説明

核酸を輸送するための微粒子

【課題】核酸を細胞内に輸送する方法、貪食作用に適したサイズをもつ、核酸を含む微粒子を、核酸の完全性を損なうことなく、ポリヌクレオチドを貪食細胞の中に輸送するための有効なベクターを提供する。
【解決手段】ポリマー基質と核酸発現ベクターとからなる微粒子の調製物。このポリマー基質には、水への溶解度が約1 mg/lよりも小さい、一つ以上の合成ポリマーが含まれる。少なくとも90%の微粒子が、約100ミクロンよりも小さな直径を有する。この核酸は、その少なくとも50%が閉環状になっているRNAか、その少なくとも50%がスーパーコイル化した環状プラスミドDNA分子のいずれかである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の背景
本発明は、核酸を細胞内に輸送する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
遺伝子治療は、例えば、嚢胞性線維症などの遺伝性疾患を治療するのに、非常に有望な技術である。また、遺伝子治療は、例えば、ガン細胞の中での発現を狙った細胞傷害性タンパク質をコードする遺伝子のように、自然には宿主細胞に存在しない遺伝子からの遺伝子産物を発現させたいときにも用いることができる。
【0003】
遺伝子治療は、いくつかの種類に分類することができる。嚢胞性線維症、フェニルケトン尿症、または重症複合免疫不全症(SCID)などの遺伝性疾患におけるように、哺乳動物の全生存期間中にわたり、欠陥遺伝子を置換することが望ましい場合もある。他の場合には、例えば、感染期間中など、一定の期間だけ、治療用ポリペプチドを発現する遺伝子による治療が望ましい場合もある。アンチセンスオリゴヌクレオチドの形、またはリボザイムの形になった核酸も、治療上用いられる。さらに、この核酸によってコードされるポリペプチドを、哺乳動物における免疫応答の効果的な刺激因子とすることができる。
【0004】
遺伝子を細胞の中に導入するために、ウイルスベクターによる感染、バイオリスティク法による導入、「裸」のDNAの注射(米国特許第5,580,859号:特許文献1)、およびリポソームまたはポリマー粒子による輸送など、さまざまな技術が用いられてきた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許第5,580,859号
【発明の概要】
【0006】
本発明は、貪食作用に適したサイズをもつ、核酸を含む微粒子を、核酸の完全性を損なうことなく製造できるという所見に基づいている。これらの微粒子は、ポリヌクレオチドを貪食細胞の中に輸送するために非常に有効なベクターである。
【0007】
一般的に、本発明は、微粒子(微小球とも呼ばれる)の調製物で、それぞれがポリマー基質と核酸の発現ベクターとを含む調製物を特徴とする。このポリマー基質は、水への溶解度がおよそ1 mg/lよりも小さい一つ以上の合成ポリマーを含むが、ここで、合成とは、天然のものではないことと定義される。少なくとも90 %の微粒子が、約100ミクロンよりも小さな直径をもっている。この核酸は、その少なくとも50 %(好ましくは少なくとも70 %、または、さらに80 %)が閉環状になっているRNAか、その少なくとも25 %(好ましくは少なくとも35 %、40 %、50 %、60 %、70 %、または、さらに80 %)がスーパーコイル化した環状プラスミドDNA分子のいずれかである。場合によっては、少なくとも90 %の微粒子が、約20ミクロンよりも小さな直径をもつことが望ましく、また、好ましくは約11ミクロンよりも小さな直径をもつことが望ましい。この核酸は、微粒子全体に分布させるか、中空の中心部をもつ微粒子の中心部に分布させることができる。
【0008】
また、この調製物は、安定化化合物(例えば、糖類、陽イオン性化合物、またはDNA縮合剤)を含んでいてもよい。安定化化合物とは、微粒子の製造過程中、核酸を保護する(例えば、スーパーコイル化した状態を保つ)作用をする化合物である。安定化化合物の例には、デキストロース、スクロース、デキストラン、ポリビニルアルコール、シクロデキストリン、デキストラン硫酸、陽イオン性ペプチド、および、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムブロミドなどの脂質などがある。安定化化合物は、核酸が後にポリマー基質から解離した後も、DNAと会合したままにしておくことができる。
【0009】
本発明の別の態様は、ポリマー基質と核酸とを含む、直径約20ミクロンよりも小さな微粒子を特徴とする。このポリマー基質は、水への溶解度がおよそ1 mg/lよりも小さな一つ以上の合成ポリマーからできている。少なくとも50 %(および、好ましくは少なくとも70 %、または、さらに80 %)の核酸分子がスーパーコイルDNAの形になっている。
【0010】
このポリマー基質は、生物分解性のものでもよい。ここでは、生物分解性とは、ポリマーが、正常な代謝経路によって、宿主細胞から一掃されることが分かっている化合物に、時間をかけて分解されることを意味するよう用いられる。一般的に、生物分解性ポリマーは、患者に注射した後、実質的に約1カ月で、また、2年以内には確実に代謝される。特定の場合には、このポリマー基質は、例えば、ポリ-乳酸-コ-グリコール酸(PLGA)など、1種類の合成生物分解性のコポリマーから作製することができる。コポリマー内のグリコール酸に対する乳酸の比率は、重量で約1:2から約4:1の範囲にすることができ、好ましくは重量で約1:1から約2:1の範囲にすることができ、最も好ましくは重量で約65:35することができる。場合によっては、ポリマー基質は、所定の細胞型または組織型に対する微粒子の特異性を高めるためのリガンド、レセプター、または抗体などの標的分子も含む。
【0011】
特定の施用について、微粒子は、約11ミクロンよりも小さい直径をもつ。この微粒子は、水溶液に懸濁することができ(例えば、注射によって輸送するため)、または、乾燥させた固体の状態におくことができる(例えば、吸入やインプラントによって輸送するため)。核酸は、コード配列に機能的に結合された調節配列でもよい。発現調節配列には、例えば、プロモーター、エンハンサー、またはサイレンサーなど、転写または翻訳を調節することが分かっている核酸配列が含まれる。好ましい例において、DNAの少なくとも60 %または70 %がスーパーコイル化している。より好ましくは、少なくとも80 %がスーパーコイル化している。
【0012】
別の態様において、本発明は、ポリマー基質と、コード配列に機能的に結合された発現調節配列をもつ(好ましくは、閉鎖した環状の)核酸分子とを含む、直径約20ミクロンよりも小さな微粒子を特徴とする。このコード配列によってコードされる発現産物は、哺乳動物の天然のタンパク質の断片、もしくは哺乳動物に感染するか、さもなければ哺乳動物にとって有害なタンパク質の断片の配列と本質的に同一の配列をもつ、少なくとも長さ7アミノ酸のポリペプチドでもよく、または、MHCクラスIもしくはIIの分子に結合することのできる長さおよび配列をもつペプチドでもよい。実施例が、国際公開公報第94/04171号に示されており、参照として本明細書に組み入れられる。
【0013】
ここで、DNA配列またはポリペプチド配列に関して本質的に同一とは、参照配列にできるだけ近似するようにアラインメントを作成したときに、天然の配列と25%を超えては相違しないこと、および、その違いが、このDNAまたはポリペプチドの、本発明の方法における望ましい機能に有害な影響を与えないことを意味するよう定義される。タンパク質の断片という用語は、タンパク質全部よりも小さい場合を意味するよう用いられている。
【0014】
ペプチドまたはポリペプチドは、転送配列に連結させることができる。「転送配列(trafficking sequence)」という用語は、それを融合したポリペプチドが、細胞から分泌されるようにするか、または、例えば、核、小胞体、リソソーム、またはエンドソームなど、細胞の特定の区分に移送されるようにするアミノ酸配列を意味する。
【0015】
発現産物が、MHCクラスIまたはII分子を結合することのできる長さと配列をもつペプチドを含む態様においては、発現産物は、典型的には免疫原性である。この発現産物は、なお同じT細胞によって認識されて、T細胞のサイトカインプロフィールを変更することができるならば(「変化したペプチドリガンド」)、T細胞によって認識される天然のタンパク質の配列とアミノ酸残基の一致率が25%を超えないで異なるアミノ酸配列をもつことができる。例えば、病原性ウイルス系統、またはHLAアロタイプ結合との交差反応性を増強させるために発現産物と天然のタンパク質との違いを工作することができる。
【0016】
発現産物の例には、ミエリン塩基性タンパク質(MBP)、プロテオリピドタンパク質(PLP)、インバリアント鎖、GAD65、島細胞抗原、デスモグレイン、α-クリスタリン、またはβ-クリスタリンの断片で、MHCクラスII分子に結合する断片の配列に、少なくとも50%一致するアミノ酸などがある。表1に、自己免疫疾患に関係すると考えられている、このような発現産物がたくさん列挙されている。これらのタンパク質の断片は、MBPの残基80〜102(配列番号:1)、PLPの残基170〜191(配列番号:2)、またはインバリアント鎖の残基80〜124(配列番号:3)など、配列番号:1〜46のいずれかに本質的に同一でもよい。別の断片が、表2に列挙されている。
【0017】
または、この発現産物は、ヒトパピローマウイルスE6遺伝子およびE7遺伝子、Her2/neu遺伝子、前立腺特異的抗原遺伝子、T細胞(MART)遺伝子によって認識されるメラノーマ抗原の遺伝子、またはメラノーマ抗原遺伝子(MAGE)によってコードされる抗原など、表3に列挙されている腫瘍抗原のいずれかの抗原部位の配列と本質的に同一のアミノ酸配列を含むことができる。ここでも、発現産物を、交差反応性が増強されるように工作することができる。
【0018】
さらに別の場合には、発現産物は、例えば、ヒトパピローマウイルス(HPV)、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、単純疱疹ウイルス(HSV)、B型肝炎ウイルス(HBV)、またはC型肝炎ウイルス(HCV)などの慢性的に細胞に感染するウイルス、マイコバクテリアなどの細菌、またはプラスモディウム属(Plasmodium)の生物種などの寄生性真核生物によって天然に発現されるタンパク質の抗原性断片の配列に本質的に同一のアミノ酸配列を含む。このようなクラスI結合断片、および腫瘍抗原の断片の代表的なリストが、表4に含まれている。
【0019】
別の態様において、本発明は、ポリマー基質と、コード配列に機能的に結合された発現調節配列をもつ核酸分子とを含む、直径約20ミクロンよりも小さな微粒子を特徴とする。このコード配列によってコードされる発現産物は、発現されると免疫応答を下降調節するタンパク質である。このようなタンパク質の実例には、トレランス誘導タンパク質、MHC遮断ペプチド、レセプター、転写因子、およびサイトカインなどがある。
【0020】

【0021】

【0022】

【0023】

【0024】
別の態様において、本発明は、微粒子を調製するための方法を特徴とする。有機溶媒に溶解したポリマーを含む第一の溶液を、極性または親水性の溶媒(例えば、エチレンジアミン四酢酸、もしくはトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン、またはこれらを組み合わせたものを含み、選択的に、陽イオン性ペプチド、脂質、またはデンドリマーなどのDNA縮合剤を含む緩衝溶液)の中に溶解または懸濁した核酸を含む第二の溶液と混合する。この混合液が、第一のエマルジョンを形成する。そして、第一のエマルジョンに、有機化合物(例えば、ポリビニルアルコール)を含む第三の溶液を混ぜて、ポリマー基質と核酸とを含む第二のエマルジョンを形成させる。この混合段階は、例えば、ホモジナイザー、ボルテックスミキサー、ミクロフルイダイザー(microfluidizer)、または超音波破砕器の中で行うことができる。どちらの混合段階も、平均して直径が100ミクロンよりも小さな微粒子が製造される一方、核酸が剪断されるのを最小限にするような様式で行われる。
