲プローブは、該標的核酸の少なくとも一部分に相補的であり、該標的核酸の少なくとも一部分とハイブリダイズすることができるオリゴヌクレオチドである。
【0033】
ある特定の実施形態によれば、該サンプルは、全mRNAのサンプルであり、該電極表面上に固定される該捕獲プローブは、該標的mRNAの一部に相補的なオリゴヌクレオチドである。
【0034】
したがって、この方法は、直接検出および/または定量化mRNA法に属するものである。
【0035】
本発明の目的上、核酸分子、たとえばオリゴヌクレオチドは、該核酸分子の1本鎖形が、適当な温度条件および溶液イオン強度条件で他の核酸分子にアニーリングできるとき、別の核酸分子、たとえばcDNA、ゲノムDNA、またはRNAに「ハイブリダイズ可能」である。ハイブリダイゼーション条件および洗浄条件は周知であり、Sambrook,J.,Fritsch,E.F.and Maniatis、T.Molecular Cloning:A Laboratory Manual、第2版、Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor(1989)、特にその中の11章および表12.1に例示されている(参照により本明細書に全面的に組み込む)。温度条件およびイオン強度条件は、ハイブリダイゼーションの「ストリンジェンシー」を決定する。ハイブリダイゼーションは、2つの核酸が、相補的な配列を含むことが必要であるが、ハイブリダイゼーションのストリンジェンシー次第で、塩基間の不一致が可能である。核酸をハイブリダイズするのに適切なストリンジェンシーは、当該技術分野で周知変数である、核酸の長さおよび相補性の程度によって異なる。2つのヌクレオチド配列の類似性または相同性の程度が大きいほど、こうした配列を有する核酸のハイブリッドのTm値は大きい。核酸ハイブリダイゼーションの相対的安定性(より高いTmに対応する)は、下記の順序で低下する:RNA:RNA、DNA:RNA、DNA:DNA。長さ100ヌクレオチドより大きいハイブリッドでは、Tmを計算するための式が導かれている(Sambrookら、上掲、9.50-9.51参照)。より短い核酸、すなわち、オリゴヌクレオチドとのハイブリダイゼーションでは、不一致の位置はより重要になり、また、オリゴヌクレオチドの長さがその特異性を決定する(Sambrookら、上掲、11.7-11.8参照)。さらに、当業者は、温度および洗浄溶液塩濃度は、プローブの長さ等の因子により、必要に応じて調節できることが分かるであろう。用語「相補的」は、互いにハイブリダイズすることができるヌクレオチド塩基間の関係を表現するために使用される。たとえば、DNAに関しては、アデノシンはチミンに相補的であり、またシトシンはグアニンに相補的である。
【0036】
該サンプルが、ポリペプチド、たとえばタンパク質のサンプルであるとき、該捕獲プローブは、該標的ポリペプチドを認識して結合することができる任意のリガンド、たとえば標的ポリペプチドに特異的な抗体であってもよい。
【0037】
リガンド複合体に関して、該核酸またはポリペプチドに結合する第1の成分は、シスプラチン(Hoevel T.ら、Biotechniques,27(5):1064-7,1999)、白金結合シアニン3および/または白金結合シアニン5(Guptaら、Nucleic Acids research,Vol.31,No.4,2003)であってもよい。該核酸に結合する他の成分としては、1本鎖結合タンパク質(SSB)、recAまたはその相同体のような、DNAに対して親和性を有するまたはDNAに結合する適当なタンパク質、細菌起源、ウイルス起源または哺乳動物起源の不一致検出タンパク質(mismatch detecting proteins)、またはDNA関連の他のタンパク質などがある。
【0038】
該捕獲リガンドは、ビオチン、ジゴキシゲニン、該捕獲レセプターに結合する抗体または抗原、該酸化還元酵素に結合する抗体、アプタマー、タンパク質および/またはタンパク質レセプターのような、該捕獲レセプターに結合することができる任意の責任ある(liable)(置換可能な)リガンドであってもよい。
【0039】
該捕獲レセプターは、アビジン、ストレプトアビジン、抗ジゴキシゲニン、該捕獲リガンドに結合する抗原または抗体、アプタマー、タンパク質および/またはタンパク質レセプターであってもよい。
【0040】
ある特定の実施形態によれば、該リガンド複合体は、ジゴキシゲニン誘導体に結合したシスプラチン(Hoevel T.ら、Biotechniques,27(5):1064-7,1999)、またはシスプラチン−ビオチンであり、該捕獲レセプターは、アビジンまたはストレプトアビジン(両者を、「ストレプト(アビジン)」とも表す)である。
【0041】
別の実施形態によれば、ストレプト(アビジン)に結合した酸化還元酵素を含む複合体が提供される。たとえば、GOX−ストレプト(アビジン)。
【0042】
別の実施形態によれば、酸化還元酵素は、単独で(したがって、該捕獲レセプターとの複合体の形態で)加えられ、該酸化還元酵素は、該捕獲リガンドに結合することができる。この場合、該捕獲リガンドは、酸化還元酵素を認識して結合する抗体であってもよい。
【0043】
該酸化還元酵素は、本発明の目的に適する任意の酵素、たとえばオキシダーゼ、デヒドロゲナーゼ、モノオキシゲナーゼ、ヒドロキシラーゼ、ジオキシゲナーゼ、ペルオキシダーゼ、ヒドロゲナーゼ等々であってもよい。該オキシダーゼは、本発明の目的に適する任意のオキシダーゼ、たとえば、グルコースオキシダーゼ(GOXまたはGOx)、ラクターゼオキシダーゼ(LAX)、ピルビン酸オキシダーゼ(PYX)、チロシナーゼ、西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)、アスコルビン酸オキシダーゼ、ラッカーゼ、ベリルビンオキシダーゼ、またはそれらの混合物であってもよい。
【0044】
酸化還元ポリマーは、当該技術分野で公知でかつ本発明の目的に適する任意の酸化還元ポリマーであってもよい。たとえば、該酸化還元ポリマーは、酸化還元活性なポリマー材料、ポリ(ビニルイミダゾール−コ−アクリルアミド)、[Os(bpy)2]、[Os(dmbpy)2]、[(Osbpy)2(im)、[Os(dabpy)2]および/または[Os(bpy)2(Mim)]と部分的にイミダゾール複合化したポリ(ビニルイミダゾール−コ−アクリルアミド)、ポリ[ビニルピリジンOs(ビス−ビピリジン)2Cl−コ−アリルアミン](PVP−Os−AA)、西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)、フェロセンをベースとするポリマー、および/またはルテニウムをベースとするポリマーであってもよい。
【0045】
ある特定の実施形態によれば、本発明の方法は、1つ以上の標的遺伝子を検出および/または定量化するための診断方法である。該標的遺伝子は、下記の少なくとも1つを含んでもよい:腫瘍タンパク質p53(TP53)、熱ショックタンパク質90(HSP90)、乳癌遺伝子1(BRCA1)、および/またはヒストンH4(His4)。本発明による診断方法はまた、異なる標的遺伝子を同時に検出および/または定量化することも可能である。さらに、適当なマーカーを使用することが可能である。
【0046】