【0025】
例えば、カラムクロマトグラフィー、さもなければ、(例えば、エタノールまたはイソプロパノール沈殿によって)核酸を精製してから、精製または沈殿した核酸を、水性、極性、または親水性の溶液の中に懸濁して、第二の溶液を調製することができる。
【0026】
第二の溶液は、カプセル化の間、または微粒子形成の全過程で核酸をスーパーコイル化した状態に保つことによって、核酸またはエマルジョンを安定化することができる界面活性剤、DNA縮合剤、または安定化化合物(例えば、1〜10%デキストロース、スクロース、デキストラン、またはその他の糖類、ポリビニルアルコール、シクロデキストリン、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムブロミド、またはデキストラン硫酸)を、選択的に含むことができる。
【0027】
第二のエマルジョンは、選択的に、ポリビニルアルコールなどの有機化合物を含む第四の溶液と混合させることができる。第二のエマルジョンは(すなわち、単独または第四のエマルジョンとともに)、例えば、溶媒の迅速な蒸発を促すために、選択的に、高温(例えば、室温から約60℃に)に曝すことができる。
【0028】
この処理手順は、有機化合物を除去し、それによって洗浄された微粒子を製造するために、水性溶液で微粒子を洗浄するという、さらに別の段階を含んでいてもよい。そして、洗浄された微粒子を0℃よりも低い温度に置いて凍結微粒子を製造し、次に、凍結乾燥させて、凍結乾燥微粒子を製造することができる。この微粒子は、凍結乾燥(をするとすれば)の前または後に、選択的に、例えば、トゥイーン-80(Tween-80)、マンニトール、ソルビトール、またはカルボキシメチル-セルロースなどの賦形剤に懸濁することができる。
【0029】
必要に応じて、この処理手順は、微粒子をスクリーニングして、直径が100ミクロン(または、さらに20ミクロン)よりも大きい微粒子を取り除くという別の段階を含んでいてもよい。
【0030】
本発明のさらに別の態様は、ポリマー基質、タンパク性抗原決定基、および、前記のタンパク性抗原決定基とは異なる、または同一の抗原性ポリペプチドをコードするDNA分子を含む微粒子の調製物を特徴とする。この抗原決定基は、抗体反応を誘発することができるエピトープを含んでいる。このDNAから発現される抗原性ポリペプチドは、T細胞応答(例えば、CTL応答)を誘導することができる。このDNAはプラスミドDNAでもよく、抗原決定基と同じ微粒子の中で結合させることができ、または、この2つを別々の微粒子に入れて、その後一緒に混合することができる。場合によっては、タンパク性抗原決定基ではなくオリゴヌクレオチドを、核酸のプラスミドと一緒にカプセル化することができる。このオリゴヌクレオチドは、例えば、アンチセンスまたはリボザイム活性をもつことができる。
【0031】
別の態様において、本発明は、上記の段落で説明されている微粒子のいずれかを動物(例えば、ヒト、ヒト以外の霊長類、ウマ、ウシ、ブタ、ヒツジ、ヤギ、イヌ、ネコ、マウス、ラット、モルモット、ハムスター、またはフェレットなど)の体内に導入することによって、動物に核酸を投与する方法を特徴とする。微粒子を、溶液(例えば、水性溶液)に懸濁して、または別の適当な処方剤として提供して、例えば、動物に注射もしくは植え込み(例えば、外科的に)をするか、または吸入によって(例えば、鼻腔内から)投与することができる。これらは、選択的に、サイトカイン、ホルモン、インターフェロン、または抗原などのタンパク質とともに輸送することができる。
【0032】
別の態様において、本発明は、それぞれが、ポリマー基質、安定化化合物、および核酸発現ベクターを含む微粒子の調製物を特徴とする。このポリマー基質は、水への溶解度がおよそ1 mg/lよりも小さな一つ以上の合成ポリマーを含むが、これに関して、合成とは、天然のものではないものと定義される。少なくとも90%の微粒子が、100ミクロンよりも小さな直径をもつ。核酸は、その少なくとも50%(好ましくは、少なくとも70%または80%)が閉環状のRNAである。
【0033】
別途定義されていないかぎり、本明細書において用いられている技術用語と科学用語はすべて、本発明の属する技術分野の当業者によって一般的に理解されている意味と同じ意味をもつ。本明細書において説明されている方法および材料と同じか、または同等のものを、本発明を実施または試験するために用いることができるが、好ましい方法および材料を以下に記載する。本明細書において言及されているすべての刊行物、特許出願、特許、およびその他の参考文献は、全部、参照として本明細書に組み入れられる。矛盾があるときには、定義も含めて、本出願が調節をする。さらに、実施例は例示のためのものに過ぎず、限定的なものとすることを意図していない。
【0034】
本発明のこの他の特徴および利点は、以下の詳細な説明、および請求の範囲から明らかになると思われる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1A】図1Aは、pVA2.1/4プラスミドのプラスミド地図である。
【図1B】図1Bは、ルシフェラーゼプラスミドのプラスミド地図である。
【図1C】図1Cは、VSV-Npepプラスミドのプラスミド地図である。
【図2】図2は、登録商標COULTERカウンターで分析した、DNAを含む微粒子のサイズ分布のグラフである。
【図3】図3Aと3Bは、異なった破砕速度と破砕時間に関係する、DNAスーパーコイリングの程度を示す、2枚のアガロース電気泳動ゲル写真の組である。
【図4】図4Aと4Bは、微粒子存在下または非存在下での細胞集団を比較した一組のFACSを印刷したものである。
【図5】図5は、エフェクター:標的の比率に対する特異的溶解のグラフである。
【図6】図6は、エフェクター:標的の比率に対する特異的溶解のグラフである。
【図7】図7は、エフェクター:標的の比率に対する特異的溶解のグラフである。
【図8】図8は、エフェクター:標的の比率に対する特異的溶解のグラフである。
【図9】図9は、エフェクター:標的の比率に対する特異的溶解のグラフである。
【0036】
好ましい態様の説明
本発明の微粒子は、2つの方法のいずれかで調剤される:すなわち、時間をかけて徐々に核酸が放出されるところの(1)患者の貪食細胞への輸送を最大化するか、または(2)患者の組織への蓄積が行われるようにするが、この核酸は、微粒子から解離されると、隣接する細胞(抗原提示細胞、すなわちAPCを含む)によって取り込まれる。どちらの場合にも、DNAが損なわれないよう維持することが、より重要である。プラスミドDNAについては、これは、スーパーコイル化しているプラスミド分子の割合を最大にし、それによって、スーパーコイル化していない(すなわち、ニックが入っているか、直鎖状の)プラスミドよりも安定しているか、またはより効率的なトランスフェクションもしくは発現が可能になることを意味する。核酸が損なわれないように保護するための方法は、微粒子を形成する過程で核酸に必ずかかる剪断力を最小限にすること、調製の間を通じて、超音波破砕と混合にかける時間を制限すること、および核酸の単離とカプセル化の間を通じて、緩衝剤か、その他の安定化化合物を加えることなどである。例えば、超音波破砕の時間と強度とのバランスをとる必要がある。これらの技術については後述する。
【0037】
本発明の微粒子は、例えば、癌、表1に記載した自己免疫疾患のいずれか、または特定の定義された核酸によって治療できるその他の症状を治療するための薬剤を製造するときに用いることができる。
【0038】
マクロファージ、樹状細胞、およびその他のAPCによる微粒子の貪食は、これらの細胞の中に微粒子を導入するのに有効な方法である。微粒子の大きさを約20μmよりも小さくすること、好ましくは、11μmよりも小さくすることによって、これらの細胞による貪食を増進することができる。また、微粒子に用いられるポリマーのタイプが、後述するように、貪食細胞による取り込みの効率に影響することがある。
【0039】
網状内皮系(RES)の貪食細胞による取り込みが望ましいときには、微粒子を、直接血流の中に(すなわち、静脈内または動脈内への注射または輸液によって)輸送することができる。または、皮下注射によって、排出用リンパ節の貪食細胞による取り込みを狙うことができる。また、微粒子は、皮内から(すなわち、樹状細胞、およびランゲルハンス細胞などの皮膚のAPCに)、筋内から、もしくは鼻腔内から導入するか、または、その他の粘膜部位から(すなわち、粘膜免疫のために)導入することができる。最後に、粒子を肺胞のマクロファージに取り込ませる場合には、この微粒子を、(例えば、粉末状の微粒子、または微粒子を含む霧状またはエアロゾル化した溶液の吸入によって)肺の中に導入することができる。
【0040】
貪食細胞が微粒子を貪食すると、核酸は、細胞の内部に放出される。放出されると、所期の機能を営むことができる。すなわち、例えば、正常な細胞内の転写/翻訳装置による発現(発現の場合)、または、細胞内のプロセスの変化(アンチセンスまたはリボザイム分子の場合)など。
【0041】
これらの微粒子は、受動的にマクロファージを標的とするため、免疫機能を調節するための手段になる。マクロファージと樹状細胞は、MHCクラスIおよびII分子をともに発現する、専門的なAPCとして機能する。MHCクラスIまたはクラスII分子に結合する外来抗原をコードする発現ベクターの微粒子による輸送は、抗原に対する宿主のT細胞応答を誘導し、それによって、宿主に免疫を付与する。
【0042】
発現ベクターが、自己免疫に関与するMHCクラスII分子に結合する遮断ペプチド(国際公開公報第94/04171号を参照)をコードする場合には、クラスII分子による、自己免疫疾患関連自己ペプチドの提示が阻止され、自己免疫疾患の症状が緩和される。
【0043】
別の例として、自己免疫誘導ペプチドと同一、またはほぼ同一のMHC結合ペプチドが、T細胞をトレランス誘導またはアネルギー誘導することによって、T細胞の機能に影響を与えることができる。または、MHC/ペプチド複合体認識後のサイトカイン分泌プロファイルを変更することによって、T細胞の機能が調節されるように、ペプチドを設計してもよい。T細胞によって認識されるペプチドは、B細胞に特定のクラスの抗体を産生させたり、炎症反応を誘導したり、さらには、宿主T細胞の反応を促進させたりするサイトカインの分泌を誘導することができる。
【0044】
免疫応答の誘導には、いくつかの因子が必要である。この多因子的な性質が、本発明の微粒子を用いて、多くの面で免疫関連細胞を操作しようという企てを惹き起こしたのである。例えば、各微粒子の中にDNAとポリペプチドをもつ微粒子を調製することができる。これらの二重機能をもつ微粒子については、後に検討する。
【0045】
CTL応答
クラスI分子は、抗原ペプチドに未分化のT細胞を提示する。T細胞を完全に活性化するためには、抗原ペプチド以外の因子が必要である。インターロイキン-2(IL-2)、IL-12、およびガンマインターフェロン(γ-IFN)などの非特異的タンパク質は、CTL応答を促進し、CTLエピトープを含むポリペプチドをコードするDNAとともに提供することができる。または、ヘルパーT(TH)決定基をもつタンパク質を、CTLエピトープコードするDNAとともに包含させることができる。THエピトープは、TH細胞からのサイトカインの分泌を促進して、発生したT細胞のCTLへの分化に関与する。
【0046】
または、リンパ球とマクロファージの特定の領域への移動を促進するタンパク質または核酸を、適当なDNA分子とともに微粒子に包含させることができるかもしれない。微粒子が分解するにつれて、タンパク質の放出による貪食細胞とT細胞の流入が起こるため、結果的にDNAの取り込みが促進される。このマクロファージは、残っている微粒子を貪食して、抗原提示細胞として作用するため、このT細胞がエフェクター細胞になると考えられる。
【0047】
抗体反応
ある感染病原体を宿主から除去するには、抗体とCTL応答の両方が必要とされるかもしれない。例えば、インフルエンザウイルスが宿主に侵入すると、抗体は、しばしば、それが宿主に感染するのを阻止することができる。しかし、細胞が感染してしまうと、感染した細胞を除去し、宿主の中でさらにウイルスが産生されるのを防ぐためにCTL応答が必要となる。
【0048】
一般的に、抗体反応は、立体構造的な決定基を目的とするため、そのような決定基を含むタンパク質、またはタンパク質の断片があることが必要である。これに対して、T細胞エピトープは、典型的には、長さ7〜25残基ばかりの直鎖的な決定基である。したがって、CTLと抗体の両反応を誘導する必要があるときには、抗原タンパク質と、T細胞エピトープをコードするDNAとを微粒子の中に含ませることができる。
【0049】
微粒子からタンパク質をゆっくりと放出させることによって、B細胞の認識と、その後の抗体分泌がもたらされる。さらに、微粒子の貪食によって、APCは、(1)目的のDNAを発現し、それによって、T細胞応答を発生させ、また、(2)微粒子から放出されたタンパク質を消化して、それによって、以後、クラスIもしくはクラスII分子、またはその両者によって提示されるペプチドを生成すると考えられる。クラスII/ペプチド複合体によって活性化されたTH細胞は、非特異的なサイトカインを分泌するため、クラスII分子による提示は、抗体応答とCTL応答の両方を促進する。
【0050】
免疫抑制
一定の免疫応答は、アレルギーと自己免疫をもたらすため、宿主にとって有害なことがある。これらの例では、組織損傷的な免疫細胞が必要である。免疫抑制は、変化したペプチドリガンド、トレランス誘導ペプチド、またはTH細胞およびCTLを下降制御するエピトープ(例えば、「遮断」抗体)をコードするDNAをもつ微粒子によって達成される。これらの微粒子では、一定のタンパク質をDNAとともに担体微粒子に包含させることによって、免疫抑制DNAの効果を増強することができよう。このようなタンパク質のリストには、抗体、レセプター、転写因子、ホルモン、およびインターロイキンなどが含まれる。
【0051】
例えば、サイトカインを刺激する抗体、細胞表面レセプター、または、インテグリン、もしくは細胞間接着分子(ICAM)などのホーミングタンパク質は、免疫抑制DNAエピトープの効能を高めることができる。これらのタンパク質は、既に活性化されたT細胞の応答を阻害するように働く一方で、このDNAは、発生するT細胞の活性化をさらに阻害する。T細胞制御反応の誘導は、T細胞レセプター(TCR)が関与しているときに存在するサイトカイン環境による影響を受けることがある。IL-4、IL-10、およびIL-6は、DNAにコードされているエピトープに応答して、TH2の分化を促進する。TH2応答は、TH1細胞の形成を阻害することができ、それに対応した、慢性関節リウマチ、多発性硬化症、および若年性糖尿病の病理をもたらす有害な反応を阻害することができる。
【0052】
共刺激的分子(例えば、CD-40、gp-39、B7-1、およびB7-2)、またはアポトーシスに関与する分子(例えば、Fas、FasL、Bc12、カスパーゼ、bax、TNFα、TNFレセプター)の可溶性型を含むタンパク質を封入することが、特定のT細胞および/またはB細胞の反応が活性化されるのを阻害するためのもう一つの方法である。例えば、B7-1は、TH1細胞の活性化に関与し、B7-2は、TH2細胞を活性化する。必要とされる反応に応じて、これらのタンパク質の一方、もしくは他方をDNAとともに微粒子に包含させるか、または、別の微粒子に入れ、DNAを含む微粒子と混合して供給することができる。
【0053】
植え込みのための微粒子
本発明の第二の微粒子調剤は、細胞によって直接取り込まれることを意図しておらず、生物性分解によって微粒子から放出されたときにだけ細胞によって取り込まれる核酸をゆっくりと放出するための貯蔵装置として主に用いることを意図している。この核酸は、(例えば、ゆっくりと放出する過程を通して核酸の完全性を維持するために)安定化剤と複合体を形成することができる。したがって、この態様のポリマー粒子は、貪食を防止するのに十分な大きさでなければならない(すなわち、5μm、および、好ましくは19μmよりも大きい)。このような粒子は、より小さな粒子を作成するために上記した方法によって作製されるが、前記第一と第二のエマルジョンの混合強度を低くする。すなわち、より低いホモジナイズ速度、ボルテックスミキサーの速度、または超音波の設定を用いることによって、5μmよりも100μmに近い直径を有する粒子を得ることができる。混合する時間、第一のエマルジョンの粘度、または、第一溶液中のポリマー濃度を変更して、粒子の寸法に影響を与えることができる。
【0054】
大きな微粒子は、筋内、皮下、皮内、静脈内、または腹腔内への注射によって、(鼻腔内または肺内からの)吸入によって、経口的に、または、植え込みによって輸送されるように、懸濁液、粉末、または植え込み可能な固体として調剤することができる。これらの粒子は、例えば、アンチセンス分子、遺伝子置換治療薬、サイトカインによる、抗原による、もしくはホルモンによる治療薬の輸送方法、または、免疫抑制剤など、比較的長い期間にわたるゆっくりとした放出が望まれる発現ベクター、またはその他の核酸を輸送するのに有用である。分解、およびそれに続く放出の速度は、ポリマーの処方によってさまざまである。このパラメータを用いて、免疫機能を調節することができる。例えば、IL-4またはIL-10の輸送については、比較的ゆっくりと放出させたいと望む場合や、IL-2またはγ-IFNの輸送については、比較的速く放出させたいと望む場合がありうる。
【0055】
ポリマー粒子組成物
ポリマー材料は、市販している供給業者から入手するか、既知の方法によって調製することができる。例えば、乳酸とグリコール酸のポリマーは、米国特許第4,293,539号で述べられているようにして生成するか、または、アルドリッチ社(Aldrich)から購入することができる。
【0056】
または、あるいはさらに、ポリマー基質は、ポリラクチド、ポリグリコリド、ポリ(ラクチド-コ-グリコリド)、重合無水物、ポリオルトエステル、ポリカプロラクトン、ポリホスファゼン、タンパク質性ポリマー、ポリペプチド、ポリエステル、またはポリオルトエステルなどである。
【0057】
本発明の処方剤において有用な、好ましい制御された放出物質には、ポリ無水物、乳酸とグリコール酸のコポリマーで、グリコール酸に対する乳酸の重量比が4:1以下であるもの、および、例えば、1%の無水マレイン酸のような無水物などの分解を促進する触媒を含むポリオルトエステルなどがある。乳酸は、生体の中で分解するのに少なくとも1年かかるため、長期間にわたる分解が望ましいという状況にあるときだけ、このポリマーを単独で利用すべきである。
【0058】
核酸とポリマー粒子との結合
二重乳化法を用いて、核酸を含むポリマー粒子を作製することができる。まず、ポリマーを有機溶媒に溶解させる。好ましいポリマーは、乳酸/グリコール酸の重量比が65:35、50:50、または75:25のポリ乳酸-コ-グリコール酸(PLGA)である。次に、水性溶液に懸濁した核酸のサンプルをポリマー溶液に加えて、この2つの溶液を混合して第一のエマルジョンを形成する。これらの溶液は、ボルテックスまたは振盪によって混合することができ、混合液を超音波破砕することができる。エマルジョンは、ミクロフルイダイザーによって作成することができる。最も好ましいのは、核酸が、ニック、剪断、または分解という形で受ける損傷ができるだけ少ない方法で、なお、適当なエマルジョンを形成できる方法である。例えば、1/8"のマイクロチッププローブをもつビブラセル-モデル(Vibra-cell model)VC-250超音波破砕器を#3に設定するか、ミクロフルイダイザーの圧力を調節することによって、許容できる結果を得ることができる。
【0059】
この処理の間中、有機溶媒の中に水滴(核酸を含んでいる)が形成される。必要に応じて、例えばゲル電気泳動によって、核酸が損なわれていないことを評価するために、この時点で、少量の核酸を分離することができる。
【0060】
水性溶液に懸濁する前に核酸をアルコール沈殿するか、またはその他の方法で精製することによって、カプセル化の効率を向上させることができることが分かっている。エタノールによる沈殿によって、取り込まれるDNAが147%まで増加し、また、イソプロパノールによる沈殿によっては、170%まで増加する結果となった。
【0061】
水性溶液の性質が、スーパーコイル化したDNAの収率に影響を与える可能性がある。例えば、DNAサンプルの調製と精製の過程でエンドトキシンを取り除くためによく用いられるポリミキシンB(polymyxin)などの界面活性剤は、DNAのカプセル化効率を低下させることがある。特に、カプセル化の過程で、界面活性剤および/または安定化剤を用いるときには、カプセル化効率に対するマイナスの効果と、スーパーコイルに対するプラスの効果との均衡をとる必要がある。さらに、ゲル電気泳動によって解析したところによると、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン(TRIS)、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、またはTRISとEDTAとを組み合わせたもの(TE)のいずれかを含む緩衝溶液を加えると、スーパーコイル化したプラスミドDNAの安定化がもたらされる。pHの効果も観察されている。デキストラン硫酸、デキストロース、デキストラン、CTAB、シクロデキストリン、およびスクロースなど、その他の安定化化合物も、単独でも、TE緩衝液と組み合わせても、DNAのスーパーコイルの安定性と程度とを高めることが分かっている。安定化剤を組み合わせて用いれば、カプセル化されたスーパーコイルDNAの量を増加させることができる。荷電した液体(例えば、CTAB)、陽イオン性ペプチド、またはデンドリマー(J. Controlled Release, 39: 357, 1996)などの安定化剤により、DNAを縮合させるか、沈殿させることができる。さらに、安定化剤は、カプセル化の過程で形成させる粒子の物理的な性質に影響することがある。例えば、カプセル化処理の過程で、糖類または界面活性剤が存在すると、有孔の内部または外部構造をもつ有孔粒子が生成され、粒子からの薬剤のより迅速な排出が可能になる。この安定化剤は、例えばカプセル化の間、もしくは凍結乾燥の間、またはその両方の間など、微小球の調製過程のいかなる時点でも作用させることができる。
【0062】
そして、第一のエマルジョンを有機溶液に加えて微粒子を形成させる。この溶液は、例えば、塩化メチレン、酢酸エチル、またはアセトンを含み、好ましくは、ポリビニルアルコール(PVA)を含み、最も好ましくは、PVAの重量比率が溶液の容量に対して1:100である。第一のエマルジョンは、一般的に、ホモジナイザー(例えば、7000 RPMで12秒間に設定したシルバーソンモデルL4RTホモジナイザー(5/8"プローブ);この破砕速度では、60秒の破砕時間は強すぎる)、またはミクロフルイダイザーの中で撹拌しながら、有機溶液に加える。
【0063】
この処理によって、次に、有機化合物(例えば、PVA)を含む別の溶液に、(例えば、ホモジナイザーの中、または撹拌プレート上で)撹拌しながら加えられる第二のエマルジョンが形成される。この段階によって、放出されるべき第一の有機溶媒(例えば、ジクロロメタン)が生じ、微小球が固くなる。または、熱を用いて、溶媒の蒸発を促進させることができる。有機溶媒の緩慢な放出(例えば、室温で)は、全体に非常に多孔な構造をもつ「海綿状」の粒子をもたらすが、迅速な放出(例えば、高温での)によって、中空の微粒子が生じる。後者の溶液は、例えば0.05% w/v PVAでもよい。糖または別の化合物をDNAに加えるのであれば、容量オスモル濃度を等しくするために、同じ濃度の化合物を第三または第四の溶液を加えることができ、硬化処理の間に微粒子から核酸が失われるのを効果的に減らすことができる。この結果できた微粒子は、有機化合物を除去するために、水で何度か洗浄する。望ましいサイズよりも大きな粒子を選択的に除去するために、粒子をサイズスクリーニングにかけることができる。微粒子のサイズが重要でなければ、この整粒段階を省くことができる。洗浄後、粒子をすぐに用いるか、保存するために凍結乾燥することができる。