本発明による方法は、非常に少量の核酸またはポリペプチドの検出を可能にする。たとえば、該サンプルが全mRNAのサンプルであるとき、本発明の方法は、0.20〜1.0fg(フェムトグラム)、特に、0.10〜0.95fgの範囲内で、標的mRNAの検出を可能にする。
【0047】
ある特定の実施形態によれば、本発明は、図2に例示されている方法を提供する。本方法は、ヒト乳房組織から抽出された全mRNA中の特定の遺伝子の直接検出を可能にする新規な手法を示す。該mRNAは、シスプラチン−ビオチン複合体を使用して一段階非酵素反応で標識される。金電極表面上に固定された相補的オリゴヌクレオチドとのハイブリダイゼーション後、核酸/ポリマーアクティベーター二重層の形成は、鋭敏なアンペロメトリー検出を可能にする。標的mRNA用システムの検出限界は、フェムトモル濃度レベルである。これは、0.20〜1.0fgのmRNAに換算される。実際問題として、このレベルのバイオセンサー感度は、PCR工程を必要とせずに、現実世界サンプル中のmRNAを直接検出するための必要条件を満たしている。センサーアレイ、たとえば8×8センサーアレイで、多数のアッセイが首尾よく試みられた。
【0048】
該mRNA分子に複数の酵素標識を組み入れることによって、本発明の方法の感度は、当該技術分野で公知の方法に比べて大幅に、40倍も向上した。TP53遺伝子発現の0.80倍という僅かな差も、全mRNAで首尾よく検出された。感度が大幅に改善されて、蛍光に基づく技術より少なくとも1000倍鋭敏になり、アッセイに必要な全mRNAの量は、マイクログラムからナノグラムに切り下げられた。このシステムは、乳癌遺伝子を直接マッピングするための超高感度な方法を提供し、また分子診断のための完全なシステムを構成する。
【0049】
別の態様によれば、本発明は、本発明の方法を実行するための装置を提供する。本発明による装置の一例を図1(A、B)に示す。図1(A、B)に示す例は、本発明による装置の限定的な例ではない。
【0050】
本装置は、センサーアレイで構成される。詳細には、サンプル分析物中の標的核酸および/またはポリペプチドを検出するためのセンサーアレイ装置は、スペーサー/絶縁層で隔てられた第1および第2の電極を含み、該電極は、該分析物を第2の電極に作用させたとき、接続される。2つの電極を通過する電流は、作用させた分析物の量を反映する。電極材は、本発明の目的に適する任意の材料で作られる。たとえば、該電極材は、金、白金、グラッシーカーボン、グラファイト、カーボンペースト(CPE)、電流測定用カーボン−エポキシ複合材、ドープダイアモンドフィルム、カーボンナノチューブ、インジウム−酸化スズ、および/または任意の導電体、たとえば導電性ポリマー、ドープ半導体等で作られていてもよい。特に、該スペーサー/絶縁層は、底部から上部にかけて、粘着性のスペーシング/絶縁層、場合によりスクリーン印刷層および疎水性層を含む。該スクリーン印刷層は、スクリーン印刷したAg/AgClであってもよい。さらに、第1の電極を、支持材上に適用してもよい。本発明の目的上、該支持材は任意の適する支持材、たとえば、ガラス支持材であってもよい。該捕獲プローブを、該第1の電極の表面上に適用してもよい。該捕獲プローブは、該分析物の少なくとも1つの標的核酸または標的ポリペプチドとハイブリダイズまたは結合することができる。該分析物は、全mRNAのサンプル、cDNAまたはゲノムDNAのサンプルであってもよい。
【0051】
該センサーアレイは、下記の通りに作動する。絶縁層で隔てられた2層の電極がある。溶液を作用させる前は、電極は切断されていて、1滴の溶液が加えられたとき接続され、該2電極を通過する電流は、その滴中の分析物の量を示す。全mRNA(または任意の他の核酸またはポリペプチド)中の個々の遺伝子の検出は、該センサーアレイで実施される。たとえば40mMグルコース試験液のアリコート10μlが加えられるまで、個々のセンサーは開回路のままである。試験液を取り去ることにより、センサーを事実上作動しないようにする。アンペロメトリー測定が、適当な電圧で実行される。たとえば、実験パートに示す通り、アンペロメトリー測定は、0.36Vで実行された。この研究で報告された全ての電位は、Ag/AgCl参照電極を基準にしたが、該参照電極は、この化学組成に限定されない。
【0052】
μ−流体工学および微小電気機械システム(MEMS)、マイクロ・トータル・アナリティカル・システムズ(Micro Total Analytical Systems)(μTAS)およびバイオチップテクノロジーの近年の進歩は、多くの微量分析機器の小型化をもたらした。流体処理における小型化の利点としては、サンプルサイズ、応答時間、経費、分析性能、プロセス制御、集積化、スループットおよび自動化に関する効率性の改善などがある(de Mello,Anal.Bioanal.Chem.372:12-13,2002)。ある特定の態様によれば、本発明による装置は、微小電気医学システム(MEMS)および/または完全自動化マイクロ・トータル・アナリティカル・システムズ(Micro Total Analysis System(μ−TAS))に組み込まれる。
【0053】
別の態様によれば、本発明は、下記の成分:A)i)電極表面に固定される、またはii)電極表面上に捕獲プローブを固定することを可能にする手段を含む、少なくとも1つの捕獲プローブと;B)サンプルの核酸またはポリペプチドを標識するためのリガンド複合体であって、該核酸またはポリペプチドに結合するための第1の成分および捕獲リガンドである第2に成分を含むリガンド複合体と;C)i)該捕獲リガンドにより結合され得る酸化還元酵素、またはii)捕獲レセプターに結合した酸化還元酵素を含む複合体であって、該捕獲レセプターが、該捕獲リガンドに結合することができる、複合体と;D)酸化還元ポリマーと;を含む診断用キットを提供する。
【0054】
さて、本発明を全般的に説明してきたが、実例として提供されるのであって、本発明を限定するためではない、下記の実施例を参考にすることにより、もっと容易に理解されるであろう。
【実施例】
【0055】
[材料]
他に記載がない限り、試薬は、シグマ・アルドリッチ(Sigma-Aldrich)(米国ミズーリ州セントルイス(St Louis,MO,USA))から入手し、さらに精製せずに使用した。グルコースオキシダーゼ−アビジン複合体(GOx−A)は、ベクター・ラボラトリーズ(Vector Laboratories)(米国カリフォルニア州サンディエゴ(SanDiego,CA,USA))から購入した。シスプラチン結合ビオチン複合体(ビオチン−ケム−リンク(Biotin-Chem-Link))は、ロシュ・ダイアグノスチックス(Roche Diagnostics)(ドイツ、マンハイム(Mannheim,Germany))から入手した。[オスミウム(2,2´−ビピリジン)2C12]Cl([Os(bpy)2])、[オスミウム(4,4´−ジメチル−2,2´−ビピリジン)2C12]Cl、([Os(dmbpy)2])および[オスミウム(4,4´−ジアミノ−2,2´−ビピリジン)2C12]Cl([Os(dabpy)2])は、Layらにより提案された方法(Lay,P.A.ら、Inorg.Synth.24,291,1986、参照により本明細書に組み込む)に従って、K2OsC16から合成した。