【0064】
既に上で詳しく説明したように、第一のエマルジョンを作るときには、より弱い乳化条件を用いることによって、植え込みに用いる粒子のように、大きな粒子を得ることができる。例えば、ポリマーの濃度を変えるか、エマルジョンの粘性を変えるか、第一のエマルジョンの粒子サイズを変える(例えば、ミクロフルイダイザーの中で第一のエマルジョンを作製する間に用いる圧力を減らすことによって、より大きな粒子を作ることができる)か、または、例えば、5000 RPMで約12秒間と設定したシルバーソンホモジナイザーによってホモジナイズすることによって、より大きな粒子を得ることができよう。
【0065】
回収した微粒子は、微小球の中にあるスーパーコイル化したプラスミドDNAの量にマイナスとなるような効果を与えることなしに、賦形剤の中に懸濁することができる。賦形剤は、薬剤の調合においてはよく用いられ、ここでは、微小球を効率的に再懸濁させ、沈殿するのを防ぎ、また、微小球を懸濁液のなかに保持する。ゲル電気泳動で解析したところ、賦形剤(Tween 80、マンニトール、ソルビトール、およびカルボキシメチルセルロースを含む)は、DNAの安定性またはスーパーコイルに対して何ら影響を及ぼさない。
【0066】
賦形剤中の微小球または微小球懸濁液を回収した後、将来使用するために、サンプルを凍結し、凍結乾燥することができる。
【0067】
微粒子の特徴解析
上記の方法によって調製された微粒子のサイズ分布を、登録商標COULTERカウンターを用いて計測することができる。この器具により、粒子のサイズ分布プロファイルと、粒子の統計的解析が提供される。または、サイジングスライド、または接眼レンズに適合した顕微鏡下で可視化することによって、粒子の平均サイズを計測することができる。
【0068】
必要に応じて、以下の手順によって、解析のために、微粒子から核酸を抽出することができる。微粒子を、水性溶液存在下で、クロロフォルムまたは塩化メチレンなどの有機溶媒に溶かす。ポリマーは、有機層の中に留まり、DNAは水層に移行する。これらの層の界面を遠心分離によってより明確にする。水層を分離することによって、核酸が回収できる。分解していないかをテストするために、抽出した核酸をHPLCまたはゲル電気泳動によって解析することができる。
【0069】
核酸の回収量を増加させるために、水性溶液を加える前に、懸濁した微粒子に、フェノール・クロロフォルムなど、さらに別の有機溶媒を加えることができる。水性溶液を加えると核酸は水層に入り込むため、混合した後、容易に有機層から区切ることができる。水層と有機層との間の界面をきれいにするために、サンプルを遠心分離しなければならない。常法にしたがって、塩類とエタノールによる沈殿により核酸を水層から回収する。
【0070】
微粒子の細胞内輸送
DNAを含む微粒子を、食塩水、緩衝塩類溶液、組織培養培地、または別の生理学的に許容される担体に再懸濁する。インビトロ/エクスビボで用いるためには、哺乳動物の接着細胞の培養液または細胞懸濁液に、微粒子の懸濁液を加えることができる。1〜24時間インキュベーションした後、ウシ胎児血清をアスピレーションまたは遠心分離することによって、取り込まれなかった粒子を除去する。これらの細胞は、すぐに解析するか、将来解析するために再培養することができる。
【0071】
核酸を含む微粒子の細胞内への取り込みは、PCRによって、または、核酸の発現をアッセイすることによって検出することができる。例えば、ノザンブロット、逆転写酵素PCR、またはRNAマッピングによって、核酸の転写を測定することができる。タンパク質の発現は、適当な抗体によるアッセイ、または核酸によってコードされるポリペプチドの機能に合わせた機能的アッセイ法によって測定することができる。例えば、ルシフェラーゼをコードする核酸を発現する細胞を、以下のように測定することができる:適当な緩衝液(例えば、細胞溶解培養試薬、プロメガ社製、ウィスコンシン州マディソン(Promega Corp, Madison, WI))に溶解した後、溶解液を、ルシフェリンを含む基質(プロメガ社製)に加えてから、出てくる光をルミノメータ、またはシンチレーションカウンターで測定する。出てくる光は、ルシフェラーゼ遺伝子の発現に直接比例している。
【0072】
核酸が、クラスIまたはクラスII MHC分子と相互作用することが分かっているペプチドをコードしているならば、蛍光活性化セルソーター(FACS)を用い、そのMHC分子/ペプチド複合体に特異的な抗体を用いて、その細胞の細胞表面上の複合体を検出することができる。このような抗体を、常法を用いて作製することができる(Murphyら、Nature, Vol. 338, 1989, pp. 765-767)。このペプチドをコードする核酸を含む微粒子とともにインキュベーションした後、細胞を、組織培養培地の中で、特異的な抗体とともに10〜120分間インキュベートする。培地の中で細胞を洗浄して、過剰な抗体を除去する。一次抗体に結合する、蛍光標識した二次抗体を細胞とともにインキュベートする。これらの二次抗体は、よく市販されているが、既知の方法を用いて調製することもできる。FACS解析する前には、過剰な二次抗体を洗い流しておかなければならない。
【0073】
Tエフェクター細胞またはBエフェクター細胞を注視することによって測定することもできる。例えば、T細胞増殖、細胞傷害活性、アポトーシス、またはサイトカイン分泌などを測定することができる。
【0074】
または、蛍光標識した核酸を用い、また、FACSによって細胞を解析することによって、粒子の細胞内輸送を直接に明らかにすることができる。蛍光標識された核酸を中に取り込むことによって、細胞は、バックグランドのレベルを超えて蛍光を発するようになる。FACSは迅速かつ定量的であるため、核酸をインビトロまたはインビボで輸送するための条件を最適化するために特に有用である。このような最適化を行った後は、蛍光標識の使用を中止する。
【0075】
例えば、核酸がリボザイムもしくはアンチセンス分子であるか、またはどちらかに転写される場合など、核酸そのものが細胞内の機能に影響を与える場合には、適当な機能的アッセイ法を利用することができる。例えば、もし、リボザイムまたはアンチセンス核酸が、特定の細胞内タンパク質の発現を低下させるように設計されていれば、そのタンパク質の発現をモニターすることができる。
【0076】
微粒子のインビボ輸送
核酸を含む微粒子を、筋肉内、静脈内、動脈内、皮内、腹膜内、鼻腔内、または皮下から、哺乳動物に注射することができる。または、例えば、微粒子を含む溶液もしくは粉末を吸入することによって、胃腸管、もしくは気道の中に導入することができる。核酸の発現を適当な方法でモニターする。例えば、目的とする免疫原性タンパク質をコードする核酸の発現は、このタンパク質に対する抗体またはT細胞応答を注視することによってアッセイすることができる。
【0077】
ELISAアッセイで、血清を調べることによって、抗体反応を測定することができる。このアッセイ法においては、目的のタンパク質で96穴プレートの上を被覆し、検査されている被験者の血清を連続希釈したものを、各ウエルの中にピペットで入れてゆく。次に、抗ヒト、ホースラディッシュパーオキシダーゼ結合抗体のような、二次的な酵素結合抗体をウエルに加える。目的とするタンパク質に対する抗体が、検査されている被験者の血清の中に存在していたら、それらは、プレートに固定されているタンパク質に結合し、次に、二次抗体による結合が起きるはずである。この酵素に対する基質を混合液の中に加え、ELISAプレート読み取り器で比色変化を定量する。陽性の血清反応は、微粒子のDNAによってコードされている免疫原性タンパク質が、検査されている被験者において発現されており、かつ、抗体反応を刺激したことを示している。または、ELISAスポットアッセイ法を用いることができる。
【0078】
タンパク質をコードする核酸を含む微粒子を細胞内に輸送した後に、このタンパク質に反応して起こるT細胞増殖を、実験動物の脾臓、リンパ節、または末梢血リンパ球の中に存在するT細胞を解析することによって測定する。このような生物源から得られたT細胞を、目的のタンパク質またはペプチドが存在するところで、同一遺伝子系のAPCとともにインキュベートする。常法にしたがい、3H-チミジンの取り込みによって、T細胞の増殖をモニターする。細胞の中に取り込まれた放射能量は、微粒子が輸送する核酸の発現によって、検査用被験動物の中で誘導される増殖反応の強さと直接相関する。陽性の応答は、このタンパク質またはペプチドをコードするDNAを含む微粒子が、インビボで、APCによって取り込まれて発現されたことを示している。
【0079】
標準的な51Cr放出アッセイ法によって、細胞傷害性T細胞の発生を明らかにすることができる。これらのアッセイ法において、検査用被験動物から得られた脾臓細胞または末梢血リンパ球を、同一遺伝子系のAPC、および、目的のタンパク質か、もしくはこのタンパク質に由来するエピトープのいずれかが存在する中で培養する。4〜6日間後、細胞傷害性Tエフェクター細胞を、目的とするタンパク質から得られたエピトープを発現する、51Cr標識した標的細胞と混合する。もし、検査用被験動物が、微粒子の中に含まれている核酸によってコードされているタンパク質またはペプチドに対する細胞傷害性T細胞反応を起こしていれば、この細胞傷害性T細胞が標的を溶解させるはずである。溶解された標的は、放射性51Crを培地の中に放出する。シンチレーションカウンターで、培地の等量液の放射能を測定する。ELISAなどのアッセイ法を用いて、サイトカインプロファイルを測定することもできる。
【0080】
以下は、本発明の実施例である。これらを、決して、本発明の範囲を制限するものと解釈してはならない。
実施例1:DNAの取り込み;粒子サイズとDNAの完全性の解析
取り込ませるためのDNA調製
登録商標MEGA-PREPキット(キアゲン(Qiagen)社製)を用いる常法により、製造業者の指示にしたがってプラスミドDNAを調製した。すべてのDNA操作には、エンドトキシンを含まない緩衝液キット(キアゲン(Qiagen)社製)を用いた。蒸留し、脱イオンし、滅菌した水の中にDNAを再懸濁し、最終濃度を3μg/μlとした。図1は、a)ルシフェラーゼ、b)VSV-Npepと名づけられた、水胞性口内炎ウイルス(VSV)のペプチドエピトープ、およびc)A2.1/4と名づけられた、ヒトパピローマウイルス(HPV)のペプチドエピトープDNA発現ベクターのプラスミド地図を示している。
【0081】
DNAとPLGAとの結合
200 mgのポリ-乳酸-コ-グリコール酸(PLGA)(アルドリッチ(Aldrich)社製、乳酸とグリコール酸の比率は65:35)を、5〜7 mlの塩化メチレンに溶解した。上で調製した、900μgのDNAを含むDNA溶液300μlをPLGA溶液に加えた。この混合液を、設定を#3にして5〜60秒間、モデル550登録商標SONIC DISMEMBRTOR(フィッシャーサイエンティフィック(Fisher Scientific)社製)の中で超音波破砕し、できたエマルジョンを解析した。十分に無傷な(下記のようにして判定された)DNAをもつ、望ましいサイズの粒子を含むことが分かっているエマルジョンを、50 mlの水様の1% w/v ポリビニルアルコール(PVA)(分子量範囲:30〜70 kdal)を入れたビーカーに加えた。この混合液を登録商標POWERGENホモジナイザー(フィッシャーサイエンティフィック社製)の中で、3000〜9000 RPMで5〜60秒にセットしてホモジナイズした。再び、DNAが損なわれていないかを解析した。DNAが十分に無傷であることが分かった場合に、この結果できた第二のエマルジョンを、絶えず撹拌しながら、100 mlの水様の0.05% PVAを入れた第二のビーカーの中に移した。撹拌を2〜3時間続けた。
微粒子の溶液を、250 mlの遠心管の中に注入して、2000 rpmで10分間回転させた。遠心管の内容液をデカントし、沈降した粒子を100 mlの脱イオン水に再懸濁した。遠心分離とデカントの段階を繰り返した後、粒子を液体窒素で凍らせ、最後に、乾燥するまで凍結乾燥させた。