[オスミウム(2,2´−ビピリジン)2(1−メチルイミダゾール)Cl]C12([Os(bpy)2(Mim)])および[オスミウム(2,2´−ビピリジン)2(イミダゾール)Cl]C12([(Os(bpy)2(im)])複合体は、文献の手順(Sullivan,B.P.,Salmon D.& Meyer,T.J.Inorg.Chem.,1978,17,3334、参照により本明細書に組み込む)に従って、[Os(bpy)2C12]複合体から調製した。本研究で使用した酸化還元ポリマーは、[Os(bpy)2](I)、[Os(dmbpy)2](II)、[(Os(bpy)2(im)](III)、[Os(dabpy)2](IV)および[Os(bpy)2(Mim)](V)と部分的にイミダゾール複合化したポリ(ビニルイミダゾール−コ−アクリルアミド)であった。こうした酸化還元ポリマーの合成は、他所(Gao,Z.,Binyamin,G.,Kim,H.H.,Barton,S.C.,Zhang,Y.& Heller,A.Angew.Chem.Int.Ed.2002,41,810、参照により本明細書に組み込む)に記述されている。リン酸緩衝食塩水(PBS、pH7.4)を、洗浄および電気化学的測定に使用した。全てのオリゴヌクレオチドは、アルファ・DNA(Alpha−DNA)(カナダのモントリオール(Montreal,Canada))による特注品であった。
【0056】
[全mRNA抽出および標識]
ヒト乳房組織の全mRNAは、製造業者の推奨するプロトコールに従って、ダイナビーズ(Dynabeads)(商標)mRNAダイレクト(DIRECT)(商標)キット(ノルウェーのオスロにあるダイナルASA(Dynal ASA,Oslo,Norway))で抽出した。ロシュ・ダイアグノスティックス(Roche Diagnostics)により推奨された方法に従い、シスプラチン結合ビオチン複合体を使用して、全mRNAを直接標識した。スキーム1に示す通り、この複合体は、脂肪族リンカーによってシスプラチン複合体に結合されている、ビオチン部分からなる。一方の結合部位は、リンカー/ビオチン分子に共有結合しており、他方の部位は、切断可能な硝酸リガンドである。核酸鋳型(DNAまたはRNA)と共に水溶液中でインキュベートすることにより、硝酸塩が切断され、シスプラチンとG塩基およびA塩基のN7位との間に新しい複合体が形成される。配位化合物は、安定でかつ核酸変性に抵抗する。一般的に、全mRNA1.0μgを各標識反応で使用した。我々の実験では、シスプラチン−ビオチン複合体1.0μlを、全mRNA1.0μgと共に、最終体積20μlで、85℃で30分間インキュベートし、停止液5μlを加えることによって反応を終わらせた。最終生成物を−20℃で保存した。
【0057】
【化1】

スキーム1:シスプラチン−ビオチン複合体(ビオチン−ケム−リンク(Biotin-Chem-Link))の構造。
【0058】
[核酸センサーアレイ製作]
25〜50Åのチタン接着層に続いて2500〜3000Åの金を、スライドガラス上に電子ビーム蒸着させた。スクリーン印刷したAg/AgCl層および疎水性層が付いた厚さ1mmの模様付き粘着性スペーシング/絶縁層からなる、模様付きスペーサー/絶縁層を、図1(A、B)に示す通りに、組み立てた。個々のセンサー(上面図の点により図1(A、B)に描かれている)の直径は2.0mmであり、疎水性パターンの直径は4mmであった。50μM捕獲プローブ溶液のアリコート2.5μlを、センサー表面上に該溶液を注意深くのせることによって、プラズマ洗浄した個々のセンサーに作用させ、制御された環境で少なくとも12時間インキュベートした。未結合のプローブを洗い流した後、遮蔽のない金をブロックするために、エタノール中50μMの1−メルカプトドデカン(MD)のアリコート2.5μlを4〜6時間作用させた。水で完全にすすいだ後、該センサーアレイは準備が整っていた。該センサーアレイは、下記の通りに作動する。絶縁層で隔てられた2層の電極がある。溶液を作用させる前は、電極は切断されていて、1滴の溶液が加えられたとき接続され、該2電極を通過する電流は、その滴中の分析物の量を示す。全mRNA中の個々の遺伝子の検出は、該センサーアレイで実施した。40mMグルコース試験液のアリコート10μlが加えられるまで、個々のセンサーは開回路のままである。試験液を取り去ることにより、センサーを事実上作動しないようにする。アンペロメトリー測定は、0.36Vで実行された。この研究で報告された全ての電位は、Ag/AgCl参照電極を基準にした。
【0059】
[ハイブリダイゼーションおよび酵素標識]
全mRNA抽出物中の乳癌感受性遺伝子、すなわち、腫瘍タンパク質p53(TP53,1182bp)、熱ショックタンパク質90(HSP90,1632bp)、乳癌遺伝子1(BRCA1,5592bp)、およびヒストンH4(His4,312bp)を選択し、後述の通りに使用した。該システムをさらに検証するために、ハウスキーピング遺伝子、グリセルアルデヒド三リン酸デヒドロゲナーゼ(GAPDH,1008bp)もテストした。ヒト乳房組織から抽出された対応遺伝子のmRNAから転写されたcDNAを、分析された核酸として較正試験で使用した。10mM Tris−HCl−1.0mM EDTA−0.10M NaCl緩衝溶液(TE)を、ハイブリダイゼーション緩衝溶液として使用した。ハイブリダイゼーションは、55℃の水浴中で30分間実施した。核酸サンプルを、95℃(cDNA)および70℃(mRNA)で10分間変性させ、氷浴中で冷却してからセンサーアレイに加えた。ハイブリダイゼーション後、該センサーアレイを5.0mg/mlGOx−Aのアリコート2.5μlに室温で30分間暴露し、攪拌したPBS溶液中に5分間浸漬したが、これは、非DNA関連のGOx−A取り込みの排除を目的とする手法である。該酸化還元ポリマーの最大負荷を確実にするために、次いで、該電極を少なくとも10分間、5.0mg/ml酸化還元ポリマー溶液のアリコート2.5μlに暴露し、その後、PBSで完全にすすいだ。
【0060】
[電気化学的測定]
電気化学的測定は、ペンティアム(Pentium)(登録商標)コンピューターと連結した、低電流モジュールを備えた低ノイズCHインスツルメント・モデル660A(low-noise CH Instruments Model 660A)電気化学ワークステーションを用いて、ファラデー箱内で実施した。PBS緩衝溶液中および40mMグルコースを含むPBS緩衝溶液中で、サイクリック・ボルタンメトリーを実施した。電気化学的特性決定は、金電極で実施した。Ag/AgC1電極を参照電極として使用し、白金ワイヤーを対極として使用した。全mRNA中の個々の遺伝子の検出は、該センサーアレイで実施した。40mMグルコース試験液のアリコート10μlが加えられるまで、個々のセンサーは開回路のままである。試験液を取り去ることにより、センサーを事実上作動しないようにする。アンペロメトリー測定は、0.36Vで実行された。この研究で報告された全ての電位は、Ag/AgCl参照電極を基準にした。
【0061】
[検出スキーム]
直接ハイブリダイゼーションおよびmRNA+GOxA/酸化還元ポリマー二重層の形成によりmRNAを検出するためのスキームを図2に示す。テストの前に、チオール化オリゴヌクレオチド捕獲プローブとチオール分子との混合物を、自己集合によってセンサーアレイ表面上に固定した。次いで、該センサーアレイを該標的遺伝子溶液に暴露した。相補的ビオチニル化標的mRNAにハイブリダイズした後、アビジン−ビオチン相互作用を介して、GOx−A標識をシステムに導入した。次いで、多層静電自己集合により、酸化還元ポリマー被覆をセンサーアレイに導いた。該酸化還元ポリマー層は、酵素反応のための仲介層の役割を果たす。該酸化還元ポリマー層は、標的遺伝子に付着した酵素標識を電気化学的に活性化する。基質分子の存在下で、該基質の酵素的酸化により生じた電流はアンペロメトリーで検出され、これは、サンプル溶液中の標的mRNA濃度に直接相関している。
【0062】
[シスプラチン−ビオチン複合体標識mRNAの合成]
RT−PCR工程中にビオチンタグ付きヌクレオチドを使用して核酸を標識する代わりに、シスプラチン−ビオチン複合体とともに核酸鋳型をインキュベートしても、申し分のない標識をもたらす(図3)。図4に示す通り、TP53を例にとると、シスプラチン−ビオチン複合体との反応後、全長TP53mRNAはその完全性を保持した。非標識TP53(レーン2)と比べて、反応生成物(レーン3)の移動度シフト低いことから、シスプラチン−ビオチン複合体が該mRNA鎖に首尾よく組み込まれたことが示唆される。定量分析は、TP53mRNAの塩基の8〜10%が標識されたことを示した(Hoevel,T.,Holz,H.& Kubbies,M.Biotechniques 1999,27,1064)。この標識の効率は、次のGOx−A負荷に十分であった。実験は、GOx−Aを、mRNA分子上のあらゆるシスプラチン−ビオチン部分に付着させることは不可能なことを示した。平均で、40〜45塩基当たり1つのGOx−A複合体が、該mRNA分子に付着した、またはビオチン部分の〜30%に付着した。最高の感度および最良の再現性を達成するために、シスプラチン−ビオチン標識工程およびGOx−A標識工程の両者を最適化して、ビオチン標識およびGOx−A標識の最大負荷を確実にした。同様に、シスプラチン−ビオチン複合体とともに全mRNAを85℃で30分間、インキュベートする際に、多数のビオチン部分を、全ての他のmRNA分子に組み入れた。
【0063】
[ハイブリダイゼーションおよび標的遺伝子検出の実現可能性試験]
該センサーアレイ上の混合形自己集合単層の形成を、表面被覆率および電気化学的測定により、定期的にモニターした。得られた全てのデータは、センサー表面上に、オリゴヌクレオチド捕獲プローブおよび空間充填1−メルカプトドデカン分子を含む、1層のコンパクトな混合分子層を示した。この研究で使用した酸化還元ポリマーはプラスに帯電しており、またセンサー表面はマイナスに帯電していたため、該センサーを5.0mg/ml 酸化還元ポリマー溶液中に短時間浸漬することによって、多層静電自己集合により、該電極上に核酸/酸化還元ポリマー二重層が形成された(Decker,G.Science 1997,277,1231)。図5曲線「a]に示す通り、該二重層被覆センサーは、極めて可逆的な表面固定酸化還元対に期待される通りに作用し、徹底的な洗浄後および−0.30〜+0.60Vの多数の繰り返し電位サイクル後に、ほとんど変化がなく、極めて安定した表面限定静電二重層であることを示した(Bard,A.J.& Faulkner,L.R.Electrochemical Methods.John Wiley & Sons:New York,2001,p590)。このような結果から、オスミウム酸化還元中心の全てが、電極表面に到達して、可逆的不均一電子移動に進めることが究明された。陰イオン種(捕獲プローブ)の量にもよるが、結合したオスミウム酸化還元中心の総量、1.5〜2.5×10-10モル/cm2は、バックグラウンド電流から補正された酸化または還元ピーク電流下面積から推定した。次の、フェリシアン化物溶液中でのボルタンメトリーテストは、裸の金電極で得られたものと全く同じボルタモグラムを示した。これらの変化は、オスミウム酸化還元中心を電極表面に最も接近させる、二重層の形成に起因する電子トンネル経路の減少に原因があるとされ、またより重要なことは、二重層中のオスミウム酸化還元中心の速い電子移動速度であり、下にある絶縁単層を横切る電子トンネルの効果を最小限に抑え、また溶液種から該電極表面への電子移動を仲介した(Xie,H.;Yu,Y.H.;Mao,P:L.;Gao,Z.Nucleic Acids Res.2004)。後で示す通り、核酸およびGOx−Aがフィルム中に存在することによって、該酸化還元ポリマーの電気化学は感知できるほど変化しなかった。
【0064】
最初のハイブリダイゼーションテストで、全mRNA中の全長TP53 mRNAを標的遺伝子として選択した。ハイブリダイゼーションの前に、該mRNA混合物を70℃で10分間、変性させた。RT−PCRに使用した全てのプライマーは、1st BASE(シンガポール)による特注品であった。プライマー配列は、下記の通りであった:GAPDHセンス、5´−ATGGTGAAGGTCGGTGTCAA−3´(配列番号1);GAPDHアンチセンス、5´−TTACTCCTTGGAGGCCATGT−3´(配列番号2);TP53センス、5´−ATGGAGGATTCACAGTCGGA−3´(配列番号3);およびTP53アンチセンス、5´−TCAGTCTGAGTCAGGCCC−3´(配列番号4)。
【0065】
【表1】

【0066】
TP53遺伝子に相補的な配列を有するオリゴヌクレオチドは、センサー表面上に固定され、捕獲プローブの役割を果たした。55℃で30分間ハイブリダイズしたとき、該混合物からのTP53 mRNAは、その相補的捕獲プローブに選択的に結合され、センサー表面上に固定された。ハイブリダイゼーション緩衝溶液で完全にすすぎ、ハイブリダイゼーション非関連のmRNAの全てを洗い流した。次の、Gox−A複合体とのインキュベーション中に、GOx−A標識は、ビオチン−アビジン相互作用によってセンサー表面に導かれた。酸化還元ポリマー被覆適用後の、該センサーの典型的なサイクリックボルタモグラムを、図5、曲線「b」に示す。曲線「b」に見られる通り、酸化工程でも還元工程でも、TP53 mRNA処理センサーでかなり高いピーク電流が確認され、ほぼ確実に、捕獲されたmRNA分子のため、増量した酸化還元ポリマーがセンサー表面に導かれたことを示すが、これによって、より多くの負電荷がセンサー表面に導かれ、該センサー上に微小三次元構造が作り出された。酸化還元ポリマー溶液中でセンサーを処理した結果、混合微小三次元mRNA+GOx−A/酸化還元ポリマー二重層が形成された。酸化還元ポリマーの総量、5.9〜8.6×10-10モル/cm2は、酸化還元ポリマー単層の総量、〜10-11モル/cm2よりかなり多く、該酸化還元ポリマー鎖が、三次元ネットワーク構造で電極上に密に「グラフト結合」されたことが分かる。この二重層はまた、非常に迅速な電子交換プロセスも有する:500mV/秒までの走査速度で、ボルタンメトリーによる電気的還元波および電気的酸化波のピーク電流の分離は、GOx−A標識を含む二重層では、一般に25mV未満である。徹底的な洗浄および電位サイクリングは、目だった変化をもたらさず、該酸化還元ポリマーは、静電二重層の形成により、またある程度まで、第1の核酸層との相互作用を介して、該センサー表面にてしっかりと結合されることが分かった。図5、曲線「c」は、ハイブリダイゼーション後の、40mMグルコースを含むPBS中でのボルタモグラムであった。二重層にグルコースオキシダーゼが存在するため、明白な接触電流が確認された。対照実験では、非相補的捕獲プローブは、TP53を捕獲することができず、その結果、酵素標識はセンサー表面に結合することができなかった。ボルタンメトリーで顕著な接触電流は得られなかった。