【0082】
微粒子のサイズプロファイルの分析
5 mgの凍結乾燥させた微粒子を200μlの水に再懸濁した。この結果できた懸濁液を、登録商標COULTERカウンターによって解析するために、約1:10,000に希釈した。図2は、およそ85%の微粒子が、直径1.1μm〜10μmの間にあることを示している、登録商標COULTERカウンターからの出力結果を印刷したものである。
【0083】
DNAの完全性の判定
2〜5μgの微粒子を、登録商標EPPENDORFチューブの中で、10μlの水で湿潤させた。ポリマー基質を溶かすために、500μlのクロロフォルムを加えて徹底的に混合した。500μlの水を加えて、再び混合した。この結果できたエマルジョンを14,000 rpmで5分間遠心分離した。水層をきれいな登録商標EPPENDORFチューブの中に移して、2倍等量のエタノール、および0.1倍等量の3 M酢酸ナトリウム水溶液を加えた。この混合液を、14,000 rpmで10分間遠心分離した。上清を吸引した後、沈殿したDNAを50μlの水に再懸濁した。5μgのDNAを、0.8%アガロースゲル上で、インプットDNAを含む標準の隣りに電気泳動した。ゲル上のDNAは、UV光箱上で可視化した。標準と比較することによって、微粒子のDNAの完全性が明らかになる。インプットDNAに較べて、取り込まれたDNAでスーパーコイル化したDNAの割合が高いままならば、微粒子形成処理は成功したものと考えた。
図3Aと3Bに示されているように、破砕速度と破砕時間は、DNAの完全性と反比例する。図3Aは、7000 rpmで1分間破砕して調製した微粒子から単離したDNA(レーン1)、およびスーパーコイル化したインプットDNA(レーン2)を示している。図3Bは、7000 rpmで5秒間破砕して調製した微粒子から単離したDNA(レーン1)、5000 rpmで1分間破砕して調製した微粒子から単離したDNA(レーン2)、およびスーパーコイル化したインプットDNA(レーン3)を示している。
【0084】
実施例2:DNAと微小球の調製
DNA調製
500 mlのバクテリア培養液を1リットルの遠心用ボトルの中に入れた。この培養液を、20℃、4000 rpmで20分間遠心分離した。沈殿したバクテリアから培地を注ぎ出して捨てた。バクテリアの沈殿を塊が残らないように50 mlのP1緩衝液(50 mM トリス塩酸、pH 8.0; 10 mM EDTA; 100μg/ml RNAse)に完全に再懸濁した。50 mlのP2緩衝液(200 mM 水酸化ナトリウム、1% SDS)を加えてゆっくりと撹拌して、この懸濁液を室温で5分間インキュベートした。すぐに、ゆっくり混合しながら、50 mlのP3緩衝液(3.0 M 酢酸カリウム、pH 5.5、4℃に冷やして置く)を加えた。この懸濁液を氷上で30分間インキュベートしてから、4℃、4000 rpmで30分間遠心分離した。
折り畳んだ丸い濾紙を水で湿らせた。遠心分離が完了したところで、上清をすぐに濾紙を通過するように注いだ。濾過した上清は、きれいな250 mLの遠心用ボトルの中に集めた。
15 mLのキアゲンER(Quiagen ER)緩衝液を濾過した溶菌液に加え、ボトルを10回転倒させて混合した。この溶菌液を氷上で30分間インキュベートした。
35 mLのQBT緩衝液(750 mM 塩化ナトリウム;50 mM MOPS, pH 7.0; 15% イソプロパノール;および0.15%トリトンX-100)を加えて、キアゲンチップ2500カラムを平衡化した。このカラムは、自然流下させて空にした。インキュベートした溶菌液をカラムに入れて、自然流下させた。このカラムを4×50 mlのキアゲンエンドフリー(Qiagen Endofree)QC緩衝液(1.0 M NaCl; 50 mM MOPS, pH 7.0; 15% イソプロパノール)で洗浄した。35 mlのQN緩衝液(1.6 M NaCl; 50 mM MOPS, pH 7.0; 15% イソプロパノール)によって、50 mlのポリプロピレン製のスクリューキャップ付遠心チューブの中にDNAを溶出した。このDNA懸濁液を、もう一本の50 mlスクリューキャップチューブの中に、およそ17.5 mlの懸濁液を注ぎ入れて2本のチューブに分注した。
滅菌した10 mlピペットを用いて、12.25 mlのイソプロパノールを各チューブに加えた。このチューブをしっかり密封して徹底的に混合した。各チューブの内容物を、30 mlのコーレックス(Corex)(VWR社製)遠心管の中に入れた。各コーレックスチューブを商標登録パラフィルム(PARAFILM)で覆った。このチューブを、4℃、11,000 rpmで30分間遠心分離した。
各チューブから上清を吸引して、ペレットを2 mlの70%エタノールで洗浄した。エタノールは、吸引して取り除いた。ペレットを10分間風乾し、次に、0.5〜1.0 mlの水に再懸濁して、滅菌した1.5 mlの遠心チューブの中に移した。
【0085】
微小球の調製
200 mgのPLGAを、14 mlの培養チューブの中の7 mlの塩化メチレンに溶解した。7 mmの混合用ヘッドを具備した、フィッシャーサイエンティフィック社製のパワージェン(PowerGen)700ホモジナイザーを、目盛り6と速度4.5に設定した。フィッシャーサイエンティフィック社製のソニックディスメンブレイター(Sonic Dismembrator)550超音波破砕器を、目盛り3に設定した。
300μlのH2O中に1.2 mgのDNAをPLGA溶液に加えて、その結果できた混合液を15秒間超音波破砕した。50 mlの1.0% PVAを、100 mlビーカーの中に注入し、ホモジナイザーの下に置いた。ホモジナイザーのプローブがビーカーの底から約4 mmのところに来るまで沈め、ホモジナイザーに電力を供給した。直ちに、DNA/PLGA混合液をビーカーの中に注ぎ入れて、この結果できたエマルジョンを10秒間ホモジナイズした。このホモジネートを、0.05% PVA入りのビーカーの中に注入した。
この結果できたエマルジョンを2時間撹拌して、250 mlのコニカル遠心管に注入して、2000 rpmで10分間回転させた。沈殿した微小球を50 mlの水で洗浄し、50 mlのポリプロピレン製の遠心チューブの中に移して、2000 rpmで10分間回転させた。このペレットを液体窒素で凍らせてから、一晩凍結乾燥させた。
【0086】
ゲル解析を行うための微小球からのDNA抽出
液体に懸濁した1 mlの微小球を、1.5 mlの遠心チューブの中に移して、14,000 rpmで5分間遠心分離した。上清をほとんど除去した。50 μlのTE緩衝液(10 mMトリス塩酸、pH 8.0; 1 mM EDTA)を加え、チューブの側面を軽く叩いて微小球を再懸濁した。
凍結乾燥した微小球、または真空乾燥した微小球を分離するために、2〜4 mgの微小球を計り分けて、1.5 mlの遠心チューブの中に入れた。70 μlのTE緩衝液を加え、微小球を再懸濁した。
200μlのクロロフォルムを加えてから、チューブを2分間強く、しかし、激しすぎないように振って、水層と有機層とを混和させた。このチューブを14,000 rpmで5分間遠心分離した。30μlの水層を注意深く新しいチューブの中に移した。
【0087】
微小球のピコグリーンとゲル解析
3.5〜4.5 mgの微小球を計り分けて、1.5 mlの遠心チューブの中に入れた。各チューブに100μlのDMSOを加え、室温で10分間、このチューブを回転させた。このサンプルを回転台から取り出し、サンプルが完全に溶けていることを眼で調べて確認した。必要な場合には、ピペットの先端を用いて、残っている塊を壊した。どのサンプルも、DMSOの中に30分以上入れたままにしてはおかなかった。
調べようとする各サンプル毎に、990μlのTEをピペットで、3本の別々の遠心チューブに入れた。混和しながら、990μlのTEのそれぞれに、10μlのDMSO/微小球溶液をピペットで注入した。この混合液を14,000 rpmで5分間遠心分離した。
各サンプル毎に、1.2 mlのTEの等量液を、5 mlの丸底のスナップ付遠心チューブの中に入れた。1 mlのTE/DMSO/微小球の混合液から50μlを1.2 mlのTEに加えた。1.25 mlのピコグリーン試薬を各チューブに加えて、蛍光測定器で蛍光を測定した。
【0088】
実施例3:アルコール沈殿
エタノール沈殿
実施例2にしたがって、DNAを調製した。それぞれが、1.2 mgのDNAを含む3つのサンプルに、0.1倍容の3 M酢酸ナトリウムと2倍容のエタノールを加えて沈殿させた。最終濃度が4 mg/mlになるように、DNAを水に再懸濁させた。2つのサンプルのDNAは、使用する直前に再懸濁し、3つめのサンプルのDNAは、再懸濁してから4時間室温で回転させておいた。4 mg/mlの対照DNAは、エタノール沈殿を行わなかった。
【0089】
実施例2で説明されている処理手順によって、4つのサンプルの各々を、微小球の中にカプセル化した。実施例2で説明されているところにしたがって、ピコグリーン解析を行って、微小球1 mg当りのDNA量を決定した。次の結果が得られた。

この結果は、微小球の中にカプセル化する前に、DNAをエタノール沈殿すると、取り込み率が31%から56%を超える範囲で増加することを示しており、これは、カプセル化されたDNAの量が44〜62%増加することを示している。
上記で観察されたエタノール沈殿効果が、DNA調製処理とは無関係であることを、次の実験で確認する。
【0090】
DNAを3つの異なる設備で調製した。サンプル番号1は、実施例2にしたがって調製した。サンプル番号2は、ER-除去緩衝液を加えずに、実施例2にしたがって調製した。サンプル番号3は、スケールアップした発酵製造を行って調製した。これら3つのDNAサンプルは、大きさ4.5 kbと10 kbの2つの異なるプラスミド(DNA-1とDNA-3は同じもの)で代表させた。エタノール沈殿によって、カプセル化の効率が向上するかを、3つのDNAサンプルで調べた。0.1倍容の3 M酢酸ナトリウムと2倍容のエタノールを加えて、それぞれ1.2 mgのDNAを含む3つのDNAサンプルを沈殿させた。このDNAを、濃度が4 mg/mlになるように水に再懸濁させた。4 mg/mlの3つの対照用DNAサンプルについては、エタノール沈殿を行わなかった。
実施例2で説明されている処理手順によって、各サンプルをカプセル化した。
【0091】
実施例2で説明されているピコグリーン解析を行って、微小球1 mg当りのDNA量を測定した。次の結果が得られた:

これらのデータは、エタノール沈殿によって、微小球の中にカプセル化されるDNAの量が、29〜59%増加したことを示している。この効果は、大きさや調製技術とは関係なく維持されることが明らかになった。
【0092】
イソプロパノール沈殿対エタノール沈殿
エタノールまたはイソプロパノールでプラスミドDNAを沈殿させて、水の中に4時間、または16時間再懸濁した。対照DNAは、沈殿させなかった。微小球は、実施例2のプロトコールにしたがって作製した。次の結果が得られた。

これらのデータは、DNA沈殿に用いられるアルコールの種類、およびDNA沈殿後の経過時間と関係なく、アルコールによる沈殿が、DNAのカプセル化効率を高めることを示している。
【0093】
電解伝導度
エタノール沈殿したDNAサンプルおよび沈殿させなかったDNAサンプルの電解伝導度を、伝導度系を用いて測定した。DNAを沈殿させる、塩類の存在量が減少する結果となることが分かった。エタノール沈殿を行わなかった場合の伝導度は384μΩであったが、エタノール沈殿後の伝導度は182μΩになった。このように、アルコールによる沈殿、またはこの他の塩/混入物除去手段も、カプセル化の効率を高める可能性が高い。したがって、混入物を含まないDNAをもたらす処理は、DNAのカプセル化効率を高める可能性が高いと考えられる。
そして、DNAをエタノール沈殿するか、0.4 M NaClと5%ヘキサデシルトリメチルアンモニウムブロミド(CTAB)存在下で沈殿させた。そして、このDNAを上述したようにカプセル化した。このDNAを抽出して、アガロースゲル電気泳動によって解析した。その結果、CTABによるDNAの沈殿は、微小球内のスーパーコイルDNAの量を顕著に増加させることが示された。