【0067】
図6および表2から分かる通り、酸化還元ポリマー被覆の構造差が、その仲介能力に大きく影響を与えた。
【0068】
【表2】

【0069】
ポリマー(I)、(II)、(III)、(IV)および(V)は、セクション「材料」に記載のものを指す。
【0070】
GOxの等電点は約4.0であるため、2つの正電荷を持つオスミウム酸化還元中心が、正電荷1つのものより高かった酸化還元ポリマーの接触電流は、GOx−Aとオスミウム酸化還元中心の静電気相互作用が、仲介成功における重要な因子の1つであることを意味した(Trudeau,F.,Daigle,F.& Leech,D.Anal.Chem.1997,69,882)。酸化還元ポリマーのアクリルアミド部分はまた、二重層の安定化をも助け、またオスミウム酸化還元中心をGOxに近接近させるのにも役立った。1−置換イミダゾールリガンドを含む酸化還元ポリマーで発生した接触電流は、非置換イミダゾールを含むものより小さいことが確認され、GOxのFAD酸化還元中心に近い、GOx上のイミノ基とカルボキシル基との間の水素結合は、電子交換をさらに容易にしたことが示唆される。III被覆(該酸化還元ポリマーIII)を使用したセンサーで発生した同一実験条件で、ボルタンメトリー接触電流は最高であり、IV被覆(該酸化還元ポリマーIV)を用いたセンサーで確認されたものより3倍高いと測定された。したがって、最高の電流感度を得るために、その後の実験ではIIIを使用した。
【0071】
別のテストでは、全mRNA 20ng中のTP53とのハイブリダイゼーション後、完成したセンサーを、PBS緩衝溶液に浸漬した。40mMグルコースをPBS溶液に添加したとき、アンペロメトリーで酸化電流は、0.36Vで2.7nA増加した(対Ag/AgCl)(図5、曲線a)。非相補的捕獲プローブをセンサー表面上に固定した対照実験では、僅か0.18nAの増分が確認された(図7、曲線「b」)。アンペロメトリーの結果は、先に得られたサイクリック・ボルタモグラムとよく一致し、全mRNA中に何万もの遺伝子があることを考慮すると、TP53は全mRNA混合物から高い特異性で首尾よく検出されることが再確認された。同様の方法で、センサー表面上に固定される捕獲プローブを変えることによって、全ての他の遺伝子も全mRNAから首尾よく検出された。
【0072】
[一塩基不一致の標的遺伝子の検出]
完全に相補的な捕獲プローブを、塩基の1つが不一致のプローブと取り替えることによって、標的遺伝子を検出するためのアッセイの特異性を、全mRNA 40ngでさらに評価した。図8に示す通り、完全に一致した配列の場合、電流増分は0.80〜9.2nAの範囲であったが、1塩基不一致の場合、増分は、非相補的配列(対照センサー)で確認された0.19nAより僅かに高い0.23nAまで、80%も減少した。
【0073】
[標的遺伝子用較正曲線]
乳癌の大部分は、4群に分類される乳癌感受性遺伝子と、何らかの形で関係があり、こうした遺伝子の鋭敏な検出および正確な定量化を提供できるであろう技術は、早期診断および予後診断を容易にするのに役立つ(Martin,K.J.ら、Cancer Res.2000,60,2232)。この研究で、シスプラチン標識cDNAを標準として使用し、TE緩衝溶液で様々な濃度に希釈した後、使用した。0.10fM〜2.0pMの範囲の、異なる濃度のcDNAを含む分析物溶液をテストした。対照実験用に、非相補的捕獲プローブを、センサー作製で使用した。図9に示す通り、この範囲内で、電流は、cDNAの濃度とともに直線的に増加した。TP53、HSP90、BRCA1、His4およびGAPDHのダイナミックレンジは、それぞれ2.0〜400fM、2.0〜400fM、1.0〜300fM、2.0〜600fMおよび1.5〜400fMで、検出限界は、0.20、0.45、0.95、0.10および0.27fgに対応する、1.0、1.0、0.50、2.0および1.0fMであった。サンプル量を考慮に入れると、提案された方法を使用して、800コピーという少量の核酸分子が首尾よく検出された。これは、電気化学的に検出されたゲノム核酸の報告された最低量であると思われる。サンドイッチ型アッセイに基づいた先の結果(Patolsky,F.,Lichtenstein,A.,Kotler,M.& Willner,I.Angew.Chem.Int.Ed.2001,40,2261;Drummond,T.G.,Hill,M.G.,& Barton,J.K.Nat.Biotechnol.2003,21,1192)と比較して、ゲノム核酸分析の感度は、多数の酵素標識スキームを採用することによって大幅に改善され、その結果は、長さ20〜50塩基の短い合成オリゴヌクレオチドで得られるものに匹敵した。先に報告されたサンドイッチ型アッセイでは(Patolsky,F.,Lichtenstein,A.,Kotler,M.& Willner,I.Angew.Chem.Int.Ed.2001,40,2261;Drummond,T.G.,Hill,M.G.,& Barton,J.K.Nat.Biotechnol.2003,21,1192)、酵素標識と標的核酸分子の比率は、一定であった。該センサー表面上に固定された捕獲プローブの量およびハイブリダイゼーション効率が、遺伝子のサイズにもかかわらず、該表面に結合される標的核酸の量を決定し、それによって酵素標識の量が決定される。事実、より長い核酸分子では、はるかに低い電流感度が確認された。しかし、この提案されたモデルでは、1つの核酸鎖上の多数のシスプラチン−ビオチン標識が、酵素標識負荷を大きく増加し、したがって酵素反応からの対応する応答が増大し、したがって、現実世界サンプルを扱うとき、該核酸バイオセンサーの感度および検出限界が実質的に改善された。たとえば、1000塩基長の核酸では、50塩基当たり1つの酵素標識があれば、全シグナルは、20倍増加する可能性がある。シスプラチン−ビオチン複合体によって、核酸分子を多数の酵素分子で標識することにより、感度は、遺伝子の長さによって、サンドイッチ型アッセイと比較して15〜40倍上昇した。この研究で得られた感度は、該サンドイッチ型手法の短い合成オリゴヌクレオチド(50量体)で確認されたものに匹敵し(Patolsky,F.,Lichtenstein,A.,Kotler,M.& Willner,I.Angew.Chem.Int.Ed.2001,40,2261;Drummond,T.G.,Hill,M.G.,& Barton,J.K.Nat.Biotechnol.2003,21,1192)、短い合成オリゴヌクレオチドサンプルおよびゲノム核酸サンプルの両者とも、酵素/塩基比は、非常に小さい差異を有し、言い換えれば、類似した感度の分析シグナルを発生させることが分かった該酵素標識/塩基比は、核酸分子の長さにより、1/40〜100の範囲であると推定された。理論的には、この比率が全ての遺伝子で不変のままであれば、全ての遺伝子で、塩基当たり同じ電流感度が得られるはずである。しかし、塩基当たりの感度は、核酸長依存的であることは、特筆すべきであった。たとえば、BRCA1の感度は、遺伝子中に塩基(5592bp)が有意に多いため、他の遺伝子と比較して2倍を超えていた。しかし、塩基当たりの電流感度という意味では、BRCA1は最低であった。原則として、同一モル濃度で、感度は遺伝子中の塩基数におおよそ比例するはずであるが、この傾向は、本実験で確認されなかった。試験した遺伝子の中で一番短い、His4(312bp)は、塩基当たり、最高の電流感度を有していた。これは、たぶん、センサー表面上の核酸分子の立体障害および三次元パッキングが原因で、全てのビオチン部分がGOx−A複合体に平等に接近できるとは限らないためであろう。ビオチン部分の一部は、より長いDNA分子の内部に深く「埋没」している可能性もあるため、GOx−A複合体にとって、より短い核酸鎖(短遺伝子)に付着したビオチン部分と相互に作用する方がはるかに容易であろう。
【0074】
[ヒト乳房組織における乳癌感受性遺伝子の検出]
全mRNAをヒト乳房組織から抽出した後、4つの代表的な乳癌感受性遺伝子、すなわち、TP53、HSP90、BRCA1、His4、に加えてハウスキーピング遺伝子GAPDHを、該センサーアレイでテストした。外科手術の直後に、乳房組織サンプルをmRNA抽出まで液体窒素で保存した。組織を機械的にホモジナイズし、磁気層抽出(ダイナビーズ(商標)mRNAダイレクト(商標)キット(Dynabeads(商標)mRNA DIRECT(商標)Kit;ノルウェーのオスロにあるダイナルASA(Dynal ASA,Oslo,Norway))を用いて全mRNAを抽出した。RT−PCR産物のGAPDH cDNAを、内部標準として使用した。mRNAレベルを該センサーアレイで定量化し(各遺伝子につき10重複および合計14対照)、正常組織におけるハウスキーピング遺伝子GAPDHのmRNAに対する比率として計算した。表3から分かる通り、BRCA1およびHis4の過少発現およびHSP90の過剰発現が乳癌組織で認められたが、たぶん、癌組織における発現変化ではなく、TP53突然変異の高い確率のため、TP53は、癌と正常組織との間でほとんど差を示さず、また変異したTP53遺伝子もまた、該センサーにより捕獲された。
【0075】
【表3】

【0076】
これらの結果は、幾つかの以前の報告とよく一致している(30 Rosen,B.M.;fan,S.;Pestell,R.G.;Goldberg,L.D.J.Cell.Physiol.2003,19-41;Pavelic,K.;Gall-Troselj,K,;J.Mol.Med.2001,79,56'6-573;Saad,Z.;Bramwell,V.H.;Wilson,S.M.,O'Malley,F.P.,Jeacock,J.;Chambers,A.F.Lancet,1998,351,1170-1173.33 Gullans,S.R.Nature Genet.2000,26,4-5)。しかし、有用な臨床情報は、患者の病歴と関連した統計学的に有効な数のサンプルから得られるに過ぎない。それにもかかわらず、これらのデータから、現実世界サンプルの直接分析における、該センサーアレイの適用性が裏付けられる。mRNA検出の成功に必要な全mRNAの最低量は、約1.5ngであった。この全mRNAプールに約30000遺伝子があると考えると、各特異的mRNAの実際の検出可能限界は、平均でフェムトグラム未満であり、較正試験とよく一致している(上記参照)。個々の遺伝子のmRNAアッセイ関連の相対的誤差は、一般に、2.0〜300fMの濃度範囲で25%未満である。したがって、2つの条件の間で発現の差が1倍未満の遺伝子の同定が可能であった。最新のテクノロジーを使用しても、2倍異なる遺伝子発現を検出することは非常に困難である。3倍を超える遺伝子発現差は、確実に識別できるに過ぎない(Saad,Z.;Bramwell,V.H.;Wilson,S.M.,O'Malley,F.P.,Jeacock,J.;Chambers,A.F.Lancet,1998,351,1170-1173.33 Gullans,S.R.Nature Genet.2000,26,4-5)。しかし、多くの場合、最も興味深い遺伝子の多く発現は、様々な条件で少し異なるに過ぎない。遺伝子発現の微小変化を検出できる能力を判定するために、全mRNA 50ng中のTP53 mRNAで多重アッセイを実施した。様々な量の全mRNAをテスト溶液に添加することによって、TP53の発現レベルを模倣した。図10から、提案のアッセイが、1倍未満の遺伝子発現の差を明確に検出できることが明らかに分かる。図10から分かる通り、0.80倍の全mRNAを添加した後、TP53のアンペロメトリー応答は、テスト溶液のそれから完全に区別された。これによって、発現量の異なる遺伝子を、より正確に同定することが可能になり、余計な反復を実行する必要性が減少する。加えて、感度が非常に向上して、蛍光に基づくアッセイのものより少なくとも1000倍鋭敏になったため、該提案の方法はまた、全mRNAの量もマイクログラムからナノグラムに低減する。
【0077】
[結論]
本明細書に記載の電気化学的センサーアレイは、迅速で超高感度かつ非放射性のゲノムmRNAに基づいており、またPCR増幅せずに、全mRNAから乳癌感受性遺伝子およびハウスキーピング遺伝子を直接検出することができる。シスプラチン−ビオチン複合体を使用することにより、mRNAは、一段階非酵素反応で、ビオチン部分で直接標識された。ハイブリダイゼーション工程およびmRNA+GOx−A/ポリマーアクティベーター二重層の形成を用いて、特異的遺伝子がアンペロメトリーにより、高感度および特異性で検出された。mRNAサンプルを多数の酵素分子で標識することにより、感度は、サンドイッチ型アッセイと比較して大幅に、15〜40倍も上昇した。ヒト乳房組織癌からの感受性遺伝子全長mRNAは、8×8センサーアレイを使用して、フェムトモル濃度レベルで選択的に検出された。1倍未満の遺伝子発現差は、首尾よく検出された。mRNAの検出可能な最低量は、全mRNA 1.5ng中に約800コピーであった。該センサーアレイを、組織消化およびサンプル調製から核酸単離および定量化まで、完全自動化微小電気機械システムに組み込むことにより、分子診断、特に早期癌診断、ポイント・オブ・ケアおよび現場使用のための、より速くかつ安価で簡単な解決法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0078】
【図1】本発明によるセンサーアレイ装置の上面図(A)および分解組立図(B)を示す図である。
【図2】RNA/酸化還元ポリマー二重層モデルを使用するRNAアッセイの略図である。
【図3】シスプラチン標識メカニズムを示す図である。
【図4】シスプラチン−ビオチン複合体標識TP53のアガロースゲル電気泳動結果を示す図である。サンプルは、2.5%アガロースゲルを用いて、0.090M Tris−0.090M ホウ酸−0.0020M EDTA緩衝溶液中、10V/cmで実行した。
【図5】(a)ハイブリダイゼーション前および(b)全mRNA 500ng中のTP53とのハイブリダイゼーション、GOX−Aとのインキュベーション後;および(c)40mMグルコースを該PBSに添加後の、PBS中25mV/秒におけるセンサーのサイクリック・ボルタモグラム。VI被覆を全てのセンサーに適用した。条件は、実験のセクションに詳述する。