【0094】
実施例4:安定化化合物の添加
TE緩衝液
エタノール沈殿の後、DNAの安定性を高める目的で、プラスミドDNAをTE緩衝液に再懸濁した。そして、実施例2で説明されているように、微小球を調製した。微小球からDNAを抽出して、アガロースゲル電気泳動によって解析した。一つのレーンにはインプットプラスミド(pIiPLPLR)を流し、別のレーンには、エタノール沈殿し、水に再懸濁し、さらに微小球の中にカプセル化した後のプラスミドDNAを流し、そして、さらに別のレーンには、エタノール沈殿し、TE緩衝液に再懸濁し、さらに、微小球の中にカプセル化した後のプラスミドDNAを流した。その結果、微小球の中のスーパーコイル化したDNAの量は、TE緩衝液に再懸濁することによって増加することが示された。
pbkcmv-n-p、およびE3PLPLRと名づけられた、2つの別のプラスミドで、上記と同じ条件の実験を行った。この実験によって、この2つの別のプラスミドもTE緩衝液によって安定化されることが確認された。
【0095】
TE効果のタイミングを判定するために次の実験を行った。2 gのPLGAを18 mlの塩化メチレンに溶解した。500μgのDNAをエタノール沈殿して、3.6 mlのTEまたは水に溶かした。この2種類の溶液を、数回転倒混和して混合し、次に、目盛りを3にして10秒間、1/8"のマイクロチップによって、フィッシャー社製の装置(実施例2を参照のこと)の中で超音波破砕した。超音波破砕後のさまざまな時間(すなわち、5、15、30、45、および60秒後)に、1 mlのサンプルを各チューブから取り出して、100μlの水を加え、エッペンドルフ遠心チューブの中で遠心分離し、遠心分離したサンプルの上層を別のチューブに移した。そして、ゲル電気泳動によってこのサンプルを解析した。
この結果、TE緩衝液は、カプセル化処理における初期、すなわち水中油エマルジョンを形成している間、DNAを安定化する作用をもつことが示された。
【0096】
TE緩衝液におけるトリス、および/またはEDTAの効果を判定するために、実施例2の方法によって微小球の中でカプセル化させる前に、DNAを、水、TE緩衝液、10 mM トリス、または1 mM EDTAに再懸濁した。このDNAを微小球から抽出して、アガロースゲル上で解析した。トリスとEDTAは、それぞれ、カプセル化処理過程と凍結乾燥の間中、DNAを保護することができるという点で、完全なTE緩衝液と同じであることが分かった。
【0097】
pHがカプセル化に及ぼす影響を測定するために、実験を行った(以前の実験では、EDTA、トリス、およびTE容液のpHは、すべて同じであった)。エタノール沈殿して、異なるpHのトリス、またはリン酸緩衝化生理食塩水(PBS)に懸濁したDNAをカプセル化することによって微小球を作製した。粒子を凍結乾燥してからDNAを抽出して、アガロースゲル上で解析した。その結果、カプセル化されたDNAの安定性に対し、有意なpH効果があることが示された。水(pH 6.5)、PBS(pH 7.3)、およびトリス(pH 6.8)の中にDNAを再懸濁すると、すべてで、微小球内の全DNAに関してスーパーコイル化したDNAの比率が減少した。pHを7.5か、それ以上に上昇させると、スーパーコイルの量に対して陽性の効果があったが、このことは、DNAの安定性を維持するには、塩基性のpHレベルが重要であることを示唆している。また、pHを上昇させると、カプセル化の効率にも効果があった:

【0098】
別の緩衝液化合物
ホウ酸とリン酸緩衝液についても、カプセル化したDNAの品質に対するそれらの効果を調べた。DNAをエタノール沈殿し、さまざまな緩衝溶液に懸濁して、実施例2の処理手順にしたがってカプセル化した。このDNAを微小球から抽出して、アガロースゲル電気泳動によって解析した。TE、BE、およびPEはすべて、カプセル化したDNAで、50%よりも高いスーパーコイルを産生した。また、トリス、ホウ酸、またはリン酸存在下でのEDTAからもたらされる、DNAにとってさらに別の利益となる点も発見された。
【0099】
別の安定化化合物
緩衝液以外にも、別の化合物を調べて、カプセル化の過程でDNAを保護することができるかを見た。プラスミドDNAをエタノール沈殿して、水、またはデキストラン硫酸溶液に再懸濁した。そして、実施例2の方法にしたがって微小球を調製した。凍結乾燥の前後に微小球からDNAを抽出して、アガロースゲル電気泳動によって解析した。
この結果、安定化剤を添加することによって、水だけでDNAを再懸濁するよりも、より多くのスーパーコイル化したDNAがカプセル化されるということが示唆された。DNA構造が最も改善されるのが、10%デキストラン硫酸溶液で観察された。保護は、2つの段階で起きたようである。デキストラン硫酸の効果は、カプセル化した後の、DNAを凍結乾燥する前に見られ、デキストラン硫酸の量を増加させるにつれて、DNAのより大きな割合が、スーパーコイル化した状態のままになった。安定化剤によってもたらされる保護は、凍結乾燥処理の過程でも生じた。というのは、この処理過程の間、安定化剤が存在すると、スーパーコイル化した状態で残っているDNAの割合が高くなったからである。
【0100】
TE、および別の安定化剤の効果が相加的であるか否かを判定するために、エタノール沈殿したDNAを、別の安定化剤(例えば、スクロース、デキストロース、CTAB、シクロデキストリン、またはデキストラン)を含んでいるか、またはそれを含まないTEまたは水に懸濁した。実施例2の方法にしたがって、微小球を調製した。DNAを微小球から抽出して、アガロースゲル電気泳動によって解析した。
その結果、同じ条件の下で、カプセル化後、より高い割合のDNAをスーパーコイル化した状態に留めておくという限りでは、DNAは、安定化剤/TE溶液に再懸濁する方が、TEだけを用いるよりは優れているか、または同等であるということが示された。
【0101】
また、安定化剤の効果が相加的であるか否かを判定するために、安定化剤を組み合わせて添加した。DNAをエタノール沈殿して、さまざまな安定化剤溶液に再懸濁した。実施例2で説明されているようにして、このDNAをカプセル化し、抽出して、アガロースゲル電気泳動によって解析した。その結果、安定化剤を組み合わせて用いれば、カプセル化されたスーパーコイルDNAの量が増加することが示された。
【0102】
実施例5:賦形剤の添加
カプセル化したプラスミドDNAに対して、賦形剤化合物が有害な効果を与えるかどうかを判定するために、凍結乾燥の前に、賦形剤を含む溶液の中に微小球を再懸濁した以外は、実施例2のプロトコールにしたがい、エタノール沈殿したDNAから微小球を調製した。そして、実施例2と同じように、各サンプルを凍結し、凍結乾燥した。50 mg/mlで再懸濁したときに、微小球における賦形剤の最終濃度は、0.1% トゥイーン(Tween) 80、5% D-ソルビトール、5% D-マンニトール、または0.5%カルボキシメチルセルロース(CMC)であった。DNAを微小球から抽出して、アガロースゲル電気泳動によって解析した。
凍結乾燥の前に賦形剤を添加しても、DNAの安定性、またはスーパーコイルの程度に有意な影響を与えることはないことが明らかになった。
【0103】
実施例6:インビトロの細胞研究
DNAを含む微粒子のインビトロでの貪食作用
6ウエルの組織培養皿の2ウエルずつの中に、約106個のマクロファージを入れて、10%ウシ胎児血清を含む3 mlのRPMI培地の中で培養した。ルシフェラーゼをコードするDNAを含む微粒子5 mgを200μlの塩類溶液の中に再懸濁して、その結果できた懸濁液を50μl取って、マクロファージを含むウエルの一つに加えた。培養皿を1〜6時間、37℃でインキュベートした。ベクトン・ディキンソン社製(Becton Dickenson)のFACS装置を用いて、FACSによって細胞の側方対前方の散乱(すなわち、細胞内の複合性対サイズ)を解析した。
図4は、この結果を示したものである。貪食しなかった細胞集団が、領域R1に見られる。貪食している細胞は、同じ大きさのままである(FSCプロファイル)が、側方の散乱プロファイルの増大を示す。これらの細胞は、領域R2に見られる。
【0104】
貪食後のDNA発現の測定
24ウエルの組織培養皿の2つのウエルの中で、約2.5×105個のマクロファージを、10%ウシ胎児血清を含む1 mlのRPMI培地に入れて培養した。この培養皿を37℃で6時間インキュベートした。ルシフェラーゼをコードするDNAを含む、1 mgの凍結乾燥した微粒子を、400μlの塩類溶液の中に再懸濁した。この結果できた懸濁液の6μlを、マクロファージを含むウエルの一つに加え、懸濁液25μlをもう一つのウエルに加えた。この培養皿を37℃で4時間インキュベートした。微粒子を含む培地を取り除いて、新鮮な培地を細胞に加えた。再び、この培養皿を37℃で1〜5日間インキュベートした。チューブの中に細胞を回収して、15,000 RPMで5分間回転させた。沈殿した細胞を、登録商標エッペンドルフ(EPPENDORF)チューブの中で1×細胞溶解緩衝液(Cell Lysis Buffer)(プロメガ社製)100μlに再懸濁した。すべての細胞残渣を取り除くために、この混合液を14,000 RPMで5分間遠心分離した。100μlのルシフェラーゼ基質(プロメガ社製)に5μlの上清を加えて、登録商標トップカウント(TOPCOUNT)ルミノメータ/シンチレーション結合カウンター(パッカードインスツルメンツ社製(Packard Instruments))上に出力された光を測定して、細胞溶解液の測定を行った。
この実験のデータは、表5に提供されている。例えば、ルシフェラーゼDNAを含む微粒子を貪食した細胞は、実際に、このDNAを発現することが示されている。このようにして、DNAの完全性と機能性とが確認される。また、これらのデータから、貪食による微粒子の取り込みによって、DNAの核への到達が阻害されないことが示される。
【0105】

【0106】
実施例7:インビボでの細胞研究
取り込まれたDNAのインビボでの発現
微粒子中の45 mgのルシフェラーゼcDNAを、250μlの塩類溶液に再懸濁した。こうしてできた懸濁液40μlを、マウスの前脛骨筋のそれぞれに注射した。7日後、各前脛骨筋を切り出して、ドライアイス上の登録商標エッペンドルフチューブの中に入れた。ドライアイスで冷やした乳鉢と乳棒を用いて、各前脛骨筋を粉状になるまで磨砕して、登録商標エッペンドルフチューブの中に戻した。500μlの1×細胞溶解緩衝液(Cell Lysis Buffer)(プロメガ社製)を加えた。このチューブをボルテックスミキサー上で逆さまにして、4℃で15分間振とうした。このチューブと内容物を液体窒素で凍らせてから、37℃で融解した。この凍結/融解サイクルをさらに2回繰り返した。チューブを14,000 RPMで10分間遠心分離した。上清を新しいチューブに移して、再び5分間遠心分離した。発現を測定するために、20μlの上清を100μlのルシフェラーゼ基質(プロメガ社製)に加えて、登録商標トップカウント(TOPCOUNT)ルミノメータ/シンチレーション結合カウンター(パッカードインスツルメンツ社製(Packard Instruments))上に出力される光を測定した。
この実験のデータは、表6に提供されている。これらは、筋肉細胞が、微粒子から放出されるDNAを発現できることを示している。これらの細胞が貪食することは知られていないので、これは貯蔵効果の実例である。
【0107】

【0108】
DNAを含む微粒子を注射した後の細胞傷害性T細胞の産生
VSV-NpepをコードするDNAを含む90 mgの微粒子を、900μlの塩類溶液に再懸濁した。対照用ベクターDNAを含む60 mgの微粒子を、600μlの塩類溶液に再懸濁した。300μgのVSV-NpepプラスミドDNAを、300μlの塩類溶液に再懸濁した。300μgの対照用ベクターDNAを、300μlの塩類溶液に再懸濁した。150μgのVSV-Nペプチドを、フロイントの不完全アジュバント(IFA)に再懸濁した。
【0109】
5種類の懸濁液を、次のプログラムにしたがって、腹膜内、筋肉内、または皮下から注射した:
1.腹膜内:3匹のマウスからなる第1グループに、VSV-Npep DNAを含む100μlの微粒子を腹膜内に注射した(グループ1)。3匹のマウスからなる第2グループに、対照用ベクターDNAを含む100μlの微粒子を注射した(グループ2)。
2.筋肉内:(各前脛骨筋の中に):3匹のマウスからなる第3グループに、VSV-Npep DNAを含む100μlの微粒子を筋肉内に注射した(グループ3)。3匹のマウスからなる第4グループに、対照用ベクターDNAを含む100μlの微粒子を注射した(グループ4)。3匹のマウスからなる第5グループに、50μg/肢のVSV-Npep プラスミドDNAを注射した(すなわち、微粒子なしで)(グループ5)。3匹のマウスからなる第6グループに、50μg/肢の対照用ベクターのプラスミドDNAを注射した(グループ6)。
3.皮下:3匹のマウスからなる第7グループに、VSV-Npep DNAを含む100μlの微粒子を皮下注射した(グループ7)。3匹のマウスからなる第8グループに、50μgのVSV-Nペプチド/IFAを注射した(グループ8)。
【0110】
2週間後、微粒子なしで、合成ペプチドまたはDNAを注射されたグループ5、6および8に再注射した。最初に微粒子を注射されたグループ1〜4、および7には再注射は行わなかった。
【0111】
最後に注射をしてから7日後、マウスの脾臓を回収した。常法によって単一細胞懸濁液を作製したが、赤血球細胞を溶解し、残った細胞を、10%ウシ胎児血清を含むRPMIに再懸濁して、最終濃度を4×106エフェクター細胞/mlとした。次に、各グループからの細胞の半分を、予めマイトマイシンCで処理しておいた、ペプチドを与えた(peptide-pulsed)同数の同種同系の刺激細胞とともに37℃で6日間インキュベートした。残った細胞は、50μMのペプチドだけとインキュベートした。
【0112】
インキュベーション2日目以降に、ConA中でインキュベートした細胞から得られた0.1倍等量のIL-2を含む上清を加えた。インキュベーション6日目以降に、エフェクター細胞を回収して、51Cr標識した、ペプチドを与えた標的細胞を入れた、96穴の丸底培養皿の中で、37℃で5時間インキュベートした。ウエルについて、エフェクター細胞対標的細胞の比率は、200:1から1:1までの範囲であった。
【0113】
最大の溶解レベルを測定するために、20μlの10%ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)水溶液を、標的細胞のみが入った特定のウエルに加えた。自然に溶解するレベルを測定するため、特定のウエルを、培地のみ(すなわち、標的細胞はあるが、エフェクター細胞はない)とインキュベートした。特異的な溶解は、以下のとおり計算する:[(実験的な溶解)−(自然溶解)/(最大溶解)−(自然溶解)]×100=特異的溶解
これらの結果を図5〜9に示す。
【0114】
図5に関連した実験において、VSV-Nタンパク質から得られたペプチドをコードするDNAを含む微粒子によって、腹膜内から免疫したマウス(グループ1)のエフェクター細胞の、さまざまな標的細胞に対する細胞傷害活性を調べた。VSVペプチドは、マウスのH-2KbクラスIレセプターに結合する。同種同系の標的は、H-2Kbレセプターを発現させるが、本実験で用いられた同種異系の標的はH-2Kレセプターを発現させる。
【0115】
ペプチドなしの同種同系の標的(EL4)、VSVペプチドで標識した同種同系の標的(EL4/VSV)、SVペプチド(すなわち、非特異的ペプチド)で標識した同種同系の標的(EL4/SV)、およびVSVペプチドで標識した同種異系の標的(P815/VSV)について、CTL活性を調べた。
【0116】
同種異系の標的(P815/VSV)はH-2Kbレセプターを発現しないため、エフェクター細胞によって認識されて溶解されることはない。VSVペプチドと混合されたP815標的は、溶解されない。VSVペプチドをもたない同種同系の標的(EL4)も溶解されない。VSV以外のペプチドを発現する同種同系の標的(EL4/SV)も溶解されない。適切なMHCレセプターと適切なペプチドの両方をもつ標的(EL4/VSV)だけが溶解される。
【0117】
まとめると、これらのデータは、VSVペプチドをコードするDNAを含む微粒子で免疫することによって、CTL活性が誘発されうること、溶解はMHCに制約されペプチド特異的であることを示している。換言すると、適切なMHCレセプターをもつ適切なペプチドのみが、本発明によって免疫して作出されたCTLのT細胞レセプターによって認識される。これによって、微粒子が、望ましい機能を果たしていることが示された。
【0118】
次に、合成ペプチドで皮下的にマウス(グループ8)を免疫することによって発生するCTL応答を、VSVペプチドをコードするDNAを含む微粒子によって腹膜内からマウスを免疫する(グループ1および2)ことによって発生するCTL応答とを比較した。図6には、VSV-NペプチドをコードするDNAを含む微粒子(MS-VSV;グループ1)、VSVペプチドをコードしていない対照用ベクターDNAを含む微粒子(MS-ベクター;グループ2)、または合成VSV-Nペプチド(ペプチド;グループ8)のいずれかでマウスを免疫することによって発生するCTLについて、100:1のE:T比で得られた細胞溶解が示されている。この標的は、VSVペプチドで標識した同種同系(EL4)細胞であった。
【0119】
微粒子(MS-VSV)中のVSV-Npep DNAによって免疫されたマウス(33%の特異的溶解)は、空のベクターDNAを含む対照用微粒子(MS-ベクター)によって免疫されたマウス(10%の特異的溶解)よりも強いCTL応答を生じた。VSV-Nペプチド(ペプチド)で免疫されたマウスは、VSV-Npep DNAを含む微粒子(MS-VSV)によって免疫されたマウスよりも弱いCTL応答を生じさせる。したがって、微粒子は、望ましい機能を果たしていた。
【0120】
微粒子(MS-VSV)に含まれているVSV-Npep DNAによって腹膜内から免疫したマウスにおけるCTL応答を、「裸の」VSV DNA(VSV)によって筋肉内から免疫したマウスのCTL応答と比較した。DNAを含む微粒子で免疫したマウス(MS-VSV;グループ1)におけるCTL応答は、E:T比3:1で裸のDNA(VSV;グループ5)によって免疫したマウスにおけるCTL応答よりも強かった(図7)。この標的は、VSVペプチドで標識された同種同系(EL4)細胞であった。微粒子で免疫したマウスは1回しか処理しなかったが、裸のDNAを取り込んだマウスは2回免疫した。したがって、図7のデータは、微粒子中のDNAの一度の注射が、より大量の裸のDNAを2度注射するよりも効果的であったことを示している。
【0121】
図8は、注射が腹膜内ではなく皮下から行われた(グループ8マウス)以外は、図5で述べられた実験と同等の実験の結果を示している。この実験は、VSV-Npep DNAを含む微粒子の皮下注射も、CTL応答を産生するために効果的であることを明らかにした。
【0122】
図9で示された実験も、得られた結果が、VSV-Npep DNAに独特なものではないこと示すために、異なるペプチドをコードするDNAが用いられた以外は、図5で述べられた実験と同様である。HLA-A2トランスジェニックマウスを、ヒトパピローマウイルス(HPV)のE6ペプチドからのペプチドをコードするDNAを含む微粒子によって免疫した。A2.1/4と名づけられた、このHPV E6ペプチドは、ヒトのMHCレセプターHLA-A2に結合する。この実験では、CTLエフェクターが、適正なHPVペプチド(A2.1/4)で標識されているか、そうでなければ標識されていない(ペプチドなし)同種同系の標的(すなわち、適正なHLAレセプターをもつ標的)を溶解する能力を評価した。E:T比は、X軸に沿って表示されている。
【0123】
実施例8:DNAを含む微粒子による治療
実施例1の処理手順にしたがって、PLPの170〜191番目の残基(配列番号:2)に約50%一致したアミノ酸配列をもつペプチドをコードするDNAを含む微粒子を調製する。自己抗原に応答して、T細胞が過剰なTH1サイトカイン(すなわち、IL-2とγ-IFN)を分泌する、多発性硬化症の患者に、100μlから10 mlの微粒子を静脈注射する。APCによるPLP様ペプチドの発現は、自己抗原に応答して、代わりに、TH2サイトカイン(すなわち、IL-4とIL-10)を産生するようになるなど、T細胞のサイトカインプロファイルの切り換えをもたらす。
【0124】
実施例9:DNAを含む微粒子によるトレランス誘導
実施例1の処理手順にしたがって、MBPの33〜52番目の残基(配列番号:34)と一致するアミノ酸配列をもつペプチドをコードするDNAを含む微粒子を調製する。哺乳動物に、1〜500μlの微粒子を皮下注射する。APCによるMBPペプチドの発現は、自己抗原を認識するT細胞のトレランス誘導をもたらす。
【0125】
実施例10:微粒子の植え込み
転送配列、およびミエリン塩基性タンパク質(MBP)の80〜102番目の残基(配列番号:1)と本質的に同一のペプチドの両方をコードする配列に機能的に結合された発現調節配列を含むDNA分子を、実施例1の処理手順にしたがって、ポリマーと結合させて微粒子を形成する。100μmよりも小さな粒子を除去する。微粒子のポリマー成分は、ポリ-乳酸-コ-グリコール酸で、グリコール酸に対する乳酸の比率は、重量で約65:35である。こうしてできた微粒子を患者の皮下に外科的に移植する。
【0126】
実施例11:DNAとタンパク質の両方を含む微粒子の調製
登録商標MEGA-PREPキット(キアゲン(Qiagen)社製)を用いた標準的な方法によって、製造業者の指示にしたがってプラスミドDNAを調製する。すべてのDNA操作には、エンドトキシンを含まない緩衝液キット(キアゲン(Qiagen)社製)を用いる。蒸留し、脱イオンし、滅菌した水の中にDNAを再懸濁して、最終濃度を3μg/μlとする。さらに、0〜40 mgの精製タンパク質を約1 mlのDNA溶液に加える。タンパク質の全量の約20%に等しい量のゼラチンを加える。
400 mgまでのPLGA(すなわち、タンパク質全量の少なくとも10倍)を、約7 mlの塩化メチレンに溶解する。DNA/タンパク質溶液を、PLGA溶液の中に注ぎ入れ、ホモジナイズするか、超音波破砕して第一のエマルジョンを形成させる。第一のエマルジョンを、約50〜100 mlの界面活性剤の水性溶液の中に加える(例えば、重量で0.05%から2%のPVA)。この混合液を、約3000〜8000 RPMでホモジナイズして、第二のエマルジョンを形成させる。そして、実施例1の処理手順にしたがって、微粒子を分離する。
【0127】
実施例12:DNAとタンパク質の両方を含む微粒子による治療
B型肝炎ウイルス(HBV)に対するB細胞の応答を誘導するのに必要な構造決定因子をもつ抗原タンパク質、およびHBVに対するCTLエピトープをコードするDNAを両方とも含む微粒子を、実施例10の処理手順にしたがって調製する。HBVに感染した患者、またはHBVによる感染の危険がある患者を微粒子で免疫する。
貪食されない微粒子からのタンパク質の徐放によって、B細胞による構造決定因子の認識、それに続く抗体分泌が起きる。DNAの徐放、または別の微粒子の貪食によって、APCが、(1)目的のDNAを発現するようになり、それによって、T細胞応答を生じる、また、(2)微粒子から放出されたタンパク質を消化するようになり、それによって、その後、クラスIまたはII分子によって提示されるペプチドが生じる。クラスII/ペプチド複合体によって活性化されるTH細胞は、非特異的サイトカインを分泌するので、クラスI分子による提示はCTL応答を促進し、クラスII分子による提示は抗体応答とT細胞応答の両方を促進する。
この結果、患者からHBVが除去され、患者の細胞の中でのウイルスの産生を持続的に阻害するようになる。
【0128】
実施例13:プラスミドDNAを含む微粒子の、マウスの樹状細胞による貪食