【図6】全mRNA 500ng中のTP53とのハイブリダイゼーション、GOX−Aとのインキュベーションおよび酸化還元ポリマー被覆の適用(aおよびc)後;および40mMグルコースをPBSに添加後(bおよびd)の、PBS中25mV/sの、センサーのサイクリックボルタモグラム。IV被覆を(a)および(b)に適用し;およびIII被覆を、(c)および(d)に適用した。条件は、実験のセクションに詳述する。
【図7】(a)相補的捕獲プローブおよび(b)非相補的捕獲プローブを用いた、全mRNA 20ng中のTP53とのハイブリダイゼーション、GOX−AとのインキュベーションおよびIII被覆の適用後の、アンペロメトリー応答。平衡電位:0.36V、40mMグルコース。条件は、実験のセクションに詳述する。
【図8】全mRNA 40ng中の遺伝子に相補的な、一塩基不一致の、および該遺伝子に非相補的な、捕獲プローブを用いた、mRNA混合物中でのハイブリダイゼーション後の、センサーのアンペロメトリー応答を示す図である。条件は、図7の場合と同じである。
【図9】異なる濃度における乳癌感受性遺伝子のアンペロメトリー応答を示す図である。条件は、図7の場合と同じである。
【図10】アンペロメトリー応答(6反復)の、TP53mRNA発現レベル依存性。様々な量の全mRNAを、全mRNA 50ngを含むテスト溶液に添加することにより、発現レベルを模倣した。条件は図7の通りである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
核酸またはポリペプチドのサンプル中の、少なくとも1つの標的核酸または標的ポリペプチドを検出および/または定量化する方法であって、
a)核酸またはポリペプチドを含むサンプルを供するステップと;
b)前記核酸またはポリペプチドをリガンド複合体で標識するステップであって、前記リガンド複合体が、前記核酸またはポリペプチドに結合する第1の成分および捕獲リガンドである第2の成分を含むステップと;
c)前記核酸−リガンド複合体またはポリペプチド−リガンド複合体を、少なくとも1つの捕獲プローブと接触させるステップであって、前記捕獲プローブが、少なくとも1つの標的核酸または標的ポリペプチドとハイブリダイズまたは結合するステップと;
d)i)前記捕獲リガンドにより認識される酸化還元酵素、またはii)捕獲レセプターに結合した酸化還元酵素を含む複合体であって、前記捕獲レセプターが前記捕獲リガンドに結合できる複合体を加えるステップと;
e)酸化還元ポリマーを加えるステップであって、前記酸化還元ポリマーが前記酸化還元酵素に結合し、それによって、電子が、前記酵素から前記酸化還元ポリマーを経て電極表面に移動するステップと;
f)前記標的核酸または標的ポリペプチドの存在を検出および/または定量化するステップ;
を含む方法。
【請求項2】
前記捕獲プローブが、電極表面上に固定されているか、または電極表面上に固定することを可能にする手段を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記捕獲プローブが、前記標的核酸の少なくとも1部分とハイブリダイズするオリゴヌクレオチドである、請求項1〜2に記載の方法。
【請求項4】
前記核酸のサンプルが、mRNA、cDNAおよび/またはゲノムDNAのサンプルである、請求項1〜3に記載の方法。
【請求項5】
前記核酸のサンプルが全mRNAのサンプルであり、前記捕獲プローブが少なくとも1つの標的mRNAにハイブリダイズする、請求項1〜4に記載の方法。
【請求項6】
前記核酸のサンプルが、cDNAおよび/またはゲノムDNAのサンプルであり、前記捕獲プローブが、少なくとも1つの標的cDNAまたは少なくとも1つの標的ゲノムDNAフラグメントにハイブリダイズする、請求項1〜4に記載の方法。
【請求項7】
前記捕獲プローブが、標的ポリペプチドに結合する抗体またはリガンドである、請求項1〜2に記載の方法。
【請求項8】
前記ポリペプチドのサンプルがタンパク質のサンプルであり、前記捕獲プローブが少なくとも1つの標的タンパク質に結合する、請求項1〜2、7に記載の方法。
【請求項9】
前記核酸または前記ポリペプチドに結合する前記第1の成分が、シスプラチン、白金結合シアニン3、白金結合シアニン5であり、前記捕獲リガンドが、ビオチン、ジゴキシゲニン、捕獲レセプターに結合する抗体または抗原、前記酸化還元酵素に結合する抗体、アプタマー、タンパク質および/またはタンパク質レセプターである、請求項1〜8に記載の方法。
【請求項10】
前記捕獲レセプターが、アビジン、ストレプトアビジン、抗ジゴキシゲニン、前記捕獲リガンドに結合している抗原または抗体、アプタマー、タンパク質および/またはタンパク質レセプターである、請求項1〜9に記載の方法。
【請求項11】
前記酸化還元酵素が前記捕獲リガンドに結合し、前記捕獲リガンドが抗体である、請求項1〜9に記載の方法。
【請求項12】
前記酸化還元酵素が、オキシダーゼ、デヒドロゲナーゼ、モノオキシゲナーゼ、ヒドロキシラーゼ、ジオキシゲナーゼ、ペルオキシダーゼまたはヒドロゲナーゼである、請求項1〜11に記載の方法。
【請求項13】
前記オキシダーゼが、グルコースオキシダーゼ(GOX)、ラクターゼオキシダーゼ(LAX)、ピルビン酸オキシダーゼ(PYX)、チロシナーゼまたはそれらの混合物である、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記酸化還元ポリマーが、酸化還元活性なポリマー材料、ポリ(ビニルイミダゾール−コ−アクリルアミド)、[Os(bpy)2]、[Os(dmbpy)2]、[(Osbpy)2(im)、[Os(dabpy)2]および/または[Os(bpy)2(Mim)]と部分的にイミダゾール複合化したポリ(ビニルイミダゾール−コ−アクリルアミド)、ポリ[ビニルピリジンOs(ビス−ビピリジン)2Cl−コ−アリルアミン](PVP−Os−AA)、西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)、フェロセンをベースとするポリマー、および/またはルテニウムをベースとするポリマーである、請求項1〜13に記載の方法。
【請求項15】
前記表面電極が、金、白金、グラッシーカーボン、グラファイト、カーボンペースト(CPE)または電流測定用カーボン−エポキシ複合材で作られている、請求項2〜14に記載の方法。
【請求項16】
前記方法が、全mRNAサンプル中の特異的遺伝子を直接検出および/または定量化するための方法である、請求項1〜6、9〜15に記載の方法。
【請求項17】
前記サンプルが哺乳動物サンプルである、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記サンプルがヒトサンプルである、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記mRNAサンプルが、組織から抽出される、請求項16〜18に記載の方法。
【請求項20】
前記リガンド複合体がシスプラチン−ビオチンであり、前記捕獲レセプターがアビジンまたはストレプトアビジンである、請求項16〜19に記載の方法。
【請求項21】
前記方法が、1つ以上の標的遺伝子を検出および/または定量化するための診断方法である、請求項16〜20に記載の方法。
【請求項22】