カプセル化処理過程で、蛍光性オリゴヌクレオチドを付加した以外は、実施例2の処理手順にしたがって、微小球を調製した。マウスから脾臓樹状細胞を分離して、何も入れないか、蛍光ビーズを入れるか、または調製した微粒子を入れてインキュベートした。細胞のFACS解析によって、蛍光ビーズも、調製された微粒子もどちらも貪食されることが示された。その上、樹状細胞によって取り込まれないかぎり、調製された微粒子は蛍光を発せず、このことから、貪食の後、微粒子が水和されて分解されるようになり、カプセル化されたDNAが細胞の細胞質中に放出されることが示唆される。
【0129】
その他の態様
本発明は、その詳細な説明とともに説明してきたが、前記の説明は、例示を目的として成されたものであり、添付の請求の範囲を制約するものではない。別の局面、利点、および改変は、以下の請求の範囲に含まれる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれがポリマー基質および核酸を含み、該ポリマー基質が、本質的に、水の中での溶解度がおよそ1 mg/l未満である、一つ以上の合成ポリマーからなる微粒子の調製物において、
少なくとも90%の微粒子が直径約100ミクロンよりも小さく、
該核酸が、そのうちの少なくとも50%が閉環状になっているRNA分子と、そのうちの少なくとも50%がスーパーコイル化している環状プラスミドDNA分子とからなる群より選択される調製物。
【請求項2】
安定化化合物をさらに含む、請求項1記載の調製物。
【請求項3】
少なくとも90%の微粒子が、約20ミクロンよりも小さな直径をもつ、請求項1記載の調製物。
【請求項4】
重量で、少なくとも50%の核酸が、スーパーコイル化プラスミドDNA分子からなる、請求項1記載の調製物。
【請求項5】
本質的に、水の中での溶解度がおよそ1 mg/lよりも小さい、一つ以上の合成ポリマーからなるポリマー基質と、
そのうちの少なくとも50%がスーパーコイル化DNAである核酸分子
とを含む、直径が約20ミクロンよりも小さい微粒子。
【請求項6】
ポリマー基質が生物分解性である、請求項5記載の微粒子。
【請求項7】
ポリマー基質が、本質的に、1種類の生物分解性合成コポリマーからなる、請求項5記載の微粒子。
【請求項8】
コポリマーが、ポリ-乳酸-コ-グリコール酸(PLGA)である、請求項7記載の微粒子。
【請求項9】
コポリマーにおける乳酸とグリコール酸との比率が、重量で、約1:2から約4:1の範囲内にある、請求項8記載の微粒子。
【請求項10】
約11ミクロンよりも小さい直径をもつ、請求項5記載の微粒子。
【請求項11】
水性溶液に懸濁されている、請求項5記載の微粒子。
【請求項12】
乾燥した固体状態にある、請求項5記載の微粒子。
【請求項13】
核酸分子が、コード配列に機能的に結合された発現調節配列を含む、請求項5記載の微粒子。
【請求項14】
ポリマー基質と;
コード配列に機能的に結合された発現調節配列を含む核酸分子において、このコード配列が、
(1)(a)哺乳動物の天然のタンパク質の断片、または、
(b)哺乳動物に感染する感染性病原体の天然のタンパク質の断片
の配列と本質的に同一の配列をもつ、長さが少なくとも7アミノ酸のポリペプチド、
(2)MHCクラスIまたはII分子に結合することができる長さと配列をもつペプチド、および
(3)転送配列に連結した該ポリペプチドまたは該ペプチド
からなる群より選択される発現産物をコードする核酸分子とを含む、直径が約20ミクロンよりも小さい微粒子。
【請求項15】
発現産物が、MHCクラスI分子に結合することのできる長さと配列とをもつペプチドを含む、請求項14記載の微粒子。
【請求項16】
発現産物が、MHCクラスII分子に結合することのできる長さと配列とをもつペプチドを含む、請求項14記載の微粒子。
【請求項17】
発現産物が、(1)T細胞によって認識される天然のペプチドの配列と、25%の違いしかないアミノ酸配列をもち、(2)T細胞によって認識され、かつ(3)T細胞のサイトカインプロファイルを変更させる、請求項14記載の微粒子。
【請求項18】
発現産物が、ミエリン塩基性タンパク質(MBP)、プロテオリピドタンパク質(PLP)、インバリアント鎖、GAD65、島細胞抗原、デスモグレイン、α-クリスタリン、およびβ-クリスタリンからなる群より選択されるタンパク質の断片の配列に少なくとも50%一致するアミノ酸を含み、該断片が、MHCクラスII分子に結合する、請求項16記載の微粒子。
【請求項19】
発現産物が、配列番号:1〜46からなる群より選択される配列に本質的に同一なアミノ酸配列を含む、請求項16記載の微粒子。
【請求項20】
発現産物が、小胞体に転送する配列、リソソームに転送する配列、エンドソームに転送する配列、細胞からの分泌を惹き起こす配列、および核に転送する配列からなる群より選択される転送配列を含む、請求項14記載の微粒子。
【請求項21】
発現産物が、腫瘍抗原の抗原性部位の配列と本質的に同一のアミノ酸配列を含む、請求項14記載の微粒子。
【請求項22】
腫瘍抗原が、表3に列挙された抗原からなる群より選択される、請求項21記載の微粒子。
【請求項23】
発現産物が、ウイルス、細菌、および寄生性真核生物からなる群より選択される感染病原体によって天然に発現されるタンパク質の抗原性断片の配列と本質的に同一のアミノ酸配列を含む、請求項14記載の微粒子。
【請求項24】
感染性病原体が、ヒトパピローマウイルス、ヒト免疫不全ウイルス、単純疱疹ウイルス、B型肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルス、プラスモディウム属(Plasmodium)の生物種、およびマイコバクテリアからなる群より選択される、請求項23記載の微粒子。
【請求項25】
動物に核酸を投与する方法において、
請求項14記載の微粒子を提供する段階、および、
微粒子を動物の体内に導入する段階を含む方法。
【請求項26】
微粒子を、溶液中に懸濁して提供する、請求項25記載の方法。
【請求項27】
微粒子を動物に注射する、請求項25記載の方法。
【請求項28】
微粒子を動物に植え込む、請求項25記載の方法。
【請求項29】
ポリマー基質と;
コード配列に機能的に結合された発現調節配列を含む核酸分子において、該コード配列が、発現されると動物の免疫応答を下降制御するようなタンパク質をコードしている核酸分子とを含む、直径が約20ミクロンよりも小さい微粒子。
【請求項30】
(1)有機溶媒に溶解したポリマーを含む第一の溶液を提供する段階、
(2)極性または親水性の溶媒の中に溶解または懸濁した核酸を含む第二の溶液を提供する段階、
(3)第一の溶液と第二の溶液とを混合して第一のエマルジョンを形成する段階、および
(4)第一のエマルジョンと、有機化合物を含む第三の溶液とを混合して、ポリマー基質と核酸との微粒子を含む第二のエマルジョンを形成する段階を含む、微粒子を調製するための方法において、いずれの混合段階も、平均して直径が100ミクロンよりも小さな微粒子が製造される一方、核酸が剪断されるのを最小限にするような様式で行われる方法。
【請求項31】
核酸を精製し、次に、精製された核酸を極性または親水性の溶媒中に懸濁することによって、第二の溶液を調製する、請求項30記載の方法。
【請求項32】
核酸をアルコールで沈殿させ、次に、沈殿した核酸を極性または親水性の溶媒中に懸濁することによって第二の溶液を調製する、請求項30記載の方法。
【請求項33】
第二の溶液が、エチレンジアミン四酢酸、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン、およびこれらを組み合わせたものからなる群より選択される緩衝化合物を含む水性緩衝溶液をさらに含む、請求項30記載の方法。
【請求項34】
第二の溶液が安定化化合物をさらに含む、請求項30記載の方法。
【請求項35】
第二の溶液が界面活性剤をさらに含む、請求項30記載の方法。
【請求項36】
第二の溶液がDNA縮合剤をさらに含む、請求項30記載の方法。
【請求項37】
微粒子を賦形剤溶液に再懸濁する段階をさらに含む、請求項30記載の方法。
【請求項38】
第二のエマルジョンを高温に曝す、請求項30記載の方法。
【請求項39】
第二のエマルジョンを、有機化合物を含む第四の溶液と混合するという、さらに別の段階を含む、請求項30記載の方法。
【請求項40】
水性溶液で微粒子を洗浄し、それによって洗浄された微粒子が製造されるという、さらに別の段階を含む、請求項30記載の方法。
【請求項41】
凍結した微粒子を製造するために、洗浄された微粒子に0℃よりも低い温度をかける段階、および凍結乾燥した微粒子を製造するために、凍結した微粒子を凍結乾燥させる段階という、さらに別の段階を含む、請求項40記載の方法。
【請求項42】
直径が100ミクロンよりも大きい微粒子を本質的にすべて取り除くために、微粒子をスクリーニングするという、さらに別の段階を含む、請求項30記載の方法。
【請求項43】
直径が20ミクロンよりも大きい微粒子を本質的にすべて取り除くために、微粒子をスクリーニングするという、さらに別の段階を含む、請求項30記載の方法。
【請求項44】
請求項1記載の微粒子を提供する段階と、該微粒子を動物の体内に導入する段階とを含む、動物に核酸を投与する方法。
【請求項45】
請求項2記載の微粒子を提供する段階と、該微粒子を動物の体内に導入する段階とを含む、動物に核酸を投与する方法。
【請求項46】
請求項3記載の微粒子を提供する段階と、該微粒子を動物の体内に導入する段階とを含む、動物に核酸を投与する方法。
【請求項47】
請求項6記載の微粒子を提供する段階と、該微粒子を動物の体内に導入する段階とを含む、動物に核酸を投与する方法。
【請求項48】
それぞれが、ポリマー基質と、タンパク質性の抗原決定基と、抗原性ポリペプチドをコードするDNAとを含む微粒子調製物。
【請求項49】
抗原決定基が、哺乳動物において抗体反応を誘発する、請求項48記載の調製物。
【請求項50】
抗原性ポリペプチドが、T細胞応答を誘発する、請求項48記載の調製物。
【請求項51】
T細胞応答が、細胞傷害性T細胞(CTL)応答である、請求項50記載の調製物。
【請求項52】
DNAがプラスミドDNAである、請求項48記載の調製物。
【請求項53】
請求項29記載の調製物を提供する段階と、該調製物を動物の体内に導入する段階とを含む、動物に核酸を投与する方法。
【請求項54】
請求項48記載の調製物を提供する段階と、該調製物を動物の体内に導入する段階とを含む、動物に核酸を投与する方法。
【請求項55】
それぞれが、ポリマー基質と、核酸と、安定化化合物とを含み、該ポリマー基質が、本質的に、水の中での溶解度がおよそ1 mg/lよりも小さい、一つ以上の合成ポリマーからなる微粒子調製物において、
少なくとも90%の微粒子が直径約100ミクロンよりも小さく、
この核酸が、そのうちの少なくとも50%が閉環状になっているRNA分子、および環状プラスミドDNA分子からなる群より選択される発現ベクターである調製物。
【請求項56】
安定化化合物が陽イオン性化合物である、請求項55記載の調製物。
【請求項57】
安定化化合物が糖類またはDNA縮合剤である、請求項55記載の調製物。
【請求項58】
安定化化合物が陽イオン性化合物である、請求項2記載の調製物。
【請求項59】
安定化化合物が糖類またはDNA縮合剤である、請求項2記載の調製物。
【請求項60】
請求項55記載の調製物を提供する段階と、該調製物を動物の体内に導入する段階とを含む、動物に核酸を投与する方法。

【図1A】
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【図1B】
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【図1C】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−261411(P2009−261411A)
【公開日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−159407(P2009−159407)
【出願日】平成21年7月6日(2009.7.6)
【分割の表示】特願平10−534764の分割
【原出願日】平成10年1月22日(1998.1.22)
【出願人】(509054360)エーザイ コーポレーション オブ ノース アメリカ (5)
【Fターム(参考)】