前記標的遺伝子が、腫瘍タンパク質p53(TP53)、熱ショックタンパク質90(HSP90)、乳癌遺伝子1(BRCA1)、およびヒストンH4(His4)の少なくとも1つである、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記標的核酸の検出限界が、0.20〜1.0fgである、請求項1〜22に記載の方法。
【請求項24】
前記検出された標的核酸がmRNAである、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記標的mRNAが、前記乳癌遺伝子1(BRCA1)に対応する、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記方法が、センサーアレイで実行される、請求項1〜25に記載の方法。
【請求項27】
前記センサーアレイが、支持材;前記支持材上に適用された第1の電極材;前記電極材上に適用されたスペーサー/絶縁層、および第2の電極材を含む、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記電極材が、金、白金、グラッシーカーボン、グラファイト、カーボンペースト(CPE)または電流測定用カーボン−エポキシ複合材で作られている、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記スペーサー/絶縁層が、底部から上部にかけて、粘着性のスペーシング/絶縁層、スクリーン印刷したAg/AgCl層および疎水性層を含む、請求項27〜28に記載の方法。
【請求項30】
前記支持材がガラス支持材である、請求項26〜29に記載の方法。
【請求項31】
微小電気医学システム(MEMS)および/または完全自動化マイクロ・トータル・アナリシス・システム(Micro Total Analysis System)(μ−TAS)に組み込まれている、請求項1〜30に記載の方法。
【請求項32】
A)i)電極表面上に固定されているか、またはii)電極表面上に固定するための手段を含む、少なくとも1つの捕獲プローブと;B)サンプルの核酸またはポリペプチドを標識するためのリガンド複合体であって、前記核酸またはポリペプチドに結合する第1の成分および捕獲リガンドである第2の成分を含むリガンド複合体と;C)i)前記捕獲リガンドによって結合され得る酸化還元酵素、またはii)捕獲レセプターに結合された酸化還元酵素を含む複合体であって、前記捕獲レセプターが、前記捕獲リガンドに結合することができる複合体と;D)酸化還元ポリマーとを含む、診断用キット。
【請求項33】
前記捕獲プローブが、標的核酸に特異的なオリゴヌクレオチドである、請求項32に記載のキット。
【請求項34】
前記捕獲プローブが、標的ポリペプチドに結合することができる抗体またはリガンドである、請求項32に記載のキット。
【請求項35】
前記核酸または前記ポリペプチドに結合する前記第1の成分が、シスプラチン、白金結合シアニン3、白金結合シアニン5であり、前記捕獲リガンドが、ビオチン、ジゴキシゲニン、捕獲レセプターに結合する抗体または抗原、または前記酸化還元酵素に結合する抗体、アプタマー、タンパク質および/またはタンパク質レセプターである、請求項32〜34に記載のキット。
【請求項36】
前記捕獲レセプターが、アビジン、ストレプトアビジン、抗ジゴキシゲニン、前記捕獲リガンドに結合する抗原または抗体、アプタマー、タンパク質および/またはタンパク質レセプターである、請求項32〜35に記載のキット。
【請求項37】
前記酸化還元酵素が、オキシダーゼ、デヒドロゲナーゼ、モノオキシゲナーゼ、ヒドロキシラーゼ、ジオキシゲナーゼ、ペルオキシダーゼまたはヒドロゲナーゼである、請求項32〜36に記載のキット。
【請求項38】
前記オキシダーゼが、グルコースオキシダーゼ(GOX)、ラクターゼオキシダーゼ(LAX)、ピルビン酸オキシダーゼ(PYX)、チロシナーゼまたはそれらの混合物である、請求項37に記載のキット。
【請求項39】
前記酸化還元ポリマーが、酸化還元活性なポリマー材料、ポリ(ビニルイミダゾール−コ−アクリルアミド)、[Os(bpy)2]、[Os(dmbpy)2]、[(Osbpy)2(im)、[Os(dabpy)2]および/または[Os(bpy)2(Mim)]と部分的にイミダゾール複合化したポリ(ビニルイミダゾール−コ−アクリルアミド)、ポリ[ビニルピリジンOs(ビス−ビピリジン)2Cl−コ−アリルアミン](PVP−Os−AA)、西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)、フェロセンをベースとするポリマー、および/またはルテニウムをベースとするポリマーである、請求項32〜38に記載のキット。
【請求項40】
サンプル分析物中の標的核酸および/またはポリペプチドを検出するためのセンサーアレイ装置であって、スペーサー/絶縁層で隔てられた第1および第2の電極を含み、前記電極が、前記分析物を前記第2の電極に作用させたとき、接続される、装置。
【請求項41】
前記2つの電極を通過する電流が、作用させた分析物の量を反映する、請求項40に記載の装置。
【請求項42】
前記第1の電極が、支持材上に適用される、請求項40〜41に記載の装置。
【請求項43】
捕獲プローブが、前記第1の電極の表面上に適用され、前記捕獲プローブが、前記分析物の少なくとも1つの標的核酸または標的ポリペプチドとハイブリダイズまたは結合することができる、請求項40〜42に記載の装置。
【請求項44】
前記電極が、金、白金、グラッシーカーボン、グラファイト、カーボンペースト(CPE)および/または電流測定用カーボン−エポキシ複合材で作られている、請求項40〜43に記載の装置。
【請求項45】
前記スペーサー/絶縁層が、底部から上部にかけて、粘着性のスペーシング/絶縁層、スクリーン印刷したAg/AgCl層および疎水性層を含む、請求項40〜44に記載の装置。
【請求項46】
前記支持材がガラスである、請求項40〜45に記載の装置。
【請求項47】
前記分析物が、全mRNAのサンプルである、請求項40〜46に記載の装置。
【請求項48】
前記分析物が、cDNAまたはゲノムDNAのサンプルである、請求項40〜46に記載の装置。
【請求項49】
前記装置が、微小電気医学システム(MEMS)および/または完全自動化マイクロ・トータル・アナリシス・システム(Micro Total Analysis System)(μ−TAS)に組み込まれている、請求項40〜48に記載の装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公表番号】特表2007−534961(P2007−534961A)
【公表日】平成19年11月29日(2007.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−510663(P2007−510663)
【出願日】平成16年4月29日(2004.4.29)
【国際出願番号】PCT/SG2004/000113
【国際公開番号】WO2005/106034
【国際公開日】平成17年11月10日(2005.11.10)
【出願人】(504354117)エイジェンシー・フォー・サイエンス,テクノロジー・アンド・リサーチ (17)
【Fターム(参考)】